説明

PLGF−1を含む医薬品及び化粧品組成物

【課題】皮膚、皮下及び内臓結合組織の血管新生を増加することができる胎盤増殖因子(PLGF)含有医薬品及び化粧品組成物の提供。
【解決手段】皮膚を構成する組織、特に角化細胞におけるPLGF−1レベルの増加は、局所的血管形成の増加を伴う。組織におけるPLGF−1レベルの該増加は外来性PLGF−1の全身投与並びに局所投与により達成することができる。胎盤増殖因子(PLGF)を含む医薬品及び化粧品組成物は、硬皮症、その種々な症状、脱毛のような皮膚組織の新しい血管の形成または再生により改善される病的または自然の状態の治療に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚、皮下及び内臓結合組織の血管形成を増加させることができる、胎盤増殖因子(PLGF)を含む医薬品及び化粧品組成物の調製に関するものである。したがって、該組成物は、皮膚組織に新しい血管を形成または再生することにより改善する、硬皮症、その種々の症状、皮膚の老化または毛髪の喪失のような病的または自然発生的状態を治療するのに適している。
【背景技術】
【0002】
胎盤増殖因子(PLGF)は血管形成を調節するホモ2量体糖タンパクである。PLGFタンパクをコードする完全ポリヌクレオチド配列はMaglione及びPersicoにより特許EP−B−0 550 519(WO−A−92/06194)に記述されている。PLGF RNAの選択的スプライシングは、異なるポリペプチド配列を有しそして全て文献に記述されている3種の同属型、PLGF−1,PLGF−2及びPLGF−3を生じる。
【0003】
PLGF−1の治療への応用は記述されているが、単に技術の現在の水準で仮定されているに過ぎない。特許EP−B−0550519は、一般的炎症状態、傷、火傷、潰瘍及び手術後の状態の治療にPLGFを使用することを仮定している。国際出願WO−A−01/56593は脳、心筋及び末梢の虚血の治療及び予防にVEGF及びPLGF因子の非経口全身投与を記述している。“Il Farmaco”,Vol.55,(2000),pages 165−167(Maglione et al.)に掲載されている学術論文はPLGF−1の心筋虚血の予防効果及び梗塞程度の軽減効果を記述している。最後に、Faille et al.は“Journal Invest.Dermatol.”115(3),Sep.2000,pages 388−395の中で、PLGF生産は損傷組織修復過程に含まれる角質細胞中に誘導されると報告している。しかし、先行技術の学説から、PLGF−1が皮膚、皮下及び内臓結合組織の病気または病的変化の予防または治療に有効であると結論することはできない。特に、先行技術の学説から、外来性PLGFの局所投与がインビボで病的状態並びに自然な状態における皮膚血管形成に影響すると結論することはできない。本発明により得られるような、外来性PLGF投与による血管新生、特に皮膚血管形成の促進効果は、より有効な血液供給による改善を受けやすい病理的または生理的状態の治療に特に有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、皮膚を構成する組織、及び特に結合組織におけるPLGF−1レベルの上昇は皮膚血管形成の増加を伴うという予想しなかった発見に基づいている。同様に、組織のPLGF−1レベルにおける該増加は本発明による非経口投与または局所投与組成物を使用する外来性PLGF−1の投与により有利に達成できることが認められた。血管新生の促進は、硬皮症、そのさまざまな症状である限局性硬皮症、進行性全身性硬皮症及び全身性硬化症のような、皮膚、皮下及び内臓結合組織に典型的な病気の治療において、皮膚の損傷及び潰瘍、自然のまたは病的なはげ、または特に太陽光または大気/環境侵襲性物質への暴露による皮膚の老化のような単なる生理的状態の修復において、有用であることを立証した。
【0005】
本出願の目的は、皮膚、皮下及び内臓結合組織及び/または血管系を含む病気または自然のまたは病的変化の予防または治療において血管新生を促進する医薬品または化粧品の組成物を調製するためにPLGF、特に1型PLGF(PLGF−1)、を使用することである。
【0006】
特に、本発明の目的は、硬皮症、特に限局性硬皮症、進行性全身性硬皮症、全身性硬化症、大気/環境の侵襲性物質または太陽光への暴露による皮膚の病的老化、及び病的原因によるはげの治療のための医薬組成物を調製するために、PLGF−1を使用することである。
【0007】
本発明のそのほかの目的は、脱毛及び皮膚の老化の予防化粧品及び治療にPLGF−1を使用することである。
【0008】
本発明のそのほかの目的は、PLGF−1及び医薬品及び化粧品の組成物の分野で通常使用される賦形剤からなる局所及び非経口使用のための医薬組成物並びに局所使用化粧品組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
皮膚を構成する組織、特に角化細胞におけるPLGF−1レベルの増加は、局所的血管形成の増加を伴う。組織におけるPLGF−1レベルの該増加は外来性PLGF−1の全身投与並びに局所投与により達成することができる。
【0010】
検定
PLGF−1の血管新生作用はウサギ角膜血管形成検定またはニワトリ卵黄嚢膜血管形成検定のような既知方法によりインビボまたはインビトロで測定した。本発明による皮膚血管形成は、Streit et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1999,Dec.21st,96(26),14888−14893)により記述されているように、皮膚検体の形態計測分析コンピュータシステムにより検査した。本発明にしたがって処置したまたは非処置の実験動物から採取した皮膚切片を、使用した動物の抗−CD31モノクロナール抗体を使用して免疫組織化学的に染色した。このように処理した切片を電子顕微鏡により分析し、組織の形態計測分析はIP−LABプログラム(Scanalytics Inc.)を使用して行なった。平方ミリメートル当りの血管数、その平均の大きさ及びそれが占める関連面積をStreit et al.による記述にしたがって測定した。
【発明の効果】
【0011】
投与動物において、外来性PLGF−1の局所投与は、実施例に示すように検討した血管パラメーターの有意な増加を生じた。
【0012】
本発明による組成物の血管新生作用を評価するための第二の方法は、インビボにおける顕微鏡による毛細血管観察及び毛細血管計測である。この既知技術は、望ましくはワセリンまたは植物油のような透過性を増強する物質で予め処理した皮膚を直接顕微鏡観察するものである。望ましい分析対象は肢の指の爪廓である。毛細管顕微鏡検査及び毛細血管計測により得られたデータの分析は、写真記録システム及びデータ処理コンピュータシステムを使用することにより適切に行うことができる。検討したパラメーターは血管形態、血管周囲組織の形態及び流体力学的状態である。形態的観察としては血管形成の増加または減少、毛細血管内径及び平方ミリメートル当りの毛細血管密度を記録する。組織観察としては、結合組織の透過性、毛細血管周囲の出血または脂肪または硬化コラーゲン沈着の存在を評価する。特に、正常な状態の下に、血管周囲の結合組織の明るい部分、グルコサミノグリカンに富む柔軟な組織から作られている毛細血管ハローと呼ばれる明るい色のハローによって取り囲まれている毛細血管ループの観察。該ハローの消失または減少は結合組織の深い部分の構造変化の兆候である。そのほかの変化の型は硬皮症に伴う組織透過性の減少である。流体力学的には流速または赤血球の凝集または血栓の存在を評価する。
【0013】
硬皮症の治療における本発明の組成物の効果はYamamoto T.et al.によってArch.Dermatol.Res.Nov.2000,292(11),pages 535−541に記述されている動物モデルで評価した。硬皮症の状態は、3週間毎日ブレオマイシン(100mcg/ml)を皮下注射により投与することによりC3Hマウスに誘発した。3週間後、動物を屠殺処理し、投与領域の皮膚検体の組織学的分析を行った。投与の効果により、ブレオマイシン誘発皮膚硬化に基づく組織所見、特に皮膚肥厚及び高レベルのヒドロキシプロリンが示された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
PLGF
本発明に使用される1型胎盤増殖因子(PLGF−1)は抽出物または遺伝子修飾宿主細胞における発現生産により得たものでよい。本発明の望ましい態様において、本発明者らが国際出願PCT/IT 02/00065に開示した方法に従って得た高度に精製した因子を本質的にホモ2量体または多量体で使用する。特に、98.5%以上の2量体及び多量体の活性型、70%以上の2量体及びいずれにしても1.5%以下の単量体からなる製品を使用する。機能的に活性なPLGF−1フラグメントを本発明の範囲内において同様に使用することができる。精製因子の少なくとも30%、または望ましくは少なくとも50%またはより良いのはその活性の少なくとも90%を示すフラグメントは天然因子と機能的に同等と考えることができる。
【0015】
疾患
本発明の組成物のそれぞれによる硬皮症の治療は本発明の一態様である。
【0016】
硬皮症は微小血管系及び皮膚、皮下及び内臓結合組織が関係する疾患である。この病気では繊維芽細胞活性化及びコラーゲンの過剰生産及び組織及び血管周囲への蓄積が誘発され、それが繊維化及び石灰化領域の形成及びそれによる疾患誘発症候の発生に大いに関与する。特に、毛細血管顕微鏡観察により血管内径を狭くしている大量の硬化コラーゲンが皮膚血管周囲を取り巻いていることが観察される。
【0017】
過剰のそして不適切なコラーゲン蓄積による皮膚硬化及び肥厚が特徴である皮膚関与の限局性硬皮症は血管関与の進行性全身性硬皮症及び皮膚繊維化による内臓の障害を伴う全身性硬化症と区別される。上記全てにおいて指と手の皮膚は硬化し、肥厚し、浮腫性となる。さらに、この疾患では心不全を伴って心筋に、肺、消化器系、腎及び骨−筋肉系に症状が現れる。さらに、一部の患者には、非常に関節の動きを悪くする皮膚繊維症誘発糜爛性関節疾患を生じる。
【0018】
他の血管新生薬物に関して、血管新生促進、特に該薬物投与による皮膚血管新生促進は患者の病歴に良い効果を与えることが報告された。特に、血管新生因子を投与された全身性硬化症の患者の皮膚表面のインビボ毛細血管顕微鏡観察により、密度並びに平均血管径における血管形成の統計的に有意な増加が実証された。さらに、新生血管には硬化コラーゲンがないので、組織への血液供給を改善することができる。この増加は病的症状の部分的緩解を伴う。
【0019】
科学的理論に結合しまたはそれにより本発明が制限されることは望まないが、動物モデルにおける全身性硬化症の治療においてPLGF−1により発現した治療効果は、インビボにおける血管新生による血管拡張作用により生じたものであるという仮説を設ける。事実、PLGF−1により誘発される効果の一つは、重要な血管拡張作動物質として多くの科学的証拠が示されている酸化窒素(NO)の発生の促進効果である。
【0020】
硬皮症の治療においてPLGF−1によって生じる効果及びその側副血行路の状態に基づく作用機序は、多分これらの病因の治療処置によるものと思われる。事実、この治療は種々の医薬品、なかんずく血管作用、主に血管拡張作用を有する薬物の併用使用に依存している。
【0021】
本発明の第二の態様は、皮膚老化に典型的な現象の治療に関係している。本質的に化粧品と見做されるが、該治療は、太陽光照射(光老化)、そのほかの放射線またはそのほかの環境/大気の侵襲性物質への長期的暴露による皮膚組織の早期劣化現象を考慮した場合に、治療的意義を有する。
【0022】
光傷害皮膚検体の電子顕微鏡像は、なかんずくエラスチンでライニングされたまたは密度の高い不定形物質に取り囲まれ、病的に拡張した毛細血管の存在が特徴である典型的微小血管形態を明らかにしている。細胞質小器官の数が増加した活性化内皮細胞の存在及びピノサイトシス小胞の存在も観察された。本発明にしたがって、PLGF−1の投与により生じる皮膚の新規血管形成の促進は、自然のまたは早熟の老化皮膚において皮膚の緊張及び厚さの基となる細胞外マトリックスに対する調節効果を発生する。本発明の組成物の持続的局所投与による毛細血管形成の増加は、繊維芽細胞増加及び新規コラーゲンの生産を伴い、皮膚外観は全般的に改善する。
【0023】
本発明のそのほかの態様は脱毛に関係する。
【0024】
皮膚血管形成の改善は、治療並びに化粧的に重要な兆候、すなわち喪失予防及び再生促進を意図した皮膚付属物(毛髪など)の発育の調節、を伴う。
【0025】
毛髪成長相に対応する組織再生相は濾胞毛細血管形成の自然増加を伴っている。局所に適用したPLGF−1の血管新生作用はそのような血管の増加及びその結果としての毛髪成長を促進する。本発明の組成物を投与した動物の毛嚢濾胞近傍の皮膚切片のコンピューター化形態計測分析は、毛細血管内径及び毛細血管密度の増加及びそれによる濾胞周囲の血管形成の全般的増加のみならず毛球の大きさ及び毛髪直径そのものの増加も明らかにした。
【0026】
脱毛の予防効果及びその再生促進効果は、自然のはげのみならず、脱毛症、ホルモン異常、化学療法、放射線療法または薬物投与のような臨床上関連する状態のための脱毛にも適用が見出される。
【0027】
治療薬の全身または局所投与に適した製剤は本発明にしたがって使用することができる。局所使用の製剤は化粧品的応用の分野に使用される。
【0028】
特に、PLGF−1因子は、全身的または局所的効果を有する非経口経路によるか、または主として局所効果を有する皮膚または粘膜上の局所経路により投与することができる。全身効果は主に静脈内投与により得られるが、腹腔内または筋肉内投与も同様に適している。局所効果は、局所、非経口、筋肉内、皮下、関節内投与により得られる。同様に、PLGF−1因子はエレクトロトランスポートまたはイオノフォレーシスにより局所的に投与することができる。持続的放出が望ましい場合には、皮下インプラントが同様に有用である。この因子の経口投与は、可能ではあるが、活性製品の分解性の点から推奨できない。
【0029】
非経口的、全身または局所使用の組成物は、溶液、懸濁液、リポソーム懸濁液、W/OまたはO/W乳剤からなる。局所使用の組成物は溶液、ローション、懸濁液、リポソーム懸濁液、W/OまたはO/W乳剤、ゲル、軟膏、クリーム、ポマード及びペーストからなる。望ましい態様において、活性物質は、適当な凍結乾燥添加物と混合して、治療上受容しうる希釈剤で直ちに再溶解できる凍結乾燥形態に製剤化される。有用な凍結乾燥添加物は:緩衝液、多糖類、蔗糖、マンニトール、イノシトール、ポリペプチド、アミノ酸及び活性物質に適合するそのほかの添加物である。本発明の望ましい態様において、凍結乾燥後のPLGF1/リン酸比が1:1と1:2の間に含まれるような量で活性物質をリン酸緩衝液(NaHPO/HO−NaHPO/2HO)に溶解する。非経口使用に適する希釈剤は:水、生理的溶液、糖溶液、水性アルコール溶液、油性希釈剤、グリセリン、エチレンまたはポリプロピレングリコールのようなポリオール、または滅菌、pH、イオン強度及び粘度に関して投与方法に適合するそのほかの希釈剤である。
【0030】
乳剤または懸濁剤の場合には、組成物は医薬品の製剤化に一般的に使用されている非イオン性、両性イオン性、陰イオン性または陽イオン性型の適当な界面活性剤を含むことができる。油/水(O/W)親水性乳剤は非経口全身使用に好ましく、一方水/油(W/O)親油性乳剤は局所使用に好ましい。
【0031】
さらに、本発明の組成物は、糖類または多価アルコールのような等張性物質、緩衝剤、キレート剤、抗酸化剤、抗菌剤のような追加の添加物を含むことができる。
【0032】
局所使用の組成物は液状形態または半固体形態からなる。液状形態は溶液またはローションからなる。これらは水性、エタノール/水のような水性アルコールまたはアルコール性であり、凍結乾燥物質を溶解することにより得られる。
【0033】
そのほかに、活性物質溶液は、デンプン、グリセリン、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、イソプロピルアルコール、ヒドロキシステアリン酸塩のような既知ゲル化剤を加えることによりゲルの形態に製剤化することができる。
【0034】
局所使用のための組成物のそのほかの形態は、ポマード、ペースト、クリームの形態の乳剤または懸濁剤である。W/O乳剤が望ましく、早い吸収を生じる。親油性賦形剤の例は:液体パラフィン、無水ラノリン、白色ワセリン、セチルアルコール、ステアリルアルコール、植物油、鉱物油である。皮膚透過性を増強する薬剤、それによって吸収を促進する、は使用するのが有利であろう。そのような薬剤の例はポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールまたはジメチルスホオキシド(DMSO)のような生理的に受容しうる添加物である。
【0035】
局所用組成物に使用されるそのほかの添加物は、糖類または多価アルコールのような等張剤、緩衝剤、キレート剤、抗酸化剤、抗菌剤、増粘剤、分散剤である。
【0036】
同様に、局所または全身使用のための徐放性組成物は有用であろう、そしてポリ乳酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー及び当技術分野において既知のそのほかの物質からなる。例えば、ポリ乳酸またはそのほかの生物分解性ポリマーを使用する皮下インプラントの形態による徐放性組成物は同様に有用であろう。
【0037】
活性物質は凍結乾燥し安定な形で包装されるのが望ましいが、医薬組成物はPLGF−1を活性型2量体−多量体の形で安定化する物質を含むことが有利である。そのような安定化剤は分子間ジスルフィド結合の形成を阻害し、その結果活性物質の重合を阻止する。しかし、同時に活性物質の不活性な単量体への還元を防ぐために、安定化剤の量は注意深く秤量しなければならない。そのような物質の例は:システイン、システアミン、または還元型グルタチオンである。
【0038】
用量
用量は投与経路及び選択した製剤に依存する。非経口投与には、1mcg/kg/dayから500mcg/kg/day、望ましくは10mcg/kg/dayから200mcg/kg/dayの範囲の量。そのような投与は、1回投与当り約50mcgから30mg、望ましくは投与当り約500mcgから10mgを含有する医薬組成物により行われる。局所的適用には、組成物のグラム当り0.1から10mgの範囲の量が有効であることが立証されている。皮膚の老化または脱毛を治療するための局所化粧用組成物は組成物のグラム当り0.01から0.09mgの活性物質を含むことが望ましい。
【0039】
治療の長さは病状または望む効果により変動する。硬皮症の治療の場合には、適用は病状の重さにより1日から12ヶ月の範囲である。皮膚の自然または早期老化に対する治療の場合には、適用は1から400日の範囲であり、望ましくは少なくとも30日間である。同様に、脱毛の予防または毛髪再生の促進のための治療の場合には、適用は1から400日の範囲である。
【実施例1】
【0040】
非経口使用のための溶液:
25mgの精製PLGF−1及び33mgのリン酸緩衝剤(10mg NaHPO/HO及び23mg NaHPO/2HO)からなる58mgの凍結乾燥物質、及び約125mlの非経口使用のための生理的溶液を、使用直前に凍結乾燥製品を希釈剤と混合するように予めセットした容器に別々に包装する。活性物質の溶解後の濃度は約0.2mg/mlである。
【実施例2】
【0041】
局所適用のためのW/O乳剤
20mgの活性物質を含む量の凍結乾燥品を、10%DMSOを含む10%エタノール水溶液5mlに入れる。この溶液を、<10HLB係数のW/O乳剤に適する界面活性剤を使用して皮膚適用のための滅菌植物油中に乳化する。この乳剤は組成物のグラム当り約2mgに相当する活性物質を含む。
【実施例3】
【0042】
O/W乳剤
約20mgの活性物質を含む量の凍結乾燥品を、30%DMSOを含むアルコール水溶液5mlに溶解し、適当な界面活性剤を使用して植物油を含む親油性溶媒中に乳化する。生成したO/W乳剤は組成物のグラム当り約3mgの濃度で活性物質を含む。
【実施例4】
【0043】
ゲルの形の局所用組成物
10mgの活性物質を含む量の凍結乾燥品を、20%DMSOを含む10%エタノール水溶液の20mlの中に入れる。次いで、この溶液にポリエチレングリコール(400−4000)及びポリプロピレングリコールの混合物を加える。活性物質は0.2mg/gr組成物に相当する量が存在する。このゲルは化粧品的適用に適している。
【実施例5】
【0044】
4匹のSKH−1ヘアレスマウスの背部の一定皮膚表面(1cm)に非経口皮下経路により実施例1に記述した溶液(0.2mg/ml)の50マイクロリットルを20日間毎日投与した。別の4匹のSKH−1マウスに実施例2(2mg/gr)に記述した組成物を局所経路により30日間投与した。同系統の4匹のマウスに非経口用の賦形剤のみを、そして別の4匹には局所用の賦形剤のみを、同じ投与方法により投与した。屠殺処理した動物の皮膚検体をStreit et al.(前出)による記述のように形態計測コンピュータ分析により検査した。詳しくは、皮膚切片(5ミクロン)をモノクロナール抗−マウスCD31抗体を使用して免疫組織化学的に染色した。このように処理した切片を電子顕微鏡により分析し、そして組織の形態計測的分析はIP−LABプログラム(Scanalytics Inc.)を使用して行った。関心のパラメーターは血管の占める面積(mm当りの%)及び平均血管サイズ(μm)であった。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表に報告した値は、局所投与について増加はやや少なかったが、非経口投与及び局所投与のいずれに関しても、統計的有意な増加を示した。
【実施例6】
【0047】
この実施例においてYamamoto et al.(前出)により記述されたブレオマイシン誘発硬皮症の動物モデルを使用した。
【0048】
第1群のC3Hマウスにブレオマイシン(100mcg/ml)を3週間毎日皮下注射により投与した。他の3群のC3Hマウスは第1群と同様に処理すると共に、それぞれ0.1,1及び10mcg/mlのPLGF−1の毎日の注射を追加した。3週間の投与後に動物を屠殺処理し、処置領域の皮膚を採取し、組織学的な分析を行った。PLGF−1の1及び10mcg/ml投与の効果は、ブレオマイシン誘発皮膚硬化による組織学的所見の有意な減少を示したが、0.1mcg/mlでは示されなかった。特に、皮膚肥厚及びヒドロキシプロリンレベルはブレオマイシンのみを投与したマウスに比較して有意に減少した。
【実施例7】
【0049】
年齢50から60歳の範囲の健康成人の通常環境侵襲性物質及び太陽光に著しく暴露されている左手の甲に、実施例4に記述したゲル形態の組成物を皮膚局所適用により投与した。適用した量は、1日に0.2mgの活性物質に相当する、1グラムのゲルを夏季の60日間であった。投与の効果は、観察したデータを保存しそしてコンピュータ処理を行うことにより、毛細血管所見及び毛細血管計測分析により評価した。非投与皮膚の分析により、エラスチン−ライニングまたは密度の高い不定形物質に取り囲まれた病的な拡張毛細血管の存在を特徴とする、皮膚の早期光老化の典型的な像が示された。
【0050】
肉眼的なレベルでは、投与により皮膚の緊張及び外観の全般的改善が得られた。
【0051】
特に、毛細血管観察分析により、特に毛嚢周辺部において明らかな毛細血管形成の増加が示された。投与皮膚及び非投与皮膚の毛嚢周辺部の毛細血管計測による比較により、平方ミリメートル当りの血管数において約35%の増加が示された。毛嚢における血管形成の増加はその成長を促進することが知られているので、ここに報告したデータはPLGF−1の局所投与は皮膚の老化に対して効果があるのみならず、毛細血管/毛髪成長にも有効であることを立証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬皮症の予防または治療において血管新生を促進する薬剤の調製のための1型胎盤増殖因子(PLGF−1)の使用。
【請求項2】
疾患が限局性硬皮症または進行性全身性硬皮症である請求項1に記載の1型胎盤増殖因子(PLGF−1)の使用。
【請求項3】
限局性硬皮症が皮膚性硬皮症でありそして進行性全身性硬皮症が心筋性硬皮症である請求項2に記載の1型胎盤増殖因子(PLGF−1)の使用。
【請求項4】
脱毛症、ホルモン異常、化学療法、放射線療法または薬物投与による脱毛の予防及び治療において血管新生を促進する非経口使用または局所使用のための薬剤を調製するための1型胎盤増殖因子(PLGF−1)の使用。
【請求項5】
薬剤が局所的または全身的効果を生じるのに適した形態になっている請求項1から4のいずれか一つに記載の使用。
【請求項6】
薬剤が静脈内、筋肉内、関節内、皮下投与、局所投与または皮下インプラントに適する形態になっている請求項1から5のいずれか一つに記載の使用。
【請求項7】
自然の脱毛の予防及び化粧的処置において毛嚢周囲の血管新生の促進剤として1型胎盤増殖因子(PLGF−1)の使用。
【請求項8】
PLGF−1が局所投与用の化粧品組成物に製剤化されている請求項7に記載の使用。
【請求項9】
PLGF−1が体重kg当り1日当り1から500μgの投与に適する量からなる請求項1から8のいずれか一つに記載の使用。
【請求項10】
PLGF−1の少なくとも98.5%が活性な2量体及び多量体の型であり、少なくとも70%が2量体でありそして1.5%以下が単量体であり、そしてその中にPLGF−1は非経口使用には1回投与当り50μgから30mgがそして局所使用の組成物のグラムあたり0.1mgから10mgの量が含まれることを特徴とする活性主薬としてのPLGF−1及び医薬として受容しうる賦形剤からなる医薬組成物であって、硬皮症および脱毛から選択される、皮膚結合組織もしくは皮下結合組織に関する疾患または病的変化の予防または治療において血管新生を促進するための医薬組成物。
【請求項11】
PLGF−1の少なくとも98.5%が活性な2量体及び多量体の型であり、少なくとも70%が2量体でありそして1.5%以下が単量体であり、そしてその中にPLGF−1は組成物のグラム当り0.01mgから0.09mgの量が含まれることを特徴とする活性主薬としてのPLGF−1及び化粧品として受容しうる賦形剤からなる化粧品組成物であって、硬皮症および脱毛から選択される、皮膚結合組織もしくは皮下結合組織に関する変化の予防または治療において血管新生を促進するための化粧品組成物。
【請求項12】
PLGF−1が遺伝子修飾宿主細胞の発現産物であることを特徴とする請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
それが局所または全身使用用でありそして溶液、ローション、W/O乳剤、O/W乳剤、懸濁剤、リポソーム懸濁剤、ゲル、クリーム、ペースト、軟膏または皮下インプラントの形態であることを特徴とする請求項10から12に記載の医薬品または化粧品組成物。
【請求項14】
PLGF−1を活性2量体−多量体型に安定化することができる一つまたはそれ以上の物質を含む請求項10から13のいずれかに記載の組成物。

【公開番号】特開2010−116405(P2010−116405A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7759(P2010−7759)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【分割の表示】特願2003−572591(P2003−572591)の分割
【原出願日】平成15年3月5日(2003.3.5)
【出願人】(504297423)ジェイモナト ソシエテ ペル アチオニ (3)
【Fターム(参考)】