説明

SAPO−34の製造方法、および、プロパンを主成分とする液化石油ガスの製造方法

【課題】 メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類を含むオレフィン含有ガスへの転換反応に用いる触媒あるいは触媒成分として特に好適なSAPO−34を容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】 ケイ酸ナトリウムと、擬ベーマイトと、リン酸と、水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンと、水とを含む反応混合物を水熱処理してSAPO−34を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAPO−34の製造方法、および、この方法により製造されるSAPO−34に関する。
【0002】
また、本発明は、このSAPO−34を触媒として用いた、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロパンである液化石油ガスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液化石油ガス(LPG)は、常温常圧下ではガス状を呈する石油系もしくは天然ガス系炭化水素を圧縮し、あるいは同時に冷却して液状にしたものをいい、その主成分はプロパンまたはブタンである。液体の状態で貯蔵および輸送が可能なLPGは可搬性に優れ、供給にパイプラインを必要とする天然ガスとは違い、ボンベに充填した状態でどのような場所にでも供給することができるという特徴がある。そのため、プロパンを主成分とするLPG、すなわちプロパンガスが、家庭用・業務用の燃料として広く用いられている。現在、日本国内においても、プロパンガスは約2,500万世帯(全世帯の50%以上)に供給されている。また、プロパンガスは工業用燃料、自動車用燃料としても使用されている。
【0004】
従来、LPGは、1)湿性天然ガスから回収する方法、2)原油のスタビライズ(蒸気圧調整)工程から回収する方法、3)石油精製工程などで生成されるものを分離・抽出する方法などにより生産されている。
【0005】
LPG、特に家庭用・業務用の燃料として用いられるプロパンガスは将来的にも需要が見込め、工業的に実施可能な、新規な製造方法を確立できれば非常に有用である。
【0006】
LPGの製造方法として、特許文献1には、Cu−Zn系、Cr−Zn系、Pd系等のメタノール合成触媒、具体的には、CuO−ZnO−Al23触媒、Pd/SiO2触媒と、平均孔径が略10Å(1nm)以上のゼオライト、具体的にはY型ゼオライトよりなるメタノール転化触媒とを物理的に混合した混合触媒の存在下で、水素および一酸化炭素よりなる合成ガスを反応させて、液化石油ガス、あるいは、これに近い組成の炭化水素混合物を製造する方法が開示されている。
【0007】
また、非特許文献1には、メタノール合成用触媒である4wt%Pd/SiO2、Cu−Zn−Al混合酸化物[Cu:Zn:Al=40:23:37(原子比)]またはCu系低圧メタノール合成用触媒(商品名:BASF S3−85)と、450℃で1時間水蒸気処理した、SiO2/Al23=7.6の高シリカY型ゼオライトとから成るハイブリッド触媒を用い、合成ガスからメタノール、ジメチルエーテルを経由してC2〜C4のパラフィンを選択率69〜85%で製造する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法の内、比較的高収率で炭化水素が得られる方法により得られる生成物の主成分はブタンである。また、上記非特許文献1に記載の方法により得られる生成物の主成分もブタンである。家庭用・業務用の燃料として用いられるLPGは、前述の通り、プロパンガスである。プロパンガスは、ブタンガスと比べて、低温下でも安定した高出力で燃焼を続けることができる利点がある。家庭用・業務用の燃料として、また工業用燃料、自動車用燃料としても広く用いられる易液化性燃料ガスとしては、冬季あるいは寒冷地においても十分な、より高い蒸気圧を持ち、かつ、燃焼時においてより高カロリーであるプロパンガスの方がブタンガスよりも優れている。
【0009】
ところで、メタノールは、天然ガス(メタン)の水蒸気改質法、複合改質法あるいは自己熱改質法により製造される合成ガスや、石炭コークスから製造される水性ガスなどを原料として工業的に、大規模に製造されている。メタノールからプロピレンおよび/またはブテンを経てLPGを製造することができれば、工業的にも実施可能なLPGの製造方法として期待できる。
【0010】
非特許文献2には、メタノールを原料としてLPGを製造する方法が開示されている。具体的には、微加圧下、反応温度603K(330℃)で、メタノール:H2:N2=1:1:1の原料ガスをメタノール基準のLHSVが20h-1で、前段がZSM−5であり、後段がPt−Cである2層の触媒層(ZSM−5/Pt−C Series)、または、ZSM−5とPt−Cとからなる混合触媒層(ZSM−5/Pt−C Pellet−mixture)に流通させ、LPG合成反応を行っている。
【0011】
しかしながら、上記非特許文献2に記載の方法では、メタノールのプロパンおよびブタンへの転化率が十分に高いとは言い難い。触媒層がZSM−5/Pt−C Seriesの場合で、メタノールの炭化水素への転化率が炭素量基準で64.0%、メタノールのプロパンおよびブタンへの転化率が炭素量基準で約38.7%である。触媒層がZSM−5/Pt−C Pellet−mixtureの場合、反応結果はさらに悪く、メタノールの炭化水素への転化率が炭素量基準で20.6%、メタノールのプロパンおよびブタンへの転化率が炭素量基準で約10.8%である。
【0012】
一方、従来、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから低級オレフィンへの転換反応に用いる触媒としては、例えば、特許文献2に、SAPO−34等のシリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブが開示されている。特許文献3および4には、Si/Niの原子比が20〜100であるNi含有シリコアルミノフォスフェート触媒(Ni−SAPO触媒)が開示されている。特許文献5には、特定の粒径分布を有する、SAPO−34等の結晶性アルミノリン酸金属塩が開示されている。特許文献6には、SAPO−34、Ni−SAPO−34等の、任意成分としての他の元素を含有してもよいシリカ−アルミノホスフェートが開示されている。
【0013】
SAPO−34等のシリコアルミノフォスフェートは、一般に、出発原料であるシリカ等のケイ素化合物と、アルミナ、アルミニウムアルコキシド等のアルミニウム化合物と、リン酸等のリン化合物と、テンプレート剤とを均一に混合した後、水熱合成することにより製造される。シリコアルミノフォスフェートの製造方法は、上記特許文献2、3、4、5および6以外に、例えば、特許文献7などにも記載されている。
【0014】
シリコアルミノフォスフェートの製造において、テンプレート剤としては、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリ−n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエチルアミン、ピロリジン、キヌクリジン、シクロヘキシルアミン等のアミンおよびアンモニウム化合物が用いられている。また、非特許文献3には、テンプレート剤としてトリエチルアミンを用いてSAPO−34を製造することが記載されている。
【0015】
さらに、特許文献8には、テンプレート剤として水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム(TPA)とジ−n−プロピルアミン(DPA)とを用いるシリコアルミナリン酸塩(SAPO)の製造方法が開示されている。同公報には、テンプレート剤としてTPAと共にDPAを所定の比(DPA/TPAのモル比が0.5以上)で用い、適性温度(180〜220℃)のもとで所定の時間(48〜72時間)水熱合成を行うことにより、SAPO−40の結晶成長を妨げることなく、選択的に、自動車用触媒担体として用いる場合の不純物であるSAPO−5およびSAPO−37の生成を抑制し、高純度のSAPO−40を得ることができると記載されている。
【0016】
また、上記特許文献5には、テンプレート剤として水酸化テトラエチルアンモニウムとジ−n−プロピルアミンとを用いることが記載されている。上記特許文献6にも、テンプレート剤として水酸化テトラエチルアンモニウムとジプロピルアミンとを用いることが記載されている。
【0017】
しかしながら、上記の特許文献2〜8および非特許文献3に記載の方法では、SAPO−34以外のシリコアルミノフォスフェートは容易に製造することができるが、SAPO−34を目的の結晶性を持たせて容易に製造することができるとは必ずしも言えない。また、得られるSAPO−34を触媒としてメタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから低級オレフィン等の低級炭化水素含有ガスへの転換反応に用いた場合、目的の結晶性を持っていないため、活性および炭素数3の炭化水素(プロピレンおよびプロパン)の選択性が必ずしも十分ではない。
【特許文献1】特開昭61−23688号公報
【特許文献2】特開昭59−84829号公報
【特許文献3】特開平3−101628号公報
【特許文献4】特開平5−58917号公報
【特許文献5】特開平6−49457号公報
【特許文献6】特表2002−521303号公報
【特許文献7】特開昭59−35018号公報
【特許文献8】特開平8−91828号公報
【非特許文献1】“Selective Synthesis of LPG from Synthesis Gas”,Kaoru Fujimoto et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,58,p.3059−3060(1985)
【非特許文献2】“Methanol/Dimethyl Ether Conversion on Zeolite Catalysts for Indirect Synthesis of LPG from Natural Gas”,Yingjie Jin et al.,第92回触媒討論会 討論会A予稿集,p.322,2003年9月18日
【非特許文献3】“Crystallization and Si incorporation mechanisms of SAPO−34”,Juan Tan et al.,Microporous and Mesoporous Materials,53,p.97−108(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類を含むオレフィン含有ガスへの転換反応に用いる触媒あるいは触媒成分として特に好適なSAPO−34を容易に製造する方法を提供することである。
【0019】
また、本発明の他の目的は、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つを原料として、主成分がプロパンである液化石油ガスを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、ケイ酸ナトリウムと、擬ベーマイトと、リン酸と、水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンと、水とを含む反応混合物を水熱処理する工程を有するSAPO−34の製造方法が提供される。
【0021】
また、本発明によれば、上記の方法により製造されるSAPO−34が提供される。
【0022】
また、本発明によれば、
(i)上記のSAPO−34の存在下で、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類を含むオレフィン含有ガスを製造するオレフィン含有ガス製造工程と、
(ii)オレフィンを水素化してパラフィンを製造する際に用いられるオレフィン含有ガス水素化用触媒の存在下で、オレフィン含有ガス製造工程において得られたオレフィン含有ガスと水素とから、主成分がプロパンである液化石油ガスを製造するオレフィン含有ガス水素化工程と
を有することを特徴とする液化石油ガスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、テンプレート剤として水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンとを、好ましくは1:0.1〜1:2(モル比)で用いて水熱合成を行う。これにより、従来と比べてSAPO−34を容易に製造することができる。
【0024】
水熱合成によりSAPO−34を製造するには、出発原料であるケイ酸ナトリウム、擬ベーマイトおよびリン酸に対して一定量以上のテンプレート剤を用いる必要がある。また、テンプレート剤は細孔構造を決定するものであり、特に小細孔ゼオライトであるSAPO−34の製造においては、その種類の選択も重要である。同じシリコアルミノフォスフェートであっても、SAPO−5等の細孔径が比較的大きなものは、テンプレート効果が低いため、使用するテンプレート剤が大きな問題になることは少ない。
【0025】
また、SAPO−34の合成は強アルカリ条件下で行う必要があり、そのためには水の使用量を少なくする必要がある。
【0026】
従来、テンプレート剤としてよく用いられている水酸化テトラエチルアンモニウムの水に対する溶解度はそれほど高くはなく、飽和溶液の濃度は約40質量%程度である。また、高濃度の水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液は、二酸化炭素を吸収しやすく、不安定である。テンプレート剤として水酸化テトラエチルアンモニウムを用いた場合、水に対する溶解度の低さからテンプレート剤の使用量が少なくなるため、SAPO−34を製造することは可能であるが、容易に、安定して製造することは困難になる傾向がある。
【0027】
また、テンプレート剤としてテトラエチルアンモニウム塩を単独で用いた場合には、通常、SAPO−34を製造することは不可能である。
【0028】
一方、トリエチルアミンは揮発性物質であり、水熱合成の温度、例えば180℃では揮発してしまう。テンプレート剤としてトリエチルアミンを用いた場合、水熱合成時にトリエチルアミンが揮発してしまい、ガス圧が上昇するため、SAPO−34を容易に、安定して製造することはやはり困難になる傾向がある。
【0029】
テンプレート剤として水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンとを、好ましくは1:0.1〜1:2(モル比)で用いることにより、テンプレート剤の使用量を多くすることができ、また、水熱合成時のガス圧の上昇を抑制することもできる。そのため、SAPO−34を容易に、安定して製造することができる。
【0030】
本発明においては、テンプレート剤として水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩とトリエチルアミンとを用いることが重要である。例えば、テンプレート剤として水酸化テトラエチルアンモニウムとジプロピルアミンとを用いた場合、本発明の優れた効果は得られない。
【0031】
その理由は、次のように考えられる。
【0032】
SAPO−34の合成は、通常、高圧下で行う。そのため、SAPO−34の合成時には、アミンはアンモニウム塩になっていると思われる。テンプレート剤としてアルキル鎖長および形状が同じ、すなわち同一のアルキル基を有するアンモニウム塩(水酸化物を含む)とアミンとを用いた場合、同種のテンプレート剤を用いていることにほぼ等しく、得られるSAPO−34の細孔径を容易に制御することが可能である。それに対し、テンプレート剤としてアルキル鎖長が異なるアンモニウム塩(水酸化物を含む)とアミンとを用いた場合、異なる2種のテンプレート剤を用いていることから、得られるSAPO−34の細孔径を制御することは困難である。従って、テンプレート剤として水酸化テトラエチルアンモニウムとジプロピルアミンとを用いた場合は、本発明のように、SAPO−34を容易に、安定して製造することは困難である。
【0033】
また、その一方で、テンプレート剤として水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウムとジ−n−プロピルアミンとを用いた場合は、選択的にSAPO−40が生成する傾向がある。
【0034】
このように、テンプレート剤として水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩とトリエチルアミンとを用いることにより、SAPO−34を容易に、安定して製造することが可能になるのである。
【0035】
また、本発明により製造されるSAPO−34は、主成分がプロパンである液化石油ガスの製造において、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類を含むオレフィン含有ガスへの転換反応に用いる触媒あるいは触媒成分として好適である。本発明により製造されるSAPO−34の存在下で、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類を含むオレフィン含有ガスを製造し、さらに、このオレフィン含有ガスを水素化することにより、主成分がプロパンである液化石油ガスを製造することができる。
【0036】
上記のメタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類を含むオレフィン含有ガスへの転換反応により得られる生成物には、通常、プロパン等のパラフィン類も含まれる。オレフィンの製造を目的とする場合、プロパン等は副生物であるが、液化石油ガスの製造を目的とする場合、プロパンおよびブタンが最終目的物であるから、オレフィン含有ガスにプロパンおよびブタンが含まれていてもよい。そのため、本発明により製造されるSAPO−34は、液化石油ガスの製造におけるメタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つからオレフィン含有ガスへの転換反応に用いる触媒あるいは触媒成分として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
〔SAPO−34の製造方法〕
本発明では、ケイ酸ナトリウムと、擬ベーマイトと、リン酸と、水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンと、水とを含む反応混合物を水熱処理(水熱合成)してSAPO−34を製造する。
【0038】
出発原料であるケイ酸ナトリウムとしては、例えば、水ガラス、工業ケイ酸ソーダなどが挙げられる。
【0039】
出発原料である擬ベーマイトとしては、例えば、低結晶性のアルミナなどが挙げられ、中でも、リン酸に容易に溶解するアルミナが好ましい。
【0040】
出発原料であるリン酸としては、中でも、オルトリン酸が好ましい。
【0041】
さらに、他の元素を含有するSAPO−34を製造する場合、その構成元素を含む原料を反応混合物に含有させる。用いる原料は特に限定されず、各元素の化合物、好ましくは水溶性の化合物を適宜選択して用いることができる。
【0042】
反応混合物中の各出発原料の含有量は、製造するSAPO−34の組成に応じて適宜決めることができる。例えば、Si:Al:P=0.05〜1.8:1:0.6〜0.9(モル比)とすることができる。
【0043】
本発明においては、テンプレート剤として水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンとを用いる。テトラエチルアンモニウム塩としては、例えば、臭化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウムなどが挙げられる。テンプレート剤としては、水酸化テトラエチルアンモニウムとトリエチルアミンとを用いることがより好ましい。
【0044】
反応混合物中のトリエチルアミンの含有量は、水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩100モルに対して、10モル以上が好ましく、20モル以上がより好ましい。水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩に対するトリエチルアミンの含有比率(モル基準)を0.1以上にすることにより、テンプレート剤の使用量をより十分に多くすることができ、液中のテトラエチルアンモニウムおよび/またはトリエチルアンモニウムイオンの濃度を高く保つことができ、SAPO−34をより容易に製造することができる。
【0045】
一方、反応混合物中のトリエチルアミンの含有量は、水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩100モルに対して、200モル以下が好ましい。水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩に対するトリエチルアミンの含有比率(モル基準)を2以下にすることにより、水熱合成時のガス圧の上昇をより十分に抑制することができ、SAPO−34をより容易に製造することができる。
【0046】
反応混合物中の水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンとの合計含有量は、擬ベーマイト100モル(Al23基準)に対して、165モル以上が好ましく、200モル以上がより好ましい。擬ベーマイトに対するテンプレート剤(水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミン)の含有比率(モル基準)を1.65以上にすることにより、テンプレート剤の使用量がより十分になり、SAPO−34をより容易に製造することができる。
【0047】
一方、反応混合物中の水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンとの合計含有量は、擬ベーマイト100モル(Al23基準)に対して、450モル以下が好ましく、400モル以下がより好ましい。擬ベーマイトに対するテンプレート剤(水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミン)の含有比率(モル基準)を4.5以下にすることにより、生成するSAPO−34の結晶性をより向上させることができる。
【0048】
反応混合物中の水の含有量は、擬ベーマイト100モル(Al23基準)に対して、40モル以上が好ましい。水の含有量を擬ベーマイト100モル(Al23基準)に対して、40モル以上にすることにより、SAPO−34の合成(水熱合成)に必要な水の量をより十分に確保することができる。
【0049】
一方、反応混合物中の水の含有量は、擬ベーマイト100モル(Al23基準)に対して、60モル以下が好ましい。水の含有量を擬ベーマイト100モル(Al23基準)に対して、60モル以下にすることにより、SAPO−34の合成をより十分な強アルカリ条件下で行うことができる。
【0050】
本発明においては、所要量の出発原料、テンプレート剤および水を好ましくは均質になるまで混合した後、この反応混合物を密閉圧力容器内に入れ、水熱処理(水熱合成)してSAPO−34を製造する。なお、反応混合物の調製において、原料などの添加順序は特に限定されず、適宜決めることができる。
【0051】
水熱処理時の温度(合成温度)は、より良好にSAPO−34を製造することができる点から、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。また、水熱処理時の温度は、水熱処理時の圧力が余りに高圧になり過ぎないように抑える点から、210℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。水熱処理中、温度を一定に保ってもよく、また、水熱処理中に温度を変動させてもよい。
【0052】
水熱処理は、通常、自己圧下で行われる。具体的には、水熱処理時の圧力は、当該温度の水の蒸気圧付近となる。
【0053】
水熱処理する時間(合成時間)は適宜決めることができるが、通常、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましい。また、水熱処理する時間は、120時間以下が好ましく、100時間以下がより好ましい。
【0054】
本発明においては、静置した状態で水熱処理を行うこともできるが、反応混合物を気液混合撹拌しながら水熱処理を行うことが好ましい。
【0055】
また、水熱処理を行う前に、室温や上記の合成温度よりも低温でエージングすることが好ましい。エージング中、温度を一定に保ってもよく、また、エージング中に温度を変動させてもよい。
【0056】
このようにして製造されたSAPO−34は、遠心分離や濾過などの公知の方法によって回収される。回収したSAPO−34は、必要に応じて水などで洗浄し、乾燥する。また、テンプレート剤および水を除去するために、必要に応じて熱処理を行ってもよい。熱処理条件は、公知の方法に従って適宜決めることができる。
【0057】
また、得られたSAPO−34は、必要に応じて金属や化合物でイオン交換することもできる。
【0058】
〔液化石油ガスの製造方法〕
本発明の液化石油ガスの製造方法では、上記のような方法により製造されるSAPO−34の存在下で、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類を含むオレフィン含有ガスを製造し(オレフィン含有ガス製造工程)、次いで、オレフィン含有ガス水素化用触媒の存在下で、得られたオレフィン含有ガスと水素とから、主成分がプロパンである液化石油ガス(LPG)を製造する(オレフィン含有ガス水素化工程)。
【0059】
(オレフィン含有ガス製造工程)
オレフィン含有ガス製造工程では、上記のような方法により製造されるSAPO−34の存在下で、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類を含むオレフィン含有ガスを製造する。なお、得られる反応ガス(オレフィン含有ガス)は、プロピレン等のオレフィン類以外に、パラフィン類や副生する水を含む。本発明では、オレフィン含有ガス製造工程においてオレフィンの水素化反応が進行し、得られるオレフィン含有ガスがプロパン、ブタン等を含んでいても構わない。
【0060】
反応原料としては、メタノールまたはジメチルエーテルを単独で用いることもでき、また、メタノールとジメチルエーテルとの混合物を用いることもできる。反応原料としてメタノールとジメチルエーテルとの混合物を用いる場合、メタノールとジメチルエーテルとの含有比率は特に限定されず、適宜決めることができる。また、反応原料として、水を含む未精製のメタノールなどを用いることもできる。
【0061】
このオレフィン含有ガス製造工程においては、下記式(I)に従って、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類が合成されると考えられる。
【0062】
【化1】

このオレフィンの生成過程においては、オレフィン含有ガス合成用触媒であるSAPO−34の細孔内の空間場に配座する酸点と塩基点との協奏作用により、メタノールの脱水によってカルベン(H2C:)が生成する。そして、このカルベンの重合によって、2量体としてエチレンが、3量体として、あるいは、エチレンとの反応によってプロピレンが、4量体として、あるいは、プロピレンとの反応によって、あるいは、エチレンの2量化によってブテンが生成すると考えられる。また、エチレンなどの分解によってカルベンが生成すると考えられる。
【0063】
このオレフィンの生成過程においては、メタノールの脱水2量化によるジメチルエーテルの生成、ジメチルエーテルの水和によるメタノールの生成、低級オレフィンの重合による高級オレフィンの生成、高級オレフィンの分解、オレフィンの環化、異性化による芳香族炭化水素、共役炭化水素化合物および飽和炭化水素の生成、シクロペンタジエニル構造などを有する共役炭化水素化合物のタールまたはコークス化などの反応が起こると考えられる。
【0064】
本発明においては、上記反応のうち、目的とするLPGに相当する炭素数のオレフィンまたはその前駆体の生成反応、すなわち、カルベンの生成反応、カルベンの重合によるエチレン、プロピレン、ブテンなど低級オレフィンの生成反応、カルベンとエチレンまたはプロピレンの反応およびエチレンの2量化反応以外の反応を抑制することが重要である。さらには、生成するオレフィン類の主成分がプロピレンになるように、また、生成するパラフィン類が主に炭素数3のプロパンおよび炭素数4のブタンに集中するように反応を制御することが重要である。
【0065】
そのためには、オレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分として、適当な酸強度、酸量(酸濃度)および細孔径を有するゼオライトを用いることが重要である。本発明により製造されるSAPO−34は、オレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分として好適な構造、物性を有するものである。
【0066】
オレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分として用いるSAPO−34としては、中でも、中位の結晶子サイズをもつSAPO−34が好ましい。
【0067】
また、オレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分としては、Ni、Co、Fe、Pt、Pd、Cu、Ag等の金属、または、Mg、P、ランタニド等の元素を含有する、あるいは、これらの金属、元素またはTi、Nb等でイオン交換したSAPO−34も挙げられる。金属や化合物を含有させる、あるいは、金属や化合物でイオン交換することによって、また、コークを堆積させることによって、ゼオライトの酸強度や酸量を調整することが可能である。しかも、ゼオライトの酸強度や酸量を平均的にだけではなく、例えば、ゼオライト細孔外、細孔入口付近、細孔内部に分けて調整することが可能である。さらに、酸強度や酸量の調整と共に、同時にあるいは別途、細孔径を微妙に調節することも可能である。なお、金属や化合物を含有させる、あるいは、金属や化合物でイオン交換すると共に、コークを堆積させることもできる。
【0068】
オレフィン含有ガス合成用触媒は、一種を用いても、二種以上を併用してもよい。また、オレフィン含有ガス合成用触媒を含有する触媒層は、その所望の効果を損なわない範囲内で必要により他の添加成分を含有していてもよい。例えば、石英砂などでSAPO−34を希釈して用いることができる。
【0069】
反応を固定床で行う場合、オレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分であるSAPO−34を含有する触媒層は、2層以上設けることもできる。また、オレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分であるSAPO−34を含有する触媒層は、原料ガスの流通方向に対してその組成を変化させることもできる。
【0070】
生成するオレフィン含有ガス中に含まれるオレフィン類の主成分がプロピレンになるようにするためには、反応条件、特に原料ガスとオレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分であるSAPO−34との接触時間を十分にとることも重要である。カルベンの重合、オレフィンの重合など、オレフィンの生成反応は逐次反応であり、原料ガス(メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つ)とSAPO−34との接触時間が長くなるほど、得られるオレフィン中のプレピレンの割合が多くなる傾向がある。
【0071】
プロピレンを主成分とするオレフィン類を含むオレフィン含有ガスが得られる原料ガスとオレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分であるSAPO−34との接触時間は、用いるSAPO−34の種類や、その他の反応条件などによって異なる。本発明においては、予めオレフィン含有ガスの合成反応を行い、原料ガスとオレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分であるSAPO−34との接触時間を決定することもできる。
【0072】
反応は、固定床でも流動床でも移動床でも行うことができる。触媒層を2層以上設けるときには、固定床で行うことが好ましい。原料ガス組成、反応温度、反応圧力、触媒との接触時間などの反応条件は、用いる触媒の種類、性能、形状等に応じて適宜決めることができる。
【0073】
例えば、オレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分としてプロトン型のSAPO−34を用いる場合、以下のような条件で反応を行うことができる。
【0074】
反応器に送入されるガスは、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つ以外に、例えば、水、不活性ガスなど、その他の成分を含むものであってもよい。また、反応原料としてメタノールとジメチルエーテルとの混合物を用いる場合、メタノールとジメチルエーテルとの含有比率は特に限定されず、適宜決めることができる。
【0075】
反応温度は、活性と選択性の点から、380℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましい。また、反応温度は、コーク生成抑制と選択性の点から、550℃以下が好ましく、500℃以下がより好ましい。
【0076】
反応圧力は、効率の点から、20KPa以上が好ましく、30KPa以上がより好ましい。また、反応圧力は、触媒寿命と選択性の点から、2MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。
【0077】
ガス空間速度は、処理速度の点から、500hr-1以上が好ましく、1,000hr-1以上がより好ましい。また、ガス空間速度は、より十分な転化率を得る点からは、100,000hr-1以下が好ましく、50,000hr-1以下がより好ましい。
【0078】
反応器に送入されるガスは、分割して反応器に送入し、それにより反応温度を制御することもできる。
【0079】
反応は固定床、流動床、移動床などで行うことができるが、反応温度の制御と触媒の再生方法との両面から選定することが好ましい。例えば、固定床としては、内部多段クエンチ方式などのクエンチ型反応器、多管型反応器、複数の熱交換器を内包するなどの多段型反応器、多段冷却ラジアルフロー方式や二重管熱交換方式や冷却コイル内蔵式や混合流方式などその他の反応器などを用いることができる。
【0080】
オレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分であるSAPO−34は、通常は、アルミナバインダーなどと混合、成形して種々の形状の粒子状にて用いられるが、さらに温度制御を目的として、シリカ、アルミナなど、あるいは、不活性で安定な熱伝導体で希釈して用いることもできる。また、オレフィン含有ガス合成用触媒あるいは触媒成分であるSAPO−34は、温度制御を目的として、熱交換器表面に塗布して用いることもできる。
【0081】
(オレフィン含有ガス水素化工程)
オレフィン含有ガス水素化工程では、オレフィン含有ガス水素化用触媒の存在下で、上記のオレフィン含有ガス製造工程において得られたオレフィン含有ガスと水素とから、主成分がプロパンである液化石油ガス(LPG)を製造する。本発明では、オレフィン含有ガス製造工程において得られたオレフィン含有ガスから、必要に応じて水分や、未反応の原料であるメタノールおよび/またはジメチルエーテルなどを、さらにはエチレンなどの炭素数3または4以外の炭化水素を、公知の方法によって分離した後、オレフィン含有ガスを水素化することもできる。
【0082】
このオレフィン含有ガス水素化工程においては、下記式(II)に従って、プロピレンは水素と反応させ、プロパンにする。
【0083】
【化2】

オレフィン含有ガス水素化用触媒としては、公知の水素化触媒、具体的には、Fe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt,Cu,Re等の金属または合金、Cu,Co,Ni,Cr,Zn,Re,Mo,W等の金属の酸化物、Co,Re,Mo,W等の金属の硫化物などが挙げられる。また、これらの触媒をカーボン、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、ゼオライト等の担体に担持して、あるいは、これらと混合して用いることもできる。
【0084】
オレフィン含有ガス水素化用触媒としては、中でも、ニッケル触媒、パラジウム触媒、白金触媒などが好ましい。
【0085】
オレフィン含有ガス水素化用触媒は、一種を用いても、二種以上を併用してもよい。また、オレフィン含有ガス水素化用触媒を含有する触媒層は、その所望の効果を損なわない範囲内で必要により他の添加成分を含有していてもよい。例えば、石英砂などで上記の触媒を希釈して用いることができる。
【0086】
反応を固定床で行う場合、オレフィン含有ガス水素化用触媒を含有する触媒層は、2層以上設けることもできる。また、オレフィン含有ガス水素化用触媒を含有する触媒層は、原料ガスの流通方向に対してその組成を変化させることもできる。
【0087】
反応は、固定床でも流動床でも移動床でも行うことができる。触媒層を2層以上設けるときには、固定床で行うことが好ましい。原料ガス組成、反応温度、反応圧力、触媒との接触時間などの反応条件は、公知の方法に従い、用いる触媒の種類、性能、形状等に応じて適宜決めることができる。
【0088】
例えば、オレフィン含有ガス水素化用触媒としてPd−アルミナを用いる場合、以下のような条件で反応を行うことができる。
【0089】
反応器に送入されるガス中のオレフィンの濃度は、適宜決めることができる。通常、反応器に送入されるガス中のオレフィンの濃度は、水素化効率の点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。また、反応器に送入されるガス中のオレフィンの濃度は、水素化率の点から、45%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。
【0090】
反応器に送入されるガス中のオレフィンと水素との含有比率は、適宜決めることができる。通常、反応器に送入されるガス中のオレフィンに対する水素の含有比率(モル基準)は、水素化率の点から、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。また、反応器に送入されるガス中のオレフィンに対する水素の含有比率(モル基準)は、水素化率の点から、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0091】
反応器に送入されるガスは、オレフィン含有ガス製造工程からのガスおよび水素以外に、例えば、水、不活性ガスなど、その他の成分を新たに含むものであってもよい。
【0092】
なお、オレフィン含有ガス製造工程において得られたオレフィン含有ガスと水素あるいは水素含有ガスとは、混合して反応器に供給してもよく、また、別々に反応器に供給してもよい。また、反応器に送入されるガスは、分割して反応器に送入してもよい。
【0093】
反応温度は、活性の点から、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。また、反応温度は、選択性および活性劣化抑制の点から、400℃以下が好ましく、380℃以下がより好ましい。
【0094】
反応圧力は、反応がより速やかに進行する点から、100KPa以上が好ましく、110KPa以上がより好ましい。また、反応圧力は、反応器材質、周辺機器の点から、2MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。
【0095】
ガス空間速度は、処理速度の点から、500hr-1以上が好ましく、1,000hr-1以上がより好ましい。また、ガス空間速度は、より十分な転化率を得る点から、100,000hr-1以下が好ましく、50,000hr-1以下がより好ましい。
【0096】
このようにして得られる反応生成ガスは、含まれる炭化水素の主成分がプロパンである。この反応生成ガスから、必要に応じて水分や、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質である低沸点成分(未反応の原料である水素、副生物であるエタン、メタンなど)およびプロパンの沸点より高い沸点を持つ物質である高沸点成分(副生物であるペンタン、ヘキサン等の高沸点パラフィンなど)などを公知の方法によって分離し、プロパンを主成分とする液化石油ガス(LPG)を得る。
【0097】
(LPGの製造方法)
次に、図面を参照しながら、本発明のLPGの製造方法の一実施形態について説明する。
【0098】
図1に、本発明のLPGの製造方法を実施するのに好適なLPG製造装置の一例を示す。
【0099】
まず、反応原料であるメタノールおよび/またはジメチルエーテルが、ライン11および12を経て、第1の反応器1に供給される。また、エチレンを主成分とする軽質ガスが、分離器2からリサイクルライン14およびライン12を経て、第1の反応器1に供給される。第1の反応器1内には、オレフィン含有ガス合成用触媒(SAPO−34)1aが備えられている。この第1の反応器1内において、オレフィン含有ガス合成用触媒1aの存在下、メタノールおよび/またはジメチルエーテルから主成分がプロピレンであるオレフィン類と、水とが合成される。このようにして得られる反応ガスには、通常、プロパン等も含まれている。
【0100】
このようにして得られた、主成分がプロピレンであるオレフィン類と水とを含む反応ガスは、気液分離などにより水分などが除去された後、ライン13を経て、分離器2に供給される。この分離器2内において、水分などが除去された反応ガス(オレフィン含有ガス)から、エチレンを主成分とする軽質ガスが分離される。
【0101】
ここで分離されたエチレンを主成分とする軽質ガスは、リサイクルライン14およびライン12を経て、第1の反応器1にリサイクルされる。
【0102】
また、分離器2内において軽質ガスが分離されたオレフィン含有ガスは、ライン15を経て、第2の反応器3に供給される。一方、水素含有ガスが、ライン16を経て、第2の反応器3に供給される。水素含有ガスとしては、水素ガスや、水素を窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈したものが挙げられる。第2の反応器3内には、オレフィン含有ガス水素化用触媒3aが備えられている。この第2の反応器3内において、オレフィン含有ガス水素化用触媒3aの存在下、オレフィン含有ガス中に含まれるプロピレンを主成分とするオレフィン類が水素化され、主成分がプロパンであるパラフィン類が合成される。
【0103】
合成されたパラフィンは加圧・冷却され、ライン17から製品となるLPGが得られる。LPGは、気液分離などにより水素等を除去してもよい。
【0104】
なお、図示しないが、LPG製造装置には、昇圧機、熱交換器、バルブ、計装制御装置などが必要に応じて設けられる。
【0105】
以上のようにして、本発明ではメタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つからLPGを製造する。
【0106】
本発明のLPGの製造方法によれば、主成分がプロパンであるLPG、具体的にはプロパンの含有量が70%以上、さらには80%以上(100%も含む)であるLPGを製造することができる。本発明により製造されるLPGは、家庭用・業務用の燃料として広く用いられているプロパンガスに適した組成を有するものである。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0108】
〔実施例1〕
(SAPO−34の合成)
97.5gのリン酸に120gのイオン交換水を加え、撹拌しながら、引き続き91.7gの擬ベーマイト(触媒化成工業株式会社製、CATALOID AP−1)を2時間かけてゆっくりと加えた。次いで、161gのケイ酸ナトリウム(セントラル硝子株式会社製、珪酸ソーダ3号)を2時間かけて滴下した。次いで、テンプレート剤である、予め混合しておいた35重量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液333.3gとテトラエチルアミン59.4gとを加え、さらに4時間撹拌を続けてpH6.5の原料母ゲルを得た。
【0109】
この母ゲルを、テフロン内筒を有する200mlステンレス製オートクレーブに移し、12時間保持した後、オートクレーブ容器自身に15rpmの気液混合回転を与えながら180℃にて12時間保持した。そして、得られた生成物をろ過し、イオン交換水で洗浄することを4回繰り返した。次いで、得られたケーキを120℃で12時間乾燥し、空気中、550℃で3時間焼成してSAPO−34を得た。
【0110】
得られたSAPO−34は、粉末X線回析により、十分な結晶性を有することが確認された。
【0111】
〔比較例1〕
テンプレート剤として、トリエチルアミンの代りに、等モルの水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてSAPO−34の合成を試みた。
【0112】
得られた生成物は、SAPO−5が50%、SAPO−34が50%の混合物であった。
【0113】
〔比較例2〕
テンプレート剤として、水酸化テトラエチルアンモニウムの代わりに、等モルのトリエチルアミンと水とを用いた以外は実施例1と同様にしてSAPO−34の合成を試みた。
【0114】
得られた生成物は、SAPO−5が100%であり、SAPO−34は得られなかった。
【0115】
〔比較例3〕
テンプレート剤として、水酸化テトラエチルアンモニウムとトリエチルアミンとの代わりに、等モルのジプロピルアミンを用いた以外は実施例1と同様にしてSAPO−34の合成を試みた。
【0116】
得られた生成物は、SAPO−5が100%であり、SAPO−34は得られなかった。
【0117】
〔比較例4〕
テンプレート剤として、水酸化テトラエチルアンモニウムの代わりに、等モルの水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウムを用い、トリエチルアミンの代わりに、等モルのジ−n−プロピルアミンを用いた以外は実施例1と同様にしてSAPO−34の合成を試みた。
【0118】
得られた生成物は、SAPO−5が100%であり、SAPO−34は得られなかった。
【0119】
〔実施例2〕
(LPGの製造)
オレフィン含有ガス合成用触媒として、実施例1において得られたSAPO−34を乾燥基準で65重量%、アルミナバインダー(触媒化成工業株式会社製、CATALOID AP−1)を35重量%を混合し、湿式形成、乾燥して得られた触媒を用い、図1に示すLPG製造装置を用いてLPGを製造した。ただし、水素は第2の反応器3だけでなく、メタノールと共に第1の反応器1にも供給し、分離器2内において分離されたエチレンを主成分とする軽質ガスは第1の反応器1にリサイクルしなかった。
【0120】
第1の反応器1の条件を、原料メタノール分圧44KPa、水素希釈で全圧120KPa、反応温度420℃、ガス空間速度10000hr-1とした時に、ライン13には、炭化水素組成(炭素基準の重量%)として、プロパン、次いでプロピレンを主とするLPG成分が53%、エチレンが33%、他の成分が14%の炭化水素ガスが含有されていた。このLPG成分を分離器2にて分離し、ライン15を経て第2の反応器3にて、モル比で約3倍の水素と、0.5重量%Pd−アルミナ触媒(エヌイーケムキャット製)を用いて、反応温度330℃、反応圧力120KPa、ガス空間速度20,000hr-1の条件にて水素化したところ、プロパンの含有量が86重量%のLPGが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上のように、本発明によれば、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類を含むオレフィン含有ガスへの転換反応に用いる触媒あるいは触媒成分として特に好適なSAPO−34を容易に製造することができる。
【0122】
また、本発明によれば、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つを原料として、主成分がプロパンである液化石油ガスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明を実施するのに好適なLPG製造装置の一例について、主要な構成を示すプロセスフロー図である。
【符号の説明】
【0124】
1 第1の反応器
1a オレフィン含有ガス合成用触媒
2 分離器
3 第2の反応器
3a オレフィン含有ガス水素化用触媒
11、12、13、15、16、17 ライン
14 リサイクルライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸ナトリウムと、擬ベーマイトと、リン酸と、水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンと、水とを含む反応混合物を水熱処理する工程を有するSAPO−34の製造方法。
【請求項2】
前記反応混合物中の水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンとの含有比率は、水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩:トリエチルアミン=1:0.1〜1:2(モル比)である請求項1に記載のSAPO−34の製造方法。
【請求項3】
前記反応混合物中の水酸化テトラエチルアンモニウムおよび/またはテトラエチルアンモニウム塩と、トリエチルアミンとの合計含有量は、擬ベーマイト100モル(Al23基準)に対して、165〜450モルである請求項1または2に記載のSAPO−34の製造方法。
【請求項4】
前記反応混合物中の水の含有量は、擬ベーマイト100モル(Al23基準)に対して、40〜60モルである請求項1〜3のいずれかに記載のSAPO−34の製造方法。
【請求項5】
前記水熱合成を160〜210℃で行う請求項1〜4のいずれかに記載のSAPO−34の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造されるSAPO−34。
【請求項7】
(i)請求項6に記載のSAPO−34の存在下で、メタノール及びジメチルエーテルの少なくとも1つから、主成分がプロピレンであるオレフィン類を含むオレフィン含有ガスを製造するオレフィン含有ガス製造工程と、
(ii)オレフィンを水素化してパラフィンを製造する際に用いられるオレフィン含有ガス水素化用触媒の存在下で、オレフィン含有ガス製造工程において得られたオレフィン含有ガスと水素とから、主成分がプロパンである液化石油ガスを製造するオレフィン含有ガス水素化工程と
を有することを特徴とする液化石油ガスの製造方法。
【請求項8】
製造される液化石油ガス中のプロパンの含有量が、70〜100%である請求項7に記載の液化石油ガスの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−89300(P2006−89300A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273393(P2004−273393)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503065494)日本ガス合成株式会社 (18)
【Fターム(参考)】