説明

PTPシートの抱き合わせ方法及び装置

【課題】 1枚ずつ前後に搬送されるPTPシートのうちの2枚のPTPシートを、ポケット部を対向させた状態で重ね合わせることを高速に行えるようにすること
【解決手段】 PTPシート1を一定間隔ごとに搬送する第1搬送路12と、その第1搬送路の上方に配置される第2搬送路13と、第1搬送路で搬送されるPTPシートを1枚おきに第2搬送路へ移し替える搬送路切り替え機構(往復移動するシャッター14)と、第2搬送路(回転案内通路25)上を搬送されるPTPシートを、搬送面上で滑らせて前進移動させながらその搬送面内で回転させて前後の向きを変更する方向回転手段(抑え部材20)と、その前後の向きが回転されたPTPシートを、反転させるとともに、第1搬送路の第3通路12cの上に設けた第4通路35上に供給する移し替え装置30を備える。押送フィンガーにより、第3通路上と第4通路上のPTPシートは、後端がそろった状態で搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚ずつ前後に並べて搬送されるPTP(Press Through Pack)シートのうちの2枚のPTPシートを、ポケット部を対向させた状態で重ね合わせるPTPシートの抱き合わせ方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
良く知られているように、PTPシートは、容器(ポケット部)側から中身を押し出して上蓋を破壊し、中身を取り出すようにした包装形態であり、薬品包装における錠剤やカプセルの包装に良く使われる。そして、係るPTPシートは、通常複数個を積層した状態(物品集合体)で包装処理された状態で市販されている。そして、PTPシートを積層するに際し、2枚のPTPシートを、ポケット部を設けた面を対向させると共に、ポケット部の位置を互いにずらせた状態で重ね併せることがある。これにより、一方のPTPシートのポケット部間の空間内に、他方のPTPシートのポケット部が入り込むことで、複数のPTPシートを重ねて構成される物品集合体全体の高さを低く抑えることができる。
【0003】
このように2枚のPTPシートを重ね合わせる装置の一形態として、所定間隔で連続的に同じ姿勢で搬送しているPTPシートを、1枚おきに回転させつつ反転させ、2枚のPTPシートをポケット部の位置を互いにずらせた状態で重ね合わせることができるPTPシートの搬送装置がある。係る搬送装置の一例として、特許文献1に開示された発明がある。この特許文献1に開示された装置は、PTPシートが搬送される案内板(1)と、案内板(1)の上方の配置される上部案内板(2)とを備え、案内板(1)上を所定の間隔で連続的に搬送されているPTPシートを1枚おきに上部案内板2へと導くリフト(4)を有している。上部案内板(2)の上方には、ピックアップしたPTPシートを回転させながら反転させることができる反転器(35a)が配設されている。この反転器(35a)は、上下に配置された第1のバー(27)と第2のバー(32)とにそれぞれ回転軸を介して連結されており、第1のバー(27)及び第2のバー(32)は、上部案内板(2)と直交する方向に一体的に往復移動が可能となっている。この往復移動の際、第1及び第2のバー(27),(32)と一体で移動するピニオン(28a)が、固定されているラック(30a)と噛み合って回転することにより、ピニオン(28a)と一体構造のアーム(31a)が回転する。アーム(31a)の先端部は第2のバー(32)と回転軸を介して連結されていて、アーム(31a)を回転させることによって、第1のバー(27)と第2のバー(32)とを接近・離間させることができるようになっている。これにより、第1のバー(27)と第2のバー(32)とにそれぞれ回転軸を介して連結されている反転器(35a)が回転する仕組みになっている。
【0004】
係る構成により、案内板(1)上を所定間隔で連続的に搬送されているPTPシートを、1枚おきにリフト(4)によって上部案内板(2)に導き、上部案内板(2)において反転器(85a)でピックアップして回転させつつ反転させたのち上部案内板(2)に戻し、下流側において案内板(1)を搬送されてきたPTPシートと重ね合わせて抱き合わせを行っている。なお、括弧付きの数字は、特許文献1において使用された符号を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2597533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1を始め従来のPTPシートを抱き合わせる装置は、PTPシートの搬送を間欠に行い一時停止しているときに、上下の反転や前後の回転を行うようにしているので、高速運転に対応できない。さらに、特許文献1に開示された装置では、ラック(30a)・ピニオン(28a)や揺動するアーム(31a)などを介して動力を伝達し反転器(35a)を回転させるため、高速運転には対応しきれない。また、PTPシートを上部案内板(2)上からピックアップして回転及び反転させたのちに、再び上部案内板(2)上へ戻す仕組みになっているため、高速運転には対応しきれない。さらにまた、反転器の回転に伴ってPTPシートが反転器内で揺り動かされ、ダメージを受け易いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、(1)PTPシートを一定間隔ごとに搬送する第1搬送手段と、その第1搬送手段の上方に配置される第2搬送手段と、前記第1搬送手段で搬送される前記PTPシートを1枚おきに前記第2搬送手段へ移し替える経路切り替え手段と、前記第2搬送手段上を搬送されるPTPシートを、搬送面上で滑らせて前進移動させながらその搬送面内で回転させて前後の向きを変更する方向回転手段と、その前後の向きが回転された前記PTPシートを、反転させるとともに、前記第1搬送手段で搬送されてきたPTPシートの上方に供給する反転供給手段と、を備えるようにした。反転供給手段は、実施形態では、移し替え装置30に対応する。PTPシートを、ピックアップしたりすることなく、第2搬送路の搬送面上を滑らせて移動させながら回転させて向きを変更するため、間欠駆動でない連続搬送や高速運転に対応することができる。
【0008】
(2)前記方向回転手段は、前記搬送面の摩擦抵抗よりも大きい摩擦抵抗の材質で構成される抑え部材と、その抑え部材にて前記PTPシートを搬送面に向けて抑えつけた状態で、その抑え部材を前記PTPシートの搬送方向に移動しつつ180度回転する機構と、を備えるとよい。大きい摩擦抵抗の材質は、例えば、シリコン系やウレタン系のゴムで構成することができる。特に、ゴム系とすると、弾力性もあるため、PTPシートを抑えたとしても、PTPシートに対するダメージ(ポケット部のつぶれ等)が抑制できるので好ましい。PTPシートを抑え部材で抑えつけると、摩擦抵抗が大きいため抑え部材の移動に伴いPTPシートを移動させることができる。よって、抑え部材が回転すれば、PTPシートも回転し、抑え部材が前進移動すればPTPシートも前進移動し、確実かつスムーズな回転等が行える。抑え部材を搬送方向に移動しつつ180度回転させる機構は、作動ロッド19を所定の軌跡で移動(公転・自転)させるヤグラコンベア16や、その移動を案内する回転案内通路25等により実現される。
【0009】
(3)前記搬送面のうち、前記方向回転手段により回転する領域は、低摩擦抵抗の材質で構成されるとよい。低摩擦抵抗の材質は、例えば、超高分子量ポリエチレンや、ポリアセタールや、4フッ化エチレン等を用いることができる。
【0010】
(4)上記の(2)または(3)の発明を前提とし、前記第2搬送手段の搬送路は、上流側が徐々に上昇する上り坂となり、その上り坂に続いて水平面を有し、その水平面の領域で前記方向回転手段による回転を行うようにし、前記第2搬送手段におけるPTPシートへ与える搬送力は、少なくとも前記上り坂の領域では前記PTPシートの進行方向後縁に接触して前方へ付勢する押送部材により行い、前記水平面における前記抑え部材が前記PTPシートを抑えている間は、その抑え部材により行うようにするとよい。上り坂は、実施形態の上り通路13bに対応する。実施形態に示すように、上り坂(上り通路13b)のさらに上流側に別の形態の通路があるのは妨げない。つまり、上り坂が第2搬送手段における最上流部(入口側・搬入側)にある必要性はなく、PTPシートを回転させる水平面に至る前に上り坂があればよい。押送部材と抑え部材は、実施形態のように一体に連結されていてもよいし、別に分離形成されていてもよい。また、上り坂の領域で押送部材によりPTPシートを搬送するが、その後も搬送するのを妨げない。
【0011】
(5)上記の(4)の発明を前提とし、前記押送部材と前記抑え部材は、ループ状の案内路に沿って周回する支持部材に一体に連結され、その支持部材と共に公転移動し、前記PTPシートに対して前記押送部材により搬送している区間では、前記抑え部材は前記PTPシート1から離反し、前記水平面の所定位置で前記抑え部材が前記PTPシートに接近移動して前記PTPシートを抑えるようにするとよい。支持部材は、実施形態では作動ロッド19に対応する。実施形態のように押送部材と抑え部材が一体に連結されていると、それらの駆動系を共通化できるので、構成並びに制御が簡易となるので好ましい。また、PTPシートを180度回転させると、押送部材はPTPシートの前側に位置してしまいPTPシートに対して搬送力を与えることができなくなるが、抑え部材により抑えつけた状態で当該抑え部材が前進移動することでPTPシートを搬送することができるので問題ない。
【0012】
(6)上記の(5)の発明を前提とし、前記押送部材は、前記搬送路側の先端に爪部を設け、前記第2搬送手段の搬送面のうち、少なくとも前記PTPシートの回転を行う領域では、前記爪部が挿入されるガイド溝が設けられ、そのガイド溝は、前記抑え部材と共に回転する前記押送部材の前記爪部の移動軌跡に応じたものとするとよい。爪部は、実施形態では凸部21aに対応する。爪部がガイド溝内に沿って移動するので、押送部材の回転がスムーズに行える。
【0013】
(7)前記第1搬送手段の搬送路は、上流側の第1通路と、その第1通路に連続する下り坂からなる第2通路と、その第2通路に連続する第3通路を備え、前記経路切り替え手段は、前記第1通路の先端側から下流側に突出して前記第2通路へのPTPシートの移動を阻止する閉位置と、前記第1通路の先端から非突出で前記第2通路へのPTPシートの移動を許容する開位置との間で往復直線移動するシャッターを備え、前記シャッターが閉位置のときに、前記第1通路上のPTPシートが、前記シャッターを経て前記第2搬送手段へ移動するものとするとよい。直線運動によるシャッターの開閉動作であるので、高速に行うことができ、経路切り替えが高速運転・連続搬送に対応できる。
【0014】
(8)前記第3通路の下流側上方位置に第4通路を設け、前記反転供給手段は、前記第2搬送手段の下流側端部に位置するPTPシートを保持し、その保持したPTPシートを反転すると共に、進行方向前方に移動させて前記第4通路上に供給するものであり、前記第1搬送手段は、フィンガーコンベアからなり、前記フィンガーコンベアの押送フィンガーは、前記第3通路上のPTPシートと前記第4通路上のPTPシートを同時に搬送可能とするとよい。反転したPTPシートを第4通路上に供給するに際し、前方に移動させることから、PTPシートの搬送速度(押送フィンガーの移動速度)が速くても確実に所定のフィンガー間に供給できる。また、第4通路に供給されたPTPシートは、最終的には、後続の押送フィンガーに当たり、搬送が再び開始されるため、供給は比較的ラフに行うことができる。しかも、第1搬送手段の第3通路を搬送されてきたPTPシートと、同じ押送フィンガーで第4通路上のPTPシートを搬送することで、両PTPシートの後端を揃えることができる。
【0015】
(9)本発明のPTPシートの抱き合わせ方法は、第1搬送手段上を一定間隔ごとに搬送されるPTPシートを一枚おきに、前記第1搬送手段の上方に配置される前記第2搬送手段へ移し替え、前記第2搬送手段上を搬送されるPTPシートを、搬送面を滑らせて前進移動させながらその搬送面内で回転させて前後の向きを変更させた後に、前記第1搬送路で搬送されてきたPTPシートと重ね合わせることで抱き合わせを行うようにした。
【発明の効果】
【0016】
PTPシートを、ピックアップしたりすることなく、第2搬送路の搬送面を滑らせて移動させながら回転させて向きを変更するため、高速運転に対応することができる。さらに、PTPシートを回転させる際に、第2搬送路からピックアップしないで済むため、PTPシートへのダメージを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るPTPシートの抱き合わせ装置の好適な一実施形態を示す正面図である。
【図2】PTPシートの一例を示す図である。
【図3】経路切り替え機構を示す図である。
【図4】PTPシートの前後の回転機能を説明する平面図である。
【図5】PTPシートの上下の反転機能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明のPTPシートの抱き合わせ装置の好適な一実施形態を示している。この抱き合わせ装置10は、PTPシート1を所定間隔ごとに搬送する搬送装置11を備えている。PTPシート1は、図2に示すように、プラスチックシート2のシート面に複数のポケット部2aを形成し、そのポケット部2aに錠剤3等を収納するとともにそのシート面をアルミフォイル等のシート材4で気密に被覆シールした構造となる。そして、図2(c)に示すように、対となる2枚のPTPシートの一方を180度回転させつつ反転させ、2枚のPTPシート1をポケット部2aの位置を互いにずらせた状態で重ね合わせることができる。また、図2(a)に示すように、PTPシート1の長手方向の一方の端部側に、ポケット部未形成領域5を設けることで、一対のPTPシート1を180度回転させて互いにポケット部2aを向けた状態で重ね合わせると、それぞれのポケット部未形成領域5が反対側に位置することから、重ね合わされたPTPシート群の周縁は、ほぼ一致する。このポケット部未形成領域5は、錠剤3の型番や、商品名(商標)等を印刷・刻印等するのに利用する。もちろん、係るポケット部未形成領域5を設けない形態でもよく、その場合には、図2(d)のように、PTPシート1を重ねた場合に、各シートの周縁位置がずれることになる。
【0019】
搬送装置11は、ポケット部2aを上にした状態でPTPシート1を前後に所定間隔毎に連続して搬送する第1搬送路12を備えている。第1搬送路12は、上流側から順に、上方位置においてPTPシート1を水平に搬送するための第1通路12aと、その第1通路12aに続き下方傾斜状の第2通路12bと、その第2通路12bに続き下方位置においてPTPシート1を水平に搬送するための第3通路12cと、を備えている。これら各通路12a〜12c上のPTPシート1は、押送フィンガー15から搬送力を受けて前進移動する。この押送フィンガー15は、図示省略するエンドレスチェーンに対して一定間隔に取り付けられ、エンドレスチェーンの回転に伴い公転移動する。押送フィンガー15は、その上端が第1通路12aよりも上方に位置し、下端は第3通路12cよりも下方に位置する。これにより、押送フィンガー15は、第1〜第3通路12a〜12cのいずれの位置に位置するPTPシート1も押送可能となる。よって、第1通路12a上に位置するPTPシート1は、その進行方向後側の縁に押送フィンガー15が突き当たると、押送フィンガー15の移動に伴い、前方への搬送力を受け、第1通路12a→第2通路12b→第3通路12c上を順次移動しながら搬送される。
【0020】
搬送装置11は、第3通路12cの上方に、第2搬送路13を備えている。この第2搬送路13は、上流側に配置され、第1搬送路12の第1通路12aとほぼ同じ高さに設定された渡り通路13aと、その渡り通路13aの下流側に配置された上り通路13bと、を備えている。上り通路13bは、全体に上り坂(下流側に行くに従って徐々に高くなる上方傾斜状)の搬送面を持つ。そして、上り通路13bの上流側端部は渡り通路13aの下流側端部と近接・接触或いは一部重複しており、渡り通路13a上を搬送されるPTPシート1は、そのままスムーズに上り通路13b上へ移行する。
【0021】
第1通路12a上を搬送されるPTPシート1は、シャッター14を備えた搬送路切り替え機構により、第2通路12bと、第2搬送路13(渡り通路13a)のいずれかに送られる。シャッター14は、その上端面が第1通路12aとほぼ同一平面上に位置し、図3に示すように、PTPシート1の搬送方向に沿って往復直線移動する。この往復直線移動は、例えば、駆動モータの出力をオシレーティングドライブに与え、往復回転するオシレーティングドライブの出力軸を利用することで、高速に動作させることができる。もちろん、駆動モータ自体を正逆回転させても良いし、その他各種の駆動源・動力変換機構を用いることができる。
【0022】
図3に示すように、シャッター14は、上記の往復移動に下流側の先端部14aが第1通路12aの下側に位置する開状態と、第2通路12bの上方を覆うように突出する閉状態をとる。閉状態のときには、シャッター14の先端部14aは、その先端が渡り通路13aに至る。これにより、開状態のときには第1通路12a上を移動するPTPシート1は、そのまま第2通路12bに沿って下降移動して第3通路12cに至るが、閉状態のときにはシャッター14により第2通路12bへ進む道が遮断されているので、そのシャッター14の先端部14a上を進み、渡り通路13a上へ導かれる。よって、係るシャッター14の開状態と閉状態の切り替えに伴い、搬送経路の切り替えが行われる。そして、係る切り替えは、往復直線運動であるので、高速に行える。また、経路の切り替えは、前後に搬送されるPTPシート1に対し、1つずつ交互に行う。
【0023】
また、第2搬送路13の上流側端部と、第3通路12cとの間は、PTPシート1の高さよりも広い間隔になるように調整されている。これにより、第1通路12aから第2通路12bを経て第3通路12c上に至ったPTPシート1は、上方に位置する第2搬送路13に接触することなく、第3通路12c上をそのまま前進移動することができる。
【0024】
第2搬送路13上のPTPシート1に対する搬送力は、渡り通路13a上では押送フィンガー15から与え、上り通路13b上ではその上方に配置したヤグラコンベア16から与えるようにしている。つまり、第1通路12aから渡り通路13aまでは、同じ押送フィンガー15により搬送される。そして、上り通路13bは、その搬送面が徐々に高くなるので、途中で押送フィンガー15による搬送力がなくなり、その後はヤグラコンベ16からの搬送力を受けて移動する。
【0025】
ヤグラコンベア16は、前後に配置された一対のスプロケット17に掛け渡された無端状の牽引手段たるエンドレスチェーン18と、このエンドレスチェーン18にその全周に対して等間隔で取り付けられた複数の作動ロッド19と、その作動ロッド19の先端に取り付けられた抑え部材20並びに押送部材21を備えている。各作動ロッド19は、エンドレスチェーン16の回転面と平行な面内に配置され、エンドレスチェーン16の回転移動に追従して公転移動するが、エンドレスチェーン16の回転軌跡と直交方向に移動可能になっている。さらにヤグラコンベア16は、エンドレスチェーン16と平行な平面内にループ状の案内通路(カム)22を設け、その案内通路に作動ロッド19の基端(抑え部材20等を取り付けた側と反対側)に取り付けたカムフロア23を連携させる。これにより、作動ロッド19は、案内通路22の軌跡に沿って移動する。つまり、作動ロッド19の先端(押送部材21等)位置が、図1中二点鎖線で示す軌跡で移動する。具体的には、上り通路13bの搬送面の上昇に同期して作動ロッド19も上昇し、上り通路13bの下流側に連続して配置される水平な回転案内通路25の上では、若干下がった位置で平行移動する軌跡をとる。
【0026】
作動ロッド19の配置ピッチは、押送フィンガー15の配置ピッチの2倍に設定しており、各作動ロッド19(押送部材21)が、押送フィンガー15の同位置(若干後方)で同期して移動するように制御される。これにより、1つおきに渡り通路13aから上り通路13bの入口側まで押送フィンカー15にて搬送されてきたPTPシート1は、押送部材21からの搬送力を受けて、上り通路13bの搬送面に沿って上昇しながら前進移動する。もちろん作動ロッド19の配置ピッチは、本実施形態のように2倍にするものに限られず、各種の設定が可能である。
【0027】
抑え部材20は、シリコン系やウレタン系のゴム等の摩擦抵抗の比較的大きい材質から構成され、上り通路13bを移動中のPTPシート1には非接触の状態になるが、回転案内通路25上では上述したように若干下降することから抑え部材20がPTPシート1(ポケット部2a)に接触し、そのPTPシート1を所定の圧力で回転案内通路25に抑え付ける。なお、抑え部材20がPTPシート1を抑える所定の圧力は、PTPシート1の反り(PTPシート1は、プラスチックシート2とシート材4を熱接着して一体化されるが、両者の熱収縮率の違い等から、反りを生じることがある)による弾力性を利用することもできるので、あまり大きな力は必要が無く、PTPシート1にダメージを与えにくい。
【0028】
回転案内通路25は、超高分子量ポリエチレンのソリジュール等の比較的摩擦抵抗の低い材質から構成されているので、抑え部材20により所定の圧力で抑え付けられたPTPシート1は、抑え部材20の前進移動に追従して回転案内通路25の搬送面上を滑りながら移動する。
【0029】
作動ロッド19は、自転可能となっており、回転案内通路25の上方に設けられた第1ガイド部26aにガイドされて180度回転し、第2ガイド部26bにガイドされて180度回転する。これにより、図4に示すように、作動ロッド19の先端に設けられた抑え部材20と押送部材21は、回転案内通路25上で180度回転する。これにともない、抑え部材20により所定圧力で抑えられたPTPシート1も180度回転して前後が反転する。また、当初はPTPシート1の進行方向後側縁部に接触する姿勢から反転してPTPシート1の進行方向前側縁部に接触する姿勢になる。なお、回転案内通路25上では、PTPシート1はすでに抑え部材20にて抑えられているため、抑え部材20の移動に追従して移動することができるので、押送部材21がPTPシート1の前側に位置してもPTPシート1の搬送には問題がない。また、上記の押送部材21の回転をスムーズに案内するため、押送部材21の左右両側の下端は下方に突出する凸部21aとなり、その凸部21aが回転案内通路25上に設けた所定軌跡のガイド溝25aに入り込み係るガイド溝25aに沿って移動することで、180度の回転がスムーズに行われる。また、水平平面内での回転であるので、間欠運転することなく連続搬送中に係る処理が行えるので、高速処理が可能となる。
【0030】
回転案内通路25の下流側の先端部25bは、二股状に突出しており、この二股状の先端部25bの位置までPTPシート1は抑え部材20にて押圧されながら搬送される。この先端部25bの下方には、移し替え装置30が配置されている。この移し替え装置30は、下方所定位置を回転中心として所定角度範囲内で正逆回転(揺動)するアーム31と、そのアーム31の上端近傍に連携した回転軸32を中心に正回転する吸着ノズル33と、を備えている。吸着ノズル33は、図5(a)に示すように吸着ノズル33の吸着面33aが上方を向いた吸着姿勢から、時計方向に回転し(図5(b),(c)参照)、図5(d)に示すように吸着面33aが下方を向いた搬出姿勢に至る。その後同一方向に回転を続け、元の吸着姿勢に復帰する。ここでは、この時計方向の回転を正回転とする。また、この回転に併せてアーム31も回転する。具体的には、アーム31の上端が回転案内通路25の先端部25bの下方直近位置と、その位置から図1中時計方向に回転し実線で示す下流側に進んだ位置との間を往復回転移動する。
【0031】
そして、アーム31の上端が先端部25bの下方直近位置に来たときに、図5(a)に示すように吸着ノズル33が吸着姿勢になるように制御され、吸着ノズル33の吸着面33aがPTPシート1に接触する。バルブを開いて吸着ノズル33の吸引を開始しているので、係る接触により吸着面33aにPTPシート1を吸着保持することができる。また、図4に示すように、吸着ノズル33は、横一列に3個設けてあり、PTPシート1を3点でしっかりと吸着することができる。
【0032】
このように吸着ノズル33がPTPシート1を吸着した状態を保持しながら、アーム31を図1中時計方向に回転しつつ、図5(a)〜(d)に示すように吸着ノズル33が回転して吸着ノズル33が下を向いた排出姿勢に遷移する。これにより、PTPシート1は、ポケット部2aが下を向くようになり、上下が反転するとともに、搬送方向に沿って先端部25bの位置から所定距離だけ前方に移動する。
【0033】
この状態で、吸引バルブを閉じて吸引を停止すると、吸着ノズル33によるPTPシート1への吸着が解除され、図5(e)に示すように、PTPシート1は吸着ノズル33から離れて下方に落下する。本実施形態では、図1,図5に示すように、第3通路12cの下流側区間(回転案内通路25の先端部25bに重なる位置位から下流側の領域)の上方に、第4通路35を設けている。そこで、上記の吸着ノズル33から落下したPTPシート1は、この第4通路35上に供給される。
【0034】
第4通路35は、第3通路12cの上に所定間隔をおいて重なるようにして平行に配置され、その高さ位置は、第1通路12aとほぼ同じにしている。これにより、押送フィンガー15の上端は、第4通路35の搬送面よりも上方に突出し、第4通路35上に落下供給されたPTPシート1も押送し、搬送することができる。そして、これら両通路12c,35上でのPTPシート1の搬送は、そのPTPシート1の進行方向後側の縁部に接触する押送フィンガー15からの搬送力を受けて前進移動するので、例えば、第4通路35に供給されたPTPシート1は、前後の押送フィンガー15間のどの位置に供給されたとしても、後側の押送フィンガー15に接触するまでは、その位置をとどめ、押送フィンガー15に接触した後、押送フィンガー15と共に前進移動する。よって、図1,図5(e)に示すように、第3通路12cと第4通路35とで、同じ押送フィンガー15間にPTPシート1が位置する場合、後方側の押送フィンガー15にて2つのPTPシート1が一緒に搬送される。このとき、係る同一の押送フィンガー15で搬送される第3通路12cと第4通路35上の各PTPシート1は、後端縁がそろった状態となり、上下に重なった状態で搬送される。よって、この第3通路12c,第4通路35から搬出することで、上下のPTPシート1は、ポケット部2a同士が向いた状態で重なる。なお、そのように2枚のPTPシート1を重ねる機構は、例えば、第4通路35の下流側先端よりも第3通路12cを長く設け、第4通路35上を搬送されるPTPシート1が搬出されることで第3通路12c上を搬送されるPTPシート1の上に置かれるようにしても良いし、そのた各種の方法を用いて実現できる。
【0035】
そして、本実施形態では、吸着ノズル33がPTPシート1を吸着した後、上下を反転するまでの間にアーム31も回転して進行方向前方に移動させるようにしたので、押送フィンガー15が高速に移動したとしても、1つ後の押送フィンガー間に落下供給することができる。つまり、本実施形態では、搬送路切り替え機構により第1通路12aを搬送されるPTPシート1を1つおきに第2通路12b側と第2搬送路13側に進路が切り替わるので、第2通路12bさらには第3通路12cを進むPTPシート1は、押送フィンガー15間に1つおきで搬送され、空きのある押送フィンガー15で搬送されてきたPTPシート1は、第2搬送路13を進み、その搬送途中で前後が180度回転され、移し替え装置30で上下が反転された後、第4通路35に供給されるが、このとき、第1通路12aにおいて1つ後を搬送されてきたPTPシート1を搬送する押送フィンガー15の手前に落下供給される。
【0036】
また、吸引バルブを切ってから実際にはがれるまでに時間差がある。アーム31が回転してPTPシート1を前方に移動することで、確実にフィンガー間にPTPシート1を供給することができる。また、吸引バルブを閉じるタイミングは、進角制御を行い、搬送速度に合わせて適宜のタイミングで行うようにしている。
【0037】
なお、移し替え装置30は、排出姿勢に遷移した吸着ノズル35からPTPシート1が落下した後の所定のタイミングで、アーム31を逆方向に回転させ、そのアーム31の上端が先端部25bの下方直近位置に復帰させると共に、吸着ノズル35をさらに正回転させて図5(a)に示す吸着姿勢に復帰させ、次のPTPシートの移し替えに備える。なお、PTPシート1が落下した後の所定のタイミングは、実際には、時間制御等により行う。
【0038】
また、上述した実施形態では、抑え部材20は、その下面が平坦面となり、ポケット部2aに接触し、PTPシート1を抑えるようにしたが、本発明はこれに限ることはなく、抑え部材20の下面のPTPシート1との接触の形状を、適宜の形状の凹凸(例えば、平面が十字状の凸部)にし、PTPシート1のプラスチックシート2のポケット部2aの未形成の領域に接触して抑えるようにしても良い。さらには、そのように抑えつけるのではなく、例えば、ポケット部2aの側面に接触可能な係合部(例えば平面が十字状の凸部等)を設け、その係合部がポケット部間の空間に入り込み、作動ロッド19の前進移動に伴い係合部がポケット部2aの側面に当たり、前方に搬送したり、作動ロッド19の回転(時点)に伴い、係合部も回転することで、ポケット部2aに引っかけてPTPシート1を回転させるようにしてもよい。十字状等の平面形状を採ることで、回転中にPTPシート1が変位する(回転中心がずれる)こともないとともに、回転前後でも安定して搬送することができる。
【0039】
また、上述した実施形態では、シャッターの開閉に伴いPTPシート1の搬送経路の切替を行うようにしたが、シャッター切替方式以外の搬送経路を切り替えるようにともよいのはもちろんであるが、シャッター切替方式を用いる場合でも、上記の実施形態のように、シャッターを通過したPTPシートを上方へ振分けているが、下方へ振分けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 PTPシート
11 搬送装置
12 第1搬送路(第1搬送手段)
12a 第1通路
12b 第2通路
12c 第3通路
13 第2搬送路(第2搬送手段)
13a 渡り通路
13b 上り通路
15 押送フィンガー
19 作動ロッド(支持部材)
20 抑え部材
21 押送部材
22 案内通路(ループ状の案内路)
25 回転案内通路
25a ガイド溝
30 移し替え装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTPシートを一定間隔ごとに搬送する第1搬送手段と、
その第1搬送手段の上方に配置される第2搬送手段と、
前記第1搬送手段で搬送される前記PTPシートを所定枚数おきに前記第2搬送手段へ移し替える経路切り替え手段と、
前記第2搬送手段上を搬送されるPTPシートを、搬送面上で滑らせて前進移動させながらその搬送面内で回転させて前後の向きを変更する方向回転手段と、
その前後の向きが回転された前記PTPシートを、反転させるとともに、前記第1搬送手段で搬送されてきたPTPシートの上方に供給する反転供給手段と、
を備えたことを特徴とするPTPシートの抱き合わせ装置。
【請求項2】
前記方向回転手段は、
前記搬送面の摩擦抵抗よりも大きい摩擦抵抗の材質で構成される抑え部材と、
その抑え部材にて前記PTPシートを搬送面に向けて抑えつけた状態で、その抑え部材を前記PTPシートの搬送方向に移動しつつ180度回転させる機構と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のPTPシートの抱き合わせ装置。
【請求項3】
前記搬送面のうち、前記方向回転手段により回転する領域は、低摩擦抵抗の材質で構成されることを特徴とする請求項2に記載のPTPシートの抱き合わせ装置。
【請求項4】
前記第2搬送手段の搬送路は、上流側が徐々に上昇する上り坂となり、その上り坂に続いて水平面を有し、その水平面の領域で前記方向回転手段による回転を行うようにし、
前記第2搬送手段におけるPTPシートへ与える搬送力は、少なくとも前記上り坂の領域では前記PTPシートの進行方向後縁に接触して前方へ付勢する押送部材により行い、前記水平面における前記抑え部材が前記PTPシートを抑えている間は、その抑え部材により行うことを特徴とする請求項2または3に記載のPTPシートの抱き合わせ装置。
【請求項5】
前記押送部材と前記抑え部材は、ループ状の案内路に沿って周回する支持部材に一体に連結され、その支持部材と共に公転移動し、前記PTPシートに対して前記押送部材により搬送している区間では、前記抑え部材は前記PTPシート1から離反し、前記水平面の所定位置で前記抑え部材が前記PTPシートに接近移動して前記PTPシートを抑えることを特徴とする請求項4に記載のPTPシートの抱き合わせ装置。
【請求項6】
前記押送部材は、前記搬送路側の先端に爪部を設け、
前記第2搬送手段の搬送面のうち、少なくとも前記PTPシートの回転を行う領域では、前記爪部が挿入されるガイド溝が設けられ、
そのガイド溝は、前記抑え部材と共に回転する前記押送部材の前記爪部の移動軌跡に応じたものとすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のPTPシートの抱き合わせ装置。
【請求項7】
前記第1搬送手段の搬送路は、上流側の第1通路と、その第1通路に連続する下り坂からなる第2通路と、その第2通路に連続する第3通路を備え、
前記経路切り替え手段は、前記第1通路の先端側から下流側に突出して前記第2通路へのPTPシートの移動を阻止する閉位置と、前記第1通路の先端から非突出で前記第2通路へのPTPシートの移動を許容する開位置との間で往復直線移動するシャッターを備え、
前記シャッターが閉位置のときに、前記第1通路上のPTPシートが、前記シャッターを経て前記第2搬送手段へ移動するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のPTPシートの抱き合わせ装置。
【請求項8】
前記第3通路の下流側上方位置に第4通路を設け、前記反転供給手段は、前記第2搬送手段の下流側端部に位置するPTPシートを保持し、その保持したPTPシートを反転すると共に、進行方向前方に移動させて前記第4通路上に供給するものであり、
前記第1搬送手段は、フィンガーコンベアからなり、
前記フィンガーコンベアの押送フィンガーは、前記第3通路上のPTPシートと前記第4通路上のPTPシートを同時に搬送可能としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のPTPシートの抱き合わせ装置。
【請求項9】
第1搬送手段上を一定間隔ごとに搬送されるPTPシートを一枚おきに、前記第1搬送手段の上方に配置される前記第2搬送手段へ移し替え、
前記第2搬送手段上を搬送されるPTPシートを、搬送面を滑らせて前進移動させながらその搬送面内で回転させて前後の向きを変更させた後に、前記第1搬送路で搬送されてきたPTPシートと重ね合わせることで抱き合わせを行うこと特徴とするPTPシートの抱き合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−37527(P2011−37527A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183481(P2009−183481)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000206093)大森機械工業株式会社 (138)
【Fターム(参考)】