説明

T細胞における抗原特異性アポトーシスの誘導のためのリガンド

【課題】 T細胞の表面で発現した分子に結合し、活性化T細胞において抗原特異性アポトーシスを誘起する単離されたリガンドの提供。
【解決手段】 本発明によれば、T細胞表面分子のCTLA4に結合し、活性化T細胞にて抗原特異性アポトーシスを誘起するリガンドが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T細胞における抗原特異性アポトーシスの誘導のためのリガンドに関する。
【0002】
政府援助
本明細書に記載した研究は、National Institutes of Healthにより授与された基金RO1CA40216およびPO1AI35225の下で支援された。そのため米国政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
抗原特異的T細胞応答の誘導にはT細胞上の細胞表面受容体および抗原表示細胞上のリガンドの間で多重の相互作用が必要である。最初の相互作用はT細胞受容体/CD3複合体と、T細胞受容体に対する抗原ペプチドを表示する主要な組織適合複合体分子の間であり、それがT細胞の抗原特異的シグナルの引き金となる。この抗原特異的シグナルに加え、T細胞応答には2番目の共刺激シグナルが必要である。共刺激シグナルは細胞表面受容体CD28を通してT細胞を刺激することによりT細胞上発生させることができる(ハーディング,F.A.,Nature 356,607−609(1992))。CD28のリガンドは抗原表示細胞(APCs)上で同定されている。CD28リガンドにはタンパクのB7ファミリーの構成員、例えばB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)が含まれる(フリードマン,A.S.ら、J.Immunol.137,3260−3267(1987);フリーマン,G.J.ら、J.Immnol.143,2714−2722(1989);フリーマン,G.J.ら、J.Exp.Med.174,625−631(1991);フリーマン,G.J.ら、Science 262,909−911(1993);アズマ,M.ら、Nature 366,76−79(1993);フリーマン,G.J.ら、J.Exp.Med.178,2185−2192(1993))。さらに、B7−1およびB7−2はCTLA4と称するCD28に関連したT細胞上の別の表面受容体に結合することが示されている(リンスレイ,P.S.,J.Exp.Med.174,561−569(1991);フリーマン,G.J.ら、Science262,909−911(1993))。T細胞上に本質的に発現するCD28に比較して、CTLA4は活性化によりT細胞上に誘導される(リンスレイ,P.S.ら、J.Exp.Med.176,1595−1604(1992))。CTLA4の機能的役割は知られていないが、CTLA4がT細胞に共刺激シグナルを送る時にCD28と相乗作用を示しうる証拠がいくつかある(リンスレイ,P.S.ら、J.Exp.Med.176,1595−1604(1992);ダムレ,N.K.ら、J.Immunol.152,2686−2697(1994))。
【0004】
共刺激シグナルが存在しない時にT細胞に抗原特異的シグナルを送ると、T細胞応答を誘起しないが、むしろT細胞の非反応すなわちアネルギー状態を誘起するのが見出されている(シュヴァルツ,R.H.,Science 248,1349(1990);ジェンキンス,M.K.ら、J.Immunol.140,3324(1988)参照)。臨床の場の数という面では、T細胞応答を阻害するのが望ましい(例えば移植または自己免疫障害において)。従って、治療のアプローチとしてT細胞の共刺激シグナルを阻止して抗原特異的T細胞非応答を誘起することが提唱されている。例えば、B7−1およびB7−2の両方を結合するCTLA4 Ig融合タンパクは、異型的および外因性の移植片の拒絶を阻害するために用いられている(ツルカ,L.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89,11102−11105(1992);レンショウ,D.J.ら、Science 257,789−792(1992))。同様に、B7−1および/またはB7−2と反応する抗体はイン・ビトロでのT細胞の増殖およびIL−2産生を阻害し、イン・ビボでの抗原に対する最初の免疫応答を阻害するのに使用されている(ハスコック,K.S.ら、Science 262,905−907(1993);アズマ,M.ら、Nature 366,76−79(1993);パワーズ,G.D.ら、Cell.Immunol.153,298−311(1994);チェン,C.ら、J.Immunol.152,2105−2114(1994))。
【0005】
抗原に対する不必要なT細胞反応を避けるためのアネルギー誘起の別のアプローチは、抗原に特異的なT細胞をクローン的に排除し、それによりT細胞のレパートリーから抗原特異的T細胞を除去することである。イン・ビボでは、胸腺におけるT細胞の成熟が、潜在的な自己反応性T細胞のクローン的排除を引き起こす。さらに、予め活性化したT細胞がクローンの展開後の末梢において選択的に枯渇し、エフェクター機能を生じるという証拠が増えつつある(ウェッブ,S.ら、Cell63,1249−1256(1990);ローチャ,B.ら、Science 251,1225−1227(1991);およびラッセル,J.H.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA88,2151−2155(1991))。T細胞を含む多くの細胞型の排除または除去は、アポトーシスと称する機構すなわちプログラムされた細胞死により引き起こされる。細胞におけるアポトーシスの発生は、細胞収縮、核崩壊およびDNAの分断といった様相に特徴づけられる(コーエン,J.J.ら、Ann.Rev.Immunol.10,267−293(1992)に記述されている)。Fasおよび腫瘍壊死因子受容体を含むいくつかの細胞表面分子は、ライゲートする時に細胞にアポトーシスを誘起できることが確認されている(ヨネハラ,S.ら、J.Exp.Med.169,1747−1756(1989);トゥラウズ,B.C.ら、Science 245,301−305(1989);イトウ,N.ら、Cell66,233−239(1991);およびグリーンブラット,M.S.ら、Blood80,1339−1344(1992))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらのアポトーシス分子には、T細胞系列(lineage)を限定するものがなく、抗原に特異的な方法でアポトーシスを誘起するものもない。抗原刺激に依存した方法でT細胞をクローン的に排除する能力は、種々の臨床の場において対象に付随する有害な副作用を伴う慢性的な全身の免疫抑制を必要としない、T細胞応答の長期的阻害の方法を提供する。したがって、抗原特異的なアポトーシスを惹起しうるリガンドの発見が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明は、少なくともある程度、T細胞表面分子に結合し、活性化T細胞における抗原特異的アポトーシスを誘起する新規なリガンドの発見に基づくものである。好ましくは、リガンドはT細胞表面分子CTLA4、とりわけヒトCTLA4に結合する抗体、または抗体断片である。既知CTLA4リガンドB7−1およびB7−2により認識された(複数の)エピトープとは異なる、CTLA4上に結合する抗CTLA4抗体は、とりわけ抗原特異的T細胞アポトーシスを誘起するのに使用するのが好ましい。抗体はポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはそれらの断片でよい。キメラおよびヒト化モノクローナル抗体、およびそれらの断片は、本発明の範疇に入る。別の態様において、リガンドはT細胞アポトーシスを誘起できるB7−1およびB7−2と異なる新規のCTLA4リガンド可溶性組換え体である。また別に、リガンドはCD28に結合することなくCTLA4に結合するB7−1またはB7−2を改変した形態でもよい(例えばB7−1またはB7−2の改変体は本発明の抗体により認識されるCTLA4上の同一のエピトープに結合し、T細胞のアポトーシスを誘起する)。
【0008】
本発明の別の態様は、既知のB7−1およびB7−2リガンドにより結合されるエピトープとは異なるCTLA4上のエピトープに結合し、T細胞のアポトーシスを誘起するリガンドに係わる。好ましくは、本発明のリガンド例えば抗体により認識されるCTLA4エピトープは、アミノ酸配列:
【化1】

【0009】
(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=0〜20、好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜3である。)を含有または包含する。このCTLA4エピトープは、ヒトCTLA4においてアミノ酸位置59〜64で見出される。従って、典型的なものでは、Xaaはアミノ側もしくはカルボキシ側のどちらかで、またはアミノ側およびカルボキシ側の両方で見出される、ヒトCTLA4アミノ酸配列(配列番号:36)におけるエピトープのさらなるアミノ酸残基である。また別に、Xaaは得られるペプチドの溶解性を高めるか、または得られたペプチドを免疫原として使用するための免疫原性を増強するアミノ酸残基でもよい。例えば、Xaaはペプチドの溶解性を高めるために加えることができる荷電アミノ酸(例えばリジン、アルギニン)でよい。また別に、Xaaは得られたペプチドの二量体形成を増強するために加えられるシステインでもよい。
【0010】
本発明のリガンドは、医薬的に許容できる担体と組み合わせた時に、医薬的投与に適した組成物として用いることができる。
【0011】
本発明のリガンドは、イン・ビトロまたはイン・ビボのどちらかで、T細胞アポトーシスを誘起することにより、抗原に特異的な方法で活性化T細胞をクローン的に排除するのに有用である。一の態様において、活性化T細胞はイン・ビトロでTCR/CD3複合体を通じてT細胞を刺激する1番目の物質と、およびCTLA4上のエピトープを架橋する2番目の物質と接触するか、またはT細胞においてアポトーシスを誘起するCTLA4−媒介経路を通じて細胞内シグナルを提供する。また別に、2番目の物質は医薬的に許容できる担体と共に対象に投与し、イン・ビボで対象にT細胞アポトーシスを誘起する。好ましい2番目の物質は、本発明の抗CTLA4抗体である。CTLA4−媒介経路を通じたアポトーシスの誘起に加えて、1またはそれ以上のさらなる物質を対象に投与し、T細胞に刺激シグナルを送るのを阻害することができる。例を挙げると、対象における(複数の)T細胞成長因子の産生または機能を阻害する物質、例えば抗IL−2受容体抗体、抗IL−2抗体またはシクロスポリンAもまた、対象に投与することができる。また別に、またはさらに、T細胞に共刺激シグナルを送るのを阻害する、別の物質、例えばCD28並びにB7−1および/またはB7−2の間の相互作用を阻害する分子(例えば抗体または可溶性融合タンパク)もまた、T細胞アポトーシスを誘起する物質と一緒に投与することができる。
【0012】
本明細書に記載した方法に準じた、アポトーシスの誘起によるT細胞のクローン的排除は、種々の臨床の場に適用される。例えば、異種反応性(alloreactive)のT細胞を移植の受容者から排除し、移植細胞、組織または器官の拒絶を阻害することができる。さらに、骨髄移植の前に、供与体の骨髄から異種反応性T細胞を排除し、移植受容者における移植片対宿主疾患を阻害できる。その他の適用として、自己反応性T細胞を除去して自己免疫障害を処置し、およびアレルゲン特異的T細胞を除去してアレルギーを処置する。表面でCTLA4を発現する、ウイルス感染したまたは悪性のT細胞もまた、本発明の方法に準じて排除できる。
【0013】
T細胞におけるアポトーシスの誘起を提供するのに加えて、本発明はまたT細胞アポトーシスを阻害する方法をも提供する。一の態様において、T細胞アポトーシスは、T細胞上のCTLA4、および抗原表示細胞でアポトーシスを誘起するCTLA4リガンドとの間の相互作用で干渉することにより阻害される。CTLA4抗体もしくはそれらの断片(例えばFab断片)の阻止形態またはCTLA4リガンドの可溶性阻止形態は、T細胞アポトーシスの阻害に用いることができる。また別に、細胞内で作用して、CTLA4−媒介経路を通じてT細胞のアポトーシスを阻害する物質を用いることができる。アポトーシスを阻害する方法は、例えば腫瘍細胞および病原体(例えば細菌、ウイルス、菌類、寄生虫等)に対するT細胞応答を増強し、予防接種の効果を増強するのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の詳しい説明
本発明は、少なくともある程度、活性化T細胞上のT細胞表面分子、例えばCTLA4の架橋が、TCR/CD3複合体を介した活性化T細胞へのシグナルの配送と共に、T細胞にアポトーシスを誘起するという発見に基づいている。抗原がTCR/CD3複合体を通じてシグナルを配送するために用いられる場合、結果的に抗原特異的アポトーシスを引き起こす。従って、本発明は、抗原に特異的な方法で活性化T細胞をクローン的に排除させる方法を提供する。
【0015】
本発明の一つの態様として、T細胞表面に存在する分子に結合する新規な単離リガンドを提供し、活性化T細胞のアポトーシスを誘起する。本明細書で用いる「リガンド」は標的分子に特異的な反応性(すなわち特異的に認識し、そして結合する)を示す分子である。本発明のリガンドは、T細胞特異的表面分子に結合し、T細胞のアポトーシスシグナルの引き金となる。表面分子、すなわち、「T細胞特異性」は、別の細胞型に比較して独占的にまたは優先的に(すなわち優越して)Tリンパ球に発現する。本発明のリガンドが結合する、好ましいT細胞表面分子はCTLA4である。一つの態様において、CTLA4は配列番号:36(ハーパー,K.ら、J.Immunol.147,1037−1044(1991)をも参照)に示すアミノ酸配列を有し、配列番号:35(ダリアバッハ,F.ら、Eur.J.Immunol.18,1901−1905(1988)をも参照)に示すヌクレオチド配列を有するcDNAによりコード化されるヒトタンパクを表す。別の態様において、CTLA4は別の哺乳動物種からのヒトタンパク相同体、例えばマウスCTLA4を表す(マウスCTLA4をコード化したcDNAはブルネット,J.F.ら、Nature 328,267−270(1987)に記載されている)。さらに、タンパクに結合するリガンドは、T細胞特異性発現を示し、T細胞に抗原特異性アポトーシスを媒介することができるCTLA4(例えば相同のアミノ酸配列を有する)に構造的に関連しており、本発明の意図するところである。
【0016】
本発明のリガンドは抗原特異的な態様で、活性化T細胞にアポトーシスまたはアポトーシスシグナルを誘起することができる。「アポトーシス」なる用語は細胞収縮、核崩壊、および最も典型的な細胞DNAの分断の存在により特徴づけられる、プログラムされた細胞死の細胞の過程を記載することを意味する。「抗原特異性」アポトーシスは、T細胞集団の中で、アポトーシスが特定の抗原、例えば同種抗原または自己抗原に特異性を有するT細胞にのみアポトーシスが起こることを意味する。抗原特異性アポトーシスは活性化T細胞を抗原および本発明のCTLA4リガンドの両方で刺激することにより達成できる。また別に非抗原特異性(すなわちポリクローナル)アポトーシスは、非抗原特異的シグナルをTCR/CD3複合体を通じて、例えば抗CD3抗体を本発明のCTLA4リガンドと共に、T細胞に送ることにより達成できる。アポトーシスは表面上にCTLA4を発現する「活性化」T細胞に誘起される。T細胞は抗原に特異的な方法で、例えばT細胞を共刺激シグナルと共に(例えばCD28経路を通じてシグナルを送る)抗原で刺激することによりCTLA4を発現するように活性化できる。また別に、T細胞は、例えば、ミトゲン例えば植物性赤血球凝集素(PHA)またはフォルボールエステル例えばフォルボールミリスティックアセテート(PMA)と培養することにより、ポリクローナル的に活性化できる。
【0017】
好ましい態様において、本発明のリガンドはCTLA4に結合する抗体(本明細書で抗CTLA4抗体とも称する)である。本明細書で用いる「抗体」なる用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原例えばCTLA4に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を意味する。構造的には、最も簡単な天然に存在する抗体(例えばIgG)は、4個のポリペプチド鎖、2個の重(H)鎖および2個の軽(L)鎖を含有し、ジスルフィド結合により内部で結合している。抗体の抗原結合機能は、天然に存在する抗体の断片により実行できることが示されている。従って、これらの抗原結合断片もまた「抗体」なる用語で表す。抗体なる用語の範疇に入る結合断片の実例としては、(i)VL、VH、CLおよびCH1領域から成るFab断片;(ii)VHおよびCH1領域から成るFd断片;(iii)抗体の単一のアームのVLおよびVH領域から成るFv断片;(iv)VH領域から成るdAb断片(ワードら、Nature 341,544−546(1989));(v)単離した相補的決定部域(complimentarity determining region:CDR);および(vi)蝶番部域でジスルフィド橋により連結された2個のFab断片を含む2価の断片である、F(ab’)断片が含まれる。さらにFv断片の2個の領域は別の遺伝子によりコード化されるが、合成リンカーは、組換え法により単一のタンパク鎖(一本鎖Fv(scFv)として既知;バードら、Science 242,423−426(1988),およびフストンら、PNAS 85,5879−5883(1988))にできるように作ることができる。このような一本鎖抗体もまた「抗体」なる用語の範疇に入る。アポトーシスを誘起する好ましい抗体断片は、標的抗原例えばF(ab’)断片のような2価の断片を架橋する能力のあるものである。また別に、それ自身は標的抗原を架橋しない抗体断片(例えばFab断片)は、それにより標的抗原と架橋する抗体断片を架橋させる二次的な抗体と組み合わせて用いることができる。さらに、非架橋抗体断片(例えばFab断片)は、以下に記載するようにアポトーシスを阻止または阻害するために用いることができる。抗体は本明細書に記載するように通常の方法を用いて分断でき、断片は抗体全体のために記載したのと同一の方法によりスクリーニングして使用することができる。本発明の抗体はCTLA4結合タンパクを有する2重に特異的でキメラな分子を含むことをも意味する。
【0018】
「CTLA4エピトープに対して望ましく結合する特異性」なる言語およびさらに一般的な「特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位」なる言語は、個々の抗体がT細胞表面分子、例えばCTLA4と特異的に免疫反応する能力を意味する。すなわち、これは、抗体分子とCTLA4の抗原決定因子との間での非無作為結合反応を意味する。望ましい結合特異性は、典型的には、抗体のCTLA4抗原および無関係の抗原に差別的に結合し、したがって、とりわけ2個の抗原が独特のエピトープである場合に、2個の異なる抗原を区別する能力を参考にして決定する。CTLA4エピトープに特異的に結合する抗体は、「特異的抗体」と称する。
【0019】
本明細書で用いる「抗体結合部位」は、抗原に特異的に結合する(免疫反応する)、重および軽鎖可変および超可変部域を包含する、抗体分子の構造的な部分を意味する。種々の形態の“免疫反応する”および“と反応する”なる用語は、抗原決定因子含有分子、および抗体結合部位を含有する分子、例えば抗体分子全体またはそれの一部分の間の結合という意味で本明細書で使用する。
【0020】
本明細書で用いる「エピトープ」なる用語は、抗体結合部位により免疫学的に結合される、抗原の実際の構造部分を意味する。この用語はまた「抗原決定因子」と互換的にも用いられる。本発明のリガンド、例えば抗体は、好ましくはB7−1またはB7−2により結合される(複数の)エピトープとは区別される(すなわち、異なる)CTLA4上のエピトープに結合する。すなわち、CTLA4リガンドはCTLA4上のB7−1またはB7−2結合部位とは区別されるCTLA4上の部位に結合する。CTLA4リガンドの、B7−1またはB7−2結合部位とは区別されるCTLA4エピトープへの結合は、リガンドがB7−1またはB7−2のCTLA4への結合を阻害する、またはその逆の不能力性(すなわち、B7−1またはB7−2の、CTLA4リガンドのCTLA4に対する結合を阻害するための不能力性)により示される。これは、実施例2に記載するように、例えば酵素連結免疫吸着検定(ELISA)並びに、可溶性B7−1、B7−2およびCTLA4融合タンパクを用いて評価することができる。好ましくは、Fab断片を、抗体がB7−1またはB7−2のCTLA4への結合を阻害し、立体障害による非特異的阻害を減少させる能力を評価するために用いる。
【0021】
本発明のCTLA4リガンドが結合する、好ましいヒトCTLA4エピトープには、アミノ酸配列:
【化2】

【0022】
(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=0〜20、さらに好ましくは0〜10、よりさらに好ましくは0〜5、最も好ましくは0〜3である。)を含有または包含する。天然のヒトCTLA4では、この配列は相補的決定部域2(complimentarydeterminingregion2:CDR2)様部域の細胞内領域に、配列番号:36のアミノ酸位置59〜64(配列番号:36)に位置する。従って、典型的なものでは、XaaはヒトCTLA4のコアエピトープのアミノまたはカルボキシ側のどちらかか、またはアミノおよびカルボキシ側の両方に見出されるさらなるアミノ酸残基である(これのアミノ酸配列の全長を配列番号:36に示す)。天然のタンパクでは、さらなる、隣接しないアミノ酸残基もまた、抗体により認識されるエピトープの配置に寄与できることが、当業者に理解されるであろう。6個のコアアミノ酸残基の側面になるその他のアミノ酸残基を含有するエピトープを包含する合成ペプチドを作ることができる(すなわちXaaはまた別に、天然のCTLA4タンパクに見出されるものとは異なるアミノ酸残基にできる)。これらの側面にあるアミノ酸は得られるペプチドの特性を変化させる機能(例えば、溶解性の増加、免疫原性の増強または得られるペプチドの二量体形成の亢進)を有することができる。ペプチドを免疫原として用いる場合、1またはそれ以上の荷電アミノ酸(例えばリジン、アルギニン)は、ペプチドの溶解性を増加させ、および/またはペプチドの免疫原性を増加するために含有することができる。また別に、システイン残基は、得られるペプチドの二量体形成を増加させるために含有することができる。
【0023】
本発明のこれらのおよびその他の態様は、以下の節に詳細に記載する:
【0024】
I.CTLA4および抗CTLA4抗体
CTLA4抗原は、免疫細胞に対して抗原を表示する、Bリンパ球、専門の抗原表示細胞(例えば単球、樹状突起細胞、ランゲルハン細胞)およびその他の細胞(例えばケラチノサイト、内皮細胞、星状細胞、線維芽細胞、乏突起膠細胞)の表面に見出される共刺激分子に結合できるT細胞表面分子のファミリーの一員である。このファミリーの別の一員はCTLA4と全アミノ酸の同一性の31%を共有するT細胞表面分子CD28である(ハーパー,K.ら、J.Immunol.147,1037−1044(1991))。CD28およびCTLA4分子は各々B7−1およびB7−2のような共刺激分子に結合する。しかしながら、抗CD28Fab断片が、B7−1およびB7−2の両方による共刺激に対するT細胞応答を完全に阻害するのを観察すると、B7ファミリー共刺激が優勢的にCD28に媒介されるという仮説が支持される(ギミ,C.D.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,6575−6579(1991);およびフリーマン,G.J.ら、J.Exp.Med.178,2185−2192(1993)参照)。対照的に、T細胞アポトーシスは新規CTLA4リガンドとの相互作用により、CTLA4に媒介されることが発見されている。
【0025】
CTLA4分子は、休止T細胞には発現しないが、活性化により誘起される。例えば正常の休止ヒトT細胞をPHAまたはPMAで24時間刺激した後、CTLA4mRNAはCD4およびCD8サブセットの両方に発現する(フリーマン,G.J.ら、J.Immunol.149,3795−3801(1992))。さらに、CTLA4発現はT細胞セルライン感染HTLV−IおよびHIVに観察されている(フリーマン,G.J.ら、J.Immunol.149,3795−3801(1992);ハーファー,O.K.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,11094−11098(1993)参照)。
【0026】
T細胞表面分子例えばCTLA4の精製方法は、確立されており、そしてさらに、CTLA4遺伝子およびcDNAはヒトおよびマウスの両方からクローン化されている(例えば、ダリアバッハ,F.ら、Eur.J.Immunol.18,1901−1905(1988);およびブルネット,J−F.ら、Nature 328,267−270(1987)参照)。ヒトCTLA4のヌクレオチド配列および誘導されるアミノ酸配列を、各々配列番号:35および36に示す。CTLA4タンパク、またはそれのペプチドは、天然タンパクの精製により、または組換え発現により入手できる。CTLA4の改変した組換え体、例えばCTLA4の細胞外領域は、CTLA4コード化DNAを発現ベクターに入れて発現させ、ベクターを宿主細胞、原核または真核細胞のどちらかに導入することができる。例えば、CTLA4細胞外領域またはそれのペプチドは、細菌細胞例えばE.coli、昆虫細胞(例えばバキュロウイルス発現系を使用する)、酵母または哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COSもしくはNSO細胞に発現できる。その他の適当な宿主細胞および発現ベクターは、ゴエデル、(1990)(前掲)に見出され、すなわち当業者に周知である。酵母S.cerivisaeに発現するベクターの例としては、pYepSec1(バルダリら、Embo.J.6,229−234(1987))、pMFa(クルジャンおよびヘルスコヴィッツ、Cell30,933−943(1982))、pJRY88(シュルツら、Gene 54,113−123(1987))およびpYES2(インヴィトロゲンコーポレーション、サンディエゴ、カリフォルニア州)が挙げられる。培養昆虫細胞(SF9細胞)におけるタンパクの発現に使用可能なバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(スミスら、Mol.Cell.Biol.3,2156−2165(1983))およびpVLシリーズ(リュックロー,V.A.およびサマーズ,M.D.,Virology170,31−39(1989))が含まれる。一般的に、COS細胞(グルツマン,Y.,Cell23,175−182(1981))は,pCDM8(シード,B.,Nature 329,840(1987))のようなベクターと一緒に、哺乳動物細胞における一過性の増幅/発現のために用い、一方CHO(dhfr−チャイニーズハムスター卵巣:dhfr−Chinese Hamster Ovary)細胞はpMT2PC(カウフマンら、EMBOJ.6,187−195(1987))のようなベクターと、哺乳動物細胞における安定した増幅/発現のために用いられる。ガルフレ,G.およびミルステイン,C.(Methods in Enzymology 73(13),3−46(1981)並びにPreparation of Monoclonal Antibodies:Strategy and Procedures,アカデミックプレス、ニューヨーク、ニューヨーク州)に記載されるように、組換えタンパクは、NSO骨髄腫セルラインで産生できる。
また別に、CTLA4の組換え細胞外部分は、細菌細胞、例えばE.coliに発現できる。好ましいE.coli発現系には、誘導可能な発現ベクターpTrc(アマンら、Gene 69,301−315(1988))およびpET11(ステュディヤーら、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、アカデミックプレス、サンディエゴ、カリフォルニア、185,60−89(1990);ノヴァゲンより入手可能)を含む。pTrcベクター系では、宿主RNAポリメラーゼ転写によりpe1Bシグナル配列でハイブリッドtrp−lac融合タンパクから挿入した遺伝子を発現する。誘導後、ペリプラスミック分画から組換えCTLA4を精製できる。pET11ベクター系では、共発現ウイルス性RNAポリメラーゼ(T7gnl)により媒介されるT7 gn10−lac 0融合プロモーターから転写することにより、非融合タンパクとして標的遺伝子を発現する。このウイルス性ポリメラーゼは、宿主E.coli株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)により、lacUV5プロモーターの転写制御下で、T7gn1を隠す内在性λプロファージから供給される。この系では、組換えCTLA4は細胞封入体から変性された形態で精製でき、望む場合は、段階グラジエント透析により変性原を除去して復元できる。E.coliにおけるヒトCTLA4の細胞外領域の発現については、実施例6でさらに詳細に記載する。
【0027】
CTLA4の組換え細胞表面形態は、タンパクの膜透過および/または細胞質部分の改変により、哺乳動物の細胞上に発現できる(天然の全長の形態のタンパクは、多くの哺乳動物細胞の表面に効率よく発現しない)。例えば、膜透過および細胞質領域は、分子を細胞表面に繋ぎ止めるためのまた別の構造、例えばグリコフォスファチヂルイノシトール(gpi)アンカー(実施例1で記載)または脂肪酸アンカーで置換できる。また別に、CTLA4の細胞表面発現は、異型の膜透過領域を用いて、または細胞質領域を排除することにより達成できる。リンスレイP.S.ら、J.Exp.Med.174,561−569(1991)に記載するように、CTLA4は可溶性融合タンパク(例えば免疫グロブリン融合タンパク)として哺乳動物にも発現できる。
【0028】
哺乳動物細胞に発現するためには、通常の技法で、例えばリン酸カルシウムまたは塩化カルシウムの共沈、DEAEデキストラン介在トランスフェクション、リポフェクチンまたはエレクトロポレーション(electroporation)によりベクターDNAを哺乳動物細胞に誘導する。宿主細胞を形質転換するに適した方法は、サムブロックら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(1989))およびその他の実験テキストに見出すことができる。哺乳動物細胞で用いる場合、発現ベクターの制御機能は、しばしばウイルスの遺伝物質により提供される。例えば、通常用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよび最も頻繁に用いられるシミアンウイルス40に由来する。
【0029】
哺乳動物細胞またはその他の所に発現するCTLA4タンパクまたはそれらのペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿、分別カラムクロマトグラフィー(例えばイオン交換、ゲル濾過、電気泳動、親和性クロマトグラフィー等)および最後には結晶化を含む、当業界で標準的な方法で精製できる(一般的には、“Enzyme Purification and Related Techniques”,Methods in Enzymology 22,235−577(1971)参照)。
【0030】
抗CTLA4抗体は、当業者により、以下の標準的な方法により産生できる。例えば、いろいろな種からのCTLA4分子は可溶性形態であっても、膜結合性であっても、抗CTLA4抗体の形成を誘起するために用いることができる。このような抗体はポリクローナルもしくはモノクローナル抗体か、またはこのような抗体の抗原結合断片のどちらでもよい。治療に適用するためにとりわけ重要なことは、T細胞アポトーシスを誘起するCTLA4上のエピトープを架橋する抗体である。また別に、この「アポトーシス性エピトープ」に特異的に結合するが、CTLA4に架橋せず、アポトーシスを誘起しない、抗体またはそれらの(例えばFab)断片は、T細胞アポトーシスを阻害するために治療的に用いることができる。本発明はヒトCTLA4(例えば抗ヒトCTLA4 mAb、好ましくはヒトまたはヒト化mAb)およびその他の種例えばサル、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ラット、マウス等のCTLA4タンパクに結合する抗体を包含し、獣医学的な目的のために用いることができる。抗CTLA4抗体の産生のための方法を、さらに詳細に以下に記載する:
【0031】
A.免疫原
「免疫原」なる用語は、CTLA4に対する抗体の調製物に用いるための活性成分として、CTLA4ペプチドまたはタンパクを含有する組成物を記載するために、本明細書で用いる。CTLA4ペプチドまたはタンパクを抗体を誘導するために用いる場合、ペプチドは単独でまたは担体に連結して複合体またはペプチドポリマーとして用いることができる。
【0032】
適当な抗CTLA4抗体を産生するために、CTLA4ペプチドまたはタンパクを所望により担体に連結した複合体として、有効な免疫原量の免疫原を含有すべきである。単位投与量あたりのペプチドの有効量は、当業者に周知であるように、とりわけ接種した動物の種、動物の体重および採用した免疫方法に依存する。この免疫原調製物は、典型的なものでは、ペプチドを免疫投与量あたり約10マイクログラムから約500ミリグラム、好ましくは投与量あたり約50マイクログラムから約50ミリグラム含有する。免疫調製物は、アジュバントを希釈剤の一部として含有することもできる。完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロインドアジュバント(IFA)およびミョウバンのようなアジュバントは当業界で周知であり、いくつかの製造元より市販により入手可能である。
【0033】
当業者は、免疫するために、天然物の形態のCTLA4を使用する代わりに、本発明で使用するために抗体を増加できるように、合成ペプチドを代替的に用いることを理解するであろう。可溶性および膜結合性CTLA4タンパクまたはペプチド断片の両方とも、免疫原として用いるのに適しており、同様にまた免疫親和性精製により単離できる。上述のように、または当業界で周知のように単離できるような、CTLA4タンパクの精製体はそれ自体免疫原として直接的に使用できるか、また別に、化学的カップリング法およびCTLA4タンパクのクローン化遺伝子を用いる遺伝子操作を含む通常の方法で、適当なキャリヤータンパクに連結することができる。精製CTLA4タンパクは非タンパク性物質、例えば脂質または炭水化物で共有結合的にまたは非共有結合的に修飾して、免疫原性または溶解性を増強できる。また別に、免疫原性を増強するために、精製CTLA4タンパクは、ウイルス性粒子、複製ウイルスまたはその他の微生物と結合またはこれらに挿入することができる。CTLA4タンパクは、例えばウイルス粒子もしくは微生物、またはそれらの免疫原性部分に化学的に結合できる。
【0034】
説明的な態様において、精製CTLA4タンパクまたはそれらのペプチド断片(例えば限定的なタンパク溶解またはDNA組換え法により産生)は、動物において免疫原であるキャリヤーに結合する。好ましいキャリヤーには、タンパク例えばアルブミン、血清タンパク(例えばグロブリンおよびリポタンパク)およびポリアミノ酸が含まれる。有用なタンパクの実例としては、ウシ血清アルブミン、ウサギ血清アルブミン、甲状腺グロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)、卵のオバルブミンおよびウシガンマーグロブリンが含まれる。合成ポリアミノ酸、例えばポリリジンまたはポリアルギニンもまた有用なキャリャーである。CTLA4タンパクまたはペプチド断片を適当な免疫原性キャリヤーに共有結合させることに関して、当業者に既知の多くの化学的架橋試薬がある。好ましい架橋試薬は、タンパクを漸次的に連結するのに用いることができる異二機能架橋剤である。広範に種々の異二機能架橋剤が当業界に知られており、サクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシサクシンイミドエステル(MBS);N−サクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノゼンゾエート(SIAB)、サクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC);4−サクシンイミジルオキシカルボニル−a−メチル−a−(2−ピリジルジチオ)−トルン(SMPT)、N−サクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、サクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート]ヘキサノエート(LC−SPDP)が含まれる。
【0035】
表面にCTLA4タンパクを発現する全形の細胞で動物を単純に免疫するのも望ましい。種々のセルラインを免疫原として用い、活性化T細胞に限定はしないが、これを含めるCTLA4抗原に対するモノクローナル抗体を産生することができる。例えば対象から得た末梢血T細胞はイン・ビトロで抗CD3抗体、PHAまたはPMAで活性化できる。また別に、抗原を提示することにより、共刺激シグナルと共にT細胞にCTLA4を発現するように抗原特異性(例えば全身反応性)T細胞クローンを活性化できる。CTLA4特異性抗体を産生する免疫原として用いることができる全形の細胞には、組換えトランスフェクタントも含まれる。例えばCOSおよびCHO細胞は、実施例1に記載するように、CTLA4−gpicDNAでトランスフェクションすることにより再構築し、それらの表面にCTLA4を発現する細胞を産生できる。これらのトランスフェクタント細胞は、次いで免疫原として抗CTLA4抗体を産生するのに用いることができる。トランスフェクタント細胞のその他の例としては、とりわけCTLA4タンパクをグリコシル化できる真核細胞が知られており、細胞表面にトランスフェクトしたCTLA4遺伝子を発現するように可動できる任意の方法を用いて、全形細胞免疫原を産生することができる。
【0036】
CTLA4発現細胞または単離CTLA4タンパクに代わって、CTLA4のペプチド断片を免疫原として用いて、抗CTLA4抗体を産生することができる。好ましい態様において、抗体に結合するCTLA4エピトープには、アミノ酸配列:
【0037】
【化3】

【0038】
(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=0〜20、好ましくは0〜10、さらに好ましくは0〜5、最も好ましくは0〜3である。)を包含する。従って、配列番号:33のアミノ酸配列を有するペプチドは免疫原として用いることができる。よって、本発明はさらに、アミノ酸配列:
【0039】
【化4】

【0040】
(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=0〜20)を含有する単離CTLA4ペプチドを包含する。
【0041】
また別に、アポトーシスを誘起できる抗CTLA4抗体が多くのその他のペプチド配列(実施例3に記載するようなファージ表示法(phage Display technology)により決定)と交差反応できることが見いだされている。これらのその他のペプチド配列の実例を以下に示す:
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
代替のアミノ酸残基を側面につけることができる、太字で括弧で括った6個のアミノ酸(抗体に結合したエピトープを表す)の伸長を含有する、任意のこれらのペプチド、またはその他のペプチドもまた、免疫原として用いて本発明の抗CTLA4抗体を産生でき、本発明に包含される。免疫原として使用するために、ペプチドを上記のように溶解性の上昇および/または免疫原性の増強のために修飾できる。
【0044】
タンパクまたはペプチドを免疫原として使用するための別法としては、いわゆる遺伝子免疫するために、免疫原としてタンパクまたはペプチドをコードする核酸(例えばDNA)を使用することができる。従って、「免疫原」なる用語は、それに抗して抗体を増加させるタンパクまたはペプチドをコードする核酸をも含めることを意味する。遺伝子免疫により抗体を増加させるために、当該タンパク(例えばCTLA4またはそれらのペプチド)をコードする核酸を含有する発現ベクター構築物は、粒子(例えば金粒子)を構築物で被覆し、粒子を皮膚へ注入することにより、動物(例えばマウス)の皮膚へ細胞内分配される。この操作が、結果的に皮膚にて抗原を産生し、特異的抗体反応を発展させる(タング,D.C.ら、Nature 356,152−154(1992);アイセンブラウン,M.D.ら、DNA Cell Biol.12,791−797(1993);ワング,B.ら、DNA Cell Biol.12,799−805(1993))。
【0045】
B.ポリクローナル抗CTLA4抗体
一般的に、CTLA4免疫原、例えばCTLA4タンパクの細胞外領域およびアジュバントを多数回皮下(sc)または腹膜腔内(ip)注射することにより、精製CTLA4タンパクまたはそれらのペプチド断片に対するポリクローナル抗体を、動物で増加させることができる。ポリクローナル抗CTLA4抗血清は、例えばリンドステン,T.ら、J.Immunol.151,3489−3499(1993)に記載するように、産生できる。説明的な態様において、免疫原性CTLA4タンパク、ペプチドまたは約1μg〜1mgのタンパクをフロイント完全アジュバントと組み合わせ、溶液を数箇所で皮内注射して、誘導した物体に抗して、動物を通常的に免疫する。1ヶ月後、フロイント完全アジュバント(またはその他の適当なアジュバント)中の免疫原の元来の量の1/5〜1/10で、数箇所で皮下注射して動物を免疫促進する。7〜14日後、動物を出血させ、血清の抗CTLA4力価を(例えばELISAにより)検定する。力価がプラトーに達するまで動物を免疫促進する。また、ミョウバンのような凝集剤も、免疫応答を増強するために使用することができる。
【0046】
このような哺乳動物産生抗体分子群は、この群がCTLA4に異なる免疫特異性および親和性を有する抗体を含有するので、「ポリクローナル」と称する。次いでこの抗体分子を、哺乳動物から(例えば血液から)回収し、周知の技術、例えばタンパクAクロマトグラフィーにより単離し、IgG分画を得る。抗体の特異性を増強するために、固相固着免疫原を用いる免疫親和性クロマトグラフィーにより抗体を精製できる。免疫原が抗体分子と免疫反応し、固相固着免疫複合体を形成するのに十分な時間、抗体を固相固着免疫原と接触させる。結合した抗体を標準的な方法で複合体から分離する。
【0047】
C.モノクローナル抗CTLA4抗体
本明細書で用いる「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、CTLA4抗原の粒子エピトープでの免疫反応が可能な抗原結合部位の一種のみを含有する抗体分子群を意味する。このように、モノクローナル抗体組成物は、通常それと免疫反応する特定のCTLA4タンパクに単一の結合親和性を示す。好ましくは、対象となる方法で用いるモノクローナル抗体は、さらにヒトに由来するCTLA4と免疫反応するという特徴がある。
【0048】
本発明の組成物および方法に有用なモノクローナル抗体は、T細胞活性時のCTLA4抗原のエピトープに導かれ、抗体およびCTLA4抗原間で複合体形成(本明細書ではライゲーションを意味する)し、活性化T細胞におけるアポトーシスを誘起する。CTLA4のエピトープに対するモノクローナル抗体は、培養中、連続的なセルラインによる、抗体分子の産生を供する方法を用いて調製できる。これらには元来コーラーおよびミルステイン(Nature 256,495−497(1975))により記載されたハイブリドーマ法およびさらに最近のヒトBセルハイブリドーマ法(コズボールら、Immunol.Today 4,72(1983))、EDVハイブリドーマ法(コールら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、アラン・アール・リス・インコーポレイテッド、77−96頁)およびトリオーマ法が含まれるが、これらに限定するものではない。本発明に有用なモノクローナル抗体を有効に生じることができるその他の方法には、ファージ表示法が含まれる(マークスら、J.Biol.Chem.16007−16010(1992))。
【0049】
一つの態様において、対象方法に用いる抗体調製物は、ハイブリドーマセルラインにより産生したモノクローナル抗体である。ハイブリドーマ融合法は、最初コーラーおよびミルステイン(コーラーら、Nature 256,495−97(1975);ブラウンら、J.Immunol.127,539−46(1981);ブラウンら、J.Biol.Chem.255,4980−83(1980);イェーら、PNAS 76,2927−31(1976);およびイェーら、Int.J.Cancer 29,269−75(1982))により紹介された。従って、本発明のモノクローナル抗体組成物は、下記の段階を含む以下の方法により産生できる。
【0050】
(a)CTLA4タンパクまたはそれらのペプチドでの動物の免疫化
免疫は通常CTLA4免疫原を、免疫学的に適した哺乳動物に、免疫学的に有効量すなわち免疫反応を生じるのに十分な量投与することにより達成できる。好ましくは哺乳動物はウサギ、ラットまたはマウスのような齧歯類である。次いで、CTLA4免疫原と免疫反応する抗体分子を分泌する細胞を哺乳動物が産生するのに十分な時間、哺乳動物を保持した。このような免疫反応は、免疫原タンパクの調製物との免疫反応で生み出された抗体分子のスクリーニングにより検出される。所望により、検定で抗体分子により検出される形態のタンパク調製物、例えばCTLA4の膜結合形態で、抗体分子をスクリーニングするのが望ましい。これらのスクリーニング法は、当業者に周知であり、例えば酵素連結免疫吸着検定(ELISA)および/またはフローサイトメトリーがある。
【0051】
(b)次に望ましい抗体を分泌する免疫哺乳動物から取り出した抗体産生細胞の懸濁液を調製する。十分な時間の後、マウスを殺し、体細胞抗体産生リンパ球を得る。抗体産生細胞は、用意した動物のリンパ節、脾臓および末梢血から取ることができる。脾臓細胞が好ましく、当業者に周知の方法で生理学的に耐えうる培地中、機械的に個々の細胞に分離できる。マウスリンパ球は、以下に記載するマウス骨髄腫と安定した高い確率で融合する。ラット、ウサギおよびカエル体細胞をも使用することができる。望ましい免疫グロブリンをコードする脾臓細胞染色体は、通常、融合剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)の存在下、脾臓細胞を骨髄種細胞と融合することにより固定化する。標準的な方法に準じて、任意の数の骨髄腫細胞セルラインを、融合のパートナーとして使用できる;例えばP3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653またはSp2/O−Ag14骨髄腫セルラインである。これらの骨髄腫セルラインは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、ロックビル、メリーランド州より入手可能である。
【0052】
次いで非融合骨髄腫またはリンパ球親細胞が最終的に死ぬ、選択培地、例えばHAT培地中、望ましいハイブリドーマを含有する、得られた細胞を成長させる。ハイブリドーマ細胞のみが生き残り、単離したクローンを得るための限定的な希釈条件で成長させることができる。ハイブリドーマの上澄を、例えば免疫に用いた抗原を用いた免疫検定法により、望ましい特異性の抗体の存在をスクリーニングする。次に陽性のクローンを限定的な希釈条件でサブクローン化し、産生したモノクローナル抗体を単離できる。その他のタンパクおよびその他の狭雑物を除去するために、モノクローナル抗体を単離および精製する種々の常法がある。モノクローナル抗体の精製のために通常用いられる方法は、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、および親和クロマトグラフィーが含まれる(ゾラら、Mnoclonal Hybridoma Antibodys:Techniques And Applications、ヒュウレル(編)51−52頁(1982)(CRCプレス))。これらの方法に準じて産生したハイブリドーマは、当業界に既知の方法でイン・ビトロまたはイン・ビボで伸長できる。
【0053】
一般的に個々のセルラインは、イン・ビトロで、例えば実験用培養容器中、伸長でき、単一の特異性モノクローナル抗体を高濃度で含有する培養培地を、デカンテーション、濾過または遠心により収穫できる。また別に、モノクローナル抗体の産生は、体細胞および骨髄腫細胞に元来の融合を提供するために使用した組織適合した形態の動物にハイブリドーマの試料を注射することにより、増強できる。融合細胞ハイブリッドにより特異的モノクローナル抗体を分泌する腫瘍は、注射された動物で成長する。動物の体液、例えば腹水または血清は、高濃度のモノクローナル抗体を提供する。ヒトハイブリドーマまたはEBVハイブリドーマを使用した場合、動物例えばマウスに注射した異種移植片の拒絶を避ける必要がある。免疫不全すなわちヌードマウスを使用でき、またはハイブリドーマを最初に放射線照射ヌードマウスに固体の皮下腫瘍として継代し、イン・ビトロで培養し、次に特異性ヒトモノクローナル抗体を多量に分泌する腹水腫瘍を成長させている、プリスタン・プライム(pristane primed)した、放射線照射ヌードマウスに腹膜腔内注射できる。
【0054】
これらの組成物の調製に有用な培地および動物は、共に当業者に周知であり、市販により入手可能であり、合成培養培地、同系交配マウス等が含まれる。典型的な合成培地は、デュルベッコ最小必須培地(DMEM;デュルベッコら、Virol.8,396(1959))に4.5gm/1グルコース、20mMグルタミン、および20%ウシ胎仔血清を補充したものである。典型的な同系交配マウス系列は、Balb/cである。
【0055】
実施例1は、ネズミ抗ヒトCTLA4モノクローナル抗体の産生について記載しており、これは対象の方法および組成物に使用できる。ER5.4D3(4D3またはCTLA4.1とも称する)、ES5.3D6(3D6またはCTLA4.2とも称する)、ER5.3D8(3D8またはCTLA4.3とも称する)、ES5.4E3(4E3またはCTLA4.4とも称す)およびER4.7G11(7G11とも称する)抗体を産生するER5.4D3、ES5.3D6、ES5.3D8、ES5.4E3およびER4.7G11ハイブリドーマは、各々、ブダペスト条約の規定の下、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、パークローンドライブ、ロックビル、メリーランド州に1994年6月3日に寄託した。ER5.4D3ハイブリドーマは、ATCC受入番号−−−−で寄託された。ES5.3D6ハイブリドーマは、ATCC受入番号−−−−で寄託された。ER5.3D8ハイブリドーマは、ATCC受入番号−−−−で寄託された。ES5.4E3ハイブリドーマは、ATCC受入番号−−−−で寄託された。ER4.7G11ハイブリドーマは、ATCC受入番号−−−−で寄託された。
【0056】
D.キメラおよびヒト化抗CTLA4抗体
非ヒト対象に産生した抗体をヒトで治療的に使用する場合、異質の物としての程度が変わるのが認められ、患者に免疫反応が起こりうる。この問題を最小にまたは排除するための一つのアプローチとして、一般的に免疫を抑制することが好ましく、キメラ抗体誘導体、すなわち非ヒト動物可変部域およびヒト定常部域を組み合わせた抗体分子を産生させる。このような抗体は、上述のモノクローナルおよびポリクローナル抗体と等価であるが、ヒトに投与した場合、免疫原性が少なくなり、従って、患者の耐性がよくなる。
【0057】
CTLA4と反応するキメラマウス−ヒトモノクローナル抗体(すなわちキメラ抗体)は、当業界に既知の組換えDNA法により産生できる。例えばネズミ(またはその他の種)抗CTLA4抗体分子の定常部域をコードする遺伝子は、ヒト定常部域をコードする遺伝子と代用される(ロビンソンら、国際特許公開PCT/US86/02269;アキラら、ヨーロッパ特許出願184187;タニグチ,M.ヨーロッパ特許出願171496;モリソンら、ヨーロッパ特許出願173494;ニューベルガーら、PCT出願 WO86/01533;キャビリーら、米国特許番号4816567;キャビリーら、ヨーロッパ特許出願125023;ベターら、(Science 240,1041−1043(1988))リウら、PNAS 84,3439−3443(1987);リウら、J.Immunol.139,3521−3526(1987);サンら、PNAS 84,214−218(1987);ニシムラら、Canc.Res.47,999−1005(1987);ウッドら、Nature 314,446−449(1985);ショーら、J.Natl.Cancer Inst 80,1553−1559(1988)参照)。
【0058】
可変部域をヒト可変部域から等価な部分に結合した抗原を巻き込まないで置換することによりキメラ抗体をさらに「ヒト化」できる。「ヒト化」キメラ抗体に関する一般的な研究は、モリソン,S.L.,Science 229,1202−1207(1985)およびオイら、Bio Techniques 4,214(1986)により提供されている。これらの方法には、少なくとも一つの重または軽鎖からの免疫グロブリン可変部域の全てまたは一部をコードする核酸配列の単離、操作および発現が含まれる。このような核酸の入手源は当業者に周知であるが、例えばハイブリドーマ産生抗CTLA4抗体から得ることができる。キメラ抗体またはそれらの断片をコードするcDNAは、次に適当な発現ベクターにクローン化できる。また、適切な「ヒト化」抗体は、CDRまたはCEA置換により産生できる(ウィンターに対する米国特許5225539;ジョーンズら、Nature 321,552−525(1986);ヴェルホーヤンら、Science 239,1534(1988);およびベイドラーら、J.Immunol.141,4053−4060(1988)参照)。
【0059】
マウスまたはその他の種からのヒト化mAbの別法として、ヒトタンパクに直接的に抗してヒトmAbを産生できる。ヒト抗体レパートリーを運ぶトランスジェノシスしたマウスを作り、ヒトCTLA4で免疫できる。次にこれらの免疫し、トランスジェノシスしたマウスからの脾細胞を用いて、ヒトCTLA4に特異的に反応するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを形成することができる(例えばウッドら、PCT公開WO91/00906;クッヒャーラパティら、PCT公開WO91/10741;ロンベルグら、PCT公開WO92/03918;キーら、PCT公開92/03917;ロンベルグ,N.ら、Nature 368,856−859(1994);グリーン,L.L.ら、Nature Genet.7,13−21(1994);モリソン,S.L.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA81,6851−6855(1994);ブラッジュマンら、Year Immunol.7,33−40(1993);テュアイロンら、PNAS 90,3720−3724(1993);ブラッジュマンら、Eur.J.Immunol.21,1323−1326(1991)参照)。
【0060】
E.コンビナトリアル抗CTLA4抗体
本発明のモノクローナル抗体組成物は、組換えDNA法の当業者に周知のその他の方法によっても産生することができる。「コンビナトリアル抗体表示」と称する別法は、特定の抗原特異性を有する抗体断片を同定および単離するために開発され、モノクローナル抗CTLA4抗体を産生するのに利用できる(コンビナトリアル抗体表示の説明については、例えばサストリーら、PNAS 86,5728(1989);ヒューズら、Science 246,1275(1989);およびオーランディーら、PNAS 86,3833(1989)参照)。上述のようにCTLA4免疫原で動物を免疫した後、休止B細胞プールの抗体レパートリーをクローン化する。方法は一般的に知られており、オリゴマープライマーおよびPCRの混合物を用いて、免疫グロブリン分子多様な集団の可変部域のDNA配列が直接的に得られる。例えば、5’リーダー(シグナルペプチド)配列および/またはフレームワーク1(FR1)配列に対応する混合オリゴヌクレオチドプライマー、および保存された3’定常部域のプライマーを多くのネズミ抗体からの重および軽鎖のPCR増幅のために用いることができる(ラリックら、Bio Techniques 11,152−156(1991))。同様の試験方法を用いて、ヒト抗体からのヒト重および軽鎖可変部域を増幅することもできる(ラリックら、Methods:Companion to Methods in Enzymology 2,106−110(1991))。
【0061】
説明的な態様において、RNAは、例えば末梢血細胞、骨髄、または脾臓調製物の活性化B細胞から、標準的な試験計画を用いて単離する(例えば米国特許番号4683202;オーランディーら、PNAS 86,3833−3837(1989);サストリーら、PNAS 86,5728−5732(1989):およびヒューズら、Science 246,1275−1281(1989))。
【0062】
cDNAの最初の鎖は、(複数の)重鎖並びにκおよびλ軽鎖の各々の定常部域に特異的なプライマー、ならびにシグナル配列のプライマーを用いて合成する。可変部域PCRプライマーを用いると、重および軽鎖の両方の可変部域が各々単独でまたは組み合わせて増幅され、適当なベクターにライゲートして表示パッケージを生じさせてさらに操作する。増幅試験計画に有用なオリゴヌクレオチドプライマーは独特のものであるかまたは、同義的あるいは同義的部位においてイノシンを組み入れることができる。制限エンドヌクレアーゼ認識配列もまた、プライマーに組み入れて、予め決定した発現の解読枠で、増幅した断片をベクター中にクローニングすることができる。
【0063】
免疫由来抗体レパートリーからクローン化したV遺伝子ライブラリーは、表示パッケージの集団、好ましくは線状ファージ由来のものにより発現し、抗体表示ライブラリーを形成できる。理想的には、表示パッケージは、非常に多様性に富んだ抗体表示ライブラリーの試料摂取、各々の親和性分離段階の後の急速な分別、および精製表示パッケージからの抗体遺伝子の簡単な単離を可能にする方法を含む。さらに、ファージ表示ライブラリー産生のための市販により入手可能なキット(例えばファルマシア・リコンビナント・ファージ・アンティボディ・システム、カタログ番号27−9400−01;およびストラッタジーン SurfZAPTMファージ表示キット、カタログ番号240612)に加え、とりわけ、多様な抗CTLA4抗体表示ライブラリーを産生するために使用できる方法および試薬の実例を、例えばラドナーら、米国特許番号5223409;カングら、国際公開番号WO92/18619;ドーワーら、国際公開番号WO91/17271;ウィンターら、国際公開番号WO92/20791;マークランドら、国際公開番号WO92/15679;ブレイトリングら、国際公開番号WO93/01288;マックカフェルティーら、国際公開番号WO92/01047;ガラルドら、国際公開番号WO92/09690;ラドナーら、国際公開番号WO90/02809;フッシュら、Bio/Technlogy 9,1370−1372(1991);ヘイら、Hum.Antibod.Hybridomas 3,81−85(1992);ヒューズら、Science 246,1275−1281(1989);グリフツら、EMBO J.12,725−734(1993);ホーキンスら、J.Mol.Biol.226,889−896(1992);クラックソンら、Nature 352,624−628(1991);グラムら、PNAS 89,3576−3580(1992);ガラッドら、Bio/Technology 9,1373−1377(1991):フーゲンブームら、Nuc.Acid Res.19,4133−4137(1991);およびバーバスら、PNAS 88,7978−7982(1991)に見出すことができる。
【0064】
ある態様において、重および軽鎖のV部域領域は、柔軟性のあるリンカーで接合され、単一鎖Fv断片を形成する、同一のポリペプチドに発現でき、続いてScFV遺伝子を望ましい発現ベクターまたはファージゲノムにクローン化できる。一般的にマックカフェルティーら、Nature 348,552−554(1990)に記載されるように、柔軟性のある(Gly−Ser)リンカーで接合した抗体の完全なVHおよびVL領域は、抗原親和性に基づいて分離可能な表示パッケージを提供できる単一鎖抗体を産生するのに用いることができる。CTLA4と免疫反応するscFV抗体の単離に、続いて対象方法で使用する医薬調製物に製剤化できる。
【0065】
表示パッケージ(例えば線状ファージ)の表面にひとたび表示されると、CTLA4タンパクまたはそれのペプチド断片で抗体ライブラリーをスクリーニングし、CTLA4に特異性を有する抗体を発現するパッケージを同定および単離する。分泌される抗体をコードする核酸は、表示パッケージから(例えばファージゲノムから)回収でき、標準的な組換えDNA法により、その他の発現ベクターにサブクローン化できる。
【0066】
F.ハイブリドーマおよび調製方法
本発明に有用なハイブリドーマは、CTLA4抗原と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を産生する能力を有することで特徴づけられる。以下に記載するように、抗CTLA4抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、受容者動物が定常的な抗体源を提供するように、動物に直接的に埋め込むことができる。ハイブリドーマ培養物をカプセルで包むための免疫隔離装置(immunoisolatory devices)を使用すると、埋め込んだ細胞に抗した免疫原性反応を避け、免疫的に妥協した宿主におけるハイブリドーマ細胞の未確認の増殖を避けることができる。本発明の好ましいハイブリドーマは、ライゲートした時にTセルにアポトーシスを誘起する、活性化ヒトT細胞の細胞表面で発現するCTLA4分子のエピトープと特異的に免疫反応する抗体分子を産生するという特徴がある。
【0067】
望ましい免疫特異性、すなわち、とりわけCTLA4、および/またはCTLA4の同定可能なエピトープと免疫反応する能力のある抗体分子を産生、例えば分泌するハイブリドーマの産生方法は、当業界に周知である。特に採用できるものは、ニーマンら、PNAS 80,4949−4953(1983);およびガルフレら、Meth.Enzymol.73,3−46(1981)に記載されるハイブリドーマ法である。
【0068】
G.本発明のさらなる抗CTLA4抗体
T細胞アポトーシスを誘起する本発明のCTLA4抗体に加え、本発明はCD28と交差反応する抗CTLA4抗体(本明細書で抗CD28/CTLA4抗体と称し、代表的なものは、7G11mAbである)をも提供する。このような抗体は、上述の方法で産生でき、実施例1に記載するようにスクリーニングし、同定できる。好ましい態様において、CTLA4のエピトープに結合する抗CD28/CTLA4抗体は、アミノ酸配列:
【0069】
【化7】

【0070】
(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=0〜20(好ましくは0〜10、さらに好ましくは0〜5、よりさらに好ましくは0〜3)である)を含有または包含する。天然のヒトCTLA4では、この配列は、配列番号:36のアミノ酸位置101〜105にある。Xaaはこの部域の側面になるさらなるCTLA4アミノ酸残基であるか、または例えば上述のようにペプチドの溶解性または免疫原性を増強するために含まれるその他の残基でよい。共通のCD28/CTLA4エピトープを含有するペプチド(例えば配列番号:34)は免疫原として用いて本発明の抗CD28/CTLA4抗体を上昇させることができる。従って、本発明はさらに、アミノ酸配列:
【0071】
【化8】

【0072】
(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=0〜20である。)を含む単離したCTLA4ペプチドを包含する。本発明の抗CD28/CTLA4抗体は、実施例に記載するように、T細胞に共刺激シグナルを誘起するのに有用である。
【0073】
II.T細胞アポトーシスを誘起するその他の物質
抗CTLA4抗体、またはそれらの断片に替わって、単離形態の新規天然CTLA4リガンドにより、アポトーシスを誘起できる。実施例5に記載するように、T細胞アポトーシスは、Bリンパ芽球セルライン(LBL)の表面に存在する新規非B7−1、非B7−2、CTLA4結合リガンドにより誘起できる。この新規CTLA4リガンドをコードするcDNAは、実施例5に記載するように発現クローニングにより単離できる。このように単離したアポトーシス性CTLA4リガンドは、上述のように、標準的な方法により、組換えにより発現できる。とりわけ、天然のCTLA4リガンドの可溶性組換え体は、例えば単独でまたは融合タンパク(例えば免疫グロブリン融合タンパク)としてタンパクの細胞外領域を発現することにより、発現または単離できる。T細胞アポトーシスを誘起するCTLA4のエピトープを架橋できる天然CTLA4リガンドの単離可溶性形態は、本発明の方法に準じてクローン的にT細胞を排除するために用いることができる。さらに、新規CTLA4リガンドは、細胞表面上に発現することができ、CTLA4リガンドを発現する細胞は、T細胞アポトーシスを誘起するために用いることができる(例えば、リガンドは異反応性T細胞をクローン的に排除する異型性細胞に発現できる)。また別に、アポトーシスを誘起しない(例えばCTLA4を架橋しない)が、CTLA4に結合し、天然のアポトーシス性CTLA4リガンドとの相互作用を阻害するCTLA4リガンドの単離形態は、T細胞アポトーシスを阻害するのに使用できる。
【0074】
CTLA4にのみ結合し、CD28には結合せず、T細胞アポトーシスを誘起する、既知CTLA4リガンドB7−1およびB7−2の修飾した形態もまた本発明の範疇に入る。B7−1またはB7−2をコードする核酸(例えばcDNA)は、突然変異誘発に供する事ができ(例えば無作為化学的突然変異誘発、部位直接的突然変異誘発、ポリメラーゼ連鎖反応媒介突然変異誘発等)、そこでコード化された突然変異タンパクは、組換えで発現できる。B7−1またはB7−2の修飾形態は、CD28にもはや結合しない(例えばELISAにより検定するように)が、CTLA4結合性は保持し、T細胞アポトーシスを誘起する(例えば実施例に記載するような系を用いて評価する;例えばCHO細胞に発現させたB7−1またはB7−2の修飾形態を、抗CD3抗体処理と組み合わせて、活性化T細胞と培養したときにアポトーシスを誘起する)ように選択できる。
【0075】
T細胞アポトーシスを誘起するCTLA4のエピトープに結合またはこれに架橋する、既知または新規CTLA4リガンドのペプチド断片、ペプチド擬似物質およびその他の小分子(例えば薬物)もまた、本発明の範疇に入る。T細胞アポトーシスの小分子インデューサーは、実施例に記載するような系を用いて、物質をスクリーニングすることにより、または合理的なドラッグデザイン、例えばT細胞アポトーシスを誘起するCTLA4のエピトープ(例えば配列番号:33に示すエピトープ)と相互作用を示すように分子を修飾することにより、同定できる。
【0076】
本発明が意図する別の型のアポトーシス性物質は、本明細書に記載するCTLA4アポトーシス性リガンドをコードする核酸である。例えばアポトーシスを誘起するCTLA4のエピトープを架橋する抗CTLA4抗体(またはそれらの断片)をコードする核酸(例えばDNA)、またはアポトーシスを誘起する新規CTLA4リガンド(またはそれらの一部)をコードする核酸を、イン・ビトロで細胞に導入できるか、または遺伝子治療として活性化T細胞をクローン的に排除するために、イン・ビボで対象に投与することができる。細胞におけるタンパクまたはペプチドの発現のための組換え発現ベクター(例えば組換えウイルス性ベクター)、およびイン・ビトロまたはイン・ビボで遺伝子治療に適した核酸運搬機構は、当業者に周知である。可溶型および分泌型の抗CTLA4抗体、またはその他のCTLA4リガントをコードする発現ベクターは、CTLA4アポトーシス性リガンドを細胞内に産生するために用いることができ、そのリガンドは、次いで細胞から分泌され、(例えば培養においてまたはイン・ビボで)アポトーシスを誘起する活性化T細胞のCTLA4に結合する。
【0077】
T細胞アポトーシスを誘起するための別の型の物質は、CTLA4により媒介されるアポトーシス性シグナルの引き金となるように細胞内で作用する物質である。従って、この物質は、CTLA4の細胞外部分には結合せず、むしろアポトーシス性リガンドによるCTLA4のライゲートに関連する細胞内シグナル(例えば2番目のメッセンジャー)に類似しているか、またはこれらを誘起する。本明細書に記載するアポトーシス性リガンド(例えば抗CTLA4抗体)は、CTLA4により媒介されるアポトーシスに関与する(複数の)細胞内シグナルを、(実施例に記載するように)CTLA4を活性化T細胞と接触させることにより、および結果的に発生する細胞内シグナル(例えばタンパクチロシンリン酸化、カルシウム還流、血清/スレオニンおよび/またはチロシンキナーゼの活性化、フィスファチジルイノシトール代謝等)を試験することにより同定するために用いることができる。CTLA4媒介アポトーシスに関連する細胞内シグナルを阻害または増強する物質は、T細胞アポトーシスを制御するために用いることができる。また別に、物質(例えば小分子、薬物等)は、実施例に記載するような系を用いてアポトーシスを阻害または増強する能力をスクリーニングできる。
【0078】
III.T細胞アポトーシスを誘起するCTLA4リガンドの治療的使用
本発明のCTLA4リガンド、例えば架橋抗体、またはCTLA4により媒介されるアポトーシス性シグナルの引き金となるように細胞内で働く物質は、T細胞のアポトーシスを誘導して活性化T細胞をクローン的に排除し、それによりT細胞応答を阻害するために、治療的に用いることができる。アポトーシス性リガンド、または細胞内物質は、実施例に記載するように、TCR/CD3刺激剤の存在下、活性化T細胞のイン・ビトロ培養物に加えた場合のアポトーシス誘起能力により同定できる。TCR/CD3刺激剤は、抗原、例えば抗原表示細胞によりT細胞クローンに表示される抗原に特異的であるか、または抗CD3抗体によるCD3架橋のように非特異的である。アポトーシスは、典型的なものでは、例えばアガロース電気泳動ゲル上のヌクレオソームの長さのDNA断片を検出することにより、細胞内DNA分断化を測定し、評価する(例えば、クイングシェング,T.ら、Cell 67,629−639(1991)参照)。その他の適切なアポトーシスの検定には、ヘキスト33342染料の取り込み(ハーディン,J.A.ら、J.Immunol.Methods 154,99−107(1992)参照)、染料p−フェニレンジアミンの挿入を用いた核DNA損傷の検出(サルセド,T.W.ら、J.Immunol.Methods 148,209−216(1992)参照)およびダルツィンキヴィッチ,Z.ら、Cytometry 13,795−808(1992)に記載されるフローサイトメトリーがある。
【0079】
T細胞集団におけるアポトーシスの発生を直接的に評価するのに加えて、T細胞集団内のT細胞のクローン的な排除を、アポトーシスの結果として、抗原刺激剤でT細胞集団を再対抗し、T細胞応答、例えば増殖および/またはサイトカイン産生が起こっているかどうかを決定することにより評価できる。例えば、異型的細胞および本発明のCTLA4リガンドを接触させることにより、T細胞集団内で異反応性活性化T細胞に、アポトーシスを誘起できる。引き続いて、T細胞集団を異型的細胞で対抗し、T細胞増殖および/またはサイトカイン(例えばIL−2)を測定することにより、異反応性T細胞のクローン的排除を評価できる。T細胞増殖は、典型的なものでは、三重水素化チミジンの組み込みにより測定し、一方、サイトカイン産生は、培養上澄でのサイトカイン(例えばIL−2)の検出を、例えばELISAにより評価する。異反応性T細胞クローン的排除は、異型的細胞による再刺激に対するT細胞応答の欠如により示される。
【0080】
本発明に準じて活性化T細胞にアポトーシスを誘起するために、CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質を、T細胞と接触させる。この物質は、アポトーシスを誘起するCTLA4のエピトープ(例えば、配列番号:33に示すアミノ酸配列を含むエピトープ)に架橋することにより作用するか、または細胞内に作用してCTLA4媒介アポトーシス経路に関連するアポトーシスシグナルを誘起する。好ましい架橋剤には、本発明の抗CTLA4抗体、例えば抗ヒトCTLA4モノクローナル抗体がある。しかしながら、CTLA4に架橋し、望ましい結果を得る(すなわちアポトーシス)ことができるその他の物質(例えば可溶性天然CTLA4リガンド、化学物質等)をも用いることができる。活性化T細胞(すなわち、抗原に特異的な方法で、または非特異的な方法で、予め表面にCTLA4を発現する用に刺激したT細胞)は、本発明のCTLA4リガンド、またはアポトーシスを誘起するCTLA4のエピトープに架橋するか、もしくはアポトーシスに関連する細胞内シグナルを生じるその他の物質と接触させることにより、アポトーシスを引き起こすことができる。アポトーシスを起こすために、(例えばCTLA4の架橋により)CTLA4関与シグナルの誘導に加え、T細胞もまた、別の(複数の)表面分子、とりわけTCR/CD3複合体を通じて、抗原または非特異性刺激剤、例えば抗CD3抗体で接触させることにより刺激することが必要である。T細胞受容体(TCR)を通じてT細胞を刺激するために抗原を用いる場合、抗原特異性アポトーシスが結果的に引き起こされる。従って、本発明は、活性化T細胞に抗原特異性アポトーシスを誘起する方法を提供する。抗原に特異的な方法でT細胞をクローン的に排除するアポトーシス性CTLA4リカンドの能力は、抗原特異性T細胞反応性を阻害し、長期の抗原特異的免疫抑制および/または耐性を生じるために用いることができる。CTLA4関与アポトーシスシグナルの刺激と組み合わせた、その他のT細胞表面分子の刺激により、抗原に非特異的な方法でT細胞に、またアポトーシスを誘起できる。
【0081】
T細胞は、本発明の方法に準じてアポトーシスを誘起することにより、イン・ビトロ、またはイン・ビボのどちらかで、クローン的に排除できる。イン・ビトロでT細胞アポトーシスを誘起するために、活性化T細胞をTCR/CD3複合体を通じてT細胞を刺激する1番目の物質および、CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する2番目の物質、例えばT細胞にアポトーシスを誘起するCTLA4のエピトープを架橋する物質(例えば本発明のCTLA4リガンドまたはその他のCTLA4架橋物質)の両方と接触させる。1番目の物質は、ポリクローナルT細胞アポトーシスを誘起する非特異的物質、例えば抗CD3抗体でよい。さらに好ましくは抗原特異性アポトーシスは、TCRを通じて抗原、例えば抗原表示細胞で表示した抗原または異型的細胞の表面の異型抗原でT細胞を刺激して誘起する(すなわち、1番目の物質はTCRを通じてシグナルを刺激するのに適した形態でT細胞に表示する抗原である)。好ましい態様において、2番目の物質は、抗CTLA4抗体であり、モノクローナル抗体が好ましい。
【0082】
イン・ビボでT細胞アポトーシスを誘起するために、T細胞にCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質(例えばT細胞にアポトーシスを誘起するCTLA4のエピトープを架橋する物質)を、対象に投与する。この場合、活性化T細胞はTCR/CD3複合体を通じて、イン・ビボの内因性の刺激(例えば自己抗原またはイン・ビボで抗原表示細胞により表示される外来性の抗原)により、必要な刺激を享受する。また別に、抗原性刺激剤はCTLA4架橋物質と同時に投与できる(例えば、抗原特異性T細胞にアポトーシスを誘起するために、アレルゲンをCTLA4架橋物質と同時に投与でき、または自己抗原特異的T細胞にアポトーシスを誘起するために、自己抗原を同時に投与できる)。T細胞アポトーシスを誘起するために対象に投与する好ましいCTLA4架橋物質は、本発明の抗CTLA4抗体であり、好ましくは抗CTLA4モノクローナル抗体である。
【0083】
CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質を対象に投与することにより、T細胞アポトーシスをイン・ビボで誘起する場合、T細胞の増殖および/またはその他のT細胞応答を促進する、イン・ビボでの微環境においてT細胞に送られる刺激シグナルを阻害または阻止するために、対象をさらに処置する必要がある。例えば、実施例4に記載するように、リンパ液インターロイキン−2(IL−2)の存在が、CTLA4の架橋により媒介されるアポトーシスの誘起を阻害できる。従って、T細胞アポトーシスを誘起する方法において、対象のT細胞成長因子(例えばIL−2)の産生または機能を阻害するのも有効である。このように、CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質に加えて、T細胞成長因子の産生、または機能を阻害する別の物質を対象に投与し、T細胞アポトーシスを促進することができる。T細胞成長因子の産生または機能を阻害するのに適した物質の実例としては、抗IL−2抗体、抗IL−2受容体抗体または対象のIL−2値を低下させる免疫抑制剤、例えばシクロスポリンAが含まれる。
【0084】
さらに、または別に、対象にアポトーシスを誘起するために、T細胞がイン・ビボで共刺激シグナル、例えばCD28とB7−1またはB7−2のどちらかとの相互作用により媒介される共刺激シグナルを受け取るのを阻害または阻止するのにも有効である。従って、対象にCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質を投与するのに加えて、T細胞の共刺激シグナルの発生を阻害する別の物質、例えばCD28、B7−1またはB7−2に結合する阻止分子をも対象に投与できる。適切な阻止分子の実例としては、抗CD28Fab断片、抗B7−1または抗B7−2阻止抗体(すなわち、CD28−B7−1/B7−2相互作用を阻止するが、T細胞の共刺激シグナルを誘起しない抗体)およびCD28、B7−1またはB7−2の可溶性形態(例えば、CD28−B7−1/B7−2相互作用を阻止するが、T細胞に共刺激シグナルを誘起しない免疫グロブリン融合タンパク)が含まれる。さらに、阻止分子の組み合わせ、例えば抗B7−1抗体および抗B7−2抗体を用いてもよい。
【0085】
T細胞アポトーシスを誘起する本発明の方法は、以下の節でより詳細に記載するように、反応性T細胞の特異的集団をクローン的に排除するのが望ましい、種々の臨床の場に適用可能である。
【0086】
A.器官移植/GVHD
活性化T細胞における異型抗原特異的アポトーシスの誘起による、異反応性T細胞のクローン的排除は、細胞、組織、皮膚、および器官移植の場合に、並びに骨髄移植に(例えば、移植片対宿主疾患(GVHD)の阻止に)有用である。例えば、異反応性T細胞の排除は、組織移植における組織破壊を減じさせ、一般的な免疫抑制を必要としないで、長期的に組織片を受け入れられるようになる。典型的なものでは、組織移植において、T細胞が外来性であると認識することにより、組織片の拒絶が始まり、続いて組織片を破壊する免疫反応が起こる。CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質、例えば本発明のモノクローナル抗CTLA4抗体を移植細胞と一緒に移植の受容者に投与すると、移植された外来性細胞により活性化された、受容者の異反応性T細胞にアポトーシスを誘起できる。処置法には、供与細胞(例えばヘマトポイエチン細胞)の試料を移植の前に受容者に投与することにより、受容者の異反応性T細胞を供与体抗原に対して、「前感作」(すなわち活性化)することを含めることができる。この前処置により、受容者における供与体特異的T細胞が活性化され、CTLA4+になり、CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質の存在下、供与体抗原に(例えば移植片上で)再暴露した時、クローン的に排除されるようになる。
【0087】
別の処置法には、イン・ビトロで、受容者に移植片を移植する前に、供与体細胞(例えば、移植片供与体のヘマトポイエチン細胞)に対して受容体のT細胞を暴露し、異型性抗原特異性T細胞を活性化する(すなわち異反応性細胞の表面にCTLA4を誘起する)ことが含まれ、一度活性化すると、イン・ビトロで受容者のT細胞を供与体細胞およびCTLA4関与アポトーシスシグナル(例えば、抗CTLA4 mAb)を刺激する物質の両方と接触され、それにより活性化異反応性細胞にアポトーシスを誘起する。一度異反応性T細胞をイン・ビトロでクローン的に排除すると、残ったT細胞は受容者に再投与し、移植を実施することができる。さらなるCTLA4架橋物質を対象に投与し、イン・ビボで、残存する任意の異反応性T細胞にアポトーシスを誘起できる(すなわち、イン・ビトロの排除、イン・ビトロの処置アプローチを組み合わせて利用できる)。
【0088】
上述のアプローチは、骨髄移植の場合も同様に適用でき、供与体骨髄からの異反応性T細胞を特異的に排除する。異反応性T細胞は除去し、一方その他のT細胞の存在は保持することは、移植片対宿主疾患の発生阻止、移植受容者の骨髄混入の亢進、および移植片における供与体細胞の抗白血病活性(すなわち移植片対白血病応答)の保持に有用である。移植片における異反応性T細胞をクローン的に排除するために、供与体骨髄を移植に先立ち、イン・ビトロで受容者からの細胞(例えばヘマトポイエチン細胞)と共にインキュベートし、骨髄における異反応性T細胞を活性化する。活性化に続いて、イン・ビトロで受容者の細胞とCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質の両方と共にインキュベートして、異反応性T細胞を骨髄からクローン的に排除する。T細胞に刺激シグナルを発生させるのを阻害するさらなる物質(例えば、上述の抗B7−1および/または抗B7−2抗体、抗IL−2R抗体等)を、インキュベーション中に含有することができる。異反応性細胞を特異的に排除した骨髄を、次に受容者に投与し、さらにイン・ビボでCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質で処置し、任意の残った異反応性細胞にイン・ビボでアポトーシスを誘起する。受容者のT細胞における共刺激シグナルの発生を阻害するか、または受容者における(複数の)T細胞成長因子(例えばIL−2)の産生もしくは機能を阻害するさらなる処置も、受容者のT細胞アポトーシス誘起をさらに亢進するように、イン・ビボで投与できる。
【0089】
器官移植の拒絶またはGVHDを予防する場合、CTLA4関連アポトーシスシグナルを刺激する特定の物質の効果は、ヒトにおける効果が予期できる動物モデルを用いて評価できる。異なる種のCTLA4分子間の血液学は知られているので、CTLA4の機能的に重要な様相は、このようにヒトにおける効果を知るためのモデルに用いることが許されている種の間で、組織的に保持されていると思われる。使用できる適当な系の実例としては、ラットの異型的心臓移植片およびマウスの外因性ランゲルハンス島細胞が含まれ、その両方とも、レンショウら、Science 257,789−792(1992)、およびツルカら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,11102−11105(1992)に記載されるように、イン・ビボでCTLA4 Ig融合タンパクの免疫抑制効果を調べるために使用されている。さらに、GVHDのネズミモデル(ポール編、Fundamental Immunology、ラベンプレス、ニューヨーク、846−847頁(1989)参照)は、その疾患の進行中に、CTLA4関連アポトーシスシグナルを介するT細胞アポトーシスを誘起する効果を(イン・ビトロおよび/またはイン・ビボでT細胞を処理することにより)決定するために用いることができる。
【0090】
説明的な態様としては、抗CTLA4抗体は、器官移植のラットモデルにおいて、抗体の異型性抗原の応答を阻止する能力をイン・ビボで確認するために使用できる。ボーリング,S.F.ら、Transplant 453,283−286(1992)に記載するように、受容者ルイスラットは、頚部で器官を吻合したブラウン−ノルウェイ系ラットの心臓異移植片を受け取る。移植片は、触診により機械的機能を、心電図により電気生理学的機能を監視する。移植片拒絶は、触知可能な収縮機能の最終日に起こるといわれている。最初の実験のように、動物は抗CTLA4モノクローナル抗体、またはアイソタイプに合致させた対照モノクローナル抗体を7日間毎日注射して処置する。抗体は投与量約0.015mg/日および0.5mg/日の範囲で投与する。平行実験では、心臓異移植片に先立ち、受容者ルイスラットに、ブラウン−ノルウェイ細胞(例えば末梢血または脾臓細胞)を与え、受容者における異反応性T細胞を活性化する。この前感作段階に続いて、抗CTLA4抗体の投与と一緒に異移植片を移植する。未処置ルイスラットは、通常、約7日で異所性ブラウン−ノルウェイ異移植片を拒絶する。抗体処置動物による異移植片の拒絶は、未処置対照と比較して評価する。
【0091】
未処置動物および抗体処置動物は、屠殺し、組織学的検査を行う。移植4日後、未処置動物および抗体処置動物から、心臓異移植片を取り出す。異移植片をホルマリンで固定し、組織切片をヘマトキシリン−エオシンで染色する。未処置および処置動物の心臓組織は、浮腫形成を伴う隆起した介在性単核細胞浸潤、筋細胞破壊、および小動脈壁の浸潤を含む重篤で急性の細胞拒絶を組織学的に試験する。移植片拒絶を防ぐ場合の抗体処置の効果は、抗体処置動物の心臓組織における急性の細胞拒絶の欠如により支持される。
【0092】
以下の抗体処置を持続できる、移植片の長期的に受入できる、抗体治療が確立されるかどうかを決定するために、7日間抗体を毎日注射して処置した動物を、移植片の機能が停止するまで、さらに処置することなく、観察する。動物は未処置、抗CTLA4抗体、またはアイソタイプに合致させた対照モノクローナル抗体のどちらかを与えられる。抗体処置は、移植時に開始し、7日間続ける。移植片の生存を上述のように毎日評価する。上述のように、移植片が機能停止した動物の異移植片を組織学的に試験する。抗体処置を停止しても移植片の機能が持続することにより、抗体処置による移植片耐性が誘導されることが示される。
【0093】
長期の移植片受入の後、抗体処置動物を屠殺し、受容者からのリンパ球の機能的応答を試験する。これらの応答を対照(非移植)ルイスラットからのリンパ球の応答と比較し、結果を対照応答の比率として正規化する。ConA並びにブラウン−ノルウェイラットおよび3番目の集団のACIラットからの細胞に対するT細胞増殖応答を試験できる。さらに、未処置および処置動物からの胸腺および脾臓の大きさ、細胞数および細胞型を(例えば胸腺、リンパ節および脾臓細胞のフローサイトメトリー分析により)比較できる。異反応性細胞の特異的クローン的排除の結果、処置動物における異型性抗原に対する特異的非応答性は、ConAおよび3番目の集団の刺激物質(例えばACIラット細胞)に応答するが、ブラウン−ノルウェイラット細胞には応答しないT細胞の能力により示される。
【0094】
B.自己免疫疾患
抗原特異的T細胞アポトーシスの誘起によるT細胞のクローン的排除はまた、自己免疫疾患の処置の治療にも有用である。多くの自己免疫障害は、自己の組織に抗して反応する(すなわち、自己抗原に抗して反応する)不適切なT細胞の活性化の結果であり、これは疾患の病理にも関与するサイトカインおよび自己抗体の産生を亢進する。このような自己反応性T細胞の活性化の防止により、疾患の症状を減じ、または除去できる。T細胞アポトーシスを誘起するCTLA4のエピトープに結合する、CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質、例えば本発明の抗CTLA4抗体を投与すると、自己反応性T細胞を排除でき、それにより、T細胞応答を阻害し、自己抗体または疾患の過程において関与しうるT細胞由来のサイトカインの産生を防ぐことができる。さらに、自己反応性T細胞は単に耐性がよくなるのではなく、排除されるので、疾患からの長期的な緩解が達成できる。
【0095】
自己免疫障害を処置するために、CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質(例えば、本発明のCTLA4リガンド)を、処置の必要な対照に投与する。イン・ビボで自己抗原で予め活性化した自己反応性T細胞は、イン・ビボで自己抗原により、抗原刺激した時に、アポトーシスの発生を引き起こす。また別に、既知の自己抗原での自己免疫障害には、対象に自己抗原をアポトーシス性物質を同時投与できる。活性化T細胞のみがこの処置により排除されるので、その他の抗原に特異的な休止T細胞は、処置により影響を受けない。
【0096】
この方法は、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および酵素性(enzematous)皮膚炎を含む)、乾癬、シェーグレン症候群に二次的に起こる乾性角結膜炎を含むシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物刺傷反応によるアレルギー反応、クローン病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬疹、らい逆転反応、らい性結節性紅斑(erythema nodosum leprosum)、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死出血性脳障害、突発性進行性両側性感音性聴力損失、無形成貧血、赤芽球ろう、突発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティヴェンズ−ジョンソン症候群、突発性スプルー、偏平苔癬、クローン病、グラヴェス眼障害、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、および介在性肺線維症を含む自己免疫成分を有する種々の自己免疫疾患および障害の処置に用いることができる。
【0097】
自己免疫障害を防ぐまたは緩和する場合のCTLA4架橋物質の効果は、ヒト自己免疫疾患をよく特徴化した多くの動物モデルを用いて決定できる。実例としては、ネズミ実験的自己免疫性脳炎、MRL/lpr/lprマウスまたはNZBハイブリッドマウスの全身性エリテマトーデス、ネズミ自己免疫性コラーゲン関節炎、NODマウスおよびBBラットにおける糖尿病、ネズミ実験的重症筋無力症が含まれる(ポール編、Fundamental Immunology、ラヴェンプレス、ニューヨーク、840−856頁(1989)参照)。
【0098】
実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)は、多発性硬化症の齧歯類および霊長類モデルである。説明的な態様において、受動的EAEモデルでは、供与体マウスを完全フロイントアジュバント中ミエリン塩基性タンパク(MBP)0.4mgで4回に分けて免疫化する。11日後に、ドルーンをつけた腋窩および鼠径部リンパ節を除去する。リンパ節細胞(4×10/ml)を24ウェルプレート中、25μg/ml MBPの存在下、2mlの培地のプレートにおく。4日間の培養の後、処置細胞30×10を、各々のナイーヴで同系の受容者マウスの尾静脈に注射する。
【0099】
受容者マウスは疾患を沈静、再発させ、以下の診断基準を用いて評価する:
0 正常、健康
1 尾をぐったりさせる、失禁;時々疾患の最初の兆候である「傾斜」
2 後肢が弱る、ぎこちない
3 穏やかな不全対麻痺
4 重篤な不全対麻痺
5 四肢麻痺
6 死亡
【0100】
EAEの受動性モデルを用い、供与細胞の抗CTLA4抗体処置が受容者動物において、結果的に疾患の重篤性に及ぼす効果を、マウス(例えばPLSJLF1/J系)で試験する。リンパ節細胞をイン・ビトロで、約30μg/mlの抗CTLA4抗体の存在下または不在下、MBPと培養する。処置細胞を次に同系の受容者マウスに導入する。受容者の疾患の最初のエピソードの重篤性に及ぼす、供与体細胞の抗体処置効果を、未処置細胞を受け入れたマウスと比較して、疾患の重篤性を評価する上記の診断基準を用いて決定できる。さらに、未処置細胞に対して抗体処置細胞を受け入れたマウスにおいて起こる再発を、上記の診断基準を用いて評価できる。
【0101】
受容者における臨床疾患の重篤性に及ぼす、供与体マウスおよび抗CTLA4抗体と培養した供与体細胞の両方の処置効果を、さらに評価できる。これらの実験において、MBPで免疫した供与体マウス(例えばSJL/J系)に、抗CTLA4抗体(単独で、または組み合わせて)を100μgか、または対照抗体に合致したアイソタイプを100μg、腹膜腔内に毎日11日間与える。次にこれらの供与体のリンパ節から細胞を単離し、イン・ビトロで30μg/mlの抗CTLA4抗体(単独でまたは組み合わせて)または対照抗体の存在下、MBPと培養する。処置した細胞を、次に同型の受容者に導入する。受容者に起こる疾患の重篤性に及ぼす抗体処置効果を、次いで、上記の診断基準を用いて評価する。
【0102】
EAEの直接的な(活性な)モデルを用いた研究をも行うことができる。これらの実験では、抗CTLA4抗体は、MBPで免疫し、百日咳毒素(PT)で処置したマウスに直接的に投与する。マウス(例えばPLSJLFI/J系)をMBPで0日に免疫し、0および2日にPTを静脈注射し、抗CTLA4抗体または対照抗体に合致したアイソタイプを0〜7日に与える。受容者に起こる疾患の重篤性に及ぼす、MBP免疫化マウスの直接的な抗体の処置効果を、次に上記診断基準を用いて評価する。
【0103】
C.アレルギー
アトピー性アレルギーにおけるIgE抗体応答はT細胞に高度に依存し、従って、アレルゲン特異性T細胞をアポトーシスを誘起することによりクローン的に排除することは、アレルギーおよびアレルギー反応の処置において治療的に有用である。例えば、抗CTLA4抗体を、アレルゲンに暴露されたアレルギーの対象に投与し、アレルゲン特異的T細胞にアポトーシスを誘起し、それにより対象におけるアレルギー反応を低下させることができる。CTLA4関与アポトーシスを刺激する物質を、アレルギーの対象に投与することは、アレルゲンへの環境的な暴露、または対象へのアレルゲンの同時投与を伴う。アレルギー反応は、通常、全身性または局所性であり、アレルゲンの侵入経路および肥満細胞または塩基性染色細胞のIgEの沈着パターンに依存する。従って、CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質(例えば抗CTLA4抗体)を適当に投与することにより、アレルゲン特異的T細胞アポトーシスを、局所的にまたは全身的に誘起することが必要である。例えば、一つの態様において、抗CTLA4抗体およびアレルゲンをアレルギーの対象に皮下に同時投与する。
【0104】
D.ウイルス感染または悪性T細胞
CTLA4の架橋によりT細胞アポトーシスを誘起する方法は、表面にT細胞を発現する任意のT細胞に適用できる。特異的抗原に暴露して活性化したT細胞に加えて、その他の形態のT細胞も表面にCTLA4を発現する。例えば、ウイルス感染したT細胞、例えばHTLV−IまたはHIVで感染したT細胞は、CTLA4にできる(フリーマン,G.J.ら、J.Immunol.149,3795−3801(1992);ハーファー,O.K.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,11094−11098(1993)参照)。従って、CTLA4ウイルス感染T細胞は、T細胞にCTLA4媒介アポトーシスを誘起することにより排除できる。例えば、対象から得たCTLA4ウイルス感染T細胞は、イン・ビトロで抗CD3抗体と一緒に、本発明の抗CTLA4抗体と培養し、アポトーシスを誘起することができる。ウイルス感染細胞の排除に続いて、残ったT細胞集団をイン・ビトロで通常の方法で拡張し、対象に再投与できる。さらに表面にCTLA4を発現する悪性T細胞は、本明細書に記載するように、T細胞にアポトーシスを誘起して除去できる。
【0105】
E.抗原特異的クローン的排除
T細胞アポトーシスを誘起する本発明の方法は、本質的には、任意の抗原(例えばタンパク)に適用して、対象中のその抗原に応答するT細胞をクローン的に排除できる。従って、対象は抗原でプライムし、抗原特異的T細胞を活性化し(すなわち、抗原特異的T細胞の表面にCTLA4を誘起する)、次いで抗原で再対抗した場合、CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質を抗原と同時投与し、抗原特異的T細胞アポトーシスを誘起する。抗原は可溶性形態で投与するか、またはキャリヤーもしくは支持体(例えばビーズ)に付けることができる。この基本的なアプローチには、治療目的のために強力な免疫原性分子を利用する治療に付随して、広く適用されている。例えば、タンパク質性分子、例えば抗体、融合タンパク等を臨床的な障害の処置に利用する治療的アプローチが増えている。このような分子を治療的に使用するために制限されることは、処置される対象における治療用分子に直接的に抗した免疫応答を引き出すことができることである(例えば、ヒト対象におけるネズミモノクローナル抗体の効果は、ヒト対象における抗体に抗した免疫応答の誘導により隠れてしまう)。抗原特異的T細胞アポトーシスを誘起するための本発明の方法は、治療の場に適用し、治療用分子を、対象において免疫応答を引き出すことなく長期間使用することを可能にする。例えば、対象中、抗体に特異的なT細胞を典型的に活性化する治療用抗体(例えばネズミmAb)を、対象(例えばヒト)に投与する。これらの活性化T細胞をクローン的に排除するために、治療用抗体を対象に、CTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質と共に再投与し、それによりT細胞に抗原特異的アポトーシスを誘起する。これらの活性化T細胞のクローン的排除は、対象における治療用抗体の効果を持続させる。
【0106】
IV.T細胞アポトーシスを阻害するCTLA4リガンドの治療的使用
T細胞にアポトーシスを誘起する方法を提供するのに加えて、本発明はまたT細胞においてCTLA4関与アポトーシスシグナルの発生を妨害することによりT細胞アポトーシスを阻害する方法をも提供する。このシグナルは、例えば、T細胞上のCTLA4およびT細胞アポトーシスを誘起する抗原表示細胞上のCTLA4リガンドの間の相互作用を妨害することにより阻害できる。また別に、細胞内でアポトーシスシグナルを阻止または阻害するように作用する物質を、アポトーシスの阻害に用いることができる。このように、T細胞におけるアポトーシスは、T細胞を、T細胞においてCTLA4関与アポトーシスシグナルを阻害する物質と接触させる(例えばイン・ビトロではインキュベーションし、またはイン・ビボで投与する)ことにより、例えばT細胞上のCTLA4とアポトーシスを誘起するCTLA4リカンドとの間の相互作用を阻害することにより、阻害される。好ましくは、この物質はCTLA4リガンドとT細胞アポトーシスを誘起するCTLA4のエピトープ、例えば配列番号:33で示すアミノ酸配列を含むエピトープとの相互作用を阻止する。この物質は、例えば可溶性CTLA4タンパク(またはそれらの一部)、可溶性CTLA4融合タンパクもしくは抗CTLA4抗体、またはそれらの断片でよく、CTLA4に結合するが、アポトーシスを誘起しない。アポトーシスを阻害する好ましい物質には、本発明の抗CTLA4抗体のFab断片(またはその他の非架橋抗体断片)およびCTLA4 Ig融合タンパク(例えばCTLA4 Ig)が含まれ、これらの両方は実施例5に記載するT細胞アポトーシスを阻害できる。また別に、この物質はCTLA4の可溶性形態、CTLA4リガンドの可溶性融合タンパクまたは抗CTLA4リガンド抗体、またはそれらの断片でよい。さらに、ペプチド断片またはペプチド擬似物質は、CTLA4とアポトーシス性リガンドとの相互作用を阻害するのに用いることができる。例えば、CTLA4上のアポトーシス性エピトープを包含する(例えば、配列番号:33のアミノ酸配列を包含する)ペプチドを、細胞表面CTLA4およびCTLA4上のこのエピトープに結合する天然のリガンドとの間の相互作用を阻害するために用いることができる。従って、CTLA4アポトーシス性エピトープを包含する本発明のペプチドもまた、T細胞におけるアポトーシスの阻害に有用である。
【0107】
T細胞アポトーシスの阻害は、CTLA4媒介アポトーシスにより自然に低減する免疫応答を、増強、延長および/または維持するのに、治療的に有用である。例えば、抗腫瘍反応は、CTLA4媒介アポトーシスを通じて腫瘍特異的T細胞をクローン的に排除することにより、自然に低減される(例えばT細胞アポトーシスは腫瘍表面にアポトーシス性CTLA4リガンドを発現することにより誘起される)。従って、抗腫瘍反応はCTLA4およびアポトーシス性CTLA4リガンドの相互作用を、例えば上述の阻止物質を腫瘍のある対象に投与することにより阻害して、増強することができる。さらに、病原菌、例えばウイルス、細菌、菌類、寄生虫等に対するT細胞応答は、本明細書に記載するように、CTLA4媒介T細胞アポトーシスを阻害することにより増強および延長できる。ワクチン接種の効果もまた、本発明によるCTLA4媒介アポトーシスを阻止することにより上昇させることができる。例えば、ワクチンはT細胞アポトーシスを阻止する物質(例えば抗CTLA4 mAb Fab断片)と一緒に投与でき、ワクチン化物質に抗する免疫応答を増強できる。
【0108】
別の適用において、T細胞アポトーシスの阻害は、対象、例えばT細胞破壊に関係するウイルス例えばHIVに感染した対象におけるT細胞保持のために用いることができる。HIV感染において、ウイルス感染したT細胞、例えばHIV感染したT細胞の表面のCTLA4発現は、イン・ビボでCTLA4媒介アポトーシスにより細胞を破壊することになる。ウィルス感染T細胞のこの破壊は、イン・ビボで付随するウイルス放出を伴い、傍観者的T細胞の更なるウイルス感染が亢進され、これによりT細胞がウイルスに抗して免疫応答を開始する能力が阻害される。さらに、対象における非感染T細胞は、CTLA4依存性アポトーシス機構により排除され、さらにT細胞集団が排除される。従って、CTLA4媒介アポトーシスを阻害する物質を対象に投与することは、HIV感染した対象におけるウイルスの散らばりを制御し、T細胞集団を保持するのに有用である。
【0109】
V.治療用形態のCTLA4リガンドの投与
本発明のCTLA4リガンド(例えば抗CTLA4抗体)を、イン・ビボで生物学的に適合した、医薬的投与に適した形態で対象に投与し、T細胞アポトーシスを誘起する。「イン・ビボで生物学的に適合した、投与に適した形態」とは、リガンドの治療効果が毒性効果に優る、投与タンパクの形態を意味する。対象なる用語は、免疫応答を引き出すことができる生きた器官、例えば哺乳動物を含むことを意味する。対象の実例としては、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。本明細書に記載するリガンドは、治療的に活性な量のCTLA4リガンドを単独でまたは別の治療用分子(例えば、上述のように、抗IL−2受容体抗体またはCD28、B7−1もしくはB7−2阻止抗体等)および医薬的に許容できる担体と組み合わせたものを、任意の薬理学的形態で投与できる。本発明の治療用組成物を治療的に活性な量投与することは、望ましい結果を成就するのに必要な量および期間の有効量と定義される。例えば抗CTLA4抗体の治療的有効量は、個々の疾患の状態、年齢、性別および体重のような因子、並びに個々に望ましい免疫応答を引き出す抗体の能力に応じて変化する。投与計画は最適な治療的応答を提供するように調整できる。例えば幾つかに分割した量を毎日投与するか、または治療状況のエクシジェンシー(exigencies)により示されるように投与量を比例的に減少させることができる。
【0110】
活性化合物(例えば抗体)は、通常の方法、例えば注射(皮下、静脈内等)、経口投与、吸入、経皮適用、または直腸投与で投与できる。投与経路に応じて、活性化合物は、酵素、酸および化合物を不活化しうるその他の自然の状況の作用から保護する材料で被覆できる。
【0111】
CTLA4リガンドを非経口投与以外の投与法により投与するために、リガンドを不活化を防ぐ材料で被覆するか、またはリガンドをその材料と同時に投与する必要がある。CTLA4リガンドは適当なキャリヤーまたは希釈剤中、個体に投与でき、酵素阻害剤とまたは適当なキャリヤー例えばリポソームと同時投与できる。医薬的に許容できる希釈剤には、生理食塩水および水性緩衝溶液が含まれる。酵素阻害剤には、膵臓トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロフォスフェート(DEP)およびトラジロールが含まれる。リポソームには、水中油中水乳液および通常のリポソームが含まれる(ストレジャンら、J.Neuroimmunol.7,27(1984))。
【0112】
また、活性化合物は、非経口または腹膜腔内投与もできる。分散液はグリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、並びに油中に調製できる。保存および使用の通常の条件下で、これらの調製物は微生物の成長を防ぐための保存剤を含有できる。
【0113】
注射可能な使用に適した医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性である場合)または無菌注射液または分散液の用事調製用製剤のための分散液および無菌粉末を含む。全ての場合において、組成物は無菌でなければならず、容易にシリンジが動かせる程度の流動性がなければならない。製造および保存の条件下で安定でなければならず、微生物、例えば細菌および菌類の汚染作用に備えて保存されなければならない。キャリヤーは溶媒または分散溶媒でよく、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)および適当なそれらの混合物を含有する。適当な流動性を、例えば被覆物例えばレクチンの使用、分散液の場合必要な粒子径の維持、および界面活性剤の使用により維持できる。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌および抗菌物質、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサル等により達成できる。多くの場合、等張化物質例えば糖、ポリアルコール例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含有するのが好ましい。注射可能な組成物の吸収を長期化するのは、吸収を遅延させる物質、例えばアルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを含有することによる。
【0114】
無菌の注射可能な溶液は、活性な化合物(例えば抗CTLA4抗体)を必要な量、適当な溶媒中、上記に列挙した成分を一つまたは組み合わせて入れ、必要な場合、濾過により無菌化して調製できる。一般的に分散液は活性化合物を、基本的な分散溶媒および上記に列挙したものから必要なその他の成分を含有する無菌賦形剤に入れて調製する。無菌の注射液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、活性成分(例えば抗体)に予め無菌濾過した溶液からの任意のさらに望ましい成分を加えた粉末を生じる。
【0115】
活性化合物が上述のように適切に保護される場合、化合物は、例えば不活性な希釈剤と、または消化でき食することができるキャリヤーと共に投与できる。本明細書で用いる「医薬的に許容できるキャリヤー」には、任意のおよび全ての溶媒、分散溶媒、被覆剤、抗細菌および抗菌剤、等張化および吸収遅延化剤等が含まれる。このような溶媒および医薬的に活性物質のための試薬は、当業界に周知である。任意の通常の溶媒または試薬が活性化合物と相容れない場合に限る以外は、治療用組成物におけるそれらの使用は意図されるものである。補足的な活性化合物をも組成物に入れることができる。
【0116】
非経口組成物を、投与を平易にする投与量単位形態で、および投与量を一定にするために製剤化するのがとりわけ優れている。本明細書で用いる投与量単位形態とは、哺乳動物の対象を処置するための投与量単位として、適合する物理的な個々の単位を意味する;望ましい治療効果を生みだすように算出した活性化合物を予め決定した量、必要な医薬的キャリヤーと一緒に含有する各単位。本発明の投与量単位形態の詳記は、(a)活性化合物の独特な特性、および達成される特定の治療効果、並びに(b)このような活性化合物を個々の感受性の処置用に混合する技術における元来の制限、に指示され、直接的に依存する。
【0117】
VI.CTLA4媒介T細胞アポトーシスにおいて引き起こされるさらなる分子の同定
本発明は、T細胞のアポトーシスの誘起においてCTLA4の機能的役割を開示する。T細胞におけるアポトーシスはCTLA4リガンドによるライゲート時にCTLA4により直接的に媒介されるか、また別に、CTLA4関与分子がアポトーシスシグナルをTセルに配送するのに関与している。CTLA4関与分子は当業界に周知である多くの方法により同定できる。例えば本発明のCTLA4抗体は免疫沈殿検定に用いてCTLA4と免疫共沈する分子を同定できる。活性化T細胞により発現するタンパクは、放射性物質で標識化(例えば35S−メチオニンで、または125Iでタンパク表面を標識する)でき、本明細書で記載するCTLA4抗体は、T細胞からタンパクを免疫沈殿するのに用いられる。免疫沈殿法は当業界に周知であり、例えばアウスベル,F.ら(編)、Current Protocol in Molecular Biology、ジョーンウィレイ&サンズ、ニューヨーク、セクション10.16.(1989)に記載されている。細胞内または細胞表面のどちらかでCTLA4と関係する分子は、CTLA4との免疫共沈により同定できる(例えば免疫沈殿したタンパクを電気泳動分析により検出)。このようなCTLA4関与分子は次にCTLA4との相互作用に基づいてさらに精製および特性化できる。
【0118】
また別に、発現クローン化アプローチをCTLA4に関与する分子の同定に用いることができる。膜透過型の組換えCTLA4は標準的な方法によりCOSまたはCHO細胞のような宿主細胞において安定して発現でき(しかしながら、実施例1に記載するようにgpi連結形態として発現できる)、さらなる分子がCTLA4の安定した表面発現を達成するのに必要であることを示唆している。従って、この特性は、宿主細胞に膜透過性CTLA4の表面発現を可能にする分子を同定するために開拓できる。例えば、cDNA発現ライブラリーは、実施例5に記載するように、活性化T細胞から調製できる。この発現ライブラリーは、次に宿主細胞(例えばCOS細胞)に、CTLA4の膜透過型をコードする発現ベクターと共にトランスフェクトする。CTLA4を表面に発現する、トランスフェクトした細胞は、例えば本発明の抗CTLA4抗体を用いたパニング(panning)または免疫磁気ビーズ分離により選別できる(実施例5記載の方法は、CTLA4発現クローンの細胞トランスフェクションおよび単離に用いることができる)。CTLA4関与分子をコードするcDNAは、選別した細胞から単離できる。
【0119】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、制限を意図するものではない。本明細書で引用した参考文献、特許および公開された特許出願は、それにより参考となるように取り入れたものである。
【実施例1】
【0120】
実施例1:抗CTLA4モノクローナル抗体の産生およびスクリーニング
ヒトCTLA4に対するモノクローナル抗体の産生
Ba1b/c雌マウス(タコニック、ジャーマンタウン、ニューヨークより入手)を、ERシリーズマウス用にマウスあたり50μgの組換えヒトE.coli発現CTLA4(細胞外領域のみ)を完全フロイントアジュバント(シグマケミカルカンパニー、セントルイス、ミズーリー州)中乳濁液化したもので、またはESシリーズマウス用にマウスあたり2×10PMA/イオノマイシン活性化ヒトT細胞(リュウコパックスより入手)で、皮下または腹膜腔内で免疫した。マウスは、マウスあたり20〜25μgのヒト組換えCTLA4を完全フロイントアジュバント(シグマケミカルカンパニー、セントルイス、ミズーリー州)中乳濁液化したもので、または10PMA/イオノマイシン活性ヒトT細胞で、最初の免疫に続いて14日間隔で免疫促進した。マウスの尾静脈より出血させ、血清を免疫化タンパクに抗してELISAにより免疫原に反応する抗体の存在を検定した。強い血清学的な力価を示すマウスは、マウスあたり50μgの組換えヒトCTLA4をリン酸塩緩衝化生理食塩水に希釈したもの(pH7.2)(ギブコ、グランドアイランド、ニューヨーク州)で免疫促進した。免疫促進後3〜4日にマウスから取り出した脾臓をSP2/0−Ag14ミエローマ細胞(ATCC、ロックビル、メリーランド州)とPEG1450(ATCC、ロックビル、メリーランド州)と5:1の比率で融合し、放射線照射したMRC−5線維芽細胞(ATCC、ロックビル、メリーランド州)を25%CPSR−3(シグマケミカルカンパニー)、2mM L−グルタミン、50U/ml ペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、20μg/mlゲンタマイシン、0.25μg/mlフンギゾーン、および10%NCTC−109(ギブコ、グランドアイランド、ニューヨーク州)を含有するデュルベッコ改変イーグル培地(ギブコ、グランドアイランド、ニューヨーク州)中に含有する、96ウェルプレートに載せる。ヒポキサンチンアミノプテリン−チミジン(ATCC、ロックビル、メリーランド州)の存在下、ハイブリドーマを選別した。ハイブリドーマのコロニーは、次の10〜21日に発芽するので、最初のスクリーニングとして、ウェルの上澄を組換えヒトCTLA4で被覆した96ウェル平底EIAプレート上でスクリーニングした。2番目のスクリーニングは、フヒトCTLA4トランスフェクトしたCHO細胞およびPMA/イオノマイシン活性化ヒトT細胞でフローサイトメトリーにより行った。CTLA4に指向した抗体を含有すると同定されたハイブリドーマ上澄は、腹水産生およびタンパクA−セファロース親和性クロマトグラフィーによる抗体精製の前に、2回伸張しサブクローン化した。
【0121】
mAbの最初のスクリーニング:ELISAプロトコール
96ウェル平底EIAプレート(コスター、キャンブリッジ、マサチューセッツ州)の各ウェルを、ウェルあたり50μlのリン酸塩緩衝化生理食塩水(pH7.2)で作った1μg/ml組換えヒトCTLA4溶液で被覆した。CTLA4溶液を吸引し、ウェルを100μlのリン酸塩緩衝化生理食塩水(pH7.2)中1% BSAで、室温で1時間阻止した。この阻止インキュベーションに続いて、ウェルをリン酸塩緩衝化生理食塩水(pH7.2)で洗浄し、ウェルあたり50μlのハイブリドーマ上澄を加え、45分間37℃でインキュベートした。このインキュベートに続いて、ウェルをリン酸塩緩衝化生理食塩水(pH7.2)で3回洗浄し、次にウェルあたり50μlの西洋ワサビペルオキシダーセ結合親和性精製ヤギ抗マウスIgG(H&L)特異的抗体(ザイムドラボラトリーズ、サンフランシスコ、カリフォルニア州)の1:4000希釈物と、45分間37℃でインキュベートした。ウェルをリン酸塩緩衝化生理食塩水(pH7.2)で3回洗浄し、続いてウェルあたり50μlの0.1Mクエン酸ナトリウム(pH4.2)中1mM ABTS(2,2アジノ−ビス−3−エチルベンスチアゾール−6−スルフォニックアシッド)中30分間インキュベートし、これに30%過酸化水素の1:1000希釈物をHRPの基質として加え、結合抗体を検出した。次に分光光度計(モレキュラーデバイスソーポレーション、メンロパーク、カリフォルニア州)で410nmにおける吸収を測定した。
【0122】
mAbの2番目のスクリーニング:フローサイトメトリー
2番目のスクリーニングをヒトCTLA4−gpiトランスフェクトしたCHO細胞およびPMA/イオノマイシン活性化T細胞でフローサイトメトリーを行った。CTLA4はCTLA4の細胞外領域をグリコフォスファチジルイノシトール(gpi)アンカーに連結することによりCHOおよびCOS細胞に発現した。CTLA4の細胞外領域をコードするDNAはPCRにより、センスプライマーとして、
【0123】
【化9】

【0124】
(これは強力な翻訳開始部位であるHind III部位およびCTLA4コード化配列の最初の15個のヌクレオチドを含有し)、およびアンチセンスプライマーとして、
【0125】
【化10】

【0126】
(これはCTLA4細胞外領域の最後の19個のヌクレオチドおよびAf1 II部位を含有する)
を用いることによりヒトCTLA4cDNAから増幅できる。PCR条件は94℃、1分、43℃、1分、72℃、1分を35サイクル、続いて72℃、10分である。PCR産生物は、Hind IIIおよびAf1 IIで消化し、ゲルろ過し、ヒトCD58のgpiアンカーを含有するHind IIIおよびAf1 II消化pCDM8ベクターに連結した(J.Immunol.148,3271参照、ドクター・ドナルド・スタウントン、センター・フォー・ブラッド・リサーチ、ボストン、マサチューセッツ州に親切にも提供される)。CTLA4−gpi挿入物を含有するプラスミドは、一時的にCOS細胞にトランスフェクトされ、B7−Ig融合タンパクの結合により判断されるように、細胞表面CTLA4を強度に発現する。CTLA4−gpiプラスミドは、ネオマイシン抵抗性をコードするプラスミドと共にCHO細胞にトランスフェクトし、安定したトランスフェクタントをG418で選別した。CHO細胞トランスフェクタントは、B7−IG結合およびクローン化に基づいて分類した。
【0127】
フローサイトメトリー用の細胞(CHO−CTLA4かまたは活性化ヒトT細胞のどちらか)はリン酸塩緩衝化生理食塩水(pH7.2)中1% BSAで徹底的に洗浄し、次に10細胞あたり50μlのハイブリドーマ上澄または培養培地と、30分間4℃でインキュベートした。インキュベートに続いて、細胞をリン酸塩緩衝化生理食塩水(pH7.2)中1% BSAで3回洗浄し、次に50μlの蛍光結合ヤギ抗マウスIgG(H&L)抗体(ザイムドラボラトリーズ、サンフランシスコ、CA)の1:40希釈物と、30分間4℃でインキュベートした。細胞を次にリン酸塩緩衝化生理食塩水(pH7.2)中1% BSAで3回洗浄し、1%パラホルムアルデヒド溶液で固定した。細胞試料を次にFACスキャンフローサイトメーター(ベックマンディッキンソン)で分析した。
【0128】
上述の抗CTLA4モノクローナル抗体の1番目および2番目のスクリーニングにより、さらに特性化するために5個のmAbが単離された:ER4.7G11(7G11と称する)、ER5.3D8(3D8と称する)、ER5.4D3(4D3と称する)、ES5.3D6(3D6と称する)、ES.4E3(4E3と称する)。抗体のERシリーズは組換えヒトCTLA4により上昇するが、一方抗体のERシリーズは活性化T細胞により上昇する。
【実施例2】
【0129】
実施例2:抗CTLA4モノクローナル抗体の特性化
結合特性
5個の7G11、4D3、3D6、3D8および4E3の結合特性を決定するために、CD28を発現するようにトランスフェクトしたCHO細胞か、またはCTLA4を発現するようにトランスフェクトしたCHO細胞に対する結合を、非直接的免疫蛍光により評価した。異なる抗CTLA4 mAbの結合パターンは(対照抗CD28 mAb 3D10に比較して)以下の表1にまとめる:
表1
【0130】
【表1】

【0131】
7G11抗体がCHO−CD28およびCHO−CTLA4の両方に結合するのが認められ、従って抗CD28/CTLA4 mAbと称する。これに比して、4D3、3D6、3D8および4E3は、CHO−CTLA4のみに結合するのが認められ、従ってCTLA4特異的抗体と称する。これらの抗体はまた、本明細書において、各々CTLA4.1、CTLA4.2、CTLA4.3およびCTLA4.4とも称する。
【0132】
エピトープのマッピング
上述の5個のmAbで認識されるエピトープを決定するために、ファージ表示ライブラリー(PDL)スクリーニングにより、マッピングを行い、用いている合成ペプチドを確認した。クゥイルラ,S.E.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA87,6378−6382(1990)に記載するように、無作為に20個のアミノ酸PDLを同義オリゴヌクレオチドをfUSE5ベクター(スコット,J.K.およびスミス,G.P.,Science 249,386−390(1990))にクローン化して調製した。PDLは、ジェリス,C.L.ら、Gene 137,63−68(1993)に記載するように、マイクロパニング法によりmAb抗CD28/CTLA4および抗CTLA4.1−CTLA4.4に特異的に結合する短いペプチドを同定するのに用いた。各々のファージクローンは、固定化mAbに対する親和性により、ライブラリーより精製し、無作為ペプチドをDNA配列決定により同定した。抗CD28/CTLA4(7G11)でのパニングより選別した20個のクローンの配列分析により、以下に示す9個の独特のペプチド配列を生じた。
【0133】
mAb 7G11選別ファージペプチド
【化11】

【化12】

【0134】
これらの9個のペプチドから、5個の残基、P−P−Y−Y−L/I(配列番号:12)のコンセンサンス結合配列を同定し、このうち芳香性残基FおよびWはしばしばYと置換された。P−P−Y−Y−L配列(配列番号:13)は、hCTLA4の細胞外領域内で、CDR3領域内または非常に接近して同定され、CTLA4合成ペプチドRP454に包含される。
【0135】
【化13】

【0136】
RP454ペプチドは抗CD28/CTLA4エピトープの確認に用いられ、抗CD28/CTLA4の結合を天然hCTLA4と競合できる。マッピングした部域をまたぐCD28およびCTLA4の配列決定は、CHO−CD28およびCHO−CTLA4上のこのmAbで、観察された交差活性を説明する。
【0137】
mAb CTLA4.1−CTLA4.4は別々にパニングされ、任意のこれらのパニングからのファージが、4個のmAbのいずれにも特異的に反応することが観察された。42個のファージクローンの配列分析により、以下に示す14個のペプチドを生じた:
mAb4D3、3D6、3D8および4E3選別ファージペプチド
【化14】

【化15】

【0138】
これらのペプチドから、共有するエピトープを、アミノ酸配列L−T−F−L−D−D(配列番号:29)を有するhCTLA4の6個の残基を伸張したものにマッピングする。エピトープはCTLA4のCDR2様部域に存在し、抗CD28/CTLA4 mAbのエピトープと上記のP−P−Y−Y−L(配列番号:13)と区別される。共有する抗CTLA4.1−CTLA4.4エピトープは、合成CTLA4ペプチドRP365内に含まれる:
【化16】

【0139】
これはエピトープマッピングの結果を確認するために用いられる。
【0140】
B7−1およびB7−2の交差競合
5抗CTLA4 mAbは、CTLA4分子上で2個の異なる抗原部域に結合するので、これらの部域のどれかが同族員の結合部位の一部であるかどうかを決定した。モノクローナル抗体7G11および4D3は、以下の実験様式を用いて、B7−1−IgのCTLA4−Igに対する結合を阻止する能力を試験した(リンスレイ,P.S.ら、J.Exp.Med.173,721−730(1991);およびリンスレイ,P.S.ら、J.Exp.Med.174、561−569(1991)に記載されるように構築した。):
【0141】
ヌンクマキシソーププレートを20μg/ml CTLA4−IgのPBS溶液で、室温で一晩被覆し、次いでPBS/1% BSAで1時間阻止した。10μg/mlのビオチニル化B7−1−Igを、100μg/mlまで漸増的にモノクローナル抗体と共に加えた。対照試薬(“冷”B7−1−Ig、CTLA4−Ig、抗B7−1抗体4B2および6B10並びにHIV抗体59.1)をも試験した。ビオチニル化B7−1−Igはストレパビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)および酵素基質を用いて可視化した。結果は以下にまとめ、7G11および4D3は競合物質として無効であることが示された:
【0142】
【表2】

【0143】
【表3】

【0144】
2番目の実験では、様式は“とばされている(flipped)”。プレートをPBS中20μg/mlのB7−1−Igで一晩被覆し、PBS/1% BSAで阻止し、次いで最初の実験で記載するように、ビオチニル化CTLA4−Igに種々競合物質及び対照物質を加えたものと共にインキュベートした。ビオチニル化CTLA4はストレパビジン:HRPおよび酵素基質を用いて可視化した。結果は上記で示したものに類似している:
【0145】
【表4】

【0146】
【表5】

【0147】
これらの相補的なデータを考慮に入れると、mAb 7G11および4D3にはCTLA4−IgのB7−1−Igに対する結合を引き裂く能力はないことが示される。B7−2−Igを用いた実験でも、同様の結果が観察された。抗CD28/CTLA4抗体(7G11)はB7−1−IgのCTLA4に対する結合(またはその逆)を阻害しないという結果は、7G11抗体のためにマッピングしたP−P−Y−Y−L(配列番号:13)とオーバーラップする配列M−Y−P−P−P−Y(配列番号:31)が、CD28およびCTLA4の両方のB7−1に対する結合部位の一部であることが、以前から示唆されていた(ハーパー,K.ら、J.Immunol.147,1037−1044(1991)参照)ので、驚くべきことであった。
【実施例3】
【0148】
実施例3:抗CTLA4抗体によるT細胞におけるアポトーシスの誘起
この実施例では、抗CTLA4 mAbを用いてT細胞表面でCTLA4をライゲートすることにより、予め活性化したT細胞にアポトーシスを誘起した。最初の一連の実験では、異反応性T細胞クローンを用いた。HLA−DR7に特異性を有する異反応性T細胞は、HLA−DR7に陰性の個体から作った。T細胞クローンは放射線照射したDR7+同型接合性リンパ芽球セルライン(LBL−DR7)と24時間培養することにより活性化し、24時間、CTLA4表面発現を誘起した。T細胞は96ウェル平底マイクロタイタープレート中10セル/ウェルの濃度で、37℃,5%COで培養した。活性化T細胞クローンは、ヒトDRαおよびDR7βでトランスフェクトしたNIH−3T3細胞(t−DR7;ギミ,C.D.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,6586−6590(1993)に記載)単独で、または抗CD28もしくは抗CTLA4 mAbと共に再対抗し、2番目のシグナルを提供した。有糸分裂活性の指標となるチミジンの組み込みを標準的な方法により評価した。アポトーシスは、クイングシェング,T.ら、Cell 67,629−639(1991)に記載されるように、アガロースゲル電気泳動で、DNA分断化の存在により評価した。簡単に述べると、DNAを細胞から抽出し、試料を0.5μg/mlエチジウムブロマイドを含有する1%アガロースゲルに載せる。電気泳動した後、DNAをUV光のもとで可視化し、アポトーシスの特性を有するヌクレオソームの長さの断片の存在を評価した。さらに、アポトーシスをハーディン,J.A.,J.Immunol.Methods 154,99−107(1992)に記載するように、ヘキスト33342染料の取り込みにより評価した。
【0149】
結果は図1Aにグラフで説明する。活性化T細胞クローンは、t−DR7の対抗に応答して増殖し、IL−2の蓄積は検出されなかった。抗CD28または抗CD28/CTLA4 mAb(例えば7G11)を添加すると、結果的に著明に増殖し、IL−2が蓄積される。それに比して、抗CTLA4.1 mAbをt−DR7刺激T細胞培養物に添加すると、増殖を刺激せず、代わりに増殖は著明に減少し、IL−2の蓄積は検出されず、DNA分断化により測定されるようにアポトーシスを誘起する。外因性のIL−2をt−DR7およびCTLA4.1 mAbに添加すると、IL−2単独でt−DR7に添加して観察した場合と比較して、結果的にT細胞が著明に増殖し、t−DR7および抗CTLA4 mAbによるアポトーシスの誘起を阻止した。CTLA4.1とのCTLA4ライゲーションに続いて、活性化T細胞クローンが外因性IL−2の存在下で増殖するのは観察されず、このことは、これらの細胞が抗原特異的クローンを排除するという結論に合致する。
【0150】
2番目の一連の実験では、CTLA4ライゲーションが、予め活性化した正常ヒトT細胞でのアポトーシスをも誘起するかどうかを決定した。CD4陽性T細胞芽細胞を、T細胞を活性化するためにフィトヘマグルチニン(PHA)を含有する培地で、4日間PBMCを培養した後、枯渇陰性により単離した。細胞を徹底的に洗浄し、次に種々の2番目のシグナルの存在下、抗CD3 mAbで再対抗した。
【0151】
結果は図1Bにグラフで説明する。抗CD3処置しない抗CTLA4 mAbは、T細胞増殖またはIL−2産生に影響をおよぼさない。抗CD3単独では低水準のIL−2蓄積を伴うPHA芽細胞の穏やかな増殖を誘起した。抗CD28または抗CD28/CTLA4(例えば7G11)mAbの添加により増殖およびIL−2の蓄積の両方が増強された。HLA−DR7特異的異反応性T細胞クローンについての上述の結果に類似して、活性化した正常末梢血T細胞の抗CD3刺激は、任意の抗CTLA4 mAb(例えばCTLA4.1−CTLA4.4)の存在下、増殖の低減、IL−2蓄積の欠如、およびアポトーシスを招く。アポトーシスは6時間の培養と同じほど早くに検出される。抗CTLA4.1 Fabに効果がないので、CTLA4の交差連結が必要である。活性化T細胞クローンに観察されるように、外因性IL−2を抗CTLA4.1に添加すると、アポトーシスから保護する。同様に、抗CD28の添加もまたアポトーシスから保護する。培地中単独で24時間まで培養したCD4PHA芽細胞はアポトーシスを起こさなかったので、アポトーシスは、単にIL−2産生の欠如の結果によるものではないと思われる。抗CD45、抗CD45RA、抗CD45RO、抗CD4、抗CD5、または抗CD6 mAb交差架橋が同等の培養条件下で、5個の実施実験のいずれにおいても増殖の低減またはアポトーシスを誘起しないという知見により、CTLA4架橋の特異性が提供された。単離した非分画化T細胞にもまた同様の水準のアポトーシスが観察され、CD28陽性およびCD8陽性PHA芽細胞を、同等の培養条件下で試験した。
【実施例4】
【0152】
実施例4:新規CTLA4リガンドによるTセルにおけるアポトーシスの誘起
実施例2に記載するように、CTLA4の抗CTLA4抗体とのライゲーションは、最初の活性化シグナルの存在下、予め活性化した正常T細胞および異反応性T細胞クローンにアポトーシスを誘起した。次に既知CTLA4リガンド、B7−1またはB7−2のいずれかもまたこの融合を媒介できるかどうかを決定した。上述と同等のT細胞活性化の系を用いて、活性化異反応性T細胞クローンを、HLA−DR7を単独で発現するようにトランスフェクトしたCOS細胞(t−DR7)単独で、またはHLA−DR7および、B7−1(tDR7/B7−1)またはB7−2(tDR/B7−2)のいずれかの両方を発現するようにトランスフェクトしたCOS細胞で再対抗して、シグナル2を提供する。対照偽トランスフェクト細胞(t−mock)をpCDNAIプラスミド単独でトランスフェクトした。結果は図2Aにグラフで説明する。以前に観察したように、活性化T細胞クローンをt−DR7と、抗CTLA4.1の存在下培養すると、増殖を抑制し、アポトーシスを誘起した。これに比して、t−DR7/B7−1およびt−DR7/B7−2の両方は、増殖を増すが、アポトーシスを誘起しない。抗CD28 Fabの添加は、B7−1およびB7−2の両方により誘起される増殖の増加を阻止し(すなわち増殖の水準がt−DR7単独で観察されたものまで減少した)、このことはB7−1またはB7−2により提供される増殖のシグナルが、CD28にまさに媒介されていることを示している。さらに、CD28媒介シグナル化が存在しない場合に、B7−1またはB7−2がCTLA4に結合するこれらの状況下で、t−DR7に比して、増殖の低減もアポトーシスも起こらなかった。合致した結果が、PHA活性化正常ヒトT細胞で観察された。これらの実験から、分子的にクローン化したCTLA4天然リガンド(すなわちB7−1またはB7−2)には、T細胞の抗原特異的クローン的排除を媒介するものはないと、結論づけることができる。
【0153】
2個の分子的クローン化CTLA4天然リガンドは抗原特異的クローン的排除を媒介しないことを考慮にいれて、代替のCTLA4リガンドがアポトーシスを媒介するかどうかを次に決定した。活性化異反応性T細胞クローンを、LBL−DR7と単独に、または種々mAbおよびIg融合タンパクの存在下、図2Bに示すように再対抗し、このことは実験の結果を説明する。全てのmAbを培養物に最終濃度10μg/mlで加えた。B7−1、B7−2、およびB7−3(BB1 mAb)に指向する阻止mAbは、各々LBL−DR7誘起増殖を25%まで抑制した。対照Igは添加しないのだが、CTLA4−Igの添加により増殖が50%まで抑制され、全体的にIL−2産生が阻止された。得られた増殖はt−DR7単独で観察されたものと比較できる。しかしながら、抗B7−1および抗B7−2 mAbを組み合わせたものを添加すると、増殖が著しく抑制され、さらに重要なことに、T細胞がアポトーシスを起こした。BB1 mAbまたは対照Igを抗B7−1および抗B7−2 mAbにさらに添加すると、増殖にもアポトーシスにもさらなる効果はおよぼさなかった。これに比して、CTLA4−IgまたはCTLA4.1 Fabのどちらかを抗B7−1および抗B7−2 mAbに添加すると、アポトーシスを完全に阻止し、および増殖の水準をt−DR7単独で観察される水準にまでもどした。これらのデータは、アポトーシスを誘起するLBL−DR7に発現するリガンドはB7−1でもB7−2でもなく、CTLA4を通じてシグナルを送るCTLA4結合リガンドであるということを示している。LBL−DRI細胞は同等の培養条件下で増殖を低減せず、アポトーシスを誘起しないので、アポトーシスは抗原特異的である。実施例4に記載された以前の観察に類似して、IL−2の抗B7−1および抗B7−2への添加は、増殖の抑制およびアポトーシスを撤廃した。PHA芽細胞で観察されたものと再び合致した。
【0154】
これらのことを鑑みて、これらの結果は以下のことを示している;抗原特異的T細胞アポトーシスを媒介するCTLA4の生理学的リガンドは:1)LBL−DR7細胞である、2)阻止B7−1およびB7−2がアポトーシスを阻害しないので、B7−1でもB7−2でもない、3)CTLA4 Igがアポトーシスを阻止するので、CTLA4結合リガンドである、4)抗CTLA4.1もまたアポトーシスを阻止するのでCTLA4を通じるシグナルである。さらにこの天然リガンドの機能的エピトープは、CTLA4.1 Fabがアポトーシスを阻止できるので、本明細書に記載する4個の抗CTLA4 mAbすべてにより認識される同等なCTLA4エピトープ(L−T−F−L−D−D;配列番号:29)に結合するのに適している。これらの結果はCTLA4が過多のCD28様共刺激経路ではなく、むしろ適当な条件下で予め活性化したT細胞をクローン的に排除する能力のある、異なるシグナル発生経路であり、さらにLBL−DR7に存在する新規な天然CTLA4リガンドが、このアポトーシスを媒介できるという仮説に合致する。
【0155】
免疫応答の進行中に、活性化/増幅を媒介するシグナル、および続いて抗原特異的細胞性排除を誘起するシグナルの間で均衡がある。CD28の架橋または、mAbもしくはそれらの天然リガンドB7−1もしくはB7−2によるCD28/CTLA4の共通結合部域のどちらかは、結果的にIL−2蓄積を引き起こす陽性の共刺激シグナルのようなものを提供する。本明細書に記載する結果は、IL−2を蓄積するシグナルは優勢であることを示唆している、というのは、これらが免疫応答を増幅し、それによりCTLA4媒介アポトーシスからの免疫応答の進行を防ぐためである。B7−1およびB7−2はCD28およびCTLA4の両方のリガンドであるので、たいていの場合細胞排除よりむしろ増幅シグナルを媒介する。この隔たりの間で、CTLA4の架橋はアポトーシスを媒介せず、対照的に、相乗的な共刺激シグナルをCD28に提供できる。T細胞活性化に続いて、B7−1によるCD28連結は、CTLA4発現を増加させるが、CD28合成および機能を低下制御する(リンスレイ,P.S.ら、J.Immunol.150,3161−3169(1993))。増殖応答が衰退する場合の条件下、共刺激剤に媒介されるCD28の不在下、CTLA4の架橋は、予め活性化した細胞の細胞的排除を誘起できる。共刺激またはT細胞活性化状態に依存したアポトーシス誘起の機能的能力は、受容体のTNFの基の的を構成員レパートリー数を回顧させる(スミス,C.A.ら、Cell 76,959−962(1994)参照)。しかしながら、TCRを通じたシグナルをも必要であるので、異なるアポトーシスはTNF受容体群の構成員で誘起され、CTLA4架橋は抗原特異的クローン的排除を媒介する。
【実施例5】
【0156】
実施例5:活性化T細胞にアポアプトシスを誘起するCTLA4リガンドのクローニング
T細胞のアポトーシスを媒介する天然のCTLA4リガンドは、CTLA4との相互作用に基づく発現クローニングにより分子的に単離される。実施例5に示すように、天然のCTLA4リガンドは、Bリンパ芽球セルライン(LBL)の表面に発現される。このようなLBLセルラインは、当業界に周知であり、Bリンパ腫細胞のエプステイン−バールウイルス形質転換に関連する標準的な方法により構築できる。T細胞のアポトーシスを媒介する天然のCTLA4リガンドを単離するために、cDNA発現ライブラリーを以下のようなLBLセルラインから調製する。
【0157】
A.CDNA発現ライブラリーの構築
cDNAライブラリーは真核生物の発現ベクター、例えばpCDMベクター(シード、Nature 329,840(1987))にLBLセルラインから単離したポリ(A)RNAを用いて上述のように構築する(アルフォら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,3365(1987))。全RNAを調製するために、LBL細胞を培養物から収穫し、細胞小塊を4Mグアニジンチオシアネート、0.5%サルコシル、25mM EDTA、pH7.5、0.13%シグマアンチフォームAおよび0.7%メルカプトエタノールの溶液中均質化する。RNA均質化物より、24時間32000rpmで5.7M CsCl、10mM EDTA、25mM酢酸ナトリウム、pH7の溶液を通じて、遠心により精製する。RNA小塊を5%サルコシル、1mM EDTA、10mMトリス、pH7.5に溶解し、2容量の50%エタノール、49%クロロホルム、1%イソアミルルコールで抽出する。RNAは2回エタノール沈殿させる。cDNAライブラリーに用いるポリ(A)RNA構築物は、オリゴ(dT)セルロース選別を2サイクル行うことにより精製する。
【0158】
相補的DNAは、50mMトリス、pH8.3、75mM KCl、3mM MgCl、10mMジチオスレイトール、500μM dATP、dCTP、dGTP、dTTP、50μg/mlオリゴ(dT)12−18、180ユニット/mlRナシン、および1000ユニット/mlモロネイ−MLV逆転写酵素を全量55μlを含有する反応物中、37℃で1時間、5.5μgポリ(A)RNAから合成する。逆転写に続いて、溶液を25mMトリス、pH8.3、100mM KCl、5mM MgCl、各々250μM dATP、dCTP、dGTP、dTTP、5mMジチオスレイトール、250ユニット/mlDNAポリメラーゼI、8.5ユニット/mlリボヌクレアーゼHに調整し、16℃、2時間インキュベートすることにより、cDNAを2重鎖DNAに転換する。EDTAを加えて18mMにし、溶液を50%フェノール、49%クロロホルム、1%イソアミルアルコールの等容量で抽出する。DNAは2.5M酢酸アンモニウムを含有する2容量のエタノールおよび担体として4マイクログラムの線状ポリアクリルアミドで沈殿させる。さらに、cDNAは4μgのポリ(A)RNAから、50mMトリス、pH8.8、50μg/mlオリゴ(dT)12−18、327ユニット/mlRナシン、および952ユニット/ml AMV逆転写酵素を全容量100μlで、42℃で0.67時間反応させて合成する。逆転写に続いて、逆転写酵素を70℃、10分間加熱して不活化する。cDNAを320μlのHOおよび80μlの0.1Mトリス、pH7.5、25mM MgCl、0.5M KCl、250μg/mlウシ血清アルブミン、および50mMジチオスレイトールの溶液を添加し、溶液を各々200μM dATP、dCTP、dGTP、dTTP、50ユニット/ml DNAポリメラーゼI、8ユニット/mlリボヌクレアーゼHに調整し、16℃、2時間インキュベートすることにより、cDNAを2重鎖DNAに転換する。EDTAを加えて18mMにし、溶液を50%フェノール、49%クロロホルム、1%イソアミルアルコールの等容量で抽出する。DNAは2.5M酢酸アンモニウムを含有する2容量のエタノールおよび担体として4マイクログラムの線状ポリアクリルアミドで沈殿させる。4μgのAMV逆転写物および2.0μgのモロネイ逆転写物からのDNAをまとめる。非自己相補的BstXIアダプターを以下のようにDNAに加える:6μgのポリ(A)RNAからの2重鎖cDNAを3.6μgのキナーゼ処理した配列CTTTAGAGGCACA(配列番号:31)のオリゴヌクレオチド、2.4μgおよびキナーゼ処理した配列CTCTAAAG(配列番号:32)のオリゴヌクレオチドと、6mMトリス、pH7.5、6mM MgCl、5mM NaCl、350μg/mlウシ血清アルブミン、7mMメルカプトエタノール、0.1mM ATP、2mMジチオスレイトール、1mMスペルミジン、および600ユニットT4DNAリガーゼを含有する溶液全容量0.45ml中、15℃、16時間、インキュベートする。EDTAを加えて34mMにし、溶液を50%フェノール、49%クロロホルム、1%イソアミルアルコールの等容量で抽出する。DNAは2.5M酢酸アンモニウムを含有する2容量のエタノールで沈殿させる。
【0159】
600bpより大きいDNAは以下のように選別する:アダプター化したDNAを10mMトリス、pH8、1mM EDTA、600mM NaCl、0.1%サルコシルに溶解し、同一の緩衝液中、セファロースCL−4Bカラムでクロマトグラフにかける。カラムの空容量のDNA(600bp以上のDNAを含有する)をプールし、エタノールで沈殿させる。pCDM8ベクターをcDNAクローニング用に、BstXIで消化し、アガロースゲルで精製して、調製する。6μgのポリ(A)RNAからのアダプター化したDNAを6mMトリス、pH7.5、6mM MgCl、5mM NaCl、350μg/mlウシ血清アルブミン、7mMメルカプトエタノール、0.1mM ATP、2mMジチオスレイトール、1mMスペルミジン、および600ユニットT4 DNAリガーゼを含有する溶液全容量1.5ml中、15℃、24時間、2.25μgのBstXI切断pCDM8にライゲートする。ライゲート反応混合物を次に標準的な方法により、受容能力のあるE.coli DH10B/P3に形質転換する。
【0160】
プラスミドDNAを、cDNAライブラリーの元来の形質転換物の500ml培養物から調製する。プラスミドDNAをアルカリ性溶解法、続いてCsCl平衡グラジエントで2回バンド形成させて精製する(マニアティスら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州(1987))。
【0161】
B.クローニング方法
クローニング方法において、cDNA発現ライブラリーを真核細胞セルライン、例えばCOS細胞に導入し、細胞をCTLA4タンパク(例えばCTLA4 Ig融合タンパク)で選別し、それらの表面のトランスフェクトした発現CTLA4リガンドを同定する。アポトーシスを誘起するCTLA4リガンドをコードするcDNAを含有するのに加えて、cDNAライブラリーは“夾雑物”B7−1およびB7−2cDNAをも含有することがあるので、ライブラリースクリーニングの3番目の段階では、抗B7−1および抗B7−2抗体での前処理、続いて抗マウスIg結合磁気ビーズを用いて免疫原性ビーズを除去して、これらのタンパクを発現するクローンを取り除く。スクリーニングの最初の段階では、50%融合性COS細胞の100mm皿30個を、DEAEデキストラン法を用いて0.05g/ml LBLセルラインライブラリーDNAで、トランスフェクトする(シード,B.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,3365(1987))。細胞をトリプシン処理し、24時間後に再度プレート化する。47時間後、細胞をPBS/0.5mM EDTA、pH7.4/0.02%ナトリウムアジド中37℃、30分間インキュベートして、分離する。
【0162】
分離した細胞を10μg/ml CTLA4 Ig(組換えCTLA4−ヒトIg融合タンパクは、リンスレイ,P.S.ら、J.Exp.Med.174,561−569(1991);およびギミ,C.D.ら、Proc.Natl.Acad.Sci USA 90,6586−6590(1993)に記載される)で処理する。細胞を融合タンパクと共に45分間、4℃でインキュベートする。細胞を洗浄し、親和性精製ヤギ抗ヒトIgG抗体で被覆したパニング皿に分配し、室温で付着させる。3時間後、プレートをPBS/0.5mM EDTA、pH7.4/0.02%ナトリウムアジド、5% FCSで2回、0.15M NaCl、0.01Mヘペス、pH7.4、5% FCSで1回、穏やかに洗浄する。非結合細胞をこのように取り除き、通常の方法により、エピソームのDNAを付着性のパニングした細胞(すなわちCTLA4 Igに結合する細胞)から回復させる。
【0163】
エピソームのDNAをE.coli DH10B/P3に形質転換する。プラスミドDNAを、記載されるように(シード,B.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,3365(1987))スフェロプラスト融合によりCOS細胞に再導入し、発現およびパニングのサイクルを2回繰り返す。分別の2および3番目の段階では、47時間後、分離したCOS細胞を最初は、10g/mlネズミ抗B7−1mAb(例えば、フリードマン,A.S.ら、J.Immunol.137,3260−3267(1987)に記載されるmAb133、ベクトン・ディッキンソンより市販により入手可能なmAbL307、および/またはレプリゲンコーポレーションからのB1.1)および抗B7−2mAb(例えば、アズマ,M.ら、Nature 366,76−79(1993)に記載されるmAb B−70、ファルミンゲンより市販により入手可能)と共に、45分間、4℃でインキュベートする。B7−1またはB7−2を発現する細胞を、抗マウスIgGおよびIgM被覆磁気ビーズを用いて取り除く。次にCOS細胞を10g/mlヒトCTLA4 Ig(hCTLA4 Ig)で処理する。新規CTLA4リガンドを発現する細胞をヤギ抗ヒトIgG抗体を被覆した皿上でパニングにより選別する。スクリーニングの3番目の段階の後、プラスミドDNAを個々のコロニーより調製し、DEAEデキストラン法により、COS細胞にトランスフェクトする。トランスフェクトしたCOS細胞上でのCTLA4の発現は、CTLA4 Igで、間接的免疫蛍光により分析する。
【0164】
また別なアプローチでは、クローンを、BB1抗体への結合に基づいて選別する。新規CTLA4リガンドへの候補物質は、B7−3であり、これはBB1 mAbの結合により定義される(ボウシトチス,V.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci,USA 90,11059−11063(1993))。Bb1 mAbはCTLA4媒介アポトーシスを阻止できなかったが(実施例5参照)、B7−3はアポトーシスを媒介するCTLA4リガンドであるが、BB1 mAbが抗体のこの機能を阻止しないということは、可能である。従ってcDNA発現ライブラリーは、上述のように、BB1 mAbに結合するクローンをスクリーニングできる(BB1 mAbは、ヨコチ,T.ら、J.Immunl.128,823−827(1982)に記載されている)。クローンはパニングにより、ヤギ抗マウスIgM2次抗体で被覆したプレートに単離される。LBL cDNAライブラリーは、使用することができ、また別に、ライブラリーはBB1抗原を発現することが知られている活性化ヒトケラチノサイトから調製でき、上述のようにスクリーニングできる。
【0165】
上述のように発現クローンから単離したCTLA4リガンドの、活性化T細胞に抗原特異的アポトーシスを誘起する能力は、前の実施例に記載した系を用いて評価できる。例えば、ライブラリースクリーニングから単離したcDNAは、CHO細胞に導入して、CTLA4リガンドを表面に発現するCHO形質転換物(CHO−CTLA4L)を作ることができる。正常ヒトT細胞におけるアポトーシスを評価するために、PHA活性化CD4T細胞芽細胞を、抗CD3およびCHO−CTLA4Lで培養し、DNA分断化を、アポトーシスの測定として決定する。異反応性T細胞における抗原特異的アポトーシスを評価するために、予め活性化したHLA−DR7特異的T細胞クローンを、HLA−DR7およびCTLA4リガンドの両方を発現する様にトランスフェクトしたCHO細胞(CHO−DR7/CTLA4)と共に培養し、DNA分断化およびT細胞増殖の低減制御を、アポトーシスおよび生物学的な機能の測定により評価する。
【実施例6】
【0166】
実施例6:E.coliにおけるヒトCTLA4細胞外領域の発現
CTLA4細胞外領域のクローニング
CTLA4の細胞外領域を、発現ベクターpETCm11aにクローニングした後、E.coliに発現させた。このベクターは、アンピシリン抵抗性遺伝子内のScaI制限部位にクロラムフェニコール抵抗性遺伝子カセットをクローニングすることにより、発現ベクターpET−11a(ノバゲンインコーポレーティッド、マジソン、ウィスコンシン州)から得た。CTLA4の細胞外領域は、オリゴヌクレオチド5‘GCAGAGAGACATATGGCAATGCACGTGGCCCAGCCTGCTGTGG−3’(配列番号:37)を先行プライマーとして、オリゴヌクレオチド5‘GCAGAGAGAGGATCCTCAGTCAGTTAGTCAGAATCTGGGCACGGTTCTGG−3’(配列番号:38)を逆転プライマーとして用いて、PCR増幅により、プラスミドphCTLA4から調製した。先行PCRプライマーは、Nde1制限部位のATG配列が成熟CTLA4の最初のアミノ酸からのコドンがすぐ後に続く、Nde1制限部位を含有する。逆転PCRプライマーは、CTLA4膜透過領域の直前に最後のアミノ酸により先行される3個の全ての解読枠の翻訳停止コドンにより先行される、BamHI制限部位を含有する。これらのプライマーでのPCR増幅は、メチオニンコドンにより先行されるCTLA4の細胞外領域をコードするDNA配列を含有するNde1およびBamHI制限部位により結合される416bp断片を生み出す。PCR産生物は、Nde1およびBamHIで消化し、ライゲートして同一の制限酵素で消化したベクターpETCm11aを発現する。ライゲートしたDNAを、ラムダDE3ヘルパーファージを含有するE.coli株BL21、HMS174、RGN714およびRGN715にトランスフェクトした。形質転換物はクロラムフェニコールを含有するL寒天中で選別した。個々の形質転換物は、選別し、0.5mM IPTGとの処理により導入した後、CTLA4発現を試験した。全細胞抽出物を、SDS−PAGEゲル上で分析し、続いてクーマシー青色染色およびウェスタンブロット分析を行った。これらの細胞の大部分のCTLA4タンパクは細胞封入体の中に見出された。
【0167】
細胞封入体からのCTLA4の精製
組換えCTLA4は、洗浄細胞を溶解緩衝液(50mM塩酸トリス、pH8.0、1mM PMSF、5mM EDTA、0.5%トライトンX−100およびライソザインを0.3mg/mlで)中処理し、続いてソニケートして、細胞小塊より回収した。細胞封入体は、20000×gで遠心して回収し、可溶化緩衝液(50mM塩酸トリス、pH8.0、8M尿素、50mM 2−メルカプトエタノール(2−ME))で処理して可溶化した。可溶化は室温で2時間攪拌することにより助成した。可溶性分画はCTLA4を含有した。CTLA4は以下のように、Sセファロース(ファルマシア、ピスカッタウェイ、NJ)でクロマトグラフィーにより精製した。CTLA4含有上澄は、氷酢酸を添加することによりpH3.4に調整し、カラム緩衝液(100mM 酢酸ナトリウム、pH6.5、8M尿素、50mM 2−MEおよび5mM EDTA)で平衡にしたSセファロースに適用した。カラムをカラム緩衝液で洗浄し、結合CTLA4を、カラム緩衝液で調製した直線塩グラジエント(NaCl、0〜1M)で流出した。Abs280nmで高値を呈するピーク分画をプールし、透析緩衝液(100mM塩酸トリス、pH8.0、8M尿素、50mM 2ME、5mM EDTA)に抗して透析した。残留した夾雑タンパクを、セファクリルS−100クロマトグラフィー(ファルマシア、ピスカッタウェイ、NJ)の測定カラムで除去した。得られた調製物はSDS−PAGEで推測されたように、95%以上の純度であり、続いてクーマシー青色染色およびウェスタンブロット分析を行った。E.coliに産生された単量体組換えCTLA4の推測された大きさは、約15kDaであったので、精製プロトコールの全工程は、15kDaタンパクの存在をSDS−PAGEにより試験され、CTLA4の存在は、ウェスタンブロットにより証明された。
【0168】
E.coliからの分泌CTLA4の調製
分泌型のCTLA4を以下のようにE.coliより調製した。CTLA4の細胞外領域をpe1B(レイ,S.−P.ら、J.Bacteriol.169,4379−4383(1987))シグナル配列に、鋳型としてプラスミドphCTLA4、および先行プライマーとしてオリゴヌクレオチド5‘GGCACTAGTCATGAAATACCTATTGCCTACGGCAGCCGCTGGATTGTTATTACTCGCTGCCCAACCAGCGATGGCCGCAGCAATGCACGTGGCCCAGCCTGCTGTGG3’(配列番号:39)および逆転プライマーとして上述のオリゴヌクレオチド配列番号:38を用いて、PCRにより結合した。先行PCRプライマーは、独特のBspH1制限部位、完全pe1Bシグナル配列およびCTLA4の細胞外領域の5’末端を含む。逆転PCRプライマーは、CTLA4の膜透過領域の前の最後のアミノ酸に先行される3個の全ての解読枠の翻訳停止コドンにより先行される、独特のBamH1制限部位を含む。これらのプライマーでのPCR増幅は、CTLA4細胞外領域に結合するpe1Bシグナル配列をコードする、独特のBspH1およびBamH1制限部位に結合した断片により、480を産生した。PCR増幅の後、DNA断片をBspH1およびBamH1で消化し、予めNco1およびBamH1で消化した発現ベクターpTrc99A(ファルマシア、ピスカッタウェイ、NJ)にライゲートした。この結果、pe1B−CTLA4タンパクの発現が、pTrc99A発現ベクターに存在するpTrcプロモーターにより引き起こされるプラスミドになる。ライゲートし、DNAで形質転換したE.coli宿主株は、アンピシリン含有(50μg/ml)L−寒天上で選別され、個々のクローンを単離した。これらの株のCTLA4発現は、IPTG(0.5mM)で一晩、指数的成長培養処理により誘起された。濃縮後の培養培地から、またはペリプラスムからの放出により調製した抽出物(細胞は20%ショ糖、10mM塩酸トリス、pH7.5、中室温で15分間インキュベートし、遠心により回収し、4℃で水に再懸濁し、氷中10分間保持した)をCTLA4の存在を、SDS−PAGE、ウェスタンブロットおよび競合B7結合ELISAにより検定した。
【0169】
同等物
当業者は、通常の実験方法のみを用いて、本明細書に記載する詳細な態様に対する多くの同等物を認識するか、または確認できる。このような同等物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1A】抗原(t−DR7)および指示した、2番目のシグナルで再対抗したときの、活性化DR7特異的T細胞クローンによるT細胞応答(増殖、IL−2産生またはアポトーシス)をグラフで示しており、抗CTLA4モノクローナル抗体(mAb)によりアポトーシスが誘起されることを示す。
【図1B】抗CD3および指示した2番目のシグナルで再対抗したしたときの、正常な末梢血CD4T細胞芽細胞によるT細胞応答(増殖、IL−2産生またはアポトーシス)をグラフで示しており、抗CTLA4 mAbによりアポトーシスが誘起されることを示す。
【図2A】単独の抗原(t−DR7)を発現する細胞または両方の抗原およびB7−1(tDR7/B7−1)またはB7−2(tDR7/B7−2)のどちらか一方を発現する細胞で再攻撃したときの、活性化DR7特異的T細胞クローンによるT細胞応答(増殖、IL−2産生またはアポトーシス)をグラフで示しており、B7−1もB7−2も抗原特異的アポトーシスを誘起しないことを示す。
【図2B】指示した細胞で指示したmAbまたは融合タンパクと共に再攻撃したときの、活性化DR7特異的T細胞クローンによるT細胞応答(増殖、IL−2産生またはアポトーシス)をグラフで示しており、抗原特異的アポトーシスが非B7−1非B7−2CTLA4結合リガンドにより誘起されることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞特異性表面分子に結合し、活性化T細胞において抗原特異性アポトーシスを誘起する単離されたリガンド。
【請求項2】
T細胞特異性表面分子に結合する抗体である請求項1記載のリガンド。
【請求項3】
T細胞特異性表面分子がCTLA4である請求項1記載のリガンド。
【請求項4】
T細胞表面分子のエピトープCTLA4に結合し、活性化T細胞において抗原特異性アポトーシスを誘起する単離されたリガンド。
【請求項5】
ヒトCTLA4のエピトープに結合する請求項4記載のリガンド。
【請求項6】
CTLA4のB7−1またはB7−2結合部位とは異なるエピトープに結合する請求項4記載のリガンド。
【請求項7】
CTLA4のエピトープが、アミノ酸配列:
【化1】

(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=1〜20である)を含有する請求項4記載のリガンド。
【請求項8】
抗CTLA4抗体またはその断片である請求項5記載のリガンド。
【請求項9】
モノクローナル抗体である請求項8記載の抗体。
【請求項10】
キメラモノクローナル抗体である請求項9記載の抗体。
【請求項11】
ヒト化モノクローナル抗体である請求項9記載の抗体。
【請求項12】
ヒトモノクローナル抗体である請求項9記載の抗体。
【請求項13】
CTLA4のB7−1またはB7−2結合部位とは異なるエピトープに結合する請求項9記載の抗体。
【請求項14】
CTLA4のエピトープが、アミノ酸配列:
【化2】

(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=0〜20である)を含有する請求項9記載の抗体。
【請求項15】
ER5.4D3(ATCC No.__)、ES5.3D6(ATCC No.__)、ER5.3D8(ATCC No.__)、およびES5.4E3(ATCC No.__)から成る群から選択される請求項9記載の抗体。
【請求項16】
Bリンパ芽球セルラインの表面に天然型で発現される請求項4記載のリガンド。
【請求項17】
Bリンパ芽球セルラインの表面に発現される天然型の組換え可溶性誘導体である請求項16記載のリガンド。
【請求項18】
アミノ酸配列:
【化3】

(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=0〜20である)を含有するヒトCTLA4のエピトープに結合するモノクローナル抗体。
【請求項19】
アミノ酸配列:
【化4】

(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=0〜20である)を含有する単離されたヒトCTLA4ペプチド。
【請求項20】
アミノ酸配列:
【化5】

(式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、n=0〜20である)を含有する単離されたヒトCTLA4ペプチド。
【請求項21】
請求項8記載の抗体および医薬的に許容できる担体を含む医薬的投与に適した組成物。
【請求項22】
請求項14記載の抗体および医薬的に許容できる担体を含む医薬的投与に適した組成物。
【請求項23】
請求項17記載のリガンドおよび医薬的に許容できる担体を含む医薬的投与に適した組成物。
【請求項24】
T細胞を:
a)T細胞においてTCR/CD3複合体関与シグナルを刺激する1番目の物質;および
b)T細胞においてCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する2番目の物質と接触させることからなる、活性化T細胞においてアポトーシスを誘起する方法。
【請求項25】
2番目の物質が抗CTLA4モノクローナル抗体またはその断片である請求項24記載の方法。
【請求項26】
2番目の物質がBリンパ芽球セルラインに発現する天然CTLA4リガンドの可溶型である請求項24記載の方法。
【請求項27】
2番目の物質がCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激するように細胞内で作用する請求項24記載の方法。
【請求項28】
2番目の物質がCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激するCTLA4リガンドをコードする核酸である請求項24記載の方法。
【請求項29】
さらに、T細胞において共刺激シグナルを阻害する少なくとも1つの3番目の物質にT細胞を接触させることからなる請求項24記載の方法。
【請求項30】
T細胞においてCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質を有効量、対象に投与することからなる対象の活性化T細胞のアポトーシスを誘起する方法。
【請求項31】
物質が抗CTLA4モノクローナル抗体またはその断片である請求項30記載の方法。
【請求項32】
さらに、T細胞における共刺激シグナルを阻害する少なくとも1つの2番目の物質を対象に投与することからなる請求項30記載の方法。
【請求項33】
2番目の物質が、B7−1、B7−2およびCD28からなる群から選択されるリガンドに結合する阻止分子である請求項32記載の方法。
【請求項34】
さらに、対象においてT細胞成長因子の産生または機能を阻害する2番目の物質を対象に投与することからなる請求項30記載の方法。
【請求項35】
2番目の物質が、インターロイキン−2およびインターロイキン−2受容体からなる群から選択されるリガンドに結合する阻止分子である請求項34記載の方法。
【請求項36】
対象が自己免疫疾患に罹患している請求項30記載の方法。
【請求項37】
さらに、自己抗原を対象に投与することからなる請求項36記載の方法。
【請求項38】
対象がアレルギーを患っている方法において、さらにその患者にアレルゲンを投与することからなる請求項30記載の方法。
【請求項39】
受容者における異反応性T細胞のCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質の有効量を受容者に投与することからなる供与体からの移植片に対する移植受容者における拒絶反応の阻止方法。
【請求項40】
物質が抗CTLA4モノクローナル抗体またはその断片である請求項39記載の方法。
【請求項41】
物質の投与に先立ち、および受容者への移植片の移植に先立ち、供与体からの細胞を投与することからなる請求項39記載の方法。
【請求項42】
供与体骨髄における異反応性T細胞のCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質の有効量を受容者に投与することからなる骨髄移植の受容者の移植片対宿主疾患(GVHD)の阻止方法。
【請求項43】
物質が抗CTLA4モノクローナル抗体またはその断片である請求項39記載の方法。
【請求項44】
さらに、
a)移植に先立ち、供与体骨髄をイン・ビトロで:
i)受容者からの細胞;および
ii)供与体骨髄の異反応性T細胞のCTLA4関与アポトーシスシグナルを刺激する物質に接触させること
b)受容者に供与体骨髄を投与すること
からなる請求項42記載の方法。
【請求項45】
T細胞におけるCTLA4関与アポトーシスシグナルの発生を阻害する物質に、T細胞を接触させることからなる活性化T細胞におけるアポトーシスの阻害方法。
【請求項46】
物質が、CTLA4に結合するがアポトーシスを誘起しない、可溶性CTLA4タンパクまたはそれの断片、可溶性CTLA4融合タンパクまたはそれのペプチド断片、および抗CTLA4抗体またはそれのペプチド断片からなる群から選択される請求項45記載の方法。
【請求項47】
物質が、可溶型CTLA4リガンドまたはそれのペプチド断片、可溶性CTLA4リガンド融合タンパクまたはそれのペプチド断片、およびCTLA4リガンドに結合する抗体またはそれのペプチド断片からなる群から選択される、請求項45記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2008−74859(P2008−74859A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268980(P2007−268980)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【分割の表示】特願平8−501085の分割
【原出願日】平成7年6月2日(1995.6.2)
【出願人】(504232044)レプリゲン・コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】REPLIGEN CORPORATION
【出願人】(591183991)ダナ−ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】DANA−FARBER CANCER INSTITUTE, INCORPORATED
【Fターム(参考)】