説明

PTPシート製造装置

【課題】包装用フィルムに付された図柄の位置調整に付随する各種不具合の発生を抑制することのできるPTPシート製造装置を提供する。
【解決手段】PTPシート製造装置は、容器フィルム3にポケット部を成形するポケット部成形装置の上流側において、容器フィルム3に付された図柄の位置調整を行うための位置調整装置13を備えている。位置調整装置13は、容器フィルム3を延伸する延伸機構61と、容器フィルム3の位置ズレを検出するマークセンサ62とを備えている。延伸機構61は、クランプ用ローラ67,68と、これに対応して設けられた押え部材71,72と、延伸ローラ69とを備える。そして、容器フィルム3のズレ量が所定量以上の場合には、クランプ用ローラ67,68と押え部材71,72とによって容器フィルム3を把持し、延伸ローラ69によって延伸することにより、図柄の位置調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスタ包装シート(以下、「PTPシート」という)を製造する技術に係り、特に包装用フィルムに付された図柄の位置調整を行うPTPシート製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PTPシートは、錠剤等が充填されるポケット部が成形された包装用フィルムと、その包装用フィルムにポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
包装用フィルムは、透明な合成樹脂材料等により形成されるのが一般的であるが、防湿性等の向上のため、アルミニウムなどにより形成されることもある。そのため、包装用フィルムに対しても、文字情報やコード情報などの図柄が付される場合がある。
【0004】
かかる場合、予め包装用フィルムに付された図柄の位置が、ポケット部の成形位置などPTPシートの所定位置から外れてしまうおそれもある。
【0005】
これに対し、例えばシート単位で図柄が適切な位置にくるように、包装用フィルムの位置調整を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該技術は、ポケット部成形後の包装用フィルムの送り量(タクトピッチ)を、ポケット部に対する図柄のズレ量に応じて変化させ、図柄の位置合わせを行うものである。
【特許文献1】実公平1−15619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、タクトピッチが一定でなくなるため、その後の工程に影響が及ぶおそれがある。
【0007】
例えば、ポケット部成形後のフィルム搬送に、当該ポケット部に対応した複数の凹部を有するロールを用いる、いわゆるポケット送りロール式の場合には、タクトピッチがずれることで、ロールの凹部にポケット部が適正に収容されずに乗り上がり、ポケット部が潰れてしまうことが懸念される。
【0008】
また、PTPシートの分割線や、刻印、打抜き範囲などの位置ズレや、ポケット部に錠剤が適正に投入されないなどといった不具合の発生が懸念される。
【0009】
さらには、包装用フィルムに取着されるカバーフィルムに関しても図柄の位置合わせを行う場合には、基準となる包装用フィルムのタクトピッチが一定でなくなることにより、位置合わせ精度が低下するおそれがある。
【0010】
加えて、上記従来技術では、タクトピッチの変化に合わせてPTPシートの打抜き装置等を移動させる機構を設けなければならず、装置の複雑化を招くおそれがある。また、上記従来技術は、包装用フィルム原反に予め付された図柄のピッチ精度に影響を受けやすい。
【0011】
勿論、上述した課題は、包装用フィルムが透明な合成樹脂材料等により形成されている場合にも生じ得るものである。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、包装用フィルムに付された図柄の位置調整に付随する各種不具合の発生を抑制することのできるPTPシート製造装置を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記課題等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0014】
手段1.図柄の付された帯状の包装用フィルムに、錠剤を収容するためのポケット部を成形するポケット部成形機構を備えたPTPシート製造装置において、
前記ポケット部成形機構へ搬送される前記包装用フィルムを搬送方向に延伸可能な延伸機構と、
前記図柄に対応して前記包装用フィルムに所定間隔で付されたマークを検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出されたマークのズレ量に応じて、前記延伸機構による前記包装用フィルムの延伸量を調整する制御手段とを備え、
前記包装用フィルムに付された図柄の位置を、PTPシートの所定位置に位置合わせ可能としたことを特徴とするPTPシート製造装置。
【0015】
上記手段1によれば、ポケット部を成形する前工程において、包装用フィルムを延伸することにより、包装用フィルムに付された図柄の位置をポケット部の成形位置などPTPシートの所定位置に合わせることができる。結果として、ポケット部成形後の包装用フィルムの送り量(タクトピッチ)を一定に維持することができ、その後の工程において発生し得る種々の不具合、例えばロール搬送によるポケット部の潰れや、PTPシートの分割線、刻印、打抜き範囲などの位置ズレ、錠剤の投入ミスなどの発生を抑制することができる。また、包装用フィルムに取着されるカバーフィルムに関しても図柄の位置合わせを行う場合には、基準となる包装用フィルムのタクトピッチが一定となることにより、位置合わせ精度がより向上する。さらには、タクトピッチの変化に合わせてPTPシートの打抜き装置等を移動させる機構を設ける必要もなく、装置の簡素化を図ることができる。また、包装用フィルム原反に予め付された図柄のピッチ精度に影響を受けにくくなる。
【0016】
手段2.前記ポケット部に錠剤が収容された後、当該ポケット部を塞ぐように前記包装用フィルムに対し、図柄の付されたカバーフィルムを取着するためのシール機構を備えるとともに、
前記シール機構へ搬送されるカバーフィルムを搬送方向に延伸可能な第2の延伸機構と、
前記図柄に対応して前記カバーフィルムに所定間隔で付されたマークを検出する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段にて検出されたマークのズレ量に応じて、前記第2の延伸機構による前記カバーフィルムの延伸量を調整する第2の制御手段とを備え、
前記カバーフィルムに付された図柄の位置を、PTPシートの所定位置に位置合わせ可能としたことを特徴とする手段1に記載のPTPシート製造装置。
【0017】
上記手段2によれば、カバーフィルムを取着する前工程において、カバーフィルムを延伸することにより、カバーフィルムに付された図柄の位置を、包装用フィルムのポケット部の成形位置などPTPシートの所定位置に合わせることができる。結果として、上記手段1との相乗効果により、より正確な図柄の位置合わせを実現することができ、より適正なPTPシートを製造することができる。
【0018】
手段3.前記第2の延伸機構は、
前記カバーフィルムと摩擦接触する引延ばしローラを備え、
前記引延ばしローラが前記マークのズレ量に合わせて当該ローラの回転速度を減速可能に構成されることにより、
前記カバーフィルムを延伸可能な構成となっていることを特徴とする手段2に記載のPTPシート製造装置。
【0019】
一般的に、間欠送りされる包装用フィルムとは異なり、カバーフィルムの供給は連続搬送であるため、第2の延伸機構としては、上記手段3のような構成が可能となる。この場合は、カバーフィルムを把持する事が無いので、連続してシールするシール機構に対して、カバーフィルムを連続して任意に延伸しながら供給することができる。
【0020】
手段4.前記延伸機構は、
前記包装用フィルムを把持する一対の把持手段と、
前記把持手段により把持された前記包装用フィルムの所定区間を延伸可能な延伸ローラとを備えていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のPTPシート製造装置。
【0021】
上記手段4によれば、包装用フィルムを把持し、当該把持された区間を延伸ローラにより延伸することにより、当該包装用フィルムに付された図柄の位置調整を行う。一般的に、連続搬送されるカバーフィルムとは異なり、包装用フィルムは間欠送りされる。このため、上記手段3のような構成を採用することが難しいことに加え、本手段4のような構成とした方が、仮に包装用フィルムを把持することなく、複数のローラに掛装させてローラの摩擦力等により延伸させる構成とするよりも、より効率よくかつ精度よく包装用フィルムの延伸を行うことができる。
【0022】
手段5.前記把持手段は、前記包装用フィルムが掛装された把持用ローラと、当該把持用ローラに対し相対変位して圧接する押え部材とから構成されていることを特徴とする手段4に記載のPTPシート製造装置。
【0023】
上記手段5によれば、包装用フィルムが掛装された把持用ローラを把持手段として用いることにより、チャック等の把持手段に比べ、より広範囲でより強固に包装用フィルムを把持することが可能となる。結果として、より効率よく包装用フィルムを延伸させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図2(a),(b)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた包装用フィルムとしての容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルムとしての密封用フィルム4とを有している。本実施形態における容器フィルム3及び密封用フィルム4は、アルミニウムを主材料として構成されている。
【0026】
図3に示すように、各ポケット部2には被充填物としての錠剤5が1つずつ収容されている。PTPシート1の容器フィルム3には、例えば2つのポケット部2が含まれたペア小片に切り離すことができるように、シート横方向に複数のスリッタ(分割線)6が形成されている(勿論、シート縦方向にもスリッタが形成されていてもよいし、スリッタを省略してもよい)。
【0027】
また、容器フィルム3の表面には図柄が印刷されている。例えば、本実施形態では、図2(a),図4に示すように、各ポケット部2に対応して「ABC」の文字からなる図柄7が所定間隔毎に印刷されている。図柄7は、容器フィルム3の原反に対し予め印刷されている。また、容器フィルム3の外縁部には、図柄7に合わせて、位置検出用のマークとしてのレジマーク8が所定間隔(1シート分よりも僅かに小さな間隔)で印刷されている。
【0028】
一方、密封用フィルム4のポケット部2とは反対側の面(すなわち、PTPシート1の裏面側)には、シート単位で図柄が印刷されている。例えば、本実施形態では、図2(b)に示すように、ポケット部2の形成されていないPTPシート1の最上部(タグ部)にバーコード等のコード情報からなる図柄9が印刷されている。図柄9は、密封用フィルム4の原反に対し予め印刷されている。また、図示は省略するが、密封用フィルム4にも、容器フィルム3と同様に位置検出用のレジマークが付されている。
【0029】
次に、上記PTPシート1を製造するための製造装置(PTP包装機(ブリスタ包装機))10の構成について説明する。
【0030】
図1に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ローラ状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、複数のガイドローラ11a〜11dに案内されている。容器フィルム3は、ガイドローラ11dの下流側において間欠送りローラ12に掛装されている。間欠送りローラ12は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0031】
なお、間欠送りローラ12など、その表面とポケット部2とが対向する位置関係となる各種ローラには、その表面にポケット部2が収容される凹部が形成され、ポケット部2が潰れない構成となっている。また、ポケット部2が各ローラの凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作が確実に行われるようになっている。
【0032】
ガイドローラ11dと間欠送りローラ12との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、容器フィルム3の位置調整を行うための位置調整装置13、及びポケット部2を成形するためのポケット部成形装置14が設けられている。ポケット部成形装置14が本実施形態におけるポケット部成形機構を構成する。
【0033】
但し、本実施形態におけるPTP包装機10は、容器フィルム3を、アルミニウム製のみならず、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によっても製造可能に構成された包装機(兼用機)である。そのため、ポケット部成形装置14の上流側において加熱装置15を備えている。勿論、アルミニウム製の容器フィルム3を成形する場合には加熱装置15は使用されない。
【0034】
間欠送りローラ12から送り出される容器フィルム3は、テンションローラ16及びフィルム受けローラ17の順に掛装されている。テンションローラ16とフィルム受けローラ17との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、充填装置18、外観検査装置19が設けられている。
【0035】
充填装置18は、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する。
【0036】
外観検査装置19は、錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、また錠剤5の欠け、ひび等の外観異常の有無、異物混入の有無等の検査を行うためのものである。
【0037】
一方、帯状に形成された密封用フィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回された密封用フィルム4の引出し端は、テンションロール21を介してシール機構20へと案内されている。
【0038】
シール機構20は、上記フィルム受けローラ17と、これに圧接可能に構成された加熱ローラ22とから構成される。そして、両ローラ17,22間に容器フィルム3及び密封用フィルム4が送り込まれるようになっており、容器フィルム3及び密封用フィルム4が、両ローラ17,22間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3に密封用フィルム4が貼着される。これにより、錠剤5が各ポケット部2に充填された帯状のPTPフィルム25が製造される。加熱ローラ22の表面には、シール用の網目状の微細な凸条が形成されており、これが強く圧接することで、強固なシールが実現されるようになっている。
【0039】
テンションローラ21とシール機構20との間には、密封用フィルム4の位置調整を行うための位置調整装置23が設けられている。
【0040】
また、シール機構20から送り出されるPTPフィルム25は、各種搬送用ローラ27a〜27dに掛装されている。そして、当該PTPフィルム25の搬送経路に沿って、外観検査装置31、スリッタ成形装置32、刻印装置33及びシート打抜装置34が設けられている。
【0041】
外観検査装置31は、ポケット部2側から外観等の異常を検出するためのものである。
【0042】
スリッタ成形装置32は、PTPフィルム25の所定位置に上記スリッタ6を形成するためのものである。
【0043】
刻印装置33は、PTPフィルム25の所定位置(例えばタグ部等)に図示しない刻印を付すためものである。
【0044】
シート打抜装置34は、PTPフィルム25をPTPシート1単位に打抜くためのものである。
【0045】
シート打抜装置34の下流側には、当該シート打抜装置34から落下する端材46を貯留するためのスクラップ用ホッパ48が設けられている。
【0046】
また、シート打抜装置34の下側には、打抜かれたPTPシート1を移送するためのコンベア49が設けられており、該PTPシート1は完成品用ホッパ50に移送される。
【0047】
尚、上記外観検査装置19,31によって不良品判定された場合には、図示しない不良シート排出機構に不良品信号が送られ、その不良品判定となったPTPシート1は、不良シート排出機構によって別途排出され、図示しない不良品ホッパに移送される。
【0048】
さて、PTP包装機10の概略は以上のとおりであるが、上述したように容器フィルム3及び密封用フィルム4には図柄7,9が印刷されているため、これらの図柄7,9が裁断後のPTPシート1の所定位置にくるように、容器フィルム3へのポケット部2の成形工程や、容器フィルム3への密封用フィルム4の取着工程を行う際には、各フィルム3,4に印刷された図柄7,9の位置合わせを行うことが必要となる。
【0049】
以下、これらの図柄7,9の位置合わせを行う位置調整装置13,23について図5及び図6を参照して詳しく説明する。なお、位置調整装置13,23は略同一構成であるため、以下、位置調整装置13を例にしてその構成を詳細に説明する。
【0050】
位置調整装置13は、容器フィルム3を延伸する延伸機構61と、当該延伸装置61の下流側において容器フィルム3に付されたレジマーク8(図4参照)を検出する検出手段としてのマークセンサ62と、当該マークセンサ62の検出情報を基に延伸機構61を制御する制御手段としての制御装置(図示略)とを備えている。位置調整装置23の延伸機構が本実施形態における第2の延伸機構に相当し、位置調整装置23のマークセンサが第2の検出手段に相当し、位置調整装置23の制御装置が第2の制御手段に相当する。
【0051】
延伸機構61は、容器フィルム3が掛装されるガイドローラ65,66と、把持用ローラとしてのクランプ用ローラ67,68と、延伸ローラ69とを備えている。
【0052】
クランプ用ローラ67,68の下方位置には、各ローラ67,68に対応して押え部材71,72が設けられている。クランプ用ローラ67,68及び押え部材71,72により本実施形態における一対の把持手段が構成される。
【0053】
本実施形態では、各クランプ部材71,72が固定されているのに対し、各クランプ用ローラ67,68は、上記制御装置により制御されて、所定の偏芯軸を中心にその回動軸の位置が変位可能に構成されている。各クランプ用ローラ67,68の回動軸が図5に示す基準位置から変位すると、当該クランプ用ローラ67,68は図6に示すように押え部材71,72に押付けられた状態となり、容器フィルム3を把持可能となる。
【0054】
延伸ローラ69は、上記制御装置によりサーボ制御され、上下方向に移動可能に構成されている。
【0055】
図5に示す通常時には、クランプ用ローラ67,68と押え部材71,72とは離間した状態にあるとともに、上記ガイドローラ65,66、クランプ用ローラ67,68、及び延伸ローラ69は、それぞれ容器フィルム3の搬送に伴って自由に回転可能となっている。
【0056】
次に位置調整装置13の制御手順について図7のフローチャートを参照して説明する。なお、この制御処理は、間欠送りの容器フィルム3の停止時間(搬送動作間のインターバル)中において行われるとともに、容器フィルム3が間欠送りされる毎に繰り返し行われる。
【0057】
先ずステップS1にて、マークセンサ62により容器フィルム3のレジマーク8を検知する。
【0058】
ステップS2にて、レジマーク8のズレ量が所定量以上か否かを判定する。ここで所定量を下回る場合には、位置調整を行うことなく、そのまま本処理を終了する。
【0059】
ここで、ズレ量が所定量以上の場合には、ステップS3において、クランプ用ローラ67,68を駆動させ、当該クランプ用ローラ67,68と押え部材71,72とによって容器フィルム3を把持する(図6参照)。
【0060】
続くステップS4において延伸ローラ69を上方へ移動させ、クランプ用ローラ67,68と押え部材71,72により把持された所定区間の容器フィルム3を延伸させる。容器フィルム3の延伸量は、マークセンサ8により検知されたズレ量に応じて任意に変化する。その後、容器フィルム3の次なる間欠送り動作とともに、延伸ローラ69及びクランプ用ローラ67,68が元の位置に戻り、本処理を終了する。
【0061】
以上詳述したように、本実施形態では、ポケット部2を成形する前工程において、容器フィルム3を延伸することにより、容器フィルム3に付された図柄7の位置をポケット部2の成形位置に合わせることができる。結果として、ポケット部2成形後の容器フィルム3の送り量(タクトピッチ)を一定に維持することができ、その後の工程において発生し得る種々の不具合、例えばロール搬送によるポケット部2の潰れや、PTPシート1のスリッタ6、刻印、打抜き範囲などの位置ズレ、錠剤5の投入ミスなどの発生を抑制することができる。さらには、タクトピッチの変化に合わせてシート打抜装置34等を移動させる機構を設ける必要もなく、PTP包装機10の簡素化を図ることができる。また、容器フィルム3の原反に予め付された図柄7のピッチ精度に影響を受けにくくなる。
【0062】
さらに、本実施形態では、密封用フィルム4を容器フィルム3へ取着する前工程において、容器フィルム3同様に、密封用フィルム4を延伸することにより、当該密封用フィルム4に付された図柄9の位置を、PTPシート1の最上部(タグ部)に合わせることができる。この際、上述したように、基準となる容器フィルム3のタクトピッチが一定となることとの相乗効果により、より正確な図柄9の位置合わせを実現することができ、より適正なPTPシート1を製造することができる。
【0063】
また、本実施形態では、容器フィルム3を把持し、当該把持された区間を延伸ローラ69により延伸することにより、当該容器フィルム3に付された図柄7の位置調整を行う。これにより、例えば容器フィルム3を把持することなく、複数のローラに掛装させてローラの摩擦力等により延伸させる構成とするよりも、より効率よくかつ精度よく容器フィルム3の延伸を行うことができる。
【0064】
加えて、容器フィルム3が掛装されたクランプ用ローラ67,68を把持手段として用いることにより、チャック等の把持手段に比べ、より広範囲でより強固に容器フィルム3を把持することが可能となる。結果として、より効率よく容器フィルム3を延伸させることができる。
【0065】
以上説明した実施形態において、例えば、次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論、以下において例示しない他の変更例も当然可能である。
【0066】
(a)上記実施形態では、容器フィルム3及び密封用フィルム4の双方において、図柄7,9の位置合わせを行う構成となっているが、少なくとも容器フィルム3側のみで図柄7の位置合わせを実施する構成としてもよい。
【0067】
(b)容器フィルム3の材質は、上記実施形態のアルミニウム製に限定されることはなく、図柄が付された容器フィルムであれば、例えば透明の樹脂製フィルム等、異なる材質のものであってもよい。なお、樹脂製の容器フィルムの場合には、延伸時に加熱工程を行うことで、容器フィルムの延伸後の戻り(スプリングバック)を抑制する構成としてもよい。
【0068】
(c)上記実施形態における位置調整装置13の延伸機構61は、一対の把持手段(クランプ用ローラ67,68及び押え部材71,72)と、延伸ローラ69とからなる。これに限らず、例えばクランプ用ローラ67,68間に複数の延伸ローラを備えた構成としてもよい。また、延伸機構61は、例えば容器フィルム3を把持することなく、複数のローラに掛装させてローラの摩擦力等により延伸させる構成のものであってもよい。
【0069】
勿論、密封用フィルム4側の位置調整装置23の延伸機構(第2の延伸機構)に関しても上記実施形態と異なる構成を採用することができる。間欠送りされる容器フィルム3とは異なり、密封用フィルム4の供給は連続搬送のため、位置調整装置23の延伸機構としては、以下のような構成が可能となる。例えば、密封用フィルム4と摩擦接触する一対の引延ばしロール(引延ばしローラ)と、マークを検出するセンサからなり、一対の引延ばしロールのうちシール位置に近い側のロールは、シール機構にあわせた速度で回転して密封用フィルム4を供給し、マークを検出したときのシール位置におけるポケット部2の位置(位相)からマーク位置のズレ量を検出し、シール位置から遠い方のロールは、その位置ズレ量に合わせてロールの回転速度を減速することにより、密封用フィルム4を所定量、または位置ズレに合わせた量だけ密封用フィルム4を延伸する構成としてもよい。この場合は、密封用フィルム4を把持する事が無いので、連続してシールするシール機構に対して、密封用フィルム4を連続して任意に延伸しながら供給することができる。また、上記構成に代えて、上記一対の引延ばしロールのうちシール位置に近い側のロールを省略し、例えばシール機構20の所定のローラでこれを兼用し、当該シール機構20とシール位置から遠い方の引延ばしロールとの間で密封用フィルム4を延伸する構成としてもよい。
【0070】
(d)また、把持手段の構成も上記実施形態に限定されるものではなく、例えば回動軸の位置が不変のクランプ用ローラ67,68と、これに対し相対移動可能に設けられた押え部材71,72とからなる構成としてもよい。また、把持手段が例えばチャック等であってもよい。
【0071】
(e)上記実施形態では、延伸機構61の下流側において容器フィルム3のズレ量を検出している。これに代えて又は加えて、延伸機構61の上流側において容器フィルム3のズレ量を検出するようにしてもよい。ただし、下流側で容器フィルム3の位置を取得すれば、ポケット部成形装置14により近いところで容器フィルム3のズレ量を検出することができるため、精度を上げるという点においては好ましい。
【0072】
また、マークセンサ8により検知されたズレ量に応じて容器フィルム3の延伸量を調整する制御に関しては、様々な制御方法を採用することができる。例えば、所定量を必要に応じて調整する、いわゆるオン/オフ制御などが一例に挙げられる。
【0073】
(f)上記実施形態では、PTPシート1の表面には各ポケット部2に対応して「ABC」の文字からなる図柄7が付され、裏側面には、PTPシート1の最上部(タグ部)にバーコード等のコード情報からなる図柄9が付されている。勿論、図柄の種類や位置など図柄の態様は、上記実施形態に限定されるものではなく、異なる態様であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】PTPシート製造装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】(a)はPTPシートの表側を示す斜視図であり、(b)はPTPシートの裏側を示す斜視図である。
【図3】PTPシートを示す部分拡大断面図である。
【図4】容器フィルムの部分平面図である。
【図5】通常時における位置調整装置を示す概略構成図である。
【図6】フィルム延伸時における位置調整装置を示す概略構成図である。
【図7】位置調整装置の制御手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0075】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…密封用フィルム、5…錠剤、7…図柄、8…レジマーク、9…図柄、10…PTP包装機、13,23…位置調整装置、14…ポケット部成形装置、20…シール機構、32…スリッタ成形装置、33…刻印装置、34…シート打抜装置、61…延伸機構、62…マークセンサ、67,68…クランプ用ローラ、69…延伸ローラ、71,72…押え部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図柄の付された帯状の包装用フィルムに、錠剤を収容するためのポケット部を成形するポケット部成形機構を備えたPTPシート製造装置において、
前記ポケット部成形機構へ搬送される前記包装用フィルムを搬送方向に延伸可能な延伸機構と、
前記図柄に対応して前記包装用フィルムに所定間隔で付されたマークを検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出されたマークのズレ量に応じて、前記延伸機構による前記包装用フィルムの延伸量を調整する制御手段とを備え、
前記包装用フィルムに付された図柄の位置を、PTPシートの所定位置に位置合わせ可能としたことを特徴とするPTPシート製造装置。
【請求項2】
前記ポケット部に錠剤が収容された後、当該ポケット部を塞ぐように前記包装用フィルムに対し、図柄の付されたカバーフィルムを取着するためのシール機構を備えるとともに、
前記シール機構へ搬送されるカバーフィルムを搬送方向に延伸可能な第2の延伸機構と、
前記図柄に対応して前記カバーフィルムに所定間隔で付されたマークを検出する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段にて検出されたマークのズレ量に応じて、前記第2の延伸機構による前記カバーフィルムの延伸量を調整する第2の制御手段とを備え、
前記カバーフィルムに付された図柄の位置を、PTPシートの所定位置に位置合わせ可能としたことを特徴とする請求項1に記載のPTPシート製造装置。
【請求項3】
前記第2の延伸機構は、
前記カバーフィルムと摩擦接触する引延ばしローラを備え、
前記引延ばしローラが前記マークのズレ量に合わせて当該ローラの回転速度を減速可能に構成されることにより、
前記カバーフィルムを延伸可能な構成となっていることを特徴とする請求項2に記載のPTPシート製造装置。
【請求項4】
前記延伸機構は、
前記包装用フィルムを把持する一対の把持手段と、
前記把持手段により把持された前記包装用フィルムの所定区間を延伸可能な延伸ローラとを備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のPTPシート製造装置。
【請求項5】
前記把持手段は、前記包装用フィルムが掛装された把持用ローラと、当該把持用ローラに対し相対変位して圧接する押え部材とから構成されていることを特徴とする請求項4に記載のPTPシート製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−105688(P2010−105688A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279048(P2008−279048)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】