T細胞サイトカイン誘導表面分子およびその使用
炎症に関与する機構のうちの1つは、活性化している単球系統由来マクロファージ(Mφ)によるサイトカインのアップレギュレーションであると考えられている。本発明は、サイトカインモジュレーター、および単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるためにサイトカインモジュレーターを使用するための方法を提供する。特に、本発明のサイトカインモジュレーターは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合して、それによって、単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、サイトカインモジュレーター、および単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるために上記サイトカインモジュレーターを使用するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
広範囲の種々の臨床状態は、急性および/もしくは慢性の炎症(関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群、遺伝性タンパク尿症候群、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫甲状腺炎、肝炎、後天性免疫不全疾患(HIV)、対宿主性移植片病、同異種移植片疾患、喘息、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−I関連皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−II関連リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、突発性CD4+Tリンパ球減少症、もしくは黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない)によって媒介されている。上記炎症に関与する機構のうちの1つは、活性化している単球系統由来マクロファージ(Mφ)によるサイトカインのアップレギュレーションであると考えられている。例えば、病変部において生成される炎症促進性サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子−α(TNFa)およびインターロイキン−1β(IL−1β))は、慢性の病変部炎症を誘導しかつ維持することが示されてきた。関連する動物モデルにおける近年の研究では、T細胞(Tc)がMφ活性化において重要な役割を果たすことが示唆されている;しかし、T細胞サイトカイン(例えば、インターロイキン−4、インターロイキン−10、およびインターロイキン−13(IL−4、IL−10およびIL−13)は、抗炎症性の役割を果たすか、もしくはTNFα/IL−1βアップレギュレーションを弱く誘導するにすぎないかのいずれかを示してきた。
【0003】
従って、炎症を変化させて、急性および/もしくは慢性の炎症と関連する種々の臨床状態を処置することが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のいくつかの局面は、サイトカインモジュレーターおよび単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるために上記サイトカインモジュレーターを使用するための方法に関する。いくつかの特定の実施形態において、本発明は、炎症促進性サイトカインモジュレーターおよび単球系統由来細胞(代表的には、ヒト単球系統由来細胞)における炎症促進性サイトカイン生成を変化させるために上記炎症促進性サイトカインモジュレーターを使用するための方法を提供する。いかなる理論にも束縛されることなく、単球系統由来細胞は、一旦異なるエフェクターT細胞集団と直接細胞間接触した状態になると、活性化されると考えられている。TCISM リガンドおよび/もしくはTCISM レセプターにレベルでの適応性(すなわち、獲得)免疫を制御することによって、微生物感染(例えば、最近の皮膚感染)の間に先天性免疫をさらに考慮に入れる治療的介入が提供される。
【0005】
本発明の一局面は、被験体の単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるための方法を提供し、上記方法は、サイトカインモジュレーターを上記被験体に投与する工程を包含し、ここで上記サイトカインモジュレーターは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合し、上記TCISM−リガンドもしくは上記TCISM−レセプターへの上記サイトカインモジュレーターの選択的結合によって、単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成が変化する。
【0006】
いくつかの実施形態において、TCISM−リガンドは、表1(図19)に列挙されるTCISM−リガンドのうちの少なくとも1つを含む。これら実施形態において、いくつかの場合、上記TCISM−リガンドは、CD81、CD21、CD316、α−エノラーゼ、FKBP4、上記FKBPマルチ遺伝子ファミリーの他のメンバー、もしくはこれらの組み合わせを含む。上記FKBPマルチ遺伝子ファミリーのメンバーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:FKBP12(FKBP1A)、FKBP12.6(FKBP1B)、FKBP13(FKBP2)、FKBP9(FKBP11)、FKBP22(FKBP14)、FKBP23(FKBP7)、FKBP25(FKBP3)、FKBP36(FKBP6)、FKBP37(AIP)、FKBP38(FKBP8)、FKBP51(FKBP5)、FKBP52(FKBP4)、FKBP60(FKBP9)、およびFKBP65(FKBP10)。
【0007】
他の実施形態において、単球系統由来細胞は、単球系統由来マクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、もしくはこれらの組み合わせを含む。
【0008】
さらに他の実施形態において、Tリンパ球は、CD3+Tリンパ球である。
なお他の実施形態において、上記変化させられるサイトカインは、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−32(IL−32)、もしくはこれらの組み合わせを含む。
【0009】
他の実施形態において、TCISM−リガンドは、CD3+リンパ球上に存在するTCISM−リガンドである。これら実施形態において、いくつかの場合、TCISM−リガンドは、CD81、CD21、CD315、CD316、α−エノラーゼ、FKBP、もしくはこれらの組み合わせを含む。例示的FKBPとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:FKBP4、FKBP12(FKBP1A)、FKBP12.6(FKBP1B)、FKBP13(FKBP2)、FKBP9(FKBP11)、FKBP22(FKBP14)、FKBP23(FKBP7)、FKBP25(FKBP3)、FKBP36(FKBP6)、FKBP37(AIP)、FKBP38(FKBP8)、FKBP51(FKBP5)、FKBP52(FKBP4)、FKBP60(FKBP9)、およびFKBP65(FKBP10)。
【0010】
さらに他の実施形態において、上記TCISM−レセプターは、CD68+抗原提示細胞上に存在するTCISM−レセプターを含む。これら実施形態において、いくつかの場合、上記TCISM−レセプターは、CD81のレセプター、CD21のレセプター、CD315のレセプター、CD316のレセプター、α−エノラーゼのレセプター、FK結合タンパク質のレセプター、もしくはこれらの組み合わせを含む。いくつかの場合、上記TCISM−レセプターは、CD19、CD21、CD225、CD315、CD316、C3dR、CD19、CD81、BCR、CD9、CD81、KAI1/CD82、FK506、ラパマイシン(シロリムス)、エベロリムス(Everolimus)、シクロスポリン、タクロリムス、他の合成低分子免疫抑制剤、もしくはこれらの組み合わせの上に存在するTCISM−リガンドのレセプターを含む。一般に、上記TCISM−レセプターとは、リガンドに結合したときに、単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を刺激する、単球系統由来細胞上に存在するレセプターをいう。
【0011】
本発明の別の局面は、被験体における急性もしくは慢性の炎症によって媒介される臨床状態を処置するための方法を提供し、上記方法は、サイトカインモジュレーターを上記被験体に投与する工程を包含し、ここで上記サイトカインモジュレーターは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合し、それによって、上記サイトカインモジュレーターによるサイトカイン生成の変化は、急性もしくは慢性の炎症によって媒介される上記臨床状態を処置するために使用される。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記サイトカインモジュレーターは、CD3+リンパ球上のTCISM−リガンドに選択的に結合する。
【0013】
他の実施形態において、上記サイトカインモジュレーターは、CD68+単球細胞上のTCISM−レセプターに選択的に結合する。
【0014】
なお他の実施形態において、上記臨床状態は、自己免疫疾患を含む。これら実施形態において、いくつかの場合、上記自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群、遺伝性タンパク尿症候群、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫甲状腺炎、肝炎、後天性免疫不全疾患(HIV)、対宿主性移植片病、同異種移植片疾患、喘息、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−I関連皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−II関連リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、突発性CD4+Tリンパ球減少症、もしくは黒色腫、もしくはこれらの組み合わせを含む。
【0015】
本発明のさらに別の局面は、被験体における自己免疫疾患を処置するための方法を提供し、上記方法は、治療上有効な量の、TCISM−リガンドに対するアンタゴニストもしくはその対応するTCISM−レセプターに対するアンタゴニストを、上記処置が必要な被験体に投与する工程を包含する。
【0016】
本発明のなお別の局面は、TCISM−リガンドおよび/もしくはTCISM−レセプターに選択的に結合することによって、サイトカイン生成を変化させるために使用され得るサイトカインモジュレーターを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、マイトジェン刺激したヒトT細胞が単球性THP−1 Mfを誘導して、細胞間接触を介して炎症促進性サイトカインを分泌し得ることを示すグラフである。
【図2】図2は、異なる活性化刺激が、異なるT細胞「TCISM リガンド」活性を誘導することを示すグラフである。
【図3】図3は、ヒト「サイトカインカクテル」が、PBMC由来ヒトT細胞におけるヒトTCISM−リガンド発現を誘導することを示すグラフである。
【図4】図4は、サイトカインカクテルで活性化したヒトPBMC由来Pan CD3+ T細胞が、TNF−aを生成するためにヒトTHP−1細胞を活性化しないことを示すグラフである。
【図5】図5は、上昇したレベルのIL−12(p70)が、TCISM リガンド陽性ヒトCD3+ T細胞との細胞間接触の後に、新たに得られたヒト血液単球によって生成されることを示すグラフである。
【図6】図6は、高度に精製した刺激ヒトHut−78 T細胞膜が、ヒトTHP−1 M細胞を活性化して、TNF−aを分泌することにおいてより有効であることを示すグラフであり、次いで、Hut−78全細胞を1% パラホルムアルデヒドで固定した。
【図7】図7は、PHA/PMA刺激したCD3+ T細胞、Hut−78細胞、H9細胞、Molt4細胞、Jurkat細胞およびRaji細胞において膜タンパク質もしくは膜結合タンパク質をコードする遺伝子のマイクロアレイ2Dクラスターのグラフである。
【図8】図8は、潜在的なヒトT細胞TCISM−リガンド遺伝子候補物の発現レベルを示すともに対数軸の(log−log)「シグネチャー(Signature)」遺伝子グラフである。
【図9】図9は、種々の既知のヒトT細胞膜同時刺激タンパク質を測定する、PMA/PHA刺激Hut−78 T細胞もしくは非刺激Hut−78 T細胞のFACS分析のグラフである。
【図10】図10は、6時間にわたるPMA/PHA刺激Hut−78ヒトT細胞から得られた総RNAの定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)測定である。
【図11】図11は、IFN−g、CD40L、IFN−g+CD40L、IL−15、もしくはIL−15レセプター(IL−15R)に対する中和抗ヒトモノクローナル抗体が、TNF−aもしくはIL−1bの活性化Hut−78 T細胞精製膜由来THP−1 Mφ細胞生成を阻害しないことを示すグラフである。
【図12】図12は、ハイグロマイシン耐性Flp−In 293細胞のFACS分析のグラフである。
【図13】図13は、上記flp−in分子分析手順を使用して、CD40L+IFN−gはTNF−α生成を刺激するが、IL−1β生成を刺激しないことを示すグラフである。
【図14】図14は、いくつかの場合において、LPS刺激TNFαおよびIL−1β生成(すなわち、先天性免疫)に対していかなる効果も有さずに、ヒトMφ(すなわち、適応免疫)T細胞媒介性TNFα生成の阻害を示すグラフである。
【図15】図15は、pという1つの考えられる機構の模式図である。
【図16】図16は、マウスにおけるマウスコラーゲン誘導性関節炎の異なる低分子TNFαインヒビターの評価を示すグラフである。
【図17】図17は、抗TNFa処置マウスおよびIL−1ra処置マウスの効力を示すグラフである。
【図18】図18は、代表的マウスの関節組織病理学のスライドである。
【図19−1】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【図19−2】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【図19−3】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【図19−4】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【図19−5】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【図19−6】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
Tc誘導性Mφ活性化のための活性化機構のうちの1つは、免疫シナプス機構を通じた直接細胞間接触を介していると考えられる。活性化T細胞は、多くの公知の膜結合タンパク質および未知の膜結合タンパク質を発現する。本発明者らは、これら分子(Tcサイトカイン誘導表面分子(すなわち、TCISMもしくはTCISM−リガンド)として本明細書で言及される)のうちのいくつかが、細胞間接触シグナル伝達カスケードに関与し、このことは、Mφに存在する対応するTCISM−レセプターに選択的に結合することによって、炎症促進性サイトカイン誘導をもたらすことを発見した。
【0019】
広範囲の種々の臨床状態は、急性もしくは慢性の炎症(関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群、遺伝性タンパク尿症候群、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫甲状腺炎、肝炎、後天性免疫不全疾患(HIV)、対宿主性移植片病、同異種移植片疾患、喘息、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−I関連皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−II関連リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、突発性CD4+Tリンパ球減少症、および/もしくは黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない)によって媒介される。本発明者らは、Tリンパ球のTCISM−リガンドおよび/もしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合し得るサイトカインモジュレーターを投与するか、またはTCISM−リガンドの転写を阻害することによって(例えば、iRNAもしくはsiRNAによって)、これら臨床状態が、単球系統由来マクロファージにおけるサイトカイン生成を調節することによって処置され得ることを見いだした。
【0020】
本発明のいくつかの局面は、TCISM−リガンド、およびTリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合するサイトカインモジュレーターを投与するか、またはTCISM−リガンドの転写を阻害することによって、被験体の単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるための方法を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態において、TCISM−リガンドは、表1(図19)に列挙される上記TCISM−リガンドのうちの少なくとも1つを含む。これらTCISM−リガンドの対応するTCISM−レセプターは、当業者によって容易に決定され得る。例えば、細胞間接触バイオアッセイを使用して、中和モノクローナル抗体もしくは中和ポリクローナル抗体を使用して、TCISM−リガンド 対 TCISMレセプターの相互作用を阻害することによって。別の方法は、細胞間接触をブロックするモノクローナル抗体を同定するための、刺激および非刺激のHut−78およびH9サブクローンT細胞膜を使用する差し引き免疫(Subtractive Immunization)である。いかなる理論にも束縛されることなく、単球−マクロファージの接触媒介性活性化が、サイトカイン生成を誘導する主要な経路であると考えられている。従って、この機構の変化(例えば、TCISM−リガンドもしくはTCISM−レセプターの発現のレベルの誘発もしくはその発現の阻害(例えば、siRNAを介する)におけるIL−1生成およびTNF−a生成のブロック)は、サイトカイン生成によって媒介される臨床状態を処置するために使用され得る。
【0022】
本発明のいくつかの組成物および方法は、単球系統由来細胞に存在するTCISM−レセプターを選択的に結合し(またはこのようなレセプターの発現もしくは転写を阻害することによって)、それによって、これら単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させることにおいて有用である。単球系統由来細胞は、Tリンパ球によって活性化される場合に、サイトカインを生成する任意の細胞を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、炎症促進性サイトカイン生成を変化させる。
【0023】
サイトカインを生成する例示的単球系統由来細胞としては、単球系統由来マクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、およびクッパー細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の組成物および方法は、TCISM−リガンドもしくはTCISM−レセプターに選択的に結合し得る分子を含む。さらに、本発明の組成物および方法はまた、TCISM−リガンドもしくはTCISM−レセプターの翻訳、転写、および/もしくは発現を変化させ得る分子を含む。例えば、siRNAは、TCISM−リガンドの発現を変化させるために、Tリンパ球に投与され得る。適切なTCISM−リガンドを知ることによって、当業者は、TCISM−リガンドの発現を変化させ得る適切なsiRNAを容易に同定し得る。例えば、全長タンパク質をコードするメッセンジャーRNAに対するsiRNAは、転写の間の不安定性に最も影響を受けやすいmRNAの一部を決定することを可能にする市販のコンピューターソフトウェアで設計され得る。
【0025】
TCISMの上記レベルにおける適応(獲得)免疫の制御は有利である。なぜなら、治療的介入は、細菌の皮膚感染の間に先天性(自然)免疫を可能にするからである。従って、本発明のいくつかの局面は、先天性免疫を実質的に維持しながら、適応免疫もしくは獲得免疫を変化させるための組成物および方法を提供する。
【0026】
本発明の例示的TCISM−リガンド、TCISM−レセプターおよび/もしくはサイトカインモジュレーター化合物としては、以下の式を有する化合物、そのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない:
【0027】
【化1】
再現性の高いかつ確認された細胞間接触バイオアッセイを、初代ヒトT細胞および自己の新たに得られたヒト血液単球、またはヒトT細胞および単球細胞株のいずれかを使用して、確立した。図1は、マイトジェン刺激ヒトT細胞が、単球性THP−1 Mfを誘導して、細胞間接触を介して炎症促進性サイトカインを分泌し得ることを示すグラフである。図1は、24時間および48時間の細胞間接触における、サイトカインの経時的測定である。THP−1 MfにおけるTNF−a生成(左パネル)およびIL−1b生成(右パネル)を、異なるPMA/PHA刺激ヒトT細胞株とともにインキュベートした。単球性株THP−1に由来する細胞を、刺激(「s」)T細胞もしくは非刺激(ns)休止T細胞から高度に精製した膜調製物とともにインキュベートし;サイトカイン生成を、インキュベーションの24時間後もしくは48時間後に測定した。TNF−a生成およびIL−1b生成の顕著な増加を、両方の期間において、sHut−78およびsH9 T細胞とインキュベートしたTHP−1 Mfから検出した。3連の測定での平均±標準偏差を提供する。図1に示されるように、ごくわずかなTNF−a生成およびIL−1b生成の誘導を、PHA/PMA刺激Molt4細胞、Jurkat細胞およびRaji細胞において観察した一方で、休止初代ヒトT細胞においても、非刺激Hut−78細胞、H9細胞、Molt4細胞、Jurkat細胞においても、Raji細胞においても、検出可能な生成は認められなかった。上記PMA/PHA刺激H9細胞、より少ない程度には、上記Hut−78細胞は、TNF−aおよびIL−1bの両方の最高のTHP−1 Mf分泌を誘導することが観察された。このことは、これら細胞がTCISML陽性であることを示す。
【0028】
PMA/PHA刺激は、上記ヒトT細胞に対して顕著なTCISMLの誘導を提供した。なぜなら、上昇したレベルのTNF−aは、24時間の培養期間にわたって、上記培養物中で生成されたからである。図2を参照のこと。図2において、Pan CD3+ T細胞を健康なヒトドナー血液から単離し、37℃で6時間刺激し、洗浄し、1% パラホルムアルデヒド(6時間室温)で固定した。次いで、細胞をPBSですすぎ、RTで一晩保持した。次いで、PBMC由来CD14+ Mfを添加し、37℃で24時間にわたってインキュベートした。細胞培養上清を遠心分離し、濾過滅菌し、ELISAによってサイトカインを測定した。平均±SEMを示す(N=6個体のドナー、三連の測定;非刺激T細胞と比較して、P<0.05)。匹敵するデータを、αCD3/αCD28を用いてインビトロで刺激したT細胞において観察した。全T細胞コントロール培養物単独と比較して、T細胞およびMf同時培養系において、TNF−aのほぼ2倍程度を生成した。
【0029】
図3に示されるように、その結果は、サイトカイン混合物#1(IL2+IL6+TNF−a)もしくはサイトカイン混合物#2(IL15+IL6+TNF−a)が、1:8(血液単球:T細胞)の比率で混合されたときにヒトT細胞を活性化し、ヒト単球を活性化して、上昇したレベル(約100〜250pg/ml)のTNF−aおよびIL−1bを生成し得ることを示す。これらサイトカインレベルは、サイトカイン活性化された、固定T細胞単独によって放出される炎症促進性サイトカインのレベルより顕著に高かった。図3において、Pan CD3+ T細胞を健康なヒトドナーから単離し、37℃で8日間、異なるサイトカインカクテルとともにインキュベートし
【0030】
【化2】
、洗浄し、次いで、新鮮な1% パラホルムアルデヒドで固定した(6時間 RT)。次いで、細胞をPBSですすぎ、RTで一晩維持した。新たに得たヒト血液単球を続いて添加し、上記T細胞とともにインキュベートした(37℃ 24時間)。細胞培養上清を回収し、ELISAによってサイトカインについて測定した。平均±SEMを示す(N=4 個体のドナー、三連の測定)。同一のドナーから精製したPan CD3+ T細胞での2回の別個の実験を、これら知見を確認するために行った。
【0031】
サイトカイン混合物#1もしくはサイトカイン混合物#2のいずれかで刺激したヒトPBMC由来CD3+ T細胞が、ヒトTHP−1細胞を活性化して、TNF−aおよびIL−1bを生成するに十分なTCISMの発現を誘導するか否かもまた、試験した。図4に示されるように、サイトカイン活性化T細胞と合わせたTHP−1細胞は、上昇したレベルのTNF−aの生成を生じたが、その誘導されたサイトカインレベルは、パラホルムアルデヒド固定した、サイトカイン刺激T細胞単独によって誘導されたものより顕著には高くなかった。図4において、Pan CD3+ T細胞を健康なヒトドナーから単離し、37℃で8日間、種々のサイトカインカクテル
【0032】
【化3】
とインキュベートし、洗浄し、次いで、新鮮な4% パラホルムアルデヒドで固定した(6時間 RT)。細胞を続いてPBSですすぎ、RTで一晩維持し、次いで、THP−1細胞に添加した(37℃ 24時間)。細胞培養上清を上記のように回収し、ELISAによってサイトカインについて測定した。平均±SEMを示す。
【0033】
図5に示されるように、健康なヒトボランティアの末梢血から得たPan CD3+ ヒトT細胞を、PMA/PHAもしくはaCD3/aCD28で、6時間にわたってインビトロで刺激し、次いで、新鮮な1% パラホルムアルデヒドで一晩室温において固定した。次に、新たに得たヒト血液単球を組織培養プレートに添加し、37℃において、上記固定したT細胞とともに培養の6時間もしくは24時間にわたってインキュベートした。次いで、上清を上記のように回収し、ELISAによって種々のTh1およびTh2のサイトカインについて測定した。上記PMA/PHA刺激したT細胞は、ヒト血液単球を活性化して、特に、細胞間接触の6時間後に、約1000〜1250pg/mlの間の範囲に及ぶレベルでIL−12(p70)を生成することにおいて強力であった(図4)。同様に、aCD3/aCD28刺激T細胞はまた、より低い程度ではあるが、ヒト血液単球IL−12(p70)放出を活性化するにおいて有効であった。最後に、刺激ヒトT細胞の両方のタイプは、ヒト血液単球を活性化して、これら2つの異なる期間において、IL−1bおよびTNF−aを生成し得た。
【0034】
THP−1細胞を活性化して、TNF−aを生成する能力を、PMA/PHAおよびaCD3/aCD28刺激Hut−78 T細胞膜 対 PMA/PHAおよびaCD3/aCD28刺激Hut−78 T細胞膜で比較した(図6を参照のこと)。上記PMA/PHA刺激Hut−78 T細胞のデータは、例示目的で示す。これら研究を、上記バイオアッセイでの変動を減少させるために、同じHut−78細胞培養ロットで行った。結果は、刺激Hut−78 T細胞精製膜が、THP−1細胞のTNF−a生成をインビトロで誘導することにおいて、1% パラホルムアルデヒドで固定した刺激Hut−78と比較してより有効であったことを示す。Mix and match “add back”実験をまた行って、TCISMが上記精製膜画分に主に存在するが、低速遠心分離工程および高速遠心分離工程の間に、Parbomb細胞上清(例えば、サイトゾル)画分には存在しないことを示した(図6を参照のこと)。図6において、上記のように膜を調製し、細胞間接触バイオアッセイにおいてTHP−1細胞と合わせた。24時間培養の後に、上清を取り出し、遠心分離し、濾過滅菌し、ELISAによってサイトカインについて測定した。平均±SDを示す。
【0035】
「ヒートマップ」を描く特徴的アレイを、図7に示す。これは、PHA/PMA刺激CD3+ T細胞、Hut−78細胞、H9細胞、Molt4細胞、Jurkat細胞およびRaji細胞膜もしくは膜会合タンパク質をコードする遺伝子のマイクロアレイ二次元(2D)クラスターである。>2倍より大きい変化およびP値<0.01を伴う少なくとも4回の実験を行った。図7において、赤色は、遺伝子発現レベル>2.0(すなわち、上のアレイが描くバックグラウンドレベル)を表し、緑色は、遺伝子発現レベル<2.0(すなわち、下のアレイが描くバックグラウンドレベル)を表す。データレビューのコンピューター評価段階の間に、ヒトT細胞膜会合であって、TCISM(+)T細胞株においてアップレギュレートされかつTCISM(−)T細胞株においてダウンレギュレートされた遺伝子のみを考慮した。マイクロアレイ実験から生じる50,000遺伝子のうちの約10,000を試験し、Hut−78細胞およびH9細胞においてアップレギュレートされるが、ヒトMolt−4細胞およびJurkat T細胞においてはアップレギュレートされないT細胞遺伝子に焦点を絞った。
【0036】
約100個の潜在的なヒトT細胞 TCISM候補物の玉石混合のこのリストから、ともに対数軸の強度プロットを生成し、これは、TCISM候補物を同定するために直線スケール上にグラフ化した。これらプロット(例えば、図8を参照のこと)は、「変化なし」、「シグネチャー」、「ダウンレギュレート」、および「アップレギュレート」したT細胞遺伝子産物、を記載し、上記遺伝子産物の相対発現レベルを、アレイプロファイリングの結果全体と比較した。5つの候補ヒトT細胞TCISM遺伝子を同定した:ジフテリア毒素レセプター、もしくはヘパリン結合EGF(DTR、EGFモジュール含有ムチン様ホルモンレセプター2(EMR2)、Adamlysin−17(ADAMもしくはA Disintegrinおよびメタロプロテアーゼ)TNFα変換酵素(TACE、TNFレセプタースーパーファミリー、メンバー9(TNFRSF9もしくはLIGHT)、および刊行された科学文献の総説によって操作された細胞間接触陽性コントロール目的では、TNFRSF5、もしくはCD40リガンド(CD40L)。
【0037】
リアルタイムqRT−PCRを行って、PMA/PHA刺激Hut−78サブクローンT細胞およびH9サブクローンT細胞においてTCISM候補遺伝子発現を確認した(図9を参照のこと)。上記TCISM候補物DTRおよびLIGHTは、両方の遺伝子が刺激Hut−78 T細胞およびH9 T細胞において高発現されたが、Molt−4 T細胞およびJurkat T細胞においても、Raji B細胞においてもアップレギュレートされなかったという点で、予め設定した基準に従った。しかし、TACEおよびEMR2はともに、上記TCISM(−)ヒトRaji B細胞株において高くアップレギュレートされた。FACSもまた使用して、活性化H9細胞上でのこれら分子の存在を確認した(図10を参照のこと)。
【0038】
公知のヒトT細胞表面タンパク質に対する約50の種々の市販の中和モノクローナル抗体を、上記細胞間接触バイオアッセイにおいて試験した(ALCAM、CD6、β2−インテグリン、CD69、CD23、CD40−CD40LおよびLAG−3に対して指向されるmAbを含む)。それらは、評価できるほど、この系において上記炎症促進性サイトカイン生成の約30%を上回って阻害しないことが分かった。観察されたより効率的なポリクローナル抗体調製物のうちの1つは、抗ADAM−17(TACE)であった。これら実験を、市販のポリクローナル抗体を用いて行った。バイオアッセイにおいて非常に特異的な抗CD40L mAbを使用しても、TNF−aサイトカイン生成もIL−1βサイトカイン生成も顕著に阻害しなかった(図11を参照のこと)。図11において、Hut−78細胞を、PMA/PHAで6時間刺激し、その時点で、精製膜を、上記のように調製した。Hut−78膜と示された濃度の抗ヒトmAbを同時培養ウェルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。次いで、最近継代した固有のTHP−1細胞を同時培養ウェルに添加し、37℃で24時間維持した。TNF−aおよびIL−1bのELISAのために、上清を回収した。図11は、各mAb濃度において三連のサイトカイン測定をした、2回の別個の実験を示す。
【0039】
FACS分析によって、トランスフェクトした293細胞(図12)は、それらの細胞表面上に上昇したレベルの上記TCISML遺伝子生成物を一貫して発現することを示した。図12において、pcDNA5/FRT/DTR、EMR2−07(EGF様ドメイン1、2および5を含むアイソフォーム)、もしくはCD40Lを、それぞれ、Flp−In 293細胞およびJurkat細胞へと、p0G44と同時トランスフェクトし、コロニーを、500mg/ml ハイグロマイシン中で選択した。細胞を細胞解離緩衝液で剥離し、FACSによって分析した(抗CD97をEMR2−07に対して交叉反応させ、EMR2−07発現を検出するために使用した)。発現は、数回の細胞培養継代後も安定であった。このことは、上記細胞間接触アッセイにおける使用にそれらが適切であることを示す。最初の実験を、上記細胞間接触アッセイにおいて、上記トランスフェクトした293細胞を使用して行った(図13を参照のこと)。上記DTR構築物およびCD40L構築物は、TNF−a/IL−1bのsHut−78m駆動THP−1誘導を増強することにおいて強力であった(図13)。上記アッセイへの外因性IFN−γの添加は、増強したレベルのCD40L誘導Mf活性化およびその後のTNF−a放出を生じた(図13 左パネル)が、IL−1b放出を生じなかった(図13 右パネル)。上記CD40Lトランスフェクトした293細胞もしくはJurkat細胞でのこれら効果は、再現性が高かった。
【0040】
ヒトT細胞TCISMを、健康なヒトT細胞、ならびに活性なPsおよびPsAを有する患者から得たT細胞の両方において同定した。認められ得るように、上記インビトロ細胞間接触バイオアッセイは、同時培養におけるヒトT細胞とヒトMfとの間の免疫学的シナプス機構を同定するための、非常に再現性の高いヒトサイトカイン「読み取り系(readout system)」である。上記PMA/PHA刺激H9細胞および上記Hut−78細胞は、TNF−aおよびIL−1bの両方のTHP−1分泌を誘導する(これら細胞がTCISM陽性であることを示す)一方で、PHA/PMA刺激したMolt4細胞、Jurkat細胞、Raji細胞および休止初代ヒトT細胞、未刺激のHut−78細胞、H9細胞、Molt4細胞、Jurkat細胞もしくはRaji細胞は、TCISM陰性であることが観察された(図1)。
TCISM候補物を、以下の基準を用いて決定した:(A)膜会合;(B)刺激Hut−78細胞およびH9細胞において2倍より高くアップレギュレートされるが、Molt4細胞、Jurkat細胞およびRaji細胞においてはアップレギュレートされない;および(C)高発現レベルがqRT−PCRおよびFACSによって確認されなければならない。
【0041】
αCD3/αCD28もしくはヒトサイトカインカクテルによりインビトロで刺激した初代T細胞はまた、上記アッセイにおいて炎症促進性サイトカイン(PIC)活性を増強する。PMA/PHAもしくはαCD3/αCD28で刺激したT細胞は、Mf活性化を増強して、IL−12を生成した。IL−12は、乾癬病変において検出された。IL−12は未感作Th細胞におけるIFN−g生成を主に刺激し、Th1応答の発現および安定化においてある役割を果たすと考えられている。
【0042】
正常健康ドナー 対 乾癬患者で、PBMC由来T細胞からマイクロアレイ分析を行って、ヒトMf TCISMRを介して上記ヒトT細胞TCISML分子および炎症および皮膚疾患をもたらすそのシグナル伝達経路を同定した。健康ドナー、PsAおよびCPPs患者に由来するヒトT細胞を使用するマイクロアレイ分析によって、TCISM分子(ジフテリア毒素レセプター(DTR;HB−EGF)およびムチン様上皮増殖因子ファミリーメンバー(EMR4;CD97)を含む)が同定された。多くのTNFファミリーメンバー(4−1BB(TNFSF14)、OX−40、LIGHT(TNFSF9)およびCD40L(CD154;TNFSF5)を含む)のアップレギュレーションもまた観察された。
【0043】
約50の異なる市販の中和モノクローナル抗体を使用して、上記ヒトTCISM候補物を、細胞間接触アッセイによって確認した。多くの場合において、これら試薬は、この系において24〜96時間の期間にわたって上記炎症促進性サイトカイン生成のわずか30%を阻害することがわかった(図11を参照のこと)。「Flip−in」トランスフェクションシステム方法を使用して、上記マイクロアレイ実験(EMR2、DTR、4−1BB、LIGHT、およびCD40Lをふくむ)から5つの最初の候補TCISML遺伝子候補物を同定した。細胞間バイオアッセイにおいて特徴付けた、TCISM陰性293細胞およびJurkat細胞にトランスフェクトしたTCISM候補遺伝子の全長cDNAは、DTRおよびCD40Lが、T細胞駆動Mf TNF−a/IL−1bを増強することにおいて強力であることを示した。上記アッセイへの外因性IFN−gの添加は、増強したレベルのCD40L誘導Mf活性化、およびその後のTNF−a放出を生じたが、IL−1b放出は生じなかった(図12a−bおよび図13)。
【0044】
炎症および皮膚疾患をもたらす上記同定したヒトMf TCISMR(TCISM−レセプター)のうちのいくつかは、DTR、CD97、4−1BB、OX−40、LIGHTおよびCD40Lを含む。TCISM陰性293細胞およびJurkat細胞にトランスフェクトされ、上記細胞間バイオアッセイにおいて特徴付けられたTCISM候補遺伝子の全長cDNAは、DTRおよびCD40Lが、TNFa/IL−1bのT細胞駆動Mf生成を増強することにおいて協力であることを示した。
【0045】
(乾癬)
本発明の1つの特定の局面は、乾癬を処置するための組成物および方法を提供する。乾癬(Ps)は、米国の人口の約2%が罹患している慢性的な皮膚障害である。いかなる理論にも束縛されることなく、そして図15において模式的に例示されるように、Psの病態生理学は、表皮の増殖および分化、脈管形成およびケラチノサイトの過剰増殖、ならびに病変部皮膚への活性化T細胞(Tc)、マクロファージ(Mφ)、樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞(LC)および好中球(PMN)の浸潤を伴うと考えられている。上記活性病変部において生成された炎症促進性サイトカイン(PIC)(腫瘍壊死因子−α(TNFα)、インターロイキン−1β(IL−1β)、およびインターロイキン−32(IL−32)を含む)は、乾癬性関節炎(PsA)およびPsのような疾患において慢性皮膚炎症を誘導かつ維持すると考えられている。Mφを活性化することによるサイトカインのアップレギュレーションは、これら障害の病理を担うと考えられている。T細胞は、Mφ活性化においてある重要な役割を果たすことが示唆された;しかし、Tcサイトカイン(例えば、インターロイキン−4、10、および13(IL−4、IL−10およびIL−13))は、抗炎症の役割を果たすか、またはごく弱くTNFα/IL−1βアップレギュレーションを誘導するかのいずれかであることが示された。Tc誘導性Mφ活性化の活性化機構が、皮膚における免疫シナプス機構を通じた著いく切截傍観接触を介していると考えられている。
【0046】
免疫学的シナプス(IS)は、抗原提示細胞(APC)とT細胞との間の境界で形成され、抗原認識およびT細胞活性化を担う構造であると考えられている。上記ISは、最初に、T細胞とB細胞との間、またはT細胞とMHC含有二次元二重層との間で最初に見いだされた。これは、上記IS中心領域(中心的超分子活性化クラスター(central supramolecular activation cluster)(c−SMAC)といわれる)におけるT細胞レセプター−主要組織適合性遺伝子複合体(TCR-MHC)の蓄積、および白血球機能関連抗原1(LFA−1)-外部IS領域における細胞内接着分子−1(ICAM−1)(末梢(p−)SMAC(pSMAC)といわれる)によって形成されると考えられている。上記成熟ISは、LFA−1、タリン(talin)、VLA−4、ADAPおよび移行レセプターが富化されたpSMACを含むことが示された。上記pSMACはcSMACを取り囲み、cSMACは、TCR、CD4もしくはCD8共レセプター、CD28共刺激分子、CD2、PKCqなどが富化されている。
【0047】
Psの皮膚は、ケラチノサイトの過剰増殖によって特徴付けられ、隆起(ridge)およびpegの肥大したパターンを生じる。皮膚中のケラチノサイト、DC、およびMφは全て、TNFa、IL−1β、およびIL−32を生成することが示された。上記ISは、乾癬性自己抗原特異的皮膚リンパ球抗原(CLA)陽性T細胞活性化を制御する一方で、その重要な分子成分は、TCR、およびそれを取り囲んで、接着分子(例えば、LFA−1)の環(これは、隣接する細胞(例えば、ケラチノサイトもしくはAPC)によって発現されるICAM−1に結合し得る)を含む。従って、上記ISは、治療的アプローチの理論的標的である。例えば、アレファセプト(Alefacept)は、記憶−エフェクターT細胞上のCD2に結合する組換え融合タンパク質であり、記憶−エフェクターT細胞活性化を阻害し、これら細胞の数を低下させる。エファリズマブ(Efalizumab)は、CD11a分子に対するヒト化モノクローナル抗体(Mab)である。CD11aおよびCD18は、LFA−1のサブユニットを構成する。
【0048】
本発明者らは、Mφ活性化を駆動して、炎症促進性サイトカインを生成することによって、皮膚の炎症を媒介するヒトT細胞の表面にTCISMが存在することを示した。TCISMのレベルにおいて適応(獲得)免疫を制御することは有利である。なぜなら、治療的介入は、細菌性皮膚感染の間に先天性免疫を可能にするからである。
【0049】
乾癬は、いくつかの臨床的発現を伴う皮膚の遺伝的障害である。もっともよくあるタイプは、尋常性乾癬(もしくは尋常性乾癬(Plaque Psoriasis)[Ps])であり、これは、身体の特有の部位において慢性的な、再発性の鱗様丘疹として生じる。現在の乾癬治療は、満足いくものではない。Psは、活性化T細胞による皮膚の浸潤およびケラチノサイトの異常な増殖によって特徴付けられる。T細胞、ケラチノサイト、DC、およびLCによる過剰生成の結果として、関連しない皮膚よりもPs病変部においてTNFαの濃度が(Psを有する患者および正常ヒトの両方において)高いことが報告された。
【0050】
(自己免疫疾患)
ヒトにおける自己免疫疾患(例えば、Psおよび乾癬性関節炎(PsA))は、自己抗原発現組織に対して指向される適応性の体液性(自己抗体)応答もしくは細胞性(自己反応性T細胞)応答の診断結果と合わせて、代表的な、しばしば再発する臨床的症状によって特徴付けられる、慢性的な症候群である。重要なヒト自己免疫疾患は、しばしば、ウイルス感染もしくは細菌感染を伴う相互疾患性(co−morbid)であるか、またはウイルス感染もしくは細菌感染によって誘発され、特定のMHC対立遺伝子と関連している。上記先天性免疫系は、上皮の非特異的バリア機能から生殖細胞系列がコードするレセプターの使用を介する病原体の非常に選択的な認識に及ぶ宿主防御の集合を包含する。これら多様な要素の共通する特徴は、感染もしくは組織破壊に対する急速かつ鈍感な応答である。他方では、適応免疫系は、体細胞的に再配置された抗原レセプター遺伝子を使用して、実質的に任意の抗原のレセプターを作り出す。上記適応免疫応答は、速度はより遅いが、縦覧性はより高く、先天性応答を回避するように進化した感染と戦うことができる。
【0051】
上記先天性免疫系は、病原体における保存されたモチーフの認識および細胞ストレスもしくは細胞死の多くの他の指標によって応答する。上記先天性免疫系の細胞性成分としては、DC、単球、Mφ、顆粒球および天然のキラーT細胞(NKT)、ならびに生物とその環境との間の境界を形成する皮膚、肺、および腸の上皮細胞が挙げられる。上記先天性の系の非細胞性要素は、非常に多様であり、角質層の単純なバリア機能から補体カスケードのような複雑な経路まで及ぶ。これら要素は、物理的妨害を介して病原体の進入を防止するか、または一旦細胞が進入しても、直接もしくは触細胞を介して病原体を破壊することを可能にする。上記先天性の免疫系はまた、病原体の多くのクラスに共通する分子パターンを認識するように進化した。これらは、病原体関連分子パターン(PAMP)といわれる。PAMP認識は、生殖細胞系列がコードした進化的に保存されている病原体認識レセプター(PRR)のグループを使用して終わる。上記Toll様レセプター(TLR)は、病原体レセプターの非常に重要なグループであり、それらは、先天性免疫細胞上で、そして種々の組織中の細胞(内皮細胞、上皮細胞および線維芽細胞を含む)上で発現される。種々の微生物の分子に特異的な10個のTLRファミリーメンバーは、ヒトにおいて同定された。それらの微生物のリガンドへのTLRの結合は、食細胞の活性化、ならびに炎症促進性サイトカインの放出および抗微生物ペプチドをもたらす。これら分子は、同様に、DCを活性化して、適応免疫応答を開始すると考えられている。
【0052】
T細胞は、免疫応答において重要であり、それらの移動パターンおよび機能的能力に基づいて、多くの特徴的なサブセットに分けられ得る。未感作T細胞は、血液とリンパ節との間を主に再循環し、パターンは、ホーミングレセプターであるL−セレクチンおよびCCR7の発現によって補助される。未感作T細胞は、多能性状態に維持され、血液からリンパ系器官を通って再循環し、MHC−ペプチド複合体を活性化するためにDCを精査するので、比較的無活動のエフェクタープログラムを有する。活性化DCからおよびサイトカイン環境からのシグナルを統合する複雑な機構を介して、未感作T細胞は、別個の病原体の群に直面するために必要なエフェクターサイトカインを分泌する能力と密接に関連する急速な分裂ラウンドを介して駆動される。CD4+ Tヘルパー細胞は、Th1(インターフェロン[IFN]γ分泌)サブユニットおよびTh2(インターロイキン[IL]−4分泌)サブユニット、ならびに近年同定されたさらなるThサブユニット(Tr1(IL−10分泌)細胞、Th3(トランスホーミング増殖因子[TGF]β生成)細胞、ThFH(濾胞性ヘルパー細胞)細胞、末梢で誘導されるT調節性(Treg;FoxP3陽性)細胞およびTh17(IL−17A生成)細胞を含む)へと機能的に分裂させられ得る。さらなるサブセットの発見は、エフェクター機能に関与するシグネチャーサイトカイン遺伝子を改変する機構に影響を及ぼす可能性が高い、根底にある調節性転写因子の同定において確実に興味をかき立てる。
【0053】
免疫学的シナプス(IS)は、抗原提示細胞とT細胞との間の境界で形成され、そして抗原認識およびT細胞活性化を担う構造であると考えられている。上記ISは、最初に、T細胞とB細胞との間、またはT細胞とMHC含有二次元二重層との間で見いだされた。これは、上記IS中心領域(中心的超分子活性化クラスター(central supramolecular activation cluster)(c−SMAC)といわれる)におけるT細胞レセプター−主要組織適合性遺伝子複合体(TCR-MHC)の蓄積、および白血球機能関連抗原1(LFA−1)-外部IS領域における細胞内接着分子−1(ICAM−1)(末梢(p−)SMAC(pSMAC)といわれる)によって形成されると考えられている。上記成熟シナプスは、LFA−1、タリン(talin)、VLA−4、ADAPおよび移行レセプターが富化されたpSMACを含む。上記pSMACはcSMACを取り囲み、cSMACは、TCR、CD4もしくはCD8共レセプター、CD28共刺激分子、CD2、PKCθなどが富化されている。
【0054】
上記APCの表面上で発現されるリガンドは、上記IS接触部位へ特異的レセプターを補充すると考えられる。上記シナプスへの共刺激分子CD28および細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)の補充は、上記APC上でのそれらのリガンド(B7−1およびB7−2)の発現によって差次的に促進される。CD28およびCTLA4は、上記APC上で発現される場合にこれらリガンドのいずれを結合するが、B7−2はCD28を上記シナプスに補充し、そしてB7−1はCTLA4を上記シナプスに補充した。上記APC上の接触部位におけるリガンドの安定性もまた重要である。なぜなら、CD28、CTLA−4およびプロテインキナーゼC−qの補充は、B7−1の細胞質ドメインの存在を要する。
【0055】
乾癬性の皮膚は、ケラチノサイトの過剰増殖によって特徴付けられ、肥大したパターンを生じる。皮膚中のケラチノサイト、DC、およびMφは全て、TNFaを生成し得る。上記ISは、乾癬性自己抗原特異的皮膚リンパ球抗原(CLA)陽性T細胞活性化を制御する一方で、その重要な分子成分のいくつかは、TCR、およびそれを取り囲んで、接着分子(例えば、LFA−1)の環(これは、隣接する細胞(例えば、ケラチノサイトもしくはAPC)によって発現されるICAM−1に結合し得る)を含む。上記シナプスのLFA−1成分は、この接着相互作用を妨害する乾癬において治療剤(抗LFA−1抗体;エファリズマブ)として重要であると考えられており、感染の処置について米国食品医薬品局(FDA)によって認可されている。さらに寄与する分子(他の接着分子および共刺激分子を含む)はまた、T細胞応答性に影響を及ぼす(例えば、細胞表面分子対CD2:LFA−3およびCD28:CD80/CD86)。
【0056】
(関節リウマチ)
関節リウマチ(RA)は、ISシグナル伝達にも関連する炎症性疾患である。RAの処置の潜在的アプローチのうちの1つは、T細胞と抗原提示細胞との間のISにおいて存在する分子の阻害を含む。サイトカインアップレギュレーションの機構が、接触依存性であると考えられる。これら機能を媒介し得る細胞表面上には複数の候補タンパク質が存在する。
【0057】
T細胞レセプター複合体を介して活性化されたT細胞が単球のIL−10合成を誘導することが示されてきた。このことは、内因性TNFαおよびIL−1レベルに特に依存し、T細胞膜TNFαは、重要な接触媒介性シグナルであることが示された。しかし、IL−10合成は、TNFαおよびIL−1が中和される場合になお生じるので、このことは、IL−10合成に必要とされるTNF/IL−1非依存性シグナルが存在することを示す。
【0058】
TNF/TNF−Rファミリーのメンバー(CD40、CD27、CD30、OX−40、およびLTβを含む)は特に重要である。これらTNF−R分子のリガンドは、T細胞活性化の際にアップレギュレートされると考えられており、さらに、CD40L、4−1BB、CD27L、CD30は、活性化後に可溶性メディエーターとして放出されると考えられている。CD40LとCD40との間の相互作用は、T細胞と単球との相互作用の後にIL−1合成およびIL−12合成の両方を誘導するために重要であり、より近年になって、抗CD3刺激T細胞との相互作用の際にヒトミクログリア細胞によってIL−10生成を媒介することが観察された。
【0059】
(T細胞免疫グロブリンムチンタンパク質)
上記T細胞免疫グロブリンムチン(TIM)タンパク質は、共通する構造モチーフを含む、T細胞上で発現されるI型膜糖タンパク質である。上記TIM遺伝子ファミリーは、マウスにおいて第11染色体に、およびヒトにおいて5q33に位置する。ゲノム分析によって、マウスにおいて8つのファミリーメンバー(TIM−1〜TIM−8)が、およびヒトにおいて3つのファミリーメンバー(TIM−1、TIM−3およびTIM−4)が同定された。全てのメンバーは、IgV、ムチン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む特徴的構造を共有する。この遺伝子ファミリーは、免疫応答の調節においてある役割を果たす。
【0060】
TIM−1(以前は、A型肝炎ウイルスレセプターとして同定された)は、T細胞拡大およびサイトカイン生成を共刺激する。TIM−1は、全ての活性化T細胞上で、およびCD4+ T細胞偏り(polarization)の際に、Th1細胞上よりも高いレベルで、Th2上で発現される。作動性モノクローナル抗TIM−1抗体(3B3)は、ペプチドとAPCもしくはCD3およびCD28に対して交差連結する抗体のいずれかと培養したときに、T細胞をインビトロで共刺激することが示された。免疫応答の間にインビボで投与したときに、抗TIM−1抗体は、抗原性再刺激の非存在下ですら、T細胞増殖をインビトロで増強した。これはまた、コントロール処置と比較して、Th1およびTh2両方の基本型サイトカインの生成を増大した。さらに、抗TIM−1抗体は、高用量耐性の誘導を排除し、マウスを免疫しかつ抗原を鼻内チャレンジしたときに、AHRを回復させることができた。従って、TIM−1は、全てのT細胞のための共刺激分子として作用すると推測され、おそらく、Th1細胞よりTh2細胞上でより強い効果を有する。
【0061】
TIM−3が、Th2細胞と比較して、インビトロで偏ったヒトCD4+ Th1細胞上で優先的に発現されることを実証した。従って、TIM−3発現は、ヒトTh1細胞を同定するために使用され得る。さらに、TIM−3は、インビボでTh1細胞の調節に寄与すると考えられている。例えば、TIM−3特異的抗体の実験的自己免疫脳炎(EAE)モデルのマウスへの投与は、EAEのTh1駆動性進行の加速を生じた。さらに、抗TIM−3抗体は、MφとT細胞との間の同族の(cognate)相互作用が必要とされる、Mφ活性化およびクローン性T細胞拡大を誘導した。これらデータは、T細胞によってMφの活性化を負に調節することにおいてTIM−3の役割を示すようである。TIM−3/TIM−3リガンド相互作用はまた、耐性においてある役割を果たす。全長TIM−3 Ig融合タンパク質および可溶性TIM−3 Ig融合タンパク質の両方でのマウスの処置は、高用量水溶性抗原を使用して誘導された耐性を排除する。同様に、TIM−3欠損性マウスは、耐えることができない。実際に、Ig融合タンパク質処置マウスおよびTIM−3欠損性マウスの両方が、コントロールと比較して増大したT細胞増殖および高用量水溶性抗原の投与後のIL−2の生成を示した。
【0062】
TIM−4は、TIM−1の天然のリガンドであると考えられている。他のTIM分子とは異なり、TIM−4は、T細胞において発現されないようであるが、代わりに、APC(特に、成熟リンパ系DS)において発現されるようである。Th1 T細胞駆動Mφ活性化を媒介する、正に調節するTIM様ファミリー分子は、今日までのところ発見されていなかった。本発明者らは、TIM−1もTIM−3も、PMA/イオノマイシン活性化H9もしくは初代ヒトCD3+ T細胞においてアップレギュレートされないことを示した。
【0063】
(免疫学的シナプスに関与する細胞質タンパク質、膜タンパク質、および核タンパク質を同定するためのプロテオミクス的アプローチ)
プロテオミクス技術は、疾患のバイオマーカーおよびバイオシグネチャーを特徴付けかつ機能的な下位プロテオーム(subproteome)およびネットワークに関する情報を明らかにするために使用され得る。多くのプロテオミクス的適用は、疾患、傷害、もしくは薬物に応じて変化する下位システムについての一般的情報を提供するが、プロテオミクスはまた、生化学的応答(例えば、MAPKシグナル伝達、化学走性、黒色腫の腫瘍形成および転移、ならびにMHCクラスII誘導性細胞死など)に関与する以前に特徴付けられていなかったタンパク質を同定するために使用され得る。二次元ゲル電気泳動(2DGE)と質量分析法の組み合わせは、プロテオミクス適用のために使用される分析技術のうちの1つである。直列式質量分析法(tandem mass spectrometry)および進んだデータベース検索アルゴリズムを介してタンパク質の直接的かつ偏りのない同定と組み合わせた2DGEの定量的能力は、細胞システム、原形質、皮膚などにおけるタンパク質発現変化のプロフィールに対処する優れた技術プラットフォームを提供する。補完的な探査プラットフォームは、多次元のクロマトグラフィーによるタンパク質およびペプチド分離、続いて、直列式質量分析法およびタンパク質同定のためのデータベース検索である。選択された反応モニタリングはその後、関連する分子を定量するために使用される。
【0064】
(宿主防御および炎症疾患)
炎症促進性のpleotrophicサイトカインTNFαおよびIL−1βは、宿主防御および炎症性疾患プロセスにおいて重要な役割を果たしている。TNFαおよびIL−1βの過剰発現は、Ps疾患標的組織および炎症性皮膚疾患を有する患者の循環において見いだされた。T細胞および単球−Mφの主要な機能のうちの1つは、種々のサイトカイン(IL−1bおよび/もしくはTNFaを含む)を放出することである。これら分子は、続いて、下流部分(例えば、IL−32(ケラチノサイトおよびMφによって生成される))の誘導および放出に関与し、最終的には、ケラチノサイトの過剰増殖およびPsの発症がもたらされる。いかなる理論にも束縛されることなく、より遠位のレベルで(例えば、T細胞駆動単球−Mφ活性化のレベルで)これらサイトカインの生成をブロックすることは、おそらく、適応応答および/もしくはIS形成の間の種々の期間に、これらサイトカインを特異的に阻害するように設計された新たな分子薬物探索標的をもたらし得、Ps患者にとってあまり有害でない事象でより安全な治療剤を生じると考えられる。
【0065】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、以下の実施例(限定であるとは意図されない)の試験に際して、当業者にとって明らかになる。
【実施例】
【0066】
(細部株の培養)
ヒト細胞株は、RPMI 1640(Biochrom,Berlin,Germany)(10%(v/v) FCS血清、2mM L−グルタミン、100単位/ml ペニシリンおよび100単位/ml ストレプトマイシンを補充)からなる標準培地中で培養した。Hut78細胞株、H9細胞株、Molt4細胞株、Jurkat細胞株、Raji細胞株およびTHP−1細胞株を、ATCCから入手した。
【0067】
(細胞単離)
末梢血単核細胞(PBMC)。PBMCを、Ficoll密度勾配遠心分離によって単離した。得られたPBMCの生存性は、トリパンブルー染色によって決定した場合、>95%であった。その生存細胞を、Neubauerチャンバ(Zeiss,Oberkochen,Germany)中で定量し、液体窒素中で保存した。
【0068】
(CD3+ T細胞)
融解したPBMCを、1,500rpmで5分間、再度遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを、MACS緩衝液中に再懸濁した。その細胞を、108個の細胞あたり0.8mlの緩衝液の濃度で、単一の細胞懸濁物へと破壊した。108個の細胞あたり約0.2mlのハプテン−抗体カクテルを添加した。その得られた混合物を十分に混合し、20分間氷上でインキュベートした。20×表示容積(labelling volume)を添加し、遠心分離し、上清除去によって細胞を洗浄した。細胞ペレットを、108個の細胞あたり0.8mlの緩衝液中に再懸濁した。108個の細胞あた約0.2mlのMACS抗ハプテンマイクロビーズを、細胞を磁性的に標識刷るために添加した。上記混合物を氷上で15分間インキュベートし、その容積の20倍で洗浄し(Leukophoresis packからの凍結細胞を、45μmメッシュフィルタに通して、塊になった死細胞を除去した)、遠心分離し、上清を廃棄した。細胞を、108個の細胞あたり1mlのMACS緩衝液中に再懸濁し、LS+カラムを、適切なMACS分離器の磁場中に配置した。上記カラムを、3mlの緩衝液で洗浄することによって調製した。上記細胞懸濁物を、上記カラムに載せ、その非標識細胞を通過させた。その溶離液を陰性画分として回収した。これは、富化T細胞画分を表した。上記カラムを4×3mlの緩衝液ですすぎ、溶離液を回収した。細胞を洗浄した後、その細胞ペレットを、106個細胞/mlの濃度で50mlの組織培養培地中に懸濁した。CD3−FITC標識およびFACS分析によって、T細胞純度(>95%)を決定した。
【0069】
(単球)
方法は、CD3+ T細胞分離と同じであった。
【0070】
(細胞の免疫表現系分類)
回収した細胞を、FACS培地[1% ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)]中で洗浄し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)もしくはフィコエリトリン(PE)と直接結合体化させた抗体によって、4℃で20分間染色した。その後、細胞をPBSで3回洗浄し、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を使用するFACScan(Becton Dickinson,Heidelberg,Germany)によって分析した。抗体は以下のとおりであった:PE標識抗マウスIgG、抗ヒトCD40LおよびCD137。
【0071】
(細胞間接触アッセイ)
初代T細胞もしくはH9細胞を、冷PBSで洗浄し、細胞ペレットを、5×106個細胞/mlにおいて新たに作製した1% パラホルムアルデヒド中で再懸濁した。細胞を氷上で2時間固定し、次いで、20×容積の冷PBSで3回洗浄した。3回目の洗浄の後、上記細胞をPBS中、4℃で一晩維持して、パラホルムアルデヒドを拡散させた。細胞を遠心分離し、さらにもう1回洗浄した。上記固定したT細胞を、1×107個細胞/mlにおいて、培地中で再懸濁し、約1×106/ml THP−1細胞において、100μl/ウェルで96ウェルU底プレートへと分与した。初代T細胞もしくはH9細胞(100μl/ウェル)を、8×106個細胞/ml、4×106個細胞/ml、および2×106個細胞/mlで添加した。上記プレートを、加湿5% CO2中で48時間にわたって、37℃でインキュベートした。プレートを、1,500rpmで5分間遠心分離し、上清(120μl)を新たなプレートに移した。上記上清を、使用するまで−20℃で保存した。
【0072】
(Hut−78形質膜調製)
約5×108個の刺激もしくは非刺激Hut−78細胞を、10mlの低張性緩衝液(プロテアーゼインヒビター(50mM Tris−Cl(pH7.4)、25mM KCl、5mM MgCl2、200μM PMSF、1×完全プロテアーゼインヒビターを含む))中に懸濁し、氷上で20往復することによって、ダウンスホモジナイザーを使用してホモジナイズした。上記核および壊れなかった細胞画分を、4000×g、4℃、15分間の遠心分離によって廃棄し、その上清を、4℃で45分間、SW40ローターを用いて28K(100,000×g)で超遠心分離した。その膜ペレットを、22Gシリンジ針を使用して9mlのPBS中に再懸濁し、次いで、1mlの200mM CHAPSに添加した。そのホモジネートを、氷上で1時間インキュベートした。5×107個細胞当量/mlの懸濁した形質膜の約1mlのアリコートを、−80℃で保存した。
【0073】
(RNAサンプル調製およびハイブリダイゼーション)
RNAを抽出し、RNeasy MinEluteキット(Qiagen)およびQiagen Mini RNeasyキットを使用して、製造業者のプロトコルに従って精製した。cDNA合成を、発現分析技術マニュアル(Affymetrix,2サイクルプロトコル)中に記載されるように、各サンプルにつき100ngの総RNAを使用して行った。そのcRNA反応を、BioArray High−Yield Transcript Labelingキット(Enzo)を使用して行った。15μgの標識cRNAをフラグメント化し、製造業者の指示に従って、連続してGAPSスライド(Corning)にハイブリダイズさせた。
【0074】
(Flp−Inトランスフェクション)
安定なTCISM リガンド(TCISML)陰性T細胞株を樹立し、マイクロアレイ実験から同定されたTCISML候補遺伝子(EMR2、DTR、4−1BB、LIGHT、およびCD40Lを含む)のcDNAでトランスフェクトした。Flp−Inリコンビナーゼを利用する「Flp−In」法として公知のトランスフェクションシステムを、製造業者のプロトコルに従って利用した。8つの異なる構築物(pcDNA5/FRT/EGFドメイン2および5を含むEMR−2−04;pcDNA5/FRT/EGFドメイン1、2および5を含むEMR−2−05;pcDNA5/FRT/EGFドメイン1、2および5を含むEMR−02−07;pcDNA/FRT/DTR;pcDNA3/4−1BB;pcDNA5/FRT/LIGHT;pcDNA5/FRT/CD40L;およびpcDNA5/FRTコントロール)を、接着性293細胞(接着性細胞コントロール)もしくはTCISM陰性Jurkat細胞を使用して調製した。
【0075】
(低分子アッセイ)
T細胞膜−Mφ細胞接触バイオアッセイを使用して、末梢血に存在するCD14+ Mφからの抗CD3/抗CD28活性化T細胞媒介性であるが、LPS刺激性でないTNFαおよびIL−1β生成を差次的にブロックする低分子アンタゴニストを同定した。いくつかのキナーゼインヒビターを選択し、確認されたT細胞膜−Mφ接触バイオアッセイを使用して、これら化合物が、TNFαおよび/もしくはIL−1β生成をブロックすることにおける効果を確認した。化合物C(p38 MAPキナーゼインヒビター)が、ヒトMφからのT細胞媒介性TNFα生成を、LPS刺激性TNFαおよびIL−1β生成に対して何ら顕著な効果を有さずに阻害するよいうであることが実証された(図14を参照のこと)。他の化合物Cアナログは、活性化T細胞膜刺激性およびLPS刺激性のMφの両方からのTNFαおよびIL−1β生成をほぼ同程度にまで(約50〜100% 阻害)阻害したか、またはLPS刺激性Mφ活性化によるサイトカイン生成の低い阻害(T細胞媒介性サイトカイン生成の約100%阻害に対して、LPS活性化の約30〜50%阻害)を示したかのいずれかであった。従って、ヒトT細胞およびMφを使用する上記活性化T細胞膜−Mφ接触バイオアッセイは、(一旦同定されかつクローニングされたら)組換えTCISMを用いてハイスループットスクリーニングを確立して、適合性であるが、LPS媒介性ではない先天性免疫を特異的に標的化する、経口的に活性な低分子アンタゴニストを同定するために使用され得る。T細胞媒介性Mφ活性化を特異的に妨害して、増強されたサイトカイン生成をもたらすが、LPS媒介性Mφサイトカイン放出をもたらさないいくつかの経口的に活性な低分子TNFαおよび/もしくはIL−1βインヒビターは、T細胞媒介性皮膚疾患(例えば、Ps)において都合のよい治療効果/副作用プロフィールを有する。
【0076】
(データ分析)
統計学的評価を、統計ソフトウェア「SIGMASTAT」(SIGMAPLOT V.9(Systat Software,San Jose,CA)のツール)で行った。siRNAおよび/もしくは低分子化合物を使用してノックアウトした活性化H9細胞のグループ、ならびに活性化H9細胞のグループにおけるサイトカインの濃度を、スチューデンドT検定を用いて比較した。全ての比較の有意レベルを、0.05の共通標準に設定した。
【0077】
(統計学的考慮事項)
コントロール細胞と、刺激細胞と、潜在的TCISM候補物の発現がsiRNAおよび/もしくは低分子化合物を使用してノックアウトされた刺激細胞との間で本発明者らのバイオアッセイの読み取り値を比較することによって、上記候補タンパク質を容易に確認し得る。
【0078】
低分子化合物を使用することの利点の1つは、TCISMのp38シグナル伝達経路活性を解明することができる能力およびTCISMを阻害するための経口的に活性な薬剤であることである。
【0079】
(TCISMリガンド候補物の同定)
上記細胞間接触バイオアッセイは、TCISMLが、PMA/PHA刺激した初代T細胞、Hut−78細胞およびH9細胞から得られた精製膜上で高く発現されているが、Molt4細胞、Jurkat細胞、RAJI B細胞では発現されていないことを示した。18個の別個のTCISML(+) 対 TCISML(−)比較条件を用いる活性化細胞 対 非活性化細胞からの発現プロファイリングデータは、これら種々の細胞株間での遺伝子発現の有意な差異を示した。コンピューター評価は、TCISM分子がTCISML(+)T細胞株においてアップレギュレートされ、TCISML(−)T細胞株においてダウンレギュレートされることを示した。マイクロアレイ実験から生じた50,000遺伝子のうちの約10,000を、全体的に試験した。TCISML候補物を、以下の3つの基準を用いて決定した:(1)それらが膜会合である;(2)それらが、刺激Hut−78細胞およびH9細胞において2倍より高くアップレギュレートされるが、Molt4細胞、Jurkat細胞およびRaji細胞においてアップレギュレートされない;および(3)それらの発現レベルがqRT−PCRによって確認される。その後のデータ分析は、10,000個の遺伝子の全体的な列挙を、100個あたりの膜会合タンパク質の列挙に減らした。ともに対数軸の強度プロットは、以下の5つの候補ヒトT細胞TCISML遺伝子を同定した:ジフテリア毒素レセプター、もしくはヘパリン結合EGF(DTRもしくはHB−EGF)、EGFモジュール含有ムチン様ホルモンレセプター2(EMR2;CD97)、4−1BB(TNFRSF14)、OX−40(CD134)、TNFレセプタースーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9もしくはLIGHT;CD248)、およびCD40リガンド(CD40L;TNFRSF5)。FACsを使用して、活性化H9細胞上でのこれら分子の存在を確認した。qRT−PCRも利用して、これら遺伝子がTCISM候補物であるか否かを決定した。
【0080】
刺激および非刺激のH9細胞の膜調製物に由来するタンパク質を、一次元において、11cmのIPGストリップ(pH4〜6)を使用して、および二次元において、10.5〜14% 勾配SDS−PAGEゲルを使用して分離した。その標識されたスポット(少なくとも1.5倍の発現の変化を表す(ImageMasterでの分析によって))を切り出し、トリプシンを用いて消化し、次いで、Agilent Ultra高性能イオントラップ上のでナノLC/MS/MSによって分析した。
【0081】
(ゲル分析)
脱色および水ですすいだ後に、200ピクセル解像度のTyphoon 9400 Fluorescent Scanner(GE Healthcare)で画像化を行った。上記刺激調製物および非刺激調製物におけるタンパク質スポットを、IMAGE−Master platinum IIソフトウェアバージョン5.0(GE Healthcare)を用いて以下のようにマッチさせた。
【0082】
各タンパク質スポットの強度(三次元容積)を、ゲル上で検出された全てのスポットの合計の強度に対して正規化した。平均1500個のタンパク質スポット/ゲルを生じた検出閾値を、上記ゲルを比較する前に個々に調節した。上記条件間での見かけ上のスポット強度の変化は、スポットの切り出しのために使用される基準であり、質量分析法によってその後の同定を行った。目的のスポットを、1.5mmの小片で、OneTouch Plus Spot Picker(The Gel Company)を用いて切り出した。
【0083】
(ゲル中消化)
タンパク質を、上記ゲル中でトリプシンを用いて消化した。簡潔には、少なくとも2回の繰り返しからのスポットを組み合わせ、そして1/1 アセトニトリルおよび100mM 重炭酸アンモニウムで1回脱色し、次いで、100% アセトニトリルで濃縮し、真空乾燥した。スポットを25ng/μl トリプシンで再水和し、37℃で一晩インキュベートした。その上清を回収し、1% 蟻酸(水溶液)と30% アセトニトリルを用いる2つのさらなる抽出物とプールした。プールした抽出物を、真空濃縮して、約10μLにし、使用するまで−80℃で保存した。
【0084】
(トリプシン消化物のLC/MS/MS分析)
ゲル消化サンプルのうちの約30%を、逆相ナノスプレーLC−MS/MS(Agilent 1100 HPLC,75μm ID×15cm カラム,Zorbax C18)によって分析した。緩衝液Aは、0.1% 蟻酸であった。ペプチドを、漸増する緩衝液B(90% ACN、0.1% 蟻酸)の勾配および流速300nl/分を使用して、上記分離カラムから質量分析計へと溶出した。スペクトルを、350〜1800Daのm/z範囲に対して集めた(Agilent LC/MSD Trap XCT Ultra)。3つのMS/MSスペクトルを6つに最も豊富なm/z値について集め、次いで、それらの質量を1分間にわたって分析から排除し、次の6つの最も豊富なm/z値をフラグメント化のために選択した。
【0085】
(データベース検索を使用するタンパク質同定)
タンパク質を、タンパク質を、Mascot(Matrix Science)プログラムおよびSpectrum Mill(Agilent)プログラムの両方を使用して、NCBInr、およびSwissProtデータベースを検索することによって同定した。Mascotについては、その得られたスペクトルの化合物リストは、5回のスキャン内でグループ分けして、強度閾値10,000および最大0.2%相対量を使用して生成した。上記化合物リストは、.mgfファイルとしてエクスポートし、ヒトの分類フィルタを使用してデータベースに対して検索した。データベース検索において使用されるパラメーターは、以下のとおりであった:モノアイソトピック(monoisotopic)質量、ペプチド質量許容差2.0Da、フラグメントイオン質量許容差0.7Da、2つの損なった(missed)切断のみを許容するトリプシン処理ペプチド、固定化改変としてCysのカルバミドメチル化、ならびに変動性改変として脱アミド化(N,Q)およびアセチル化(K)。同様のパラメーターを、SpectrumMill検索のために使用した。10を上回るペプチドスコアを有し、70%を上回る%強度(SPI)のスコアを有する、13を上回るSpectrumMillタンパク質スコアは、初期ヒット確認のためのカットオフであった。確実なタンパク質同定は、少なくとも2つのペプチドマッチを要した。分子量およびpI値は、ゲルから相関させて、同定の実証を助けた。
【0086】
(皮膚炎症に関連したTCISMの同定)
ヒトT細胞リンパ腫H9細胞を、PMA/イオノマイシンで刺激した。細胞をカオトロピック溶解緩衝液(7M 尿素、2M チオ尿素、4% CHAPS)を使用して溶解し、膜タンパク質を、市販の膜タンパク質抽出キットを使用して単離した。サンプル(200μg)を、11cmのpH4−7 IPGストリップ上に載せ、SDS pageによる分離の前に、30,000 Vhrで焦点を合わせた。スポットをマッチさせ、相対量を、ImageMasterソフトウェアを使用して測定した。刺激サンプルと非刺激サンプルとの間で2倍より大きい変化を示すタンパク質を切り出し、トリプシンでゲル中消化し、Agilent Ultraイオントラップを使用してナノLC/MS/MSによって分析した。SpectrumMillアルゴリズムおよびMASCOTアルゴリズムを使用してタンパク質を同定した。ウェスタンブロット、siRNAノックダウン、および細胞間接触バイオアッセイを使用して、タンパク質同定、量および機能を確認した。
【0087】
全細胞溶解物もしくは膜分画サンプルからの約30個のタンパク質スポットは、本発明者らの予備実験における発現で少なくとも2倍変化することが観察され、nLC/MS/MSによって同定した。これらのうち、5つの潜在的候補物を、ヒトT細胞−アネキシンVI、エノラーゼ、FKBP4、CD81、CD316およびエズリンにおけるそれらの潜在的機能にさらに基づいて、調査した。これらタンパク質のウェスタンブロットによって、FKBP4およびエズリンの発現が、T細胞の活性化後に顕著に増大したのに対して、エノラーゼの発現は、減少したようであることが示された。アネキシンVI、CD81およびCD316の発現は、PMA/イオノマイシン処置後に変化しなかった。FKBP4およびエズリンは特に重要であった。FKBP(もしくはFK506結合タンパク質)は、プロリン残基を含むタンパク質についてのタンパク質折りたたみシャペロンとして機能するプロリルイソメラーゼ活性を有するイムノフィリン(immunophilin)であると考えられている。これはまた、免疫抑制分子タクロリムス(もともとは、FK506と称されていた)を結合し、タクロリムスは、自己免疫障害に罹患している患者を処置するために使用される。上記FBKP−タクロリムス複合体は、カルシニューリンを阻害し、Tリンパ球形質導入経路におけるシグナル伝達を、おそらく、インターフェロン調節因子−4(IRF−4)へのFKBP4の結合を妨害することによって、ブロックする。エズリンは、プロリンリッチ領域を有するアクチン結合タンパク質であると考えられる。エズリンは、ホスホイノシチド脂質によって調節されると考えられ、そしてLckチロシンキナーゼのついての基質であると考えられる。近年になって、リン酸化エズリンは、SLEを有する患者におけるT細胞偏りの増大、接着および移動を担うことが分かった。エズリンはまた、皮膚へのT細胞浸潤を媒介し、乾癬をもたらす皮膚炎症を生じる重要なタンパク質のうちの1つであると考えられている。
【0088】
本発明者らはまた、Alefacept(Amevive;Biogen−Idec)およびエファリズマブ(Raptiva;Genentech)(2つの現在市販されている乾癬処置)が上記モデル系においてT細胞駆動Mφサイトカイン生成を阻害しないことを示した。これら薬剤の機構は、機能不全の免疫シナプス(IS)形成を媒介することによって、ヒトT細胞の亜集団を選択的に不活性化すると報告された。いかなる理論にも束縛されることなく、いくつかの場合において、イムノフィリン(FKBP4が挙げられるが、これらに限定されない)は、シナプス相互作用を維持し、上記ISを介する有効なシグナル伝達を媒介するための足場タンパク質として機能し得ると考えられている。これらT細胞標的の機能的役割は、siRNAノックダウンおよびECLを使用するサイトカイン読み取りのための細胞間接触バイオアッセイを使用することによって、容易に評価され得る。
【0089】
(インビボでの関節炎研究)
マウスに、CII+CFAを0日目に免疫し、21日目にCII+IFAを追加免疫した。1群あたり合計10匹のDBA雌性マウスを使用した。示されるように薬物を投与し、足の腫脹/関節炎の最初の徴候の1日目に開始した。各群に、以下の表に示されるように種々のTCISMモジュレーターを投与した。平均関節炎スコア(以下のデータを参照のこと)を、Bendeleら,Arthritis & Rheumatism,2000,43(12),pp 2648−2659の手順に従って評価した。図16は、種々のTCISM−リガンドモジュレーターの時間の関数として平均関節炎スコアのグラフを示す。図17は、コントロール(Rat IgG,HA)、抗TNFa処置マウス、およびIL−1ra処置マウスを示すグラフを示す。図17において、ラット抗マウスTNFαモノクローナル抗体(R&D Systems)をポジティブコントロールとして使用して、TNFαもしくはIL−1ra(インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト;Amgen)として公知のIL−1インヒビターを阻害するという治療効果を実証した。マウスを、コラーゲン誘導性関節炎の徴候を示した後に8日間処置した。
【0090】
図18は、代表的なマウスの関節組織病理である。図18において、パネルAは、アイソタイプコントロールラット抗マウスMAb(陰性コントロール)で処置したコラーゲン誘導性関節炎を有するDBAマウスから得た膝関節を示し、このコントロール処置の過程にわたって炎症が生じなかったことを示す。パネルBは、最小の炎症が、上記陰性コントロールマウスから得られた膝関節において発生したことを示す。パネルCは、重篤な炎症、ならびに13日目に(すなわち、コラーゲン誘導性関節炎を誘導して13日後)化合物H(50mg/kg P.O. 1日目に始めて1日1回)で処置したマウスから得た膝関節への単球細胞および滑膜細胞の浸潤を実証する。パネルDは、重篤な炎症、ならびに13日目に(すなわち、コラーゲン誘導性関節炎を誘導して13日後)化合物H(50mg/kg P.O. 1日目に始めて1日1回)で処置したマウスから得た膝関節への単球細胞および滑膜細胞の浸潤を実証する。パネルEは、低下した炎症、ならびに13日目に(すなわち、コラーゲン誘導性関節炎を誘導して13日後)化合物C(50mg/kg P.O. 1日目に始めて1日1回)で処置したマウスから得た膝関節への単球細胞および滑膜細胞の浸潤が実質的にないことを実証する。パネルFは、低下した炎症、単球細胞および滑膜細胞の浸潤が実質的にないこと、ならびに13日目に(すなわち、コラーゲン誘導性関節炎を誘導して13日後)、化合物H(50mg/kg P.O. 1日目に始めて1日1回)で処置したマウスから得た軟骨および骨の保存を実証する。
【0091】
【化4】
本発明の前述の議論は、例示および説明の目的で示されてきた。前述は、本発明を本明細書で開示される形態に限定するとは意図しない。発明の詳細な説明は、1つ以上の実施形態ならびに特定のバリエーションおよび改変の説明を含んでいたが、他のバリエーションおよび改変が、本発明の範囲内にあり、例えば、同様に、本開示を理解した後であれば、当該分野の技術および理解の範囲内であり得る。特許請求されるものの代替の、交換可能な、および/もしくは等価な構造、機能、範囲もしくは工程が本明細書で開示されていようとそうでなかろうと、かついかなる特許可能な事項を公に捧げることを意図することなく、このような代替の、交換可能な、および/もしくは等価な構造、機能、範囲もしくは工程を含め、代替の実施形態を、許容される程度まで含める権利を得ると意図される。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、サイトカインモジュレーター、および単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるために上記サイトカインモジュレーターを使用するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
広範囲の種々の臨床状態は、急性および/もしくは慢性の炎症(関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群、遺伝性タンパク尿症候群、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫甲状腺炎、肝炎、後天性免疫不全疾患(HIV)、対宿主性移植片病、同異種移植片疾患、喘息、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−I関連皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−II関連リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、突発性CD4+Tリンパ球減少症、もしくは黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない)によって媒介されている。上記炎症に関与する機構のうちの1つは、活性化している単球系統由来マクロファージ(Mφ)によるサイトカインのアップレギュレーションであると考えられている。例えば、病変部において生成される炎症促進性サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子−α(TNFa)およびインターロイキン−1β(IL−1β))は、慢性の病変部炎症を誘導しかつ維持することが示されてきた。関連する動物モデルにおける近年の研究では、T細胞(Tc)がMφ活性化において重要な役割を果たすことが示唆されている;しかし、T細胞サイトカイン(例えば、インターロイキン−4、インターロイキン−10、およびインターロイキン−13(IL−4、IL−10およびIL−13)は、抗炎症性の役割を果たすか、もしくはTNFα/IL−1βアップレギュレーションを弱く誘導するにすぎないかのいずれかを示してきた。
【0003】
従って、炎症を変化させて、急性および/もしくは慢性の炎症と関連する種々の臨床状態を処置することが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のいくつかの局面は、サイトカインモジュレーターおよび単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるために上記サイトカインモジュレーターを使用するための方法に関する。いくつかの特定の実施形態において、本発明は、炎症促進性サイトカインモジュレーターおよび単球系統由来細胞(代表的には、ヒト単球系統由来細胞)における炎症促進性サイトカイン生成を変化させるために上記炎症促進性サイトカインモジュレーターを使用するための方法を提供する。いかなる理論にも束縛されることなく、単球系統由来細胞は、一旦異なるエフェクターT細胞集団と直接細胞間接触した状態になると、活性化されると考えられている。TCISM リガンドおよび/もしくはTCISM レセプターにレベルでの適応性(すなわち、獲得)免疫を制御することによって、微生物感染(例えば、最近の皮膚感染)の間に先天性免疫をさらに考慮に入れる治療的介入が提供される。
【0005】
本発明の一局面は、被験体の単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるための方法を提供し、上記方法は、サイトカインモジュレーターを上記被験体に投与する工程を包含し、ここで上記サイトカインモジュレーターは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合し、上記TCISM−リガンドもしくは上記TCISM−レセプターへの上記サイトカインモジュレーターの選択的結合によって、単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成が変化する。
【0006】
いくつかの実施形態において、TCISM−リガンドは、表1(図19)に列挙されるTCISM−リガンドのうちの少なくとも1つを含む。これら実施形態において、いくつかの場合、上記TCISM−リガンドは、CD81、CD21、CD316、α−エノラーゼ、FKBP4、上記FKBPマルチ遺伝子ファミリーの他のメンバー、もしくはこれらの組み合わせを含む。上記FKBPマルチ遺伝子ファミリーのメンバーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:FKBP12(FKBP1A)、FKBP12.6(FKBP1B)、FKBP13(FKBP2)、FKBP9(FKBP11)、FKBP22(FKBP14)、FKBP23(FKBP7)、FKBP25(FKBP3)、FKBP36(FKBP6)、FKBP37(AIP)、FKBP38(FKBP8)、FKBP51(FKBP5)、FKBP52(FKBP4)、FKBP60(FKBP9)、およびFKBP65(FKBP10)。
【0007】
他の実施形態において、単球系統由来細胞は、単球系統由来マクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、もしくはこれらの組み合わせを含む。
【0008】
さらに他の実施形態において、Tリンパ球は、CD3+Tリンパ球である。
なお他の実施形態において、上記変化させられるサイトカインは、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−32(IL−32)、もしくはこれらの組み合わせを含む。
【0009】
他の実施形態において、TCISM−リガンドは、CD3+リンパ球上に存在するTCISM−リガンドである。これら実施形態において、いくつかの場合、TCISM−リガンドは、CD81、CD21、CD315、CD316、α−エノラーゼ、FKBP、もしくはこれらの組み合わせを含む。例示的FKBPとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:FKBP4、FKBP12(FKBP1A)、FKBP12.6(FKBP1B)、FKBP13(FKBP2)、FKBP9(FKBP11)、FKBP22(FKBP14)、FKBP23(FKBP7)、FKBP25(FKBP3)、FKBP36(FKBP6)、FKBP37(AIP)、FKBP38(FKBP8)、FKBP51(FKBP5)、FKBP52(FKBP4)、FKBP60(FKBP9)、およびFKBP65(FKBP10)。
【0010】
さらに他の実施形態において、上記TCISM−レセプターは、CD68+抗原提示細胞上に存在するTCISM−レセプターを含む。これら実施形態において、いくつかの場合、上記TCISM−レセプターは、CD81のレセプター、CD21のレセプター、CD315のレセプター、CD316のレセプター、α−エノラーゼのレセプター、FK結合タンパク質のレセプター、もしくはこれらの組み合わせを含む。いくつかの場合、上記TCISM−レセプターは、CD19、CD21、CD225、CD315、CD316、C3dR、CD19、CD81、BCR、CD9、CD81、KAI1/CD82、FK506、ラパマイシン(シロリムス)、エベロリムス(Everolimus)、シクロスポリン、タクロリムス、他の合成低分子免疫抑制剤、もしくはこれらの組み合わせの上に存在するTCISM−リガンドのレセプターを含む。一般に、上記TCISM−レセプターとは、リガンドに結合したときに、単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を刺激する、単球系統由来細胞上に存在するレセプターをいう。
【0011】
本発明の別の局面は、被験体における急性もしくは慢性の炎症によって媒介される臨床状態を処置するための方法を提供し、上記方法は、サイトカインモジュレーターを上記被験体に投与する工程を包含し、ここで上記サイトカインモジュレーターは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合し、それによって、上記サイトカインモジュレーターによるサイトカイン生成の変化は、急性もしくは慢性の炎症によって媒介される上記臨床状態を処置するために使用される。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記サイトカインモジュレーターは、CD3+リンパ球上のTCISM−リガンドに選択的に結合する。
【0013】
他の実施形態において、上記サイトカインモジュレーターは、CD68+単球細胞上のTCISM−レセプターに選択的に結合する。
【0014】
なお他の実施形態において、上記臨床状態は、自己免疫疾患を含む。これら実施形態において、いくつかの場合、上記自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群、遺伝性タンパク尿症候群、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫甲状腺炎、肝炎、後天性免疫不全疾患(HIV)、対宿主性移植片病、同異種移植片疾患、喘息、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−I関連皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−II関連リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、突発性CD4+Tリンパ球減少症、もしくは黒色腫、もしくはこれらの組み合わせを含む。
【0015】
本発明のさらに別の局面は、被験体における自己免疫疾患を処置するための方法を提供し、上記方法は、治療上有効な量の、TCISM−リガンドに対するアンタゴニストもしくはその対応するTCISM−レセプターに対するアンタゴニストを、上記処置が必要な被験体に投与する工程を包含する。
【0016】
本発明のなお別の局面は、TCISM−リガンドおよび/もしくはTCISM−レセプターに選択的に結合することによって、サイトカイン生成を変化させるために使用され得るサイトカインモジュレーターを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、マイトジェン刺激したヒトT細胞が単球性THP−1 Mfを誘導して、細胞間接触を介して炎症促進性サイトカインを分泌し得ることを示すグラフである。
【図2】図2は、異なる活性化刺激が、異なるT細胞「TCISM リガンド」活性を誘導することを示すグラフである。
【図3】図3は、ヒト「サイトカインカクテル」が、PBMC由来ヒトT細胞におけるヒトTCISM−リガンド発現を誘導することを示すグラフである。
【図4】図4は、サイトカインカクテルで活性化したヒトPBMC由来Pan CD3+ T細胞が、TNF−aを生成するためにヒトTHP−1細胞を活性化しないことを示すグラフである。
【図5】図5は、上昇したレベルのIL−12(p70)が、TCISM リガンド陽性ヒトCD3+ T細胞との細胞間接触の後に、新たに得られたヒト血液単球によって生成されることを示すグラフである。
【図6】図6は、高度に精製した刺激ヒトHut−78 T細胞膜が、ヒトTHP−1 M細胞を活性化して、TNF−aを分泌することにおいてより有効であることを示すグラフであり、次いで、Hut−78全細胞を1% パラホルムアルデヒドで固定した。
【図7】図7は、PHA/PMA刺激したCD3+ T細胞、Hut−78細胞、H9細胞、Molt4細胞、Jurkat細胞およびRaji細胞において膜タンパク質もしくは膜結合タンパク質をコードする遺伝子のマイクロアレイ2Dクラスターのグラフである。
【図8】図8は、潜在的なヒトT細胞TCISM−リガンド遺伝子候補物の発現レベルを示すともに対数軸の(log−log)「シグネチャー(Signature)」遺伝子グラフである。
【図9】図9は、種々の既知のヒトT細胞膜同時刺激タンパク質を測定する、PMA/PHA刺激Hut−78 T細胞もしくは非刺激Hut−78 T細胞のFACS分析のグラフである。
【図10】図10は、6時間にわたるPMA/PHA刺激Hut−78ヒトT細胞から得られた総RNAの定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)測定である。
【図11】図11は、IFN−g、CD40L、IFN−g+CD40L、IL−15、もしくはIL−15レセプター(IL−15R)に対する中和抗ヒトモノクローナル抗体が、TNF−aもしくはIL−1bの活性化Hut−78 T細胞精製膜由来THP−1 Mφ細胞生成を阻害しないことを示すグラフである。
【図12】図12は、ハイグロマイシン耐性Flp−In 293細胞のFACS分析のグラフである。
【図13】図13は、上記flp−in分子分析手順を使用して、CD40L+IFN−gはTNF−α生成を刺激するが、IL−1β生成を刺激しないことを示すグラフである。
【図14】図14は、いくつかの場合において、LPS刺激TNFαおよびIL−1β生成(すなわち、先天性免疫)に対していかなる効果も有さずに、ヒトMφ(すなわち、適応免疫)T細胞媒介性TNFα生成の阻害を示すグラフである。
【図15】図15は、pという1つの考えられる機構の模式図である。
【図16】図16は、マウスにおけるマウスコラーゲン誘導性関節炎の異なる低分子TNFαインヒビターの評価を示すグラフである。
【図17】図17は、抗TNFa処置マウスおよびIL−1ra処置マウスの効力を示すグラフである。
【図18】図18は、代表的マウスの関節組織病理学のスライドである。
【図19−1】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【図19−2】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【図19−3】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【図19−4】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【図19−5】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【図19−6】図19は、TCISM−リガンドのリストを示す表1である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
Tc誘導性Mφ活性化のための活性化機構のうちの1つは、免疫シナプス機構を通じた直接細胞間接触を介していると考えられる。活性化T細胞は、多くの公知の膜結合タンパク質および未知の膜結合タンパク質を発現する。本発明者らは、これら分子(Tcサイトカイン誘導表面分子(すなわち、TCISMもしくはTCISM−リガンド)として本明細書で言及される)のうちのいくつかが、細胞間接触シグナル伝達カスケードに関与し、このことは、Mφに存在する対応するTCISM−レセプターに選択的に結合することによって、炎症促進性サイトカイン誘導をもたらすことを発見した。
【0019】
広範囲の種々の臨床状態は、急性もしくは慢性の炎症(関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群、遺伝性タンパク尿症候群、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫甲状腺炎、肝炎、後天性免疫不全疾患(HIV)、対宿主性移植片病、同異種移植片疾患、喘息、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−I関連皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−II関連リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、突発性CD4+Tリンパ球減少症、および/もしくは黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない)によって媒介される。本発明者らは、Tリンパ球のTCISM−リガンドおよび/もしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合し得るサイトカインモジュレーターを投与するか、またはTCISM−リガンドの転写を阻害することによって(例えば、iRNAもしくはsiRNAによって)、これら臨床状態が、単球系統由来マクロファージにおけるサイトカイン生成を調節することによって処置され得ることを見いだした。
【0020】
本発明のいくつかの局面は、TCISM−リガンド、およびTリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合するサイトカインモジュレーターを投与するか、またはTCISM−リガンドの転写を阻害することによって、被験体の単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるための方法を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態において、TCISM−リガンドは、表1(図19)に列挙される上記TCISM−リガンドのうちの少なくとも1つを含む。これらTCISM−リガンドの対応するTCISM−レセプターは、当業者によって容易に決定され得る。例えば、細胞間接触バイオアッセイを使用して、中和モノクローナル抗体もしくは中和ポリクローナル抗体を使用して、TCISM−リガンド 対 TCISMレセプターの相互作用を阻害することによって。別の方法は、細胞間接触をブロックするモノクローナル抗体を同定するための、刺激および非刺激のHut−78およびH9サブクローンT細胞膜を使用する差し引き免疫(Subtractive Immunization)である。いかなる理論にも束縛されることなく、単球−マクロファージの接触媒介性活性化が、サイトカイン生成を誘導する主要な経路であると考えられている。従って、この機構の変化(例えば、TCISM−リガンドもしくはTCISM−レセプターの発現のレベルの誘発もしくはその発現の阻害(例えば、siRNAを介する)におけるIL−1生成およびTNF−a生成のブロック)は、サイトカイン生成によって媒介される臨床状態を処置するために使用され得る。
【0022】
本発明のいくつかの組成物および方法は、単球系統由来細胞に存在するTCISM−レセプターを選択的に結合し(またはこのようなレセプターの発現もしくは転写を阻害することによって)、それによって、これら単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させることにおいて有用である。単球系統由来細胞は、Tリンパ球によって活性化される場合に、サイトカインを生成する任意の細胞を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、炎症促進性サイトカイン生成を変化させる。
【0023】
サイトカインを生成する例示的単球系統由来細胞としては、単球系統由来マクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、およびクッパー細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の組成物および方法は、TCISM−リガンドもしくはTCISM−レセプターに選択的に結合し得る分子を含む。さらに、本発明の組成物および方法はまた、TCISM−リガンドもしくはTCISM−レセプターの翻訳、転写、および/もしくは発現を変化させ得る分子を含む。例えば、siRNAは、TCISM−リガンドの発現を変化させるために、Tリンパ球に投与され得る。適切なTCISM−リガンドを知ることによって、当業者は、TCISM−リガンドの発現を変化させ得る適切なsiRNAを容易に同定し得る。例えば、全長タンパク質をコードするメッセンジャーRNAに対するsiRNAは、転写の間の不安定性に最も影響を受けやすいmRNAの一部を決定することを可能にする市販のコンピューターソフトウェアで設計され得る。
【0025】
TCISMの上記レベルにおける適応(獲得)免疫の制御は有利である。なぜなら、治療的介入は、細菌の皮膚感染の間に先天性(自然)免疫を可能にするからである。従って、本発明のいくつかの局面は、先天性免疫を実質的に維持しながら、適応免疫もしくは獲得免疫を変化させるための組成物および方法を提供する。
【0026】
本発明の例示的TCISM−リガンド、TCISM−レセプターおよび/もしくはサイトカインモジュレーター化合物としては、以下の式を有する化合物、そのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない:
【0027】
【化1】
再現性の高いかつ確認された細胞間接触バイオアッセイを、初代ヒトT細胞および自己の新たに得られたヒト血液単球、またはヒトT細胞および単球細胞株のいずれかを使用して、確立した。図1は、マイトジェン刺激ヒトT細胞が、単球性THP−1 Mfを誘導して、細胞間接触を介して炎症促進性サイトカインを分泌し得ることを示すグラフである。図1は、24時間および48時間の細胞間接触における、サイトカインの経時的測定である。THP−1 MfにおけるTNF−a生成(左パネル)およびIL−1b生成(右パネル)を、異なるPMA/PHA刺激ヒトT細胞株とともにインキュベートした。単球性株THP−1に由来する細胞を、刺激(「s」)T細胞もしくは非刺激(ns)休止T細胞から高度に精製した膜調製物とともにインキュベートし;サイトカイン生成を、インキュベーションの24時間後もしくは48時間後に測定した。TNF−a生成およびIL−1b生成の顕著な増加を、両方の期間において、sHut−78およびsH9 T細胞とインキュベートしたTHP−1 Mfから検出した。3連の測定での平均±標準偏差を提供する。図1に示されるように、ごくわずかなTNF−a生成およびIL−1b生成の誘導を、PHA/PMA刺激Molt4細胞、Jurkat細胞およびRaji細胞において観察した一方で、休止初代ヒトT細胞においても、非刺激Hut−78細胞、H9細胞、Molt4細胞、Jurkat細胞においても、Raji細胞においても、検出可能な生成は認められなかった。上記PMA/PHA刺激H9細胞、より少ない程度には、上記Hut−78細胞は、TNF−aおよびIL−1bの両方の最高のTHP−1 Mf分泌を誘導することが観察された。このことは、これら細胞がTCISML陽性であることを示す。
【0028】
PMA/PHA刺激は、上記ヒトT細胞に対して顕著なTCISMLの誘導を提供した。なぜなら、上昇したレベルのTNF−aは、24時間の培養期間にわたって、上記培養物中で生成されたからである。図2を参照のこと。図2において、Pan CD3+ T細胞を健康なヒトドナー血液から単離し、37℃で6時間刺激し、洗浄し、1% パラホルムアルデヒド(6時間室温)で固定した。次いで、細胞をPBSですすぎ、RTで一晩保持した。次いで、PBMC由来CD14+ Mfを添加し、37℃で24時間にわたってインキュベートした。細胞培養上清を遠心分離し、濾過滅菌し、ELISAによってサイトカインを測定した。平均±SEMを示す(N=6個体のドナー、三連の測定;非刺激T細胞と比較して、P<0.05)。匹敵するデータを、αCD3/αCD28を用いてインビトロで刺激したT細胞において観察した。全T細胞コントロール培養物単独と比較して、T細胞およびMf同時培養系において、TNF−aのほぼ2倍程度を生成した。
【0029】
図3に示されるように、その結果は、サイトカイン混合物#1(IL2+IL6+TNF−a)もしくはサイトカイン混合物#2(IL15+IL6+TNF−a)が、1:8(血液単球:T細胞)の比率で混合されたときにヒトT細胞を活性化し、ヒト単球を活性化して、上昇したレベル(約100〜250pg/ml)のTNF−aおよびIL−1bを生成し得ることを示す。これらサイトカインレベルは、サイトカイン活性化された、固定T細胞単独によって放出される炎症促進性サイトカインのレベルより顕著に高かった。図3において、Pan CD3+ T細胞を健康なヒトドナーから単離し、37℃で8日間、異なるサイトカインカクテルとともにインキュベートし
【0030】
【化2】
、洗浄し、次いで、新鮮な1% パラホルムアルデヒドで固定した(6時間 RT)。次いで、細胞をPBSですすぎ、RTで一晩維持した。新たに得たヒト血液単球を続いて添加し、上記T細胞とともにインキュベートした(37℃ 24時間)。細胞培養上清を回収し、ELISAによってサイトカインについて測定した。平均±SEMを示す(N=4 個体のドナー、三連の測定)。同一のドナーから精製したPan CD3+ T細胞での2回の別個の実験を、これら知見を確認するために行った。
【0031】
サイトカイン混合物#1もしくはサイトカイン混合物#2のいずれかで刺激したヒトPBMC由来CD3+ T細胞が、ヒトTHP−1細胞を活性化して、TNF−aおよびIL−1bを生成するに十分なTCISMの発現を誘導するか否かもまた、試験した。図4に示されるように、サイトカイン活性化T細胞と合わせたTHP−1細胞は、上昇したレベルのTNF−aの生成を生じたが、その誘導されたサイトカインレベルは、パラホルムアルデヒド固定した、サイトカイン刺激T細胞単独によって誘導されたものより顕著には高くなかった。図4において、Pan CD3+ T細胞を健康なヒトドナーから単離し、37℃で8日間、種々のサイトカインカクテル
【0032】
【化3】
とインキュベートし、洗浄し、次いで、新鮮な4% パラホルムアルデヒドで固定した(6時間 RT)。細胞を続いてPBSですすぎ、RTで一晩維持し、次いで、THP−1細胞に添加した(37℃ 24時間)。細胞培養上清を上記のように回収し、ELISAによってサイトカインについて測定した。平均±SEMを示す。
【0033】
図5に示されるように、健康なヒトボランティアの末梢血から得たPan CD3+ ヒトT細胞を、PMA/PHAもしくはaCD3/aCD28で、6時間にわたってインビトロで刺激し、次いで、新鮮な1% パラホルムアルデヒドで一晩室温において固定した。次に、新たに得たヒト血液単球を組織培養プレートに添加し、37℃において、上記固定したT細胞とともに培養の6時間もしくは24時間にわたってインキュベートした。次いで、上清を上記のように回収し、ELISAによって種々のTh1およびTh2のサイトカインについて測定した。上記PMA/PHA刺激したT細胞は、ヒト血液単球を活性化して、特に、細胞間接触の6時間後に、約1000〜1250pg/mlの間の範囲に及ぶレベルでIL−12(p70)を生成することにおいて強力であった(図4)。同様に、aCD3/aCD28刺激T細胞はまた、より低い程度ではあるが、ヒト血液単球IL−12(p70)放出を活性化するにおいて有効であった。最後に、刺激ヒトT細胞の両方のタイプは、ヒト血液単球を活性化して、これら2つの異なる期間において、IL−1bおよびTNF−aを生成し得た。
【0034】
THP−1細胞を活性化して、TNF−aを生成する能力を、PMA/PHAおよびaCD3/aCD28刺激Hut−78 T細胞膜 対 PMA/PHAおよびaCD3/aCD28刺激Hut−78 T細胞膜で比較した(図6を参照のこと)。上記PMA/PHA刺激Hut−78 T細胞のデータは、例示目的で示す。これら研究を、上記バイオアッセイでの変動を減少させるために、同じHut−78細胞培養ロットで行った。結果は、刺激Hut−78 T細胞精製膜が、THP−1細胞のTNF−a生成をインビトロで誘導することにおいて、1% パラホルムアルデヒドで固定した刺激Hut−78と比較してより有効であったことを示す。Mix and match “add back”実験をまた行って、TCISMが上記精製膜画分に主に存在するが、低速遠心分離工程および高速遠心分離工程の間に、Parbomb細胞上清(例えば、サイトゾル)画分には存在しないことを示した(図6を参照のこと)。図6において、上記のように膜を調製し、細胞間接触バイオアッセイにおいてTHP−1細胞と合わせた。24時間培養の後に、上清を取り出し、遠心分離し、濾過滅菌し、ELISAによってサイトカインについて測定した。平均±SDを示す。
【0035】
「ヒートマップ」を描く特徴的アレイを、図7に示す。これは、PHA/PMA刺激CD3+ T細胞、Hut−78細胞、H9細胞、Molt4細胞、Jurkat細胞およびRaji細胞膜もしくは膜会合タンパク質をコードする遺伝子のマイクロアレイ二次元(2D)クラスターである。>2倍より大きい変化およびP値<0.01を伴う少なくとも4回の実験を行った。図7において、赤色は、遺伝子発現レベル>2.0(すなわち、上のアレイが描くバックグラウンドレベル)を表し、緑色は、遺伝子発現レベル<2.0(すなわち、下のアレイが描くバックグラウンドレベル)を表す。データレビューのコンピューター評価段階の間に、ヒトT細胞膜会合であって、TCISM(+)T細胞株においてアップレギュレートされかつTCISM(−)T細胞株においてダウンレギュレートされた遺伝子のみを考慮した。マイクロアレイ実験から生じる50,000遺伝子のうちの約10,000を試験し、Hut−78細胞およびH9細胞においてアップレギュレートされるが、ヒトMolt−4細胞およびJurkat T細胞においてはアップレギュレートされないT細胞遺伝子に焦点を絞った。
【0036】
約100個の潜在的なヒトT細胞 TCISM候補物の玉石混合のこのリストから、ともに対数軸の強度プロットを生成し、これは、TCISM候補物を同定するために直線スケール上にグラフ化した。これらプロット(例えば、図8を参照のこと)は、「変化なし」、「シグネチャー」、「ダウンレギュレート」、および「アップレギュレート」したT細胞遺伝子産物、を記載し、上記遺伝子産物の相対発現レベルを、アレイプロファイリングの結果全体と比較した。5つの候補ヒトT細胞TCISM遺伝子を同定した:ジフテリア毒素レセプター、もしくはヘパリン結合EGF(DTR、EGFモジュール含有ムチン様ホルモンレセプター2(EMR2)、Adamlysin−17(ADAMもしくはA Disintegrinおよびメタロプロテアーゼ)TNFα変換酵素(TACE、TNFレセプタースーパーファミリー、メンバー9(TNFRSF9もしくはLIGHT)、および刊行された科学文献の総説によって操作された細胞間接触陽性コントロール目的では、TNFRSF5、もしくはCD40リガンド(CD40L)。
【0037】
リアルタイムqRT−PCRを行って、PMA/PHA刺激Hut−78サブクローンT細胞およびH9サブクローンT細胞においてTCISM候補遺伝子発現を確認した(図9を参照のこと)。上記TCISM候補物DTRおよびLIGHTは、両方の遺伝子が刺激Hut−78 T細胞およびH9 T細胞において高発現されたが、Molt−4 T細胞およびJurkat T細胞においても、Raji B細胞においてもアップレギュレートされなかったという点で、予め設定した基準に従った。しかし、TACEおよびEMR2はともに、上記TCISM(−)ヒトRaji B細胞株において高くアップレギュレートされた。FACSもまた使用して、活性化H9細胞上でのこれら分子の存在を確認した(図10を参照のこと)。
【0038】
公知のヒトT細胞表面タンパク質に対する約50の種々の市販の中和モノクローナル抗体を、上記細胞間接触バイオアッセイにおいて試験した(ALCAM、CD6、β2−インテグリン、CD69、CD23、CD40−CD40LおよびLAG−3に対して指向されるmAbを含む)。それらは、評価できるほど、この系において上記炎症促進性サイトカイン生成の約30%を上回って阻害しないことが分かった。観察されたより効率的なポリクローナル抗体調製物のうちの1つは、抗ADAM−17(TACE)であった。これら実験を、市販のポリクローナル抗体を用いて行った。バイオアッセイにおいて非常に特異的な抗CD40L mAbを使用しても、TNF−aサイトカイン生成もIL−1βサイトカイン生成も顕著に阻害しなかった(図11を参照のこと)。図11において、Hut−78細胞を、PMA/PHAで6時間刺激し、その時点で、精製膜を、上記のように調製した。Hut−78膜と示された濃度の抗ヒトmAbを同時培養ウェルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。次いで、最近継代した固有のTHP−1細胞を同時培養ウェルに添加し、37℃で24時間維持した。TNF−aおよびIL−1bのELISAのために、上清を回収した。図11は、各mAb濃度において三連のサイトカイン測定をした、2回の別個の実験を示す。
【0039】
FACS分析によって、トランスフェクトした293細胞(図12)は、それらの細胞表面上に上昇したレベルの上記TCISML遺伝子生成物を一貫して発現することを示した。図12において、pcDNA5/FRT/DTR、EMR2−07(EGF様ドメイン1、2および5を含むアイソフォーム)、もしくはCD40Lを、それぞれ、Flp−In 293細胞およびJurkat細胞へと、p0G44と同時トランスフェクトし、コロニーを、500mg/ml ハイグロマイシン中で選択した。細胞を細胞解離緩衝液で剥離し、FACSによって分析した(抗CD97をEMR2−07に対して交叉反応させ、EMR2−07発現を検出するために使用した)。発現は、数回の細胞培養継代後も安定であった。このことは、上記細胞間接触アッセイにおける使用にそれらが適切であることを示す。最初の実験を、上記細胞間接触アッセイにおいて、上記トランスフェクトした293細胞を使用して行った(図13を参照のこと)。上記DTR構築物およびCD40L構築物は、TNF−a/IL−1bのsHut−78m駆動THP−1誘導を増強することにおいて強力であった(図13)。上記アッセイへの外因性IFN−γの添加は、増強したレベルのCD40L誘導Mf活性化およびその後のTNF−a放出を生じた(図13 左パネル)が、IL−1b放出を生じなかった(図13 右パネル)。上記CD40Lトランスフェクトした293細胞もしくはJurkat細胞でのこれら効果は、再現性が高かった。
【0040】
ヒトT細胞TCISMを、健康なヒトT細胞、ならびに活性なPsおよびPsAを有する患者から得たT細胞の両方において同定した。認められ得るように、上記インビトロ細胞間接触バイオアッセイは、同時培養におけるヒトT細胞とヒトMfとの間の免疫学的シナプス機構を同定するための、非常に再現性の高いヒトサイトカイン「読み取り系(readout system)」である。上記PMA/PHA刺激H9細胞および上記Hut−78細胞は、TNF−aおよびIL−1bの両方のTHP−1分泌を誘導する(これら細胞がTCISM陽性であることを示す)一方で、PHA/PMA刺激したMolt4細胞、Jurkat細胞、Raji細胞および休止初代ヒトT細胞、未刺激のHut−78細胞、H9細胞、Molt4細胞、Jurkat細胞もしくはRaji細胞は、TCISM陰性であることが観察された(図1)。
TCISM候補物を、以下の基準を用いて決定した:(A)膜会合;(B)刺激Hut−78細胞およびH9細胞において2倍より高くアップレギュレートされるが、Molt4細胞、Jurkat細胞およびRaji細胞においてはアップレギュレートされない;および(C)高発現レベルがqRT−PCRおよびFACSによって確認されなければならない。
【0041】
αCD3/αCD28もしくはヒトサイトカインカクテルによりインビトロで刺激した初代T細胞はまた、上記アッセイにおいて炎症促進性サイトカイン(PIC)活性を増強する。PMA/PHAもしくはαCD3/αCD28で刺激したT細胞は、Mf活性化を増強して、IL−12を生成した。IL−12は、乾癬病変において検出された。IL−12は未感作Th細胞におけるIFN−g生成を主に刺激し、Th1応答の発現および安定化においてある役割を果たすと考えられている。
【0042】
正常健康ドナー 対 乾癬患者で、PBMC由来T細胞からマイクロアレイ分析を行って、ヒトMf TCISMRを介して上記ヒトT細胞TCISML分子および炎症および皮膚疾患をもたらすそのシグナル伝達経路を同定した。健康ドナー、PsAおよびCPPs患者に由来するヒトT細胞を使用するマイクロアレイ分析によって、TCISM分子(ジフテリア毒素レセプター(DTR;HB−EGF)およびムチン様上皮増殖因子ファミリーメンバー(EMR4;CD97)を含む)が同定された。多くのTNFファミリーメンバー(4−1BB(TNFSF14)、OX−40、LIGHT(TNFSF9)およびCD40L(CD154;TNFSF5)を含む)のアップレギュレーションもまた観察された。
【0043】
約50の異なる市販の中和モノクローナル抗体を使用して、上記ヒトTCISM候補物を、細胞間接触アッセイによって確認した。多くの場合において、これら試薬は、この系において24〜96時間の期間にわたって上記炎症促進性サイトカイン生成のわずか30%を阻害することがわかった(図11を参照のこと)。「Flip−in」トランスフェクションシステム方法を使用して、上記マイクロアレイ実験(EMR2、DTR、4−1BB、LIGHT、およびCD40Lをふくむ)から5つの最初の候補TCISML遺伝子候補物を同定した。細胞間バイオアッセイにおいて特徴付けた、TCISM陰性293細胞およびJurkat細胞にトランスフェクトしたTCISM候補遺伝子の全長cDNAは、DTRおよびCD40Lが、T細胞駆動Mf TNF−a/IL−1bを増強することにおいて強力であることを示した。上記アッセイへの外因性IFN−gの添加は、増強したレベルのCD40L誘導Mf活性化、およびその後のTNF−a放出を生じたが、IL−1b放出は生じなかった(図12a−bおよび図13)。
【0044】
炎症および皮膚疾患をもたらす上記同定したヒトMf TCISMR(TCISM−レセプター)のうちのいくつかは、DTR、CD97、4−1BB、OX−40、LIGHTおよびCD40Lを含む。TCISM陰性293細胞およびJurkat細胞にトランスフェクトされ、上記細胞間バイオアッセイにおいて特徴付けられたTCISM候補遺伝子の全長cDNAは、DTRおよびCD40Lが、TNFa/IL−1bのT細胞駆動Mf生成を増強することにおいて協力であることを示した。
【0045】
(乾癬)
本発明の1つの特定の局面は、乾癬を処置するための組成物および方法を提供する。乾癬(Ps)は、米国の人口の約2%が罹患している慢性的な皮膚障害である。いかなる理論にも束縛されることなく、そして図15において模式的に例示されるように、Psの病態生理学は、表皮の増殖および分化、脈管形成およびケラチノサイトの過剰増殖、ならびに病変部皮膚への活性化T細胞(Tc)、マクロファージ(Mφ)、樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞(LC)および好中球(PMN)の浸潤を伴うと考えられている。上記活性病変部において生成された炎症促進性サイトカイン(PIC)(腫瘍壊死因子−α(TNFα)、インターロイキン−1β(IL−1β)、およびインターロイキン−32(IL−32)を含む)は、乾癬性関節炎(PsA)およびPsのような疾患において慢性皮膚炎症を誘導かつ維持すると考えられている。Mφを活性化することによるサイトカインのアップレギュレーションは、これら障害の病理を担うと考えられている。T細胞は、Mφ活性化においてある重要な役割を果たすことが示唆された;しかし、Tcサイトカイン(例えば、インターロイキン−4、10、および13(IL−4、IL−10およびIL−13))は、抗炎症の役割を果たすか、またはごく弱くTNFα/IL−1βアップレギュレーションを誘導するかのいずれかであることが示された。Tc誘導性Mφ活性化の活性化機構が、皮膚における免疫シナプス機構を通じた著いく切截傍観接触を介していると考えられている。
【0046】
免疫学的シナプス(IS)は、抗原提示細胞(APC)とT細胞との間の境界で形成され、抗原認識およびT細胞活性化を担う構造であると考えられている。上記ISは、最初に、T細胞とB細胞との間、またはT細胞とMHC含有二次元二重層との間で最初に見いだされた。これは、上記IS中心領域(中心的超分子活性化クラスター(central supramolecular activation cluster)(c−SMAC)といわれる)におけるT細胞レセプター−主要組織適合性遺伝子複合体(TCR-MHC)の蓄積、および白血球機能関連抗原1(LFA−1)-外部IS領域における細胞内接着分子−1(ICAM−1)(末梢(p−)SMAC(pSMAC)といわれる)によって形成されると考えられている。上記成熟ISは、LFA−1、タリン(talin)、VLA−4、ADAPおよび移行レセプターが富化されたpSMACを含むことが示された。上記pSMACはcSMACを取り囲み、cSMACは、TCR、CD4もしくはCD8共レセプター、CD28共刺激分子、CD2、PKCqなどが富化されている。
【0047】
Psの皮膚は、ケラチノサイトの過剰増殖によって特徴付けられ、隆起(ridge)およびpegの肥大したパターンを生じる。皮膚中のケラチノサイト、DC、およびMφは全て、TNFa、IL−1β、およびIL−32を生成することが示された。上記ISは、乾癬性自己抗原特異的皮膚リンパ球抗原(CLA)陽性T細胞活性化を制御する一方で、その重要な分子成分は、TCR、およびそれを取り囲んで、接着分子(例えば、LFA−1)の環(これは、隣接する細胞(例えば、ケラチノサイトもしくはAPC)によって発現されるICAM−1に結合し得る)を含む。従って、上記ISは、治療的アプローチの理論的標的である。例えば、アレファセプト(Alefacept)は、記憶−エフェクターT細胞上のCD2に結合する組換え融合タンパク質であり、記憶−エフェクターT細胞活性化を阻害し、これら細胞の数を低下させる。エファリズマブ(Efalizumab)は、CD11a分子に対するヒト化モノクローナル抗体(Mab)である。CD11aおよびCD18は、LFA−1のサブユニットを構成する。
【0048】
本発明者らは、Mφ活性化を駆動して、炎症促進性サイトカインを生成することによって、皮膚の炎症を媒介するヒトT細胞の表面にTCISMが存在することを示した。TCISMのレベルにおいて適応(獲得)免疫を制御することは有利である。なぜなら、治療的介入は、細菌性皮膚感染の間に先天性免疫を可能にするからである。
【0049】
乾癬は、いくつかの臨床的発現を伴う皮膚の遺伝的障害である。もっともよくあるタイプは、尋常性乾癬(もしくは尋常性乾癬(Plaque Psoriasis)[Ps])であり、これは、身体の特有の部位において慢性的な、再発性の鱗様丘疹として生じる。現在の乾癬治療は、満足いくものではない。Psは、活性化T細胞による皮膚の浸潤およびケラチノサイトの異常な増殖によって特徴付けられる。T細胞、ケラチノサイト、DC、およびLCによる過剰生成の結果として、関連しない皮膚よりもPs病変部においてTNFαの濃度が(Psを有する患者および正常ヒトの両方において)高いことが報告された。
【0050】
(自己免疫疾患)
ヒトにおける自己免疫疾患(例えば、Psおよび乾癬性関節炎(PsA))は、自己抗原発現組織に対して指向される適応性の体液性(自己抗体)応答もしくは細胞性(自己反応性T細胞)応答の診断結果と合わせて、代表的な、しばしば再発する臨床的症状によって特徴付けられる、慢性的な症候群である。重要なヒト自己免疫疾患は、しばしば、ウイルス感染もしくは細菌感染を伴う相互疾患性(co−morbid)であるか、またはウイルス感染もしくは細菌感染によって誘発され、特定のMHC対立遺伝子と関連している。上記先天性免疫系は、上皮の非特異的バリア機能から生殖細胞系列がコードするレセプターの使用を介する病原体の非常に選択的な認識に及ぶ宿主防御の集合を包含する。これら多様な要素の共通する特徴は、感染もしくは組織破壊に対する急速かつ鈍感な応答である。他方では、適応免疫系は、体細胞的に再配置された抗原レセプター遺伝子を使用して、実質的に任意の抗原のレセプターを作り出す。上記適応免疫応答は、速度はより遅いが、縦覧性はより高く、先天性応答を回避するように進化した感染と戦うことができる。
【0051】
上記先天性免疫系は、病原体における保存されたモチーフの認識および細胞ストレスもしくは細胞死の多くの他の指標によって応答する。上記先天性免疫系の細胞性成分としては、DC、単球、Mφ、顆粒球および天然のキラーT細胞(NKT)、ならびに生物とその環境との間の境界を形成する皮膚、肺、および腸の上皮細胞が挙げられる。上記先天性の系の非細胞性要素は、非常に多様であり、角質層の単純なバリア機能から補体カスケードのような複雑な経路まで及ぶ。これら要素は、物理的妨害を介して病原体の進入を防止するか、または一旦細胞が進入しても、直接もしくは触細胞を介して病原体を破壊することを可能にする。上記先天性の免疫系はまた、病原体の多くのクラスに共通する分子パターンを認識するように進化した。これらは、病原体関連分子パターン(PAMP)といわれる。PAMP認識は、生殖細胞系列がコードした進化的に保存されている病原体認識レセプター(PRR)のグループを使用して終わる。上記Toll様レセプター(TLR)は、病原体レセプターの非常に重要なグループであり、それらは、先天性免疫細胞上で、そして種々の組織中の細胞(内皮細胞、上皮細胞および線維芽細胞を含む)上で発現される。種々の微生物の分子に特異的な10個のTLRファミリーメンバーは、ヒトにおいて同定された。それらの微生物のリガンドへのTLRの結合は、食細胞の活性化、ならびに炎症促進性サイトカインの放出および抗微生物ペプチドをもたらす。これら分子は、同様に、DCを活性化して、適応免疫応答を開始すると考えられている。
【0052】
T細胞は、免疫応答において重要であり、それらの移動パターンおよび機能的能力に基づいて、多くの特徴的なサブセットに分けられ得る。未感作T細胞は、血液とリンパ節との間を主に再循環し、パターンは、ホーミングレセプターであるL−セレクチンおよびCCR7の発現によって補助される。未感作T細胞は、多能性状態に維持され、血液からリンパ系器官を通って再循環し、MHC−ペプチド複合体を活性化するためにDCを精査するので、比較的無活動のエフェクタープログラムを有する。活性化DCからおよびサイトカイン環境からのシグナルを統合する複雑な機構を介して、未感作T細胞は、別個の病原体の群に直面するために必要なエフェクターサイトカインを分泌する能力と密接に関連する急速な分裂ラウンドを介して駆動される。CD4+ Tヘルパー細胞は、Th1(インターフェロン[IFN]γ分泌)サブユニットおよびTh2(インターロイキン[IL]−4分泌)サブユニット、ならびに近年同定されたさらなるThサブユニット(Tr1(IL−10分泌)細胞、Th3(トランスホーミング増殖因子[TGF]β生成)細胞、ThFH(濾胞性ヘルパー細胞)細胞、末梢で誘導されるT調節性(Treg;FoxP3陽性)細胞およびTh17(IL−17A生成)細胞を含む)へと機能的に分裂させられ得る。さらなるサブセットの発見は、エフェクター機能に関与するシグネチャーサイトカイン遺伝子を改変する機構に影響を及ぼす可能性が高い、根底にある調節性転写因子の同定において確実に興味をかき立てる。
【0053】
免疫学的シナプス(IS)は、抗原提示細胞とT細胞との間の境界で形成され、そして抗原認識およびT細胞活性化を担う構造であると考えられている。上記ISは、最初に、T細胞とB細胞との間、またはT細胞とMHC含有二次元二重層との間で見いだされた。これは、上記IS中心領域(中心的超分子活性化クラスター(central supramolecular activation cluster)(c−SMAC)といわれる)におけるT細胞レセプター−主要組織適合性遺伝子複合体(TCR-MHC)の蓄積、および白血球機能関連抗原1(LFA−1)-外部IS領域における細胞内接着分子−1(ICAM−1)(末梢(p−)SMAC(pSMAC)といわれる)によって形成されると考えられている。上記成熟シナプスは、LFA−1、タリン(talin)、VLA−4、ADAPおよび移行レセプターが富化されたpSMACを含む。上記pSMACはcSMACを取り囲み、cSMACは、TCR、CD4もしくはCD8共レセプター、CD28共刺激分子、CD2、PKCθなどが富化されている。
【0054】
上記APCの表面上で発現されるリガンドは、上記IS接触部位へ特異的レセプターを補充すると考えられる。上記シナプスへの共刺激分子CD28および細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)の補充は、上記APC上でのそれらのリガンド(B7−1およびB7−2)の発現によって差次的に促進される。CD28およびCTLA4は、上記APC上で発現される場合にこれらリガンドのいずれを結合するが、B7−2はCD28を上記シナプスに補充し、そしてB7−1はCTLA4を上記シナプスに補充した。上記APC上の接触部位におけるリガンドの安定性もまた重要である。なぜなら、CD28、CTLA−4およびプロテインキナーゼC−qの補充は、B7−1の細胞質ドメインの存在を要する。
【0055】
乾癬性の皮膚は、ケラチノサイトの過剰増殖によって特徴付けられ、肥大したパターンを生じる。皮膚中のケラチノサイト、DC、およびMφは全て、TNFaを生成し得る。上記ISは、乾癬性自己抗原特異的皮膚リンパ球抗原(CLA)陽性T細胞活性化を制御する一方で、その重要な分子成分のいくつかは、TCR、およびそれを取り囲んで、接着分子(例えば、LFA−1)の環(これは、隣接する細胞(例えば、ケラチノサイトもしくはAPC)によって発現されるICAM−1に結合し得る)を含む。上記シナプスのLFA−1成分は、この接着相互作用を妨害する乾癬において治療剤(抗LFA−1抗体;エファリズマブ)として重要であると考えられており、感染の処置について米国食品医薬品局(FDA)によって認可されている。さらに寄与する分子(他の接着分子および共刺激分子を含む)はまた、T細胞応答性に影響を及ぼす(例えば、細胞表面分子対CD2:LFA−3およびCD28:CD80/CD86)。
【0056】
(関節リウマチ)
関節リウマチ(RA)は、ISシグナル伝達にも関連する炎症性疾患である。RAの処置の潜在的アプローチのうちの1つは、T細胞と抗原提示細胞との間のISにおいて存在する分子の阻害を含む。サイトカインアップレギュレーションの機構が、接触依存性であると考えられる。これら機能を媒介し得る細胞表面上には複数の候補タンパク質が存在する。
【0057】
T細胞レセプター複合体を介して活性化されたT細胞が単球のIL−10合成を誘導することが示されてきた。このことは、内因性TNFαおよびIL−1レベルに特に依存し、T細胞膜TNFαは、重要な接触媒介性シグナルであることが示された。しかし、IL−10合成は、TNFαおよびIL−1が中和される場合になお生じるので、このことは、IL−10合成に必要とされるTNF/IL−1非依存性シグナルが存在することを示す。
【0058】
TNF/TNF−Rファミリーのメンバー(CD40、CD27、CD30、OX−40、およびLTβを含む)は特に重要である。これらTNF−R分子のリガンドは、T細胞活性化の際にアップレギュレートされると考えられており、さらに、CD40L、4−1BB、CD27L、CD30は、活性化後に可溶性メディエーターとして放出されると考えられている。CD40LとCD40との間の相互作用は、T細胞と単球との相互作用の後にIL−1合成およびIL−12合成の両方を誘導するために重要であり、より近年になって、抗CD3刺激T細胞との相互作用の際にヒトミクログリア細胞によってIL−10生成を媒介することが観察された。
【0059】
(T細胞免疫グロブリンムチンタンパク質)
上記T細胞免疫グロブリンムチン(TIM)タンパク質は、共通する構造モチーフを含む、T細胞上で発現されるI型膜糖タンパク質である。上記TIM遺伝子ファミリーは、マウスにおいて第11染色体に、およびヒトにおいて5q33に位置する。ゲノム分析によって、マウスにおいて8つのファミリーメンバー(TIM−1〜TIM−8)が、およびヒトにおいて3つのファミリーメンバー(TIM−1、TIM−3およびTIM−4)が同定された。全てのメンバーは、IgV、ムチン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む特徴的構造を共有する。この遺伝子ファミリーは、免疫応答の調節においてある役割を果たす。
【0060】
TIM−1(以前は、A型肝炎ウイルスレセプターとして同定された)は、T細胞拡大およびサイトカイン生成を共刺激する。TIM−1は、全ての活性化T細胞上で、およびCD4+ T細胞偏り(polarization)の際に、Th1細胞上よりも高いレベルで、Th2上で発現される。作動性モノクローナル抗TIM−1抗体(3B3)は、ペプチドとAPCもしくはCD3およびCD28に対して交差連結する抗体のいずれかと培養したときに、T細胞をインビトロで共刺激することが示された。免疫応答の間にインビボで投与したときに、抗TIM−1抗体は、抗原性再刺激の非存在下ですら、T細胞増殖をインビトロで増強した。これはまた、コントロール処置と比較して、Th1およびTh2両方の基本型サイトカインの生成を増大した。さらに、抗TIM−1抗体は、高用量耐性の誘導を排除し、マウスを免疫しかつ抗原を鼻内チャレンジしたときに、AHRを回復させることができた。従って、TIM−1は、全てのT細胞のための共刺激分子として作用すると推測され、おそらく、Th1細胞よりTh2細胞上でより強い効果を有する。
【0061】
TIM−3が、Th2細胞と比較して、インビトロで偏ったヒトCD4+ Th1細胞上で優先的に発現されることを実証した。従って、TIM−3発現は、ヒトTh1細胞を同定するために使用され得る。さらに、TIM−3は、インビボでTh1細胞の調節に寄与すると考えられている。例えば、TIM−3特異的抗体の実験的自己免疫脳炎(EAE)モデルのマウスへの投与は、EAEのTh1駆動性進行の加速を生じた。さらに、抗TIM−3抗体は、MφとT細胞との間の同族の(cognate)相互作用が必要とされる、Mφ活性化およびクローン性T細胞拡大を誘導した。これらデータは、T細胞によってMφの活性化を負に調節することにおいてTIM−3の役割を示すようである。TIM−3/TIM−3リガンド相互作用はまた、耐性においてある役割を果たす。全長TIM−3 Ig融合タンパク質および可溶性TIM−3 Ig融合タンパク質の両方でのマウスの処置は、高用量水溶性抗原を使用して誘導された耐性を排除する。同様に、TIM−3欠損性マウスは、耐えることができない。実際に、Ig融合タンパク質処置マウスおよびTIM−3欠損性マウスの両方が、コントロールと比較して増大したT細胞増殖および高用量水溶性抗原の投与後のIL−2の生成を示した。
【0062】
TIM−4は、TIM−1の天然のリガンドであると考えられている。他のTIM分子とは異なり、TIM−4は、T細胞において発現されないようであるが、代わりに、APC(特に、成熟リンパ系DS)において発現されるようである。Th1 T細胞駆動Mφ活性化を媒介する、正に調節するTIM様ファミリー分子は、今日までのところ発見されていなかった。本発明者らは、TIM−1もTIM−3も、PMA/イオノマイシン活性化H9もしくは初代ヒトCD3+ T細胞においてアップレギュレートされないことを示した。
【0063】
(免疫学的シナプスに関与する細胞質タンパク質、膜タンパク質、および核タンパク質を同定するためのプロテオミクス的アプローチ)
プロテオミクス技術は、疾患のバイオマーカーおよびバイオシグネチャーを特徴付けかつ機能的な下位プロテオーム(subproteome)およびネットワークに関する情報を明らかにするために使用され得る。多くのプロテオミクス的適用は、疾患、傷害、もしくは薬物に応じて変化する下位システムについての一般的情報を提供するが、プロテオミクスはまた、生化学的応答(例えば、MAPKシグナル伝達、化学走性、黒色腫の腫瘍形成および転移、ならびにMHCクラスII誘導性細胞死など)に関与する以前に特徴付けられていなかったタンパク質を同定するために使用され得る。二次元ゲル電気泳動(2DGE)と質量分析法の組み合わせは、プロテオミクス適用のために使用される分析技術のうちの1つである。直列式質量分析法(tandem mass spectrometry)および進んだデータベース検索アルゴリズムを介してタンパク質の直接的かつ偏りのない同定と組み合わせた2DGEの定量的能力は、細胞システム、原形質、皮膚などにおけるタンパク質発現変化のプロフィールに対処する優れた技術プラットフォームを提供する。補完的な探査プラットフォームは、多次元のクロマトグラフィーによるタンパク質およびペプチド分離、続いて、直列式質量分析法およびタンパク質同定のためのデータベース検索である。選択された反応モニタリングはその後、関連する分子を定量するために使用される。
【0064】
(宿主防御および炎症疾患)
炎症促進性のpleotrophicサイトカインTNFαおよびIL−1βは、宿主防御および炎症性疾患プロセスにおいて重要な役割を果たしている。TNFαおよびIL−1βの過剰発現は、Ps疾患標的組織および炎症性皮膚疾患を有する患者の循環において見いだされた。T細胞および単球−Mφの主要な機能のうちの1つは、種々のサイトカイン(IL−1bおよび/もしくはTNFaを含む)を放出することである。これら分子は、続いて、下流部分(例えば、IL−32(ケラチノサイトおよびMφによって生成される))の誘導および放出に関与し、最終的には、ケラチノサイトの過剰増殖およびPsの発症がもたらされる。いかなる理論にも束縛されることなく、より遠位のレベルで(例えば、T細胞駆動単球−Mφ活性化のレベルで)これらサイトカインの生成をブロックすることは、おそらく、適応応答および/もしくはIS形成の間の種々の期間に、これらサイトカインを特異的に阻害するように設計された新たな分子薬物探索標的をもたらし得、Ps患者にとってあまり有害でない事象でより安全な治療剤を生じると考えられる。
【0065】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、以下の実施例(限定であるとは意図されない)の試験に際して、当業者にとって明らかになる。
【実施例】
【0066】
(細部株の培養)
ヒト細胞株は、RPMI 1640(Biochrom,Berlin,Germany)(10%(v/v) FCS血清、2mM L−グルタミン、100単位/ml ペニシリンおよび100単位/ml ストレプトマイシンを補充)からなる標準培地中で培養した。Hut78細胞株、H9細胞株、Molt4細胞株、Jurkat細胞株、Raji細胞株およびTHP−1細胞株を、ATCCから入手した。
【0067】
(細胞単離)
末梢血単核細胞(PBMC)。PBMCを、Ficoll密度勾配遠心分離によって単離した。得られたPBMCの生存性は、トリパンブルー染色によって決定した場合、>95%であった。その生存細胞を、Neubauerチャンバ(Zeiss,Oberkochen,Germany)中で定量し、液体窒素中で保存した。
【0068】
(CD3+ T細胞)
融解したPBMCを、1,500rpmで5分間、再度遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを、MACS緩衝液中に再懸濁した。その細胞を、108個の細胞あたり0.8mlの緩衝液の濃度で、単一の細胞懸濁物へと破壊した。108個の細胞あたり約0.2mlのハプテン−抗体カクテルを添加した。その得られた混合物を十分に混合し、20分間氷上でインキュベートした。20×表示容積(labelling volume)を添加し、遠心分離し、上清除去によって細胞を洗浄した。細胞ペレットを、108個の細胞あたり0.8mlの緩衝液中に再懸濁した。108個の細胞あた約0.2mlのMACS抗ハプテンマイクロビーズを、細胞を磁性的に標識刷るために添加した。上記混合物を氷上で15分間インキュベートし、その容積の20倍で洗浄し(Leukophoresis packからの凍結細胞を、45μmメッシュフィルタに通して、塊になった死細胞を除去した)、遠心分離し、上清を廃棄した。細胞を、108個の細胞あたり1mlのMACS緩衝液中に再懸濁し、LS+カラムを、適切なMACS分離器の磁場中に配置した。上記カラムを、3mlの緩衝液で洗浄することによって調製した。上記細胞懸濁物を、上記カラムに載せ、その非標識細胞を通過させた。その溶離液を陰性画分として回収した。これは、富化T細胞画分を表した。上記カラムを4×3mlの緩衝液ですすぎ、溶離液を回収した。細胞を洗浄した後、その細胞ペレットを、106個細胞/mlの濃度で50mlの組織培養培地中に懸濁した。CD3−FITC標識およびFACS分析によって、T細胞純度(>95%)を決定した。
【0069】
(単球)
方法は、CD3+ T細胞分離と同じであった。
【0070】
(細胞の免疫表現系分類)
回収した細胞を、FACS培地[1% ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)]中で洗浄し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)もしくはフィコエリトリン(PE)と直接結合体化させた抗体によって、4℃で20分間染色した。その後、細胞をPBSで3回洗浄し、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を使用するFACScan(Becton Dickinson,Heidelberg,Germany)によって分析した。抗体は以下のとおりであった:PE標識抗マウスIgG、抗ヒトCD40LおよびCD137。
【0071】
(細胞間接触アッセイ)
初代T細胞もしくはH9細胞を、冷PBSで洗浄し、細胞ペレットを、5×106個細胞/mlにおいて新たに作製した1% パラホルムアルデヒド中で再懸濁した。細胞を氷上で2時間固定し、次いで、20×容積の冷PBSで3回洗浄した。3回目の洗浄の後、上記細胞をPBS中、4℃で一晩維持して、パラホルムアルデヒドを拡散させた。細胞を遠心分離し、さらにもう1回洗浄した。上記固定したT細胞を、1×107個細胞/mlにおいて、培地中で再懸濁し、約1×106/ml THP−1細胞において、100μl/ウェルで96ウェルU底プレートへと分与した。初代T細胞もしくはH9細胞(100μl/ウェル)を、8×106個細胞/ml、4×106個細胞/ml、および2×106個細胞/mlで添加した。上記プレートを、加湿5% CO2中で48時間にわたって、37℃でインキュベートした。プレートを、1,500rpmで5分間遠心分離し、上清(120μl)を新たなプレートに移した。上記上清を、使用するまで−20℃で保存した。
【0072】
(Hut−78形質膜調製)
約5×108個の刺激もしくは非刺激Hut−78細胞を、10mlの低張性緩衝液(プロテアーゼインヒビター(50mM Tris−Cl(pH7.4)、25mM KCl、5mM MgCl2、200μM PMSF、1×完全プロテアーゼインヒビターを含む))中に懸濁し、氷上で20往復することによって、ダウンスホモジナイザーを使用してホモジナイズした。上記核および壊れなかった細胞画分を、4000×g、4℃、15分間の遠心分離によって廃棄し、その上清を、4℃で45分間、SW40ローターを用いて28K(100,000×g)で超遠心分離した。その膜ペレットを、22Gシリンジ針を使用して9mlのPBS中に再懸濁し、次いで、1mlの200mM CHAPSに添加した。そのホモジネートを、氷上で1時間インキュベートした。5×107個細胞当量/mlの懸濁した形質膜の約1mlのアリコートを、−80℃で保存した。
【0073】
(RNAサンプル調製およびハイブリダイゼーション)
RNAを抽出し、RNeasy MinEluteキット(Qiagen)およびQiagen Mini RNeasyキットを使用して、製造業者のプロトコルに従って精製した。cDNA合成を、発現分析技術マニュアル(Affymetrix,2サイクルプロトコル)中に記載されるように、各サンプルにつき100ngの総RNAを使用して行った。そのcRNA反応を、BioArray High−Yield Transcript Labelingキット(Enzo)を使用して行った。15μgの標識cRNAをフラグメント化し、製造業者の指示に従って、連続してGAPSスライド(Corning)にハイブリダイズさせた。
【0074】
(Flp−Inトランスフェクション)
安定なTCISM リガンド(TCISML)陰性T細胞株を樹立し、マイクロアレイ実験から同定されたTCISML候補遺伝子(EMR2、DTR、4−1BB、LIGHT、およびCD40Lを含む)のcDNAでトランスフェクトした。Flp−Inリコンビナーゼを利用する「Flp−In」法として公知のトランスフェクションシステムを、製造業者のプロトコルに従って利用した。8つの異なる構築物(pcDNA5/FRT/EGFドメイン2および5を含むEMR−2−04;pcDNA5/FRT/EGFドメイン1、2および5を含むEMR−2−05;pcDNA5/FRT/EGFドメイン1、2および5を含むEMR−02−07;pcDNA/FRT/DTR;pcDNA3/4−1BB;pcDNA5/FRT/LIGHT;pcDNA5/FRT/CD40L;およびpcDNA5/FRTコントロール)を、接着性293細胞(接着性細胞コントロール)もしくはTCISM陰性Jurkat細胞を使用して調製した。
【0075】
(低分子アッセイ)
T細胞膜−Mφ細胞接触バイオアッセイを使用して、末梢血に存在するCD14+ Mφからの抗CD3/抗CD28活性化T細胞媒介性であるが、LPS刺激性でないTNFαおよびIL−1β生成を差次的にブロックする低分子アンタゴニストを同定した。いくつかのキナーゼインヒビターを選択し、確認されたT細胞膜−Mφ接触バイオアッセイを使用して、これら化合物が、TNFαおよび/もしくはIL−1β生成をブロックすることにおける効果を確認した。化合物C(p38 MAPキナーゼインヒビター)が、ヒトMφからのT細胞媒介性TNFα生成を、LPS刺激性TNFαおよびIL−1β生成に対して何ら顕著な効果を有さずに阻害するよいうであることが実証された(図14を参照のこと)。他の化合物Cアナログは、活性化T細胞膜刺激性およびLPS刺激性のMφの両方からのTNFαおよびIL−1β生成をほぼ同程度にまで(約50〜100% 阻害)阻害したか、またはLPS刺激性Mφ活性化によるサイトカイン生成の低い阻害(T細胞媒介性サイトカイン生成の約100%阻害に対して、LPS活性化の約30〜50%阻害)を示したかのいずれかであった。従って、ヒトT細胞およびMφを使用する上記活性化T細胞膜−Mφ接触バイオアッセイは、(一旦同定されかつクローニングされたら)組換えTCISMを用いてハイスループットスクリーニングを確立して、適合性であるが、LPS媒介性ではない先天性免疫を特異的に標的化する、経口的に活性な低分子アンタゴニストを同定するために使用され得る。T細胞媒介性Mφ活性化を特異的に妨害して、増強されたサイトカイン生成をもたらすが、LPS媒介性Mφサイトカイン放出をもたらさないいくつかの経口的に活性な低分子TNFαおよび/もしくはIL−1βインヒビターは、T細胞媒介性皮膚疾患(例えば、Ps)において都合のよい治療効果/副作用プロフィールを有する。
【0076】
(データ分析)
統計学的評価を、統計ソフトウェア「SIGMASTAT」(SIGMAPLOT V.9(Systat Software,San Jose,CA)のツール)で行った。siRNAおよび/もしくは低分子化合物を使用してノックアウトした活性化H9細胞のグループ、ならびに活性化H9細胞のグループにおけるサイトカインの濃度を、スチューデンドT検定を用いて比較した。全ての比較の有意レベルを、0.05の共通標準に設定した。
【0077】
(統計学的考慮事項)
コントロール細胞と、刺激細胞と、潜在的TCISM候補物の発現がsiRNAおよび/もしくは低分子化合物を使用してノックアウトされた刺激細胞との間で本発明者らのバイオアッセイの読み取り値を比較することによって、上記候補タンパク質を容易に確認し得る。
【0078】
低分子化合物を使用することの利点の1つは、TCISMのp38シグナル伝達経路活性を解明することができる能力およびTCISMを阻害するための経口的に活性な薬剤であることである。
【0079】
(TCISMリガンド候補物の同定)
上記細胞間接触バイオアッセイは、TCISMLが、PMA/PHA刺激した初代T細胞、Hut−78細胞およびH9細胞から得られた精製膜上で高く発現されているが、Molt4細胞、Jurkat細胞、RAJI B細胞では発現されていないことを示した。18個の別個のTCISML(+) 対 TCISML(−)比較条件を用いる活性化細胞 対 非活性化細胞からの発現プロファイリングデータは、これら種々の細胞株間での遺伝子発現の有意な差異を示した。コンピューター評価は、TCISM分子がTCISML(+)T細胞株においてアップレギュレートされ、TCISML(−)T細胞株においてダウンレギュレートされることを示した。マイクロアレイ実験から生じた50,000遺伝子のうちの約10,000を、全体的に試験した。TCISML候補物を、以下の3つの基準を用いて決定した:(1)それらが膜会合である;(2)それらが、刺激Hut−78細胞およびH9細胞において2倍より高くアップレギュレートされるが、Molt4細胞、Jurkat細胞およびRaji細胞においてアップレギュレートされない;および(3)それらの発現レベルがqRT−PCRによって確認される。その後のデータ分析は、10,000個の遺伝子の全体的な列挙を、100個あたりの膜会合タンパク質の列挙に減らした。ともに対数軸の強度プロットは、以下の5つの候補ヒトT細胞TCISML遺伝子を同定した:ジフテリア毒素レセプター、もしくはヘパリン結合EGF(DTRもしくはHB−EGF)、EGFモジュール含有ムチン様ホルモンレセプター2(EMR2;CD97)、4−1BB(TNFRSF14)、OX−40(CD134)、TNFレセプタースーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9もしくはLIGHT;CD248)、およびCD40リガンド(CD40L;TNFRSF5)。FACsを使用して、活性化H9細胞上でのこれら分子の存在を確認した。qRT−PCRも利用して、これら遺伝子がTCISM候補物であるか否かを決定した。
【0080】
刺激および非刺激のH9細胞の膜調製物に由来するタンパク質を、一次元において、11cmのIPGストリップ(pH4〜6)を使用して、および二次元において、10.5〜14% 勾配SDS−PAGEゲルを使用して分離した。その標識されたスポット(少なくとも1.5倍の発現の変化を表す(ImageMasterでの分析によって))を切り出し、トリプシンを用いて消化し、次いで、Agilent Ultra高性能イオントラップ上のでナノLC/MS/MSによって分析した。
【0081】
(ゲル分析)
脱色および水ですすいだ後に、200ピクセル解像度のTyphoon 9400 Fluorescent Scanner(GE Healthcare)で画像化を行った。上記刺激調製物および非刺激調製物におけるタンパク質スポットを、IMAGE−Master platinum IIソフトウェアバージョン5.0(GE Healthcare)を用いて以下のようにマッチさせた。
【0082】
各タンパク質スポットの強度(三次元容積)を、ゲル上で検出された全てのスポットの合計の強度に対して正規化した。平均1500個のタンパク質スポット/ゲルを生じた検出閾値を、上記ゲルを比較する前に個々に調節した。上記条件間での見かけ上のスポット強度の変化は、スポットの切り出しのために使用される基準であり、質量分析法によってその後の同定を行った。目的のスポットを、1.5mmの小片で、OneTouch Plus Spot Picker(The Gel Company)を用いて切り出した。
【0083】
(ゲル中消化)
タンパク質を、上記ゲル中でトリプシンを用いて消化した。簡潔には、少なくとも2回の繰り返しからのスポットを組み合わせ、そして1/1 アセトニトリルおよび100mM 重炭酸アンモニウムで1回脱色し、次いで、100% アセトニトリルで濃縮し、真空乾燥した。スポットを25ng/μl トリプシンで再水和し、37℃で一晩インキュベートした。その上清を回収し、1% 蟻酸(水溶液)と30% アセトニトリルを用いる2つのさらなる抽出物とプールした。プールした抽出物を、真空濃縮して、約10μLにし、使用するまで−80℃で保存した。
【0084】
(トリプシン消化物のLC/MS/MS分析)
ゲル消化サンプルのうちの約30%を、逆相ナノスプレーLC−MS/MS(Agilent 1100 HPLC,75μm ID×15cm カラム,Zorbax C18)によって分析した。緩衝液Aは、0.1% 蟻酸であった。ペプチドを、漸増する緩衝液B(90% ACN、0.1% 蟻酸)の勾配および流速300nl/分を使用して、上記分離カラムから質量分析計へと溶出した。スペクトルを、350〜1800Daのm/z範囲に対して集めた(Agilent LC/MSD Trap XCT Ultra)。3つのMS/MSスペクトルを6つに最も豊富なm/z値について集め、次いで、それらの質量を1分間にわたって分析から排除し、次の6つの最も豊富なm/z値をフラグメント化のために選択した。
【0085】
(データベース検索を使用するタンパク質同定)
タンパク質を、タンパク質を、Mascot(Matrix Science)プログラムおよびSpectrum Mill(Agilent)プログラムの両方を使用して、NCBInr、およびSwissProtデータベースを検索することによって同定した。Mascotについては、その得られたスペクトルの化合物リストは、5回のスキャン内でグループ分けして、強度閾値10,000および最大0.2%相対量を使用して生成した。上記化合物リストは、.mgfファイルとしてエクスポートし、ヒトの分類フィルタを使用してデータベースに対して検索した。データベース検索において使用されるパラメーターは、以下のとおりであった:モノアイソトピック(monoisotopic)質量、ペプチド質量許容差2.0Da、フラグメントイオン質量許容差0.7Da、2つの損なった(missed)切断のみを許容するトリプシン処理ペプチド、固定化改変としてCysのカルバミドメチル化、ならびに変動性改変として脱アミド化(N,Q)およびアセチル化(K)。同様のパラメーターを、SpectrumMill検索のために使用した。10を上回るペプチドスコアを有し、70%を上回る%強度(SPI)のスコアを有する、13を上回るSpectrumMillタンパク質スコアは、初期ヒット確認のためのカットオフであった。確実なタンパク質同定は、少なくとも2つのペプチドマッチを要した。分子量およびpI値は、ゲルから相関させて、同定の実証を助けた。
【0086】
(皮膚炎症に関連したTCISMの同定)
ヒトT細胞リンパ腫H9細胞を、PMA/イオノマイシンで刺激した。細胞をカオトロピック溶解緩衝液(7M 尿素、2M チオ尿素、4% CHAPS)を使用して溶解し、膜タンパク質を、市販の膜タンパク質抽出キットを使用して単離した。サンプル(200μg)を、11cmのpH4−7 IPGストリップ上に載せ、SDS pageによる分離の前に、30,000 Vhrで焦点を合わせた。スポットをマッチさせ、相対量を、ImageMasterソフトウェアを使用して測定した。刺激サンプルと非刺激サンプルとの間で2倍より大きい変化を示すタンパク質を切り出し、トリプシンでゲル中消化し、Agilent Ultraイオントラップを使用してナノLC/MS/MSによって分析した。SpectrumMillアルゴリズムおよびMASCOTアルゴリズムを使用してタンパク質を同定した。ウェスタンブロット、siRNAノックダウン、および細胞間接触バイオアッセイを使用して、タンパク質同定、量および機能を確認した。
【0087】
全細胞溶解物もしくは膜分画サンプルからの約30個のタンパク質スポットは、本発明者らの予備実験における発現で少なくとも2倍変化することが観察され、nLC/MS/MSによって同定した。これらのうち、5つの潜在的候補物を、ヒトT細胞−アネキシンVI、エノラーゼ、FKBP4、CD81、CD316およびエズリンにおけるそれらの潜在的機能にさらに基づいて、調査した。これらタンパク質のウェスタンブロットによって、FKBP4およびエズリンの発現が、T細胞の活性化後に顕著に増大したのに対して、エノラーゼの発現は、減少したようであることが示された。アネキシンVI、CD81およびCD316の発現は、PMA/イオノマイシン処置後に変化しなかった。FKBP4およびエズリンは特に重要であった。FKBP(もしくはFK506結合タンパク質)は、プロリン残基を含むタンパク質についてのタンパク質折りたたみシャペロンとして機能するプロリルイソメラーゼ活性を有するイムノフィリン(immunophilin)であると考えられている。これはまた、免疫抑制分子タクロリムス(もともとは、FK506と称されていた)を結合し、タクロリムスは、自己免疫障害に罹患している患者を処置するために使用される。上記FBKP−タクロリムス複合体は、カルシニューリンを阻害し、Tリンパ球形質導入経路におけるシグナル伝達を、おそらく、インターフェロン調節因子−4(IRF−4)へのFKBP4の結合を妨害することによって、ブロックする。エズリンは、プロリンリッチ領域を有するアクチン結合タンパク質であると考えられる。エズリンは、ホスホイノシチド脂質によって調節されると考えられ、そしてLckチロシンキナーゼのついての基質であると考えられる。近年になって、リン酸化エズリンは、SLEを有する患者におけるT細胞偏りの増大、接着および移動を担うことが分かった。エズリンはまた、皮膚へのT細胞浸潤を媒介し、乾癬をもたらす皮膚炎症を生じる重要なタンパク質のうちの1つであると考えられている。
【0088】
本発明者らはまた、Alefacept(Amevive;Biogen−Idec)およびエファリズマブ(Raptiva;Genentech)(2つの現在市販されている乾癬処置)が上記モデル系においてT細胞駆動Mφサイトカイン生成を阻害しないことを示した。これら薬剤の機構は、機能不全の免疫シナプス(IS)形成を媒介することによって、ヒトT細胞の亜集団を選択的に不活性化すると報告された。いかなる理論にも束縛されることなく、いくつかの場合において、イムノフィリン(FKBP4が挙げられるが、これらに限定されない)は、シナプス相互作用を維持し、上記ISを介する有効なシグナル伝達を媒介するための足場タンパク質として機能し得ると考えられている。これらT細胞標的の機能的役割は、siRNAノックダウンおよびECLを使用するサイトカイン読み取りのための細胞間接触バイオアッセイを使用することによって、容易に評価され得る。
【0089】
(インビボでの関節炎研究)
マウスに、CII+CFAを0日目に免疫し、21日目にCII+IFAを追加免疫した。1群あたり合計10匹のDBA雌性マウスを使用した。示されるように薬物を投与し、足の腫脹/関節炎の最初の徴候の1日目に開始した。各群に、以下の表に示されるように種々のTCISMモジュレーターを投与した。平均関節炎スコア(以下のデータを参照のこと)を、Bendeleら,Arthritis & Rheumatism,2000,43(12),pp 2648−2659の手順に従って評価した。図16は、種々のTCISM−リガンドモジュレーターの時間の関数として平均関節炎スコアのグラフを示す。図17は、コントロール(Rat IgG,HA)、抗TNFa処置マウス、およびIL−1ra処置マウスを示すグラフを示す。図17において、ラット抗マウスTNFαモノクローナル抗体(R&D Systems)をポジティブコントロールとして使用して、TNFαもしくはIL−1ra(インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト;Amgen)として公知のIL−1インヒビターを阻害するという治療効果を実証した。マウスを、コラーゲン誘導性関節炎の徴候を示した後に8日間処置した。
【0090】
図18は、代表的なマウスの関節組織病理である。図18において、パネルAは、アイソタイプコントロールラット抗マウスMAb(陰性コントロール)で処置したコラーゲン誘導性関節炎を有するDBAマウスから得た膝関節を示し、このコントロール処置の過程にわたって炎症が生じなかったことを示す。パネルBは、最小の炎症が、上記陰性コントロールマウスから得られた膝関節において発生したことを示す。パネルCは、重篤な炎症、ならびに13日目に(すなわち、コラーゲン誘導性関節炎を誘導して13日後)化合物H(50mg/kg P.O. 1日目に始めて1日1回)で処置したマウスから得た膝関節への単球細胞および滑膜細胞の浸潤を実証する。パネルDは、重篤な炎症、ならびに13日目に(すなわち、コラーゲン誘導性関節炎を誘導して13日後)化合物H(50mg/kg P.O. 1日目に始めて1日1回)で処置したマウスから得た膝関節への単球細胞および滑膜細胞の浸潤を実証する。パネルEは、低下した炎症、ならびに13日目に(すなわち、コラーゲン誘導性関節炎を誘導して13日後)化合物C(50mg/kg P.O. 1日目に始めて1日1回)で処置したマウスから得た膝関節への単球細胞および滑膜細胞の浸潤が実質的にないことを実証する。パネルFは、低下した炎症、単球細胞および滑膜細胞の浸潤が実質的にないこと、ならびに13日目に(すなわち、コラーゲン誘導性関節炎を誘導して13日後)、化合物H(50mg/kg P.O. 1日目に始めて1日1回)で処置したマウスから得た軟骨および骨の保存を実証する。
【0091】
【化4】
本発明の前述の議論は、例示および説明の目的で示されてきた。前述は、本発明を本明細書で開示される形態に限定するとは意図しない。発明の詳細な説明は、1つ以上の実施形態ならびに特定のバリエーションおよび改変の説明を含んでいたが、他のバリエーションおよび改変が、本発明の範囲内にあり、例えば、同様に、本開示を理解した後であれば、当該分野の技術および理解の範囲内であり得る。特許請求されるものの代替の、交換可能な、および/もしくは等価な構造、機能、範囲もしくは工程が本明細書で開示されていようとそうでなかろうと、かついかなる特許可能な事項を公に捧げることを意図することなく、このような代替の、交換可能な、および/もしくは等価な構造、機能、範囲もしくは工程を含め、代替の実施形態を、許容される程度まで含める権利を得ると意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるための方法であって、該方法は、サイトカインモジュレーターを該被験体に投与する工程を包含し、ここで該サイトカインモジュレーターは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合し、それによって、該TCISM−リガンドもしくは該TCISM−レセプターへの該サイトカインモジュレーターの結合は、単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させる、方法。
【請求項2】
前記TCISM−リガンドは、表1に列挙されるTCISM−リガンドのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TCISM−リガンドは、CD81、CD21、CD316、α−エノラーゼ、FKBP4、FKBPマルチ遺伝子ファミリーの他のメンバー、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
単球系統由来細胞は、単球系統由来マクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Tリンパ球は、CD3+ Tリンパ球である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記変化させられるサイトカインは、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−32(IL−32)、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
TCISM−リガンドは、CD3+リンパ球上に存在するTCISM−リガンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
TCISM−リガンドは、CD81、CD21、CD315、CD316、α−エノラーゼ、FKBP、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記TCISM−レセプターは、CD68+抗原提示細胞上に存在するTCISM−レセプターを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記TCISM−レセプターは、CD81のレセプター、CD21のレセプター、CD315のレセプター、CD316のレセプター、α−エノラーゼのレセプター、FK結合タンパク質のレセプター、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記TCISM−レセプターは、CD19、CD21、CD225、CD315、CD316、C3dR、CD19、CD81、BCR、CD9、CD81、KAI1/CD82、もしくはこれらの組み合わせの上に存在するTCISM−リガンドのレセプターを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被験体における急性炎症もしくは慢性炎症によって媒介される臨床状態を処置するための方法であって、該方法は、該被験体にサイトカインモジュレーターを投与する工程を包含し、ここで該サイトカインモジュレーターは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合し、それによって、該サイトカインモジュレーターによるサイトカイン生成の変化は、急性炎症もしくは慢性炎症によって媒介される該臨床状態を処置するために使用される、方法。
【請求項13】
前記サイトカインモジュレーターは、CD3+リンパ球の表面上に存在するTCISM−リガンドに選択的に結合する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サイトカインモジュレーターは、CD68+単球細胞の表面上に存在するTCISM−レセプターに選択的に結合する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記臨床状態は、自己免疫疾患を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記T−リンパ球媒介性自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群、遺伝性タンパク尿症候群、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫甲状腺炎、肝炎、後天性免疫不全疾患(HIV)、対宿主性移植片病、同種移植片疾患、喘息、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記臨床状態は、癌を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記臨床状態は、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−I関連皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−II関連リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、突発性CD4+Tリンパ球減少症、黒色腫、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
被験体における自己免疫疾患を処置するための方法であって、該方法は、治療上有効量の、TCISM−リガンドに対するアンタゴニストもしくはその対応するTCISM−レセプターに対するアンタゴニストを、該処置を必要とする該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項20】
被験体の単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるための方法であって、該方法は、siRNAを該被験体に投与する工程を包含し、ここで該siRNAは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドの遺伝子の転写を阻害し、該TCISM−リガンドの転写の阻害によって、該被験体におけるサイトカイン生成が減少する、方法。
【請求項1】
被験体の単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるための方法であって、該方法は、サイトカインモジュレーターを該被験体に投与する工程を包含し、ここで該サイトカインモジュレーターは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合し、それによって、該TCISM−リガンドもしくは該TCISM−レセプターへの該サイトカインモジュレーターの結合は、単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させる、方法。
【請求項2】
前記TCISM−リガンドは、表1に列挙されるTCISM−リガンドのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TCISM−リガンドは、CD81、CD21、CD316、α−エノラーゼ、FKBP4、FKBPマルチ遺伝子ファミリーの他のメンバー、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
単球系統由来細胞は、単球系統由来マクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、クッパー細胞、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Tリンパ球は、CD3+ Tリンパ球である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記変化させられるサイトカインは、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−32(IL−32)、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
TCISM−リガンドは、CD3+リンパ球上に存在するTCISM−リガンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
TCISM−リガンドは、CD81、CD21、CD315、CD316、α−エノラーゼ、FKBP、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記TCISM−レセプターは、CD68+抗原提示細胞上に存在するTCISM−レセプターを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記TCISM−レセプターは、CD81のレセプター、CD21のレセプター、CD315のレセプター、CD316のレセプター、α−エノラーゼのレセプター、FK結合タンパク質のレセプター、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記TCISM−レセプターは、CD19、CD21、CD225、CD315、CD316、C3dR、CD19、CD81、BCR、CD9、CD81、KAI1/CD82、もしくはこれらの組み合わせの上に存在するTCISM−リガンドのレセプターを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被験体における急性炎症もしくは慢性炎症によって媒介される臨床状態を処置するための方法であって、該方法は、該被験体にサイトカインモジュレーターを投与する工程を包含し、ここで該サイトカインモジュレーターは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドもしくは単球系統由来細胞の対応するTCISM−レセプターに選択的に結合し、それによって、該サイトカインモジュレーターによるサイトカイン生成の変化は、急性炎症もしくは慢性炎症によって媒介される該臨床状態を処置するために使用される、方法。
【請求項13】
前記サイトカインモジュレーターは、CD3+リンパ球の表面上に存在するTCISM−リガンドに選択的に結合する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サイトカインモジュレーターは、CD68+単球細胞の表面上に存在するTCISM−レセプターに選択的に結合する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記臨床状態は、自己免疫疾患を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記T−リンパ球媒介性自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群、遺伝性タンパク尿症候群、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫甲状腺炎、肝炎、後天性免疫不全疾患(HIV)、対宿主性移植片病、同種移植片疾患、喘息、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記臨床状態は、癌を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記臨床状態は、皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−I関連皮膚浸潤性T細胞リンパ腫、HTLV−II関連リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、突発性CD4+Tリンパ球減少症、黒色腫、もしくはこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
被験体における自己免疫疾患を処置するための方法であって、該方法は、治療上有効量の、TCISM−リガンドに対するアンタゴニストもしくはその対応するTCISM−レセプターに対するアンタゴニストを、該処置を必要とする該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項20】
被験体の単球系統由来細胞におけるサイトカイン生成を変化させるための方法であって、該方法は、siRNAを該被験体に投与する工程を包含し、ここで該siRNAは、Tリンパ球のT細胞サイトカイン誘導表面分子(TCISM)−リガンドの遺伝子の転写を阻害し、該TCISM−リガンドの転写の阻害によって、該被験体におけるサイトカイン生成が減少する、方法。
【図12】
【図18(a)】
【図18(b)】
【図18(c)】
【図18(d)】
【図18(e)】
【図18(f)】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19−1】
【図19−2】
【図19−3】
【図19−4】
【図19−5】
【図19−6】
【図18(a)】
【図18(b)】
【図18(c)】
【図18(d)】
【図18(e)】
【図18(f)】
【図1】
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【図9】
【図10】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19−1】
【図19−2】
【図19−3】
【図19−4】
【図19−5】
【図19−6】
【公表番号】特表2010−528662(P2010−528662A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511343(P2010−511343)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/065992
【国際公開番号】WO2008/151307
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(308032460)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/065992
【国際公開番号】WO2008/151307
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(308032460)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト (25)
【Fターム(参考)】
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