説明

RGB(赤−緑−青)ライティングシステムにおける窒化物系赤色発光蛍光体

本発明の実施態様は、赤色、緑色、及び青色(RGB)ライティングシステムにおける窒化物系赤色発光蛍光体を対象とし、それは、同様にバックライトディスプレイ及び温白色光の用途に用いることができる。特定の実施態様では、赤色発光蛍光体は、二価ユーロピウムで活性化されるCaAlSiN型化合物に基づく。1つの実施態様では、窒化物系赤色発光化合物は、不純物酸素含有量が約2重量パーセント未満である、カルシウム及びストロンチウム化合物(Ca,Sr)AlSiN:Eu2+の固溶体を含有する。別の実施態様では、(Ca,Sr)AlSiN:Eu2+化合物は、約0〜約2原子パーセントの範囲の量のハロゲン(式中、ハロゲンは、フッ素(F)、塩素(Cl)、又はその任意の組み合わせであることができる)をさらに含有する。1つの実施態様では、ハロゲンの少なくとも半分は、3配位窒素(N3)サイトに比べて2配位窒素(N2)サイト上に分布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、Shengfeng Liuらによる、2009年12月7日出願の「Nitride-based red-emitting phosphors in RGB (Red-Green-Blue) Lighting Systems」と題する米国本出願第12/632,550号の優先権を主張する。本出願は、Shengfeng Liuらによる、2008年12月15日出願の「Nitride-based red phosphors」と題する米国仮出願第61/122,569号の優先権も主張する。本出願は、Shengfeng Liuらによる、2008年10月13日出願の「Nitride-based red phosphors」と題する米国特許出願第12/250,400号の優先権も主張し、それはShengfeng Liuらによる、2008年5月19日出願の「Nitridosilicate-based red phosphors」と題する米国仮出願第61/054,399号の優先権を主張するものである。米国仮出願第61/054,399号及び第61/122,569号、ならびに米国特許出願第12/250,400号はそれぞれ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明の実施態様は、窒化物系赤色発光蛍光体を対象とし、それは、赤色、緑色、及び青色(RGB)ライティングシステムにおいて用いてもよく、それは同様に、バックライトディスプレイ及び温白色光の用途に用いてもよい。特定の実施態様では、赤色発光蛍光体は、二価ユーロピウムで活性化される(Ca,Sr,Ba)AlSiN型化合物に基づく。
【0003】
発明の背景
光工学の分野では、さまざまな装置、用途、及び技術において、赤色、緑色、及び青色ライティングシステムの需要がある。これらの技術の間で、ディスプレイシステム、例えばプラズマディスプレイ用のバックライト源、及び一般的なライティングにおける温白色光源がある。
【0004】
このようなRGBシステムの設計では、さまざまな構成のLED光源及び発光蛍光体が可能である。図1Aに概略的に示す従来のものは、3つの発光ダイオード(LED)を採用する。3つのLEDはそれぞれ、半導体系の集積回路、すなわち「チップ」であり、赤色、緑色、及び青色の各色に1つのチップがある。従来のシステムの欠点は、各LEDに別々の電流コントローラが必要であることであり、多くの状況と同様に、システム内の電流コントローラは、可能な限りより少ないほうが良い。図1Aの従来技術のシステムは、3つの回路コントローラを要求する。
【0005】
図1B〜Dに図示されるRGBシステムは、図1Aのそれとは異なり、システムの赤色、緑色、又は青色LEDの少なくとも1つと代替する少なくとも1つのフォトルミネセンス物質(「蛍光体」)を有する。図1A〜1Dの進行は、LEDを蛍光体に置き換える効果を示す;色について特定の順序はないが、まず、緑色LEDを緑色蛍光体に置き換える(図1Aから1Bになる);次に、緑色とともに、赤色LEDを赤色蛍光体に置き換える(図1Bから1Cになる);最後に、図1Dでは、蛍光体に励起放射を供給するために、このシステムにUV発光LEDが追加されているが、3つの可視光発光LEDはすべて蛍光体に置換される。このように、図1Dは、ある意味で、図1Aのそれとはいくらか反対の方策を図示しており、図1Dの各RGB色は蛍光体によって供給され、そのために、励起源は非可視のUV発光LEDである。UV励起源に基づく技術の実施は、青色LEDに基づくものより、商業化からはいくらか離れているが、それでも、図1Dの構成は、依然として本窒化物系赤色蛍光体を用いることができるものである。
【0006】
これは、青色LEDが、さまざまな用途、例えばバックライティング及び一般的な温白色光ライティングで必要な光の青色成分を供給するので、図1B及び1Cの実施態様で青色蛍光体が用いられないことを意味する。この点について、青色LEDは、二重の役割を果たすので、システム内で独特であり;最終光生成物に青色光を供給するのに加えて、システム内の赤色又は緑色蛍光体のいずれか、あるいは両方に励起を供給する。システム、例えば図1C及び1Dに図示されるものが、本開示の対象であり;これらの構成は、特に、窒化ケイ素系赤色発光蛍光体に適する。
【0007】
これらの赤色蛍光体の初期のバージョンはケイ素の窒化物に基づいていたので、総称的に「窒化物系」ケイ酸塩、又はニトリドシリケートと呼ぶことがある。より新しいバージョンは、得られる化合物が「ニトリドアルミノシリケート窒化物」と呼ばれるように、アルミニウムを含んでいる。望ましい化学量論的方法での、これらの結晶中への意図的な酸素の包含は、あるクラスの赤色発光蛍光体を生じさせ、「SiAlON類」として公知の化合物は、場合によっては緑色及び黄緑色照明源になることもできる。酸素が窒素と代替するとき、得られる化合物は、「酸窒化物」として記述する場合がある。
【0008】
前に示唆したように、LED生成青色光と、蛍光体生成緑色及び赤色光との組み合わせは、いわゆる「白色LED」からの白色光を生成するために用いてもよい。以前から公知の白色光生成システムは、「YAG」として公知の、式YAl12:Ce3+を有する黄色発光セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットと併用して青色LEDを用いた。このようなシステムは、約4,500Kより大きい相関温度(CCT)、及び約75〜82の範囲の演色指数(CRI)を有する。青色発光LEDは、約400〜480nmの範囲の励起放射を供給する。
【0009】
青色LED系装置の設計の柔軟性を達成する1つの方法は、CIE空間内で蛍光体が互いに対して、黄色及び/又は緑色蛍光体と赤色蛍光体との間により広い分離を作り出すことを含む。CIE座標は本開示においてさらに後述するが、今は、「CIE空間」とは、蛍光体によって画定された三角形の2つの頂点、及び青色LEDによる第3の頂点によってマッピングされた三角形のエリアを意味すると言えば十分であろう。黄色及び/又は緑色頂は青色LEDのそれから広く分離され、白色光生成用の成分に豊かな多様性を作り出す。
【0010】
D. Hancuらへの米国特許第7,252,787号に記載されるように、赤色源はYAG及びTAG系黄色源とともに用いられて高い演色指数を生じ、式(Ba,Sr,Ca)Si:Eu2+であって、式中、x、y、及びzの各パラメータが0より大きい式を有する窒化物を含んでいる。YAG/TAGとともに用いられるこのような蛍光体の欠点は、これらが、(Tb,Y)Al12:Ce3+)蛍光体の発光とのEu2+吸収帯の重複により、これらの蛍光体からの発光を再吸収することであった。このように、高CRIの白色光照明を生じるために、これらの窒化物よりも赤色の発光を有する赤色蛍光体の需要がある。
【0011】
ニトリドシリケート化合物に基づく新規の赤色発光蛍光体のホスト格子は、1990年代中頃に導入された。このような蛍光体は、アルカリ土類イオン(M=Ca、Sr、及びBa)が組み込まれた架橋SiN四面体の三次元ネットワークにより、望ましい機械的及び熱的特性を有する。このような蛍光体を記述する、Bognerらへの米国特許第6,649,946号で用いられた式はMSi(式中、Mはアルカリ土類金属のうちの少なくとも1つであって、z=2/x+4/3yである)である。これら窒化物の窒素は、共有結合の含有量、従って配位子場分裂を増加させた。これは、励起及び発光帯の、酸化物格子との比較においてより長い波長への明白な移行につながる。
【0012】
yが5であるときの、このようなニトリドシリケートのアルカリ土類成分の効果は、Y.Q. Liらにより、「Luminescence properties of red-emitting M2Si5N8:Eu2+ (M=Ca, Sr, Ba) LED conversion phosphors」、J. of Alloys and Compounds 417 (2006), pp. 273-279において調査された。多結晶粉末は、固相反応機構によって調製された。この族のCa含有要素の結晶構造が空間群Ccを有する単斜晶系であった一方で、Sr及びBa要素は、斜方晶系空間群Pmn2と同種構造であった。後者の化合物内には、Sr及びBa端要素間に完全固溶体が形成された。
【0013】
Liらによって教示されるように、励起スペクトルはアルカリ土類の種類に実質的に依存しないが、発光帯の位置は依存する。M=Ca、Sr、及びBaについて、1モルパーセント活性剤濃度のピーク発光帯は、605、610、及び574nmであった。アルカリ土類の性質による発光帯の移行は、各成分のストークス偏移の差によるもので、ストークス偏移はCa>Sr>Baの順に徐々に増大し、この傾向は、アルカリ土類イオンのサイズが減少するとき、4f5d状態の緩和が制限されにくくなることを観察すれば、予測可能である。さらに、ストークス偏移は、すべての場合においてEu濃度が増大するにつれて、増大する。
【0014】
米国第2007/0040152号は、ニトリドシリケート系化合物、例えばMSi、MSi10、及びMSiN(式中、MはMg、Ca、Sr、及びBaなどから選択された少なくとも1つの元素であり、化合物は実質的に酸素を含有しない)の生産の困難さを解明した。これはアルカリ土類元素及び希土類元素の窒化物を出発物質として用いることによって達成してもよいが、これらの窒化物は入手が困難で、高価で、また取り扱いが困難であることが教示されている。これらの要因が重なって、ニトリドシリケート系蛍光体の工業生産を困難にしている。参考文献で述べられるように:「従来のニトリドシリケート系化合物は、以下の問題を有する:(1)大量の不純物酸素の存在による低純度、(2)低純度が原因となる蛍光体の低い材料性能;(3)高コスト;など」である。問題は、低い光束及び輝度を含んでいた。
【0015】
当該技術において必要とされるものは、赤色蛍光体が高い光束及び輝度を有する、バックライトディスプレイ及び温白色光の用途で用いるための赤色、緑色、及び青色(RGB)ライティングシステムにおける赤色発光蛍光体である。本開示は、二価ユーロピウムで活性化されるCaAlSiN型化合物に基づく赤色発光蛍光体の改善点を説明する。他の波長で発光する蛍光体と併用して、本実施態様は、現在入手可能なものよりも高いCRIかつ低いCCTを有する一般的な照明源を供給すると考えられる。
【発明の概要】
【0016】
発明の概要
本発明の実施態様は、赤色、緑色、及び青色(RGB)ライティングシステムで用いることができる窒化物系赤色発光蛍光体を対象とする。これらのRBGシステムは、同様にバックライトディスプレイ及び温白色光の用途に用いることができる。特定の実施態様では、赤色発光蛍光体は、二価ユーロピウムで活性化される(Ca,Sr,Ba)AlSiNに基づき、式中、(Ca,Sr,Ba)命名法は、任意のこれらのアルカリ土類を、一方の他方に対する任意の割合で用いてもよいことを意味する。ストロンチウム(Sr)は、任意の量の組み合わせで式中のCaと代替することができ;1つの実施態様では、不純物酸素含有量が約2重量パーセント未満である、カルシウム及びストロンチウム含有化合物(Ca,Sr)AlSiN化合物の完全固溶体が開示されている。本窒化物系赤色発光化合物は、含有量が約0より大きい量から約2原子パーセントまでの範囲のハロゲンをさらに含むことができ、1つの実施態様では、そのハロゲンは、F及びClからなる群より選択してもよい。ハロゲンは、合成の間ある種のゲッタリング効果を提供することができ、これが、酸素不純物含有量が低レベルに保たれる機構であろうと考えられる。本発明の1つの実施態様では、ハロゲンの少なくとも半分は、3配位窒素(N3)サイトに比べて2配位窒素(N2)サイト上に分布する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】白色LED及びバックライティング状況で用いるRGB光を供給するためのLED及び蛍光体のさまざまな構成及びその配置方法を示す。
【図1B】白色LED及びバックライティング状況で用いるRGB光を供給するためのLED及び蛍光体のさまざまな構成及びその配置方法を示す。
【図1C】白色LED及びバックライティング状況で用いるRGB光を供給するためのLED及び蛍光体のさまざまな構成及びその配置方法を示す。
【図1D】白色LED及びバックライティング状況で用いるRGB光を供給するためのLED及び蛍光体のさまざまな構成及びその配置方法を示す。
【図2】NHFによって供給されるフッ素含有量xが、さまざまなハロゲン基準レベルを上回って増加するときに起こる、それぞれ、発光波長及びフォトルミネッセンス(PL)の変化のグラフであり;3つの化合物は、ユーロピウム源がEuFのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:F0.04+xであり;ユーロピウム源がEuClのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:Cl0.04であり;そしてユーロピウム源がEuのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:Fである。
【図3】図2A及び2Bの3つの化合物に同じNHFを添加したCIE座標x及びyに対する効果を示すグラフである。
【図4】NHClによって供給される塩素含有量xがさまざまなハロゲン基準レベルを上回って増加するときに起こる、それぞれ、発光波長及びフォトルミネッセンス(PL)の変化のグラフであり;3つの化合物は、ユーロピウム源がEuFのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:F0.04Clであり;ユーロピウム源がEuClのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:Cl0.04+xであり;そしてユーロピウム源がEuのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:Clである。
【図5】図4A及び4Bの3つの化合物に同じNHFを添加したCIE座標x及びyに対する効果を示すグラフである。
【図6】NHFによって供給されるフッ素含有量xがさまざまなハロゲン基準レベルを上回って増加するときに起こる、それぞれ、発光波長及びフォトルミネッセンス(PL)の変化のグラフであり;3つの化合物は、ユーロピウム源がEuFのときCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:F0.04+xであり;ユーロピウム源がEuClのときCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:Cl0.04であり;そしてユーロピウム源がEuのときCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:Fである。
【図7】図6A及び6Bの3つの化合物に同じNHFを添加したCIE座標x及びyに対する効果を示すグラフである。
【図8】NHClによって供給されるフッ素含有量xがさまざまなハロゲン基準レベルを上回って増加するときに起こる、それぞれ、発光波長及びフォトルミネッセンス(PL)の変化のグラフであり;3つの化合物は、ユーロピウム源がEuFのときにCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:F0.04Clであり;ユーロピウム源がEuClのときにCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:Cl0.04+xであり;そしてユーロピウム源がEuのときにCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:Clである。
【図9】図8A及び8Bの3つの化合物に同じNHFを添加したCIE座標x及びyに対する効果を示すグラフである。
【図10A】追加のハロゲンがフラックス、例えばNHF又はNHClによって供給されないときの、R630及びR640型化合物の両方についての発光波長の関数としてのフォトルミネッセンスのグラフである。
【図10B】追加のハロゲンがフラックス、例えばNHF又はNHClによって供給されないときの、R630及びR640型化合物の両方についての発光波長の関数としてのフォトルミネッセンスのグラフである。
【図10C】式Ca0.2Sr0.79AlSiNEu0.01(R630)、Ca0.158Sr0.815AlSiNEu0.023(R640)を有する、R630及びR640窒化物系赤色蛍光体(名称中の数値は、その特定の蛍光体の大まかなピーク発光波長を示す)を、蛍光体Ca0.157Sr0.808AlSiNEu0.035(R645)と比較する発光スペクトルの集合であり、式中、EuFは3つの組成物それぞれのユーロピウム源として用いられた。
【図11A】式Ca0.98−xSrAlSiNEu0.02を有する蛍光体についてのSr含有量の関数としての発光波長及びフォトルミネッセンスのグラフであり、式中、Euはユーロピウム源である。
【図11B】式Ca0.98−xSrAlSiNEu0.02を有する蛍光体についてのSr含有量の関数としての発光波長及びフォトルミネッセンスのグラフであり、式中、Euはユーロピウム源である。
【図12A】それぞれx=0.82及びx=0での、Ca0.98−xSrAlSiNEu0.02及びCa0.98−xSrAlSiNEu0.02の正規化発光スペクトルであって、このようにプロットしてSrドープでより短い波長及びSrドープでより大きい輝度への波長移行の効果を示す。
【図12B】それぞれx=0.82及びx=0での、Ca0.98−xSrAlSiNEu0.02及びCa0.98−xSrAlSiNEu0.02の正規化発光スペクトルであって、このようにプロットしてSrドープでより短い波長及びSrドープでより大きい輝度への波長移行の効果を示す。
【図13】さらなる量のアルカリ土類金属;具体的には、前の段落で述べたCa/Sr混合物の一部分を置換するCa、Sr、及びBaで本窒化物系赤色蛍光体をドープする効果を示し:ここでは、検討中の化合物は式Ca0.2Sr0.74AlSiM0.05Eu0.01(式中、MはそれぞれCa、Sr、Baであった)を有する。
【図14】5%レベルの(周期表の)IIIA族金属M(この例では、Mはホウ素か、ガリウムのいずれかである)を持つ窒化物系赤色蛍光体について発光波長の集合を、図14Aでは生データで示し、図14Bでは正規化バージョンで示して提供する。
【図15A】Eu源及び含有量の関数としてのピーク発光波長及びフォトルミネセンスの変化を示すグラフであり、Eu源はユーロピウム金属の酸化物、フッ化物、及び塩化物塩を含み;この研究に選択された化合物はCa0.2Sr0.8−xAlSiNEu(式中、xは0.005〜0.015の範囲である)である。
【図15B】Eu源及び含有量の関数としてのピーク発光波長及びフォトルミネセンスの変化を示すグラフであり、Eu源はユーロピウム金属の酸化物、フッ化物、及び塩化物塩を含み;この研究に選択された化合物はCa0.2Sr0.8−xAlSiNEu(式中、xは0.005〜0.015の範囲である)である。
【図16】式Ca0.2Sr0.8AlSiNEu0.01を有するR630組成物、及び式Ca0.158Sr0.815AlSiNEu0.023を有するR640組成物についての励起スペクトルの集合である。
【図17】本実施態様の典型的な組成物の1つのX線回折(XRD)パターンであり;検査された特定の化合物はCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:Fであった。
【図18A】温白色ルミネセンスシステムによって発光される波長に対する光の強度の例示的なスペクトルである。
【図18B】温白色ルミネセンスシステムによって発光される波長に対する光の強度の例示的なスペクトルである。
【図18C】温白色ルミネセンスシステムによって発光される波長に対する光の強度の例示的なスペクトルである。
【図18D】温白色ルミネセンスシステムによって発光される波長に対する光の強度の例示的なスペクトルである。
【図18E】温白色ルミネセンスシステムによって発光される波長に対する光の強度の例示的なスペクトルである。
【0018】
発明の詳細な説明
窒化物系赤色発光蛍光体の分野への導入は、Electrochemical and Solid-State Letters, 9 (4) H22-H25 (2006)で公開されたK. Uhedaらによる「Luminescence properties of a red phosphor, CaAlSiN3:Eu2+, for white light-emitting diodes」で提供された。この参考文献は、白色発光ダイオード(LED)が、それらの高効率性及び長い寿命により、どのようにしてますます多くの注目を集めているのかを説明する。励起源及び青色光供給部としての青色LED、ならびに黄色発光YAG:Ce3+蛍光体からなる、最初期の「白色光LED」は、赤色成分の欠落のため、低演色をこうむっていた。望ましい赤色成分を供給する初期の試みは、Eu2+活性アルカリ土類硫化物でなされ、それは、青色光によって励起可能であるという利点を有するが、その吸湿性により大気中の水分によって劣化する可能性をこうむってもいた。次の世代の赤色蛍光体は、特性の改善を呈した:これらの材料はアルカリ土類窒化ケイ素、例えばCaSiN:Eu2+(現在の命名法=それぞれ、Si及びNの化学量論量により「1−1−2」)及びCaSi:Eu2+(「2−5−8」)であって、式中、少なくとも後者の場合、他のアルカリ土類金属元素はCaを置換してもよい。赤色窒化物における最新技術は、CaAlSiN:Eu2+(「1−1−1−3」)化合物であって、式中、再びCaは任意のアルカリ土類又はアルカリ土類の混合物であることができる。これらの化合物は、それらの1−1−2及び2−5−8対照物より高い化学的安定性及び光学的効率を有する。K. Uhedaらは、蛍光体としての1−1−1−3化合物の利益を最初に発見し、興味深いことに、ホスト材料CaAlSiNは、CaO、AlN、及びSi位相図からすでに公知であった。
【0019】
低エネルギーでのこれらのCaAlSiN化合物におけるEu2+イオンの5d励起帯の位置は、窒素原子を持つアルカリ土類金属サイト上でのユーロピウムの高度な共有結合性の影響に起因し、同様にまた窒素の存在のため、大きな結晶場分裂に至る。Eu−N結合の共有原子価、及び得られるEU2+イオン周辺の結晶場強度は、異なる対称性を持つ2つのMサイトがあるという事実にもかかわらず、この系(例えば、Ca、Sr、及びBa系)の各要素において同様である。白色LEDにとって特に重要なことに、これらの化合物が、おおよそ465nmで発光するInGaN系LEDからの放射性青色光に整合する、同じスペクトル領域(400から470nm)内の効率的な励起を有するという事実がある。それらの広帯域発光はEu2+イオン内での4f5d→4f遷移によるもので、Ca化合物が約605〜615nm、Srが609〜680nm、及びBaが570〜680nmの範囲の波長で発光する。MがSr及びBaに制限されるMSi:Eu2+について、Eu2+の発光帯は、MがSrのとき橙色から、そしてMが低Eu濃度でBaのとき黄色から、高濃度のEuについて赤色(680nmまで)に連続的に移行する。
【0020】
新規の赤色窒化物の出現が、バックライティング及び温白色光(具体的には、それらが、生成物白色光に高い演色を付与する能力)の最新技術の進化にきわめて重大であった一方で、それらの他の蛍光体からの光の混合への包含が、ある期間にわたって開発されてきた。本出願の譲受人は、この分野にしばらくの間関与し、当該技術への数々の革新に寄与してきた。次の表は、RGBシステムを対象とするいくつかの特許及び公開された出願を列挙し、各特許(又は公開された出願)は、その全体が本明細書に組み込まれる。表1は、現在の最新技術に寄与する赤色及び緑色蛍光体組成物を要約する目的で、また本技術へのCaAlSiN:Eu2+型化合物の適用への進行も示すためにも提供される。
【0021】
「Silicate-based yellow-green phosphors」と題する、2004年9月22日出願の米国特許第7,311,858号は、青色LED、式MSiO:Eu2+D(式中、Mはアルカリ土類を含む二価金属であり、DはF、Cl、Br、I、P、S、及びNからなる群より選択されるドーパントである)を有する組成物(これに限定されない)を含む緑色蛍光体、及びニトリドシリケート(Sr,Ba,Ca)Si:Eu2+(これに限定されない)を含む赤色蛍光体の組み合わせを開示する。
【0022】
「Silicate-based green phosphors」と題する、2005年11月8日の米国特許第7,575,679号は、青色LED、及び赤色蛍光体としてのニトリドシリケート(SrBaCa)Si:Eu2+(他の化合物の間で)の組み合わせを開示するが、この特許は、上の段落の特許のそれとはわずかに異なる緑色蛍光体を開示する。米国特許第7,575,679号の緑色蛍光体は、式(Sr,M2+(Si,P)(O,F,Cl)2+x:Eu2+(式中、M2+は再びアルカリ土類金属を含む)によって記述してもよい。これらの緑色蛍光体はドープされていなくてもよい;言い換えると、蛍光体中のP、F、及び/又はClの量は0であってもよい。
【0023】
「Novel silicate-based yellow-green phosphors」と題する、2007年12月24日出願の米国出願第2008/0116786号、及び米国特許第7,311,858号の一部継続出願は、米国特許第7,311,858号のように、青色LED、及び式MSiO:Eu2+D(式中、Mはアルカリ土類を含む二価金属であり、DはF、Cl、Br、I、P、S、及びNからなる群より選択されるドーパントである)を有する緑色蛍光体の組み合わせを開示するが、RGB溶液の赤色蛍光体は、アルミノニトリドシリケート(Sr,Ba,Ca)AlSiN:Eu2+を含む。本実施態様は、これらのアルミノニトリドシリケート系赤色蛍光体(窒化物系赤色蛍光体と呼ぶこともある)の使用に関するより完全な開示を対象とする。
【0024】
RGB技術に寄与する、本出願の譲受人によって出願されたさらなる開示は、「Nitride-base red phosphors」と題する、2008年10月13日出願の米国出願第12/250,400号であるが、「Nitridosilicate-based red phosphors」と題する、2008年5月19日出願の米国仮出願第61/054,399号に基づいている。これら2つの開示の黄緑色蛍光体は、一般式MSiO:Eu2+(ドープされていなくてもよい)に基づき、青色LED、及び上述の(Sr,Ba,Ca)AlSiN:Eu2+型のニトリドシリケート系の族の赤色蛍光体と組み合わせて用いられた。
【0025】
【表1】

【0026】
本開示は、次のセクションに分かれる:最初に、本赤色窒化物(化学量論式)の化学的説明が行われ、出発物質に焦点を当てて合成の説明が続く。そして、本窒化物系赤色蛍光体の構造が詳細に説明されるが、その構造へのさらなる言及は、実験のX線回折(XRD)データを伴う開示において後でなされる。ハロゲン包含の際の波長及びフォトルミネセンスの変化を含む実験データが提示され、ハロゲン包含の結果としての酸素含有量の低下について言及がなされる。最後に、本赤色窒化物が白色光照明及びバックライティング用途で果たすことができる役割が例示的データとともに提示される。
【0027】
本赤色窒化物の化学的説明
本蛍光体の式を説明する方法がいくつか存在する。1つの実施態様では、本蛍光体はM−A−B−(N,D):Zの形態を有し、式中、M、A、及びBは、それぞれ、二価、三価、及び四価の原子価を持つ3つのカチオン金属及び/又は半金属であり;Nは窒素(三価元素)であり、ならびにDは、窒素とともに、アニオン電荷平衡に寄与する一価ハロゲンである。このように、これらの化合物は、ハロゲン含有窒化物と考えることができる。元素Zはホスト結晶内の活性剤であり、フォトルミネセンス中心を提供する。Zは、希土類又は遷移金属元素であってもよい。
【0028】
本窒化物系赤色蛍光体は、構成元素の近似比率を強調するために、わずかに異なる形式で説明してもよい。この式はM(N,D):Zの形態をとり、式中、構成元素(m+z):a:b:nの化学量論は一般的な比率1:1:1:3にしたがうが、これらの整数値からの偏差が予想され、nは、両端点を含んで約2.5〜約3.5の範囲である場合がある。ただし、式は、活性剤Zがホスト結晶内の二価金属Mを置換すること、及び蛍光体のホスト材料が実質的に酸素を含有しない(又は、本実施態様によれば、少なくとも約2重量パーセント未満である)ことを示す。
【0029】
本発明の実施態様は、式M(N,D):Eを有する窒化物系赤色蛍光体を対象とし、式中、Mは、単一の二価元素であってもよいし、又は2つ以上の二価元素の組み合わせ(又は、2つの二価元素の同時使用)であってもよい。二価元素は、周期表の2列目からの元素、アルカリ土類金属を含む。2つの二価金属は、例えば、Ca及びSrであってもよい。この式では、nは、両端点を含んで約2.5〜約3.5の範囲であってもよく、電荷補償は、カチオン含有量の再分配、空孔数の変化、不純物の包含などによって達成してもよい。本蛍光体では、Mは、Mg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される少なくとも2つの二価アルカリ土類金属の組み合わせであってもよく;Mは、三価金属、例えばAl、Ga、Bi、Y、La、及びSmであり;ならびにMは、四価元素、例えばSi、Ge、P、及びBであり;Nは窒素であり、Dはハロゲン、例えばF、Cl、又はBrである。次の説明は、まず、アルカリ土類金属を含有する出発物質をどのように調製することができるのかについての開示、そして、本窒化物系蛍光体を調製することができる方法の説明を含有し、それから、試験結果で終了する。いくつかの出発物質の調製は、発明者らが窒化ストロンチウムのうちの1つが市販されていないと考えるため、新規であると思われる。
【0030】
本窒化物系赤色蛍光体は、さらに別の方法で説明してもよく、この形式は、窒化物ホストに存在する窒素の量に対して、存在する金属とハロゲンの量の間の化学量論的関係を強調する。この表現は、M3w[(2/3)(m+z)+a+(4/3)b−w]の形態を有する。パラメータm、a、b、w、及びzは、次の範囲内にある:0.01≦m≦1.5;0.01≦a≦1.5;0.01≦b≦1.5;0.0001≦w≦0.6、及び0.0001≦m≦0.5。
【0031】
金属Mは、アルカリ土類又はその他の二価金属、例えばBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、及び/又はHgであってもよい。異なる組み合わせが可能であり、Mは、これらの元素のうちの単一の1つ、又はそれらの任意又はすべての混合物であってもよい。1つの実施態様では、金属MはCaである。
【0032】
は、三価金属(又は半金属)、例えばB、Al、Ga、In、Y、Sc、P、As、La、Sm、Sb、及びBiである。また、これらの金属/半金属の異なる組み合わせ及び含有量が可能であり、1つの実施態様では、金属MはAlである。
【0033】
は、四価元素、例えばC、Si、Ge、Sn、Ni、Hf、Mo、W、Cr、Pb、Ti、及びZrである。1つの実施態様では、四価元素MはSiである。
【0034】
元素Dは、ハロゲン、例えばこの窒化物系化合物中のF、Cl、又はBrであり、任意の数の構成で結晶内に含有してもよい:例えば、結晶ホスト内の置換役割(窒素を置換する)で存在してもよく;結晶内、及び/又はおそらく結晶粒、領域、及び/又は位相を分離する粒界内で格子間に存在してもよい。ハロゲンの量は、約0〜約2原子パーセントの範囲であってもよい。他の実施態様では、ハロゲンの量は、それぞれ、約0〜約0.2、0.5、1、及び5原子パーセントの範囲である。
【0035】
Zは、少なくとも1つ以上の希土類元素及び/又は遷移金属元素を含む活性剤であり、Eu、Ce、Mn、Tb、及びSmを含む。1つの実施態様では、活性剤Zはユーロピウムである。本発明の1つの実施態様によれば、活性剤は二価であり、結晶内の二価金属Mと代替する。活性剤及び二価金属Mの相対的な量は、モル関係z/(m+z)によって説明することができ、それは約0.0001〜約0.5の範囲内にある。この範囲内に活性剤の量を保つことは、活性剤の過剰な濃度が原因となる発光強度の減少によって現れる、いわゆる急冷効果を実質的に避けることができる。望ましい量の活性剤は、特定の活性剤を選ぶことで変化させることができる。
【0036】
本合成の出発物質
従来技術の出発物質は、典型的には、金属の窒化物及び酸化物からなっている。例えば、米国特許第7,252,788号で蛍光体CaAlSiN:Eu2+を製造するには、カルシウム、アルミニウム、及びケイ素源の窒化物出発物質は、それぞれ、Ca、AlN、及びSiであってもよいことが教示される。この開示におけるユーロピウム源は、酸化物Euであった。対照的に、本蛍光体内の金属源は、少なくとも部分的には金属のハロゲン化物であってもよく、典型的な例は、MgF、CaF、SrF、BaF、AlF、GaF、BF、InF、及び(NHSiFを含む。ユーロピウムは、2つのフッ化物EuF及びEuFのどちらによって供給してもよい。二価、三価、及び四価金属のハロゲン化物の使用は、ハロゲンを蛍光体に供給する唯一の方法ではない:代わりの方法は、フラックス、例えばNHF又はLiFを用いることである。
【0037】
具体的には、本蛍光体の合成における原材料として適切な二価金属Mの化合物は、窒化物、酸化物、及びハロゲン化物;例えば、Mm、MmO、MmD(式中また、DはF、Cl、Br、及び/又はIである)を含む。三価金属Mの類似原材料化合物は、MaN、Ma、及びMaDである。四価金属出発化合物は、Mb及び(NHMbFを含む。ハロゲン化物アニオンDの化合物は、NHD及びAeD(式中、Aeはアルカリ金属、例えばLi、Na、及びMDであり、Meはアルカリ土類金属、例えばMg、Ca等である)を含む。
【0038】
従来技術の参考文献は、ユーロピウムの酸化物、Euを、この材料が容易に入手可能な市販の化合物であるので、ユーロピウム活性剤源として開示している。本発明者らは、しかしながら、この化合物中の酸素が、蛍光体のフォトルミネセンス特性に対して悪影響を有することを発見した。この問題をなくす1つの方法は、酸素を含有しないユーロピウム源、例えば実質的に純粋なEu金属を用いることであるが、これは非常に高価な手法なので実行するのは困難である。本発明の1つの実施態様は、Euハロゲン化物、例えばEuF及び/又はEuClをユーロピウム含有出発物質として用いることである。本発明者らは、ユーロピウムハロゲン化物、例えばEuFがユーロピウム源として用いられるとき、蛍光体の発光効率が増大し、蛍光体の発光波長がより長い波長に移行することを見出した。このように、本発明の1つの実施態様は、ユーロピウム源として、ユーロピウム化合物EuD(D=F、Cl、Br、I)を用い、Euを用いないことである。これらの概念は、添付の図面とともに、より完全に説明及び検討される。
【0039】
窒化ストロンチウム出発物質は、Sr金属を窒素雰囲気下で約600〜850℃の温度で約5〜12時間窒化することによって合成してもよい。得られたSr窒化物は、不活性雰囲気、例えば窒素雰囲気中のグローブボックス内で粉砕される。Sr窒化物出発物質を調製するために用いられる化学反応は、次の等式によって表すことができる:
3Sr+N→Sr
【0040】
Ca窒化物は、商業的に入手しても、特別に調製してもどちらでもよい。独力でCa窒化物を調製することを望む場合、窒化ストロンチウムを調製するための上述と同様の手順:カルシウム金属を、窒素雰囲気下で約600〜950℃の温度で約5〜12時間窒化する手順を用いてもよい。ただし、加熱工程の上部温度は、Caの場合、Srの場合よりわずかに高い。その工程から得られるCa窒化物は、不活性雰囲気、例えば窒素雰囲気下のグローブボックス内で粉砕される。化学反応は、次の等式によって表すことができる:
3Ca+N→Ca
【0041】
2つ以上の二価元素(例えば、Ca及びSr)を含有する新規蛍光体の合成方法は、「Nitride-based red phosphors」と題する、2008年10月13日出願の、出願番号12/250,400を有する同時継続出願で記載されたものと同様である。出願12/250,400は、その全体が本明細書に組み込まれる。この場合は、原材料Sr、Ca、AlN、Si、及びEu含有材料、例えばEuF、EuCl、Eu、及び/又はそれらの組み合わせは、窒素などの不活性雰囲気下で密封された。不活性雰囲気を含有するグローブボックスを用いてもよい。これらの原材料は秤量され、次に任意の当該技術において公知の方法、例えば通常のボールミルでの混合を用いて混合される。
【0042】
次に、原材料混合物を、不活性雰囲気中、高温で燃焼し;この燃焼工程を実施する好都合な方法は、原材料混合物をるつぼ内に置き、その後、るつぼを管状炉内に置くことである。るつぼ内の原材料混合物を、毎分約10℃の加熱速度を用いて約1400〜1700℃の温度に加熱し、再び、手順全体を窒素などの不活性雰囲気中で行う。いったんその温度で、混合物を1400〜1700℃で約2〜10時間維持し、原材料混合物を焼結する。焼結が完了した後で、焼結した材料をおおよそ室温に冷却し、その後、当該技術において公知の任意の粉砕手段、例えば乳鉢又はボールミルでの粉砕を用いて粉砕する。粉砕工程は、所望の組成物を有する粉末形態の蛍光体を製造する。
【0043】
本窒化物系赤色蛍光体の構造
アルミノニトリドシリケートは、ケイ素をアルミニウムで代替することによってニトリドシリケートから得てもよい。式CaAlSiNを有する新規の赤色蛍光体は、K. Uhedaらによって前に示唆した参考文献:Electrochemical and solid-state letters, 9 (4) (2006), pages H22-H25内の「Luminescence properties of a red phosphor, CaAlSiN3:Eu2+, for white light-emitting diodes」に説明されている。CaAlSiN:Eu2+族の化合物の結晶構造は、空間群Cmc2を有する斜方晶系であることが見出され、ここで、単位セル体積は少なくとも最高20モルパーセントまでのEu濃度の増大に伴って線形に膨張する。この構造は角を共有する六員環を形成する[SiN]及び[AlN]の四面体で構成され;環は、2つの種類があるシートを形成するように組み合わせられ、三次元ネットワークを形成するように交互に重ねられる。Ca2+イオンは重ねられた平面のキャビティ内に収容され、Eu2+イオンがCa2+イオンを置換する。一方が他方に対して180度回転した、重ねられた2枚のシートは、2つの種類の窒素サイトの存在の基礎を形成し、本実施態様に対するその重要性は、次の数段落から明らかになる。
【0044】
Uhedaらの参考文献の図2は、2枚のシートのうちの任意の1枚、図でシートA又はシートBと表示されているいずれかにおいて、[SiN]又は[AlN]四面体のいずれかの任意の特定の頂点(角)における窒素サイトが、二次元のシートが別々の構造とみなされるとき、他の1つの四面体(再び、[SiN]又は[AlN]四面体のいずれか)のみによって共有されることを示す。しかし、2つの種類のシートが重ねられ、シート間に結合が考慮される場合、その頂点が他の2つの四面体と共有される角である第2の種類の窒素サイトを作り出す。角共有の性質は、窒素サイトの3分の2が他の3つのSi/Al四面体とともに配位され、Nサイトの残りの3分の1が他の2つのSi/Al四面体とともに配位されるようになっている。Uhedaらは、これが、前述のニトリドシリケート蛍光体CaSiN:Eu2+(式中、すべてのN原子は2つのSi四面体とのみ配位される)と対比されることを指摘する。結果として、CaAlSiN:Eu2+は、CaSiN:Eu2+よりも堅固な構造を有する。
【0045】
ハロゲン原子が本赤色窒化物内のちょうどどこに位置するのか、同じ蛍光体においてハロゲンがCl、F原子であるのか、又はCl及びFの両方の組み合わせかであるのかどうかの判断は、CaAlSiN結晶構造内でのすべての原子の原子配列を考えることによって最も良く理解される。この主題は、R-J XieらによってScience and Technology of Advanced Materials 8 (2007), pp. 588-600に公開された「Silicon-based oxynitride and nitride phosphors for white LEDs-a review」で検討されている。材料の原子配列は、特にCaAlSiN結晶内のハロゲンに付随するので、本開示の次の数段落で取り上げる。CaAlSiNそれ自体は、空間群Cmc2を有する斜方晶系結晶構造、及びa=9.8007Å、b=5.6497Å、c=5.0627Åの単位セルパラメータを有する。
【0046】
本CaAlSiN系ハロゲン含有材料の構造は、角共有SiN及びAlN四面体を築き上げ、2つの異なる方法で結合される:いわゆるN2サイト内の窒素原子の3分の1は、2つの隣接するSiN又はAlN四面体に結合し、N3サイト内の残りの3分の2の窒素原子は、3つの隣接するSiN又はAlN四面体に接続される。Si4+及びAl3+カチオンは、4個の窒素原子によって形成される四面体サイト内でランダムに分布する。四面体は、角共有を示して、頂点が結合したM18環(式中、Mはアルミニウム及びケイ素カチオンを表す)を形成する。Ca原子は、6つの角共有Al/Siで占められた四面体によって囲まれたトンネル内に存在し、平均Ca−N結合長が2.451Åである2〜4個の窒素原子に配位される。
【0047】
光学特性に対するハロゲン含有量の効果
ユーロピウムのハロゲン化物はユーロピウム源として用いてもよいことが、Hirosakiらによって教示されている(米国 第2007/0007494号)。彼らの開示は、「・・・他の窒化物材料との良好な反応性の観点から、[ユーロピウム]の酸化物、窒化物、及びハロゲン化物が好ましく、原材料を低コストで入手でき、蛍光体合成温度を低下させることができるので、酸化物が特に好ましいことを記載している。この特許出願は、次に、結晶の成長を促進する効果を有するので、Euハロゲン化物、例えばEuF、EuF、EuCl、及びEuClが[また]好ましいことを開示する。Euは、安価な原材料であり、低潮解度を有し、相対的に低温で高輝度蛍光体の合成を可能にするので、特に好ましい。もしあるとしても結晶の内部で終わるこの源からのハロゲンの量は述べられておらず、このようなハロゲン含有の利益(例えば、汚染物酸素を除去する可能性)が確かに提示されていない。
【0048】
フォトルミネッセンス及び色度についてのCaAlSiN族蛍光体のハロゲン含有効果は、本発明者らの知る限りでは、文献に開示されていない。その後の議論では、光電発光強度、ピーク発光波長、ならびに色度パラメータx及びyが、ハロゲン含有量の関数として測定され、この含有量は、ハロゲン化ユーロピウム源によって供給される基準値レベルを提供する。ユーロピウム源としてEuを用いて蛍光体が合成された各実験について制御が実行され、そうして対照試料は基準値ハロゲン含有量を有さなかった。図2〜9の各グラフには3つの曲線があり、1つの曲線は、3つのユーロピウム源Eu、EuCl、EuFのそれぞれについてのものである。このように、Eu合成蛍光体からの曲線は、基準値ハロゲンを有さない;EuCl合成蛍光体からの曲線は、xが約0.04に等しい塩素の開始レベルを有する。
【0049】
追加のハロゲン「x」(式を参照)は、NHF(図2、3、6、7)又はNHCl(図4、5、8、9)の形態で供給され、この源からのハロゲンは実験において独立変数であった。それは、化学量論的に0から約0.3に増加し、上述の光学特性についてこれがどのような効果を有したのかが分かる。この方法によって、本実施態様の特定の赤色窒化物は、その組成において、ハロゲンF及びClの両方、一方又は他方を含有してもよいし、あるいはそのどちらも含有しなくてもよい。
【0050】
第1のデータセット(図2〜5)は、それぞれ、ユーロピウム源がEuF及びEuClのときに式Ca0.2Sr0.79AlSiNEu0.01(F,Cl)0.04+xを、ならびにユーロピウム源(Eu)がハロゲンを供給しないときにCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01(F,Cl)を有する例示的な蛍光体についてのものである。この族の蛍光体は、それらの発光色(R=赤色)及び波長(nm)でR630と総称されることがある。第2のデータセット(図5〜8)は、例示的な蛍光体Ca0.16Sr0.82AlSiNEu0.02(F,Cl)0.04+x及びCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02(F,Cl)についての類似の実験によって生成され、ここで、再び、組成物は、ユーロピウム源はEuFの場合Fを含有し;ユーロピウム源がEuClの場合Clを含有し;そしてユーロピウム源がユーロピウムの酸化物(Eu)の場合ハロゲンを含有しない。この族の蛍光体はさらに、それらの赤色発光色、今度は約640nm波長の中心で、R640と総称されることがある。蛍光体のR630群の酸素含有量は約1重量パーセントである一方で、R640族のそれは約1.35重量パーセントであった。
【0051】
図2A及び2Bは、それぞれ、NHFによって供給されるフッ素含有量xが、さまざまなハロゲン基準レベルを上回って増加するとき起こる、発光波長及びフォトルミネッセンス(PL)の変化のグラフであり;3つのR30化合物は、ユーロピウム源がEuFのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:F0.04+xであり;ユーロピウム源がEuClのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:Cl0.04であり;そしてユーロピウム源がEuのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:Fである。この特定の一組の化合物について、NHF源からより多くのフッ素が添加されるにつれて、発光波長が増大し、そうして、発光の色がより赤色になったことを理解することができる。この特性は、ユーザが、特定の演色性を持つ所望の色度を有する蛍光体をつくろうと試みるとき、特に有益であるとみなされる。追加のハロゲンにより波長が増大する効果は、基準値ハロゲン:F、Cl、あるいは初期のハロゲンなし(対照(Eu)の場合)の性質に関わらず同じである。この有益な効果は、フォトルミネセンス強度のわずかな損失(PLは、基準値を上回る追加のハロゲンが結晶中に組み込まれるにつれて、減少する)を犠牲にして生じるが、ただし、この減少は実質的ではなく、所望の色度及び演色を達成するために許容する価値が十分にある多くの状況が予想される。
【0052】
図3A及び3Bは、図2A及び2Bの同じ3つの化合物に同じNHFを添加したCIE座標x及びyに対する効果を示すグラフである。色度について本実施態様が有する重要性のため、色度が何を意味するのかについて、ならびに光学的性能、例えば色温度及び演色に影響を与える他の問題に関するその特性から示唆されることについて、短い検討を提供することは適切とみなされる。
【0053】
K. Narisadaらにより、Phosphor Handbook(CRC Press, New York, 1999)pp. 799-818のChapter 17, Section One「Color Vision」で記載されるように、CIE比色システムは、基本(単色波長)色を3原色を混合することによって作られた試験色と比較することによって生成された3つの仮想基本色刺激(三刺激値と呼ぶ)から得られる。試験光源色は三刺激値から特定され、光源の色度座標x及びyを画定するのに用いられる。Intersociety Color Council-National Bureau of Standard(ISCC-NBS)によって指定された各色のx及びy座標のプロットは、CIE色度図と呼ばれ、Phosphor Handbookの809ページに示されている。
【0054】
K. Narisadaらは、さらに、色順応、すなわち照らされる物体の認知についての照明の(可変)色の影響を最小限にする視覚の機能の概念を教示する。可変色照明とは、物体を照らしている光の色度座標が、知覚された色と常に対応するとは限らないことを意味する。この対応の欠落を補正する(CIEによって提案される)1つの方法は、「色温度」、すなわち光源と同じ色を持つ光を放射する黒体放射体の絶対温度によって光の色を客観的に画定することである。光源の色は、色温度が増大するにつれて、赤みがかった色から青みがかった色に変化する。「相関色温度」は、光源の色度座標が放射体と正確に整合しない場合の光源に最も近い黒体放射体の絶対温度である。
【0055】
本窒化物系赤色蛍光体を説明するのに有用な最終的な色覚特性は、演色、すなわちその源によって照らされている物体の色を変化させる光源の特性である。パラメータRによって表される「演色指数」は、光源の演色性の程度を示す。それは、8つの異なる選択された物体色について、試料及び基準光源の色度点間の距離の差の平均を取ることによって計算される。Rの最大値は100であり、それは、任意の8つの選択された色について、試料と基準源との間に差がないことを意味する。
【0056】
本実施態様の例示的な窒化物系蛍光体の色温度及び演色指数値は、白色光照明を取り上げるセクションで後述するが、ハロゲン添加のCIE座標x及びyへの効果はこの機会に取り上げる。図3A及び3Bは、図2A及び2Bの同じ3つの化合物に同じNHFからのハロゲンを添加した(それぞれ)CIE座標x及びyに対する効果を示すグラフである。x座標が増大し、その後y座標が減少することが観察され、Phosphor HandbookのCIE色度図を見ると、より長い波長及びより深い赤色への移行を裏付ける。
【0057】
図4A及び4Bは、NHClによって供給される塩素含有量xがさまざまなハロゲン基準レベルを上回って増加するときに起こる、それぞれ、発光波長及びフォトルミネッセンス(PL)の変化のグラフであり;3つの化合物は、ユーロピウム源がEuFのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:F0.04Clであり;ユーロピウム源がEuClのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:Cl0.04+xであり;そしてユーロピウム源がEuのときCa0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:Clである。傾向は、図2A及び2Bのものと同じであり;つまり、発光波長は、NHF源からより多くのフッ素が添加されるにつれて増大し、そうして、発光の色はより赤色になった。
【0058】
図5A及び5Bは、図4A及び4Bの同じ3つの化合物に同じNHFからのハロゲンを添加した(それぞれ)CIE座標x及びyに対する効果を示すグラフである。NHFが添加されたR630化合物の場合のように、x座標が増大し、その後y座標が減少することが観察され、CIE色度図を見ると、より長い波長及びより深い赤色への移行を裏付ける。
【0059】
類似の一連の実験がR640族の化合物で行われ;これらの結果を図6〜9に示す。図6A及び6Bは、NHFによって供給されるフッ素含有量xがさまざまなハロゲン基準レベルを上回って増加するときに起こる、それぞれ、発光波長及びフォトルミネッセンス(PL)の変化のグラフであり;3つの化合物は、ユーロピウム源がEuFのときCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:F0.04+xであり;ユーロピウム源がEuClのときCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:Cl0.04であり;そしてユーロピウム源がEuのときCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:Fである。この特定の一組の化合物について、発光波長は、NHF源からより多くのフッ素が添加されるにつれて再び増大し、そうして、発光の色がより赤色になることが理解することができる。フォトルミネッセンスのグラフは、フォトルミネッセンスが、R630化合物の場合とは逆に影響を受けないことを示す。それらの化合物のCIEの変化を図7A及び7Bに示す。
【0060】
図8A及び8Bは、NHClによって供給される塩素含有量xがさまざまなハロゲン基準レベルを上回って増加するときに起こる、それぞれ、発光波長及びフォトルミネッセンス(PL)の変化であり;3つの化合物は、ユーロピウム源がEuFのときにCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:F0.04Clであり;ユーロピウム源がEuClのときにCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:Cl0.04+xであり;そしてユーロピウム源がEuのときにCa0.16Sr0.82AlSiNEu0.02:Clである。R630化合物によって設定された傾向にしたがって、これらのR640化合物は、塩素が添加されるにつれて、発光波長の増大を示し、フォトルミネセンスの強度も同様にいくらか減少する。それらの化合物についてのCIEの変化を図9A及び9Bに示す。
【0061】
追加のハロゲンがフラックス、例えばNHF又はNHClによって供給されないときの、R630及びR640型化合物の両方についての発光波長の関数としてのフォトルミネッセンスを図10A〜10Bに示す。両方(R630及びR640)の場合において、フッ素化バージョンは最も高い強度を示し、次いで、塩素化バージョンであった。非ハロゲン化バージョン(ユーロピウムの酸化物、EuでR630及びR640の合成が提供されるので、ハロゲンは添加されなかった)は、最も低い強度を示した。しかしながら、最も長い発光波長を呈する化合物の順序は異なっており、R630では非ハロゲン化化合物が最も長い、R640ではそれぞれの系の最も短い波長を有していた。
【0062】
最も高いフォトルミネセンス強度を提供するために、R630及びR640のフッ素ドープが示された(図10A〜B)ので、式Ca0.157Sr0.808AlSiNEu0.035を有し、R645と称される別の窒化物系蛍光体とともに、(R640の式のわずかな変更にもかかわらず)図10Cにおいて、その2つが同じグラフ上で比較された。この命名法は、蛍光体が645nmで発光することに由来し;読者は、図10Cでは、それもまた、R630及びR640と比較したときに最も低い強度を有したことに注意されたい。図10Cは、R630、R640及びR645の名称を有し、名称の数値がその特定の蛍光体の大まかなピーク発光波長を示す、窒化物系赤色蛍光体の発光スペクトルの集合である。それら3つの蛍光体の式は、それぞれ、Ca0.2Sr0.79AlSiNEu0.01(R630)、Ca0.158Sr0.815AlSiNEu0.023(R640)、及びCa0.157Sr0.808AlSiNEu0.035(R645)であり、式中、EuFは3つの組成物それぞれのユーロピウム源として用いられた。このデータセットは、フォトルミネセンス強度が、ピーク発光波長の増大に伴って減少することを示す。
【0063】
ハロゲン包含の影響を調査した上述の実験では、さまざまな度合いで、ストロンチウム(Sr)がカルシウム(Ca)を置換するために用いられたことを観察する。CaAlSiNホストにおけるストロンチウム代替の効果は、より少ない他の元素代替及び包含とともに、次のセクションでより完全に調査される。
【0064】
CaのSr置換を有する組成物の光学特性
2つの二価元素の比率を変動させる効果を、それらの元素がストロンチウム及びカルシウムであるとき、図11に示す。図11では、第2二価金属Srの包含が、グラフのx軸に沿って左から右へ、ストロンチウムがない値(x=0)から100%の値(x=1ではカルシウムがない)まで増加することが示される。
【0065】
図11は、2つの部分を含有する:第1は図11Aに示すピーク発光波長であり、第2は図11Bに示すフォトルミネセンス(PL)値である。試験試料は、一般式Ca0.98−xSrAlSiNEu0.02を有する化合物である。したがって、この蛍光体に同時に存在する2つの二価元素は、比較のために示された、1つの金属だけが存在する両端点を例外として、カルシウム及びストロンチウムである。図1の結果は、ストロンチウムの含有量「x」が0から1に増加するにつれて、ピーク発光波長はまずわずかに増加し、それは、発光がより赤色になり(最も長い波長がx=0.2で起こる);そして、最大約660nm(x=0.2)から最終値約637nm(x=1で)へ徐々に減少することを意味する。図11Bのフォトルミネッセンスは、一般に約x=0〜x=0.8の間でおおよそ一定であるが、ストロンチウムの含有量がx=0.8からx=0.9へ増加するにつれて、実質的に減少する。
【0066】
図12は、それぞれx=0.82及びx=0での式Ca0.98−xSrAlSiNEu0.02を有する同じ2つの化合物の、正規化発光スペクトルの集合(図12A)であり、本蛍光体におけるSrのCaに対する高い比率の最大発光波長の効果;ならびに正規化されていない発光スペクトル(図12B)を示して、相対的な輝度を示す。発光ピーク波長は、それぞれ、x=0及びx=0.82について658nmから638nmへ約20nmも変化したが、x=0.82のストロンチウム含有量をドープした試料も同様により明るい。
【0067】
図13は、さらなる量のアルカリ土類金属で本窒化物系赤色蛍光体をドープする効果を示し;具体的には、前の段落で述べたCa/Sr混合物の一部分を置換するCa、Sr、及びBaである。ここで、研究中の化合物は式Ca0.2Sr0.74AlSiM0.05Eu0.01(式中、MはそれぞれCa、Sr、Baであり、0としてのMは実験の対照として用いられた)を有する。ユーロピウム源はフッ素化EuFであり;同様に、アルカリ土類フッ化物はCa、Sr、及びBa源として用いられた。このデータセットは、ピーク発光波長が、5%アルカリ土類金属の添加に伴って、より長い波長へ移行することを示す。波長の増大順は、Ca、そしてSr、最後にBaであった。
【0068】
図14A及び14Bは発光波長の集合であり、5%レベルの(周期表の)IIIA族金属M(この例では、Mはホウ素又はガリウムのいずれかである)を持つ窒化物系赤色蛍光体について、生データが図14Aに示され、正規化バージョンが図14Bに示される。これらのドープ金属(半導体及び/又は半金属)は、三価金属アルミニウムを置換することとして次の式:Ca0.2Sr0.79Al0.95SiM0.05Eu0.01:Fで示される。再び、EuFが、窒素と代替するハロゲンドーパントと同様に、両方の活性剤ユーロピウム源として用いられた。ここで、ホウ素及びガリウムの順での5%アルカリ土類金属の添加に伴って、ピーク発光波長はより長い波長へ移行し(図14Bの正規化データセットに最も良く示される)、フォトルミネッセンスが減少した(図14Aの非正規化データセットに最も良く示される)。
【0069】
活性剤
図15Aは、Eu源及び含有量の関数としてのピーク発光波長の変化を示すグラフであり、Eu源はユーロピウム金属の酸化物、フッ化物、及び塩化物塩を含む。この研究に選択された化合物はCa0.2Sr0.8−xAlSiNEuであり、式中、パラメータ「x」は存在するEu活性剤の量を表し;その値は、この実験において0.005〜0.015の範囲である。データは、ユーロピウムのフッ化物から合成された蛍光体が、群の中で最も長い波長を示すのに伴って、Eu含有量が増加するにつれて、ピーク発光波長がより長い波長(より深い赤色)へ移行することを示す。ユーロピウムの塩化物から合成された蛍光体は、データセットの中ほどで酸化物が最も短い波長を示した:このセットは、出発物質(この場合には、ユーロピウム源の性質)の適切な選択を経て、特に望ましい発光波長を達成することができることを示す。
【0070】
EuF生成試料だけが同じユーロピウム含有量を有するEu系試料よりも長い波長を発光するのではなく、EuF生成試料も同様により明るい。これは、図15Bに図示される。図15Bのデータは、図15Aのそれと同様の形式であるが、今度はユーロピウム含有量の関数としてフォトルミネッセンス(PL)がプロットされている。再び、データが、3つの種類の化合物について収集され;ユーロピウム金属の酸化物、フッ化物、及び塩化物塩から合成されたものである。ここで、フォトルミネッセンスは、まず、ユーロピウム含有量が増加するにつれて増加し、約0.01で最大含有量に到達した。0.01より高い値で0.015までの値では、フォトルミネッセンスは、Ca0.2Sr0.8−xAlSiNEuの3つの変更例について、横ばいになるか、又はわずかに減少するかのいずれかであった。これがハロゲンの包含によるものか、又は(ハロゲン刺激酸素除去効果による)酸素の欠如によるものかどうか、正確には分からないが、どちらであっても、その効果は有利であると認識される。
【0071】
本赤色窒化物と併用して用いてもよい活性剤、特に希土類は、Mn、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuを含む。これらの活性剤は、任意の組み合わせで、5原子パーセントまで(この値を含む)、所望の組み合わせで用いることができる。
【0072】
本窒化物系赤色蛍光体の励起スペクトル
図16は、式Ca0.2Sr0.8AlSiNEu0.01を有するR630組成物、及び式Ca0.158Sr0.815AlSiNEu0.023を有するR640組成物についての励起スペクトルの集合である。励起スペクトルは、蛍光体にフォトルミネッセンスをもたらすために用いられる入射励起放射の波長の関数として選択された、この場合にはおおよそ630から640nmの波長でフォトルミネッセンスを測定することによって取得される。この実験では、励起放射の波長は、UVから可視光紫色までの範囲の電磁スペクトルにある約400nmから、橙色から赤色に近づく約600nmに増大した。データは、本実施態様の例示的な蛍光体が、励起放射の波長が約400〜約550nm(黄色)の範囲であるとき、フォトルミネッセンスに効率的であることを示す。
【0073】
本蛍光体は、約250〜400nmの範囲の波長の紫外線及び近紫外線で活性化されてもよい。
【0074】
本窒化物系赤色蛍光体のX線回折(XRD)パターン
本実施態様の典型的な組成物のうちの1つのX線回折(XRD)パターンを、図17に示す。検査された特定の化合物は、Ca0.2Sr0.79AlSiNEu0.01:Fであった。この化合物は、そのX線回折パターン(本開示の図17)を、CaAlSiNホスト及びEuで活性化されるCaAlSiNホスト(それぞれ、米国第2007/000749号の図1−1及び1−2)と比較することによって、CaAlSiN型の構造を有することが理解できる。
【0075】
本実施態様の窒化物系赤色発光蛍光体は、大量のSrが存在し、Caを置換してさえいるが、(311)面からの回折を表す、2θで約36度のおそらく最も高い強度回折ピーク;約35度で(002)ピークから別の高い強度;約32度で(310)面からのピーク;40〜41度で(221)面からのピークセット;及び48度で(312)及び/又は(022)面からのピークセットであるものの存在によって識別することができる。本開示の図17におけるピークの強度が、上記で識別された(hkl)面に関して、米国第2007/000749号のそれとは異なることは、本化合物の代替及び包含の結果としての、単位セル内での原子配置のわずかな移行を示す。
【0076】
窒素サイト上のハロゲン分布、ハロゲンによる酸素除去、及び酸素含有量
本発明の実施態様は、次の新規の特徴のうちの少なくとも1つを有する、窒化物系深紅色蛍光体の蛍光を対象とする:1)約2重量パーセント未満の酸素含有量、及び2)事実上任意の量のハロゲン含有量。このような蛍光体は、いわゆる「白色LED」を利用する白色光照明産業、ならびに同じく白色光を利用するバックライティング用途において、特に有用である。蛍光体のための希土類活性剤だけでなく、ハロゲンの原材料源としても、希土類ハロゲン化物の選択及び使用は、本実施態様の主要な特徴である。いかなる特定の理論によって拘束することも望まないが、ハロゲンは、酸素含有量を低減することに加えて、フォトルミネセンス強度及びスペクトル発光の増大を引き起こすことによって:これらの蛍光体の特性を高めることにおいて、二重の役割を果たすことができると考えられる。
【0077】
機械的剛性の利点は別として、2つの種類の窒素サイトを持つ本実施態様のCaAlSiN:Eu2+型の構造について別の重要性があり;それは、ハロゲンドーパントの分布及び/又は、及び酸素不純物がランダムでないということである。Hirosakiらは、米国公報第2007/0007494号に、そのような状況で、いかに「Nが、O及びFからなる群より選択される1又は2つ以上の元素で置き換えられている」のかを説明する。しかし、Hirosakiらは、いかにO及びFがNを置き換えられるのか言及しておらず、また彼らは、本発明者らによって酸素汚染を低減すると考えられているハロゲンの除去能力を教示していない。2つのAl/Si四面体によって角共有する窒素サイトがN2と称され、3つのAl/Si四面体によって角共有する窒素頂点がN3と称される命名法を用いて、本発明者らは、少なくともある状況では、O2−原子価(2−)がN3−原子価(3−)のそれより低いために、酸素不純物がN2サイトを占めていることを提示する。これがそのとおりであれば、自由エネルギーの最小化と同じ理由で、一価ハロゲンイオンF及びClもまた、N3サイトよりむしろN2サイトを占めるのが好ましいということは、理にかなっている。本発明の1つの実施態様では、酸素及びハロゲンは、単位セル内の同じ原子配置を得るために争う。窒素サイトの2つの種類を説明する別の方法では、N2サイトは2配位であり、N3サイトは3配位である。
【0078】
本発明の実施態様によれば、ハロゲン含有量(重量によるか、又は数によるかのいずれか)の少なくとも半分(50パーセント)が、N3サイトよりむしろN2サイト上に存在する。別の実施態様では、ハロゲン含有量(重量によるか、又は数によるかのいずれか)の少なくとも80パーセントが、N3サイトとは対照的にN2サイト上に存在する。いくつかの実施態様では、N3サイトに対してN2上のハロゲンの望ましい分布は、液体沈殿及びゾルゲル技術を含む液体混合方法により、蛍光体を合成することによって達成してもよい。しかし、合成方法にかかわらず、これは固相反応機構を含むことを意味するが、本発明者らは、彼らのハロゲン包含方法が低酸素不純物含有量に関連すると考える。「低酸素不純物含有量」とは、約2重量パーセント未満の酸素を意味する。いくつかの実施態様では、低酸素不純物とは、約1.9重量パーセント未満の酸素、及び約1.8重量パーセント未満の酸素を意味する。
【0079】
酸素不純物は、本発明者らによって、出願番号12/250,400を有する、2008年10月13日出願の「Nitride-based red phosphors」と題する同時継続出願で検討されている。12/250,400出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。その出願は、米国特許第7,252,788号において、蛍光体内の酸素含有量が多いとき、発光効率が減少し(望ましくない)、蛍光体の発光波長もより短い波長側へ移行する傾向にあったことを発見及び開示したNagatomiらへの米国特許第7,252,788号について検討した。この後者の観察も、ほとんどの(すべてではないにしても)製造者は、赤色蛍光体が白色LED産業に提供する演色の利益のために、赤色領域がより深い(つまり、橙色又は黄色みの少ない)蛍光体を追加しようと試みるので、望ましくない。Nagatomiらは次のように続ける:彼らが提供する蛍光体は、ホスト材料中に酸素を含まず、より高い発光効率を呈し、そして発光波長のより短い波長側[スペクトルの]への移行を避ける利益を持つ。
【0080】
しかし、これは、達成するより、述べるほうがより容易である。酸素汚染は、Nagatomiらによって、米国第2006/0017365号において取り上げられ、その中で、源が、原材料の表面に付着し、そうして、合成の開始時に導入された酸素であり;酸素が、燃焼の準備及び実際の燃焼の際に原材料の表面の酸化の結果として添加され、酸素が燃焼の後に蛍光体粒子の表面に吸着したと考えられることが教示された。
【0081】
酸素測定値、ならびに測定値と計算値との間の食い違いの可能性のある原因の分析についての検討も、米国第2006/0017365号においてNagatomiらによって行われた。彼らの試料で測定された酸素含有量は2.4重量パーセントであり、計算された酸素濃度0.3重量パーセントと対比された。この、(いわゆる「過剰な酸素」を持つ)測定値に対する計算量の間の、ほぼ2重量パーセントの差の起源は、燃焼の準備の時点及び燃焼の際の、原材料の表面にもともと付着する酸素、ならびに燃焼の後で蛍光体の表面に吸着した酸素に起因した。
【0082】
米国特許第7,252,788号のNagatomiらの試料の酸素含有量は、同様に、2以上の重量パーセント値:表1及び3において2.2、2.2、及び2.1を示す。
【0083】
Hirosakiら(米国第2007/0007494号)は、結晶相のCaAlSiN族(式中、「Nは、O及びFからなる群より選択される1又は2つ以上の元素で置換される」)を教示する。酸素の場合には、CaAlSiN:Eu蛍光体内のその含有量が測定された。目的とする式Eu0.008Ca0.992AlSiNを有する合成された化合物を粉砕し、ICP発光分光分析によって組成分析を実施した。試料中の酸素及び窒素を、LECOモデルTC-436酸素及び窒素分析装置で測定した。酸素含有量を2.0±0.1重量%であると測定したが、その存在は、出発物質として用いられる金属(Si、Al、Ca)の窒化物に含有される酸素不純物に起因していた。したがって、分析結果から計算された合成された無機化合物の組成は、Eu0.0078Ca0.9922Si0.9997Al0.99962.7820.172である。フッ素含有量は、いずれの試料でも測定されなかった。
【0084】
前のセクションで式が示された、本R630蛍光体の測定された酸素含有量は、約1重量パーセントである。R640蛍光体の測定された酸素含有量は、約1.35重量パーセントであった。
【0085】
バックライティング及び白色光照明システムの用途
本発明のさらなる実施態様によれば、本赤色蛍光体は、一般に「白色LED」として周知の白色光照明システム、及びディスプレイ用途のバックライティング構成において用いてもよい。このような白色光照明システムは、約280nmより大きい波長を有する放射を放出するように構成された放射源;ならびに放射源からの放射の少なくとも一部分を吸収し、そして約630nm以上の波長範囲のピーク強度を持つ光を発光するように構成されたハロゲン化アニオンドープ赤色窒化物蛍光体を含む。これらの温白色ルミネセンスシステムによって発光される波長に対する光の強度の例示的なスペクトルを、図18A〜18Eに示す。本窒化物系赤色蛍光体の特性も、バックライティング照明システムの成分として適している。
【0086】
これらの用途で、本窒化物系赤色蛍光体は、蛍光体混合物又はパッケージ内で、単独か、又は所望に応じて任意のさまざまな組み合わせかのいずれかで用いられる任意の黄色、緑色、又は橙色発光蛍光体と組み合わせてもよい。黄色、緑色、又は橙色蛍光体は、アルミン酸塩系か、又はケイ酸塩系かのいずれかであってもよい。例示的な黄色、黄緑色、及び緑色ケイ酸塩系蛍光体は、MSiO(式中、Mは二価金属、例えばアルカリ土類(例えば、単独又は組み合わせたMg、Ca、Sr、及びBa)、又は他のこのような元素、例えばZnである)の形態であってよい。例示的な橙色ケイ酸塩系蛍光体は、MSiO(式中、Mはこの段落の上記と同様に定義される)の形態であってよい。これらのケイ酸塩系橙色及び/又は緑色蛍光体は、ハロゲン、例えばF又はClを追加で含有してもよく、またいくつかの実施態様では、このハロゲンアニオンが酸素を置換し、結晶内の酸素格子サイト上に存在してもよい。
【0087】
本窒化物系赤色蛍光体との組み合わせに特に適した例示的なケイ酸塩系黄緑色蛍光体は、本発明者らによって、Wangらへの米国特許第7,311,858号で説明されてきた。その特許で開示された蛍光体は、式MSiO:Eu2+D(式中、Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn、及びCdからなる群より選択される二価金属であり、Dは、F、Cl、Br、I、P、S、及びNからなる群より選択されるドーパントである)を有する。ドーパントDは、蛍光体内に約0.01〜約20モルパーセントの範囲の量で存在し、少なくともいくつかのドーパントアニオンは、酸素アニオンと代替する。これらのケイ酸塩系蛍光体は、約280nm〜約490nmの範囲の波長の放射を吸収するように、そして約460〜約590nmの範囲の波長の可視光を発光するように構成される。米国特許第7,311,858号は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
本赤色窒化物とともに使用するのに適した例示的なケイ酸塩系緑色発光蛍光体は、本発明者らによって、Chengらへの米国特許出願公報第2006/0145123号で説明されている。これらの蛍光体もMSiOの形態であり、具体的には、式(Sr,A(Si,A)(O,A2+x:Eu2+(式中、Aは、Mg、Ca、Ba、又はZnからなる群より選択される二価カチオンの少なくとも1つ、あるいは1+及び3+カチオンの組み合わせであり;Aは、B、Al、Ga、C、Ge、N、及びPのうちの少なくとも1つを含む、3+、4+、又は5+のカチオンであり;Aは、F、Cl、Br、及びSのいずれかを含む、1−、2−、又は3−のアニオンである)を有する。この式では、xは1.5〜2.5(両値を含む)の任意の値である。式は、AカチオンがSrを置換し;AカチオンがSiを置換し、及びAはアニオンがOを置換することを示すために記述される。A、A、及びAイオン(カチオン、又はアニオンのいずれとしても)の量は、それぞれ、約0〜約20モルパーセントの範囲である。米国特許出願公報第2006/0145123号は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0089】
本赤色窒化物とともに使用するのに適した例示的なケイ酸塩系橙色発光蛍光体は、本発明者らによって、他への米国特許出願公報第2007/0029526号で説明されている。これらの蛍光体もMSiOの形態であり、具体的には、式(Sr1−xEuSiO(式中、Mは、Ba、Mg、Ca、及びZnからなる群より選択される二価金属のうちの少なくとも1つであり;0<x<0.5;2.6<y<3.3、及び0.001<z<0.5である)を有する。米国特許出願公報第2007/0029526号は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0090】
橙色発光ケイ酸塩及び本赤色発光窒化物;緑色発光ケイ酸塩及び本赤色発光窒化物;そのさまざまな組み合わせ(橙色及び緑色発光ケイ酸塩の、本赤色発光窒化物との組み合わせを意味する)の、バックライティング及び温白色光照明システムで用いるための具体的な組み合わせを、次に説明する。例示的なデータが図18A〜18Eに示され、組み合わせは:約525nmで発光する緑色蛍光体(EG525)に加えて、前に説明したR630赤色蛍光体(図18A);同じ緑色EG525nm蛍光体と、前に説明したR640蛍光体との組み合わせ(図18B);約540で発光する緑色蛍光体、及びR630赤色窒化物(図18C);緑色EG540蛍光体と、赤色R640蛍光体との組み合わせ(図18D);そして最後に、緑色蛍光体EG540、586nmで発光する橙色蛍光体(O586と称される)、及び赤色R640窒化物を有する3成分システム(図18E)である。各赤色窒化物蛍光体組成物は、約2重量パーセント以下の酸素含有量を有してもよい。
【0091】
図18A〜18Eの例に用いられた赤色窒化物の組成は、次のとおりである:R630蛍光体は、式Ca0.2Sr0.8AlSiNEu0.01:Fを有し、R640蛍光体は、式Ca0.158Sr0.815AlSiNEu0.023:Fを有する。緑色蛍光体EG540は、MSiOケイ酸塩の塩素化バージョンであり、式Sr0.925Ba1.025Mg0.05Si1.03(O,Cl):Eu2+を有する。EG540緑色蛍光体も塩素化されていて、式Sr1.15Ba0.8Mg0.05Si1.03(O,Cl):Eu2+を有する。O586橙色蛍光体は、MSiOケイ酸塩のフッ素化バージョンであり、この特定の蛍光体は、式SrEu0.06Si1.020.18を有する。
【0092】
各図は、これらの例示的な組み合わせ、色協調温度(CCT)、輝度、及び演色指数Rから得られる白色光照明について、CIEx及びy座標を示す。本窒化物系赤色蛍光体と併用して用いてもよい具体的な例は黄色、緑色、及び橙色蛍光体であるが、これは、本赤色窒化物がそれらの蛍光体をともなう使用に制限されると述べているのではない。本発明の実施態様によれば、本窒化物系赤色蛍光体(N2かつN3サイトにわたって所望のハロゲン分布を有し、及び/又は約2重量パーセント未満の酸素含有量を有する)は、構造又は化学的構成にかかわらず、白色LED及びバックライトディスプレイ技術において、事実上任意の青色、黄色、緑色、橙色、又は他の種類の赤色蛍光体とともに用いてもよい。
【0093】
上記で開示された本発明の例示的な実施態様の多くの変形例が、当業者には容易になされる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内にあるすべての構造及び方法を含むと解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物酸素含有量が約2重量パーセント未満である、(Ca,Sr)AlSiN:Eu2+型の窒化物系赤色発光化合物。
【請求項2】
含有量が約0より大きい量から約2原子パーセントまでの範囲であるハロゲンをさらに含む、(Ca,Sr)AlSiN:Eu2+型の窒化物系赤色発光化合物。
【請求項3】
ハロゲンが、F及びClからなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
ハロゲンの少なくとも半分が、3配位窒素(N3)サイトに比べて2配位窒素(N2)サイト上に分布する、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
白色LED又はバックライトディスプレイの用途で用いるRGBライティングシステムであって、
請求項1記載の窒化物系赤色発光蛍光体、
緑色蛍光体、及び
約400nm〜約550nmの範囲の波長で発光する青色LED
を含む、RGBライティングシステム。
【請求項6】
白色LED又はバックライトディスプレイの用途で用いるRGBライティングシステムであって、
請求項2記載の窒化物系赤色発光蛍光体、
緑色蛍光体、及び
約400nm〜約550nmの範囲の波長で発光する青色LED
を含む、RGBライティングシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【公表番号】特表2012−512307(P2012−512307A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542245(P2011−542245)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/067178
【国際公開番号】WO2010/074963
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】