説明

PTD/CPPSへのdsRNA結合ドメイン融合体によるsiRNAの導入可能な送達

本開示は、細胞または被験体に、診断剤および治療剤などの陰イオン荷電した核酸分子を送達するのに有用な融合ポリペプチドおよび構築物を提供する。この融合構築物は、タンパク質導入ドメインおよび核酸結合ドメイン、またはタンパク質導入ドメインおよび核酸上の陰イオン電荷を中和するのに十分な1個以上の核酸結合ドメインで被覆された該核酸を含む。また、細胞増殖性障害などの疾患および障害を治療する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2006年2月10日に提出された米国特許仮出願第60/772,787号;および2006年2月21日に提出された米国特許仮出願第60/775,638号(その開示は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に対して、35 U.S.C. §119の下での優先権を主張するものである。
【0002】
連邦支援研究に関する記述
米国政府は、米国立衛生研究所からの認可番号R01 CA96098に準拠する本発明における特定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、細胞への核酸送達に関する。より具体的には、本発明は、陰イオン電荷を中和する核酸結合ドメインに融合されたタンパク質導入ドメインを用いる、細胞へのsiRNAなどの陰イオン荷電した分子の送達に関する。
【背景技術】
【0004】
mRNAを選択的に分解する細胞機構としてのRNA干渉(RNAi)の発見により、細胞培養物中での細胞表現型の標的化された操作と、指向性治療剤の開発の可能性の両方が可能になる(Behlke, Mol. Ther. 13, 644-670, 2006; Xieら、Drug Discov. Today 11, 67-73, 2006)。
【0005】
siRNAは、そのサイズおよび負(陰イオン)に荷電した性質に起因して、細胞表現型の操作に関する大きな可能性を有するが、siRNAは細胞に進入する能力を持たない巨大分子である。実際、siRNAは、一般的にはサイズを500 Da未満に限定する膜拡散性分子の細胞送達に関してLipinskiの「5つの規則(Rule of 5s)」の25倍過剰である。結果として、送達ビヒクルまたはトランスフェクション剤の非存在下では、裸のsiRNAは、ミリモル濃度でも細胞に進入しない(Barquineroら、Gene Ther. 11 Suppl 1, S3-9, 2004)。siRNA送達の問題を解決するために、siRNAを濃縮し、かつ細胞膜に穴を開ける陽イオン脂質の使用に大きな注目が注がれてきた。広く用いられているが、トランスフェクション試薬は、多くの細胞型、特に、初代細胞および造血細胞系(TおよびB細胞、マクロファージ)への効率的な送達を達成することができない。さらに、リポフェクション試薬は、しばしば、腫瘍細胞における軽度なものから初代細胞における高度なものまで、様々な程度の細胞毒性をもたらす。
【0006】
DNAを濃縮するプロタミンとの抗体融合体(Songら、Nat. Biotechnol. 23, 709-717, 2005)および受容体標的化RNAアプタマーとのsiRNA融合体(McNamaraら、Nat. Biotechnol. 24, 1005-1015, 2006)の最近の細胞指向性標的化手法は、選択細胞にsiRNAを送達する能力を与える。両方の手法は有望であるが、それらは受容体を発現する腫瘍細胞の100%にsiRNAを送達することはできず、他の非受容体発現細胞に対して修正するのが容易ではなく、2〜3の細胞型に対してのみ試験されているに過ぎない。最後に、LDL粒子を形成するコレステロールの封入による凝集物のナノ粒子形成誘導、およびPEI濃縮手法または負の電荷をマスキングするリポソームにおけるsiRNA封入は、いくつかの腫瘍細胞中に様々な成功率でsiRNAを送達することが示された(Scherrら、Ann. Hematol. 83, 1-8, 2004; Schiffelersら、Nucleic Acids Res. 32, e149, 2004; Songら、2005; Soutschekら、Nature 432, 173-178, 2004; Urban-Kleinら、Gene Ther. 12, 461-466, 2005; Zhangら、Genet. Vaccines Ther. 3, 5, 2005)。かくして、迅速な、非細胞毒性機構により、全細胞型、初代細胞および腫瘍形成性細胞の約100%を標的化するsiRNA巨大分子送達問題を解決するための手法を考案することは、細胞培養でのRNAi能力の拡張、標的スクリーニングおよび治療剤開発にとって依然として重要である。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、陰イオン荷電した核酸と複合化して核酸結合タンパク質-核酸複合体を形成している核酸結合タンパク質;および核酸結合タンパク質-核酸複合体に連結されたタンパク質導入ドメイン(PTD)、を含む組成物を提供する。一態様においては、前記核酸結合タンパク質は、二本鎖RNA結合ドメイン(DRBD)を含む。別の態様においては、該核酸は、陰イオン荷電した核酸である。さらに別の態様においては、該核酸はdsRNAを含む。
【0008】
本発明はさらに、i)膜輸送機能を含むタンパク質導入部分(PTD)を含む第1ドメイン;およびii)核酸結合タンパク質を含む第2ドメインを含む融合ポリペプチド;b)陰イオン荷電し、核酸結合タンパク質と相互作用する核酸であって、PTD-核酸結合タンパク質-核酸の全体の陰イオン電荷が核酸のみと比較して低下している前記核酸;およびc)製薬上許容し得る担体を含む、組成物を提供する。
【0009】
本発明は、a)膜輸送機能を含むタンパク質導入ドメイン(PTD)およびb)結合した核酸の陰イオン電荷を中和するか、または低下させる核酸結合ドメインを含む融合ポリペプチドであって、PTDが該核酸結合ドメインに機能し得る形で連結されている、前記融合ポリペプチドを提供する。
【0010】
本発明はまた、a)膜輸送機能を含むタンパク質導入ドメイン(PTD);およびb)結合した核酸の陰イオン電荷を中和するか、または低下させる核酸結合ドメインであって、PTDが該核酸結合ドメインに機能し得る形で連結されている前記ドメイン、ならびに製薬上許容し得る担体を含む、医薬組成物も含む。
【0011】
本発明は、細胞中に陰イオン荷電した核酸分子を導入する方法であって、陰イオン荷電した核酸と複合化して核酸結合タンパク質-核酸複合体を形成している核酸結合タンパク質と、核酸結合タンパク質-核酸複合体に連結されたタンパク質導入ドメイン(PTD)とを含む組成物;または、a)膜輸送機能を含むタンパク質導入ドメイン(PTD)と、b)結合した核酸の陰イオン電荷を中和するか、もしくは低下させる核酸結合ドメインであって、PTDが核酸結合ドメインおよび結合した核酸に機能し得る形で連結されている前記ドメインとを含む融合ポリペプチドを、細胞を接触させることを含む、前記方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、細胞中に陰イオン荷電した核酸分子を導入する方法であって、該核酸分子を、陰イオン電荷を中和するか、または低下させる核酸結合ドメインと結合させ、該複合体をタンパク質導入ドメイン(PTD)に連結し、および該細胞をPTD電荷中和された核酸と接触させることを含む前記方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、a)膜輸送機能を含むタンパク質導入ドメイン(PTD);およびb)結合した核酸の陰イオン電荷を中和するか、または低下させる核酸結合ドメインであって、PTDが該核酸結合ドメインに機能し得る形で連結されている前記ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドも提供する。前記ポリヌクレオチドを含むベクターならびに該ベクターおよび/またはポリヌクレオチドを含む宿主細胞も提供する。
【0014】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを発現させ、発現された融合ポリペプチドを実質的に精製することを含む、融合ポリペプチドを製造する方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞を、該ポリヌクレオチドが発現される条件下で培養し、発現された融合ポリペプチドを実質的に精製することを含む、融合ポリペプチドを製造する方法も提供する。
【0016】
本発明は、細胞に導入するための組成物を作製する方法であって、陰イオン荷電した核酸を、a)膜輸送機能を含むタンパク質導入ドメイン(PTD);およびb)結合した核酸の陰イオン電荷を中和するか、または低下させる核酸結合ドメインであって、PTDが核酸結合ドメインに機能し得る形で連結されている前記ドメイン、を含む融合ポリペプチドと接触させることを含む前記方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、(a)タンパク質導入ドメイン;および(b)核酸結合タンパク質を含む、1または複数の容器を含むキットも提供する。このキットはさらに、dsRNA分子を含んでもよい。
【0018】
本発明は、タンパク質導入ドメイン(PTD)を用いて、ポリヌクレオチド上の電荷を可逆的にマスキングするか、または中和することにより、細胞中にsiRNAを送達するのに有用な方法、および組成物を提供する。一態様においては、二本鎖RNA(dsRNA)結合ドメイン(DRBD)を用いて、電荷をマスキングする。さらなる態様においては、2〜4個のDRBDが、dsRNAシリンダーの表面を覆い、送達しようとするポリヌクレオチドの実質的な一部をマスキングする。DRBDは、任意のポリヌクレオチド(例えば、siRNA)を、本発明の方法および組成物により送達することができるように、配列非依存的様式で結合する。
【0019】
本開示は、診断剤および治療剤を包含する陰イオン荷電した核酸分子を、細胞または被験体に送達するのに有用な融合ポリペプチドおよび構築物を提供する。この融合構築物は、タンパク質導入ドメインと核酸結合ドメイン、またはタンパク質導入ドメインと核酸上の陰イオン電荷を中和するのに十分な1個以上の核酸結合ドメインで被覆された核酸を含む。
【0020】
例えば、陰イオン性RNAの電荷中和は、陽イオン性PTDを遊離させ、コンジュゲートの凝集も防止する。露出したPTDは細胞表面と相互作用し、マクロピノサイトーシスを誘導し、およびマクロピノソームから細胞質への漏出を促進する。一度細胞内に入れば、核酸結合タンパク質(例えば、DRBD)は、例えば、siRNAのRISCへの搭載に関与するTRBPなどの内因性DRBD含有タンパク質により除去されるか、またはPEST配列などの不安定化モチーフが付加されて、細胞質中のsiRNAから除去されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形の「a」、「and」および「the」は、本文が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。かくして、例えば、「a PTD」に対する参照は、複数のそのようなPTDを含み、「the cell」に対する参照は、当業者には公知の1個以上の細胞に対する参照などを含む。
【0022】
特に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本開示が属する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似するか、または等価な方法および材料を、開示される方法の実施および組成物中で用いることができるが、方法、装置および材料の例を本明細書に記載する。
【0023】
上記で、およびその本文を通して考察された刊行物は、本出願の出願日前にその開示について単に提供しているだけである。本明細書に記載のものは、本発明者らが以前の開示という理由でそのような開示に先行する権利を与えられないことを許諾するものと解釈されるべきではない。
【0024】
機能性薬剤を細胞に送達する能力には、細胞膜によって課される生体利用能の制限のため問題がある。すなわち、細胞の形質膜は、有効な障壁を形成することにより、分子の細胞内取込みを、十分に非極性であり約500ダルトンよりも小さいサイズのものに限定する。タンパク質の内在化を増強するための以前の努力は、タンパク質を受容体リガンドに融合させること(Ngら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:10706-11, 2002)またはそれらをケージに入れたリポソーム担体中にパッケージングすること(Abu-Amerら、J. Biol. Chem. 276: 30499-503, 2001)に焦点を当ててきた。しかしながら、これらの技術では、乏しい細胞取込みやエンドサイトーシス経路への細胞内隔離をもたらすことが多い。
【0025】
本発明の利点は、さもなければトランスフェクトするのが難しく、マイクロインジェクションが可能性ある選択肢ではないような核酸の細胞内送達を含む。例えば、初代リンパ球はトランスフェクトするのが非常に難しく、DNA構築物のエレクトロポレーションを必要とする。このプロセスは非常に非効率的であり、90〜99%の細胞を殺傷し、生存する細胞は10%未満であるという治療結果をもたらす。
【0026】
本開示は、細胞形質導入および細胞調節(modulation)において有用な融合ポリペプチドおよび組成物を提供する。本開示の融合ポリペプチドは、膜輸送機能を含む導入部分ドメインと、核酸上の陰イオン電荷を可逆的に中和するのに十分な核酸結合ドメインとを含む。さらなる態様においては、本発明の融合ポリペプチドは、前記核酸結合ドメインと相互作用することができる陰イオン性核酸分子(例えば、dsRNA)を含む。
【0027】
そのような方法および組成物を用いて、様々な疾患および障害を治療することができる。例えば、抗腫瘍siRNAを送達すると、腫瘍細胞の増殖を阻害、抑制、または破壊することができる。例えば、抗腫瘍siRNAは、血管新生を促進するポリペプチドをコードする遺伝子に対して標的化されたsiRNAであってよい。腫瘍増殖に関連する様々な血管新生タンパク質が、当業界で公知である。
【0028】
かくして、本開示は任意の特定の核酸結合ドメインまたは核酸ドメインに限定されないと理解されるべきである。むしろ、前記核酸ドメインは、送達しようとする核酸結合ドメインの陰イオン電荷を可逆的に中和するか、または低下させることができる任意の核酸結合ドメインであってよい。さらに、任意の陰イオン荷電した核酸(例えば、dsRNA、siRNAなど)を、本明細書に記載の方法および組成物を用いて送達することができる。
【0029】
本発明は、干渉性RNA剤の送達にとって有用な方法および組成物を提供する。RNA干渉(RNAi)とは、メッセンジャーRNA(mRNA)が、サイレント化しようとする標的遺伝子のものと同一または非常に類似するヌクレオチド配列を含む二本鎖RNA(dsRNA)に由来する小分子干渉性RNA(siRNA)により分解されるプロセスである。このプロセスは、転写後かつ翻訳前の操作を通じて標的化遺伝子によりコードされるタンパク質の産生を阻止する。それにより、優性疾患遺伝子のサイレンシングを達成することができる。
【0030】
植物およびハエならびに虫などの遺伝子研究および生化学的研究により、dsRNAが、Dicerと呼ばれる酵素であるdsRNAエンドリボヌクレアーゼによって短い干渉性RNA(siRNA)へと切断され(Bernasteinら、2001;Hamilton & Baulcombe, 1999, Science 286: 950;MeisterおよびTuschl, 2004, Nature 431, 343-9)、それにより元の単一のdsRNAから複数の分子が生成される、同様のプロセスが発見された。siRNAは、マルチマーRNAiサイレンシング複合体(RISC)中に搭載され、これは触媒活性化およびmRNA標的特異性の両方をもたらす(HannonおよびRossi, Nature 431, 371-378, 2004; NovinaおよびSharp, Nature 430, 161-164, 2004)。RISC中へのsiRNA搭載の際に、アンチセンス鎖またはガイド鎖はsiRNAから分離し、RISC触媒サブユニットであるArgonaute-2 (Ago2)中にドッキングされたままである(Leuschnerら、EMBO Rep. 7, 314-320, 2006)。核から細胞質に輸出されたmRNAは、リボソームの到着前に、活性化されたRISCを通過し、それによって、遺伝子発現の指向性で転写後かつ翻訳前の調節を可能にすると考えられる。理論においては、それぞれの、そして全ての細胞mRNAを、選択的RNAi応答の誘導により調節することができる。
【0031】
哺乳動物細胞中でRNAi応答を効率的に誘導する21〜23 bp siRNAの能力は、今やありふれたものである(Sontheimer, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 6, 127-138, 2005)。siRNAの50%阻害濃度(IC50)は、10〜100 pMの範囲にあり、1〜10 nMの範囲のIC50を有する最良の薬剤よりも有意に低い。結果として、その優れた選択性に起因して、RNAiは、細胞表現型の指向性操作、遺伝的経路のマッピング、治療標的の探索および検証のための基礎となり、著しい治療能力を有する。
【0032】
RNAiの最も興味深い態様としては、(1)一本鎖アンチセンスRNAではなく、dsRNAが干渉剤である;(2)このプロセスは高度に特異的であり、著しく強力である(効率的な干渉には、細胞1個あたり2〜3個のdsRNA分子が必要なだけである);(3)干渉活性(およびおそらくdsRNA)は、導入部位から遠く離れた細胞および組織における干渉を引き起こし得ることが挙げられる。しかしながら、dsRNAの効率的な送達は難しい。例えば、13,860ダルトンの分子量を有する21 bpのdsRNAは、該RNAの(1)サイズおよび(2)極端な負の(酸性)電荷のため、細胞膜を横切って細胞質に進入することができない。
【0033】
TAT、8xArg、Antp(SnyderおよびDowly, 2005, Expert Opin. Drug Deliv. 2, 43-51)などの陽イオン性ペプチド導入ドメイン(PTD)(細胞透過性ペプチド、CPPとも呼ばれる)に対する積荷(cargo)の巨大分子融合を用いて、該巨大分子の取込みを促進することができる。PTDを用いて、ペプチド、タンパク質、PNA、およびDNAベクターなどの様々な巨大分子積荷を、100%の初代細胞および形質転換細胞に、全部ではなくともほとんどの組織に送達することができる。PTDを含む前臨床モデルが、いくつかの臨床試験において現在試験中である(Schwarzeら、1999, Science 285, 1569-1572; Eguchiら、2001, J. Biol. Chem. 276, 2620426210; Koppelhusら、2002, Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 12, 51-63)。陽イオン性PTDは、全ての細胞が行う液相取込みの特殊化された形態である、マクロピノサイトーシスにより細胞に進入する。
【0034】
モデル小胞に関する生物物理学的研究は、マクロピノソーム小胞から細胞質への積荷の漏出には、pHの低下が必要であることを示唆している(Magzoubら、2005, Biochemistry 44, 14890-14897)。PTDまたはCPPの陽イオン電荷は、前記分子が細胞膜を横切るのに必須である。驚くべきことではないが、陰イオン性siRNA(約40の負の電荷)とのに対する陽イオン性PTD(6〜8の正の電荷)のコンジュゲーションは、siRNAが細胞に進入することなく電荷中和およびPTDの不活化をもたらす(Turnerら、2007, Blood Cells Mol Dis., 38(1), 1-7)。しかしながら、可逆的ジスルフィド結合を介する、陽イオン性TATの陰イオン性RNA(またはDNA)への化学的コンジュゲーションは、陽イオン性TAT PTDの電荷中和をもたらし、かくして、細胞表面を効率的に横断し、該細胞に導入するのに必要な電荷を排除または減少させる。さらに、大過剰の負の電荷、例えば、21 bpのdsRNA 対 TAT上の限定数の陽イオン電荷に起因して、該RNAにコンジュゲートされた任意の遊離のTAT PTDは、ペプチド-核酸コンジュゲートの凝集および沈殿をもたらす。かくして、PTDは巨大分子siRNAを細胞に送達する大きい能力を与えるが、siRNAによるPTD電荷中和は、この手法の利用にとって依然として厄介な障壁である。
【0035】
本発明の方法および組成物は、核酸(例えば、dsRNA)上の電荷を可逆的にマスキングするか、または中和する。本発明は、核酸結合タンパク質を用いて、細胞膜の横断にとって必要な陽イオン電荷を維持しながら、核酸の陰イオン電荷をマスキングし、かくして、PTDの陽イオン活性が細胞膜の横断および細胞の導入を可能にする。
【0036】
本発明は、巨大分子送達問題を解決するのに有用な方法および組成物を提供する。PTD電荷中和を回避し、siRNA送達問題を解決するために、本発明の一実施形態は、dsRNA結合ドメイン(DRBD)に機能し得る形で連結されたPTD送達ドメインを含み、siRNAに結合し、その負の電荷をマスキングするPTD-DRBD構築物を形成する、普遍的siRNA送達手法を提供する。
【0037】
DRBDは、siRNAの細胞へのPTD-DRBD媒介送達を可能にする配列非依存的様式でsiRNAに結合する。siRNAのPTD-DRBD送達を用いたところ、複数の細胞標的に対するRNAi応答が、初代線維芽細胞、ケラチノサイト、TおよびB細胞、マクロファージ、神経細胞ならびにヒト胚性幹細胞(hESC)などの、非細胞毒性様式で試験した全ての細胞型において観察された。
【0038】
例えば、本発明は、PTD(例えば、TAT送達ペプチド)と、PKRのdsRNA結合ドメイン(DRBD)との融合タンパク質は、細胞に効率的に導入することができることを証明する。DRBDは、dsRNAに結合し、dsRNAを覆うか、またはマスキングする。一態様においては、1種以上のDBRDを用いて、dsRNAの陰イオン表面を覆うことができる。例えば、一態様においては、2〜4種のDBRDは、dsRNAシリンダーの表面を覆う。DRBDは配列非依存的様式でdsRNAに結合し、これは、配列組成に関わらず、任意の核酸(例えば、siRNA)をこの手法により送達することができることを意味している。
【0039】
代替的な手法は、核酸(例えば、siRNA)とPTD-DRBD(例えば、TAT-DRBD)融合タンパク質の間のジスルフィド結合またはエステル結合を操作して、結合アビディティをさらに増加させることを含んでもよい。続いて、この複合体は還元され、細胞の内側に放出される。同様に、siRNAをDRBDで被覆し、TATを生物学的に感受性の高い可逆的様式でsiRNAに直接コンジュゲートすることができる。
【0040】
PTD-DRBD-核酸複合体が一度細胞膜を横断すれば、PTD-DRBD-核酸複合体は続いて還元され、細胞の内側に放出される。次いで、dsRNAは、RNAse III様リボヌクレアーゼであるDicerにより加水分解され、それによって標的遺伝子をサイレンシングするsiRNAを放出する。
【0041】
かくして、ヒト疾患を選択的に治療するRNAiの能力を、被験体および細胞へと効率的に送達することができる。本発明は、RNAiを送達するのを難しくするか、または送達不可能にする大きさおよび電荷の制限を克服する。核酸(例えば、dsRNA)上の陰イオン電荷を可逆的に中和することにより、PTDは、陰イオン荷電した核酸をin vitroおよびin vivoで細胞中に送達することができる。
【0042】
いくつかのタンパク質導入ドメイン/ペプチドが当業界で公知であり、該ドメインに連結された異種分子(例えば、積荷(cargo)分子)の取込みを容易にすることが証明された。そのような導入ドメインは、マクロピノサイトーシスと呼ばれるプロセスを介して取込みを容易にする。しかしながら、マクロピノサイトーシスは、全ての細胞が行うエンドサイトーシスの非選択的な形態である。結果として、タンパク質導入のこの非選択的態様はまた、大多数のPTD-積荷がin vivoで非標的細胞中に導入されることをもたらし、それによって、非常により多い材料を必要とする。従って、薬理学的に言えば、PTDは、それらがin vivoで意図される細胞および組織への特異的送達の欠如において、現在用いられている小分子治療剤に類似している。
【0043】
真核細胞の形質膜を効率的に通過することができるいくつかのタンパク質の発見は、ペプチド導入ドメインが誘導されたタンパク質のクラスの同定をもたらした。これらのタンパク質のうち、最も特性評価されているものは、ショウジョウバエホメオタンパク質アンテナペディア転写タンパク質(AntHD)(Joliotら、New Biol. 3: 1121-34, 1991; Joliotら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 1864-8, 1991; Le Rouxら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 9120-4, 1993)、単純ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22 (ElliottおよびO'Hare, Cell 88: 223-33, 1997)、HIV-1転写活性化因子TATタンパク質(GreenおよびLoewenstein, Cell 55: 1179-1188, 1988; FrankelおよびPabo, Cell 55: 1189-1193, 1988)、ならびにより最近では、プリオンタンパク質の陽イオン性N末端ドメインである。これらのタンパク質は形質膜を通過することができるだけでなく、酵素β-ガラクトシダーゼなどの他のタンパク質の結合はこれらの複合体の細胞取込みを刺激するのに十分であった。そのようなキメラタンパク質は、細胞質および核内で生物学的に活性な形態で存在する。このプロセスの特性評価により、これらの融合ポリペプチドの取込みが迅速であり、受容体非依存的な様式で、数分以内に起こることが多いことが示された。さらに、これらのタンパク質の導入は、細胞型により影響されないようであり、明らかな毒性を示さずに培養物中で約100%の細胞を効率的に導入することができる(Nagaharaら、Nat. Med. 4: 1449-52, 1998)。完全長タンパク質に加えて、タンパク質導入ドメインをも用いて、DNA(Abu-Amer、上掲)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(Astriab-Fisherら、Pharm. Res, 19: 744-54, 2002)、小分子(Polyakovら、Bioconjug. Chem. 11: 762-71, 2000)およびさらに無機性40ナノメーター鉄粒子(Doddら、J. Immunol. Methods 256: 89-105, 2001; Wunderbaldingerら、Bioconjug. Chem. 13: 264-8, 2002; Lewinら、Nat. Biotechnol. 18: 410-4, 2000; Josephsonら、Bioconjug., Chem. 10: 186-91, 1999)の取込みを誘導することができたが、これはこのプロセスに対する明らかなサイズ制限が存在しないことを示唆している。
【0044】
タンパク質導入ドメイン(PTD)と異種分子(例えば、ポリヌクレオチド、小分子、またはタンパク質)との融合体は、濃度依存的様式で、様々な細胞中へのそれらの導入を引き起こすのに十分である。さらに、タンパク質送達のためのこの技術は、DNAおよび薬剤に基づく技術に関連する多くの問題を回避するようである。しかしながら、RNAi分子は高度に陰イオン性であり、そのような核酸分子は、本発明に先行するPTDを用いた場合には効率的に導入されなかったことに留意することが重要である。
【0045】
PTDは、典型的には天然では陽イオン性である。これらの陽イオン性タンパク質導入ドメインは、それらと共に、それらの連結された積荷を担持する脂質ラフトエンドソーム中を通過し、エンドソーム小胞の破壊によりそれらの積荷を細胞質中に放出する。PTDの例としては、AntHD、TAT、VP22、陽イオン性プリオンタンパク質ドメインおよびそれらの機能的断片が挙げられる。本開示は、TATおよびポリ-ArgなどのPTDの使用を、核酸(すなわち、「積荷」)ドメイン上の陰イオン電荷を中和することができる核酸結合ドメインと組み合わせる方法および組成物を提供する。これらの組成物は、治療剤または診断剤を細胞に標的化させ、PTDが標的化された細胞中に該組成物の取込みを引き起こす方法を提供する。
【0046】
一般的には、融合分子の導入ドメインは、融合分子を導入するか、または融合分子の導入を援助することができるほぼ任意の合成または天然のアミノ酸配列であってよい。例えば、導入を、核酸結合ドメイン(例えば、DRBD)、核酸結合ドメイン(例えば、DRBD)で被覆された核酸またはその両方にN末端またはC末端で共有結合された、HIV TATタンパク質またはその断片などのタンパク質導入ドメインの使用によって、本発明に従って達成することができる。あるいは、タンパク質導入ドメインは、アンテナペディアホメオドメインもしくはHSV VP22配列、プリオンタンパク質のN末端断片または当業界で公知のものなどのその好適な導入断片を含んでもよい。
【0047】
PTDの型およびサイズを、所望の導入の程度などのいくつかのパラメーターにより導くことができる。典型的には、PTDは少なくとも約20%、25%、50%、75%、80%または90%、95%、98%および最大で、約100%の細胞を導入することができる。典型的には、導入された細胞の割合として表される導入効率を、いくつかの従来の方法により決定することができる。
【0048】
PTDは、細胞中で少なくともピコモル量の融合分子を好む細胞の進入および退出速度(それぞれk1およびk2と呼ばれることもある)を示すであろう。PTDおよび任意の積荷の進入および退出速度を、検出可能に標識された融合分子を用いる標準的な動力学的分析により容易に決定するか、または少なくとも近似することができる。典型的には、進入速度と退出速度の比率は、約5〜約100の範囲にあり、最大約1000であるであろう。
【0049】
一態様においては、本発明の方法および組成物において有用なPTDは、実質的なα-ヘリックス構造を特徴とするペプチドを含む。PTDが有意なα-ヘリックス構造を示す場合、導入が最適化されることが発見された。別の実施形態においては、PTDは前記ペプチドの少なくとも一方の面に沿って実質的に整列された塩基性アミノ酸残基を含有する配列を含む。本発明において有用なPTDドメインは、天然のペプチドまたは合成ペプチドであってよい。
【0050】
本発明の別の態様においては、PTDは、らせん状円筒の下にアルギニン(Arg)残基を有する強力なα-ヘリックス構造を含むアミノ酸配列を含む。
【0051】
さらに別の実施形態においては、PTDドメインは、以下の一般式:B1-X1-X2-X3-B2-X4-X5-B3 (配列番号1) (式中、B1、B2およびB3はそれぞれ独立に、同じか、または異なっていてもよい塩基性アミノ酸であり;X1、X2、X3、X4およびX5はそれぞれ独立に、同じか、または異なっていてもよいα-ヘリックスを強化するアミノ酸である)により表されるペプチドを含む。
【0052】
別の実施形態においては、PTDドメインは、以下の一般式:B1-X1-X2-B2-B3-X3-X4-B4 (配列番号2) (式中、B1、B2およびB3はそれぞれ独立に、同じか、または異なっていてもよい塩基性アミノ酸であり;X1、X2、X3およびX4はそれぞれ独立に、同じか、または異なっていてもよいα-ヘリックスを強化するアミノ酸である)により表される。
【0053】
さらに、PTDドメインは、塩基性残基、例えば、リジン(Lys)またはアルギニン(Arg)を含み、「ねじれ」を該ドメインに導入するのに十分な少なくとも1個のプロリン(Pro)残基をさらに含んでもよい。そのようなドメインの例としては、プリオンの導入ドメインが挙げられる。例えば、そのようなペプチドは、KKRPKPG (配列番号3)を含む。
【0054】
一実施形態においては、前記ドメインは、以下の配列:X-X-R-X-(P/X)-(B/X)-B-(P/X)-X-B-(B-X) (配列番号4)(式中、Xはアラニンなどの任意のα-ヘリックスを促進する残基であり;P/Xはプロリンまたは以前に定義されたXであり;Bは塩基性アミノ酸残基、例えば、アルギニン(Arg)またはリジン(Lys)であり;Rはアルギニン(Arg)であり、B/XはBまたは上記で定義されたXである)により表されるペプチドである。
【0055】
別の実施形態においては、PTDは陽イオン性であり、7〜10個のアミノ酸からなり、式KX1RX2X1 (式中、X1はRまたはKであり、X2は任意のアミノ酸である)(配列番号5)を有する。そのようなペプチドの例は、RKKRRQRRR (配列番号6)を含む。
【0056】
本発明に従うさらなる導入ドメインとしては、TATの少なくともアミノ酸49〜56を含み最大で約完全長のTAT配列(例えば、配列番号7を参照)を含むTAT断片が挙げられる。TAT断片は、該断片のα-ヘリックス構造性を増加させるのに十分な1個以上のアミノ酸変化を含んでもよい。いくつかの例においては、導入されるアミノ酸変化は、認識されるα-ヘリックスを強化するアミノ酸を付加することを含むであろう。あるいは、このアミノ酸変化は、TAT断片から1個以上のアミノ酸を除去することを含み、α-ヘリックスの形成または安定性を阻害するであろう。より具体的な実施形態においては、TAT断片は、α-ヘリックス強化アミノ酸について少なくとも1個のアミノ酸置換を含むであろう。典型的には、TAT断片を、標準的なペプチド合成技術により作製することができるが、いくつかの場合においては組換えDNA手法を用いることができる。一実施形態においては、TAT断片中の少なくとも2個の塩基性アミノ酸残基が、そのTAT断片の少なくとも一方の面に沿って実質的に整列されるように、前記置換を選択する。より具体的な実施形態においては、TAT49〜56配列中の少なくとも2個の塩基性アミノ酸残基が、その配列の少なくとも一方の面に沿って実質的に整列されるように、前記置換を選択する。
【0057】
本発明の組成物および方法において用いることができるさらなる導入タンパク質(PTD)としては、TAT49〜56配列中の少なくとも2個の塩基性アミノ酸が、TAT断片の少なくとも一方の面に沿って実質的に整列されるように該配列を改変したTAT断片が挙げられる。例示的なTAT断片は、置換が、前記断片の少なくとも一方の面に沿って49〜56配列の塩基性アミノ酸残基を整列させるTATの少なくともアミノ酸49〜56および典型的には、TAT 49〜56配列中に少なくとも1個の特殊なアミノ酸置換を含む。
【0058】
また、キメラPTDドメインも含まれる。そのようなキメラ導入タンパク質は、少なくとも2種の異なる導入タンパク質の一部を含む。例えば、キメラ導入タンパク質を、例えば、一方はHIV-1に由来し、他方はHIV-2に由来するか、または一方はプリオンタンパク質に由来し、一方はHIVに由来する、2種の異なるTAT断片を融合することにより形成させることができる。
【0059】
PTDを、任意の数の核酸結合ドメイン(例えば、DRBD)と連結するか、または融合させることができる。核酸結合ドメインは、PTDを用いて送達しようとする核酸分子の陰イオン電荷を中和するか、または低下させるのに役立つ。核酸結合ドメインは、PTDドメインの陽イオン電荷が細胞膜を横断することにより細胞を導入するのに十分となるように、陰イオン電荷を十分に低下させることにより、核酸を含む融合構築物の取込みを促進する。
【0060】
PTDに連結することができるRNA結合タンパク質の例としては、ヒストン、RDE-4タンパク質、またはプロタミンが挙げられる。プロタミンは、アルギニンに富むタンパク質であり、例えば、配列RSRRRRRRSCQTRRR (配列番号15)を含む。さらなるdsRNA結合タンパク質および括弧中のそれらのアクセッション番号としては、PKR (AAA36409, AAA61926, Q03963)、TRBP (P97473, AAA36765)、PACT (AAC25672, AAA49947, NP609646)、Staufen (AAD17531, AAF98119, AAD17529, P25159)、NFAR1 (AF167569)、NFAR2 (AF167570, AAF31446, AAC71052, AAA19960, AAA19961, AAG22859)、SPNR (AAK20832, AAF59924, A57284)、RHA (CAA71668, AAC05725, AAF57297)、NREBP (AAK07692, AAF23120, AAF54409, T33856)、カナダプチン(AAK29177, AAB88191, AAF55582, NP499172, NP198700, BAB19354)、HYL1 (NP563850)、下偏成長葉(CAC05659, BAB00641)、ADAR1 (AAB97118, P55266, AAK16102, AAB51687, AF051275)、ADAR2 (P78563, P51400, AAK17102, AAF63702)、ADAR3 (AAF78094, AAB41862, AAF76894)、TENR (XP059592, CAA59168)、RNaseIII (AAF80558, AAF59169, Z81070Q02555/S55784, PO5797)、およびDicer (BAA78691, AF408401, AAF56056, S44849, AAF03534, Q9884)、RDE-4 (AY071926), FLJ20399 (NP060273, BAB26260)、CG1434 (AAF48360, EAA12065, CAA21662)、CG13139 (XP059208, XP143416, XP110450, AAF52926, EEA14824)、DGCRK6 (BAB83032, XP110167)、CG1800 (AAF57175, EAA08039)、FLJ20036 (AAH22270, XP134159)、MRP-L45 (BAB14234, XP129893)、CG2109 (AAF52025)、CG12493 (NP647927)、CG10630 (AAF50777)、CG17686 (AAD50502)、T22A3.5 (CAB03384)ならびにアクセッション番号EAA14308が挙げられる。そのような核酸結合タンパク質の配列は、アクセッション番号に基づいて当業界で公知である。前記アクセッション番号に関連する配列は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられるものとする。
【0061】
核酸結合ポリペプチドは、前記アクセッション番号の任意の完全長ポリペプチド、前記のいずれかの断片ならびに上記で同定されたアクセッション番号に記載の配列を含む1〜10個のアミノ酸置換を含む改変されたポリペプチドを含んでもよい。
【0062】
任意の陰イオン電荷を低下させるのに十分な1個以上の核酸結合ドメインで被覆された核酸にPTDを融合することができることが理解されるであろう。あるいは、PTDを、順に陰イオン荷電した核酸を被覆する核酸結合ドメイン(例えば、DRBD)に機能し得る形で連結することができる。
【0063】
PTDと陰イオン性核酸分子(例えば、dsRNA)を、ホルホルアミダート、ホスホロチオエート、またはホスホジエステルリンカーを用いて連結することができる。例えば、3-炭素リンカーを有する3'-アミノ基を含むsiRNAを、該siRNAをPTDに連結するのに用いることができる。このsiRNAを、ヘテロ二官能性交叉リンカーを介してPTDにコンジュゲートする。
【0064】
PTDとsiRNAの間またはDRBDとsiRNAの間のジスルフィド結合を形成させて、標的化された放出/時間的放出を容易にすることができる。PTDと核酸またはDRBDと核酸の間のジスルフィド結合を切断して、該核酸を放出させることができる。
【0065】
PTDを核酸結合ドメイン(例えば、DRBD)に機能し得る形で連結する場合、前記2個のドメインをペプチドリンカーにより連結し、化学合成するか、またはコード枠がPTDドメインとDRBDドメインを含む単一の機能的ポリペプチドを生成するように該ドメインを機能し得る形で連結したポリヌクレオチド構築物により発現させることができる。
【0066】
注記されるように、本明細書に開示される融合ポリペプチドの成分、例えば、PTD-核酸結合ドメイン(例えば、DRBD)、および核酸ドメイン、ならびに必要に応じて、ペプチドリンカーを、該融合ポリペプチドが、それが意図される(例えば、十分に陽イオン荷電した)機能を有するという条件で、ほとんど任意の様式で構成することができる。本発明は、核酸ドメイン(例えば、治療用もしくは診断用のDNA、RNA、siRNAなど)に直接的または間接的に連結された1個以上の核酸結合ドメインに連結された1個以上のPTDを含む融合ポリペプチドまたはキメラタンパク質を提供する。いくつかのドメインの各々を直接的に連結するか、またはリンカーペプチドにより分離することができる。前記ドメインを、任意の順番で提供することができる。さらに、前記融合ポリペプチドは、例えば、該融合ポリペプチドの同定および/または精製を容易にするためのタグ、例えば、6xHISタグを含んでもよい。
【0067】
本発明の融合ポリペプチドおよび方法において用いることができるペプチドリンカーは、典型的には、最大で約20または30個のアミノ酸、一般的には最大で10または15個のアミノ酸、およびさらにより頻繁には約1〜5個のアミノ酸を含むであろう。一般的には、リンカー配列は、単一の固定したコンフォメーション中に融合分子を保持しないように、可撓性である。リンカー配列を、例えば、核酸結合ドメインに由来するPTDドメインおよび/または核酸ドメインの間隔を空けることができる。例えば、前記ペプチドリンカー配列を、タンパク質導入ドメインと核酸ドメインの間に配置し、例えば、分子的可撓性を提供することができる。リンカー部分の長さを、PTDドメイン融合構築物を含むポリペプチドの生物学的活性を最適化するように選択し、過度の実験を行うことなく経験的に決定することができる。このリンカー部分は、核酸結合ドメインが核酸と自由に相互作用するか、またはその逆をできるように十分に長く、かつ十分に可撓性であるべきである。リンカー部分の例は、--Gly--Gly--、GGGGS (配列番号8)、(GGGGS)N (配列番号9)、GKSSGSGSESKS (配列番号10)、GSTSGSGKSSEGKG (配列番号11)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG (配列番号12)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG (配列番号13)、またはEGKSSGSGSESKEF (配列番号14)である。連結部分は、例えば、Hustonら、Proc. Nat'l Acad. Sci 85:5879, 1988; Whitlowら、Protein Engineering 6:989, 1993; およびNewtonら、Biochemistry 35:545, 1996に記載されている。他の好適なペプチドリンカーは、参照により本明細書に組み入れられるものとする米国特許第4,751,180号および同第4,935,233号に記載のものである。
【0068】
本開示は、PTDと核酸結合タンパク質を含むキメラ/融合ポリペプチドを提供する。一態様においては、該キメラ/融合ポリペプチドは、陰イオン性dsRNA電荷を保護する二本鎖RNA結合タンパク質に連結されたPTDを含む。
【0069】
一態様においては、本発明の融合構築物は、PTDおよび核酸結合ドメインに加えて、標的化ドメインを含んでもよい。この標的化ドメインは、同族結合ドメインを発現する特定の細胞型に該融合構築物を指向させるのに有用な受容体または受容体リガンドであってよい。
【0070】
ポリペプチド(融合ポリペプチドを含む)とは、モノマーがアミノ酸残基であり、アミド結合を介して一緒に連結されるポリマーを指す。アミノ酸がα-アミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体を用いることができる。ポリペプチドは、アミノ酸配列を包含し、糖タンパク質、レトロインベルソ(retro-inverso)ポリペプチド、D-アミノ酸改変ポリペプチドなどの改変された配列が挙げられる。ポリペプチドは、天然のタンパク質、ならびに組換え的または合成的に合成されたものを含む。ポリペプチドは、ポリペプチドの特定の断片または部分に帰することができる機能を有する2個以上のドメインを含んでもよい。ドメインとしては、例えば、少なくとも1個の有用なエピトープを示すポリペプチドの一部または機能的ドメインが挙げられる。2個以上のドメインを、それぞれのドメインがその機能を保持し、さらに単一のポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を含むように、機能的に連結することができる。例えば、PTDの機能的断片は、導入活性を保持する断片を含む。生物学的に機能的な断片は、例えば、抗体分子に結合することができるポリペプチド断片ならびにエピトープから、特徴的な誘導に関与するか、または細胞内の表現型変化をプログラムすることができる大きいポリペプチドまで、サイズが変化してもよい。
【0071】
いくつかの実施形態においては、レトロインベルソペプチドを用いる。「レトロインベルソ」とは、1個以上のアミノ酸におけるアミノ-カルボキシ転置ならびに鏡像異性変化(すなわち、左旋光性(L)から右旋光性(D))を意味する。本開示のポリペプチドは、例えば、該アミノ酸配列のアミノ-カルボキシ転置、1個以上のD-アミノ酸を含むアミノ-カルボキシ転置、および1個以上のD-アミノ酸を含む非転置配列を包含する。安定であり、生物活性を保持するレトロインベルソペプチド模倣物質を、Brugidouら(Biochem. Biophys. Res. Comm. 214(2): 685-693, 1995)およびChorevら(Trends Biotechnol. 13(10): 438-445, 1995)により記載のように考案することができる。レトロインベルソポリペプチドの全体の構造的特徴は、親L-ポリペプチドのものと類似している。しかしながら、この2種の分子は、それらが本質的にキラル二次構造エレメントを共有するため、大体は鏡像である。ペプチド結合逆転およびキラリティの転置に基づく主鎖ペプチド模倣物質は、ペプチドおよびタンパク質にとって重要な構造的変更であり、バイオテクノロジーにとって高度に重要である。抗原性および免疫原性を、天然抗原性ペプチドの全D-およびレトロインベルソ異性体などの代謝的に安定な抗原により達成することができる。いくつかのPTD由来ペプチド模倣物質を、本明細書で提供する。
【0072】
ポリペプチドおよび断片は、天然由来ポリペプチドもしくはドメインと同じか、または実質的に同じアミノ酸配列を有してもよい。「実質的に同一の」とは、アミノ酸配列が、全体ではないが、大部分が同じであるが、それが関連する配列の機能的活性を保持することを意味する。機能的活性の例は、前記断片が導入するか、またはRNAに結合することができることである。例えば、導入活性を有する完全長TATの断片が、本明細書に記載される。一般的には、2種のポリペプチドまたはドメインの配列が少なくとも85%、90%、95%、98%もしくは99%同一であり、または該配列中に保存的変異が存在する場合、それらは「実質的に同一」である。BLASTプログラム(Altschulら、1990)などのコンピュータープログラムを用いて、配列同一性を比較することができる。
【0073】
本開示のポリペプチドは、ペプチド結合もしくは改変されたペプチド結合、すなわち、ペプチド等量式により違いに連結されたアミノ酸から構成されていてもよく、20個の遺伝子にコードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。前記ポリペプチドを、翻訳後プロセッシングなどの天然のプロセス、または当業界でよく知られた化学的改変技術により改変することができる。そのような改変は、基本的な教科書およびより詳細なモノグラフ、ならびに膨大な研究論文によく記載されている。改変を、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノもしくはカルボキシル末端などの、ペプチドまたはポリペプチド中のどこでも起こすことができる。同じ型の改変が、所与のペプチドまたはポリペプチド中のいくつかの部位に、同じか、または変化する程度で存在してもよい。また、所与のペプチドまたはポリペプチドは、多くの型の改変を含んでもよい。ペプチドまたはポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として、分枝していてもよく、それらは分枝を含むか、または含まない環状のものであってよい。環状、分枝状、および分枝環状ペプチドおよびポリペプチドは、翻訳後の天然プロセスの結果であってもよく、または合成方法により作製することができる。改変としては、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、タンパク質溶解的プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸の転移RNAを介する付加、およびユビキチン化が挙げられる(例えば、PROTEINS--STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES、第2版、T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York (1993); POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS, B. C. Johnson(編)、Academic Press, New York, pgs. 1-12 (1983); Seifterら、Meth Enzymol 182:626-646 (1990); Rattanら、Ann N.Y. Acad Sci 663:48-62 (1992)を参照)。
【0074】
本開示のポリペプチドドメインまたは融合ポリペプチドを、α-アミノ基のt-BOCまたはFMOC保護を含むものなどの一般的に用いられる方法により合成することができる。両方法は、1個のアミノ酸を、ペプチドのC末端から出発する各工程で付加する段階的合成を含む(Coliganら、Current Protocols in Immunology, Wiley Interscience, 1991, Unit 9を参照)。本開示のポリペプチドを、0.1〜1.0 mMolのアミン/gポリマーを含むコポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)を用いて、Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149, 1962; ならびにStewartおよびYoung, Solid Phase Peptides Synthesis, Freeman, San Francisco, 1969, pp.27-62により記載のものなどのよく知られた固相ペプチド合成方法により合成することもできる。化学合成の完了の際、ペプチドを脱保護し、0℃で約1/4〜1時間、液体HF-10%アニソールを用いて処理することにより該ポリマーから切断することができる。試薬を蒸発させた後、前記ペプチドを、1%酢酸溶液を用いてポリマーから抽出し、次いで、凍結乾燥して、粗材料を得る。このペプチドを、溶媒として5%酢酸を用いるSephadex G-15上でのゲル濾過などの技術により精製することができる。カラム溶出物の好適な画分の凍結乾燥により、相同的なペプチドが得られ、次いで、これを、アミノ酸分析、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、紫外線吸収分光法、モル旋光度、または可溶性の測定などの標準的な技術により特性評価することができる。必要に応じて、前記ペプチドを、固相エドマン分解により定量することができる。
【0075】
別の態様においては、本開示は、融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、該ポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で増殖させ、該融合ポリペプチドを回収することにより、PTDドメインと核酸結合ドメインを含む融合ポリペプチドまたはRNAを製造する方法を提供する。本開示の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、原核または真核発現系における発現のためのプロモーターに機能し得る形で連結することができる。例えば、そのようなポリヌクレオチドを、発現ベクター中に組み込むことができる。組換え分子生物学技術を用いて、例えば、PTDドメインとDRBDドメインを連結して、発現の際に、前記ドメインを含むポリペプチドが機能的に働くような、本開示のポリヌクレオチドを作製することができる。
【0076】
用語「機能し得る形で連結された」または「機能し得る形で結合された」とは、各ドメインが読み枠を合わせて連結されて、所望のポリペプチド配列を生じるような、調節配列により調節されるポリヌクレオチドの調節および/またはコードドメイン間の機能的連結ならびに融合ポリペプチドのコードされたドメイン間の連結を指す。
【0077】
従って、本開示は、本開示の、融合ポリペプチドなどの、ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド(例えば、DNA、cDNA、またはRNA)をも含む。本明細書に記載のポリペプチドの類似体、突然変異体、保存的変異、および変異体をコードするポリヌクレオチドも含まれる。本明細書で用いられる用語「単離された」とは、in vivoで産生されたポリヌクレオチドが天然に結合するタンパク質、脂質、および他のポリヌクレオチドを実質的に含まないポリヌクレオチドを指す。典型的には、前記ポリヌクレオチドは、他の物質から少なくとも70%、80%、または90%単離されており、in vitroでポリヌクレオチドを合成するための従来の方法を、in vivoでの方法の代わりに用いることができる。本明細書で用いられる「ポリヌクレオチド」とは、別々の断片の形態にあるか、またはより大きい遺伝子構築物の成分としての(例えば、本開示のペプチドをコードするポリヌクレオチドにプロモーターを機能し得る形で連結するか、または異種コードドメインを機能し得る形で連結することにより)、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指す。多くの遺伝子構築物(例えば、プラスミドおよび他の発現ベクター)が当業界で公知であり、これらを用いて、無細胞系または原核もしくは真核(例えば、酵母、昆虫、もしくは哺乳動物)細胞中で、本開示のポリペプチドを製造することができる。当業者であれば、遺伝子コードの縮重性を考慮に入れることにより、本開示のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを容易に合成することができる。本開示のポリヌクレオチドを、従来の分子生物学的方法において用いて、本開示のペプチドを容易に製造することができる。
【0078】
そのようなポリヌクレオチドとしては、天然の、合成の、および意図的に操作されたポリヌクレオチドが挙げられる。PTDドメインもしくはDRBDドメインまたはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドは、遺伝子コードの結果として縮重性である配列を含む。PTDもしくはDRBDまたはその機能的断片をコードするポリヌクレオチド配列を、本明細書で提供されるポリペプチド配列に基づいて、および本明細書に提供されるアクセッション番号を参照して容易に確認することができる。20種の天然アミノ酸が存在し、その多くは2種以上のコドンにより特定される。従って、得られるポリペプチドが、機能的PTDまたはDRBDポリペプチドドメインをもたらすアミノ酸を含む限り、全ての縮重ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが含まれる。
【0079】
融合ポリペプチドまたはそのドメインをコードするポリヌクレオチドを、「発現ベクター」中に挿入することができる。用語「発現ベクター」とは、本開示のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むように遺伝子操作することができる、プラスミド、ウイルスまたは当業界で公知の他のビヒクルなどの遺伝子構築物を指す。そのような発現ベクターは、典型的には、宿主細胞中での挿入された遺伝子配列の転写を容易にするプロモーター配列を含むプラスミドである。典型的には、発現ベクターは、複製起点、およびプロモーター、ならびに形質転換された細胞の表現型選択を可能にする遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子)を含む。誘導性および構成性プロモーターなどの種々のプロモーターを、本開示において用いることができる。典型的には、発現ベクターは、宿主細胞と適合可能な種に由来するレプリコン部位および制御配列を含む。
【0080】
ポリヌクレオチドを用いる宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションを、当業者にはよく知られた従来の技術を用いて実行することができる。例えば、宿主細胞が大腸菌である場合、DNAを取り込むことができるコンピテント細胞を、当業界で公知のCaCl2、MgCl2またはRbCl方法を用いて調製することができる。あるいは、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションなどの物理的手段を用いることができる。エレクトロポレーションは、高電圧の電気的刺激により、細胞中へのポリヌクレオチドの導入を可能にする。さらに、当業界でよく知られた方法を用いて、プロトプラスト融合により、宿主細胞中にポリヌクレオチドを導入することができる。エレクトロポレーションおよびリポフェクションなどの、真核細胞を形質転換するのに好適な方法も公知である。
【0081】
本開示により包含される「宿主細胞」は、本開示のポリヌクレオチドを用いて、融合ポリペプチドまたはその機能的ドメインを発現させることができる任意の細胞である。この用語はまた、宿主細胞の任意の子孫を含む。有用である宿主細胞としては、細菌細胞、菌類細胞(例えば、酵母細胞)、植物細胞および動物細胞が挙げられる。本開示の融合ポリペプチドを、原核生物中での融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現により産生させることができる。これらのものとしては、限定されるものではないが、本開示の融合ポリペプチドをコードする組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換された細菌などの微生物が挙げられる。この構築物を、in vitroアッセイのために大規模で大腸菌中で発現させることができる。宿主細胞は、哺乳動物細胞などの高等真核細胞、もしくは酵母細胞などの下等真核細胞であってもよく、または宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞であってもよい。宿主細胞への前記構築物の導入を、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストランを介するトランスフェクション、またはエレクトロポレーションにより行うことができる(Davis, L., Dibner, M., Battey, I., Basic Methods in Molecular Biology (1986))。好適な宿主の代表例として、酵母などの菌類細胞;ショウジョウバエS2およびヨトウガSf9などの昆虫細胞;CHO、COSまたはBowesメラノーマなどの動物細胞;植物細胞などが挙げられる。好適な宿主の選択は、本明細書の教示から、当業者の範囲内にあると考えられる。
【0082】
宿主細胞は、真核宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)であってよい。一態様においては、宿主細胞は、細胞培養における増殖に適合させた哺乳動物産生細胞である。当業界で一般的に用いられるそのような細胞の例は、CHO、VERO、BHK、HeLa、CV1(Cosなど;Cos-7)、MDCK、293、3T3、C127、ミエローマ細胞系(特にマウス)、PC12およびW138細胞である。いくつかの複雑な組換えタンパク質、例えば、サイトカイン、凝固因子、および抗体の産生のためには、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が広く用いられている(Braselら、Blood 88:2004-2012, 1996; Kaufmanら、J.Biol Chem 263: 6352-6362, 1988; McKinnonら、J Mol Endocrinol 6:231-239, 1991; Woodら、J. Immunol 145:3011-3016, 1990)。ジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)欠損突然変異細胞系(Urlaubら、Proc Natl Acad Sci USA 77:4216-4220, 1980)は、効率的にDHFRを選択可能かつ増幅可能である遺伝子発現系により、これらの細胞中での高レベルの組換えタンパク質発現が可能になるため、一般的に用いられるCHO宿主細胞系である(Kaufman, Meth Enzymol 185:527-566, 1990)。さらに、これらの細胞は、付着培養物または懸濁培養物として操作することが容易であり、比較的良好な遺伝的安定性を示す。CHO細胞およびその中で発現される組換えタンパク質は広く特性評価されており、規制機関により臨床製造における使用について認可されている。
【0083】
真核系、および典型的には、哺乳動物発現系により、発現される哺乳動物タンパク質の適切な翻訳後改変を起こすことができる。一次転写物、グリコシル化、リン酸化、および遺伝子産物の有利な分泌の適切な処理のための細胞機構を有する真核細胞を、本開示のPTD-融合ポリペプチドの発現のための宿主細胞として用いることができる。そのような宿主細胞系としては、限定されるものではないが、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、Jurkat、HEK-293、およびWI38が挙げられる。
【0084】
組換えタンパク質の長期間の高収率な産生のためには、典型的には、安定な発現を用いる。ウイルス起源の複製起点を含む発現ベクターを用いるよりもむしろ、好適な発現制御エレメント(例えば、プロモーター配列、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)と、選択マーカーにより制御される本開示の融合ポリペプチドをコードするcDNAを用いて、宿主細胞を形質転換することができる。選択マーカーは、選択的な殺傷薬剤に対する耐性を付与し、異種ポリヌクレオチドの安定な組込みに際して、耐性細胞の増殖を可能にする。そのような耐性細胞は、フォーカスを形成し、次いで、細胞系中でクローニングし、増殖させることができる。例えば、外来DNAの導入後、遺伝子操作された細胞を富化された培地中で1〜2日間増殖させた後、選択培地に切り替えることができる。いくつかの選択系を用いることができる:限定されるものではないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell, 11:223, 1977)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48:2026, 1962)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell, 22:817, 1980)遺伝子を、それぞれ、tk-、hgprt-またはaprt-細胞中で用いることができる。また、代謝拮抗物質耐性を、メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr (Wiglerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:3567, 1980; O'Hareら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 8:1527, 1981);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt (Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:2072, 1981);アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo (Colberre-Garapinら、J. Mol. Biol., 150:1, 1981);およびヒグロマイシン遺伝子に対する耐性を付与するhygro (Santerreら、Gene, 30:147, 1984)のための選択の基礎として用いることができる。さらなる選択遺伝子、すなわち、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisD (Hartman & Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:8047, 1988);およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DFMOに対する耐性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ) (McConlogue L., In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory(編)、1987)が記載されている。
【0085】
酵母においては、構成性または誘導性プロモーターを含むいくつかのベクターを用いることができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 2(編)、Ausubelら、Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience, Ch. 13, 1988; Grantら、「酵母のための発現および選択ベクター(Expression and Secretion Vectors for Yeast)」、Methods in Enzymology, Wu & Grossman(編), Acad. Press, N.Y., Vol. 153, pp.516-544, 1987; Glover, DNA Cloning, Vol. II, IRL Press, Wash., D.C., Ch. 3, 1986;「酵母における激しい異種性遺伝子発現(Bitter, Heterologous Gene Expression in Yeast)」、Methods in Enzymology, Berger & Kimmel(編), Acad. Press, N.Y., Vol. 152, pp. 673-684, 1987;ならびにThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces, Strathernら(編)、Cold Spring Harbor Press, Vols. IおよびII, 1982を参照)。ADHもしくはLEU2などの構成性酵母プロモーター、またはGALなどの誘導性プロモーターを用いることができる(「酵母におけるクローニング(Cloning in Yeast)」、Ch. 3, R. Rothstein In: DNA Cloning Vol.11, A Practical Approach, DM Glover(編), IRL Press, Wash., D.C., 1986)。あるいは、外来DNA配列の酵母染色体への組込みを促進するベクターを用いることができる。
【0086】
本開示の一態様においては、異なるドメイン(例えば、PTDまたはDRBD)を、該ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞から発現させる。次いで、前記ドメインを、当業界で公知の方法(本明細書にさらに記載されるような)を用いて精製する。次いで、前記ドメインを直接的または間接的に、化学的に連結して(例えば、ペプチドリンカーを用いて)、融合ポリペプチドを形成させる。あるいは、融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、宿主細胞中で発現させ、該融合ポリペプチドを当業界で公知の方法を用いて精製する。前記融合ポリペプチドを形成させる方法に関係なく、核酸結合タンパク質(例えば、DRBD)が配列非依存的様式で核酸(例えば、陰イオン荷電したdsRNA)と相互作用する条件下で、該融合ポリペプチドを該核酸と接触させる。前記融合構築物は、1個以上の核酸結合タンパク質(例えば、DRBD)を含んでもよい。一態様においては、核酸分子(例えば、dsRNA)は、少なくとも2個の核酸結合タンパク質と相互作用する。
【0087】
タンパク質精製のための様々な当業界で公知の方法のいずれかを用いて、本開示のポリペプチドドメインまたは融合ポリペプチドを単離することができる。例えば、調製的クロマトグラフィー分離および免疫学的分離(モノクローナルもしくはポリクローナル抗体を用いるものなど)を用いることができる。担体ペプチドは、融合ポリペプチドの単離を容易にすることができる。そのような担体ペプチドまたは精製タグを、本開示のPTD、DRBDまたはPTD-DRBD融合ポリペプチドに機能し得る形で連結することができる。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)により、グルタチオンアガロースアフィニティカラムを用いる精製が可能になる。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に由来するAタンパク質またはZZドメインをタグとして用いる場合、IgG-セファロースアフィニティカラムを用いて、単一の工程で精製を達成することができる。緑膿菌(P. aeruginosa)外膜タンパク質FのN末端の半分であるpOprF-ペプチドは、外膜調製物において顕著なタンパク質種であるため、それを容易に精製することができる。必要に応じて、前記融合ペプチドのカテリシジン機能的断片と特異的に反応する(例えば、特異的に結合する)試薬を用いて、該融合ペプチドを精製することができる。例えば、DRBDまたはPTDドメインに特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体を、従来の精製方法において用いることができる。そのような抗体を製造するための技術は、当業界でよく知られている。本開示の融合ポリペプチドを遺伝子操作して、タンパク質回収に役立つ切断部位または核酸結合タンパク質もしくはdsRNA分子からPTDを分離する他のリンカー部分を含有させることもできる。
【0088】
本明細書で用いられる核酸ドメインは、任意のポリヌクレオチド(例えば、リボザイム、アンチセンス分子、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドなど)であってよい。本明細書で提供される特定の例においては、核酸ドメインはdsRNAを含む。
【0089】
標的遺伝子のヌクレオチド配列と相補的であるsiRNA配列を含むdsRNAを、任意の数の方法において調製することができる。siRNA配列を同定するための方法および技術は、当業界で公知である。siRNAヌクレオチド配列を、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.govで利用可能)からアクセッション番号またはGI番号を供給した後、siRNA選択プログラム、Whitehead Institute for Biomedical Research, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, Massachusetts (http: //jura.wi.mit.edu/bioc/siRNAext/で現在利用可能)から取得することができる。あるいは、好適なsiRNA配列を含むdsRNAを、MiyagishiおよびTaira(2003)の戦略を用いて確認することができる。典型的には、dsRNA配列が長くなるほど、さらなるDRBDまたは他の核酸結合タンパク質を必要とする陰イオン電荷が増加する。市販のRNAi設計アルゴリズムも存在する(http: //rnaidesigner.invitrogen.com/rnaiexpress/)。注文するためのRNAの調製物は市販されている。一度取得したら、siRNA配列を含むRNA分子を、本開示のPTDドメインに、核酸結合タンパク質により結合するか、または直接連結するか、もしくは間接的に連結することができる。
【0090】
dsRNAをPTDに機能し得る形で連結するか、または核酸結合タンパク質(例えば、DRBD)を含むPTDまたは核酸結合タンパク質がdsRNAと相互作用するような条件下でインキュベートする。典型的には、dsRNAと核酸結合タンパク質との相互作用は、複合体(例えば、DRBDおよびdsRNA)の全体の陰イオン電荷の低下をもたらす。
【0091】
本発明の方法、組成物、および融合ポリペプチドは、核酸分子の取込みの増強および遊離を提供する。
【0092】
用語「治療剤」は、一般的な意味で用いられ、治療剤、予防剤、および代替剤を含む。治療的分子の例としては、限定されるものではないが、細胞周期制御剤;サイクリンG1およびサイクリンD1遺伝子に対するsiRNAポリヌクレオチドなどの、サイクリンタンパク質産生を阻害する薬剤;切断されて、例えば、上皮増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、エリスロポエチン、G-CSF、GM-CSF、TGF-α、TGF-β、および線維芽細胞増殖因子などの特異的増殖因子を指向するsiRNA分子を提供することができるdsRNA;限定されるものではないが、インターロイキン1〜13および腫瘍壊死因子などのサイトカイン;抗凝固剤、抗血小板剤;TNF受容体ドメインなどが挙げられる。
【0093】
そのような方法および組成物を用いて、様々な疾患および障害を治療することができる。例えば、腫瘍細胞の増殖を、抗腫瘍siRNAの送達の際に阻害、抑制、または破壊することができる。例えば、抗腫瘍siRNAは、血管新生を促進するポリペプチドをコードする遺伝子に標的化されたsiRNAであってよい。腫瘍増殖に関連する様々な血管新生タンパク質が当業界で公知である。
【0094】
本発明の融合ポリペプチドは、いくつかの疾患および障害の治療および/または診断のための陰イオン荷電した核酸(例えば、dsRNA、siRNA、DNA、アンチセンス、リボザイムなど)の送達にとって有用である。例えば、前記融合ポリペプチドを、核酸結合ドメイン(例えば、DRBD)が、細胞増殖を誘導する遺伝子を標的化するのに用いられる核酸上のその電荷を中和する、細胞増殖性障害の治療において用いることができる。PTDドメインは、前記融合ポリペプチドおよび核酸結合ドメイン(例えば、DRBD)の取込みを容易にする。かくして、前記融合ポリペプチドは、細胞増殖性障害を有する細胞の治療にとって有用である。同様に、本発明の融合ポリペプチドを用いて、炎症性疾患および障害、感染症、血管疾患および障害などを治療することができる。
【0095】
かくして、本開示は任意の特定の核酸結合ドメインまたは核酸ドメインに限定されないと理解されるべきである。むしろ、前記核酸ドメインは、送達しようとする核酸の陰イオン電荷を中和するか、または低下させることができる任意の核酸結合ドメインであってよい。さらに、任意の陰イオン荷電した核酸(例えば、dsRNA、siRNAなど)を、本発明の方法を用いて送達することができる。
【0096】
典型的には、本開示の融合ポリペプチドを、製薬上許容し得る担体と共に製剤化することができるが、該融合ポリペプチドを、医薬組成物として、単独で投与してもよい。
【0097】
本開示に従う医薬組成物を、担体、賦形剤、および添加物または補助剤を用いて被験体に投与するのに好適な形態で、本開示の融合ポリペプチドを含むように調製することができる。頻繁に用いられる担体または補助剤としては、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖類、タルク、ミルクタンパク質、ゼラチン、スターチ、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物油および野菜油、ポリエチレングリコールならびに蒸留水、アルコール、グリセロール、および多価アルコールなどの溶媒が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養補給剤が挙げられる。保存剤としては、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスが挙げられる。他の製薬上許容し得る担体としては、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第15版、Easton: Mack Publishing Co., 1405-1412, 1461-1487 (1975)、およびThe National Formulary XIV.、第14版、Washington: American Pharmaceutical Association (1975)(その内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載のような水性溶液、非毒性賦形剤、例えば、塩、保存剤、バッファーなどが挙げられる。前記医薬組成物の種々の成分のpHおよび正確な濃度を、当業界における日常的な技術に従って調整する。GoodmanおよびGilmanのThe Pharmacological Basis for Therapeutics (第7版)を参照されたい。
【0098】
本開示に従う医薬組成物を、局所的または全身的に投与することができる。「治療上有効用量」とは、疾患もしくは障害の症候を防止、治癒、または少なくとも部分的に止める(例えば、細胞増殖を阻害する)のに必要な、本開示に従う融合ポリペプチドの量を意味する。この使用のための有効な量は、勿論、疾患の重篤度ならびに被験体の体重および全身状態に依存するであろう。典型的には、in vitroで用いられる用量は、医薬組成物のin situでの投与にとって有用な量における有用なガイダンスを提供し、動物モデルを用いて、特定の障害の治療のための有効な用量を決定することができる。様々な検討材料が、例えば、Langer, Science, 249: 1527, (1990); Gilmanら(編) (1990)(それぞれ参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。
【0099】
本明細書で用いられる「治療上有効量を投与すること」とは、本開示の医薬組成物が、その意図される治療機能を実行することができる被験体に、該組成物を与えるか、または適用する方法を含むと意図される。治療上有効量は、被験体における感染の程度、個体の年齢、性別、および体重などの因子に応じて変化するであろう。投薬計画を調整して、最適な治療応答を提供することができる。例えば、数回に分割された用量を毎日投与するか、または緊急の治療状況により指示されるように、該用量を比例的に減少させることができる。
【0100】
前記医薬組成物を、注入(例えば、皮下、静脈内など)、経口投与、吸入、経皮適用、または直腸投与などの都合の良い様式で投与することができる。投与経路に応じて、前記医薬組成物を、酵素、酸、および該医薬組成物を不活化し得る他の天然条件から、該医薬組成物を保護するための材料でコーティングすることができる(例えば、腸溶性コーティングが当業界で公知である)。前記医薬組成物を、非経口的または腹腔内的に投与することもできる。分散物を、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物、ならびに油中で調製することもできる。保存および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含んでもよい。
【0101】
注入可能な使用にとって好適な医薬組成物としては、滅菌水性溶液(水溶性である場合)または分散物および滅菌注入可能な溶液もしくは分散物の即席の調製のための滅菌粉末が挙げられる。前記組成物は、典型的には、滅菌されており、容易な注射可能性が存在する程度まで液体であるであろう。典型的には、前記組成物は、製造および保存の条件下で安定であり、細胞および菌類などの微生物の夾雑作用に対抗して保存されるであろう。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その好適な混合物、および野菜油を含む溶媒または分散媒体であってよい。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散物の場合、必要な粒子径の維持により、および界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止を、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成することができる。多くの場合、等張性薬剤、例えば、糖類、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを、前記組成物中で用いる。前記組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含有させることにより、注入可能な組成物の延長された吸収をもたらすことができる。
【0102】
必要な量の前記医薬組成物を、必要とされるように、上記に列挙された成分の1つまたは組合せを含む好適な溶媒中に組み入れた後、滅菌濾過することにより、滅菌注入可能な溶液を調製することができる。一般的には、塩基性分散媒体と、上記に列挙されたものに由来する必要な他の成分とを含む滅菌ビヒクル中に、前記医薬組成物を組み入れることにより、分散物を調製する。
【0103】
前記医薬組成物を、例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体と共に経口投与することができる。前記医薬組成物および他の成分を、硬質もしくは軟質ゼラチンカプセル中に封入し、錠剤に圧縮するか、または被験体の食事中に直接組み入れることもできる。経口治療剤投与のためには、前記医薬組成物を、賦形剤と共に組み入れ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウェハースなどの形態で用いることができる。そのような組成物および調製物は、少なくとも1重量%の活性化合物を含むべきである。組成物および調製物の割合は、勿論、変化してもよく、約5重量%〜約80重量%の単位にあるのが都合がよい。
【0104】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは、以下のもの:トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、もしくはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギニン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびスクロース、ラクトースもしくはサッカリンなどの甘味料、またはペパーミント、冬緑油、もしくはチェリー香味料などの香料を含んでもよい。投与単位形態がカプセル剤である場合、上記の型の材料に加えて、それは液体担体を含んでもよい。コーティングとして、またはさもなければ投与単位の物理形態を改変するために、様々な他の材料が存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤を、シェラック、糖、またはその両方を用いてコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、前記薬剤、甘味料としてのスクロース、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、染料、ならびにチェリーもしくはオレンジ香料などの香料を含んでもよい。勿論、任意の投与単位形態を調製するのに用いられる任意の材料は、製薬上純粋であり、用いる量において実質的に非毒性的であるべきである。さらに、前記医薬組成物を、徐放性調製物および製剤中に組み入れることができる。
【0105】
かくして、「製薬上許容し得る担体」は、溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むと意図される。製薬上活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当業界でよく知られている。任意の従来の媒体または薬剤が前記医薬組成物と不適合ではない限り、治療用組成物および治療方法におけるその使用が意図される。補助活性化合物を前記組成物中に組み入れることもできる。
【0106】
投与の容易性および用量の均一性のために、単位剤形中で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で用いられる「単位剤形」とは、治療しようとする被験体のために単一用量として適合させた物理的に個別の単位を指す;所定量の医薬組成物を含む各単位を算出して、必要とされる医薬担体と関連する所望の治療効果をもたらす。本開示の単位剤形に関する仕様は、前記医薬組成物の特徴および達成しようとする特定の治療効果に関連する。
【0107】
主要な医薬組成物を、許容し得る投与単位中、好適な製薬上許容し得る担体と共に、有効量の、都合がよく、有効な投与のために混合する。補助活性成分を含む組成物の場合、前記成分の通常の用量および投与様式を参照して、投薬量を決定する。
【0108】
以下の実施例は、開示された本発明を限定することではなく、例示することを意味するものである。
【実施例】
【0109】
PTD-DRBD融合タンパク質の構築設計および精製
pPTD-DRBDを、ヒトHepG2 cDNAライブラリーからPKR DRBD-1をPCRクローニングした後、1個のN-末端TAT PTD、HAエピトープタグおよびC末端6xHis精製タグを含むpTATベクター(Wadiaら、2004)中に挿入することにより構築した。2個のさらなるTAT PTDをN末端に挿入して、pPTD-DRBDを得た。EGFP-PEST (dGFP)またはDsRed-PEST (dDsRed)レンチウイルスを発現するVSVGを調製するために、pCSC-SP-CW-EGFP-PESTまたはpCSC-SP-CW-DSREDを、pCSC-SP-CW (Miyoshiら、1998)およびpd2EGFP-N1-またはpDsRed-Express-DR (BD clontech)から構築した。タンパク質発現のために、BL21コドンプラス(DH3)大腸菌(Stratagene)細胞を、pPTD-DRBDを用いて形質転換し、LB中、37℃で培養した後、400μM IPTGを用いる誘導後、25℃で12時間培養した。細胞を4,500 gで5分間の遠心分離により回収し、バッファーA(20 mM Hepes [pH 7.5]、500 mM NaCl、5μg/mlアプロチニン、1μg/mlロイペプチン、0.8 mM PMSF)+20 mMイミダゾール中で超音波処理し、50,000 gで15分間の遠心分離により可溶性タンパク質を単離した。PTD-DRBDを、Ni-NTAカラム(Qiagen)を通過させた後、バッファーB(50 mM Hepes [pH 7.5]、20 mM NaCl、5%グリセロール)中、Mono-S AKAT FPLC上に搭載し、バッファーC(バッファーB+1.5 M NaCl)中に溶出させることにより精製した。精製されたPTD-DRBDを、PBS-10%グリセロールに対して透析し、50μM PTD-DRBDで急速凍結し、-20℃で保存した。
【0110】
細胞培養条件
H1299、HaCaT、HFF、B16F0細胞を、10%FBS-DMEM、抗生物質中で培養した。T98G細胞を、5%FBS-MEM、抗生物質中で培養した。Jurkat T細胞およびNamalwa B細胞を、10%FBS-RPMI、抗生物質中で培養した。THP-1マクロファージを、10%FBS-RPMI+1 mM ピルビン酸ナトリウム、4.5 g/Lグルコース、50μM β-メルカプトエタノール、抗生物質中で増殖させた。hESC系HUES9は、親切にも贈られたものであり、H9 hESCはWiCellから取得したものであった。H9 hESCを、20%ノックアウト血清-DMEM-F12+55μM β-メルカプトエタノール、NEAA、Gluta-Max、4 ng/ml bFGF、抗生物質中、マウス線維芽細胞支持細胞層上で増殖させた。HUES9 hESCを、マウス線維芽細胞上で24時間予め馴化された培地中のマウス線維芽細胞支持細胞層を含まないHUES培地(10%ノックアウト血清-DMEM+10%プラスモナート、55μM β-メルカプトエタノール、NEAA、Gluta-Max、4 ng/ml bFGF、抗生物質)中で増殖させた。dGFPおよびdDsRed発現細胞を、dGFPおよび/またはdDsRedレンチウイルスを発現するVSVGを用いる感染により作製した。VSVG-dGFPおよび/またはVSVG-dDsRed感染細胞を、FACSにより単離した。
【0111】
細胞へのPTD-DRBD siRNA送達
典型的なPTD-DRBD siRNA送達反応は、1〜5μM siRNAを含む水10μlを、10〜50μM PTD-DRBDを含むPBS-10%グリセロール10μl + PBS-10%グリセロール4μlと氷上で45分間混合し、培地中で1:5に希釈し、100〜400 nMの最終siRNA濃度で6時間、48穴プレート中、7.5 x 104細胞/ウェルで添加した。次いで、細胞をトリプシンで洗浄して、細胞外PTD-DRBD:siRNAを除去した後、新鮮な培地+FBSを添加した。あるいは、細胞をPTD-DRBD:siRNAと共に6時間、同時に平板培養し、58μg/ml硫酸ヘパリン+培地中で10分間洗浄した後、新鮮な培地+FBSを添加した。Jurkat、Namalwa、THP-1懸濁細胞については、2 x 105個の細胞を、培地+10%Q-血清(5 ml FBS + 1 ml Source 30Q樹脂[Amersham Bioscience]、混合プラットフォーム上、RTで30分間、次いで、0.22μm濾過)中で1時間、100〜200 nm siRNA:PTDDRBDで処理し、培地で2回洗浄した後、新鮮な完全培地を添加した。H9およびHUES9 hESCについては、6.6 x 105個の細胞を、支持細胞層を有さない無血清培地中で1時間、200〜400 nM siRNA-PTD-DRBDで処理した後、線維芽細胞支持細胞層上の無血清培地中で5時間処理し、次いで、完全なHUES培地+血清を用いて24時間処理した。siRNA対照については、細胞を、製造業者の説明書によってリポフェクトアミン-2000 (Invitrogen)中、100 nM siRNAで処理した。この研究に用いたsiRNA配列:EGFP1、EGFP2 (サイレンサーGFP(Silencer GFP))、GAPDH、Oct-4、Nanog、Sox2、Cdk4およびサイレンサー陰性対照(Silencer Negative control)(Ambion);pGL3-ルシフェラーゼ(Luc)およびDsRed (Dharmacon);ならびにEGFRvIII (FanおよびWeiss, 2005)。
【0112】
イムノブロッティングおよびRT-PCR
48ウェル中の7.5 x 104個の細胞/ウェルをトリプシン/EDTAを用いて回収し、全細胞溶解物を氷上で30分間、RIPAバッファー(1%Triton X-100、1%デオキシコール酸ナトリウム、40 mM Tris-HCl、150 mM NaCl、0.2%SDS、5μg/mlアプロチニン、1μg/mlロイペプチン、0.8 mM PMSF)中で調製し、遠心分離により清澄化し、タンパク質を10%SDS-PAGEにより溶解した。イムノブロット分析は、4%スキムミルク、PBS-T (0.05%PBS、Tween20)中でブロックされたPVDF膜上、室温で1時間行い、抗Oct4 (Santa Cruz)、抗GAPDH (Santa Cruz)抗体と4℃で一晩、抗α-チューブリン(Sigma)抗体と1時間反応させ、洗浄し、HRP結合抗IgG (Santa cruz)抗体に曝露し、ECL (Pierce)により検出した。GAPDH mRNA TaqManTM RT-PCR (Applied Biosystems)については、48穴プレート中の7.5 x 104個のdGFP-H1299細胞/ウェルを、400 nM GAPDHまたは対照ルシフェラーゼsiRNAならびに添加後6、12、24、36、72および96時間で単離された総RNAで上記のように処理した。cDNAを、オリゴ-dTおよびGAPDH mRNAを用いて合成し、7300リアルタイムPCR系(Applied Biosystems)上、TAQ-MANプローブ(Ambion)を用いて発現を検出した。
【0113】
免疫組織化学分析およびフローサイトメトリー分析
細胞を、4%パラホルムアルデヒドを用いて室温で30分間固定し、0.1%TritonX100PBS中、室温で15分間透過化処理し、3%スキムミルク-PBS中、室温で30分間ブロックした後、0.1%BSA-PBS中、4℃で一晩、抗Oct4 (Santa Cruz)、抗SSEA4 (Santa Cruz)および抗GATA6 (Santa Cruz)抗体と反応させた。細胞を洗浄し、Alexa488またはAlexa594結合抗IgG (Molecular Probes)と室温で30分間反応させた。DNAをHoechst 33342 (Molecular Probes)を用いて対抗染色した。細胞を、共焦点顕微鏡(Olympus)により分析した。フローサイトメトリーのために、1 x 104個のdGFPおよび/またはdDsRed陽性細胞を、指示された時間に、FACScan (BD Biosciences)上で分析した。
【0114】
siRNAのPTD-dsRNA結合ドメイン融合送達
siRNA送達戦略を開発する前に、全siRNAがこの手法を利用することができるように、3つの試験対象患者基準を確立した:1)全細胞型(初代細胞または形質転換細胞)の100%へのsiRNA送達;2)非細胞毒性および3)siRNA配列非依存性。
【0115】
陽イオン性PTDの証明された巨大分子送達特性を、siRNA送達に用いた。しかしながら、電荷中和問題を回避するために、PTDをdsRNA結合ドメイン(PTD-DRBD)に融合させた(図1A)。DRBDは、2つのより小さい溝中で2'-OHとの接触を形成し、ヘリックスの90°の表面四分円上の主要な溝に橋を架けることにより、高いアビディティでdsRNAに特異的に結合し、その結果として4x DRBDでマスキングした約16 bpのdsRNAが得られる(RyterおよびSchultz, 1998)。多くのPTD-DRBD融合組合せを作製し、均質になるまで精製し、多くのPTD-DRBD融合組合せを試験し、それにより、マスキングされていないsiRNA突出部が第1および/または第2のPTDを中和することを示す実験データに基づくPTD-PTD-HAタグ-PTD-DRBDに決定した(図1Aおよび1B)。二本鎖siRNAへのPTD-DRBDの添加は、濃度依存的様式で複数のサブユニットの特異的かつ迅速な結合をもたらした(図1C)。siRNAを細胞に送達するPTD-DRBDの能力を試験した。PTD-DRBDを一緒のCy3標識されたsiRNAの細胞への添加は、集団中の全細胞へのsiRNAの細胞取込みをもたらしたが、対照のCy3標識siRNAは細胞に進入することができなかった(図1D)。
【0116】
RNAi応答のPTD-DRBD送達siRNA誘導を試験するために、野生型タンパク質(24時間超)よりも大幅に短い半減期(約2時間)を有する脱安定化されたeGFP-PEST (dGFP)および脱安定化されたDsRed-PEST (dDsRed)タンパク質を構成的に発現するベクターの組み込まれたコピーを含む、ヒトH1299肺腺癌リポーター細胞系を作製した。dGFP/dDsRedを組み込んだリポーターは、単一細胞、つまり、集団中のRNAi応答を経験する細胞のパーセンテージの直接的決定を可能にするが、ルシフェラーゼなどの他のリポーターまたはmRNA測定ではできない。H1299 dGFP/dDsRedリポーター細胞を、複数種のGFP、DsRedおよび対照siRNAと組み合わせた、PTD-DRBD、対照DRBD、対照PTDペプチドまたは対照リポフェクションで処理した。siRNA処理されたリポーター細胞を、dGFPおよびdDsRedの発現、ならびに細胞生存能について、24時間時点でフローサイトメトリーにより分析した(図1E、図6)。重要なことに、リポフェクション剤は、独立した対照として用いたに過ぎず、PTD-DRBDサンプルと共には用いなかった。GFP siRNAと組み合わせた、PTD-DRBDのみ、対照PTDペプチドまたは対照DRBD(PTDなし)の添加は、dGFPまたはdDsRed発現レベルに対する効果を有さなかった。対照的に、GFP siRNA+PTD-DRBDの細胞への添加は、内部対照dDsRedを変化させずにdGFPの劇的なRNAiノックダウンを誘導した。同様に、PTD-DRBD+DsRed siRNAの添加は、dGFP発現を変化させずに、dDsRedノックダウンをもたらした。合計5種の配列非依存的GFP siRNAを試験したところ、5種全部が対照dDsRedを変化させずにGFP特異的RNAi応答を誘導し、2種を図1Eに示す。PTD-DRBD送達されたGFP siRNAによるdGFPの低下もまた、GFP siRNAの対照リポフェクションよりも有意に強かった(図1E)。2種の実証済みのRISC搭載された対照siRNA、Silencer Nagative (SN)およびルシフェラーゼ(Luc)と共にPTD-DRBDを添加しても、dGFPまたはdDsRedシグナルの変化をもたらさなかった。PTD-DRBD処理された細胞における細胞生存能のわずかな変化〜変化なしが検出されたが、リポフェクションは測定可能な細胞毒性をもたらした(図6)。
【0117】
リポフェクションと比して有意により強いPTD-DRBDによるdGFP RNAiノックダウン応答を、単一細胞フローサイトメトリー分析により試験した(図1E)。添加後24時間時点で、PTD-DRBD送達されたdGFP siRNAは、100%の細胞において最大のGFP RNAi応答を誘導した(図2A)。対照的に、リポフェクションにより送達されたsiRNAは、未処理の対照細胞と等しいdGFPを発現する非反応性細胞のプールについて、不完全かつ部分的な浸透剤であるRNAi応答を誘導した。48時間時点で、PTD-DRBD送達されたGFP siRNAは、完全な100%のRNAi応答を維持した(図2B)。しかしながら、リポフェクション処理された細胞は、次の2つの異なる集団にさらに分割された:PTD-DRBD媒介RNAiと類似する規模のGFPノックダウンを示すdGFP RNAi応答集団、およびdGFP RNAi応答の兆候を示さない約20%の細胞の第2集団(図2B)。これらの観察は、リポフェクションが、集団中の、しかも本発明で用いられる高度に形質転換可能な腫瘍細胞でさえ、100%の細胞にsiRNAを送達することができないことと完全に一致しており、さらに、付随する細胞毒性がsiRNA送達の分野でよく認識されている。
【0118】
PTD-DRBD媒介siRNA送達により誘導されたRNAi応答動態を試験した。H1299 dGFP/dDsRedリポーター細胞を、複数種のGFP、DsRedおよび対照siRNAと組み合わせた、PTD-DRBD、対照PTDペプチドまたは対照リポフェクションで処理した後、8日間毎日フローサイトメトリーにより分析した(図2C)。上記の観察と一致して、PTD-DRBD+GFP siRNAのみがdGFP特異的RNAi応答を誘導し、一方、対照の組合せは全て誘導することができなかった。PTD-DRBD送達されたGFP siRNAは、1〜3日目の間、最大のdGFP RNAiを維持した後、8日目に対照レベルまで徐々に崩壊した(図2C)。応答細胞の数が限られていることを除いて、対照リポフェクションにより送達されたGFP siRNAは、PTD-DRBDにより送達されたsiRNAと同様の誘導および崩壊動態を示すGFP RNAi応答を誘導した。この崩壊曲線は、siRNAを搭載したRISCが細胞分裂およびsiRNA半減期の間に希釈されるという考えと完全に一致する。RNAi崩壊曲線を回避するために、分裂中の細胞を、PTD-DRBD siRNAを用いて3日目および6日目に再処理した。反復処理は、8日間に渡って測定されたGFP RNAi応答の程度および規模の維持をもたらした(図2D)。総合すれば、これらの観察は、PTD-DRBD融合タンパク質が、細胞毒性でない様式で100%の細胞にsiRNAを効率的に送達することができることを証明している。
【0119】
組み込まれたdGFP/dDsRed遺伝子はRNAi応答のための優れたリポーター標的として働くが、内因性遺伝子を、RNAi、すなわち標準的な対照RNAi標的であるGAPDH mRNAにより標的化した。PTD-DRBD融合体により送達された2種の配列非依存的GAPDH siRNAによるH1299細胞の処理は、GAPDH RNAi応答をもたらし、これは最初に添加の6時間後に検出され、12時間時点で最大RNAi応答に到達した(図3)。対照的に、全てのPTD-DRBD陰性対照は、GAPDH RNAi応答を誘導することができなかった。興味深いことに、PTD-DRBDにより送達されたGAPDH siRNAは、同じGAPDH siRNAの対照リポフェクション送達よりも有意に早いRNAi応答を達成したが、これはPTD-DRBDにより送達されたsiRNAがより迅速にRISC中に搭載されることを示唆している(図3)。これは、TAT-Cre添加によりLoxP組換えの迅速な(15分)検出が観察されたことと完全に一致している。dGFP RNAi誘導および崩壊動態と同様、PTD-DRBDにより送達されたGAPDH siRNAは、処理の72時間後に最大のRNAi応答を示し、次いで、96時間時点ではゆっくり崩壊していた。総合すれば、これらの観察は、PTD-DRBD媒介siRNA送達により、内因性mRNAを効率的に標的化する能力を実証している。
【0120】
PTD-DRBDにより送達されたsiRNAは、様々な細胞型においてRNAi応答を誘導する
現在、100%の全ての細胞にsiRNAを送達する手法は存在しない。一例として、siRNAのリポフェクション送達は、本質的には有意な膜摂動を許容する接着性で高度に腫瘍形成性の細胞に限られる。それは、多くの初代細胞および非接着性造血系列、例えば、TおよびB細胞、マクロファージに対して完全に無効であるわけではない。普遍的なsiRNA送達の可能性を研究するために、dGFPレトロウイルス発現ベクターを、いくつかの初代および腫瘍形成性細胞型中に安定に導入した(図4)。リポフェクションによる完全に否定的な結果と対照的に、マクロファージおよびメラノサイト中のPTD-DRBD送達されたsiRNAは、集団の100%においてGFP RNAi応答を誘導した(図4A)。さらに、PTD-DRBD送達されたGFP siRNAは、H1299細胞と同様の崩壊動態で、接着性初代ヒト線維芽細胞、ケラチノサイト、T細胞およびグリオブラストーマ細胞において完全なRNAi応答を誘導した(図4B)。対照的に、全ての陰性対照は、GFP RNAi応答を誘導することができなかった。本開示は、現在までにアッセイされた全部で14種の異なる初代、腫瘍形成性、接着性および非接着性細胞系中のRNAi応答を実証するが、これはPTD-DRBD融合体が、細胞への普遍的siRNA送達を媒介することを示唆している。
【表1】

【0121】
ヒト胚性幹細胞におけるPTD-DRBD媒介siRNA送達
ヒト胚性幹細胞(hESC)はヒト疾患を治療する大きな潜在能力を有し、RNAiは成熟細胞系列へのhESCの標的化された分化を誘導する可能性を有する。しかしながら、hESCを特定の細胞系列へ向かわせるRNAiによる操作と患者中への最終的な配置は、リポフェクションなどのウイルスベクターおよび細胞毒性化合物へのhESCの曝露を回避する厳密なプロトコルを必要とするであろう。PTD-DRBD融合体による効率的かつ非細胞毒性siRNA送達を仮定して、PTD-DRBD媒介siRNAがhESC分化を誘導する能力を試験した。レンチウイルス感染を用いて、野生型eGFPリポーターを担持するhESC系を作製した。eGFP siRNAのPTD-DRBD媒介送達は、eGFP発現における有意な低下をもたらし、一方、対照は全て、RNAi応答を誘導することができなかった(図5A)。これらの観察は、上記で考察されたPTD-DRBD媒介siRNA送達の普遍的送達態様と完全に一致している。
【0122】
hESCの運命に影響するPTD-DRBD媒介siRNA送達の能力を試験した。hESCの多分化能を維持するには、Oct4 (PFU5)転写因子が必要であり、最近の報告により、Oct4 RNAiノックダウンがhESC分化をもたらすことが示された(Boyerら、2005;Orkin, 2005)。PTD-DRBD+Oct4 siRNAを用いるhESC処理は、Oct4特異的ノックダウンおよび増殖速度の低下の両方をもたらし、これは多分化能の喪失および分化の開始につながる(図5B、C)。対照的に、模擬体および対照PTD-DRBDの両方+ルシフェラーゼsiRNAは、hESCの細胞形態、増殖速度またはOct4発現レベルを変化させなかった。多分化能hESCは、段階特異的胚抗原-4 (SSEA-4)を含む複数の細胞表面マーカーを発現する(Hendersonら、2002)。内胚葉への分化の際に、hESCはSSEA-4発現を低下させ、分裂を停止し、サイズが増加し、続いて、GATA6分化転写因子を発現する(Hayら、2004)。PTD-DRBD送達されたOct4 siRNAは、継続的にSSEA-4を発現しながら、2日目までにOct4発現の喪失をもたらした(図5D)。しかしながら、処理後10日までに、Oct4 siRNA処理された細胞はSSEA-4の発現を喪失し、GATA6内胚葉特異的転写因子の発現を誘導した(図5E)。対照的に、模擬体および対照PTD-DRBD+ルシフェラーゼsiRNAで処理されたhESCは、分化を誘導せず、またはhESCマーカー発現を変化させなかった(図5E)。総合すれば、これらの観察は、多種多様な初代細胞および腫瘍形成性細胞においてsiRNAを送達し、特異的RNAi応答を誘導し、内因性遺伝子を標的とし、およびhESC分化を誘導するというPTD-DRBD融合体の普遍的能力を証明している。
【0123】
siRNAにより誘導されたRNAi応答は、細胞生物学の操作、遺伝子経路の詳細な分析、標的の検証のための重要な実験手順であり、治療的介入のための大きな潜在能力を有する。しかしながら、その巨大分子サイズ(約14,000 Da)、および強い陰イオン電荷のため、siRNAはそれ自体では、細胞に進入する能力を持たない。結果として、siRNA送達の問題を解決するために、複数の手法が考案された。陽イオン脂質トランスフェクション試薬は現在、in vitroでの標準的なsiRNA送達ビヒクルである。しかしながら、この手法ならびにPEI siRNA濃縮の他の手法、抗体プロタミン融合siRNA濃縮、コレステロールLDL粒子形成およびリポソーム封入は、見込みがあるであるが、集団中の細胞、特に、初代細胞および造血系列(TおよびB細胞、マクロファージ)の100%を標的とすることはできない。結果として、1)初代および腫瘍形成性、接着性および非接着性の全細胞型の100%を標的とし、2)非細胞毒性であり、さらに3)siRNA配列非依存性である普遍的siRNA送達手法に対する大きな必要性が存在する。
【0124】
ここで記載のPTD-DRBD siRNA送達手法は、普遍的siRNA送達系のための基準の多くを満たす。第1に、PTD-DRBD融合体は、14種の異なる初代および腫瘍形成性、接着性および非接着性の細胞型など、試験したそれぞれの細胞型および全ての細胞型にsiRNAを送達した。第2に、細胞中へのPTD媒介siRNA送達は、全ての細胞が実施し、従って特異的受容体の高レベル発現を必要としない特殊な形態の液相エンドサイトーシスである非細胞毒性マクロピノサイトーシスにより生じる。第3に、DRBDは、配列組成とは独立にdsRNA(siRNA)に結合し、従って、細胞中に全てのsiRNAを送達することができる。総合すれば、PTD-DRBD融合体は、RNAi操作を容易に利用可能ではない多くの細胞型、特に初代細胞への普遍的siRNA送達手法を証明している。
【0125】
いくつかの実施形態および特徴を上記してきたが、記載の実施形態および特徴の改変および変更を、添付の特許請求の範囲により定義された本発明の開示または範囲の教示から逸脱することなく行うことができることが、当業者には理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1A-Eは、細胞へのsiRNAのPTD-DRBD媒介送達を示す。(A)siRNAに結合したPTD-DRBDの模式図。DRBDは、第1の陽イオン性PTDが結合すると仮定される両末端上で陰イオン電荷から離脱して約16 bpのdsRNAをマスキングする。(B)TAT-Creに関する研究に基づくPTD-DRBD:siRNA細胞進入の提唱された機構(Wadiaら、2004)。遊離の陽イオン性PTDドメインは、細胞表面陰イオン性プロテオグリカン(1)と相互作用し、それがマクロピノサイトーシス(2)を誘導し、その後、マクロピノソームのpH低下が小胞漏出を増強し(3)、PTD-DRBD:siRNA細胞質分解が起こり(4)、そしてsiRNAがRISCに搭載される。(C)Cy3-標識された19マーのsiRNAに結合したPTD-DRBDのEMSA分析。2種の異なるより高次の複合体を検出した。MはdsDNAラダーマーカーである。(D)添加の6時間後にPTD-DRBD:siRNA-Cy3で処理したH1299細胞の顕微鏡分析。細胞をトリプシン/ヘパリンで洗浄および処理して、顕微鏡観察の前に細胞外結合した材料を除去した。(E)PTD-DRBD:siRNAによるdGFPおよびdDsRedのRNAiノックダウン。組み込まれ不安定化されたdGFPおよびdDsRedリポータータンパク質を同時発現するH1299細胞を、6時間にわたり、記載のようにしてsiRNAで処理し、洗浄し、および添加後24時間時点でフローサイトメトリーによりアッセイした。GFP1およびGFP2 siRNAは独立した配列である。SNはSilencer Negative対照siRNAであり、Lucはルシフェラーゼ対照siRNAである。平均値を、対照(%)に対して正規化し、エラーバーはSEMを示し、全実験を3回ずつ行った。
【図2】図2A-Dは、PTD-DRBD媒介dGFP RNAi応答の分析を示す。(AおよびB)示される通り、H1299 dGFP/dDsRed細胞の処理の(A)1日後および(B)2日後のdGFP RNAi応答のフローサイトメトリー単一細胞ヒストグラム分析。(C)H1299 dGFP/dDsRed細胞の1回のsiRNA処理後のdGFP RNAiノックダウン崩壊動態のフローサイトメトリー分析。(D)示される通り、H1299 dGFP細胞の複数回のsiRNA処理後のdGFP RNAiノックダウン崩壊動態のフローサイトメトリー分析。平均値を、対照パーセントに対して正規化し、エラーバーはSEMを示し、全実験を3回ずつ行った。
【図3】図3A-Fは、PTD-DRBD:siRNAによる内因性GAPDH mRNAのノックダウンを示す。 (A-F)示される通り、H1299細胞における処理後6、12、24、36、72および96時間での内因性GAPDH mRNA発現の定量的TaqMan RT-PCR分析。平均値をβ2ミクログロブリンに対して正規化し、模擬体GAPDH対照に対するパーセントとして報告する。エラーバーはSEMを示し、全ての実験を3回ずつ行った。
【図4】図4A-Fは、PTD-DRBD送達されたsiRNAが様々な細胞型においてRNAi応答を誘導することを示す。(AおよびB)示される通り、(A)ヒトTHP-1マクロファージ細胞におけるdGFP RNAi応答、および(B)マウスB16F0メラノーマ細胞における野生型eGFP RNAi応答のフローサイトメトリー単一細胞ヒストグラム分析。(C-F)示される通り、(C)ヒトHFF初代線維芽細胞、(D)ヒトJurkat T細胞、(E)ヒトHaCaTケラチノサイト、(F)ヒトT98Gグリオブラストーマ細胞の単一siRNA処理後の、dGFP RNAiノックダウン崩壊動態のフローサイトメトリー分析。平均値を対照パーセントに対して正規化する。エラーバーはSEMを示し、全ての実験を3回ずつ行った。
【図5】図5A-Eは、ヒト胚性幹細胞のPTD-DRBD:siRNA標的化された分化を示す。(A)添加後2日目にPTD-DRBD GFP2 siRNAで処理した野生型eGFPを発現するヒトH9胚性幹細胞の蛍光顕微鏡分析。(B)添加後2日目にPTD-DRBD Oct4または対照ルシフェラーゼ(Luc)siRNAを用いるHUES9 hESC処理におけるOct4イムノブロット分析。(C)示される通り、PTD-DRBD送達されたOct4または対照ルシフェラーゼ(Luc) siRNAで処理したヒトHUES9胚性幹細胞の細胞分裂曲線。(D)PTD-DRB送達されたOct4またはルシフェラーゼ(Luc) siRNAを用いる処理後2日目のHUES9 hESCにおけるOct4およびSSEA4発現の免疫組織化学分析。抗体:Alexa594結合抗Oct4 (赤)、Alexa488結合抗SSEA-4(緑)。ゲノムDNAであるHoechst(青)。(E)PTD-DRB送達されたOct4またはルシフェラーゼ(Luc) siRNAを用いる処理後10日目のHUES9 hESCにおけるGATA6およびSSEA4発現の免疫組織化学分析。抗体:Alexa594結合抗GATA6(赤)、Alexa488結合抗SSEA-4(緑)。ゲノムDNAであるHoechst(青)。
【図6】図6A-Dは、細胞毒性を示す。(A-D)示されたように、模擬体、リポフェクションまたはPTD-DRBD+siRNAで処理された、示された細胞を、細胞毒性についてフローサイトメトリー前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)により分析した。模擬体対照と比較した生細胞のパーセントとして報告した。
【図7】図7は、ヌードマウスに、1日目に500,000個のU87MG-EGFRvIIIグリオブラストーマ細胞を頭蓋内接種した。10日目に、マウスをPTD-DRBD:siRNA標的化EGFRvIIIで処理した。PTD-DRBDの添加の24、48、72時間後、マウスを致死させ、連続冠状脳切片を取得した。示されるように、隣接する脳切片をH&Eで染色するか、またはIHCを抗EGFR抗体+H株を用いて実施した。24時間時点でのEGFR染色の減少、次いで、48および72時間時点でのEGFR染色の有意な喪失は、グリオブラストーマを通じて広がったEGFR RNAi応答を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン荷電した核酸と複合化して核酸結合タンパク質-核酸複合体を形成している核酸結合タンパク質、および
該核酸結合タンパク質-核酸複合体に連結したタンパク質導入ドメイン(PTD)、
を含む組成物。
【請求項2】
前記核酸結合タンパク質が二本鎖RNA結合ドメイン(DRBD)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記DRBDが、ヒストン、RDE-4タンパク質、プロタミン、ならびにPKR (AAA36409, AAA61926, Q03963)、TRBP (P97473, AAA36765)、PACT (AAC25672, AAA49947, NP609646)、Staufen (AAD17531, AAF98119, AAD17529, P25159)、NFAR1 (AF167569)、NFAR2 (AF167570, AAF31446, AAC71052, AAA19960, AAA19961, AAG22859)、SPNR (AAK20832, AAF59924, A57284)、RHA (CAA71668, AAC05725, AAF57297)、NREBP (AAK07692, AAF23120, AAF54409, T33856)、カナダプチン(AAK29177, AAB88191, AAF55582, NP499172, NP198700, BAB19354)、HYL1 (NP563850)、下偏成長葉(CAC05659, BAB00641)、ADAR1 (AAB97118, P55266, AAK16102, AAB51687, AF051275)、ADAR2 (P78563, P51400, AAK17102, AAF63702)、ADAR3 (AAF78094, AAB41862, AAF76894)、TENR (XP059592, CAA59168)、RNaseIII (AAF80558, AAF59169, Z81070Q02555/S55784, PO5797)、およびDicer (BAA78691, AF408401, AAF56056, S44849, AAF03534, Q9884)、RDE-4 (AY071926)、FLJ20399 (NP060273, BAB26260)、CG1434 (AAF48360, EAA12065, CAA21662)、CG13139 (XP059208, XP143416, XP110450, AAF52926, EEA14824)、DGCRK6 (BAB83032, XP110167)、CG1800 (AAF57175, EAA08039)、FLJ20036 (AAH22270, XP134159)、MRP-L45 (BAB14234, XP129893)、CG2109 (AAF52025)、CG12493 (NP647927)、CG10630 (AAF50777)、CG17686 (AAD50502)、T22A3.5 (CAB03384)およびアクセッション番号EAA14308を包含するdsRNA結合タンパク質(括弧内はアクセッション番号)からなる群より選択される配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記核酸がdsRNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
PTDが、前記核酸結合タンパク質に機能し得る形で連結されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
PTDが、前記核酸に機能し得る形で連結されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
核酸結合タンパク質と核酸の比率が1:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
核酸結合タンパク質と核酸の比率が2:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記タンパク質導入部分が、ヘルペスウイルスVP22タンパク質を含むポリペプチド、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)TATタンパク質を含むポリペプチド、アンテナペディアタンパク質(Antp HD)のホメオドメインを含むポリペプチド、およびそれらの機能的断片からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記タンパク質導入ドメインが、少なくとも1個の核酸結合タンパク質に機能し得る形で連結している、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
以下:
a)第1の融合ポリペプチドであって、
i)膜輸送機能を含むタンパク質導入部分(PTD)を含む、第1のドメイン;および
ii)核酸結合タンパク質を含む第2のドメイン、
を含む前記ポリペプチド;
b)陰イオン荷電し、該核酸結合タンパク質と相互作用する核酸であって、PTD-核酸結合タンパク質-核酸の全体の陰イオン電荷が、該核酸のみと比較して低下している、前記核酸;ならびに
c)製薬上許容し得る担体、
を含む組成物。
【請求項12】
前記タンパク質導入部分が、ヘルペスウイルスVP22タンパク質を含むポリペプチド;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)TATタンパク質を含むポリペプチド;アンテナペディアタンパク質(Antp HD)のホメオドメインを含むポリペプチド、およびそれらの機能的断片からなる群より選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記核酸がdsRNAを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記核酸が、in situハイブリダイゼーションにおいて用いられるプローブである、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記核酸が、細胞増殖を調節する、請求項11または13に記載の組成物。
【請求項16】
前記調節が細胞増殖を阻害するものである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
以下:
a)膜輸送機能を含むタンパク質導入ドメイン(PTD);および
b)結合した核酸の陰イオン電荷を中和するか、または低下させる核酸結合ドメインであって、PTDが該核酸結合ドメインに機能し得る形で連結されている前記ドメイン、
を含む融合ポリペプチド。
【請求項18】
前記タンパク質導入ドメインが、ヘルペスウイルスVP22ドメインを含むポリペプチド;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)TATドメインを含むポリペプチド;アンテナペディアタンパク質(Antp HD)のホメオドメインを含むポリペプチド;N末端陽イオン性プリオンタンパク質ドメイン;およびそれらの機能的断片からなる群より選択される、請求項17に記載の融合ポリペプチド。
【請求項19】
前記タンパク質導入ドメインが、配列番号7のアミノ酸47〜57;B1-X1-X2-X3-B2-X4-X5-B3(式中、B1、B2およびB3はそれぞれ独立に同じかまたは異なっていてもよい塩基性アミノ酸であり、X1、X2、X3、X4およびX5はそれぞれ独立に同じかまたは異なっていてもよいα-ヘリックスを強化するアミノ酸である)(配列番号1);B1-X1-X2-B2-B3-X3-X4-B4(式中、B1、B2、B3およびB4はそれぞれ独立に同じかまたは異なっていてもよい塩基性アミノ酸であり、X1、X2、X3およびX4はそれぞれ独立に同じかまたは異なっていてもよいα-ヘリックスを強化するアミノ酸である)(配列番号2);X-X-R-X-(P/X)-(B/X)-B-(P/X)-X-B-(B/X)(式中、Xはアラニンなどの任意のαヘリックス促進残基であり、P/Xはプロリンまたはすでに定義されたXであり、Bは塩基性アミノ酸残基でありB/XはBまたは上記で定義されたXである)(配列番号4); KX1RX2X1(式中、X1はRまたはKであり、X2は任意のアミノ酸である)(配列番号5)を含む約7〜10個のアミノ酸の配列;RKKRRQRRR (配列番号6);ならびにKKRPKPG (配列番号3)からなる群より選択される配列を含む、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項20】
前記核酸がdsRNAまたはsiRNAである、請求項17に記載の融合ポリペプチド。
【請求項21】
前記核酸結合ドメインが、ヒストン、RDE-4タンパク質、プロタミン、ならびにPKR (AAA36409, AAA61926, Q03963)、TRBP (P97473, AAA36765)、PACT (AAC25672, AAA49947, NP609646)、Staufen (AAD17531, AAF98119, AAD17529, P25159)、NFAR1 (AF167569)、NFAR2 (AF167570, AAF31446, AAC71052, AAA19960, AAA19961, AAG22859)、SPNR (AAK20832, AAF59924, A57284)、RHA (CAA71668, AAC05725, AAF57297)、NREBP (AAK07692, AAF23120, AAF54409, T33856)、カナダプチン(AAK29177, AAB88191, AAF55582, NP499172, NP198700, BAB19354)、HYL1 (NP563850)、下偏成長葉(CAC05659, BAB00641)、ADAR1 (AAB97118, P55266, AAK16102, AAB51687, AF051275)、ADAR2 (P78563, P51400, AAK17102, AAF63702)、ADAR3 (AAF78094, AAB41862, AAF76894)、TENR (XP059592, CAA59168)、RNaseIII (AAF80558, AAF59169, Z81070Q02555/S55784, PO5797)、およびDicer (BAA78691, AF408401, AAF56056, S44849, AAF03534, Q9884)、RDE-4 (AY071926)、FLJ20399 (NP060273, BAB26260)、CG1434 (AAF48360, EAA12065, CAA21662)、CG13139 (XP059208, XP143416, XP110450, AAF52926, EEA14824)、DGCRK6 (BAB83032, XP110167)、CG1800 (AAF57175, EAA08039)、FLJ20036 (AAH22270, XP134159)、MRP-L45 (BAB14234, XP129893)、CG2109 (AAF52025)、CG12493 (NP647927)、CG10630 (AAF50777)、CG17686 (AAD50502)、T22A3.5 (CAB03384)およびアクセッション番号EAA14308を包含するdsRNA結合タンパク質(括弧内はアクセッション番号)からなる群より選択される、請求項17に記載の融合ポリペプチド。
【請求項22】
請求項17に記載の融合ポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項1もしくは11に記載の組成物、または請求項17に記載の融合ポリペプチドと接触させることを含む、細胞中に陰イオン荷電した核酸分子を細胞に導入する方法。
【請求項24】
細胞中に陰イオン荷電した核酸分子を導入する方法であって、該核酸分子を、核酸結合ドメインと結合させて、該陰イオン電荷を中和するか、または低下させ、該複合体をタンパク質導入ドメイン(PTD)に連結し、該細胞をPTD-電荷中和された核酸と接触させることを含む、前記方法。
【請求項25】
前記接触がin vivoまたはin vitroである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記接触がin vivoまたはin vitroである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記核酸分子がdsRNAを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記dsRNAを前記細胞により処理して、siRNAを形成させる、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸が標的遺伝子産物の産生を阻害する、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記標的遺伝子産物が、細胞増殖性障害を引き起こす、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項17に記載の融合ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項32】
請求項31に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項33】
請求項32に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項34】
請求項31に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項35】
請求項31に記載のポリヌクレオチドを発現させ、発現された融合ポリペプチドを実質的に精製することを含む、融合ポリペプチドの製造方法。
【請求項36】
融合ポリペプチドを製造する方法であって、請求項33または34に記載の宿主細胞を、該ポリヌクレオチドが発現される条件下で培養し、発現された融合ポリペプチドを実質的に精製することを含む、前記方法。
【請求項37】
陰イオン荷電した核酸を、請求項17に記載の融合ポリペプチドと接触させることを含む、細胞に導入するための組成物を作製する方法。
【請求項38】
(a)タンパク質導入ドメイン;および(b)核酸結合タンパク質を含む1または複数の容器を含むキット。
【請求項39】
dsRNA分子をさらに含む、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
請求項17に記載の融合ポリペプチドを含む容器を含むキット。
【請求項41】
標的細胞中に核酸を導入する方法であって、該細胞を請求項1または11に記載の組成物と接触させることを含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−532017(P2009−532017A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554412(P2008−554412)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003641
【国際公開番号】WO2007/095152
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(500445295)ザ レジェンツ オブ ザ ユニヴァースティ オブ カリフォルニア (28)
【Fターム(参考)】