説明

PONシステムの宅側装置、信号処理回路及び同期維持方法

【課題】 光トランシーバのスリープ時間の経過後に即座に通信を開始できる信号処理回路を提供する。
【解決手段】 本発明の信号処理回路は、光トランシーバ21から入力された受信信号からクロックと受信データを再生し、再生された受信データを上位層側に出力する受信側処理部33,34と、上位層側から入力された送信データを再生されたクロックと同期する送信信号として光トランシーバ21に出力する送信側処理部31,32とを備える。また、本発明の信号処理回路は、光トランシーバ21の機能を低下させるスリープ動作を行う場合に、既に再生されたクロックをスリープ時間中において保持し、かつ、スリープ時間の終了とともにクロックの保持を解除する同期維持モードを実行する制御部27を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局側装置と光ファイバ網で結ばれるPON(Passive Optical Network)システムの宅側装置と、この宅側装置に好適に用いることができる信号処理回路と、この信号処理回路において行われる同期維持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PONシステムは、P2MP(Point to Multi Point)の接続形態における光分岐を無電力で行う光通信システムであり、局側装置と、これに接続された光ファイバから光カプラを介して複数の光ファイバに分岐した一芯の光ファイバ網と、分岐した光ファイバの終端にそれぞれ接続された宅側装置とを備えている(特許文献1及び2参照)。
このPONシステムにおいては、半導体レーザ等の光源を直接或いは外部変調したNRZ(Non-Return to Zero)光信号を伝送し、情報を送受信する。
【0003】
局側装置が送信する下り光信号は各宅側装置に放送形式で伝送され、各宅側装置は自分宛の信号のみを受信処理する。逆に、宅側装置からの上り光信号は、衝突を防止すべく局側装置によって時分割多重方式で管理されており、局側装置は各宅側装置からの上り光信号をバースト的に受信する。
そして、各宅側装置は、下り光信号を光電変換した電気信号(受信フレーム)のビット同期用のプリアンブルからクロックを再生し、再生したクロックを用いて上り送信を行うことにより、局側装置とのクロックの同期(網同期)を維持している。
【0004】
一方、PONシステムには、伝送レートが10G(正確には10.3125Gbps)である10G−EPONと、伝送レートが1G(正確には、1.25Gbps)であるGE−PONとがある。
10G−EPONは、既に運用されているGE−PONの上位互換システムであり、一芯の光ファイバを1G信号と10G信号で共用して通信を行うものである。このため、10G−EPONの局側装置は、1G信号と10G信号の双方を送受信可能に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−64749号公報(図4)
【特許文献2】特開2004−289780号公報(図31)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
10G−EPONは、GE−PONよりも伝送レートが高速であるから、送受信系の消費電力がGE−PONに比べて格段に大きい。
そこで、EPONのシステムレベル標準IEEE P1904.1の標準化作業において、通信トラフィックがない時間帯に、10Gの光通信を行う宅側装置の光トランシーバの機能を低下させて省電力を図る、「スリープモード」(省電力モード)の採用が検討されており、その実装方法として、光トランシーバの送信側のみの機能を低下させる場合と、送受信双方の機能を低下させる場合の2種類が考えられている。
【0007】
上記2種類のスリープモードのうち、光トランシーバの送受信双方の機能を低下させる場合には、スリープ時間中に、宅側装置のクロックデータ再生回路に局側装置からの受信フレームが供給されないため、受信フレームからのクロックの再生を行えず、スリープ時間中に宅側装置のクロックが局側装置のクロックと大きくずれる可能性がある。
このため、光トランシーバの機能が復帰してから、宅側装置のクロックデータ再生回路が受信フレームのプリアンブルと同期するための時間(同期引き込み時間)が長くなり、スリープ時間の経過後に即座に通信を開始できない恐れがある。
【0008】
なお、特に10G−EPONのような高速な伝送レートの場合には、通信不能な無駄時間である上記同期引き込み時間が通信帯域に与える影響がより大きくなるので、光トランシーバのスリープ時間の経過後においても、同期引き込み時間は出来るだけ短時間であることが望ましい。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、光トランシーバのスリープ時間の経過後に即座に通信を開始できる信号処理回路等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の信号処理回路は、光トランシーバから入力された受信信号からクロックと受信データを再生し、再生された前記受信データを上位層側に出力する受信側処理部と、前記上位層側から入力された送信データを再生された前記クロックと同期する送信信号として前記光トランシーバに出力する送信側処理部と、前記光トランシーバの機能を低下させるスリープ動作を行う場合に、既に再生された前記クロックをスリープ時間中において保持し、かつ、前記スリープ時間の終了とともに前記クロックの保持を解除する同期維持モードを実行する制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の信号処理回路によれば、制御部が、光トランシーバの機能を低下させるスリープ動作を行う場合に、既に再生されたクロックをスリープ時間中において保持するので、光トランシーバから受信信号が供給されないスリープ時間中のクロックが送信元(PONの場合は局側装置)のクロックと大きくずれることがなく、送信元とのクロックの同期を維持することができる。
【0011】
また、本発明の信号処理回路によれば、制御部が、スリープ時間の終了とともにクロックの保持を解除するので、送信元とのクロックの同期が維持された状態で、光トランシーバの機能を復帰させることができる。
このため、送信元とのクロックがずれた状態で、復帰した光トランシーバから供給された受信信号からクロックを再生する場合に比べて、同期引き込み時間がより短くなり、スリープ時間の経過後に即座に通信を開始することができる。
【0012】
(2) 本発明の信号処理回路において、前記制御部は、前記同期維持モードを実行する場合に、前記クロックの保持を開始してから前記光トランシーバの機能を低下させることが好ましい。
その理由は、上記と逆のタイミング、すなわち、クロックの保持の開始よりも光トランシーバの機能の低下を先に行うタイミングでは、光トランシーバのスリープ時間前に再生された、送信元と同期するクロックを適切に保持できない可能性があるからである。
【0013】
また、前記制御部は、前記光トランシーバの機能を復帰させてから前記クロックの保持を解除することが好ましい。
その理由は、上記と逆のタイミング、すなわち、光トランシーバの機能の復帰よりもクロックの保持の解除を先に行うタイミングでは、光トランシーバの機能が復帰する前に、受信側処理部のクロックが送信元のクロックからずれてしまい、送信元との同期の維持ができなくなる可能性があるからである。
【0014】
(3) 本発明の信号処理回路において、前記受信側処理部は、位相同期方式のCDR回路を含んでいることが好ましい。
この場合、前記制御部は、前記CDR回路の電圧制御発振器への入力電圧を固定することにより、前記クロックを保持することができる。かかる入力電圧の固定は、例えば、電圧制御発振器の入力側に設けたスイッチング素子をオフすることで行える。このため、当該スイッチング素子を設けるだけで、本発明の信号処理回路を比較的簡単に実装することができる。
【0015】
(4) また、本発明の信号処理回路は、前記受信側処理部にする入力信号の入力元として、前記光トランシーバ又は前記送信側処理部のいずれかを選択する選択回路を更に備えている回路であってもよい。かかる選択回路を備えた信号処理回路は、送信信号のループバックが可能な信号処理回路として市販されている。
この場合、前記制御部は、前記送信側処理部を選択するように前記選択回路を制御することにより、前記クロックを保持することができる。このため、回路素子の追加を伴わずに、本発明の信号処理回路を低コストで実装することができる。
【0016】
(5) 本発明方法は、光トランシーバから入力された受信信号から再生したクロックを所定時間だけ保持して、前記受信信号の送信元とのクロックの同期を維持する方法であって、前記光トランシーバの機能を低下させるスリープ動作を行う場合に、既に再生された前記クロックをスリープ時間中において保持し、前記スリープ時間の終了とともに前記クロックの保持を解除することを特徴とする。
【0017】
本発明の同期維持方法によれば、光トランシーバの機能を低下させるスリープ動作を行う場合に、既に再生されたクロックをスリープ時間中において保持する処理を含む。
このため、光トランシーバから受信信号が供給されないスリープ時間中のクロックが送信元(PONの場合は局側装置)のクロックと大きくずれることがなく、送信元とのクロックの同期を維持することができる。
【0018】
また、本発明の同期維持方法によれば、スリープ時間の終了とともにクロックの保持を解除する処理を含む。従って、送信元とのクロックの同期が維持された状態で、光トランシーバの機能を復帰させることができる。
このため、送信元とのクロックがずれた状態で、復帰した光トランシーバから供給された受信信号からクロックを再生する場合に比べて、同期引き込み時間がより短くなり、スリープ時間の経過後に即座に通信を開始することができる。
【0019】
(6) 本発明の同期維持方法において、前記クロックの保持を開始してから前記光トランシーバの機能を低下させ、前記光トランシーバの機能を復帰させてから前記クロックの保持を解除することが好ましい。その理由は、上述の(2)の場合と同様である。
【0020】
(7) 本発明の宅側装置は、受動的光分岐ノードを介して局側装置と双方向の光通信を行う宅側装置であって、光信号と電気信号とを相互に変換可能な光トランシーバと、前記光トランシーバの上位層側に配置された上述の(1)〜(4)の信号処理回路と、を備えていることを特徴とする。
このため、本発明の宅側装置は、上述の(1)〜(4)の信号処理回路と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0021】
以上の通り、本発明によれば、光トランシーバのスリープ時間中に送信元とのクロックの同期を維持できるので、光トランシーバのスリープ時間の経過後に即座に通信を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るPONシステムの概略構成図である。
【図2】宅側装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】スリープ動作を行う場合の制御フレームのシーケンス図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る信号処理回路の機能ブロック図である。
【図5】信号処理回路に含まれるクロックデータ再生部の回路構成図である。
【図6】温度補償機能を有するクロックデータ再生部の回路構成図である。
【図7】VCO制御電圧と発振周波数との関係を温度ごとに示すグラフである。
【図8】温度変化に伴うVCOの周波数変化を示すグラフである。
【図9】VCOの周波数を固定するためのビット設定値を示すテーブルである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る信号処理回路の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
〔PONシステムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るPONシステムの概略構成図である。
図1において、局側装置(OLT:Optical Line Terminal)1は、上位ネットワークとPONシステムとの中継ノードであり、複数の宅側装置(ONU:Optical Network Unit)2,2…に対する集約局として電話局等に設置される。各宅側装置2,2…はそれぞれ、PONシステムの加入者宅に設置される。
【0024】
局側装置1のPON側の伝送路である一芯の光ファイバ3(幹線)は、受動光分岐ノードとしての光カプラ4を介して複数の光ファイバ(支線)5に分岐している。このように分岐した光ファイバ網の各光ファイバ5,5…の終端に、それぞれ宅側装置2,2…が接続されている。局側装置1は上位ネットワーク6と接続され、宅側装置2はそれぞれのユーザネットワーク7と接続されている。
【0025】
なお、図1では4個の宅側装置2が図示されているが、1つの光カプラ4から例えば32分岐して32個の宅側装置2を接続することが可能である。
また、図1では、光カプラ4を1個だけ使用しているが、光カプラ4を縦列に複数段設けることにより、さらに多数の宅側装置2を局側装置1と接続することもできる。
【0026】
図1において、各宅側装置2から局側装置1への上り方向には波長λ1でデータが送信され、局側装置1から宅側装置2への下り方向には波長λ2でデータが送信される。
本実施形態では、例えば10G−EPONの標準規格(IEEE 802.3av)に則ったPONシステムを想定しており、この場合、上り方向及び下り方向の波長λ1及びλ2は、以下の範囲の値とすることができる。
【0027】
1260nm≦λ1≦1280nm
1575nm≦λ2≦1580nm
また、本実施形態では、上り下りの伝送レートが同じである対称型の10G−EPONシステムを想定している。従って、宅側装置2による上り方向通信の伝送レート[Gbps]は10.3125であり、局側装置1による下り方向通信の伝送レート[Gbps]も10.3125である。
【0028】
局側装置1は、光トランシーバ(図示せず)を備える。この光トランシーバは、各宅側装置2に対して時分割多重された下り光信号UOを光ファイバ3に送出する。
この下り光信号DOは、光カプラ4で分岐され、各宅側装置2に設けられた光トランシーバ21(図2参照)の受光素子によって電気信号に変換される。各宅側装置2は、自身宛の下り光信号DOに含まれる受信フレームのみを処理し、それ以外の受信フレームは破棄する。
【0029】
また、局側装置1の光トランシーバは、各宅側装置2の光トランシーバが光りファイバ5に送出した上り光信号UOを受信する。
局側装置1は、各宅側装置2からの上り光信号UOが光カプラ4で合波されて1本の光ファイバ3に伝送される際に、それらが衝突しないように送信タイミングを時分割で多重制御する。このため、図1に示すように、各宅側装置2が送出する上り光信号UOは、それぞれガードタイムを挟んで時間軸上に配列されたものとなる。
【0030】
〔宅側装置の構成〕
図2は、宅側装置2の内部構成を示すブロック図である。
図2に示すように、宅側装置2は、PON側(図2の左側)から順に、光トランシーバ(TRx)21、PHY(PHYsical sublayer)部22、MAC(Medium Access Control)部23及びUNI(User-Network Interface)24を備えている。
また、PHY部22には、PMA(Physical Medium Attachment)部25とPCS(Physical Coding Sublayer)部26とが含まれている。
【0031】
光トランシーバ21は、光信号と電気信号とを相互に変換する周知の送受信デバイスよりなり、合分波器、発光素子、受光素子及び増幅器(いずれも図示省略)などの回路素子を内部に備える。
本実施形態の光トランシーバ21は、外部から入力される制御信号S1に応じて、内部の能動素子の機能を低下させて省電力を図ることができる。より具体的には、光トランシーバ21は、上記制御信号S1に応じて、内部の能動素子の動作を停止させてスリープ状態となることで、消費電力を低下させることができる。なお、本明細書において、光トランシーバ21の「機能の低下」とは、そのパワーを低下させることだけでなく、電源オフの場合も含まれる。
【0032】
PHY部22は、物理層の信号処理を行う集積回路よりなる。PHY部22中のPMA部25は、データのシリアル変換及びパラレル変換を行い、PCS部26は、10Gbpsのデータに対して64B/66Bなどの符号化及び復号化を行う。
MAC部23は、データリンク層中のメディアアクセス制御を行う集積回路よりなり、局側装置1との通信制御に関するMPCP(Multi-point Control Protocol)機能や、障害通知やリンク監視などに関するOAM(Operations, Administration and Maintenance)機能などの各種機能を有し、MAC部23内の制御部27がその各種の機能を担う。
【0033】
すなわち、制御部27は、MAC部23に入力された中継フレームが上記機能に属する制御フレームであれば、その制御フレームの内容に従った所定の制御を行う。
また、本実施形態の制御部27は、光トランシーバ21に対して行うスリープモードの制御信号S1と、PHY部22に対して行う同期維持モードの制御信号S2を生成し、それらの制御信号S1,S2を各部に与える。なお、これらのモードとその制御信号S1,S2については後述する。
【0034】
UNI24は、ユーザネットワーク7側と共通する所定の通信規約に則ってデータの送受信を行う通信インタフェースである。
UNI24からの上りフレームは、MAC部23において中継処理されてPHY部22に送られる。PHY部22のPCS部26は、パラレル信号の上りフレームに64B/66B符号化やFEC(Forward Error Correction)符号化を行う。
PHY部22のPMA部25は、符号化されたパラレル信号をシリアル信号に変換して送信信号を生成し、この送信信号を光トランシーバ21に送出する。光トランシーバ21は、PMA部25から送られた送信信号を上り光信号UOに変換し、その上り光信号UOを光ファイバ5に送出する。
【0035】
逆に、光ファイバ5からの下り光信号DOは、光トランシーバ21によって電気信号である受信信号に変換されてPHY部22に送られる。PHY部22のPMA部25は、光トランシーバ21から入力された受信信号(シリアル信号)をパラレル信号に変換する。
PHY部22のPCS部26は、パラレル信号の下りフレームに対して、局側装置1が行った符号化に対応する所定の復号処理(本実施形態では、64B/66B復号化やFEC復号化)を行ってMAC部23に送出する。
【0036】
MAC部23の制御部27は、下りフレームがMPCPフレームやOAMフレーム等の制御フレームの場合には、そのフレームに記された規約に従う所定の処理を行い、下りフレームがデータフレームである場合には、これをUNI24に送る。UNI24は、その下りのデータフレームをユーザネットワーク7に送出する。
【0037】
〔スリープ動作を行う場合の制御フレーム〕
図3は、光トランシーバ21に対してスリープ動作を行わせる場合の制御フレームのシーケンス図である。
ここで、局側装置1の配下の各宅側装置2には、光トランシーバ21に対するスリープモードに関して、以下の態様(a)〜(c)の宅側装置2が含まれるものとする。
態様(a):送信(Tx)機能だけを低下させるスリープ動作が可能な宅側装置
態様(b):送信(Tx)機と受信(Rx)機能の双方を低下させるスリープ動作が可能な宅側装置
態様(c):双方の機能ともに低下できないスリープ非対応の宅側装置
【0038】
また、各宅側装置2は、局側装置1との間のディスカバリプロセスにおいて、自身が上記態様(a)〜(c)のどれに該当するかを局側装置1に通知しており、局側装置1は、配下のすべての宅側装置2の態様(a)〜(c)を把握しているものとする。
本実施形態のPONシステムにおいて、宅側装置2のスリープモード(省電力モード)を駆動する方式としては、局側装置1が宅側装置2にスリープを促す「指令モード」と、宅側装置2がスリープに入ることを自身で申告する「申告モード」の2種類がある。
【0039】
<指令モードの場合>
局側装置1は、各宅側装置2の通信トラフィックを監視しており、例えば、特定の宅側装置2宛の下りトラフィックがない場合や、特定の宅側装置2からの上りトラフィックがない場合に、その宅側装置2宛に、「Sleep_Allow」のメッセージを含む制御フレームF1を送信する。
上記メッセージを含む制御フレームF1は、局側装置1が宅側装置2に対してスリープ動作に入るよう要求する制御フレームである。
【0040】
かかる制御フレームF1には、宛先の宅側装置2が、前記態様(a)又は(b)のうちのどのスリープ態様であるかの情報、及び、光トランシーバ21の機能を低下させる時間(以下、「スリープ時間」という。)の情報などが含まれる。
なお、局側装置1は、スリープモードに非対応である前記態様(c)の宅側装置2に対しては、制御フレームF1を送信しない。
【0041】
次に、制御フレームF1を受け取った宅側装置2は、スリープするかしないか(スリープ可否)を通知するための「Sleep_Ack 」のメッセージを含む制御フレームF2を、局側装置1に送信する。
宅側装置2によるスリープ可否の判定は、例えば、当該宅側装置2に上りトラフィックがない場合はスリープし、ある場合はスリープしないなどの条件により行われる。
【0042】
宅側装置2は、スリープ動作に入る場合、局側装置1から通知されたスリープ時間だけ自装置の光トランシーバ21の機能を低下させ、そのスリープ時間が経過した後に、光トランシーバ21の機能を復帰させる。
また、宅側装置2は、スリープ動作に入らない場合は、光トランシーバ21の機能を低下させずに現状のままにし、アウェイク状態を維持する。
【0043】
<申告モードの場合>
宅側装置2は、自装置のキューやトラフィックの状態を監視しており、例えば、上りキューが空である場合や、下りトラフィックがない場合に、局側装置1に、「Sleep_Ind 」のメッセージを含む制御フレームF0を送信する。
この制御フレームF0は、これを送信した宅側装置2に関するスリープ要求のトリガとなる。すなわち、局側装置1は、特定の宅側装置2から上記制御フレームF0を受けると、当該宅側装置2について上述の「指令モード」のシーケンスを開始する。
【0044】
なお、図3に示す制御フレームF0〜F1の各メッセージの定義フィールドとしては、例えば、拡張OAMや拡張MACコントロールなどのプロトコルに従う定義フィールドを利用することができる。
【0045】
〔第1実施形態〕
図4は、本発明の第1実施形態に係る信号処理回路の機能ブロック図である。また、図5は、その信号処理回路に含まれるクロックデータ再生部33の回路構成図である。
本実施形態の信号処理回路は、前記PHY部22のPMA部25と、前記MAC部23の制御部27とから構成されており、PMA部25は、データに対するシリアル変換とパラレル変換を相互に行う変換回路(SerDes)を含む。
【0046】
図4に示すように、PMA部25は、送信データの信号処理を行う送信側処理部として、FIFOメモリよりなるバッファ31とシリアル化部32とを有し、受信データの信号処理を行う受信側処理部として、クロックデータ再生部33とパラレル化部34とを有する。
上記各部のうち、クロックデータ再生部33は、光トランシーバ21から入力された受信信号からクロックと受信データを再生し、再生した同期クロック(局側装置1のクロックと同期するクロック)と受信データをパラレル化部34に入力する。
【0047】
パラレル化部34は、入力された同期クロックを用いてシリアル信号よりなる受信データをパラレル信号に変換し、このパラレル信号よりなる受信データと入力された同期クロックとを、上位層側のPCS部26に入力する。
なお、クロックデータ再生部33が再生した同期クロックは、PCS部26より上位層のMAC部23にも入力され、送信データのタイミング制御に利用される。
【0048】
また、上位層側のPCS部26から入力されたパラレル信号は、いったんバッファ31に蓄積される。バッファ31は、PCS部26から入力された同期クロックに従ってパラレル信号をシリアル化部32に出力する。
シリアル化部32は、バッファ31から入力された同期クロックを用いてパラレル信号よりなる送信データをシリアル信号に変換して送信信号を生成し、このシリアル信号よりなる送信信号を光トランシーバ21に出力する。
【0049】
図5に示すように、本実施形態のクロックデータ再生部33は、位相同期によってクロックとデータを高精度に再生するPLL(Phase-Locked Loop)方式のCDR(Clock Data Recovery)回路よりなる。
このCDR回路33は、前段側(図5の左側)から後段側(図5の右側)に向かって、位相比較器41、電圧発生回路42、制御スイッチ43、電圧制御発振器(VCO:VCXOでもよい。)44、分周器45及びリタイマ回路46を備えている。
【0050】
位相比較器41には、光トランシーバ21からの電気信号よりなる受信信号と、分周器45からフィードバックされた再生クロックが入力される。
位相比較器41は、入力データ(受信信号)の位相と再生クロックの位相を比較し、その比較結果に応じてアップ信号又はダウン信号を電圧発生回路42に出力する。位相比較器41は、再生クロックの位相と入力データの位相を比較して、その比較結果に基づく信号を出力する。
【0051】
電圧発生回路42は、VCO44に入力する制御電圧を発生させる回路であり、チャージポンプとローパスフィルタとから構成されている。
電圧発生回路42は、位相比較器41が出力する信号に応じて、VCO44に入力する制御電圧を調整する。分周器45は、VCO44が生成した基準クロックを所定倍率で逓倍し、局側装置1が送出する下り信号と同じ周波数の同期クロックを生成し、位相比較器41にフィードバック入力する。
【0052】
リタイマ回路46にも、光トランシーバ21からの電気信号よりなる受信信号と、分周器45からフィードバックされた再生クロックが入力される。
リタイマ回路46は、分周器45からフィードバックされた再生クロックの立ち上がりで入力データ(受信信号)をラッチしてリタイミングし、このリタイミングされたシリアル信号よりなる受信データを外部に出力する。
【0053】
制御スイッチ43は、電圧発生回路42とVCO44の間に設けられたスイッチング素子よりなり、MAC部23の制御部27からの制御信号S2に基づいて、VCO44の入力側を電圧発生回路42と接続又は断線する。
従って、制御スイッチ43がオンの場合には、CDR回路33の位相ロックループが通常通りに作動し、入力データと同期するクロックの再生が行われるが、制御スイッチをオフにすると、位相ロックループが途切れてVCO44の入力電圧が一定に固定される。
【0054】
〔宅側装置の制御部の処理内容〕
次に、図3〜図5を参照しつつ、宅側装置2のMAC部23に設けられた制御部27が行う、「スリープモード」と「同期維持モード」の内容を説明する。
なお、ここでは、宅側装置2が、光トランシーバ21の送受信機能の双方がスリープモードに対応する、前記態様(b)の宅側装置2であるとする。
【0055】
まず、図3に示すように、制御部27は、局側装置1から受信した制御フレームF1(図3参照)に従ってスリープ動作を行う場合、その制御フレームF1に含まれるスリープ時間の開始時点t1に、光トランシーバ21に対する電源オフやパワーダウンなどを行うための制御信号S1を立ち上げ、そのスリープ時間の終了時点t2に、当該制御信号S1を元に戻す。
従って、光トランシーバ21は、スリープ時間の開始時点t1に送受信機能が低下し、スリープ時間の終了時点t2に送受信機能が復帰する。
【0056】
一方、制御部27は、上記スリープ動作を実行する場合に、PMA部25のCDR回路33がそれまでに再生したクロックによる局側装置1との同期を維持するための、同期維持モードを実行する。
具体的には、制御部27は、スリープ時間の開始時点t1よりも少し前の開始時点t3において、CDR回路33に設けられた制御スイッチ43(図5参照)をオフにする制御信号S2を立ち上あげ、その制御信号S2を当該制御スイッチ43に入力する。
【0057】
これにより、CDR回路33のVCO44の入力電圧が固定され、VCO44が出力するクロックが、スリープ時間前の受信データから再生された、局側装置1と同期するクロックに保持される。
また、制御部27は、スリープ時間の終了時点t2よりも少し後の終了時点t4において、上記制御信号S2を元に戻し、CDR回路33に設けられた制御スイッチ43(図5参照)をオンにする。
【0058】
これにより、CDR回路33のVCO44の入力側と電圧発生回路42の出力側との導通が回復する。
従って、同期維持モードの終了時点t4以後は、既にスリープ動作から復帰した光トランシーバ21から送出される受信信号に対して、CDR回路33がクロックとデータの再生を行うことになる。
【0059】
なお、上記同期維持モードにおいて、制御信号S2の開始時点t3を制御信号S1の開始時点t1よりも早めることで、クロックの保持を開始してから光トランシーバ21の機能を低下させている理由は、クロックの保持の開始よりも光トランシーバ21の機能低下を先に行うタイミング(t1<t3)では、光トランシーバ21のスリープ時間前に再生された、送信元と同期するクロックを適切に保持できない可能性があるからである。
【0060】
また、上記同期維持モードにおいて、制御信号S2の終了時点t4を制御信号S1の開終了時点t2よりも遅らせることで、光トランシーバ21の機能を復帰させてからクロックの保持を解除している理由は、光トランシーバ21の機能の復帰よりもクロックの保持の解除を先に行うタイミング(t4<t2)では、光トランシーバ21の機能が復帰する前に、受信側処理部のクロックが送信元(局側装置1)のクロックからずれてしまい、送信元との同期の維持ができなくなる可能性があるからである。
【0061】
〔宅側装置の効果〕
以上の通り、本実施形態の宅側装置2によれば、信号処理回路の制御部27が、光トランシーバ21の機能を低下させるスリープ動作を行う場合に、CDR回路33のVCO入力電圧を固定することで既に再生されたクロックをスリープ時間中において保持する。
このため、光トランシーバ21から受信信号が供給されないスリープ時間中のクロックが局側装置1のクロックと大きくずれることがなく、局側装置1とのクロックの同期を維持することができる。
【0062】
また、本実施形態の宅側装置2によれば、信号処理回路の制御部27が、スリープ時間の終了とともにクロックの保持を解除するので、局側装置1とのクロックの同期が維持された状態で、光トランシーバ21の機能を復帰させることができる。
このため、局側装置1とのクロックがずれた状態で、復帰した光トランシーバ21から供給された受信信号からクロックを再生する場合に比べて、同期引き込み時間がより短くなり、スリープ時間の経過後に即座に通信を開始することができる。
【0063】
また、本実施形態の宅側装置2によれば、CDR回路33のVCO44の入力側に制御スイッチ43を介装し、この制御スイッチ43を切断してVCO44の入力電圧を固定することによって、クロックを保持するようにしたので、CDR回路33に制御スイッチ43を設けるだけで同期維持モードを実行可能な信号処理回路を構成でき、その信号処理回路を比較的簡単に実装できるという利点もある。
【0064】
〔第1実施形態の変形例〕
ところで、第1実施形態の信号処理回路では、PMA部(SerDes)25に含まれるCDR回路33のVCO44の入力側を制御スイッチ43で切断することにより、同期クロックを保持しているので、スリープ時間中に宅側装置2内部の温度が変化すると、VCO44が出力するクロックが変動し、同期クロックを適切に保持できない場合がある。
そこで、この変形例では、CDR回路33に温度補償機能を追加することで、同期クロックの保持中に温度変化が生じても、同期クロックを適切に保持できるようにした。
【0065】
以下、図6〜図9を参照して、この変形例に係る信号処理回路について説明する。
図6は、上記温度補償機能を有するクロックデータ再生部(CDR回路)33の回路構成図である。
また、図7は、VCO制御電圧と発振周波数との関係を温度ごとに示すグラフであり、図8は、温度変化に伴うVCO44の周波数変化を示すグラフである。更に、図9は、VCO44の発信周波数を固定するためのビット設定値を示すテーブルである。
【0066】
図6に示すように、この変形例のCDR回路33は、第1実施形態のCDR33と比較して、温度補償部47、温度センサ48及びADコンバータ49,50を更に備える。
VCO44は、複数ビット(図6の例ではMビット)の制御用端子を有し、この制御用端子への設定値によって周波数を変更できるようになっている。なお、ビット数Mをできるだけ増やすことで、より細かい発振周波数の制御や、周波数の可変範囲を広げることができる。
【0067】
温度センサ48は、CDR回路33の内部温度を測定する温度計であり、温度センサ48の測定値(アナログ値)は、ADコンバータ50にNビットのデジタル値に変換されて温度補償部47に入力される。また、VCO制御電圧(VCO44の入力電圧)は、ADコンバータ49によってデジタル値に変換されて温度補償部47に入力される。
温度補償部47は、入力電圧が固定されたVCO44の発振周波数が、スリープ時間中の温度変化によって変動するのを防止するため、VCO44の制御用端子への設定値を校正する。
【0068】
具体的には、温度補償部47は、VCO制御電圧がスイッチ43によって断線された状態(すなわち、スリープ時間中)における、温度変化に伴う周波数変化を抑制するのに必要な設定値を、参照テーブル(図9)の形式で有している。
温度補償部47は、制御スイッチ43を断線させる制御信号S2を受けると、温度センサ48の測定値とVCO制御電圧値を上記参照テーブルに適用し、VCO44に対するMビットの出力値を変化させる。
【0069】
ここで、温度、VCO制御電圧及び発振周波数の間には、例えば、図7に示すような関係がある。つまり、VCO44の発振周波数は、VCO制御電圧に概ね比例し、その比例関係は温度T1〜T3ごとに成立する。
従って、上記の関係を予めVCO44ごとに把握してテーブル化しておけば、現時点の温度とVCO制御電圧の測定値に基づいて、温度変化前の所望の発振周波数を特定することができる。
【0070】
例えば、図8に示すように、光トランシーバ21のスリープ時間中に、温度がT2からT3に変化した場合を想定する。この場合、制御スイッチ43がオフでVCO制御電圧が固定であるから、VCO44の発振周波数は所望周波数よりも下がることになる。
一方、VCO44はMビットの入力端子を有しており、その入力端子への設定値に応じて内部の素子(例えば、コンデンサやインダクタ等)を制御することで発信周波数を変化させることができる。そこで、温度補償部47は、図8のような温度変化に伴う発振周波数の変化を抑制するため、Mビットの出力値を変化させる。
【0071】
この変形例では、温度補償部47は、図9に示す参照テーブルを用いて、Mビットの出力値を決定する。図9の参照テーブルは、スリープ開始時の温度Tbとその温度Tbからの温度変化量Tcとを2次元配列で並べたテーブルになっており、開始温度Tbの各エントリTb1,Tb2,Tb3……には、その温度からの温度変化量Tcごとに、現在の周波数を保持するために必要な、VCO44に対するビット設定値が記録されている。
なお、発振周波数ごとにVCO44に対する設定値が変わる可能性があるので、周波数ごとに図9の参照テーブルを持つ必要がある。
【0072】
もっとも、図9の参照テーブルに寄らずとも、例えば、次のような関数式を用いてVCO44に対するMビット値を決定することもできる。
Mdec ≒Q(Tb,Tc,f)
ここで、上記式中のMdec は、VCO44に対するMビット設定値を10進数で表現した数値である。また、Tbはスリープ開始時の温度、Tcはスリープ中の温度Tc、及び、fは保持したい所望の発振周波数を示し、Qは、実験的に明らかにされた、Tb,Tc,fとMdec との関係を表す関数である。
【0073】
なお、この変形例の場合の、温度補償部47が行う動作シーケンスは次の通りである。
1) 温度補償部47は、制御スイッチ43を切断する制御信号S2をMAC部23から通知されると、VCO制御電圧のデジタル値と温度のデジタル値から、スリープ動作に入る時点でのVCO発振周波数を特定し、制御信号S2が入った際のCDR回路33の温度Tbを保持する。
【0074】
2) 温度補償部47は、スリープ時間中は常に温度を監視し、保持した温度Tbとの比較結果に基づいて、VCO44に対するMビット値を変化させる。
3) スリープ時間が経過すると、すなわち、MAC部23からの制御信号S2が切り替わると、温度補償部47は、Mビット値の更新処理をを停止して、保持していた温度Tbの値をリセットする。なお、温度補償部47は、光トランシーバ21の動作中(アウェイク状態)は、Mビット値の更新処理を行わない。
【0075】
〔第2実施形態〕
図10は、本発明の第2実施形態に係る信号処理回路の機能ブロック図である。
本実施形態の信号処理回路(図10)が第1実施形態の信号処理回路(図4)と異なる点は、PMA部(SerDes)25に、送信信号を受信側にループバックすることができる選択回路35が設けられ、この選択回路35の入力元をループバック側に切り替えることにより、CDR回路33の同期クロックを保持するようにした点にある。
【0076】
図10に示すように、選択回路35は、例えば、2入力1出力のマルチプレクサよりなり、2つの入力端子のうちの一方がシリアル化部32の出力端子と繋がり、他方が光トランシーバ21の出力端子と繋がっている。また、選択回路35の出力端子は、CDR回路33の入力端子に繋がっている。
このため、選択回路35は、受信側処理部を構成するCDR回路33に入力する入力信号の入力元として、光トランシーバ21又は送信側処理部のシリアル化部32のいずれか一方を選択可能である。
【0077】
選択回路35の制御端子には制御部27からの制御信号S2が入力される。同期維持モードを開始する制御信号S2を受けると、選択回路35は、その入力元をシリアル化部32側に切り替え、送信信号を受信側のCDR回路33にループバックさせる。
ここで、PONシステムの宅側装置2では、受信側処理部のCDR回路33が再生した同期クロックを送信側処理部の信号処理にも使用する。
【0078】
従って、スリープ時間以前に再生された同期クロックにて信号処理された送信信号を、CDR回路33にループバックさせれば、スリープ時間以前に再生された同期クロックと同じクロックをCDR回路33が再生し、同期クロックが保持されることになる。
一方、同期維持モードが終了して制御部27からの制御信号S2が元に戻ると、選択回路35は、その入力元を光トランシーバ21に切り替え、光トランシーバ21が出力する受信信号をCDR回路33に入力する。
【0079】
このように、本実施形態の信号処理回路(図10)によっても、光トランシーバ21の機能を低下させるスリープ動作を行う場合に、既に再生されたクロックをスリープ時間中において保持し、かつ、スリープ時間の終了とともにクロックの保持を解除する同期維持モードを実行することができるので、第1実施形態の信号処理回路(図4)と同様の作用効果を奏する。
なお、制御信号S1と制御信号S2の開始及び終了時点t1〜t4のタイミングについても、第1実施形態の場合(図3参照)と同様である。
【0080】
上記のような選択回路35を備えたSerDes25は、送信信号のループバックが可能なSerDesとして既に市販されている。
従って、本実施形態の信号処理回路(図10)の場合には、市販のSerDes25の制御ポートに制御信号S2の信号線を接続するだけで構成でき、回路素子の追加を伴わないので、信号処理回路を低コストで実装できるという利点もある。
【0081】
〔その他の変形例〕
本発明の権利範囲は、上述の実施形態(変形例を含む。)ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びその構成と均等な範囲内のすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、同期維持モードの制御対象であるCDR回路33や選択回路35が、MAC部23と独立したPMA部(SerDes)25に搭載されている場合を例示したが、CDR回路33以外のPMA部25やPCS部26の信号処理機能を、MAC部23の集積回路に統合した実装であってもよい。
【0082】
また、上述の実施形態では、本発明の信号処理回路をPONシステムの宅側装置2に搭載した場合を例示したが、本発明の信号処理回路は、PONシステムに限らず、P2P(Point to Point)で光通信を行う回線終端装置に採用することもできる。
【符号の説明】
【0083】
1 局側装置(OLT)
2 宅側装置(ONU)
21 光トランシーバ
22 PHY部
23 MAC部
24 UNI
25 PMA部(SerDes)
26 PCS部
27 制御部
31 バッファ(送信側処理部)
32 シリアル化部(送信側処理部)
33 クロックデータ再生部(受信側処理部)
34 パラレル化部(受信側処理部)
35 選択回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光トランシーバから入力された受信信号からクロックと受信データを再生し、再生された前記受信データを上位層側に出力する受信側処理部と、
前記上位層側から入力された送信データを再生された前記クロックと同期する送信信号として前記光トランシーバに出力する送信側処理部と、
前記光トランシーバの機能を低下させるスリープ動作を行う場合に、既に再生された前記クロックをスリープ時間中において保持し、かつ、前記スリープ時間の終了とともに前記クロックの保持を解除する同期維持モードを実行する制御部と、
を備えていることを特徴とする信号処理回路。
【請求項2】
前記制御部は、前記同期維持モードを実行する場合に、前記クロックの保持を開始してから前記光トランシーバの機能を低下させ、前記光トランシーバの機能を復帰させてから前記クロックの保持を解除する請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項3】
前記受信側処理部は、PLL方式のCDR回路を含んでおり、
前記制御部は、前記CDR回路の電圧制御発振器への入力電圧を固定することにより、前記クロックを保持する請求項1又は2に記載の信号処理回路。
【請求項4】
前記受信側処理部に入力する入力信号の入力元として、前記光トランシーバ又は前記送信側処理部のいずれかを選択する選択回路を更に備え、
前記制御部は、前記送信側処理部を選択するように前記選択回路を制御することにより、前記クロックを保持する請求項1又は2に記載の信号処理回路。
【請求項5】
光トランシーバから入力された受信信号から再生したクロックを所定時間だけ保持して、前記受信信号の送信元とのクロックの同期を維持する方法であって、
前記光トランシーバの機能を低下させるスリープ動作を行う場合に、既に再生された前記クロックをスリープ時間中において保持し、
前記スリープ時間の終了とともに前記クロックの保持を解除することを特徴とする同期維持方法。
【請求項6】
前記クロックの保持を開始してから前記光トランシーバの機能を低下させ、前記光トランシーバの機能を復帰させてから前記クロックの保持を解除する請求項5に記載の同期維持方法。
【請求項7】
受動的光分岐ノードを介して局側装置と双方向の光通信を行う宅側装置であって、
光信号と電気信号とを相互に変換可能な光トランシーバと、
前記光トランシーバの上位層側に配置された請求項1〜4のいずれか1項に記載の信号処理回路と、
を備えていることを特徴とする宅側装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26712(P2013−26712A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157844(P2011−157844)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】