RH炉用環流管耐火物
【課題】本発明は、環流管耐火物を一体物の筒形構造体として、亀裂や折損及び目地部からの損傷等を防止することを目的とする。
【解決手段】本発明によるRH炉用環流管耐火物は、RH炉下部槽(1)に用いられ筒状の環流管耐火物(2)からなるRH炉用環流管耐火物において、前記環流管耐火物(2)は一体物の筒形構造体とした構成である。
【解決手段】本発明によるRH炉用環流管耐火物は、RH炉下部槽(1)に用いられ筒状の環流管耐火物(2)からなるRH炉用環流管耐火物において、前記環流管耐火物(2)は一体物の筒形構造体とした構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RH炉用環流管耐火物に関し、特に、環流管耐火物を一体物の筒形構造体として、亀裂や折損が少なく、かつ、目地部からの損傷進展がなく、耐用性に優れた構造とするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環流管用耐火物は、円筒形構造における上下方向や周方向に分割された耐火物部材にモルタルを介在させて組立てて使用されている。これは構成される耐火物を安価に製造するためになされるものであるが、耐食性や機械的強度が劣る目地部から溶損する問題があった。
また、RH炉では操業時に缶体が熱応力により変形することにより、環流管に機械的な応力が作用し、耐火物に亀裂や折損が発生したり損傷が進展したりする場合があった。
そこで、目地部の損傷抑制を目的に、内壁のみをスリーブれんがにする構造が、後述の特許文献1〜4のように提案されているが、RH炉操業初期の目地部損傷を防ぐことはできるが、中期以降にスリーブ部が損傷し分割構造の環流管本体が溶鋼にさらされ、目地部からの損傷が起こる。また、スリーブの肉厚が薄く、機械的応力による亀裂や折損が発生しやすい等の問題が存在していた。
【0003】
すなわち、特許文献1の「環流式真空脱ガス装置の下部構造」においては、環流管内壁を一体構造のスリーブれんがで形成することにより、目地に溶鋼が差し込むことによる溶損を抑制していた。
また、特許文献2の「環流式真空脱ガス装置」においては、環流管内壁を厚み150mmのスリーブれんがで形成し、浸漬管との接続部に凹凸を形成することにより環流管と浸漬管の境界部の溶損を抑制している。
また、特許文献3の「真空脱ガス炉環流管の補修方法」においては、一体物又は分割品の円筒状耐火物を、不定形耐火物によって内張りに接着させる補修方法が示されている。
また、特許文献4の「RH真空脱ガス装置の環流管煉瓦構造」においては、内径が600mm、外径が860mmの一体的に成形された円筒状のマグネシアー炭素質れんがを環流管の第1層目に使用している。
また、特許文献5の「真空脱ガス設備用環流管の施工方法」においては、目地部の損傷抑制を目的に、環流管の施工前に内巻れんがと外巻れんが(場合によっては中巻れんがでも)とをバンドにより固定し、れんがの密着を強固にしている。
【0004】
また、前述の各特許文献1〜5の各構成と同様のRH炉用環流管耐火物の実際の従来構成としては、本出願人が実施していた第1従来構成(図7から図9)及び第2従来構成(図10から図12)の構成を挙げることができる。
【0005】
すなわち、図7で示される周知のRH炉下部槽1には、一対の筒状の環流管耐火物2が設けられ、この環流管耐火物2は、図8及び図9で示されるように、円筒形で形成された下部3と、この下部3の上部に形成された四角形の上部4とによって構成され、この下部3及び上部4も複数の片からなり、各片を一体状に結合して構成されていると共に、内壁のみスリーブ5として形成されていた。
また、図10〜図12で示される第2従来構成においては、前述の第1従来構成における前記スリーブ5を除いた構成と同一であるため、同一部分には同一符号を付し、その説明は省略するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−25513号公報
【特許文献2】特開平9−241721号公報
【特許文献3】特公平7−62168号公報
【特許文献4】特開2007−197780号公報
【特許文献5】特許第2758585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のRH炉用環流管耐火物は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、特許文献1〜4の構成及び図7〜9の第1従来構成の場合、一体構造の部分が内壁だけであり、その厚みが充分でないために、スリーブれんがが溶損して消耗し、内壁外側のれんがの溶損を防ぐことが不可能であった。また、環流管耐火物全体を一体構造にはしていないため、円筒部外周に目地が生じるという問題もある。
さらに、特許文献2の場合は、凹凸構造を採用しているため、浸漬管の取付けや交換作業が従来よりも煩雑になる。
特許文献3の場合は、内張り損傷部を切削除去後に下から耐火物を挿入しモルタルなどで接着させるため、作業が煩雑であり、また、内張りとの接着強度にも問題が存在していた。
また、特許文献4の場合は、一体構造の円筒状れんがを使用するのは内壁だけであり、環流管耐火物全体を一体構造にはしていないため、円筒部外周に目地が生じていた。
また、特許文献5の構成及び図10〜図12の第2従来構成の場合、溶鋼と接触する部分に目地があり、目地からの損傷が避けられない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるRH炉用環流管耐火物は、RH炉下部槽に用いられ筒状の環流管耐火物からなるRH炉用環流管耐火物において、前記環流管耐火物は一体物の筒形構造体とした構成であり、また、前記筒形構造体は、円筒形下部と、前記円筒形下部の径よりも大径の多角形ないし円筒形からなる上部と、からなる構成であり、また、前記筒形構造体は、円筒形下部と、前記円筒形下部の径と同一径の円筒形上部と、からなる構成であり、また、前記筒形構造体は、等圧プレスによって成形されている構成であり、また、前記筒形構造体は、MgO−C材質よりなる構成であり、また、前記C量は3〜10%である構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるRH炉用環流管耐火物は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、RH炉下部槽に用いられ筒状の環流管耐火物からなるRH炉用環流管耐火物において、前記環流管耐火物は一体物の筒形構造体としたことにより、亀裂や折損を防止し、かつ、目地部からの損傷の発生を防止した環流管を得ることができ、耐久性を飛躍的に向上させることができる。
また、前記筒形構造体は、円筒形下部と、前記円筒形下部の径よりも大径の多角形ないし円筒形からなる上部と、からなると共に、前記筒形構造体は、円筒形下部と、前記円筒形下部の径と同一径の円筒形上部と、からなることにより、上部の形状を自在に形成することができ、使用目的に合わせた形状を得ることができる。
また、前記筒形構造体は、等圧プレスによって成形されていることにより、高精度に自在な一体形状を容易に得ることができる。
前記筒形構造体は、MgO−C材質よりなると共に、前記C量は3〜10%であることにより、耐スポーリング性を確保し、かつ、長寿命の構成を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるRH炉用環流管耐火物がRH炉下部槽に設けられた状態を示す平面図である。
【図2】図1のRH炉用環流管耐火物を示す平面図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図1の他の形態を示す平面図である。
【図5】図4のRH炉用環流管耐火物を示す平面図である。
【図6】図5の正面図である。
【図7】従来のRH炉用環流管耐火物がRH炉下部槽に設けられた状態を示す平面図である。
【図8】図7のRH炉用環流管耐火物を示す平面図である。
【図9】図8の正面図である。
【図10】従来のRH炉用環流管耐火物がRH炉下部槽に設けられた状態を示す平面図である。
【図11】図10のRH炉用環流管耐火物を示す平面図である。
【図12】図11の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、環流管耐火物を一体物の筒形構造体として、亀裂や折損の防止及び目地部からの損傷を防止するようにしたRH炉用環流管耐火物を提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明によるRH炉用環流管耐火物の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1から図3は本発明の第1形態を示すもので、周知のRH炉下部槽1には一対の筒状の環流管耐火物(筒形構造体)2が植設されている。
【0013】
前記環流管耐火物2は、下部が円筒形をなす円筒形下部3で形成され、この円筒形下部3から一体物として成形により形成された上部4は、平面的にみて図2に示されるように、多角形をなす四角形からなる多角筒形に形成され、この円筒形下部3と上部4とは一体成形されている。
【0014】
前記円筒形下部3に一体成形されている上部4は、この円筒形下部3の径よりも大きい径の四角形に限らない多角形をなす異形形状でも円筒形状でもよく、例えば、外径をなす外側の大きさが500mm〜1300mm、あるいは、500mm角〜1000mm角で、溶鋼の通過する内孔である内側の大きさが、例えば、φ200mm〜φ800mmの形状を採用することができる。また、その肉厚については、一例として、650mm角、孔径φ300mmで肉厚最小部分は175mmであった。
【0015】
前記環流管耐火物2の上部4は例えば、円筒形の場合には、円の周囲にれんがを配置することとなり、周囲れんがとの目地は三角形に近い大きい目地となるため、施工が難しいと共に目地損傷等が発生しやすくなるため、上部4は四角、六角、八角等の多角形の方が望ましい。
また、前記環流管耐火物2は、その機械的強度を確保する必要があるため、成形機としては、1トン/cm2以上の加圧力で周知のCIP成形によって製造されるもので、その圧縮強度が30MPa以上を有する。
また、1トン/cm2以下の加圧力では、環流管耐火物2に十分な機械的強度が発現しないため、実際にRH炉下部槽1に装着した場合の操業時に発生する機械的応力により亀裂や折損等の損傷が発生しやすくする。
従って、本発明による環流管耐火物2は、全体が一体構造であるため、目地部がなく、目地部からの損傷もなく、大型でRH炉下部槽1の下部槽敷部1aと一体化されているため、環流溶鋼による耐火物の浮上を抑制することができる。また、下部槽敷部1aでの環流管軸方向への損傷を抑制することができる。
【0016】
前記環流管耐火物2の材質は、種々実験をした結果、特には限定されないが、例えばマグネシア−クロム質れんが、マグネシア−炭素質不焼成れんが、アルミナ−シリカ質れんが、アルミナ−マグネシア質れんが、アルミナ−スピネル質れんが、アルミナ−スピネル−マグネシア質れんがなどを使用することができ、その中でも、MgO−C材質が最適で、表1の第1表に示されるように、C含有量が3%未満の場合は、スラグ浸潤による耐スポーリング性が低下し、10%を超える場合は操業時に脱炭現象により組織の脆化による寿命が懸念されるところで、結論としては、C量は3%〜10%の範囲が好ましく、さらに好ましくは、5%〜8%であることが判明した。尚、MgO−Cについては、金属アルミニウム粉末、金属シリコン粉末、炭化ほう素等を添加すると、強度増大、酸化防止に効果的である。
【0017】
次に、前記環流管耐火物2の製造方法について述べる。
まず、MgOとCを所定割合で配合した原料配合物にバインダーを外掛で0.5〜5%程度添加、混練した坏土を例えば好ましくはCIP成形法等よりなる等圧プレスによりゴム枠の中に心棒をセットして所定の形状に形成する。成形後、得られた成形体を例えば150〜400℃で16〜60時間にわたり乾燥する。乾燥時間が16時間未満であると、大型肉厚品のため、内部の揮発分が除去できずに好ましくない。また乾燥後に400〜800℃で3〜20時間にわたり焼成してもよい。焼成温度が800℃を超えたり、焼成時間が10時間を超えたりすると表面酸化のために好ましくない。
成形の後や乾燥の後、焼成の後などに、必要に応じて切断、研磨し仕上げ加工をすることが好ましい。尚、成形方法については特に限定されないが、その中でも、等圧プレスによる成形が可能である。
【0018】
前述の材質を用いて製造した前記環流管耐火物2を使用する場合は、図1のように、例えばマグネシアークロム質れんが、マグネシアー炭素質不焼成れんが、アルミナーシリカ質れんが、アルミナーマグネシア質れんが、アルミナースピネル質れんが、アルミナースピネルーマグネシア質れんが、不定形耐火物などで壁や下部槽敷部1aを内張りしたRH炉下部槽1に使用することができる。
従って、本発明においては、環流管耐火物2の目地部をなくし、機械的強度を上げることを目的として、従来の分割構造を大型一体物構造としたものであり、この環流管耐火物2は、全体が肉厚の円筒形状、又は、円筒形下部3とその径よりも大きい径の多角形(四角形、六角形、八角形等)の上部4とすることができる。
【0019】
尚、前述の図1〜図3の第1形態においては、円筒形下部3と上部4の組合せからなる環流管耐火物2の場合について述べたが、例えば、図4〜図6で示される様に、前記環流管耐火物2全体を一体成形物の円筒形とし、円筒形下部3と、この円筒形下部3と同一径として一体成形の円筒形上部4Aとした場合も、前述と同様の作用効果を得ることができる。尚、図1〜図3と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によるRH炉用環流管耐火物は、RH炉用のみではなく、他の大型炉等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 RH炉下部槽
1a 下部槽敷部
2 筒状の環流管耐火物
3 円筒形下部
4 上部
4A 円筒形上部
【技術分野】
【0001】
本発明は、RH炉用環流管耐火物に関し、特に、環流管耐火物を一体物の筒形構造体として、亀裂や折損が少なく、かつ、目地部からの損傷進展がなく、耐用性に優れた構造とするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環流管用耐火物は、円筒形構造における上下方向や周方向に分割された耐火物部材にモルタルを介在させて組立てて使用されている。これは構成される耐火物を安価に製造するためになされるものであるが、耐食性や機械的強度が劣る目地部から溶損する問題があった。
また、RH炉では操業時に缶体が熱応力により変形することにより、環流管に機械的な応力が作用し、耐火物に亀裂や折損が発生したり損傷が進展したりする場合があった。
そこで、目地部の損傷抑制を目的に、内壁のみをスリーブれんがにする構造が、後述の特許文献1〜4のように提案されているが、RH炉操業初期の目地部損傷を防ぐことはできるが、中期以降にスリーブ部が損傷し分割構造の環流管本体が溶鋼にさらされ、目地部からの損傷が起こる。また、スリーブの肉厚が薄く、機械的応力による亀裂や折損が発生しやすい等の問題が存在していた。
【0003】
すなわち、特許文献1の「環流式真空脱ガス装置の下部構造」においては、環流管内壁を一体構造のスリーブれんがで形成することにより、目地に溶鋼が差し込むことによる溶損を抑制していた。
また、特許文献2の「環流式真空脱ガス装置」においては、環流管内壁を厚み150mmのスリーブれんがで形成し、浸漬管との接続部に凹凸を形成することにより環流管と浸漬管の境界部の溶損を抑制している。
また、特許文献3の「真空脱ガス炉環流管の補修方法」においては、一体物又は分割品の円筒状耐火物を、不定形耐火物によって内張りに接着させる補修方法が示されている。
また、特許文献4の「RH真空脱ガス装置の環流管煉瓦構造」においては、内径が600mm、外径が860mmの一体的に成形された円筒状のマグネシアー炭素質れんがを環流管の第1層目に使用している。
また、特許文献5の「真空脱ガス設備用環流管の施工方法」においては、目地部の損傷抑制を目的に、環流管の施工前に内巻れんがと外巻れんが(場合によっては中巻れんがでも)とをバンドにより固定し、れんがの密着を強固にしている。
【0004】
また、前述の各特許文献1〜5の各構成と同様のRH炉用環流管耐火物の実際の従来構成としては、本出願人が実施していた第1従来構成(図7から図9)及び第2従来構成(図10から図12)の構成を挙げることができる。
【0005】
すなわち、図7で示される周知のRH炉下部槽1には、一対の筒状の環流管耐火物2が設けられ、この環流管耐火物2は、図8及び図9で示されるように、円筒形で形成された下部3と、この下部3の上部に形成された四角形の上部4とによって構成され、この下部3及び上部4も複数の片からなり、各片を一体状に結合して構成されていると共に、内壁のみスリーブ5として形成されていた。
また、図10〜図12で示される第2従来構成においては、前述の第1従来構成における前記スリーブ5を除いた構成と同一であるため、同一部分には同一符号を付し、その説明は省略するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−25513号公報
【特許文献2】特開平9−241721号公報
【特許文献3】特公平7−62168号公報
【特許文献4】特開2007−197780号公報
【特許文献5】特許第2758585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のRH炉用環流管耐火物は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、特許文献1〜4の構成及び図7〜9の第1従来構成の場合、一体構造の部分が内壁だけであり、その厚みが充分でないために、スリーブれんがが溶損して消耗し、内壁外側のれんがの溶損を防ぐことが不可能であった。また、環流管耐火物全体を一体構造にはしていないため、円筒部外周に目地が生じるという問題もある。
さらに、特許文献2の場合は、凹凸構造を採用しているため、浸漬管の取付けや交換作業が従来よりも煩雑になる。
特許文献3の場合は、内張り損傷部を切削除去後に下から耐火物を挿入しモルタルなどで接着させるため、作業が煩雑であり、また、内張りとの接着強度にも問題が存在していた。
また、特許文献4の場合は、一体構造の円筒状れんがを使用するのは内壁だけであり、環流管耐火物全体を一体構造にはしていないため、円筒部外周に目地が生じていた。
また、特許文献5の構成及び図10〜図12の第2従来構成の場合、溶鋼と接触する部分に目地があり、目地からの損傷が避けられない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるRH炉用環流管耐火物は、RH炉下部槽に用いられ筒状の環流管耐火物からなるRH炉用環流管耐火物において、前記環流管耐火物は一体物の筒形構造体とした構成であり、また、前記筒形構造体は、円筒形下部と、前記円筒形下部の径よりも大径の多角形ないし円筒形からなる上部と、からなる構成であり、また、前記筒形構造体は、円筒形下部と、前記円筒形下部の径と同一径の円筒形上部と、からなる構成であり、また、前記筒形構造体は、等圧プレスによって成形されている構成であり、また、前記筒形構造体は、MgO−C材質よりなる構成であり、また、前記C量は3〜10%である構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるRH炉用環流管耐火物は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、RH炉下部槽に用いられ筒状の環流管耐火物からなるRH炉用環流管耐火物において、前記環流管耐火物は一体物の筒形構造体としたことにより、亀裂や折損を防止し、かつ、目地部からの損傷の発生を防止した環流管を得ることができ、耐久性を飛躍的に向上させることができる。
また、前記筒形構造体は、円筒形下部と、前記円筒形下部の径よりも大径の多角形ないし円筒形からなる上部と、からなると共に、前記筒形構造体は、円筒形下部と、前記円筒形下部の径と同一径の円筒形上部と、からなることにより、上部の形状を自在に形成することができ、使用目的に合わせた形状を得ることができる。
また、前記筒形構造体は、等圧プレスによって成形されていることにより、高精度に自在な一体形状を容易に得ることができる。
前記筒形構造体は、MgO−C材質よりなると共に、前記C量は3〜10%であることにより、耐スポーリング性を確保し、かつ、長寿命の構成を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるRH炉用環流管耐火物がRH炉下部槽に設けられた状態を示す平面図である。
【図2】図1のRH炉用環流管耐火物を示す平面図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図1の他の形態を示す平面図である。
【図5】図4のRH炉用環流管耐火物を示す平面図である。
【図6】図5の正面図である。
【図7】従来のRH炉用環流管耐火物がRH炉下部槽に設けられた状態を示す平面図である。
【図8】図7のRH炉用環流管耐火物を示す平面図である。
【図9】図8の正面図である。
【図10】従来のRH炉用環流管耐火物がRH炉下部槽に設けられた状態を示す平面図である。
【図11】図10のRH炉用環流管耐火物を示す平面図である。
【図12】図11の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、環流管耐火物を一体物の筒形構造体として、亀裂や折損の防止及び目地部からの損傷を防止するようにしたRH炉用環流管耐火物を提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明によるRH炉用環流管耐火物の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1から図3は本発明の第1形態を示すもので、周知のRH炉下部槽1には一対の筒状の環流管耐火物(筒形構造体)2が植設されている。
【0013】
前記環流管耐火物2は、下部が円筒形をなす円筒形下部3で形成され、この円筒形下部3から一体物として成形により形成された上部4は、平面的にみて図2に示されるように、多角形をなす四角形からなる多角筒形に形成され、この円筒形下部3と上部4とは一体成形されている。
【0014】
前記円筒形下部3に一体成形されている上部4は、この円筒形下部3の径よりも大きい径の四角形に限らない多角形をなす異形形状でも円筒形状でもよく、例えば、外径をなす外側の大きさが500mm〜1300mm、あるいは、500mm角〜1000mm角で、溶鋼の通過する内孔である内側の大きさが、例えば、φ200mm〜φ800mmの形状を採用することができる。また、その肉厚については、一例として、650mm角、孔径φ300mmで肉厚最小部分は175mmであった。
【0015】
前記環流管耐火物2の上部4は例えば、円筒形の場合には、円の周囲にれんがを配置することとなり、周囲れんがとの目地は三角形に近い大きい目地となるため、施工が難しいと共に目地損傷等が発生しやすくなるため、上部4は四角、六角、八角等の多角形の方が望ましい。
また、前記環流管耐火物2は、その機械的強度を確保する必要があるため、成形機としては、1トン/cm2以上の加圧力で周知のCIP成形によって製造されるもので、その圧縮強度が30MPa以上を有する。
また、1トン/cm2以下の加圧力では、環流管耐火物2に十分な機械的強度が発現しないため、実際にRH炉下部槽1に装着した場合の操業時に発生する機械的応力により亀裂や折損等の損傷が発生しやすくする。
従って、本発明による環流管耐火物2は、全体が一体構造であるため、目地部がなく、目地部からの損傷もなく、大型でRH炉下部槽1の下部槽敷部1aと一体化されているため、環流溶鋼による耐火物の浮上を抑制することができる。また、下部槽敷部1aでの環流管軸方向への損傷を抑制することができる。
【0016】
前記環流管耐火物2の材質は、種々実験をした結果、特には限定されないが、例えばマグネシア−クロム質れんが、マグネシア−炭素質不焼成れんが、アルミナ−シリカ質れんが、アルミナ−マグネシア質れんが、アルミナ−スピネル質れんが、アルミナ−スピネル−マグネシア質れんがなどを使用することができ、その中でも、MgO−C材質が最適で、表1の第1表に示されるように、C含有量が3%未満の場合は、スラグ浸潤による耐スポーリング性が低下し、10%を超える場合は操業時に脱炭現象により組織の脆化による寿命が懸念されるところで、結論としては、C量は3%〜10%の範囲が好ましく、さらに好ましくは、5%〜8%であることが判明した。尚、MgO−Cについては、金属アルミニウム粉末、金属シリコン粉末、炭化ほう素等を添加すると、強度増大、酸化防止に効果的である。
【0017】
次に、前記環流管耐火物2の製造方法について述べる。
まず、MgOとCを所定割合で配合した原料配合物にバインダーを外掛で0.5〜5%程度添加、混練した坏土を例えば好ましくはCIP成形法等よりなる等圧プレスによりゴム枠の中に心棒をセットして所定の形状に形成する。成形後、得られた成形体を例えば150〜400℃で16〜60時間にわたり乾燥する。乾燥時間が16時間未満であると、大型肉厚品のため、内部の揮発分が除去できずに好ましくない。また乾燥後に400〜800℃で3〜20時間にわたり焼成してもよい。焼成温度が800℃を超えたり、焼成時間が10時間を超えたりすると表面酸化のために好ましくない。
成形の後や乾燥の後、焼成の後などに、必要に応じて切断、研磨し仕上げ加工をすることが好ましい。尚、成形方法については特に限定されないが、その中でも、等圧プレスによる成形が可能である。
【0018】
前述の材質を用いて製造した前記環流管耐火物2を使用する場合は、図1のように、例えばマグネシアークロム質れんが、マグネシアー炭素質不焼成れんが、アルミナーシリカ質れんが、アルミナーマグネシア質れんが、アルミナースピネル質れんが、アルミナースピネルーマグネシア質れんが、不定形耐火物などで壁や下部槽敷部1aを内張りしたRH炉下部槽1に使用することができる。
従って、本発明においては、環流管耐火物2の目地部をなくし、機械的強度を上げることを目的として、従来の分割構造を大型一体物構造としたものであり、この環流管耐火物2は、全体が肉厚の円筒形状、又は、円筒形下部3とその径よりも大きい径の多角形(四角形、六角形、八角形等)の上部4とすることができる。
【0019】
尚、前述の図1〜図3の第1形態においては、円筒形下部3と上部4の組合せからなる環流管耐火物2の場合について述べたが、例えば、図4〜図6で示される様に、前記環流管耐火物2全体を一体成形物の円筒形とし、円筒形下部3と、この円筒形下部3と同一径として一体成形の円筒形上部4Aとした場合も、前述と同様の作用効果を得ることができる。尚、図1〜図3と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によるRH炉用環流管耐火物は、RH炉用のみではなく、他の大型炉等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 RH炉下部槽
1a 下部槽敷部
2 筒状の環流管耐火物
3 円筒形下部
4 上部
4A 円筒形上部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RH炉下部槽(1)に用いられ筒状の環流管耐火物(2)からなるRH炉用環流管耐火物において、前記環流管耐火物(2)は一体物の筒形構造体としたことを特徴とするRH炉用環流管耐火物。
【請求項2】
前記筒形構造体(2)は、円筒形下部(3)と、前記円筒形下部(3)の径よりも大径の多角形ないし円筒形からなる上部(4)と、からなることを特徴とする請求項1記載のRH炉用環流管耐火物。
【請求項3】
前記筒形構造体(2)は、円筒形下部(3)と、前記円筒形下部(3)の径と同一径の円筒形上部(4A)と、からなることを特徴とする請求項1記載のRH炉用環流管耐火物。
【請求項4】
前記筒形構造体(2)は、等圧プレスによって成形されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のRH炉用環流管耐火物。
【請求項5】
前記筒形構造体(2)は、MgO−C材質よりなることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のRH炉用環流管耐火物。
【請求項6】
前記C量は3〜10%であることを特徴とする請求項5記載のRH炉用環流管耐火物。
【請求項1】
RH炉下部槽(1)に用いられ筒状の環流管耐火物(2)からなるRH炉用環流管耐火物において、前記環流管耐火物(2)は一体物の筒形構造体としたことを特徴とするRH炉用環流管耐火物。
【請求項2】
前記筒形構造体(2)は、円筒形下部(3)と、前記円筒形下部(3)の径よりも大径の多角形ないし円筒形からなる上部(4)と、からなることを特徴とする請求項1記載のRH炉用環流管耐火物。
【請求項3】
前記筒形構造体(2)は、円筒形下部(3)と、前記円筒形下部(3)の径と同一径の円筒形上部(4A)と、からなることを特徴とする請求項1記載のRH炉用環流管耐火物。
【請求項4】
前記筒形構造体(2)は、等圧プレスによって成形されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のRH炉用環流管耐火物。
【請求項5】
前記筒形構造体(2)は、MgO−C材質よりなることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のRH炉用環流管耐火物。
【請求項6】
前記C量は3〜10%であることを特徴とする請求項5記載のRH炉用環流管耐火物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−1742(P2012−1742A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134816(P2010−134816)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
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