説明

S−置換N−1−[(ヘテロ)アリール]アルキル−N’−[(ヘテロ)アリール]アルキルイソチオカルバミド、これらの調製のための方法、生理学的に活性なN−1−[(ヘテロ)アリール]アルキル−N’−[(ヘテロ)アリール]アルキルイソチオカルバミド、薬学的組成物および処置方法

本発明は、ラセミ混合物(もしくは立体異性体混合物)または個々の光学異性体の形態で具体化される、S−置換N−1−[(ヘテロ)アリール]アルキル−N−1−[(ヘテロ)アリール]アルキルイソチオ−カルバミド、ならびにその生理学的に活性な塩およびその塩基に関する。上記化合物の特異的な生理学的活性は、これらを分子ツールの形態で使用することを可能にさせる。本発明はまた、上記の化合物を含む薬学的組成物、ならびに種々の疾患(例えば、アルツハイマー病(AD)のような神経変性疾患を含む)を予防および治療するための方法に関する。この化合物の薬理学的効果は、組み合わされたその認知刺激作用およびその神経保護作用に基づき、これは、化学制御されたニューロン膜のカルシウムチャンネル(特に、中枢神経系(CNS)のグルタメートレセプターによって調節されるニューロン)に作用することによって産生される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的活性を示す、N,S,N’(N’)−トリ(テトラ)−置換イソチオカルバミドの新規の誘導体に関する。より詳細には、本発明は、ラセミ混合物(もしくは立体異性体の混合物)の形態で、または個々の光学異性体の形態で具体化される、S−置換N−1−[(ヘテロ)アリール]アルキル−N’−1−[(ヘテロ)アリール]アルキルイソチオ−カルバミド、ならびにそれらの生理学的に活性な塩および塩基;これらの化合物が「分子ツール」として使用されることを可能にする、これらの化合物の特定の生理学的活性;この化合物を含む薬学的組成物;および種々の疾患(アルツハイマー病(AD)のような神経変性疾患を含む)の発症を処置および予防するための方法に関する。これらの化合物の薬理学的効果は、これらの複雑な認知刺激作用および神経保護作用に基づき、これらの効果は、化学的に制御される神経細胞膜(特に、中枢神経系(CNS)のグルタメートレセプターによって調節されるもの)のカルシウムチャンネルに作用することによって生じる。
【背景技術】
【0002】
グルタメートレセプターのサブタイプのうちの1つ、「アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−イソキサゾール−4−プロピオン酸/カイニン酸」レセプター(AMPA/KAレセプター)の増強(または正の調節)は、実験動物において記憶力の増強をもたらすことが最近実証されている(Yamada K.A.Modulating excitatory synaptic neurotransmission:potential treatment for neurological disease,Neurobiological Dis.,1998,5,(2),67−80)。この関係において、AMPA/KAレセプターを増強することが可能である化合物についての調査は、ADおよびヒトにおける認知機能の障害に関する他の疾患の処置のための新規の薬物の作製に対して、非慣用的かつ有望なアプローチである(Lynch,G.Memory and the brain:unexpected chemistries and a new pharmacology,J.Neurobiol.Learn and Memory,1998,70,(1−2),82−100)。さらに、この化合物は、記憶力の実質的な増強および学習過程の活性化を必要とする場合において有用であり得る。すなわち、この化合物は、認知刺激因子として作用し得る。
【0003】
一方、広範な神経学的な疾患(例えば、AD、ハンティングトン舞踏病、筋萎縮側索硬化症、およびまた大脳虚血)が、神経メディエ−ターの興奮性アミノ酸である、グルタメートおよびアスパルテートの興奮毒性作用に関連することが、公知である(Doble A.The Role of Excitotoxicity in Neurodegenerative Disease:Implication for Therapy,Pharmacology and Therapeutics,1999,81(3),163−221)。この機構に従って、CNSグルタメートレセプター、主にN−メチル−D−アスパルテトラセプター(NMDAレセプター)の長期活性化の間のニューロン膜の脱分極は、神経細胞におけるカルシウムホメオスタシスの障害をもたらし、そして一連の病理学的プロセスを開始し、神経細胞の死をもたらす(D.W.Choi,Neuron,1988,1,623−634)。従って、過剰濃度のカルシウムイオンの神経毒性作用に対して神経細胞を保護することが可能な、大脳NMDAレセプターの選択的アンタゴニストについての調査は、広範な神経変性疾患の処置および広範な神経変性疾患に対する保護のための新規の神経保護因子の作製に対する非常に有望なアプローチである(Parsons C.G.,Danysz W.,Quack G.Glutamate in CNS Disorders as a Target for Drug Development:An Update,Drugs News Perspect.,1988,11,(9),523−580)。
【0004】
AMPA/KAレセプターを正に調節し得、同時に、抗NMDA活性を有することが可能である化合物を見出すことを目的とした研究の結果として、本発明者らは、上記活性の型の独特の組み合わせを有する、広範な群のS−置換N−1−[(ヘテロ)アリール]アルキル−N’−1−[(ヘテロ)アリール]アルキルイソチオカルバミドを発見した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、遊離の塩基および薬理学的に受容可能な酸との塩の形態にある、ラセミ混合物または立体異性体の混合物の形態にある、遊離の塩基および薬理学的に受容可能な酸との塩の形態にある新規のS−置換N−1−[(ヘテロ)アリール]アルキル−N’−1−[(ヘテロ)アリール]アルキルイソチオカルバミド、およびまた上記化合物の個々の光学異性体またはこの異性体の混合物に関し、これらは全て一緒に、一般式(I):
【0006】
【化13】

によって表され、
ここで:
YおよびZは、同じでも、または異なっていてもよく、そして独立して、置換され得るアリールまたは置換され得る(部分的にまたは完全に水素化され得る)ヘテロアリールであり;
記号(#)は、キラル炭素原子の存在の可能性を表し;
およびRは、同じでも、または異なっていてもよく、そして独立して、Hまたは低級アルキルであり;
は、低級アルキル、置換され得るアルケニル、置換され得るシクロアルキル、シクロアルケニル、アラルキル、または以下の一般式:
−(CH−W
を有する基であり、
ここで:nは、1〜4であり、一方Wは:
置換され得るアリール;
置換され得る(部分的にまたは完全に水素化され得る)ヘテロアリール;
置換され得るシクロアルキル;
必要に応じて低級アルキルでモノ置換またはジ置換されるエテニル;
COOR基(ここで、Rは、H、低級アルキル、フェニルである);
CHOR基(ここで、Rは、上で示された値を有する);
NR基(ここで、RおよびRは、同じでも、または異なっていてもよく、そして各々、独立して:
H;アルキル;シクロアルキル;アラルキルであり、
置換基Rまたは置換基Rのうちの1つは、アシル基C(O)Rであり得、ここでRは、上で示された値を有するか;
または、RおよびRは、必要に応じて置換される1,4−ブチレン鎖または1,5−ペンタメチレン鎖を、およびまた−CHCH−O−CHCH−鎖を一緒に形成し得る);
N(R基(ここでRは、低級アルキルであり、そしてXは、薬理学的に受容可能な酸のアニオンである);
ベンゼン環において置換され得るN−フタルイミド基、
からなる群より選択され、
は、H、低級アルキル、置換され得るアリール、フェニル環において置換され得るフェニルエチル、[(ヘテロ)アリール]メチルまたは1−[(ヘテロ)アリール]エチルであり;
ここで:
i)Rは、RがHでない場合にのみ示される値を有し得;
ii)RがHである場合、Rは、H、低級アルキル、アリール、またはフェニル環において置換され得る2−フェニルエチルである。
【0007】
上で与えられる定義および以下の記載において用いられる用語「低級アルキル」とは、1〜4個の炭素原子を含む、直鎖または分枝鎖を有するアルキル基を意味する。低級アルキルの例は、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、二級ブチル、三級ブチルなどである。
【0008】
用語「シクロアルキル」とは、5〜7個の環炭素原子を有する、環状の飽和炭化水素基を意味する。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0009】
用語「シクロアルケニル」とは、5〜7個の環炭素原子を有する、環状の不飽和炭化水素基を意味する。シクロアルケニルの例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどが挙げられる。
【0010】
用語「アリール」とは、非置換もしくは置換のフェニル基またはナフチル基を意味する。フェニル基の置換基は、以下の基であり得る:ハロゲン(例えば、フッ素、塩素など)、低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、イソ−プロピルなど)、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、イソ−プロポキシなど)、シアノ基、ニトロ基、トリハロメチル基(例えば、トリフルオロメチルなど)、必要に応じて置換されるアミノ基(例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、アセチルアミノ基、N−ピペリジノ基、N−フタルイミド基など)、アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、ベンゾイルなど)、カルボキサミド基(例えば、N,N−ジエチルカルボキサミド基など)、カルボキシ基、カルバルコキシ(carbalkoxy)基など。ナフチル基の置換基は、フッ素、塩素、臭素、メチル基、およびメトキシ基であり得る。
【0011】
用語「アラルキル」とは、上で定義されたアリールに上で定義されたアルキル基が加えられている、アリールを意味する。
【0012】
用語「ヘテロアリール」とは、5員または6員のN−芳香族複素環、O−芳香族複素環、もしくはS−芳香族複素環、またはそのベンゼン誘導体を意味する。適切な置換基の例としては、必要に応じて置換されるフラン、チオフェン、ピロール、インドール、ピリジン、キノリンなどが挙げられる。
【0013】
本明細書中で使用される用語「ハロゲン」とは、塩素、臭素、フッ素またはヨウ素を意味する。
【0014】
用語「アルコキシ」とは、アルキルフラグメントが、上で定義されるようなアルキル基である、アルキルO−基を意味する。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
【0015】
用語「アシル」とは、COR基(ここで、Rは、値H、アルキル、アリールおよびアラルキル(上で定義される)を有する)を意味する。アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基などが挙げられる。
【0016】
用語「薬理学的に受容可能な酸」は、全ての薬理学的に受容可能な酸であって、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸など)、およびまた有機酸(例えば、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、メチル硫酸、p−トルエンスルホン酸など)の両方を含む。
【0017】
本発明の対象の1つを構成する式(1)の化合物の中では、以下に与えられる式(I.1)、式(I.2)および式(I.3)によって表され得る、以下の3つのサブグループの化合物が好ましい。
【0018】
(I.1)特に、第1群の好ましい化合物は、
一般式I.1:
【0019】
【化14】

のS−置換N−[(ヘテロ)アリール]−メチル−N’−1−[(ヘテロ)アリール]アルキルイソチオカルバミドを含み、
ここで:
YおよびZは、式Iについて上で特定された値を有し;
記号(#)は、キラル炭素原子の存在の可能性を表し;
は、Hまたは低級アルキルであり;
10は、低級アルキル、アルケニル、アラルキル、または一般式:
−(CH−V
を有する基であり;
ここで:mは、1〜2であり、そしてVは:
mが1である場合、
置換され得るアリール;
置換され得るシクロアルキル;
低級アルキルで必要に応じてモノ置換されるエテニル;
COOR基(ここでRは、上で特定された値を有する);
CHOR基(ここでRは、上で特定された値を有する);
ジフェニルホスフィニル(diphynylphosphinyl)基から、
mが2である場合、
アリール;
COOR基(ここでRは、上で特定された値を有する);
N−ピペリジン;
N−モルホリン;
N−ピロリジン;
ベンゼン環において置換され得るN−フタルイミド基、
からなる群より選択され、
11は、H、低級アルキル、またはフェニル環において置換され得る2−フェニルエチルである。
【0020】
(I.1.1)群I.1の枠組み内にある、最も好ましい化合物は、一般式I.1.1:
【0021】
【化15】

のラセミ混合物(または立体異性体の加成的な混合物)の形態にあるS−置換N−[(ヘテロ)アリール]メチル−N’−1−(R,S)−フェニルエチルイソチオカルバミドであり、
ここで:
Aは、アリール、およびまた複素環式置換基であって、この複素環式置換基は、すなわち:
必要に応じて置換される2−フリルまたは3−フリル、
必要に応じて置換される2−チエニルまたは3−チエニル、
必要に応じて置換される2−ピロリル、
必要に応じて置換される3−インドリル、
必要に応じて置換される2−テトラヒドロフルフリルであり、
10は、式I.1について上で特定された値を有し;
11は、式I.1について上で特定された値を有する。
【0022】
(I.2)式Iに対応する物質の中の第2のサブグループの最も好ましい化合物は:
一般式I.2:
【0023】
【化16】

のS−置換N−[(ヘテロ)アリール]−メチル−N’−[(ヘテロ)アリール]−メチルイソチオカルバミドを含み、
ここで:
YおよびZは、式Iについて上で特定された値を有し;
10は、式I.1について上で特定された値を有し;
11は、式I.1について上で特定された値を有する。
【0024】
(式I.2.1)群I.2の枠内にある、最も好ましい化合物は、一般式I.2.1:
【0025】
【化17】

のS−置換N’[(ヘテロ)アリール]メチル−N’−(ヘテロアリール)メチルイソチオカルバミドであり、
ここで:
Hetは:
必要に応じて置換される2−フリルまたは3−フリル;
必要に応じて置換される2−チエニルまたは3−チエニル;
必要に応じて置換される2−ピロリル;
必要に応じて置換される3−インドリル;
必要に応じて置換される2−テトラヒドロフルフリルであり、
は:
(ハロゲン、低級アルキル、メトキシ、エトキシ、トリフリオロメチルのような置換基で必要に応じてモノ置換またはジ置換される)フェニル;
メチレンジオキシフェニル;
2−フリル;
2−テトラヒドロフルフリルであり、
10は、式I.1について上で特定された値を有し;
11は、式I.1について上で特定された値を有する。
【0026】
式I.1.1の一連のイソチオカルバミドにおいてさらにより好ましい化合物は、2つの群の化合物I.1.1.1および化合物I.1.1.2である。
【0027】
(I.1.1.1)一般式I.1.1.1:
【0028】
【化18】

のS−置換N−[(ヘテロ)アリール]メチル−N’−[1−R(+)−フェニルエチル]イソ−チオカルバミドであって、
ここで:
は、式I.2.1について上で特定された値を有し;
11は、式I.1について上で特定された値を有し;
12は:
低級アルキル;
アリル;
シクロヘキセニル;
ベンゼン環において必要に応じて置換されるベンジル;
2−フェニルエチル;
2−(エトキシカルボニル)エチル;
2−N−フタルイミドエチル、
からなる群より選択される。
【0029】
(I.1.1.2.)一般式I.1.1.2:
【0030】
【化19】

のS−置換N−[(ヘテロ)アリール]−メチル−N’−[1−S(−)−フェニルエチル]イソ−チオカルバミドであって、
ここで:
は、式I.2.1について上で特定された値を有し;
11は、式I.1について上で特定された値を有し;
12は、式I.1.1.1について上で特定された値を有する。
【0031】
式Iに対応するイソチオカルバミドの中の最も好ましい化合物の第3のサブグループは、4つのサブグループ:I.3a、I.3b、I.3cおよびI.3dによって表されるジアステレオマー化合物I.3の群である。
【0032】
(I.3a)一般式I.3.a:
【0033】
【化20】

のS,N’−置換N−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−[1−S(−)−フェニルエチル]−イソチオカルバミドであって、
ここで:
13は:
低級アルキル;
アリル;
シクロヘキセニル;
ベンゼン環において必要に応じて置換されるベンジル;
2−(フェニル)エチル;
からなる群より選択され、
14は、低級アルキル、必要に応じて置換されるベンジル、(ヘテロアリール)メチル、または2−フェニルエチルである。
【0034】
(I.3b)一般式I.3.b:
【0035】
【化21】

のS,N’−置換N−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−[1−R(+)−フェニルエチル]−イソチオカルバミドであって、
ここで:
13およびR14は、式I.3aについて上で特定された値を有する。
【0036】
(I.3c)一般式I.3.c:
【0037】
【化22】

のS,N’−置換N−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−[1−S(−)−フェニルエチル]−イソチオカルバミドであって、
ここで:
13およびR14は、式I.3aについて上で特定された値を有する。
【0038】
(I.3d)一般式I.3.d:
【0039】
【化23】

のS,N’−置換N−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−[1−R(+)−フェニルエチル]−イソチオカルバミドであって、
ここで:
13およびR14は、式I.3aについて上で特定された値を有する。
【0040】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式Iの以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−1−S(−)−フェニルエチル−N’−1−S(−)フェニルエチルイソチオカルバミドおよびS−メチル−N−1−S(−)−フェニルエチル−N’−(4−メトキシ)ベンジル−N’−1−S(−)−フェニルエチルイソチオカルバミド。
【0041】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式I.1の以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−4−フルオロベンジル−N’−[1−S(−)−フェニルプロピル]−N’−イソブチル−イソチオカルバミドおよびS−メチル−N−4−フルオロベンジル−N’−[1−R(+)−フェニルプロピル]−N’−イソブチルイソチオカルバミド。
【0042】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式I.1.1の以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−4−メトキシベンジル−N’−3,4−ジメトキシフェネチル−N’−1−フェニルエチルイソチオカルバミド。
【0043】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式I.2の以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−ベンジル−N’−・・・・ベンジルイソチオカルバミド、S−エチル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、S−ベンジル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、SB4−ニトロベンジル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、SB4−カルボキシベンジル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、SBアリル−N−ベンジル−N’−ベンジル−イソチオカルバミド、SB2−シクロヘキセニル−N−ベンジル−N’−ベンジル−イソチオカルバミド、SB2−フェニルエチル−N−ベンジル−N’−ベンジル−イソチオカルバミド、SB2−エトキシカルボニル−エチル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド。
【0044】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式I.2.1の以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−2−テトラヒドロフルフリル−N’−5−メチルフルフリル−N’−2−フェニルエチルイソチオカルバミドおよびS−メチル−N−ピペロニル−N’−2−チエニルメチル−N’−イソプロピルイソチオカルバミド。
【0045】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式I.1.1.1の以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−ベンジル−N’−1−R(+)−フェニルエチル−N’−(シクロヘキシ−3−エニル)メチルイソチオカルバミドおよびS−メチル−N−ベンジル−N’−1−R(+)−フェニルエチル−N’−2−フェニル−エチルイソチオカルバミド。
【0046】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式I.1.1.2の以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−ベンジル−N’−1−S(−)−フェニルエチル−N’−(シクロヘキシ−3−エニル)メチルイソチオカルバミドおよびS−メチル−N−ベンジル−N’−1−S(−)−フェニルエチル−N’−2−フェニルエチルイソチオカルバミド。
【0047】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式I.3.aの以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミド。
【0048】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式I.3.bの以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミド。
【0049】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式I.3.cの以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミド。
【0050】
(薬理学的に受容可能な塩および/または遊離の塩基の形態にある)式I.3.dの以下の化合物が、最も好ましい化合物である:S−メチル−N−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミド。
【0051】
本発明に従う式Iの化合物は、類似の物質の調製について当該分野で公知の方法、または以下に記載される新規の方法を用いて調製される。
【0052】
式TMの中間体のチオカルバミド(ここで、R、R、R、(#)、YおよびZは、上で示された値を有する)は、アミンとイソチオシアネートとの公知の反応から類推して調製される。しかし、厳しい立体障害の結果として、N,N’(,N’)−ジ(トリ)−置換TMチオカルバミドの最終的なアルキル化は、はっきりとは進行しない。本発明を創生する過程において、このような構造を有する反応性が弱いチオカルバミドのアルキル化について選択的な方法が見出され、化合物の光学活性が保持されることを可能にしている。
【0053】
本発明に従う式Iの新規の化合物の調製についての基本は、できる限り極性不活性溶媒(例えば、アルコール、エチレングリコール、酢酸、ジメチル−ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン)において、室温〜反応混合物の沸点の温度で、式TMのチオカルバミドが、当量または過剰量(200%まで)の式R−Gを有する適切なアルキル化剤で反応される工程を包含する方法であり:
【0054】
【化24】

上記式R−Gにおいて、Rは、上で定義されており、そしてGは、脱離基(例えば、ハロゲン化物、スルフェート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、アルキルスサルフェート、ペルクロレート、アセテート、およびまた必要に応じて置換されるベンゾエート)である。
【0055】
本発明の次の局面に従って、上記工程が、上記溶媒において、または溶媒なしに出発化合物の均一混合物の形態において、SHF放射の影響下で実行されることを特徴とする方法が、式Iの化合物の調製について表される。調製された化合物の構造は、化学分析データおよびスペクトル分析データ、ならびに他の物理化学的特徴によって確認された。融点は正確でなかった。NMRスペクトルを、Brucker CXP−200装置(200MHz)を用いて記録した。観察されるシグナルの多重線の性質は、省略形で示す:(s)−一重線、(d)−二重線、(t)−三重線、(q)−四重線、および(m)多重線。
【実施例】
【0056】
以下に示される実施例は、本発明を例示するが、本発明を限定しない。
【0057】
(実施例1:S−メチル−N−(S)−(−)−α−メチルベンジル−N’−S−(−)−α−メチルベンジルイソチオカルバミドヨウ化水素(化合物1))
50mlのベンゼン中の1.63g(0.01モル)の(S)−(−)−α−メチル−ベンジルイソチオシアネートと1.21g(0.01モル)の(S)−(−)−α−メチル−ベンジルアミンとの溶液を、4時間沸騰させた。溶媒を蒸発させて除去し、そして50mlのメタノール中にある1.7g(0.012モル)のヨウ化メチルを加え、チオカルバミドを得た。この反応混合物を1.5時間沸騰させ、そしてこの溶媒および未反応ヨウ化メチルを、蒸発させて除去した。乾燥エーテルを生じた油の上に注ぎ、そして沈殿した結晶を濾過して取り除いた。
収率2.1g(49.2%)、融点86〜88℃。
【0058】
(実施例2:S−メチル−N−(S)−(−)−α−メチルベンジル−N’−(4−メトキシ)−ベンジル−N’−(S)−(−)−α−メチルベンジルイソチオカルバミドヨウ化水素(化合物2))
100mlのトルエン中の13.6g(0.1モル)の4−メトキシベンズアルデヒドと12.1g(0.1モル)の(S)−(−)−α−メチルベンジルアミンとの溶液を、ディーンスタークフィッティング(fitting)を用いて水の蒸留が終わるまで沸騰させる。この反応混合物を蒸発させる。生じたイミンを触媒的水素化によって還元する:50mlのイソプロパノール中のシッフ塩基(20g)および2gの1%Pd/Cを、大気圧下での水素化のために一体にして置く。還元を、水素の吸収が終わるまで続ける。この反応混合物を冷却し、触媒を濾過して取り除き、そしてこの溶媒を蒸発させて取り除く。生じた油を蒸留し、168〜172℃/1mmHg画分を取り除く。1.63g(0.01モル)の(S)−(−)−α−メチルベンジルイソチオシアネートを、50mlのメタノール中の2.40g(0.01モル)のN−(4−メトキシ)ベンジル−N−(S)−(−)−α−メチルベンジルアミンに添加し、1.5時間沸騰させ、そして1.7g(0.012モル)のヨウ化メチルを添加する。この反応混合物を24時間沸騰させる。この溶媒を蒸発させ、生じた油を乾燥エーテルから結晶化させ、この結晶を濾過して取り出し、そして20mlのイソプロパノールから再結晶させる。
収率2.0g(35.5%)、融点117〜119℃。
【0059】
(実施例3:S−メチル−N−4−フルオロベンジル−N’−[1−S(−)−フェニルプロピル]−N’−イソブチルイソチオカルバミド(化合物3))
100mlのトルエン中の13.5g(0.1モル)の(S)−(−)−1−フェニルプロピル−アミンと7.2g(0.1モル)のイソブチルアルデヒドとを、ディーンスタークフィッティングを用いて水の蒸留が終わるまで沸騰させる。この溶媒を蒸発させて除去する。生じたイミンを触媒的水素化によって還元する:50mlのイソプロパノール中のシッフ塩基(20g)および2gの1%Pd/Cを、大気圧下での水素化のために一体にして置く。還元を、水素の吸収が終わるまで続ける。この反応混合物を冷却し、触媒を濾過して取り除き、そしてこの溶媒を蒸発させて取り除く。生じた油を蒸留し、112〜116℃/1mmHg画分を取り除く。1.79g(0.01モル)の4−フルオロベンジルイソチオシアネートを50mlのメタノール中の2.09g(0.01モル)のN−[1−S(−)−フェニルプロピル]−N−イソブチルアミンに添加し、8時間沸騰させ、そして1.7g(0.012モル)のヨウ化メチルを加える。この反応混合物を4時間沸騰させる。この溶媒を蒸発させて取り除き、生じた油を乾燥エーテルから結晶化し、この結晶を濾過して取り出し、そして20mlのイソプロパノールから再結晶させる。
収率2.3g(46.0%)、融点111〜113℃。
【0060】
(実施例4:S−メチル−N−4−メトキシベンジル−N’−3,4−ジメトキシ−フェニル−N’−1−フェニルエチルイソチオカルバミドヨウ化水素(化合物4))
100mlのトルエン中の12.0g(0.1モル)のアセトフェノンと18.1g(0.1モル)の3,4−ジメトキシフェネチルアミンとの溶液を、ディーンスタークフィッティングを用いて水の蒸留が終わるまで沸騰させる。この溶媒を蒸発させて除去する。生じたイミンを触媒的水素化によって還元する:50mlのイソプロパノール中のシッフ塩基(20g)および2gの1%Pd/Cを、大気圧下での水素化のために一体にして置く。還元を、水素の吸収が終わるまで続ける。この反応混合物を冷却し、触媒を濾過して取り除き、そしてこの溶媒を蒸発させて取り除く。生じた油を蒸留し、184〜188℃/1mmHg画分を取り除く。1.79g(0.01モル)の4−メトキシベンジルイソチオシアネートを50mlのメタノール中の3.03g(0.01モル)のN−3,4−ジメトキシフェネチル−N−1−フェニルエチルアミンに添加し、8時間沸騰させ、そして1.7g(0.012モル)のヨウ化メチルを加える。この反応混合物を4時間沸騰させる。この溶媒を蒸発させて取り除き、生じた油を乾燥エーテルから結晶化し、この結晶を濾過して取り出し、そして20mlのイソプロパノールから再結晶させる。
収率2.2g(36.3%)、融点121〜123℃。
【0061】
(実施例5:S−メチル−N−2−テトラヒドロフルフリル−N’−5−メチルフルフリル−N’−2−フェニルエチルイソチオカルバミドヨウ化水素(化合物5))
100mlのトルエン中の11.0g(0.1モル)の5−メチルフルフロールと12.1g(0.1モル)の2−フェニルエチルアミンとの溶液を、ディーンスタークフィッティングを用いて水の蒸留が終わるまで沸騰させる。この溶媒を蒸発させて除去する。生じたイミンを触媒的水素化によって還元する:50mlのイソプロパノール中のシッフ塩基(20g)および2gの1%Pd/Cを、大気圧下での水素化のために一体にして置く。還元を、水素の吸収が終わるまで続ける。この反応混合物を冷却し、触媒を濾過して取り除き、そしてこの溶媒を蒸発させて取り除く。生じた油を蒸留し、132〜137℃/1mmHg画分を取り除く。1.43g(0.01モル)のテトラヒドロフルフリルイソチオシアネートを50mlのメタノール中の2.33g(0.01モル)のN−5−メチルフルフリル−N−2−フェニルエチルアミンに添加し、8時間沸騰させ、そして1.7g(0.012モル)のヨウ化メチルを加える。この反応混合物を4時間沸騰させる。この溶媒を蒸発させて取り除き、生じた油を乾燥エーテルから結晶化し、この結晶を濾過して取り出し、そして20mlのイソプロパノールから再結晶させる。
収率1.7g(34.0%)、融点105〜107℃。
【0062】
(実施例6:S−メチル−N−ピペロニル−N’−2−チエニルメチル−N’−イソプロピルイソチオカルバミドヨウ化水素(化合物6))
100mlのトルエン中の11.6g(0.1モル)のチオフェン−2−カルバルデヒドと6.5g(0.11モル)のイソプロピルアミンとの溶液を、ディーンスタークフィッティングを用いて水の蒸留が終わるまで沸騰させる。この溶媒および未反応のアミンを蒸発させて除去する。100mlのメタノール中の、生じたイミンの溶液に、2g(0.06モル)のホウ化水素ナトリウムを少量ずつ撹拌しながら加える。次いで、この反応混合物を1時間沸騰させ、この溶媒を蒸発させ、この残留物を200mlの塩化メチレンに溶解させ、そして水(3×100ml)で洗浄する。有機相を分離して取り除き、カリで乾燥し、そして溶媒を蒸発させて除去する。生じた油を蒸留し、135〜140℃/10mmHg画分を取り除く。1.93g(0.01モル)のピペロニルイソチオシアネートを50mlメタノール中の1.75g(0.01モル)のN−2−チエニル−N−イソプロピルアミンに加え、8時間沸騰させ、そして1.7g(0.012モル)のヨウ化メチルを加える。この混合物を4時間沸騰させる。この溶媒を蒸発させて除去し、生じた油を乾燥エーテルから結晶化し、この結晶を濾過して取り出し、そして20mlのイソプロパノールから再結晶させる。
収率2.1g(42.9%)、融点91〜93℃。
【0063】
(実施例7:S−メチル−N−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミドヨウ化水素(化合物7))
100mlのトルエン中の12.1g(0.1モル)のS−(−)−1−フェニルエチルと7.2g(0.1モル)のイソブチルアルデヒドとの溶液を、ディーンスタークフィッティングを用いて水の蒸留が終わるまで沸騰させる。この溶媒を蒸発させて除去する。生じたイミンを触媒的水素化によって還元する:50mlのイソプロパノール中のシッフ塩基(19g)および2gの1%Pd/Cを、大気圧下での水素化のために一体にして置く。還元を、水素の吸収が終わるまで続ける。この反応混合物を冷却し、触媒を濾過して取り除き、そしてこの溶媒を蒸発させて取り除く。生じた油を蒸留し、152〜155℃/10mmHg画分を取り除く。1.49g(0.01モル)の1−S(−)−フェニルエチルイソチオシアネートを50mlのメタノール中の1.95g(0.01モル)のN−[1−S(−)−フェニルエチル]−N−イソブチルアミンに添加し、8時間沸騰させ、そして1.7g(0.012モル)のヨウ化メチルを加える。この反応混合物を4時間沸騰させる。この溶媒を蒸発させて取り除き、生じた油を乾燥エーテルから結晶化し、この結晶を濾過して取り出し、そして20mlのイソプロパノールから再結晶させる。
収率1.8g(47.3%)、融点105〜107℃。
【0064】
以下の光学的に活性なイソチオカルバミドを、以下の対応するキラル1−フェニルエチルアミンから出発し、同様の方法によって調製した:
S−メチル−N−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−[1−R(+)−フェニル−エチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミドヨウ化水素(化合物8)
収率1.8g(47.3%)、融点107〜109℃。
【0065】
S−メチル−N−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−[1−R(+)−フェニル−エチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミドヨウ化水素(化合物9)
収率1.7g(35.2%)、融点106〜108℃;
S−メチル−N−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−[1−S(−)−フェニル−エチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミドヨウ化水素(化合物10)
収率1.7g(35.2%)、融点105〜107℃。
【0066】
(実施例8:S−メチル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオ−カルバミド(化合物11))
0.3gの硫黄および4.6g(0.06モル)の二硫化炭素を、150mlのエタノール中の10.7g(0.1モル)のベンジルアミンの溶液に加える。この混合物を、還流濃縮器を備える水浴上で、硫化水素の展開(evolution)が完全に終わるまで加熱する。この硫黄を濾過して取り除き、そしてアルコールの部分を減圧下で蒸発させて除去する。冷却後、沈殿したN−ベンジル−N’−ベンジルチオカルバミドを濾過して取り出し、そして100mlのイソプロパノールから再結晶させる。1.7g(0.012モル)のヨウ化メチルを50mlのアセトン中の調製した2.56g(0.01モル)のチオカルバミドに添加する。この反応混合物を50℃の温度で24時間保持する。沈殿した結晶を濾過して取り出し、20mlのイソプロパノールで再結晶させる。
収率3.2g(80.4%)、融点116〜118℃。
計算値:C 48.25%、H 4.81%、N 7.03%、C16H19IN2S。
検出値:C 48.44%、H 5.02%、N 7.39%。
NMRスペクトル(DMSO−d6,ppm,δ):2.90(3H,s,SCH3)、4.75(2H,d,CH2Ph)、4.90(2H,d,CH2Ph)、7.05〜7.55(10H,m,Ph)、9.50(1H,ブロードなt,NH)、9.90(1H,ブロードなt,NH)。
【0067】
以下を、N−ベンジル−N’−ベンジルチオカルバミドおよび対応するハロゲン化アルキルから同様の方法によって調製した:
S−エチル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミドヨウ化水素(化合物12)
収率3.0g(72.8%)、融点86〜88℃。
計算値:C 49.52%、H 5.13%、N 6.78%、C17H21IN2S。
検出値:C 49.46%、H 5.42%、N 6.38%。
NMRスペクトル(DMSO−d6,ppm,δ):1.35(3H,t,CH3)、3.45(2H,q,SCH2)、4.70(2H,d,CH2Ph)、4.90(2H,d,CH2Ph)、7.10〜7.55(10H,m,Ph)、9.60(1H,ブロードなt,NH)、9.95(1H,ブロードなt,NH)。
【0068】
S−ベンジル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド(化合物13)
収率3.3g(71.3%)、融点145〜147℃。
計算値:C 61.83%、H 5.42%、N 6.55%、C22H23BrN2S。
検出値:C 61.48%、H 5.47%、N 6.35%。
NMRスペクトル(DMSO−d6,ppm,δ):4.65(2H,s,SCH2)、4.75(2H,d,CH2Ph)、4.95(2H,d,CH2Ph)、7.10〜7.55(15H,m,Ph)、9.80(1H,ブロードなt,NH)、10.10(1H,ブロードなt,NH)。
【0069】
S−4−ニトロベンジル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド塩化水素(化合物14)
収率3.1g(72.6%)、融点158〜160℃。
計算値:C 61.75%、H 5.18%、N 9.82%、C22H22ClN3O2S。
検出値:C 61.43%、H 5.27%、N 9.55%。
NMRスペクトル(DMSO−d6,ppm,δ):4.75(2H,d,CH2Ph)、4.85(2H,d,CH2Ph)、4.95(2H,s,SCH2)、7.10〜7.30(10H,m,Ph)、7.40〜7.90(4H,dd,PhNO2)、10.60(1H,ブロードなt,NH)、10.80(1H,ブロードなt,NH)。
【0070】
S−4−カルボキシベンジル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド臭化水素(化合物15)
収率2.7g(57.3%)、融点137〜139℃。
計算値:C 58.60%、H 4.92%、N 5.94%、C23H23BrN2O2S。
検出値:C 58.43%、H 5.07%、N 5.59%。
NMRスペクトル(DMSO−d6,ppm,δ):4.55(2H,s,SCH2)、4.65(2H,d,CH2Ph)、4.70(2H,d,CH2Ph)、6.90〜7.10(10H,m,Ph)、7.20〜7.70(4H,dd,Ph−COOH)、10.00(1H,ブロードなt,NH)、10.10(1H,ブロードなt,NH)。
【0071】
S−アリル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド臭化水素(化合物16)
収率2.5g(66.3%)、融点81〜83℃。
計算値:C 57.29%、H 5.61%、N 7.42%、C18H21BrN2S。
検出値:C 57.48%、H 5.42%、N 7.35%。
NMRスペクトル(DMSO−d6,ppm,δ):4.65(2H,d,SCH2)、4.75(2H,d,CH2Ph)、4.85(2H,d,CH2Ph)、5.10〜5.40(2H,m,=CH2)、5.75(1H,m,=CH)、7.20〜7.50(10H,m,Ph)、9.80(1H,ブロードなt,NH)、10.10(1H,ブロードなt,NH)。
【0072】
S−2−シクロヘキセニル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド臭化水素(化合物17)
収率2.2g(52.8%)、融点145〜147℃。
計算値:C 60.43%、H 6.04%、N 6.71%、C21H25BrN2S。
検出値:C 60.33%、H 5.91%、N 6.37%。
NMRスペクトル(DMSO−d6,ppm,δ):1.55〜2.10(6H,m,CH2CH2CH2)、4.75(2H,d,CH2Ph)、4.85(2H,d,CH2Ph)、4.90(1H,m,SCH)、5.65(1H,m,=CH)、6.05(1H,m,=CH)、7.20〜7.60(10H,m,Ph)、10.00(1H,ブロードなt,NH)、10.10(1H,ブロードなt、NH)。
【0073】
S−2−フェニルエチル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド臭化水素(化合物18)
収率2.2g(49.9%)、融点78〜80℃。
計算値:C 62.58%、H 5.71%、N 6.35%、C23H25BrN2S。
検出値:C 62.48%、H 5.46%、N 6.39%。
NMRスペクトル(DMSO−d6,ppm,δ):2.80(2H,t,CH2Ph)、3.70(2H,t,SCH2)、4.55(2H,d,CH2Ph)、5.00(2H,d,CH2Ph)、7.10〜7.75(15H,m,Ph)、10.00(1H,ブロードなt,NH)、10.30(1H,ブロードなt,NH)。
【0074】
S−2−エトキシカルボニル−エチル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド臭化水素(化合物19)
収率1.8g(41.2%)、融点95〜97℃;
計算値:C 54.92%、H 5.76%、N 6.40%、C20H25BrN2O2S。
検出値:C 54.61%、H 5.48%、N 6.31%。
NMRスペクトル(DMSO−d6,ppm,δ):1.45(3H,t,CH3)、3.30(2H,t,CH2C(O))、3.60(2H,q,OCH2)、3.70(2H,t,SCH2)、4.75(2H,d,CH2Ph)、4.90(2H,d,CH2Ph)、7.10〜7.55(10H,m,Ph)、10.10(1H,ブロードなt,NH)、10.30(1H,ブロードなt,NH)。
【0075】
上に示したように、本発明に従う式Iの化合物は、AMPA/KAレセプターの応答を増強させ、かつまた、NMDAレセプターの応答をブロックする能力を有する。この能力は、生物学的試験の結果によって確かめられる。
【0076】
本発明者らは、動物での行動実験においてAMPA/KAレセプターの応答を増強させ得、かつ、記憶力および認知機能の向上を誘発し得る化合物について焦点を当てた研究に、2つの代替のアプローチを使用した。
【0077】
第1のアプローチは、ラットのプルキンエ小脳のニューロンにおけるAMPA誘発性膜貫通電流およびカイニン酸誘発性膜貫通電流に対する新規化合物の増強効果、ならびにまたラットの大脳皮質のニューロンにおけるNMDA誘発性電流の遮断を決定することであった;
第2のアプローチは、行動実験において、神経毒Af64Aの作用によって引き起こされるコリン作用のニューロンを欠損している(そしてこの結果として記憶力および学習機能の障害を有する)ラット、およびまたインタクトなラットにおける記憶力および認知機能の向上を実証することであった。
【0078】
(AMPA/KA誘発性電流を増大させ、NMDA誘発性電流をブロックする化合物の特性を評価するための方法)
この実験を、ラット(14〜16日齢)の小脳から採取した新しく単離したプルキンエニューロンについてパッチクランプ法を用いて実行した。改変方法を、単離について使用した。厚さ400〜600μmの小脳の切片を、10mlの体積を有するサーモスタット制御チャンバー(thermostat−controlled chamber)の中に配置した。単離のための溶液は、以下の組成を有した(mM):NaCl 150.0、KCl 5.0、CaCl 2.0、MgSOx7HO 2.0、HEPES 10.0、グルコース 15.0、pH7.42。この切片をこの溶液中で60分間インキュベートし、この溶液を、プロナーゼ(2mg/ml)およびコラゲナーゼ(1mg/ml)を含有する類似の溶液で置換した後、インキュベートを70分間続けた。もとの溶液で20分間洗浄した後、この切片をペトリ皿に配置し、パスツールピペットを用いて機械的に解離した。この溶液を、34℃で100%Oを用いて連続的にバブリングした。このプルキンエニューロンを0.6mlの体積を有する作業チャンバー内に配置した。この作業溶液は、以下の組成を有した(mM):NaCl 150.0、KCl 5.0、CaCl 2.6、MgSOx7HO 2.0、HEPES 10.0、グルコース 15.0、pH7.36。
【0079】
ラットの大脳皮質の切片を、ラットの年齢が7〜8日、酵素とのインキュベート時間が14分であったという差異以外は同様の様式で調製および処理した。
【0080】
膜貫通電流を、迅速な灌流方法を使用して、カイニン酸の溶液、AMPA/KAレセプターのアゴニストを適用することによるAMPA/KAレセプターの活性化によって、およびN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)の溶液、NMDAレセプターのアゴニストを適用することによるNMDAレセプターの活性化によって誘発した。以下の組成(mM)を満たしたホウケイ酸微小電極(抵抗1.5〜2.5mohm)を用いて、電流を記録した:KCl 100.0、EGTA 11.0、CaCl 1.0、MgCl 1.0、HEPES 10.0、ATP 5.0、pH 7.2。
【0081】
EPC9(HEKA、ドイツ)を、電流を記録するために使用した。電流は、パルスプログラム(これもまた、HEKA companyから購入された)を使用してPentium(登録商標)−100 PCハードディスクに記録された。この結果をPulsefitプログラム(HEKA)を用いて処理した。
【0082】
カイニン酸の適用は、プルキンエニューロンにおいて内向きの膜貫通電流を誘発する。灌流溶液への化合物の添加は、電流の振幅の増大を誘発する。この増大は、化合物、その濃度、および物質の適用の開始から経過した時間に依存する。
【0083】
NMDAの適用は、大脳皮質ニューロンにおいて内向きの電流を誘発する。灌流溶液への化合物の添加は、振幅の減少を誘発する。
【0084】
(実施例:化合物18)
20μMの用量で、化合物18は、カイニン酸誘発性電流の8%〜12%(平均10%)の増大を誘発する。3分〜5分間洗い出すと、この応答の振幅はコントロール値へ戻る。
【0085】
大脳皮質ニューロンにおいて、化合物18は、NMDA誘発性電流の減少を誘発する。3μMの濃度において25%〜35%(平均30%)まで、10μMの用量において100%までである。すなわち、化合物18は、実質的に、これらの電流を完全にブロックする。化合物18を3〜6分間洗い出すと、NMDA誘発性電流の振幅はコントロール値に戻る。
【0086】
得られた結果を表1に示す。この化合物は、活性において標準物質タクリンよりも1.0〜2.0だけ優れている。同時に、この化合物は、活性試験用量範囲において顕著な神経毒性効果を有さず、医薬における使用、コリン作動性神経メディエーター系が病原性機構に関連する疾患の処置および予防における使用、ならびに特に神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)の処置における使用について、これらを価値のあるものにする。
【0087】
(表1)
AMPA/KAの増強におけるこの化合物の活性は、ラット小脳のプルキンエニューロンにおける応答、および大脳皮質のニューロンにおけるNMDAレセプターの遮断を誘発した。
【0088】
【表1】

本発明の次の局面は、一般式Iの化合物であり、この化合物は、グルタミン酸AMPA/KAレセプターを増強する(正の調節)と同時に、グルタミン酸NMDAレセプターの活性化によって誘発される膜貫通電流を遮断する特性を有する。
【0089】
本発明の次の局面は、グルタミン酸作動系を研究する方法であり、この方法は、分子ツールとしての特異的な薬理学的マーカーであって、AMPA/KAレセプターを増強し、かつまた、NMDAレセプターを遮断する能力と組み合わせてこのようなマーカーとして使用される一般式Iの化合物を導入する工程を包含する。
【0090】
本発明の次の局面は、有効量の一般式Iの化合物の投与によってAMPA/KAレセプターおよびNMDAレセプターに作用することによる、グルタミン酸作動性神経伝達の機能不全に関連する神経学的障害および神経学的疾患の処置および予防のための方法である。
【0091】
本発明の次の局面は、有効量の一般式Iの化合物の投与によるAMPA/KAレセプターの正の調節による、記憶力の実質的な増大および学習過程の活性化のための方法である。
【0092】
処方される活性成分(式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩)の用量は、多くの因子(例えば、患者の年齢、性別および体重、疾患の症状および重篤度、処方される特定の化合物、投与方法、ならびにこの活性化合物が処方される調製物の形態)に依存して変動する。
【0093】
処方される用量の合計は、通常では1日あたり1mg〜200mgである。この用量合計は、いくつかの用量に分割され得、例えば、1日あたり1回〜4回摂取され得る。経口投与では、活性物質の用量合計の範囲は、1日あたり10mg〜200mg、好ましくは15mg〜150mgである。非経口的投与では、処方される用量の範囲は、1日あたり5mg〜100mg、好ましくは5mg〜50mgである。一方、静脈内注入については、処方される用量の範囲は、1日あたり1mg〜50mg、好ましくは1mg〜25mgである。正確な用量は、担当医によって選択され得る。
【0094】
医薬において標準的なことであるが、本発明に従う式Iの化合物は、組成物の形態で摂取されることが推奨され、この組成物はそれぞれ、本発明の次の局面を構成する。
【0095】
本発明に従う薬学的組成物は、当該分野で一般的に使用される手順を用いて調製され、そして薬理学的に有効量の活性薬剤を含有する。この活性薬剤は、通常では5重量%〜30重量%を構成して、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、吸収剤、芳香剤および矯味矯臭剤)と組み合わせて、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩(本明細書中で後に「活性化合物」として呼ばれる)を含む。公知の方法に従って、薬学的組成物は、種々の液体の形態または固体の形態で存在し得る。
【0096】
固体医薬形態の例としては、例えば、錠剤、丸剤、ゼラチンカプセル剤などが挙げられる。
【0097】
注入および非経口的投与のための液体医薬形態の例としては、溶液、乳濁液、懸濁液などが挙げられる。
【0098】
概して、組成物は、活性化合物と液体キャリアまたは細かく粉砕された固体キャリアとを混合する工程を提供する標準的手順を用いて調製される。
【0099】
錠剤の形態にある本発明に従う組成物は、5%〜30%の活性化合物と充填剤またはキャリアとを含む。以下が、例えば錠剤について使用される:a)充填剤:ビート糖、ラクトース、グルコース、塩化ナトリウム、ソルビトール、マンニトール、グリコール、リン酸二カルシウム;b)結合剤:ケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドン;c)崩壊剤:デキストロース、寒天、アルギン酸またはその塩、デンプン、Tween。
【0100】
(実施例1:15.0mgの化合物17を各々含有する100mgの錠剤)
化合物17 15.0mg
ラクトース 40.0mg
アルギン酸 20.0mg
クエン酸 5.0mg
トラガカント 20.0mg
錠剤は、活性成分と1つ以上の賦形剤とを圧縮するか、または成形することによって作製され得る。
【0101】
圧縮される錠剤は、特別な単位で作製される。遊離形態にある活性成分(例えば、散剤または顆粒剤)は、150gの量(10000個の錠剤の製造のために必要とされる物質の量)でトラガント結合剤(200g)と混合され、ラクトース充填剤(400g)と混合され、そして、アルギン酸崩壊剤(200g)およびクエン酸着香剤(50g)がこの混合物に添加される。
【0102】
着色剤および安定剤が、さらにゼラチンカプセル剤について使用される。テトラジン(tetrazine)およびインジゴ(indigo)は、着色剤として使用され、一方安定剤は、例えば、メタ重亜流酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウムであり得る。ここで提唱されるゼラチンカプセル剤は、1%〜20%の活性成分を含む。
【0103】
(実施例2:50mgの化合物18を各々含有する500mgのカプセル剤)
化合物18 50.0mg
グリセリン 100.0mg
糖シロップ 290.0mg
ハッカ油 40.0mg
安息香酸ナトリウム 10.0mg
アスコルビン酸 5.0mg
テトラジン 5.0mg
500gの活性物質(化合物18)(10000個のカプセル剤の調製に必要とされる量)を細かく粉砕し、そしてグリセリン(1000g)および糖シロップ(2900mg)とミキサーで混合する。混合後、ハッカ油(400g)、安息香酸ナトリウム(100g)、アスコルビン酸(50g)およびテトラジン(50g)をこの混合物に添加する。ゼラチンカプセル剤を、小滴法によって調製する。この方法は、冷却したワセリン油中への薬物溶液および加熱されたゼラチンの塊(900gのゼラチン)の同時の滴下調量を可能にする。この方法は、この薬物混合物を充填し、使用の準備が完全にされ、そして50mgの活性物質を含む、継ぎ目のない球状のゼラチンカプセル剤の形成をもたらす。
【0104】
組成物の注射用形態は、好ましくは、等張溶液または懸濁液を含む。上記の形態は、滅菌され得、そして以下の添加物を含み得る:例えば、保存剤:メタ重亜硫酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、もしくはメチルパラベンとプロピルパラベンとの混合物;安定剤:アンズゴム、アラビアゴム、デキストリン、デンプン糊、メチルセルロース、Tween;浸透圧を調整する塩(塩化ナトリウム):または緩衝剤。さらに、これらは他の治療的に有用な物質を含み得る。
【0105】
(実施例3:20mgの化合物17を各々含有する2mlのアンプル)
化合物17 20.0mg
0.9%の塩化ナトリウム溶液 1.6ml
安息香酸 10.0mg
メチルセルロース 10.0mg
ハッカ油 0.4ml
注射用形態の調製については、活性化合物17(20g;1000個のアンプルの調製に必要とされる量)を細かく粉砕し、そしてハッカ油(400ml)とミキサーで混合し、次いで、メチルセルロース(10g)を加え、0.9%の塩化ナトリウム溶液(1600ml)と混合し、そして安息香酸(10g)を添加する。得られた溶液を2mlのアンプルにパッケージングし、そして30分間蒸気で滅菌する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基または薬理学的に受容可能な酸HXとの塩の形態にある、一般式I:
【化1】

のS−置換N−1−[(ヘテロ)アリール]アルキル−N’−1−[(ヘテロ)アリール]アルキルイソチオカルバミドのラセミ混合物もしくはその立体異性体の混合物の形態であって、
ここで:
YおよびZは、同じでも、または異なっていてもよく、そして独立して、置換され得るアリール、または置換され得、部分的にもしくは完全に水素化され得るヘテロアリールであり;
記号(#)は、キラル炭素原子の存在の可能性を表し;
およびRは、同じでも、または異なっていてもよく、そして独立して、Hまたは低級アルキルであり;
は、低級アルキル、置換され得るアルケニル、置換され得るシクロアルキル、シクロアルケニル、アラルキル、または以下の一般式:
−(CH−W
を有する基であり、
ここで:nは、1〜4であり、一方Wは:
置換され得るアリール;
置換され得、部分的にまたは完全に水素化され得る、ヘテロアリール;
置換され得るシクロアルキル;
必要に応じて低級アルキルでモノ置換またはジ置換されるエテニル;
COOR基であって、ここでRは、H、低級アルキル、フェニルである、COOR基;
CHOR基であって、ここでRは、上で示された値を有する、CHOR基;
NR基であって、ここでRおよびRは、同じでも、または異なっていてもよく、そして各々、独立して:
H;アルキル;シクロアルキル;アラルキルであり、
置換基Rまたは置換基Rのうちの1つは、アシル基C(O)Rであり得、ここでRは、上で示された値を有するか;
または、RおよびRは、必要に応じて置換される1,4−ブチレン鎖または1,5−ペンタメチレン鎖を、およびまた−CHCH−O−CHCH−鎖を一緒に形成し得る、NR基;
N(R基であって、ここでRは、低級アルキルであり、そしてXは、薬理学的に受容可能な酸のアニオンである、N(R基;
ベンゼン環において置換され得るN−フタルイミド基、
からなる群より選択され、
は、H、低級アルキル、置換され得るアリール、フェニル環において置換され得るフェニルエチル、[(ヘテロ)アリール]メチルまたは1−[(ヘテロ)アリール]エチルであり;
ここで:
i)Rは、RがHでない場合にのみ示される値を有し得;
ii)RがHである場合、Rは、H、低級アルキル、置換され得るアリール、またはフェニル環において置換され得る2−フェニルエチルである、
S−置換N−1−[(ヘテロ)アリール]アルキル−N’−1−[(ヘテロ)アリール]アルキルイソチオカルバミド。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、一般式:
【化2】

を有するS−置換N−[(ヘテロ)アリール]−メチル−N’−1−[(ヘテロ)−アリール]アルキルイソチオカルバミドを含み、
ここで:
YおよびZが、式Iについて上で示された値を有し;
記号(#)が、キラル炭素原子の存在の可能性を表し;
が、Hまたは低級アルキルであり;
10が、低級アルキル、アルケニル、アラルキル、または一般式:
−(CH−V
を有する基であり;
ここで:mが、1〜2であり、そしてVが:
mが1である場合、
置換され得るアリール;
置換され得るシクロアルキル;
低級アルキルで必要に応じてモノ置換されるエテニル;
COOR基であって、ここでRは、上で示された値を有する、COOR基;
CHOR基であって、ここでRは、上で示された値を有する、CHOR基;
ジフェニルホスフィニル基からなる群より選択され、
mが2である場合、
アリール;
COOR基であって、ここでRは、上で示された値を有する、COOR基;
N−ピペリジン;
N−モルホリン;
N−ピロリジン;
ベンゼン環において置換され得るN−フタルイミド基、
からなる群より選択され、
11が、H、低級アルキル、またはフェニル環において置換され得る2−フェニルエチルである、
化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって、一般式I.1.1:
【化3】

のラセミ混合物(立体異性体を組み合わせた混合物)の形態でS−置換N−[(ヘテロ)アリール]メチル−N’−1−(R,S)−フェニルエチルイソチオカルバミドを含み、
ここで:
Aが、アリール、およびまた複素環式置換基であって、該複素環式置換基は、すなわち:
必要に応じて置換される2−フリルまたは3−フリル、
必要に応じて置換される2−チエニルまたは3−チエニル、
必要に応じて置換される2−ピロリル、
必要に応じて置換される3−インドリル、
必要に応じて置換される2−テトラヒドロフルフリルであり、
10が、式I.1について上で特定された値を有し;
11が、式I.1について上で特定された値を有する、
化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物であって、一般式I.2:
【化4】

のS−置換N−[(ヘテロ)アリール]−メチル−N’−[(ヘテロ)アリール]−メチルイソチオカルバミドを含み、
ここで:
YおよびZが、式Iについて上で特定された値を有し;
10が、式I.1について上で特定された値を有し;
11が、式I.1について上で特定された値を有する、
化合物。
【請求項5】
請求項4に記載の化合物であって、一般式I.2.1:
【化5】

のS−置換N−[(ヘテロ)アリール]メチル−N’−(ヘテロアリール)−メチルイソチオカルバミドを含み、
ここで:
Hetが:
必要に応じて置換される2−フリルまたは3−フリル、
必要に応じて置換される2−チエニルまたは3−チエニル、
必要に応じて置換される2−ピロリル、
必要に応じて置換される3−インドリル、
必要に応じて置換される2−テトラヒドロフルフリルであり、
が:
(ハロゲン、低級アルキル、メトキシ、エトキシ、トリフリオロメチルのような置換基で必要に応じてモノ置換またはジ置換される)フェニル;
メチレンジオキシフェニル;
2−フリル;
2−テトラヒドロフルフリルであり、
10が、式I.1について上で特定された値を有し;
11が、式I.1について上で特定された値を有する、
化合物。
【請求項6】
請求項3に記載の化合物であって、一般式I.1.1.1:
【化6】

のS−置換N−[(ヘテロ)アリール]メチル−N’−[1−R(+)−フェニル−エチル]イソチオカルバミドを含み、
ここで:
が、式I.2.1について上で特定された値を有し;
11が、式I.1について上で特定された値を有し;
12が:
低級アルキル;
アリル;
シクロヘキセニル;
ベンゼン環において必要に応じて置換されるベンジル;
2−フェニルエチル;
2−(エトキシカルボニル)エチル;
2−N−フタルイミドエチル、
からなる群より選択される、
化合物。
【請求項7】
請求項3に記載の化合物であって、一般式I.1.1.2:
【化7】

のS−置換N−[(ヘテロ)アリール]−メチル−N’−[1−S(−)−フェニル−エチル]イソチオカルバミドを含み、
ここで:
が、式I.2.1について上で特定された値を有し;
11が、式I.1について上で特定された値を有し;
12が、式I.1.1.1について上で特定された値を有する、
化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物であって、一般式I.3.a:
【化8】

のS,N’−置換N−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−[1−S(−)−フェニル−エチル]イソチオカルバミドを含み、
ここで:
13が:
低級アルキル;
アリル;
シクロヘキセニル;
ベンゼン環において必要に応じて置換されるベンジル;
2−(フェニル)エチル;
からなる群より選択され、
14が、低級アルキル、必要に応じて置換されるベンジル、(ヘテロアリール)メチル、または2−フェニルエチルである、
化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物であって、一般式I.3.b:
【化9】

のS,N’−置換N−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−[1−R(+)−フェニル−エチル]イソチオカルバミドを含み、
ここで:
13およびR14が、式I.3aについて上で特定された値を有する;
化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物であって、一般式I.3.c:
【化10】

のS,N’−置換N−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−[1−S(−)−フェニル−エチル]イソチオカルバミドを含み、
ここで:
13およびR14が、式I.3aについて上で特定された値を有する;
化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物であって、一般式I.3.d:
【化11】

のS,N’−置換N−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−[1−R(+)−フェニル−エチル]イソチオカルバミドを含み、
ここで:
13およびR14が、式I.3aについて上で特定された値を有する;
化合物。
【請求項12】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−1−S(−)−フェニルエチル−N’−1−S(−)フェニルエチルイソチオカルバミドおよびS−メチル−N−1−S(−)−フェニルエチル−N’−(4−メトキシ)ベンジル−N’−1−S(−)−フェニルエチルイソチオカルバミドを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−4−フルオロベンジル−N’−[1−S(−)−フェニルプロピル]−N’−イソブチルイソチオカルバミドおよびS−メチル−N−4−フルオロベンジル−N’−[1−R(+)−フェニルプロピル]−N’−イソブチルイソチオカルバミドを含む、請求項2に記載の化合物。
【請求項14】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−4−メトキシベンジル−N’−3,4−ジメトキシフェネチル−N’−1−フェニルエチルイソチオカルバミドを含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項15】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、S−エチル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、S−ベンジル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、SB4−ニトロベンジル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、SB4−カルボキシベンジル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、SBアリル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、SB2−シクロヘキセニル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、SB2−フェニルエチル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミド、SB2−エトキシカルボニル−エチル−N−ベンジル−N’−ベンジルイソチオカルバミドを含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項16】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−2−テトラヒドロフルフリル−N’−5−メチルフルフリル−N’−2−フェニルエチルイソチオカルバミドおよびS−メチル−N−ピペロニル−N’−2−チエニルメチル−N’−イソプロピルイソチオカルバミドを含む、請求項5に記載の化合物。
【請求項17】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−ベンジル−N’−1−R(+)−フェニルエチル−N’−(シクロヘキシ−3−エニル)メチルイソチオカルバミドおよびS−メチル−N−ベンジル−N’−1−R(+)−フェニルエチル−N’−2−フェニルエチルイソチオカルバミドを含む、請求項6に記載の化合物。
【請求項18】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−ベンジル−N’−1−S(−)−フェニルエチル−N’−(シクロヘキシ−3−エニル)メチルイソチオカルバミドおよびS−メチル−N−ベンジル−N’−1−S(−)−フェニルエチル−N’−2−フェニルエチルイソチオカルバミドを含む、請求項7に記載の化合物。
【請求項19】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミドを含む、請求項8に記載の化合物。
【請求項20】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミドを含む、請求項9に記載の化合物。
【請求項21】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−[1−S(−)−フェニルエチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミドを含む、請求項10に記載の化合物。
【請求項22】
塩基の形態、またはHXとの薬理学的に受容可能な塩の形態にある、S−メチル−N−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−[1−R(+)−フェニルエチル]−N’−イソブチルイソチオカルバミドを含む、請求項11に記載の化合物。
【請求項23】
式Iの化合物の塩を調製する方法であって、該方法は、できる限り、例えば、アルコール、エチレングリコール、酢酸、ジメチル−ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトンのような極性不活性溶媒において、室温〜反応混合物の沸点の温度で、式TMのチオカルバミドを、当量または200%までの過剰量の式R−Gを有する適切なアルキル化剤と反応させる工程を包含し:
【化12】

ここで、R、R、R、(#)、YおよびZは、上で示された値を有し、Rは、上で定義されており、そしてGは、ハロゲン化物、スルフェート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、アルキルスルフェート、ペルクロレート、アセテート、およびまた必要に応じて置換されるベンゾエートのような脱離基である、方法。
【請求項24】
請求項23に記載される方法であって、前記工程が、前記溶媒において、または溶媒なしに前記出発化合物の均一にされた混合物の形態において、SHF放射の影響下で実行されることを特徴とする、方法。
【請求項25】
グルタミン酸AMPA/KAレセプターを増強する(正に調節する)と同時に、グルタミン酸NMDAレセプターの活性化によって誘発される膜貫通電流をブロックする特性を有する、請求項1〜22のいずれか1項に記載の一般式Iの化合物。
【請求項26】
グルタミン酸作動系を研究する方法であって、該方法は、分子ツールとしての特異的な薬理学的マーカーの導入を包含し、請求項1〜22のいずれか1項に記載の一般式Iの化合物が、AMPA/KAレセプターを増強させ、かつ、NMDAレセプターをブロックする、該化合物の能力と関連してこのようなマーカーとして使用される、方法。
【請求項27】
グルタミン酸AMPA/KAレセプターを増強し(正に調節する)、かつ、NMDAレセプターをブロックし、その結果として、認知機能の刺激因子および特異的な神経保護因子の特性を有することが可能である、請求項25に記載の一般式Iの化合物。
【請求項28】
グルタミン酸作動性神経伝達の機能不全に関連する、神経変性疾患の処置および予防について意図される、請求項1〜22のいずれか1項に記載の一般式Iの化合物。
【請求項29】
記憶力の実質的な増大および学習過程の活性化について意図される、すなわち、認知刺激因子としての、請求項1〜22のいずれか1項に記載の式Iの化合物。
【請求項30】
グルタミン酸作動性神経伝達の機能不全に関連する、神経変性疾患の処置および予防について意図される薬学的組成物の産生のための活性物質としての、およびまた認知刺激因子としての、請求項1〜22のいずれか1項に記載の一般式Iの化合物。
【請求項31】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の一般式Iの化合物を含む薬学的組成物であって、グルタミン酸作動性神経伝達の機能不全に関連する神経変性疾患の処置および予防について意図され、およびまた認知刺激因子としての、組成物。
【請求項32】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の一般式Iの有効量の化合物の投与により、AMPA/KAレセプターおよびNMDAレセプターに作用することによって、グルタミン酸作動性神経伝達の機能不全に関連する神経学的障害および神経学的疾患を処置ならびに予防するための方法。
【請求項33】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の一般式Iの有効量の化合物の投与によるAMPA/KAレセプターの正の調節による、記憶力の実質的な増大および学習過程の活性化のための方法。

【公表番号】特表2006−519758(P2006−519758A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557010(P2004−557010)
【出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【国際出願番号】PCT/RU2003/000536
【国際公開番号】WO2004/050612
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(305063236)メディベイション インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】