説明

RFID及び通信動作距離設定方法

【課題】
通信距離が長いRFIDにおいても、通信距離を外部コマンドデータにより変更可能なRFIDを提供すること。
【解決手段】
RFIDに、多段階の通信応答距離設定値を記憶可能な通信応答距離設定部を設け、外部通信装置からコマンドデータにより通信応答設定値を変更することにより、RFIDは対応する内部の通信応答距離に影響するパラメータを変更し、そのパラメータに応じてRFIDの動作を変更することにより、多段階の通信応答距離の変更を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)とその搭載チップ及び制御方法に関するものである。非接触ICカードや非接触ICモジュールもRFIDの一種である。
【背景技術】
【0002】
近年、あらゆるものにIDをつけ管理するトレーサビリティ技術が注目されており、その技術の中心の1つとなっているのがRFIDである。RFIDは使用周波数帯と通信距離等が異なる様々なものが存在し、用途に応じて使いわけられてきたが、特にISO18000等で規格化が進んでいるUHF帯のRFIDは、電池を必要としないパッシブタイプのものでも通信距離が10mに到達するものもあり、従来のRFIDと比較すると非常に長く、物流分野を中心に各方面でRFIDの本命として大きく期待されている。
しかし通信距離は長ければ良いばかりではなく、用途に応じては短いほうが良い場合もある。例えばスーパーのレジでは、他の客の値札情報が入ったRFIDを読んで清算しては困る。アンテナを複数搭載しスイッチで切り替えることで通信距離を制御する技術は開示されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−168088号公報(第1−11頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、現在安価なRFIDが求められており、アンテナを複数搭載するとコスト上昇になる可能性が高い。またRFIDを利用者が任意に変更したい場合はどのような変更方法をとればよいか課題である。もちろんプライバシーを守るために個人が通信距離を短くした場合等のケースでは、勝手に他人に通信距離を長くされては困るため、権限を持った人だけが変更可能であるほうがよい場合もある。
本発明では、通信距離が長いRFIDであっても、必要に応じて権限のある人だけが外部通信装置からのコマンドデータによって、任意のタイミングで通信応答距離を多段階に変更可能なRFIDを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため本発明では、外部通信装置からRFIDに対し、通信応答距離のデータを含んだ通信動作距離設定コマンドデータを送信することで、RFID内の通信動作距離設定値を多段階に設定することにより、通信動作距離を多段階に変更することが可能になる。
また本発明では、通信動作距離設定値として、RFIDのリセット解除電圧を設定することで、実際に確保できている電圧値と比較することにより、通信距離を多段階に設定可能にすることが可能になる。
また本発明では、通信動作距離設定値として、RFIDが確保できている電圧値を設定することで、実際に確保できている電圧値と比較することにより、通信距離を多段階に設定可能にすることが可能になる。
また本発明では、通信動作距離設定値として、RFIDチップの負荷値を設定することで、チップの負荷値を変更し、通信距離を多段階に設定可能にすることが可能になる。
また本発明では、通信動作距離設定コマンドデータの処理の前に、認証処理を実行することにより、セキュリティを確保して通信動作距離の設定を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外部通信装置からのコマンドデータによって通信応答距離の変更が可能なRFIDを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明していく。
図1は、本発明の一実施形態に係る、UHF帯RFIDと外部装置からなるRFIDシステムの構成を示した図である。RFIDは大きく分けてRFIDチップ100とRFIDアンテナ101から構成されており、外部通信装置は、外部装置本体102とアンテナ103から構成されている。RFIDに対しては電波で電力の供給とコマンドデータの送信が行われ、外部装置は応答データをRFIDからの応答データが乗った反射電波を受信することで行われる。
【0008】
図2は、RFIDの主要な構成を示した図である。
RFID100は、外部装置とのコマンドデータ送受信を行うアンテナ101と、アンテナ101から受信した電波を整流する整流回路200と、RFIDチップの過電圧保護のためのリミッタ201と、チップのリセット状態を解除するリセット解除部202と、整流して得た電圧値を検出する電圧検出部203と、データの送受信に関連する受信したコマンドデータの復調を行う復調部205と、送信するデータの変調を行う変調部206を備えた通信制御部204と、コマンドデータの処理を行うコマンドデータ処理部208と、各種認証処理を行う認証部209を備えた処理制御部207と、通信応答距離設定値を記憶する通信応答距離(又は動作距離)設定部210を具備したものとなっている。なお通信応答距離設定部は、RFIDの構成により、リセット解除部や、電圧検出部や、通信制御部の一部として存在する場合も考えられる。また通信応答距離設定部は不揮発型メモリの場合もあるし、不揮発型メモリの場合もありえる。
【0009】
図3は、外部通信装置から、RFIDに送信されるコマンドデータフォーマットの例である。コマンドデータは、コマンド部300とデータ部301から構成されている。コマンド300には、タグに対する命令が入り、データ部には、コマンドごとに必要な値がセットされる。
【0010】
図4は、コマンドデータの一部の例を示したものである。
コマンドデータ表(通信応答距離データ値表)400は、コマンド値401、コマンドの意味402、データ値403、データ値の意味404から構成される。例えばコマンド値'10'の場合の意味は、通信応答距離(又は動作距離)セットコマンドであり、データ値は’00’〜’FF’の値をとり、それぞれの意味は通信距離を表している。コマンド値が、さきほどのコマンド部300に格納され、データ値がデータ部301に格納される。もちろんコマンド長やデータ長、それぞれの値や意味は、それぞれのRFIDシステムでは異なる場合がある。
【0011】
次に、通信応答距離設定値がコマンドデータによってどのようにRFIDに設定されるかを説明する。
図5は、外部通信装置本体102から送信されたコマンドデータが、コマンドデータ処理部208での処理を示す、フロー例を示した図である。
まずコマンドデータ処理部208にコマンドが届くと、ステップS500の処理がスタートし、ステップS501に進む。ステップS501では、受信したコマンドデータが、通信動作距離設定コマンドかどうかを判断し、もし通信動作距離設定コマンド以外であった場合は、ステップS502に進み、コマンドデータ処理を行い、ステップS503に進みコマンドデータ処理を終了する。
もし通信動作距離設定コマンドであった場合は、ステップS504に進む。ステップS504では、認証が正常に行われているかまたは不要であるかを判断する。認証が必要な設定の場合には、通信動作距離設定コマンド以前に、認証コマンド等を用いて、認証が終了している状態にしておく必要がある。もし認証が正しく行われていない場合は、ステップS503へ進み処理を終了する。もし認証が正しく行われいていた場合、もしくは認証が不要である場合には、ステップS505へ進む。ステップS505では、データ部の通信距離設定データに従い、通信応答距離設定部の通信距離設定値を変更し、ステップS503へ進み処理を終了する。
【0012】
なお認証にはパスワードを使った認証や、暗号や乱数を使った片側認証処理や、相互認証処理、署名データによる認証処理など、いくつもの認証が考えられるが、どのような認証方式を用いても構わない。また認証部を備えていない安価なRFIDも考えられるが、セキュリティやプライバシー上問題にならなければ、認証部を備えていなくても全く構わない。
また、特定のコマンドデータの処理の後、決まった通信応答距離値に変更するようにしておくことや、特定コマンドと一緒にその後の通信距離を指定しておくことも可能であり、この場合、通信応答距離設定コマンドデータを使わなくても、例えば認証コマンドデータが実行されると自動的に通信距離を伸ばすことが可能とすることもできる。
【0013】
次に、リセット解除処理の仕組みを使って通信応答距離を変化させる場合の手順について説明する。ここでは、通信距離設定コマンドデータの通信距離設定値に、リセット解除電圧が変更されて設定された場合について述べる。
図6は、確保した電力により、処理制御部207のリセット解除処理がスタートする場合の例を示す、フロー例を示した図である。
まず、RFIDチップに供給される電圧値が上昇し、チップのリセット状態解除処理ができる状態になると、リセット解除部202においてステップS600の処理がスタートし、ステップS601に進む。ステップS601では、通信応答距離設定部210に通信応答距離設定値として設定されているリセット解除電圧値を取得し、ステップS602に進む。ステップS602では、電圧検出部203から現在確保できている電圧値を取得し、ステップS603に進む。ステップS603では、取得したリセット解除電圧値と、実際に確保できている電圧値を取得し、もし実際に確保できている電圧値がリセット解除電圧値に達してなければ、ステップS602に戻る。もしリセット解除電圧に達していれば、ステップS604に進む。ステップS604ではリセット解除処理を実行し、ステップS605に進み処理を終了する。
【0014】
次に、確保している電圧を検出することにより、設定された通信応答距離に変化させる場合の手順について説明する。ここでは、通信距離設定コマンドデータの通信距離設定値に、コマンドデータ処理電圧が変更されて設定されている場合について述べる。
図7は、コマンドデータ処理がスタートする場合の例を示す、フロー例を示した図である。まず、コマンドデータ処理が開始されると、ステップS700の処理がスタートし、ステップS701に進む。ステップS701では、通信応答距離設定部210に通信応答距離設定値として設定されている動作電圧値を取得し、ステップS702に進む。ステップS702では、電圧検出部203から現在確保できている電圧値を取得し、ステップS703に進む。ステップS703では、取得した動作電圧値と、実際に確保できている電圧値を取得し、もし実際に確保できている電圧値が動作電圧値に達してなければ、ステップS705に進み処理を終了する。もし動作電圧に達していれば、ステップS704に進む。ステップS704ではコマンドデータ処理を実行し、ステップS705に進み処理を終了する。
【0015】
なおこの仕組みを規定のコマンドだけに適用することで、あるコマンドは近距離でのみしか実行ができなくなり、あるコマンドは長距離でも実行できるという、コマンドによる通信距離の変更を実現することも可能である。
【0016】
次に、チップの動作負荷を変更することにより、設定された通信応答距離に変化させる場合の手順について説明する。ここでは通信距離設定コマンドデータの通信距離設定値に、チップ負荷値を設定する手順について示す。
図8は、コマンドデータ処理がスタートする場合の例を示す、フロー例を示した図である。まずコマンドデータ処理部208にコマンドが届くと、ステップS800の処理がスタートし、ステップS801に進む。ステップS801では、受信したコマンドデータが、通信動作距離設定コマンドかどうかを判断し、もし通信動作距離設定コマンド以外であった場合は、ステップS802に進み、コマンドデータ処理を行い、ステップS803に進みコマンドデータ処理を終了する。
【0017】
もし通信動作距離設定コマンドであった場合は、ステップS804に進む。ステップS804では、もし認証が正しく行われていない場合は、ステップS803へ進み処理を終了する。もし認証が正しく行われていた場合、もしくは認証が不要である場合には、ステップS805へ進む。ステップS805では、データ部の通信距離設定データに従い、通信応答距離設定部の通信距離設定値を相当するチップ負荷値変更し、ステップS803へ進み処理を終了する。チップの負荷値を参照し、実際の負荷値を変更することで、チップの通信距離は変化することになる。
なお通信距離を変更するための手段はその他各種存在するが、本発明ではコマンドデータにより通信距離を変化可能なRFIDであることが重要なポイントであり、通信距離変更のための実現手段は何であっても構わない。
【0018】
なお本実施例ではUHF帯RFIDに代表されるマイクロ波方式のRFIDで説明を行ってきたが、他の方式のRFIDでも本発明は適用可能である。また非接触ICカードについても同様に適用可能である。
以上述べたように本発明によれば、通常通信距離が非常に長いRFIDにおいても、外部通信装置の出力を変化させることなく、外部通信装置からのコマンドデータによって通信応答距離の変更が可能なRFIDを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例にかかる、RFID、外部通信装置の構成の例を示した図である。
【図2】本発明の実施例にかかる、RFIDチップの内部構成の例を示した図である。
【図3】本発明の実施例にかかる、コマンドデータフォーマットの例を示した図である。
【図4】本発明の実施例にかかる、コマンドデータの値や意味の例を示した図である。
【図5】本発明の実施例にかかる、コマンドデータにより通信動作距離を設定する場合の処理を示す、フロー例を示した図である。
【図6】本発明の実施例にかかる、リセット解除処理を制御により通信応答距離を制御する場合の処理を示す、フロー例を示した図である。
【図7】本発明の実施例にかかる、設定された電圧値と確保した電圧値を比較することにより通信応答距離を制御する、フロー例を示した図である。
【図8】本発明の実施例にかかる、コマンドデータによりチップ負荷を設定する場合の処理を示す、フロー例を示した図である。
【符号の説明】
【0020】
100…RFIDチップ
101…RFIDアンテナ
102…外部通信装置
103…外部通信装置アンテナ
200…整流部
201…リミッタ部
202…リセット解除部
203…電圧検出部
204…通信制御部
205…復調部
206…変調部
207…処理制御部
208…コマンドデータ処理部
209…認証部
210…通信応答距離設定部
300…コード部
301…データ部
400…通信応答距離データ値表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部通信装置とコマンドデータの送受信を行う通信制御部と、送受信するコマンドデータの処理を行う処理制御部と、通信動作距離設定値を保持する通信動作距離設定部を備え、
該処理制御部は通信動作距離制御コマンドデータに従い、通信動作距離設定部の通信動作距離設定値を多段階に設定可能なことを特徴とするRFID。
【請求項2】
外部通信装置とコマンドデータの送受信を行う通信制御部と、通信動作距離制御コマンドデータ処理手段を有し送受信するコマンドデータの処理を行う処理制御部と、通信動作距離設定値を保持する通信動作距離設定部を備え、
該通信動作距離制御コマンドデータ処理手段はコマンドデータに従い、通信動作距離設定部の通信動作距離設定値を多段階に設定可能なことを特徴とするRFID。
【請求項3】
外部通信装置とコマンドデータの送受信を行う通信制御部と、送受信するコマンドデータの処理を行う処理制御部と、通信動作距離設定値を保持する通信動作距離設定部を備え、
該処理制御部はある特定のコマンドデータの処理後、通信動作距離設定部の通信動作距離設定値を規定または指定された値に多段階に設定可能なことを特徴とするRFID。
【請求項4】
前記RFIDは、整流した電圧値を検出する電圧検出部と、該電圧検出部により検出された電圧が設定されたリセット解除電圧値以上になったときにチップのリセット解除を行うリセット解除部を備え、
前記通信動作距離設定部は通信通信動作距離設定値として、リセット解除電圧値を多段階に設定可能なことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載のRFID。
【請求項5】
前記RFIDは、整流した電圧値を検出する電圧検出部を備え、
前記通信動作距離設定部は通信通信動作距離設定値として、チップ動作電圧値を多段階に設定可能で、前記処理制御部は該電圧検出部により検出された電圧が該チップ動作電圧値以上になったときに、コマンドデータ処理を行うことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載のRFID。
【請求項6】
前記通信動作距離設定部が、通信通信動作距離設定値として負荷値を多段階に設定可能で、前記通信制御部が、該負荷値の負荷をチップに与えることを特徴とする請求項1または2の何れかに記載のRFID。
【請求項7】
前記RFIDは、整流した電圧値を検出する電圧検出部を備え、
前記通信動作距離設定部は通信通信動作距離設定値として、チップ動作電圧値を多段階に設定可能で、前記処理制御部は該電圧検出部により検出された電圧が、該チップ動作電圧値以上になったときに、規定のコマンドデータ処理だけを行うことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載のRFID。
【請求項8】
前記RFIDの処理制御部は認証処理を行う認証処理部を備え、前記処理制御部は認証結果に応じて通信動作距離制御コマンドの処理の実行を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のRFID。
【請求項9】
外部通信装置とコマンドデータの送受信を行い、送受信するコマンドデータの処理を行うRFIDに用いられる通信動作距離設定方法であって、
外部通信装置から送信される通信動作距離制御コマンドデータにより、RFIDの通信動作距離設定値を多段階に設定するステップを有することを特徴とするRFIDの通信動作距離設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−185234(P2006−185234A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378769(P2004−378769)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】