説明

RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼ阻害薬としてのヌクレオシド誘導体

本発明は、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害薬であるヌクレオシド化合物およびそれのある種の誘導体を提供する。その化合物はRNA依存性RNAウィルス複製の阻害薬であり、RNA依存性RNAウィルス感染の治療に有用である。それは特に、C型肝炎ウィルス(HCV)NS5Bポリメラーゼの阻害薬として、HCV複製の阻害薬として、ないしはC型肝炎感染の治療に有用である。本発明はさらに、単独あるいはRNA依存性RNAウィルス感染、特にHCV感染に対して活性な他の薬剤との組み合わせで、そのようなヌクレオシド化合物を含む医薬組成物に関するものでもある。本発明のヌクレオシド化合物を用いたRNA依存性RNAポリメラーゼの阻害方法、RNA依存性RNAウィルス複製の阻害方法、および/またはRNA依存性RNAウィルス感染の治療方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオシド化合物およびそれのある種の誘導体、それらの合成、ならびにRNA依存性RNAウィルスポリメラーゼ阻害薬としてのそれらの使用に関する。本発明の化合物は、RNA依存性RNAウィルス複製の阻害薬であり、RNA依存性RNAウィルス感染の治療に有用である。これら化合物は、C型肝炎ウィルス(HCV)NS5Bポリメラーゼの阻害薬として、HCV複製の阻害薬として、ならびにC型肝炎感染の治療において特に有用である。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウィルス(HCV)感染は、世界の人口の2〜15%と推定される感染者のかなりの数において、肝硬変および肝細胞癌などの慢性肝臓疾患に至る主要な健康上の問題となっている。米国疾病管理センターによると、米国のみで感染者数は450万人と推定されている。世界保健機構によれば、世界的には感染者は2億人であり、毎年少なくとも3〜400万人が感染している。感染すると、感染者の約20%がウィルスを排除するが、それ以外の感染者ではそれ以降の生涯にわたってHCVが常在することになる。慢性感染者の10〜20%が、最終的に肝臓破壊性の肝硬変または癌を発症する。このウィルス疾患は、汚染された血液および血液製品、汚染された針によって非経口的に、あるいは性的に、および感染した母親またはキャリアの母親から子供へと垂直に伝染する。組換えインターフェロン−α単独またはヌクレオシド類縁体であるリバビリンと併用したものを用いた免疫療法に制限される現行のHCV感染治療は、臨床的効果が限定されたものである。さらに、HCVには確立されたワクチンがない。従って、慢性HCV感染と効果的に戦う改良された治療薬が緊急に必要とされている。HCV感染治療における最新技術について総説が出されており、各種刊行物が参照される(B. Dymock, et al., ″Novel approaches to the treatment of hepatitis C virus infection″, Antiviral Chemistry & Chemotherapy, 11: 79-96 (2000); H. Rosen, et al., ″Hepatitis C virus: current understanding and prospects for future therapies″, Molecular Medicine Today, 5: 393 399 (1999); D. Moradpour, et al., ″Current and evolving therapies for hepatitis C″, European J. Gastroenterol. Hepatol., 11: 1189-1202 (1999); R. Bartenschlager, ″Candidate Targets for Hepatitis C Virus-Specific Antiviral Therapy″, Intervirology, 40: 378-393 (1997); G. M. Lauer and B. D. Walker, ″Hepatitis C Virus Infection″, N. Engl. J. Med., 345: 41-52 (2001); B. W. Dymock, ″Emerging therapies for hepatitis C virus infection″, Emerging Drugs, 6: 13-42 (2001); and C. Crabb, ″Hard-Won Advances Spark Excitement about Hepatitis C″, Science: 506-507 (2001);これらの内容はいずれも、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0003】
HCV療法に向けて各種アプローチが行われており、それにはウィルスセリンプロテイナーゼ(NS3プロテアーゼ)、ヘリカーゼおよびRNA依存性RNAポリメラーゼ(NS5B)の阻害、ならびにワクチンの開発などがある。
【0004】
HCVビリオンは、約3010アミノ酸のポリ蛋白をコードする約9600塩基の単一のオリゴリボヌクレオチドゲノム配列を有するエンベロープ正鎖(positive-strand)RNAウィルスである。HCV遺伝子の蛋白産生物は、構造蛋白C、E1およびE2、ならびに非構造蛋白NS2、NS3、NS4AおよびNS4B、そしてNS5AおよびNS5Bからなる。非構造(NS)蛋白は、ウィルス複製の触媒機構を提供するものと考えられている。NS3プロテアーゼは、ポリ蛋白鎖から、RNA依存性RNAポリメラーゼであるNS5Bを放出する。HCVNS5Bポリメラーゼは、HCVの複製サイクルにおける鋳型として作用する1本鎖ウィルスRNAから二本鎖RNAを合成するのに必要である。従ってNS5Bポリメラーゼは、HCV複製複合体において必須の構成要素であると考えられる[K. Ishi, et al., ″Expression of Hepatitis C Virus NS5B Protein: Characterization of Its RNA Polymerase Activity and RNA Binding″, Hepatology, 29: 1227-1235 (1999) and V. Lohmann, et al., ″Biochemical and Kinetic Analyses of NS5B RNA-Dependent RNA Polymerase of the Hepatitis C Virus″, Virology, 249: 108-118 (1998)参照]。HCVNS5Bポリメラーゼの阻害は、二本鎖HCVRNAの形成を防止することから、HCV特異的抗ウィルス療法開発に向けた注目すべきアプローチである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のヌクレオシド化合物およびそれのある種の誘導体がRNA依存性RNAウィルス複製、特にHCV複製の強力な阻害薬であることが認められた。これらのヌクレオシド化合物の5′−三リン酸誘導体は、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼ、特にHCVNS5Bポリメラーゼの阻害薬である。本発明のヌクレオシド化合物およびそれの誘導体は、RNA依存性RNAウィルス感染、特にHCV感染を治療する上で有用である。
【0006】
従って本発明の目的は、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害薬として、特にはHCVNS5Bポリメラーゼの阻害薬として有用なヌクレオシド化合物およびそれのある種の誘導体を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルスの複製の阻害薬として、特にC型肝炎ウィルスの複製の阻害薬として有用なヌクレオシド化合物およびそれの誘導体を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルス感染の治療、特にHCV感染の治療において有用なヌクレオシド化合物およびそれのある種の誘導体を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、製薬上許容される担体とともに本発明のヌクレオシド化合物を含む医薬組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害薬として、特にHCVNS5Bポリメラーゼの阻害薬として使用される本発明のヌクレオシド化合物およびそれの誘導体を含む医薬組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルス複製の阻害薬として、特にHCV複製の阻害薬として使用される本発明のヌクレオシド化合物およびそれの誘導体を含む医薬組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルス感染の治療において、特にHCV感染の治療において使用される本発明のヌクレオシド化合物およびそれの誘導体を含む医薬組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルスに対して、特にHCVに対して活性な他の薬剤と組み合わせて、本発明のヌクレオシド化合物およびそれの誘導体を含む医薬組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害方法、特にHCVNS5Bポリメラーゼの阻害方法を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルス複製の阻害方法、特にHCV複製の阻害方法を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルス感染の治療方法、特にHCV感染の治療方法を提供することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルスに対して活性な他の薬剤との併用でRNA依存性RNAウィルス感染を治療する方法、特にHCVに対して活性な他の薬剤と併用してHCV感染を治療する方法を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルス複製の阻害および/またはRNA依存性RNAウィルス感染の治療用、特にHCV複製の阻害および/またはHCV感染の治療用の医薬として用いられるヌクレオシド化合物およびそれのある種の誘導体ならびにそれの医薬組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の別の目的は、RNA依存性RNAウィルス複製の阻害および/またはRNA依存性RNAウィルス感染の治療、特にHCV複製の阻害および/またはHCV感染の治療用の医薬の製造における、本発明のヌクレオシド化合物およびそれのある種の誘導体ならびにそれらの医薬組成物の使用を提供することにある。
【0020】
上記および他の目的は、以下の詳細な説明から容易に明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、示した立体化学配置を有する構造式Iの化合物またはその化合物の製薬上許容される塩に関する。
【0022】
【化7】

【0023】
式中、
nは0、1または2であり;
YはNまたはC−R17であり;
はC2−4アルケニル、C2−4アルキニルまたはC1−4アルキルであり;アルキルは未置換であるかヒドロキシ、アミノ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオもしくは1〜3個のフッ素原子で置換されており;
は水素、アミノ、フッ素、ヒドロキシ、メルカプト、C1−4アルコキシまたはC1−4アルキルであり;
およびRはそれぞれ独立に、水素、シアノ、アジド、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、C1−4アルコキシ、C2−4アルケニル、C2−4アルキニルおよびC1−4アルキルからなる群から選択され;アルキルは未置換であるかヒドロキシ、アミノ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたは1〜3個のフッ素原子で置換されており;
は水素、C1−10アルキルカルボニル、P、PまたはP(O)R1112であり;
およびRはそれぞれ独立に、水素、メチル、ヒドロキシメチルまたはフルオロメチルであり;
は水素、C1−4アルキル、C2−4アルキニル、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、C1−4アルキルオキシカルボニル、アジド、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニルまたは(C1−4アルキル)0−2アミノメチルであり;
は水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノまたはジ(C3−6シクロアルキル)アミノであり;
10はC1−4アルキルアミノ(そのアルキル部分は1〜3個のハロゲン原子で置換されている);−OCHCHSC(=O)C1−4アルキル;−OCHO(C=O)OC1−4アルキル;−OCH(C1−4アルキル)O(C=O)C1−4アルキル;または下記構造式:
【0024】
【化8】

を有するアミノアシル残基であり;
13は水素、C1−4アルキルまたはフェニルC0−2アルキルであり;
14は水素またはC1−4アルキルであり;
15、R16、R18およびR19はそれぞれ独立に水素またはC1−4アルキルであり;
11およびR12はそれぞれ独立にヒドロキシ、−OCHCHSC(=O)C1−4アルキル、−OCHO(C=O)OC1−4アルキル、−NHCH(C0−4アルキル)CO1−3アルキル、−OCH(C1−4アルキル)O(C=O)C1−4アルキル、
【0025】
【化9】

であり;
17は水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、NHCONH、CONR1819、CSNR1819、COOR18、C(=NH)NH、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノまたはC1−3アルキルであり;アルキルは未置換であるか独立にハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC1−3アルコキシから選択される1〜3個の基で置換されている。
【0026】
式Iの化合物は、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼ、特にHCVNS5Bポリメラーゼの阻害薬として有用である。これらの化合物は、RNA依存性RNAウィルス複製、特にHCV複製の阻害薬でもあり、RNA依存性RNAウィルス感染の治療、特にはHCV感染の治療において有用である。
【0027】
本発明の範囲には、前記化合物を単独でまたはRNA依存性RNAウィルス、特にHCVに対して活性な他の薬剤との組み合わせで含む医薬組成物、ならびにRNA依存性RNAウィルス複製の阻害方法およびRNA依存性RNAウィルス複製の治療方法も包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、示した立体化学配置を有する構造式Iの化合物またはその化合物の製薬上許容される塩に関する。
【0029】
【化10】

【0030】
式中、
nは0、1または2であり;
YはNまたはC−R17であり;
はC2−4アルケニル、C2−4アルキニルまたはC1−4アルキルであり;アルキルは未置換であるかヒドロキシ、アミノ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオもしくは1〜3個のフッ素原子で置換されており;
は水素、アミノ、フッ素、ヒドロキシ、メルカプト、C1−4アルコキシまたはC1−4アルキルであり;
およびRはそれぞれ独立に、水素、シアノ、アジド、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、C1−4アルコキシ、C2−4アルケニル、C2−4アルキニルおよびC1−4アルキルからなる群から選択され;アルキルは未置換であるかヒドロキシ、アミノ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたは1〜3個のフッ素原子で置換されており;
は水素、C1−10アルキルカルボニル、P、PまたはP(O)R1112であり;
およびRはそれぞれ独立に、水素、メチル、ヒドロキシメチルまたはフルオロメチルであり;
は水素、C1−4アルキル、C2−4アルキニル、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、C1−4アルキルオキシカルボニル、アジド、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニルまたは(C1−4アルキル)0−2アミノメチルであり;
は水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノまたはジ(C3−6シクロアルキル)アミノであり;
10はC1−4アルキルアミノ(そのアルキル部分は1〜3個のハロゲン原子で置換されている);−OCHCHSC(=O)C1−4アルキル;−OCHO(C=O)OC1−4アルキル;−OCH(C1−4アルキル)O(C=O)C1−4アルキル;または下記構造式:
【0031】
【化11】

を有するアミノアシル残基であり;
13は水素、C1−4アルキルまたはフェニルC0−2アルキルであり;
14は水素またはC1−4アルキルであり;
15、R16、R18およびR19はそれぞれ独立に水素またはC1−4アルキルであり;
11およびR12はそれぞれ独立にヒドロキシ、−OCHCHSC(=O)C1−4アルキル、−OCHO(C=O)OC1−4アルキル、−NHCH(C0−4アルキル)CO1−3アルキル、−OCH(C1−4アルキル)O(C=O)C1−4アルキル、
【0032】
【化12】

であり;
17は水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、NHCONH、CONR1819、CSNR1819、COOR18、C(=NH)NH、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノまたはC1−3アルキルであり;アルキルは未置換であるか独立にハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC1−3アルコキシから選択される1〜3個の基で置換されている。
【0033】
式Iの化合物は、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害薬として有用である。これらの化合物は、RNA依存性RNAウィルス複製の阻害薬でもあり、RNA依存性RNAウィルス感染の治療において有用である。
【0034】
構造式Iの化合物の1実施形態には、下記構造式IIの化合物またはそれの製薬上許容される塩がある。
【0035】
【化13】

【0036】
式中、
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノまたはC1−4アルコキシであり;
はC1−3アルキルであり;アルキルは、ヒドロキシ、アミノ、C1−3アルコキシ、C1−3アルキルチオまたは1〜3個のフッ素原子で置換されていても良く;
はヒドロキシ、フッ素またはC1−3アルコキシであり;
は水素、P、PまたはPOであり;
は水素、アミノまたはC1−4アルキルアミノであり;
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノまたはC3−6シクロアルキルアミノであり;
10はC1−3アルキルアミノ(そのアルキル部分は1〜3個のフッ素原子で置換されている);または下記構造式:
【0037】
【化14】

を有するアミノアシル残基であり;
13は水素、C1−4アルキルまたはフェニルC0−2アルキルであり;
14は水素またはC1−4アルキルであり;
15およびR16はそれぞれ独立に水素またはC1−4アルキルである。
【0038】
構造式Iの化合物の第2の実施形態には、
がメチル、フルオロメチル、ヒドロキシメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルまたはアミノメチルであり;
がヒドロキシ、フッ素またはメトキシであり;
が水素、フッ素、ヒドロキシ、アミノまたはメトキシであり;
が水素またはPであり;
が水素またはアミノであり;
が水素、フッ素、ヒドロキシまたはアミノであり;
10が2,2,2−トリフルオロエチルアミノまたは下記構造式:
【0039】
【化15】

を有するアミノアシル残基であり;
13が水素、C1−4アルキルまたはフェニルC0−2アルキルであり;
14が水素またはC1−4アルキルであり;
15およびR16がそれぞれ独立に水素またはC1−4アルキルである構造式IIの化合物がある。
【0040】
RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害薬として有用な構造式Iの本発明の化合物の例としては、
2−[2−アミノ−6−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン;
3−[2−アミノ−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン−6−イル−アミノ]プロピオン酸メチルエステル;ならびに
2−[2−アミノ−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン−6−イル−アミノ]−アセトアミド;および
相当する5′−三リン酸;あるいは
これらの製薬上許容される塩があるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の1実施形態において、本発明のヌクレオシド 化合物は、正センス一本鎖RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害薬として、正センス一本鎖RNA依存性RNAウィルス複製の阻害薬として、ないしは正センス一本鎖RNA依存性RNAウィルス感染の治療のために、有用である。この実施形態のある群では、前記正センス一本鎖RNA依存性RNAウィルスは、フラビウィルスまたはピコルナウイルスである。この群の1小群では、前記ピコルナウイルスは、ライノウィルス、ポリオウィルスまたはA型肝炎ウィルスである。この群の第2の小群では、前記フラビウィルスは、C型肝炎ウィルス、黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス、西ナイルウィルス、日本脳炎ウィルス、バンジウィルスおよびウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)からなる群から選択される。この小群の1小群では、前記フラビウィルスはC型肝炎ウィルスである。
【0042】
本発明の別の態様は、RNA依存性 RNAウィルスポリメラーゼの阻害方法; RNA依存性 RNAウィルス複製の阻害方法;および/または哺乳動物に治療上有効量の構造式Iの化合物を投与する段階を有する、治療を必要とする哺乳動物におけるRNA依存性 RNAウィルス感染の治療方法に関する。
本発明のこの態様の1実施形態では、前記RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼは、正センス一本鎖RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼである。この実施形態のある群では、前記正センス一本鎖RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼは、フラビウィルスポリメラーゼまたはピコルナウイルスポリメラーゼである。この群の1小群では、前記ピコルナウイルスポリメラーゼは、ライノウィルスポリメラーゼ、ポリオウィルスポリメラーゼまたはA型肝炎ウィルスポリメラーゼである。この群の第2の小群では、前記フラビウィルスポリメラーゼは、C型肝炎ウィルスポリメラーゼ、黄熱病ウィルスポリメラーゼ、デング熱ウィルスポリメラーゼ、西ナイルウィルスポリメラーゼ、日本脳炎ウィルスポリメラーゼ、バンジウィルスポリメラーゼおよびウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)ポリメラーゼからなる群から選択される。この小群の1小群では、前記フラビウィルスポリメラーゼはC型肝炎ウィルスポリメラーゼである。
【0043】
本発明のこの態様の第2の実施形態では、前記RNA依存性RNAウィルス複製は、正センス一本鎖RNA依存性RNAウィルス複製である。この実施形態のある群では、前記正センス一本鎖RNA依存性RNAウィルス複製は、フラビウィルス複製またはピコルナウイルス複製である。この群の1小群では、前記ピコルナウイルス複製は、ライノウィルス複製、ポリオウィルス複製またはA型肝炎ウィルス複製である。この群の第2の小群では、前記フラビウィルス複製は、C型肝炎ウィルス複製、黄熱病ウィルス複製、デング熱ウィルス複製、西ナイルウィルス複製、日本脳炎ウィルス複製、バンジウィルス複製およびウシウイルス性下痢ウイルス複製からなる群から選択される。この小群の1小群では、前記フラビウィルス複製はC型肝炎ウィルス複製である。
【0044】
本発明のこの態様の第3の実施形態では、前記RNA依存性RNAウィルス感染は、正センス一本鎖RNA依存性RNAウィルス感染である。この実施形態のある群では、前記正センス一本鎖RNA依存性RNAウィルス感染は、フラビウィルス感染またはピコルナウイルス感染である。この群の1小群では、前記ピコルナウイルス感染は、ライノウィルス感染、ポリオウィルス感染またはA型肝炎ウィルス感染である。この群の第2の小群では、前記フラビウィルス感染は、C型肝炎ウィルス感染、黄熱病ウィルス感染、デング熱ウィルス感染、西ナイルウィルス感染、日本脳炎ウィルス感染、バンジウィルス感染およびウシウイルス性下痢ウイルス感染からなる群から選択される。この小群の1小群では、前記フラビウィルス感染はC型肝炎ウィルス感染である。
【0045】
本願を通じて、以下の用語は下記に示した意味を有する。
【0046】
上記で記載のアルキル基は、直鎖または分岐形状を有する指定長さのアルキル基を含むものである。そのようなアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどがある。
【0047】
「アルケニル」という用語は、合計炭素数2〜6個またはその範囲内のいずれかの数字である直鎖または分岐のアルケンを意味するものとする(例:エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルなど)。
【0048】
「アルキニル」という用語は、合計炭素数2〜6個またはその範囲内のいずれかの数字である直鎖または分岐のアルキンを意味するものとする(例:エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルなど)。
【0049】
「シクロアルキル」という用語は、合計炭素数3〜8個またはその範囲内のいずれかの数字であるアルカンの環状部分を意味するものとする(すなわち、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチル)。
【0050】
「シクロヘテロアルキル」という用語は、窒素、酸素および硫黄から選択される1個または2個のヘテロ原子を有する非芳香族複素環を含むものである。4〜6員シクロヘテロアルキルの例には、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、イミダゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピペラジニルなどがある。
【0051】
「アルコキシ」という用語は、指定数(例えば、C1−4アルコキシ)またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子[すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシなど]の直鎖または分岐のアルコキシドを指す。
【0052】
「アルキルチオ」という用語は、指定数(例えば、C1−4アルキルチオ)またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子[すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオなど]の直鎖または分岐のアルキルスルフィドを指す。
【0053】
「アルキルアミノ」という用語は、指定数(例:C1−4アルキルアミノ)またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子[すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノなど]の直鎖または分岐のアルキルアミンを指す。
【0054】
「シクロアルキルアミノ」という用語は、指定数(例:C3−6シクロアルキルアミノ)またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子[すなわち、シクロプロピルアミノ、シクロブチルアミノ、シクロペンチルアミノおよびシクロヘキシルアミノ]の1個の環を有する飽和アミノ炭化水素を指す。
【0055】
「アルキルスルホニル」という用語は、指定数(例:C1−6アルキルスルホニル)またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子[すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニルなど]の直鎖または分岐のアルキルスルホンを指す。
【0056】
「アルキルオキシカルボニル」という用語は、指定数(例:C1−4アルキルオキシカルボニル)またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子[すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニルまたはブチルオキシカルボニル]の本発明のカルボン酸誘導体の直鎖または分岐のエステルを指す。
【0057】
「アリール」という用語は、フェニル、ナフチルおよびピリジルの両方を含む。アリール基は、独立にC1−4アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、C1−4アルコキシおよびC1−4アルキルチオから選択される1〜3個の基で置換されていても良い。
【0058】
「ハロゲン」という用語は、ハロゲン原子であるフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含むものである。
【0059】
「置換(された)」という用語は、指定された置換基による複数置換を含むものとする。複数の置換基部分が開示または特許請求されている場合、置換化合物は独立に、1以上の開示または特許請求された置換基部分によって1個または複数個置換されていることができる。
【0060】
「アミノアシル残基」という用語は、下記構造式のα−、β−またはγ−アミノアシル基を指す。
【0061】
【化16】

【0062】
式中、nは0、1または2であり;R13、R14、R15およびR16は上記で定義の通りである。R13が水素でない場合、前記アミノアシル残基は不斉中心を有し、個々のR−およびS−エナンチオマーならびにRS−ラセミ混合物を含むものである。
【0063】
「5′−三リン酸エステル」という用語は、下記一般構造式IIIを有する本発明のヌクレオシド化合物の5′−水酸基の三リン酸エステル誘導体を指す。
【0064】
【化17】

式中、R〜R11は上記で定義の通りである。本発明の化合物は、その三リン酸エステルの製薬上許容される塩ならびにそれぞれ下記構造式IVおよびVの5′−モノリン酸エステルおよび5′−二リン酸エステルの製薬上許容される塩をも含むものとする。
【0065】
【化18】

【0066】
「5′−(S−アシル−2−チオエチル)リン酸エステル」または「SATE」という用語は、それぞれ構造式VIおよびVIIの本発明の5′−モノリン酸ヌクレオシド誘導体のモノエステルもしくはジエステル誘導体、ならびに製薬上許容されるモノエステルの塩を指す。
【0067】
【化19】

【0068】
「医薬組成物」での場合のような「組成物」という用語は、有効成分および担体を構成する不活性成分を含むもの、ならびに2以上の成分の組み合わせ、複合体化もしくは凝集、または1以上の成分の溶解、または1以上の成分の他の種類の反応もしくは相互作用によって直接または間接に得られるものを包含するものとする。従って本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と製薬上許容される担体とを混合することで得られるあらゆる組成物を包含する。
【0069】
化合物の「投与」という用語は、本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを、必要とする個体に提供することを意味するものと理解すべきである。
【0070】
本発明の別の態様は、HCV感染の治療に有用な1以上の薬剤と併用した本発明の化合物によって、HCVNS5Bポリメラーゼを阻害する方法、HCV複製を阻害する方法、あるいはHCV感染を治療する方法に関する。そのようなHCVに対して活性な薬剤には、リバビリン、レボビリン(levovirin)、ビラミジン(viramidine)、チモシンα−1、インターフェロン−β、インターフェロン−α、PEG化インターフェロン−α(PEGインターフェロン−α)、インターフェロン−αとリバビリンの組み合わせ、PEGインターフェロン−αとリバビリンの組み合わせ、インターフェロン−αとレボビリンの組み合わせ、PEGインターフェロン−αとレボビリンの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。インターフェロン−αには、組換えインターフェロン−α2a(ホフマン−ラロッシュ社(Hoffmann-LaRoche, Nutley, NJ)から入手可能なロフェロン(Roferon)インターフェロンなど)、PEG化インターフェロン−α2a(Pegasys(商標名))、インターフェロン−α2b(シェリング社(Schering Corp., Kenilworth, NJ)から入手可能なイントロン(Intron)−Aインターフェロンなど)、PEG化インターフェロン−α2b(PegIntron(商標名))、組換えコンセンサスインターフェロン(インターフェロン・アルファコン(alphacon)−1など)および精製インターフェロン−α製品などがあるが、これらに限定されるものではない。アムゲン社(Amgen)の組換えコンセンサスインターフェロンは、インフェルゲン(Infergen;登録商標)の商品名を有する。レボビリンはリバビリンのL−エナンチオマーであり、リバビリンと同様の免疫調節活性が示されている。ビラミジンは、WO 01/60379(ICN Pharmaceuticalsに譲渡)に開示のリバビリンの類縁体を表す。本発明のこの方法によれば、組み合わせの個々の成分は、分割または単一の組み合わせの形態で、治療の過程における異なる時点で別個に、または同時に投与することができる。従って本発明は、そのような全ての同時または交互の投与法を包含するものと理解すべきであり、「投与」という用語はそれに準じて解釈すべきである。本発明の化合物とHCV感染の治療に有用な他の薬剤との組み合わせの範囲には基本的に、HCV感染治療用のあらゆる医薬組成物とのあらゆる組み合わせが含まれることは明らかであろう。本発明の化合物またはそれの製薬上許容される塩をHCVに対して活性な第2の治療剤と併用する場合、各化合物の用量は、その化合物を単独で使用する場合と同じであるか、異なっていることができる。
【0071】
HCV感染の治療においては、本発明の化合物は、HCVNS3セリンプロテアーゼの阻害薬である薬剤と併用して投与することもできる。HCVNS3セリンプロテアーゼは必須のウィルス酵素であり、HCV複製阻害の良好な標的であることが報告されている。HCVNS3プロテアーゼ阻害薬の基質性および非基質性の両方の阻害薬が、WO 98/22496、WO 98/46630、WO 99/07733、WO 99/07734、WO 99/38888、WO 99/50230、WO 99/64442、WO 00/09543、WO 00/59929およびGB2337262に開示されている。HCV複製阻害薬の開発およびHCV感染治療の標的としてのHCVNS3プロテアーゼについては、ディモックの報告に記載されている(B. W. Dymock, ″Emerging therapies for hepatitis C virus infection″, Emerging Drugs, 6: 13-42 (2001))。
【0072】
リバビリン、レボビリンおよびビラミジンは、細胞内酵素であるイノシンモノホスフェートデヒドロゲナーゼ(IMPDH)の阻害を介して、グアニンヌクレオチドの細胞内蓄積を調節することで、抗HCV効果を発揮することができる。IMPDHは、デ・ノボのグアニンヌクレオチド生合成における生合成経路に対する速度抑制酵素である。リバビリンは細胞内で容易にリン酸エステル化され、モノリン酸エステル誘導体がIMPDHの阻害薬である。そこでIMPDHの阻害は、HCV複製阻害薬を発見する上での別の有用な標的を代表するものである。従って本発明の化合物は、WO 97/41211およびWO 01/00622(Vertexに譲渡)に開示のVX−497などのIMPDHの阻害薬;WO 00/25780(Bristol-Myers Squibbに譲渡)に開示のものなどの別のIMPDH阻害薬;またはミコフェノレート・モフェチル(mofetil)[A. C. Allison and E. M. Eugui, Agents Action, 44 (Suppl.) : 165 (1993)参照]と併用して投与することもできる。
【0073】
HCV感染治療の場合、本発明の化合物は抗ウィルス剤であるアマンタジン(1−アミノアダマンタン)[この薬剤についての詳細な説明については、J. Kirschbaum, Anal. Profiles Drug Subs. 12: 1-36 (1983)参照]との併用で投与することもできる。
【0074】
本発明の化合物は、HCV感染の治療を目的として、文献(R. E. Harry-O′Kuru, et al., J. Org. Chem., 62: 1754-1759 (1997);M. S. Wolfe, et al., Tetrahedron Lett., 36: 7611-7614 (1995);米国特許第3480613号(1969年11月25日);国際特許公開番号WO 01/90121(2001年11月29日);国際特許公開番号WO 01/92282(2001年12月6日);および国際特許公開番号WO 02/32920(2002年4月25日);これらそれぞれの内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に開示の抗ウィルス性2′−C−分岐リボヌクレオシド類と組み合わせることもできる。そのような2′−C−分岐リボヌクレオシド類には、2′−C−メチル−シチジン、2′−C−メチル−ウリジン、2′−C−メチル−アデノシン、2′−C−メチル−グアノシンおよび9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−2,6−ジアミノプリンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
「製薬上許容される」とは、担体、希釈剤または賦形剤が、製剤の他の成分と適合性でなければならず、それの被投与者に対して有害であってはならないことを意味する。
【0076】
製薬上許容される担体とともに、本発明のヌクレオシド化合物およびそれの誘導体を含む医薬組成物も、本発明の範囲に含まれる。本発明の別の例には、上記のいずれかの化合物と製薬上許容される担体とを組み合わせることで製造される医薬組成物がある。本発明の別の例には、上記のいずれかの化合物および製薬上許容される担体とを組み合わせる段階を有する医薬組成物の製造方法がある。
【0077】
本発明の範囲には、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼ、特にHCVNS5Bポリメラーゼの阻害に有用な、有効量の本発明の化合物および製薬上許容される担体を含む組成物も含まれる。RNA依存性RNAウィルス感染、特にHCV感染の治療に有用な医薬組成物も本発明に含まれ、さらにはRNA依存性RNAウィルスポリメラーゼ、特にHCVNS5Bポリメラーゼの阻害方法およびRNA依存性ウィルス複製、特にHCV複製の治療方法も含まれる。さらに本発明は、治療上有効量のRNA依存性RNAウィルス、特にHCVに対して活性である別の薬剤と組み合わせて、治療上有効量の本発明の化合物を含む医薬組成物に関するものでもある。HCVに対して活性な薬剤には、リバビリン、レボビリン、ビラミジン、チモシンα−1、HCVNS3セリンプロテアーゼの阻害薬、インターフェロン−α、PEG化インターフェロン−α(PEGインターフェロン−α)、インターフェロン−αとリバビリンの組み合わせ、PEGインターフェロン−αとリバビリンの組み合わせ、インターフェロン−αとレボビリンの組み合わせ、ならびにPEGインターフェロン−αとレボビリンの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。インターフェロン−αには、組換えインターフェロン−α2a(ホフマン−ラロッシュ社(Hoffmann-LaRoche, Nutley, NJ)から入手可能なロフェロン(Roferon)インターフェロンなど)、インターフェロン−α2b(シェリング社(Schering Corp., Kenilworth, NJ)から入手可能なイントロン(Intron)−Aインターフェロンなど)、コンセンサスインターフェロンおよび精製インターフェロン−α製品などがあるが、これらに限定されるものではない。リバビリンおよびそれのHCVに対する活性についての議論は、サンダースらの報告(J. O. Saunders and S. A. Raybuck, ″Inosine Monophosphate Dehydrogenase: Consideration of Structure, Kinetics, and Therapeutic Potential″, Ann. Rep. Med. Chem., 35: 201-210 (2000))を参照する。
【0078】
本発明の別の態様は、RNA依存性RNAウィルス複製、特にHCV複製の阻害、および/またはRNA依存性RNAウィルス感染、特にHCV感染の治療用の医薬製造における、ヌクレオシド化合物およびそれの誘導体ならびにそれの医薬組成物の使用を提供する。本発明のさらに別の態様は、RNA依存性RNAウィルス複製、特にHCV複製の阻害、および/またはRNA依存性RNAウィルス感染、特にHCV感染の治療用の医薬としての、ヌクレオシド化合物およびそれの誘導体ならびにそれの医薬組成物を提供する。
【0079】
本発明の医薬組成物は、有効成分としての構造式Iの化合物またはそれの製薬上許容される塩を含有し、製薬上許容される担体および適宜に他の治療成分を含むこともできる。
【0080】
その組成物には、経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉および静脈)、眼球(眼科)、肺(経鼻もしくは口腔吸入)または経鼻投与に好適な組成物などがある。ただし、ある場合における最も好適な経路は、治療対象となる状態の性質および重度、ならびに有効成分の性質によって決まる。その組成物は簡便には、単位製剤で提供することができ、製薬業界で公知の方法によって製造することができる。
【0081】
実際の使用において構造式Iの化合物は、従来の医薬配合法に従って、医薬担体と十分に混和して有効成分として組み合わせることができる。担体は、経口または非経口(静脈投与を含む)などの投与に望まれる剤型に応じて、非常に多様な形態を取り得る。経口製剤用組成物の製造においては、通常の医薬媒体を用いることができ、それには例えば、懸濁液、エリキシル剤および液剤のような経口液体製剤の場合には、水、グリコール類、オイル類、アルコール類、香味剤、保存剤、着色剤などがあり;あるいは例えば粉剤、硬および軟カプセルおよび錠剤などの経口固体製剤の場合には、デンプン類、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体があり、液体製剤より固体製剤の方が好ましい。
【0082】
投与が容易であることから、錠剤およびカプセルが最も有利な経口単位製剤を代表するものであり、その場合には固体の医薬担体を用いることは明らかである。所望に応じて、錠剤を標準的な水系もしくは非水系法によってコーティングすることができる。そのような組成物および製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含むものでなければならない。当然のことながら、その組成物注の活性化合物のパーセントは変動し得るものであり、簡便にはその単位の重量の約2%〜約60%とすることができる。そのような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、有効な用量が得られる程度のものである。活性化合物はまた、例えば液体滴剤または噴霧剤として経鼻投与することもできる。
【0083】
錠剤、丸薬、カプセルなどは、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチもしくはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;ショ糖、乳糖もしくはサッカリンなどの甘味剤も含むことができる。単位製剤がカプセルである場合にそれは、上記の種類の材料以外に、脂肪油などの液体担体を含むことができる。
【0084】
各種の他の材料が、コーティング剤として、あるいは単位製剤の物理形状を変えるために存在していても良い。例えば錠剤は、シェラック、糖またはその両方によってコーティングすることができる。シロップまたはエリキシル剤は、有効成分以外に、甘味剤としてのショ糖、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素およびチェリーもしくはオレンジ香味などの香味剤を含むことができる。
【0085】
構造式Iの化合物は、非経口投与することもできる。これら活性化合物の液剤または懸濁液は、ヒドロキシ−プロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合して水で調製することができる。グリセリン、液体ポリエチレングリコール類およびオイル中でのそれの混合物で、分散液を調製することもできる。通常の保管および使用条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含有する。
【0086】
注射に好適な医薬剤型には、無菌の水溶液または分散液ならびに無菌注射溶液もしくは分散液の即時調製用の無菌粉剤などがある。いずれの場合も、その製剤は無菌でなければならず、容易に注射できる程度の流動性を有するものでなければならない。それは、製造および保管条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して防腐しなければならない。担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例:グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、それらの好適な混合物ならびに植物油を含む溶媒または分散媒体であることができる。
【0087】
哺乳動物、特にヒトに対して、治療上有効な用量の本発明の化合物を提供するため、いずれかの好適な投与経路を用いることができる。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼球、肺、経鼻投与などを用いることができる。製剤には、錠剤、トローチ、分散液、懸濁液、液剤、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾルなどがある。好ましくは式Iの化合物は、経口投与する。
【0088】
ヒトへの経口投与の場合に用量範囲は、分割投与で0.01〜1000mg/kgである。1実施形態において用量範囲は、分割投与で0.1〜100mg/kgである。別の実施形態では用量範囲は、分割投与で0.5〜20mg/kgである。経口投与の場合、組成物は好ましくは、有効成分1.0〜1000mg、特には治療対象患者への用量を症状に応じて調節するために、1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900および1000mg含む錠剤またはカプセルの形態で提供される。
【0089】
使用される有効成分の治療上有効な用量は、用いられる特定の化合物、投与形態、治療される状態ならびに治療される状態の重度に応じて変動し得る。そのような用量は、当業者であれば容易に確認することができる。その投与法を調節して、至適な治療応答を得ることができる。
【0090】
本発明の化合物は1以上の不斉中心を有することから、ラセミ体およびラセミ混合物、単独のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして得られる場合がある。本発明は、下記の構造式で示したような5員フラノース環についてD−立体化学配置を有するヌクレオシド誘導体、すなわち、5員フラノース環のC−1およびC−4での置換基がβ−立体化学配置(太字線によって示した「上」向き)を有するヌクレオシド化合物を包含するものである。
【0091】
【化20】

【0092】
本明細書に記載の化合物の一部はオレフィン二重結合を有するものであり、別段の断りがない限り、EおよびZの両方の幾何異性体を含むものである。
【0093】
本明細書に記載の化合物の一部は、ケト−エノール互変異体などの互変異体として存在する場合がある。個々の互変異体ならびにそれらの混合物は、構造式Iの化合物に包含される。本発明の化合物に包含されるケト−エノール互変異体の例には、以下のものなどがある。
【0094】
【化21】

【0095】
構造式Iの化合物は、例えばメタノールもしくは酢酸エチルまたはそれらの混合物のような好適な溶媒からの分別結晶によって、あるいは光学活性固定相を用いるキラルクロマトグラフィーによって、個々のジアステレオマーに分離することができる。
【0096】
別法として、構造式Iの化合物の立体異性体は、光学的に純粋な原料または配置が既知の試薬を用いる立体特異的合成によって得ることができる。
【0097】
構造式Iの本発明の化合物のフラノース環のC−2位およびC−3位にある置換基の立体化学は、置換基R、R、RおよびRが互いに独立に、α(置換基「下向き」)またはβ(置換基「上向き」)のいずれかの配置を取り得ることを意味する波線によって示してある。フラノース環のC−1およびC−4でのように太線によって立体化学を示している場合、その置換基がβ−配置(置換基「上向き」)を有することを意味している。
【0098】
【化22】

【0099】
本発明の化合物は、製薬上許容される塩の形で投与することができる。「製薬上許容される塩」という用語は、無機もしくは有機塩基および無機もしくは有機酸などの製薬上許容される無毒性の塩基または酸から製造される塩を指す。「製薬上許容される塩」に包含される塩基性化合物の塩は、一般に遊離塩基を好適な有機もしくは無機酸と反応させることで製造される本発明の化合物の無毒性塩を指す。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩(estolate)、エシル酸塩(esylate)、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチルブロマイド、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボネート(embonate))、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート(teoclate)、トシル酸塩、トリエチオジドおよび吉草酸塩などがあるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、それの好適な製薬上許容される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛の塩などの無機塩基から誘導される塩などがあるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいものは、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。製薬上許容される有機無毒性塩基から誘導される塩には、1級、2級および3級アミン、環状アミン、ならびに塩基性イオン交換樹脂の塩などがあり、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩がある。
【0100】
さらに、本発明の化合物にカルボン酸(−COOH)基またはアルコール基が存在する場合、メチル、エチルもしくはピバロイルオキシメチルなどのカルボン酸誘導体の製薬上許容されるエステル、あるいは酢酸エステル、オクタン酸エステルもしくはマレイン酸エステルなどのアルコールのアシル誘導体を用いることができる。徐放製剤またはプロドラッグ製剤として使用するために、溶解度もしくは加水分解特性を変える上で当業界で公知のエステルおよびアシル基などがある。
【0101】
本発明のヌクレオシド化合物および誘導体の製造
本発明のヌクレオシド化合物および誘導体は、ヌクレオシドおよびヌクレオチドの化学の実施において確立された合成法に従って製造することができる。本発明の化合物の製造において用いられる合成方法についての説明に関しては、タウンゼントの編著(″Chemistry of Nucleosides and Nucleotides″, L. B. Townsend, ed., Vols. 1-3, Plenum Press, 1988;参照によってその全内容が本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0102】
以下の実施例では、最終化合物あるいは本発明の最終化合物の製造で用いられる中間体の製造に関する詳細が記載された刊行物を引用している。下記の実施例に詳細に記載された手順に従って、本発明のヌクレオシド化合物を製造した。これらの実施例は、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものではなく、そのように解釈すべきではない。ヌクレオシドおよびヌクレオチド合成の当業者には、下記の製造手順の条件および工程において公知の変更を行って、上記および他の本発明の化合物を製造可能であることは明らかであろう。別段の断りがない限り、温度は全て℃単位である。
【実施例1】
【0103】
2−[2−アミノ−6−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン
段階A:2−アミノ−6−クロロ−9−(2,3,5−トリ−O−ベンゾイル−2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン
【0104】
【化23】

【0105】
1,2,3,5−テトラ−O−ベンゾイル−2−C−メチル−α(およびβ)D−リボフラノース(1.74g、3.00mmol)のアセトニトリル(15mL)溶液を予め冷却し、それに2−アミノ−6−クロロプリン(0.56g、3.30mmol)、次にジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)(1.37g、9.00mmol)を加え、次にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルメチル(TMSトリフレート)(2.67g、12.00mmol)を滴下した。得られた混合物を加熱して65℃として4時間経過させ、次に冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)と塩化メチレン(200mL)との間で分配した。有機相を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に溶媒留去した。得られた粗生成物(2.57g)を段階Bで直接用いた。
【0106】
段階B:2−アミノ−6−クロロ−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン
【0107】
【化24】

【0108】
段階Aからの粗化合物(2.54g)のTHF(18mL)溶液に、2N LiOH水溶液(6mL)を加えた。得られた混合物を室温で3時間撹拌し、THFを減圧下に留去し、得られた水相を2N塩酸水溶液を加えることで中和した。混合物を減圧下での溶媒留去によってシリカゲルに吸着させ、溶離液としてメタノール/塩化メチレン(1:4)を用いてシリカゲルで精製した。生成物を含む分画を合わせ、減圧下に溶媒留去して、所望の生成物(0.74g)を無色粉末として得た。
【0109】
H NMR(DMSO−d):δ0.80(s、3H)、3.67(m、1H)、3.78〜4.00(重複m、3H)、5.81(s、1H)、6.95(s、1H)、8.45(s、1H)。
【0110】
段階C:2−[2−アミノ−6−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン
【0111】
【化25】

【0112】
段階Bからの化合物(50mg)に、トリフルオロエチルアミン(2.0mL)を加えた。得られた溶液を80℃で終夜撹拌し、冷却し、減圧下に溶媒留去した。粗生成物を、溶離液としてメタノール/塩化メチレン(1:9)を用いてシリカゲルで精製した。生成物を含む分画を合わせ、減圧下に溶媒留去して、所望の化合物を無色粉末として得た(44.0mg)。
【0113】
H NMR(メタノール−d):δ0.85(s、3H)、3.75(dd、1H)、3.90(m、2H)、4.13(d、1H)、4.39(q、2H)、5.83(s、1H)、8.03(s、1H)。
【実施例2】
【0114】
3−[2−アミノ−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン−6−イル−アミノ]プロピオン酸メチルエステル
【0115】
【化26】

【0116】
実施例1の段階Bからの化合物(13mg)に、ジオキサン(1.0mL)、トリエチルアミン(0.2mL)およびβ−アラニンメチルエステル塩酸塩(50mg)を加えた。得られた溶液を80℃で3時間撹拌し、冷却し、減圧下に溶媒留去した。粗生成物を、溶離液としてメタノール/塩化メチレン(1:9)を用いてシリカゲルで精製した。生成物を含む分画を合わせ、減圧下に溶媒留去して、所望の化合物を無色粉末として得た(7.0mg)。
【0117】
H NMR(メタノール−d):δ0.95(s、3H)、2.71(t、2H)、3.68(s、3H)、3.82(m、2H)、3.88(m、1H)、4.00(m、1H)、4.05(q、1H)、4.22(d、1H)、5.89(s、1H)、8.06(s、1H)。
【実施例3】
【0118】
2−[2−アミノ−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン−6−イル−アミノ]−アセトアミド
【0119】
【化27】

【0120】
実施例1の段階Bからの化合物(10mg)に、メタノール(1.0mL)、トリエチルアミン(0.2mL)およびグリシンアミド塩酸塩(50mg)を加えた。得られたスラリーを80℃で24時間撹拌し、冷却し、減圧下に溶媒留去した。粗生成物を、溶離液としてメタノール/塩化メチレン(1:4)を用いてシリカゲルで精製した。生成物を含む分画を合わせ、減圧下に溶媒留去して、所望の化合物を無色粉末として得た(4.8mg)。
【0121】
H NMR(メタノール−d):δ0.93(s、3H)、3.84(m、1H)、4.04(s、2H)、4.17(s、2H)、5.92(s、1H)、8.09(s、1H)。
【0122】
生物アッセイ
HCVNS5BポリメラーゼおよびHCV複製の阻害を測定するのに用いたアッセイについて、以下に説明する。
【0123】
本発明の化合物のHCVNS5BRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)阻害薬としての有効性を、以下のアッセイで測定した。
【0124】
A.HCVNS5Bポリメラーゼ阻害アッセイ
このアッセイを用いて、本発明のヌクレオシド誘導体がヘテロメリックRNA鋳型上のC型肝炎ウィルス(HCV)のRNA依存性RNAポリメラーゼ(NS5B)の酵素活性を阻害する能力を測定した。
【0125】
手順
アッセイ緩衝液条件:(50μL−総量/反応)
20mM Tris、pH7.5
50μM EDTA
5mM DTT
2mM MgCl
80mM KCl
0.4U/μL RNAsin(Promega、原液は40単位/μLである)
0.75μg t500(C型肝炎ゲノムのNS2/3領域からの配列によるT7流出(runoff)転写を用いて得た500−ntRNA)
1.6μg 精製C型肝炎NS5B(C−末端切断した21アミノ酸で形成)
1μMA、C、U、GTP(ヌクレオシド三リン酸混合物)
[α−32P]−GTPまたは[α−33P]−GTP。
【0126】
化合物については、最終濃度100μMまでの各種濃度で試験を行った。
【0127】
酵素および鋳型t500を含む適切な容量の反応緩衝液を調製した。本発明のヌクレオシド誘導体をピペットを用いて96ウェルプレートのウェルに入れた。放射能標識したGTPを含むヌクレオシド三リン酸(NTP)の混合物を調製し、ピペットで96ウェルプレートに入れた。酵素−鋳型反応溶液を加えることで反応開始し、室温で1〜2時間反応を進行させた。
【0128】
0.5M EDTA、pH8.0 20μLを加えることで反応を停止した。反応停止溶液をNTPに加えてから反応緩衝液を加えるブランク反応を含めた。
【0129】
反応停止した反応液50μLをDE81フィルター円板(ワットマン(Whatman))にスポット添加し、30分間乾燥させた。フィルターを0.3Mギ酸アンモニウムpH8で洗浄した(洗浄液1mL中のcpmが100未満となるまで150mL/洗浄で実施する。通常は6回の洗浄)。フィルターについて、シンチレーションカウンターにおいて5mLシンチレーション液中でのカウンティングを行った。
【0130】
阻害パーセントを、阻害%=[1−(試験反応でのcpm−ブランクでのcpm)/(対照反応でのcpm−ブランクでのcpm)]×100という式に従って計算した。
【0131】
HCVNS5Bポリメラーゼアッセイで調べた代表的化合物は、100μM未満のIC50値を示した。
【0132】
B.HCVRNA複製阻害アッセイ
本発明の化合物について、サブゲノムHCVレプリコンを含む培養肝癌(HuH−7)細胞におけるC型肝炎ウィルスRNAの複製に影響する能力も評価した。このアッセイの詳細について、以下に説明する。このレプリコンアッセイは、ローマンらの報告に記載の方法の変法である(V. Lohmann, F. Korner, J-O. Koch, U. Herian, L. Theilmann, and R. Bartenschlager, ″Replication of a Sub-genomic Hepatitis C Virus RNAs in a Hepatoma Cell Line″, Science 285: 110 (1999))。
【0133】
プロトコール
このアッセイは、in situでのリボヌクレアーゼ保護、シンチレーション近似に基づくプレートアッセイ(SPA)であった。細胞10000〜40000個を、96ウェルのサイトスター(cytostar)プレート(Amersham)で、0.8mg/mLのG418を含む培地100〜200μL中で平板培養した。0〜18時間の時点で、1%DMSO中100μMまでの各種濃度で化合物を細胞に加え、次に24〜96時間培養を行った。細胞を固定し(20分、10%ホルマリン)、浸透性とし(20分、0.25%TritonX−100/PBS)、RNAウィルスゲノムに含まれている(+)鎖NS5B(または他の遺伝子)に対して相補性である一本鎖33PRNAプローブでハイブリダーゼーションを行った(終夜、50℃)。細胞を洗浄し、RNAseで処理し、洗浄し、加熱して65℃とし、トップカウント(Top-Count)でカウンティングを行った。複製の阻害を、毎分カウント数(cpm)における低下として読み取った。
【0134】
サブゲノムレプリコンを含むように選択したヒトHuH−7肝癌細胞は、HCV5′非翻訳領域(NTR)、ネオマイシン選択可能マーカー、EMCVIRES(内部リボソーム侵入部位)およびHCV非構造蛋白NS3〜NS5Bからなる細胞質RNAとそれに続く3′NTRを有する。
【0135】
複製アッセイで調べた代表的な化合物は、100μM未満のEC50値を示した。
【0136】
本発明のヌクレオシド誘導体について、以下に記載のカウンタースクリーニング(counterscreen)で、細胞傷害性および抗ウィルス特異性の評価も行った。
【0137】
C.カウンタースクリーニング
本発明のヌクレオシド誘導体がヒトDNAポリメラーゼを阻害する能力を、以下のアッセイで測定した。
【0138】
a.ヒトDNAポリメラーゼαおよびβの阻害
反応条件
反応容量50μL。
【0139】
反応緩衝液成分
20mM Tris−HCl、pH7.5
200μg/mLウシ血清アルブミン
100mM KCl
2mM p−メルカプトエタノール
10mM MgCl
1.6μM dA、dG、dC、dTTP
α−33P−dATP。
【0140】
酵素および鋳型
0.05mg/mLギャップ(gapped)魚精子DNA鋳型
0.01U/μL DNAポリメラーゼαまたはβ。
【0141】
ギャップ魚精子DNA鋳型の製造
活性化魚精子DNA(USB70076)500μLに、1M MgCl 5μLを加える。
昇温させて37℃とし、65U/μLのエキソヌクレアーゼIII(ギブコBRL(GibcoBRL)18013−011)30μLを加える。
37℃で5分間インキュベートする。
65℃で10分間加熱することで、反応を終了させる。
20mM Tris−HCl、pH7.5で平衡としたバイオ−スピン(Bio-spin)6クロマトグラフィーカラム(バイオ−ラッド(Bio-Rad)7326002)に小分けサンプル50〜100μLを負荷する。
1000×gで4分間遠心することで溶離を行う。
溶出液を合わせ、260nmでの吸光度を測定して、濃度を求める。
【0142】
DNA鋳型を適切な容量の20mM Tris−HCl、pH7.5で希釈し、酵素を2mM β−メルカプトエタノールおよび100mM KClを含む適切な容量の20mM Tris−HClで希釈した。鋳型および酵素をピペットで微量遠心管または96ウェルプレートに入れた。酵素を含まないブランク反応液および被験化合物を含まない対照反応液も、それぞれ酵素希釈緩衝液および被験化合物溶媒を用いて調製した。上記のような成分を含む反応緩衝液によって、反応を開始した。反応液を37℃で1時間インキュベートした。0.5M EDTA 20μLを加えることで反応停止した。反応停止した反応液50μLをワットマンDE81フィルター円板にスポット添加し、風乾させた。洗浄液1mLが<100cpmとなるまで、フィルター円板を0.3Mギ酸アンモニウム150mLで繰り返し洗浄した。円板を純粋エタノール150mLで2回、脱水エーテル150mLで1回洗浄し、乾燥し、シンチレーション液5mL中でカウンティングした。
【0143】
阻害%=[1−(試験反応でのcpm−ブランクでのcpm)/(対照反応でのcpm−ブランクでのcpm)]×100という式に従って、阻害パーセントを計算した。
【0144】
b.ヒトDNAポリメラーゼγの阻害
20mM Tris pH8,2mMメルカプトエタノール、50mM KCl、10mM MgClおよび0.1μg/μL BSAを含む緩衝液中で0.5ng/μL酵素;10μM dATP、dGTP、dCTPおよびTTP;2μCi/反応[α−33P]−dATPおよび0.4μg/μgL活性化魚精子DNA(US Biochemicalから購入)を含む反応で、ヒトDNAポリメラーゼγ阻害の能力を測定した。反応を37℃で1時間進行させ、最終濃度142mMまで0.5M EDTAを加えることで停止した。アニオン交換フィルター結合およびシンチレーションカウンティングによって、生成物形成を定量した。化合物について、50μMまで試験を行った。
【0145】
阻害%=[1−(試験反応でのcpm−ブランクでのcpm)/(対照反応でのcpm−ブランクでのcpm)]×100という式に従って、阻害パーセントを計算した。
【0146】
本発明のヌクレオシド誘導体がHIV感染力およびHIV伝播を阻害する能力を、以下のアッセイで測定した。
【0147】
c.HIV感染力アッセイ
低バックグラウンドβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)発現に関して選択したCXCR4およびCCR5の両方を発現するHeLa Magi細胞の変異株を用いてアッセイを行った。細胞を48時間感染させ、組み込まれたHIV−1 LTRプロモーターからのβ−gal産生を、化学発光基質(Galactolight Plus, Tropix, Bedfordm, MA)を用いて定量した。100μMから開始する2倍連続希釈で、阻害薬の力価測定を行った(2連で)。各濃度での阻害パーセントを、対照感染との関連で計算した。
【0148】
d.HIV伝播の阻害
本発明の化合物がヒト免疫不全ウィルス(HIV)の伝播を阻害する能力を、米国特許第5413999号(1995年5月9日)およびバッカらの報告(J. P. Vacca, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 91: 4096-4100 (1994))(これらは参照によって、その全内容が本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって測定した。
【0149】
本発明のヌクレオシド誘導体については、下記のアッセイに記載の方法に従って、MTS細胞に基づくアッセイでサブゲノムHCVレプリコンを含む培養肝癌(HuH−7)細胞に対する細胞傷害性のスクリーニングも行った。HuH−7細胞系については、ナカバヤシらの報告(H. Nakabayashi, et al., Cancer Res., 42: 3858 (1982))に記載されている。
【0150】
e.細胞傷害性アッセイ
3日間のインキュベーションでの懸濁培養用には細胞約1.5×10個/mL、3日間のインキュベーションでの付着培養用には細胞5.0×10個/mLの濃度で、細胞培養物を適切な培地中で製造した。細胞培養物99μLを96ウェル組織培養液処理プレートのウェルに移し入れ、100倍最終濃度の被験化合物のDMSO溶液1μLを加えた。プレートを、所定の期間にわたって37℃および5%COでインキュベートした。インキュベーション期間終了後、アッセイ試薬(CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay reagent)(MTS)(Promega)20μLを各ウェルに加え、さらに3時間までの期間にわたって、プレートを37℃および5%COでインキュベートした。プレートを撹拌して十分に混和し、490nmでの吸光度をプレート読取装置を用いて読み取った。懸濁培養細胞の標準曲線を、MTS試薬添加直前の既知細胞数で作成した。代謝活性細胞は、MTSをホルマザンに還元する。ホルマザンは、490nmで吸収を示す。化合物存在下での490nmでの吸光度を、化合物を添加しなかった細胞での吸光度と比較した。
【0151】
参考文献:Cory, A. H. et al., ″Use of an aqueous soluble tetrazolium/formazan assay for cell growth assays in culture″, Cancer Commun. 3: 207 (1991)。
【0152】
以下のアッセイを用いて、他のRNA依存性RNAウィルスに対する本発明の化合物の活性を測定した。
【0153】
a.ライノウィルスに対する化合物のin vitro抗ウィルス活性の測定(細胞変性効果阻害アッセイ)
アッセイ条件は、シドウェルおよびハフマンによる論文(Sidwell and Huffman, ″Use of disposable microtissue culture plates for antiviral and interferon induction studies″, Appl. Microbiol. 22: 797-801 (1971))に記載されている。
【0154】
ウィルス
シドウェルおよびハフマンの参考文献に記載の方法に従って、ライノウィルス2型(RV−2)HGP株を、KB細胞および培地(0.1%NaHCO、抗生物質なし)とともに用いた。ATCCから入手したウィルスは、軽度の急性熱性上気道病の成人男性の咽頭スワブからのものであった。
【0155】
ライノウィルス9型(RV−9)211株およびライノウィルス14型(RV−14)Tow株も、ATCC(American Type Culture Collection, Rockville, MD)から入手した。RV−9は、ヒト咽頭うがい液からのものであり、RV−14は気道病の成人男性の咽頭スワブからのものであった。これらのウィルスはいずれも、ヒト頸部類上皮癌細胞であるHeLa Ohio−1細胞(Dr. Fred Hayden, Univ. of VA)とともに用いた。5%ウシ胎仔血清(FBS)および0.1%NaHCOを含むMEM(イーグル最小必須培地)を、増殖培地として用いた。
【0156】
これら3種類のウィルスについての抗ウィルス試験培地は、5%FBS、0.1%NaHCO、50μgゲンタマイシン/mLおよび10mM MgClを含むMEMとした。
【0157】
本発明の化合物のアッセイを行う上での最高濃度は、2000μg/mLとした。被験化合物から約5分後に、アッセイプレートにウィルスを加えた。適切な対照についても行った。アッセイプレートを、加湿空気および5%COで37℃にてインキュベートした。形態変化に関して顕微鏡観察にて、対照細胞で細胞傷害性をモニタリングした。ウィルスCPEデータおよび細胞傷害性対照データの回帰分析によって、ED50(50%有効用量)およびCC50(50%細胞傷害性濃度)を得た。SI=CC50÷ED50という式によって、選択性指数(SI)を計算した。
【0158】
b.デング熱ウィルス、バンジウィルスおよび黄熱病ウィルスに対する化合物のin vitro抗ウィルス活性の測定(CPE阻害アッセイ)
アッセイの詳細については、上記のシドウェルおよびハフマンの参考文献に記載されている。
【0159】
ウィルス
デング熱ウィルス2型ニューギニア株を、疾病対策センターから入手した。2系統のアフリカミドリザル腎臓細胞を用いて、ウィルスを培養し(ベロ)、抗ウィルス試験を行った(MA−104)。感染マウス脳から得た黄熱病ウィルス17D株および南アフリカの発熱した少年の血清から単離したバンジウィルスH336株のいずれも、ATCCから入手した。ベロ細胞を、これら両方のウィルスとともに用い、アッセイに供した。
【0160】
細胞および培地
MA−104細胞(BioWhittaker, Inc., Walkersville, MD)およびベロ細胞(ATCC)を、5%FBSおよび0.1%NaHCOを含み、抗生物質を含まない培地199中で用いた。デング熱ウィルス、黄熱病ウィルスおよびバンジウィルス用のアッセイ培地は、MEM、2%FBS、0.18%NaHCOおよび50μgゲンタマイシン/mLとした。
【0161】
本発明の化合物の抗ウィルス試験を、シドウェルおよびハフマンの参考文献に従い、上記のライノウィルス抗ウィルス試験と同様にして行った。これら各ウィルスについて、5〜6日後に十分な細胞変性効果(CPE)読取が行われた。
【0162】
c.西ナイルウィルスに対する化合物のin vitro抗ウィルス活性の測定(CPE阻害アッセイ)
アッセイの詳細については、上記で引用のシドウェルおよびハフマンの参考文献に記載されている。カラス脳由来の西ナイルウィルスニューヨーク単離株を、疾病対策センターから入手した。上記の方法に従って、ベロ細胞を増殖させ、使用した。試験培地は、MEM、1%FBS、0.1%NaHCOおよび50μgゲンタマイシン/mLとした。
【0163】
ライノウィルス活性についてのアッセイに用いたものと同様であるシドウェルおよびはハフマンの方法に従って、本発明の化合物の抗ウィルス試験を行った。5〜6日後に、十分な細胞変性効果(CPE)読取が行われた。
【0164】
d.ライノウィルス、黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス、バンジウィルスおよび西ナイルウィルスに対する化合物のin vitro抗ウィルス活性の測定(ニュートラルレッド取り込みアッセイ)
上記のCPE阻害アッセイを行った後、文献(″Microtiter Assay for Interferon: Microspectrophotometric Quantitation of Cytopathic Effect″, Appl. Environ. Microbiol. 31: 35-38 (1976))に記載の別の細胞変性検出法を用いた。EL309型微量プレート読取装置(Bio-Tek Instruments Inc.)を用いて、アッセイプレートの読取を行った。ED50およびCD50を上記の方法に従って計算した。
【0165】
医薬製剤の例
本発明の化合物の経口組成物の具体的な実施形態として、実施例1または実施例2の化合物50mgを、十分に微粉砕した乳糖とともに製剤して総量580〜590mgを得て、サイズO硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0166】
以上、本発明の具体的な実施形態を参照しながら、本発明についての説明を行ったが、当業者には、本発明の精神および範囲を逸脱しない限りにおいて、各種の変更、修正および置き換えが可能であることは明らかであろう。例えば、HCV感染の重度に関して治療対象のヒトの応答における変動の結果として、上記のような好ましい用量以外の治療上有効な用量が適用可能な場合がある。同様に、認められる薬理応答は、選択される特定の活性化合物または医薬担体の有無、ならびに製剤の種類および用いられる投与形態に応じて変動し得るものであり、結果におけるそのような予想される変動もしくは差異は、本発明の目的および実務に従って想到されるものである。従って、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、そのような特許請求の範囲は妥当な限り広く解釈すべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式Iの化合物または該化合物の製薬上許容される塩。
【化1】

[式中、
nは0、1または2であり;
YはNまたはC−R17であり;
はC2−4アルケニル、C2−4アルキニルまたはC1−4アルキルであり;アルキルは未置換であるかヒドロキシ、アミノ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオもしくは1〜3個のフッ素原子で置換されており;
は水素、アミノ、フッ素、ヒドロキシ、メルカプト、C1−4アルコキシまたはC1−4アルキルであり;
およびRはそれぞれ独立に、水素、シアノ、アジド、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、C1−4アルコキシ、C2−4アルケニル、C2−4アルキニルおよびC1−4アルキルからなる群から選択され;アルキルは未置換であるかヒドロキシ、アミノ、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたは1〜3個のフッ素原子で置換されており;
は水素、C1−10アルキルカルボニル、P、PまたはP(O)R1112であり;
およびRはそれぞれ独立に、水素、メチル、ヒドロキシメチルまたはフルオロメチルであり;
は水素、C1−4アルキル、C2−4アルキニル、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、C1−4アルキルオキシカルボニル、アジド、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニルまたは(C1−4アルキル)0−2アミノメチルであり;
は水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノまたはジ(C3−6シクロアルキル)アミノであり;
10はC1−4アルキルアミノ(そのアルキル部分は1〜3個のハロゲン原子で置換されている);−OCHCHSC(=O)C1−4アルキル;−OCHO(C=O)OC1−4アルキル;−OCH(C1−4アルキル)O(C=O)C1−4アルキル;または下記構造式:
【化2】

を有するアミノアシル残基であり;
13は水素、C1−4アルキルまたはフェニルC0−2アルキルであり;
14は水素またはC1−4アルキルであり;
15、R16、R18およびR19はそれぞれ独立に水素またはC1−4アルキルであり;
11およびR12はそれぞれ独立にヒドロキシ、−OCHCHSC(=O)C1−4アルキル、−OCHO(C=O)OC1−4アルキル、−NHCH(C0−4アルキル)CO1−3アルキル、−OCH(C1−4アルキル)O(C=O)C1−4アルキル、
【化3】

であり;
17は水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、NHCONH、CONR1819、CSNR1819、COOR18、C(=NH)NH、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノまたはC1−3アルキルであり;アルキルは未置換であるか独立にハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC1−3アルコキシから選択される1〜3個の基で置換されている。]
【請求項2】
構造式IIの請求項1に記載の化合物または該化合物の製薬上許容される塩。
【化4】

[式中、
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノまたはC1−4アルコキシであり;
はC1−3アルキルであり;アルキルは、ヒドロキシ、アミノ、C1−3アルコキシ、C1−3アルキルチオまたは1〜3個のフッ素原子で置換されていても良く;
はヒドロキシ、フッ素またはC1−3アルコキシであり;
は水素、P、PまたはPOであり;
は水素、アミノまたはC1−4アルキルアミノであり;
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノまたはC3−6シクロアルキルアミノであり;
10はC1−3アルキルアミノ(そのアルキル部分は1〜3個のフッ素原子で置換されている);または下記構造式:
【化5】

を有するアミノアシル残基であり;
13は水素、C1−4アルキルまたはフェニルC0−2アルキルであり;
14は水素またはC1−4アルキルであり;
15およびR16はそれぞれ独立に水素またはC1−4アルキルである。]
【請求項3】
がメチル、フルオロメチル、ヒドロキシメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルまたはアミノメチルであり;
がヒドロキシ、フッ素またはメトキシであり;
が水素、フッ素、ヒドロキシ、アミノまたはメトキシであり;
が水素またはPであり;
が水素またはアミノであり;
が水素、フッ素、ヒドロキシまたはアミノであり;
10が2,2,2−トリフルオロエチルアミノまたは下記構造式:
【化6】

を有するアミノアシル残基であり;
13が水素、C1−4アルキルまたはフェニルC0−2アルキルであり;
14が水素またはC1−4アルキルであり;
15およびR16がそれぞれ独立に水素またはC1−4アルキルである請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
2−[2−アミノ−6−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン;
3−[2−アミノ−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン−6−イル−アミノ]プロピオン酸メチルエステル;および
2−[2−アミノ−9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−9H−プリン−6−イル−アミノ]−アセトアミド;ならびに
相当する5′−三リン酸からなる群から選択される請求項3に記載の化合物;または
該化合物の製薬上許容される塩。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物および製薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項6】
治療を必要とする哺乳動物に対して、治療上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を有する、RNA依存性RNAウィルス感染の治療方法。
【請求項7】
前記RNA依存性RNAウィルス感染がC型肝炎ウィルス(HCV)感染である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
治療上有効量のHCVに対して活性な別の薬剤と併用する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記HCVに対して活性な薬剤が、単独またはリバビリンもしくはレボビリンとの組合せでのリバビリン;レボビリン;チモシンα−1;インターフェロン−β;NS3セリンプロテアーゼの阻害薬;イノシンモノリン酸デヒドロゲナーゼの阻害薬;インターフェロン−αまたはPEGインターフェロン−αである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記HCVに対して活性な薬剤が、単独またはリバビリンもしくはレボビリンとの組合せでのインターフェロン−αまたはPEG化インターフェロン−αである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
哺乳動物でのRNA依存性RNAウィルス感染の治療のための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項12】
前記RNA依存性RNAウィルス感染がHCV感染である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
哺乳動物でのRNA依存性RNAウィルス感染の治療用の医薬品を製造するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項14】
前記RNA依存性RNAウィルス感染がHCV感染である請求項13に記載の使用。

【公表番号】特表2006−512288(P2006−512288A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−517749(P2004−517749)
【出願日】平成15年6月23日(2003.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/019776
【国際公開番号】WO2004/003138
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【出願人】(595104323)アイシス・ファーマシューティカルス・インコーポレーテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】Isis PharmaceuticalsInc
【Fターム(参考)】