説明

RFエネルギを用いたシリンジ内容物検出

本発明は、医療用流体注射器システムを含み、該医療用流体注射器システムは、該システムシリンジ内の内容物および/またはこのような内容物の体積を検出する。例えば、医療用流体注射器の第一のアンテナからのRF信号は、該医療用流体注射器に関連付けられたシリンジを介して送信され得る。送信されたRF信号の少なくとも一部は上記医療用流体注射器の第二のアンテナによって受信され得る。上記第二のアンテナによって受信されたRF信号の量は、シリンジ内の内容物および/またはこのような内容物の体積を読み取る情報を提供するために測定され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2007年8月23日に出願された、名称「Syringe Content Detection Using RF Energy」の米国仮出願第60/957,539号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、医療用流体注射器システムのシリンジ内の医療用流体および/または空気(例えば気泡)を検出するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
この章は、本発明のさまざまな局面に関連し得る、当該技術のさまざまな局面を読み手に紹介することを目的とし、本発明のさまざまな局面は以下で説明され、かつ/または請求される。この議論は、読み手に背景情報を提供することに役立ち、その結果、本発明のさまざまな局面のよりよい理解を促進すると考えられる。したがって、これらの記述はこの観点で読まれるべきであり、従来技術の承認として読まれるべきではない。
【0004】
多くの医療環境において、医療用流体は、診断または治療の間に患者に注入される。一例として、患者の血管に挿入されるカテーテルを用いて、CT、血管造影、磁気共鳴または超音波画像化を向上するために造影剤を患者に注入することが挙げられる。
【0005】
上述の処置で造影剤を用いる場合に伴う危険のひとつは、空のシリンジまたは部分的に充填されたシリンジから、空気が偶発的に患者に注入され得るというリスクである。誤った空気注入はリスクである。なぜなら、鼓動は圧縮によって心室から心室まで血液を押し出す(vacate)ためには、血液の圧縮されにくさ(non−compressibility)に依存するからである。血液とは異なり、気体は圧縮可能である。心室内の圧縮可能な気体の存在は、「ヴェイパーロック現象(vapor lock)」に類似する状況を生み出し得、この状況が圧力の損失に起因して、心臓が血液を体に押し出すことを事実上に停止させる。この状況(一般的には空気塞栓症と呼ばれる)は、大量の(例えば、50〜60ccの)空気が急速に注入され(例えば、血管造影走査において使用される注射器を用いる場合)、心臓に進んだ場合に生み出される。
【0006】
CT、血管造影、MRIおよび心臓学領域において造影剤の操作のために用いられる手順は、人間のオペレータが、シリンジが正しく補充および充填されたことをチェックすることを含む。しかし、安全な手順が確立されている設備内でさえ、人間によるエラーが依然生じ得る。これらのエラーは、造影剤で満たされていると考えられていた空気が充填されているシリンジが患者に誤って注入される状況をもたらし得、その患者は空気塞栓症を経験する。例えば、血管造影注射器を用いる医療従事者が、空の、使用済みの、または未使用のシリンジ(事前のセッションにおいて注射器内に残されていた)がフルに充填されていると誤って仮定し得、空のシリンジから患者に空気を注入し得、結果として空気塞栓症を引き起こす可能性がある。
【0007】
エラーの可能性をさらにひどくすることとして、医療用画像化手順において用いられる造影剤はしばしば無色であり、このような手順のうちの少なくとも一部は、結果として生じる画像の読み取りを容易にするために比較的低い光のレベルの下で行われる傾向がある。これらの因子のうちの両方が、エラーの機会を増大させる傾向があり得る。そのようにして、一部のユーザは、シリンジ充填物体積検出を可能にする注射器システムが非常に望ましいことを見出し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(概要)
本発明の特定の例示的な局面が以下に説明される。これらの局面は、単に、本発明がとり得る特定の形式の簡単な概要を読み手に提供するために示されることと、これらの局面が本発明の範囲を限定することを意図されていないということとが理解されるべきである。実際、本発明は、以下に明示的に説明され得ない種々の局面を含み得る。
【0009】
本発明の第一の局面は、医療用流体注射器用のシリンジ台に関する。このシリンジ台は、RFエネルギの供給源と、第一および第二のアンテナとを含む。シリンジ台の第一のアンテナは、(例えば、所与の周波数において)RFエネルギをRFエネルギの供給源から送信するために利用される。シリンジ台の第二のアンテナは、上記第一のアンテナから送信されたRFエネルギの少なくとも一部を受信するために利用される。これらの第一および第二のアンテナは、概して、シリンジ(このシリンジはRFIDタグを含んだり含まなかったりする)がシリンジ台に取り付けられているときにはシリンジの近位に位置し、その結果、該第一のアンテナから送信されるRFエネルギの少なくとも一部が、該第二のアンテナによって受信される前に、該シリンジを介して進む。
【0010】
一部の実施形態において、シリンジ台は、上記第一のアンテナから送信されたRFエネルギを受信するように構成された第三のアンテナを含み得る。この第三のアンテナは、シリンジがシリンジ台に取り付けられているときにはシリンジの近位に位置し得る。第一のアンテナから送信されたRFエネルギの少なくとも一部が、該第三のアンテナによって受信される前に、該シリンジを介して進むように、この第三のアンテナは配置され得る。
【0011】
一部の実施形態において、上記第二のアンテナはRF受信器に結合され得る。このRF受信器は、第一のアンテナからの、第二のアンテナによって受信されるRFエネルギの変化(例えば、減少)を測定するように構成され得る。
【0012】
一部の実施形態において、上記シリンジ台の第一のアンテナを介して送信されたRFエネルギの周波数は所定の周波数および/または大きさに固定され得る。対照的に、その他の実施形態はRFエネルギの周波数および/または大きさが調節可能であることを可能にし得る。
【0013】
さらに、本発明の第一の局面を参照すると、上記アンテナは任意の適切な設計および/または構成を示し得る。例えば、上記アンテナは、ダイポール、ループ、モノポール、またはその他の適切なRFアンテナ構造のうちの任意の構造であり得る。
【0014】
本発明の第二の局面は、医療用流体注射器の操作方法に関する。この方法において、RF信号は、医療用流体注射器の第一のアンテナから、該医療用流体注射器に関連付けられたシリンジを介して送信される。送信されるこのRF信号は任意の適切な波長であり得る。例えば、一部の実施形態において、RF信号はシリンジの直径よりも小さい波長を示す。RF信号の少なくとも一部は、医療用流体注射器の第二のアンテナによって受信され、該第二のアンテナによって受信されるRF信号の量が(例えば、電力測定によって)測定される。
【0015】
上記第二のアンテナによって受信されるRF信号の測定された量に少なくとも部分的に基づいて、種々の異なる動作が開始され得る。例えば、一部の実施形態において、(例えば、測定された受信RF信号が、シリンジ内に空気が存在することを示す場合に)医療用流体注射器がディセーブルされ得る。一部の実施形態において、(例えば、測定された受信RF信号がシリンジ内に空気が存在しないか、または空気がわずかしか存在しないことを示す場合に)注入プロトコルの開始がイネーブルされ得る。例えば、測定された受信RF信号がシリンジ内に空気が存在しないか、または空気がわずかしか存在しないことを示す場合に、注射器の制御装置が注射器をイネーブルさせ得、その結果、(ボタン、タッチスクリーン、トリガなどを押圧することによって)オペレータが注入手順を開始し得る。一部の実施形態において、(例えば、測定された受信RF信号が、シリンジ内に空気が存在しないか、または空気がわずかにしか存在しないことを示す場合に)プログラミングされた注入プロトコルが自動的に(例えば、ユーザの介在なしに)開始され得る。
【0016】
受信および測定されたRF信号の量が、医療用流体がシリンジ内に存在するかどうかを決定するために利用され得る。一部の実施形態において、受信および測定されたRF信号の量は、シリンジ内の医療用流体の近似的な体積を決定するために利用され得る。上記第二のアンテナによって受信されたRF信号の量は、上記第一のアンテナから送信されたRF信号の量および/または1つ以上の所定のRF信号値と比較され得る。この比較はシリンジ内の内容物(例えば、空気および/または医療用流体)および/または医療用流体の体積を決定するときに利用され得る。
【0017】
一部の実施形態において、医療用流体注射器は、シリンジ内の決定された近似的な体積の医療用流体がプログラミングされた注入プロトコルを行うために必要とされる量よりも少ない場合に、自動的にディセーブルされ得る。一部の実施形態において、シリンジ内の決定された近似的な体積の医療用流体がプログラミングされた注入プロトコルを行うために必要とされる量よりも少ない場合には、医療用流体注射器は、可聴警告、可視警告またはそれらの組み合わせを自動的に提供し得る。
【0018】
例示的な実施形態のうちの1つ以上に関する、以下に議論されるさまざまな特徴が、本発明の上記の局面のうちの任意の単独の局面に、またはそれらの局面の組み合わせに組み込まれ得る。さらに、上記で示された簡単な概要は、請求される主題を限定することなしに、本発明の特定の局面およびコンテキストに読み手を慣れさせることのみを意図している。
【0019】
本発明のさまざまな特徴、局面および利点が、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読んだときによりよく理解される。図面において類似の文字は図面全体にわたり類似のパーツを表す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、読み取り/書き込みデバイスのための複数の非平行なアンテナループを有する、造影剤動力付き注射器の面板上に配置されるシリンジを描く例示的な実施形態の斜視図である。
【図2】図2は、読み取り/書き込みデバイスのための複数の非平行なアンテナループを有する、単頭型造影剤動力付き注射器を描く例示的な実施形態の斜視図である。
【図3A】図3Aは、2つのアンテナループ間に位置する、液体で充填されたシリンジを描く例示的な実施形態の概略的な部分切り取り図である。
【図3B】図3Bは、2つのアンテナループ間に位置する、液体で充填されたシリンジを描く例示的な実施形態の概略的な上面図である
【図4】図4は、複数のアンテナループ間に位置する、液体で充填されたシリンジを描く例示的な実施形態の概略的な部分切り取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(図面の詳細な説明)
本発明の1つ以上の特定の実施形態が以下に説明される。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実施形態の全ての特徴は本明細書中に説明され得ない。任意のこのような実際の実装の開発において、任意の工学的または設計の計画として、数多くの実装特有な決定が、開発者の特有の目標(例えば、システムに関する制約および商売に関する制約へのコンプライアンス)を達成するためになされ得、これらは実装ごとに変化し得ることが認識されるべきである。さらに、このような開発努力は複雑であり、かつ時間のかかるものであり得るが、それにもかかわらず本開示の利益を有する当業者に対して、設計、加工および製造の日常的な業務である。
【0022】
本明細書に開示される注射器システムは、シリンジ充填物体積検出を可能にする一体型無線周波数トランスポンダの形式において有益な機能性を有することを特徴とし得る。特に、本明細書に開示されるシステムは、2つ以上の無線周波数アンテナとそれらの関連する電子機器とを注射器に統合する。これらのアンテナは、適切な無線周波数送受信を可能にする電子機器に取り付けられ得る。アンテナは、ダイポール、ループアンテナ、またはRFエネルギの放射が可能な任意の他のアンテナであり得る。
【0023】
本発明の例示的なトランスポンダに関して、1つ以上のアンテナがRFエネルギを放射して、該RFエネルギは1つ以上の異なるアンテナにより受信され得る。RFエネルギは周波数および大きさの一方または両方において調整可能であり得る。RFエネルギは周波数および大きさの一方または両方において固定され得る。さらに、RFエネルギはオンおよびオフにされ得る。
【0024】
上記アンテナは注射器において任意の適切な位置に位置付けられ得る。例えば、一部の実施形態において、アンテナは、注射器のシリンジ保持機構の近位に位置付けられる。シリンジが保持機構に位置付けられるとき、シリンジ内の流体が送信アンテナから受信アンテナまで流れる信号を減衰する(低減させる)。
【0025】
受信アンテナは、送信アンテナによって放射された電力RF信号よりも小さい電力RF信号を測定する。電力減少の大きさを測定することによって、開示される注射器システムが、シリンジが造影流体で充填されているか、または空気で充填されているかを決定することが可能である。さらに一部の注射器システムは、該注射器が、どのくらいの量の流体(例えば、造影剤)がシリンジ内に封じ込められているかを決定することを可能にするRFトランスポンダシステムを有し得る。
【0026】
図1を参照すると、注射器システム50は、例えば、パワーヘッド90、コンソール96およびパワーパック98のようなさまざまな機能コンポーネントを含む。シリンジ20aおよび20bは、パワーヘッド90の面板88aおよび88b内で、注射器パワーヘッド90に取り付けられる。さまざまな注射器制御が、上記シリンジを医療用流体(例えば、造影剤)で充填するために使用され、該医療用流体は、次いで、上記注射器システム50のオペレータまたは事前にプログラムされた制御によって患者に注入される。
【0027】
注射器システム50のパワーヘッド90は、シリンジ20aおよび20bに係合された内部駆動モータの動きを手動で制御する際に使用するための手動ノブ92aおよび92bと、現在の状態をオペレータに示し、注射器のパラメータを操作するためのタッチスクリーンディスプレイ94とを含む。コンソール96はまた、注射器パワーヘッド90の動作をリモートで制御するためにオペレータによって使用され得、注射器による自動注入のためのプログラムを指定および格納するためにも使用され得るタッチスクリーンディスプレイ97を含み、該プログラムはオペレータによる開始の際に注射器によって後に自動的に実行され得る。
【0028】
パワーヘッド90およびコンソール96は、ケーブル(図示せず)を介して、パワーパック98に接続される。パワーパック98は、注射器用の電源と、コンソール96とパワーヘッド90との間の通信のためのインターフェース回路と、注射器システムのリモートユニット(例えば、リモートコンソール、リモート手動制御スイッチもしくはリモート足制御スイッチおよび/または例えば、画像化システムの動作と同期される注射器システムの動作を可能にする他の相手先ブランド製造(OEM)のリモート制御接続)への注射器システムの接続を可能にするさらなる回路とを含む。
【0029】
パワーヘッド90はスタンド(図示せず)に取り付けられ、該スタンドは、検査被検体の近くにパワーヘッド90を容易に配置するための、パワーヘッド90を支持する支持アーム100を含む。コンソール96およびパワーパック98は、テーブルに位置し得るか、または検査室内の電子機器ラックに取り付けられ得る。その他の設備もまた考えられ得る。例えば、パワーヘッド90は、天井、床または壁に取り付けられた支持アームによって支持され得る。
【0030】
1つ以上のシリンジ20a、20bは、それぞれパワーヘッド90上にアタッチ可能な台または面板88a、88bの1つ以上に搭載される。図1に示されるような注射器の例示的な詳細は米国特許出願第10/964,003号に説明される。例示される用途において、注射器は複数のシリンジを受ける。すなわち、面板88aの圧力ジャケット250に取り付けられ得る約200mlの容積を有するユーザが充填したシリンジと、面板88bに取り付けられ得る約90ml以上を超える容積を有する別のシリンジ(例えば、事前に充填されたシリンジ)20bとである。シリンジが取り付けられる場合、シリンジのプランジャドライブが、公知の方法で、プランジャをそれぞれのシリンジ20a、20b内で動かすように動作可能である。パワーヘッド90および注射器制御装置93の例示的な動作は米国特許出願第10/964,002号に示され、説明される。追加の例示的な動作は、米国特許第5,662,612号、米国特許第5,681,286号および米国特許第6,780,170号に説明される。
【0031】
上記のように、注射器パワーヘッド90は、パワーヘッド90の筐体の表面に組み込まれたタッチスクリーン94を含み、現在の状態を表示し、注射器システム50の動作パラメータを設定するユーザインターフェースを提供する。パワーヘッド90は回転する(wheeled)スタンド(部分的に100で示される)に取り付けられ得、該スタンドはパワーヘッド90の検査被検体の近くへの配置を可能にする。コンソール96は、離れた位置から公知の方法で、プログラムを入力し、注射器システム50の動作を制御するためにオペレータによって使用され得る。
【0032】
注射器制御装置93の要素はパワーヘッド90に組み込まれ得るか、または注射器の他の要素(例えば、電源98またはコンソール96)に組み込まれ得るか、あるいはこれらの要素中に分散され得ることが認識される。パワーヘッドタッチスクリーン94およびコンソール96のタッチスクリーン97は、パワーヘッド90に取り付けられたそれぞれのシリンジ、パワーヘッド90の動作などのグラフィック表現を表示する。
【0033】
シリンジ20aおよび20bは、それらの上のラベル30aおよび30bに組み込まれたRFIDタグ60aおよび60bを有することに留意されたい。RFIDタグはチップ212およびアンテナループ210bを含み、これらは以下に説明されるように、面板内のアンテナによって生成された無線周波数場と相互作用する。RFIDタグ60aまたは60bに含まれるデータは、タッチスクリーン94および97上に表示され得、オペレータが事前の任意の時間にデータを見て確認することと、注入が行われた後にデータがRFIDタグの履歴ファイルに書き込まれることを可能にし、該データは後にアクセスされ得る。さらに、RFIDタグ60aまたは60bはさまざまなデータ値、すなわちタッチスクリーン94および97に表示され得るシリンジの使用またはシリンジの製造に関する情報を格納することを可能にする。RFIDタグの使用およびRFIDタグに格納され得る情報に関するさらなる詳細は、2006年4月4日に出願されたPCT/US2006/012620号、名称「SYSTEMS AND METHODS FOR MANAGING INFORMATION RELATING TO MEDICAL FLUIDS AND CONTAINERS THEREFOR」において提供される。
【0034】
面板88bは、面板88bにおいて平行でないように取り付けられる、第一のプリント回路(「PC」)ボード102と第二のPCボード103とを支持する外側に延在するクレイドル99を有する。図1に示されるように、PCボード102および103は、V形状の側面を形成し、その結果、これらのボード間は180度未満の角度である。PCボード102は、アンテナ220として動作する第一の導電ループと、それに関連付けられた同調回路226とを支持し、PCボード103は、アンテナ222として動作する第二の導電ループと、それに関連付けられた同調回路とを支持する。第一のアンテナループ220および第二のアンテナループ222ならびにそれらの同調回路は、スイッチング回路241bを介して、R/W RFドライバ回路224bに接続され、集合的に電磁R/Wデバイス104bを形成する。一部の実施形態において、R/W RFドライバ回路224bおよびスイッチング回路241bは、PCボード102の下に位置し、かつ電気的に接続された別のPCボード102b(想像線で示される)に取り付けられ得る。その他の実施形態において、R/W RFドライバ回路224bおよび/またはスイッチング回路241bは注射器制御装置93に関連付けられたパワーヘッド90に取り付けられ得る。上記の特許出願において示されるように、アンテナ220および222は、シリンジ20b上のRFIDタグ30bと関連する読み取り−書き込み動作において使用され得ることが認識される。しかし、図3A、3Bおよび4の以下の議論と共にかなり詳細に調べられるように、付加的にまたは代替的に、アンテナ220および222は、本発明の原理に従ってシリンジ内の流体内容物を評価するために使用され得る。
【0035】
回路ボード102および103は、PCボード102および103上の抵抗トレースの形式でヒーター106を組み込む。ヒーター106は、ケーブルまたはコネクタを介して注射器制御装置に電気的に接続され、注射器制御回路によってシリンジ20bを加熱するように動作可能である。
【0036】
上述され図1に示されたパワーヘッド90はデュアルヘッド(dual head)注射器であるが、本発明の実施形態は、同様にシングルヘッド注射器も考慮する。適切なシングルヘッドパワーヘッド90’が図2に示される。このシングルヘッドパワーヘッド90’は単一の面板88のみを組み込み、該面板88は図1に関して示され、上記された面板88bと類似の構造であり得る。単一のノブ92’がパワーヘッド90’内の駆動機構に結合され、その駆動システムの手動動作を可能にする。パワーヘッド90’は、図1に示されるタッチスクリーン94の方法で、ユーザインターフェースを提供するタッチスクリーン94をさらに組み込むが、そのユーザインターフェースは、単一のパワーヘッド90’による、単一のシリンジパワーヘッドに対する制御を含む。パワーヘッド90’は、図1のデュアルシリンジパワーヘッド90の場合のように取り付けアームに対する結合のための台101を含む(例えば、スタンドのアーム100(図1参照))。
【0037】
図面に示される注射器はそれらの注射器のシリンジ台として取り外し可能な面板(例えば、88)を含むが、本発明は医療用流体注射器に適用可能であり、該注射器においてシリンジ台はパワーヘッドの筐体に実質的に統合される(例えば、該筐体から取り外し可能でないか、または容易に取り外し可能でない)。
【0038】
図3Aは、アンテナ220として挙動する1つの送信導体と、アンテナ222として挙動する1つの受信導体とを用いる、シリンジ20b内の充填体積の検出を説明する実施形態の概略的な表現である。シリンジ20b、送信アンテナ220、受信アンテナ222、RFエネルギ供給源260、医療用流体(例えば、造影剤、生理食塩水またはこれらの組み合わせ)262、および空気264の配置がシステム50内に概略的に描かれる。
【0039】
図3Bは、アンテナ220として挙動する1つの送信導体と、アンテナ222として挙動する1つの受信導体とを用いる、シリンジ20b内の充填体積の検出を説明する概略的な上面図である。
【0040】
図3Aおよび3Bに概略的に示される実施形態において、送信アンテナ220および受信アンテナ222として挙動する導体が電子機器229bにアタッチされ、該電子機器229bはシリンジ20bを介してRFエネルギの送信および検出が可能である。ブロック229bは送信アンテナおよび受信アンテナを駆動する電子機器の全てを表す。このような電子機器の例は、同調回路226、RFドライバ回路224b、およびスイッチング回路241bを含む。シリンジ20bは該シリンジ20bに添付可能なRFIDタグ30bを有し得る。アンテナ220および222は、図1に示されるようにアンテナループとして設計され得るか、または代替的にダイポールであり得るか、あるいはRFエネルギ260を放出および受信可能な任意の他の適切な構造であり得ることが認識される。
【0041】
送信アンテナ220からアンテナ222によって受信されるRFエネルギの大きさは、シリンジが医療用流体262、医療用流体と空気との混合物264、またはフルに空気264のみで充填され得るかどうかに依存して変化する。アンテナ220によって送信されるRFエネルギ260の量に対するアンテナ222によって受信されるRFエネルギ260の量を分析することによって、システム50は、シリンジ20bが、医療用流体262、医療用流体262と空気264との混合物、または空気264で充填されるかどうかを決定することが可能である。典型的には、空気264がアンテナ222によって受信される低減された信号の減衰から検出される場合、信号がトリガされ、注入が進むことを防ぎ得る。
【0042】
さらに、システムは、アンテナ222によって受信されるRFエネルギ260の量を計算することによって、存在する医療用流体262の近似的な体積を決定することが可能であり得る。存在する医療用流体262の体積が所定のパラメータの外にある場合、信号がトリガされ、注入が進むことを防ぎ得る。
【0043】
図4は、アンテナ222−1および222−2として挙動する複数の受信導体とアンテナ220として挙動する1つの送信導体とを用いる、シリンジ内の充填体積を検出する実施形態の概略的な上面図である。シリンジ20b、送信アンテナ220、受信アンテナ222−1および222−2、RFエネルギ260、医療用流体262、ならびに空気264は、シリンジ50内に例示されている。その他の実施形態は、任意の適切な数の送信導体と受信導体とを含み得る。
【0044】
図4に示される実施形態において、送信アンテナ220と受信アンテナ222−1および222−2として挙動する導体が電子機器229bに取り付けられ、該電子機器229bはシリンジ20bを介してRFエネルギ260の送信および検出が可能である。RFIDタグ30bは、シリンジ20bに添付され、医療用流体262と空気264との両方がシリンジ20b内に見出され得る。アンテナがシリンジ20bの長手方向に沿って配置される。同様に、これらのアンテナ220、222−1、222−2は、ダイポール、ループアンテナ、またはRFエネルギ260を放出および受信可能な任意のその他の適切な構造として設計され得る。
【0045】
図3と同様に、送信アンテナ220からアンテナ222−1および222−2によって受信されるRFエネルギ260の大きさは、シリンジ20bの内容物に依存して変化する。しかし、上述の実施形態とは異なり、図4の実施形態の複数の受信アンテナ222−1と222−2とは、アンテナ222−1と222−2とにおいて検出される相対減衰に基づいて、シリンジ内の造影剤の量および/またはプランジャの位置の強化された分解能を提供し、向上したエラー(例えば、ノイズ、ピストンなどの注射器のパーツからの減衰、ならびにアンテナ220とアンテナ222−1および222−2との間のRF減衰におけるその他の供給源の変化によって引き起こされ得るエラー)の除去を提供し得る。
【0046】
本発明のさまざまな原理が、さまざまな例示的な実施形態を説明することによって示されており、このような実施形態がかなり詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲をこのような詳細に限定したり、任意の方法で制限したりすることは意図されない。追加の利点および修正は当業者には容易に明らかである。
【0047】
例えば、説明される実施形態において、シリンジはRFIDタグ30を含む注射器システムと共に使用されたが、本発明の原理はRFIDタグを含まないシリンジおよび注射器上で使用され得る。さらに本明細書に示される例示的な実施形態において、アンテナシステムは2つおよび3つのアンテナループを用いるが、代替的な実施形態において、任意の数のアンテナループが用いられ得る。アンテナループは任意の形状で構成され得、同一面または異なる面にあり得、互いにまっすぐに対向したり、図1に示されるような角度のついた構造であったりし得る。さらにアンテナループは重なったり重ならなかったりし得る。しかし、アンテナループが個別に同調され、RFIDプロトコルによって使用される特定の周波数において、または低電力RF用途において使用するため認可された他の周波数において共振することが好ましくあり得る。さらに説明される実施形態において、スイッチング回路241bはRFドライバ回路224bとして同一のPCボード102上に位置するが、代替的な実施形態において、スイッチング回路はPCボード103上に位置し得、2つのPCボード102と103との間に分割され得るか、または例えば、パワーヘッド内などの他の場所に位置し得る。
【0048】
さらに、説明される実施形態においてアンテナシステムが注射器に適用されるが、代替の実施形態において、シリンジ内の流体を検出するアンテナシステムは医療用流体コンテナを支持する任意のデバイスに適用され得る。このようなデバイスは、加温炉もしくは加温箱、コンテナ充填場(container filling station)、ピッグ(pig)もしくは他の核医学容器、分量較正ステーション、ハンドヘルド動力付き医療用流体ディスペンサー、シリンジ使い捨てステーション、または他のデバイスを含むがこれらに限定はされない。
【0049】
説明される実施形態のシステムは、医療用流体のコンテナに関する。詳細に説明される例は、造影剤と造影剤を含むシリンジとに関する。代替的な実施形態において、コンテナは医療用流体で充填されたバッグであり得る。バッグは本明細書において上述されたようにデータタグ60(RFIDタグ)を有するラベルを有し得るか、または何も装備され得ない。
【0050】
シリンジを動力付き注射器に取り付ける多くの公知の方法があり、本明細書に示され説明される面板はこのような構造のうちの2つに過ぎない。その他の取り付け構造は、パワーヘッドからの取り外しが可能ではないものであり得る。本明細書に請求される発明は、シリンジを取り付ける任意のタイプの構造を有するパワーヘッドに適用され得る。示され、説明される実施形態において、ヒーター106はPCボード102および103上に取り付けられるが、代替的な実施形態において、ヒーター106は使用されないことがあり得、それゆえPCボード102および103から取り除かれることがあり得る。
【0051】
本発明および本発明のさまざまな実施形態の要素が導入される場合、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、1つ以上の要素があることを意味するように意図される。用語「備えている、包含する」、「含む」および「有する」は、包括的であるように意図され、掲載される要素以外の追加の要素があり得ることを意味する。さらに、「上部」および「下部」、「前部」および「後部」、「〜の上」および「〜の下」、ならびにこれらおよびその他の配向の用語の変形の使用が利便性のためになされるが、構成要素の任意の特定の配向を必要としない。
【0052】
さまざまな変化が、上記の局面および例示的な実施形態において、本発明の範囲から逸脱することなしになされ得るので、上記の説明において含まれる全ての事柄は例示的であると解釈され、限定する意味で解釈されるべきではないことが意図される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジ台であって、
シリンジと、
RFエネルギの供給源と、
該供給源からRFエネルギを送信するための第一のアンテナであって、該第一のアンテナは、該シリンジ台上の該シリンジの近位に位置付けられる、第一のアンテナと、
該第一のアンテナから送信されたRFエネルギを受信するための第二のアンテナであって、該第二のアンテナは該シリンジ台の該シリンジの近位に位置付けられ、該第二のアンテナは、該第一のアンテナから送信された該RFエネルギの少なくとも一部が、該第二のアンテナによる受信の前に該シリンジを通って進むように配置される、第二のアンテナと
を備えている、シリンジ台。
【請求項2】
前記第一のアンテナからのRFエネルギを受信するように構成された第三のアンテナをさらに備え、該第三のアンテナは前記シリンジ台上の前記シリンジの近位に位置付けられ、該第一のアンテナから送信された該RFエネルギの少なくとも一部が、該第三のアンテナによる受信の前に該シリンジを通って進むように、該第三のアンテナが配置される、請求項1に記載のシリンジ台。
【請求項3】
RF受信器をさらに備え、前記第二アンテナは該RF受信器に結合される、請求項1に記載のシリンジ台。
【請求項4】
前記RF受信器は、前記第二のアンテナによって受信された前記第一のアンテナからのRFエネルギの変化を測定するように構成される、請求項3に記載のシリンジ台。
【請求項5】
前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナは、ダイポールアンテナである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリンジ台。
【請求項6】
前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナは、ループアンテナである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリンジ台。
【請求項7】
前記供給源からのRFエネルギは、周波数において調整可能である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリンジ台。
【請求項8】
前記供給源からのRFエネルギは、大きさにおいて調整可能である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリンジ台。
【請求項9】
前記供給源からのRFエネルギは、一定の所定の周波数で送信される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリンジ台。
【請求項10】
前記供給源からのRFエネルギは、一定の所定の大きさで送信される、請求項1〜6および請求項9のいずれか1項に記載のシリンジ台。
【請求項11】
前記シリンジは、RFIDタグを備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシリンジ台。
【請求項12】
医療用流体注射器の動作方法であって、該方法は、
RF信号を、医療用流体注射器の第一のアンテナから該医療用流体に関連付けられたシリンジを介して送信することと、
該医療用流体注射器の第二のアンテナを介して、該RF信号の少なくとも一部を受信することと、
該第二のアンテナによって受信された該RF信号の量を測定することと
を包含する、方法。
【請求項13】
前記測定に少なくとも部分的に基づいて、前記医療用流体注射器をディセーブルすることをさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記測定に少なくとも部分的に基づいて、注入プロトコルの開始をイネーブルすることをさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記測定に少なくとも部分的に基づいて、プログラミングされた注入プロトコルを自動的に開始することをさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第二のアンテナによって受信された前記RF信号の量を、前記第一のアンテナから送信された該RF信号の量と比較することをさらに包含する、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
医療用流体が前記シリンジ内に存在するかどうかを決定することをさらに包含し、該決定することは、前記測定することに少なくとも部分的に基づいている、請求項12または16に記載の方法。
【請求項18】
前記シリンジ内の医療用流体の近似的な体積を決定することをさらに包含し、該決定することは、前記測定することに少なくとも部分的に基づいている、請求項12または16に記載の方法。
【請求項19】
前記決定された近似的な体積が、プログラミングされた注入プロトコルを行うために必要とされる体積未満である場合に、前記医療用流体注射器をディセーブルすることをさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記決定された近似的な体積が、プログラミングされた注入プロトコルを行うために必要とされる体積未満である場合に、可聴警告、可視警告またはこれらの組み合わせを提供することをさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記RF信号が前記シリンジの直径未満の波長を有する、請求項12〜20のいずれか1項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−536483(P2010−536483A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521915(P2010−521915)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/072304
【国際公開番号】WO2009/025996
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(503102685)マリンクロット インコーポレイテッド (33)
【Fターム(参考)】