説明

RFIDトランスポンダの使用変更

トランスポンダが取り付けられた第1の物体からこれを外すと、所定の導体部分がトランスポンダから除去されるRFIDトランスポンダが開示されている。このトランスポンダは、所定の部分の除去前は、適用されるRFに対して第1の応答を、また除去後は第2の応答を有する。RF検出器を使用して、トランスポンダを有する物体をスキャンして第1もしくは第2の応答を検出し、これによって、トランスポンダが除去されていると判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【詳細な説明】
【0001】
本願は、西暦2003年7月10日に出願された米国仮出願第60/486,140号の優先権を享受する。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、RFID(無線周波識別)トランスポンダが取り付けられている物体からこれを外すと、導体もしくは導体材料の一部を機械的に除去することによって、トランスポンダの電気性能(すなわち、共振周波数、インピーダンス特性、Q値)に影響を及ぼす方法を記載する。
【背景技術】
【0003】
貸出し図書館などの組織体は、自己の利用者に対してCDおよびDVDなどの記録媒体を利用可能にし、返却されると、その媒体を再収蔵する。媒体を受領し再収蔵する行為は、その媒体を収容する容器を棚に戻す程度に簡単か、またはその媒体を読み出して(例えば音楽CDを再生して)それが正しいものであるかを確認する程度に複雑であると考えられる。折衷案として、効率をよくするため、貸出し図書館は、接着RFIDラベルを貸出し媒体に貼って、再収蔵の前に容器を通してそのラベルを読み取り、該当する媒体が容器内にあることを確認してきた。製品の返却を受けて払い戻す記録媒体の販売者にも、同様な問題および解決策が用いられている。
【0004】
図書館利用者もしくは返却者のある者は、記録媒体をコピーして、そのコピーを図書館もしくは販売者へ返却することが分かっている。ある人達は、次の借出者もしくは購買者用のコピーを提供する不都合なくして原本を持っていたいと願って、未記録のCDもしくはDVDを返却することさえ、知られている。原本の記録媒体を持っていようとするこのような人達は、CDもしくはDVDの原本からRFIDラベルを剥がして、返却しようとする空の媒体もしくはコピーにそれを再貼付することさえ知っている。こうして、返却された媒体のRFIDラベル読取りの裏をかいている。すなわち、返却された空のCDを改変して原本のRFIDラベルを含ませると、RFIDスキャンは空の媒体を原本として検知してしまい、図書館もしくは販売者は被害を受ける。したがって問題は、返却品が原本であるか否かを効率的に判定できる、貸し出された、もしくは交換された品物用のシステムを作ることにある。
【概要】
【0005】
本発明によれば、感圧接着剤付RFIDトランスポンダを、用いられている接着剤で接着するのに適した物体へ取り付ける。RFIDトランスポンダと物体との間には強力な接着力が必要である。RFIDトランスポンダを物体から外すと、トランスポンダの一部がこの物体に残り、RFIDトランスポンダは、RFスキャニングによって検出可能な新たなRF特性を呈するように変化する。
【詳細な記載】
【0006】
本方法および装置の実施例によれば、次のような多層ラベルもしくは識別体が作られる。すなわち、これは、ラベルを第1の位置から外す前は、RFエネルギーによってスキャンすると、第1の応答を呈し、ラベルをその第1の位置から剥がした後は、第2の応答を呈するものである。そこで、スキャナ/検出装置を用いて、ラベルを有する品物からの第1の応答を探すことができ、これが検出されないと、第2の応答を探してラベルが他の品物へ移し替えられたものと判断することができる。本方法および装置は、貸出図書館および返却受入れ小売業者による特定の用途を見出すことができるが、RFIDラベルを次々と物体へ不当に移し替えることができる環境においても、役に立つ。
【0007】
図3は、RFIDアンテナを示すが、これは、適宜のマイクロチップとともに紙もしくはプラスチックラベルなどの基板上に実装してよい。アンテナの正しいレイアウトは、本発明の理解には必要ないので、ここでは詳細には説明しない。不規則な形状10は基板を示すが、これは、プラスチック、紙、または他の適したラベル材料でよい。次に、実質的な接着力を生じる方法で12層の第1の導電材料層を基板上に印刷し、または取り付ける。この第1の層は導電コイル11の部分を含み、これは、マイクロチップ20へ適宜、接続されるRFIDアンテナを形成している。第1の層にはまた、マイクロチップ20へ接続される導体パッド1(a)および1(b)もある。次に、誘電層2をコイル/基板層へ強くもしくは弱く接着してよい。次に、誘電層2にわたって導電路3を形成し、導電性パッド1(a)および1(b)をオーミック接続し、コイル11の導体を容量結合する。導電路3は、誘電体2とパッド1(a)および1(b)へ弱く接着されている。最後に、接着剤層(図1中の4)を導電路3の上のラベル上に配し、これは、導電路3へ強力に接着し、ラベルがCDもしくはDVDなどの物体へ取り付けられると、強力な接着力を生じる。
【0008】
図3の構造は、外部のRF信号に呈されると第1の応答特性を有するRFIDラベルアンテナである。導電路3は、コイル11と電気的に導通して相互作用し、第1の応答をRFIDスキャナへ提供するRFIDトランスポンダを構成している。例えば、アンテナは、導電性コイル部分11および導電路3の両方が存在すると、19 MHZで共振することができ、比較的狭い帯域幅およびQを有し、これによって自励発振を生じる。本実施例では、導電路3は、パッド(a)および2(b)へオーミック接続され、コイル11には容量結合されている。他の実施例では、基板に対してただ弱く接着される導電路3を、導体部分、例えば基板へ強力に接着されたコイル11に対しては、RFIDトランスポンダの電気的条件に応じて、オーミック接続、容量結合または誘導結合することができる。
【0009】
図1は、上述したタイプのRFIDラベルの製造に用いられる各層を示す。最上層は基板10である。第2の層12は、コイル11、パッド1(a)および1(b)、ならびにマイクロチップ20を形成した導電路の層である。層12の導電要素は、銀ペーストなどの印刷材料でよく、または導電性フォイルでもよく、これを基板10へ接着させる。層12と層10との間の接合は、相対的に強くすべきことを思い起こす必要がある。次の層2は誘導体2を表わし、この全体にわたって導電路3が配されている。ここでまた、導電路3は、図1におけるその上のいずれかの層に相対的に弱く接着されている。層4は接着剤層であり、これは、導電路3に対して、またCD 5などの物体に対しても、強力に接着される。ラベルは、図1に示すようにサンドイッチ状に維持され、導体部分11および3は、電気的に相互作用してRFアンテナを形成し、RFエネルギーに対する既知の第1の応答を生じる。
【0010】
図2は、物体5から外す過程でのラベルを示す。基板10が持ち上げられるに従って、層12を形成しているコイル11、パッド1(a)および1(b)、ならびにマイクロチップ20が基板とともに除去される。これによって、導体部分3および接着剤層4は、物体5に依然として取り付けられたまま残る。除去後、コイル11および適宜のマイクロチップ20が基板上に残り、導電路3のないコイル11の共振で、またはその付近で、RFエネルギーによって検出することができる。
【0011】
図4は、RFIDトランスポンダが接着されていた第1の物体から除去された後、基板10上に残っている部分を示す。改変されたトランスポンダは、図3のトランスポンダとは異なる既知のRF特性を有することになる。改変した(図4)ラベルを何者かが不正な製品に接着させると、これは、適切なスキャナで検出することができる。上述のように、図3のトランスポンダは約19 MHZで共振を呈することができ、狭い励振範囲を有している。設計によって、改変トランスポンダ(図4)は、約16 MHZで共振し、比較的広い励振範囲を呈するようにしてもよい。
【0012】
このようなラベル用の検出器は先ず、手付かずのラベルであることを期待して、19 MHZで共振を探索し、見付からない場合、16 MHZで共振を探索して、改変ラベルを検出することになる。改変ラベルが検出されると、その物体、例えばDVDの真贋を検査することができる。
【0013】
図5は、図1〜図4に関して上述したように組み立て、用いることができる他のアンテナの形状を示す。図5において、マイクロチップ21は、総じて矩形のループRF平面アンテナ23に接続されている。また、導体部分22も含まれ、これは、アンテナコイル23にわたって配されている。上述のように、図5の回路を含むラベルを物体から外すと、相対的な複数の接着力によって、導体部分22が除去される。設計により、図5の回路のRF応答は、導体部分22が存在する場合は、それがない場合と異なっている。したがって、RF応答の差を用いれば、剥がされ再貼付されたラベルを検出することができる。
【0014】
RFIDトランスポンダの導体、シルクスクリーン印刷銀ペーストおよび接着剤の担体として用いられる基板10は、ポリエチレン(PET)もしくはポリイミド(PI)の薄いフィルムでヨイ。ポリオレフィンもやはり用いることができる。基板層は、接着剤に対する均等な剥離効果が低減するほど厚すぎたり、または曲がらなかったりしてはならない。
【0015】
コイル11ならびにパッド1(a)および1(b)などのRFIDトランスポンダの永久導体部は、基板に接着剤で保持された薄い銅もしくはアルミニウムのフィルムからなってよい。やはり、スクリーン印刷ペーストを用いることができる。非導電性シルクスクリーン印刷誘電材料2は、永久導体部と非永久導体部との間に処理される。誘電材料は、コイルの導線とシルクスクリーン印刷の銀ペーストブリッジ3との間に絶縁を形成している。
【0016】
導電路3などのRFIDトランスポンダの非永久導体部は、シルクスクリーン印刷の銀ペーストである。これは、RFIDトランスポンダを物体から外すと、使用不能になる。このペーストは、塗布されている接着剤4に対しては、RFIDトランスポンダの永久部分に対してより高い粘着力を得る必要がある。ある適用例に用いられる適切な銀ペースト材料は、例えば5029デュポン銀ペーストである。他の種類も用いることができる。
【0017】
導電路3などの銀ペーストアンテナの厚さおよび形状は、好ましくは、印刷して、接着剤4に対して確実に接着し接着剤により物体にとどまるパターンを形成するようにする必要がある。ブリッジ線の幅は十分に狭く、約1mmとし、不活性化が確実になるようにする必要がある。
【0018】
本願において使用される接着剤は、RFIDトランスポンダの導体部(印刷銀ペースト)を破壊することでトランスポンダを変えるような粘着力で任意の物体へ接着可能であれば、どんな市販の接着剤でもよい。最も使用可能な接着剤の種類は通常、PSAタイプである。必要な最低粘着力は15 N(FTM 9)以上である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】オペレーショナルRFIDトランスポンダの層構造を示す図である。
【図2】RFIDトランスポンダの導体部を破壊した図である。
【図3】導線全面にわたる印刷銀ペーストブリッジの構造を示す図である。
【図4】改変されたRFIDトランスポンダを有するラベルを示す図である。
【図5】他のアンテナ形状を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接着力で接着されたRFIDトランスポンダの第1の導電部分を有する基板と、
第1の導電部分の付近にあってこれと電気的に導通するRFIDトランスポンダの第2の導電部分と、
第2の導電部分を物体へ接着させて、識別体を該物体から外すと第1の導電部分が前記基板へ接着されて残り、第2の導電部分が前記物体へ接着されて残り、第1の導電部分と第2の導電部分との間の電気的導通を妨げる接着剤層とを含むことを特徴とする物体へ接着する識別体。
【請求項2】
請求項1に記載の識別体において、該識別体は、第1の導電部分が第2の導電部分と電気的に導通しているときは、無線周波数信号に対して第1の応答を呈し、前記電気的導通が妨げられると、第1の応答とは異なる第2の応答を呈することを特徴とする識別体。
【請求項3】
請求項2に記載の識別体において、第1の応答は、第1の所定の周波数範囲で共振し、第2の応答は、第2の周波数範囲で共振することを特徴とする識別体。
【請求項4】
請求項2に記載の識別体において、第1の応答および第2の応答は、異なるQを呈することを特徴とする識別体。
【請求項5】
請求項1に記載の識別体において、第1の導電部分と第2の導電部分との間の電気的導通は、オーミック接続を含むことを特徴とする識別体。
【請求項6】
請求項1に記載の識別体において、第1の導電部分と第2の導電部分との間の電気的導通は、リアクタンス接続を含むことを特徴とする識別体。
【請求項7】
請求項6に記載の識別体において、前記リアクタンス接続は容量接続を含むことを特徴とする識別体。
【請求項8】
請求項6に記載の識別体において、前記リアクタンス接続は誘導接続を含むことを特徴とする識別体。
【請求項9】
請求項1に記載の識別体において、第1の導電部分と第2の導電部分との間に中間接着剤を含むことを特徴とする識別体。
【請求項10】
請求項9に記載の識別体において、第1の導電部分と第2の導電部分との間の中間接着剤の接着力は、第1の導電部分および前記基板の接着力より低いことを特徴とする識別体。
【請求項11】
請求項10に記載の識別体において、第1の導電部分と第2の導電部分との間の中間接着剤の接着力は、第2の導電部分の前記物体への接着力より低いことを特徴とする識別体。
【請求項12】
請求項1に記載の識別体において、前記物体はコンパクトディスクであることを特徴とする識別体。
【請求項13】
請求項1に記載の識別体において、前記物体はDVDであることを特徴とする識別体。
【請求項14】
請求項1に記載の識別体において、第1の導電部分と第2の導電部分との間に誘電層を含むことを特徴とする識別体。
【請求項15】
請求項2の識別体が物体から外されていることを、該識別体を無線周波数エネルギーに曝して第2の応答を検出することで検出することを特徴とする識別体の検出装置。
【請求項16】
第2の周波数範囲における共振を検出することを特徴とする、物体から外された請求項3の識別体の検出装置。
【請求項17】
物体から外された請求項4の識別体の呈するQを検出することを特徴とする識別体の検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−527048(P2007−527048A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518401(P2006−518401)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002257
【国際公開番号】WO2005/006243
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500530823)ユーピーエム−キンメネ コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】UPM−KYMMENE CORPORATION
【Fターム(参考)】