PLK阻害剤の塩
本発明は、plk阻害剤の結晶性で水溶性の新規な塩に関する。このような結晶塩は、例えば、L−酒石酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、L−リンゴ酸塩、塩酸塩、フマル酸塩(半モルの対イオン)、フマル酸塩、クエン酸塩(半モルの対イオン)、ベンゼンスルホン酸塩およびL−アスパラギン酸塩(半モルの対イオン)である。塩基の新規な結晶形態、ならびにかかる新規な塩の形態の溶媒和物および水和物、これらの調製方法、治療におけるこれらの有用性およびこれらを含有する医薬組成物に対しても、本出願においても特許請求され記載されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、plk阻害剤の結晶性で水溶性の新規な塩、これらの調製方法、このような新規な塩の形態の水和物、溶媒和物および多形体、治療におけるこれらの有用性およびこれらを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、ヒトにおける主要な死因であり、手術、放射線および化学療法は、がんと闘う有用な手段である。
【0003】
PLK1は、適切な細胞分裂の進行に必須のセリンスレオニンキナーゼである。
【0004】
PLK1の発現は、増殖中の全ての正常細胞で見られるが、他方、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、胃がんおよび結腸がんを含む一連の腫瘍では、過剰発現が観察される。がん細胞においてRNAiによりPLK1が枯渇すると、増殖が阻害され、生存能が低下し、結果としてDNA量が4Nである細胞周期の停止をもたらし、その後にアポトーシスが続くことが観察される。ヒトでは、4種のPLKファミリーメンバーが記載されているが、異種移植モデルにおいてG2/M細胞周期のブロックおよび腫瘍細胞株のアポトーシスおよび腫瘍退縮を誘発させるためには、酵素活性の阻害またはPLK1の枯渇で十分である。加えて、他のPLKに関して腫瘍抑制機能が記載されており、PLK2およびPLK3は、ニューロンの様な非増殖性の分化した有糸分裂後細胞で発現されることが報告されているが、PLK1では報告されておらず、PLK1に特異的な化合物に対しては、より安全なプロフィールの可能性が示されている(例えば、Strebhardt Kら、Nat Rev Cancer 2006;6(4):321−30を参照されたい。)。
【0005】
がん治療における有糸分裂阻害剤の使用は、広範囲のヒトのがん治療に対して広く受けられている臨床戦略である(例えば、Jackson JRら、Nature Reviews Cancer 2007;7、107−117を参照されたし。)。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)ならびにビンカアルカロイド(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)は、有糸分裂を経て進行する細胞において、破局的な結果を伴う微小管の安定化または不安定化のいずれかにより作用する。これらは、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、睾丸がん、神経芽細胞腫およびウィルムス腫瘍を含む数種類の腫瘍に対する一次選択治療であり(ビンカアルカロイド)、シスプラチン抵抗性の卵巣がん、乳がん、肺がんおよび食道がんでの二次選択治療である(タキサン)。しかし、細胞遊走、食細胞活動および軸索輸送などのプロセスにおける微小管の役割により、末梢神経障害などの特定の毒性がこれらの薬剤でしばしば観察されている。
【0006】
特許出願のWO2008074788(Nerviano Medical Sciences Srl.)に記載され特許出願されたピラゾロキナゾリンは、PLK1の強力な阻害剤であり、それ故、増殖性疾患、特にがんの治療において有用である。
【0007】
次式:
【0008】
【化1】
を有する化合物937は、上記で言及した特許出願に記載され特許請求された化合物の1つである。この調製、これを含む医薬組成物および医学的用途もまた、そこに記載され特許請求されている。
【0009】
化合物937は、1−(2−ヒドロキシ−エチル)−8−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−2−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ]−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−h]キナゾリン−3−カルボキサミドであり、この好ましい調製が、上記で言及した特許出願の実施例38および40に記載されている。
【0010】
化合物937は、結晶性の水に溶けにくい化合物であり、水溶解度は0.1mg/ml未満を示す。
【0011】
化合物937の溶解度は、5%デキストロース溶液中10%ポリソルベート80では約4mg/mlであり、5%デキストロース溶液中50%水性ポリエチレングリコール400では、約7mg/mlであり、その場での塩酸塩またはメシル酸塩として調製した場合、約8÷9mg/mlである。化合物937は、また、およそ2÷8mg/mlの範囲におけるメトセル水性懸濁液にも適していた。
【0012】
得られた遊離塩基は、初期の薬理学的評価および毒性学的評価中の投与を可能にするために、始めに、その場の塩またはメトセル懸濁液として製剤化された。初期の製剤化手法の問題は解決されたが、適用された製剤化手法は、経口製剤の開発には適していなかった。
【0013】
医薬品有効成分の前臨床研究は、適切なビヒクル中に有効成分が溶解できることを必要としている。この目的は通常、無菌注射製剤の調製に適するものとするために化合物を水溶性にすることにあり、硬ゼラチンカプセル剤および短時間作用型の錠剤などの固体剤形に含まれる原薬の迅速な溶解にも、適切な水溶性が必要とされる。
【0014】
観察された化合物937の低い溶解性は、これを製剤化し投与することを困難にしている。
【0015】
さらに、遊離塩基は、25℃、相対湿度(RH)90%における水分の最大吸収が約1%を示すことから、僅かに吸湿性である。
【0016】
医薬品粉末にとって、吸湿もまた重大な懸念事項である。湿気は、例えば、薬物、賦形剤および製剤の、物理的特性、化学的特性ならびに製造特性に大きな影響を与えることが分かっている。吸湿は、また、包装、貯蔵、取り扱いおよび有効期間に関連する決定を行う際の重要な要素でもあり、開発の成功には吸湿性の正しい理解が求められる。
【0017】
例えば、固体において、相対湿度が臨界値を超え、含水率が急速に上昇すると、無水形態から水和物形態への変換が観察され得る。このことは、薬物自体の物理的特性および薬剤学的特性に影響を与えるばかりではなく、この生物薬剤学的な視点にも影響を与える。その上、水和物形態は、通常、均一な無水物形態と比較して溶解しにくい傾向があり、活性化合物自体の溶解速度の特性および消化管を経由するこの吸収プロフィールに対しても、潜在的な有害作用を及ぼすことが良く知られている。同様に、結晶形態から非晶質形態への変換が湿気の存在下で観察することができ、物理的安定性の点で潜在的な欠点がある。非晶質の活性原薬が潮解性である場合、例えばこれが溶解するまで大気から比較的大量の水分を吸収することがあり、他方、熱力学的に活性化した非晶質構造は、より化学分解されやすく、他の化学種と化学的相互作用を起こす傾向があるので、この化学的安定性も影響を受けることがある。したがって、製剤および活性成分の両方の性能ならびに有効性が著しく変化し得る。
【0018】
加えて、遊離塩基の粉末のかさ密度は低く、約90mg/mlである。
【0019】
粉末のかさ密度などの好都合なバルク特性も、また望ましい。粉末のかさ密度がより高いことは、粒子形態がより適切であることに関係しており、これは、流動性を向上させ、結果として医薬組成物の特性の向上をもたらす。粉末の密度がより高いと、例えば、より適切なカプセル製剤の製造工程が可能になる、または同様なカプセルサイズ内の用量強度をより高くすることでき、これには、特に初期の臨床相中に投与されるカプセルの数および/または大きさを低減するという具体的な可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2008074788号(Nerviano Medical Sciences Srl.)
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Strebhardt Kら、Nat Rev Cancer 2006;6(4):321−30
【非特許文献2】Jackson JRら、Nature Reviews Cancer 2007;7、107−117
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、十分な溶解性、低い吸湿性、結晶化度および好適な粉末のかさ密度などの、良好で再現可能な、物理化学的特性およびバルク特性を備えているだけでなく、固体状態であり、可変の貯蔵温度、湿度および照明条件において化学的に安定であり、適正な生物薬剤学的挙動を確実にし、より安全で効果的な経口投与を可能にする、化合物937の水溶性の塩が治療において必要とされている。
【0023】
当業者に良く知られているように、塩の形成が必ずしも溶解度の亢進をもたらすとは限らない(例えば、Shozo Miyazakiら、International Journal of Pharmaceutics 1980;6(1)、77−85を参照されたし)だけでなく、溶解度および/または溶解の点、および/または対イオン効果を受けやすいという点における種々の塩の挙動は、それぞれの薬物−対イオンの結合の特性により異なることもある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
驚くべきことに、本発明者らは、向上した物理化学的特性およびバルク特性を有する化合物937の新規の塩、ならびに新規の結晶形態の塩を提供することで、上記の技術的問題を解決した。実際、当該新規の塩は、結晶性で、水溶解度が高い急速に溶解する固体であり、その上、これらの塩は、吸湿性が低いまたは中等度であるので、取り扱い、貯蔵および剤形などの重要な利点を実質的に生じさせ、最終的に、他の全ての利点、特にその場での塩またはメトセル懸濁液として製剤化した場合の遊離塩基によって呈示される治療上の利点を備えていることに加え、これらの塩の粉末のかさ密度は、当該遊離塩基のそれよりも驚くべきことに高い。
【0025】
驚くべきことに、化合物937の新規な塩の形態は、遊離塩基であるだけでなく結晶性であることが見出され証明された。結晶性粉末であるという特性は、これらの形態を特に医薬開発に適したものにしている。
【0026】
本発明は、また、以下に記載した添付図面を参照しても説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】x軸で2θ角(度)を報告し、他方、強度(CPS)がy軸で報告される、化合物937の遊離塩基およびこの結晶塩のX線回折図である。特に、当該スペクトルは、化合物937の遊離塩基の形態I(A)および次の塩:L−酒石酸塩の形態I(B)、コハク酸塩の形態I(C)、リン酸塩の形態I(D)、メシル酸塩の形態I(E)、マレイン酸塩の形態I(F)、L−リンゴ酸塩の形態I(G)、塩酸塩の形態I(H)、フマル酸塩−半モルの対イオンの形態I(I)、フマル酸塩の形態I(J)、クエン酸塩−半モルの対イオンの形態I(K)、ベンゼンスルホン酸塩の形態I(L)、L−アスパラギン酸塩−半モルの対イオンの形態I(M)を表す。
【図2】化合物937の遊離塩基の形態I(A)および次の塩:L−酒石酸塩の形態I(B)、フマル酸塩の形態I(C)、L−リンゴ酸塩の形態I(D)のX線回折図である。
【図3】化合物937のフマル酸塩の形態IのX線回折図である。
【図4】化合物937のL−リンゴ酸塩の形態IのX線回折図である。
【図5】化合物937のL−酒石酸塩の形態IのX線回折図である。
【図6】化合物937のマレイン酸塩の形態I(A−B)およびマレイン酸塩の形態II(C)のX線回折図である。
【図7】化合物937のコハク酸塩の形態I(A)およびコハク酸塩の形態II(B−C)のX線回折図である。
【図8】化合物937の遊離塩基、形態IのX線回折図である。
【図9】化合物937の遊離塩基の形態I(A)および次の塩:L−酒石酸塩の形態I(B)、コハク酸塩の形態I(C)、リン酸塩の形態I(D)、メシル酸塩の形態I(E)、マレイン酸塩の形態I(F)、L−リンゴ酸塩の形態I(G)、塩酸塩の形態I(H)、フマル酸塩(半モルの対イオン)の形態I(I)、フマル酸塩の形態I(J)、クエン酸塩の形態I(K)、ベンゼンスルホン酸塩の形態I(L)、L−アスパラギン酸塩(半モルの対イオン)の形態I(M)のDSCサーモグラムである。 当該サーモグラムは、x軸で温度(℃)を報告し、他方、熱流量(mW)はy軸で報告される。
【図10】化合物937の遊離塩基の形態I(A1)、遊離塩基の形態II(A2)、L−酒石酸塩の形態I(B)、コハク酸塩の形態II(C−D)、フマル酸塩の形態I(E)、マレイン酸塩の形態I(F)、マレイン酸塩の形態II(G)およびL−リンゴ酸塩の形態I(H)のDSCサーモグラムである。
【図11】化合物937の遊離塩基の形態I(A−B1)および遊離塩基の形態II(B2)のDSCサーモグラムの詳細を表す図である。
【図12】化合物937の遊離塩基の形態I(A−B)のバッチのX線回折図であり、図11で報告されたDSCプロフィールでもまた特徴付けられる図である。
【図13】化合物937の遊離塩基の形態I(A)、フマル酸塩の形態I(B)、マレイン酸塩の形態II(C)、コハク酸塩の形態II(D)、L−リンゴ酸塩の形態I(E)、L−酒石酸塩の形態I(F)のDVSプロフィール(吸湿性試験)を示す図である。
【図14】化合物937のフマル酸塩の形態Iである大規模バッチのX線回折図である。
【図15】化合物937のフマル酸塩の形態Iである大規模バッチのDSCプロフィールを示す図である。
【図16】化合物937のフマル酸塩形態IIである大規模バッチのX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1の態様では、本発明は、L−酒石酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、L−リンゴ酸塩、塩酸塩、フマル酸塩(半モルの対イオン)、フマル酸塩、クエン酸塩(半モルの対イオン)、ベンゼンスルホン酸塩およびL−アスパラギン酸塩(半モルの対イオン)から選択される化合物937の新規な塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物に関する。
【0029】
詳細には、本発明は、L−酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、L−リンゴ酸塩およびフマル酸塩から選択される化合物937の新規な塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物に関する。
【0030】
より詳細には、本発明は、L−酒石酸塩、L−リンゴ酸塩およびフマル酸塩から選択される化合物937の新規な塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物に関する。
【0031】
さらにより詳細には、本発明は、化合物937のフマル酸塩の新規な結晶形態、ならびにこの溶媒和物および水和物に関する。
【0032】
最も詳細には、本発明は、化合物937のフマル酸塩の溶媒和物に関する。
【0033】
化合物937のそのような塩は、適切な溶媒に溶解した遊離塩基に対する対イオンの溶媒または水溶液の所望の化学量論的な添加によって、既知の類似方法により得ることができる。そのような溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、ジクロロメタンおよびこれらの混合物から選択される有機溶媒、特に無水の有機溶媒である。必要な場合、例えば、ジエチルエーテル、n−ヘキサンまたはシクロヘキサンである、無水の非極性溶媒中での添加または再処理により、得られた塩を沈殿または結晶化させることが好都合であり得る。
【0034】
本発明によると、塩の定義には、これらの結晶形態、これらの溶媒和物および水和物もまた含まれる。
【0035】
本明細書で用いられる用語「溶媒和物」とは、溶媒和によって形成される化合物、例えば、溶媒分子と溶質分子または溶質イオンとの組合せである化合物を意味する。良く知られている溶媒分子としては、水、アルコールおよび他の極性有機溶媒が挙げられる。アルコールには、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールおよびt−ブタノールが含まれる。アルコールには、また、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)などの重合アルコールも含まれる。
【0036】
本明細書で用いられる用語「水和物」とは、溶媒和によって形成される化合物を意味し、溶媒は水である。
【0037】
他に特に規定がなければ、「溶媒和物」および「水和物」に言及する場合、本発明には、化学量論的な化合物および非化学量論的な化合物の両方が含まれる。
【0038】
化学量論的な溶媒和物は、化合物の分子に対して溶媒分子が一定の比にある。このことは、典型的には、溶媒と化合物分子との間の結合相互作用に起因している。非化学量論的な溶媒和物では、溶媒は、化合物の分子に対する一定の比では存在しておらず、しばしば変動し得る。非化学量論的な溶媒和物では、溶媒は、結晶格子内の隙間またはチャネルに存在することが多い。化学量論的な水和物は、化合物の分子に対して水分子が一定の比にある。このことは、典型的には、水と化合物分子との間の結合相互作用に起因している。非化学量論的な水和物では、水は、化合物の分子に対して一定の比では存在しておらず、しばしば変動し得る。非化学量論的な水和物では、水は、結晶格子内の隙間またはチャネルに存在することが多い。
【0039】
次にさらなる態様において、本発明は、化合物937の遊離塩基としての新規な安定結晶形態に関する。
【0040】
本発明のさらなる目的は、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態を活性成分として含み、薬学的に許容し得る賦形剤および/または担体を含む、医薬組成物を提供することにある。
【0041】
本発明のさらなる目的は、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態を、医薬品として使用するために提供することにある。
【0042】
本発明のさらなる目的は、PLKの阻害によって治療可能な病態に罹患しているヒトを含む哺乳動物を治療する際に、単独でまたは他の治療剤と併用して使用する、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態を提供することにある。
【0043】
加えて、本発明は、細胞増殖性障害、ウイルス感染症、自己免疫疾患および神経変性障害などの、PLKの阻害によって治療可能な病態に罹患しているヒトを含む哺乳動物を治療する際に使用する、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態に関する。
【0044】
加えて、本発明は、細胞増殖性障害ががんであることを特徴とし、PLKの阻害によって治療可能な病態に罹患しているヒトを含む哺乳動物を治療する際に使用する、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態に関する。
【0045】
本発明のさらなる目的は、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む、PLKの阻害を必要とするヒトを含む前記哺乳動物の治療方法を提供することにある。
【0046】
最後に、本発明の別の目的は、PLKの阻害によって治療可能な病態の治療向けの医薬品の製造のために、単独でまたは他の治療剤と併用して、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態の使用を提供することにある。
【0047】
用語「治療可能な病態」とは、本発明に従った治療により、病態の寛解または少なくとも状態の寛解が提供され、治療の下で哺乳動物の生活の質が向上することを意味する。
【0048】
そのような病態の例は、特に種々のがんであり、これらには、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、小細胞肺がんを含む肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌、前立腺癌および皮膚癌などの扁平上皮細胞癌を含む癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含むリンパ系の造血器腫瘍;急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群ならびに前骨髄球性白血病を含む骨髄細胞系の造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫およびシュワン細胞腫を含む中枢神経系ならびに末梢神経系の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形腫、骨肉腫、色素性乾燥症、角化棘細胞腫、甲状腺濾胞がんおよびカポジ肉腫を含む他の腫瘍を挙げることができる。このような病態の例は、また、例えば、良性前立腺肥大、家族性大腸ポリープ症、神経線維腫症、乾癬、アテローム硬化症に伴う血管平滑筋細胞の増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎、ならびに術後狭窄および再狭窄などの特異的な細胞増殖性障害でもある。
【0049】
化合物937の塩の有効量は、疾患、障害の重症度および治療される患者の状態により変動し得る。したがって、医師は、それぞれの患者に対していつもの通りに至適用量を設定しなければならない。いずれにしても、有効量の範囲は、1日1回から5回で、投与1回当たり(遊離塩基として計算した)約5から約500mgとすることができる。
【0050】
上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態は、経口で容易に吸収され、それ故、経口で投与されるのが好ましい。
【0051】
言うまでもなく、本発明の化合物は、任意の投与経路、例えば、非経口経路、局所経路、直腸経路および経鼻経路によって投与され得る。
【0052】
さらなる態様として、化合物937のフマル酸塩は、形態Iと名付けた結晶形態にある結晶性固体として得られることが分かった。形態Iは、化合物937のフマル酸塩の高融点の結晶形態であり、25℃/90%RHにおいて1.6%の中等度の水分吸収を示し、水分吸収は、25℃の一定温度でRHを低下させることにより逆転可能である。
【0053】
(PXRDプロフィール:図1J;DSCプロフィール:図9J;DVSプロフィール:図13Bおよび表11−PXRDおよびDSCプロフィールについての他の参照は、表1に記載される。)。
【0054】
化合物937のフマル酸塩は、結晶性固体として、化学量論比が0.5:1で得ることができると分かった(PXRDプロフィール:図1I;DSCプロフィール:図9I)。
【0055】
化合物937のフマル酸塩は、形態IIと名付けられた結晶形態にある結晶性固体として得ることができる(PXRDプロフィール:図16)。
【0056】
さらなる態様として、化合物937のL−リンゴ酸塩および化合物937のL−酒石酸塩は、両方とも形態Iと名付けられた結晶形態にある結晶性固体として得ることができると分かった。化合物937のL−リンゴ酸塩および化合物937のL−酒石酸塩は、吸湿性が中等度であり、両塩は、水分吸収が25℃/90%RHにおいてそれぞれ約4.7%および5.8%を示す。含水率は、室内条件でかなり安定であり、それ故、2つの塩は安定的な水和物と考えることができる(PXRDプロフィール:L−リンゴ酸塩 図1G、L−酒石酸塩 図1B;DSCプロフィール L−リンゴ酸塩 図9G、L−酒石酸塩 図9B;DVSプロフィール:L−リンゴ酸塩 図13E、L−酒石酸塩 図13F;PXRDおよびDSCプロフィールについての他の参照は、表1に記載されている。)。
【0057】
さらなる態様として、化合物937のマレイン酸塩は、形態Iおよび形態IIと名付けられた2つの異なる結晶形態にある結晶性固体として得ることができると分かった。形態Iは、化合物937のマレイン酸塩の高融点の結晶形態であり、安定な水和物形態として特徴付けられる(PXRDプロフィール:図1F;DSCプロフィール:図9F;PXRDおよびDSCプロフィールについての他の参照は、表1に記載されている。)。形態IIは、化合物937のマレイン酸塩の高融点の結晶形態であり、吸湿性が中等度の形態として特徴付けられる(PXRDプロフィール:図6C;DSCプロフィール:図10G;DVSプロフィール:図13C)。形態IIは、40℃/75%RHでの貯蔵などの、温度および湿度をさらに加えた条件に曝露させる作用により、形態Iへの変換を受ける(PXRDプロフィール:図6B;DSCプロフィール:図10F)。
【0058】
さらなる態様として、化合物937のコハク酸塩は、形態Iおよび形態IIと名付けられた2つの異なる結晶形態にある結晶性固体として得ることができると分かった。形態Iは、メタノール溶媒和物として特徴付けられる、化合物937のコハク酸塩の高融点の結晶形態である(PXRDプロフィール:図1Cおよび7A;DSCプロフィール:図9C)。形態IIは、化合物937のコハク酸塩の高融点の結晶形態であり、室内条件、ならびに40℃/75%RHでの貯蔵などの温度および湿度をさらに加えた条件で安定な、水和物形態として特徴付けられる(PXRDプロフィール:図7Bおよび7C;DSCプロフィール:図10Cおよび10D;DVSプロフィール:図13D)。
【0059】
さらに、化合物937のクエン酸塩は、結晶性固体として、化学量論比が0.5:1で得ることができると分かり(PXRDプロフィール:図1K;DSCプロフィール:図9K)、非晶質固体として、化学量論比が1:1で得ることができると分かった。
【0060】
化合物937の塩は、良好な水溶解性を示し、特に、フマル酸塩、L−リンゴ酸塩およびL−酒石酸塩の水溶解度は、1÷4mg/mlの範囲にある(さらなる詳細は、実施例4に報告されている。)。
【0061】
十分な水溶解度を呈示するという利点の他に、化合物937の塩、特に、フマル酸塩、L−リンゴ酸塩およびL−酒石酸塩は、また、明確な酸/塩基比で再現性良く製造するのに特に適切でもある。
【0062】
この発見は、これらの塩を、経口製剤ならびに静脈内投与製剤のための液体製剤での使用にとりわけ適するものにしている。
【0063】
その上、化合物937の塩は、好適な粉末のかさ密度を示し、特に、フマル酸塩、L−リンゴ酸塩およびL−酒石酸塩の粉末のかさ密度は、240mg/mlを超える(さらなる詳細は、実施例12に報告されている。)。
【0064】
すでに言及したように、化合物937の塩および遊離塩基形態である固体状態の特性の説明は、関連するPXRDおよびDSCの図の完全な一覧表と一緒に、表1に示される。
【0065】
【表1】
【0066】
好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のフマル酸塩の形態Iは、表1に記載したおよその2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図3に示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表2に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0067】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のフマル酸塩の形態IIは、表1に記載したおよその2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図16に示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表10に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0068】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のL−リンゴ酸塩の形態Iは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図4に示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表4に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0069】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のL−酒石酸塩の形態Iは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図5に示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表3に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0070】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のマレイン酸塩の形態Iは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図6Aに示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表5に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0071】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のマレイン酸塩の形態IIは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図6Cに示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表6に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0072】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のマレイン酸塩の形態I(メタノール溶媒和物)は、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図7Aに示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表7に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0073】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のマレイン酸塩の形態IIは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図7Cに示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表8に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0074】
別の好ましい実施形態では、本質的に純粋な化合物937の遊離塩基の形態Iは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図8に示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表9に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0075】
形態Iの結晶構造は、それ故、図9および図10に報告されたDSCプロフィール9Aおよび10A1の融解吸熱、ならびに図11に報告されたDSCプロフィール11Aおよび11B1によって特徴付けることができる。別の好ましい実施形態は、化合物937の遊離塩基の形態IIであり、図10および図11にそれぞれ報告されたDSCプロフィール10A2および11B2を示す。図9Aおよび10Aで報告されたサーモグラムで特徴付けられる遊離塩基のバッチは、図12で報告されたX線粉末回折図と同じX線粉末回折図を共有するので、DSCのより高い融解ピークは、形態IIに対応する。
【0076】
本質的に純粋とは、本発明の結晶形態の純度が少なくとも90%であることを意味する。より好ましくは、本発明の結晶形態の純度は、少なくとも95%であり、最も好ましくは、化合物937の酸付加塩または遊離塩基の重量に基づいて少なくとも99%が、本発明による結晶形態で存在する。
【0077】
DSCによる固体状態の特徴付けに関するさらなる態様として、PXRDにより結晶性物質として特徴付けられた、化合物937のフマル酸塩(半モルの対イオン)、塩酸塩、メシル酸塩およびリン酸塩は、複雑なDSCプロフィールを描く(図9)。このような塩は、脱溶媒和/脱水プロセスが関与する熱転移を受け、これらのDSC融解ピーク温度によって特徴付けられる脱溶媒/脱水形態の融解が引き続いて起こる。
【0078】
例えば分解が起こる場合、さらなる熱転移が続いて起こり得る。
【0079】
PXRDおよびDSCの結果は、表1、ならびに実施例6および7にさらに記載される。
【0080】
本発明のさらなる態様により、ヒトを含む哺乳動物に投与するために、当技術分野で既知の医薬品形態の任意の形態で、当技術分野で既知の方法に従って医薬組成物を製剤化することができる。
【0081】
例えば、医薬組成物は、薬学的に許容し得る希釈剤または担体と共に、本明細書で規定した化合物937の塩を含む。
【0082】
本発明の組成物は、経口使用に適する形態にあり得る。これらの形態の例は、錠剤、硬または軟カプセル剤、水性または油性懸濁液、乳液、分散性粉末または顆粒である。本発明の組成物は、また、局所使用に適する形態にもあり得る。これらの形態の例は、クリーム、軟膏、ゲルまたは水性もしくは油性の溶液または懸濁液である。本発明の組成物は、また、例えば微粉または液体エアロゾルなどの、吸入による投与に適した形態にもあり得る。本発明の組成物は、また、例えば微粉などの、吹送による投与に適した形態にもあり得る。本発明の組成物は、また、(例えば、静脈内、皮下、筋肉内向けの無菌の水性もしくは油性溶液などの)非経口投与に適した形態、または直腸投与の坐薬としての形態にもあり得る。本発明の組成物は、当技術分野で良く知られている従来の医薬賦形剤を使用して、従来の手順によって得ることができる。
【0083】
したがって、経口使用を目的とする組成物は、例えば、着色料、甘味料、香味料および保存料などの、1つ以上の添加物を含有し得る。
【0084】
錠剤の製剤における適切な薬学的に許容し得る賦形剤としては、例えば、乳糖、マンニトール、微結晶性セルロース、炭酸ナトリウム、アルファ化デンプン、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウムなどの充填剤;クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、クロスポビドンまたはグリコール酸ナトリウムスターチなどの造粒剤および崩壊剤;デンプン、微結晶性セルロース、ポビドン、ショ糖などの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコールまたはタルクなどの平滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;エチルまたはプロピルp−ヒドロキシベンゾエートなどの保存剤;ならびにアスコルビン酸などの酸化防止剤を挙げることができる。
【0085】
錠剤製剤は、無コート錠剤とすることができ、またはこれらの崩壊特性および引き続く消化管内での活性成分の吸収を変更するために、安定性もしくは外観を向上させるために、コーティングプロセスに送ることができる。無コート錠剤およびコーティング錠剤には、当技術分野で良く知られている従来のコーティング剤の使用および/または手順が必要である。経口使用のための組成物は、硬ゼラチンカプセルとして製剤化してよく、充填混合物を不活性な固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合した活性成分で調製し、上記で言及した錠剤製剤向けの賦形剤を含める。経口使用のための組成物は、また、軟ゼラチンカプセルとして製剤化してもよく、充填混合物は、水もしくはピーナッツ油、流動パラフィン、大豆油、ココナッツオイルなどの油、または好ましくはオリーブ油、または他の許容し得るビヒクルと混合される活性成分で調製される。経口使用のための組成物は、また、硬ゼラチンカプセルの形態にしてもよく、活性成分は、活性成分および例えば、酸化防止剤として親水性の担体、水溶性のビタミンE誘導体、ならびに場合によって他の賦形剤を含む、安定な固形製剤または半固形の分散製剤として製剤化される。水性懸濁液は、一般に、(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどの)ある懸濁化剤、(例えば、レシチン、ステアリン酸ポリオキシエチレンもしくはポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、ポリエチレンソルビタンモノオレエートなどの)ある分散剤または湿潤剤の添加で一緒にした微粉化された活性成分で調製される。水性懸濁液は、また、口当たりの良い経口剤を提供するために、保存料、酸化防止剤、着色料、香味料および/または甘味料などの1つ以上の適切な添加物を含有してもよい。油性懸濁液は、活性成分を(例えば、オリーブ油およびゴマ油などの)適切な植物油に懸濁することにより得ることができる。水の添加による水性懸濁液または水溶液の調製に適する、分散性粉末もしくは凍結乾燥粉末ならびに顆粒は、活性成分および適切な賦形剤(増量剤、分散剤または懸濁化剤および保存料)を含有する。
【0086】
製剤は、また、例えば、上記に言及した分散剤、湿潤剤および懸濁化剤の中で選択される適切な賦形剤を使用して、既知の手順に従って調製される無菌の注射可能な懸濁液、溶液、乳液としてもよい。
【0087】
クリーム、軟膏、ゲル、溶液または懸濁液などの局所製剤は、当技術分野で良く知られている従来の手順を用いて、活性成分を従来のビヒクルまたは希釈剤で製剤化することにより調製することができる。
【0088】
吹送による投与のための組成物は、例えば、50μm以下の適切な平均直径の粒子を含有する微粉とすることができ、粉末自体は、活性成分をそのままで構成される、または乳糖などの適切な担体で希釈されることにより構成される。
【0089】
吹送のための粉末は、ターボ吸入デバイスで使用される適切な活性量を含有するカプセルに製剤化される。吸入による投与のための組成物は、微粉化した固体を含有するエアロゾルまたは液滴を含有するエアロゾルのどちらかとして活性成分を投薬するように準備された、従来の加圧エアロゾルの形態にすることができる。
【0090】
従来のエアロゾル噴射剤およびデバイスを、活性成分の規定量を投薬するために使用することができる。硬ゼラチンカプセルの形態にある経口使用のための組成物の例は、実施例10に記載されている。
【実施例】
【0091】
次の実施例は、本発明を例示している。
温度は、摂氏温度(℃)で測定される。
別段の指示がない限り、反応または実験は室温で行われる。
略語:
RT:室温
RH:相対湿度
PXRD:粉末X線回折
DSC:示差走査熱量測定
DVS:動的蒸気収着
TGA:熱重量分析
【0092】
[実施例1]
化合物937の塩の小規模な調製
化合物937の遊離塩基の一定分量(約40÷50mg)を、メタノールとジクロロメタンの2:1混合物4−5mL中でRTにおいて溶解し、約10mg/mLの名目上の濃度を得た。
【0093】
次に、RTで、対イオンの1:1の化学量論量を、記載されている化合物937の遊離塩基溶液の4÷5mLに添加することで、いくつかの塩形成実験を行った。
【0094】
−30℃での冷却結晶化実験を、静止時間を約24−36時間として行った。
【0095】
得られた沈殿物を真空ろ過で採取し、真空下において40℃で乾燥した。
【0096】
結晶化が起こらなかった場合、窒素をゆるやかに流してRTで溶液を蒸発させることで濃縮し析出させた。
【0097】
粘着性の残渣から始めて、結晶性のサンプルまたは少なくとも粉末状のサンプルを単離するために、いくつかのケースでは、さらなる再結晶化のステップ(例えば、化合物をジエチルエーテル中で研和する)が必要であった。
【0098】
乾燥は、真空条件下において40℃で行った。
【0099】
化合物937および酸性対イオンの化学的同定は、(実施例9に記載されている)1H NMRで行った。
【0100】
[実施例2]
化合物937のL−酒石酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩およびL−リンゴ酸塩の2グラムスケールの調製
遊離塩基(500mg、0.939ミリモル)を、ジクロロメタン:メタノールが2:1の混合物(24mL)中に室温で溶解し、次に、メタノール中に溶解した1当量の酸性対イオン、またはフマル酸のケースでは96%のエタノール中に溶解した1当量の酸性対イオンを加えた。溶液を真空中で10mLに減少させ、次に、−20℃まで冷却した。析出した物質を次にろ過し、ジエチルエーテルで洗浄し、最後に真空下において40℃で少なくとも24時間乾燥した。
【0101】
[実施例3]
化合物937のフマル酸塩、形態Iの大規模な調製
かなりの量の化合物937の遊離塩基を、無水エタノール中で撹拌しながら30分間加熱還流して、出発物質(濃度約25g/L)を完全に溶解させた。
【0102】
その後、約1当量のフマル酸をエタノールに溶解し(濃度約29g/L)、遊離塩基溶液に加えた。
【0103】
完全に塩化するように30分間加熱還流を行った後で、加熱を中止した。
【0104】
混合物を約5℃に冷却し、この温度で約1時間撹拌し、ろ過し、無水エタノールで洗浄し、次に真空下で35−40℃で乾燥した。
【0105】
得られた物質は、化合物937のフマル酸塩のエタノール溶媒和物であった。
【0106】
[実施例4]
化合物937のフマル酸塩、形態IIの大規模な調製
かなりの量の化合物937の遊離塩基を、水中においてRTで撹拌し、30分間後に約1当量のフマル酸を加えた。
【0107】
懸濁液は、2時間撹拌し、次に4℃に冷却し、ろ過を行うまでこの温度を1時間維持する。
【0108】
得られた物質をフィルター上で冷水を用いて洗浄し、真空下で35−40℃で乾燥した。
【0109】
[実施例5]
化合物937の塩および遊離塩基の溶解度
実施例2に記載されているように調製した化合物937の塩の溶解度の決定を、次の手順により行った。化合物937の塩および遊離塩基の既知の量を、10mg/mlの目標濃度を考慮して過剰な固体がある条件で、水中においてRTで4時間撹拌した。得られた調製物をろ過し、HPLCにより分析した。
【0110】
ここで結果を、以下に報告する。
【0111】
上記に記載されている方法による化合物937の遊離塩基の水溶解度の値は、<0.1mg/mLである。
【0112】
上記に記載されている方法による化合物937のL−酒石酸塩の水溶解度の値は、1.9mg/mLである。
【0113】
上記に記載されている方法による化合物937のコハク酸塩の水溶解度の値は、5.8mg/mLである。
【0114】
上記に記載されている方法による化合物937のマレイン酸塩の水溶解度の値は、3.1mg/mLである。
【0115】
上記に記載されている方法による化合物937のL−リンゴ酸塩の水溶解度の値は、3.9mg/mLである。
【0116】
上記に記載されている方法による化合物937のフマル酸塩の水溶解度の値は、0.7mg/mLである。
【0117】
[実施例6]
粉末X線回折(PXRD)による分析結果
Thermo/ARL XTRA装置を用い、室温で2θを5°から34°の間にし、CuKα源(45kV、40mA、1.8kW−Kα1放射線、波長λ=1.54060オングストローム)を粉末サンプルに照射して行った粉末X線回折(PXRD)で、化合物937の塩を特徴付けた。
【0118】
走査速度は、1.20°/分(1ステップごとの計数時間が1秒で1ステップ0.020°)であった。
【0119】
X線回折図では、回折角度2θは水平軸(x軸)にプロットされ、線強度は垂直軸(y軸)にプロットされる。
【0120】
化合物937の塩および遊離塩基の結晶形態に関するX線粉末回折ピークを規定する段落において、表現「…表に報告されているおよその2θ角度における…」の中で用いられる用語「におけるおよその」は、ピークの正確な位置(すなわち、列挙された2θ角度の値)が絶対的な値であると解釈するべきではないことを示すために用いられるが、この理由は、当業者によって理解されるように、ピークの正確な位置は、機械ごとに、サンプルごとに僅かに変動し得る、または利用される測定条件の僅かな変更の結果として僅かに変動し得るからである。
【0121】
先行する段落では、化合物937の塩および遊離塩基の結晶形態により、図1、2、3、4、5、6、7、8、12、14および16に示されているX線粉末回折パターンと「実質的に」同じであるX線粉末回折パターンが提供され、表1、2、3、4、5、6、7、8、9および10に示されている2θ角度の値において、実質的に最も顕著なピークがあるということもまた述べられている。この文脈での用語「実質的に」の使用には、X線粉末回折パターンの2θ角度の値が、機械ごとに、サンプルごとに僅かに変動し得る、または測定条件の僅かな変更の結果として僅かに変動し得ることを示す意図もまたあり、この場合もやはり、図に示されているまたは表に引用されているピーク位置は、絶対的な値としてあるわけではないことが理解されるべきである。この点において、(例えば、機器および/またはサンプル調製などの)測定条件により、1つ以上の測定エラーがあるX線粉末回折パターンが得ることが当業界には既知である。とりわけX線粉末回折パターンの強度は、測定条件およびサンプル調製により増減し得ることが一般に知られている。
【0122】
例えば、X線粉末回折の当業者は、ピークの相対強度が、例えば30ミクロンを超えるサイズの粒子および単一ではないアスペクト比により影響されることがあり、これがサンプルの分析に影響を及ぼし得ることを認識している。
【0123】
当業者は、反射位置が、サンプルが回折計に搭載される正確な高さによって、および回折計のゼロ較正によって影響を受けることがあることもまた認識している。
【0124】
サンプルの表面平面性もまた、結果に影響を及ぼし得る。
【0125】
そのような訳で、当業者は、本明細書で提示された回折パターンのデータは、絶対的なものとみなすべきではないことを理解する(さらなる情報は、「Fundamentals of Powder Diffraction and Structural Characterization、PecharskyおよびZavalij、Kluwer Academic Publishers、2003」を参照されたし。)。したがって、本発明に記載されている化合物937の塩および遊離塩基の結晶形態が、例えば、図1に示したX線粉末回折パターンと同一のX線粉末回折パターンを提供する結晶に限定されないことを理解するべきであり、例えば、図1に示されているX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを提供する任意の結晶が、本発明の範囲に含まれることを理解するべきである。
【0126】
X線粉末回折の当業者は、X線粉末回折パターンの実質的な同一性を判定できる。
【0127】
一般に、X線粉末回折図の回折角度の測定エラーは、およそ2θ=0.5度以下(または、より適切にはおよそ2θ=0.2度以下)であり、図1、2、3、4、5、6、7、8、12、14および16のX線粉末回折パターンを検討する場合、ならびに本文中および表1、2、3、4、5、6、7、8、9および10の中の両方に参照されているピーク位置を解釈する場合、この程度の測定エラーを考慮に入れるべきである。
【0128】
したがって、例えば、化合物937の塩および遊離塩基のX線粉末回折パターンで、およそ2θ=20.1度(または、他に言及される角度の任意の1つ)において少なくとも1つの特定のピークがあると述べられる場合、これは、2θ=20.1度プラスもしくはマイナス0.5度または2θ=20.1度プラスもしくはマイナス0.2度として解釈することができる。
【0129】
図1では、実施例1に記載されているような、小規模で単離された化合物937の塩および遊離塩基のX線粉末回折図が報告されている。
【0130】
図2では、実施例2に記載されているような、大規模で得られた化合物937の塩:L−酒石酸塩の形態I(B)、フマル酸塩の形態I(C)およびL−リンゴ酸塩の形態I(D)のX線粉末回折図の例が報告されている。
【0131】
化合物937のフマル酸塩の形態I、L−リンゴ酸塩の形態I、L−酒石酸塩の形態I、マレイン酸塩の形態I(A−B)、マレイン酸塩の形態II(C)、コハク酸塩の形態I(A)およびコハク酸塩の形態II(B−C)のX線回折ピークは、図3、4、5、6および7にそれぞれ報告されている。
【0132】
図8では、化合物937の遊離塩基の形態IのX線回折ピークが報告されている。
【0133】
図12では、図9、図10および図11に報告されているDSCプロフィール(DSCデータは、実施例6でもまた検討されている)により特徴付けられる、同じバッチに関係する化合物937の遊離塩基の形態I(A−B)のX線回折ピークが報告されている。化合物937のフマル酸塩の形態I、L−酒石酸塩の形態I、L−リンゴ酸塩の形態I、マレイン酸塩の形態Iおよびマレイン酸塩の形態II、コハク酸塩の形態I、コハク酸塩の形態II、遊離塩基ならびにフマル酸塩の形態IIの主要なX線回折ピークの2θ角度が、表2、3、4、5、6、7、8、9および10にそれぞれ報告されている。
【0134】
実施例3に従って得られた化合物937のフマル酸塩の形態Iの大規模なバッチのPXRDプロフィールは、図14に報告されている。
【0135】
実施例4に従って得られた化合物937のフマル酸塩の形態IIの大規模なバッチのPXRDプロフィールは、図16に報告されている。
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【表7】
【0142】
【表8】
【0143】
【表9】
【0144】
【表10】
【0145】
[実施例7]
示差走査熱量測定(DSC)による分析結果
DSC分析を、Perkin−Elmer DSC−7装置で行った。DSC用アルミニウム製パンに、サンプル約2mgを充填した。分析の温度範囲は、30℃と最大値300℃の間とした。サンプルを窒素フロー下で加熱速度10℃/分において分析した。
【0146】
図9により、実施例1に記載されているように小規模で単離された化合物937の塩および遊離塩基のDSCサーモグラムが、報告されている。
【0147】
図10により、元の遊離塩基と比較した、実施例2に記載されているようにより大規模で単離された化合物937の塩のDSCサーモグラムが報告され、これには既知の結晶の代替形態のプロフィールが含まれている。
【0148】
特に、DSCプロフィールの9A、10A1、11Aおよび11B1は、遊離塩基の形態Iに関係し、他方、DSCプロフィールの10A2および11B2は形態IIに関係している。
【0149】
実施例3に従って得られた化合物937のフマル酸塩の形態Iの大規模なバッチのDSCプロフィールは、図15に報告されている。分解を伴う溶融吸熱は、およそ260℃(ピーク温度)で観察された。DSCの開始温度値および/またはピーク温度値は、機械によって、方法によってもしくはサンプルによって僅かに変動し得るので、引用された値は、絶対的なものと解釈されるべきではないことを理解されたい。実際、観察された温度は、温度変化の速度、ならびにサンプルの調製技法および採用される特定の機器に左右される。このような異なる条件を適用して得られた温度値は、プラスまたはマイナス約4℃変動し得ることを推定し考慮に入れられたい。
【0150】
[実施例8]
熱重量分析(TGA)による分析結果
TGA分析を、Perkin−Elmer TGA−7装置で行った。アルミニウム製パンに5÷10mgのサンプルを充填した。分析の温度範囲は、30℃と最大値約250℃の間であった。サンプルを、窒素フロー下で加熱速度2℃/分において分析した。
【0151】
[実施例9]
動的蒸気収着(DVS)による分析結果
化合物937の塩および遊離塩基の水分吸収を、かかる物質のサンプルをDVS1000(SMS)による吸湿性試験に送ることで調べた。装置は「環境制御型微量てんびん」であり、計量したサンプルを、一定の制御された温度においてプログラムで変化させた相対湿度(RH)に曝露する。測定されたパラメーター(重量、時間およびRH)はExcelワークシートに報告され、試験を行ったRH範囲にわたる吸湿曲線が得られた。RHが0%と90%の間の収着/脱着サイクルを、25℃の制御温度で実施することができる。RHの漸進的な変化は10%であり、これらの変化は、サンプル重量の平衡化においてソウトウェアで操作される。この条件は、重量変化パーセントの一定速度、例えば0.005%/分において規定することができる。実験結果は、DVS等温線レポートおよびDVS等温線プロットとして両方に報告される。
【0152】
実施例2に記載されているように調製した化合物937の好ましい塩の、元の遊離塩基と比較したDVSプロフィールの例は、図13に報告されている。
【0153】
DVSで収着が増減する間の化合物937のフマル酸塩の水分吸収の例は、ここで次の表11にまとめられる。
【0154】
【表11】
【0155】
[実施例10]
NMRによる同定分析
1H NMR実験を、499.8MHzで作動する分光計Varian Inova 500において、28℃の一定温度で行った。各サンプルの少量を、0.75mLのDMSO−d6に溶解し、引き続く分析のために5mmのNMR管に移した。当該分析により、分子および対イオンの両方の予測される化学構造を確認することが可能になる。
【0156】
[実施例11]
経口使用のための剤形のパーセント組成
【0157】
【表12】
【0158】
[実施例12]
粉末かさ密度
化合物937のフマル酸塩、L−リンゴ酸塩およびL−酒石酸塩ならびに遊離塩基の粉末かさ密度の決定を、おおまかに固めた活性成分を硬ゼラチンカプセルに手作業で充填することによって行った。
【0159】
かさ密度は、おおまかに固めた活性成分から成るカプセルの充填量を、硬ゼラチンカプセルの既知の呼び容積で割ることにより計算した。充填量は、充填したカプセルの総重量と空のカプセルの風袋重量との差として計算した。
【0160】
フマル酸塩、L−リンゴ酸塩およびL−酒石酸塩は、粉末かさ密度の値が240mg/mlを超えることを特徴とし、他方、遊離塩基の当該密度は約90mg/mlである。
【0161】
当業者は、上記に記載されているデータおよび実施例から、本発明に記載されている化合物937の新規な塩が、治療における新しい向上した価値のある手段であることを理解する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、plk阻害剤の結晶性で水溶性の新規な塩、これらの調製方法、このような新規な塩の形態の水和物、溶媒和物および多形体、治療におけるこれらの有用性およびこれらを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、ヒトにおける主要な死因であり、手術、放射線および化学療法は、がんと闘う有用な手段である。
【0003】
PLK1は、適切な細胞分裂の進行に必須のセリンスレオニンキナーゼである。
【0004】
PLK1の発現は、増殖中の全ての正常細胞で見られるが、他方、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、胃がんおよび結腸がんを含む一連の腫瘍では、過剰発現が観察される。がん細胞においてRNAiによりPLK1が枯渇すると、増殖が阻害され、生存能が低下し、結果としてDNA量が4Nである細胞周期の停止をもたらし、その後にアポトーシスが続くことが観察される。ヒトでは、4種のPLKファミリーメンバーが記載されているが、異種移植モデルにおいてG2/M細胞周期のブロックおよび腫瘍細胞株のアポトーシスおよび腫瘍退縮を誘発させるためには、酵素活性の阻害またはPLK1の枯渇で十分である。加えて、他のPLKに関して腫瘍抑制機能が記載されており、PLK2およびPLK3は、ニューロンの様な非増殖性の分化した有糸分裂後細胞で発現されることが報告されているが、PLK1では報告されておらず、PLK1に特異的な化合物に対しては、より安全なプロフィールの可能性が示されている(例えば、Strebhardt Kら、Nat Rev Cancer 2006;6(4):321−30を参照されたい。)。
【0005】
がん治療における有糸分裂阻害剤の使用は、広範囲のヒトのがん治療に対して広く受けられている臨床戦略である(例えば、Jackson JRら、Nature Reviews Cancer 2007;7、107−117を参照されたし。)。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)ならびにビンカアルカロイド(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)は、有糸分裂を経て進行する細胞において、破局的な結果を伴う微小管の安定化または不安定化のいずれかにより作用する。これらは、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、睾丸がん、神経芽細胞腫およびウィルムス腫瘍を含む数種類の腫瘍に対する一次選択治療であり(ビンカアルカロイド)、シスプラチン抵抗性の卵巣がん、乳がん、肺がんおよび食道がんでの二次選択治療である(タキサン)。しかし、細胞遊走、食細胞活動および軸索輸送などのプロセスにおける微小管の役割により、末梢神経障害などの特定の毒性がこれらの薬剤でしばしば観察されている。
【0006】
特許出願のWO2008074788(Nerviano Medical Sciences Srl.)に記載され特許出願されたピラゾロキナゾリンは、PLK1の強力な阻害剤であり、それ故、増殖性疾患、特にがんの治療において有用である。
【0007】
次式:
【0008】
【化1】
を有する化合物937は、上記で言及した特許出願に記載され特許請求された化合物の1つである。この調製、これを含む医薬組成物および医学的用途もまた、そこに記載され特許請求されている。
【0009】
化合物937は、1−(2−ヒドロキシ−エチル)−8−[5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−2−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ]−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−h]キナゾリン−3−カルボキサミドであり、この好ましい調製が、上記で言及した特許出願の実施例38および40に記載されている。
【0010】
化合物937は、結晶性の水に溶けにくい化合物であり、水溶解度は0.1mg/ml未満を示す。
【0011】
化合物937の溶解度は、5%デキストロース溶液中10%ポリソルベート80では約4mg/mlであり、5%デキストロース溶液中50%水性ポリエチレングリコール400では、約7mg/mlであり、その場での塩酸塩またはメシル酸塩として調製した場合、約8÷9mg/mlである。化合物937は、また、およそ2÷8mg/mlの範囲におけるメトセル水性懸濁液にも適していた。
【0012】
得られた遊離塩基は、初期の薬理学的評価および毒性学的評価中の投与を可能にするために、始めに、その場の塩またはメトセル懸濁液として製剤化された。初期の製剤化手法の問題は解決されたが、適用された製剤化手法は、経口製剤の開発には適していなかった。
【0013】
医薬品有効成分の前臨床研究は、適切なビヒクル中に有効成分が溶解できることを必要としている。この目的は通常、無菌注射製剤の調製に適するものとするために化合物を水溶性にすることにあり、硬ゼラチンカプセル剤および短時間作用型の錠剤などの固体剤形に含まれる原薬の迅速な溶解にも、適切な水溶性が必要とされる。
【0014】
観察された化合物937の低い溶解性は、これを製剤化し投与することを困難にしている。
【0015】
さらに、遊離塩基は、25℃、相対湿度(RH)90%における水分の最大吸収が約1%を示すことから、僅かに吸湿性である。
【0016】
医薬品粉末にとって、吸湿もまた重大な懸念事項である。湿気は、例えば、薬物、賦形剤および製剤の、物理的特性、化学的特性ならびに製造特性に大きな影響を与えることが分かっている。吸湿は、また、包装、貯蔵、取り扱いおよび有効期間に関連する決定を行う際の重要な要素でもあり、開発の成功には吸湿性の正しい理解が求められる。
【0017】
例えば、固体において、相対湿度が臨界値を超え、含水率が急速に上昇すると、無水形態から水和物形態への変換が観察され得る。このことは、薬物自体の物理的特性および薬剤学的特性に影響を与えるばかりではなく、この生物薬剤学的な視点にも影響を与える。その上、水和物形態は、通常、均一な無水物形態と比較して溶解しにくい傾向があり、活性化合物自体の溶解速度の特性および消化管を経由するこの吸収プロフィールに対しても、潜在的な有害作用を及ぼすことが良く知られている。同様に、結晶形態から非晶質形態への変換が湿気の存在下で観察することができ、物理的安定性の点で潜在的な欠点がある。非晶質の活性原薬が潮解性である場合、例えばこれが溶解するまで大気から比較的大量の水分を吸収することがあり、他方、熱力学的に活性化した非晶質構造は、より化学分解されやすく、他の化学種と化学的相互作用を起こす傾向があるので、この化学的安定性も影響を受けることがある。したがって、製剤および活性成分の両方の性能ならびに有効性が著しく変化し得る。
【0018】
加えて、遊離塩基の粉末のかさ密度は低く、約90mg/mlである。
【0019】
粉末のかさ密度などの好都合なバルク特性も、また望ましい。粉末のかさ密度がより高いことは、粒子形態がより適切であることに関係しており、これは、流動性を向上させ、結果として医薬組成物の特性の向上をもたらす。粉末の密度がより高いと、例えば、より適切なカプセル製剤の製造工程が可能になる、または同様なカプセルサイズ内の用量強度をより高くすることでき、これには、特に初期の臨床相中に投与されるカプセルの数および/または大きさを低減するという具体的な可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2008074788号(Nerviano Medical Sciences Srl.)
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Strebhardt Kら、Nat Rev Cancer 2006;6(4):321−30
【非特許文献2】Jackson JRら、Nature Reviews Cancer 2007;7、107−117
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、十分な溶解性、低い吸湿性、結晶化度および好適な粉末のかさ密度などの、良好で再現可能な、物理化学的特性およびバルク特性を備えているだけでなく、固体状態であり、可変の貯蔵温度、湿度および照明条件において化学的に安定であり、適正な生物薬剤学的挙動を確実にし、より安全で効果的な経口投与を可能にする、化合物937の水溶性の塩が治療において必要とされている。
【0023】
当業者に良く知られているように、塩の形成が必ずしも溶解度の亢進をもたらすとは限らない(例えば、Shozo Miyazakiら、International Journal of Pharmaceutics 1980;6(1)、77−85を参照されたし)だけでなく、溶解度および/または溶解の点、および/または対イオン効果を受けやすいという点における種々の塩の挙動は、それぞれの薬物−対イオンの結合の特性により異なることもある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
驚くべきことに、本発明者らは、向上した物理化学的特性およびバルク特性を有する化合物937の新規の塩、ならびに新規の結晶形態の塩を提供することで、上記の技術的問題を解決した。実際、当該新規の塩は、結晶性で、水溶解度が高い急速に溶解する固体であり、その上、これらの塩は、吸湿性が低いまたは中等度であるので、取り扱い、貯蔵および剤形などの重要な利点を実質的に生じさせ、最終的に、他の全ての利点、特にその場での塩またはメトセル懸濁液として製剤化した場合の遊離塩基によって呈示される治療上の利点を備えていることに加え、これらの塩の粉末のかさ密度は、当該遊離塩基のそれよりも驚くべきことに高い。
【0025】
驚くべきことに、化合物937の新規な塩の形態は、遊離塩基であるだけでなく結晶性であることが見出され証明された。結晶性粉末であるという特性は、これらの形態を特に医薬開発に適したものにしている。
【0026】
本発明は、また、以下に記載した添付図面を参照しても説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】x軸で2θ角(度)を報告し、他方、強度(CPS)がy軸で報告される、化合物937の遊離塩基およびこの結晶塩のX線回折図である。特に、当該スペクトルは、化合物937の遊離塩基の形態I(A)および次の塩:L−酒石酸塩の形態I(B)、コハク酸塩の形態I(C)、リン酸塩の形態I(D)、メシル酸塩の形態I(E)、マレイン酸塩の形態I(F)、L−リンゴ酸塩の形態I(G)、塩酸塩の形態I(H)、フマル酸塩−半モルの対イオンの形態I(I)、フマル酸塩の形態I(J)、クエン酸塩−半モルの対イオンの形態I(K)、ベンゼンスルホン酸塩の形態I(L)、L−アスパラギン酸塩−半モルの対イオンの形態I(M)を表す。
【図2】化合物937の遊離塩基の形態I(A)および次の塩:L−酒石酸塩の形態I(B)、フマル酸塩の形態I(C)、L−リンゴ酸塩の形態I(D)のX線回折図である。
【図3】化合物937のフマル酸塩の形態IのX線回折図である。
【図4】化合物937のL−リンゴ酸塩の形態IのX線回折図である。
【図5】化合物937のL−酒石酸塩の形態IのX線回折図である。
【図6】化合物937のマレイン酸塩の形態I(A−B)およびマレイン酸塩の形態II(C)のX線回折図である。
【図7】化合物937のコハク酸塩の形態I(A)およびコハク酸塩の形態II(B−C)のX線回折図である。
【図8】化合物937の遊離塩基、形態IのX線回折図である。
【図9】化合物937の遊離塩基の形態I(A)および次の塩:L−酒石酸塩の形態I(B)、コハク酸塩の形態I(C)、リン酸塩の形態I(D)、メシル酸塩の形態I(E)、マレイン酸塩の形態I(F)、L−リンゴ酸塩の形態I(G)、塩酸塩の形態I(H)、フマル酸塩(半モルの対イオン)の形態I(I)、フマル酸塩の形態I(J)、クエン酸塩の形態I(K)、ベンゼンスルホン酸塩の形態I(L)、L−アスパラギン酸塩(半モルの対イオン)の形態I(M)のDSCサーモグラムである。 当該サーモグラムは、x軸で温度(℃)を報告し、他方、熱流量(mW)はy軸で報告される。
【図10】化合物937の遊離塩基の形態I(A1)、遊離塩基の形態II(A2)、L−酒石酸塩の形態I(B)、コハク酸塩の形態II(C−D)、フマル酸塩の形態I(E)、マレイン酸塩の形態I(F)、マレイン酸塩の形態II(G)およびL−リンゴ酸塩の形態I(H)のDSCサーモグラムである。
【図11】化合物937の遊離塩基の形態I(A−B1)および遊離塩基の形態II(B2)のDSCサーモグラムの詳細を表す図である。
【図12】化合物937の遊離塩基の形態I(A−B)のバッチのX線回折図であり、図11で報告されたDSCプロフィールでもまた特徴付けられる図である。
【図13】化合物937の遊離塩基の形態I(A)、フマル酸塩の形態I(B)、マレイン酸塩の形態II(C)、コハク酸塩の形態II(D)、L−リンゴ酸塩の形態I(E)、L−酒石酸塩の形態I(F)のDVSプロフィール(吸湿性試験)を示す図である。
【図14】化合物937のフマル酸塩の形態Iである大規模バッチのX線回折図である。
【図15】化合物937のフマル酸塩の形態Iである大規模バッチのDSCプロフィールを示す図である。
【図16】化合物937のフマル酸塩形態IIである大規模バッチのX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1の態様では、本発明は、L−酒石酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、L−リンゴ酸塩、塩酸塩、フマル酸塩(半モルの対イオン)、フマル酸塩、クエン酸塩(半モルの対イオン)、ベンゼンスルホン酸塩およびL−アスパラギン酸塩(半モルの対イオン)から選択される化合物937の新規な塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物に関する。
【0029】
詳細には、本発明は、L−酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、L−リンゴ酸塩およびフマル酸塩から選択される化合物937の新規な塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物に関する。
【0030】
より詳細には、本発明は、L−酒石酸塩、L−リンゴ酸塩およびフマル酸塩から選択される化合物937の新規な塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物に関する。
【0031】
さらにより詳細には、本発明は、化合物937のフマル酸塩の新規な結晶形態、ならびにこの溶媒和物および水和物に関する。
【0032】
最も詳細には、本発明は、化合物937のフマル酸塩の溶媒和物に関する。
【0033】
化合物937のそのような塩は、適切な溶媒に溶解した遊離塩基に対する対イオンの溶媒または水溶液の所望の化学量論的な添加によって、既知の類似方法により得ることができる。そのような溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、ジクロロメタンおよびこれらの混合物から選択される有機溶媒、特に無水の有機溶媒である。必要な場合、例えば、ジエチルエーテル、n−ヘキサンまたはシクロヘキサンである、無水の非極性溶媒中での添加または再処理により、得られた塩を沈殿または結晶化させることが好都合であり得る。
【0034】
本発明によると、塩の定義には、これらの結晶形態、これらの溶媒和物および水和物もまた含まれる。
【0035】
本明細書で用いられる用語「溶媒和物」とは、溶媒和によって形成される化合物、例えば、溶媒分子と溶質分子または溶質イオンとの組合せである化合物を意味する。良く知られている溶媒分子としては、水、アルコールおよび他の極性有機溶媒が挙げられる。アルコールには、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールおよびt−ブタノールが含まれる。アルコールには、また、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)などの重合アルコールも含まれる。
【0036】
本明細書で用いられる用語「水和物」とは、溶媒和によって形成される化合物を意味し、溶媒は水である。
【0037】
他に特に規定がなければ、「溶媒和物」および「水和物」に言及する場合、本発明には、化学量論的な化合物および非化学量論的な化合物の両方が含まれる。
【0038】
化学量論的な溶媒和物は、化合物の分子に対して溶媒分子が一定の比にある。このことは、典型的には、溶媒と化合物分子との間の結合相互作用に起因している。非化学量論的な溶媒和物では、溶媒は、化合物の分子に対する一定の比では存在しておらず、しばしば変動し得る。非化学量論的な溶媒和物では、溶媒は、結晶格子内の隙間またはチャネルに存在することが多い。化学量論的な水和物は、化合物の分子に対して水分子が一定の比にある。このことは、典型的には、水と化合物分子との間の結合相互作用に起因している。非化学量論的な水和物では、水は、化合物の分子に対して一定の比では存在しておらず、しばしば変動し得る。非化学量論的な水和物では、水は、結晶格子内の隙間またはチャネルに存在することが多い。
【0039】
次にさらなる態様において、本発明は、化合物937の遊離塩基としての新規な安定結晶形態に関する。
【0040】
本発明のさらなる目的は、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態を活性成分として含み、薬学的に許容し得る賦形剤および/または担体を含む、医薬組成物を提供することにある。
【0041】
本発明のさらなる目的は、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態を、医薬品として使用するために提供することにある。
【0042】
本発明のさらなる目的は、PLKの阻害によって治療可能な病態に罹患しているヒトを含む哺乳動物を治療する際に、単独でまたは他の治療剤と併用して使用する、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態を提供することにある。
【0043】
加えて、本発明は、細胞増殖性障害、ウイルス感染症、自己免疫疾患および神経変性障害などの、PLKの阻害によって治療可能な病態に罹患しているヒトを含む哺乳動物を治療する際に使用する、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態に関する。
【0044】
加えて、本発明は、細胞増殖性障害ががんであることを特徴とし、PLKの阻害によって治療可能な病態に罹患しているヒトを含む哺乳動物を治療する際に使用する、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態に関する。
【0045】
本発明のさらなる目的は、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む、PLKの阻害を必要とするヒトを含む前記哺乳動物の治療方法を提供することにある。
【0046】
最後に、本発明の別の目的は、PLKの阻害によって治療可能な病態の治療向けの医薬品の製造のために、単独でまたは他の治療剤と併用して、上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態の使用を提供することにある。
【0047】
用語「治療可能な病態」とは、本発明に従った治療により、病態の寛解または少なくとも状態の寛解が提供され、治療の下で哺乳動物の生活の質が向上することを意味する。
【0048】
そのような病態の例は、特に種々のがんであり、これらには、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、小細胞肺がんを含む肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌、前立腺癌および皮膚癌などの扁平上皮細胞癌を含む癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含むリンパ系の造血器腫瘍;急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群ならびに前骨髄球性白血病を含む骨髄細胞系の造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫およびシュワン細胞腫を含む中枢神経系ならびに末梢神経系の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形腫、骨肉腫、色素性乾燥症、角化棘細胞腫、甲状腺濾胞がんおよびカポジ肉腫を含む他の腫瘍を挙げることができる。このような病態の例は、また、例えば、良性前立腺肥大、家族性大腸ポリープ症、神経線維腫症、乾癬、アテローム硬化症に伴う血管平滑筋細胞の増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎、ならびに術後狭窄および再狭窄などの特異的な細胞増殖性障害でもある。
【0049】
化合物937の塩の有効量は、疾患、障害の重症度および治療される患者の状態により変動し得る。したがって、医師は、それぞれの患者に対していつもの通りに至適用量を設定しなければならない。いずれにしても、有効量の範囲は、1日1回から5回で、投与1回当たり(遊離塩基として計算した)約5から約500mgとすることができる。
【0050】
上記で規定した化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態は、経口で容易に吸収され、それ故、経口で投与されるのが好ましい。
【0051】
言うまでもなく、本発明の化合物は、任意の投与経路、例えば、非経口経路、局所経路、直腸経路および経鼻経路によって投与され得る。
【0052】
さらなる態様として、化合物937のフマル酸塩は、形態Iと名付けた結晶形態にある結晶性固体として得られることが分かった。形態Iは、化合物937のフマル酸塩の高融点の結晶形態であり、25℃/90%RHにおいて1.6%の中等度の水分吸収を示し、水分吸収は、25℃の一定温度でRHを低下させることにより逆転可能である。
【0053】
(PXRDプロフィール:図1J;DSCプロフィール:図9J;DVSプロフィール:図13Bおよび表11−PXRDおよびDSCプロフィールについての他の参照は、表1に記載される。)。
【0054】
化合物937のフマル酸塩は、結晶性固体として、化学量論比が0.5:1で得ることができると分かった(PXRDプロフィール:図1I;DSCプロフィール:図9I)。
【0055】
化合物937のフマル酸塩は、形態IIと名付けられた結晶形態にある結晶性固体として得ることができる(PXRDプロフィール:図16)。
【0056】
さらなる態様として、化合物937のL−リンゴ酸塩および化合物937のL−酒石酸塩は、両方とも形態Iと名付けられた結晶形態にある結晶性固体として得ることができると分かった。化合物937のL−リンゴ酸塩および化合物937のL−酒石酸塩は、吸湿性が中等度であり、両塩は、水分吸収が25℃/90%RHにおいてそれぞれ約4.7%および5.8%を示す。含水率は、室内条件でかなり安定であり、それ故、2つの塩は安定的な水和物と考えることができる(PXRDプロフィール:L−リンゴ酸塩 図1G、L−酒石酸塩 図1B;DSCプロフィール L−リンゴ酸塩 図9G、L−酒石酸塩 図9B;DVSプロフィール:L−リンゴ酸塩 図13E、L−酒石酸塩 図13F;PXRDおよびDSCプロフィールについての他の参照は、表1に記載されている。)。
【0057】
さらなる態様として、化合物937のマレイン酸塩は、形態Iおよび形態IIと名付けられた2つの異なる結晶形態にある結晶性固体として得ることができると分かった。形態Iは、化合物937のマレイン酸塩の高融点の結晶形態であり、安定な水和物形態として特徴付けられる(PXRDプロフィール:図1F;DSCプロフィール:図9F;PXRDおよびDSCプロフィールについての他の参照は、表1に記載されている。)。形態IIは、化合物937のマレイン酸塩の高融点の結晶形態であり、吸湿性が中等度の形態として特徴付けられる(PXRDプロフィール:図6C;DSCプロフィール:図10G;DVSプロフィール:図13C)。形態IIは、40℃/75%RHでの貯蔵などの、温度および湿度をさらに加えた条件に曝露させる作用により、形態Iへの変換を受ける(PXRDプロフィール:図6B;DSCプロフィール:図10F)。
【0058】
さらなる態様として、化合物937のコハク酸塩は、形態Iおよび形態IIと名付けられた2つの異なる結晶形態にある結晶性固体として得ることができると分かった。形態Iは、メタノール溶媒和物として特徴付けられる、化合物937のコハク酸塩の高融点の結晶形態である(PXRDプロフィール:図1Cおよび7A;DSCプロフィール:図9C)。形態IIは、化合物937のコハク酸塩の高融点の結晶形態であり、室内条件、ならびに40℃/75%RHでの貯蔵などの温度および湿度をさらに加えた条件で安定な、水和物形態として特徴付けられる(PXRDプロフィール:図7Bおよび7C;DSCプロフィール:図10Cおよび10D;DVSプロフィール:図13D)。
【0059】
さらに、化合物937のクエン酸塩は、結晶性固体として、化学量論比が0.5:1で得ることができると分かり(PXRDプロフィール:図1K;DSCプロフィール:図9K)、非晶質固体として、化学量論比が1:1で得ることができると分かった。
【0060】
化合物937の塩は、良好な水溶解性を示し、特に、フマル酸塩、L−リンゴ酸塩およびL−酒石酸塩の水溶解度は、1÷4mg/mlの範囲にある(さらなる詳細は、実施例4に報告されている。)。
【0061】
十分な水溶解度を呈示するという利点の他に、化合物937の塩、特に、フマル酸塩、L−リンゴ酸塩およびL−酒石酸塩は、また、明確な酸/塩基比で再現性良く製造するのに特に適切でもある。
【0062】
この発見は、これらの塩を、経口製剤ならびに静脈内投与製剤のための液体製剤での使用にとりわけ適するものにしている。
【0063】
その上、化合物937の塩は、好適な粉末のかさ密度を示し、特に、フマル酸塩、L−リンゴ酸塩およびL−酒石酸塩の粉末のかさ密度は、240mg/mlを超える(さらなる詳細は、実施例12に報告されている。)。
【0064】
すでに言及したように、化合物937の塩および遊離塩基形態である固体状態の特性の説明は、関連するPXRDおよびDSCの図の完全な一覧表と一緒に、表1に示される。
【0065】
【表1】
【0066】
好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のフマル酸塩の形態Iは、表1に記載したおよその2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図3に示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表2に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0067】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のフマル酸塩の形態IIは、表1に記載したおよその2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図16に示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表10に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0068】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のL−リンゴ酸塩の形態Iは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図4に示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表4に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0069】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のL−酒石酸塩の形態Iは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図5に示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表3に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0070】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のマレイン酸塩の形態Iは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図6Aに示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表5に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0071】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のマレイン酸塩の形態IIは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図6Cに示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表6に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0072】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のマレイン酸塩の形態I(メタノール溶媒和物)は、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図7Aに示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表7に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0073】
別の好ましい実施形態では、化合物937の本質的に純粋な1:1のマレイン酸塩の形態IIは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図7Cに示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表8に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0074】
別の好ましい実施形態では、本質的に純粋な化合物937の遊離塩基の形態Iは、表1に記載した2θ値(度)で有意なピーク強度を有する、図8に示したX線回折図を描く。その他の物質(他の結晶形態、賦形剤)を含まないサンプルでは、表9に記載したおよその2θ値(度)で回折ピークを観察することが可能なはずである。
【0075】
形態Iの結晶構造は、それ故、図9および図10に報告されたDSCプロフィール9Aおよび10A1の融解吸熱、ならびに図11に報告されたDSCプロフィール11Aおよび11B1によって特徴付けることができる。別の好ましい実施形態は、化合物937の遊離塩基の形態IIであり、図10および図11にそれぞれ報告されたDSCプロフィール10A2および11B2を示す。図9Aおよび10Aで報告されたサーモグラムで特徴付けられる遊離塩基のバッチは、図12で報告されたX線粉末回折図と同じX線粉末回折図を共有するので、DSCのより高い融解ピークは、形態IIに対応する。
【0076】
本質的に純粋とは、本発明の結晶形態の純度が少なくとも90%であることを意味する。より好ましくは、本発明の結晶形態の純度は、少なくとも95%であり、最も好ましくは、化合物937の酸付加塩または遊離塩基の重量に基づいて少なくとも99%が、本発明による結晶形態で存在する。
【0077】
DSCによる固体状態の特徴付けに関するさらなる態様として、PXRDにより結晶性物質として特徴付けられた、化合物937のフマル酸塩(半モルの対イオン)、塩酸塩、メシル酸塩およびリン酸塩は、複雑なDSCプロフィールを描く(図9)。このような塩は、脱溶媒和/脱水プロセスが関与する熱転移を受け、これらのDSC融解ピーク温度によって特徴付けられる脱溶媒/脱水形態の融解が引き続いて起こる。
【0078】
例えば分解が起こる場合、さらなる熱転移が続いて起こり得る。
【0079】
PXRDおよびDSCの結果は、表1、ならびに実施例6および7にさらに記載される。
【0080】
本発明のさらなる態様により、ヒトを含む哺乳動物に投与するために、当技術分野で既知の医薬品形態の任意の形態で、当技術分野で既知の方法に従って医薬組成物を製剤化することができる。
【0081】
例えば、医薬組成物は、薬学的に許容し得る希釈剤または担体と共に、本明細書で規定した化合物937の塩を含む。
【0082】
本発明の組成物は、経口使用に適する形態にあり得る。これらの形態の例は、錠剤、硬または軟カプセル剤、水性または油性懸濁液、乳液、分散性粉末または顆粒である。本発明の組成物は、また、局所使用に適する形態にもあり得る。これらの形態の例は、クリーム、軟膏、ゲルまたは水性もしくは油性の溶液または懸濁液である。本発明の組成物は、また、例えば微粉または液体エアロゾルなどの、吸入による投与に適した形態にもあり得る。本発明の組成物は、また、例えば微粉などの、吹送による投与に適した形態にもあり得る。本発明の組成物は、また、(例えば、静脈内、皮下、筋肉内向けの無菌の水性もしくは油性溶液などの)非経口投与に適した形態、または直腸投与の坐薬としての形態にもあり得る。本発明の組成物は、当技術分野で良く知られている従来の医薬賦形剤を使用して、従来の手順によって得ることができる。
【0083】
したがって、経口使用を目的とする組成物は、例えば、着色料、甘味料、香味料および保存料などの、1つ以上の添加物を含有し得る。
【0084】
錠剤の製剤における適切な薬学的に許容し得る賦形剤としては、例えば、乳糖、マンニトール、微結晶性セルロース、炭酸ナトリウム、アルファ化デンプン、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウムなどの充填剤;クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、クロスポビドンまたはグリコール酸ナトリウムスターチなどの造粒剤および崩壊剤;デンプン、微結晶性セルロース、ポビドン、ショ糖などの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコールまたはタルクなどの平滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;エチルまたはプロピルp−ヒドロキシベンゾエートなどの保存剤;ならびにアスコルビン酸などの酸化防止剤を挙げることができる。
【0085】
錠剤製剤は、無コート錠剤とすることができ、またはこれらの崩壊特性および引き続く消化管内での活性成分の吸収を変更するために、安定性もしくは外観を向上させるために、コーティングプロセスに送ることができる。無コート錠剤およびコーティング錠剤には、当技術分野で良く知られている従来のコーティング剤の使用および/または手順が必要である。経口使用のための組成物は、硬ゼラチンカプセルとして製剤化してよく、充填混合物を不活性な固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合した活性成分で調製し、上記で言及した錠剤製剤向けの賦形剤を含める。経口使用のための組成物は、また、軟ゼラチンカプセルとして製剤化してもよく、充填混合物は、水もしくはピーナッツ油、流動パラフィン、大豆油、ココナッツオイルなどの油、または好ましくはオリーブ油、または他の許容し得るビヒクルと混合される活性成分で調製される。経口使用のための組成物は、また、硬ゼラチンカプセルの形態にしてもよく、活性成分は、活性成分および例えば、酸化防止剤として親水性の担体、水溶性のビタミンE誘導体、ならびに場合によって他の賦形剤を含む、安定な固形製剤または半固形の分散製剤として製剤化される。水性懸濁液は、一般に、(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどの)ある懸濁化剤、(例えば、レシチン、ステアリン酸ポリオキシエチレンもしくはポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、ポリエチレンソルビタンモノオレエートなどの)ある分散剤または湿潤剤の添加で一緒にした微粉化された活性成分で調製される。水性懸濁液は、また、口当たりの良い経口剤を提供するために、保存料、酸化防止剤、着色料、香味料および/または甘味料などの1つ以上の適切な添加物を含有してもよい。油性懸濁液は、活性成分を(例えば、オリーブ油およびゴマ油などの)適切な植物油に懸濁することにより得ることができる。水の添加による水性懸濁液または水溶液の調製に適する、分散性粉末もしくは凍結乾燥粉末ならびに顆粒は、活性成分および適切な賦形剤(増量剤、分散剤または懸濁化剤および保存料)を含有する。
【0086】
製剤は、また、例えば、上記に言及した分散剤、湿潤剤および懸濁化剤の中で選択される適切な賦形剤を使用して、既知の手順に従って調製される無菌の注射可能な懸濁液、溶液、乳液としてもよい。
【0087】
クリーム、軟膏、ゲル、溶液または懸濁液などの局所製剤は、当技術分野で良く知られている従来の手順を用いて、活性成分を従来のビヒクルまたは希釈剤で製剤化することにより調製することができる。
【0088】
吹送による投与のための組成物は、例えば、50μm以下の適切な平均直径の粒子を含有する微粉とすることができ、粉末自体は、活性成分をそのままで構成される、または乳糖などの適切な担体で希釈されることにより構成される。
【0089】
吹送のための粉末は、ターボ吸入デバイスで使用される適切な活性量を含有するカプセルに製剤化される。吸入による投与のための組成物は、微粉化した固体を含有するエアロゾルまたは液滴を含有するエアロゾルのどちらかとして活性成分を投薬するように準備された、従来の加圧エアロゾルの形態にすることができる。
【0090】
従来のエアロゾル噴射剤およびデバイスを、活性成分の規定量を投薬するために使用することができる。硬ゼラチンカプセルの形態にある経口使用のための組成物の例は、実施例10に記載されている。
【実施例】
【0091】
次の実施例は、本発明を例示している。
温度は、摂氏温度(℃)で測定される。
別段の指示がない限り、反応または実験は室温で行われる。
略語:
RT:室温
RH:相対湿度
PXRD:粉末X線回折
DSC:示差走査熱量測定
DVS:動的蒸気収着
TGA:熱重量分析
【0092】
[実施例1]
化合物937の塩の小規模な調製
化合物937の遊離塩基の一定分量(約40÷50mg)を、メタノールとジクロロメタンの2:1混合物4−5mL中でRTにおいて溶解し、約10mg/mLの名目上の濃度を得た。
【0093】
次に、RTで、対イオンの1:1の化学量論量を、記載されている化合物937の遊離塩基溶液の4÷5mLに添加することで、いくつかの塩形成実験を行った。
【0094】
−30℃での冷却結晶化実験を、静止時間を約24−36時間として行った。
【0095】
得られた沈殿物を真空ろ過で採取し、真空下において40℃で乾燥した。
【0096】
結晶化が起こらなかった場合、窒素をゆるやかに流してRTで溶液を蒸発させることで濃縮し析出させた。
【0097】
粘着性の残渣から始めて、結晶性のサンプルまたは少なくとも粉末状のサンプルを単離するために、いくつかのケースでは、さらなる再結晶化のステップ(例えば、化合物をジエチルエーテル中で研和する)が必要であった。
【0098】
乾燥は、真空条件下において40℃で行った。
【0099】
化合物937および酸性対イオンの化学的同定は、(実施例9に記載されている)1H NMRで行った。
【0100】
[実施例2]
化合物937のL−酒石酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩およびL−リンゴ酸塩の2グラムスケールの調製
遊離塩基(500mg、0.939ミリモル)を、ジクロロメタン:メタノールが2:1の混合物(24mL)中に室温で溶解し、次に、メタノール中に溶解した1当量の酸性対イオン、またはフマル酸のケースでは96%のエタノール中に溶解した1当量の酸性対イオンを加えた。溶液を真空中で10mLに減少させ、次に、−20℃まで冷却した。析出した物質を次にろ過し、ジエチルエーテルで洗浄し、最後に真空下において40℃で少なくとも24時間乾燥した。
【0101】
[実施例3]
化合物937のフマル酸塩、形態Iの大規模な調製
かなりの量の化合物937の遊離塩基を、無水エタノール中で撹拌しながら30分間加熱還流して、出発物質(濃度約25g/L)を完全に溶解させた。
【0102】
その後、約1当量のフマル酸をエタノールに溶解し(濃度約29g/L)、遊離塩基溶液に加えた。
【0103】
完全に塩化するように30分間加熱還流を行った後で、加熱を中止した。
【0104】
混合物を約5℃に冷却し、この温度で約1時間撹拌し、ろ過し、無水エタノールで洗浄し、次に真空下で35−40℃で乾燥した。
【0105】
得られた物質は、化合物937のフマル酸塩のエタノール溶媒和物であった。
【0106】
[実施例4]
化合物937のフマル酸塩、形態IIの大規模な調製
かなりの量の化合物937の遊離塩基を、水中においてRTで撹拌し、30分間後に約1当量のフマル酸を加えた。
【0107】
懸濁液は、2時間撹拌し、次に4℃に冷却し、ろ過を行うまでこの温度を1時間維持する。
【0108】
得られた物質をフィルター上で冷水を用いて洗浄し、真空下で35−40℃で乾燥した。
【0109】
[実施例5]
化合物937の塩および遊離塩基の溶解度
実施例2に記載されているように調製した化合物937の塩の溶解度の決定を、次の手順により行った。化合物937の塩および遊離塩基の既知の量を、10mg/mlの目標濃度を考慮して過剰な固体がある条件で、水中においてRTで4時間撹拌した。得られた調製物をろ過し、HPLCにより分析した。
【0110】
ここで結果を、以下に報告する。
【0111】
上記に記載されている方法による化合物937の遊離塩基の水溶解度の値は、<0.1mg/mLである。
【0112】
上記に記載されている方法による化合物937のL−酒石酸塩の水溶解度の値は、1.9mg/mLである。
【0113】
上記に記載されている方法による化合物937のコハク酸塩の水溶解度の値は、5.8mg/mLである。
【0114】
上記に記載されている方法による化合物937のマレイン酸塩の水溶解度の値は、3.1mg/mLである。
【0115】
上記に記載されている方法による化合物937のL−リンゴ酸塩の水溶解度の値は、3.9mg/mLである。
【0116】
上記に記載されている方法による化合物937のフマル酸塩の水溶解度の値は、0.7mg/mLである。
【0117】
[実施例6]
粉末X線回折(PXRD)による分析結果
Thermo/ARL XTRA装置を用い、室温で2θを5°から34°の間にし、CuKα源(45kV、40mA、1.8kW−Kα1放射線、波長λ=1.54060オングストローム)を粉末サンプルに照射して行った粉末X線回折(PXRD)で、化合物937の塩を特徴付けた。
【0118】
走査速度は、1.20°/分(1ステップごとの計数時間が1秒で1ステップ0.020°)であった。
【0119】
X線回折図では、回折角度2θは水平軸(x軸)にプロットされ、線強度は垂直軸(y軸)にプロットされる。
【0120】
化合物937の塩および遊離塩基の結晶形態に関するX線粉末回折ピークを規定する段落において、表現「…表に報告されているおよその2θ角度における…」の中で用いられる用語「におけるおよその」は、ピークの正確な位置(すなわち、列挙された2θ角度の値)が絶対的な値であると解釈するべきではないことを示すために用いられるが、この理由は、当業者によって理解されるように、ピークの正確な位置は、機械ごとに、サンプルごとに僅かに変動し得る、または利用される測定条件の僅かな変更の結果として僅かに変動し得るからである。
【0121】
先行する段落では、化合物937の塩および遊離塩基の結晶形態により、図1、2、3、4、5、6、7、8、12、14および16に示されているX線粉末回折パターンと「実質的に」同じであるX線粉末回折パターンが提供され、表1、2、3、4、5、6、7、8、9および10に示されている2θ角度の値において、実質的に最も顕著なピークがあるということもまた述べられている。この文脈での用語「実質的に」の使用には、X線粉末回折パターンの2θ角度の値が、機械ごとに、サンプルごとに僅かに変動し得る、または測定条件の僅かな変更の結果として僅かに変動し得ることを示す意図もまたあり、この場合もやはり、図に示されているまたは表に引用されているピーク位置は、絶対的な値としてあるわけではないことが理解されるべきである。この点において、(例えば、機器および/またはサンプル調製などの)測定条件により、1つ以上の測定エラーがあるX線粉末回折パターンが得ることが当業界には既知である。とりわけX線粉末回折パターンの強度は、測定条件およびサンプル調製により増減し得ることが一般に知られている。
【0122】
例えば、X線粉末回折の当業者は、ピークの相対強度が、例えば30ミクロンを超えるサイズの粒子および単一ではないアスペクト比により影響されることがあり、これがサンプルの分析に影響を及ぼし得ることを認識している。
【0123】
当業者は、反射位置が、サンプルが回折計に搭載される正確な高さによって、および回折計のゼロ較正によって影響を受けることがあることもまた認識している。
【0124】
サンプルの表面平面性もまた、結果に影響を及ぼし得る。
【0125】
そのような訳で、当業者は、本明細書で提示された回折パターンのデータは、絶対的なものとみなすべきではないことを理解する(さらなる情報は、「Fundamentals of Powder Diffraction and Structural Characterization、PecharskyおよびZavalij、Kluwer Academic Publishers、2003」を参照されたし。)。したがって、本発明に記載されている化合物937の塩および遊離塩基の結晶形態が、例えば、図1に示したX線粉末回折パターンと同一のX線粉末回折パターンを提供する結晶に限定されないことを理解するべきであり、例えば、図1に示されているX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを提供する任意の結晶が、本発明の範囲に含まれることを理解するべきである。
【0126】
X線粉末回折の当業者は、X線粉末回折パターンの実質的な同一性を判定できる。
【0127】
一般に、X線粉末回折図の回折角度の測定エラーは、およそ2θ=0.5度以下(または、より適切にはおよそ2θ=0.2度以下)であり、図1、2、3、4、5、6、7、8、12、14および16のX線粉末回折パターンを検討する場合、ならびに本文中および表1、2、3、4、5、6、7、8、9および10の中の両方に参照されているピーク位置を解釈する場合、この程度の測定エラーを考慮に入れるべきである。
【0128】
したがって、例えば、化合物937の塩および遊離塩基のX線粉末回折パターンで、およそ2θ=20.1度(または、他に言及される角度の任意の1つ)において少なくとも1つの特定のピークがあると述べられる場合、これは、2θ=20.1度プラスもしくはマイナス0.5度または2θ=20.1度プラスもしくはマイナス0.2度として解釈することができる。
【0129】
図1では、実施例1に記載されているような、小規模で単離された化合物937の塩および遊離塩基のX線粉末回折図が報告されている。
【0130】
図2では、実施例2に記載されているような、大規模で得られた化合物937の塩:L−酒石酸塩の形態I(B)、フマル酸塩の形態I(C)およびL−リンゴ酸塩の形態I(D)のX線粉末回折図の例が報告されている。
【0131】
化合物937のフマル酸塩の形態I、L−リンゴ酸塩の形態I、L−酒石酸塩の形態I、マレイン酸塩の形態I(A−B)、マレイン酸塩の形態II(C)、コハク酸塩の形態I(A)およびコハク酸塩の形態II(B−C)のX線回折ピークは、図3、4、5、6および7にそれぞれ報告されている。
【0132】
図8では、化合物937の遊離塩基の形態IのX線回折ピークが報告されている。
【0133】
図12では、図9、図10および図11に報告されているDSCプロフィール(DSCデータは、実施例6でもまた検討されている)により特徴付けられる、同じバッチに関係する化合物937の遊離塩基の形態I(A−B)のX線回折ピークが報告されている。化合物937のフマル酸塩の形態I、L−酒石酸塩の形態I、L−リンゴ酸塩の形態I、マレイン酸塩の形態Iおよびマレイン酸塩の形態II、コハク酸塩の形態I、コハク酸塩の形態II、遊離塩基ならびにフマル酸塩の形態IIの主要なX線回折ピークの2θ角度が、表2、3、4、5、6、7、8、9および10にそれぞれ報告されている。
【0134】
実施例3に従って得られた化合物937のフマル酸塩の形態Iの大規模なバッチのPXRDプロフィールは、図14に報告されている。
【0135】
実施例4に従って得られた化合物937のフマル酸塩の形態IIの大規模なバッチのPXRDプロフィールは、図16に報告されている。
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【表7】
【0142】
【表8】
【0143】
【表9】
【0144】
【表10】
【0145】
[実施例7]
示差走査熱量測定(DSC)による分析結果
DSC分析を、Perkin−Elmer DSC−7装置で行った。DSC用アルミニウム製パンに、サンプル約2mgを充填した。分析の温度範囲は、30℃と最大値300℃の間とした。サンプルを窒素フロー下で加熱速度10℃/分において分析した。
【0146】
図9により、実施例1に記載されているように小規模で単離された化合物937の塩および遊離塩基のDSCサーモグラムが、報告されている。
【0147】
図10により、元の遊離塩基と比較した、実施例2に記載されているようにより大規模で単離された化合物937の塩のDSCサーモグラムが報告され、これには既知の結晶の代替形態のプロフィールが含まれている。
【0148】
特に、DSCプロフィールの9A、10A1、11Aおよび11B1は、遊離塩基の形態Iに関係し、他方、DSCプロフィールの10A2および11B2は形態IIに関係している。
【0149】
実施例3に従って得られた化合物937のフマル酸塩の形態Iの大規模なバッチのDSCプロフィールは、図15に報告されている。分解を伴う溶融吸熱は、およそ260℃(ピーク温度)で観察された。DSCの開始温度値および/またはピーク温度値は、機械によって、方法によってもしくはサンプルによって僅かに変動し得るので、引用された値は、絶対的なものと解釈されるべきではないことを理解されたい。実際、観察された温度は、温度変化の速度、ならびにサンプルの調製技法および採用される特定の機器に左右される。このような異なる条件を適用して得られた温度値は、プラスまたはマイナス約4℃変動し得ることを推定し考慮に入れられたい。
【0150】
[実施例8]
熱重量分析(TGA)による分析結果
TGA分析を、Perkin−Elmer TGA−7装置で行った。アルミニウム製パンに5÷10mgのサンプルを充填した。分析の温度範囲は、30℃と最大値約250℃の間であった。サンプルを、窒素フロー下で加熱速度2℃/分において分析した。
【0151】
[実施例9]
動的蒸気収着(DVS)による分析結果
化合物937の塩および遊離塩基の水分吸収を、かかる物質のサンプルをDVS1000(SMS)による吸湿性試験に送ることで調べた。装置は「環境制御型微量てんびん」であり、計量したサンプルを、一定の制御された温度においてプログラムで変化させた相対湿度(RH)に曝露する。測定されたパラメーター(重量、時間およびRH)はExcelワークシートに報告され、試験を行ったRH範囲にわたる吸湿曲線が得られた。RHが0%と90%の間の収着/脱着サイクルを、25℃の制御温度で実施することができる。RHの漸進的な変化は10%であり、これらの変化は、サンプル重量の平衡化においてソウトウェアで操作される。この条件は、重量変化パーセントの一定速度、例えば0.005%/分において規定することができる。実験結果は、DVS等温線レポートおよびDVS等温線プロットとして両方に報告される。
【0152】
実施例2に記載されているように調製した化合物937の好ましい塩の、元の遊離塩基と比較したDVSプロフィールの例は、図13に報告されている。
【0153】
DVSで収着が増減する間の化合物937のフマル酸塩の水分吸収の例は、ここで次の表11にまとめられる。
【0154】
【表11】
【0155】
[実施例10]
NMRによる同定分析
1H NMR実験を、499.8MHzで作動する分光計Varian Inova 500において、28℃の一定温度で行った。各サンプルの少量を、0.75mLのDMSO−d6に溶解し、引き続く分析のために5mmのNMR管に移した。当該分析により、分子および対イオンの両方の予測される化学構造を確認することが可能になる。
【0156】
[実施例11]
経口使用のための剤形のパーセント組成
【0157】
【表12】
【0158】
[実施例12]
粉末かさ密度
化合物937のフマル酸塩、L−リンゴ酸塩およびL−酒石酸塩ならびに遊離塩基の粉末かさ密度の決定を、おおまかに固めた活性成分を硬ゼラチンカプセルに手作業で充填することによって行った。
【0159】
かさ密度は、おおまかに固めた活性成分から成るカプセルの充填量を、硬ゼラチンカプセルの既知の呼び容積で割ることにより計算した。充填量は、充填したカプセルの総重量と空のカプセルの風袋重量との差として計算した。
【0160】
フマル酸塩、L−リンゴ酸塩およびL−酒石酸塩は、粉末かさ密度の値が240mg/mlを超えることを特徴とし、他方、遊離塩基の当該密度は約90mg/mlである。
【0161】
当業者は、上記に記載されているデータおよび実施例から、本発明に記載されている化合物937の新規な塩が、治療における新しい向上した価値のある手段であることを理解する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式:
【化1】
を有する化合物937の、L−酒石酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、L−リンゴ酸塩、塩酸塩、フマル酸塩(半モルの対イオン)、フマル酸塩、クエン酸塩(半モルの対イオン)、ベンゼンスルホン酸およびL−アスパラギン酸塩(半モルの対イオン)から選択される塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物。
【請求項2】
L−酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、L−リンゴ酸塩およびフマル酸塩から選択される化合物937の塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物。
【請求項3】
L−酒石酸塩、L−リンゴ酸塩およびフマル酸塩から選択される化合物937の塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物。
【請求項4】
化合物937のフマル酸塩の結晶形態、ならびにこの溶媒和物および水和物。
【請求項5】
化合物937の遊離塩基としての安定な結晶形態。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物937の任意の塩、請求項4に記載の化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物、または請求項5に記載の化合物937の遊離塩基としての結晶形態を活性成分として含み、薬学的に許容し得る賦形剤および/または担体を含む、医薬組成物。
【請求項7】
医薬品として使用するための、請求項1に記載の化合物937の任意の塩、請求項4に記載の化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物、または請求項5に記載の化合物937の遊離塩基としての結晶形態。
【請求項8】
PLKの阻害により治療可能な病態に罹患しているヒトを含む哺乳動物の治療において、単独でまたは他の治療剤と併用して使用するための、請求項1に記載の化合物937の任意の塩、請求項4に記載の化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物、または請求項5に記載の化合物937の遊離塩基としての結晶形態。
【請求項9】
PLKの阻害によって治療可能な病態が、細胞増殖性障害、ウイルス感染、自己免疫疾患または神経変性障害であることを特徴とする、請求項8に記載の化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態。
【請求項10】
細胞増殖性障害ががんであることを特徴とする、請求項9に記載の化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物、または化合物937の遊離塩基としての結晶形態。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物937の任意の塩、請求項4に記載の化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物、または請求項5に記載の化合物937の遊離塩基としての結晶形態の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む、PLKの阻害を必要とするヒトを含む哺乳動物の治療方法。
【請求項12】
PLKの阻害によって治療可能な病態の治療をする医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物937の任意の塩、請求項4に記載の化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または請求項5に記載の化合物937の遊離塩基としての結晶形態の使用。
【請求項1】
次の式:
【化1】
を有する化合物937の、L−酒石酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、L−リンゴ酸塩、塩酸塩、フマル酸塩(半モルの対イオン)、フマル酸塩、クエン酸塩(半モルの対イオン)、ベンゼンスルホン酸およびL−アスパラギン酸塩(半モルの対イオン)から選択される塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物。
【請求項2】
L−酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、L−リンゴ酸塩およびフマル酸塩から選択される化合物937の塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物。
【請求項3】
L−酒石酸塩、L−リンゴ酸塩およびフマル酸塩から選択される化合物937の塩、ならびにこれらの結晶形態、溶媒和物および水和物。
【請求項4】
化合物937のフマル酸塩の結晶形態、ならびにこの溶媒和物および水和物。
【請求項5】
化合物937の遊離塩基としての安定な結晶形態。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物937の任意の塩、請求項4に記載の化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物、または請求項5に記載の化合物937の遊離塩基としての結晶形態を活性成分として含み、薬学的に許容し得る賦形剤および/または担体を含む、医薬組成物。
【請求項7】
医薬品として使用するための、請求項1に記載の化合物937の任意の塩、請求項4に記載の化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物、または請求項5に記載の化合物937の遊離塩基としての結晶形態。
【請求項8】
PLKの阻害により治療可能な病態に罹患しているヒトを含む哺乳動物の治療において、単独でまたは他の治療剤と併用して使用するための、請求項1に記載の化合物937の任意の塩、請求項4に記載の化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物、または請求項5に記載の化合物937の遊離塩基としての結晶形態。
【請求項9】
PLKの阻害によって治療可能な病態が、細胞増殖性障害、ウイルス感染、自己免疫疾患または神経変性障害であることを特徴とする、請求項8に記載の化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または化合物937の遊離塩基としての結晶形態。
【請求項10】
細胞増殖性障害ががんであることを特徴とする、請求項9に記載の化合物937の任意の塩、化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物、または化合物937の遊離塩基としての結晶形態。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物937の任意の塩、請求項4に記載の化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物、または請求項5に記載の化合物937の遊離塩基としての結晶形態の治療有効量を哺乳動物に投与することを含む、PLKの阻害を必要とするヒトを含む哺乳動物の治療方法。
【請求項12】
PLKの阻害によって治療可能な病態の治療をする医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物937の任意の塩、請求項4に記載の化合物937のフマル酸塩の結晶形態、溶媒和物もしくは水和物または請求項5に記載の化合物937の遊離塩基としての結晶形態の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2013−500299(P2013−500299A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522114(P2012−522114)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060659
【国際公開番号】WO2011/012534
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(307012403)ネルビアーノ・メデイカル・サイエンシーズ・エツセ・エルレ・エルレ (55)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060659
【国際公開番号】WO2011/012534
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(307012403)ネルビアーノ・メデイカル・サイエンシーズ・エツセ・エルレ・エルレ (55)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]