説明

SiOC含有化合物の連続的な製造法

【課題】2つの塔ユニットを用いたSiOC基含有化合物の連続的な製造法の空時収率を高める。
【解決手段】反応混合物を、1つの塔を含む第一の反応ユニットにおいて、アルコールと、又はアルコール及び水と反応させ、なおも揮発性成分を含有する粗生成物に変換し、前記の粗生成物を1つの塔を含む第二の反応ユニットに移し、前記の第二の反応ユニット内に更にアルコールを導入し、そこで非反応性有機溶剤の存在又は不在下に揮発性成分を除去し、かつ所望の最終生成物を第二の反応ユニットの下方端部で導出する、SiOC基含有化合物の連続的な製造法において、前反応器内でクロロシランを、アルコールと、又はアルコール及び水と部分反応させて反応混合物に変換し、前記の反応混合物を第一の反応ユニット内に導入することを特徴とする、SiOC基含有化合物の連続的な製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSiOC含有化合物の連続的な製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
塔技術を用いた、SiOC含有化合物(これは有利にアルコキシシラン及びアルコキシに富むシリコーン樹脂であると解釈される)の製造は久しく公知である。クロロシランから出発して、塔及び塔底においてアルコキシル化が生じる。アルコキシに富むシリコーン樹脂の場合、供給されたSiCl単位に対して過少で意図的な水の計量供給が行われる。
【0003】
US3792071A1にはアルコキシシラン又はアルコキシポリシロキサンの連続的な製造法が記載されており、その際、還流冷却器を備えた塔内において、塔頂でクロロシランが供給され、下方三分の一で気体状のアルコールが供給され、かつ任意の箇所で水が供給され、その際、塔温度は、アルコールの沸点を少なくとも0.5℃上回る。塔の下方端部から流出する材料から、循環型蒸発器内でアルコールを除去し、このアルコールを再度塔内に返送する。
【0004】
前記方法の更なる発展形として、US4298753A1において、アルコキシシラン又はアルコキシポリシロキサンの連続的な製造法が記載されており、その際、還流冷却器を備えた第一の反応器(撹拌釜又はU字又は環状の管型反応器)内で、液体の形で、クロロシラン、0.5〜0.9当量のアルコール/Si−Cl及び場合により水を並流で導入し、混合し、流出する液体を、第二の反応器として使用される塔の塔頂で供給する。残りのSiCl基の反応のための気体状のアルコールを塔の下方三分の一で供給し、更に場合により任意の箇所で水を供給し、生成物をアルコール供給部の下方から取り出す。
【0005】
モノマー又はオリゴマーのアルコキシシランの他の連続的な製造法は、US4506087A1に記載されている。反応器及び引き続く塔内において、クロロシラン及び場合により水を液状で反応器内に供給し、アルコールを気体状で塔の下方の部分に導入し、かつ塔頂で流出する凝縮されたアルコールを反応器に導入する。反応器を去る生成物を塔頂に施与し、最終生成物を塔の下方端部で取り出す。
【0006】
オルガノアルコキシシロキサンの混合物の連続的な製造のための他の出願はUS6767982B2である。第一の工程(撹拌釜又は反応塔)において、少なくとも1種のオルガノトリクロロシラン及び水(シランに対して0.59〜0.95モル)及びアルコール(シランに対して0.5〜100モル)を0〜150℃の温度で反応させ、同時にHClを除去し、かつ粗生成物を0.5〜180分の滞留時間の後に、割合に応じて第二の処理工程の反応蒸留塔に移す。前記の塔内に下方部分でアルコールを供給し、揮発性成分を塔頂生成物として導出し、塔底において50〜200℃の温度で所望のオルガノポリシロキサンを取得し、この所望のオルガノポリシロキサンから残留クロリドを後処理工程において除去する。塔頂生成物として導出した揮発性成分を凝縮後に第一の反応ユニットに返送する。
【0007】
先行技術から、少なくとも1つの塔ユニットを用いた連続的な方法は、SiOC含有化合物を製造するために特に有利であることは明らかである。しかしながら前記方法の生産性は各塔ユニットの流量制限により限定されており、その際、HClの主要量が生じる塔の制限が全体のプロセスを制限する。前記の塔内において、液相の物質流(生成されるアルコキシシラン/部分アルコキシラート)が上方から下方へ存在し、かつ同時に気相の物質流(HCl)が生成箇所から塔頂に存在する。気相の物質流が強度である場合には圧力が生じ、この圧力は極めて高いため、可動の液相はもはや重力に基づき下方へ移動せず、塔頂で排出される。
【特許文献1】US3792071A1
【特許文献2】US4298753A1
【特許文献3】US4506087A1
【特許文献4】US6767982B2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、2つの塔ユニットを用いたSiOC基含有化合物の連続的な製造法の空時収率を高めることであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、反応混合物を、1つの塔を含む第一の反応ユニットにおいて、アルコールと、又はアルコール及び水と反応させ、なおも揮発性成分を含有する粗生成物に変換し、前記の粗生成物を1つの塔を含む第二の反応ユニットに移し、前記の第二の反応ユニット内に更にアルコールを導入し、そこで非反応性有機溶剤の存在又は不在下に揮発性成分を除去し、かつ所望の最終生成物を第二の反応ユニットの下方端部で導出する方法において、前反応器内でクロロシランを、アルコールと、又はアルコール及び水と部分反応させて反応混合物に変換し、前記の反応混合物を第一の反応ユニット内に導入することを特徴とする方法により解決された。
【0010】
前反応器を用いた方法の実施によって明らかにより高い空時収率が得られ、それというのも、第一の反応ユニットの流量を限定する生成される塩化水素の大部分が既に前反応器内で形成され、かつ導出され、それにより後続の塔の負荷が軽減されるためである。
【0011】
有利に、アルコール、又は、アルコール及び前反応器内でクロロシランの部分反応のために利用される水は第二の反応ユニットの留出物であり、前記の留出物は留出物又は気体として前反応器に返送される。前反応器中か又は前反応器内への導入の前に、留出物を付加的なアルコール及び/又は水と混合することができ、かつ有利に、付加的な水を計量供給する場合には、短い混合区域にわたって均質化することができる。前反応器内での凝縮なしの前反応器内での純粋なアルコキシル化は有利である。
【0012】
第二の反応ユニットの留出物を通常のように第一の反応ユニットに施与するのではなく前反応器内に施与する方法の前記の有利な実施態様は、以下の2つの利点を有する:第一に、通常、第一の反応ユニットの塔底の内容物は揮発性化合物、本質的にアルコールの高い割合を有する。それに伴って前記のアルコールは付加的に前反応器内での反応のために利用される。実施例が示すように、特に、これは、アルコキシル化に加えて加水分解も行われるアルコキシポリシロキサンの製造の際に示される。第二に、添加したアルコールを二回利用する。一方で、粗生成物から向流で揮発性成分、特に付随する塩化水素を除去し、場合によりなお存在するSi−Cl単位を後反応させるために、アルコールを第二の反応ユニット内で利用する。他方では、反応パートナーとして前反応器内で供給し、それによって第一の反応ユニットの負荷を軽減するために、アルコールを同時に利用する。
【0013】
クロロシランとして、有利に、既に従来クロロシランとアルコール及び場合により水との反応によるアルコキシシランないしオルガノポリシロキサンの製造のために使用されてきたクロロシランを使用する。これは特に一般式
SiCl4−n
[式中、
nは0〜3であってよく、かつ、
Rは水素又は一価の同じか又は異なる置換又は非置換の有機基を表す]
の化合物である。
【0014】
Rの例は、水素及び炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、ビニル基、n−プロピル基、i−プロピル基、アリル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、フェニル基及びトリル基;更に、置換された炭化水素基、その際、ハロゲンに結合している炭素原子はSi原子に対してα位又は少なくともγ位に位置しており、例えばγ−クロロプロピル基;及びハロゲンアリール基、例えばクロロフェニル基である。適当な置換炭化水素基の他の例は、β−シアンエチル基及びγ−アクリルオキシプロピル基並びにγ−メタクリルオキシプロピル基である。
【0015】
炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、ビニル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、フェニル基及びトリル基は有利である。炭化水素基、例えばメチル基、ビニル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−オクチル基及びフェニル基は特に有利である。種々のクロロシランの混合物を使用することもできる。
【0016】
アルコールとして、有利に、既に従来クロロシランとアルコール及び場合により水との反応によるアルコキシシランないしオルガノポリシロキサンの製造のために使用されており、沸点がその都度製造すべきアルコキシシランないしオルガノポリシロキサンの沸点を下回る、アルコール性ヒドロキシル基を有する炭化水素化合物を使用する。その都度1〜6個の炭素原子を有するアルカノール及びエーテル酸素原子により置換されたアルカノール、例えばメタノール、エタノール、β−メトキシエタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール又はn−ヘキサノールは有利である。メタノール、エタノール、イソプロパノール又はn−ブタノールは特に有利である。種々のアルコールの混合物を使用することもできる。
【0017】
場合により有利に、有機溶剤も導入する。溶剤として全ての有機溶剤が考えられる。有利に、非反応性有機溶剤、例えばトルエン又はキシレンを使用する。
【0018】
方法において生成される塩化水素から、有利に前反応器の塔頂及び第一の反応ユニットの塔頂で、その都度凝縮可能な割合を除去し、その側で相応する反応ユニットに返送する。それと共に、塩化水素を回収のためのガスとして利用することができる。
【0019】
前反応器は例えば撹拌釜、管型反応器又は強制循環が備えられているか又は備えられていないループ型反応器から成ってよい。純粋なアルコキシル化反応の場合には強制循環は不要であり、それというのも、十分な循環及び完全混合を保証するためには、すでに反応の際に生じる塩化水素で十分であるためである。付加的な水計量供給の場合には強制循環が有利であり、高い完全混合傾向を有する前反応器、例えばループ型反応器は特に有利である。
【0020】
前反応器内に、有利に液体のクロロシランを施与し、その際、モルSi結合塩素単位の最大80%をアルコール性ヒドロキシ基及び場合により水と前反応器内で反応させる。
【0021】
前反応器を有利に、使用するクロロシラン又は使用するクロロシラン混合物の沸点を下回る温度で運転する。
【0022】
部分反応した反応混合物を第一の反応ユニットの塔内に移し、前記の塔内で、クロロシラン、アルコール、又はクロロシラン、アルコール及び水を、更に混合及び反応させて塩化水素ガス及び液体粗生成物に変換する。これを例えばオーバーフロー装置を用いて行うことができる。
【0023】
有利に、第一の反応ユニットの塔内の温度は120℃を上回らない。特に有利に、塔内の温度は100℃を上回らない。
【0024】
液体の粗生成物を第二の反応ユニットとして使用する塔内に導入する。粗生成物から向流で揮発性成分、特に付随する塩化水素を除去し、場合によりなお存在するSi−Cl単位を後反応させるために、第二の塔内に、下方の三分の一においてアルコールを施与する。
【0025】
第二の反応ユニット内の温度は、生成されるSiOC化合物の安定性及び沸点、ストリッピングのために使用されるアルコールの量及び沸点によって、及び溶剤が存在する場合にはその沸点によって限定されているに過ぎない。
【0026】
アルコールは原則的に全ての反応ユニット内に施与することができる。有利に、粗生成物から向流で揮発性成分、特に付随する塩化水素を除去し、場合によりなお存在するSi−Cl単位を後反応させるために、アルコールの主要量を第二の塔内に施与する。有利に、このアルコールを第二の塔の塔頂で排出し、凝縮し、かつ留出物を引き続き前反応器に計量供給する。
【0027】
有利に、第一の反応ユニット及び第二の反応ユニットはそれぞれ循環型蒸発器を備えた塔から成る。有利に、第一の反応ユニットの塔底生成物を連続的に、有利には第二の反応塔の塔頂の出来るだけ近傍で供給する。
【0028】
以下で、本発明による方法の実施を例示的に1つの装置に関して記載する。この装置を以下の実施例においても使用した:
装置は前反応器と2つの塔を含み、この塔にはそれぞれ循環型蒸発器が備えられている。前反応器は、バルブにより調節可能な回転ポンプを備えたループ型反応器であり、前記の回転ポンプは液体の内容物を最大乱流で循環ポンプ輸送する。
【0029】
前反応器内に、下方側面で、クロロシラン及び第二の反応ユニットの留出物を供給する。留出物内に場合によりアルコール及び水を供給し、これを短い混合区域に亘って均質化する。前反応器の内容物をオーバーフロー装置を用いて第一の反応ユニット内に施与する。前反応器は上面に生成される塩化水素ガスのための排出部を有する。このガスから、水冷却器及び引き続き食塩水冷却器を用いて凝縮可能な分を除去し、その際、凝縮可能な分を直接前反応器に返送する。冷却器の後に含まれる塩化水素ガスを回収するか、又は洗浄器において水中に溶解させ、HCl酸性溶液として廃棄することができる。2つの後続の反応ユニットはそれぞれ循環型蒸発器とその上に設置された塔とから成る。第一の反応ユニットの塔は上方にまず水運転式冷却器及び引き続き食塩水運転式冷却器を有する。そこで得られる留出物を第一の塔内に再度供給する。冷却器の後に得られる塩化水素ガスを回収するか、又は洗浄器において水中に溶解させ、HCl酸性溶液として廃棄することができる。第二の反応ユニットの塔は上方に水運転式冷却器を有する。そこで凝縮された揮発性成分をガスを含めて前記の通り前反応器内に返送する。
【0030】
第一の反応ユニットの循環型蒸発器から、連続的に回転ポンプを用いて、反応により得られる量の反応ガス混合物を排出する。第一の反応ユニットの循環型蒸発器からの反応混合物を、第二の塔の凝縮ユニットのすぐ下方の塔頂で施与する。第二の反応ユニットの循環型蒸発器から、同様に回転ポンプを用いて、生成物が形成された程度で生成物を除去する。
【0031】
以下の実施例は本発明の更なる説明に役立つ。
【実施例】
【0032】
実施例1:
2lの充填容積を有する前反応器にMe−SiCl(Me=メチル)2lを充填する。
【0033】
長さ5m、内径50mmの塔が備えられた第一の反応ユニットの、2.5lサイズの循環型蒸発器を以下のように充填する:
エトキシ含分29質量%を有するMe−SiO3/2単位から成る所望のアルコキシポリシロキサン2250l
エタノール250ml
長さ5m、内径50mmの塔が備えられた第二の反応ユニットの2.0lサイズの循環型蒸発器を以下のように充填する:
エトキシ含分29質量%を有するMe−SiO3/2単位から成る所望のアルコキシポリシロキサン1800l
エタノール200ml
前反応器内のクロロシランを循環ポンプ輸送し、34℃に加熱する。2つの塔を含む反応ユニットを、凝縮が第二の塔の塔頂で開始されるまで循環型蒸発器を用いて加熱する。引き続き、連続的な計量供給を以下のように開始する:
前反応器内に、MeSiCl 2000g/hを供給する。第一の反応ユニットの循環型蒸発器の上方ぎりぎりで、258g/hの水及びエタノールを、塔内で(62〜73℃の)一定の温度プロフィールが保持されるような程度で(通常約300ml/h)供給する。前反応器内の温度を30〜34℃に一定に保持する。
【0034】
第一の反応ユニットの塔底の温度は約77℃である。粗生成物をその形成の程度で恒常的に循環型蒸発器から取り出し、第二の反応器の凝縮ユニットの下方の塔頂で供給する。第二の反応器の塔内の温度を約73〜79℃に保持する。第二の反応器の循環型蒸発器内の温度は約173℃である。第二の反応ユニットからの凝縮物を前反応器内へ底部で循環ポンプにより圧力面上に供給する。第二の反応ユニットの循環型蒸発器の約1m上方で、エタノール400ml/hを供給する。第二の反応器の循環型蒸発器から連続的に澄明な生成物を取り出す。この粗生成物の樹脂品質の決定のために、シリコーン樹脂に慣用の方法を用いて後処理した。得られたシリコーン樹脂の分析により、粘度は25℃で25.4mm/sであり、エトキシ含分は29.2%であり(これは使用したSi−ClからSi−OEtへのモル変換率24.9%に相当する)かつ分子量Mwは3000g/モルであることが判明した(Et=エチル)。
【0035】
前反応器内で達成されたSiCl変換率を測定するために、前反応器から連続的な反応の間に定期的に試料を採取した。分析をNMR分光法を用いて実施し、Si−Cl、Si−O1/2及びSi−OEtに関して以下のモル比であることが判明した:Si−Cl/Si−OEt/Si−O1/2=46.9/52.6/0.5。前反応器の分析は例示的に、第二の反応ユニットの留出物を前反応器に施与するという本発明による反応の実施の特別な利点を示す。最終生成物の化学量論に基づき、前反応器内での最大の可能なアルコキシル化は、第二の反応ユニットの留出物の添加なしでは24.9モル%(全てのSiCl変換率に対するSi−OEt単位の割合)を上回ることはできず、その際、この場合更に、第一の塔の制御のため及び第二の塔内での後反応及びHCl排出のために必要なアルコールを含めて計算した。しかしながら、本発明の上記の有利な実施態様において、第二の反応ユニットの留出物を加えることにより、凝縮なしに既に高い(50%を上回る)SiCl変換率を達成することができる。凝縮なしの前反応器内での純粋なアルコキシル化は、より良好な反応の実施に基づいて有利である。従ってこの前反応器の構想により、HClの導出に対して、アルコキシル化のみによって2倍だけ高められた能力がもたらされる。
【0036】
実施例2
前反応器をMeSiCl 2lで充填する。
【0037】
第一の反応ユニットの2.5lサイズの循環型蒸発器を以下のように充填する:
エトキシ含分29質量%を有するMe−SiO3/2単位から成る所望のアルコキシポリシロキサン2250l
エタノール250ml
第二の反応ユニットの2.0lサイズの循環型蒸発器を以下のように充填する:
エトキシ含分29質量%を有するMe−SiO3/2単位から成る所望のアルコキシポリシロキサン1800ml
エタノール200ml
前反応器内のクロロシランを循環ポンプ輸送し、かつこのクロロシランは34℃である。2つの塔を含む反応ユニットを、凝縮が第二の塔の塔頂で開始されるまで循環型蒸発器を用いて加熱する。引き続き、連続的な計量供給を以下のように開始する:
前反応器内に、MeSiCl 2000g/hを供給する。第一の反応ユニットの循環型蒸発器の上方ぎりぎりで、215g/hの水及びエタノールを、塔内で(66〜74℃の)一定の温度プロフィールが保持されるような程度で(通常約300ml/h)供給する。第二の反応ユニットから前反応器への留出物流にエタノール39g/h及び水51g/hを添加する。
【0038】
前反応器内の温度を33℃に一定に保持する。第一の反応ユニットの塔底の温度は約77℃である。粗生成物をその形成の程度で恒常的に循環型蒸発器から取り出し、第二の反応器の凝縮ユニットの下方の塔頂で供給する。第二の反応器の塔内の温度を約65〜78℃に保持する。第二の反応器の循環型蒸発器内の温度は約175℃である。第二の反応ユニットからの凝縮物を前反応器内へ底部で循環ポンプにより圧力面上に供給する。第二の反応ユニットの循環型蒸発器の約1m上方で、エタノール200ml/hを供給する。第二の反応器の循環型蒸発器から連続的に澄明な生成物を取り出す。この粗生成物の樹脂品質の決定のために、シリコーン樹脂に慣用の方法を用いて後処理した。得られたシリコーン樹脂の分析により、粘度は21mm/sであり、エトキシ含分は28.2質量%であり(これは使用したSi−ClからSi−OEtへのモル変換率23.7%に相当する)かつ分子量Mwは1800g/モルであることが判明した。
【0039】
前反応器内で達成されたSiCl変換率を測定するために、前反応器から連続的な反応の間に定期的に試料を採取した。分析をNMR分光法を用いて実施し、Si−Cl、Si−O1/2及びSi−OEtに関して以下のモル比であることが判明した:Si−Cl/Si−OEt/Si−O1/2=36.5/52.5/11.0。前反応器の分析はここでも再度、第二の反応ユニットの留出物を前反応器に施与するという前記の反応の実施の特別な利点を示す。最終生成物の化学量論に基づき、前反応器内での最大の可能なアルコキシル化は、第二の反応ユニットの留出物の添加なしでは23.7モル%(全てのSiCl変換率に対するSi−OEt単位の割合)を上回ることはできず、その際、この場合更に、第一の塔の制御のため及び第二の塔内での後反応及びHCl排出のために必要なアルコールを含めて計算した。しかしながらここで、第二の反応ユニットの留出物を加えることにより、凝縮なしに既に高い(実施例1と同様に50%を上回る)SiCl変換率をアルコキシル化のみによって達成することができる。アルコキシル化と部分凝縮との組み合わせにより、後続の塔はHCl導出に対してほぼ2/3だけ負荷を軽減することができた。
【0040】
実施例3
前反応器を、PhSiCl/MeSiCl=2/1のモル比のPhSiCl及びMeSiClから成るシラン混合物2lで充填する。(Ph=フェニル)
第一の反応ユニットの2.5lサイズの循環型蒸発器を以下のように充填する:
メトキシ含分10質量%及びブトキシ含分5質量%を有する、62/38の割合のPhSiO3/2及びMeSiO2/2単位から成る所望のアルコキシポリシロキサン800ml
メタノール800ml
トルエン800ml
第二の反応ユニットの2.0lサイズの循環型蒸発器を以下のように充填する:
メトキシ含分10質量%及びブトキシ含分5質量%を有する、62/38の割合のPhSiO3/2及びMeSiO2/2単位から成る所望のアルコキシポリシロキサン1800ml
トルエン200ml
前反応器内のクロロシランを循環ポンプ輸送し、かつ温度を20℃に保持する。2つの塔を含む反応ユニットを、凝縮が第二の塔の塔頂で開始されるまで循環型蒸発器を用いて加熱する。引き続き、連続的な計量供給を以下のように開始する:
前反応器内に、PhSiCl/MeSiCl=2/1のモル比のPhSiCl及びMeSiClから成るシラン混合物2592g/hを供給する。第一の反応ユニットの循環型蒸発器の上方ぎりぎりで、245g/hの水及びメタノールを、塔内で(42〜55℃の)一定の温度プロフィールが保持されるような程度で(通常約50ml/h)供給する。第二の反応ユニットから前反応器への留出物流にブタノール160ml/hを添加する。
【0041】
前反応器内の温度を27℃に一定に保持する。第一の反応ユニットの塔底の温度は約67℃である。粗生成物をその形成の程度で恒常的に循環型蒸発器から取り出し、第二の反応器の凝縮ユニットの下方の塔頂で供給する。
【0042】
第二の反応器の塔内の温度を約70〜97℃に保持する。第二の反応器の循環型蒸発器内の温度は約180℃である。第二の反応ユニットからの凝縮物を前反応器内へ底部で循環ポンプにより圧力面上に供給する。第二の反応ユニットの循環型蒸発器の約1m上方で、メタノール250ml/h及びトルエン100ml/hを供給する。
【0043】
第二の反応器の循環型蒸発器から連続的に澄明な生成物を取り出す。この粗生成物の樹脂品質の決定のために、シリコーン樹脂に慣用の方法を用いて後処理した。得られたシリコーン樹脂の分析により、粘度は83mm/sであり、メトキシ含分は9.8質量%であり、かつブトキシ含分は5.1質量%であり(これは使用したSi−ClからSi−ORへのモル変換率24.4%に相当する)、PhSi/MeSiの比は61.6/38.4であり、かつ分子量Mwは1300g/モルであることが判明した。
【0044】
前反応器内で達成されたSiCl変換率を測定するために、前反応器から連続的な反応の間に定期的に試料を採取した。分析をNMR分光法を用いて実施し、Si−Cl、Si−O1/2及びSi−ORに関して以下のモル比であることが判明した:Si−Cl/Si−OR/Si−O1/2=62.6/37.2/0.2。前反応器の分析は、第二の反応ユニットの留出物を前反応器に施与するという前記の反応の実施の特別な利点を示す。最終生成物の化学量論に基づき、前反応器内での最大の可能なアルコキシル化は、第二の反応ユニットの留出物の添加なしでは24.4モル%(全てのSiCl変換率に対するSi−OR単位の割合)を上回ることはできず、その際、この場合更に、第一の塔の制御のため及び第二の塔内での後反応及びHCl排出のために必要なアルコールを含めて計算した。しかしながらここで、第二の反応ユニットの留出物を加えることにより、凝縮なしに既に高いSiCl変換率を達成することができる。凝縮なしの前反応器内での純粋なアルコキシル化は、より良好な反応の実施に基づいて有利である。従ってこの前反応器の構想により、HClの導出に対して、アルコキシル化のみによって37%だけ高められた能力がもたらされる。
【0045】
実施例4
前反応器を、PhSiCl/MeSiCl=2/1のモル比のPhSiCl及びMeSiClから成るシラン混合物2lで充填する。
【0046】
第一の反応ユニットの2.5lサイズの循環型蒸発器を以下のように充填する:
メトキシ含分10質量%及びブトキシ含分5質量%を有する、61/39の割合のPhSiO3/2及びMeSiO2/2単位から成る所望のアルコキシポリシロキサン800ml
メタノール800ml
トルエン800ml
第二の反応ユニットの2.0lサイズの循環型蒸発器を以下のように充填する:
メトキシ含分10質量%及びブトキシ含分5質量%を有する、61/39の割合のPhSiO3/2及びMeSiO2/2単位から成る所望のアルコキシポリシロキサン1800ml
トルエン200ml
前反応器内のクロロシランを循環ポンプ輸送し、かつ温度を26℃に保持する。2つの塔を含む反応ユニットを、凝縮が第二の塔の塔頂で開始されるまで循環型蒸発器を用いて加熱する。引き続き、連続的な計量供給を以下のように開始する:
前反応器内に、PhSiCl/MeSiCl=2/1のモル比のPhSiCl及びMeSiClから成るシラン混合物2592g/hを供給する。第一の反応ユニットの循環型蒸発器の上方ぎりぎりで、170g/hの水及びメタノールを、塔内で(54〜43℃の)一定の温度プロフィールが保持されるような程度で(通常約70ml/h)供給する。第二の反応ユニットから前反応器への留出物流に水75g/h及びブタノール160ml/hを添加する。
【0047】
前反応器内の温度を26℃に一定に保持する。第一の反応ユニットの塔底の温度は約69℃である。粗生成物をその形成の程度で恒常的に循環型蒸発器から取り出し、第二の反応器の凝縮ユニットの下方の塔頂で供給する。
【0048】
第二の反応器の塔内の温度を約66〜95℃に保持する。第二の反応器の循環型蒸発器内の温度は約182℃である。第二の反応ユニットからの凝縮物を前反応器内へ底部で循環ポンプにより圧力面上に供給する。第二の反応ユニットの循環型蒸発器の約1m上方で、メタノール260ml/h及びトルエン140ml/hを供給する。
【0049】
第二の反応器の循環型蒸発器から連続的に澄明な生成物を取り出す。この粗生成物の樹脂品質の決定のために、シリコーン樹脂に慣用の方法を用いて後処理した。得られたシリコーン樹脂の分析により、粘度は98mm/sであり、メトキシ含分は9.7質量%であり、かつブトキシ含分は4.4質量%であり(これは使用したSi−ClからSi−OMeへのモル変換率23.4%に相当する)、PhSi/MeSiの比は60.2/39.8であり、かつ分子量Mwは1400g/モルであることが判明した。
【0050】
前反応器内で達成されたSiCl変換率を測定するために、前反応器から連続的な反応の間に定期的に試料を採取した。分析をNMR分光法を用いて実施し、Si−Cl、Si−O1/2及びSi−OMeに関して以下のモル比であることが判明した:Si−Cl/Si−OMe/Si−O1/2=43.3/37.8/18.9。前反応器の分析は、第二の反応ユニットの留出物を前反応器に施与するという前記の反応の実施の特別な利点を示す。最終生成物の化学量論に基づき、前反応器内での最大の可能なアルコキシル化は、第二の反応ユニットの留出物の添加なしでは23.4モル%(全てのSiCl変換率に対するSi−OMe単位の割合)を上回ることはできず、その際、この場合更に、第一の塔の制御のため及び第二の塔内での後反応及びHCl排出のために必要なアルコールを含めて計算した。しかしながらここで、第二の反応ユニットの留出物を加えることにより、凝縮なしに既に高いSiCl変換率(37%を上回る;実施例3と同様)をアルコキシル化のみによって達成することができる。アルコキシル化と部分凝縮との組み合わせにより、後続の塔はHCl導出に対して55%を上回る分だけ負荷を軽減することができた。
【0051】
実施例5
前反応器をPhSiCl 2lで充填する。
【0052】
第一の反応ユニットの2.5lサイズの循環型蒸発器を以下のように充填する:
フェニルトリエトキシシラン1800ml
エタノール700ml
第二の反応ユニットの2.0lサイズの循環型蒸発器を以下のように充填する:
フェニルトリエトキシシラン1800ml
エタノール200ml
前反応器内のクロロシランを循環ポンプ輸送し、50℃に加熱する。2つの塔を含む反応ユニットを、凝縮が第二の塔の塔頂で開始されるまで循環型蒸発器を用いて加熱する。引き続き、連続的な計量供給を以下のように開始する:
前反応器内に、PhSiCl2500g/hを供給する。第一の反応ユニットの循環型蒸発器の上方ぎりぎりで、エタノール約650ml/hを供給する。塔内で(50〜75℃の)一定の温度プロフィールを保持する。第二の反応ユニットから前反応器への留出物流にエタノール1000ml/hを添加する。
【0053】
前反応器内の温度を42℃に一定に保持する。第一の反応ユニットの塔底の温度は約132℃である。粗生成物をその形成の程度で恒常的に循環型蒸発器から取り出し、第二の反応器の凝縮ユニットの下方の塔頂で供給する。
【0054】
第二の反応器の塔内の温度を約75〜80℃に保持する。第二の反応器の循環型蒸発器内の温度は約182℃である。第二の反応ユニットからの凝縮物を前反応器内へ底部で循環ポンプにより圧力面上に供給する。第二の反応ユニットの循環型蒸発器の約1m上方でエタノール500ml/hを供給する。
【0055】
第二の反応器の循環型蒸発器から連続的に、なお約1ppmのHClを含有する澄明なフェニルトリエトキシシランを取り出す。
【0056】
シラン品質の決定のためにGC及びNMR分析を実施した。これは99.6%の純度を有する。二量体0.4%が認められる。
【0057】
前反応器内で達成されたSiCl変換率を測定するために、前反応器から連続的な反応の間に定期的に試料を採取した。分析をNMR分光法を用いて実施し、Si−Cl、Si−O1/2及びSi−OEtに関して以下のモル比であることが判明した:Si−Cl/Si−OEt/Si−O1/2=30.2/69.5/0.3。前反応器によって、後続の塔はHCl導出に対してほぼ70%だけ負荷を軽減することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応混合物を、1つの塔を含む第一の反応ユニットにおいて、アルコールと、又はアルコール及び水と反応させ、なおも揮発性成分を含有する粗生成物に変換し、前記の粗生成物を1つの塔を含む第二の反応ユニットに移し、前記の第二の反応ユニット内に更にアルコールを導入し、そこで非反応性有機溶剤の存在又は不在下に揮発性成分を除去し、かつ所望の最終生成物を第二の反応ユニットの下方端部で導出する、SiOC基含有化合物の連続的な製造法において、前反応器内でクロロシランを、アルコールと、又はアルコール及び水と部分反応させて反応混合物に変換し、前記の反応混合物を第一の反応ユニット内に導入することを特徴とする、SiOC基含有化合物の連続的な製造法。
【請求項2】
アルコール、又は、アルコール及び前反応器内でクロロシランの部分反応のために利用される水が、第二の反応ユニットの留出物を含み、前記の留出物を液体又は気体状で前反応器に返送する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
留出物を、前反応器中か又は前反応器内への導入の前で、付加的なアルコール及び/又は水と混合する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
クロロシランが一般式
SiCl4−n
[式中、
nは0〜3であってよく、かつ、
Rは水素又は一価の同じか又は異なる置換又は非置換の有機基を表す]
の化合物である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
アルコールが、1〜6個の炭素原子を有するアルカノール又はエーテル酸素原子置換アルカノールである、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
溶剤として、非反応性有機溶剤、例えばトルエン又はキシレンを使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前反応器が撹拌釜、管型反応器又はループ型反応器から成り、かつ第一の反応ユニット及び第二の反応ユニットがそれぞれ循環型蒸発器を備えた塔から成る、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
反応混合物を第一の反応ユニットの塔内に移し、前記の塔内で、クロロシラン、アルコール、又はクロロシラン、アルコール及び水を、更に混合及び反応させて塩化水素ガス及び液体粗生成物に変換し、かつ前記の液体粗生成物を連続的に第二の反応ユニットとして使用される塔内に導入し、前記の塔内の下方の三分の一においてアルコールを施与する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。

【公開番号】特開2006−206589(P2006−206589A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17506(P2006−17506)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】