説明

SMAC模倣体

SMAC模倣体およびその薬学的組成物ならびに使用方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、SMAC模倣体および組成物、ならびにがんを含む増殖性障害を処置するためのその使用の分野にある。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)は、カスパーゼ依存性アポトーシスを抑制する天然の細胞内タンパク質である。DIABLOとしても知られるSMACは、IAPの活性に拮抗する、すなわちそれを阻害するように機能する別の細胞内タンパク質である。正常な健康細胞において、SMACおよびIAPは一緒になって健康細胞を維持するように機能する。しかし、ある種の疾患状態、例えばがんおよび他の増殖性障害において、IAPは適切に拮抗されず、したがってアポトーシスを阻止し、異常な増殖および生存を引き起こすかまたは増悪させる。
【0003】
IAPアンタゴニストとしても知られるSMAC模倣体は、SMACの4個のN末端アミノ酸の構造およびIAPアンタゴニスト活性を模倣する合成小分子である(SMAC模倣体を時々IAPアンタゴニストと呼ぶ)。SMAC模倣体は、増殖性障害に罹患した動物に投与されると、IAPに拮抗して、異常増殖細胞においてアポトーシスの増大を引き起こす。
【0004】
SMACペプチド模倣体の例としては、米国特許第7,517,906号(特許文献1); 米国特許第7,309,792号(特許文献2); 米国特許第7,419,975号(特許文献3); 米国特許出願公開第2005/0234042号(特許文献4); 米国特許出願公開2005/0261203号(特許文献5); 米国特許出願公開2006/0014700号(特許文献6); 米国特許出願公開2006/0025347号(特許文献7); 米国特許出願公開2006/0052311号(特許文献8); 米国特許出願公開2006/0128632号(特許文献9); 米国特許出願公開2006/0167066号(特許文献10); 米国特許出願公開2007/0042428号(特許文献11); 米国特許出願公開2007/032437号(特許文献12); 米国特許出願公開2008/0132485号(特許文献13); 国際公開公報第2005/069888号(特許文献14); 国際公開公報第2005/069894号(特許文献15); 国際公開公報第2006/010118号(特許文献16); 国際公開公報第2006/122408号(特許文献17); 国際公開公報第2006/017295号(特許文献18); 国際公開公報第2006/133147号(特許文献19); 国際公開公報第2006/128455号(特許文献20); 国際公開公報第2006/091972号(特許文献21); 国際公開公報第2006/020060号(特許文献22); 国際公開公報第2006/014361号(特許文献23); 国際公開公報第2006/097791号(特許文献24); 国際公開公報第2005/094818号(特許文献25); 国際公開公報第2008/045905号(特許文献26); 国際公開公報第2008/016893号(特許文献27); 国際公開公報第2007/136921号(特許文献28); 国際公開公報第2007/021825号(特許文献29); 国際公開公報第2007/130626号(特許文献30); 国際公開公報第2007/106192号(特許文献31); および国際公開公報第2007/101347号(特許文献32)に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,517,906号
【特許文献2】米国特許第7,309,792号
【特許文献3】米国特許第7,419,975号
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0234042号
【特許文献5】米国特許出願公開2005/0261203号
【特許文献6】米国特許出願公開2006/0014700号
【特許文献7】米国特許出願公開2006/0025347号
【特許文献8】米国特許出願公開2006/0052311号
【特許文献9】米国特許出願公開2006/0128632号
【特許文献10】米国特許出願公開2006/0167066号
【特許文献11】米国特許出願公開2007/0042428号
【特許文献12】米国特許出願公開2007/032437号
【特許文献13】米国特許出願公開2008/0132485号
【特許文献14】国際公開公報第2005/069888号
【特許文献15】国際公開公報第2005/069894号
【特許文献16】国際公開公報第2006/010118号
【特許文献17】国際公開公報第2006/122408号
【特許文献18】国際公開公報第2006/017295号
【特許文献19】国際公開公報第2006/133147号
【特許文献20】国際公開公報第2006/128455号
【特許文献21】国際公開公報第2006/091972号
【特許文献22】国際公開公報第2006/020060号
【特許文献23】国際公開公報第2006/014361号
【特許文献24】国際公開公報第2006/097791号
【特許文献25】国際公開公報第2005/094818号
【特許文献26】国際公開公報第2008/045905号
【特許文献27】国際公開公報第2008/016893号
【特許文献28】国際公開公報第2007/136921号
【特許文献29】国際公開公報第2007/021825号
【特許文献30】国際公開公報第2007/130626号
【特許文献31】国際公開公報第2007/106192号
【特許文献32】国際公開公報第2007/101347号
【発明の概要】
【0006】
一局面では、本発明は、N-{1S-[2R-(6,6'-ジフルオロ-3'-{4S-ヒドロキシ-1-[2S-(2S-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2R-イルメチル}-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル)-4S-ヒドロキシ-ピロリジン-1-カルボニル]-プロピル}-2S-メチルアミノ-プロピオンアミドおよび薬学的に許容されるその塩、ならびに本明細書において以下にさらに記載されるそのような化合物およびその塩の各種形態である。
【0007】
この化合物は以下の構造を有する:

式中、R5は-CH2CH3である。本明細書において、この化合物を化合物15とも呼ぶ。
【0008】
関連する局面では、本発明は、そのような化合物を含む薬学的組成物、および、増殖性障害の処置をそれを必要とするヒトまたは非ヒト哺乳動物対象において行う方法であって、有効量の該化合物または薬学的に許容されるその塩を該対象に体内投与する段階を含む方法を含む。
【0009】
他の局面では、本発明は、増殖性障害の処置をそれを必要とする哺乳動物、例えばヒトまたは伴侶動物、食用動物もしくはスポーツ用動物において行う方法であって、有効量の化合物15または薬学的に許容されるその塩を該動物に体内投与する段階を含む方法を含む。
【0010】
別の例示的態様では、本発明は、細胞においてアポトーシスを誘導するための方法であって、該細胞と化合物15または薬学的に許容されるその塩とを接触させる段階を含む方法を含む。この態様では、細胞は例えばがん細胞でありうる。
【0011】
さらなる例示的態様では、本発明は、例えば放射線、化学療法、免疫療法、光線力学療法およびそれらの組み合わせなどの第2のがん関連治療を実行する段階をさらに含む上記方法のいずれか1つまたは複数を含む。
【0012】
さらなる例示的態様では、本発明は、自己免疫疾患の処置を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、自己免疫疾患についての状態が、アポトーシスの異常制御により引き起こされるかまたは増悪し、例えば全身性エリテマトーデス、乾癬、および特発性血小板減少性紫斑病(Morbus Werlhof)を含み、前記方法が、有効量の化合物15または薬学的に許容されるその塩を前記動物に体内投与する段階を含む、方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例4に実質的に記載のSMAC模倣体による4日間の静脈内ボーラス投与後のラットにおける平均体重減少パーセントを示す。
【図2】実施例5に実質的に記載のSMAC模倣体によるヌードマウスにおけるヒト異種移植片の処置により生じる平均腫瘍体積(2A)および体重変化(2B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明の化合物は、増殖性障害、例えば各種良性腫瘍もしくは悪性腫瘍(がん)、良性増殖性疾患(例えば乾癬、良性前立腺肥大症および再狭窄)、または自己免疫疾患(例えば自己免疫増殖性糸球体腎炎、リンパ球増殖性自己免疫応答)の処置において使用可能なSMAC模倣体である。IAPアンタゴニストで潜在的に処置可能ながんとしては、以下のうち1つまたは複数が挙げられるがそれに限定されない: 肺腺がん、膵がん、結腸がん、卵巣がん、乳がん、中皮腫、末梢神経腫、膀胱がん、膠芽腫、黒色腫、副腎皮質がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、膀胱がん、髄膜腫、神経膠腫、星状細胞腫、乳がん、子宮頸がん、慢性骨髄増殖性障害(例えば慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病)、結腸がん、内分泌がん、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、妊娠性トロホブラスト腫瘍、ヘアリーセル白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼球内黒色腫、島細胞がん、カポジ肉腫、喉頭がん、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、口唇がん、口腔がん、肝がん、男性乳がん、悪性中皮腫、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞がん、転移性扁平上皮頸部がん、多発性骨髄腫および他の形質細胞腫瘍、菌状息肉症およびセザリー症候群、骨髄異形成症候群、上咽頭がん、神経芽腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、中咽頭がん、骨肉腫および骨悪性線維性組織球腫を含む骨がん、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵がん、副鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織肉腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、松果体芽腫、精巣がん、胸腺腫、胸腺がん、甲状腺がん、腎盂および尿管移行細胞がん、尿道がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ならびにウィルムス腫瘍および他の小児腎腫瘍。
【0015】
本発明のいくつかの態様は、細胞、特に病理学的に増殖性の細胞のアポトーシスを誘導することを含む。方法はインビトロまたはインビボで行うことができる。
【0016】
本発明の方法は、本発明の化合物の単独投与、IAPアンタゴニストの組み合わせの投与、または1つもしくは複数のさらなるIAPアンタゴニスト有りまたは無しでの本発明の化合物、および1つもしくは複数のさらなる化学療法薬の投与を含みうる。複数の薬剤の投与は同時でも逐次でもよい。有用な化学療法薬としてはアルキル化剤(例えばシクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン)、細胞骨格破壊剤(例えばパクリタキセル、ドセタキセル)、エポチロン(例えばエポチロンA、エポチロンB、エポチロンD)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えばエトポシド、テニポシド、タフルポシド(tafluposide))、ヌクレオチド類似体前駆体類似体(例えばアザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン)、ペプチド抗生物質(例えばブレオマイシン)、白金系薬剤(例えばカルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン)、レチノイド(例えばオールトランスレチノイン酸)、ならびにビンカアルカロイドおよび誘導体(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、化学療法薬としてフルダラビン、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、カンプトテシン、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、アムサクリン、ミトキサントロン、5-フルオロ-ウラシルまたはゲムシタビンが挙げられる。
【0017】
本発明のいくつかの態様では、本発明の化合物を単独または1つもしくは複数の他の薬学的有効成分との組み合わせで含む薬学的組成物をヒト対象または獣医学的対象に投与する。薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、例えば担体または希釈剤を典型的に含み、全身経路、局所経路または経口経路を含む経路により慣習的に投与することができる。投与は、通常はボーラスまたは点滴のいずれかとしての静脈内注射によるが、他の投与経路が排除されるわけではない。静脈内製剤は、pH5の滅菌0.05Mクエン酸緩衝PBS中1mg/mLの化合物15でありうる。具体的な投与様式は、適応症、および投与される特定の化合物を含む他の要因に依存する。投与される化合物の量は、治療上有効な量である。投与される投与量は、処置される対象の特徴、例えば処置される特定の患者、年齢、体重、健康、もしあれば併用処置の種類に依存する。処置の頻度は当業者(例えば臨床医)が容易に決定することができる。
【0018】
典型的には、本発明の化合物を、点滴を例えば含む静脈内注射により約1〜約120分、例えば約30分かけて投与する。
【0019】
本発明の薬学的組成物は、薬学的有効成分、すなわち本発明の化合物が十分に純粋である組成物であり、その他の点では、組成物はヒトまたは他の動物への体内投与に好適である。それは単位剤形、すなわち対象への単回投与に好適な形態で調製することができる。したがって、例えば静脈内単位剤形の薬学的組成物はバイアルまたは事前充填シリンジを含みうるものであり、これらはそれぞれ、1つのバイアルまたはシリンジの内容物が一度に投与されるように有効量、または有効量の好都合な画分を含む。例えば腫瘍退縮の累積有効量を実現するために、必要であればある期間にわたって1日当たり最大約4回そのような投与を繰り返すことができる。投与計画は、処置が有効である限りの、例えば疾患が進行するかまたは薬物が耐容されなくなるまでの、例えば毎日もしくは週2回の静脈内注射、または例えば3週間オンおよび1週間オフのサイクルでの週1回の注射でありうる。各注射において投与される有効量は、有効でかつ耐容される量であり、例えば0.01〜30mg/m2、例えば0.2〜10mg/m2または例えば0.5〜5mg/m2でありうる。
【0020】
本発明の化合物は局在的に、例えば分離式肢灌流で適用することもできる。本発明の化合物は局所的に、例えばクリーム剤、ゲル剤、ローション剤もしくは軟膏剤として、またはリザーバもしくはマトリックス型パッチで、または能動的経皮送達系で適用することもできる。
【0021】
有効量は、例えば1週間またはそれより長い、例えば3週間オン/1週間オフの複数の過程でありうる治療過程にわたって、増殖性障害の処置、すなわち疾患進行速度の低下、疾患進行の終止、または退縮もしくは寛解を生じさせる用量である。
【0022】
使用される薬学的組成物は、治療有効量の先に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは他の形態を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と共に含む。「薬学的組成物」という語句は、医療用途での投与に好適な組成物を意味する。特定の患者に適した剤形、投与量および投与経路の決定が薬学分野および医療分野の当業者の水準内であると認識すべきである。
【0023】
非経口投与に好適な組成物は、レシピエントの血液と等張性であることが好ましい本発明の化合物の滅菌水性製剤を好都合に含む。この水性製剤は、緩衝剤を含みうる好適な担体または希釈剤を使用する公知の方法に従って調剤することができる。
【0024】
以下でさらに詳細に説明する同席療法または組み合わせ療法を実施する場合、本発明の化合物および組成物の投与は、化学療法薬または放射線が系を本発明の化合物および組成物に対して感作させる限り、化学療法または放射線と同時か、その後かまたはその前に行うことができる。
【0025】
本発明はまた、化学増強剤としての本化合物および組成物を他の処置アプローチと共に使用することに関する。「化学増強剤」という用語は、化学物質もしくは処置薬、すなわち「化学療法薬」もしくは「化学薬」、または放射線処置に対する生物、組織または細胞の感受性を増大させるように作用する薬剤を意味する。したがって、本発明の化合物および組成物は、生物学的薬剤もしくは化学療法薬との組み合わせでそれらを投与すること、または放射線との組み合わせでそれらを使用することにより、腫瘍成長をインビボで阻害するために使用することができる。これらの用途において、処置される部位の感作を引き起こすために、本発明の化合物および組成物の投与を事前にかつ十分な時間をかけて行うことができる。あるいは、本発明の化合物および組成物を放射線および/またはさらなる化学的抗がん薬(下記)と同時に使用することもできる。そのような系は、本発明の化合物および組成物の反復投与を回避することで対象および医師の利便性を増大させることができ、本発明のある種の組成物に特に好適でありうる。
【0026】
生物学的薬剤および化学療法薬/抗悪性腫瘍薬ならびに放射線は、外因性または内因性アポトーシス経路を活性化することでアポトーシスを誘導するものであり、本発明の化合物および組成物がアポトーシスタンパク質アンタゴニスト(IAP)を除去し、これによりアポトーシスの遮断を除去することから、化学療法薬/抗悪性腫瘍薬および放射線と本発明の化合物および組成物との組み合わせは、アポトーシスを促進するために相加的または相乗的に働くはずである。
【0027】
本発明の化合物と、外因性または内因性経路を活性化する任意の種類の生物学的薬剤もしくは化学療法薬/抗悪性腫瘍薬および/または放射線療法との組み合わせは、腫瘍細胞の破壊に対する最も有効なアプローチを与えることができる。本発明の化合物は、XIAP、cIAP-1、cIAP-2、ML-IAPなどのIAPと相互作用し、アポトーシスのIAP媒介性遮断を除去する。大部分の化学療法薬/抗悪性腫瘍薬および/または放射線療法は、内因性アポトーシス経路を活性化することで分裂が活発な細胞を死滅させて、アポトーシスおよび細胞死を導く。TRAIL (TNF関連アポトーシス誘導リガンド)などの生物学的抗腫瘍薬は外因性アポトーシス経路を活性化する。以下でさらに詳細に説明するように、本発明の態様は、望まれない細胞増殖に対する相乗作用を与える、本発明の化合物と生物学的薬剤もしくは化学療法薬/抗悪性腫瘍薬および/または放射線との組み合わせを提供する。本発明の化合物と生物学的薬剤もしくは化学療法薬/抗悪性腫瘍薬および/または放射線療法との間のこの相乗作用は、生物学的薬剤もしくは化学療法薬/抗悪性腫瘍薬および/または放射線療法の効率を改善することができる。これは、現行の生物学的薬剤もしくは化学療法薬/抗悪性腫瘍薬または放射線処置の有効性の増大を可能にすることで、治療に応答する腫瘍の割合の増加、腫瘍応答の改善、および潜在的には、腫瘍を処置するために必要な生物学的薬剤もしくは化学療法薬/抗悪性腫瘍薬の用量の減少を可能にすることによって、より耐容可能な用量の生物学的薬剤もしくは化学療法薬/抗悪性腫瘍薬および/または放射線の使用を許容する。
【0028】
本発明の一態様では、膀胱がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、膵がん、胃がん、結腸がん、卵巣がん、腎がん、肝細胞腫、黒色腫、リンパ腫、肉腫およびそれらの組み合わせなどであるがそれに限定されない腫瘍の新生物増殖性病態の処置のために、併用または先行の放射線または化学療法に患者を供する時点で、本発明の化合物または薬学的組成物を投与することにより、患者を処置する。
【0029】
本発明の別の態様では、生物学的薬剤もしくは化学療法薬との組み合わせで、かつ/または放射線療法、免疫療法および/もしくは光線力学療法との組み合わせでの使用において、本発明の化合物または組成物を投与することで、アポトーシスを促進しかつ化学療法薬、放射線療法、免疫療法および/または光線力学療法の有効性を強化することができる。
【0030】
本発明の態様は、がんに罹患した患者を生物学的薬剤または化学療法薬の同時または併用投与により処置する方法も含む。そのような生物学的薬剤または化学療法薬としては、参照により本明細書に組み入れられる"Modern Pharmacology with Clinical Applications", Sixth Edition, Craig & Stitzel, Chpt. 56, pg 639-656 (2004)に記載の化学療法薬が挙げられるがそれに限定されない。化学療法薬はアルキル化剤、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、タキサンなどの植物由来生成物、酵素、ホルモン薬、シスプラチンなどの種々の薬剤、モノクローナル抗体、グルココルチコイド、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、インターフェロンなどの免疫調節薬、細胞成長因子、サイトカイン、ならびに非ステロイド性抗炎症化合物(NSAID)、細胞成長因子およびキナーゼ阻害剤でありうるがそれに限定されない。化学療法薬の他の好適な分類としては有糸分裂阻害剤および抗エストロゲン剤が挙げられる。
【0031】
好適な生物学的薬剤および化学療法薬の具体例としてはシスプラチン、カルムスチン(BCNU)、5-フルオロウラシル(5-FU)、シタラビン(Ara-C)、ゲムシタビン、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、トポテカン、エトポシド、パクリタキセル、ビンクリスチン、タモキシフェン、TNF-α、TRAILならびに分子のTNFスーパーファミリーの他のメンバー、すなわちTRAILおよびTNF-α以外のメンバー、インターフェロン(そのαおよびβ形態での)、サリドマイド、レナリドミドなどのサリドマイド誘導体、メルファラン、ならびにPARP阻害剤が挙げられるがそれに限定されない。好適な化学療法薬の他の具体例としては、シクロホスファミドなどのナイトロジェンマスタード、アルキルスルホン酸塩、ニトロソウレア、エチレンイミン、トリアゼン、葉酸アンタゴニスト、プリン類似体、ピリミジン類似体、アントラサイクリン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、タキサン、グルココルチコイド、L-アスパラギナーゼ、エストロゲン、アンドロゲン、プロゲスチン、黄体ホルモン、オクトレオチド酢酸塩、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、ミトタン、ヘキサメチルメラミン、カルボプラチン、ミトキサントロン、モノクローナル抗体、レバミゾール、インターフェロン、インターロイキン、フィルグラスチムおよびサルグラモスチムが挙げられる。
【0032】
本発明の別の態様は、本発明の化合物または組成物とそれらのアポトーシス誘導作用を増強するトポイソメラーゼ阻害剤との組み合わせの使用に関する。トポイソメラーゼ阻害剤は、DNAの複製および修復を阻害することによりアポトーシスを促進するものであり、化学療法薬として使用される。トポイソメラーゼ阻害剤は、DNA修復プロセスに必要な酵素を阻害することでDNA損傷を促進する。したがって、ミトコンドリアから細胞サイトゾル中へのSmacの搬出は、トポイソメラーゼ阻害剤が引き起こすDNA損傷により誘発される。I型クラス(カンプトテシン、トポテカン、SN-38(イリノテカン活性代謝物)およびII型クラス(エトポシド)の両方のトポイソメラーゼ阻害剤が、本発明の化合物との強力な相乗作用を示すと予想される。使用可能なトポイソメラーゼ阻害剤のさらなる例としてはイリノテカン、トポテカン、エトポシド、アムサクリン、エキサテカン(exatecan)、ギマテカン(gimatecan)などが挙げられるがそれに限定されない。他のトポイソメラーゼ阻害剤としては例えばアクラシノマイシンA、カンプトテシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エリプチシン、エピルビシンおよびミトキサントロンが挙げられる。
【0033】
本発明の別の態様は、本発明の化合物または組成物と非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)との組み合わせの使用に関する。
【0034】
本発明の別の態様では、本発明の化合物および組成物との組み合わせで使用される化学療法薬/抗悪性腫瘍薬は白金含有化合物でありうる。本発明の一態様では、白金含有化合物はシスプラチンである。シスプラチンは、本発明の化合物と相乗作用を示し、XIAP、cIAP-1、c-IAP-2、ML-IAPなどであるがそれに限定されないIAPの阻害を増強することができる。別の態様では、白金含有化合物はカルボプラチンである。カルボプラチンは、本発明の化合物と相乗作用を示し、XIAP、cIAP-1、c-IAP-2、ML-IAPなどを含むがそれに限定されないIAPの阻害を増強することができる。別の態様では、白金含有化合物はオキサリプラチンである。オキサリプラチンは、本発明の化合物と相乗作用を示し、XIAP、cIAP-1、c-IAP-2、ML-IAPなどを含むがそれに限定されないIAPの阻害を増強することができる。
【0035】
白金化学療法薬はDNA修飾剤の一般群に属する。DNA修飾剤は、核酸およびタンパク質における各種求核性基と結合する任意の高度に反応性の化学物質でありうるものであり、変異原性作用、発がん性作用または細胞毒性作用を引き起こしうる。DNA修飾剤は、異なる機構、すなわちDNA機能の破壊および細胞死; DNA損傷/DNAにおける原子間の架橋または結合の形成; ならびに変異を導くヌクレオチドの誤対合の誘導によって働くことで、同一の最終結果を実現する。白金含有DNA修飾剤の3つの非限定的な例はシスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンである。
【0036】
本発明のさらに別の態様は、本発明の化合物または組成物とTRAILもしくはTRAILアゴニスト抗体、またはTRAIL受容体に結合しかつそれを活性化する他の化学的もしくは生物学的薬剤との治療上の組み合わせ、または組み合わせでの治療上の使用である。多くのがん細胞の種類がTRAIL誘導性アポトーシスに感受性がある一方で、大部分の正常細胞はTRAILのこの作用に抵抗性があるようである。TRAIL抵抗性細胞は、受容体の損失、デコイ受容体の存在、DISC形成の間にチモーゲンカスパーゼ8結合をめぐって競合するFLIPの過剰発現、ならびにXIAPによる活性化カスパーゼ3および/またはカスパーゼ9の阻害を含む種々の異なる機構により生じうる。TRAIL抵抗性において、本発明の化合物または組成物は、TRAILに対する腫瘍細胞の感受性を増大させて細胞死の亢進を導くことができ、その臨床的相関は、TRAIL抵抗性腫瘍におけるアポトーシス活性の増大、臨床応答の改善、応答持続時間の増大、および最終的には患者生存率の向上であると予想される。
【0037】
本発明の別の態様では、化合物15をサイトカイン、例えばTNFαとの組み合わせで投与する。
【0038】
本発明の化合物および組成物を使用して、放射線療法(radiation therapy)(または放射線療法(radiotherapy))、すなわち悪性細胞を制御するがん処置の一部としての電離放射線の医学的使用を強化することもできる。放射線療法は、根治療法の一部としてしばしば使用されるが、治癒が不可能であって目的が症状の軽減である対症療法として時折使用される。放射線療法は腫瘍の処置に一般的に使用される。それは一次療法として使用可能である。放射線療法と手術および/または化学療法とを組み合わせることも一般的である。放射線療法で処置される最も一般的な腫瘍は、乳がん、前立腺がん、直腸がん、頭頸部がん、婦人科腫瘍、膀胱がんおよびリンパ腫である。一般的に、放射線療法は、腫瘍に関与する局在的な区域にのみ適用される。多くの場合、放射線照射野は流入領域リンパ節も含む。身体全体または皮膚表面全体に放射線療法を施すことは可能だが一般的ではない。放射線療法は通常、1日最大35〜38画分について施す(1日量は1画分とする)。これらの少なく高頻度の線量は、健康細胞に、再び成長して放射線が与えた損傷を修復するための時間を与える。放射線療法の3つの主要区分は、外部ビーム放射線療法または遠隔療法、近接照射療法または密封線源放射線療法、および非密封線源放射線療法であり、これらはいずれも本発明における処置プロトコールの好適な例である。差異は放射線源の位置に関連しており、外部線源は身体の外側にあり、一方、密封および非密封線源放射線療法では放射性物質が体内送達される。近接照射療法の密封線源は通常、後になって摘出され、一方、非密封線源は体内に注入される。
【0039】
化合物15は、酸付加塩および/または塩基付加塩を含むがそれに限定されない薬学的に許容される塩を形成可能である。そのような塩は本発明のすべての局面内に含まれる。
【0040】
本発明は、合成化学者に周知の技術などの実験室技術を使用してインビトロで合成されるかまたは例えば代謝、発酵、消化などを通じたインビボ技術を使用して合成される、化合物15を包含するように意図されている。本発明の化合物がインビトロおよびインビボ技術の組み合わせを使用して合成可能であるということも企図される。
【0041】
本発明は、自然界に通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子で1個または複数の原子が代替されているという事実を除けば化合物15と同一である同位体濃縮化合物も含む。本発明に含まれうる異性体の例としては、2H、3H、13C、14C、15N、16O、17O、31P、32P、35S、18Fおよび36Clなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の異性体が挙げられる。重水素、すなわち2Hなどのより重い同位体による置換も含まれる。一般に、本発明の同位体濃縮化合物は、容易に入手可能な異性体標識試薬で非異性体濃縮試薬を置換することで調製することができる。例えば、水素化ホウ素ナトリウムをd4-水素化ホウ素ナトリウムで置換するかまたはヨードメタンをd3-ヨードメタンで代替することで、重水素の組み込みを達成することができる。具体的な重水素化類似体およびそれらの調製の代表例は実施例1において説明する。
【0042】
化合物15は非溶媒和形態、および水和形態を含む溶媒和形態で存在しうる。さらに、化合物15は、結晶形態、半結晶形態および非晶質(非結晶)形態を含む各種固体状態、ならびにクラスレート、プロドラッグ、多形、生物加水分解性エステル、ラセミ混合物、非ラセミ混合物の形態で、または光学的に純粋な鏡像異性体およびジアステレオマーを含むがそれに限定されない精製された立体異性体として存在しうる。一般に、すべてのこれらのおよび他のそのような形態は、化合物15という用語の範囲内に包含されるように意図されている。
【0043】
本明細書および特許請求の範囲における化合物15および本発明の化合物ならびに他の同様の語句に対する言及は、式(I)の化合物だけでなく、化合物15の薬学的に許容される塩、ならびに該化合物またはその塩の各種形態、例えば上記のおよび下記の形態も含むように意図されている。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、化合物15の合成における中間体として有用な化合物、ならびにそのような中間体および化合物15を調製するための方法を含む。例えば、そのような態様では、本発明は、以下の実施例に示す化合物、例えば化合物9、10、11、12、13、14、および同位体濃縮化合物、例えば化合物18〜32を含む。1つのそのような態様は、ピロリジン部分上の4-OH置換基が保護基で保護された化合物15である。例示的な保護基は、以下の化合物11〜14に示すアセチル基である。他の有用な保護基は当業者には明らかであり、例えばベンゾイル基、ベンジル基、トリメチルシリル基およびトリフェニルメチル基を含む。以下のスキームXIIIおよびXIVに示すように、保護基は、例えば保護された中間体と酸または塩基とを接触させることで除去される。したがって、本発明は、化合物15の構造を有する化合物、ならびに、N末端がカルバメート部分で保護されかつ/または遊離ヒドロキシル基がエステルとして保護された、化合物15の保護されたバージョン、例えば化合物13および14を含み、そのような化合物を本明細書では保護された化合物15と呼ぶ。本発明はさらに、保護された化合物15と酸または塩基とを接触させて保護された化合物15を脱保護することにより、保護基を除去して化合物15を得る工程を含む。本発明の同位体濃縮化合物は、化合物15の重水素化形態、例えば化合物20、29および32を含む。そのような化合物の保護された形態、例えば化合物19、28および31も本発明内に含まれる。
【実施例】
【0045】
以下の調製例およびスキームは、本発明の化合物の合成を例示するものである。これらのスキーム全体を通じておよび一般に本出願において使用する略語を以下の表において同定する。



【0046】
実施例1 - 合成

4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ)-ピロリジン-1,2-ジカルボン酸1-ベンジルエステル(2)
Z-Hyp-OH (1、300g、1.13mol)、TEA (395mL、2.83mol)およびDBU (17.2g、1.13mol)のDMF (1.25L)溶液を冷水浴中で攪拌し、その間、TBS-Cl (188g、1.24mol)のDMF (270mL)懸濁液を21〜26℃でゆっくりと加えた[注: 中程度に発熱]。得られた希薄懸濁液を周囲温度で22時間攪拌した。反応混合物を2℃に冷却し、26℃以下の水(1.54L)で反応停止させた[注: 水層のpHは8.5〜9.0であった]。MTBE (3L)を加え、混合物を17〜19℃で濃HCl (168g)によってpH 3〜4に酸性化した。有機層を分離し、水(2x1.5L)で洗浄した。有機層を減圧濃縮し、さらなるMTBE蒸留により乾燥させた。トルエン(2x 500mL)を加え、蒸留して水分を除去することで、603gの2を明黄色油状物として得た[注: KF分析による含水量は508ppmであった]。2の小さい試料を固体に乾燥させることに基づいて、2の含有重量は412gであった(収率96%、純度について補正せず)。

【0047】

4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ)-2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-カルボニル)-ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルエステル(3):
Z-Hyp(OTBS)-OH (2、55.5g、145mmol)をトルエン(265mL)に溶解させた。DMF (0.1mL)および塩化オキサリル(22.4g、174mmol)を周囲温度で加えた。2〜3時間後、バブリングを停止させた。4時間後、混合物を減圧濃縮(65℃浴、約30分)して明黄色溶液95gを得た。これは1H NMR分析により酸塩化物であると確認された。
【0048】
6-フルオロインドール(39.2g、290mmol)を無水クロロベンゼン(300mL)およびトルエン(200mL)に溶解させ、氷/アセトン浴を用いて溶液を-4℃に冷却した。3M EtMgBrのジエチルエーテル(101g、294mmol)溶液を2.5℃以下で31分かけて加えて淡琥珀色溶液を得た。30分後、酸塩化物/トルエン溶液(上記参照)を2℃未満で45分かけて加えた。反応混合物を1時間冷温に維持した後、ゆっくりと昇温した。約4時間後(10.6℃)、反応混合物を氷HOAc (9.0g、発熱から17.5℃)、次に水(発熱)で反応停止させた。水(200mL)およびEtOAc (300mL)を加え、有機層を分離し、水で洗浄した(100mL、緩徐な分離)。有機層を減圧濃縮して227gの3を琥珀色油状物として得て、これをさらに精製せずに使用した。

【0049】

2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-カルボニル)-4-ヒドロキシ-ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルエステル(4)
3 (227g)をTHF (600mL)中に含む溶液にTHF (160mL)中1M TBAFを周囲温度で加えた。9時間後、1M TBAF/THF溶液をさらに20mL加えた。約48時間後、反応混合物を減圧濃縮した後、EtOAc (600mL)に再溶解させた。有機溶液を水(310mL)で洗浄し、生成物を析出させて濃厚懸濁液を形成し、これを濾過した(緩徐)。固体をEtOAc (165mLを数回に分けて)で洗浄し、乾燥させて43gの4を得た。一緒にした濾液を減圧濃縮して、乾燥後にさらに4.8gの4を析出させた。

【0050】

2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-カルボニル)-4-(4-ニトロ-ベンゾイルオキシ)-ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルエステル(5)
4 (51.1g、134mmol)、4-ニトロ安息香酸(27.9g、167mmol)およびトリフェニルホスフィン(48.9g、187mmol)を無水THF (700mL)およびDMF (175mL)中に含む溶液を2℃に冷却した。DIAD (37.4mL、194mmol)を2〜3℃で1時間かけて加えた。1時間後、溶液を周囲温度に昇温した。約16時間後、反応混合物を減圧濃縮し、MeOH (250mL)を加え、濃縮して濃厚懸濁液(322g)を形成した。さらなるMeOH (250mL)を加え、溶液を減圧濃縮して濃厚懸濁液(420g)を得て、これを氷浴中で冷却した。約1.5時間後、固体を真空フィルター上で回収し、冷MeOH (190mL)で洗浄した。生成物をフィルター上で風乾させて82.9g (100%超)の5を明黄色固体として得て、これを次の反応において直接使用した。

【0051】

2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-カルボニル)-4-ヒドロキシ-ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルエステル(6)
5 (82.9g)のTHF (600mL)、MeOH (200mL)および水(100mL)中懸濁液に50% NaOH水溶液(16.0 g, 200 mmol)を加えた[注: 発熱; 温度上昇: 23.7℃→25.9℃]。2時間後、氷HOAc (5.3g)を加えてpHを7〜8に調整し[注: 橙色溶液は淡黄色に変化した]、反応混合物を減圧濃縮した。水(500mL)を加え、濃縮懸濁液が形成されるまで溶媒を減圧除去した。固体を真空フィルター上で回収し、水(400mLを数回に分けて)で洗浄した。固体を真空オーブン中にて55℃で乾燥させて42.6g (83%、2工程)の6を帯黄白色固体として得た。

【0052】

2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イルメチル)-4-ヒドロキシ-ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルエステル(7)
6 (10.1g、26mmol)の無水THF (200mL)懸濁液にTHF (26.2mL、52mmol)中2M LiBH4を約7分かけて加えた[注: 発熱; 温度上昇: 21.5℃→28.2℃]。2.5時間後、淡黄色溶液を約11℃に冷却し、メタンスルホン酸(4.66g、48mmol)を約4分かけて加えた[注: 発熱; 温度は14.2℃に上昇]。
【0053】
16時間後、反応混合物を氷浴中で冷却し、水(50mL)で慎重に反応停止させた[注: 水の添加は発熱性であり、大量のガスを放出させた]。水の添加後、pHを濃HCl (1.9g)で1に調整した。反応混合物を濃縮してTHFを除去し、水溶液をEtOAc (110mL)で抽出した。有機層を分離し、水(2x50mL)で洗浄した[注: 最終pHは約5]。有機溶液を減圧濃縮し、無水EtOAcを使用して共沸乾燥させて10.2gの7を白色泡状物として得た[注: HPLC分析により87.7 A%]。

【0054】

4-アセトキシ-2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イルメチル)-ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルエステル(8)
7 (4.7g、12.8mmol)およびDMAP (81mg、0.66mmol)をDCM (100mL)中に含む溶液に無水酢酸(2.6g、25.5mmol)を周囲温度で加えた。16時間後、反応混合物をMeOH (約3mL)で反応停止させ、10% Na2CO3水溶液(50mL)、希HCl (50mL)および10% Na2CO3水溶液(50mL)で連続洗浄した。有機溶液を減圧濃縮し、ショートシリカゲルカラム(約25g)を通じて濾過した[溶離液: DCM (200mL)→0.5%(v/v) MeOH/DCM (80mL)→2% MeOH/DCM (100mL)→5% MeOH/DCM (100mL)]。生成物含有画分を一緒にし、濃縮して3.28g (63%)の8を白色泡状物として得た[注: HPLC分析により94.3 A%]。

【0055】

4-アセトキシ-2-[3'-(4-アセトキシ-1-ベンジルオキシカルボニル-ピロリジン-2-イルメチル)-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル]-ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルエステル(9)
8 (2.9g、7.1mmol)をEtOAc(約5mL)中に含む溶液を氷浴中で冷却し、予め冷却したTFA (20.3mL)を一度に加えた。得られた黄色溶液を2〜4℃で攪拌した。4.75時間後、EtOAc (30mL)および25% K2CO3水溶液(80.7g)の予め冷却した混合物に、冷反応混合物を攪拌しながら移した(カニューレ経由で)。水層を分離し、EtOAc (3x30mL)で抽出し、一緒にした有機抽出物を10% Na2CO3水溶液(30g)で洗浄した。有機溶液を減圧濃縮し、無水EtOAcを使用して共沸乾燥させてインドリルインドリンジアステレオマー2.95gを黄色泡状物として得て、これを次の反応に直接使用した。質量スペクトル(ESI)、m/z 821.3 [(M)+; C46H46F2N4O8の計算値: 820.9]。
【0056】
インドリルインドリンジアステレオマー(2.95g)をEtOAc (30mL)中に含む溶液にDDQ (885mg、3.9mmol)を一度に加えた[注: 発熱; 温度上昇: 26℃→31.6℃]。3時間後、暗橙褐色反応混合物をセライト(登録商標)を通じて濾過し、続いてセライトをEtOAc (50mL)ですすいだ[注: 0.5mmol規模で行う第2の反応を後処理用に組み合わせた]。濾液を10% Na2CO3水溶液で洗浄した(2回洗浄: 74g、次に58g)。有機層を減圧濃縮して2.14gの9を明褐色固体として得た。
【0057】
セライト(登録商標)パッドをTHF (100mL)でさらにすすぎ、減圧濃縮してさらに1.12gの9をベージュ色固体として得た。一緒にした固体を酢酸イソプロピル(iPrAc、50mL)に溶解させた。iPrAc溶液を約20mLに減少させ、得られた懸濁液を還流まで昇温し、周囲温度に冷却した後、氷浴中に配置した。1時間後、固体を減圧濾取し、iPrAc (10mL)で洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて2.13g (65%、2工程)の9をベージュ色固体として得た[注: HPLC分析により約100 A%]。

【0058】

酢酸5-[3'-(4-アセトキシ-ピロリジン-2-イルメチル)-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル]-ピロリジン-3-イルエステル(10)
9 (35g、42.7mmol)を1:1 EtOAc/MeOH (400mL)中に含む懸濁液を2本の500mL Parrボトル(各約200mL)に分配し、10% パラジウム炭素(湿潤、各5000mg、Aldrich(登録商標))を装入した。反応混合物を50 PSI H2に加圧し、3時間振盪した。反応混合物をセライト(登録商標)のパッドを通じて濾過し、固体をEtOAcで洗浄した。浄化した濾液を減圧濃縮して24gの10を帯黄白色固体として得て、これを次の反応に直接使用した。

【0059】

酢酸5-{3'-[4-アセトキシ-1-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ブチリル)-ピロリジン-2-イルメチル]-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル}-1-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ブチリル)-ピロリジン-3-イルエステル(11)
Boc-Abu-OH (20.4g、100mmol)およびHATU (42.0g、110mmol)を無水NMP (150mL)中に含む溶液に0℃でNMM (16mL、150mmol)、続いて10 (24g、42mmol)のNMP (100mL)溶液を加えた。反応混合物をゆっくりと周囲温度に昇温した。16時間後、反応混合物をMTBE (1000mL)で希釈し、不均一混合物を水(500mL)で洗浄した。層を分離し、有機相は不均一懸濁液を形成した。MTBE (1000mL)およびEtOAc (500mL)を加え、現在不均一な溶液を1N HCl (2x100mL)、飽和NaHCO3水溶液(2x100mL)、ブラインで連続洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を1:1 DCM/MeOH (600mL)に溶解させ、DCM (約200mL)を50℃で留去した[注: 少量の白色析出物が観察された]。MeOH (200mL)を加え、さらなる溶媒を50℃で除去した(約200mL)。不均一混合物を-5℃で冷却した。16時間後、固体を減圧濾取し、冷MeOHで洗浄した。固体を高真空乾燥させて32gの11を帯黄白色固体として得た。

【0060】

酢酸5-{3'-[4-アセトキシ-1-(2-アミノ-ブチリル)-ピロリジン-2-イルメチル]-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル}-1-(2-アミノ-ブチリル)-ピロリジン-3-イルエステル(12):
11 (27.5g、30mmol)をDCM (200mL)中に含む溶液を0℃に冷却した。TFA (50mL)を加え、11から12への変換完了(約3時間)まで反応をLC/MS分析でモニタリングした。溶媒を減圧除去し、濃緑色残渣をEtOAc(約1L)に溶解させた。EtOAc溶液を飽和NaHCO3水溶液/氷/水混合物に慎重に注いで残留TFAを中和した。有機相を分離し、飽和NaHCO3水溶液で2回、次にブラインで1回洗浄した。一緒にした水性洗浄液をEtOAc (2x100mL)で逆抽出し、一緒にした有機抽出物を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して22gの粗生成物12を帯黄白色固体として得た。

【0061】

酢酸5-(3'-{4-アセトキシ-1-[2-(2-メチル-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2-イルメチル}-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル)-1-[2-(2-メチル-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-3-イルエステル(13)
Boc-N(Me)Ala-OH (14.6g、72mmol)およびHATU (30.4g、80mmol)を無水NMP (150mL)中に含む溶液に0℃でNMM (12mL、105mmol)を加えた後、NMP (200mL)中12 (30mmol)を加えた。得られた混合物を周囲温度に昇温した。16時間後、反応混合物をジエチルエーテル(1L)で希釈し、水(1L)、1N HCl (2x100mL)、飽和NaHCO3水溶液(2x100mL)、ブラインで連続洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して33.5gの粗生成物13を得た。
【0062】
粗生成物13をEtOH (50mL)に溶解させた後、激しく攪拌しながら50℃で水(1000mL)にゆっくりと加えて、白色固体を析出させた。不均一混合物を-5℃に冷却した。16時間後、固体を減圧濾取し、水で洗浄した。湿潤固体を50℃で高真空乾燥させて29.9gの13を帯黄白色固体として得た。

【0063】

酢酸5-(3'-{4-アセトキシ-1-[2-(2-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2-イルメチル}-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル)-1-[2-(2-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-3-イルエステル(14)
13 (28.5g、26mmol)をDCM (150mL)中に含む溶液を0℃に冷却した。TFA (50mL)を加えた。30分後、反応混合物を周囲温度に昇温し、LC/MS分析が13から14への変換完了(約4時間)を明らかにするまでモニタリングした。溶媒を減圧除去し、濃緑色残渣をEtOAc(500mL)に溶解させ、NaHCO3水溶液/氷混合物上に慎重に注いだ。水相を分離し、EtOAc (2x250mL)で逆抽出した。一緒にした有機抽出物を飽和NaHCO3水溶液、次にブラインで数回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して24gの14を明黄色固体として得た。

【0064】

N-{1S-[2R-(6,6'-ジフルオロ-3'-{4S-ヒドロキシ-1-[2S-(2S-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2R-イルメチル}-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル)-4S-ヒドロキシ-ピロリジン-1-カルボニル]-プロピル}-2S-メチルアミノ-プロピオンアミド(15)
14 (24g)をMeOH (200mL)中に含む溶液に1M NaOH (80mL)を0℃で加えた。反応混合物を脱気し、アルミ箔で包まれた窒素雰囲気下に維持した。氷浴を除去した。60分後、MeOHを減圧除去し、残渣を水(200mL)で希釈し、EtOAc (500mL)で抽出した。水相を分離し、EtOAc (2x150mL)で逆抽出した。一緒にした有機抽出物をブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して22.5gの15を明黄褐色固体として得た。
【0065】
粗生成物15 (22.5g)をMeOH (50mL)およびEtOAc (200mL)に溶解させた。ロータリーエバポレーターによる60℃での減圧蒸留で体積を減少させた(50%)。MTBE (300mL)を加え、混濁溶液を60℃に昇温した。30分後、溶液を周囲温度に冷却し、次に-5℃に維持した。
【0066】
16時間後、固体を減圧濾取し、冷25% EtOAc/MTBEで洗浄し、周囲温度で高真空乾燥させて16.6gの15を帯黄白色固体として得た。溶媒除去および減圧乾燥を経由して濾液からさらに5.5gの15を回収した。

【0067】

N-tert-ブトキシカルボニル-N-(d3-メチル)アラニン(17)
Boc-Ala-OH (16、3.5g、18.5mmol)の無水THF (50mL)溶液にNaH (2.1g、ミネラルオイル中60%、51.0mmol)を0℃で加えた。45分後、反応混合物を周囲温度に昇温し、次に45℃にさらに20分間昇温した。反応混合物を0℃に冷却し、d3-ヨードメタン(10.0g、69.0mmol)を加えた。得られた混合物を周囲温度で攪拌した。16時間後、反応混合物を水で反応停止させ、EtOAcで抽出した。有機相を廃棄し、水溶液を1N HClでpH 3に酸性化し、EtOAcで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を逆相HPLC (Dynamax 2" C18カラム; 10〜100% ACN/0.1% HOAc含有水で30分; 40mL/分)で精製して、凍結乾燥後に17 (3.6g、94%)を白色固体として得た。

【0068】

酢酸5-(3'-{4-アセトキシ-1-[2-(2-d3-メチル-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2-イルメチル}-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル)-1-[2-(2-d3-メチル-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-3-イルエステル(18)
Boc-N(d3-Me)Ala-OH (17、1.00g、4.83mmol)およびHATU (2.00g、5.30mmol)を無水NMP (20mL)中に含む溶液に0℃でNMM (0.8mL、7.20mmol)を加え、続いてNMP (20mL)中12 (粗生成物、1.73g、2.40mmol)を加えた。得られた混合物を周囲温度に昇温した。16時間後、反応混合物をジエチルエーテル(200mL)で希釈し、水(200mL)、1N HCl (2x100mL)、飽和NaHCO3水溶液(2x100mL)、ブラインで連続洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を逆相HPLC (Dynamax 2" C18カラム; 10〜100% ACN/0.1% HOAc含有水で30分; 40mL/分)で精製した。生成物含有画分を一緒にし、凍結させ、凍結乾燥させて1.1gの18 (42%)を帯黄白色固体として得た。

【0069】

酢酸5-(3'-{4-アセトキシ-1-[2-(2-d-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2-イルメチル}-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル)-1-[2-(2-d3-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-3-イルエステル(19)
18 (1.10g、1.00mmol)をDCM (15mL)中に含む溶液を0℃に冷却した。TFA (5mL)を加えた。30分後、反応混合物を周囲温度に昇温し、LC/MS分析が18から19への変換完了(約4時間)を明らかにするまでモニタリングした。溶媒を減圧除去し、濃緑色残渣をEtOAc(100mL)に溶解させ、NaHCO3水溶液/氷混合物上に慎重に注いだ。水相を分離し、EtOAc (2x50mL)で逆抽出した。一緒にした有機抽出物を飽和NaHCO3水溶液、次にブラインで数回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物19を得て、これをさらに精製せずに使用した。質量スペクトル(ESI)、m/z 897.5 [(M)+; C46H54D6F2N8O8の計算値: 897.0]。
【0070】

N-{1S-[2R-(6,6'-ジフルオロ-3'-{4S-ヒドロキシ-1-[2S-(2S-d3-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2R-イルメチル}-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イルメチル)-4S-ヒドロキシ-ピロリジン-1-カルボニル]-プロピル}-2S-d3-メチルアミノ-プロピオンアミド(20)
粗生成物19 (約1.00mmol)をMeOH (20mL)中に含む溶液に1M NaOH (2mL)を周囲温度で加えた。35分後、MeOHを減圧除去し、残渣を水(50mL)で希釈し、EtOAc (2x50mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物をブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を逆相HPLC (Dynamax 2" C18カラム; 10〜100% ACN/0.1% HOAc含有水で30分; 40mL/分)で精製した。生成物含有画分を一緒にし、凍結させ、凍結乾燥させて0.6gの20 (75%)を綿状白色固体として得た。

【0071】

2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル-d2-メチル)-4-ヒドロキシ-ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルエステル(21)
6 (3.0g、7.85mmol)の無水THF (50mL)懸濁液を0℃に冷却した。d4-NaBH4 (0.66g、15.7mmol)を一度に加えた後、BF3エーテラート(1.1mL、8.60mmol)を加えた。約10分後、氷浴を除去し、反応混合物を還流に昇温した。
【0072】
3時間後、反応混合物を氷浴中で冷却し、飽和NH4Cl水溶液(50mL)で慎重に反応停止させた。二相性混合物をEtOAcで希釈し、有機層を分離し、水(2x50mL)、次にブラインで洗浄した。EtOAc層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して3.2gの粗生成物21(>定量的)を得て、これをさらに精製せずに使用した。質量スペクトル(ESI)、m/z 371.2 [(M+H)+; C21H20D2FN2O3の計算値: 371.4]。
【0073】

4-アセトキシ-2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル-d2-メチル)-ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルエステル(22)
粗生成物21 (約7.85mmol)、Et3N (1.2g、12.0mmol)およびDMAP (50mg、触媒)をDCM (30mL)中に含む溶液に無水酢酸(0.74mL、7.85mmol)を周囲温度で加えた。3時間後、反応混合物を飽和NaHCO3水溶液(50mL)で反応停止させ、次にDCMで希釈した。DCM層を分離し、希HCl (50mL)、水(50mL)およびブライン(50mL)で連続洗浄した。有機溶液を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー[ヘキサン中30〜40%]で精製して、2.0 g (62%、2工程)の22を白色泡状物として得た。

【0074】

4-アセトキシ-2-[3'-(4-アセトキシ-1-ベンジルオキシカルボニル-ピロリジン-2-イル-d2-メチル)-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イル-d2-メチル]-ピロリジン-1-カルボン酸ベンジルエステル(23)
予め冷却した(-5℃) TFA (10mL)にインドール22 (2.0g、4.80mmol)を溶解させた。得られた黄色溶液を2時間かけてゆっくりと周囲温度に昇温した。反応混合物を減圧濃縮してTFAを除去し、インドリルインドリンジアステレオマーの粗混合物を次の反応に直接使用した。質量スペクトル(ESI)、m/z 825.4 [(M)+; C46H42D4F2N4O8の計算値: 824.9]。
【0075】
インドリルインドリンジアステレオマーをEtOAc (100mL)中に含む溶液にDDQ (0.58g、2.5mmol)を一度に加えた。15分後、暗橙褐色反応混合物を飽和NaHCO3水溶液で反応停止させた。層を分離し、有機相を飽和NaHCO3水溶液(3x50mL)およびブラインで連続洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をDCM (10mL)に溶解させた後、溶液をMeOH (50mL)で希釈した。DCMをゆっくりと減圧除去することで析出物を得て、これを減圧濾取し、冷MeOHで洗浄し、乾燥させて1.7gの23 (86%、2工程)を得た。

【0076】

酢酸5-[3'-(4-アセトキシ-ピロリジン-2-イル-d2-メチル)-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イル-d2-メチル]-ピロリジン-3-イルエステル(24)
23 (0.40g、0.48mmol)を1:1 EtOAc/MeOH (40mL)中に含む懸濁液を500mL Parrボトル中に配置し、10% パラジウム炭素 (湿潤、約200mg)を装入した。反応混合物を50 PSI H2に加圧し、3時間振盪した。反応混合物をセライト(登録商標)のパッドを通じて濾過し、固体をEtOAcで洗浄した。浄化した濾液を減圧濃縮して粗生成物24を帯黄白色固体として得て、これを次の反応に直接使用した。質量スペクトル(ESI)、m/z 555.2 [(M)+; C30H28D4F2N4O4の計算値: 554.6]。
【0077】

酢酸5-{3'-[4-アセトキシ-1-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ブチリル)-ピロリジン-2-イル-d2-メチル]-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イル-d2-メチル}-1-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ブチリル)-ピロリジン-3-イルエステル(25)
Boc-Abu-OH (224mg、1.1mmol)およびHATU (442mg、1.2mmol)を無水NMP (10mL)中に含む溶液に0℃でNMM (0.2mL、1.7mmol)、続いて24 (0.48mmol)のNMP (10mL)溶液を加えた。反応混合物をゆっくりと周囲温度に昇温した。16時間後、反応混合物をジエチルエーテル(100mL)で希釈し、混合物を水(5x50mL)、1N HCl (50mL)、飽和NaHCO3水溶液(50mL)およびブラインで連続洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を逆相HPLC (Dynamax 2" C18カラム; 10〜100% ACN/0.1% HOAc含有水で30分; 40mL/分)で精製した。生成物含有画分を一緒にし、濃縮し、凍結乾燥させて310mgの25 (70%、2工程)を綿状白色固体として得た。

【0078】

酢酸5-{3'-[4-アセトキシ-1-(2-アミノ-ブチリル)-ピロリジン-2-イル-d2-メチル]-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イル-d2-メチル}-1-(2-アミノ-ブチリル)-ピロリジン-3-イルエステル(26)
25 (310mg、0.34mmol)をDCM (20mL)中に含む溶液を0℃に冷却した。TFA (5mL)を加え、25から26への変換完了(約3時間)まで反応をLC/MS分析でモニタリングした。溶媒を減圧除去し、濃緑色残渣をEtOAc(50mL)に溶解させた。EtOAc溶液を飽和NaHCO3水溶液/氷/水混合物に慎重に注いで残留TFAを中和した。有機相を分離し、飽和NaHCO3水溶液で2回、次にブラインで1回洗浄した。一緒にした水性洗浄液をEtOAc (2x20mL)で逆抽出し、一緒にした有機抽出物を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物26 (250mg)を帯黄白色固体として得た。質量スペクトル(ESI)、m/z 725.3 [(M)+; C38H42D4F2N6O6の計算値: 724.8]。
【0079】

酢酸5-(3'-{4-アセトキシ-1-[2-(2-メチル-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2-イル-d2-メチル}-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イル-d2-メチル)-1-[2-(2-メチル-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-3-イルエステル(27)
Boc-N(Me)Ala-OH (83mg、0.41mmol)およびHATU (172mg、0.45mmol)を無水NMP (5mL)中に含む溶液に0℃でNMM (0.1mL、0.85mmol)を加えた後、NMP (5mL)中粗生成物26 (123mg、0.17mmol)を加えた。得られた混合物を周囲温度に昇温した。16時間後、反応混合物をジエチルエーテル(100mL)で希釈し、水(50mL)、1N HCl (2x50mL)、飽和NaHCO3水溶液(2x50mL)、ブラインで連続洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を逆相HPLC (Dynamax 2" C18カラム; 10〜100% ACN/0.1% HOAc含有水で30分; 40mL/分)で精製した。生成物含有画分を一緒にし、濃縮し、凍結乾燥させて170mgの27 (91%、2工程)を綿状帯黄白色固体として得た。

【0080】

酢酸5-(3'-{4-アセトキシ-1-[2-(2-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2-イル-d2-メチル}-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イル-d2-メチル)-1-[2-(2-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-3-イルエステル(28)
27 (170mg、0.15mmol)をDCM (15mL)中に含む溶液を0℃に冷却した。TFA (5mL)を加えた。30分後、反応混合物を周囲温度に昇温し、LC/MS分析が27から28への変換完了(約4時間)を明らかにするまでモニタリングした。溶媒を減圧除去し、濃緑色残渣をEtOAc(100mL)に溶解させ、NaHCO3水溶液/氷混合物上に慎重に注いだ。水相を分離し、EtOAc (2x20mL)で逆抽出した。一緒にした有機抽出物を飽和NaHCO3水溶液、次にブラインで数回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物28を明黄色固体として得た。質量スペクトル(ESI)、m/z 895.3 [(M)+; C46H56D4F2N8O8の計算値: 895.0]。
【0081】

N-{1S-[2R-(6,6'-ジフルオロ-3'-{4S-ヒドロキシ-1-[2S-(2S-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2R-イル-d2-メチル}-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イル-d2-メチル)-4S-ヒドロキシ-ピロリジン-1-カルボニル]-プロピル}-2S-メチルアミノ-プロピオンアミド(29)
粗生成物28 (0.15mmol)をMeOH (20mL)中に含む溶液に1M NaOH (5mL)を0℃で加えた。反応混合物を脱気し、アルミ箔で包まれた窒素雰囲気下に維持した。氷浴を除去した。60分後、MeOHを減圧除去し、残渣を水(20mL)で希釈し、EtOAc (50mL)で抽出した。水相を分離し、EtOAc (2x50mL)で逆抽出した。一緒にした有機抽出物をブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を逆相HPLC (Dynamax 2" C18カラム; 10〜100% ACN/0.1% HOAc含有水で30分; 40mL/分)で精製した。生成物含有画分を一緒にし、濃縮し、凍結乾燥させて110mgの29 (90%、2工程)を綿状白色固体として得た。

【0082】

酢酸5-(3'-{4-アセトキシ-1-[2-(2-d3-メチル-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2-イル-d2-メチル}-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イル-d2-メチル)-1-[2-(2-d3-メチル-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-3-イルエステル(30)
Boc-N(d3-Me)Ala-OH (17、83mg、0.41mmol)およびHATU (172mg、0.45mmol)を無水NMP (5mL)中に含む溶液に0℃でNMM (0.1mL、0.85mmol)を加えた後、NMP (5mL)中粗生成物26 (123mg、0.17mmol)を加えた。得られた混合物を周囲温度に昇温した。16時間後、反応混合物をジエチルエーテル(100mL)で希釈し、水(50mL)、1N HCl (2x50mL)、飽和NaHCO3水溶液(2x50mL)、ブラインで連続洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を逆相HPLC (Dynamax 2" C18カラム; 10〜100% ACN/0.1% HOAc含有水で30分; 40mL/分)で精製した。生成物含有画分を一緒にし、濃縮し、凍結乾燥させて160mgの30 (85%、2工程)を綿状白色固体として得た。

【0083】

酢酸5-(3'-{4-アセトキシ-1-[2-(2-d3-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2-イル-d2-メチル}-6,6'-ジフルオロ-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イル-d2-メチル)-1-[2-(2-d3-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-3-イルエステル(31)
30 (160mg、0.14mmol)をDCM (15mL)中に含む溶液を0℃に冷却した。TFA (5mL)を加えた。30分後、反応混合物を周囲温度に昇温し、LC/MS分析が30から31への変換完了(約4時間)を明らかにするまでモニタリングした。溶媒を減圧除去し、濃緑色残渣をEtOAc(100mL)に溶解させ、NaHCO3水溶液/氷混合物上に慎重に注いだ。水相を分離し、EtOAc (2x20mL)で逆抽出した。一緒にした有機抽出物を飽和NaHCO3水溶液、次にブラインで数回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物31を明黄色固体として得た。質量スペクトル(ESI)、m/z 901.5 [(M)+; C46H50D10F2N8O8の計算値: 901.1]。
【0084】

N-{1S-[2R-(6,6'-ジフルオロ-3'-{4S-ヒドロキシ-1-[2S-(2S-メチルアミノ-プロピオニルアミノ)-ブチリル]-ピロリジン-2R-イル-d2-メチル}-1H,1'H-[2,2']ビインドリル-3-イル-d2-メチル)-4S-ヒドロキシ-ピロリジン-1-カルボニル]-プロピル}-2S-メチルアミノ-プロピオンアミド(32)
粗生成物31 (0.14mmol)をMeOH (20mL)中に含む溶液に1M NaOH (5mL)を0℃で加えた。反応混合物を脱気し、アルミ箔で包まれた窒素雰囲気下に維持した。氷浴を除去した。60分後、MeOHを減圧除去し、残渣を水(20mL)で希釈し、EtOAc (50mL)で抽出した。水相を分離し、EtOAc (2x50mL)で逆抽出した。一緒にした有機抽出物をブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を逆相HPLC (Dynamax 2" C18カラム; 10〜100% ACN/0.1% HOAc含有水で30分; 40mL/分)で精製した。生成物含有画分を一緒にし、濃縮し、凍結乾燥させて100mgの32 (87%、2工程)を綿状白色固体として得た。

【0085】
実施例2、3、4および5
実施例2、3、4および5で試験した化合物を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例2A. cIAP分解アッセイ
cIAP-1およびcIAP-2の50%の分解を誘導する各種化合物の濃度(IC50)を、A375細胞における緑色蛍光タンパク質(GFP)シグナルの消失をモニタリングすることで決定した。簡潔にいえば、cIAP-1 (A375Gc1)またはcIAP-2 (A375Gc2)コード領域を含むHA2xEGFP-pcDNA3ベクターを形質移入することで、GFPタグ化cIAP-1およびcIAP-2を発現させるA375細胞系を作成した。2x104個のA375Gc1またはA375Gc2細胞を96ウェルプレート中で成長させ、様々な濃度の試験化合物で2時間処理した。インキュベーション後、細胞をトリプシン処理で回収し、DMEM-10% FBS 150μlに懸濁させた。FACScan (Becton Dickinson)を使用して全104個の細胞を分析した。GFPの蛍光は、488nmの励起フィルターを使用してモニタリングし、530nmフィルターを用いて発光を測定した。IC50は、GFPシグナルの50%が阻害された薬物の濃度として規定される。
【0088】
cIAP-1およびcIAP-2分解アッセイの結果を表2に示す。
【0089】
【表2】

これらのデータは、化合物15が有する、cIAP-2に対してcIAP-1を分解する相対効力が、化合物2、3、4および5に比べて大きいことを示す。
【0090】
実施例2B. カスパーゼ3抑制解除アッセイ
指数関数的に成長するMDA-MB-231腫瘍細胞(ATCC)をトリプシン処理で収集し、テーブルトップ遠心機中、1000 x gにて室温で10分間の遠心分離で回収した。細胞ペレットを、低張溶解緩衝液(20mM HEPES、pH7.5、10mM KCl、1.5mM MgCl2、1.0mM EDTA、1.0mM DTT) 5mLに再懸濁させることで1回洗浄し、遠心分離で再回収した。次に、完全プロテアーゼ阻害剤錠(Roche)を補充した1体積の低張溶解緩衝液にペレットを再懸濁させ、氷上で30分間膨潤させた。27ゲージ針に約50回通すことで細胞を破壊した。溶解を光学顕微鏡法でモニタリングした。溶解液を12000 x gにて4℃で10分間遠心分離して膜画分、未溶解細胞およびデブリを除去した。タンパク質濃度決定および引き続くアッセイ分析のために可溶性画分を回収した。
【0091】
低張溶解液(タンパク質25μg)、50μg/mLチトクロムcおよび10mM dATPを微量遠心管中で一緒にして、低張溶解緩衝液中9μlの最終体積とした後、試験化合物を加え、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、5μMのプロ蛍光性ローダミン110(2)系カスパーゼ3基質zDEVD-R110(2)を含む低張溶解緩衝液50μlを加え、蛍光強度を経時的にモニタリングした。チトクロムcおよびdATPの添加による溶解液の活性化は、アポトソームの形成ならびに引き続くカスパーゼ9および3の活性化を生じさせる。内在性XIAPは、この活性の大部分を阻害するものであり、活性化溶解液に対する試験化合物の添加は、カスパーゼ3によるzDEVD-R110(2)の切断時の蛍光強度の増大により測定されるように、活性化溶解液単独で生じる場合よりも多くのカスパーゼ活性を生じさせる。GraphPad Prismを使用し、蛍光強度の増大を試験化合物の異なる濃度に対してプロットすることで、IC50値を計算した。結果を表3に示す。
【0092】
【表3】

これらのデータは、化合物15が有する、XIAP機能に拮抗するための効力が、化合物2、3、4および5に比べて小さいことを示す。
【0093】
実施例3 - 細胞毒性
SKOV-3卵巣腫瘍細胞の細胞毒性データを実質的に以下のように作成した。既に記載され(Hansen, M. B., Nielsen, S. E., and Berg, K. (1989) J. Immunol. Methods 119, 203-210)、その全体が参照により本明細書に組み入れられるように、MTT (3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイは、細胞成長を測定するために使用されてきたアッセイの一例である。簡潔にいえば、SK-OV-3細胞を、10%ウシ胎仔血清アルブミンを含むマッコイ培地内で、96ウェルプレートに播種し(ウェル当たり5,000個)、37℃で終夜インキュベートした。翌日、試験化合物を様々な濃度(0.003〜10μM)で加え、プレートを37℃でさらに72時間インキュベートした。このインキュベーション時間は、異なる類似体の阻害作用を測定するために最適であった。5mg/mL MTT試薬50マイクロリットルを各ウェルに加え、プレートを37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション期間の終わりに、DMSO 50マイクロリットルを各ウェルに加えて細胞を溶解させ、マイクロプレートリーダー(Victor2 1420、Wallac、フィンランド)を535nmで使用してウェルの光学密度(OD)を測定した。細胞生存率(CS)を下記式により計算した。
CS=(処理ウェルのOD/対照ウェルの平均OD) X 100%
50% CSを生じさせる薬物濃度として規定されるCC50は、用量反応曲線が50% CS地点と交差する地点をGraphPad Prismを使用して計算することで導出した。これらの結果は、cIAP-1に結合するSmac模倣体が、がんの処置において、単剤療法としてまたは化学療法薬との組み合わせで使用可能であることを示唆している。このアッセイで試験した化合物についてのSKOV-3細胞毒性アッセイの結果を表4に示す。
【0094】
【表4】

これらのデータは、化合物15が、化合物5と同等の効力を有し、化合物2、3および4よりも強力であることを示している。
【0095】
実施例4 - 毒性
体重減少(BWL)、致死率およびさらなる毒性データを実質的に以下のように作成した。スプラーグドーリーラットに化合物15、4および5を毎日投与した(QDx4、静脈内ボーラススロープッシュ)。体重を4日目に測った。これを1日目からの変化パーセントとして示す。化合物4および5を0.3mg/Kg、1mg/Kgまたは3mg/Kgで投与し、化合物15を1、5または10mg/Kgで投与した。
BWLアッセイの結果を図1に示す。
【0096】
致死率
化合物4および5は3mg/Kgで耐容されず、動物をこの用量で死滅させた。5mg/Kgの化合物15では致死率は観察されなかった(10mg/Kgで致死率が観察された)。
【0097】
臨床結果
1mg/kg/日の化合物15では、4日間の投与後に臨床徴候は見られなかった。5mg/kg/日の化合物15で処置した動物は、1mg/kg/日の化合物4および5と同様の臨床徴候、例えば嗜眠、呼吸の増大/不規則性および心拍数の増大を示した。1mg/kgの化合物5で処置したラットは、2日目〜4日目に、脱水症、毛づくろいなしの外観、有色の鼻漏、脱毛症(頭)および過度のひっかきを含むさらなる臨床所見を示した。
【0098】
体重
1mg/Kgでは、化合物4および5を受け取った動物は体重が減少し、一方、1mg/kg/日の化合物15を受け取った動物は体重が増加した。5mg/kg/日の化合物15では、1日目〜4日目に約8%の処置関連の平均体重減少が見られた。それぞれ1mg/kg/日の化合物4および5で処置した動物において、約4%および6%の処置関連の平均体重減少が見られた。
【0099】
病態
1mg/kg/日の化合物4および5での処置後の解剖学的病態の評価により以下の知見が得られた。化合物4および5を1mg/kg/日で投与した場合の、赤血球系の重度の骨髄細胞低形成、骨髄系の軽度から中程度の細胞過形成、ならびに脛骨および胸骨における巨核球の軽度から中程度の肥大および過形成をマークした。化合物4および5では、肺は、2型肺細胞の用量関連の軽度から中程度のびまん性肥大/過形成を示し、これは肺胞マクロファージ、肥大化した細気管支上皮細胞、増殖性の血管周囲単核細胞および肥大化した臓側胸膜細胞の増加を伴った。対照的に、同一用量(1mg/kg/日)の化合物15での処置後の解剖学的病態の評価により、赤血球細胞の最小度から軽度の細胞低形成、骨髄細胞の最小度から軽度の細胞過形成、および肺における最小度の2型肺細胞肥大が同定された。
【0100】
先に記載のデータは、ラットにおいて化合物15が化合物4および5に比べて用量基準で約5倍耐容性が高いことを示している。
【0101】
実施例5 - 腫瘍体積減少および体重変化
MDA-MB-231異種移植片データを実質的に以下のように作成した。MDA-MB-231ヒト乳腺腫瘍細胞を雌ヌードマウスの乳房脂肪パッドに注射し、12日後に平均腫瘍体積約148mm3で投薬を開始した。対照群における体重減少または動物罹患性の欠如に基づくこのモデルに、腫瘍量は関係していなかった。1:1 HBSS:マトリゲル溶液200μlに懸濁させた1x107個の細胞をマウスの乳房脂肪パッドに皮下注射した。注射した細胞は当初のロットの9継代内とした。予定開始日の約1週間前から試験前腫瘍体積を記録した。腫瘍が約150mm3に達した時点で、動物を腫瘍体積によって処置群および対照群にマッチングさせ、投薬を開始する(0日目)。マウスをタグ付けし、実験全体を通じて個々に追跡する。動物には体重比で投薬した(グラム当たり0.01mL; 10 ml/Kg)。
【0102】
0日目から、動物を毎日観察し、デジタルスケール(Ohaus SP601)を使用して週2回秤量した。個々のおよび平均の体重グラム(平均体重±標準偏差)、0日目に対する平均体重変化パーセント(%vD0)および先行測定に対する平均体重変化パーセント(%vD-x)を含むデータを各群について記録し、試験完了時にプロットした。
【0103】
0日目から、腫瘍寸法をデジタルキャリパー(Fowler Ultra-Cal IV)により週2回測定し、個々のおよび平均の推定腫瘍体積(平均腫瘍体積±平均値の標準誤差)を含むデータを各群について記録した。腫瘍体積は下記式を使用して計算した: 腫瘍体積=幅2x長さx0.52。指定された試験エンドポイント(推定腫瘍体積約1cm3)に到達した個々のマウスに、その日に対応するエンドポイントまでの時間(TTE)の値を割り当てた。すべてのマウスが試験エンドポイントに到達した時点または試験開始後60日に腫瘍成長遅延(TGD)試験を終了した。試験完了時に、各処置群の中央TTE(MTTE)値(T)と対照のMTTE値(C)とを使用して下記式によりTGDおよび%TGDを計算する: TGD(日)=T-Cおよび%TGD=T-C/Cx100、ここでT-Cは処置群のMTTEと対照のMTTEとの間の差である。試験完了までに指定の体積エンドポイントに到達しなかった腫瘍動物を長期生存動物(LTS)と見なし、最終試験日に対応するTTE値を割り当てる。無腫瘍動物はTGD計算に含まれない。ログランク検定を使用して、各処置群と対照との間の生存経験全体の統計上有意な差を決定する。7日間にわたる2回の連続測定について0日目の測定値の50%以下の腫瘍体積を報告する個々のマウスを部分応答動物(PR)と見なした。試験完了までPRが持続した場合、下記式を使用して腫瘍退縮パーセント(%TR)を決定した: %TR=1-Tf/Tix100。複数のPRマウスが1つの群に生じた場合は平均値を計算した。触知可能な腫瘍を欠く個々のマウス(7日間にわたる2回の連続測定について4x4mm2未満)を完全応答動物(CR)として分類した。試験完了まで持続したCRを無腫瘍生存動物(TFS)と見なした。TFS動物をTGD計算および統計分析から除外する。対照群と処置群との間のMTTE値の統計上の差をログランク検定を使用して比較する。
【0104】
q3dx5スケジュール(3日毎の5サイクル)での20、40または60mg/Kgの単独の腹腔内注射によって化合物15を投与した。22日間のT-C値をこれらの群について計算し、これらの群のすべては対照に比べて統計上有意であるとわかった(p=0.005、p<0.0001またはp=0.0001)。20mg/Kg群では、10匹中6匹のマウスを長期生存動物と見なし、3匹のマウスにおいて部分的腫瘍退縮を報告した。40mg/Kg群では、10匹中9匹のマウスを長期生存動物と見なし、3匹のマウスにおいて部分的腫瘍退縮を報告した。60mg/Kg群では、10匹中8匹のマウスを長期生存動物と見なし、7匹のマウスにおいて部分的腫瘍退縮を報告した。
【0105】
q3dx5スケジュールで15mg/Kgの単独の腹腔内注射によって化合物5を投与した。21日間のT-C値をこの群について計算し、この群は対照に比べて統計上有意であるとわかった(p=0.002)。この群では、10匹中3匹のマウスを長期生存動物と見なし、5匹のマウスにおいて部分的腫瘍退縮を報告した。この用量レベルの有効性によって生じた長期生存動物の数は、20mg/Kgの化合物15に対して半数であった。
【0106】
MDA-MB-231異種移植片アッセイの結果を図2Aおよび2Bに示す。20mg/Kgの化合物15は、15mg/Kgの化合物5と同等の抗腫瘍活性を有していた。引き続く試験は、このモデルにおける化合物15の最小有効量が1mg/Kg未満であることを示した。体重減少は、20mg/Kgの化合物15を投与したマウスに比べて、15mg/Kgの化合物5を投与したマウスの方が大きかった。したがって、化合物15は、化合物5に対して少ない毒性で同等の有効性を有し、したがって改善された治療指数を有する。
【0107】
式1の化合物は、特に耐容性が高く、薬学的組成物、および増殖性障害または自己免疫障害を処置するための方法における使用に大変適している。特に、有効量の化合物15を少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤に加えて含む、増殖性障害の処置のための本発明の薬学的組成物は、毒性を減少させることで治療指数を改善することができる。毒性減少としては、例えば以下のうち1つまたは1つもしくは複数の任意の組み合わせが挙げられる:
・体重減少の減少、
・致死率の低下、
・赤血球系の骨髄細胞低形成の減少、
・骨髄系の細胞過形成の減少、
・巨核球の肥大および過形成の減少、
・2型肺細胞のびまん性肥大/過形成の減少、
・嗜眠の低下、
・呼吸の規則性向上、
・心拍数の増加の低減。
【0108】
上記に列挙した毒性減少は、試験動物において観察された毒性減少である。同様の、さらなるまたは異なる毒性減少がヒトにおいて観察される。減少は相対的であり、例えば、薬学的有効成分が化合物15の類似体、例えば、R5が-CH2CH3、-CH(CH3)CH3、-R-CH(OH)CH3、-S-CH(OH)CH3および-R-CH(OCH3)CH3である類似体のうち1つまたは複数である薬学的組成物の例えば同一用量または同等効力の用量での体内投与後に毒性が観察される限りにおいて相対的である。
【0109】
本明細書に記載の例および態様が例示目的のみであること、ならびに、本明細書を踏まえた様々な修正または変更が当業者に示唆されるものであり、本出願の真意および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきであることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式を有する化合物または薬学的に許容されるその塩:

式中、R5は-CH2CH3である。
【請求項2】
下記式を有する化合物または薬学的に許容されるその塩および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物:

式中、R5は-CH2CH3である。
【請求項3】
増殖性障害の処置のための、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
がんの処置のための、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項5】
滅菌注射液である、請求項2、3または4記載の薬学的組成物。
【請求項6】
単位剤形中に存在する、請求項2、3、4または5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
増殖性障害の処置をそれを必要とする哺乳動物において行う方法であって、有効量の化合物15を該動物に体内投与する段階を含む方法。
【請求項8】
増殖性障害が、肺腺がん、膵がん、結腸がん、卵巣がん、乳がん、中皮腫、末梢神経腫、膀胱がん、膠芽腫、黒色腫、副腎皮質がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、膀胱がん、髄膜腫、神経膠腫、星状細胞腫、乳がん、子宮頸がん、慢性骨髄増殖性障害(例えば慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病)、結腸がん、内分泌がん、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、妊娠性トロホブラスト腫瘍、ヘアリーセル白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼球内黒色腫、島細胞がん、カポジ肉腫、喉頭がん、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、口唇がん、口腔がん、肝がん、男性乳がん、悪性中皮腫、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞がん、転移性扁平上皮頸部がん、多発性骨髄腫および他の形質細胞腫瘍、菌状息肉症およびセザリー症候群、骨髄異形成症候群、上咽頭がん、神経芽腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、中咽頭がん、骨肉腫および骨悪性線維性組織球腫を含む骨がん、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵がん、副鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織肉腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、松果体芽腫、精巣がん、胸腺腫、胸腺がん、甲状腺がん、腎盂および尿管の移行細胞がん、尿道がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ならびにウィルムス腫瘍および他の小児腎腫瘍からなる群より選択されるがんである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
増殖性障害が、肉腫、膀胱がん、卵巣がん、乳がん、脳がん、膵がん、結腸がん、血液がん、皮膚がん、肺がんおよび骨がんからなる群より選択されるがんである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
がんが、結腸直腸がん、腎がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、乳がん、黒色腫、膠芽腫、急性骨髄性白血病、小細胞肺細胞がん、非小細胞肺がん、横紋筋肉腫および基底細胞がんより選択される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
細胞においてアポトーシスを誘導するための方法であって、該細胞と化合物15または薬学的に許容されるその塩とを接触させる段階を含む、方法。
【請求項12】
細胞ががん細胞である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
化合物15を、放射線、化学療法、免疫療法、光線力学療法およびそれらの組み合わせより選択される第2のがん治療との組み合わせで投与する段階を含む、請求項7〜12のいずれか一項または複数項記載の方法。
【請求項14】
自己免疫疾患の処置を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、自己免疫疾患についての状態が、アポトーシスの異常制御により引き起こされるかまたは増悪し、かつ全身性エリテマトーデス、乾癬および特発性血小板減少性紫斑病(Morbus Werlhof)からなる群より選択され、前記方法が、有効量の化合物15または薬学的に許容されるその塩を前記動物に体内投与する段階を含む、方法。
【請求項15】
化合物9、化合物10、化合物11、化合物12、化合物13および保護された化合物15からなる群より選択される化合物。
【請求項16】
化合物14である、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
保護された化合物15を脱保護する段階を含む、化合物15を調製するための方法。
【請求項18】
保護された化合物15が化合物14である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
化合物19、化合物20、化合物28、化合物29、化合物31および化合物32からなる群より選択される化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−532129(P2012−532129A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518560(P2012−518560)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/039976
【国際公開番号】WO2011/002684
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(507013626)テトラロジック ファーマシューティカルズ コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】