RFIDタグアンテナ
【課題】金属面に貼り付けても使用可能なRFIDタグを小型化する。
【解決手段】第一パターン1は、折り曲げ部分を各々有している一対の導体からなる。この一対の導体の各々における片方の端部を給電点4とする。この給電点4間にC結合部5を形成する。更に、誘電体3を挟んで第一の素子1に対向して第二パターン2を配置する。
【解決手段】第一パターン1は、折り曲げ部分を各々有している一対の導体からなる。この一対の導体の各々における片方の端部を給電点4とする。この給電点4間にC結合部5を形成する。更に、誘電体3を挟んで第一の素子1に対向して第二パターン2を配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ技術に関し、特に、RFIDシステムでの実施に好適である、周囲の物がアンテナの性能へ及ぼす影響を低減させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
UHF帯(860〜960MHz)の無線信号を用いて、リーダライタから1W程度の信号を送信し、タグ(荷札)側でその信号を受信したときにリーダライタ側へ応答信号を送り返すことにより、タグ内の情報をリーダライタで読み取るという、RFID(Radio Frequency Identification)システムと称されるシステムが知られている。その通信距離は、タグ側のアンテナの利得、タグ内のIC(集積回路)チップの動作電圧や周囲環境にもよるが、おおよそ3m程度である。
【0003】
RFIDタグは、一般に、厚さ10〜30マイクロメートル程度のアンテナと、アンテナ給電点に接続されるICチップとより構成されている。このICチップは、一般的には、抵抗Rc(例えば1200Ω)とキャパシタンスCc(例えば0.58pF)との並列接続で等価的に示すことができ、アンテナは、抵抗Ra(例えば1000Ω)と、インダクタンスLa(例えば48nH)の並列接続で等価的に示すことができる。この両者を並列接続すると、等価回路は図10に示すようになる。ここで、キャパシタンスCcとインダクタンスLaとが共振する、下記の式
【0004】
【数1】
で表される共振周波数f0において両者は整合するので、この共振周波数の信号がアンテナで受信されたときには、その受信パワーがICチップ側へ十分供給されることになる。
【0005】
タグアンテナに用いる基本的なアンテナとして、例えば、図11に示したような、全長150mm程度、幅15mm程度の折り返しダイポールアンテナ(Folded Dipole Antenna )100が用いられる。このアンテナ100の利得は約2dBiである。この全長は、f=953MHzの波長(約300mm)の半分であり、λ/2の電流分布を持つことにより当該周波数で共振する。この共振周波数においては折り返しダイポールアンテナ100のアドミタンスの虚数成分(インダクタンスやキャパシタンス成分)は0となるので、図11のように、インダクタンス部Laを折り返しダイポールアンテナ100に並列に接続することにより、ICチップと共振させることができる。
【0006】
この他、本発明に関する技術として、例えば特許文献1には、電磁波をアンテナに向かって反射する反射手段を非接触ICタグに備えることにより、通信距離を伸ばすと共に、裏面にある物質がどのような物であるかにかかわらず、データの読み書きする状態を一定に保つという技術が開示されている。
【0007】
RFIDタグを付す物品が金属製である場合に、アンテナを金属面に貼り付けると、不要な高周波電流が当該金属面に流れることにより、共振周波数のズレやアンテナ利得の低下といった現象が生じ、リーダライタとの間での通信ができなくなる場合が生じ得る。
【0008】
前掲した特許文献1に開示されている技術は、このようなアンテナ特性の変動の低減に有効である。しかしながら、当該文献に開示されている非接触ICタグで使用されているアンテナは折り返しダイポールアンテナである。しかも、アンテナから放射された電磁波を反射させるために、反射手段とアンテナとの間には相当の間隔(上記文献によれば少なくとも1/12波長以上)を持たせて配置する必要がある。そのため、UHF帯の信号を使用するRFIDタグシステムにこの技術を適用すると、RFIDタグの形状が細長く大型なものになってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−298106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、金属面に貼り付けても使用可能なRFIDタグを小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様のひとつであるRFIDタグアンテナは、1回のみの折り曲げ部分を各々有している一対の導体からなり、当該一対の導体の各々における片方の端部が給電点である第一の素子と、前記給電点間に形成される容量結合部と、誘電体を挟んで前記第一の素子に対向して配置される導体である第二の素子と、を有することを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0012】
この構成のアンテナは、第一の素子の折り曲げによって折り返しダイポールアンテナよりも全長が短くなり、また、金属面への貼り付けによるアンテナ特性の変動が第二の素子によって軽減されており、更に、容量結合部を設けたことにより所望の周波数での利用が可能となる。
【0013】
なお、上述した本発明に係るRFIDタグアンテナにおいて、前記折り曲げ部分の折り曲げ角度が直角であるように構成してもよい。
【0014】
この構成によれば、折り曲げ角度を鈍角とする場合に比べ、アンテナ全体の形状を小さくすることができる。
【0015】
また、前述した本発明に係るRFIDタグアンテナにおいて、前記第二の素子が、前記第一の素子の形状に沿った形状とされていてもよい。
【0016】
この構成によれば、第二の素子の影響によるアンテナ利得の低下が少なくなる。
【0017】
また、前述した本発明に係るRFIDタグアンテナにおいて、前記容量結合部は、前記第一の素子の給電点に形成されている平行導体であってもよい。
【0018】
この構成によれば、容量結合部を低廉に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以上のように構成することにより、本発明の効果として、金属面に貼り付けても使用可能で小型のRFIDタグを提供できるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一パターンである一対の導体が2回の折り曲げ部を各々有するアンテナの構成を示す図である。
【図2】第一パターンである一対の導体が1回のみの折り曲げを各々有するアンテナの構成を示す図である。
【図3】本発明を実施するRFIDタグアンテナの構造の第一の例を示す図である。
【図4】本発明を実施するRFIDタグアンテナの構造の第二の例を示す図である。
【図5】図3若しくは図4に示したアンテナの給電点にICチップを接続したときの等価回路を示す図である。
【図6】本発明を実施するRFIDタグアンテナの構造の第三の例を示す図である。
【図7】本発明を実施するRFIDタグアンテナの構造の第四の例を示す図である。
【図8】本発明を実施するRFIDタグアンテナの作製方法の第一の例を説明する図である。
【図9】本発明を実施するRFIDタグアンテナの作製方法の第二の例を説明する図である。
【図10】RFIDアンテナの給電点にICチップを接続したときの等価回路を示す図である。
【図11】インダクタンス部を並列接続した折り返しダイポールアンテナの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態においては、前述した折り返しダイポールアンテナよりも長辺の長さが短く、物品への貼り付け面の面積をクレジットカード(横約86mm×縦54mm)以下とすることもできる、カード状のRFIDタグに使用可能なアンテナ(RFIDタグアンテナ)を提供する。
【0022】
なお、以下の説明においては、Cc=0.58pFとRc=1200Ωとの並列回路により等価回路が表されるICチップと接続する、周波数953MHzの信号を使用するRFIDタグ用のアンテナを考える。このときには、アンテナのインダクタンス成分Laを48nH程度とすることにより、前掲した[数1]式が成立することになる。
【0023】
なお、以下の説明は、市販の電磁界シミュレータを用いて行われたシミュレーションに基づいて算出した結果を示す。
【0024】
まず、図1に示すようなアンテナを検討する。
図1において、第一パターン1は、縦46mm×横76mmのカードの外周形状に沿って2回の折り曲げ部を持つU字形状の一対の導体からなる。なお、ICチップは、その一対の導体の各々における片方の端部である、給電点4に配置される。
【0025】
また、第二パターン2は、厚さ3.5mmの誘電体3を挟んで第一パターン1に対向して配置されており、その形状は第一パターン1に沿って配置されている。なお、誘電体3の比誘電率εrは3.0とした。
【0026】
このアンテナのインダクタンス成分を算出するとLa=48.0nHとなり(全長が1/2波長よりも長いために、インダクタンス成分を持つ)、従ってこのアンテナとICチッブとの共振周波数は、前掲した[数1]式より、f=953MHzとすることができる。しかしながら、アンテナの利得の算出結果は−11.9dBiとなってしまい、大きな損失が生じてしまう。これは、折り曲げ部が一方の導体当たりで2回もあり、しかも内側に沿う方向に曲げられているため、電磁波が放射し難いことが原因として考えられる。
【0027】
そこで、第一パターン1の折り曲げの回数を減らし、図2に示すように、一対の導体の各々の形状を、直角の折り曲げを1回ずつにしたL字形状とする。すると、アンテナの利得の算出結果は1.71dBiとなる。ところが、このアンテナのインダクタンス成分を算出するとLa=7.5nHとなり、RFIDタグ用のアンテナとしてはインダクタンス成分が小さく、所望の周波数で共振させることができない。
【0028】
そこで、図3に示すようにして、第一パターン1の給電点4間にC(容量)結合部5を接続する。このC結合部5は、第一パターン1を形成している一対の導体を図2における給電点4から平行に伸ばしたものである。なお、図3においては、給電点4の位置をその平行導体の端部にまで移動させているが、C結合部5は給電点4に対して並列に挿入すればよいので、図4に示すように、給電点4を図2の位置のまま移動させなくてもよい。
【0029】
図3若しくは図4に示したアンテナの給電点4にICチップを接続したときの等価回路を図5に示す。この図5の等価回路は、C結合部5がない状態におけるアンテナ(すなわち図2に示したアンテナ)のインダクタンス成分La2に、C結合部5のキャパシタンス成分Ca2が並列に加わった形となっている。
【0030】
この図5におけるインダクタンス成分La2の値の算出結果は、前述したように7.5nHであるので、La=47.9nHに相当するインダクタンス成分を図3若しくは図4に持たせるためには、
【0031】
【数2】
なる式が成立するように、C結合部5のキャパシタンス成分Ca2を設定すればよい。
【0032】
なお、このときのアンテナ放射抵抗RaはRa=1000〜1500Ω程度になる。また、アンテナの利得の算出結果は1.35dBiとなり、実用上十分な利得が得られる。
【0033】
以上のように、図3において、例えば図1に示したものと同一の寸法、すなわち、1回のみの折り曲げ部分を各々有している一対の導体からなり、当該一対の導体の各々における一方の端部が給電点4である第一パターン1と、縦46mm、横76mm、厚さ3.5mm、であって比誘電率εr=3.0である誘電体3と、誘電体3を挟んで第一パターン1に対向して配置される第二パターン2を設け、C結合部5を給電点4に形成して並列に接続してアンテナを構成することにより、ICチップとの共振に必要なインダクタンス成分をアンテナに持たせることができ、且つ、C結合部5がない場合と同等の利得をアンテナに持たせる保つことができる。
【0034】
なお、図3や図4においては、第二パターン2を、第一パターン1に沿った形状としている。第二パターン2は、タグを金属面に貼り付けたとき等におけるアンテナ特性の変動を少なくするためのものであるが、ここで、第二パターン2の代わりに、誘電体3の面を導体でベタ塗りの状態とすると、アンテナの利得の算出結果は−5.9dBiとなり、大幅に低下してしまう。そこで、第二パターン2を第一パターン1に沿った形状とする、例えば第一パターンと同一形状とすることにより、実用的なアンテナの利得を確保しつつ、金属面に貼り付けたとき等におけるアンテナ特性の変動を軽減することができる。
【0035】
なお、第一パターン1及び第二パターン2は、例えば、誘電体2の上下に蒸着等により形成しておいた金属面(例えば、銅、銀、アルミニウムなど)をエッチング等で所望の形状に加工することで作製することができる。
【0036】
また、誘電体3としては、安価で加工が容易で柔軟性を持つものが好適であり、具体的には、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂やエポキシ樹脂などが好ましい。
【0037】
また、C結合部5の構成として、図3や図4のように平行導体を配置するのみで低廉に構成する代わりに、例えば図6に示すように、図3においてC結合部5を形成していた平行導体を挟んで誘電体3に対向する位置に、例えば比誘電率εr=5の第二誘電体6を配置して構成するようにしてもよい。この構成によれば、C結合部5で必要とされる静電容量を確保しつつ平行導体の全長を短くすることができる。すると、アンテナ形状が図2に示したものへと近くなるので、それだけアンテナの利得を向上させることができる。
【0038】
なお、図6に示すように第二誘電体6を配置する代わりに、図7に示すように、誘電体3よりも比誘電率の高い第二誘電体6を、図3においてC結合部5を形成していた平行導体と接触する誘電体3の部分に配置する(誘電体3に埋め込む)ようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、以上までに説明したアンテナは、例えば、図8に示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)、紙、あるいはフィルムを材料とするシート上に、導体である第一パターン1及び第二パターン2をそれぞれ形成しておき、これらの2枚のシート7と誘電体3のシートという3枚構成によりアンテナとして形成することもできる。この場合には、例えば、接着剤を使用してこれらのシート7及び誘電体3を貼り合わせてアンテナを作製するようにしてもよく、また、図9に示すように、これらのシート7及び誘電体3を真空ラミネート8で封入して一体化させる加工によってアンテナを作製するようにしてもよい。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 第一パターン
2 第二パターン
3 誘電体
4 給電点
5 C結合部
6 第二誘電体
7 シート
8 真空ラミネート
100 折り返しダイポールアンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ技術に関し、特に、RFIDシステムでの実施に好適である、周囲の物がアンテナの性能へ及ぼす影響を低減させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
UHF帯(860〜960MHz)の無線信号を用いて、リーダライタから1W程度の信号を送信し、タグ(荷札)側でその信号を受信したときにリーダライタ側へ応答信号を送り返すことにより、タグ内の情報をリーダライタで読み取るという、RFID(Radio Frequency Identification)システムと称されるシステムが知られている。その通信距離は、タグ側のアンテナの利得、タグ内のIC(集積回路)チップの動作電圧や周囲環境にもよるが、おおよそ3m程度である。
【0003】
RFIDタグは、一般に、厚さ10〜30マイクロメートル程度のアンテナと、アンテナ給電点に接続されるICチップとより構成されている。このICチップは、一般的には、抵抗Rc(例えば1200Ω)とキャパシタンスCc(例えば0.58pF)との並列接続で等価的に示すことができ、アンテナは、抵抗Ra(例えば1000Ω)と、インダクタンスLa(例えば48nH)の並列接続で等価的に示すことができる。この両者を並列接続すると、等価回路は図10に示すようになる。ここで、キャパシタンスCcとインダクタンスLaとが共振する、下記の式
【0004】
【数1】
で表される共振周波数f0において両者は整合するので、この共振周波数の信号がアンテナで受信されたときには、その受信パワーがICチップ側へ十分供給されることになる。
【0005】
タグアンテナに用いる基本的なアンテナとして、例えば、図11に示したような、全長150mm程度、幅15mm程度の折り返しダイポールアンテナ(Folded Dipole Antenna )100が用いられる。このアンテナ100の利得は約2dBiである。この全長は、f=953MHzの波長(約300mm)の半分であり、λ/2の電流分布を持つことにより当該周波数で共振する。この共振周波数においては折り返しダイポールアンテナ100のアドミタンスの虚数成分(インダクタンスやキャパシタンス成分)は0となるので、図11のように、インダクタンス部Laを折り返しダイポールアンテナ100に並列に接続することにより、ICチップと共振させることができる。
【0006】
この他、本発明に関する技術として、例えば特許文献1には、電磁波をアンテナに向かって反射する反射手段を非接触ICタグに備えることにより、通信距離を伸ばすと共に、裏面にある物質がどのような物であるかにかかわらず、データの読み書きする状態を一定に保つという技術が開示されている。
【0007】
RFIDタグを付す物品が金属製である場合に、アンテナを金属面に貼り付けると、不要な高周波電流が当該金属面に流れることにより、共振周波数のズレやアンテナ利得の低下といった現象が生じ、リーダライタとの間での通信ができなくなる場合が生じ得る。
【0008】
前掲した特許文献1に開示されている技術は、このようなアンテナ特性の変動の低減に有効である。しかしながら、当該文献に開示されている非接触ICタグで使用されているアンテナは折り返しダイポールアンテナである。しかも、アンテナから放射された電磁波を反射させるために、反射手段とアンテナとの間には相当の間隔(上記文献によれば少なくとも1/12波長以上)を持たせて配置する必要がある。そのため、UHF帯の信号を使用するRFIDタグシステムにこの技術を適用すると、RFIDタグの形状が細長く大型なものになってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−298106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、金属面に貼り付けても使用可能なRFIDタグを小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様のひとつであるRFIDタグアンテナは、1回のみの折り曲げ部分を各々有している一対の導体からなり、当該一対の導体の各々における片方の端部が給電点である第一の素子と、前記給電点間に形成される容量結合部と、誘電体を挟んで前記第一の素子に対向して配置される導体である第二の素子と、を有することを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0012】
この構成のアンテナは、第一の素子の折り曲げによって折り返しダイポールアンテナよりも全長が短くなり、また、金属面への貼り付けによるアンテナ特性の変動が第二の素子によって軽減されており、更に、容量結合部を設けたことにより所望の周波数での利用が可能となる。
【0013】
なお、上述した本発明に係るRFIDタグアンテナにおいて、前記折り曲げ部分の折り曲げ角度が直角であるように構成してもよい。
【0014】
この構成によれば、折り曲げ角度を鈍角とする場合に比べ、アンテナ全体の形状を小さくすることができる。
【0015】
また、前述した本発明に係るRFIDタグアンテナにおいて、前記第二の素子が、前記第一の素子の形状に沿った形状とされていてもよい。
【0016】
この構成によれば、第二の素子の影響によるアンテナ利得の低下が少なくなる。
【0017】
また、前述した本発明に係るRFIDタグアンテナにおいて、前記容量結合部は、前記第一の素子の給電点に形成されている平行導体であってもよい。
【0018】
この構成によれば、容量結合部を低廉に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以上のように構成することにより、本発明の効果として、金属面に貼り付けても使用可能で小型のRFIDタグを提供できるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一パターンである一対の導体が2回の折り曲げ部を各々有するアンテナの構成を示す図である。
【図2】第一パターンである一対の導体が1回のみの折り曲げを各々有するアンテナの構成を示す図である。
【図3】本発明を実施するRFIDタグアンテナの構造の第一の例を示す図である。
【図4】本発明を実施するRFIDタグアンテナの構造の第二の例を示す図である。
【図5】図3若しくは図4に示したアンテナの給電点にICチップを接続したときの等価回路を示す図である。
【図6】本発明を実施するRFIDタグアンテナの構造の第三の例を示す図である。
【図7】本発明を実施するRFIDタグアンテナの構造の第四の例を示す図である。
【図8】本発明を実施するRFIDタグアンテナの作製方法の第一の例を説明する図である。
【図9】本発明を実施するRFIDタグアンテナの作製方法の第二の例を説明する図である。
【図10】RFIDアンテナの給電点にICチップを接続したときの等価回路を示す図である。
【図11】インダクタンス部を並列接続した折り返しダイポールアンテナの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態においては、前述した折り返しダイポールアンテナよりも長辺の長さが短く、物品への貼り付け面の面積をクレジットカード(横約86mm×縦54mm)以下とすることもできる、カード状のRFIDタグに使用可能なアンテナ(RFIDタグアンテナ)を提供する。
【0022】
なお、以下の説明においては、Cc=0.58pFとRc=1200Ωとの並列回路により等価回路が表されるICチップと接続する、周波数953MHzの信号を使用するRFIDタグ用のアンテナを考える。このときには、アンテナのインダクタンス成分Laを48nH程度とすることにより、前掲した[数1]式が成立することになる。
【0023】
なお、以下の説明は、市販の電磁界シミュレータを用いて行われたシミュレーションに基づいて算出した結果を示す。
【0024】
まず、図1に示すようなアンテナを検討する。
図1において、第一パターン1は、縦46mm×横76mmのカードの外周形状に沿って2回の折り曲げ部を持つU字形状の一対の導体からなる。なお、ICチップは、その一対の導体の各々における片方の端部である、給電点4に配置される。
【0025】
また、第二パターン2は、厚さ3.5mmの誘電体3を挟んで第一パターン1に対向して配置されており、その形状は第一パターン1に沿って配置されている。なお、誘電体3の比誘電率εrは3.0とした。
【0026】
このアンテナのインダクタンス成分を算出するとLa=48.0nHとなり(全長が1/2波長よりも長いために、インダクタンス成分を持つ)、従ってこのアンテナとICチッブとの共振周波数は、前掲した[数1]式より、f=953MHzとすることができる。しかしながら、アンテナの利得の算出結果は−11.9dBiとなってしまい、大きな損失が生じてしまう。これは、折り曲げ部が一方の導体当たりで2回もあり、しかも内側に沿う方向に曲げられているため、電磁波が放射し難いことが原因として考えられる。
【0027】
そこで、第一パターン1の折り曲げの回数を減らし、図2に示すように、一対の導体の各々の形状を、直角の折り曲げを1回ずつにしたL字形状とする。すると、アンテナの利得の算出結果は1.71dBiとなる。ところが、このアンテナのインダクタンス成分を算出するとLa=7.5nHとなり、RFIDタグ用のアンテナとしてはインダクタンス成分が小さく、所望の周波数で共振させることができない。
【0028】
そこで、図3に示すようにして、第一パターン1の給電点4間にC(容量)結合部5を接続する。このC結合部5は、第一パターン1を形成している一対の導体を図2における給電点4から平行に伸ばしたものである。なお、図3においては、給電点4の位置をその平行導体の端部にまで移動させているが、C結合部5は給電点4に対して並列に挿入すればよいので、図4に示すように、給電点4を図2の位置のまま移動させなくてもよい。
【0029】
図3若しくは図4に示したアンテナの給電点4にICチップを接続したときの等価回路を図5に示す。この図5の等価回路は、C結合部5がない状態におけるアンテナ(すなわち図2に示したアンテナ)のインダクタンス成分La2に、C結合部5のキャパシタンス成分Ca2が並列に加わった形となっている。
【0030】
この図5におけるインダクタンス成分La2の値の算出結果は、前述したように7.5nHであるので、La=47.9nHに相当するインダクタンス成分を図3若しくは図4に持たせるためには、
【0031】
【数2】
なる式が成立するように、C結合部5のキャパシタンス成分Ca2を設定すればよい。
【0032】
なお、このときのアンテナ放射抵抗RaはRa=1000〜1500Ω程度になる。また、アンテナの利得の算出結果は1.35dBiとなり、実用上十分な利得が得られる。
【0033】
以上のように、図3において、例えば図1に示したものと同一の寸法、すなわち、1回のみの折り曲げ部分を各々有している一対の導体からなり、当該一対の導体の各々における一方の端部が給電点4である第一パターン1と、縦46mm、横76mm、厚さ3.5mm、であって比誘電率εr=3.0である誘電体3と、誘電体3を挟んで第一パターン1に対向して配置される第二パターン2を設け、C結合部5を給電点4に形成して並列に接続してアンテナを構成することにより、ICチップとの共振に必要なインダクタンス成分をアンテナに持たせることができ、且つ、C結合部5がない場合と同等の利得をアンテナに持たせる保つことができる。
【0034】
なお、図3や図4においては、第二パターン2を、第一パターン1に沿った形状としている。第二パターン2は、タグを金属面に貼り付けたとき等におけるアンテナ特性の変動を少なくするためのものであるが、ここで、第二パターン2の代わりに、誘電体3の面を導体でベタ塗りの状態とすると、アンテナの利得の算出結果は−5.9dBiとなり、大幅に低下してしまう。そこで、第二パターン2を第一パターン1に沿った形状とする、例えば第一パターンと同一形状とすることにより、実用的なアンテナの利得を確保しつつ、金属面に貼り付けたとき等におけるアンテナ特性の変動を軽減することができる。
【0035】
なお、第一パターン1及び第二パターン2は、例えば、誘電体2の上下に蒸着等により形成しておいた金属面(例えば、銅、銀、アルミニウムなど)をエッチング等で所望の形状に加工することで作製することができる。
【0036】
また、誘電体3としては、安価で加工が容易で柔軟性を持つものが好適であり、具体的には、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂やエポキシ樹脂などが好ましい。
【0037】
また、C結合部5の構成として、図3や図4のように平行導体を配置するのみで低廉に構成する代わりに、例えば図6に示すように、図3においてC結合部5を形成していた平行導体を挟んで誘電体3に対向する位置に、例えば比誘電率εr=5の第二誘電体6を配置して構成するようにしてもよい。この構成によれば、C結合部5で必要とされる静電容量を確保しつつ平行導体の全長を短くすることができる。すると、アンテナ形状が図2に示したものへと近くなるので、それだけアンテナの利得を向上させることができる。
【0038】
なお、図6に示すように第二誘電体6を配置する代わりに、図7に示すように、誘電体3よりも比誘電率の高い第二誘電体6を、図3においてC結合部5を形成していた平行導体と接触する誘電体3の部分に配置する(誘電体3に埋め込む)ようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、以上までに説明したアンテナは、例えば、図8に示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)、紙、あるいはフィルムを材料とするシート上に、導体である第一パターン1及び第二パターン2をそれぞれ形成しておき、これらの2枚のシート7と誘電体3のシートという3枚構成によりアンテナとして形成することもできる。この場合には、例えば、接着剤を使用してこれらのシート7及び誘電体3を貼り合わせてアンテナを作製するようにしてもよく、また、図9に示すように、これらのシート7及び誘電体3を真空ラミネート8で封入して一体化させる加工によってアンテナを作製するようにしてもよい。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 第一パターン
2 第二パターン
3 誘電体
4 給電点
5 C結合部
6 第二誘電体
7 シート
8 真空ラミネート
100 折り返しダイポールアンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ部分を各々有している一対の導体からなり、当該一対の導体の各々における片方の端部が給電点である第一の素子と、
前記給電点間に形成される容量結合部と、
誘電体を挟んで前記第一の素子に対向して配置される導体である第二の素子と、
を有することを特徴とするRFIDタグアンテナ。
【請求項2】
前記折り曲げ部分の折り曲げ角度が直角であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグアンテナ。
【請求項3】
前記第二の素子が、前記第一の素子の形状に沿った形状とされていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグアンテナ。
【請求項4】
前記容量結合部は、前記第一の素子の給電点に形成されている平行導体であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグアンテナ。
【請求項1】
折り曲げ部分を各々有している一対の導体からなり、当該一対の導体の各々における片方の端部が給電点である第一の素子と、
前記給電点間に形成される容量結合部と、
誘電体を挟んで前記第一の素子に対向して配置される導体である第二の素子と、
を有することを特徴とするRFIDタグアンテナ。
【請求項2】
前記折り曲げ部分の折り曲げ角度が直角であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグアンテナ。
【請求項3】
前記第二の素子が、前記第一の素子の形状に沿った形状とされていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグアンテナ。
【請求項4】
前記容量結合部は、前記第一の素子の給電点に形成されている平行導体であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグアンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−103703(P2011−103703A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33668(P2011−33668)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2007−521045(P2007−521045)の分割
【原出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2007−521045(P2007−521045)の分割
【原出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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