説明

PVDFベースの押出し助剤

【課題】PVDFベースの押出助剤。
【解決手段】少なくとも一種のフルオロポリマー(A)と、少なくとも一種の界面剤(agent d'interface)(B)と、少なくとも一種の式(I)の安定剤(C)とを含む組成物:
【化1】


(Ar1およびAr2はアリール基)。この組成物はポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂用の押出剤として用いられる。さらに、(i)上記組成物を固体状態でポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂と接触させ、(ii)(i)で得られた混合物をフィルムまたはパイプ、プロフィル、中空体等の形に押出す押出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工助剤、特に、熱可塑性樹脂を押出し成形する時にできる表面欠陥を減らす(または無くす)ための添加剤に関するものである。
加工助剤(以下、押出剤(agent d'extrusion)ともいう)は少なくとも一種のフルオロポリマー(A)と、少なくとも一種の界面剤(B)と、少なくとも一種の安定剤(C)とを含み、必要に応じてマスターバッチを作るためにポリオレフィン(D)に希釈される。本発明はさらに、押出剤の使用および押出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂、特にポリオレフィンのフィルム押出し時には、ダイ出口で流れが不規則になって表面欠陥が生じることがある。また、成形品の機械的および/または光学的特性が損なわれることもある。この現象は特に臨界剪断速度を超えたときに生じる。すなわち、この臨界速度以下では押出物は滑らかであるが、この速度を超えると表面に欠陥が生じる。
「メルトフラクチュア」とよばれるこの欠陥はいくつかの形をとる。臨界速度よりわずかに速い剪断速度の場合、押出ブロー成形で得られたフィルムは透明性および光沢を失う。かなりの高速押出(生産性を高くした押出)では均一性が失われ、滑らかな領域中に粗い表面ができる。この欠陥によってフィルムの光学特性および/または機械特性は大幅に低下する。同じ現象はロッドの押出時にもみられ、ロッドの表面は光沢を失って粗くなり、「オレンジの皮」のようになることが多い。
【0003】
熱可塑性樹脂の押出し時には、押出剤を添加して表面欠陥を減らすことができる。しかし、押出剤の添加によって押出樹脂の黄変指数が悪くならないようにする必要がある。
【0004】
下記文献には、フルオロポリマー、酸化ポリエチレン(PEG)、酸化マグネシウム、必要に応じてさらに安定剤を含む押出剤が記載されている。安定剤はフェノールまたは燐含有誘導体またはラクトンにすることができる。例にはIrgafos168とIrganox1010との混合物であるB−225の使用が記載されている。
【特許文献1】米国特許第6,294,604B1号明細書
【0005】
下記文献には、Irganox1010(テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキシ−フェニルプロピオネート)])、PEP−Q(テトラキス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’ビフェニルホスホナイト)またはUltranox626(ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト)または627A(Ultranox626+MgAlCO3)によるPEフィルムの安定化が記載されている。
【特許文献2】米国特許第6,214,469号明細書
【特許文献3】米国特許第6,355,359号明細書
【0006】
下記文献には、フェノール誘導体と2種のホスファイト(どちらかをUltranox626またはUltranox627にすることができる)とから成る安定剤の混合物によるポリオレフィンの安定化が記載されている。
【特許文献4】米国特許出願第2003/0225194 A1号明細書
【0007】
下記文献には、一方が高活性といわれているホスファイトである2種のホスファイトの混合物によるポリオレフィンの安定化が記載されている。
【特許文献5】米国特許出願第2005/0113494 A1号明細書
【0008】
下記文献には、フルオロポリマーをベースにしたマスターバッチおよびポリオレフィン用の押出剤として用いられる界面剤が記載されている。
【特許文献6】欧州特許出願第1616907 A1号公報
【0009】
下記文献には、フルオロポリマーを含まないPEGである押出剤が記載されている。この押出剤はポリオレフィンの押出に用いられる。このポリオレフィンは少なくとも一種の安定剤を含むことができる。安定剤はポリオレフィンに混和されるが、押出剤には混和されない。
【特許文献7】米国特許出願第2005/0010644号明細書
【0010】
しかし、請求項1に記載の組成物に関する記載は上記文献にはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、驚くべきことに、押出樹脂の黄変指数を悪くせずに押出欠陥を減らすまたは無くすことができるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象は下記を含む組成物にある:
(1)少なくとも一種のフルオロポリマー(A)、
(2)少なくとも一種の界面剤(agent d'interface)(B)
(3)少なくとも一種の式(I)の安定剤(C)
【化1】

【0013】
(ここで、Ar1およびAr2はアリール基を示す)。
安定剤(C)は式(II)を有するのが好ましい:
【化2】

【0014】
(ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は水素原子、直鎖または分岐鎖のC1−C20、好ましくはC4−C10のアルキル基またはアリール基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい)
【0015】
安定剤(C)は式(III)を有するのがさらに好ましい:
【化3】

【0016】
(ここで、R1、R3、R6、R8はそれぞれC1−C20、好ましくはC4−C10アルキル基またはアリール基を示す)
【0017】
本発明組成物はポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂用の押出剤として用いられる。
本発明の他の対象は、下記(i)および(ii)から成る押出方法にある:
(i)請求項1〜13のいずれか一項に記載の固体状態にある組成物をポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂と接触させ、
(ii)次いで、(i)で得られた混合物をフィルムまたはパイプ、プロフィル、中空体等の形に押出す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
フルオロポリマー(A)は、鎖中に重合を開始できるビニル基を含み、このビニル基に直接結合した少なくとも一つのフッ素原子、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基を有する化合物の中から選択される少なくとも一種のモノマーを有する任意のポリマーを意味する。このモノマーの例としてはフッ化ビニル;フッ化ビニリデン(VDF、CH2=CF2);トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2−ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルを挙げることができる。
【0019】
フルオロポリマーはホモポリマーでもコポリマーでもよく、エチレンまたはプロピレン等の非フルオロモノマーを含んでいてもよい。
例えばフルオロポリマーは下記(1)〜(5)の中から選択する:
(1)フッ化ビニリデン(VDF)のホモポリマーおよび好ましくは少なくとも50重量%のVDFを含むそのコポリマー。コモノマーはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロエチレン(VF3)およびテトラフルオロエチレン(TFE)にすることができる。
(2)トリフルオロエチレン(VF3)のホモポリマーおよびコポリマー、
(3)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)および/またはエチレンの残基を結合したコポリマー、特にターポリマー(必要に応じてVDFおよび/またはVF3をさらに含むことができる)、
(4)TFE、HFPおよびVDFのターポリマー、
(5)TFE、プロピレンおよび必要に応じてVDFのコポリマー。
【0020】
フルオロポリマーは例えば特許文献8に記載の30〜70重量%のTFEと、10〜30重量%のHFPと、5〜50重量%のVDFとを含むターポリマーまたは45〜65重量%のTFEと、10〜20重量%のHFPと、15〜35重量%のVDFとを含むターポリマーにすることができる。フルオロポリマーはさらに特許文献9に記載のフルオロポリマー、特にペルフルオロビニルエーテルおよびVDF、HFPを含むターポリマーで構成することもできる。その他のフルオロポリマーの例は特許文献10の第6欄の第1〜42行に記載されている。
【特許文献8】米国特許第6,734,252 B1号明細書
【特許文献9】米国特許第6,380,313 B1号明細書
【特許文献10】米国特許第6,277,919 B1号明細書
【0021】
フルオロポリマーはフッ化ビニリデンのホモポリマーまたはコポリマー(PVDF)であるのが有利である。このフルオロポリマーは多くの熱可塑性樹脂の変態温度範囲に適した粘度を有する。PVDFが少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、さらに好ましくは少なくとも85重量%のVDFを含むときに、押出剤のより良い効率が得られ、好ましい。さらに、PVDFが熱可塑性タイプであるときに、押出剤のより良い効率が得られ、好ましい。
コモノマーはHFPであるのが有利である。コポリマーはVDFとHPFのみをモノマーとして含むのがさらに好ましい。
【0022】
このPVDFは細管レオメーターを用いて100s-1の剪断速度で230℃で測定した粘度が100Pa.S〜4000Pa.Sの範囲であるのが有利である。特に、細管レオメーターを用いて100s-1の剪断速度で230℃で測定したPVDFの粘度が1000Pa.S〜2500Pa.Sの範囲であるPVDFが好ましい。粘度は細管レオメタ−を用いて100s-1の剪断速度で230℃で測定する。
本発明の配合物およびこのプロセスにはカイナーフレックス(Kynarflex、登録商標)の名称で市販のPVDFが適している。
【0023】
界面剤(agent d'interface)(B)とは、(A)と混合した時に押出助剤としてのマスターバッチの効果を向上させる任意の化合物を意味する。
界面剤(B)の例としては下記が挙げられる:
(a)シリコン、
(b)シリコン−ポリエーテルコポリマー、
(c)脂肪族ポリエステル、例えばポリブチレンアジペート、ポリ乳酸およびポリカプロラクトン、
(d)芳香族ポリエステル、例えばフタル酸のジイソブチルエステル、
(e)ポリエーテル、例えばポリエーテルポリオールおよびポリアルキレンオキシド、例えば下記特許文献11で定義のもの
【特許文献11】米国特許第4,855,360号明細書
【0024】
(f)アミンオキシド、例えばオクチルジメチルアミンオキシド、
(g)カルボン酸、例えばヒドロキシブタンジオン酸および
(h)脂肪酸エステル、例えばモノラウリン酸ソルビタン。
【0025】
特定の解釈に縛られるものではないが、界面剤(B)の役目はフルオロポリマー(A)を安定化することにある。界面剤はフルオロポリマー(A)と物理的および/または化学的に相互作用する。
界面剤(B)はポリエーテル、好ましくはアルキレンオキシド単位(例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)を有するオリゴマーまたはポリマーの中から選択するのが有利である。例としては一般にポリエチレングリコール(PEG)とよばれるポリオキシエチレングリコール、好ましくは数平均分子量Mnが400〜15,000g/モル(これは例えば粘度測定で測定できる)で、融点が50〜80℃であるポリオキシエチレングリコールが挙げられる。PEGの例としてはBASF社のPluriol E(登録商標)およびClariant社のPolyglycol(登録商標)が挙げられる。2種以上のポリエーテルの混合物を用いても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0026】
これらのPEGおよびその他のPEGの例は下記文献に記載されている。
【特許文献12】米国特許第5,587,429号明細書
【特許文献13】米国特許第5,015,693号明細書
【0027】
特に、下記のものが挙げられる:
(1)式H(OC24nOHのポリエチレングリコール(ここで、nは70〜80、約76の整数)、
(2)H(OC24d[OCH(CH3)CH2e(OC24fOH(ここで、d、eおよびfはd+fが100〜110、約108で、eは30〜40、約35である)、
(3)数平均分子量が約3500g/モルであるCarbowax(登録商標)3350、
(4)数平均分子量が約8000g/モルであるCarbowax(登録商標)8000、
(5)Clariant社の数平均分子量が約7000〜9000g/モルであるPolyglycol(登録商標)8000。
【0028】
ポリカプロラクトンは数平均分子量が1000〜32,000、好ましくは2000〜10,000、さらに好ましくは2000〜4000g/モルであるのが好ましい。
安定剤(C)は式(I)の化合物に対応する:
【化4】

【0029】
(ここで、Ar1およびAr2はアリール基を示す)
安定剤(C)は式(II)を有するのが好ましい:
【化5】

【0030】
(ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は水素原子、C1−C20、好ましくはC4−C10の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基またはアリール基を示し、同一でも異なっていてもよい)
安定剤(C)は式(III)を有するのが好ましい:
【化6】

【0031】
(ここで、R1、R3、R6、R8はそれぞれ、C1−C20、好ましくはC4−C10のアルキル基またはアリール基を示す)
【0032】
安定剤の例としては、GESpeciality Chamicals社の製品Ultranox626(ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトール)CAS番号26741-53-7、Dover Chemical社の製品Doverphos S-9228(ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトール)CAS番号154862-43-8、および、Amfine Chemical Corporation社の製品PEP-36(ビス(2,6−ジ−tert-ブチル、4−メチルフェニル)ペンタエリトリトール)CAS番号80693-00-1を挙げることができる。以下の実施例が示すように、Ultranox626が高く評価された。
安定剤(C)の効果を強化するために、安定剤(C)をその他の安定剤、例えばフェノール誘導体またはラクトンと組み合わせることもできる。複数の安定剤(C)を組み合わせることもできる。
【0033】
押出剤の存在下で押し出されるポリオレフィンは、下記(1)〜(5)にすることができる:
(1)ポリエチレン、特に低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または超高密度ポリエチレン(UHDPE)。ポリオレフィンはメタロセン型の触媒(より一般的には「単一サイト」を有する触媒)、フィリップス型の触媒またはチーグラーナッタ型の触媒を用いて得られるポリエチレンにすることができる。
(2)ポリプロピレン、特にアイソタクチックまたはシンジオタクチックポリプロピレン、
(3)二軸延伸ポリプロピレン、
(4)ポリブテン(1−ブテンから得られる)、
(5)ポリ(3−メチルブテン)またはポリ(4−メチルペンテン)。
【0034】
2種以上のポリオレフィンの混合物、例えばLLDPEとLDPEとの混合物を押出成形しても本発明の範囲を逸脱するものではない。
押出剤は高分子量および/または分子量分布が狭い(一般に多分散性指数が3以下、好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.2以下)ポリエチレンに特に有利である。フィルムの形をしたポリオレフィン、特にポリエチレンの押出に特に有用である。
【0035】
押出剤は酸捕集剤、例えばハイドロタルサイトを含むポリオレフィンの場合にもよく適している。本発明者は、ポリオレフィン中にハイドロタルサイトが存在すると、フルオロポリマーをベースにした押出剤の存在下で界面剤の存在下または不存在下で著しく黄変するということを見出した。本発明の安定剤(C)によって著しい黄変を防止することができる。
【0036】
本発明の押出剤はその他の熱可塑性樹脂、例えばスチレン樹脂、ポリエステルまたはPVCの押出にも用いることができる。スチレン樹脂とはホモポリスチレンまたは少なくとも50重量%のスチレンを含むスチレンのコポリマーを意味する。これは結晶ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマーまたはブロックコポリマー、例えばスチレンとジエンとを含むコポリマーにすることができる。
ポリエステルは例えばポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)にすることができる。
【0037】
ポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂は分散した有機または無機の粒子を含むこともできる。無機充填剤は例えばシリカ、アルミナ、ゼオライト、酸化チタン、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム、炭酸カルシウム)、ハイドロタルサイト、タルク、酸化亜鉛、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム、珪藻土、カーボンブラックなどにすることができる。無機充填剤は無機顔料にすることもできる。有機粒子は例えば有機顔料、酸化防止剤、またはステアレートの有機粒子にすることができる。
【0038】
本発明の押出剤は少なくとも一種のフルオロポリマー(A)と、少なくとも一種の界面剤(B)と、少なくとも一種の安定剤(C)とを含む。(A)(B)(C)は必要に応じて、マスターバッチの形をしたポリオレフィン(D)中に希釈される。良好な効率を維持するために、本発明の押出剤は無機充填剤を全く含まず、特に酸化マグネシウムを含まず、しかも、ポリオレフィンも含まないのが好ましい。
【0039】
(A)と(B)の重量比率(A)/(B)は10/90〜90/10、好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは30/70〜60/40にすることができる。(A)+(B)に対する(C)の重量比率は80〜99.9部の(A)+(B)に対して0.1〜20部の(C)である。
マスターバッチを作るために(A)(B)(C)をポリオレフィン(D)中に希釈するときの(A)(B)(C)の重量比率は、70〜99%、好ましくは90〜99%、さらに好ましくは90〜98.5%、さらに好ましくは90〜98%の(D)に対して、0.1〜30%、好ましくは1〜10%、さらに好ましくは1.5〜10%、さらに好ましくは2〜10%である。
【0040】
本発明の押出剤は(A)と(B)と(C)とを混合することによって調製される。この混合物をそのまま用いるか、マスターバッチの形でポリオレフィン(D)中に希釈することができる。押出剤は粉末または顆粒の形で供給される。従って、押出剤を得る方法は、(i)(A)と(B)と(C)とを混合する段階と、(ii)必要に応じてさらに(i)段階で得られた混合物をポリオレフィン(D)中に希釈する段階とを含む。
【0041】
混合段階(i)は熱可塑性樹脂に適した任意の混合手段を用いて行うことができる。例えば、押出機または混練機を使用できる。3つの成分を粉末の形で混合することもできる。さらに、圧縮技術も有利に使用できる。3つの成分を粉末の形で造粒機に導入し、混合物をダイに通す。造粒機の動作原理は[図1]に概念的に示してある。[図1]のペレタイザー機構では、被造粒物または混合物が層1を形成し、この層1が回転ローラ2によって粉砕され、すなわち、予備圧縮され、有孔ダイ4の圧縮チャネル3中に圧入され、円筒形の顆粒5がダイ4の下から出る。ダイ4の下側に配置されたカッタ6で所望長さの顆粒になる。この装置は食品加工業で粉末物質から飼料ペレットを製造するのに使用されることが多い。造粒機の例は例えば下記文献に見られる。
【特許文献14】欧州特許第0,489,046号公報
【0042】
この造粒機は粉末を回転ローラで圧縮/混合し、混合物を有孔ダイの圧縮チャネルに押し込んで円筒形顆粒を形成し、この円筒形顆粒をダイの下側に位置したカッタを用いて切断する。造粒機中での粉末の混合中に生じる摩擦によって界面剤(B)の融点以上になる。
【0043】
驚くべきことに、(A)が固体状態で、(B)の全体またはその表面が溶融状態となるように混合物を調製すると良い効率が得られる。(A)と(B)との混合を実施する温度は(B)の粘度が低くなり過ぎないにように選択する。この温度は下記のような温度を選択するのが好ましい:
(1)界面剤(B)の全体またはその表面が溶融状態となり、
(2)フルオロポリマー(A)が固体状態にある。
【0044】
界面剤は完全に液体であるときに全体が溶融状態であるといわれる。界面剤の粒子が溶融状態の表面層で被覆され且つそのコアが固定であるときに表面が溶融状態であるといわれる。本発明には圧縮(compacktage)技術が良く適しているが、慎重に選択され且つ制御されたゾーン温度で動作する押出機を使用することもできる。
【0045】
(i)段階は10〜120℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜100℃の温度で行うのが好ましい。こうすることで(A)と(B)の両方が溶融状態となるような温度で動作するよりも効率が良いことがわかっている。120℃以下の温度を使用することで混合物中の界面剤(B)の効率に影響を与えたり、黄変を引き起こすことがある界面剤(B)の熱劣化を防ぐことができる。また、フルオロポリマー(A)を粉末状(すなわち分散物)にすることが均質に混合する上で好ましい。
【0046】
特別な理論に縛られるものではないが、他の溶液と比較して本発明の押出剤の効率が良いのは(A)と(B)とが(i)段階中に物理的および/または化学的に相互作用することに関係すると思われる。この方法は例えば熱可塑性樹脂と接触させる前の(A)と(B)との接触があまり良好でない(A)のマスターバッチと(B)のマスターバッチとを熱可塑性樹脂に添加する方法よりも効率が良い。このやり方は、(A)と(B)とを別々に導入する方法よりもさらに効率が良い。
【0047】
上記(ii)段階は当業者に周知のプラスチック材料の任意の混合機械を用いて行うことができ、押出機または混練機にすることができる。押出機が好ましい。
熱可塑性樹脂がポリオレフィンの場合には、同じ種類のポリオレフィン(D)を選択するのが有利であり、すなわち、例えば、互いに近い粘度を有する2つのポリエチレンまたは2つのポリプロピレンが対象となる。
押出助剤に紫外線吸収剤または酸化防止剤型の添加剤を添加しても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0048】
使用
本発明の押出剤は熱可塑性樹脂の押出し中に生じる表面欠陥を減らすまたは無くすために用いられる。本発明によって、押出が通常は著しく不安定な押出パラメータの範囲内でも、安定した欠陥のない押出し加工ができるようになるまでの時間を大幅に短縮することができる。本発明の押出剤は市販の他の押出剤よりも効率が良いので、熱可塑性樹脂に添加する量を減らすことができ、しかも、黄変を防止することができる。
【0049】
押出の結果として生じる黄変は押出樹脂および/またはフルオロポリマーおよび/または界面剤の劣化と関連づけることができる。被押出樹脂を安定化するために本発明の安定剤(C)の一種を用いることが知られているが、特定の押出条件下ではフルオロポリマーおよび/または界面剤の劣化による黄変を避けることはできない。実際には、押出樹脂を安定化しても、押出剤は押出機の第1混合帯域では樹脂中に均一に混和されず、押出樹脂の安定剤はフルオロポリマーおよび/または界面剤の安定化に有効ではない。
【0050】
本発明の押出剤はフィルムの押出またはパイプ、プロフィル、中空体等の形をした熱可塑性樹脂の押出成形に特に有用である。既に述べた利点に加えて、本発明の押出剤は良好な光学的特性を得るためのフィルムの場合に特に重要である滑らかな欠陥のない表面を容易に製造できる。本発明の押出剤はさらに、ダイのギャップでの圧力およびゲルの量を減らすことができる。さらに、本発明の押出剤はダイ出口での付着をある程度は減らすことができる。本発明の押出剤は顆粒の形または粉末の形で用いられる。
【0051】
押出剤とポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂とを固体状態で接触させてから押出加工する。そのためには固体状態で予備混合するか、単純に押出機のホッパに導入することができる。さらに、例えばサイド押出機を用いて、熱可塑性樹脂を押し出すのに用いる押出機の任意の場所へ溶融状態で押出剤を導入することもできる。本発明の他の対象は下記(i)および(ii)から成る押出方法にある:
(i)本発明の押出剤をポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂と固体状態で接触させ、
(ii)次いで、(i)で得られた混合物をフィルムまたはパイプ、プロフィル、中空体等の形に押出す。
【0052】
この方法によって、押出ポリマーのYIを損なわずに押出欠陥を減らすことができる。
ポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂中に導入する押出剤の比率は(A)+(B)の量がポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂に対して約30〜100,000ppm、好ましくは50〜5000ppm、さらに好ましくは100〜1000ppmであるのが有利である。
【実施例】
【0053】
実施例で使用した化合物は下記の通り:
HDPE:密度0.948g/cc、メルトフロー0.6g/10分(190℃、2.16kg)、2000ppmのIrganox168と、400ppmのハイドロタルサイトDHT−4Aとを添加。
LLDPE:イノヴェックス(Innovex)(登録商標)LL0209AA:密度0.920g/cc、メルトフロー:0.9g/10分(190℃、2.16kg)、コモノマーとしてブテンを有する直鎖低密度PE。
PPA−1:VDF−HFPホモPVDF(11重量%のHFP)。融点:140〜145℃、粘度:1600Pa.s(230℃、100s-1)。
【0054】
PPA−2:55%のVDF−HFP PVDF(10重量%のHFP)、融点:166℃、粘度:2350Pa.s(230℃、100s-1)と、45%のPEG、モル質量は約8000g/mol、Clariant社から商品名Polyglykol 8000Pで市販と、から成る圧縮法で得られる混合物(重量%)。
PPA−3:下記(重量%)から成る圧縮法で得られる混合物:
49.5%のVDF−HFP PVDF(10重量%のHFP)、融点:166℃、粘度:2350Pa.s(230℃、100s-1)と、
40.5%のPEG、モル質量は約8000g/mol、Clariant社から商品名Polyglykol 8000Pで市販と、
10%の酸化防止剤、GE Speciality Chemicals社から商品名Ultranox626で市販。
【0055】
PPA−4:Viton Z100 、Dupont-Dow社から市販の押出剤。
PPA−5:Viton Z200 、Dupont-Dow社から市販の押出剤。
MB−1〜MB−5:上記各PPAを、5重量%のPPA−iと、95重量%のLLDPEとを含み、MB−i(i=1〜5)と名付けたマスターバッチに混和する。これらのマスターバッチは200−220−190−190℃の温度分布および170回転/分のスクリュー速度を用いて、Haake2型の二軸スクリュー押出機で調製した。
【0056】
各試験は窒素をフラッシングしたホッパを備えたHaake2型の二軸スクリュー押出機で、220℃で行った。
実施例1(比較例)
HDPEを単独で上記の条件下に押し出し、顆粒を作った。測定したYIは7.6である。
実施例2(比較例)
98重量%のHDPEと、2重量%のMB−1との混合物を乾燥混合によって調製し、次いで、この混合物を上記の条件下に押し出し、顆粒を作った。測定したYIは14.6である。
実施例3(比較例)
98重量%のHDPEと、2重量%のMB−2との混合物を乾燥混合によって調製し、次いで、この混合物を上記の条件下に押し出し、顆粒を作った。測定したYIは10.3である。
実施例4(本発明)
98重量%のHDPEと、2重量%のMB−3との混合物をドライブレンドで調製し、次いで、この混合物を上記の条件下に押し出し、顆粒を作った。測定したYIは8.6である。
実施例5(比較例)
98重量%のHDPEと、2重量%のMB−4との混合物を乾燥混合によって調製し、次いで、この混合物を上記の条件下に押し出し、顆粒を作った。測定したYIは10.8である。
実施例6(比較例):98重量%のHDPEと、2重量%のMB−5との混合物を乾燥混合によって調製し、次いで、この混合物を上記の条件下に押し出し、顆粒を作った。測定したYIは9.3である。
【0057】
【表1】

【0058】
Ultranox626を含むMB−3のYIは8.6になるが、安定化されていない押出剤ではYIは14.6であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ペレタイザーの機構を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)を含む組成物:
(1)少なくとも一種のフルオロポリマー(A)、
(2)少なくとも一種の界面剤(agent d'interface)(B)
(3)少なくとも一種の式(I)の安定剤(C)
【化1】

(ここで、Ar1およびAr2はアリール基を示す)
【請求項2】
安定剤(C)が下記式(II)を有する請求項1に記載の組成物:
【化2】

(ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は水素原子、C1−C20、好ましくは直鎖または分岐鎖のC4−C10アルキル基またはアリール基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい)
【請求項3】
安定剤(C)が下記式(III)を有する請求項1または2に記載の組成物:
【化3】

(ここで、R1、R3、R6、R8はそれぞれC1−C20、好ましくはC4−C10のアルキル基またはアリール基を示す)
【請求項4】
安定剤(C)がビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトール、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールまたはビス(2,6−ジ−tert-ブチル,4−メチルフェニル)ペンタエリトリトールである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
フルオロポリマー(A)が下記(1)〜(5)の中から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物:
(1)フッ化ビニリデン(VDF)のホモポリマー、好ましくは少なくとも50重量%のVDFを含む、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロエチレン(VF3)およびテトラフルオロエチレン(TFE)の中から選択されるコモノマーとのコポリマー、
(2)トリフルオロエチレン(VF3)のホモポリマーおよびコポリマー、
(3)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)および/またはエチレンの残基を結合したコポリマー、特にターポリマー(必要に応じてVDFおよび/またはVF3をさらに含むことができる)、
(4)TFE、HFPおよびVDFのターポリマー、
(5)TFE、プロピレンおよび必要に応じてVDFのコポリマー。
【請求項6】
界面剤(B)が下記(a)〜(h)の中から選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物:
(a)シリコン、
(b)シリコン−ポリエーテルコポリマー、
(c)脂肪族ポリエステル、例えばアジピン酸ポリブチレン、ポリ乳酸およびポリカプロラクトン、
(d)芳香族ポリエステル、例えばフタル酸ジイソブチルエステル、
(e)ポリエーテル、例えばポリエーテルポリオールおよびポリアルキレンオキシド、例えば米国特許第4,855,360号明細書で定義のもの
(f)アミンオキシド、例えばオクチルジメチルアミンオキシド、
(g)カルボン酸、例えばヒドロキシブタンジオン酸
(h)脂肪酸エステル、例えばモノラウリン酸ソルビタン。
【請求項7】
界面剤(B)がポリエチレングリコール(PEG)またはポリカプロラクトンである請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
PEGの数平均分子量Mnが400〜15,000g/モルである請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ポリカプロラクトンの数平均分子量が1000〜32,000、好ましくは2000〜10,000、さらに好ましくは2000〜4000g/モルである請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
(A)と(B)の重量比率(A)/(B)が10/90〜90/10、好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは30/70〜60/40である請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(A)および(B)に対する(C)の重量比率が、80〜99.9部の(A)+(B)に対して0.1〜20部の(C)である請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(A)(B)(C)をポリオレフィン(D)中に希釈する請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
70〜99%、好ましくは90〜99%、さらに好ましくは90〜98.5%、さらに好ましくは90〜98%の(D)に対して、(A)+(B)+(C)の重量比率が1〜30%、好ましくは1〜10%、さらに好ましくは1.5〜10%、さらに好ましくは2〜10%である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
(A)(B)(D)の混合物を圧縮機械で調製する請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物の、ポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂の押出し助剤としての使用。
【請求項16】
熱可塑性樹脂がスチレン樹脂、ポリエステルまたはPVCである請求項15に記載の使用。
【請求項17】
ポリオレフィンが酸捕集剤を含む請求項15に記載の使用。
【請求項18】
下記(i)および(ii)から成る押出方法:
(i)請求項1〜13のいずれか一項に記載の固体状態の組成物をポリオレフィンまたは熱可塑性樹脂と接触させ、
(ii)次いで、(i)で得られた混合物をフィルムまたはパイプ、プロフィル、中空体等の形に押出す。

【図1】
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【公表番号】特表2009−532553(P2009−532553A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503623(P2009−503623)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050962
【国際公開番号】WO2007/113424
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】