SPARC及びその使用方法
本発明は、化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答の予測又は判定方法、並びに、哺乳動物から単離したサンプル中のSPARCタンパク質もしくはSPARC RNAを検出及び定量化する工程を含む、哺乳動物の腫瘍の治療方法を提供する。本発明はさらに、腫瘍からタンパク質又はRNAを単離する手段、SPARCタンパク質又はSPARC RNAの検出及び定量化手段、コントロールRNA、並びに腫瘍内のSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルに基づいて腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌;並びに、組織及び器官における異常増殖、過形成、再造形、炎症活動を含む他の疾病の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルブミンナノ粒子製剤は、難溶性治療剤の毒性を低減することが知られている。例えば、米国特許第6537579号は、無毒性乳化剤であるアルブミン−ナノ粒子パクリタキセル製剤を開示する。
【0003】
Bristol Myers Squibbにより商標タキソール(登録商標)の名で販売される、抗癌剤パクリタキセルは、卵巣癌、肺癌、及び乳癌を含む、いくつかの癌の治療のために現在認可されている。パクリタキセルの使用の主な制限は、その難溶性である。したがって、タキソール(登録商標)製剤は、可溶化ビヒクルとしてクレモフォール(登録商標)ELを含有するが、本製剤中のクレモフォール(登録商標)の存在は、動物(Lorenz et al., Agents Actions 7, 63-67, 1987)及びヒト(Weiss et al., J. Clin. Oncol. 8, 1263-1268, 1990)における重度の過敏症反応と結び付けられている。したがって、タキソール(登録商標)を投与されている患者は、クレモフォール(登録商標)の存在によって起こる過敏症及びアナフィラキシーを低減するために、コルチコステロイド剤(デキサメタゾン)及び抗ヒスタミン薬の前投薬を必要とする。
【0004】
一方、アブラキサン(登録商標)はまた、ABI−007として知られ、クレモフォール(登録商標)が含まれていない、Abraxis Oncologyにより販売されるパクリタキセルのアルブミン−ナノ粒子製剤である。ビヒクルとしてのアルブミンナノ粒子の使用は、生理食塩水により再構築される場合、コロイドの形成をもたらす。臨床研究に基づいて、アブラキサン(登録商標)の使用は、タキソール(登録商標)と比較して、過敏症反応を低減する特徴があることが示されている。したがって、アブラキサン(登録商標)を投与されている患者には前投与は必要とされない。
【0005】
アルブミン−ナノ粒子製剤のもう一つの利点は、毒性乳化剤を除外することにより、現在可能なタキソール(登録商標)を用いた投与より、より頻繁な間隔において、より高用量のパクリタキセルを投与することが可能な点である。増加した効果が、(i)より高い耐量(300mg/m2)、(ii)より長い半減期、(iii)遷延性局所腫瘍の利用能及び/又は(iv)持続性in vivo放出の結果として、固形腫瘍中に見られ得る可能性がある。アブラキサン(登録商標)は、過敏症反応を低減する一方で、該薬剤の化学治療効果は継続又は改善される。
【0006】
コロイドナノ粒子又は200nm未満の大きさの粒子は、漏出性血管系によって腫瘍部位に集まる傾向にあることが知られている。この効果は、いくつかのリポソーム(lipsomal)製剤について記載されている(Papahadjopoulos, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88, 11460, 1991);(Gabizon, A., Cancer Res., 52, 891, 1992);(Dvorak, et al., Am. J. Pathol. 133, 95, 1988);(Dunn, et al., Pharm, Res., 11, 1016-1022, 1994);及び(Gref, et al, Science 263, 1600-1603, 1994)。腫瘍部位におけるパクリタキセルの局在性ナノ粒子は、その可溶化(クレモフォール(登録商標)を含有する)形態での薬剤投与と比較した場合、より優れた効果をもたらす腫瘍部位での徐放性薬剤放出をもたらし得る可能性がある。
【0007】
該ナノ粒子製剤は、ナノ粒子形態で少なくとも約50%の活性剤を含む。さらに、該ナノ粒子製剤は、ナノ粒子形態で少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%の活性剤を含む。さらに、該ナノ粒子製剤は、ナノ粒子形態で少なくとも約95%又は少なくとも約98%の活性剤を含む。
【0008】
オステオネクチンとしても知られる、分泌タンパク質、酸性、高システイン(Secreted Protein, Acidic, Rich in Cysteines:SPARC)は、281アミノ酸糖タンパク質である。SPARCは、カチオン(例、Ca2+、Cu2+、Fe2+)、増殖因子(例、血小板由来増殖因子(PDGF)、及び血管内皮増殖因子(VEGF))、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質(例、コラーゲンI−V及びコラーゲンIX、ビトロネクチン、並びにトロンボスポンジン−1)、内皮細胞、血小板、アルブミン、並びにハイドロキシアパタイト(hydroxyapaptite)を含む多種多様のリガンドに対する親和性を有する。SPARC発現は、発生学的に調節されており、正常な発達の間に又は損傷に応えて、再造形が起こっている組織において主に発現する(例、Lane et al., FASEB J., 8, 163-173 (1994)を参照)。高レベルのSPARCタンパク質は、発達中の骨及び歯で発現する。
【0009】
SPARCは、いくつかの侵襲性癌においてアップレギュレートされるマトリックス細胞タンパク質であるが、正常組織には存在しない(Porter et al., J Histochem. Cytochem., 43, 791(1995))。実際、SPARC発現は、種々の腫瘍の間で誘導される(例、膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸、及び乳房)。膀胱癌において、例えば、SPARC発現は進行癌に関連している。ステージT2又はより高いステージの侵襲性膀胱腫瘍は、ステージT1(又はより低いステージの表在性腫瘍)の膀胱腫瘍より、より高いレベルのSPARCを発現し、かつより乏しい予後診断を有することが示されている(例、Yamanaka et al., J. Urology, 166, 2495-2499 (2001)を参照)。髄膜腫において、SPARC発現は侵襲性腫瘍のみに関連している(例、Rempel et al., Clincal Cancer Res., 5, 237-241 (1999)を参照)。SPARC発現はまた、in situでの侵襲性乳癌病変の74.5%で検出されており(例、Bellahcene, et. al, Am. J. Pathol, 146, 95-100 (1995)を参照)、かつ浸潤性乳管癌の54.2%で検出されている(例、Kim et al., J. Korean Med. Sci, 13, 652-657 (1998)を参照)。SPARC発現はまた、乳癌における頻繁な微小石灰化に関連しており(例、上記Bellahcene et. alを参照)、SPARC発現が、骨への乳癌転移(breast metastases)の親和性の原因であり得ることを示している。SPARCはまた、アルブミンと結合することが知られている(例、Schnitzer, J. Biol. Chem., 269, 6072 (1994) を参照)。
【0010】
抗体療法は、疾病を制御するための効果的な方法であり、ここで特異的タンパク質マーカーが同定され得る。例としては、アバスチン−抗VEGF抗体、リツキサン−抗CD20抗体、及びレミケード−抗TNF抗体が挙げられる。そのようなものとして、SPARCに対する抗体は、ヒト及び他の哺乳動物の腫瘍、並びにSPARCタンパク質を発現する他の増殖性、過形成性、再造形、及び炎症性疾患を治療するための重要な治療剤に相当するだろう。さらに、イメージング剤又は造影剤と結合したSPARCに対する抗体は、該疾患の検出及び診断手段となるだろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ヒト及び他の哺乳動物の腫瘍、並びに他の増殖性、過形成性、再造形、及び炎症性疾患の治療方法の必要性が残る。さらに、化学療法剤の有効性を予測又は評価するために、ヒト又は他の哺乳動物の腫瘍の応答を予測又は判定する必要性が残る。さらに、該疾患を検出及び診断するために好適な手段が必要とされる。これら及び本発明の他の利点、並びにさらなる発明の特徴は、本明細書内に添付の発明の詳細な説明により明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測又は判定方法を提供し、ここで、該方法は、(a)哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現又はSPARC RNA発現を検出する工程、及び(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量を定量化する工程を含む。本発明は、該生物学的サンプルが腫瘍(もしくは増殖性疾患に関与する組織)から又は例えば、脳脊髄液、血液、血漿、血清もしくは尿などの体液から単離される、実施形態を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤による哺乳動物における腫瘍又は他の増殖性疾患の治療方法であって、(a)哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現又はSPARC RNA発現を検出する工程、(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量又はSPARC RNA量を定量化する工程、(d)化学療法剤又は他の抗癌剤の使用を示すレベルで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAが存在するかどうかを判定する工程、及び(e)、それが示される場合、SPARCタンパク質レベル又はSPARC RNAレベルに基づいて、治療有効量の化学療法剤又は他の抗癌剤を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答を予測するキットであって、腫瘍からのタンパク質単離手段、SPARCタンパク質の検出及び定量化手段、コントロールタンパク質、並びに腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キットを提供する。本発明はまた、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答を予測するキットであって、腫瘍からRNAを単離する手段、SPARC RNAの検出及び定量化手段、コントロールRNA、並びに腫瘍内のSPARC RNAレベルに基づいて腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キットを提供する。
【0015】
本発明は、化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答の予測又は判定方法、並びに化学療法剤による哺乳動物の腫瘍の治療方法であって、ここで、該化学療法剤は、例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、アブラキサン(登録商標)、又はそれらの組み合わせである、方法を提供する。本発明は、化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答の予測とSPARCレベルとの間に正又は負の相関が認められる、実施形態を更に提供する。
【0016】
本発明は、哺乳動物の腫瘍の応答の予測もしくは判定方法、又は化学療法剤での哺乳動物の腫瘍の治療方法であって、ここで、例えば該哺乳動物は、ヒトであり、該腫瘍は、乳房、卵巣、頭頸部、肺、結腸、膀胱又は腎臓の癌などを含むが、これに限定されない、方法を提供する。
【0017】
本発明は、治療としてのアルブミン−結合タンパク質の利用方法、治療としてのSPARC及びSPARC又はSPARC結合−タンパク質に対する抗体の利用方法、哺乳動物における疾病部位への化学療法剤の送達方法であって、ここで、該方法は、治療有効量の医薬組成物を該哺乳動物に投与する工程を含み、ここで、該医薬組成物は、アルブミン−結合タンパク質及び薬学的に許容される担体と結合することが可能な化合物と結合する化学療法剤を含む、方法を提供する。さらに、本発明は、SPARCタンパク質及び薬学的に許容される担体と結合することが可能な化合物と結合する化学療法剤を含む組成物を提供する。さらに、本発明は、SPARC認識基及び治療剤を含む送達剤であって、ここで、該治療剤は、SPARC認識基と結合している、送達剤を提供する。その上、本発明は、哺乳動物における腫瘍への化学治療剤の送達方法であって、ここで、該方法は、治療有効量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含み、ここで、該医薬組成物は、アルブミンと結合することが可能なSPARCタンパク質と結合した化学療法剤及び薬学的に許容される担体を含む方法を提供する。本発明の組成物は、小分子、大分子又はタンパク質であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
アルブミン−結合タンパク質を含む組成物に対して、局在化のさらなる機序が存在することが、今では発見されている。SPARC、キュビリン、及びTGFβなどのアルブミン−結合タンパク質は、治療剤をアルブミン−結合タンパク質の過剰発現を特徴とする疾病部位へと標的化するために使用され得る。
【0019】
本発明は、剤と結合する基の使用であって、ここで、該基は、SPARC、キュビリン、又はTGFβなどのアルブミン−結合タンパク質を結合することが可能であり、該剤は、該アルブミン−結合タンパク質が主要な役割を果たし、正常組織と比較して過剰発現している、疾病のための治療剤、造影剤、又は送達剤である、使用を提供する。好ましくは、該アルブミン−結合タンパク質が、SPARC、キュブリン、又はTGFβから選ばれる。最も好ましくは、該アルブミン−結合タンパク質がSPARCであり、該アルブミン−結合タンパク質と結合する基が、SPARC認識基である。好適なSPARC認識基としては、リガンド、小分子、抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明はまた、化学療法剤又は他の抗癌剤に対するヒトもしくは他の哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測又は判定方法を提供する。該方法は、(a)ヒト又は他の哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現を検出する工程、及び(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量を定量化する工程を含む。該腫瘍により発現したSPARC量を一度決定すれば、例えば、SPARC発現と投与された治療剤の投与量とを相関させることにより、化学療法剤の有効性が予測又は確認され得る。本発明はまた、SPARCが主要な役割を果たし、正常組織と比較して過剰発現している、疾病に対する治療剤又はイメージ剤としてのSPARCに対する抗体の使用を提供する。
【0021】
「化学療法剤に対するヒトもしくは他の哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測する工程」は、化学療法剤の投与前の応答の可能性について、臨床経験と併用した検査結果に基づいて、判断することを意味する。「化学療法剤に対するヒト又は他の哺乳動物の応答を判定する」とは、化学療法剤を投与した後の応答の可能性に関して、その応答が臨床的に又は医療分野の当業者に公知の従来の臨床的もしくは画像診断(imagining)研究によって判定され得る前に、臨床経験と併用した検査結果に基づいて、判断することを意味する。
【0022】
本明細書で用いられる場合「化学療法剤に対するヒト又は他の動物の腫瘍の応答」とは、化学療法剤により、患者が臨床的に改善した程度もしくは量、又は腫瘍の大きさもしくは悪性度が減少した程度もしくは量をいう。患者は、例えば、全身状態、身体検査、画像診断又は臨床検査結果など、客観的基準に基づいて臨床的に改善したとみなされ得る。患者はまた、例えば、痛み、障害、疲労又は精神的予後など、患者により報告される主観的基準に基づいて臨床的に改善したとみなされ得る。腫瘍サイズの大きさの減少は、原発腫瘍又は、例えば、身体検査、画像診断又は臨床値など、当分野で公知の任意の好適な手段により測定される全身腫瘍組織総量に基づき得る。「腫瘍サイズの減少」は、少なくとも約10%の変化を意味する。さらに、少なくとも約20%の変化が存在することが望ましく、好ましくは少なくとも約25%の変化、より好ましくは少なくとも約33%の変化、より好ましくは少なくとも約50%の変化、より好ましくは少なくとも約90%の変化、より好ましくは少なくとも約95%の変化、及び最も好ましくは少なくとも約99%の変化が存在する。「腫瘍の悪性度」の減少は、例えば、組織学的グレード、%腫瘍内の生存細胞、%腫瘍内の増殖性細胞、腫瘍の侵襲性、腫瘍の転移する能力又は当分野で公知の腫瘍悪性度の他の測定基準の低下を意味する。「腫瘍の悪性度の減少」は、医療分野における当業者に一般に使用される腫瘍悪性度に関連する測定可能なパラメーターの少なくとも約10%の変化を意味する。医療分野における当業者に一般に使用される腫瘍悪性度に関連する測定可能なパラメーターの、さらに、少なくとも約20%の変化が存在することが望ましく、好ましくは少なくとも約25%の変化、より好ましくは約33%の変化、より好ましくは少なくとも約50%の変化、より好ましくは少なくとも約90%の変化、より好ましくは少なくとも約95%の変化、及び最も好ましくは少なくとも約99%の変化が存在する。
【0023】
本明細書内では、用語「抵抗性(resistant)」又は「化学療法剤又は他の抗癌剤に対する抵抗性」は、治療に対する癌サンプル又は哺乳動物の獲得又は天然の抵抗性を指し、即ち治療療法に対して反応しない、又は、例えば、治療療法に対する25%以上の応答の減少を有する、治療療法に対する減少した又は限られた応答を有する抵抗性を指す。さらに、抵抗性はまた、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又はそれを超えるものから、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍又はそれを超える応答の減少により示され得る。応答の減少は、抵抗性を獲得する前と同一の癌サンプルもしくは、哺乳動物と比較することにより、又は、異なる癌サンプルもしくは治療療法に対して抵抗性を有さないことが公知の哺乳動物と比較することにより、測定される。本明細書内では、用語「感受性」又は「化学療法剤又は他の抗癌剤に対する感受性」は、抵抗性がないことを指す。
【0024】
さらに、本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤での哺乳動物における腫瘍又は他の増殖性疾患の治療方法であって、下記工程:
(a)哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現又はSPARC RNA発現を検出する工程、(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量又はSPARC RNA量を定量化する工程、(d)化学療法剤又は他の抗癌剤の使用を示すレベルで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAが存在するかどうかを判定する工程、及び(e)、もし、SPARCタンパク質レベル又はSPARC RNAレベルに基づいて、それが示される場合、治療有効量の化学療法剤又は他の抗癌剤を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0025】
本明細書内では、用語「治療(treating)」、「治療(treatment)」、「治療(therapy)」、及び「治療療法(therapeutic treatment)」は、治癒的療法(curative therapy)、予防的治療(prophylactic therapy)、又は予防的治療(preventative therapy)を指す。「予防的治療(preventative therapy)」の一例は、標的疾病(例、癌もしくは他の増殖性疾患)又はそれに関連する疾患の予防又は機会の低減である。治療を必要とする人々としては、既に疾病又は疾患を伴っている人々、並びに予防されるべき疾病又は疾患にかかる傾向にある人々が挙げられる。本明細書内では、用語「treating」、「treatment」、「therapy」、及び「therapeutic treatment」はまた、疾病、又は関連する疾患と戦うことを目的とする哺乳動物の管理及び治療を表し、症状、副作用、又は疾病の他の合併症、疾患を緩和する組成物の投与を包含する。癌のための治療療法としては、外科手術、化学療法、放射線療法、遺伝子療法、及び免疫療法が挙げられるが、これに限定されない。
【0026】
「化学療法剤の使用を示すレベルで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAが存在するかどうかを判定する工程」は、腫瘍が化学療法剤に当然応答することが期待され得ることを示す程度に、SPARCレベルのデータと治療応答との歴史的相関関係の比較に基づき、腫瘍を持つ哺乳動物由来の検体に存在する定量されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルが十分に高いことを意味する。「示す(indicating)」又は「示された(indicated)」は、SPARCレベルを考慮し、かつ適当な医学的判断に基づいて、化学療法剤が使用されるべきであることを意味する。例えば、これに限定されないが、顕微鏡スライド上の生検の薄い切片を調製することにより、抗−SPARC抗体による免疫組織学のために腫瘍の生検が調製され得る。次いで、生検スライドを、使用が考慮される化学療法剤に対して感受性及び抵抗性である他の腫瘍由来の公知のSPARCレベルの生検切片を包含するコントロールスライドと同時に、抗−SPARC免疫組織学プロトコル(例、Sweetwyne et al, J. Histochem. Cytochem. 52(6):723-33 (2004); Tai et al, J. Clin. Invest. 115(6): 1492-502 (2005)を参照)を使用して染色する。光学顕微鏡を使用して免疫組織学的染色の強度を類別することは当分野で一般的な方法である。当業者(例、病理学者)はコントロールスライドの染色との比較に基づき、腫瘍生検に対する染色段階(例、0、1+、2+、3+、4+)を割り当てることができる。腫瘍生検の染色が、例えば3+又は4+に類別される場合、化学療法剤での治療は、「示され(indicated)」得る。染色段階の該比較及び割り当ては、腫瘍を持つ哺乳動物を治療する医療分野における当業者(例、内科医、病理学者、腫瘍学者、獣医)の能力の十分範囲内である。
【0027】
「治療有効量」は、哺乳動物における疾病又は疾患の1以上の症状を(ある程度、熟練開業医により判断されたような)軽減する量を意味する。さらに、「治療有効量」は、疾病又は疾患に関連する又は原因である、生理的又は生化学的パラメーターが部分的もしくは完全に正常に戻る量を意味する。当業者の臨床医は、静脈内、皮下、腹腔内、経口的に、又は吸入を通じてなどで投与したとき、特定の病状、又は疾患を治療又は予防するために組成物の治療有効量を決定することができる。治療的に有効であるために必要な組成物の正確な量は、多くの患者に特異的な検討事項に加えて、例えば、活性剤の具体的な活性、用いられる送達装置、剤の物理的特性、投与の目的など多数の要因に起因するだろう。治療的に有効であるために投与されるべきである組成物の量の決定は、当分野において日常的であり、かつ通常技術の有る臨床医の能力の範囲内である。
【0028】
本発明に従って実行される方法は、摘出、生検、吸引、静脈穿刺(venupuncture)、又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない、任意の好適な手順により、腫瘍又は増殖性疾患に関与する組織から単離され得る生物学的サンプルを必要とする。代わりに、本発明に従って実行される方法は、例えば、脳脊髄液、血液、血漿、血清、及び尿などの体液由来であり得る、生物学的サンプルを必要とする。さらに、腫瘍及び体液物質を含む、コントロール又は基準生物学的サンプルは、同一哺乳動物の正常組織、腫瘍もしくは増殖性疾患のない他の個体又は公知のSPARCレベル並びに所定の化学療法剤に対して感受性又は抵抗性であることが知られている他の腫瘍から獲得され得る。さらに、本発明の方法は、腫瘍又は増殖性疾患に苦しむ哺乳動物がヒトであるときにも実施され得る。
【0029】
さらに、本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答を予測するキットであり、該腫瘍からのタンパク質の単離手段、SPARCタンパク質の検出及び定量化手段、コントロールタンパク質、並びに該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キットを提供する。本発明はまた、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答を予測するキットであって、該腫瘍からのRNAの単離手段、SPARC RNAの検出及び定量化手段、コントロールRNA、並びに腫瘍中のSPARC RNAレベルに基づいて該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キットを提供する。例えば、顕微鏡スライド上に該腫瘍生検の薄い切片を設置することで、腫瘍生検中の該SPARCタンパク質又はSPARC RNAは「単離され」得る。任意のSPARCタンパク質又はSPARC RNAの存在は、次いで、抗−SPARC抗体を用いた免疫組織学染色(例、Sweetwyne et al, J. Histochem. Cytochem. 52(6):723-33 (2004); Tai et al., J. Clin. Invest. 115(6): 1492-502 (2005)を参照)又はSPARC RNAに相補的である核酸プローブを使用したin situハイブリダイゼーション(例、Thomas et al., Clin. Can. Res. 6:1140-49 (2000)を参照 )により、検出及び定量化され得る。同時に、ポジティブコントロールスライド及びネガティブコントロールスライドはSPARCタンパク質又はSPARC RNAに関して染色される。当業者は容易に光学顕微鏡を使用し、該腫瘍生検における該SPARCの染色強度(例、0、1+、2+、3+、4+)を類別することができる。本発明のキットはまた、例えば、「化学療法剤による治療は、該腫瘍生検の染色が例えば3+もしくは4+に類別された場合に示される」又は「3+もしくは4+染色の腫瘍は、高い応答率を有する」など、腫瘍中のSPARCタンパク質レベル又はSPARC RNAレベルに基づいて該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む。本発明のキットの特定の実施形態に関する特定のルールは、遡及的又は予期される相関研究を実行することにより、容易に作られ得、当該ルールは、当技術分野で日常的であり過度の実験を必要としない。
【0030】
ヒトSPARC遺伝子は303アミノ酸SPARCタンパク質をコードし、一方成熟SPARCは285アミノ酸糖タンパクである。シグナル配列の開裂後、分泌型32-kDが産生され、糖鎖付加によりSDS−PAGE上の43kDに移動する。完全なSPARCタンパク質のアミノ酸配列を配列番号1(図1)に開示し、該SPARCタンパク質をコードするRNAの核酸配列を配列番号2(cDNA配列として提示する、即ち該RNAのウリジン(「U」)はチミン(「T」)として提示する)(図2)に開示する。
【0031】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は同じ意味で使用される。本発明は、例えば配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はタンパク質などのSPARCポリペプチド又はSPARCタンパク質の検出及び定量化を提供する。本発明はまた、SPARCポリペプチドの検出を提供しここで、該ポリペプチドは、配列番号1の配列由来の少なくとも約10個の連続的なアミノ酸のアミノ酸配列、好ましくは配列番号1の配列由来の少なくとも約15個の連続的なアミノ酸、より好ましくは配列番号1の配列由来の少なくとも約20個の連続的なアミノ酸、及び最も好ましくは配列番号1の配列由来の少なくとも約100個の連続的なアミノ酸を含む。さらに、本発明は、ここで、該配列は、配列番号1の対応する配列と少なくとも約80%相同、好ましくは配列番号1の対応する配列と少なくとも約90%相同、さらに好ましくは配列番号1の対応する配列と少なくとも約95%相同、並びにさらにより好ましくは配列番号1の対応する配列と少なくとも約99%相同であるポリペプチドを含むSPARCポリペプチドの検出を提供する。「配列番号1の対応する配列」は、配列番号1の配列とアラインされる配列を意味し、ここで、アライメントの領域は、少なくとも約10アミノ酸長であり、好ましくは少なくとも約15アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも約20アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも約30アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも約40アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも約50アミノ酸長であり、並びにさらにより好ましくは少なくとも約100アミノ酸長である。配列アライメントの様々な方法は、生命工学分野で公知である(例、Rosenberg, BMC Bioinformatics 6:278 (2005); Altschul et al., FEBS J. 272(20): 5101-5109 (2005)を参照)。
【0032】
本発明は、例えば、配列番号2の核酸配列を含むRNAのようなSPARC RNAの検出及び定量化を提供する。本発明はまた、SPARC RNAの検出を提供し、ここで、該RNAは、配列番号2の配列由来の少なくとも約15個の連続的なヌクレオチド、好ましくは配列番号2の配列由来の少なくとも約20個の連続的なヌクレオチドであり、並びにより好ましくは配列番号2の配列由来の少なくとも約30の連続的なヌクレオチドの塩基配列を含む。さらに、本発明は、ここで、該配列は、配列番号2の対応する配列と少なくとも約80%相同、好ましくは配列番号2の対応する配列と少なくとも約90%相同、さらにより好ましくは配列番号2の対応する配列と少なくとも約95%相同、並びにさらにより好ましくは配列番号2の対応する配列と少なくとも約99%相同である核酸を含むSPARC RNAの検出を提供する。「配列番号2の対応する配列」は、配列番号2の配列に合わせた配列を意味し、ここで、アライメントの領域は、少なくとも約15ヌクレオチド長であり、好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも約60ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも約120ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも約150ヌクレオチド長であり、さらにより好ましくは少なくとも約200ヌクレオチド長である。配列アライメントの様々な方法は、生物工学分野で公知である(例、Rosenberg, BMC Bioinformatics 6:278 (2005); Altschul et al., FEBS J. 272(20): 5101-5109 (2005)を参照)。SPARC RNAは、任意のSPARC RNAを意味し、SPARC mRNA、hnRNA、一次転写産物又はスプライスバリアントを含むが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書内で使用する「定量化」は、存在する量又は濃度の決定を意味する。本発明は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの定量化方法を提供し、ここで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAは、正常組織と比較して(該腫瘍の原因の対応する正常組織中で検出されるレベルを含むが、これに限定されない)、該腫瘍中で過剰発現又は過小発現している。あるいは、本発明は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの定量化方法を提供し、ここで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAは、他の腫瘍(同一組織の腫瘍又は組織学的に同一な腫瘍を含むが、これらに限定されない)と比較して、腫瘍中で過剰発現又は過小発現している。さらに、本発明は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの定量化方法を提供し、ここで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAは、他の腫瘍(化学療法剤又は化学療法剤の組み合わせに対して感受性又は抵抗性である腫瘍を含むが、これらに限定されない)と比較して、該腫瘍中で過剰発現又は過小発現している。過剰発現又は過小発現は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAのレベルが、2つの検体又はサンプルの間で少なくとも約5%異なることを意味する。さらに、2つの検体又はサンプルの間の差異が少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約3倍、より好ましくは少なくとも約5倍、並びに最も好ましくは少なくとも約10倍であることが望ましい。
【0034】
本発明は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの定量化方法を提供し、ここで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAは、腫瘍のない患者由来の対応する液体と比較して、試験生物学的液体中で過剰発現又は過小発現している。あるいは、本発明は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの定量化方法を提供し、ここで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAは、腫瘍(化学療法剤又は化学療法剤の組み合わせに対して感受性又は抵抗性である腫瘍を含むが、これに限定されない)を伴う別の患者由来の対応する体液と比較して、試験生物学的体液中で過剰発現又は過小発現している。過剰発現又は過小発現は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAのレベルが、2つの検体の間で少なくとも約5%異なることを意味する。さらに、差異が少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約3倍、より好ましくは少なくとも約5倍、並びに最も好ましくは少なくとも約10倍であることが望ましい。
【0035】
本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する腫瘍の応答の予測又は判定方法、腫瘍の治療方法、並びに化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、ここで、該腫瘍は、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、メラノーマ、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体腫瘍、卵巣腫瘍、外陰腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓腫瘍、腎盂腫瘍、尿管腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺腫瘍、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選ばれる。さらに、本発明は、化学療法剤に対する腫瘍の応答の予測又は判定方法、腫瘍の治療方法、並びに化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、ここで、該腫瘍は、肉腫、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌、基底細胞癌、明細胞癌、膨大細胞腫(oncytoma)又はそれらの組み合わせである。さらに、本発明は、化学療法剤に対する腫瘍の応答の予測又は判定方法、腫瘍の治療方法、並びに化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、ここで、該腫瘍は、良性腫瘍又は悪性腫瘍である。その上さらに、本発明は、化学療法剤に対する増殖性疾患の応答の予測もしくは判定方法又は増殖性疾患の治療方法を提供し、該増殖性疾患が、例えば良性前立腺過形成、子宮内膜増殖症、アテローム性動脈硬化症、乾癬又は増殖性腎糸球体症である場合を含むが、これらに限定されない。本発明は、該腫瘍又は増殖性疾患が哺乳動物においてである実施形態を提供し、該哺乳動物がヒトである場合を含むが、これに限定されない。
【0036】
本明細書内で使用する、用語「剤」又は「薬剤」又は「治療剤」は、化学物質、化学物質の混合体、生体高分子、又は治療特性を有するとみられている、細菌、植物、真菌、もしくは動物(特に哺乳動物)細胞もしくは組織などの生物学的物質から作られた抽出物を指す。剤又は薬剤は、精製され、実質的に精製され又は部分的に精製され得る。本発明による「剤」は、放射性治療剤も含む。本明細書内で使用する、用語「化学療法剤」は、癌、腫瘍、及び/又は増殖性疾患に対して活性を有する剤を指す。
【0037】
本発明に従って使用される好適な化学療法剤又は他の抗癌剤としては、チロシンキナーゼ阻害剤(ゲネステイン)、生物学的活性剤(TNF、又はtTF)、放射性核種(131I、90Y、111In、211At、32P及び他の公知の治療放射性核種)、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトセシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポシロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン(meplhalan)、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)及び誘導体、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソウレア(nitrosurea)、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、及び超白金が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本発明に従って使用される好適な化学療法剤としては、代謝拮抗剤(例、アスパラギナーゼ)、抗有糸分裂薬(例、ビンカ・アルカロイド)、DNA損傷剤(例、シスプラチン)、アポトーシス促進剤(プログラム細胞死又はアポトーシスを誘導する剤)(例、エピポドフィロトキシン)、分化誘導剤(例、レチノイド)、抗生物質(例、ブレオマイシン)、及びホルモン(例、タモキシフェン、ジエチルスチルベストロール(diethylstibestrol))が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明に従って使用される好適な化学療法剤としては、例えば、INF−α、フマギリン、アンジオスタチン、エンドスタチン、サリドマイドなど血管新生抑制剤(血管新生阻害剤)が挙げられる。「他の抗癌剤」としてはまた、生物活性ポリペプチド、抗体、レクチン、及びトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に従って使用される好適な抗体としては、共役(結合)又は非共役(非結合)抗体、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、ヒト化又は非ヒト化抗体、並びにFab’、Fab、又はFab2断片、一本鎖抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
好ましい化学療法剤としては、ドセタキセル、パクリタキセル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。「それらの組み合わせ」は、1以上の薬剤、例えば、ドセタキセル及びパクリタキセルを含む剤形の投与、並びに連続的だが時間的には明確に異なる、ドセタキセル及びパクリタキセルの投与(例、1サイクルでドセタキセルを、次にパクリタキセルを使用する)の両方を指す。特に好ましい化学療法剤は、タンパク質−結合剤の粒子を含み、ここで、該タンパク質−結合剤粒子を構成する該タンパク質はアルブミンを含み、ここで、50%を超える該化学療法剤がナノ粒子の形態であることを含むが、これに限定されない。最も好ましくは、該化学療法剤は、例えばアブラキサン(登録商標)など、アルブミン−結合パクリタキセルの粒子を含む。該アルブミン−結合パクリタキセル製剤は、本発明に従って使用され得、投与される該パクリタキセル用量は、約3週間の投与サイクルで(即ち、該パクリタキセル用量の投与は約3週間に1回)約30mg/m2から約1000mg/m2である。さらに、投与される該パクリタキセル用量は、約3週間の投与サイクルで約50mg/m2から約800mg/m2、好ましくは約80mg/m2から約700mg/m2、並びに最も好ましくは約250mg/m2から約300mg/m2であることが望ましい。
【0039】
任意の好適な生物学的サンプルは、本発明の方法の文脈における哺乳動物から単離され得、ポリペプチド及び/又はRNA検出及び定量化に使用され得る。好ましくは、該生物学的サンプルは、腫瘍生検などにより、該腫瘍から単離される。該生物学的サンプルは、当技術分野で公知の方法を使用して該哺乳動物から単離される。あるいは、該生物学的サンプルは、例えば、脳脊髄液、血液、血漿、血清、又は尿を含む、該哺乳動物の体液から単離され得る。特に、多くのタンパク質精製技術は当技術分野で公知である(例、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, pp. 421-696 (1988)を参照)。
【0040】
任意の好適なSPARCタンパク質の検出及び定量化方法は、本発明に従って使用され得、抗−SPARC抗体の使用(例、ウエスタンブロット、ELISA)(例、Sweetwyne et al., J. Histochem. Cytochem. 52(6):723-33 (2004); Tai et al., J. Clin. Invest. 115(6):1492-502 (2005)を参照)、SPARC−特異的結合タンパク質の使用(例、放射性標識SPARCリガンド、ELISA様アッセイ)、二次元電気泳動、質量分析又はそれらの組み合わせ(例、Nedelkov D et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102(31):10852-7 (2005); Chen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101 (49): 17039-44(2004) を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、免疫組織化学的検査は、サンプル中のSPARCタンパク質の単離、検出及び定量化に使用され得る(例、Sweetwyne et al., J. Histochem. Cytochem. 52(6):723-33 (2004); Tai et al., J. Clin. Invest. 115(6): 1492-502 (2005)を参照)。
【0041】
本発明は、該SPARC RNAが検出及び定量化される方法を提供する。Chomczynski 米国特許番号第5945515号)又は DiMartinoら (Leukemia 20(3):426-32 (2006)により記載された方法など、多くの方法は、RNAを単離するために当技術分野で公知である。あるいは、RNAは、組織切片を包含する顕微鏡スライドの調製により、本発明による検出及び定量化に好適な形態で単離され得る(例、Thomas et al., Clin. Can. Res. 6:1140-49 (2000) を参照)。SPARC RNAは、in situハイブリダイゼーション(例、Thomas et al., Clin. Can. Res. 6:1140-49 (2000) を参照)、ノーザンブロット(例、Wrana et al., Eur. J. Biochem. 197:519-28 (1991)を参照)、リアルタイムRT−PCR(例、DiMartino et al., Leukemia 20(3):426-32 (2006)を参照)リアルタイムNASBA法(例、Landry et al., J. Clin. Microbiol. 43(7):3136-9 (2005)を参照)、マイクロアレイ解析(例、Tai et al., J. Clin. Invest. 115(6): 1492-502 (2005); DiMartino et al., Leukemia 20(3):426-32 (2006) を参照)及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、当技術分野で公知の任意の好適な方法により、検出及び定量化され得る。
【0042】
本発明はまた、化学療法剤又は他の抗癌剤に対するヒトもしくは他の哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測及び判定方法を提供し、ここで、化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の該応答は、SPARCレベルと正又は負に相関する。「SPARCレベルと相関する」は、例えば、特定の化学療法剤に対する腫瘍の応答と検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルとの間の相互又は相反関係を意味する。即ち、該腫瘍応答の質、程度、規模、又はレベルは、検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの度合いに伴って変化する。検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの増加に伴い、該腫瘍応答の質、程度、規模、又はレベルが増加する場合に、「正の相関」が存在する。検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの増加に伴い、該腫瘍応答の質、程度、規模、又はレベルが減少する場合に、「負の相関」が存在する。腫瘍応答レベルと検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルとの間の関係は、階段関数、一次関数もしくは対数関数の形を取り得、又はこれらに近似し得る。
【0043】
さらに、本発明はまた、検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルと公知の基準サンプルにおいて検出されたそれとの比較により、化学療法剤又は他の抗癌剤に対するヒトもしくは他の哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測又は判定方法を提供する。該基準サンプルは、例えば、正常組織又は正常体液由来であり得る。あるいは、該基準サンプルは、公知のSPARCレベル、応答、特定の化学療法剤もしくは他の抗癌剤又はそれらの組み合わせに対する感受性又は抵抗性を有する腫瘍であり得る。
【0044】
さらに、予測された応答は、特定の化学療法剤が使用される又は代替化学療法剤が使用されるように、効果的又は非効果的と特徴付けられ得る。そのようなものとして、予測された応答は、別の化学療法剤の使用に対する一つの化学療法剤の使用がもたらす応答の比率(例、タキソテール(登録商標)により産生された応答に対するアブラキサン(登録商標)により産生された応答の比率)として特徴付けられる。
【0045】
本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳類の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測方法であって、下記工程;
(a)該哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質又はSPARC RNA発現を検出する工程、(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質又はSPARC RNA量を定量化する工程、並びに(d)腫瘍又は増殖性疾患のHer2状態を判定する工程、を含む方法をさらに提供する。本発明はまた、化学療法剤又は他の抗癌剤による、哺乳動物における腫瘍又は他の増殖性疾患の治療方法であって、下記工程;
(a)該哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質又はSPARC RNA発現を検出する工程、(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質又はSPARC RNA量を定量化する工程、(d)腫瘍又は増殖性疾患のHer2状態を判定する工程、(e)存在するSPARCタンパク質もしくはSPARC RNAレベル及び腫瘍又は増殖性疾患のHer2状態に基づいて、該化学療法剤又は他の抗癌剤の使用は示されるかどうかを判定する工程、並びに(f)示す場合、治療有効量の該化学療法剤又は他の抗癌剤を投与する工程、を含む方法を提供する。
【0046】
「腫瘍又は増殖性疾患のHer2状態の判定」は、Her2タンパク質又はHer2 RNAが腫瘍又は他の増殖性疾患により発現されるか否かを、腫瘍、別の増殖性疾患が存在する組織、又は他の生物学的サンプルにおけるHer2タンパク質又はHer2 RNAの発現の検出並びに存在するHer2タンパク質又はHer2 RNA量の定量化によって、判定することを意味する。Her2タンパク質又はHer2 RNAが腫瘍又は増殖性疾患により発現されるか否かの好適な判定方法としては、免疫組織化学検査、ウエスタンブロット、ELISA、二次元電気泳動、質量分析、in situハイブリダイゼーション、RNA増幅、ノーザンブロット、マイクロアレイ解析又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。Her2状態は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する応答を予測する工程又は化学療法剤又は他の抗癌剤が相加因子として又は支配因子として、陽性又は陰性のどちらを示すかどうか判定する工程に含まれ得る。例えば、Her2発現の欠如は、SPARCレベルと応答との間に正の相関がないことを示し得、一方Her2発現の存在は、SPARCレベルと応答との間に正の相関があることを示し得るが、これらに限定されない。Her2発現とその欠如との間の識別は、当業者の能力の範囲内であり、例えば、陽性及び陰性コントロールサンプルを、腫瘍又は他の増殖性疾患を伴う哺乳動物由来のサンプルと同時に実行した結果に基づき得る。
【0047】
したがって、 本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答を予測するためのキットであって、該腫瘍からのタンパク質又はRNAの単離手段、SPARCタンパク質又はSPARC RNAの検出及び定量化手段、コントロールタンパク質又はRNA、並びに該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キットを提供する。そのようなキットは、例えば、アルブミン−結合パクリタキセルのナノ粒子を含む化学療法剤に対する乳癌、卵巣癌、もしくは頭頸部癌の応答を予測するために使用され得るが、これらに限定されない。タンパク質又はRNA単離並びにSPARCタンパク質又はSPARC RNA検出及び定量化の好適な手段は、本明細書内に記載されている。好適なコントロールタンパク質又はRNAは、例えば、腫瘍を有する哺乳動物由来の腫瘍構成要素もしくは生体液、又は腫瘍を有する哺乳動物から採取された腫瘍構成要素又は生体液から単離されたタンパク質もしくはRNAなどのポジティブコントロールを含むべきである。好適なコントロールタンパク質又はRNAは、例えば、腫瘍のない哺乳動物由来の正常組織もしくは生体液、又は腫瘍のない哺乳動物から採取された正常組織又は生体液から単離されたタンパク質もしくはRNAなどのネガティブコントロールを含む。キット中のコントロールとしてはまた、SPARCタンパク質又はSPARC RNAの定量化のためのスタンダードカーブを確立するために使用される材料又は感受性もしくは抵抗性腫瘍由来の材料が挙げられ得る。本発明のキットはまた、該腫瘍のHer2状態の判定手段を含み得る。
【0048】
本発明のキットは、該腫瘍の応答の予測のためのルールをさらに含むだろう。 該ルールは、特定の化学療法剤に対する応答の予測の根拠を本明細書に記載の化学療法剤に対する応答の予測又は判定方法に関連して、検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルにおくだろう。例えば、過去の経験に基づいた特定のレベルのSPARCタンパク質又はSPARC RNAは、化学療法剤が使用されるべきことを示し得る。特定の化学療法剤に対する応答を予測するSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルを測定するための(プロスペクティブ研究、レトロスペクティブ研究又はそれらの組み合わせによる)適正なデータを、過度の実験なしに得ることは、当業者の能力の範囲内である。
【0049】
以下では、便宜上、SPARCを含む、アルブミンと結合する全てのタンパク質を、SPARCと呼ぶ。該SPARCタンパク質は、特定のヒト腫瘍におけるアルブミンの蓄積に関与する。アルブミンは化学療法剤の主要な担体であるため、SPARCの発現レベルは、該腫瘍に浸透し保持される化学療法剤量を示す。したがって、SPARCの発現レベルは化学療法に対する腫瘍の応答性を予測する。
【0050】
任意の好適な生物学的サンプルは、本発明の方法の文脈において、興味の対象である哺乳動物から単離され得る。好ましくは、該生物学的サンプルは、腫瘍生検などにより該腫瘍から単離される。あるいは、該生物学的サンプルは、例えば脳脊髄液、血液、血漿、血清又は尿を含む、該哺乳動物の体液から単離され得る。生物学的サンプルの単離技術及び方法は、当業者に公知である。
【0051】
活性剤の輸送又は結合がアルブミンを必要とする限り、任意の好適な薬学的活性剤は、本発明の方法において使用され得る(例、SPARC認識基に結合した化学療法剤)。好適な活性剤としては、チロシンキナーゼ阻害剤(ゲニステイン)、生物学的活性剤(TNF又はtTF)、放射性核種(例、131I、90Y、111In、211At、32P、及び他の公知の治療放射性核種)、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトセシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポシロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン(meplhalan)、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)及び誘導体、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、超白金、血管標的薬剤、抗−血管内皮増殖因子化合物(「抗−VEGF」)、抗−上皮増殖成長因子受容体化合物(「抗−EGFR」)、5−フルオロウラシル、及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
さらに、該薬学的活性剤は、リシンAのような毒素、放射性核種、抗体自身のFc断片、一本鎖抗体、Fab断片、二重特異性抗体などであり得る。選択された該薬学的活性剤は、SPARCを認識及び結合し得、又は例えば、タンパク質もしくは非タンパク質、抗体、抗体自身のFc断片、一本鎖抗体、Fab断片、二重特異性抗体、ペプチドもしくは他の非タンパク質小分子を含む、SPARCを認識するSPARC認識基と好適に結合する。
【0053】
1以上の化学療法剤の1以上の用量が、本発明の方法に従って投与され得る。本発明の方法において使用される化学療法剤の型及び数は、特定の腫瘍の型の標準化学療法投与計画に依存するだろう。言い換えれば、特定の癌が単一化学療法剤により定期的に治療され得る一方、別の癌は、化学療法剤の組み合わせにより定期的に治療され得る。抗体又はそれらの断片と好適な治療法、化学療法、放射性核種などとの結合及び共役方法は、当技術分野で十分に記載される。
【0054】
本発明が有用である疾病としては、軟組織、結合組織、骨、実質臓器、血管などを含む任意の体の組織における増殖性の異常疾患、組織再形成、過形成、肥大創傷治癒が挙げられる。本発明の組成物により治療可能又は診断される疾病の例としては、癌、糖尿病又は他の網膜症、炎症、関節炎、血管又は人工血管移植又は血管内装置の再狭窄などが挙げられる。
【0055】
本発明に従って治療され得、化学療法に対するその応答が予測又は判定されるべき、検出される腫瘍の型は、一般的にヒト及び他の哺乳動物において見られるものである。実験動物などにおいて、該腫瘍は、注射の結果もたらされ得る。腫瘍の多くの型及び形態は、ヒト及び他の動物の疾患に見られ、いかなる特定の腫瘍型又は種類に対する本願の方法の適用にも限定するものではない。公知のように腫瘍(tumor)は、無制御かつ進行性の細胞分裂に起因する組織の異常腫瘤を含み、また、「腫瘍(neoplasm)」として典型的に公知である。本発明の方法は、腫瘍細胞及び関連ストローマ細胞、固形腫瘍、並びに例えばヒトにおける軟組織の肉腫など軟組織に関連する腫瘍に対して有用である。腫瘍又は癌は、口腔及び咽頭、消化器系、呼吸器系、骨及び関節(例、骨転移)、軟組織、皮膚(例、メラノーマ)、乳房、生殖系、泌尿器系、眼球及び眼窩、脳及び中枢神経系(例、グリオーマ)、又は内分泌系(例、甲状腺)に位置し得、必ずしも原発腫瘍又は癌に限定されるわけではない。口腔に関連する組織としては、舌及び口の組織が挙げられるが、これらに限定されない。癌は、例えば、食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、肝臓、胆嚢、及び膵臓を含む消化器系の組織において発生し得る。呼吸器系の癌は、喉頭、肺、及び気管支に影響を及ぼし得、例えば非小細胞肺癌を含む。腫瘍は、雄性及び雌性の生殖系を構成する、子宮頸部、子宮体部、卵巣外陰、膣、前立腺、睾丸、及び陰茎、並びに泌尿器系を構成する、膀胱、腎臓、腎盂、及び尿管において発生し得る。腫瘍又は癌は、頭及び/又は頸部に位置し得る(例、喉頭癌及び副甲状腺癌)。腫瘍又は癌はまた、造血系又はリンパ系に位置し得、例えばリンパ腫(例、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、又は白血病(例、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病など)が挙げられる。好ましくは、該腫瘍は膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸、脳、又は乳房に位置する。
【0056】
該SPARCタンパク質は多種多様のリガンドに対する親和性を有する。したがって、治療剤を疾病の部位へ送達する本発明の方法は、SPARCに対する親和性を有するアルブミンを含む、化合物又はリガンドが、ほとんど又は全く正常組織へは送達されず、疾病の部位へ治療剤を送達するために使用され得るという発見を前提とする。
【0057】
本発明はまた、腫瘍間質内の血管由来の内皮バリアを通過する治療組成物の輸送手段を提供する。抗体治療及び化学療法における主な障害は、腫瘍間質内の内皮バリアを通過する移行である。アルブミンは、アルブミン受容体輸送機構を使用して内皮バリアを通過する。この輸送機構は、文献(gp60及びアルボンジン(albondin))により報告された機構又は他の未発見の機構と同一であり得る。アルブミンを利用した治療剤が、促進された腫瘍性取り込みを示したことが既に報告されている(Desai, N. et al.内皮gp60受容体によるナノ粒子アルブミン−結合パクリタキセル(ABI−007)の内皮トランスサイトーシスの増加:タキソール(登録商標)により阻害された経路、27thAnnual San Antonio Breast Cancer Symposium (SABCS) (2004), abstract #1071)。さらに、内皮バリアを通過する促進された輸送は、生理学的アルブミン輸送機構を使用して達成され得る(Schnitzer, J. E.; Oh, P. J. Biol. Chem. 269, 6072-6082 (1994) )。
【0058】
小分子に関して、該薬剤のアルブミンに対する親和性が増加するように、改変が行われ得る。小分子の製剤に関して、薬剤のアルブミンへの結合を防止する溶媒は、除去され得る。あるいは、該小分子は、アルブミン、アルブミンに対する抗体、それらの断片又は以下に記載のようなアルブミン−受容体に対するリガンドと結合され得る。
【0059】
タンパク質、抗体及びそれらの断片などの生物学的分子に関して、該生物製剤がアルブミンに対して親和性を示すように、生物製剤をアルブミン結合ペプチドと一緒に設計することが可能である。該ペプチドは、アルブミン結合配列、アルブミンに対する抗体もしくは抗体断片、アルブミン担体に対する抗体もしくは抗体断片(gp60/アルボンジン/スカベンジャー受容体/又はTGF−β受容体など)、又はアルブミンの輸送体であるカベオラ中に見られるいずれかのタンパク質に対する抗体のいずれかであり得る。本発明はまた、キメラとして調製された抗体又はその断片であって、SPARCに対して一の原子価、gp60/アルボンジン/スカベンジャー受容体/もしくはTGF−β受容体のような経内皮輸送のエフェクター、又は内皮細胞のカベオラ内に見られる任意のタンパク質に対して別の原子価、をもつものも意図する。
【0060】
本発明はまた、補体結合及び/又はSPARC抗体による細胞性免疫応答の動員を通じた腫瘍及び再狭窄組織などの、SPARC発現組織の破壊方法を提供する。この場合、抗−CD20抗体であるリツキサンのように、エフェクター部分はFc断片であり、これは、SPARC発現細胞の直接的な破壊を伴う補体活性化を媒介するか、又は細胞性免疫応答を介した組織破壊をもたらす、SPARC発現組織への免疫細胞の動員、のいずれかを媒介し得る。
【0061】
本発明はまた、SPARCに対する中和抗体を使用するSPARC活性の阻害方法を提供する。該中和抗体は、in vivoでの自身のエフェクターによるSPARCの相互作用を阻害する能力を有する。例えば、該中和抗体は、SPARCと細胞表面成分との相互作用又はSPARCとアルブミン、増殖因子、及びCa2+など、その天然のリガンドとの結合を阻害し得る。
【0062】
本発明はまた、抗−SPARC治療に対するヒト又は他の哺乳動物の腫瘍の応答の判定方法を提供する。該方法は、(a)ヒトから生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現を検出する工程、及び(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量を定量化する工程を含む。抗−SPARC治療が疾患組織中のSPARC抗体とSPARCとの結合に依存するため、疾患組織中のSPARCの存在は活性化に必要である。
【0063】
本発明は、上に記載するような、抗体又はそれらの断片などSPARC認識基と結合させた1以上の診断薬の使用方法をさらに提供する。該診断薬としては、放射性同位体又は放射性核種、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤及びPET造影剤が挙げられる。結合に使用する方法は、当技術分野で公知である。
【0064】
サンプル中のSPARCタンパク質発現は、当技術分野で公知の任意の好適な方法により検出及び定量化され得る。タンパク質検出及び定量化の好適な方法としては、ウエスタンブロット、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、銀染色、BCA分析(Smith et al., Anal. Biochem., 750,76-85 (1985))、タンパク質−銅複合体に基づいた比色分析である、ローリータンパク質分析(例、Lowry et al., J. Biol. Chem., 193, 265-275 (1951)に記載)、及び、タンパク質結合の際のクマシーブルーG−250における吸光度の変化に依存する、ブラッドフォードタンパク質分析(例、Bradford et al., Anal. Biochem., 72, 248 (1976)に記載)が挙げられる。腫瘍生検は、前述(preceeding)の方法のいずれかにより解析され得、又は適切な視覚化系(即ち、HRP基質及びHRP標識二次抗体)と共に抗−SPARC抗体(モノクローナル又はポリクローナルのいずれか)を使用する免疫組織化学検査により解析され得る。
【0065】
該抗体がSPARCとの特異的結合を示す限り、SPARCに対する任意の好適な抗体は本発明の方法において使用され得る。該抗体は、モノクローナル又はポリクローナルのいずれかであり得;かつ、動物の免疫付与を通じて生成され得るか、又はファージ提示法などの組み換えDNA技術及びin vitroでの突然変異生成もしくは抗体のH鎖及びL鎖遺伝子の可変領域の合成を通じて生成され得る。ポリクローナル抗体としては、ヒト抗体及び鳥類(例、ニワトリ)、齧歯類(例、ラット、マウス、ハムスター、モルモット)、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウサギなどの動物由来のヒト化抗体が挙げられるが、これらに限定されない。モノクローナル抗体としては、ヒト細胞を含むが、これに限定されない、抗体産生細胞の単一クローン由来の抗体、及び、例えばニワトリ、ウサギ、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、ウシ、ヤギ、ヒツジなど他の動物種の細胞由来の抗体が挙げられる。合成抗体は、H鎖及びL鎖遺伝子の可変領域の遺伝子操作を通じて組み換えDNA技術を使用して生成された抗体を含む。合成抗体としてはまた、SPARC結合活性を伴う化学合成抗体断片又はファージ提示法又は類似技術由来の抗体が挙げられる。
【0066】
ヒトが使用するためには、免疫原性及び免疫応答を避けるために、ヒト化抗−SPARC抗体又はFab’、FabもしくはFab2などの好適な断片を使用することが好ましい。ヒト化抗体又はその断片は、例えば、以下の確立された方法のうちの1つを使用して生成され得る:1)ヒト化抗体は、可変CDR領域をSPARCに対する抗体のそれと置換した、ヒトIgG骨格を使用して構築され得、H鎖及びL鎖は、別々のプロモーターの下で独立して発現するか、又はIRES配列を有する1つのプロモーターの下で共発現する;2)ヒト化モノクローナル抗体は、ヒト免疫系を有するように操作されたマウスを使用してSPARCに対して発生し得る;3)SPARCに対するヒト化抗体は、ファージミド(M13、λ大腸菌ファージ、又は表面提示が可能な任意のファージ系)を使用して産生させ得る。全長抗体を構築するために、可変領域は、H鎖及びL鎖の両方のCDR上へと移動され得る。CHO、293、又はヒト骨髄性細胞などの哺乳動物細胞におけるH鎖及びL鎖の共発現は、全長抗体をもたらす。同様に、Fab’、Fab、又はFab2断片及び一本鎖抗体は、よく確立された方法を使用して調製され得る。
【0067】
SPARCに対する抗体はまた、全抗体又はSPARCに対する結合部位を保持する抗体の断片(例、Fab及びFab2)に限定されない。該抗体はまた、抗体のいずれか1つのクラスに限定されない(例、IgM、IgA、IgG、IgE、IgD及びIgY)。該抗体はまた、二価抗体、一価、又はSPARCに対する一つの原子価及びtTF又はリシンAなどのエフェクターに対する別の原子価をもつキメラに限定されない。該ヒト化抗体はIgGに限定されない。同一の技術は、特定の疾病標的に適合する、異なる抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)活性をそれぞれ有する、IgE、IgA、IgD、IgMなど他の抗体のクラス全てを生成するために使用され得る。該抗体の機能的断片は、限定的タンパク質分解により生成され得る。これらの断片は、Fab’などの一価又はFab2などの二価であり得る。断片はまた、一本鎖scfv又は二重特異性抗体として大腸菌中で合成され得る。
【0068】
本発明は、自身の薬理学効果を直接示すことができる薬学的活性剤、又はSPARC又はその他又は他のアルブミン結合部分と結合できる化合物と結合した薬学的活性剤、及び薬学的に許容される担体を含む組成物をさらに提供する。送達剤は医薬組成物であり得、SPARC認識基と結合した薬学的活性剤を含み、治療有効量の薬学的活性剤が哺乳動物に送達されるような量で、ヒトのような哺乳動物に投与される。
【0069】
本発明はまた、哺乳動物における腫瘍への化学療法剤の送達方法を提供する。該方法は、治療有効量の医薬組成物をヒト又は他の哺乳動物に投与する工程を含み、ここで、該医薬組成物は、SPARCタンパク質と結合できる化合物又はリガンドと結合した化学療法剤と薬学的に許容される担体とを含む。本発明の他の実施形態に関連して本明細書において説明した、化学療法剤、腫瘍、哺乳動物及びそれらの成分に関する記述はまた、化学療法剤を腫瘍へ送達する前述の方法のそれらの同一側面に適用できる。
【0070】
好ましくは、該医薬組成物は、50%を超えるナノ粒子形態の化学療法剤を含まない。より好ましくは、該医薬組成物は、10%を超えるナノ粒子形態の化学療法剤を含まない。さらにより好ましくは、該医薬組成物は、5%を超える、又は4%を超える又は3%を超えるナノ粒子形態の化学療法剤を含まない。より好ましい実施形態において、該医薬組成物は、2%を超える又は、1%を超えるナノ粒子形態の化学療法剤を含まない。最も好ましくは、該医薬組成物は、いかなるナノ粒子形態の治療剤も含まない。
【0071】
本発明はまた、ヒト又は他の哺乳動物における腫瘍への化学療法剤の送達方法を提供する。該方法は、医薬組成物などの治療有効量の送達剤をヒト又は他の哺乳動物に投与する工程を含み、ここで、該送達剤(例、医薬組成物)は、SPARC認識基に結合した化学療法剤を含む。例えば、該化学療法剤は、SPARCタンパク質認識抗体などSPARC認識基又は該SPARC抗体単独と結合していてもよい。医薬組成物は、SPARC認識基と結合した化学療法剤及び薬学的に許容される担体を好ましくは含む。本発明の他の実施形態に関連して本明細書において説明した、化学療法剤、腫瘍、哺乳動物及びそれらの成分に関する記述はまた、化学療法剤を腫瘍へ送達する前述の方法のそれらの同一側面に適用できる。
【0072】
他の実施形態において、本発明は、SPARC又は別のアルブミン−結合タンパク質の、ヒト又はそのようなタンパク質もしくはマーカーを発現する他の動物における過剰発現により特徴付けられる疾病の部位への、SPARC認識基を通じての薬学的活性剤の送達方法を提供する。該疾病としては、増殖性異常疾患、組織再形成、過形成、及び体の組織(例、軟組織、結合組織、骨、実質臓器、血管など)における肥大創傷治癒が挙げられる。SPARCタンパク質、又は別のアルブミン−結合タンパク質と結合できる化合物又はリガンドと結合した治療剤を含む医薬組成物を投与することにより、治療可能又は診断され得る疾病の例としては、癌、糖尿病又は他の網膜症、炎症、関節炎、血管又は人工血管移植又は血管内装置の再狭窄などが挙げられる。本発明の他の実施形態に関連して本明細書において説明した、薬学的活性剤、腫瘍、哺乳動物及びそれらの成分に関する記述はまた、薬学的活性剤を送達する前述の方法のそれらの同一側面に適用できる。
【0073】
さらに他の実施形態において、本発明は、SPARCの過剰発現により特徴付けられるヒト、又はそのようなタンパク質もしくはマーカーを発現する他の動物の疾病の部位への、薬学的活性剤(例えば、SPARC抗体単独又はSPARC抗体のようなSPARC認識基と結合した化学療法剤、放射性標識SPARC抗体など)の送達方法を提供する。該疾病としては、増殖性異常疾患、組織再形成、過形成、及び体の組織(例、軟組織、結合組織、骨、実質臓器、血管など)における肥大創傷治癒が挙げられる。抗−SPARC治療を含む医薬組成物を投与することにより治療可能又は診断され得る疾病の例としては、癌、糖尿病又は他の網膜症、炎症、関節炎、血管又は人工血管移植又は血管内装置の再狭窄などが挙げられる。本発明の他の実施形態に関連して本明細書において説明した、薬学的活性剤、腫瘍、哺乳動物及びそれらの成分に関する記述はまた、薬学的活性剤を送達する前述の方法のそれらの同一側面に適用できる。
【0074】
他の実施形態において、本発明の方法は、SPARCタンパク質と結合できる化合物又はリガンドと結合した化学療法剤を含む、治療有効量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。該化学療法剤は、任意の好適な方法を使用して、SPARCタンパク質と結合できる化合物又はリガンドと結合し得る。好ましくは、該化学療法剤は、例えば、ジスルフィド結合を含む共有結合を通じて該化合物と化学的に結合される。
【0075】
本発明はまた、SPARC認識基と結合した化学療法剤又は放射活性元素を含む、治療有効量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む方法を提供する。化学療法剤又は放射活性剤は、任意の好適な方法を使用して、SPARC認識抗体と結合され得る。好ましくは、該化学療法剤は、例えば、ジスルフィド結合を含む共有結合を通じて該化合物と化学的に結合され得る。
【0076】
好ましくは、本発明の方法において有用な化合物又はリガンドは、SPARCタンパク質と結合できる。本発明の好ましい実施形態において、該化合物は、SPARCタンパク質と結合するリガンドである。好適なリガンドの例としては、カルシウムカチオン(Ca2+)、銅カチオン(Cu2+)、鉄カチオン(Fe2+)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、コラーゲン(例、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、及びコラーゲンIX)、ビトロネクチン、トロンボスポンジン−1、内皮細胞、血小板、アルブミン、及びハイドロキシアパタイトカチオン(hydroxyapatitecations)が挙げられる。本発明の別の好ましい実施形態において、該化合物は小分子である。用語「小分子(small molecule)」は、約600より少ない分子量を有する任意の分子を指す。好適な小分子の例としては、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、補酵素(例、ビタミン)、抗原、ホルモン、及び神経伝達物質が挙げられる。好ましくは、該小分子は、化学薬品(例、有機化合物又は無機化合物)ペプチド、又はペプチド模倣薬、タンパク質、又は炭水化物である。本発明のさらに別の好ましい実施形態において、該化合物はSPARCタンパク質に対する抗体である。SPARCタンパク質と結合する任意の好適な抗体、又はその断片は、本発明の方法において使用され得る。
【0077】
腫瘍組織中のSPARC発現は、ほとんど全ての癌の型において実証されている。腫瘍組織上のSPARCの生成は、SPARCの腫瘍性発現又はストローマ細胞由来のいずれかであり得るという証拠がある。腫瘍のSPARC表現型は、外因性SPARCの投与により、SPARC陰性からSPARC陽性へ転換し得る。したがって、該SPARC陽性腫瘍は、次いで、化学療法剤に感受性になる。あるいは、SPARCは、放射性標識され、又は様々な毒素と結合され、該腫瘍を直接的又は間接的に殺すための能力を付与され得る。
【0078】
SPARCは、公知技術を使用して合成及び精製できる。外因性SPARCを発現する細胞は、強いプロモーター/翻訳開始の制御下にSPARC構造遺伝子/cDNAを置き、及び哺乳動物細胞内にベクターをトランスフェクトし、これらの細胞においてSPARC発現を駆動することによって作出できる。あるいは、SPARCはバキュロウイルス又はアデノウイルスなど他のウイルスを使用して発現され得る。これらの細胞により発現されたSPARCは、イオン交換、サイズ排除、又はC18クロマトグラフィーなど伝統的な精製方法により精製され得る。精製SPARCは、防腐剤と共に生理食塩水中で処方され得、静注、エアロゾル、皮下注射又は他の方法により投与され得る。
【0079】
本発明はまた、哺乳動物における腫瘍への化学療法剤の送達方法を提供する。該方法は、哺乳動物に治療有効量の医薬組成物を投与する工程を含み、ここで該医薬組成物は、アルブミンと結合できるSPARCタンパク質と結合した化学療法剤と薬学的に許容される担体とを含む。本発明の他の実施形態に関連して本明細書において説明した、化学療法剤、腫瘍、哺乳動物及びそれらの成分に関する記述はまた、化学療法剤を腫瘍へ送達する前述の方法のそれらの同一側面に適用できる。
【0080】
in vivoで使用するために、SPARCタンパク質と結合できる化合物又はリガンドと結合した該化学治療剤は望ましくは、生理学的に許容される担体を含む医薬組成物として、処方される。任意の好適な生理学的に許容される担体は、本発明の文脈において使用され得、該担体は当技術分野で公知である。
【0081】
in vivoで使用するために、該抗−SPARC治療剤は望ましくは、生理学的に許容される担体を含む医薬組成物として、処方される。任意の好適な生理学的に許容される担体は、本発明の文脈において使用され得、該担体は当技術分野で公知である。
【0082】
該担体は、典型的に液体であるが、固体又は液体及び固体成分の組み合わせでもまたあり得る。該担体は望ましくは、生理学的に許容される(例、薬学的に又は薬理学的に許容される)担体(例、賦形剤又は希釈剤)である。生理学的に許容される担体は、周知であり、容易に入手できる。担体の選択は、少なくとも一部分において、標的組織及び/又は細胞の位置、並びに該組成物を投与するために使用される特定の方法により、決定されるだろう。
【0083】
典型的に、該組成物は、溶液又は懸濁液のいずれかの注射剤として調製され得;注射前の液体の添加の際の溶液又は懸濁液を調製するための使用に好適な固体形態もまた、調製され得;並びに該製剤はまた、乳化され得る。注射剤としての使用に好適な医薬製剤としては、滅菌水溶液又は分散液;公知のタンパク質安定剤及びリオプロテクタントを含む製剤、ゴマ油、ピーナッツ油又は含水プロピレングリコールを含む製剤、及び滅菌注射用溶液又は懸濁液の即時調製のための滅菌粉末剤が挙げられる。全ての場合において、該製剤は、無菌でなければならず、容易な注入可能性(syringability)が存在する程度に流動性でなければならない。製造及び保存条件下で安定であるべきであり、細菌及び真菌など、微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシセルロースなどの界面活性剤と共に好適に混合された水で調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物並びに油脂で調製され得る。保存及び使用の通常の条件下で、これらの製剤は、微生物の成長を妨げるための防腐剤を包含する。
【0084】
SPARCタンパク質と結合する化合物又はリガンドと結合した、化学療法剤(例、抗−SPARC治療)は、中性型又は塩形態の組成物として処方され得る。薬学的に許容される塩は、(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)酸付加塩を含み、これは、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、アンデル酸などの有機酸で形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化鉄などの無機塩基、並びにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基由来であり得る。
【0085】
該組成物は、特に該組成物及び/又はその最終用途の安定性を強化する任意の他の好適な成分をさらに含み得る。したがって、本発明の組成物の多様な好適製剤がある。以下の製剤及び方法は、単に例となるだけであり、限定するものではない。
【0086】
吸入を通じての投与に好適な製剤は、エアロゾル製剤を含む。該エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される高圧ガス中に置かれ得る。これらはまた、ネブライザー又はアトマイザーからの送達のため、非加圧製剤として処方され得る。
【0087】
非経口投与に好適な製剤としては、抗酸化剤、バッファー、静菌薬、及び所定のレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含む水性及び非水性の、等張滅菌注射溶液、並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含み得る水性、及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。該製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量又は複数用量密封容器内で存在し得、使用する直前に、例えば、水などの、注射するための滅菌液体賦形剤の添加のみを必要とする凍結乾燥(lyophilized)状態で保存され得る。即時注入溶液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末剤、顆粒、及び錠剤から調製され得る。本発明の好ましい実施形態において、SPARCタンパク質と結合する化合物(例、抗−SPARC治療)と結合した化学療法剤は、注射のために処方される(例、非経口投与)。この点に関して、該製剤は、望ましくは腫瘍内投与に好適であるだけでなく、静脈注射、腹腔内投与、皮下注射などのためにも処方され得る。
【0088】
経肛門投与に好適な製剤は、乳化塩基(emulsifying bases)又は水溶性塩基などの多様な塩基と共に有効成分を混合することにより、坐薬として調製され得る。膣内投与に好適な製剤は、有効成分に加えて、適切であると当技術分野で公知の担体などを含む、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレー処方で提供され得る。
【0089】
さらに、該組成物は、さらなる治療剤又は生物学的活性剤を含み得る。例えば、特定の兆候の治療に有用な治療因子が存在し得る。イブプロフェン又はステロイドなど炎症を制御する因子は、in vivoでの医薬組成物の投与に関連する腫脹及び炎症並びに生理学的損傷を低減するために該組成物の一部であり得る。
【0090】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【実施例1】
【0091】
この実施例は、MX−1腫瘍異種移植片におけるSPARCとアルブミンとの共局在化を説明する。
【0092】
パクリタキセルアルブミンナノ粒子(アブラキサン、ABX又はABI−007)は、第III相転移性乳癌試験においてタキソール(TAX)を上回る改善応答率を有することが証明されている(33%対19%、p<0.0001)(例、O'Shaughnessy, SABCSを参照)。パクリタキセル(P)のアルブミン−介在経内皮輸送並びに、TAXと比べて、増加したABXへのパクリタキセルの腫瘍内蓄積は最近実証された(例、Desai, SABCS 2003を参照)。アルブミンはSPARCと結合する(例、Schnitzer, J. Biol. Chem., 269, 6072-82 (1994) 参照)。
【0093】
該MX−1腫瘍細胞系は、ヒト乳癌由来である。ヒトMX−1腫瘍異種移植片、ヒト原発乳房腫瘍組織(n=141)、及び正常ヒト乳房組織(n=115)の連続凍結切片を免疫染色し、アルブミン、SPARC(抗−SPARC抗体を使用した)、及びカベオリン−1染色に対して、スコア化した(0−4)。培養MX−1細胞をまた、SPARCに対して免疫染色した。パクリタキセルアルブミンナノ粒子(アブラキサン、ABX又はABI−007)及びタキソール(TAX)を、放射性活性パクリタキセル(P)(20mg/kgIV)で調製し、胸腺欠損マウスの正常組織におけるパクリタキセルの生体内分布を決定するために使用した。
【0094】
該MX−1腫瘍中のアルブミン染色は、局所的であり、SPARCと共局在していた(図3)。カベオリン−1染色は、アルブミン含有領域における血管密度がアルブミンを含まない領域と全く変わらないことを裏付けた。MX−1培養細胞によるSPARC発現は、抗−SPARC抗体での陽性染色により裏付けられた。正常組織(SPARC陰性)中のパクリタキセル蓄積は、TAXと比較して、7/10の組織でABXに関して有意に低かった(p<0.004)。正常組織の1%に対して、ヒト原発乳房腫瘍の46%が、強いSPARC染色(スコア>2)を示した(p<0.0001)。50の腫瘍組織のサブセットにおいて、SPARC発現は、ステージ、小胞体状態(ER status)、又はPgR状態と相関しなかった;しかし、p53−陰性腫瘍の中では高SPARC発現の傾向があった。
【0095】
アルブミン及びSPARCの共局在化は、SPARCが、自身のアルブミン結合活性により、乳房腫瘍中のアルブミン結合の腫瘍内標的として働き得ることを示唆する。ABX中のパクリタキセルの輸送は、アルブミンに依存するため(例、Desai SABCS, 2003を参照)、このことは、TAXと比較して、ABXの改善した腫瘍蓄積を説明し得る。正常組織中のABX蓄積は、TAXよりも少なく、正常組織中のSPARC発現の欠如と一致する。SPARCに関する患者のスクリーニングは、ABXに対してより敏感な患者の同定を可能とする。これらの腫瘍中のSPARCの存在は、抗−SPARC抗体を使用するターゲッティング及び治療を可能とする。
【実施例2】
【0096】
本実施例は、MX−1腫瘍細胞中のSPARCの発現を説明する。
【0097】
MX−1細胞を、カバースリップ上で培養し、当技術分野で公知の方法を使用して、ヒトSPARCに対する抗体を用いて染色した。抗体染色が観察され、これはMX−1がSPARCを発現していることを実証する。これらの結果は、MX−1腫瘍細胞中で検出されたSPARC発現がMX−1腫瘍細胞によるSPARC分泌の結果であることを示唆する。MX−1腫瘍細胞の染色は、HUVEC(ヒト臍静脈(umbiblical vein)内皮細胞)、HLMVEC(ヒト肺微小血管内皮細胞)及びHMEC(ヒト乳房上皮細胞)などの正常初代細胞のそれよりもより強かった。SPARC染色の大部分が内部SPARCであったものの、共焦点顕微鏡及び非透過性細胞の染色により実証されたように、有意なレベルの表面SPARCが検出された。
【実施例3】
【0098】
本実施例は、ヒト乳癌細胞中のSPARCタンパク質の過剰発現を説明する。
【0099】
ヒト乳癌細胞中のSPARC発現を、Cybrdi, Inc.(Gaithersburg, MD)の腫瘍アレイを使用して測定した。この解析の結果を、表1に説明する。染色の強度を、「陰性」から4+までスコア化し、より大きな数字は過剰発現のより大きな強度に対応している。正常組織の1%と比較して、乳癌の49%が、SPARCに対して陽性(2+又はそれ以上)に染色された(p<0.0001)。
【0100】
【表1】
【実施例4】
【0101】
本実施例は、パクリタキセルアルブミンナノ粒子(ABI−007)の内皮受容体(gp60)−介在カベオラトランスサイトーシスを説明する。
【0102】
パクリタキセル(P)アルブミンナノ粒子(アブラキサン、ABX又はABI−007)は、第III相転移性乳癌試験においてタキソールを上回る改善応答率を実証した(33%対19%、p<0.0001)(SABCS, O'Shaughnessy et al, 2003)。タキソール(TAX)中のクレモフォールは、プラズマ中のミセルにPを封入し、細胞分配に利用可能な該パクリタキセルを減少させる(例、Sparreboom et al., Cancer. Res., 59, 1454 (1999) 参照)。胸腺欠損マウスにおける研究は、等用量のTAXと比較して、ABXにより、30−40%高い腫瘍内パクリタキセル濃度を明らかにした(SABCS, Desai et al, 2003)。アルブミンは、特異的受容体(gp60)−介在カベオラ輸送により、内皮細胞(EC)を通過して輸送される(例、John et al., Am. J. Physiol, 284, Ll 87 (2001) 。ABX中のアルブミン−結合パクリタキセルは、gp60により腫瘍微小管ECを通過して輸送され得、かつ、この機構は、TAXと比較して、ABXで特に活性であり得ると仮定した。
【0103】
一連の実験を行い、ABX及びTAXに関する、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)及びヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)によるパクリタキセルの結合及び輸送を評価した。蛍光性パクリタキセル(FP)を、プローブとして使用し、蛍光性ABX及びTAXをFPと共に処方し、トランスウェル装置上で培養したEC単層を通過するパクリタキセルの結合及び輸送を調べた。
【0104】
パクリタキセルの細胞(HUVEC)への結合は、TAXよりもABXに関しては10倍高かった。EC単層を通過するABX由来パクリタキセルの輸送は、TAXと比較して、それぞれ、HUVEC及びHMVECに関して2−3倍及び2−4倍高まった。輸送はアルブミンに依存した。ABX由来パクリタキセルの輸送は、カベオラアルブミントランスサイトーシスに必要な受容体であるgp60と結合することが知られている抗−SPARC抗体の存在により阻害された。カベオラトランスサイトーシスの公知の阻害剤である、NEM及びβ−メチルシクロデキストリン(BMC)はまた、内皮単層を通過するABX由来パクリタキセルの輸送を阻害した(図4)。カベオラ輸送の阻害は、ABXからのPの輸送をTAX輸送のレベルへと減少させた。
【0105】
これらの結果は、ABX由来パクリタキセルが、gp60−介在カベオラトランスサイトーシスによりECを通過して活発に輸送される一方で、TAX由来のPが、主に傍細胞(非カベオラ)機構により2−4倍低い速度で輸送されているようであることを実証する。この経路は、TAXと比較して、ABXで見られた腫瘍内パクリタキセル濃度の上昇の原因の一部であり得る。TAX中のクレモフォールは、内皮細胞を通過するパクリタキセルのトランスサイトーシスを阻害する。
【実施例5】
【0106】
本実施例は、扁平頭頸部癌中のナノ粒子アルブミン−結合パクリタキセルを使用した高応答率とSPARC過剰発現の相関関係を実証する。
【0107】
頭頸部(H&N)及び肛門管の扁平細胞癌(SCC)の患者の第I相及び第II相臨床試験において、動脈内で送達されたナノ粒子アルブミン−結合パクリタキセル(アブラキサン(登録商標)、ABX又はAB1−007)に関して、それぞれ78%及び64%の応答率が観察された(例、Damascelli et al., Cancer, 92(10), 2592-2602 (2001), 及びDamascelli et al., AJR, 181, 253-260 (2003)を参照)。in vitroでのABX及びタキソール(TAX)の細胞毒性(cytoxicity)の比較において、我々は、扁平頸部(A431)系が、TAXのIC50(0.012μg/ml)と比べて、ABXで改善されたIC50(0.004μg/ml)が実証されたことを観察した。パクリタキセル(P)のアルブミン−介在経内皮カベオラ輸送及びTAXと比べて、増加したABXに関するPの腫瘍内蓄積は、最近実証された(例、Desai, SABCS 2003を参照)。
【0108】
ヒトH&N腫瘍組織(n=119)及び正常ヒトH&N組織(n=15)を、腫瘍及び正常組織アレイを使用して、免疫染色し、SPARC染色に対してスコア化した(0−4)。免疫染色を、ポリクローナルウサギ抗−SPARC抗体を使用して行った。新しい第I相用量増大試験(ABXを30分以上、3週間に1回IVに与えた)において、頭頸部癌の患者のサブセット(n=3)を、ABXに対する応答に関して解析した。
【0109】
SPARCは、正常組織中の0%(0/15)と比べて、H&N腫瘍の60%(72/119)において、過剰発現(スコア>2)していた(p<0.0001)。第I相研究において、H&N患者の2/3は、135mg/m2(1pt)及び225mg/m2(1pt)の用量レベルでの2サイクルの治療後に、部分応答(PR)を達成した。3人目の患者は260mg/m2で進行した。
【0110】
SPARCは、扁平H&N腫瘍の60%において、過剰発現が見出された。これは、扁平H&N癌において以前見られたアルブミン−結合パクリタキセルとこれらの腫瘍中で発現したSPARCとの結合によるABXの高い単剤活性を説明し得る。扁平H&N腫瘍の患者の2/3は、新しい第I相試験においてPRを達成した。
【0111】
【表2】
【0112】
ヒトH&N腫瘍組織(n=119)及び正常ヒトH&N組織(n=15)を、腫瘍及び正常組織アレイを使用して、免疫染色し、SPARC染色に対してスコア化(0−4)をした。免疫染色を、ポリクローナルウサギ抗−SPARC抗体を使用して行った。SPARCは、正常組織の0%(0/15)に対してH&N腫瘍の60%(72/119)で過剰発現(スコア>2)していた(p<0.0001)。これは、扁平H&N癌において以前見られたアルブミン−結合パクリタキセルとこれらの腫瘍中で発現したSPARCとの結合によるABXの高い単剤活性を説明し得る。
【0113】
新しい第I相用量増大試験(ABXを30分以上、3週間に1回IVに与えた)において、頭頸部癌患者のサブセット(n=3)を、ABXに対する応答に関して解析した。第I相試験において、H&N患者の2/3は、135mg/m2(1pt)及び225mg/m2(1pt)の用量レベルでの2サイクルの治療後に、部分応答(PR)を達成した。3人目の患者は260mg/m2で進行した。これらの患者由来の腫瘍組織をSPARCに対して染色し、応答した患者の1人はSPARCに関する強い過剰発現を示した。
動脈内ABXにより治療された頭頸部の扁平細胞癌の患者54人の、別の第II相臨床試験において、78%の全体応答率が認められた。本試験において動脈内ABXを受けている16人の患者由来の癌生検を、SPARC発現と臨床応答との相関関係に関して評価した。抗−SPARCポリクローナル抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)を用いた染色を、0−4スケール(scale)でスコア化した(0=染色なし、4=強度に陽性)。陽性SPARC発現を、>2+染色と定義し、かつ陰性SPARC発現を、<2+染色と定義した。ABX−レスポンダーは、非レスポンダー(2/5、40%)と比べて、SPARC発現の高い発生率(10/11、91%)を示した(p=0.06)。ABX−応答は、SPARC−陰性患者(1/4=25%)と比べて、SPARC−陽性患者に関して有意に高かった(10/12=83%)(p=0.06)。さらに、SPARC−陰性患者は、本研究における全体応答率より、有意に低い応答率を示した(ABX又は他の化学療法剤により治療した患者を含む(1/4、25%対42/54、78%;p<0.05))。
【実施例6】
【0114】
本実施例は、MX−1腫瘍細胞中の標識アルブミンの内部移行及び細胞内SPARC発現とのMX−1細胞内の共局在化を実証する。
【0115】
MX−1細胞を、カバースリップ上で培養し、好適な剤により透過処理した。細胞を蛍光性アルブミンに曝露し、洗浄後SPARC抗体に曝露した。次いで、アルブミンと異なる蛍光性タグを有する二次抗体に曝露した。驚くべきことに、該標識アルブミンは、細胞内のSPARCの存在と共局在化し、これによってアルブミンが迅速に内部移行し、細胞内SPARCを標的化することが示された。
【実施例7】
【0116】
本実施例は、タキソールと比べて、パクリタキセル及びアルブミンを含む医薬組成物のgp60(アルブミン受容体)を通じた内皮トランスサイトーシスにおける増加を実証する。
【0117】
ヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)をトランスウェル上でコンフルエンスまで培養した。パクリタキセル及びアルブミンを含む、本発明の医薬組成物、又は20μg/mLの濃度の蛍光性パクリタキセル(Flutax)を含有するタキソールを、トランスウェルの上部チャンバーに添加した。
【0118】
上部チャンバーから下部チャンバーへのトランスサイトーシスによるパクリタキセルの輸送を、蛍光光度計を使用して継続的にモニターした。アルブミンを含まない、Flutaxのみを含むコントロールも、使用した。Flutaxでのコントロールは、輸送を示さず、コンフルエントなHLMVEC単層の完全性を実証する。アルブミン−パクリタキセル組成物由来のパクリタキセルの輸送は、タキソール由来のパクリタキセルよりも、5%HSA(生理学的濃度)の存在下で大いに早かった。アルブミン−パクリタキセル組成物及びタキソールに関する輸送速度定数(Kt)は、それぞれ1.396h−1及び0.03h−1であった。該単層を通過して輸送されたパクリタキセルの全量は、タキソールよりも、アルブミン−パクリタキセル組成物が3倍高かった。したがって、アルブミン又は、gp60受容体もしくは他の内皮細胞受容体に対する抗体(aantibodies)もしくは断片を含む他の好適な模倣剤の使用は、該腫瘍間質内の内皮バリアを通過する望ましい治療剤の輸送を助け得る。
【実施例8】
【0119】
本実施例は、抗−SPARC抗体のSPARCへの特異的結合を実証する。
【0120】
全細胞抽出物を、超音波処理によりHUVEC細胞から調製した。タンパク質を、s5−15%SDS−PAGE上で分離し、PVDF膜上へ移し、SPARCに対するポリクローナル抗体及びSPARCに対するモノクローナル抗体を用いて可視化した。両抗体は、SPARCに対する正しい分子量である、38kDでシングルバンドに反応した。MX−1を同様の方法で解析した場合、SPARCを、透明な細胞ライセート又は膜リッチな膜画分(membrane rich membrane fraction)の両方において検出した。
【実施例9】
【0121】
本実施例は、正常組織中のSPARC発現の欠如を実証する。
【0122】
正常ヒト及びマウス組織を、腫瘍及び正常組織アレイを使用して免疫染色し、SPARC染色に対してスコア化(0−4)した。免疫染色を、ポリクローナルウサギ抗−SPARC抗体を使用して行った。SPARCは、食道を除いた、いかなる正常組織中でも発現していなかった。同様に、SPARCは、メスマウスの腎臓を除いた、いかなる正常マウス組織中でも発現していなかった。しかし、この発現は、SPARCに相同であるホリスタチンに起因した可能性がある。
【0123】
【表3】
【実施例10】
【0124】
本実施例は、タキソテール(Tween80及びエタノールを伴うドセタキセル製剤、「TAT」)に対するアブラキサン(ナノ粒子アルブミン−結合パクリタキセル、「ABX」)の優位性及び、ABXに対する関連応答と、試験したHer2−陽性異種移植片におけるSPARC発現が正に相関することを実証する。
【0125】
マウス腫瘍異種移植片モデル系を使用して、MX−1ヒト乳癌及びLX−1ヒト肺癌細胞系のHer2−陰性異種移植片における、ABX対TATの効果を比較した。MX−1試験において3群(15mg/kgのTAT(週に1回、3週間、静脈注射);15mg/kgのABX(週に1回、3週間、静脈注射)及び生理食塩水(週に1回、3週間、静脈注射))それぞれにおいて8個体を使用した。各個体の体重及び腫瘍サイズを毎週、3週間観察した。LX−1試験において、3群(15mg/kgのTAT(4日に1回、3サイクル、静脈注射);50mg/kg又は120mg/kgのABX(4日に1回、3サイクル、静脈内注射)、及び生理食塩水(4日に1回、3サイクル、静脈内注射))それぞれにおいて8個体を使用した。各個体の体重及び腫瘍サイズを毎週、3週間観察した。
【0126】
異種移植片腫瘍Her2及びSPARC状態を、モノクローナル抗ヒトHer2抗体及びポリクローナル抗−ヒトSPARC抗体を使用した免疫組織化学検査により判定した。該スライドを、0−4スケールを使用してスコア化し、0は陰性であり、4は強い陽性とした。
【0127】
MX−1試験において、等用量(equidose)におけるABXは、TATよりも効果的であった(p<0.0001、ANOVA 統計)(図5A参照)。LX−1細胞に関して、両方の用量レベルにおいて、ABXは、TAT(15mg/kg)よりも効果的であった(ABX 50mg/kgに関してp=0.0001及びABX 120mg/kgに関してp<0.0001)(図6A参照)。しかし、ABX応答は、免疫組織化学検査によるSPARCレベルと相関しなかった(図7参照)。
【0128】
第二試験において、マウス腫瘍異種移植片モデル系を使用して、3種類のHer2−陽性異種移植片(HT29:ヒト結腸癌細胞系、PC3:ヒト前立腺癌細胞系、MDA−MB−231:ヒト乳癌細胞系)におけるABX対TATの効果を比較した。32匹のマウスを各異種移植片について使用し、8個体を15mg/kgのTAT(4日に1回、3サイクル、静脈注射)により処理し、8個体を50mg/kgのABX(4日に1回、3サイクル、静脈注射)で処理し、8個体を120mg/kgのABX(4日に1回、3サイクル、静脈注射)で処理し、8個体を生理食塩水(4日に1回、3サイクル、静脈注射)で処理した。各個体の体重及び腫瘍サイズを、3週間ごとに観察した。
【0129】
Her2及びSPARC状態を、モノクローナル抗−ヒトHer2抗体及びポリクローナル抗−ヒトSPARC抗体を使用した免疫組織化学検査により判定した。スライドを、0−4スケールを使用してスコア化し、0は陰性であり4は強い陽性とした。
【0130】
HT29異種移植片において、ABXは、両方の用量レベルのTAT(15mg/kg)よりも効果的であった(ABX 50mg/kgに関してp=0.0001及びABX 120mg/kgに関してp<0.0001)(図8A参照)。PC3異種移植片では、ABXは、50mg/kgのTAT(15mg/kg)よりも効果が弱かったが(p<0.001)、120mg/kgのTAT(15mg/kg)とは等しい効果であり(p=ns)(図9A)、より低い毒性であった(より少ない体重減少、図9B)。最後に、MDA−MB−231異種移植片では、ABXは、両方の用量レベルのTAT(15mg/kg)よりも効果が弱かった(p<0.0001及びp<0.0001)(図10A参照)。
【0131】
5つの腫瘍型のHer2及びSPARC状態を図7Aに示し、ABX対TAXの相対的効果を図7Bに示す。相対的効果(TAT腫瘍容積/ABX腫瘍容積)を、15mg/kg TAT及び120mg/kg ABXを使用して算出した(相対的腫瘍効果を、15mg/kg TAX及び15mg/kg ABXを使用して算出した、MX−1を除く)。Her2−陽性異種移植片(HT29、PC3、及びMDA−MB−231)において、TATと比較して、ABX効果は、SPARC発現の増加と共に増加した(図7参照)。
【0132】
したがって、本実施例は、使用したモデル系において、試験した5つの異種移植片腫瘍のうちの4つにおいて、TATと比較して、ABXはより効果的か又は等しく効果的であり、試験したHer2−陽性異種移植片において、TATと比較して、ABX効果は、SPARC発現と正に相関したことを示す。
【0133】
出版物、特許出願及び特許を含む本明細書で挙げた全ての文献は、各文献が個別かつ具体的に参照によって組み込まれると表示され、その全体が本明細書に示されたのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0134】
本発明を説明する文脈(特に添付の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示語の使用は、本明細書に別段の指示がないか又は明らかに文脈に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、別段の記載がなければ、オープンエンドの用語(即ち、「含むが、それに限定されない」ということを意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内に入る各個別の値を個別に指す省略方法としての役割を果たすことを単に意図しており、各個別の値はそれが個別に本明細書に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載した全ての方法は、本明細書に別段の指示がないか又は明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書に記載した全ての例、又は例示的な言葉使い(例、「のような(such as)」)の使用は本発明をより良く明らかにすることを単に意図しており、別段の請求がなければ、本発明の範囲を制限しない。本明細書中の言葉使いは、あらゆる非請求の要素が本発明の実施に不可欠であることを指示していると解釈されてはならない。
【0135】
本発明の好ましい実施形態を、発明者らが知っている本発明を実施するための最良の形態を含めて本明細書に記載している。これらの好ましい実施形態の変形は、上述の記載を読めば当業者には明らかとなり得る。発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを予期しており、また、発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載したのとは別の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙した対象の、適用法によって認められるあらゆる修正及び同等物を含む。さらに、上述の要素のあらゆる可能な変形でのあらゆる組み合わせが、本明細書に別段の指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、ヒトSPARCアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図2】図2は、ヒトSPARC cDNA配列(配列番号2)を示す。
【図3】図3は、MX−1腫瘍異種移植片のアルブミン及びSPARC染色を図示する。
【図4】図4は、内皮細胞単分子層を横切るパクリタキセルの経細胞輸送を図示する。
【図5A】図5Aは、MX−1異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図5B】図5Bは、MX−1異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図6A】図6Aは、LX−1異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図6B】図6Bは、LX−1異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図7A】図7Aは、5つの腫瘍型のHer2及びSPARCの状態(A)(それぞれのペアにおいて、SPARC、左のバー及びHer2、右のバー)並びにタキソテールに対するアブラキサンの相対的効力(B)を図示する。
【図7B】図7Bは、5つの腫瘍型のHer2及びSPARCの状態(A)(それぞれのペアにおいて、SPARC、左のバー及びHer2、右のバー)並びにタキソテールに対するアブラキサンの相対的効力(B)を図示する。
【図8A】図8Aは、HT29異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力果(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図8B】図8Bは、HT29異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力果(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図9A】図9Aは、PC3異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図9B】図9Bは、PC3異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図10A】図10Aは、MDA−MB−231異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図10B】図10Bは、MDA−MB−231異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌;並びに、組織及び器官における異常増殖、過形成、再造形、炎症活動を含む他の疾病の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルブミンナノ粒子製剤は、難溶性治療剤の毒性を低減することが知られている。例えば、米国特許第6537579号は、無毒性乳化剤であるアルブミン−ナノ粒子パクリタキセル製剤を開示する。
【0003】
Bristol Myers Squibbにより商標タキソール(登録商標)の名で販売される、抗癌剤パクリタキセルは、卵巣癌、肺癌、及び乳癌を含む、いくつかの癌の治療のために現在認可されている。パクリタキセルの使用の主な制限は、その難溶性である。したがって、タキソール(登録商標)製剤は、可溶化ビヒクルとしてクレモフォール(登録商標)ELを含有するが、本製剤中のクレモフォール(登録商標)の存在は、動物(Lorenz et al., Agents Actions 7, 63-67, 1987)及びヒト(Weiss et al., J. Clin. Oncol. 8, 1263-1268, 1990)における重度の過敏症反応と結び付けられている。したがって、タキソール(登録商標)を投与されている患者は、クレモフォール(登録商標)の存在によって起こる過敏症及びアナフィラキシーを低減するために、コルチコステロイド剤(デキサメタゾン)及び抗ヒスタミン薬の前投薬を必要とする。
【0004】
一方、アブラキサン(登録商標)はまた、ABI−007として知られ、クレモフォール(登録商標)が含まれていない、Abraxis Oncologyにより販売されるパクリタキセルのアルブミン−ナノ粒子製剤である。ビヒクルとしてのアルブミンナノ粒子の使用は、生理食塩水により再構築される場合、コロイドの形成をもたらす。臨床研究に基づいて、アブラキサン(登録商標)の使用は、タキソール(登録商標)と比較して、過敏症反応を低減する特徴があることが示されている。したがって、アブラキサン(登録商標)を投与されている患者には前投与は必要とされない。
【0005】
アルブミン−ナノ粒子製剤のもう一つの利点は、毒性乳化剤を除外することにより、現在可能なタキソール(登録商標)を用いた投与より、より頻繁な間隔において、より高用量のパクリタキセルを投与することが可能な点である。増加した効果が、(i)より高い耐量(300mg/m2)、(ii)より長い半減期、(iii)遷延性局所腫瘍の利用能及び/又は(iv)持続性in vivo放出の結果として、固形腫瘍中に見られ得る可能性がある。アブラキサン(登録商標)は、過敏症反応を低減する一方で、該薬剤の化学治療効果は継続又は改善される。
【0006】
コロイドナノ粒子又は200nm未満の大きさの粒子は、漏出性血管系によって腫瘍部位に集まる傾向にあることが知られている。この効果は、いくつかのリポソーム(lipsomal)製剤について記載されている(Papahadjopoulos, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88, 11460, 1991);(Gabizon, A., Cancer Res., 52, 891, 1992);(Dvorak, et al., Am. J. Pathol. 133, 95, 1988);(Dunn, et al., Pharm, Res., 11, 1016-1022, 1994);及び(Gref, et al, Science 263, 1600-1603, 1994)。腫瘍部位におけるパクリタキセルの局在性ナノ粒子は、その可溶化(クレモフォール(登録商標)を含有する)形態での薬剤投与と比較した場合、より優れた効果をもたらす腫瘍部位での徐放性薬剤放出をもたらし得る可能性がある。
【0007】
該ナノ粒子製剤は、ナノ粒子形態で少なくとも約50%の活性剤を含む。さらに、該ナノ粒子製剤は、ナノ粒子形態で少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%の活性剤を含む。さらに、該ナノ粒子製剤は、ナノ粒子形態で少なくとも約95%又は少なくとも約98%の活性剤を含む。
【0008】
オステオネクチンとしても知られる、分泌タンパク質、酸性、高システイン(Secreted Protein, Acidic, Rich in Cysteines:SPARC)は、281アミノ酸糖タンパク質である。SPARCは、カチオン(例、Ca2+、Cu2+、Fe2+)、増殖因子(例、血小板由来増殖因子(PDGF)、及び血管内皮増殖因子(VEGF))、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質(例、コラーゲンI−V及びコラーゲンIX、ビトロネクチン、並びにトロンボスポンジン−1)、内皮細胞、血小板、アルブミン、並びにハイドロキシアパタイト(hydroxyapaptite)を含む多種多様のリガンドに対する親和性を有する。SPARC発現は、発生学的に調節されており、正常な発達の間に又は損傷に応えて、再造形が起こっている組織において主に発現する(例、Lane et al., FASEB J., 8, 163-173 (1994)を参照)。高レベルのSPARCタンパク質は、発達中の骨及び歯で発現する。
【0009】
SPARCは、いくつかの侵襲性癌においてアップレギュレートされるマトリックス細胞タンパク質であるが、正常組織には存在しない(Porter et al., J Histochem. Cytochem., 43, 791(1995))。実際、SPARC発現は、種々の腫瘍の間で誘導される(例、膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸、及び乳房)。膀胱癌において、例えば、SPARC発現は進行癌に関連している。ステージT2又はより高いステージの侵襲性膀胱腫瘍は、ステージT1(又はより低いステージの表在性腫瘍)の膀胱腫瘍より、より高いレベルのSPARCを発現し、かつより乏しい予後診断を有することが示されている(例、Yamanaka et al., J. Urology, 166, 2495-2499 (2001)を参照)。髄膜腫において、SPARC発現は侵襲性腫瘍のみに関連している(例、Rempel et al., Clincal Cancer Res., 5, 237-241 (1999)を参照)。SPARC発現はまた、in situでの侵襲性乳癌病変の74.5%で検出されており(例、Bellahcene, et. al, Am. J. Pathol, 146, 95-100 (1995)を参照)、かつ浸潤性乳管癌の54.2%で検出されている(例、Kim et al., J. Korean Med. Sci, 13, 652-657 (1998)を参照)。SPARC発現はまた、乳癌における頻繁な微小石灰化に関連しており(例、上記Bellahcene et. alを参照)、SPARC発現が、骨への乳癌転移(breast metastases)の親和性の原因であり得ることを示している。SPARCはまた、アルブミンと結合することが知られている(例、Schnitzer, J. Biol. Chem., 269, 6072 (1994) を参照)。
【0010】
抗体療法は、疾病を制御するための効果的な方法であり、ここで特異的タンパク質マーカーが同定され得る。例としては、アバスチン−抗VEGF抗体、リツキサン−抗CD20抗体、及びレミケード−抗TNF抗体が挙げられる。そのようなものとして、SPARCに対する抗体は、ヒト及び他の哺乳動物の腫瘍、並びにSPARCタンパク質を発現する他の増殖性、過形成性、再造形、及び炎症性疾患を治療するための重要な治療剤に相当するだろう。さらに、イメージング剤又は造影剤と結合したSPARCに対する抗体は、該疾患の検出及び診断手段となるだろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ヒト及び他の哺乳動物の腫瘍、並びに他の増殖性、過形成性、再造形、及び炎症性疾患の治療方法の必要性が残る。さらに、化学療法剤の有効性を予測又は評価するために、ヒト又は他の哺乳動物の腫瘍の応答を予測又は判定する必要性が残る。さらに、該疾患を検出及び診断するために好適な手段が必要とされる。これら及び本発明の他の利点、並びにさらなる発明の特徴は、本明細書内に添付の発明の詳細な説明により明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測又は判定方法を提供し、ここで、該方法は、(a)哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現又はSPARC RNA発現を検出する工程、及び(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量を定量化する工程を含む。本発明は、該生物学的サンプルが腫瘍(もしくは増殖性疾患に関与する組織)から又は例えば、脳脊髄液、血液、血漿、血清もしくは尿などの体液から単離される、実施形態を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤による哺乳動物における腫瘍又は他の増殖性疾患の治療方法であって、(a)哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現又はSPARC RNA発現を検出する工程、(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量又はSPARC RNA量を定量化する工程、(d)化学療法剤又は他の抗癌剤の使用を示すレベルで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAが存在するかどうかを判定する工程、及び(e)、それが示される場合、SPARCタンパク質レベル又はSPARC RNAレベルに基づいて、治療有効量の化学療法剤又は他の抗癌剤を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答を予測するキットであって、腫瘍からのタンパク質単離手段、SPARCタンパク質の検出及び定量化手段、コントロールタンパク質、並びに腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キットを提供する。本発明はまた、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答を予測するキットであって、腫瘍からRNAを単離する手段、SPARC RNAの検出及び定量化手段、コントロールRNA、並びに腫瘍内のSPARC RNAレベルに基づいて腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キットを提供する。
【0015】
本発明は、化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答の予測又は判定方法、並びに化学療法剤による哺乳動物の腫瘍の治療方法であって、ここで、該化学療法剤は、例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、アブラキサン(登録商標)、又はそれらの組み合わせである、方法を提供する。本発明は、化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答の予測とSPARCレベルとの間に正又は負の相関が認められる、実施形態を更に提供する。
【0016】
本発明は、哺乳動物の腫瘍の応答の予測もしくは判定方法、又は化学療法剤での哺乳動物の腫瘍の治療方法であって、ここで、例えば該哺乳動物は、ヒトであり、該腫瘍は、乳房、卵巣、頭頸部、肺、結腸、膀胱又は腎臓の癌などを含むが、これに限定されない、方法を提供する。
【0017】
本発明は、治療としてのアルブミン−結合タンパク質の利用方法、治療としてのSPARC及びSPARC又はSPARC結合−タンパク質に対する抗体の利用方法、哺乳動物における疾病部位への化学療法剤の送達方法であって、ここで、該方法は、治療有効量の医薬組成物を該哺乳動物に投与する工程を含み、ここで、該医薬組成物は、アルブミン−結合タンパク質及び薬学的に許容される担体と結合することが可能な化合物と結合する化学療法剤を含む、方法を提供する。さらに、本発明は、SPARCタンパク質及び薬学的に許容される担体と結合することが可能な化合物と結合する化学療法剤を含む組成物を提供する。さらに、本発明は、SPARC認識基及び治療剤を含む送達剤であって、ここで、該治療剤は、SPARC認識基と結合している、送達剤を提供する。その上、本発明は、哺乳動物における腫瘍への化学治療剤の送達方法であって、ここで、該方法は、治療有効量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含み、ここで、該医薬組成物は、アルブミンと結合することが可能なSPARCタンパク質と結合した化学療法剤及び薬学的に許容される担体を含む方法を提供する。本発明の組成物は、小分子、大分子又はタンパク質であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
アルブミン−結合タンパク質を含む組成物に対して、局在化のさらなる機序が存在することが、今では発見されている。SPARC、キュビリン、及びTGFβなどのアルブミン−結合タンパク質は、治療剤をアルブミン−結合タンパク質の過剰発現を特徴とする疾病部位へと標的化するために使用され得る。
【0019】
本発明は、剤と結合する基の使用であって、ここで、該基は、SPARC、キュビリン、又はTGFβなどのアルブミン−結合タンパク質を結合することが可能であり、該剤は、該アルブミン−結合タンパク質が主要な役割を果たし、正常組織と比較して過剰発現している、疾病のための治療剤、造影剤、又は送達剤である、使用を提供する。好ましくは、該アルブミン−結合タンパク質が、SPARC、キュブリン、又はTGFβから選ばれる。最も好ましくは、該アルブミン−結合タンパク質がSPARCであり、該アルブミン−結合タンパク質と結合する基が、SPARC認識基である。好適なSPARC認識基としては、リガンド、小分子、抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明はまた、化学療法剤又は他の抗癌剤に対するヒトもしくは他の哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測又は判定方法を提供する。該方法は、(a)ヒト又は他の哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現を検出する工程、及び(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量を定量化する工程を含む。該腫瘍により発現したSPARC量を一度決定すれば、例えば、SPARC発現と投与された治療剤の投与量とを相関させることにより、化学療法剤の有効性が予測又は確認され得る。本発明はまた、SPARCが主要な役割を果たし、正常組織と比較して過剰発現している、疾病に対する治療剤又はイメージ剤としてのSPARCに対する抗体の使用を提供する。
【0021】
「化学療法剤に対するヒトもしくは他の哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測する工程」は、化学療法剤の投与前の応答の可能性について、臨床経験と併用した検査結果に基づいて、判断することを意味する。「化学療法剤に対するヒト又は他の哺乳動物の応答を判定する」とは、化学療法剤を投与した後の応答の可能性に関して、その応答が臨床的に又は医療分野の当業者に公知の従来の臨床的もしくは画像診断(imagining)研究によって判定され得る前に、臨床経験と併用した検査結果に基づいて、判断することを意味する。
【0022】
本明細書で用いられる場合「化学療法剤に対するヒト又は他の動物の腫瘍の応答」とは、化学療法剤により、患者が臨床的に改善した程度もしくは量、又は腫瘍の大きさもしくは悪性度が減少した程度もしくは量をいう。患者は、例えば、全身状態、身体検査、画像診断又は臨床検査結果など、客観的基準に基づいて臨床的に改善したとみなされ得る。患者はまた、例えば、痛み、障害、疲労又は精神的予後など、患者により報告される主観的基準に基づいて臨床的に改善したとみなされ得る。腫瘍サイズの大きさの減少は、原発腫瘍又は、例えば、身体検査、画像診断又は臨床値など、当分野で公知の任意の好適な手段により測定される全身腫瘍組織総量に基づき得る。「腫瘍サイズの減少」は、少なくとも約10%の変化を意味する。さらに、少なくとも約20%の変化が存在することが望ましく、好ましくは少なくとも約25%の変化、より好ましくは少なくとも約33%の変化、より好ましくは少なくとも約50%の変化、より好ましくは少なくとも約90%の変化、より好ましくは少なくとも約95%の変化、及び最も好ましくは少なくとも約99%の変化が存在する。「腫瘍の悪性度」の減少は、例えば、組織学的グレード、%腫瘍内の生存細胞、%腫瘍内の増殖性細胞、腫瘍の侵襲性、腫瘍の転移する能力又は当分野で公知の腫瘍悪性度の他の測定基準の低下を意味する。「腫瘍の悪性度の減少」は、医療分野における当業者に一般に使用される腫瘍悪性度に関連する測定可能なパラメーターの少なくとも約10%の変化を意味する。医療分野における当業者に一般に使用される腫瘍悪性度に関連する測定可能なパラメーターの、さらに、少なくとも約20%の変化が存在することが望ましく、好ましくは少なくとも約25%の変化、より好ましくは約33%の変化、より好ましくは少なくとも約50%の変化、より好ましくは少なくとも約90%の変化、より好ましくは少なくとも約95%の変化、及び最も好ましくは少なくとも約99%の変化が存在する。
【0023】
本明細書内では、用語「抵抗性(resistant)」又は「化学療法剤又は他の抗癌剤に対する抵抗性」は、治療に対する癌サンプル又は哺乳動物の獲得又は天然の抵抗性を指し、即ち治療療法に対して反応しない、又は、例えば、治療療法に対する25%以上の応答の減少を有する、治療療法に対する減少した又は限られた応答を有する抵抗性を指す。さらに、抵抗性はまた、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又はそれを超えるものから、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍又はそれを超える応答の減少により示され得る。応答の減少は、抵抗性を獲得する前と同一の癌サンプルもしくは、哺乳動物と比較することにより、又は、異なる癌サンプルもしくは治療療法に対して抵抗性を有さないことが公知の哺乳動物と比較することにより、測定される。本明細書内では、用語「感受性」又は「化学療法剤又は他の抗癌剤に対する感受性」は、抵抗性がないことを指す。
【0024】
さらに、本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤での哺乳動物における腫瘍又は他の増殖性疾患の治療方法であって、下記工程:
(a)哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現又はSPARC RNA発現を検出する工程、(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量又はSPARC RNA量を定量化する工程、(d)化学療法剤又は他の抗癌剤の使用を示すレベルで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAが存在するかどうかを判定する工程、及び(e)、もし、SPARCタンパク質レベル又はSPARC RNAレベルに基づいて、それが示される場合、治療有効量の化学療法剤又は他の抗癌剤を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0025】
本明細書内では、用語「治療(treating)」、「治療(treatment)」、「治療(therapy)」、及び「治療療法(therapeutic treatment)」は、治癒的療法(curative therapy)、予防的治療(prophylactic therapy)、又は予防的治療(preventative therapy)を指す。「予防的治療(preventative therapy)」の一例は、標的疾病(例、癌もしくは他の増殖性疾患)又はそれに関連する疾患の予防又は機会の低減である。治療を必要とする人々としては、既に疾病又は疾患を伴っている人々、並びに予防されるべき疾病又は疾患にかかる傾向にある人々が挙げられる。本明細書内では、用語「treating」、「treatment」、「therapy」、及び「therapeutic treatment」はまた、疾病、又は関連する疾患と戦うことを目的とする哺乳動物の管理及び治療を表し、症状、副作用、又は疾病の他の合併症、疾患を緩和する組成物の投与を包含する。癌のための治療療法としては、外科手術、化学療法、放射線療法、遺伝子療法、及び免疫療法が挙げられるが、これに限定されない。
【0026】
「化学療法剤の使用を示すレベルで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAが存在するかどうかを判定する工程」は、腫瘍が化学療法剤に当然応答することが期待され得ることを示す程度に、SPARCレベルのデータと治療応答との歴史的相関関係の比較に基づき、腫瘍を持つ哺乳動物由来の検体に存在する定量されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルが十分に高いことを意味する。「示す(indicating)」又は「示された(indicated)」は、SPARCレベルを考慮し、かつ適当な医学的判断に基づいて、化学療法剤が使用されるべきであることを意味する。例えば、これに限定されないが、顕微鏡スライド上の生検の薄い切片を調製することにより、抗−SPARC抗体による免疫組織学のために腫瘍の生検が調製され得る。次いで、生検スライドを、使用が考慮される化学療法剤に対して感受性及び抵抗性である他の腫瘍由来の公知のSPARCレベルの生検切片を包含するコントロールスライドと同時に、抗−SPARC免疫組織学プロトコル(例、Sweetwyne et al, J. Histochem. Cytochem. 52(6):723-33 (2004); Tai et al, J. Clin. Invest. 115(6): 1492-502 (2005)を参照)を使用して染色する。光学顕微鏡を使用して免疫組織学的染色の強度を類別することは当分野で一般的な方法である。当業者(例、病理学者)はコントロールスライドの染色との比較に基づき、腫瘍生検に対する染色段階(例、0、1+、2+、3+、4+)を割り当てることができる。腫瘍生検の染色が、例えば3+又は4+に類別される場合、化学療法剤での治療は、「示され(indicated)」得る。染色段階の該比較及び割り当ては、腫瘍を持つ哺乳動物を治療する医療分野における当業者(例、内科医、病理学者、腫瘍学者、獣医)の能力の十分範囲内である。
【0027】
「治療有効量」は、哺乳動物における疾病又は疾患の1以上の症状を(ある程度、熟練開業医により判断されたような)軽減する量を意味する。さらに、「治療有効量」は、疾病又は疾患に関連する又は原因である、生理的又は生化学的パラメーターが部分的もしくは完全に正常に戻る量を意味する。当業者の臨床医は、静脈内、皮下、腹腔内、経口的に、又は吸入を通じてなどで投与したとき、特定の病状、又は疾患を治療又は予防するために組成物の治療有効量を決定することができる。治療的に有効であるために必要な組成物の正確な量は、多くの患者に特異的な検討事項に加えて、例えば、活性剤の具体的な活性、用いられる送達装置、剤の物理的特性、投与の目的など多数の要因に起因するだろう。治療的に有効であるために投与されるべきである組成物の量の決定は、当分野において日常的であり、かつ通常技術の有る臨床医の能力の範囲内である。
【0028】
本発明に従って実行される方法は、摘出、生検、吸引、静脈穿刺(venupuncture)、又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない、任意の好適な手順により、腫瘍又は増殖性疾患に関与する組織から単離され得る生物学的サンプルを必要とする。代わりに、本発明に従って実行される方法は、例えば、脳脊髄液、血液、血漿、血清、及び尿などの体液由来であり得る、生物学的サンプルを必要とする。さらに、腫瘍及び体液物質を含む、コントロール又は基準生物学的サンプルは、同一哺乳動物の正常組織、腫瘍もしくは増殖性疾患のない他の個体又は公知のSPARCレベル並びに所定の化学療法剤に対して感受性又は抵抗性であることが知られている他の腫瘍から獲得され得る。さらに、本発明の方法は、腫瘍又は増殖性疾患に苦しむ哺乳動物がヒトであるときにも実施され得る。
【0029】
さらに、本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答を予測するキットであり、該腫瘍からのタンパク質の単離手段、SPARCタンパク質の検出及び定量化手段、コントロールタンパク質、並びに該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キットを提供する。本発明はまた、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答を予測するキットであって、該腫瘍からのRNAの単離手段、SPARC RNAの検出及び定量化手段、コントロールRNA、並びに腫瘍中のSPARC RNAレベルに基づいて該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キットを提供する。例えば、顕微鏡スライド上に該腫瘍生検の薄い切片を設置することで、腫瘍生検中の該SPARCタンパク質又はSPARC RNAは「単離され」得る。任意のSPARCタンパク質又はSPARC RNAの存在は、次いで、抗−SPARC抗体を用いた免疫組織学染色(例、Sweetwyne et al, J. Histochem. Cytochem. 52(6):723-33 (2004); Tai et al., J. Clin. Invest. 115(6): 1492-502 (2005)を参照)又はSPARC RNAに相補的である核酸プローブを使用したin situハイブリダイゼーション(例、Thomas et al., Clin. Can. Res. 6:1140-49 (2000)を参照 )により、検出及び定量化され得る。同時に、ポジティブコントロールスライド及びネガティブコントロールスライドはSPARCタンパク質又はSPARC RNAに関して染色される。当業者は容易に光学顕微鏡を使用し、該腫瘍生検における該SPARCの染色強度(例、0、1+、2+、3+、4+)を類別することができる。本発明のキットはまた、例えば、「化学療法剤による治療は、該腫瘍生検の染色が例えば3+もしくは4+に類別された場合に示される」又は「3+もしくは4+染色の腫瘍は、高い応答率を有する」など、腫瘍中のSPARCタンパク質レベル又はSPARC RNAレベルに基づいて該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む。本発明のキットの特定の実施形態に関する特定のルールは、遡及的又は予期される相関研究を実行することにより、容易に作られ得、当該ルールは、当技術分野で日常的であり過度の実験を必要としない。
【0030】
ヒトSPARC遺伝子は303アミノ酸SPARCタンパク質をコードし、一方成熟SPARCは285アミノ酸糖タンパクである。シグナル配列の開裂後、分泌型32-kDが産生され、糖鎖付加によりSDS−PAGE上の43kDに移動する。完全なSPARCタンパク質のアミノ酸配列を配列番号1(図1)に開示し、該SPARCタンパク質をコードするRNAの核酸配列を配列番号2(cDNA配列として提示する、即ち該RNAのウリジン(「U」)はチミン(「T」)として提示する)(図2)に開示する。
【0031】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は同じ意味で使用される。本発明は、例えば配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はタンパク質などのSPARCポリペプチド又はSPARCタンパク質の検出及び定量化を提供する。本発明はまた、SPARCポリペプチドの検出を提供しここで、該ポリペプチドは、配列番号1の配列由来の少なくとも約10個の連続的なアミノ酸のアミノ酸配列、好ましくは配列番号1の配列由来の少なくとも約15個の連続的なアミノ酸、より好ましくは配列番号1の配列由来の少なくとも約20個の連続的なアミノ酸、及び最も好ましくは配列番号1の配列由来の少なくとも約100個の連続的なアミノ酸を含む。さらに、本発明は、ここで、該配列は、配列番号1の対応する配列と少なくとも約80%相同、好ましくは配列番号1の対応する配列と少なくとも約90%相同、さらに好ましくは配列番号1の対応する配列と少なくとも約95%相同、並びにさらにより好ましくは配列番号1の対応する配列と少なくとも約99%相同であるポリペプチドを含むSPARCポリペプチドの検出を提供する。「配列番号1の対応する配列」は、配列番号1の配列とアラインされる配列を意味し、ここで、アライメントの領域は、少なくとも約10アミノ酸長であり、好ましくは少なくとも約15アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも約20アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも約30アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも約40アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも約50アミノ酸長であり、並びにさらにより好ましくは少なくとも約100アミノ酸長である。配列アライメントの様々な方法は、生命工学分野で公知である(例、Rosenberg, BMC Bioinformatics 6:278 (2005); Altschul et al., FEBS J. 272(20): 5101-5109 (2005)を参照)。
【0032】
本発明は、例えば、配列番号2の核酸配列を含むRNAのようなSPARC RNAの検出及び定量化を提供する。本発明はまた、SPARC RNAの検出を提供し、ここで、該RNAは、配列番号2の配列由来の少なくとも約15個の連続的なヌクレオチド、好ましくは配列番号2の配列由来の少なくとも約20個の連続的なヌクレオチドであり、並びにより好ましくは配列番号2の配列由来の少なくとも約30の連続的なヌクレオチドの塩基配列を含む。さらに、本発明は、ここで、該配列は、配列番号2の対応する配列と少なくとも約80%相同、好ましくは配列番号2の対応する配列と少なくとも約90%相同、さらにより好ましくは配列番号2の対応する配列と少なくとも約95%相同、並びにさらにより好ましくは配列番号2の対応する配列と少なくとも約99%相同である核酸を含むSPARC RNAの検出を提供する。「配列番号2の対応する配列」は、配列番号2の配列に合わせた配列を意味し、ここで、アライメントの領域は、少なくとも約15ヌクレオチド長であり、好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも約60ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも約120ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも約150ヌクレオチド長であり、さらにより好ましくは少なくとも約200ヌクレオチド長である。配列アライメントの様々な方法は、生物工学分野で公知である(例、Rosenberg, BMC Bioinformatics 6:278 (2005); Altschul et al., FEBS J. 272(20): 5101-5109 (2005)を参照)。SPARC RNAは、任意のSPARC RNAを意味し、SPARC mRNA、hnRNA、一次転写産物又はスプライスバリアントを含むが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書内で使用する「定量化」は、存在する量又は濃度の決定を意味する。本発明は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの定量化方法を提供し、ここで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAは、正常組織と比較して(該腫瘍の原因の対応する正常組織中で検出されるレベルを含むが、これに限定されない)、該腫瘍中で過剰発現又は過小発現している。あるいは、本発明は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの定量化方法を提供し、ここで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAは、他の腫瘍(同一組織の腫瘍又は組織学的に同一な腫瘍を含むが、これらに限定されない)と比較して、腫瘍中で過剰発現又は過小発現している。さらに、本発明は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの定量化方法を提供し、ここで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAは、他の腫瘍(化学療法剤又は化学療法剤の組み合わせに対して感受性又は抵抗性である腫瘍を含むが、これらに限定されない)と比較して、該腫瘍中で過剰発現又は過小発現している。過剰発現又は過小発現は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAのレベルが、2つの検体又はサンプルの間で少なくとも約5%異なることを意味する。さらに、2つの検体又はサンプルの間の差異が少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約3倍、より好ましくは少なくとも約5倍、並びに最も好ましくは少なくとも約10倍であることが望ましい。
【0034】
本発明は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの定量化方法を提供し、ここで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAは、腫瘍のない患者由来の対応する液体と比較して、試験生物学的液体中で過剰発現又は過小発現している。あるいは、本発明は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの定量化方法を提供し、ここで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAは、腫瘍(化学療法剤又は化学療法剤の組み合わせに対して感受性又は抵抗性である腫瘍を含むが、これに限定されない)を伴う別の患者由来の対応する体液と比較して、試験生物学的体液中で過剰発現又は過小発現している。過剰発現又は過小発現は、SPARCタンパク質又はSPARC RNAのレベルが、2つの検体の間で少なくとも約5%異なることを意味する。さらに、差異が少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約3倍、より好ましくは少なくとも約5倍、並びに最も好ましくは少なくとも約10倍であることが望ましい。
【0035】
本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する腫瘍の応答の予測又は判定方法、腫瘍の治療方法、並びに化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、ここで、該腫瘍は、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、メラノーマ、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体腫瘍、卵巣腫瘍、外陰腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓腫瘍、腎盂腫瘍、尿管腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺腫瘍、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選ばれる。さらに、本発明は、化学療法剤に対する腫瘍の応答の予測又は判定方法、腫瘍の治療方法、並びに化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、ここで、該腫瘍は、肉腫、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌、基底細胞癌、明細胞癌、膨大細胞腫(oncytoma)又はそれらの組み合わせである。さらに、本発明は、化学療法剤に対する腫瘍の応答の予測又は判定方法、腫瘍の治療方法、並びに化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、ここで、該腫瘍は、良性腫瘍又は悪性腫瘍である。その上さらに、本発明は、化学療法剤に対する増殖性疾患の応答の予測もしくは判定方法又は増殖性疾患の治療方法を提供し、該増殖性疾患が、例えば良性前立腺過形成、子宮内膜増殖症、アテローム性動脈硬化症、乾癬又は増殖性腎糸球体症である場合を含むが、これらに限定されない。本発明は、該腫瘍又は増殖性疾患が哺乳動物においてである実施形態を提供し、該哺乳動物がヒトである場合を含むが、これに限定されない。
【0036】
本明細書内で使用する、用語「剤」又は「薬剤」又は「治療剤」は、化学物質、化学物質の混合体、生体高分子、又は治療特性を有するとみられている、細菌、植物、真菌、もしくは動物(特に哺乳動物)細胞もしくは組織などの生物学的物質から作られた抽出物を指す。剤又は薬剤は、精製され、実質的に精製され又は部分的に精製され得る。本発明による「剤」は、放射性治療剤も含む。本明細書内で使用する、用語「化学療法剤」は、癌、腫瘍、及び/又は増殖性疾患に対して活性を有する剤を指す。
【0037】
本発明に従って使用される好適な化学療法剤又は他の抗癌剤としては、チロシンキナーゼ阻害剤(ゲネステイン)、生物学的活性剤(TNF、又はtTF)、放射性核種(131I、90Y、111In、211At、32P及び他の公知の治療放射性核種)、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトセシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポシロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン(meplhalan)、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)及び誘導体、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソウレア(nitrosurea)、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、及び超白金が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本発明に従って使用される好適な化学療法剤としては、代謝拮抗剤(例、アスパラギナーゼ)、抗有糸分裂薬(例、ビンカ・アルカロイド)、DNA損傷剤(例、シスプラチン)、アポトーシス促進剤(プログラム細胞死又はアポトーシスを誘導する剤)(例、エピポドフィロトキシン)、分化誘導剤(例、レチノイド)、抗生物質(例、ブレオマイシン)、及びホルモン(例、タモキシフェン、ジエチルスチルベストロール(diethylstibestrol))が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明に従って使用される好適な化学療法剤としては、例えば、INF−α、フマギリン、アンジオスタチン、エンドスタチン、サリドマイドなど血管新生抑制剤(血管新生阻害剤)が挙げられる。「他の抗癌剤」としてはまた、生物活性ポリペプチド、抗体、レクチン、及びトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に従って使用される好適な抗体としては、共役(結合)又は非共役(非結合)抗体、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、ヒト化又は非ヒト化抗体、並びにFab’、Fab、又はFab2断片、一本鎖抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
好ましい化学療法剤としては、ドセタキセル、パクリタキセル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。「それらの組み合わせ」は、1以上の薬剤、例えば、ドセタキセル及びパクリタキセルを含む剤形の投与、並びに連続的だが時間的には明確に異なる、ドセタキセル及びパクリタキセルの投与(例、1サイクルでドセタキセルを、次にパクリタキセルを使用する)の両方を指す。特に好ましい化学療法剤は、タンパク質−結合剤の粒子を含み、ここで、該タンパク質−結合剤粒子を構成する該タンパク質はアルブミンを含み、ここで、50%を超える該化学療法剤がナノ粒子の形態であることを含むが、これに限定されない。最も好ましくは、該化学療法剤は、例えばアブラキサン(登録商標)など、アルブミン−結合パクリタキセルの粒子を含む。該アルブミン−結合パクリタキセル製剤は、本発明に従って使用され得、投与される該パクリタキセル用量は、約3週間の投与サイクルで(即ち、該パクリタキセル用量の投与は約3週間に1回)約30mg/m2から約1000mg/m2である。さらに、投与される該パクリタキセル用量は、約3週間の投与サイクルで約50mg/m2から約800mg/m2、好ましくは約80mg/m2から約700mg/m2、並びに最も好ましくは約250mg/m2から約300mg/m2であることが望ましい。
【0039】
任意の好適な生物学的サンプルは、本発明の方法の文脈における哺乳動物から単離され得、ポリペプチド及び/又はRNA検出及び定量化に使用され得る。好ましくは、該生物学的サンプルは、腫瘍生検などにより、該腫瘍から単離される。該生物学的サンプルは、当技術分野で公知の方法を使用して該哺乳動物から単離される。あるいは、該生物学的サンプルは、例えば、脳脊髄液、血液、血漿、血清、又は尿を含む、該哺乳動物の体液から単離され得る。特に、多くのタンパク質精製技術は当技術分野で公知である(例、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, pp. 421-696 (1988)を参照)。
【0040】
任意の好適なSPARCタンパク質の検出及び定量化方法は、本発明に従って使用され得、抗−SPARC抗体の使用(例、ウエスタンブロット、ELISA)(例、Sweetwyne et al., J. Histochem. Cytochem. 52(6):723-33 (2004); Tai et al., J. Clin. Invest. 115(6):1492-502 (2005)を参照)、SPARC−特異的結合タンパク質の使用(例、放射性標識SPARCリガンド、ELISA様アッセイ)、二次元電気泳動、質量分析又はそれらの組み合わせ(例、Nedelkov D et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102(31):10852-7 (2005); Chen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101 (49): 17039-44(2004) を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、免疫組織化学的検査は、サンプル中のSPARCタンパク質の単離、検出及び定量化に使用され得る(例、Sweetwyne et al., J. Histochem. Cytochem. 52(6):723-33 (2004); Tai et al., J. Clin. Invest. 115(6): 1492-502 (2005)を参照)。
【0041】
本発明は、該SPARC RNAが検出及び定量化される方法を提供する。Chomczynski 米国特許番号第5945515号)又は DiMartinoら (Leukemia 20(3):426-32 (2006)により記載された方法など、多くの方法は、RNAを単離するために当技術分野で公知である。あるいは、RNAは、組織切片を包含する顕微鏡スライドの調製により、本発明による検出及び定量化に好適な形態で単離され得る(例、Thomas et al., Clin. Can. Res. 6:1140-49 (2000) を参照)。SPARC RNAは、in situハイブリダイゼーション(例、Thomas et al., Clin. Can. Res. 6:1140-49 (2000) を参照)、ノーザンブロット(例、Wrana et al., Eur. J. Biochem. 197:519-28 (1991)を参照)、リアルタイムRT−PCR(例、DiMartino et al., Leukemia 20(3):426-32 (2006)を参照)リアルタイムNASBA法(例、Landry et al., J. Clin. Microbiol. 43(7):3136-9 (2005)を参照)、マイクロアレイ解析(例、Tai et al., J. Clin. Invest. 115(6): 1492-502 (2005); DiMartino et al., Leukemia 20(3):426-32 (2006) を参照)及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、当技術分野で公知の任意の好適な方法により、検出及び定量化され得る。
【0042】
本発明はまた、化学療法剤又は他の抗癌剤に対するヒトもしくは他の哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測及び判定方法を提供し、ここで、化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の該応答は、SPARCレベルと正又は負に相関する。「SPARCレベルと相関する」は、例えば、特定の化学療法剤に対する腫瘍の応答と検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルとの間の相互又は相反関係を意味する。即ち、該腫瘍応答の質、程度、規模、又はレベルは、検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの度合いに伴って変化する。検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの増加に伴い、該腫瘍応答の質、程度、規模、又はレベルが増加する場合に、「正の相関」が存在する。検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルの増加に伴い、該腫瘍応答の質、程度、規模、又はレベルが減少する場合に、「負の相関」が存在する。腫瘍応答レベルと検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルとの間の関係は、階段関数、一次関数もしくは対数関数の形を取り得、又はこれらに近似し得る。
【0043】
さらに、本発明はまた、検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルと公知の基準サンプルにおいて検出されたそれとの比較により、化学療法剤又は他の抗癌剤に対するヒトもしくは他の哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測又は判定方法を提供する。該基準サンプルは、例えば、正常組織又は正常体液由来であり得る。あるいは、該基準サンプルは、公知のSPARCレベル、応答、特定の化学療法剤もしくは他の抗癌剤又はそれらの組み合わせに対する感受性又は抵抗性を有する腫瘍であり得る。
【0044】
さらに、予測された応答は、特定の化学療法剤が使用される又は代替化学療法剤が使用されるように、効果的又は非効果的と特徴付けられ得る。そのようなものとして、予測された応答は、別の化学療法剤の使用に対する一つの化学療法剤の使用がもたらす応答の比率(例、タキソテール(登録商標)により産生された応答に対するアブラキサン(登録商標)により産生された応答の比率)として特徴付けられる。
【0045】
本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳類の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答の予測方法であって、下記工程;
(a)該哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質又はSPARC RNA発現を検出する工程、(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質又はSPARC RNA量を定量化する工程、並びに(d)腫瘍又は増殖性疾患のHer2状態を判定する工程、を含む方法をさらに提供する。本発明はまた、化学療法剤又は他の抗癌剤による、哺乳動物における腫瘍又は他の増殖性疾患の治療方法であって、下記工程;
(a)該哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質又はSPARC RNA発現を検出する工程、(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質又はSPARC RNA量を定量化する工程、(d)腫瘍又は増殖性疾患のHer2状態を判定する工程、(e)存在するSPARCタンパク質もしくはSPARC RNAレベル及び腫瘍又は増殖性疾患のHer2状態に基づいて、該化学療法剤又は他の抗癌剤の使用は示されるかどうかを判定する工程、並びに(f)示す場合、治療有効量の該化学療法剤又は他の抗癌剤を投与する工程、を含む方法を提供する。
【0046】
「腫瘍又は増殖性疾患のHer2状態の判定」は、Her2タンパク質又はHer2 RNAが腫瘍又は他の増殖性疾患により発現されるか否かを、腫瘍、別の増殖性疾患が存在する組織、又は他の生物学的サンプルにおけるHer2タンパク質又はHer2 RNAの発現の検出並びに存在するHer2タンパク質又はHer2 RNA量の定量化によって、判定することを意味する。Her2タンパク質又はHer2 RNAが腫瘍又は増殖性疾患により発現されるか否かの好適な判定方法としては、免疫組織化学検査、ウエスタンブロット、ELISA、二次元電気泳動、質量分析、in situハイブリダイゼーション、RNA増幅、ノーザンブロット、マイクロアレイ解析又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。Her2状態は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する応答を予測する工程又は化学療法剤又は他の抗癌剤が相加因子として又は支配因子として、陽性又は陰性のどちらを示すかどうか判定する工程に含まれ得る。例えば、Her2発現の欠如は、SPARCレベルと応答との間に正の相関がないことを示し得、一方Her2発現の存在は、SPARCレベルと応答との間に正の相関があることを示し得るが、これらに限定されない。Her2発現とその欠如との間の識別は、当業者の能力の範囲内であり、例えば、陽性及び陰性コントロールサンプルを、腫瘍又は他の増殖性疾患を伴う哺乳動物由来のサンプルと同時に実行した結果に基づき得る。
【0047】
したがって、 本発明は、化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍又は他の増殖性疾患の応答を予測するためのキットであって、該腫瘍からのタンパク質又はRNAの単離手段、SPARCタンパク質又はSPARC RNAの検出及び定量化手段、コントロールタンパク質又はRNA、並びに該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キットを提供する。そのようなキットは、例えば、アルブミン−結合パクリタキセルのナノ粒子を含む化学療法剤に対する乳癌、卵巣癌、もしくは頭頸部癌の応答を予測するために使用され得るが、これらに限定されない。タンパク質又はRNA単離並びにSPARCタンパク質又はSPARC RNA検出及び定量化の好適な手段は、本明細書内に記載されている。好適なコントロールタンパク質又はRNAは、例えば、腫瘍を有する哺乳動物由来の腫瘍構成要素もしくは生体液、又は腫瘍を有する哺乳動物から採取された腫瘍構成要素又は生体液から単離されたタンパク質もしくはRNAなどのポジティブコントロールを含むべきである。好適なコントロールタンパク質又はRNAは、例えば、腫瘍のない哺乳動物由来の正常組織もしくは生体液、又は腫瘍のない哺乳動物から採取された正常組織又は生体液から単離されたタンパク質もしくはRNAなどのネガティブコントロールを含む。キット中のコントロールとしてはまた、SPARCタンパク質又はSPARC RNAの定量化のためのスタンダードカーブを確立するために使用される材料又は感受性もしくは抵抗性腫瘍由来の材料が挙げられ得る。本発明のキットはまた、該腫瘍のHer2状態の判定手段を含み得る。
【0048】
本発明のキットは、該腫瘍の応答の予測のためのルールをさらに含むだろう。 該ルールは、特定の化学療法剤に対する応答の予測の根拠を本明細書に記載の化学療法剤に対する応答の予測又は判定方法に関連して、検出されたSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルにおくだろう。例えば、過去の経験に基づいた特定のレベルのSPARCタンパク質又はSPARC RNAは、化学療法剤が使用されるべきことを示し得る。特定の化学療法剤に対する応答を予測するSPARCタンパク質又はSPARC RNAレベルを測定するための(プロスペクティブ研究、レトロスペクティブ研究又はそれらの組み合わせによる)適正なデータを、過度の実験なしに得ることは、当業者の能力の範囲内である。
【0049】
以下では、便宜上、SPARCを含む、アルブミンと結合する全てのタンパク質を、SPARCと呼ぶ。該SPARCタンパク質は、特定のヒト腫瘍におけるアルブミンの蓄積に関与する。アルブミンは化学療法剤の主要な担体であるため、SPARCの発現レベルは、該腫瘍に浸透し保持される化学療法剤量を示す。したがって、SPARCの発現レベルは化学療法に対する腫瘍の応答性を予測する。
【0050】
任意の好適な生物学的サンプルは、本発明の方法の文脈において、興味の対象である哺乳動物から単離され得る。好ましくは、該生物学的サンプルは、腫瘍生検などにより該腫瘍から単離される。あるいは、該生物学的サンプルは、例えば脳脊髄液、血液、血漿、血清又は尿を含む、該哺乳動物の体液から単離され得る。生物学的サンプルの単離技術及び方法は、当業者に公知である。
【0051】
活性剤の輸送又は結合がアルブミンを必要とする限り、任意の好適な薬学的活性剤は、本発明の方法において使用され得る(例、SPARC認識基に結合した化学療法剤)。好適な活性剤としては、チロシンキナーゼ阻害剤(ゲニステイン)、生物学的活性剤(TNF又はtTF)、放射性核種(例、131I、90Y、111In、211At、32P、及び他の公知の治療放射性核種)、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトセシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポシロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン(meplhalan)、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)及び誘導体、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、超白金、血管標的薬剤、抗−血管内皮増殖因子化合物(「抗−VEGF」)、抗−上皮増殖成長因子受容体化合物(「抗−EGFR」)、5−フルオロウラシル、及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
さらに、該薬学的活性剤は、リシンAのような毒素、放射性核種、抗体自身のFc断片、一本鎖抗体、Fab断片、二重特異性抗体などであり得る。選択された該薬学的活性剤は、SPARCを認識及び結合し得、又は例えば、タンパク質もしくは非タンパク質、抗体、抗体自身のFc断片、一本鎖抗体、Fab断片、二重特異性抗体、ペプチドもしくは他の非タンパク質小分子を含む、SPARCを認識するSPARC認識基と好適に結合する。
【0053】
1以上の化学療法剤の1以上の用量が、本発明の方法に従って投与され得る。本発明の方法において使用される化学療法剤の型及び数は、特定の腫瘍の型の標準化学療法投与計画に依存するだろう。言い換えれば、特定の癌が単一化学療法剤により定期的に治療され得る一方、別の癌は、化学療法剤の組み合わせにより定期的に治療され得る。抗体又はそれらの断片と好適な治療法、化学療法、放射性核種などとの結合及び共役方法は、当技術分野で十分に記載される。
【0054】
本発明が有用である疾病としては、軟組織、結合組織、骨、実質臓器、血管などを含む任意の体の組織における増殖性の異常疾患、組織再形成、過形成、肥大創傷治癒が挙げられる。本発明の組成物により治療可能又は診断される疾病の例としては、癌、糖尿病又は他の網膜症、炎症、関節炎、血管又は人工血管移植又は血管内装置の再狭窄などが挙げられる。
【0055】
本発明に従って治療され得、化学療法に対するその応答が予測又は判定されるべき、検出される腫瘍の型は、一般的にヒト及び他の哺乳動物において見られるものである。実験動物などにおいて、該腫瘍は、注射の結果もたらされ得る。腫瘍の多くの型及び形態は、ヒト及び他の動物の疾患に見られ、いかなる特定の腫瘍型又は種類に対する本願の方法の適用にも限定するものではない。公知のように腫瘍(tumor)は、無制御かつ進行性の細胞分裂に起因する組織の異常腫瘤を含み、また、「腫瘍(neoplasm)」として典型的に公知である。本発明の方法は、腫瘍細胞及び関連ストローマ細胞、固形腫瘍、並びに例えばヒトにおける軟組織の肉腫など軟組織に関連する腫瘍に対して有用である。腫瘍又は癌は、口腔及び咽頭、消化器系、呼吸器系、骨及び関節(例、骨転移)、軟組織、皮膚(例、メラノーマ)、乳房、生殖系、泌尿器系、眼球及び眼窩、脳及び中枢神経系(例、グリオーマ)、又は内分泌系(例、甲状腺)に位置し得、必ずしも原発腫瘍又は癌に限定されるわけではない。口腔に関連する組織としては、舌及び口の組織が挙げられるが、これらに限定されない。癌は、例えば、食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、肝臓、胆嚢、及び膵臓を含む消化器系の組織において発生し得る。呼吸器系の癌は、喉頭、肺、及び気管支に影響を及ぼし得、例えば非小細胞肺癌を含む。腫瘍は、雄性及び雌性の生殖系を構成する、子宮頸部、子宮体部、卵巣外陰、膣、前立腺、睾丸、及び陰茎、並びに泌尿器系を構成する、膀胱、腎臓、腎盂、及び尿管において発生し得る。腫瘍又は癌は、頭及び/又は頸部に位置し得る(例、喉頭癌及び副甲状腺癌)。腫瘍又は癌はまた、造血系又はリンパ系に位置し得、例えばリンパ腫(例、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、又は白血病(例、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病など)が挙げられる。好ましくは、該腫瘍は膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸、脳、又は乳房に位置する。
【0056】
該SPARCタンパク質は多種多様のリガンドに対する親和性を有する。したがって、治療剤を疾病の部位へ送達する本発明の方法は、SPARCに対する親和性を有するアルブミンを含む、化合物又はリガンドが、ほとんど又は全く正常組織へは送達されず、疾病の部位へ治療剤を送達するために使用され得るという発見を前提とする。
【0057】
本発明はまた、腫瘍間質内の血管由来の内皮バリアを通過する治療組成物の輸送手段を提供する。抗体治療及び化学療法における主な障害は、腫瘍間質内の内皮バリアを通過する移行である。アルブミンは、アルブミン受容体輸送機構を使用して内皮バリアを通過する。この輸送機構は、文献(gp60及びアルボンジン(albondin))により報告された機構又は他の未発見の機構と同一であり得る。アルブミンを利用した治療剤が、促進された腫瘍性取り込みを示したことが既に報告されている(Desai, N. et al.内皮gp60受容体によるナノ粒子アルブミン−結合パクリタキセル(ABI−007)の内皮トランスサイトーシスの増加:タキソール(登録商標)により阻害された経路、27thAnnual San Antonio Breast Cancer Symposium (SABCS) (2004), abstract #1071)。さらに、内皮バリアを通過する促進された輸送は、生理学的アルブミン輸送機構を使用して達成され得る(Schnitzer, J. E.; Oh, P. J. Biol. Chem. 269, 6072-6082 (1994) )。
【0058】
小分子に関して、該薬剤のアルブミンに対する親和性が増加するように、改変が行われ得る。小分子の製剤に関して、薬剤のアルブミンへの結合を防止する溶媒は、除去され得る。あるいは、該小分子は、アルブミン、アルブミンに対する抗体、それらの断片又は以下に記載のようなアルブミン−受容体に対するリガンドと結合され得る。
【0059】
タンパク質、抗体及びそれらの断片などの生物学的分子に関して、該生物製剤がアルブミンに対して親和性を示すように、生物製剤をアルブミン結合ペプチドと一緒に設計することが可能である。該ペプチドは、アルブミン結合配列、アルブミンに対する抗体もしくは抗体断片、アルブミン担体に対する抗体もしくは抗体断片(gp60/アルボンジン/スカベンジャー受容体/又はTGF−β受容体など)、又はアルブミンの輸送体であるカベオラ中に見られるいずれかのタンパク質に対する抗体のいずれかであり得る。本発明はまた、キメラとして調製された抗体又はその断片であって、SPARCに対して一の原子価、gp60/アルボンジン/スカベンジャー受容体/もしくはTGF−β受容体のような経内皮輸送のエフェクター、又は内皮細胞のカベオラ内に見られる任意のタンパク質に対して別の原子価、をもつものも意図する。
【0060】
本発明はまた、補体結合及び/又はSPARC抗体による細胞性免疫応答の動員を通じた腫瘍及び再狭窄組織などの、SPARC発現組織の破壊方法を提供する。この場合、抗−CD20抗体であるリツキサンのように、エフェクター部分はFc断片であり、これは、SPARC発現細胞の直接的な破壊を伴う補体活性化を媒介するか、又は細胞性免疫応答を介した組織破壊をもたらす、SPARC発現組織への免疫細胞の動員、のいずれかを媒介し得る。
【0061】
本発明はまた、SPARCに対する中和抗体を使用するSPARC活性の阻害方法を提供する。該中和抗体は、in vivoでの自身のエフェクターによるSPARCの相互作用を阻害する能力を有する。例えば、該中和抗体は、SPARCと細胞表面成分との相互作用又はSPARCとアルブミン、増殖因子、及びCa2+など、その天然のリガンドとの結合を阻害し得る。
【0062】
本発明はまた、抗−SPARC治療に対するヒト又は他の哺乳動物の腫瘍の応答の判定方法を提供する。該方法は、(a)ヒトから生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現を検出する工程、及び(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量を定量化する工程を含む。抗−SPARC治療が疾患組織中のSPARC抗体とSPARCとの結合に依存するため、疾患組織中のSPARCの存在は活性化に必要である。
【0063】
本発明は、上に記載するような、抗体又はそれらの断片などSPARC認識基と結合させた1以上の診断薬の使用方法をさらに提供する。該診断薬としては、放射性同位体又は放射性核種、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤及びPET造影剤が挙げられる。結合に使用する方法は、当技術分野で公知である。
【0064】
サンプル中のSPARCタンパク質発現は、当技術分野で公知の任意の好適な方法により検出及び定量化され得る。タンパク質検出及び定量化の好適な方法としては、ウエスタンブロット、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、銀染色、BCA分析(Smith et al., Anal. Biochem., 750,76-85 (1985))、タンパク質−銅複合体に基づいた比色分析である、ローリータンパク質分析(例、Lowry et al., J. Biol. Chem., 193, 265-275 (1951)に記載)、及び、タンパク質結合の際のクマシーブルーG−250における吸光度の変化に依存する、ブラッドフォードタンパク質分析(例、Bradford et al., Anal. Biochem., 72, 248 (1976)に記載)が挙げられる。腫瘍生検は、前述(preceeding)の方法のいずれかにより解析され得、又は適切な視覚化系(即ち、HRP基質及びHRP標識二次抗体)と共に抗−SPARC抗体(モノクローナル又はポリクローナルのいずれか)を使用する免疫組織化学検査により解析され得る。
【0065】
該抗体がSPARCとの特異的結合を示す限り、SPARCに対する任意の好適な抗体は本発明の方法において使用され得る。該抗体は、モノクローナル又はポリクローナルのいずれかであり得;かつ、動物の免疫付与を通じて生成され得るか、又はファージ提示法などの組み換えDNA技術及びin vitroでの突然変異生成もしくは抗体のH鎖及びL鎖遺伝子の可変領域の合成を通じて生成され得る。ポリクローナル抗体としては、ヒト抗体及び鳥類(例、ニワトリ)、齧歯類(例、ラット、マウス、ハムスター、モルモット)、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウサギなどの動物由来のヒト化抗体が挙げられるが、これらに限定されない。モノクローナル抗体としては、ヒト細胞を含むが、これに限定されない、抗体産生細胞の単一クローン由来の抗体、及び、例えばニワトリ、ウサギ、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、ウシ、ヤギ、ヒツジなど他の動物種の細胞由来の抗体が挙げられる。合成抗体は、H鎖及びL鎖遺伝子の可変領域の遺伝子操作を通じて組み換えDNA技術を使用して生成された抗体を含む。合成抗体としてはまた、SPARC結合活性を伴う化学合成抗体断片又はファージ提示法又は類似技術由来の抗体が挙げられる。
【0066】
ヒトが使用するためには、免疫原性及び免疫応答を避けるために、ヒト化抗−SPARC抗体又はFab’、FabもしくはFab2などの好適な断片を使用することが好ましい。ヒト化抗体又はその断片は、例えば、以下の確立された方法のうちの1つを使用して生成され得る:1)ヒト化抗体は、可変CDR領域をSPARCに対する抗体のそれと置換した、ヒトIgG骨格を使用して構築され得、H鎖及びL鎖は、別々のプロモーターの下で独立して発現するか、又はIRES配列を有する1つのプロモーターの下で共発現する;2)ヒト化モノクローナル抗体は、ヒト免疫系を有するように操作されたマウスを使用してSPARCに対して発生し得る;3)SPARCに対するヒト化抗体は、ファージミド(M13、λ大腸菌ファージ、又は表面提示が可能な任意のファージ系)を使用して産生させ得る。全長抗体を構築するために、可変領域は、H鎖及びL鎖の両方のCDR上へと移動され得る。CHO、293、又はヒト骨髄性細胞などの哺乳動物細胞におけるH鎖及びL鎖の共発現は、全長抗体をもたらす。同様に、Fab’、Fab、又はFab2断片及び一本鎖抗体は、よく確立された方法を使用して調製され得る。
【0067】
SPARCに対する抗体はまた、全抗体又はSPARCに対する結合部位を保持する抗体の断片(例、Fab及びFab2)に限定されない。該抗体はまた、抗体のいずれか1つのクラスに限定されない(例、IgM、IgA、IgG、IgE、IgD及びIgY)。該抗体はまた、二価抗体、一価、又はSPARCに対する一つの原子価及びtTF又はリシンAなどのエフェクターに対する別の原子価をもつキメラに限定されない。該ヒト化抗体はIgGに限定されない。同一の技術は、特定の疾病標的に適合する、異なる抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)活性をそれぞれ有する、IgE、IgA、IgD、IgMなど他の抗体のクラス全てを生成するために使用され得る。該抗体の機能的断片は、限定的タンパク質分解により生成され得る。これらの断片は、Fab’などの一価又はFab2などの二価であり得る。断片はまた、一本鎖scfv又は二重特異性抗体として大腸菌中で合成され得る。
【0068】
本発明は、自身の薬理学効果を直接示すことができる薬学的活性剤、又はSPARC又はその他又は他のアルブミン結合部分と結合できる化合物と結合した薬学的活性剤、及び薬学的に許容される担体を含む組成物をさらに提供する。送達剤は医薬組成物であり得、SPARC認識基と結合した薬学的活性剤を含み、治療有効量の薬学的活性剤が哺乳動物に送達されるような量で、ヒトのような哺乳動物に投与される。
【0069】
本発明はまた、哺乳動物における腫瘍への化学療法剤の送達方法を提供する。該方法は、治療有効量の医薬組成物をヒト又は他の哺乳動物に投与する工程を含み、ここで、該医薬組成物は、SPARCタンパク質と結合できる化合物又はリガンドと結合した化学療法剤と薬学的に許容される担体とを含む。本発明の他の実施形態に関連して本明細書において説明した、化学療法剤、腫瘍、哺乳動物及びそれらの成分に関する記述はまた、化学療法剤を腫瘍へ送達する前述の方法のそれらの同一側面に適用できる。
【0070】
好ましくは、該医薬組成物は、50%を超えるナノ粒子形態の化学療法剤を含まない。より好ましくは、該医薬組成物は、10%を超えるナノ粒子形態の化学療法剤を含まない。さらにより好ましくは、該医薬組成物は、5%を超える、又は4%を超える又は3%を超えるナノ粒子形態の化学療法剤を含まない。より好ましい実施形態において、該医薬組成物は、2%を超える又は、1%を超えるナノ粒子形態の化学療法剤を含まない。最も好ましくは、該医薬組成物は、いかなるナノ粒子形態の治療剤も含まない。
【0071】
本発明はまた、ヒト又は他の哺乳動物における腫瘍への化学療法剤の送達方法を提供する。該方法は、医薬組成物などの治療有効量の送達剤をヒト又は他の哺乳動物に投与する工程を含み、ここで、該送達剤(例、医薬組成物)は、SPARC認識基に結合した化学療法剤を含む。例えば、該化学療法剤は、SPARCタンパク質認識抗体などSPARC認識基又は該SPARC抗体単独と結合していてもよい。医薬組成物は、SPARC認識基と結合した化学療法剤及び薬学的に許容される担体を好ましくは含む。本発明の他の実施形態に関連して本明細書において説明した、化学療法剤、腫瘍、哺乳動物及びそれらの成分に関する記述はまた、化学療法剤を腫瘍へ送達する前述の方法のそれらの同一側面に適用できる。
【0072】
他の実施形態において、本発明は、SPARC又は別のアルブミン−結合タンパク質の、ヒト又はそのようなタンパク質もしくはマーカーを発現する他の動物における過剰発現により特徴付けられる疾病の部位への、SPARC認識基を通じての薬学的活性剤の送達方法を提供する。該疾病としては、増殖性異常疾患、組織再形成、過形成、及び体の組織(例、軟組織、結合組織、骨、実質臓器、血管など)における肥大創傷治癒が挙げられる。SPARCタンパク質、又は別のアルブミン−結合タンパク質と結合できる化合物又はリガンドと結合した治療剤を含む医薬組成物を投与することにより、治療可能又は診断され得る疾病の例としては、癌、糖尿病又は他の網膜症、炎症、関節炎、血管又は人工血管移植又は血管内装置の再狭窄などが挙げられる。本発明の他の実施形態に関連して本明細書において説明した、薬学的活性剤、腫瘍、哺乳動物及びそれらの成分に関する記述はまた、薬学的活性剤を送達する前述の方法のそれらの同一側面に適用できる。
【0073】
さらに他の実施形態において、本発明は、SPARCの過剰発現により特徴付けられるヒト、又はそのようなタンパク質もしくはマーカーを発現する他の動物の疾病の部位への、薬学的活性剤(例えば、SPARC抗体単独又はSPARC抗体のようなSPARC認識基と結合した化学療法剤、放射性標識SPARC抗体など)の送達方法を提供する。該疾病としては、増殖性異常疾患、組織再形成、過形成、及び体の組織(例、軟組織、結合組織、骨、実質臓器、血管など)における肥大創傷治癒が挙げられる。抗−SPARC治療を含む医薬組成物を投与することにより治療可能又は診断され得る疾病の例としては、癌、糖尿病又は他の網膜症、炎症、関節炎、血管又は人工血管移植又は血管内装置の再狭窄などが挙げられる。本発明の他の実施形態に関連して本明細書において説明した、薬学的活性剤、腫瘍、哺乳動物及びそれらの成分に関する記述はまた、薬学的活性剤を送達する前述の方法のそれらの同一側面に適用できる。
【0074】
他の実施形態において、本発明の方法は、SPARCタンパク質と結合できる化合物又はリガンドと結合した化学療法剤を含む、治療有効量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。該化学療法剤は、任意の好適な方法を使用して、SPARCタンパク質と結合できる化合物又はリガンドと結合し得る。好ましくは、該化学療法剤は、例えば、ジスルフィド結合を含む共有結合を通じて該化合物と化学的に結合される。
【0075】
本発明はまた、SPARC認識基と結合した化学療法剤又は放射活性元素を含む、治療有効量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む方法を提供する。化学療法剤又は放射活性剤は、任意の好適な方法を使用して、SPARC認識抗体と結合され得る。好ましくは、該化学療法剤は、例えば、ジスルフィド結合を含む共有結合を通じて該化合物と化学的に結合され得る。
【0076】
好ましくは、本発明の方法において有用な化合物又はリガンドは、SPARCタンパク質と結合できる。本発明の好ましい実施形態において、該化合物は、SPARCタンパク質と結合するリガンドである。好適なリガンドの例としては、カルシウムカチオン(Ca2+)、銅カチオン(Cu2+)、鉄カチオン(Fe2+)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、コラーゲン(例、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、及びコラーゲンIX)、ビトロネクチン、トロンボスポンジン−1、内皮細胞、血小板、アルブミン、及びハイドロキシアパタイトカチオン(hydroxyapatitecations)が挙げられる。本発明の別の好ましい実施形態において、該化合物は小分子である。用語「小分子(small molecule)」は、約600より少ない分子量を有する任意の分子を指す。好適な小分子の例としては、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、補酵素(例、ビタミン)、抗原、ホルモン、及び神経伝達物質が挙げられる。好ましくは、該小分子は、化学薬品(例、有機化合物又は無機化合物)ペプチド、又はペプチド模倣薬、タンパク質、又は炭水化物である。本発明のさらに別の好ましい実施形態において、該化合物はSPARCタンパク質に対する抗体である。SPARCタンパク質と結合する任意の好適な抗体、又はその断片は、本発明の方法において使用され得る。
【0077】
腫瘍組織中のSPARC発現は、ほとんど全ての癌の型において実証されている。腫瘍組織上のSPARCの生成は、SPARCの腫瘍性発現又はストローマ細胞由来のいずれかであり得るという証拠がある。腫瘍のSPARC表現型は、外因性SPARCの投与により、SPARC陰性からSPARC陽性へ転換し得る。したがって、該SPARC陽性腫瘍は、次いで、化学療法剤に感受性になる。あるいは、SPARCは、放射性標識され、又は様々な毒素と結合され、該腫瘍を直接的又は間接的に殺すための能力を付与され得る。
【0078】
SPARCは、公知技術を使用して合成及び精製できる。外因性SPARCを発現する細胞は、強いプロモーター/翻訳開始の制御下にSPARC構造遺伝子/cDNAを置き、及び哺乳動物細胞内にベクターをトランスフェクトし、これらの細胞においてSPARC発現を駆動することによって作出できる。あるいは、SPARCはバキュロウイルス又はアデノウイルスなど他のウイルスを使用して発現され得る。これらの細胞により発現されたSPARCは、イオン交換、サイズ排除、又はC18クロマトグラフィーなど伝統的な精製方法により精製され得る。精製SPARCは、防腐剤と共に生理食塩水中で処方され得、静注、エアロゾル、皮下注射又は他の方法により投与され得る。
【0079】
本発明はまた、哺乳動物における腫瘍への化学療法剤の送達方法を提供する。該方法は、哺乳動物に治療有効量の医薬組成物を投与する工程を含み、ここで該医薬組成物は、アルブミンと結合できるSPARCタンパク質と結合した化学療法剤と薬学的に許容される担体とを含む。本発明の他の実施形態に関連して本明細書において説明した、化学療法剤、腫瘍、哺乳動物及びそれらの成分に関する記述はまた、化学療法剤を腫瘍へ送達する前述の方法のそれらの同一側面に適用できる。
【0080】
in vivoで使用するために、SPARCタンパク質と結合できる化合物又はリガンドと結合した該化学治療剤は望ましくは、生理学的に許容される担体を含む医薬組成物として、処方される。任意の好適な生理学的に許容される担体は、本発明の文脈において使用され得、該担体は当技術分野で公知である。
【0081】
in vivoで使用するために、該抗−SPARC治療剤は望ましくは、生理学的に許容される担体を含む医薬組成物として、処方される。任意の好適な生理学的に許容される担体は、本発明の文脈において使用され得、該担体は当技術分野で公知である。
【0082】
該担体は、典型的に液体であるが、固体又は液体及び固体成分の組み合わせでもまたあり得る。該担体は望ましくは、生理学的に許容される(例、薬学的に又は薬理学的に許容される)担体(例、賦形剤又は希釈剤)である。生理学的に許容される担体は、周知であり、容易に入手できる。担体の選択は、少なくとも一部分において、標的組織及び/又は細胞の位置、並びに該組成物を投与するために使用される特定の方法により、決定されるだろう。
【0083】
典型的に、該組成物は、溶液又は懸濁液のいずれかの注射剤として調製され得;注射前の液体の添加の際の溶液又は懸濁液を調製するための使用に好適な固体形態もまた、調製され得;並びに該製剤はまた、乳化され得る。注射剤としての使用に好適な医薬製剤としては、滅菌水溶液又は分散液;公知のタンパク質安定剤及びリオプロテクタントを含む製剤、ゴマ油、ピーナッツ油又は含水プロピレングリコールを含む製剤、及び滅菌注射用溶液又は懸濁液の即時調製のための滅菌粉末剤が挙げられる。全ての場合において、該製剤は、無菌でなければならず、容易な注入可能性(syringability)が存在する程度に流動性でなければならない。製造及び保存条件下で安定であるべきであり、細菌及び真菌など、微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシセルロースなどの界面活性剤と共に好適に混合された水で調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物並びに油脂で調製され得る。保存及び使用の通常の条件下で、これらの製剤は、微生物の成長を妨げるための防腐剤を包含する。
【0084】
SPARCタンパク質と結合する化合物又はリガンドと結合した、化学療法剤(例、抗−SPARC治療)は、中性型又は塩形態の組成物として処方され得る。薬学的に許容される塩は、(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)酸付加塩を含み、これは、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、アンデル酸などの有機酸で形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化鉄などの無機塩基、並びにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基由来であり得る。
【0085】
該組成物は、特に該組成物及び/又はその最終用途の安定性を強化する任意の他の好適な成分をさらに含み得る。したがって、本発明の組成物の多様な好適製剤がある。以下の製剤及び方法は、単に例となるだけであり、限定するものではない。
【0086】
吸入を通じての投与に好適な製剤は、エアロゾル製剤を含む。該エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される高圧ガス中に置かれ得る。これらはまた、ネブライザー又はアトマイザーからの送達のため、非加圧製剤として処方され得る。
【0087】
非経口投与に好適な製剤としては、抗酸化剤、バッファー、静菌薬、及び所定のレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含む水性及び非水性の、等張滅菌注射溶液、並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含み得る水性、及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。該製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量又は複数用量密封容器内で存在し得、使用する直前に、例えば、水などの、注射するための滅菌液体賦形剤の添加のみを必要とする凍結乾燥(lyophilized)状態で保存され得る。即時注入溶液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末剤、顆粒、及び錠剤から調製され得る。本発明の好ましい実施形態において、SPARCタンパク質と結合する化合物(例、抗−SPARC治療)と結合した化学療法剤は、注射のために処方される(例、非経口投与)。この点に関して、該製剤は、望ましくは腫瘍内投与に好適であるだけでなく、静脈注射、腹腔内投与、皮下注射などのためにも処方され得る。
【0088】
経肛門投与に好適な製剤は、乳化塩基(emulsifying bases)又は水溶性塩基などの多様な塩基と共に有効成分を混合することにより、坐薬として調製され得る。膣内投与に好適な製剤は、有効成分に加えて、適切であると当技術分野で公知の担体などを含む、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレー処方で提供され得る。
【0089】
さらに、該組成物は、さらなる治療剤又は生物学的活性剤を含み得る。例えば、特定の兆候の治療に有用な治療因子が存在し得る。イブプロフェン又はステロイドなど炎症を制御する因子は、in vivoでの医薬組成物の投与に関連する腫脹及び炎症並びに生理学的損傷を低減するために該組成物の一部であり得る。
【0090】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【実施例1】
【0091】
この実施例は、MX−1腫瘍異種移植片におけるSPARCとアルブミンとの共局在化を説明する。
【0092】
パクリタキセルアルブミンナノ粒子(アブラキサン、ABX又はABI−007)は、第III相転移性乳癌試験においてタキソール(TAX)を上回る改善応答率を有することが証明されている(33%対19%、p<0.0001)(例、O'Shaughnessy, SABCSを参照)。パクリタキセル(P)のアルブミン−介在経内皮輸送並びに、TAXと比べて、増加したABXへのパクリタキセルの腫瘍内蓄積は最近実証された(例、Desai, SABCS 2003を参照)。アルブミンはSPARCと結合する(例、Schnitzer, J. Biol. Chem., 269, 6072-82 (1994) 参照)。
【0093】
該MX−1腫瘍細胞系は、ヒト乳癌由来である。ヒトMX−1腫瘍異種移植片、ヒト原発乳房腫瘍組織(n=141)、及び正常ヒト乳房組織(n=115)の連続凍結切片を免疫染色し、アルブミン、SPARC(抗−SPARC抗体を使用した)、及びカベオリン−1染色に対して、スコア化した(0−4)。培養MX−1細胞をまた、SPARCに対して免疫染色した。パクリタキセルアルブミンナノ粒子(アブラキサン、ABX又はABI−007)及びタキソール(TAX)を、放射性活性パクリタキセル(P)(20mg/kgIV)で調製し、胸腺欠損マウスの正常組織におけるパクリタキセルの生体内分布を決定するために使用した。
【0094】
該MX−1腫瘍中のアルブミン染色は、局所的であり、SPARCと共局在していた(図3)。カベオリン−1染色は、アルブミン含有領域における血管密度がアルブミンを含まない領域と全く変わらないことを裏付けた。MX−1培養細胞によるSPARC発現は、抗−SPARC抗体での陽性染色により裏付けられた。正常組織(SPARC陰性)中のパクリタキセル蓄積は、TAXと比較して、7/10の組織でABXに関して有意に低かった(p<0.004)。正常組織の1%に対して、ヒト原発乳房腫瘍の46%が、強いSPARC染色(スコア>2)を示した(p<0.0001)。50の腫瘍組織のサブセットにおいて、SPARC発現は、ステージ、小胞体状態(ER status)、又はPgR状態と相関しなかった;しかし、p53−陰性腫瘍の中では高SPARC発現の傾向があった。
【0095】
アルブミン及びSPARCの共局在化は、SPARCが、自身のアルブミン結合活性により、乳房腫瘍中のアルブミン結合の腫瘍内標的として働き得ることを示唆する。ABX中のパクリタキセルの輸送は、アルブミンに依存するため(例、Desai SABCS, 2003を参照)、このことは、TAXと比較して、ABXの改善した腫瘍蓄積を説明し得る。正常組織中のABX蓄積は、TAXよりも少なく、正常組織中のSPARC発現の欠如と一致する。SPARCに関する患者のスクリーニングは、ABXに対してより敏感な患者の同定を可能とする。これらの腫瘍中のSPARCの存在は、抗−SPARC抗体を使用するターゲッティング及び治療を可能とする。
【実施例2】
【0096】
本実施例は、MX−1腫瘍細胞中のSPARCの発現を説明する。
【0097】
MX−1細胞を、カバースリップ上で培養し、当技術分野で公知の方法を使用して、ヒトSPARCに対する抗体を用いて染色した。抗体染色が観察され、これはMX−1がSPARCを発現していることを実証する。これらの結果は、MX−1腫瘍細胞中で検出されたSPARC発現がMX−1腫瘍細胞によるSPARC分泌の結果であることを示唆する。MX−1腫瘍細胞の染色は、HUVEC(ヒト臍静脈(umbiblical vein)内皮細胞)、HLMVEC(ヒト肺微小血管内皮細胞)及びHMEC(ヒト乳房上皮細胞)などの正常初代細胞のそれよりもより強かった。SPARC染色の大部分が内部SPARCであったものの、共焦点顕微鏡及び非透過性細胞の染色により実証されたように、有意なレベルの表面SPARCが検出された。
【実施例3】
【0098】
本実施例は、ヒト乳癌細胞中のSPARCタンパク質の過剰発現を説明する。
【0099】
ヒト乳癌細胞中のSPARC発現を、Cybrdi, Inc.(Gaithersburg, MD)の腫瘍アレイを使用して測定した。この解析の結果を、表1に説明する。染色の強度を、「陰性」から4+までスコア化し、より大きな数字は過剰発現のより大きな強度に対応している。正常組織の1%と比較して、乳癌の49%が、SPARCに対して陽性(2+又はそれ以上)に染色された(p<0.0001)。
【0100】
【表1】
【実施例4】
【0101】
本実施例は、パクリタキセルアルブミンナノ粒子(ABI−007)の内皮受容体(gp60)−介在カベオラトランスサイトーシスを説明する。
【0102】
パクリタキセル(P)アルブミンナノ粒子(アブラキサン、ABX又はABI−007)は、第III相転移性乳癌試験においてタキソールを上回る改善応答率を実証した(33%対19%、p<0.0001)(SABCS, O'Shaughnessy et al, 2003)。タキソール(TAX)中のクレモフォールは、プラズマ中のミセルにPを封入し、細胞分配に利用可能な該パクリタキセルを減少させる(例、Sparreboom et al., Cancer. Res., 59, 1454 (1999) 参照)。胸腺欠損マウスにおける研究は、等用量のTAXと比較して、ABXにより、30−40%高い腫瘍内パクリタキセル濃度を明らかにした(SABCS, Desai et al, 2003)。アルブミンは、特異的受容体(gp60)−介在カベオラ輸送により、内皮細胞(EC)を通過して輸送される(例、John et al., Am. J. Physiol, 284, Ll 87 (2001) 。ABX中のアルブミン−結合パクリタキセルは、gp60により腫瘍微小管ECを通過して輸送され得、かつ、この機構は、TAXと比較して、ABXで特に活性であり得ると仮定した。
【0103】
一連の実験を行い、ABX及びTAXに関する、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)及びヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)によるパクリタキセルの結合及び輸送を評価した。蛍光性パクリタキセル(FP)を、プローブとして使用し、蛍光性ABX及びTAXをFPと共に処方し、トランスウェル装置上で培養したEC単層を通過するパクリタキセルの結合及び輸送を調べた。
【0104】
パクリタキセルの細胞(HUVEC)への結合は、TAXよりもABXに関しては10倍高かった。EC単層を通過するABX由来パクリタキセルの輸送は、TAXと比較して、それぞれ、HUVEC及びHMVECに関して2−3倍及び2−4倍高まった。輸送はアルブミンに依存した。ABX由来パクリタキセルの輸送は、カベオラアルブミントランスサイトーシスに必要な受容体であるgp60と結合することが知られている抗−SPARC抗体の存在により阻害された。カベオラトランスサイトーシスの公知の阻害剤である、NEM及びβ−メチルシクロデキストリン(BMC)はまた、内皮単層を通過するABX由来パクリタキセルの輸送を阻害した(図4)。カベオラ輸送の阻害は、ABXからのPの輸送をTAX輸送のレベルへと減少させた。
【0105】
これらの結果は、ABX由来パクリタキセルが、gp60−介在カベオラトランスサイトーシスによりECを通過して活発に輸送される一方で、TAX由来のPが、主に傍細胞(非カベオラ)機構により2−4倍低い速度で輸送されているようであることを実証する。この経路は、TAXと比較して、ABXで見られた腫瘍内パクリタキセル濃度の上昇の原因の一部であり得る。TAX中のクレモフォールは、内皮細胞を通過するパクリタキセルのトランスサイトーシスを阻害する。
【実施例5】
【0106】
本実施例は、扁平頭頸部癌中のナノ粒子アルブミン−結合パクリタキセルを使用した高応答率とSPARC過剰発現の相関関係を実証する。
【0107】
頭頸部(H&N)及び肛門管の扁平細胞癌(SCC)の患者の第I相及び第II相臨床試験において、動脈内で送達されたナノ粒子アルブミン−結合パクリタキセル(アブラキサン(登録商標)、ABX又はAB1−007)に関して、それぞれ78%及び64%の応答率が観察された(例、Damascelli et al., Cancer, 92(10), 2592-2602 (2001), 及びDamascelli et al., AJR, 181, 253-260 (2003)を参照)。in vitroでのABX及びタキソール(TAX)の細胞毒性(cytoxicity)の比較において、我々は、扁平頸部(A431)系が、TAXのIC50(0.012μg/ml)と比べて、ABXで改善されたIC50(0.004μg/ml)が実証されたことを観察した。パクリタキセル(P)のアルブミン−介在経内皮カベオラ輸送及びTAXと比べて、増加したABXに関するPの腫瘍内蓄積は、最近実証された(例、Desai, SABCS 2003を参照)。
【0108】
ヒトH&N腫瘍組織(n=119)及び正常ヒトH&N組織(n=15)を、腫瘍及び正常組織アレイを使用して、免疫染色し、SPARC染色に対してスコア化した(0−4)。免疫染色を、ポリクローナルウサギ抗−SPARC抗体を使用して行った。新しい第I相用量増大試験(ABXを30分以上、3週間に1回IVに与えた)において、頭頸部癌の患者のサブセット(n=3)を、ABXに対する応答に関して解析した。
【0109】
SPARCは、正常組織中の0%(0/15)と比べて、H&N腫瘍の60%(72/119)において、過剰発現(スコア>2)していた(p<0.0001)。第I相研究において、H&N患者の2/3は、135mg/m2(1pt)及び225mg/m2(1pt)の用量レベルでの2サイクルの治療後に、部分応答(PR)を達成した。3人目の患者は260mg/m2で進行した。
【0110】
SPARCは、扁平H&N腫瘍の60%において、過剰発現が見出された。これは、扁平H&N癌において以前見られたアルブミン−結合パクリタキセルとこれらの腫瘍中で発現したSPARCとの結合によるABXの高い単剤活性を説明し得る。扁平H&N腫瘍の患者の2/3は、新しい第I相試験においてPRを達成した。
【0111】
【表2】
【0112】
ヒトH&N腫瘍組織(n=119)及び正常ヒトH&N組織(n=15)を、腫瘍及び正常組織アレイを使用して、免疫染色し、SPARC染色に対してスコア化(0−4)をした。免疫染色を、ポリクローナルウサギ抗−SPARC抗体を使用して行った。SPARCは、正常組織の0%(0/15)に対してH&N腫瘍の60%(72/119)で過剰発現(スコア>2)していた(p<0.0001)。これは、扁平H&N癌において以前見られたアルブミン−結合パクリタキセルとこれらの腫瘍中で発現したSPARCとの結合によるABXの高い単剤活性を説明し得る。
【0113】
新しい第I相用量増大試験(ABXを30分以上、3週間に1回IVに与えた)において、頭頸部癌患者のサブセット(n=3)を、ABXに対する応答に関して解析した。第I相試験において、H&N患者の2/3は、135mg/m2(1pt)及び225mg/m2(1pt)の用量レベルでの2サイクルの治療後に、部分応答(PR)を達成した。3人目の患者は260mg/m2で進行した。これらの患者由来の腫瘍組織をSPARCに対して染色し、応答した患者の1人はSPARCに関する強い過剰発現を示した。
動脈内ABXにより治療された頭頸部の扁平細胞癌の患者54人の、別の第II相臨床試験において、78%の全体応答率が認められた。本試験において動脈内ABXを受けている16人の患者由来の癌生検を、SPARC発現と臨床応答との相関関係に関して評価した。抗−SPARCポリクローナル抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)を用いた染色を、0−4スケール(scale)でスコア化した(0=染色なし、4=強度に陽性)。陽性SPARC発現を、>2+染色と定義し、かつ陰性SPARC発現を、<2+染色と定義した。ABX−レスポンダーは、非レスポンダー(2/5、40%)と比べて、SPARC発現の高い発生率(10/11、91%)を示した(p=0.06)。ABX−応答は、SPARC−陰性患者(1/4=25%)と比べて、SPARC−陽性患者に関して有意に高かった(10/12=83%)(p=0.06)。さらに、SPARC−陰性患者は、本研究における全体応答率より、有意に低い応答率を示した(ABX又は他の化学療法剤により治療した患者を含む(1/4、25%対42/54、78%;p<0.05))。
【実施例6】
【0114】
本実施例は、MX−1腫瘍細胞中の標識アルブミンの内部移行及び細胞内SPARC発現とのMX−1細胞内の共局在化を実証する。
【0115】
MX−1細胞を、カバースリップ上で培養し、好適な剤により透過処理した。細胞を蛍光性アルブミンに曝露し、洗浄後SPARC抗体に曝露した。次いで、アルブミンと異なる蛍光性タグを有する二次抗体に曝露した。驚くべきことに、該標識アルブミンは、細胞内のSPARCの存在と共局在化し、これによってアルブミンが迅速に内部移行し、細胞内SPARCを標的化することが示された。
【実施例7】
【0116】
本実施例は、タキソールと比べて、パクリタキセル及びアルブミンを含む医薬組成物のgp60(アルブミン受容体)を通じた内皮トランスサイトーシスにおける増加を実証する。
【0117】
ヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)をトランスウェル上でコンフルエンスまで培養した。パクリタキセル及びアルブミンを含む、本発明の医薬組成物、又は20μg/mLの濃度の蛍光性パクリタキセル(Flutax)を含有するタキソールを、トランスウェルの上部チャンバーに添加した。
【0118】
上部チャンバーから下部チャンバーへのトランスサイトーシスによるパクリタキセルの輸送を、蛍光光度計を使用して継続的にモニターした。アルブミンを含まない、Flutaxのみを含むコントロールも、使用した。Flutaxでのコントロールは、輸送を示さず、コンフルエントなHLMVEC単層の完全性を実証する。アルブミン−パクリタキセル組成物由来のパクリタキセルの輸送は、タキソール由来のパクリタキセルよりも、5%HSA(生理学的濃度)の存在下で大いに早かった。アルブミン−パクリタキセル組成物及びタキソールに関する輸送速度定数(Kt)は、それぞれ1.396h−1及び0.03h−1であった。該単層を通過して輸送されたパクリタキセルの全量は、タキソールよりも、アルブミン−パクリタキセル組成物が3倍高かった。したがって、アルブミン又は、gp60受容体もしくは他の内皮細胞受容体に対する抗体(aantibodies)もしくは断片を含む他の好適な模倣剤の使用は、該腫瘍間質内の内皮バリアを通過する望ましい治療剤の輸送を助け得る。
【実施例8】
【0119】
本実施例は、抗−SPARC抗体のSPARCへの特異的結合を実証する。
【0120】
全細胞抽出物を、超音波処理によりHUVEC細胞から調製した。タンパク質を、s5−15%SDS−PAGE上で分離し、PVDF膜上へ移し、SPARCに対するポリクローナル抗体及びSPARCに対するモノクローナル抗体を用いて可視化した。両抗体は、SPARCに対する正しい分子量である、38kDでシングルバンドに反応した。MX−1を同様の方法で解析した場合、SPARCを、透明な細胞ライセート又は膜リッチな膜画分(membrane rich membrane fraction)の両方において検出した。
【実施例9】
【0121】
本実施例は、正常組織中のSPARC発現の欠如を実証する。
【0122】
正常ヒト及びマウス組織を、腫瘍及び正常組織アレイを使用して免疫染色し、SPARC染色に対してスコア化(0−4)した。免疫染色を、ポリクローナルウサギ抗−SPARC抗体を使用して行った。SPARCは、食道を除いた、いかなる正常組織中でも発現していなかった。同様に、SPARCは、メスマウスの腎臓を除いた、いかなる正常マウス組織中でも発現していなかった。しかし、この発現は、SPARCに相同であるホリスタチンに起因した可能性がある。
【0123】
【表3】
【実施例10】
【0124】
本実施例は、タキソテール(Tween80及びエタノールを伴うドセタキセル製剤、「TAT」)に対するアブラキサン(ナノ粒子アルブミン−結合パクリタキセル、「ABX」)の優位性及び、ABXに対する関連応答と、試験したHer2−陽性異種移植片におけるSPARC発現が正に相関することを実証する。
【0125】
マウス腫瘍異種移植片モデル系を使用して、MX−1ヒト乳癌及びLX−1ヒト肺癌細胞系のHer2−陰性異種移植片における、ABX対TATの効果を比較した。MX−1試験において3群(15mg/kgのTAT(週に1回、3週間、静脈注射);15mg/kgのABX(週に1回、3週間、静脈注射)及び生理食塩水(週に1回、3週間、静脈注射))それぞれにおいて8個体を使用した。各個体の体重及び腫瘍サイズを毎週、3週間観察した。LX−1試験において、3群(15mg/kgのTAT(4日に1回、3サイクル、静脈注射);50mg/kg又は120mg/kgのABX(4日に1回、3サイクル、静脈内注射)、及び生理食塩水(4日に1回、3サイクル、静脈内注射))それぞれにおいて8個体を使用した。各個体の体重及び腫瘍サイズを毎週、3週間観察した。
【0126】
異種移植片腫瘍Her2及びSPARC状態を、モノクローナル抗ヒトHer2抗体及びポリクローナル抗−ヒトSPARC抗体を使用した免疫組織化学検査により判定した。該スライドを、0−4スケールを使用してスコア化し、0は陰性であり、4は強い陽性とした。
【0127】
MX−1試験において、等用量(equidose)におけるABXは、TATよりも効果的であった(p<0.0001、ANOVA 統計)(図5A参照)。LX−1細胞に関して、両方の用量レベルにおいて、ABXは、TAT(15mg/kg)よりも効果的であった(ABX 50mg/kgに関してp=0.0001及びABX 120mg/kgに関してp<0.0001)(図6A参照)。しかし、ABX応答は、免疫組織化学検査によるSPARCレベルと相関しなかった(図7参照)。
【0128】
第二試験において、マウス腫瘍異種移植片モデル系を使用して、3種類のHer2−陽性異種移植片(HT29:ヒト結腸癌細胞系、PC3:ヒト前立腺癌細胞系、MDA−MB−231:ヒト乳癌細胞系)におけるABX対TATの効果を比較した。32匹のマウスを各異種移植片について使用し、8個体を15mg/kgのTAT(4日に1回、3サイクル、静脈注射)により処理し、8個体を50mg/kgのABX(4日に1回、3サイクル、静脈注射)で処理し、8個体を120mg/kgのABX(4日に1回、3サイクル、静脈注射)で処理し、8個体を生理食塩水(4日に1回、3サイクル、静脈注射)で処理した。各個体の体重及び腫瘍サイズを、3週間ごとに観察した。
【0129】
Her2及びSPARC状態を、モノクローナル抗−ヒトHer2抗体及びポリクローナル抗−ヒトSPARC抗体を使用した免疫組織化学検査により判定した。スライドを、0−4スケールを使用してスコア化し、0は陰性であり4は強い陽性とした。
【0130】
HT29異種移植片において、ABXは、両方の用量レベルのTAT(15mg/kg)よりも効果的であった(ABX 50mg/kgに関してp=0.0001及びABX 120mg/kgに関してp<0.0001)(図8A参照)。PC3異種移植片では、ABXは、50mg/kgのTAT(15mg/kg)よりも効果が弱かったが(p<0.001)、120mg/kgのTAT(15mg/kg)とは等しい効果であり(p=ns)(図9A)、より低い毒性であった(より少ない体重減少、図9B)。最後に、MDA−MB−231異種移植片では、ABXは、両方の用量レベルのTAT(15mg/kg)よりも効果が弱かった(p<0.0001及びp<0.0001)(図10A参照)。
【0131】
5つの腫瘍型のHer2及びSPARC状態を図7Aに示し、ABX対TAXの相対的効果を図7Bに示す。相対的効果(TAT腫瘍容積/ABX腫瘍容積)を、15mg/kg TAT及び120mg/kg ABXを使用して算出した(相対的腫瘍効果を、15mg/kg TAX及び15mg/kg ABXを使用して算出した、MX−1を除く)。Her2−陽性異種移植片(HT29、PC3、及びMDA−MB−231)において、TATと比較して、ABX効果は、SPARC発現の増加と共に増加した(図7参照)。
【0132】
したがって、本実施例は、使用したモデル系において、試験した5つの異種移植片腫瘍のうちの4つにおいて、TATと比較して、ABXはより効果的か又は等しく効果的であり、試験したHer2−陽性異種移植片において、TATと比較して、ABX効果は、SPARC発現と正に相関したことを示す。
【0133】
出版物、特許出願及び特許を含む本明細書で挙げた全ての文献は、各文献が個別かつ具体的に参照によって組み込まれると表示され、その全体が本明細書に示されたのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0134】
本発明を説明する文脈(特に添付の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示語の使用は、本明細書に別段の指示がないか又は明らかに文脈に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、別段の記載がなければ、オープンエンドの用語(即ち、「含むが、それに限定されない」ということを意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内に入る各個別の値を個別に指す省略方法としての役割を果たすことを単に意図しており、各個別の値はそれが個別に本明細書に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載した全ての方法は、本明細書に別段の指示がないか又は明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書に記載した全ての例、又は例示的な言葉使い(例、「のような(such as)」)の使用は本発明をより良く明らかにすることを単に意図しており、別段の請求がなければ、本発明の範囲を制限しない。本明細書中の言葉使いは、あらゆる非請求の要素が本発明の実施に不可欠であることを指示していると解釈されてはならない。
【0135】
本発明の好ましい実施形態を、発明者らが知っている本発明を実施するための最良の形態を含めて本明細書に記載している。これらの好ましい実施形態の変形は、上述の記載を読めば当業者には明らかとなり得る。発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを予期しており、また、発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載したのとは別の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙した対象の、適用法によって認められるあらゆる修正及び同等物を含む。さらに、上述の要素のあらゆる可能な変形でのあらゆる組み合わせが、本明細書に別段の指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、ヒトSPARCアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図2】図2は、ヒトSPARC cDNA配列(配列番号2)を示す。
【図3】図3は、MX−1腫瘍異種移植片のアルブミン及びSPARC染色を図示する。
【図4】図4は、内皮細胞単分子層を横切るパクリタキセルの経細胞輸送を図示する。
【図5A】図5Aは、MX−1異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図5B】図5Bは、MX−1異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図6A】図6Aは、LX−1異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図6B】図6Bは、LX−1異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図7A】図7Aは、5つの腫瘍型のHer2及びSPARCの状態(A)(それぞれのペアにおいて、SPARC、左のバー及びHer2、右のバー)並びにタキソテールに対するアブラキサンの相対的効力(B)を図示する。
【図7B】図7Bは、5つの腫瘍型のHer2及びSPARCの状態(A)(それぞれのペアにおいて、SPARC、左のバー及びHer2、右のバー)並びにタキソテールに対するアブラキサンの相対的効力(B)を図示する。
【図8A】図8Aは、HT29異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力果(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図8B】図8Bは、HT29異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力果(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図9A】図9Aは、PC3異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図9B】図9Bは、PC3異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図10A】図10Aは、MDA−MB−231異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【図10B】図10Bは、MDA−MB−231異種移植片の治療に関するアブラキサン及びタキソテールの比較的効力(A、腫瘍容積)及び毒性(B、%体重減少)を図示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答の予測方法であって、該方法が、(a)該哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現又はSPARC RNA発現を検出する工程、及び(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量又はSPARC RNA量を定量化する工程を含む、方法。
【請求項2】
該生物学的サンプル中のHer2タンパク質発現又はHer2RNA発現を検出する工程及び該生物学的サンプル中のHer2タンパク質量又はHer2RNA量を定量化する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該生物学的サンプルが該腫瘍から単離される、請求項1−2に記載の方法。
【請求項4】
該生物学的サンプルが体液から単離される、請求項1−3に記載の方法。
【請求項5】
体液が、脳脊髄液、血液、血漿、血清、及び尿からなる群より選ばれる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
哺乳動物がヒトである、請求項1−5に記載の方法。
【請求項7】
正常組織と比較して、SPARCタンパク質又はSPARC RNAが、腫瘍中で過剰発現している、請求項3記載の方法。
【請求項8】
腫瘍が、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、メラノーマ、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体腫瘍、卵巣腫瘍、外陰腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓腫瘍、腎盂腫瘍、尿管腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選ばれる、請求項1−7に記載の方法。
【請求項9】
化学療法剤又は抗癌剤が、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン、白金化合物、抗葉酸剤、代謝拮抗剤、抗有糸分裂薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、血管新生阻害剤、抗生物質、ホルモン、ペプチド、抗体、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項1−8に記載の方法。
【請求項10】
化学療法剤がタンパク質−結合剤の粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
タンパク質−結合剤粒子のタンパク質成分がアルブミンを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
化学療法剤がアルブミン−結合パクリタキセルの粒子を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答がSPARCレベルと正に相関する、請求項1−13に記載の方法。
【請求項15】
該生物学的サンプルが該腫瘍から単離される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
化学療法剤がアルブミン−結合パクリタキセルの粒子を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
パクリタキセル用量が約30mg/m2から約1000mg/m2で、約3週間の投与サイクルである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答がSPARCレベルと負に相関する、請求項1−13に記載の方法。
【請求項20】
該生物学的サンプルが該腫瘍から単離される、請求項16記載の方法。
【請求項21】
SPARCタンパク質発現が抗体を用いて検出される、請求項1−13に記載の方法。
【請求項22】
SPARCタンパク質発現が抗体なしで検出される、請求項1−13に記載の方法。
【請求項23】
SPARCタンパク質発現が非抗体SPARC結合分子を用いて検出される、請求項1−13に記載の方法。
【請求項24】
SPARCタンパク質発現がSPARC結合分子を用いずに検出される、請求項1−13に記載の方法。
【請求項25】
SPARC RNAが、in situハイブリダイゼーション、RNA増幅、ノーザンブロット、マイクロアレイ解析又はそれらの組み合わせにより検出される、請求項1−13に記載の方法。
【請求項26】
化学療法剤又は他の抗癌剤を用いる、哺乳動物における腫瘍の治療方法であって、下記工程:
(a)該哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現又はSPARC RNA発現を検出する工程、(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量又はSPARC RNA量を定量化する工程、(d)該化学療法剤又は他の抗癌剤の使用を示すレベルで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAが存在するかどうかを判定する工程、及び(e)治療有効量の該化学療法剤又は他の抗癌剤を投与する工程を含む、方法。
【請求項27】
該生物学的サンプル中のHer2タンパク質発現又はHer2RNA発現を検出する工程、該生物学的サンプル中のHer2タンパク質量又はHer2RNA量を定量化する工程、該化学療法剤又は他の抗癌剤の使用を示すレベルで、Her2タンパク質又はHer2RNAが存在するかどうかを判定する工程、及び治療有効量の該化学療法剤又は他の抗癌剤を投与する工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
化学療法剤が、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン、白金化合物、抗葉酸剤、代謝拮抗剤、抗有糸分裂薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、血管新生阻害剤、抗生物質、ホルモン、ペプチド、抗体、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項26−27に記載の方法。
【請求項29】
化学療法剤がタンパク質−結合剤の粒子を含む、請求項26−28に記載の方法。
【請求項30】
タンパク質−結合剤粒子のタンパク質成分がアルブミンを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
化学療法剤がアルブミン−結合パクリタキセルの粒子を含む、請求項26−28に記載の方法。
【請求項32】
50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
パクリタキセル用量が約30mg/m2から約1000mg/m2で、約3週間の投与サイクルである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
哺乳動物がヒトである、請求項26記載の方法。
【請求項35】
腫瘍が、乳房、卵巣、頭頸部、結腸、前立腺、膀胱又は腎臓の癌腫である、請求項26記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物がヒトである、請求項32記載の方法。
【請求項37】
腫瘍が、乳房、卵巣、頭頸部、結腸、前立腺、膀胱又は腎臓の癌腫である、請求項32記載の方法。
【請求項38】
化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットであって、該腫瘍からのタンパク質の単離手段、SPARCタンパク質の検出及び定量化手段、コントロールタンパク質、並びに該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キット。
【請求項39】
該腫瘍のHer2状態を判定する手段をさらに含む、請求項38記載のキット。
【請求項40】
化学療法剤がアルブミン−結合剤の粒子を含み、50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である、請求項38記載のキット。
【請求項41】
アルブミン−結合剤がパクリタキセルである、請求項40記載のキット。
【請求項42】
化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットであって、該腫瘍からのRNAの単離手段、SPARC RNAの検出及び定量化手段、コントロールRNA、並びに腫瘍中のSPARC RNAレベルに基づいて該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キット。
【請求項43】
該腫瘍のHer2状態を判定する手段をさらに含む、請求項42記載のキット。
【請求項44】
化学療法剤がアルブミン−結合剤の粒子を含み、50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である、請求項42記載のキット。
【請求項45】
アルブミン−結合剤がパクリタキセルである、請求項44記載のキット。
【請求項1】
化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答の予測方法であって、該方法が、(a)該哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現又はSPARC RNA発現を検出する工程、及び(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量又はSPARC RNA量を定量化する工程を含む、方法。
【請求項2】
該生物学的サンプル中のHer2タンパク質発現又はHer2RNA発現を検出する工程及び該生物学的サンプル中のHer2タンパク質量又はHer2RNA量を定量化する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該生物学的サンプルが該腫瘍から単離される、請求項1−2に記載の方法。
【請求項4】
該生物学的サンプルが体液から単離される、請求項1−3に記載の方法。
【請求項5】
体液が、脳脊髄液、血液、血漿、血清、及び尿からなる群より選ばれる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
哺乳動物がヒトである、請求項1−5に記載の方法。
【請求項7】
正常組織と比較して、SPARCタンパク質又はSPARC RNAが、腫瘍中で過剰発現している、請求項3記載の方法。
【請求項8】
腫瘍が、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、メラノーマ、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体腫瘍、卵巣腫瘍、外陰腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓腫瘍、腎盂腫瘍、尿管腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選ばれる、請求項1−7に記載の方法。
【請求項9】
化学療法剤又は抗癌剤が、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン、白金化合物、抗葉酸剤、代謝拮抗剤、抗有糸分裂薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、血管新生阻害剤、抗生物質、ホルモン、ペプチド、抗体、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項1−8に記載の方法。
【請求項10】
化学療法剤がタンパク質−結合剤の粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
タンパク質−結合剤粒子のタンパク質成分がアルブミンを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
化学療法剤がアルブミン−結合パクリタキセルの粒子を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答がSPARCレベルと正に相関する、請求項1−13に記載の方法。
【請求項15】
該生物学的サンプルが該腫瘍から単離される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
化学療法剤がアルブミン−結合パクリタキセルの粒子を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
パクリタキセル用量が約30mg/m2から約1000mg/m2で、約3週間の投与サイクルである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
化学療法剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答がSPARCレベルと負に相関する、請求項1−13に記載の方法。
【請求項20】
該生物学的サンプルが該腫瘍から単離される、請求項16記載の方法。
【請求項21】
SPARCタンパク質発現が抗体を用いて検出される、請求項1−13に記載の方法。
【請求項22】
SPARCタンパク質発現が抗体なしで検出される、請求項1−13に記載の方法。
【請求項23】
SPARCタンパク質発現が非抗体SPARC結合分子を用いて検出される、請求項1−13に記載の方法。
【請求項24】
SPARCタンパク質発現がSPARC結合分子を用いずに検出される、請求項1−13に記載の方法。
【請求項25】
SPARC RNAが、in situハイブリダイゼーション、RNA増幅、ノーザンブロット、マイクロアレイ解析又はそれらの組み合わせにより検出される、請求項1−13に記載の方法。
【請求項26】
化学療法剤又は他の抗癌剤を用いる、哺乳動物における腫瘍の治療方法であって、下記工程:
(a)該哺乳動物から生物学的サンプルを単離する工程、(b)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質発現又はSPARC RNA発現を検出する工程、(c)該生物学的サンプル中のSPARCタンパク質量又はSPARC RNA量を定量化する工程、(d)該化学療法剤又は他の抗癌剤の使用を示すレベルで、SPARCタンパク質又はSPARC RNAが存在するかどうかを判定する工程、及び(e)治療有効量の該化学療法剤又は他の抗癌剤を投与する工程を含む、方法。
【請求項27】
該生物学的サンプル中のHer2タンパク質発現又はHer2RNA発現を検出する工程、該生物学的サンプル中のHer2タンパク質量又はHer2RNA量を定量化する工程、該化学療法剤又は他の抗癌剤の使用を示すレベルで、Her2タンパク質又はHer2RNAが存在するかどうかを判定する工程、及び治療有効量の該化学療法剤又は他の抗癌剤を投与する工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
化学療法剤が、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン、白金化合物、抗葉酸剤、代謝拮抗剤、抗有糸分裂薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、血管新生阻害剤、抗生物質、ホルモン、ペプチド、抗体、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項26−27に記載の方法。
【請求項29】
化学療法剤がタンパク質−結合剤の粒子を含む、請求項26−28に記載の方法。
【請求項30】
タンパク質−結合剤粒子のタンパク質成分がアルブミンを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
化学療法剤がアルブミン−結合パクリタキセルの粒子を含む、請求項26−28に記載の方法。
【請求項32】
50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
パクリタキセル用量が約30mg/m2から約1000mg/m2で、約3週間の投与サイクルである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
哺乳動物がヒトである、請求項26記載の方法。
【請求項35】
腫瘍が、乳房、卵巣、頭頸部、結腸、前立腺、膀胱又は腎臓の癌腫である、請求項26記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物がヒトである、請求項32記載の方法。
【請求項37】
腫瘍が、乳房、卵巣、頭頸部、結腸、前立腺、膀胱又は腎臓の癌腫である、請求項32記載の方法。
【請求項38】
化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットであって、該腫瘍からのタンパク質の単離手段、SPARCタンパク質の検出及び定量化手段、コントロールタンパク質、並びに該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キット。
【請求項39】
該腫瘍のHer2状態を判定する手段をさらに含む、請求項38記載のキット。
【請求項40】
化学療法剤がアルブミン−結合剤の粒子を含み、50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である、請求項38記載のキット。
【請求項41】
アルブミン−結合剤がパクリタキセルである、請求項40記載のキット。
【請求項42】
化学療法剤又は他の抗癌剤に対する哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットであって、該腫瘍からのRNAの単離手段、SPARC RNAの検出及び定量化手段、コントロールRNA、並びに腫瘍中のSPARC RNAレベルに基づいて該腫瘍の応答を予測するためのルールを含む、キット。
【請求項43】
該腫瘍のHer2状態を判定する手段をさらに含む、請求項42記載のキット。
【請求項44】
化学療法剤がアルブミン−結合剤の粒子を含み、50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である、請求項42記載のキット。
【請求項45】
アルブミン−結合剤がパクリタキセルである、請求項44記載のキット。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図3】
【公表番号】特表2009−536816(P2009−536816A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503271(P2009−503271)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/065486
【国際公開番号】WO2008/060651
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(508293025)アブラクシス バイオサイエンス、インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/065486
【国際公開番号】WO2008/060651
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(508293025)アブラクシス バイオサイエンス、インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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