説明

SAR搭載機速度測定装置、画像鮮明化装置、SAR搭載機速度測定プログラム、画像鮮明化プログラム及びSAR搭載機速度測定方法

【課題】SAR(Synthetic Aperture Radar)搭載機速度を高精度に知ることにより、高分解能画像を得ることを目的とする。
【解決手段】SAR搭載機の予測移動情報と目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と目標物との距離関係情報に基づき、SAR搭載機の速度を画像から推定する。また、SAR搭載機の速度を高次多項式で表現し、各次数の係数を画像から推定することで、より高精度なSAR搭載機の速度を得る。高精度なSAR搭載機の速度に基づき画像を再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、SAR(Synthetic Aperture Radar)画像からSAR搭載機の速度を測定する装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SAR撮像では、センサ(SAR)が航空機や人工衛星に搭載され移動する。そのため、取得されたデータを画像再生する際、SAR搭載機速度を高精度に知ることは、高分解能画像を得るために重要である。ここで、SAR搭載機の速度を推定する技術として慣性航法装置やGPS(Global Positioning System)を使用した方法がある。また、画像からオートフォーカスしてSAR搭載機の動揺を補正する方法がある。
【特許文献1】特開平11−183606号公報
【特許文献2】特開2003−130950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
慣性航法装置やGPSは誤差を含むため、0〜1次多項式程度でしか信頼できない。また、慣性航法装置やGPSは、SAR搭載機の速度を推定できたとしても進行方向への自転による目標の移動も考慮しなければならないため、高分解能達成は難しい。画像からオートフォーカスする方法では、速度モデルが低次(概ね0次)多項式であるうえ、どのシーンでも同じエリアが用いられることにより、画像のノイズレベルが高い場合は速度推定誤差が増大する。
本発明は、例えば、SAR搭載機速度を高精度に知ることにより、高分解能画像を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係るSAR搭載機速度測定装置は、例えば、SAR搭載機の速度を測定するSAR搭載機速度測定装置において、
SARが観測したデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力して記憶装置に記憶するデータ入力部と、
SAR搭載機の複数の予測速度を入力して記憶装置に記憶する速度入力部と、
SAR搭載機の予測移動情報と所定の目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と上記目標物との距離関係情報と上記速度入力部が入力した複数の予測速度の各予測速度とにより複数の参照関数を処理装置により生成して記憶装置に記憶する参照関数生成部と、
上記参照関数生成部が生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、上記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成するアジマス圧縮処理部と、
上記データ入力部が入力したレンジ圧縮後データに含まれる目標物を入力装置により選択する目標物選択部と、
上記アジマス圧縮処理部が生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データが示す目標物の画像であって上記目標物選択部が選択した目標物の画像の鮮明度を処理装置により算出する鮮明度算出部と、
上記鮮明度算出部が算出した上記目標物の画像の鮮明度が最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成部が使用した予測速度をSAR搭載機の速度であると処理装置により判定する速度判定部とを備えることを特徴とする。
【0005】
上記速度入力部は、予測速度を表す0次からn次まで(nは任意の自然数)の多項式を次数が低い多項式から次数が高い多項式へ順に、各次数の多項式について係数を変化させて複数の予測速度を入力し、
上記速度判定部は、次数が低い多項式から高い多項式へ順に各次数の多項式で表した場合のSAR搭載機の速度を判定し、
上記速度入力部は、n次多項式で表される予測速度を入力する場合、0次から(n−1)次までの各次数の係数を上記速度判定部が判定したSAR搭載機の速度を表す(n−1)次多項式の各次数の係数とすることを特徴とする。
【0006】
上記目標物選択部は、レンジ圧縮後データに含まれる複数の目標物を選択し、
上記鮮明度算出部は、上記目標物選択部が選択した複数の目標物の各目標物の画像の鮮明度を算出し、
上記速度判定部は、上記鮮明度算出部が算出した上記各目標物の画像の鮮明度がその目標物の画像の中で最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成部が使用した予測速度を目標物毎に記憶装置に記憶し、上記目標物毎に記憶した予測速度の平均をSAR搭載機の速度であると判定することを特徴とする。
【0007】
上記参照関数生成部は、自転による移動のみを所定の目標物の移動情報として、参照関数を生成することを特徴とする。
【0008】
上記参照関数生成部は、SAR搭載機と目標物との距離関係情報を表す式4から得られる参照関数式5へ、上記速度入力部が入力した複数の予測速度の各予測速度を入力して複数の参照関数を生成することを特徴とする。
【0009】
【数3】

【0010】
また、上記SAR搭載機速度測定装置は、さらに、
式6に基づき補正量を算出し、算出された補正量に基づいて、上記データ入力部が入力したレンジ圧縮後データについてレンジマイグレーション補正を行うレンジマイグレーション補正部を備え、
上記アジマス圧縮処理部は、上記レンジマイグレーション補正部がレンジマイグレーション補正した補正後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを生成することを特徴とする。
【0011】
【数4】

【0012】
また、本発明に係る画像鮮明化装置は、例えば、SARにより観測された目標物のデータから目標物の画像を鮮明化する画像鮮明化装置において、
上記SAR搭載機速度測定装置と、
上記速度判定部が判定したSAR搭載機の速度を入力するSAR速度入力部とを備え、
上記参照関数生成部は、上記SAR速度入力部が入力したSAR搭載機の速度から求めたSAR搭載機の移動情報と、目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と目標物との距離関係情報に基づき画像再生用参照関数を生成し、
上記アジマス圧縮処理部は、上記参照関数生成部が生成した画像再生用参照関数に基づき、上記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを生成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るSAR搭載機速度測定プログラムは、例えば、SAR搭載機の速度を測定するSAR搭載機速度測定プログラムにおいて、
SARが観測したデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力して記憶装置に記憶するデータ入力処理と、
SAR搭載機の複数の予測速度を入力して記憶装置に記憶する速度入力処理と、
SAR搭載機の予測移動情報と所定の目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と上記目標物との距離関係情報と上記速度入力処理で入力した複数の予測速度の各予測速度とにより複数の参照関数を処理装置により生成して記憶装置に記憶する参照関数生成処理と、
上記参照関数生成処理で生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、上記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成するアジマス圧縮処理と、
上記データ入力処理で入力したレンジ圧縮後データに含まれる目標物を入力装置により選択する目標物選択処理と、
上記アジマス圧縮処理で生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データが示す目標物の画像であって上記目標物選択処理で選択した目標物の画像の鮮明度を処理装置により算出する鮮明度算出処理と、
上記鮮明度算出処理で算出した上記目標物の画像の鮮明度が最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成処理で使用した予測速度をSAR搭載機の速度であると処理装置により判定する速度判定処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0014】
上記速度入力処理は、予測速度を表す0次からn次まで(nは任意の自然数)の多項式を次数が低い多項式から次数が高い多項式へ順に、各次数の多項式について係数を変化させて複数の予測速度を入力し、
上記速度判定処理は、次数が低い多項式から高い多項式へ順に各次数の多項式で表した場合のSAR搭載機の速度を判定し、
上記速度入力処理は、n次多項式で表される予測速度を入力する場合、0次から(n−1)次までの各次数の係数を上記速度判定処理で判定したSAR搭載機の速度を表す(n−1)次多項式の各次数の係数とすることを特徴とする。
【0015】
上記目標物選択処理は、レンジ圧縮後データに含まれる複数の目標物を選択し、
上記鮮明度算出処理は、上記目標物選択処理で選択した複数の目標物の各目標物の画像の鮮明度を算出し、
上記速度判定処理は、上記鮮明度算出処理で算出した上記各目標物の画像の鮮明度がその目標物の画像の中で最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成処理で使用した予測速度を目標物毎に記憶装置に記憶し、上記目標物毎に記憶した予測速度の平均をSAR搭載機の速度であると判定することを特徴とする。
【0016】
上記参照関数生成処理は、自転による移動のみを所定の目標物の移動情報として、参照関数を生成することを特徴とする。
【0017】
上記参照関数生成処理は、SAR搭載機と目標物との距離関係情報を表す式4から得られる参照関数式5へ、上記速度入力処理で入力した複数の予測速度の各予測速度を入力して複数の参照関数を生成することを特徴とする。
【0018】
また、上記SAR搭載機速度測定プログラムは、さらに、
式6に基づき補正量を算出し、算出された補正量に基づいて、上記データ入力処理で入力したレンジ圧縮後データについてレンジマイグレーション補正を行うレンジマイグレーション補正処理をコンピュータに実行させ、
上記アジマス圧縮処理は、上記レンジマイグレーション補正処理でレンジマイグレーション補正した補正後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを生成することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る画像鮮明化プログラムは、例えば、SARにより観測された目標物のデータから目標物の画像を鮮明化する画像鮮明化プログラムにおいて、
上記SAR搭載機速度測定プログラムを備え、
画像鮮明化プログラムは、さらに、
上記速度判定処理で判定したSAR搭載機の速度を入力するSAR速度入力処理をコンピュータに実行させ、
上記参照関数生成処理は、上記SAR速度入力処理で入力したSAR搭載機の速度から求めたSAR搭載機の移動情報と、目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と目標物との距離関係情報に基づき画像再生用参照関数を生成し、
上記アジマス圧縮処理は、上記参照関数生成処理で生成した画像再生用参照関数に基づき、上記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを生成することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るSAR搭載機速度測定方法は、例えば、SAR搭載機の速度を測定するSAR搭載機速度測定装置のSAR搭載機速度測定方法において、
記憶装置が、SARが観測したデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力して記憶するデータ入力ステップと、
記憶装置が、SAR搭載機の複数の予測速度を入力して記憶する速度入力ステップと、
記憶装置が、SAR搭載機の予測移動情報と所定の目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と上記目標物との距離関係情報と上記速度入力ステップで入力した複数の予測速度の各予測速度とにより複数の参照関数を処理装置により生成して記憶する参照関数生成ステップと、
処理装置が、上記参照関数生成ステップで生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、上記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを生成するアジマス圧縮ステップと、
入力装置が、上記データ入力ステップで入力したレンジ圧縮後データに含まれる目標物を選択する目標物選択ステップと、
処理装置が、上記アジマス圧縮ステップで生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データが示す目標物の画像であって上記目標物選択ステップで選択した目標物の画像の鮮明度を算出する鮮明度算出ステップと、
処理装置が、上記鮮明度算出ステップで算出した上記目標物の画像の鮮明度が最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成ステップで使用した予測速度をSAR搭載機の速度であると判定する速度判定ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るSAR搭載機速度測定装置、SAR搭載機速度測定方法及びSAR搭載機速度測定プログラムによれば、SAR搭載機の速度を画像から推定することで高精度なSAR搭載機の速度を得ることができる。また、SAR搭載機の速度を高次多項式で表現し、各次数の係数を画像から推定することで、より高精度なSAR搭載機の速度を得ることができる。また、ユーザが選択したSN比の高い複数の小領域に対して、SAR搭載機の速度を変化させながらアジマス圧縮を次々と実施し結像度が最大の速度係数を選択するため、画質の影響を受けにくく信頼性が高い。
したがって、本発明に係る画像鮮明化装置及び画像鮮明化プログラムによれば、鮮明な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図に基づき説明する。
まず、実施の形態にかかるSAR搭載機速度測定装置100(画像鮮明化装置)のハードウェア構成の一例について図1、図2に基づき説明する。
【0023】
図1は、実施の形態にかかるSAR搭載機速度測定装置100の外観の一例を示す図である。
図1において、SAR搭載機速度測定装置100は、CRT(Cathode Ray Tube)表示装置901、キーボード(K/B)902、マウス903、コンパクトディスク装置(CDD)905、データベース908、システムユニット909、サーバ910を備え、これらはケーブルで接続されている。
さらに、SAR搭載機速度測定装置100は、ローカルエリアネットワーク(LAN)942、ゲートウェイ941を介してインターネット940に接続されている。
ここで、CRT表示装置901は、表示装置986の一例である。
【0024】
図2は、実施の形態におけるSAR搭載機速度測定装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2において、SAR搭載機速度測定装置100は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)911を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、通信ボード915、CRT表示装置901、K/B902、マウス903、FDD(Flexible Disk)904、CDD905、磁気ディスク装置920と接続されている。CPUは、処理装置の一例である。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、磁気ディスク装置920は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置984の一例である。
通信ボード915は、LAN942等に接続されている。
また、K/B902、マウス903などは、入力装置982の一例である。
また、CPU911は、処理装置の一例である。
【0025】
ここで、通信ボード915は、LAN942に限らず、直接、インターネット940、或いはISDN等のWAN(ワイドエリアネットワーク)に接続されていても構わない。直接、インターネット940、或いはISDN等のWANに接続されている場合、SAR搭載機速度測定装置100は、インターネット940、或いはISDN等のWANに接続され、ゲートウェイ941は不用となる。
磁気ディスク装置920には、オペレーティングシステム(OS)921、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923は、CPU911、OS921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0026】
上記プログラム群923には、以下に述べる実施の形態の説明において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群924には、以下に述べる実施の形態の説明において、「〜判定」として説明するものが、「〜ファイル」として記憶されている。
また、以下に述べる実施の形態の説明において説明するフローチャートの矢印の部分は主としてデータの入出力を示し、そのデータの入出力のためにデータは、磁気ディスク装置920、FD、光ディスク、CD、MD(ミニディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)等のその他の記録媒体に記録される。あるいは、信号線やその他の伝送媒体により伝送される。
【0027】
また、以下に述べる実施の形態の説明において「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、ハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。
【0028】
また、以下に述べる実施の形態を実施するプログラムは、また、磁気ディスク装置920、FD、光ディスク、CD、MD、DVD等のその他の記録媒体による記録装置を用いて記憶されても構わない。
【0029】
実施の形態1.
次に、実施の形態1について説明する。実施の形態1では、SAR搭載機の速度を測定するSAR搭載機速度測定装置100について説明する。
【0030】
まず、図3、図4に基づき、SAR搭載機と目標物との相対位置関係について説明する。ここでは、目標物は観測時間中(例えば、数秒間)に自転する地面の上を静止していることを仮定する。図3は、SAR搭載機と目標物とのt秒後の相対関係(距離)を表した図である。図4は、図3における目標物の自転による移動を示す図である。つまり、目標物自身は移動しないが、SAR搭載機から見た場合目標物は自転により移動する。
ここで、式7はSAR搭載機の移動に基づきt秒後のSAR搭載機と目標物との距離ベクトルを示し、式8は自転による目標物の速度ベクトルを示す。式7と式8とからt秒後のSAR搭載機と目標物との相対運動(距離)として式9が得られる。
【0031】
【数5】

ここで、SAR搭載機の速度成分が一定であると仮定すると、地球自転によるレンジ方向、アジマス方向の観測点の移動を考慮して、SAR搭載機と目標物との距離は式10となる。
【0032】
【数6】

また、一般には、自転のアジマス方向速度成分とSAR搭載機の速度成分をまとめて記述できる。ここで、「−V=(vaE−VP_pre)」であり、Vは目標物との相対速度を表す。
【0033】
【数7】

式11より、アジマス圧縮参照関数は次のように計算される。
【0034】
【数8】

【0035】
ここで、式11の速度を多項式で表すと以下のようになる。
【0036】
【数9】

この速度を表す多項式の各次数の係数を特定することにより、SAR搭載機の速度が特定される。
【0037】
次に、SAR搭載機速度測定装置100がSAR搭載機の速度を特定する方法の概要について説明する。
まず、SAR搭載機速度測定装置100は、入力されたSLC(シングルルックコンプレックス)画像から静止している目標物を特定する。次に、SAR搭載機速度測定装置100は、選択した目標物の含まれる画像を式12で表されるアジマス圧縮参照関数を用いてアジマス圧縮を解凍する。ここでアジマス圧縮に用いられる、スラントレンジ、自転速度(ドップラセンタ周波数)、およびSLC作成時に用いた式12の速度はSAR画像の付加情報から計算できる。
次に、SAR搭載機速度測定装置100は、SAR搭載機の速度を変化させて、式12に示すアジマス圧縮参照関数へ入力することにより複数の参照関数を算出する。そして、SAR搭載機速度測定装置100は、算出された複数の参照関数の各参照関数を用いてアジマス圧縮する。ここで、SAR搭載機速度測定装置100は、生成された複数のアジマス圧縮後の画像の中で画像が最も引き締まった(鮮明になった)画像を判断する。そして、SAR搭載機速度測定装置100は、その画像を生成するために使用したアジマス圧縮参照関数を算出する場合に入力した速度がSAR搭載機の速度であると判定する。
【0038】
次に、各処理の詳細について説明する。
まず、SAR搭載機速度測定装置100は、入力されたSLC画像から静止している目標物を特定する。ここでは、図5に示すように、SLC画像から植生、河川や海のような合成開口時間中に移動しない人工構造物のような特徴的ポイントを任意にm箇所選択する。そして、選択された範囲を切り出す。ここで、SLC画像とは、1シーン内でも何回かに分けてアジマス圧縮処理(サブパッチ処理)されている場合1サブパッチ分の画像である。なお、アジマス方向切り出し幅は合成開口長が限界であり、それに満たないものはゼロ埋めをおこなう。また、アジマス圧縮はアジマス方向の圧縮を改善する処理であるため、レンジ方向には後述するレンジマイグレーションを考慮して数画素程度あれば充分である。
SAR搭載機速度測定装置100は、特定したm個の目標物それぞれを含むm個の切り出し画像を式12で表される参照関数を用いてアジマス圧縮を解凍する。そして、SAR搭載機速度測定装置100は、以下の処理を特定したm個の目標物それぞれについて行い、m個の目標物それぞれに基づくSAR搭載機の速度を測定する。
【0039】
次に、SAR搭載機速度測定装置100は、SAR搭載機の速度を変化させて、式12に示すアジマス圧縮参照関数へ入力することにより複数の参照関数を算出する。ここでは、SAR搭載機の速度を式13に示す多項式により表す。式13に示す多項式により表した速度を変化させるため、速度を表す多項式の次数nと、各次数の係数の最大値及び最小値と、速度を変化させる刻み幅とを入力する。式14に、刻み幅の計算とそれから得られる探索パラメータを示す。
【0040】
【数10】

そして式12、式13を用いてSAR搭載機の速度を変化させながら、解凍された画像のアジマス圧縮を繰り返し、最も引き締まった画像を得た場合に使用した係数の組み合わせを探索する。速度係数は画像への影響の大きさを考慮して低次から高次に向かって順次探索を進める。速度係数の入力の詳細については後述する。
なお、速度を変化させた参照関数を乗じる前にその速度に対応した式15に示す補正量に基づきレンジマイグレーション補正を行う。
【0041】
【数11】

【0042】
これらの処理をm個の切り出し画像全てに対して実施すると、式16に示す速度係数マトリクスを得る。なお上付きのカッコ内の数字は、切り出し画像との対応を示す。
【0043】
【数12】

次に、SLC画像内での係数の揺らぎを除去するため、各切り出し画像から得られた係数を式17に示すように平均化することでSAR搭載機の速度を得る。SLC画像内での係数の揺らぎとは、例えば、選択した各切り出し画像が完全な静止体ではなく、動揺がある場合等に発生するものである。
【0044】
【数13】

また、式17で得られた速度係数を一旦保存し、図6に示すようにSLC画像の任意に選択する範囲にこの結果を反映してより高分解能な画像を再生することができる。この速度係数を算出したサブパッチ内の画像であれば任意の位置を任意のサイズで選択可能である。
【0045】
次に、図7、図8、図9に基づき実施の形態1に係るSAR搭載機速度測定装置100の機能及び動作について説明する。
【0046】
図7は、実施の形態1に係るSAR搭載機速度測定装置100の機能を示す機能ブロック図である。図7に示すように、SAR搭載機速度測定装置100は、入力部110、処理部130、記憶部160、表示部170、処理装置980、入力装置982、記憶装置984、表示装置986を備える。入力部110、処理部130、記憶部160、表示部170等は、例えば、ソフトウェア、プログラムなどであるが、これらの機能を備えたファームウェア等であっても構わない。
入力部110は、データ入力部112、参照関数情報入力部114、付随情報入力部120を備える。ここで、参照関数情報入力部114は、速度入力部116、目標物特定部122、SAR速度入力部124を備える。また、処理部130は、レンジマイグレーション補正部132、ゼロ詰め処理部134、FFT(高速フーリエ変換)処理部136、アジマス圧縮処理部138、IFFT(逆高速フーリエ変換)処理部140、参照関数生成部142、速度判定部144、鮮明度算出部146を備える。また、記憶部160は、データ記憶部162を備える。また、表示部170は、データ表示部172を備える。
【0047】
図8は、実施の形態1に係るSAR搭載機速度測定装置100のSAR搭載機の速度を測定する動作であるSAR搭載機速度測定処理を示すフローチャートである。図7、図8に基づきSAR搭載機速度測定処理について説明する。
【0048】
まず、データ入力ステップ(S101)では、データ入力部112は、まず、合成開口時間中に移動しない特徴的ポイントを目標物として任意にm箇所選択する。そして、データ入力部112は、アジマス圧縮を上述したように解凍してレンジ圧縮後データを得る。そして、データ入力部112は、レンジ圧縮後のデータを入力する。
次に、目標物特定ステップ(S102)では、目標物特定部122は、データ入力部112が入力したレンジ圧縮後データから、データ入力部112が選択したm箇所の合成開口時間中に移動しない目標物を特定する。そして、SAR搭載機速度測定装置100は、特定したm個の目標物それぞれに対して、以下の(S108)を除く(S102)から(S114)まで(処理群C)を実行する。つまり、処理群Cをm回繰り返す。すなわち、処理群Cは、各目標物について式13に用いる速度係数の組み合わせを決定する処理である。
【0049】
さらに、速度係数入力ステップ(S103)では、速度入力部116は、例えば、式13に示す多項式により表した速度を変化させるための、速度を表す多項式の次数nと、各次数の係数の最大値及び最小値と、速度を変化させる刻み幅NからNまでとを設定する。
ここでは、予測速度を表す0次からn次まで(nは任意の自然数)の多項式を次数が低い多項式から次数が高い多項式へ順に、次数毎に(S108)を除く(S103)から(S114)まで(処理群B)を繰り返して、その次数の係数を決定する。つまり、各次数の係数a,a,・・・,aの順に値を決定する。また、次数はnであるため、n+1回処理群Bを繰り返す。すなわち、処理群Bは、各次数の係数を1つずつ判定する処理である。
また、速度入力ステップ(S104)では、速度入力部116は、(S103)で設定した係数の範囲で、設定した刻み幅に従い係数を変化させて、SAR搭載機の複数の予測速度Vを入力して記憶装置984に記憶する。つまり、速度入力部116は、各次数の多項式についての係数aからaまでを刻み幅NからNまでに従い変化させて複数の予測速度を入力する。ここで、n次多項式で表される予測速度を入力する場合、0次から(n−1)次までの各次数の係数を後述する速度判定部144が判定したSAR搭載機の速度を表す(n−1)次多項式の各次数の係数とする。具体例については後述する。したがって、(S104)から(S113)まで(処理群A)は、次数毎に各次数の刻み幅であるN,・・・,N回繰り返す。つまり、処理群Aは、刻み幅毎に後述する画像の鮮明度を算出する処理である。
【0050】
次に、レンジマイグレーション補正ステップ(S105)では、レンジマイグレーション補正部132は、速度入力部116が入力したSAR搭載機の予測速度に基づくSAR搭載機の予測移動情報と目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と目標物との相対距離rPT(t)に応じて補正量Cを算出し、算出された補正量Cに基づいて、データ入力部112が入力したレンジ圧縮後データについてレンジマイグレーション補正し補正後データを生成する。ここで、レンジマイグレーション補正部132は、後述する参照関数生成ステップ(S109)で求めたSAR搭載機と目標物との距離rPT(t)を受け取り、受け取ったrPT(t)に基づいてレンジマイグレーション補正量Cを算出する。レンジマイグレーション補正部132は、例えば、式15に基づき補正量Cを算出する。
次に、ゼロ詰め処理ステップ(S106)では、ゼロ詰め処理部134は、レンジマイグレーション補正部132が生成した補正後データに0を詰めることにより、補正後データの画素数を2のべき乗としたゼロ詰めデータを処理装置980により生成する。ここで、ゼロ詰め処理部134は、例えば、式18、式19に基づきゼロ詰めする画素数を算出する。画素数を2のべき乗とするのは、高速フーリエ変換(FFT)を実施するためには、画素数が2のべき乗にならなければならないためである。そのため、ゼロ詰め処理部134は、例えば、式18のように、切り出したアジマス方向の画素数より大きい最小の2のべき乗の数である高速フーリエ変換のためのアジマス方向の画素数Nfftを算出し、式19のように、その数に足りない画素数であるゼロ詰めする画素数Nzero_padだけ0(ゼロ)を詰める。
【0051】
【数14】

次に、高速フーリエ変換処理ステップ(S107)では、FFT処理部136は、ゼロ詰め処理部134が生成したゼロ詰めデータをFFTしFFT後データを処理装置980により生成する。
【0052】
上記処理と一部並行して、付随情報入力ステップ(S108)では、付随情報入力部120は、SAR搭載機の位置などの画像に付随する画像付随情報を入力装置982により入力する。
次に、参照関数生成ステップ(S109)では、参照関数生成部142は、SAR搭載機の予測移動情報と所定の目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と目標物との距離関係情報と速度入力部116が入力した予測速度Vとにより参照関数を処理装置980により生成して記憶装置984に記憶する。ここで、参照関数生成部142は、速度入力部116が入力した予測速度毎に参照関数を生成する。参照関数生成部142は、例えば、上記式12の参照関数frefを生成する。かつ、参照関数生成部142は、rPT(t)を(S105)へ出力する。また、参照関数生成部142は、自転による移動のみを所定の目標物の移動情報として、参照関数を生成する。
次に、高速フーリエ変換処理ステップ(S110)では、FFT処理部136は、参照関数生成部142が生成した参照関数をFFTしFFT後参照関数を処理装置980により生成する。
【0053】
次に、アジマス圧縮処理ステップ(S111)では、アジマス圧縮処理部138は、高速フーリエ変換処理ステップ(S110)でFFT処理部136が生成したFFT後参照関数に基づき、高速フーリエ変換処理ステップ(S107)でFFT処理部136が生成したFFT後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを処理装置980により生成する。
次に、逆高速フーリエ変換処理ステップ(S112)では、IFFT処理部140は、アジマス圧縮処理部138がアジマス圧縮したアジマス圧縮後データをIFFT(逆高速フーリエ変換)し、IFFT後データを処理装置980により生成する。
【0054】
次に、鮮明度算出ステップ(S113)では、アジマス圧縮処理部138が生成したアジマス圧縮後データが示す目標物の画像であって目標物特定部122が特定した目標物の画像の鮮明度を処理装置980により算出する。
次に、速度係数判定ステップ(S114)(速度判定ステップ)では、速度判定部144は、鮮明度算出部146が算出した上記目標物の画像の鮮明度が最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成部が使用した予測速度をSAR搭載機の速度であると処理装置980により判定して記憶装置984に記憶する。
ここで、鮮明度算出部146は、例えば、アジマス圧縮処理部138が生成したアジマス圧縮後データが示す画像の画素の輝度を表す振幅のピーク値を探し、ピーク値の高さが高いものほど画像の鮮明であると判定する。
つまり、速度判定部144は、次数が低い多項式から高い多項式へ順に各次数の多項式で表した場合のSAR搭載機の速度を判定する。
次に、平均算出ステップ(S115)(速度判定ステップ)では、速度判定部144は、目標物特定部122が特定したm個の目標物毎に記憶したSAR搭載機の予測速度の平均をSAR搭載機の速度であると判定する。つまり、速度判定部144は、式17に示すように、各次数の係数を平均化することでSAR搭載機の速度を得る。
【0055】
そして、速度係数記憶ステップ(S116)では、データ記憶部162は、速度判定部144が判定したSAR搭載機の速度を記憶装置984に記憶する。
【0056】
次に、(S103)及び(S104)での速度入力部116による予測速度の入力の具体例について説明する。上述したように、速度入力部116は、各次数の多項式についての係数aからaまでを刻み幅NからNまでに従い変化させて、次数が低い多項式から次数が高い多項式へ順に係数を決定する。また、n次多項式で表される予測速度を入力する場合、0次から(n−1)次までの各次数の係数を後述する速度判定部144が判定したSAR搭載機の速度を表す(n−1)次多項式の各次数の係数とする。
つまり、ある目標物に対して、(S103)で速度入力部116は、1回目(α=1)には、a0_min,a0_max,aからaまでについては最小値であるa1_minからan_minまで,Nを入力して記憶装置984に記憶する。そして、(S104)で速度入力部116は、aについてa0_minからa0_maxまで刻み幅Nに従い変化させて入力する。また、変化させて入力する各aについて、a1_minからan_minまでを入力する。そして、(S114)で、速度判定部144がaの値を判定する。
次に、2回目(α=2)には、(S103)で速度入力部116は、1回目に速度判定部144が判定したaと、a1_min,a1_max,aからaまでについては最小値であるa2_minからan_minまで,Nを入力して記憶装置984に記憶する。そして、(S104)で速度入力部116は、aについてa1_minからa1_maxまで刻み幅Nに従い変化させて入力する。また、変化させて入力する各aについて、1回目に速度判定部144が判定したaと、a2_minからan_minまでとを入力する。そして、(S114)で、速度判定部144がaの値を判定する。
以降、同様の処理を繰り返し、α回目には、(S103)で速度入力部116は、α−1回目までに速度判定部144が判定したaからaα−2までと、aα−1_min,aα−1_max,aαからaまでについては最小値であるaα_minからan_minまで,Nα−1を入力して記憶装置984に記憶する。そして、(S104)で速度入力部116は、aα−1についてaα−1_minからaα−1_maxまで刻み幅Nα−1に従い変化させて入力する。また、変化させて入力する各aα−1について、α−1回目に速度判定部144が判定したaからaα−2までと、a1_minからan_minまでとを入力する。そして、(S114)で、速度判定部144がaα−1の値を判定する。
【0057】
上記SAR搭載機速度測定処理の各ステップ(処理)をコンピュータに実行させるプログラムがSAR搭載機速度測定プログラムである。また、上記SAR搭載機速度測定処理の各ステップを備える方法がSAR搭載機速度測定方法である。
【0058】
図9は、実施の形態1に係るSAR搭載機速度測定装置100のSARにより観測された目標物の画像を鮮明化して表示する動作である画像鮮明化処理を示すフローチャートである。図7、図9に基づき画像鮮明化処理について説明する。
まず、データ入力ステップ(S201)では、データ入力部112は、アジマス圧縮を上述したように解凍してレンジ圧縮後データを得る。そして、データ入力部112は、レンジ圧縮後のデータを入力する。ここで、データ入力部112は、表示したい部分を切り出してレンジ圧縮後データを得るようにしても構わない。
次に、速度係数読み込みステップ(S202)では、SAR速度入力部124は、SAR搭載機速度測定処理で、速度判定部144が判定したSAR搭載機の速度を表す速度係数を記憶装置984から読み込む。
そして、速度係数入力ステップ(S203)では、SAR速度入力部124は、(S202)で読み込んだSAR搭載機の速度を表す速度係数を入力する。つまり、参照関数生成部142は、SAR搭載機速度測定処理で求めたSAR搭載機の速度に基づき参照関数を生成する。
【0059】
(S204)から(S211)までの処理は、(S105)から(S112)までの処理と同様である。
そして、画像表示ステップ(S212)では、データ表示部172は、IFFT処理部140が生成したIFFT後データを表示装置986に表示する。
【0060】
ここで、(S208)で生成した参照関数は、画像再生用参照関数の一例である。
【0061】
実施の形態1に係るSAR搭載機速度測定装置、SAR搭載機速度測定プログラム及びSAR搭載機速度測定方法によれば、SAR搭載機の速度を高次多項式で表現し、各係数を画像から推定することで高精度なSAR搭載機の速度を得ることができる。すなわち目標物等の鮮明な画像を得ることができる。また、ユーザが選択したSN比の高い複数の小領域に対して、SAR搭載機の速度を変化させながらアジマス圧縮を次々と実施し結像度が最大の速度係数を選択するため、入力画像の画質の影響を受けにくく信頼性が高い。
【0062】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態1では、SAR搭載機の速度を測定するSAR搭載機速度測定処理及び、SAR速度測定処理により測定したSARの速度に基づき画像を再生する画像鮮明化処理について説明した。実施の形態2では、さらに、SAR搭載機速度測定処理の精度を高める方法について説明する。
【0063】
SARには水平偏波、垂直偏波をそれぞれ送受信できるシステムがある。つまり、SARは、垂直偏波を送信して垂直偏波で受信した信号、水平偏波を送信して垂直偏波で受信した信号、垂直偏波で送信して水平偏波で受信した信号、および水平偏波で送信して水平偏波で受信した信号の4種類の信号の情報を得ることができる。
そこで、SAR搭載機速度測定装置100は、上記4種類の各信号に基づき得られた偏波画像に対して、SAR搭載機速度測定処理を行い、得られたSAR搭載機の速度の平均をとることでより精度の高いSAR搭載機の速度を得ることができる。
また、上記4種類の各信号に基づく偏波画像より得られたSAR搭載機の速度に基づき、画像鮮明化処理を行うことにより、より鮮明化された画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施の形態にかかるSAR搭載機速度測定装置100の外観の一例を示す図。
【図2】実施の形態におけるSAR搭載機速度測定装置100のハードウェア構成の一例を示す図。
【図3】SAR搭載機と目標物とのt秒後の相対関係(距離)を表した図。
【図4】図3における目標物の自転による移動を示す図。
【図5】SLC画像から目標物を選択する概要を示す図。
【図6】SLC画像から高分解能な画像を再生する部分を選択する概要を示す図。
【図7】実施の形態1に係るSAR搭載機速度測定装置100の機能を示す機能ブロック図。
【図8】実施の形態1に係るSAR搭載機速度測定装置100のSAR搭載機の速度を測定する動作であるSAR搭載機速度測定処理を示すフローチャート。
【図9】実施の形態1に係るSAR搭載機速度測定装置100のSARにより観測された目標物の画像を鮮明化して表示する動作である画像鮮明化処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0065】
100 SAR搭載機速度測定装置、110 入力部、112 データ入力部、114 参照関数情報入力部、116 速度入力部、118 合成開口時間情報入力部、120 付随情報入力部、122 目標物特定部、124 SAR速度入力部、126 目標物速度入力部、130 処理部、132 レンジマイグレーション補正部、134 ゼロ詰め処理部、136 FFT処理部、138 アジマス圧縮処理部、140 IFFT処理部、142 参照関数生成部、144 速度判定部、146 鮮明度算出部、160 記憶部、162 データ記憶部、170 表示部、172 データ表示部、901 CRT表示装置、902 K/B、903 マウス、904 FDD、905 CDD、908 データベース、909 システムユニット、910 サーバ、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 磁気ディスク装置、921 OS、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群、931 電話器、932 FAX機、940 インターネット、941 ゲートウェイ、942 LAN、980 処理装置、982 入力装置、984 記憶装置、986 表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SAR(Synthetic Aperture Radar)搭載機の速度を測定するSAR搭載機速度測定装置において、
SARが観測したデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力して記憶装置に記憶するデータ入力部と、
SAR搭載機の複数の予測速度を入力して記憶装置に記憶する速度入力部と、
SAR搭載機の予測移動情報と所定の目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と上記目標物との距離関係情報と上記速度入力部が入力した複数の予測速度の各予測速度とにより複数の参照関数を処理装置により生成して記憶装置に記憶する参照関数生成部と、
上記参照関数生成部が生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、上記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成するアジマス圧縮処理部と、
上記データ入力部が入力したレンジ圧縮後データに含まれる目標物を特定して記憶装置に記憶する目標物特定部と、
上記アジマス圧縮処理部が生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データが示す目標物の画像であって上記目標物特定部が特定した目標物の画像の鮮明度を処理装置により算出する鮮明度算出部と、
上記鮮明度算出部が算出した上記目標物の画像の鮮明度が最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成部が使用した予測速度をSAR搭載機の速度であると処理装置により判定する速度判定部と
を備えることを特徴とするSAR搭載機速度測定装置。
【請求項2】
上記速度入力部は、予測速度を表す0次からn次まで(nは任意の自然数)の多項式を次数が低い多項式から次数が高い多項式へ順に、各次数の多項式について係数を変化させて複数の予測速度を入力し、
上記速度判定部は、次数が低い多項式から高い多項式へ順に各次数の多項式で表した場合のSAR搭載機の速度を判定し、
上記速度入力部は、n次多項式で表される予測速度を入力する場合、0次から(n−1)次までの各次数の係数を上記速度判定部が判定したSAR搭載機の速度を表す(n−1)次多項式の各次数の係数とする
ことを特徴とする請求項1記載のSAR搭載機速度測定装置。
【請求項3】
上記目標物特定部は、レンジ圧縮後データに含まれる複数の目標物を特定し、
上記鮮明度算出部は、上記目標物特定部が特定した複数の目標物の各目標物の画像の鮮明度を算出し、
上記速度判定部は、上記鮮明度算出部が算出した上記各目標物の画像の鮮明度がその目標物の画像の中で最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成部が使用した予測速度を目標物毎に記憶装置に記憶し、上記目標物毎に記憶した予測速度の平均をSAR搭載機の速度であると判定する
ことを特徴とする請求項1記載のSAR搭載機速度測定装置。
【請求項4】
上記参照関数生成部は、自転による移動のみを所定の目標物の移動情報として、参照関数を生成する
ことを特徴とする請求項1記載のSAR搭載機速度測定装置。
【請求項5】
上記参照関数生成部は、SAR搭載機と目標物との距離関係情報を表す式1から得られる参照関数式2へ、上記速度入力部が入力した複数の予測速度の各予測速度を入力して複数の参照関数を生成する
ことを特徴とする請求項1記載のSAR搭載機速度測定装置。
【数1】

【請求項6】
上記SAR搭載機速度測定装置は、さらに、
式3に基づき補正量を算出し、算出された補正量に基づいて、上記データ入力部が入力したレンジ圧縮後データについてレンジマイグレーション補正を行うレンジマイグレーション補正部を備え、
上記アジマス圧縮処理部は、上記レンジマイグレーション補正部がレンジマイグレーション補正した補正後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを生成する
ことを特徴とする請求項1記載のSAR搭載機速度測定装置。
【数2】

【請求項7】
SARにより観測された目標物のデータから目標物の画像を鮮明化する画像鮮明化装置において、
請求項1記載のSAR搭載機速度測定装置と、
上記速度判定部が判定したSAR搭載機の速度を入力するSAR速度入力部とを備え、
上記参照関数生成部は、上記SAR速度入力部が入力したSAR搭載機の速度から求めたSAR搭載機の移動情報と、目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と目標物との距離関係情報に基づき画像再生用参照関数を生成し、
上記アジマス圧縮処理部は、上記参照関数生成部が生成した画像再生用参照関数に基づき、上記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを生成する
ことを特徴とする画像鮮明化装置。
【請求項8】
SAR(Synthetic Aperture Radar)搭載機の速度を測定するSAR搭載機速度測定プログラムにおいて、
SARが観測したデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力して記憶装置に記憶するデータ入力処理と、
SAR搭載機の複数の予測速度を入力して記憶装置に記憶する速度入力処理と、
SAR搭載機の予測移動情報と所定の目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と上記目標物との距離関係情報と上記速度入力処理で入力した複数の予測速度の各予測速度とにより複数の参照関数を処理装置により生成して記憶装置に記憶する参照関数生成処理と、
上記参照関数生成処理で生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、上記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成するアジマス圧縮処理と、
上記データ入力処理で入力したレンジ圧縮後データに含まれる目標物を特定して記憶装置に記憶する目標物特定処理と、
上記アジマス圧縮処理で生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データが示す目標物の画像であって上記目標物特定処理で特定した目標物の画像の鮮明度を処理装置により算出する鮮明度算出処理と、
上記鮮明度算出処理で算出した上記目標物の画像の鮮明度が最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成処理で使用した予測速度をSAR搭載機の速度であると処理装置により判定する速度判定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とするSAR搭載機速度測定プログラム。
【請求項9】
上記速度入力処理は、予測速度を表す0次からn次まで(nは任意の自然数)の多項式を次数が低い多項式から次数が高い多項式へ順に、各次数の多項式について係数を変化させて複数の予測速度を入力し、
上記速度判定処理は、次数が低い多項式から高い多項式へ順に各次数の多項式で表した場合のSAR搭載機の速度を判定し、
上記速度入力処理は、n次多項式で表される予測速度を入力する場合、0次から(n−1)次までの各次数の係数を上記速度判定処理で判定したSAR搭載機の速度を表す(n−1)次多項式の各次数の係数とする
ことを特徴とする請求項8記載のSAR搭載機速度測定プログラム。
【請求項10】
上記目標物特定処理は、レンジ圧縮後データに含まれる複数の目標物を特定し、
上記鮮明度算出処理は、上記目標物特定処理で特定した複数の目標物の各目標物の画像の鮮明度を算出し、
上記速度判定処理は、上記鮮明度算出処理で算出した上記各目標物の画像の鮮明度がその目標物の画像の中で最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成処理で使用した予測速度を目標物毎に記憶装置に記憶し、上記目標物毎に記憶した予測速度の平均をSAR搭載機の速度であると判定する
ことを特徴とする請求項1記載のSAR搭載機速度測定プログラム。
【請求項11】
上記参照関数生成処理は、自転による移動のみを所定の目標物の移動情報として、参照関数を生成する
ことを特徴とする請求項8記載のSAR搭載機速度測定プログラム。
【請求項12】
上記参照関数生成処理は、SAR搭載機と目標物との距離関係情報を表す式1から得られる参照関数式2へ、上記速度入力処理で入力した複数の予測速度の各予測速度を入力して複数の参照関数を生成する
ことを特徴とする請求項8記載のSAR搭載機速度測定プログラム。
【請求項13】
上記SAR搭載機速度測定プログラムは、さらに、
式3に基づき補正量を算出し、算出された補正量に基づいて、上記データ入力処理で入力したレンジ圧縮後データについてレンジマイグレーション補正を行うレンジマイグレーション補正処理をコンピュータに実行させ、
上記アジマス圧縮処理は、上記レンジマイグレーション補正処理でレンジマイグレーション補正した補正後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを生成する
ことを特徴とする請求項8記載のSAR搭載機速度測定プログラム。
【請求項14】
SARにより観測された目標物のデータから目標物の画像を鮮明化する画像鮮明化プログラムにおいて、
請求項8記載のSAR搭載機速度測定プログラムを備え、
画像鮮明化プログラムは、さらに、
上記速度判定処理で判定したSAR搭載機の速度を入力するSAR速度入力処理をコンピュータに実行させ、
上記参照関数生成処理は、上記SAR速度入力処理で入力したSAR搭載機の速度から求めたSAR搭載機の移動情報と、目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と目標物との距離関係情報に基づき画像再生用参照関数を生成し、
上記アジマス圧縮処理は、上記参照関数生成処理で生成した画像再生用参照関数に基づき、上記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを生成する
ことを特徴とする画像鮮明化プログラム。
【請求項15】
SAR(Synthetic Aperture Radar)搭載機の速度を測定するSAR搭載機速度測定装置のSAR搭載機速度測定方法において、
記憶装置が、SARが観測したデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力して記憶するデータ入力ステップと、
記憶装置が、SAR搭載機の複数の予測速度を入力して記憶する速度入力ステップと、
記憶装置が、SAR搭載機の予測移動情報と所定の目標物の移動情報とに基づいたSAR搭載機と上記目標物との距離関係情報と上記速度入力ステップで入力した複数の予測速度の各予測速度とにより複数の参照関数を処理装置により生成して記憶する参照関数生成ステップと、
処理装置が、上記参照関数生成ステップで生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、上記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを生成するアジマス圧縮ステップと、
記憶装置が、上記データ入力ステップで入力したレンジ圧縮後データに含まれる目標物を特定して記憶する目標物特定ステップと、
処理装置が、上記アジマス圧縮ステップで生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データが示す目標物の画像であって上記目標物特定ステップで特定した目標物の画像の鮮明度を算出する鮮明度算出ステップと、
処理装置が、上記鮮明度算出ステップで算出した上記目標物の画像の鮮明度が最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、上記参照関数生成ステップで使用した予測速度をSAR搭載機の速度であると判定する速度判定ステップと
を備えることを特徴とするSAR搭載機速度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−292531(P2007−292531A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118786(P2006−118786)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)
【Fターム(参考)】