説明

RFIDタグ実装機構、搬送装置及び搬送システム

【課題】コストを低く抑えつつ、RFIDタグを搭載した台車が移動する方向によってRFIDタグの読み取り精度が低下することを防止することのできる技術を提供する。
【解決手段】RFIDリーダライタとの間でデータを送受信するRFIDタグ2を台車1に実装させるためのRFIDタグ実装機構において、収納ポケット3は、RFIDタグ2を挟持する。台車1の搬送方向によらずにRFIDタグ2とRFIDリーダライタのアンテナ10との距離を所定の範囲に保ちつつ、RFIDタグ2の読み取り精度の高い面がアンテナ10と対向する向きで収納ポケット3が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を搬送するための搬送装置にRFID(Radio Frequency IDentification)タグを実装する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
部品・製品の組立ラインや試験ラインにおいては、組み立てや試験の対象物である部品・製品をパレットあるいは台車に搭載し、部品や製品を搬送しながらの製造あるいは試験の実施が広く一般的に行われている。パレットや台車等の搬送装置を用いて搬送しながら部品の組み立てや製品の試験を行う場合、製品の識別のため、あるいは組み立てや試験等の各工程の進捗状況を把握するために、製品や搬送装置にバーコードを貼り付け、そのバーコードをリーダで読み取ることにより必要な情報を収集することが広く行われている。バーコードから情報を読み取るためには、作業者による読み取りの動作や、あるいはバーコードとリーダとの位置関係を固定させておく必要がある等の制約がある。
【0003】
ところで、RFIDタグは、バーコードと比べ、保有させることのできる情報量が多く、更にはデータを保存させることもできる。このため、最近では、RFIDタグを組立や試験の工程に活用する方法が浸透しつつある。
【0004】
RFIDタグを組立工程や試験工程に活用する場合、従来では、製品や搬送用のパレットや台車等の搬送装置にRFIDタグを取り付ける。そして、組立ラインや試験ラインに沿って配置されたRFIDリーダライタのアンテナを用いて、RFIDタグから必要な情報の読み出しあるいは書き込みを行う。
【0005】
図8及び図9は、従来におけるRFIDタグの搬送装置への取り付け方法を示す図である。図8は、従来における搬送用パレットへのRFIDタグの実装方法の例を示す図である。部品や製品等の被搬送物103を搭載するための搬送用のパレット100の天面あるいは側面にRFIDタグ104を貼付する。RFIDタグ104の貼付場所は、リーダライタのアンテナとの位置関係により決定される。すなわち、通信の距離及び指向性を考慮に入れて、通信距離の範囲内でRFIDタグの読み取り精度の高い面がアンテナと対向するように配置される。
【0006】
従来の搬送用の台車にRFIDタグを取り付ける方法としては、所定の場所に貼付する方法や、被搬送物が台車の天面の面積に対して大きい場合においては、搬送装置にRFIDタグを収納させるための専用のポケットを設けてそのポケットにRFIDタグを格納する方法が用いられてきた。
【0007】
図9は、従来における搬送用の台車へのRFIDタグの実装方法の例を示す図である。被搬送物103を搭載した台車110は、不図示の搬送レール上を移動する。リーダライタのアンテナ101は、台車110に対して図中手前方向に配置されている。
【0008】
図9に示すように、部品・製品にテープ等で直接貼付したRFIDタグ104Aや台車110に取り付けた収納ポケット105に格納したRFIDタグ104Bは、リーダライタのアンテナ101と通信可能な距離や位置を考慮して取り付ける必要がある。
【0009】
すなわち、被搬送物103に直接貼付する場合及び台車に取り付けた収納ポケット105に収納する場合のいずれにおいても、タグ104A、104Bをアンテナ101との通信距離の範囲内に配置する必要がある。このため、台車101の搬送方向によっては、R
FIDタグを取り付けた側が必ずしもアンテナ101に最も近くなるとは限らず、RFIDタグの読み取り精度の高い面がアンテナと対向しない向きを向く場合や、RFIDタグの取り付け位置が通信距離よりも遠くなり、RFIDタグの読み取り精度に影響する場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来においては上記のような台車へのRFIDタグの取り付け方法を採用していたため、組立・試験ラインでRFIDタグを用いて生産管理や品質管理を行う場合、台車の搬送方向がRFIDタグの取り付けにより限定されることとなっていた。すなわち、通信距離及び指向性の条件を満たす位置にリーダライタのアンテナ及びRFIDタグを装備するために、RFIDタグを取り付けた側にアンテナを配設することとして台車の搬送方向を限定するか、あるいは台車の搬送方向に制限をなくすために、台車に対して各方向にアンテナ配置することとする必要があった。
【0011】
RFIDタグを用いた生産管理や品質管理は今後ますます普及していくことが見込まれる。特にUHF(Ultra High Frequency)帯RFIDでは通信距離は数メートルのオーダーであり、更に長距離化させることが可能であるため、タグとリーダライタのアンテナとの位置関係に関し、より自由度を高めて製品の製造ラインや試験ラインにRFIDシステムを導入することができる。その際に、搬送装置の搬送方向に対する制限やアンテナの増設の必要なく、RFIDシステムを導入可能であることが好ましい。
【0012】
本発明は、コストを低く抑えつつ、RFIDタグを搭載した搬送装置が移動する方向によってRFIDタグの読み取り精度が低下することを防止することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様として、RFIDリーダライタとの間でデータを送受信するRFIDタグを、搬送装置に実装させるためのRFIDタグ実装機構であって、前記RFIDタグを挟持する挟持手段と、前記搬送装置の搬送方向によらずに前記RFIDタグと前記RFIDリーダライタのアンテナとの距離を所定の範囲に保ちつつ、該RFIDタグの読み取り精度の高い面が該アンテナと対向する向きで前記挟持手段を保持する保持手段とを備えたRFIDタグ実装機構が提供される。
【0014】
搬送装置を回転させて搬送方向を変えた場合であっても、RFIDタグを挟持する挟持手段は、RFIDタグとRFIDリーダライタのアンテナとの距離が変化しないようにRFIDタグを保持している。このため、搬送装置の搬送方向の変化によりRFIDタグの読み取り精度の低下を防止することができる。
【0015】
更には、前記保持手段は、前記搬送装置の搬送方向を180°変えた場合に、該搬送方向の変更の前後で前記アンテナとの距離が等しくなる位置で前記挟持手段を固定することとしてもよい。搬送装置の搬送方向を180°変えた場合であっても、リーダライタのアンテナとRFIDタグの読み取り精度の高い面との距離が保たれ、これにより、読み取り精度の低下を防止する。
【0016】
あるいは、前記保持手段は、前記搬送装置の搬送方向を変えた場合に、該搬送方向の変更に応じて前記挟持手段を回転させる回転部材から構成されることとしてもよい。更には、前記回転部材の外側から内側に向けて突出する突起部材と、前記回転部材の外側に設けられ、前記突起部材を付勢する弾性部材とを更に備え、前記回転部材により前記挟持手段が回転するときは、前記突起部材は前記弾性部材に力を加えて該回転部材の外側に退避し
、該挟持手段が通過すると、該弾性部材の弾性力にしたがって元の位置に戻る構成としてもよい。
【0017】
あるいは、前記搬送装置から延出した柱部材と、前記柱部材に取り付けられ、前記搬送装置の移動方向を向く車輪部材と、を更に備え、前記保持手段は、前記柱部材から構成され、該柱部材は、前記車輪部材の向きに応じて回転することとしてもよい。
【0018】
前記保持手段は、底面と平行に設けられた前記リーダライタのアンテナに対して前記RFIDタグの読み取り精度の高い面が平行となるように、前記挟持手段を保持することとしてもよい。
【0019】
本発明は、上記のRFIDタグ実装機構に限定されず、上記のRFIDタグ実装機構を備えた搬送装置、搬送システム等に適用が可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、RFIDタグを搭載した搬送装置の搬送方向を変えた場合であっても、RFIDタグの読み取り精度が低下しないため、低コストで安定したRFIDタグの読み出し/書き込み処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る搬送システムの構成図である。図1の搬送システムは、被搬送物を搭載して搬送するための台車1及びリーダライタのアンテナ10を含んで構成される。
【0022】
台車1は、部品や製品等の被搬送物を搭載して搬送するための搬送装置である。図1の台車1は、4本の脚にキャスター42が取り付けられており、製品の組み立て等の製造工程や試験工程にしたがって、搬送路上を移動する。リーダライタのアンテナ10は、組立ラインや試験ライン等の台車1の搬送路に沿って配置されており、不図示のリーダライタが、RFIDタグ2へのデータ書き込み処理及びデータの読み出し処理を、作業の進捗等に応じて実行する。
【0023】
図1に示す搬送システムにおいては、アンテナ10は台車1の進行方向から見て左手方向に、RFIDタグ2がアンテナ10の前を通過するときに通信距離の範囲内に入るように配置されている。これは、一般的に、リーダライタのアンテナ10は、台車1の搬送路に沿って台車1の移動を妨げない位置、すなわち、製造や試験の工程の途中で、RFIDタグ1とアンテナ10とのデータ送受信のために台車1の向きを変える必要がない位置に設置されることによる。
【0024】
なお、台車1の搬送路については図1においては示されていないが、例えば底面にレール等が配設されており、製造工程や試験工程においては、搬送用のレールに沿って台車1を移動させることにより、所望の位置で組み立て作業や試験作業を行う。
【0025】
RFIDタグ2は、台車1に取り付けられた収納ポケット(以下ポケットと略記)3に格納され、組立や試験等の各工程を管理するための台車1上の被搬送物に関わる各種データを保有している。そして、台車1の搬送路上に設けられたリーダライタのアンテナ10の前を通過するタイミングで、台車1に搭載された被搬送物や作業工程に関わるデータをリーダライタとの間で送受信する。
【0026】
天板43の被搬送物の載置面の側には、RFIDタグ2の挿入口として、天板43を貫
通するスリット部41が設けられている。天板43の被搬送物の載置面とは逆側、すなわち底面と対向する側には、ポケット3が天板43に固定されている。ポケット3は、その開口部がスリット部41と連結するように取り付けられている。RFIDタグ2は、スリット部41を通ってポケット3の開口部からポケット3に落とし込まれ、ポケット3の底部で挟持される。
【0027】
スリット部41は、RFIDタグ2の読み取り精度の高い面が天板43に略垂直となる角度で挿入できる程度のスリット幅を有し、ポケット3は、天板43のスリット部41の幅に合わせて、RFIDタグ2を挟持できる程度の厚みを有している。これにより、スリット部41から挿入されたRFIDタグ2は、天板上面から底面に向けて挿入された向きのまま落下し、そのままの向きでポケット3の底部に固定される。
【0028】
図2A及び図2Bは、第1の実施形態に係る台車1の構成図である。図2Aは、本実施形態に係る搬送システムの側面図であり、図2Bは、同搬送システムの上面図である。
図1を参照して説明したように、RFIDタグ2は、その読み取り精度の高い面が台車1の天板43に対して略垂直な向きのままポケット3に保持される。そして、図2Aに示すように、台車1に設けられたポケット3及びスリット部41は、台車1の向きを180°回転させてもアンテナ10からの距離が略一定の距離となる位置に配置される。ここで、「台車1の回転」とは、キャスター42により台車1を天板43の中心に関して回転させることを言うものとし、以下の説明においても同様とする。
【0029】
一般的な台車1の天板43は、図2Bに示すように上面から見ると矩形の形状である。天板43が矩形の形状を備える場合は、天板43の4辺のうち進行方向と平行な2辺の中央に、RFIDタグ2の読み取り精度の高い面がアンテナ10と対向する向きで保持されるようにスリット部41及びポケット3を設けることで、台車1を180°回転させてもアンテナ10とRFIDタグ2との距離を略一定に保つことができる。
【0030】
台車1を180°回転させる前後においては、ポケット3に保持されているRFIDタグ2は、回転前にアンテナ10と対向していた面の裏側の面がアンテナ10と面することとなる。回転の前後でRFIDタグ2のアンテナ10と向かい合う面は逆向きになるが、読み取り精度への影響は、他の面がアンテナ10と対向する場合と比較して極めて小さい。このため、本実施形態に係る台車1によれば、読み取り精度を低下させることなく、2方向について自由に搬送可能とすることができる。
【0031】
以上説明したように、第1の実施形態に係る台車1によれば、180°回転させた場合であっても読み取り精度を低下させることなくRFIDタグ2と搬送路の側面に設けられたアンテナ10との安定したデータの読み書きが可能となる。これにより、搬送システムにRFIDシステムを導入する際に、製造ラインや試験ラインの構成に応じて、読み取り精度に影響を及ぼさずに搬送路の左右いずれの側であっても自由にアンテナ10を配置することが可能となる。また、搬送ライン上に台車1を配置する際に、台車1(RFIDタグ1)の向きを考慮することが不要となる。
【0032】
すなわち、本実施形態に係る台車1によれば、RFIDタグ2の読み取り精度を低下させることなく台車1の自由度を2方向に高めることができるため、コストを抑制しつつ、より自由に製造ラインや試験ラインを設計することが可能となる。アンテナを増設しようとすればコストの増加につながり、また、設置するアンテナの数を増やすことによりアンテナ間の干渉を防止するためにアンテナ設置位置等の各種の調整をするためにより多くの工数を要することとなるが、アンテナ10を搬送路の左右両側に設けることを不要としつつRFIDタグ2の読み取り精度を低下させずに台車1を2方向について自由に利用できるため、組立ラインや試験ラインにRFIDタグシステムを導入し易くすることができる

【0033】
次に、図3Aから図5を参照して第2の実施形態に係る搬送システムについて説明する。
図3A及び図3Bは、第2の実施形態に係る台車1の構成図である。第1の実施形態に係る台車1は、ポケット3が天板43に固定されており2方向について自由度を有する構成であるのに対し、本実施形態に係る台車1は、ポケット3が90°ごとに回転自由に天板43に取り付けられており、4方向について自由度を有する構成である点で異なる。他の構成については上記の実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略し、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとする。
【0034】
図3Aは、第2の実施形態に係る台車1の天板43を底面側から見た図である。ポケット3は、天板43の底面側に設けられた回転台44に回転自在に取り付けられている。ポケット3の両端は、回転台44に内接しており、回転台44の縁部に設けられたロック機構5により回転台44の所定の位置に固定される。
【0035】
ロック機構5は、本実施形態においては回転台44に等間隔に4箇所設けられ、回転台44の中心に関して互いに対向する対のロック機構(図3Aの例ではロック機構5Aと5C、あるいはロック機構5Bと5D)でポケット3を固定させる。図3Aではロック機構5A、5Cが対となって図3Aの横方向にポケット3を固定し、ロック機構5B、5Dが対となって図の縦方向にポケット3を固定する。
【0036】
図3Bは、対のロック機構5A、5Cによりポケット3を固定している台車1を側面から見た図である。ロック機構5A、5Cによりポケット3の両端を固定されているので、アンテナ10を図3Bの紙面手前方向あるいは奥手方向のいずれに設けても、ポケット3に挟持されているRFIDタグ2のデータの読み書きの精度は安定する。
【0037】
図4は、ロック機構5の構成の一例を示す図である。ロック機構5は、それぞれ1対の突起部材6、7及び弾性部材8、9から構成される。突起部材6と弾性部材8とで1組の固定部材を形成し、突起部材7と弾性部材9とで1組の固定部材を形成する。それぞれの固定部材の構成・作用については同様であるので、ここでは突起部材6と弾性部材8の組について説明する。
【0038】
突起部材6は、回転台44の縁部に設けられ、回転台44の内側に向けて突出している。弾性部材8は、回転台44の外側に設けられており、ばね等の弾性体からなる。突起部材6は弾性部材8により付勢されており、ポケット3から力を受けると、突起部材6は回転台44の外側に退避する。
【0039】
ポケット3は回転台44の縁部と接しているため、例えばポケット3に時計周り方向の力が加えられると、突起部材6は回転台44の外側に退避することによりポケット3は時計回りに回転する。ポケット3が通過した後、回転台44の外側に退避していた突起部材6は、弾性部材8から受ける弾性力により元の位置に戻る。
【0040】
突起部材7と弾性部材9の組についても同様に、ポケット3に反時計回りの力が加えられると、突起部材7は回転台44の外側に退避し、ポケット3が反時計回りに回転する。退避している突起部材7は、弾性部材9により回転台44の半径方向内向きの弾性力を受けており、ポケット3の通過後、元の位置に戻る。
【0041】
ポケット3は、ロック機構5により回転台44上に固定されているが、外部から力を受けると突起部材7、8が退避することによりその固定が解除され、時計回りあるいは反時
計回りに回転を開始する。回転を開始したポケット3が隣接するロック機構5に接触すると、上記のロック解除の場合と同様に突起部材は回転台44の外側に退避し、ポケット3は突起部材6、7の間で再度固定される。ロック機構5は回転台44に4箇所設けられており、ポケット3は、90°回転するごとに図4に示すロック機構5により固定されることとなる。
【0042】
なお、図3A及び図3Bにおいては、ポケット3の両端が回転台44と内接し、その両端が図4に示すロック機構5により固定される構成について示しているが、これにはこれに限らない。例えば、ポケットの一端は回転台44の中心軸に固定されており、他端のみがロック機構5により固定される構成であってもよい。
【0043】
図5は、第2の実施形態に係る台車1に保持されているRFIDタグ2が、台車1の移動に伴い回転する動作を説明する図である。ここでは、台車1は搬送レール11に沿って図の右方向に移動するものとする。なお図5においては台車の図中下側のキャスター42の通過するレールのみを記載しており、図中上側のキャスター42の通過するレールについては記載を省略している。
【0044】
台車1の移動する経路上には、回転ポール12が底面から台車1のポケット3を一定の方向に押すために設けられている。ここで、図5の(1)は回転前、(2)は回転ポール12により回転が開始するタイミング、(3)は回転後の台車1の状態をそれぞれ示す。
【0045】
(1)に示すように、ポケット3が回転ポール12と接触する前は、ポケット3に保持されたRFIDタグ2の読み取り精度の高い面は、アンテナ10と対向していないものとする。台車1が搬送レール12により搬送路を図の右方向に移動してくると、(2)に示すように、台車1に取り付けられたポケット3と底面から垂直方向に突出した回転ポール12とが接触する。
【0046】
ポケット3が回転ポール12から力を受けると、ロック機構5B、5Dが解除されてポケット3は時計周りに回転を始める。ポケット3は、ロック機構5A、5Cで再度固定される。(3)に示すように、ポケット3はアンテナ10と平行になる位置で固定され、ポケット3に挟持されているRFIDタグ2もまたアンテナ10と平行な状態でリーダライタとの間で読み出し・書き込み処理が実行される。
【0047】
以上図3Aから図5を参照して説明したように、ポケット3は回転ポール12に接触すると回転台44上を回転するが、90°回転するごとにロック機構5により固定される。これにより、ポケット3に格納されているRFIDタグ2もまた、90°回転するごとに固定される。台車1の天板43の形状に応じてロック機構5を設けることで、ポケット3に保持されるRFIDタグ2を所望の向きで固定させることができる。
【0048】
図6A及び図6Bは、第3の実施形態に係る台車1の構成図である。図6Aは台車1の側面図であり、図6Bは台車1の断面図である。本実施形態に係る台車1のポケット3は、回転台に取り付けられており、全360度自由に回転可能である。図6A及び図6Bにおいては搬送システムのうち台車1のみについて示し、アンテナ10等の他の構成、及び台車1の構成のうち上記実施形態と同様の構成については、上記の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0049】
図6Aに示すように、本実施形態に係る台車1は、柱部材21を備える。柱部材21の一端は、天板43の底面と対向する側の面の中央部付近に取り付けられている。そして、柱部材21の他端にはキャスター22が取り付けられ、キャスター22は底面と接している。キャスター22は、その車輪の中心からずれた位置に軸を有し、台車1の搬送方向を
向く性質を備える。柱部材21は、キャスター22の向きに応じて回転する。なお、キャスター22は、柱部材21に台車1の移動方向を伝えることを目的としており、台車1を移動させるための台車1の脚部のキャスター42とはその目的を異にする。
【0050】
ポケット3は、少なくともその一辺が柱部材21に取り付けられており、キャスター22により柱部材21が回転すると、これに伴いポケット3も回転する。上記の実施形態に係るポケットと同様に、天板43を貫通するスリット部41からRFIDタグ2を挿入してポケット3にRFIDタグ2を保持させることとしてもよい。あるいは、ポケット3の取り付け位置が天板43と接していない場合は、ポケット3に直接RFIDタグ2を格納する方法でもよい。
【0051】
図6Bは、台車1の上面図であり、図6A中の二点鎖線ABにおける台車1の断面図である。ここで、台車1は図の右方向に移動を開始すると仮定する。台車1が右方向に移動を開始すると、キャスター22は台車1の移動方向にしたがって向きを右向きに変える。
【0052】
キャスター22が移動方向にその向きを変えることに伴って柱部材21が回転し、柱部材21の回転に伴って柱部材21に取り付けられたポケット3も回転する。こうして、ポケット3に保持されているRFIDタグ2は、台車1をアンテナ10と平行な向きに移動させることで、リーダライタのアンテナ10と対向する向きにその向きを変える。
【0053】
以上説明したように、第3の実施形態に係る搬送システムによれば、進行方向を向くキャスター22が台車1の天板43下中央付近に設けられた柱部材21に取り付けられ、台車1の移動方向をキャスター22が向くため、キャスター22の取り付けられている柱部材21及び柱部材21に取り付けられたポケット3の向きが台車1の移動に応じて変わることとなる。台車1がリーダライタのアンテナ10に近づいたときは、アンテナ10とポケット3に保持されたRFIDタグ2の読み取り精度の高い面とが対向するように台車1をアンテナ10と平行に移動させることで、読み取り精度を低下させずに、360°の全方向について、台車1の向きによらずに自由な搬送ができる。
【0054】
一般的には天板43の被搬送物を載置する面の形状は矩形であるので、天板43の載置面の中心とアンテナとの距離が通信距離の範囲内であれば、タグの読み取り精度に台車1の向きによる偏りのない搬送システムを実現することができる。
【0055】
以上、台車1が移動する際にその搬送方向の側面にアンテナ10が設置されている場合の台車1へのRFIDタグ2の実装方法について説明した。次に、アンテナが底面に設置されている場合であっても、RFIDタグ2の読み取り精度の低下を防止しつつ、且つ搬送方向の自由度に制限を加えずに台車1を用いることのできる搬送システムについて説明する。
【0056】
図7A及び図7Bは、第4の実施形態に係る台車1の構成図である。図7Aは台車1の側面図であり、図7BはRFIDタグ2のホルダーを示す図である。上記の実施形態に係る搬送システムにおいては、リーダライタのアンテナ10は搬送方向の側面に配置されていたのに対し、本実施形態に係る搬送システムにおいては、リーダライタのアンテナ30は底面上の台車1の搬送路に設けられている点で異なる。
【0057】
具体的には、アンテナ30は、台車1を搬送するために設けられた1対のレールの間に設置される。図7Aは、搬送レール上を移動してきた台車1がアンテナ30の上に位置したときの状態を示す。
【0058】
台車1は、底面と平行に読み取り精度の高い面を保持するためのシュータ機構31を備
える。シュータ31は、図7Aに示す例では挿入部32を備え、挿入部32からRFIDタグ2を挿入すると、シュータ機構31によりRFIDタグ2は、その読み取り精度の高い面が床面と平行になるように、天板43下のホルダーに保持される。
【0059】
リーダライタのアンテナ30が底面に設置され、RFIDタグ2は台車1に設置されたタグのホルダーにその読み取り精度の高い面が底面と平行に保持されることで、台車1の搬送方向によらずに一定の読み取り精度が維持される。
【0060】
更には、図7Bに示すように、シュータ31の先端はRFIDタグ2を保持するためのホルダーを形成している。天板43に部品や製品等の被搬送物を載置して組み立てや試験を行っている間はRFIDタグ2を保持したままであるが、作業の開始前や終了後には、RFIDタグ2をホルダーから取り出す必要がある。取り出し作業の簡便化のため、本実施形態においては、ホルダーは、例えば切り欠き部33、34を備えた構成とする。ホルダーの先端に切り欠き部33、34を備えることにより、作業者は、容易にRFIDタグ2を取り出すことができる。
【0061】
このように、底面にアンテナ30を設置する場合であっても、搬送レールの間にリーダライタのアンテナ30を設置し、底面すなわちアンテナ30とRFIDタグ2の読み取り精度の高い面が平行に台車1に保持されることで、上記の実施形態と同様に、読み取り精度の低下を防止しつつ、台車1の向きを考慮せずに被搬送物の搬送が行える。
【0062】
なお、上記の説明においては、タグを台車1の天板43下に保持する構成としているが、これに限らない。例えば台車1の天板43より高い場所にRFIDタグ2を保持する構成としてもよい。RFIDタグ2を保持する高さ等は、リーダライタのアンテナの設置可能な位置等、RFIDシステムの構成に応じて適宜変更が可能である。
【0063】
また、上記においては搬送装置の一例として台車について説明しているが、当然にこれに限定されるものではない。台車以外についても、RFIDタグを保持して搬送路上を移動する搬送装置全般に上記の各実施形態を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施形態に係る搬送システムの構成図である。
【図2A】第1の実施形態に係る台車の構成図であり、本実施形態に係る搬送システムの側面図である。
【図2B】第1の実施形態に係る台車の構成図であり、同搬送システムの上面図である。
【図3A】第2の実施形態に係る台車の構成図であり、台車1の天板43を底面側から見た図である。
【図3B】第2の実施形態に係る台車の構成図であり、台車1を側面から見た図である。
【図4】ロック機構の構成の一例を示す図である。
【図5】RFIDタグが第2の実施形態に係る台車の移動に伴い回転する動作を説明する図である。
【図6A】第3の実施形態に係る台車の構成図であり、台車1の側面図である。
【図6B】第3の実施形態に係る台車の構成図であり、台車1の断面図である。
【図7A】第4の実施形態に係る台車の構成図であり、台車1の側面図である。
【図7B】第4の実施形態に係る台車の構成図であり、RFIDタグ2のホルダーを示す図である。
【図8】従来における搬送用パレットへのRFIDタグの実装方法の例を示す図である。
【図9】従来における搬送用の台車へのRFIDタグの実装方法の例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 台車
2 RFIDタグ
3 収納ポケット
5、5A〜5D ロック機構
6、7 突起部材
8、9 弾性部材
10 アンテナ
11 搬送レール
12 回転ポール
21 柱部材
22 キャスター
41 スリット部
42 キャスター
43 天板
44 回転台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDリーダライタとの間でデータを送受信するRFIDタグを、搬送装置に実装させるためのRFIDタグ実装機構であって、
前記RFIDタグを挟持する挟持手段と、
前記搬送装置の搬送方向によらずに前記RFIDタグと前記RFIDリーダライタのアンテナとの距離を所定の範囲に保ちつつ、該RFIDタグの読み取り精度の高い面が該アンテナと対向する向きで前記挟持手段を保持する保持手段と
を備えたことを特徴とするRFIDタグ実装機構。
【請求項2】
前記保持手段は、前記搬送装置の搬送方向を180°変えた場合に、該搬送方向の変更の前後で前記アンテナとの距離が等しくなる位置で前記挟持手段を固定する
ことを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ実装機構。
【請求項3】
前記保持手段は、前記搬送装置の搬送方向を変えた場合に、該搬送方向の変更に応じて前記挟持手段を回転させる回転部材から構成される
ことを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ実装機構。
【請求項4】
前記回転部材の外側から内側に向けて突出する突起部材と、
前記回転部材の外側に設けられ、前記突起部材を付勢する弾性部材と
を更に備え、
前記回転部材により前記挟持手段が回転するときは、前記突起部材は前記弾性部材に力を加えて該回転部材の外側に退避し、該挟持手段が通過すると、該弾性部材の弾性力にしたがって元の位置に戻る
ことを特徴とする請求項3記載のRFIDタグ実装機構。
【請求項5】
前記搬送装置から延出した柱部材と、
前記柱部材に取り付けられ、前記搬送装置の移動方向を向く車輪部材と、
を更に備え、
前記保持手段は、前記柱部材から構成され、該柱部材は、前記車輪部材の向きに応じて回転する
ことを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ実装機構。
【請求項6】
前記保持手段は、底面と平行に設けられた前記リーダライタのアンテナに対して前記RFIDタグの読み取り精度の高い面が平行となるように、前記挟持手段を保持する
ことを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ実装機構。
【請求項7】
RFIDリーダライタとの間でデータを送受信するRFIDタグを搭載した、搬送装置であって、
被搬送物を載置する載置手段と、
前記載置手段を搬送レールに沿って移動させるための移動手段と、
前記RFIDタグを挟持する挟持手段と、
前記搬送装置の搬送方向によらずに前記RFIDタグと前記RFIDリーダライタのアンテナとの距離を所定の範囲に保ちつつ、該RFIDタグの読み取り精度の高い面が該アンテナと対向する向きで前記挟持手段を保持する保持手段と
を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
RFIDリーダライタとの間でデータを送受信するRFIDタグを用いた、搬送システムであって、
前記RFIDタグを搭載し、被搬送物を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置を搬送するための搬送レールと、
前記RFIDタグと通信を行うRFIDリーダライタと、
を備え、
前記搬送装置は、
被搬送物を載置する載置手段と、
前記載置手段を搬送レールに沿って移動させるための移動手段と、
前記RFIDタグを挟持する挟持手段と、
前記搬送装置の搬送方向によらずに前記RFIDタグと前記RFIDリーダライタのアンテナとの距離を所定の範囲に保ちつつ、該RFIDタグの読み取り精度の高い面が該アンテナと対向する向きで前記挟持手段を保持する保持手段と
を備えたことを特徴とする搬送システム。

【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図1】
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【図5】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−162780(P2008−162780A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356117(P2006−356117)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】