説明

RFタグの振動センサ実装構造

【課題】振動センサを回路基板に実装した場合の部品高さを低くすると共に、リード電極間のショートを防止できるRFタグの振動センサ実装構造を提供する。
【解決手段】回路基板14に、樹脂製で円筒状をなす本体2の両端部からリード電極3がそれぞれ導出される構成の振動センサ1を埋設するため矩形状の挿入穴20を形成する。挿入穴20の対向する1組の辺の寸法は前記円筒の直径よりも短く、他の1組の辺の寸法は円筒の軸方向長さ以上に設定される。そして、挿入穴20において寸法が円筒の直径よりも短く設定される各辺から所定の空隙を有して、リード電極3を配線パターンに接続するためのランド21をそれぞれ形成し、本体2を挿入穴20に挿入した状態でリード電極3とランド21とをはんだ付けする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFタグを電池駆動するために使用される振動センサを、内蔵される回路基板に実装する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電池駆動されるRFタグには、振動センサを内蔵することでRFタグに外力が加わったことを検出した期間にだけ回路基板の制御部が起動して外部にIDデータを送信することで、電池の消耗を防ぐように構成されるものがある。このようなRFタグは、例えばホームセキュリティシステムにおいて、RFタグを携帯した家人が帰宅した場合(歩行による振動を検知した状態)にRFタグよりIDデータをシステムの制御部側に送信し、ドアのロックを自動的に解除するといった用途がある。
【0003】
このようなRFタグに内蔵される振動センサ1は、図5に示すように、本体2の両端側からリード電極3が導出された形状のものを用いることが多く、そのリード電極3を回路基板4に挿入してはんだ5によりはんだ付けすることで、回路基板4上の配線パターンに電気的に接続して実装される。この場合、人が携帯することが前提のRFタグであるため、外形のサイズを極力小さくしたいという要請があり、挿入実装部品である振動センサ1を回路基板4に実装した場合の部品高さが問題となる。
【0004】
斯様な問題に対処するために、図6に示すように、振動センサ1を挿入実装することなく、回路基板4の端部側に配置して、リード電極3が配線パターンと平行になる状態ではんだ付けする構成を採用したものがある。しかしながら、RFタグには人が携帯している間に振動が加えられるため、上記の構成ではリード電極3のはんだ付け部分にストレスがかかることになり、好ましい実装形態であるとは言えない。
例えば特許文献1には、多層基板に回路部品を挿入するための穴を形成し、回路部品を埋設した状態ではんだ付けする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−206121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1の構成を、上記のような形状の振動センサ1を実装するための両面基板に適用することを想定すると図7に示すような実装構造が考えられる。すなわち、図7(b)に示すように、回路基板4に本体2の円筒直径よりも寸法が小さい矩形状の挿入穴6を形成して本体2を途中部位まで埋設することで、振動センサ1を実装した場合の部品高さを低くする。しかしながら、挿入穴6がスルーホールとして形成されると、リード電極3をはんだ付けした場合に前記スルーホールを介して2つのリード電極3がショートするおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動センサを回路基板に実装した場合の部品高さを低くすると共に、リード電極間のショートを防止できるRFタグの振動センサ実装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のRFタグの振動センサ実装構造によれば、回路基板に、樹脂製で円筒状をなす本体の両端部からリード電極がそれぞれ導出される構成の振動センサを埋設するため、矩形状の挿入穴を形成する。この場合、挿入穴の対向する1組の辺の寸法は前記円筒の直径よりも短く、他の1組の辺の寸法は円筒の軸方向長さ以上に設定される。そして、挿入穴において寸法が円筒の直径よりも短く設定される各辺から所定の空隙を有して、リード電極を配線パターンに接続するためのランドをそれぞれ形成し、振動センサの本体を挿入穴に挿入した状態でリード電極とランドとをはんだ付けする。
【0009】
斯様に構成すれば、振動センサは、その一部が回路基板の挿入穴に埋設された状態で実装されるので、その状態での回路基板の挿入方向面からの部品高さを、本体をなす円筒の直径よりも低くすることができる。具体的には、回路基板の厚さ寸法分と、本体の一部が回路基板の裏面から突出する分だけ低くなる。これにより、RFタグの外形を小型に構成できる。そして、振動センサのリード電極をランドにはんだ付けすると、振動センサの本体が円筒形であるため、挿入時に振動センサの樹脂部分(円筒の部分)が挿入穴の縁部と密着する。この状態では、基板側の取付けしろは殆ど消費され、振動センサの本体と回路基板との間には実質的に隙間が無いといっても良い。
【0010】
その後、電極をはんだ付けする際に余剰はんだが電極部分から溢れたとしても、そのはんだが向かう先は、円筒形の振動センサ本体の円板部分と、挿入穴の縁部の間にある取付けしろの残余部分に向かうのみとなる。しかしながら上述したように、振動センサの円筒部分と挿入穴の縁部の部分にははんだが流れ込むような隙間が無いので、はんだが実質的に向かうことはない。また仮に向かったとしても、円筒形センサの円筒部分は樹脂性であるから、はんだが馴染まずはじかれ易くなっているため、左右の円板部分にある余剰はんだ程度の量では、左右の円板部分からはんだ同士が結合するような事態はほぼ抑制できる。従って、はんだが、挿入穴の辺と、その辺に接している振動センサの樹脂製の本体との間に回り込むことはなく、2つのリード電極間がショートすることも確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施例であり、(a)は回路基板の裏面を、挿入穴が形成されている部分だけ示す図、(b)は振動センサが回路基板に挿入された状態を示す側面図、(c)は同正面図
【図2】RFタグの分解斜視図
【図3】部品が実装された状態の回路基板を裏面側から示す斜視図
【図4】RFタグの外観を示す(a)正面図,(b)側面図,(c)斜視図
【図5】(a)は従来技術(その1)を示す図1(b)相当図
【図6】従来技術(その2)を示す図1(b)相当図
【図7】(a)は従来技術(その3)を示す図1(b)相当図、(b)は図1(a)相当図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施例について図1ないし図4を参照して説明する。尚、図5ないし図7と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。図4は、RFタグの外観を示す(a)正面図,(b)側面図,(c)斜視図であり、図2は、RFタグの分解斜視図である。RFタグ11は、例えば樹脂製のアッパーケース12と、ロワーケース13との間に回路基板14等を内蔵して構成されている。双方のケース12,13を組み合わせると正方形状となる(図4(b)参照)。図4(a)に示す正面左上隅部分は、切り欠きにより概ね三角状の隅穴部15が形成されており(当該部分はロワーケース13の一部である)、また、その隅穴部15の上辺部及び左側面部には、紐を通すための穴16が形成されている。
【0013】
回路基板14は、表面側から電池ホルダ17や振動センサ1が挿入実装されており、電池ホルダ17には、円盤状の例えばリチウム電池18が保持される。そして、回路基板14の裏面側は、防水ラバー19を介してロワーケース13に収容される。防水ラバー19の周辺部は、Oリングによるパッキン構造を成している。ここで、振動センサ1については、回路基板14に形成された矩形状の挿入穴20に、樹脂製の本体2の一部分が嵌合した状態で挿入実装されている。
【0014】
図1(a)は、回路基板14の裏面を、挿入穴20が形成されている部分だけ示している。振動センサ1の2つのリード電極3は、円筒形をなす本体2の両端面部より導出されている。挿入穴20の縦辺部の長さは、本体2の円筒の高さ(長さ)よりも長く、横辺部の長さは、上記円筒の直径よりも短くなるように設定されている。したがって、挿入穴20の縦辺部に本体2の円筒長さ方向を沿わせて挿入すれば、本体2は、その一部が回路基板14の裏面側に突出した状態で挿入穴20に嵌合する(図1(b),(c)参照)。尚、挿入穴20をスルーホールとして形成しないことは勿論である。
そして、図1(a)に示すように、挿入穴20の縦辺部から所定の空隙をおいて、2つのリード電極3を回路基板14の配線パターンにはんだ付けするためのランド21が配置されており、振動センサ1のリード電極3は、本体2が挿入穴20に嵌合した状態で、はんだ22によりランド21にはんだ付けされる。
【0015】
図3は、振動センサ1が実装された状態の回路基板14の裏面側を斜視図で示しているが、ランド21は回路基板14の裏面に形成された配線パターン23を介して、裏面に面実装されている制御部24に電気的に接続されている。制御部24は、マイクロコンピュータで構成され、電池18からの電源が供給されて動作する。また、回路基板14の裏面には、タグリーダ(若しくはリーダ/ライタ)より送信された電波信号を受信するためのアンテナパターン25が配線されており、そのアンテナパターン25は制御部24に接続されている。ここで、RFタグ11は、2.4GHz帯で使用されるものを想定しているが、これに限らず、その他13MHz帯やUHF帯などで使用されるものでも良い。
【0016】
更に、回路基板14の裏面には、例えばタクトスイッチ等からなる操作ボタン26が実装されており、操作ボタン26のオンオフ信号も図示しない配線パターンを介して制御部24に入力されている。操作ボタン26は、RFタグ11にIDコードを書き込んで設定する初期設定時にユーザによってオン操作される。図4に示すように、ロワーケース13には穴27が形成されており、その穴27の位置は、操作ボタン26の操作子の位置に対応して設けられている。上述したように、回路基板14の裏面側は防水ラバー19を介してロワーケース13に収容されているので、ユーザは、穴27及び防水ラバー19を介して操作ボタン26を操作する。そして、アッパーケース12とロワーケース13とはスナップフィット機構で嵌合するようになっており、RFタグ11は防水構造となっている。
【0017】
以上のように構成される本実施例によれば、RFタグ11を電池駆動するために使用され、樹脂製で円筒状をなす本体2の両端部からリード電極3がそれぞれ導出される構成の振動センサ1を回路基板14に実装するため、回路基板14に本体2を埋設するため矩形状の挿入穴20を形成し、その挿入穴20の対向する1組の辺の寸法は前記円筒の直径よりも短く、他の1組の辺の寸法は円筒の軸方向長さ以上に設定する。そして、挿入穴20において寸法が円筒の直径よりも短く設定される各辺から所定の空隙を有して、リード電極3を配線パターンに接続するためのランド21をそれぞれ形成し、本体2を挿入穴20に挿入した状態でリード電極3とランド21とをはんだ付けする。
【0018】
すなわち、振動センサ1は、その一部が回路基板14の挿入穴20に埋設された状態で実装されるので、その状態での回路基板14の挿入方向面からの部品高さを、本体2をなす円筒の直径よりも低くすることができる。具体的には、回路基板14の厚さ寸法分と、本体2の一部が回路基板14の裏面から突出する分だけ低くなるので、RFタグ11の外形を小型に構成できる。
【0019】
そして、振動センサ1のリード電極2をランド21にはんだ付けすると、振動センサ1の本体2が円筒形であるから、挿入時に振動センサ1の樹脂部分(円筒の部分)が、挿入穴20の縁部と密着する。この状態では、回路基板14側の取付けしろは殆ど消費されるので、本体2と回路基板14との間には実質的に隙間が無いと言っても良い。その後、リード電極3をはんだ付けする際に余剰なはんだ22がリード電極3の部分から溢れたとしても、そのはんだ22が向かう先は、本体2の円板部分と、挿入穴20の縁部の間にある取付けしろの残余部分に向かう方向のみとなる。
【0020】
しかしながら、振動センサ1の円筒部分と挿入穴20の縁部との間にははんだ22が流れ込むような隙間が無いので、はんだ22が実質的に向うことはない。また仮に向かったとしても本体2は樹脂性であるから、はんだ22が馴染まずにはじかれ易くなっているため、左右の円板部分にある余剰なはんだ22程度の量では、左右の円板部分からはんだ22同士が結合するような事態はほぼ抑制できる。従って、はんだ22が、挿入穴20の辺と、その辺に接している振動センサ1の樹脂製の本体2との間に回り込むことはなく、2つのリード電極3間がショートすることも確実に防止できる。
【0021】
また、実際の回路基板14の厚みと振動センサ1の大きさとの関係では、回路基板14自体がかなり薄いものであることから、特許文献1に示されているように電子部品の半分以上が基板の厚みの中に埋まることはなく、電子部品の本体部分の殆どは回路基板から露出することになる。したがって、引用文献1を参照することで振動センサ1の全体を回路基板のスルーホールに挿入しても、単に挿入するだけでは振動によって振動センサ1が外れてしまう可能性もある。
【0022】
これに対して本実施例によれば、本体2が円筒形である振動センサ1に対して挿入穴20のサイズを円筒の直径よりもやや小さくし、振動センサ1が回路基板14から突出する寸法を、回路基板14の表面側と裏面側とで異ならせているので、振動センサ1を回路基板14に挿入する時に、本体2が円筒形であるが故に挿入穴20の縁部に密着する(狭い穴へ押し込まれるので、本体2の自重によって挿入穴20の縁部に密着せざるを得ない)ことになる。その結果、回路基板14の挿入穴20により振動センサ1が保持されることになり、しかもリード電極3をランド21に接続固定するはんだ22のうち、両者の接続部から溢れたはんだ22が残ればそれらが本体2を両側から支えるので、振動センサ1の保持が更に強固になされることを期待できる。
【0023】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変型又は拡張が可能である。
各部の寸法については、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
操作ボタン26は、必要に応じて設ければ良い。
RFタグは、必ずしも防水構造を採用する必要はない。
【符号の説明】
【0024】
図面中、1は振動センサ、2本体、3はリード電極、11はRFタグ、14は回路基板、18はリチウム電池、20は挿入穴、21はランド、23は配線パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFタグを電池駆動するために使用される振動センサを、前記RFタグに内蔵される回路基板に実装する構造であって、
前記振動センサは、樹脂製で円筒状をなす本体の両端部からリード電極がそれぞれ導出されており、
前記回路基板に、対向する1組の辺の寸法が前記本体を成す円筒の直径よりも短く設定され、他の1組の辺の寸法が、前記円筒の軸方向長さ以上に設定される矩形状の挿入穴を形成すると共に、
前記挿入穴において寸法が前記円筒の直径よりも短く設定される各辺側に、前記リード電極を前記回路基板上の配線パターンに接続するためのランドをそれぞれ形成し、
前記振動センサの本体を前記挿入穴に挿入した状態で、前記リード電極と前記ランドとをはんだ付けしたことを特徴とするRFタグの振動センサ実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−173767(P2012−173767A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31982(P2011−31982)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】