説明

TGF−βII型受容体の2つのTGF−β結合ドメインを含有する融合タンパク質

本開示はリンカーにより相互に連結されたTGF−βII型受容体のTGF−β結合ドメイン2つを含有する融合タンパク質を提供する。例えば、第1のTGF−β結合ドメインの第1のC末端は第2のTGF−β結合ドメインのN末端に短鎖ペプチドリンカー(例えば9グリシンリンカー)により連結される。第1のドメインのC末端が第2のドメインのN末端に近接しているにもかかわらず、そのような融合タンパク質は、抗TGF−β抗体と同様に一部の例においてはTGF−βを効果的に中和する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる2007年6月15日出願の米国特許出願第60/944,403号の優先権を主張する。
【0002】
本発明はTGF−β拮抗剤および例えば疾患の治療を包含するそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
形質転換成長因子(TGF)−βは細胞成長、細胞分化、アポトーシス、細胞ホメオスタシスおよび他の細胞機能を包含する多くの細胞プロセスに関与している。TGF−βの過剰発現は、例えば線維症および癌を包含する多くの病理学的プロセスに関連している。TGF−βファミリーは哺乳類において観察される3種の高度に保存されたアイソフォーム(TGF−β1、TGF−β2、およびTGF−β3)を包含する。TGF−β、並びにTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーは約25kDaのジスルフィド結合ホモ2量体を形成する。TGF−βはセリン/スレオニンキナーゼである2量体II型受容体に結合する。次に後者がI型受容体をリクルートし、リン酸化する。I型受容体は、受容体制御型SMADをリン酸化し、これがcoSMADに結合して核に進入し、転写プロモーターに結合する。これにより、多数の遺伝子の発現を調節する。TGF−βII型受容体は独立してリガンドに結合できるが、シグナル伝達のためにはI型受容体の存在を必要とする。III型TGF−β受容体(βグリカンとしても知られている)はTβRIIへのリガンド結合を増大させる共受容体として機能する。TGF−βおよびその受容体の構造的および機能的な特徴に関する詳細な考察は、例えばOppenheimら(編)Cytokine Reference、Academic Press、San Diego,CA、2001(非特許文献1)の例えばpp.719〜746およびpp.1871〜1888に記載されている。
【0004】
ヒトTGF−βII型受容体(TβRII、AAT3、FAA3、HNPCC6、MFS2、RIICおよびTAAD2としても知られている)は560アミノ酸を含有し(Linら、Cell、68(4):775〜85(1992)(非特許文献2);アクセッション番号:NP_001020018)、136アミノ酸のN末端細胞外ドメイン(ECD;配列番号:31で表される)と、それに続く単一の20アミノ酸の膜貫通ドメインを包含する。残余は細胞内(細胞質)ドメインである。野生型のヒトTβRIIは高い親和性でTGF−β1およびTGF−β3に結合するが、TGF−β2とは低い親和性で結合する。いくつかの種に由来するTβRIIのECDに関する配列アライメントを図1に示す。さらに、TβRIIの代替的スプライシングアイソフォーム、即ち「II−B型」受容体(TβRII−B)と称されるものも発見されている(Suzukiら、FEBS Lett.、335:19−22(1994)(非特許文献3);アクセッション番号:GI:456708)。このアイソフォームは配列番号:31中のバリン9の代わりに26アミノ酸の挿入を含有している(配列番号:32で表されるTGFβRIIBのECD)。
【0005】
TGF−βに結合して不活性化することができる多くのTGF−β拮抗剤が作成されている。既知のTGF−β拮抗剤は抗TGF−β抗体、例えば、TGF−βに対するマウスモノクローナル抗体である1D11(米国特許第5,772,998号(特許文献1)参照)等を包含する。他の報告されているTGF−β拮抗剤は可溶性TGF−β受容体および受容体−Fc融合タンパク質、例えばKoteliansky (米国特許出願第2002/004037号(特許文献2));Linら(米国特許第6,001,969号(特許文献3))、Brunkowら(米国特許第6,395,511号(特許文献4));Reed(米国特許第5,730,976号(特許文献5));Gotwals(米国特許出願第2005/0203022号(特許文献6));およびSegarini(米国特許第5,693,607号(特許文献7))に記載されているものを包含する。
【0006】
TβRIIへのTGF−βの結合に関して提案されている化学量論的特徴(1つの2量体リガンド対2つの受容体)によれば、受容体−Fc融合タンパク質またはTβRII ECDのコイルドコイル2量体のような2量体拮抗剤のアビディティが2量体拮抗剤の高い親和性に寄与しており、そしてこれにより、TGF−βのより効果的な中和が可能となることが示唆されている(例えば、Crescenzoら、J.Mol.Biol.、328:1173〜1183(2003)(非特許文献4)を参照)。TGF−β−TβRII複合体の予測された構造は約65Å離れている受容体2量体上の2つの対称的に位置するTGF−β−結合部位を明らかにしている(Hartら、Nat.Struct.Biol.、9(3):203〜8(2002)(非特許文献5)、例えば、その図3を参照)。したがって、結合部位の十分遠隔である分離および結合部位の対称的な位置の保存といった2量体拮抗剤に関わる特定の構造上の必要条件が存在している可能性がある。
【0007】
それ故に適切なアビディティおよび親和性を有し、そしてTGF−β拮抗剤として有用である可溶性TGF−β受容体は、例えばTGF−β活性の低減が望ましい疾患を治療または予防するための使用を目的として、今なお提供を必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,772,998号
【特許文献2】米国特許出願第2002/004037号
【特許文献3】米国特許第6,001,969号
【特許文献4】米国特許第6,395,511号
【特許文献5】米国特許第5,730,976号
【特許文献6】米国特許出願第2005/0203022号
【特許文献7】米国特許第5,693,607号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Oppenheimら(編)Cytokine Reference、Academic Press、San Diego,CA、2001
【非特許文献2】Linら、Cell、68(4):775〜85(1992)
【非特許文献3】Suzukiら、FEBS Lett.、335:19−22(1994)
【非特許文献4】Crescenzoら、J.Mol.Biol.、328:1173〜1183(2003)
【非特許文献5】Hartら、Nat.Struct.Biol.、9(3):203〜8(2002)
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の1つの特徴は、TβRIIのTGF−β結合ドメイン2つを含む融合タンパク質であって、その結合ドメインがリンカー(例えば、短鎖ペプチドリンカー)により相互に連結されているものを提供する。一部の実施形態においては、第1のTGF−β結合ドメインのC末端は短鎖ペプチドリンカーにより第2のTGF−β結合ドメインのN末端に連結されている。意外にも、第1のTGF−β結合ドメインのC末端がもう1つのドメインのN末端に近接しているにも関わらず、そのような融合タンパク質は確かに、一部の例において、抗TGF−β抗体およびTβRII−Fc融合タンパク質と同様の程度にまでTGF−βを効果的に中和する。
【0011】
一部の実施形態においては、リンカーは50以下のアミノ酸からなり、各TGF−β結合ドメインは配列番号:31のアミノ酸28〜129と少なくとも60%同一である配列を含む。一部の実施形態においては、結合ドメインの一方または両方は、例えば配列番号:31のアミノ酸28〜129に示すように、配列番号:8を含む。例示的な実施形態において、リンカーはGlyリンカーであり、各TGF−β結合ドメインは、例えば配列番号:9に示すように配列番号:31のアミノ酸1〜136を含有する。本発明の融合タンパク質はTGF−β1、−β2、および−β3のうちの1つ、2つまたは全てに結合してよい。実施例に記載するような非限定的な例示的な実施形態において、融合タンパク質はTGF−β1および−β3に結合する。
【0012】
本発明はさらに、本発明の融合タンパク質をコードする核酸(例えば配列番号:10に示すもの)、そのような核酸を含むベクター、およびそのような核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、本発明の融合タンパク質または融合タンパク質をコードする核酸を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の融合タンパク質、核酸、宿主細胞、および医薬組成物を製造する方法を提供する。
【0015】
本発明はさらにまた、本発明のTβRII TGF−β結合ドメイン融合タンパク質によるTGF−β中和を必要としている哺乳類を治療する方法を提供する。哺乳類は例えば腎疾患を有してよい。ある特定の実施形態において、TGF−β中和を要する哺乳類は糖尿病性腎症、放射線腎症、閉塞性腎症、多嚢胞性腎臓疾患、髄質海綿腎、馬蹄腎、腎炎、糸球体腎炎、腎硬化症、腎石灰症、バージャー病(IgA腎症)、全身性高血圧、糸球体高血圧、尿細管間質性腎症、尿細管性アシドーシス、腎結核、または腎梗塞を有してよい。
【0016】
本発明の方法の別の態様において、TGF−βの中和を必要とする哺乳類は、例えば癌を有する。特定の実施形態においては、治療すべき癌は胃癌、腸癌、皮膚癌、乳癌、または甲状腺癌であってよい。他の実施形態において、癌は黒色腫、骨癌または肺癌である。
【0017】
本発明の方法のさらに別の態様において、TGF−βの中和を必要とする哺乳類は線維性または硬化性の疾患または状態を有してよい。特定の実施形態においては、治療すべき線維性または硬化性の疾患または障害は硬皮症、アテローム性動脈硬化症、肝線維症(liver fibrosis)、びまん性全身硬化症、肺線維症(pulmonary fibrosis)、糸球体腎炎、神経瘢痕形成、皮膚瘢痕形成、肺線維症(lung fibrosis)、放射線誘導線維症、肝線維症(hepatic fibrosis)、または骨髄線維症であってよい。本発明の方法の別の態様においては、TGF−βの中和を必要とする哺乳類は気管支肺異形成(BPD)を有してよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】幾つかの種に由来するTβRIIの細胞外ドメイン(ECD)に関する配列アライメントを示す(ヒト(Hum):配列番号:31;チンパンジー(Chm):配列番号:2;ラット:配列番号:3;イヌ:配列番号:4;ブタ:配列番号:5;マウス(Mus):配列番号:6;ミンク(Mnk):配列番号:7;および一般配列 (Gen):配列番号:8)。アスタリスクは保存されたアミノ酸を指す。下線付き太字のアミノ酸はTGF−β結合に必須ではないと報告されているアミノ酸を例示している(例えば欠失分析により明らかにされている、例えばGuimondら、FEBS Letters、84(456):79〜84(1999)参照)。一般配列はTGF−β結合に必須ではないことが以前よりわかっているアミノ酸を除き、TGF−β結合ドメインの保存されたアミノ酸を含有している。
【図2】実施例において使用されたsRII−9Gly融合タンパク質のアミノ酸(配列番号:9)およびヌクレオチド配列(配列番号:10)を示す。
【図3】実施例において使用されたsRII−9Gly融合タンパク質の構造の模式図である。
【図4】記載した2週間投与過程中の片側尿管閉塞(UUO)ラットモデルにおける循環系中TGF−β拮抗剤(sRII−9Glyおよび1D11)のレベルを示すグラフである。
【図5】2週間投与過程の後のUUOラットモデルにおける特定のTGF−β拮抗剤(sRII−9Glyまたは1D11)、PBSまたは対照抗体(13C4)を投与した動物の組織学的評価の結果の散布図である。
【図6】図6A〜6Cは特定のTGF−β拮抗剤(1D11またはsRII−9Gly)の2週間投与の後のUUOラット腎試料、および対照動物(偽手術(sham)、PBS、および13C4)における、コラーゲン含有量(図6A)、ピクロシリウスレッド染色による線維症(図6B)およびDAB染色によるコラーゲンIII(図6C)のレベルを示すグラフである。
【図7】図7Aおよび7Bは以下の遺伝子:コラーゲンIII(図7A);TGF−β1、−β2、および−β3(図7B)に関する、特定のTGF−β拮抗剤(1D11またはsRII−9Gly)の2週間投与の後のUUOラット腎試料、および対照動物(偽手術、PBS、および13C4)における、転写物分析の結果を示すグラフである。
【図8】図8Aは2週間投与過程の後の、TGF−β拮抗剤sRII−9Glyの多数回毎日投薬により、または1D11、PBSまたは対照抗体(13C4)の毎週3回投薬により治療したUUOラットの組織学的評価の結果のグラフである。図8Bは2週間投与過程における、TGF−β拮抗剤sRII−9Glyの多数回毎日投薬の後の、または1D11、PBSまたは対照抗体(13C4)の毎週3回投薬による、UUOラット腎試料におけるヒドロキシプロリン試験により検出されたコラーゲンのレベルを示すグラフである。
【図9】図9Aは、2週間投与過程の後の、7.5mg/kgにおけるTGF−β拮抗剤sRII−9Glyの毎日投薬によるか、5または10mg/kgの1D11の毎週3回の投薬によるか、PBS、または記載された通りの対照抗体(13C4)の毎週3回の投薬により治療したUUOマウスの組織学的評価の結果のグラフである。図9Bは、2週間投与過程の後の、7.5mg/kgにおけるTGF−β拮抗剤sRII−9Glyの毎日投薬によるか、5または10mg/kgの1D11の毎週3回の投薬によるか、PBS、または記載された通りの対照抗体(13C4)の毎週3回の投薬により治療したUUOマウスにおけるヒドロキシプロリン(Hyp)試験により検出されたコラーゲンのレベルを示すグラフである。図9Cは、2週間投与過程の後の、7.5mg/kgにおけるTGF−β拮抗剤sRII−9Glyの毎日投薬によるか、5または10mg/kgの1D11の毎週3回の投薬によるか、PBS、または記載された通りの対照抗体(13C4)の毎週3回の投薬により治療したUUOマウスにおけるRT−PCRにより検出されたコラーゲンIIImRNAのレベルを示すグラフである。図9Dは、2週間投与過程の後の、7.5mg/kgにおけるTGF−β拮抗剤sRII−9Glyの毎日投薬によるか、5または10mg/kgの1D11の毎週3回の投薬によるか、PBS、または記載された通りの対照抗体(13C4)の毎週3回の投薬により治療したUUOマウスにおけるRT−PCRにより検出されたPAI−1mRNAのレベルを示すグラフである。
【図10】125I標識ヒトsRII−Glyを注射したマウスの一連の放射線SPECT/CT画像であり、上側パネルは標準的な感受性、下側パネルは上昇した感受性を示す。
【図11】図11Aおよび11Bは肝臓、心臓、腎臓、肺、脾臓、舌、胃、小腸、大腸、直腸、脳、皮膚(耳)、筋肉(足)、血液、および陰嚢における、注射用量のパーセントとして表示した、またはそれぞれ組織重量のグラム数に関して標準化した、種々の組織における125I標識ヒトsRII−Glyの放射線定量を示すグラフである。各バーは個々の動物を示す(n=6)。
【配列表フリーテキスト】
【0019】
配列表の簡単な説明
配列番号:1〜7は以下の種:ヒト、チンパンジー、ラット、イヌ、ブタ、マウス、およびミンクにそれぞれ由来するTβRIIのECDのアミノ酸配列を示す(図1)。ヒト配列(配列番号:1)はバリン9における変異により反映される通り、両方のアイソフォーム、TβRIIおよびTβRIIBを包含している。
【0020】
配列番号:8はTβRIIの最小TGF−β結合ドメインの例示される一般化されたアミノ酸配列を示す(図1)。
【0021】
配列番号:9〜10は実施例において使用したsRII−9Gly融合タンパク質のアミノ酸およびヌクレオチド配列を示す(図2)。
【0022】
配列番号:11はグリシン−セリンリンカーのアミノ酸配列を示す。
【0023】
配列番号:12〜15は各実施例に相当するSRII−9Glyを作成するために使用したプライマー配列を示す。
【0024】
配列番号:16〜30は実施例に記載した転写物分析のために使用したプライマーおよびプローブの配列を示す。
【0025】
配列番号:31はヒトTβRIIのECDのアミノ酸配列を示し、配列番号:32はそのTβRIIBアイソフォームのECDのアミノ酸配列を示す。
【0026】
配列番号:33は図2に示したシグナル配列のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
融合タンパク質
本発明は、例えばペプチドリンカーのようなリンカーにより相互に連結されたTβRIIの2つのTGF−β結合ドメインを含む融合タンパク質を提供する。本発明は部分的には、短鎖ペプチドリンカー(Gly9)で2つのECDを連結することにより構築されるTβRIIの可溶性形態であるsRII−9Glyが、細胞に基づく試験においてTGF−βを効果的に中和したという観察事例に基づいている。さらに腎臓疾患のラットUUOモデルにおけるインビボ試験において、sRII−9Glyの投与は腎線維症の軽減および腎形態の良好な保存をもたらした。データはsRII−9GlyのようなTGF−β拮抗剤がTGF−βを効果的に中和する場合があることを示している。一部の実施形態においては、抗体およびFc融合タンパク質と比較して相対的に小型であるため、本発明の融合タンパク質は、より大型の分子では容易に到達できない身体の領域に到達することが可能である場合がある。例えば、それらは糸球体係蹄の管腔から尿路に、そしてその後、尿細管上皮細胞に通じる場合があり、これにより、より大型の分子よりもより効率的なインサイチューでのTGF−βの中和を達成する。即ち、一部の実施形態においては、本発明の融合タンパク質の計算された分子量は翻訳後修飾を含まない場合、100kDa、80kDa、50kDa、40kDa、または35kDa未満である。例示的な実施形態において、sRII−9Glyの計算された分子量は32kDaである。
【0028】
本発明の融合タンパク質はTGF−β1、−β2、および−β3のうち少なくとも1つ、2つまたは全てに結合してよい。例えば、一部の実施形態においては、融合タンパク質はTGF−β1および−β3に結合する。特に記載が無い限り、本明細書においては、「TGF−β」という用語は少なくとも1つの種に由来する少なくとも1つのTGF−βアイソフォームを指すものであって、必ずしも全てのTGF−βアイソフォームを指さない。TGF−βは種間で高度に保存されている。例えば、ブタ、サル、およびヒトの成熟TGF−β1タンパク質(112アミノ酸)は同一であり、そしてマウスおよびラットのTGF−β1タンパク質は僅か1アミノ酸のみヒトと異なっている。よって、1つの種に由来するTGF−βに結合する融合タンパク質は別の種に由来する同じアイソフォームに結合することが期待される。したがって、本発明の融合タンパク質は10μM、1μM、500nM、100nM、10nM、またはそれより低値のKでTGF−βアイソフォーム(例えばTGF−β1または−β3)に結合する場合がある。例示的な実施形態においては、本発明の融合タンパク質のK値は2〜10nMの範囲にある。結合親和性は例えば酵素結合免疫吸着試験(ELISA)またはプラズモン共鳴(例えば実施例に記載するようなBiacore(商標))を用いて計測できる。
【0029】
本発明の融合タンパク質はまたTGF−β受容体へのTGF−βの結合を抑制し、これによりTGF−βの生物学的活性を中和する場合がある。一部の実施形態においては、TGF−βアイソフォームの1つ(例えばTGF−β1または−β3)に対する本発明の融合タンパク質のIC50は1μM、500nM、100nM、10nM、1nM、0.1nMまたはそれより低値である。例示的な実施形態においては、本発明の融合タンパク質のIC50は0.01〜0.08nMの範囲内である。TGF−βは多様な生物学的活性を示すため、TGF−β中和活性を検出および定量するためには種々の試験を使用できる。一部の頻繁に使用されているインビトロの生物学的試験の例は、実施例に記載する通り、(1)EGFの存在下での軟寒天中のNRK細胞のコロニー形成の誘導(Robertsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:5339〜5343(1981));(2)軟骨表現型を発現するための原始間葉細胞の分化の誘導(Seyedinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:2267〜2271(1985));(3)Mv1Luミンク肺上皮細胞(Danielpourら、J.Cell.Physiol.、138:79〜86(1989))またはBBC−1サル腎細胞(Holleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:5989〜5992(1980))の成長の抑制;(4)C3H/HeJマウス胸腺細胞の有糸分裂誘発の抑制(Wrannら、EMBO J.、6:1633〜1636(1987));(5)ラットL6筋芽細胞の分化の抑制(Floriniら、J.Biol.Chem、261:16509〜16513(1986));(6)フィブロネクチン生産の計測(Wranaら、Cell、71:1003〜1014(1992));(7)ルシフェラーゼレポーター遺伝子に融合したプラスミノーゲン活性化物質抑制物質I(PAI−1)プロモーターの誘導(Abeら、Anal.Biochem、216:276〜284(1994));(8)サンドイッチELISA(Danielpourら、Growth Factors、2:61〜71(1989));および(9)A549/IL−11細胞に基づく試験を包含する。
【0030】
TGF−β結合ドメイン
本発明はTβRIIのTGF−β結合ドメインを少なくとも2つ含有する融合タンパク質を提供する。
【0031】
多くの哺乳類の種に由来するTβRIIがクローニングされている(例えばヒト(Homo sapiens、GI:116242818)、チンパンジー(Pan troglydytes、GI:114585822)、イヌ(Canis familiaris、GI:73990406)、ラット(Rattus norvegicus、GI:207290);ブタ(Sus scrofa、GI:586087)、マウス(Mus muculus、GI:2499656)、およびミンク(Mustela sp.、GI:261616))。特に記載が無い限り、本明細書においては、「TβRII」という用語およびその同義語は、哺乳類種少なくとも1つに由来するTβRIIを指す。図1に示す通り、7つの種に由来するTβRIIのECDに関する配列アライメントは高い程度の相同性を示している。保存されたアミノ酸は図1においてアスタリスクにより示される。最小TGF−β結合ドメインは配列番号:1〜7の何れか1つに由来するアミノ酸28〜129である(Pepinら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、220:289〜293(1996)参照)。この領域において、配列は約70%の相同性を示す。欠失分析によりさらに、保存および非保存のアミノ酸の少なくとも一部分がTGF−β結合のために必須ではないことが明らかになり(例えばGuimondら、FEBS Letters、84(456):79〜84(1999)参照);これらのアミノ酸は図1において下線および太字で示されている。TGF−β結合ドメインの一般配列は配列番号:8に示す通りであり、既知の必須でないアミノ酸を除いた保存されたアミノ酸のみを含有している。この一般化された配列は7配列の何れかと少なくとも64%同一である。TGF−β結合を消失させることなく可変並びに非可変のアミノ酸位置において配列番号:8をさらに修飾することができることが理解される。TGF−βII型受容体のそのような変異体は、本発明の目的のためには「TGF−β結合ドメイン」という用語の意味に包含される。そのような変異体は機能的に等価な分子をもたらす置換、付加、および/または欠失/トランケーションによりアミノ酸配列を改変することにより行ってよい。一般的に、TGF−βと相互作用する表面から遠隔である分子の領域に位置するアミノ酸を置換または欠失させることが好ましい場合がある。以下の参考文献はTβRIIの細胞外ドメインにおけるアミノ酸残基を突然変異または欠失させるためのさらなる指針を示している:Luら、Cancer Res.、56(20):4595〜98(1996);Ogasaら、Gene、181(1〜2):185〜90(1996);Hartら、Nat.Struct.Biol.、9(3):203〜8(2002);Boesenら、Structure、10(7):913〜19(2002);Deepら、Biochemistry、42(34):10126〜39(2003);Guimondら、FEBS Letters、84(456):79〜84(1999);Tanakaら、Br.J.Cancer、82(9):1557〜60(2000);Luckeら、Cancer Res.61(2):482〜5(2001);Pannuら、Circulation、112(4):513〜20(2005);Mizuguchiら、Nat.Genet、36(8):855〜60(2004);Pepinら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、220:289〜293(1996);Loeysら、Nat.Genet.、37(3):275〜81(2005)。典型的には、アミノ酸は同様のアミノ酸で置換されてよく、即ち、機能の多大な損失を伴わない保存的置換であってよい。アミノ酸に関する置換は、例えば表1に示す通り、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択してよい。非極性アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを包含する。極性の中性アミノ酸はグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを包含する。正荷電(塩基性)アミノ酸はアルギニン、リジン、およびヒスチジンを包含する。負荷電(酸性)アミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を包含する。さらにまた、多くのネイティブの残基がアラニンまたはグリシンで置換されてよい。
【0032】
(表1)例示的なアミノ酸置換

【0033】
従って、一部の実施形態においては、TGF−β結合ドメインの各々は以下の配列、即ち:a)配列番号:1;b)配列番号:2;c)配列番号:3;d)配列番号:4;e)配列番号:5;f)配列番号:6;g)配列番号:7;およびh)配列番号:31の何れか1つ以上のアミノ酸28〜129と、または配列番号:32のアミノ酸53〜154と、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、またはそれより高値で同一である配列を含む。一部の実施形態においては、TGF−β結合ドメインの各々は、以下の配列、即ち:a)配列番号:1;b)配列番号:2;c)配列番号:3;d)配列番号:4;e)配列番号:5;f)配列番号:6;g)配列番号:7;h)配列番号:31;およびi)配列番号:32の何れか1つのフラグメントを含むが、ただしこのフラグメントはTGF−βに結合しなければならない。一部の実施形態においては、TGF−β結合ドメインの各々はa)配列番号:1;b)配列番号:2;c)配列番号:3;d)配列番号:4;e)配列番号:5;f)配列番号:6;g)配列番号:7;h)配列番号:31に示されるアミノ酸配列の何れか1つのアミノ酸28〜129;またはa)〜i)の完全長配列を包含するこれらの配列の何れか1つに由来するアミノ酸28〜129を包含するそれらのフラグメントを含む。アミノ酸28〜129を含むフラグメントは、例えば、アミノ酸残基1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、27、28で開始するN末端、および、アミノ酸残基129、130、131、132、133、134、135、および136で終止するC末端を有するフラグメントを包含する。
【0034】
2つのアミノ酸配列の間のパーセント同一性は標準的なアライメントアルゴリズム、例えば、Altschulら、J.Mol.Biol.、215:403〜410(1990)に記載のBasic Local Alignment Tool (BLAST)、Needlemanら、J.Mol.Biol.、48:444〜453(1970)のアルゴリズム、またはMeyersら、Comput.Appl.Biosci.、4:11〜17(1988)のアルゴリズムにより決定してよい。そのようなアルゴリズムはBLASTPおよび「BLAST 2 Sequences」プログラムに組み込まれる(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST参照)。そのようなプログラムを使用する場合、デフォルトパラメーターを使用できる。アミノ酸配列に関しては、以下の設定、即ち:プログラムBLASTP、マトリックスBLOSUM62、オープンギャップおよびエクステンションギャップペナルティーそれぞれ11および1、ギャップx_ドロップオフ50、エクスペクト10、ワードサイズ3、フィルターONを「BLAST 2 Sequences」プログラムのために使用できる。
【0035】
一部の実施形態においては、第1および第2のTGF−β結合ドメインの1つまたは両方が配列番号:8を含む。他の実施形態において、第1および第2のTGF−β結合ドメインの1つまたは両方が配列番号:1またはそのフラグメントを含む。一部の実施形態においては、TGF−β結合ドメインのアミノ酸配列は同一であるが、他の実施形態においてはアミノ酸配列は異なっている。
【0036】
一部の実施形態において、特に融合タンパク質を薬学的調製物において投与する場合、融合タンパク質の可溶性形態が望ましい。そのような可溶性形態は一般的に、a)膜貫通ドメインのかなりの部分または全て、およびb)細胞質ドメインの全てまたはかなりの部分、の非存在により特徴づけられる。
【0037】
例示的な実施形態において、TGF−β結合ドメインは例えば配列番号:9のアミノ酸24〜310(最終産物としてのシグナルペプチドを含まない)に示す通り、配列番号:1のアミノ酸1〜136を含有する。より特定される実施形態においては、融合タンパク質は配列番号:9に示される配列を有する。その多くが当該分野で知られている任意の適当なシグナル配列を使用できる。
【0038】
リンカー
一部の実施形態においては、本発明は例えば短鎖ペプチドリンカーのようなリンカーにより相互に連結されているTGF−β結合ドメイン2つを含む融合タンパク質を提供する。一部の実施形態においては、第1のTGF−β結合ドメインのC末端は短鎖ペプチドリンカーにより第2のTGF−β結合ドメインのN末端に連結される。リンカーは50以下のアミノ酸を含有する場合に短鎖とみなされる。一部の実施形態においては、リンカーは計算される最大の長さが65、60、50、40Å以下となるようなものである。アミノ酸当たりの未構造化ペプチド単位の長さを約3.8Åと仮定すれば、3、4、5および6グリシン残基はそれぞれ11.4、15.2、19.0および22.8Åの最大長を有するリンカーに相当する。当業者の知る通り、二次構造の存在により実際の単位長は最大計算長よりもはるかに短鎖となる場合がある。
【0039】
最も典型的には、リンカーは50以下のアミノ酸、例えば45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、3、4、2、または1アミノ酸を含有するペプチドリンカーである。一般的にペプチドリンカーの配列はTGF−βII型受容体の天然のアミノ酸配列中には存在しない。種々の実施形態においてリンカーは天然の受容体配列に由来する任意の20、または任意の10、または任意の5隣接アミノ酸より多くを含有しない。典型的には、リンカーは可撓性となり、そして連結されたドメインの適切な折り畳みを可能にすることとなる。嵩高の側鎖基および荷電した基を有さないアミノ酸が一般的に好ましい(例えばグリシン、セリン、アラニン、およびスレオニン)。場合により、リンカータンパク質は1つ以上のアダプターアミノ酸、例えば制限部位の挿入の結果として生成されるものをさらに含有してよい。一般的にリンカー中には4アダプターアミノ酸は10、8、6、5より多くは存在しない。
【0040】
一部の実施形態においては、リンカーは1つ以上のグリシン、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35,またはそれより多いグリシンを含む。例えば、リンカーは(GGG)[式中、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9等]および任意のアダプターアミノ酸からなるものであってよい。例示的な実施形態においては、リンカーは例えば配列番号:9のアミノ酸161〜173に示すもののような、9個のグリシンおよび4個のアダプターアミノ酸を含むグリシンリンカーである(図2中下線および太字で示す)。他の実施形態において、リンカーは(GGGS)[式中、n=1、2、3、4、5等]を含むグリシン−セリンリンカーである(配列番号:11)。本明細書に開示した結果を鑑みれば、例えばAlfthanら、Protein Eng.、8:725〜731(1995);Argos,J.Mol.Biol.、211:943〜958(1990);Crastoら、Protein Eng.、13:309-312(2000);およびRobinsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:5929〜5934(1998)に記載される通り、任意の他の適当なペプチドリンカーを本発明の融合タンパク質中で使用することができることは当業者の知る通りである。
【0041】
核酸、ベクター、宿主細胞
本発明はさらに本発明の融合タンパク質の何れかをコードする核酸、そのような核酸を含むベクター、およびそのような核酸を含む宿主細胞を提供する。例えば、例示的な実施形態においては、本発明の核酸は配列番号:10において示されるヌクレオチド70〜ヌクレオチド930(即ち特定のシグナル配列を有さない)または配列番号:10のヌクレオチド1〜930(即ち特定のシグナル配列を包含する)の配列を含む。
【0042】
本発明の核酸は例えば実施例に記載する通り、標準的な手法を用いてベクター、例えば発現ベクター中に組み込むことができる。次に発現ベクターを種々の標準的手法、例えばリポソーム媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降法、またはエレクトロポレーションを用いて宿主細胞に導入してよい。本発明による宿主細胞は哺乳類細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ヒト胚性腎細胞(例えばHEK293)、HeLa S3細胞、ネズミ胚細胞、またはNS0細胞であることができる。しかしながら、例えば細菌、酵母、昆虫、および植物の細胞を包含する非哺乳類細胞も使用できる。適当な宿主細胞はまたインビボにあっても、或いはインビボに移植してもよく、その場合、核酸はインビボまたはエクスビボの遺伝子療法の状況において使用される。
【0043】
製造方法
本発明はまたa)融合タンパク質、b)これをコードする核酸、およびc)融合タンパク質または核酸の何れかを含む宿主細胞および医薬組成物を製造する方法を提供する。例えば、本発明の融合タンパク質を製造する方法は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸を含有する宿主細胞を融合タンパク質の発現をもたらす条件下で培養すること、およびその後の融合タンパク質の回収を含む。例示的な実施形態においては、融合タンパク質はCHOまたはHEK293細胞中に発現させ、そして実施例に記載する方法を用いて培地から精製する。一部の実施形態においては、融合タンパク質は中性以上のpHにおいて、例えばpH7.5以上、pH8.0以上、pH8.5以上、またはpH9.0以上においてカラムから溶離させる。
【0044】
変異体を包含する融合タンパク質、並びにそれをコードする核酸は、例えば以下の参考文献、即ち:Maniatis(1990)Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NYおよびBodanskyら(1995) The Practice of Peptide Synthesis、第2版、Spring Verlag、Berlin、Germany)に記載される通り、または実施例に記載される通り、標準的な分子生物学の手法および合成方法を包含する任意の適当な方法を用いて製造できる。医薬組成物はまた、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy、Gennadoら編、第21版、Lippincott、Williams&Wilkins、2005)に記載のものを包含する任意の適当な方法を用いて製造できる。
【0045】
医薬組成物および投与方法
本発明は本発明の融合タンパク質または融合タンパク質をコードする核酸を含む医薬組成物を提供する。
【0046】
融合タンパク質は遺伝子療法の手段により細胞または生物に対して送達してよく、その場合、融合タンパク質をコードする核酸配列を発現ベクター内に挿入し、これをインビボで投与するか、エクスビボの細胞に投与した後にそれをインビボに投与し、融合タンパク質をそれから発現させる。TGF−β拮抗剤を送達するための遺伝子療法に関する方法は公知である(例えばFakhraiら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、93:2909〜2914(1996)および米国特許第5,824,655号参照)。
【0047】
融合タンパク質は活性成分として融合タンパク質を含む医薬組成物中で細胞または生物に投与してよい。医薬組成物は実施する治療および投与経路に応じて製剤できる。例えば、本発明の医薬組成物は経口、局所、経皮、非経腸、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内に、点鼻により、腔内または嚢内の滴注により、眼内、動脈内、病巣内に、または例えば鼻、喉、および気管支管の粘膜への適用により、投与することができる。医薬組成物は典型的には生物学的に不活性な成分、例えば希釈剤、賦形剤、塩類、緩衝物質、保存料等を含み得る。標準的な薬学的調製手法および賦形剤は当該分野で良く知られている(例えばPhysicians’ Desk Reference(PDR)2005、第59版、Medical Economics Company、2004;およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、Gennadoら編、第21版、Lippincott、Williams&Wilkins、2005参照)。
【0048】
一般的に、本発明の融合タンパク質は症状の重症度および疾患の進行に応じて、約1μg/kg〜25mg/kgの用量として投与してよい。拮抗剤の適切な治療有効用量は担当医により選択され、そして概ね、1μg/kg〜20mg/kg、1μg/kg〜10mg/kg、1μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜1mg/kg、10μg/kg〜100μg/kg、100μg〜1mg/kg、および500μg/kg〜5mg/kgの範囲となる。ある動物において達成される有効投薬量は、当該分野で知られる変換係数を用いてヒトを包含する別の動物における使用に変換してよい(例えばFreireichら、Cancer Chemother.Reports、50(4):219〜244(1996)参照)。
【0049】
本発明の融合タンパク質は国際特許出願WO04/098637に記載されている通り、例えばACE阻害剤のような他の治療薬と同時投与してよい。
【0050】
治療上および非治療上の使用
本発明の融合タンパク質はTGF−βを捕捉または中和することにより、天然に存在するTGF−β受容体へのTGF−βの結合を低減または防止するために使用してよい。
【0051】
本発明は本発明の融合タンパク質または融合タンパク質をコードする核酸、または融合タンパク質をコードする核酸を含有する細胞を哺乳類に投与することにより、哺乳類を治療する方法を包含する。哺乳類は例えば霊長類(例えばヒト)、げっ歯類(例えばマウス、モルモット、ラット)、またはその他(例えばイヌ、ブタ、ウサギ)であることができる。
【0052】
治療される哺乳類はTGF−βレベルの低減が望ましい場合があるTGF−βの過剰に関連する状態1つ以上を有するか、その危険性を有していてよい。そのような状態は限定しないが例えば線維性の疾患(例えば糸球体腎炎、神経瘢痕形成、皮膚瘢痕形成、肺線維症(例えば特発性肺線維症、肺線維症、放射線誘導線維症、肝線維症、骨髄線維症)、腹膜癒着、増殖亢進性の疾患(例えば癌)、熱傷、免疫媒介疾患、炎症性疾患(関節リウマチを包含)、移植片拒絶、デュプュイトラン拘縮、および胃潰瘍を包含する。
【0053】
特定の実施形態においては、本発明の融合タンパク質、核酸および細胞を用いて細胞外マトリックス(ECM)の接着に関連する疾患および状態を治療する。そのような疾患および状態は限定しないが例えば、全身硬化症、術後の癒着、ケロイドおよび肥厚性瘢痕形成、増殖性硝子体網膜症、緑内障ドレナージ手術、角膜傷害、白内障、ペーロニー病、成人呼吸窮迫症候群、肝硬変、心筋梗塞後の瘢痕形成、再狭窄(例えば血管形成後の再狭窄)、くも膜下出血後の瘢痕形成、多発性硬化症、椎弓切除後の線維症、腱および他の修復後の線維症、刺青除去に起因する瘢痕形成、胆汁性肝硬変(硬化性胆管炎を包含)、心外膜炎、胸膜炎、気管切開、貫通性CNS傷害、好酸性筋肉痛症候群、血管再狭窄、静脈閉塞性疾患、膵臓炎および乾癬性関節症を包含する。特に本発明の融合タンパク質および関連する態様は、腹膜の線維症/癒着の治療のために特に有用である。特に、如何なる特定の理論にも制約されないが、げっ歯類モデルにおける動物試験は、腹腔内投与後の血流中における融合タンパク質の全身生体利用性が乏しいことを明らかにしている。これとは対照的に、抗体は腹腔から循環系中に容易に移行することがよく知られている。従って、融合タンパク質の腹腔内送達は、罹患した腹膜内の融合タンパク質の好都合な濃度のため、並びに、全身送達に伴う合併症の危険性が低減されるという付随的利点のために、腹膜の線維症および癒着のような腹膜障害の高度に限局的な治療形態を可能にする。
【0054】
本発明の融合タンパク質、核酸および細胞はまた、再上皮化の促進が有利である状態を治療するために有用である。そのような状態は限定しないが例えば、皮膚の疾患、例えば静脈潰瘍、虚血性潰瘍(褥瘡)、糖尿病性の潰瘍、移植片部位、移植片ドナー部位、擦過症および熱傷;気管支上皮の疾患、例えば喘息およびARDS;腸上皮の疾患、例えば細胞毒性剤投与に関連する粘膜炎、食道潰瘍(反射疾患)、胃潰瘍、および小腸および大腸の疾患(炎症性腸疾患)を包含する。
【0055】
本発明の融合タンパク質、核酸および細胞のさらに別の用途は、内皮細胞増殖が望ましい状態、例えばアテローム性動脈硬化プラークの安定化、血管吻合部の治癒の促進を行う場合、または平滑筋細胞増殖の抑制が望ましい状態、例えば動脈疾患、再狭窄および喘息の場合である。
【0056】
本発明の融合タンパク質、核酸および細胞はさらに、増殖亢進性疾患、例えば癌、限定しないが例えば、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、胃癌、腎臓癌(例えば腎細胞癌)、膵臓癌、結腸直腸癌、皮膚癌、肺癌、甲状腺癌、子宮癌および膀胱癌、グリオーマ、神経膠芽細胞腫、中皮腫、黒色腫、並びに種々の白血病および肉腫、例えばカポジ肉腫の治療においても有用であり、そしてとくにそのような腫瘍の再発または転移を治療または予防するために有用である。特定の実施形態においては、本発明の融合タンパク質、核酸および細胞はシクロスポリン媒介転移を予防する方法において有用である。当然ながら、癌療法の関連においては、「治療」とは腫瘍成長の緩徐化または腫瘍転移の低減、並びに患者の余命を延長するための癌の部分的沈静化をもたらす任意の医学的介入を包含する。1つの実施形態において、本発明は、本発明の融合タンパク質、核酸または細胞を投与することを含む癌の治療方法である。特定の実施形態においては、状態は腎臓癌、前立腺癌または黒色腫である。
【0057】
本発明の融合タンパク質、核酸および細胞はまた腎不全、例えば限定しないが、糖尿病性(I型およびII型)腎症、放射線腎症、閉塞性腎症、びまん性全身硬化症、肺線維症、同種移植片拒絶、遺伝性の腎疾患(例えば多嚢胞性腎臓病、髄質海綿腎、馬蹄腎)、腎炎、糸球体腎炎、腎硬化症、腎石灰症、全身エリテマトーデス、シェーグレン症候群、バージャー病、全身性または糸球体高血圧、尿細管間質性腎症、尿細管性アシドーシス、腎結核、および腎梗塞の治療、予防および発生の危険性の低減のために有用である。特定の実施形態においては、本発明の融合タンパク質、核酸および細胞は、限定しないが例えばレニン阻害剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、AngII受容体拮抗剤(「AngII受容体ブロッカー」としても知られている)、およびアルドステロン拮抗剤(例えばWO2004/098637参照)を包含するレニン−アンジオテンシン−アルドステロン系の拮抗剤と組み合わせる。
【0058】
本発明の融合タンパク質、核酸および細胞はまた、マクロファージ媒介感染症、例えばリーシュマニア属(Leishmania spp.)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosorna cruzi)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)およびらい菌(Mycobacterium leprae)、並びに原生動物であるトキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、カビであるヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、およびクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、およびリケッチア属(Rickettsia)、例えば発疹チフスリケッチア(R.prowazekii)、リケッチア・コノリイ(R.coronii)、およびツツガムシ病リケッチア(R.tsutsugamushi)により誘発されるものに対する免疫応答を増強するために有用である。それらはまた例えば腫瘍、エイズまたは肉芽腫性の疾患により誘発される免疫抑制を低減する場合に有用である。
【0059】
特定の実施形態においては、本発明の融合タンパク質、核酸および細胞は、他のTGF−β拮抗剤と相対比較して小型でありかつ/または短い半減期を有するTGF−β拮抗剤が、治療薬としてより効果的であるような、疾患および状態を治療するために、使用される。本明細書に記載する通り、本発明の融合タンパク質は他のTGF−β拮抗剤(例えばTGF−β抗体、TGF−β受容体−Fc融合タンパク質)よりも小型であり、そしてより短い循環系中半減期を有している。従って、そのような融合タンパク質はそのような特性が望ましい疾患または状態を治療する場合に増大した効果を示す場合がある。例えば、如何なる特定の理論にも制約されないが、本発明の融合タンパク質は、他のTGF−β拮抗剤と相対比較した場合に小型であるため、作用部位へのターゲティングが向上していると考えられる(例えば、腫瘍貫通性の増大、組織(例えば、線維性組織)貫通性の増大)。
【0060】
さらにまた、如何なる特定の理論にも制約されないが、本発明の融合タンパク質は、それらが(TGF−β抗体およびTGF−β受容体−Fc融合タンパク質とは異なり)免疫グロブリンドメインを欠いているため、免疫系による作用部位からのクリアランスに対してそれほど感受性ではないと考えられる(例えば肺の状態または疾患の場合)。
【0061】
本明細書に記載する通り、そして当該分野で知られる通り、TGF−βは多くの細胞プロセス、例えば細胞成長、細胞分化、アポトーシス、細胞ホメオスタシスおよび他の細胞機能に関与している。TGF−βが細胞プロセスにおいて有している重要な役割を考慮すれば、より長時間作用性のTGF−β拮抗剤(例えばTGF−β抗体、TGF−β受容体−Fc融合タンパク質)よりも少ない負の付随作用を相応に有することになるより短時間作用性のTGF−β拮抗剤を投与することが好ましい状態または疾患が存在する場合がある。従って、如何なる特定の理論にも制約されないが、本発明の融合タンパク質は、それらのより短い循環系中の半減期のために、より少ない負のTGF−β拮抗剤関連作用を呈すると考えられる。例えば、出生前の乳児において一般的に診断される肺の疾患である気管支肺異形成(BPD)は、本発明の融合タンパク質のようなより短時間作用性のTGF−β拮抗剤は正常な発達においてTGF−βが有している重要な役割に対する干渉がより低値であることから、そのようなより短時間作用性のTGF−β拮抗剤の投与が有利となる状態である場合がある。
【0062】
一部の例示的な実施形態においては、本発明の融合タンパク質の投与は腎線維症の低減および/または腎臓の形態の良好な保存をもたらす場合がある。
【0063】
以下の実施例は説明目的で提示しており、限定する意図はない。
【0064】
実施例
実施例1:sRII−9Glyの製造および精製
ヒトTGF−βII型受容体cDNAを使用して、図3に模式的に示す通り、9Glyリンカーにより連結されたTβRIIのECD2つを含有する可溶性TGF−β拮抗剤のコンストラクトを作成した(sRII−9Gly)。プライマーは制限酵素の切断部位、そして必要に応じて9グリシン残基のオーバーラップ配列を含有した(Oiuら、J.Biol.Chem.、273(18):11173−6(1998))。第1のECDは表2に示すプライマーAおよびリバースプライマーBを用いて作成し;第2のECDはプライマーCおよびリバースプライマーDを用いて作成した。
【0065】
(表2)sRII−9Glyコンストラクトを作成するために使用したプライマー

XhoI部位は太字、開始コドンは下線、Kozak配列は斜体。
** NdeI部位は太字。
*** NdeIおよびClaI部位は太字, Glyリンカーは下線。
**** BamHIは太字;終止コドンは下線。
【0066】
増幅されたPCR産物をそれぞれの制限酵素で消化し、そして精製されたフラグメントを標準的なクローニング手法を用いてpcDNA3.1プラスミド(Invitrogen、Carlsbad、CA)内にライゲーションした。
【0067】
最終sRII−9Glyコンストラクトのヌクレオチド配列および相当するアミノ酸配列をそれぞれ配列番号:9および配列番号:10に示す。次にこのコンストラクトをCHO細胞中での発現のためにCHO発現ベクター内にサブクローニングした。可溶性II型受容体を発現するCHO細胞系統を使用して可溶性受容体を作成した。CHO生産細胞系統を解凍し、ローラボトル中に播種した。培養物が90%コンフルエントに達した時点で生産培地を供給することにより生産を開始した。細胞培地から一定の間隔で3〜5採取物をその採取回に収集し、そして採取時には新しい培地を補給した。一部の実験においては、sRII−9GlyをHEK293細胞において標準的なプロトコルを使用して調製した。sRII−9Glyに関する精製スキームは3カラム工程を含むものとした。第1の工程は主にアニオン交換樹脂(予め25mM HEPES、0.001%Tween80、pH9.0で平衡化させておいたPallQセラミックハイパーDカラム)を用いた濃縮工程とした。画分は、25mM HEPES、0.1M NaCl、0.001% Tween80、pH9.0を用いて終了時を25mM HEPES、0.3M NaCl、0.001% Tween80、pH9.0として溶離させた。疎水性相互作用カラムを最初の精製工程に後続して使用した。アニオン交換工程により得られた選択された画分を1.5M硫酸アンモニウムで滴定し、濾過し、BioRadのMacroPrepメチルカラム上にローディングした。画分は12.5mM NaPO、0.001% Tween80、pH8.0で溶離させた。選択されたピーク画分をプールし、次に12.5mM NaPO、0.001% Tween80、pH8.0内への接線流濾過を用いて透析濾過することにより、残存する可能性のあるいかなる硫酸アンモニウム痕跡量も除去した。最後のカラム工程はCHT(セラミックヒドロキシアパタイト;BioRad CHTカラム)を用いて実施し、そしてフロースルーモードにおいて実施することにより不純物を除去した。選択されたフロースルー画分を12mM NaPO、150mM NaCl、0.01% Tween80、pH7.2に調整した。
【0068】
実施例2:sRII−9Glyの結合親和性
CHOおよびHEK293細胞において生産したsRII−9Glyの結合親和性をBiacore(商標)を用いて試験した。センサーチップをTGF−β1、−2、または−3でコーティングした。sRII−9GlyをHBS−EP緩衝液中1.2、3.3、10、30、および90nMの濃度で調製した。タンパク質を二つ組で注入し、5分間会合の後、5分間解離に供した。得られた結合曲線を1:1結合モデルにフィットさせた。CHOおよびHEK293が生産したsRII−9Glyは両方とも、表3に示す通り、低いnM範囲においてTGF−β1およびTGF−β3に結合した。
【0069】
(表3)CHOおよびHEK293により生産されたsRII−9GlyのTGF−β結合親和性

【0070】
実施例3:sRII−9Glyの効果測定
HEK293生産sRII−9Glyの効果をRapozaら、J.Immunol.Methods、316(1−2):18〜26(2006)に記載のA549/IL−11細胞バイオアッセイを用いて分析した。sRII−9Glyを連続希釈し、固定濃度のTGF−β(0.3ng/ml TGF−β1または0.7ng/ml TGF−β3)とともに1時間インキュベートし、その後試料を18〜24時間、A549細胞上に移行させた。その後A549細胞上澄み中のhIL−11レベルをELISAにより定量した。
【0071】
TGF−β1およびTGF−β3に関する標準曲線はシグモイド型のロジスティック曲線を生じ、ED50値はそれぞれ251および281pg/mlであった(本アッセイに典型的な範囲)。本実施例において得られたIC50値を表4および5に総括する。
【0072】
(表4)A549/IL−11バイオアッセイにおけるsRII−9GlyのIC50

【0073】
(表5)A549/IL−11バイオアッセイにおけるsRII−9GlyのIC50

【0074】
試験したsRII−9Glyの4ロットのうち、全てがTGF−β1に対してほぼ同一の効果(2倍以内)を示し、そしてTGF−β3に対して同様の効果を保有していた(4倍以内)。このデータは、HEK293細胞系統から作成され、そして同じ方法を用いて精製された拮抗剤のロットが、A549バイオアッセイにおいて同様の効果プロファイルを有するタンパク質を生じさせたことを示している。中性のpHより高値で溶離させた(収率を向上するため)sRII−9Glyの一部の試料をA549力価アッセイにおいて試験することにより、pHがそれらの力価に影響したかどうかを調べた。アッセイは本質的に上記した通り実施し、そして結果は表6に示す。
【0075】
(表6)A549/IL−11細胞バイオアッセイにおけるsRII−9GlyのIC50

【0076】
試験したsRII−9Glyの5試料のうち、全てがTGF−β1に対してほとんど同一の効果(pM範囲において)を示し、IC50値の変動は2倍未満であった(試験の変動内)。同様のIC50値が上記した通りsRII−9Glyのロット1〜4に関して以前に得られている。考えあわせると、これらの結果は、同じ細胞系統から形成され、そして同様の方法を用いて精製された拮抗剤のロットは、A549バイオアッセイにおいて同様の効果プロファイルを有するタンパク質を形成することを示している。7.0〜9.0のpH範囲内のsRII−9Glyの精製は、A549バイオアッセイにおいてTGF−β1を中和するその能力に対して有意に影響しない。
【0077】
CHO生産sRII−9Glyの効果をA549/IL−11細胞バイオアッセイの同様の方法を用いて分析した。結果を表7に示す。
【0078】
(表7)A549/IL−11細胞バイオアッセイにおけるCHO生産sRII−9GlyのIC50(nM)

【0079】
実施例4:sRII−9Glyのインビボ効果(2週間ラット試験)
体重250gの成体雄性スプラーグドーリーラット(7〜8週齢;Taconic Farms、Germantown、NY)をMiyajimaら、Kidney Int.、58(6):2301−13(2000)の片側尿管閉塞(UUO)モデルに使用した。全動物を空調、温度調節、および照明調節された環境下で飼育した。小さな腹側正中切開を行うことにより左側腎臓および上部尿管を露出させ、その後永久尿管結紮を行った。偽手術されたラットには尿管結紮を行わなかった以外は同じ外科的プロトコルを施した。ラットには表8に記載する通り投薬した。1D11は上述のMiyajimaらまたは米国特許5,772,998に記載されている通りネズミIgG1モノクローナル抗TGF−β抗体であり、そして13C4は1D11の陰性対照となる。第3,7,15および21日に0.105Mのクエン酸ナトリウムの10分の1の量まで後方眼窩洞部から採血した。結紮の二週間後に動物を屠殺し、左側腎臓を5分間PBSで灌流し、そして組織学的評価(腎線維症)および転写物分析用に採取した。
【0080】
(表8)処置群(2週間試験)

【0081】
拮抗剤レベルの定量−血漿試料および血清試料中のsRII−9Glyレベルを定量するためのELISA試験を行った。sRII−9Gly定量のために、96ウェルプレートをコーティング緩衝液(0.1M NaHCO)中1μg/mlのTGF−β1(Genzyme Corp.)100μlでコーティングし、そして4℃で一晩インキュベートした。ウェルを1時間ブロッキング緩衝液(0.5% BSA/PBS)150μlでブロッキングした。被験試料を添加し、1時間インキュベートした。ヤギ抗ヒトTGF−βRII(カタログ番号:AF−241−NA、R&D Systems)を1時間250ng/mlで添加した。二次抗体、ウサギ抗ヤギIgG−HRPコンジュゲート(KPLカタログ番号:14−13−06)を1時間100ng/mlで添加した。OPD基質(カタログ番号:P9187、Sigma、St.Louis、MO)を暗所で15分間インキュベートした後、4.5M HSO 50μlを添加した。発色反応はレファレンス650nmとして490nmでプレートを読み取ることにより定量した。標準物質としては精製されたsRII−9Gly(Genzyme Corp.)を使用した。1D11の定量のためにはプレートを1μg/mlの精製TGF−β2(Genzyme Corp.、Framingham、MA)100μlでコーティングした。ブロッキングは37℃で30分間行った。試料を添加し、37℃で2時間インキュベートした後、HRPにコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(カタログ番号:P/N A−016、Sigma)を添加した。シグナルは上記した通り30分間SigmaOPD基質を用いて検出した。
【0082】
全ラットがELISA試験において、被験化合物の検出可能なレベルを有しており、動物間の変動はほとんどなかった(図4参照)。1D11レベル(半減期5〜6日)は平均で100μg/mlであった。これとは対照的に、sRII−9Glyは毎日の静脈内注射にも関わらず10μg/ml未満で検出された(短い循環系中半減期(18〜20時間)のため)。
【0083】
組織病理学的分析−腎臓切片(5μm)を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、そしてパラフィン包埋した。組織切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色し、盲検方式において組織病理学的に採点した。盲検方式において実施した組織学的評価によれば、1D11投与動物は図5に示す通り、13C4/PBS投与動物と比較して有意に良好な腎臓の形態学的特徴を有していたことがわかった(p<0.05)。sRII−9Gly群の1匹は試験において最高の評点(1)を有していたが、平均では、この群は13C4/PBS投与動物と比較して有意差はなかった。
【0084】
腎線維症の定量−線維症はヒドロキシプロリンアッセイおよびピクロシリウスレッド染色およびコラーゲンIII免疫組織化学的染色の定量的評価により定量した。ヒドロキシプロリン含有量はKivirikkoら、Physiol.Chem.、348(11):1341〜4(1967)およびReddyらClinical Biochem.、29:225〜229(1996)において以前に記載されている通り計測した(96ウェルフォーマットに変更)。第1に、腎組織を真空凍結乾燥機中で凍結乾燥し、乾燥した組織を2N NaOH中で加水分解した(100μg乾燥組織/μl)。試料10μlを96ウェルプレートに添加し、クロラミン−T(Sigma)90μlを室温で25分間加水分解試料に添加した。次にエールリッヒ・アルデヒド(Sigma)100μlを添加し、試料を20分間65℃でインキュベートした後、550nmにおける吸光度を計測した。ヒドロキシプロリン含有量は乾燥組織mg当たりのヒドロキシプロリンのμgとして表示した。図6Aに示す通り、sRII−9Glyおよび1D11投与動物の両方において腎ヒドロキシプロリン含有量の有意な低減が観察された(13C4と比較してsRII−9Glyでp<0.01、1D11でp<0.05)。
【0085】
腎切片は標準的な手法を用いてピクロシリウスレッドで染色した。Chromavision自動ソフトウエアを用いて画像を採取し、染色物はMetaMorph分析ソフトウエア(Universal Imaging Corp.、Downingtown、PA)を用いた画像分析により定量した。図6Bに示す通り、ピクロシリウスレッド染色コラーゲンはMetamorph分析により定量した。UUO群のいずれもPBS投与と比較して有意差はなかった(動物間で大きな変動)。しかしながら、sRII−9Gly投与群を13C4と比較した場合には有意差があった(p<0.05)。
【0086】
コラーゲンIIIの免疫組織化学的検出のために、腎組織切片を10分間3%過酸化水素でブロックし、7分間1%脱マスキング溶液(Vector Labs)とともに圧力鍋中で加熱し、その後、30分間タンパク質をブロックした。切片を4℃で一晩、抗体希釈液(Dako)中のヤギ抗コラーゲンIII抗体(1:100)(Southern Biotech)で処理し、5分間PBS/0.1% Tween20で洗浄し、その後37℃で30分間、抗体希釈液(Dako)中のHRPにコンジュゲートしたウサギ抗ヤギIgG(H+L)(1:100;Zymed)で処理した。5分間PBS/0.1% Tween20で洗浄した後、切片を室温で9分間安定なジアミノベンジン(KPL)中で発色させ、30秒間ヘマトキシリンで対比染色した。図6Cに示す通り、投与群のいずれも、個体動物間の大きな変動のためにPBS群と比較して有意差を示していなかった。しかしながら、sRII−9Glyおよび1D11投与群の両方とも、13C4投与群とは有意差があった(p<0.05)。
【0087】
腎転写物の定量−トリゾール(Invitrogen)中の腎組織をZircodiaビーズ(BioSpec)およびビーズビーターを用いてホモゲナイズし、クロロホルムで抽出し、そしてRNAをRNAeasyキット(Qiagen)を用いて製造元の説明書に従って単離した。RNAをDNAseI(Promega)で処理し、そしてcDNAをPowerScriptプレート(BD Biosciences)を用いて作成した。TaqMan(商標)ユニバーサルPCRマスターミックスおよび遺伝子特異的プライマー(表9)を用いてRT−PCRをセットアップし、そしてABIPrism7700配列検出器(Perkin Elmer)上で反応を実施した。
【0088】
(表9)腎転写物定量のために使用したプライマーおよびプローブ

【0089】
図7AはRT−PCRにより試験したコラーゲンIIIに関する転写物レベルを示す。1D11(p<0.05)およびsRII−9Gly(p<0.01)投与の両方ともがPBS投与動物と比較してコラーゲンIIIメッセージレベルを有意に低減した。このデータはIHC/MetamorphによるコラーゲンIIIタンパク質レベルに関する結果と相関していた。コラーゲンIII mRNAレベルが13C4投与によっても低下した理由は不明である。
【0090】
TGF−βアイソフォームの各々に関するメッセージレベルを偽手術された動物と比較した場合のコピー数(図7B)における倍差として表示した。偽手術された動物と比較した場合に閉塞腎においてはTGF−β1およびβ2のmRNAレベルにはそれぞれ6倍および2倍の増大が観察されたのに対し、TGF−β3 mRNAの変化は観察されなかった。図7Bに示す通り、投与群の間では、sRII−9Glyおよび1D11投与群におけるTGF−β1 mRNAレベルが、13C4投与と比較してそれぞれ30および40%低下していた(p<0.01)。拮抗剤投与群の何れにおいてもTGF−β2およびTGF−β3 mRNAレベルの変化は観察されなかった。偽手術された動物においてTGF−β2 mRNAはTGF−β1よりも有意に高値であり、TGF−β2が正常腎臓において役割を果たしていることを示唆していた(TGF−βアイソフォームに関するIHC分析においても観察)。
【0091】
TGF−β中和抗体、1D11は週当たり3回の投薬スケジュールの後、循環系中に残存していた。これとは対照的に、sRII−9Glyレベルはその短い血漿中半減期のために10倍低値であった。本試験においては、1D11およびsRII−9Glyの両方とも、種々のエンドポイントにより評価した同様の程度にまで腎線維症を低減した。両方の拮抗剤は腎臓の形態学的特徴を僅かに向上させ、そして、低下したヒドロキシプロリン含有量、コラーゲンIIIタンパク質レベルおよびピクロシリウスレッド染色により明らかにされる通り、線維症の重症度を低下させた。さらにまた、sRII−9Glyおよび1D11は両方ともTGF−β1およびコラーゲンIII転写物のレベルを低下させた(TGF−β2またはTGF−β3のレベルに対しては無作用)。試験した拮抗剤の何れも、閉塞腎臓における内因性TGF−β受容体(RII、RIII)レベルには影響しなかった。1D11と比較して循環系中のsRII−9Glyの10倍低値のレベルにもかかわらず、1D11およびsRII−9Glyによる同様の効果が得られた。このことは、sRII−9Glyが1D11よりも強力であるか、またはそれが腎臓において異なって局在化していることを示唆している。sRII−9Glyの分子量(グリコシル化を伴って55〜60kDa)は1D11(150kDa)よりも小さく、この相違は、腎臓尿路空間へのsRII−9Glyのより良好な到達性および/または尿細管間質空間内への良好な組織貫通をもたらしていると考えられる。実施例4に記載したものと同様の試験を3週間(vs2週間)の期間を用いて同じモデルにおいて実施した。その延長された試験においてはsRII−9Glyの低い効果が観察されたが、大部分はヒト可溶性受容体タンパク質に対するラットにおける潜在的な免疫応答に起因すると考えられる。
【0092】
実施例5:ラットUUOモデルにおけるsRII−9Glyのインビボ効果(多数回毎日投薬)
sRII−9Gly投与群には以下に総括する通り毎日3回投薬を行った以外は実施例4において上述したものと同様の2週間試験において、成体雄性スプラーグドーリーラットを片側尿管閉塞(UUO)モデルに使用した。
【0093】
(表10)処置群(多数回毎日投薬ラット試験)

【0094】
投与ラットの血流中の種々の形態のTGF−β拮抗剤のレベルを以下の通り試験した。血中のsRII−9Glyレベルは一日当たり投薬の最終回(採血後)の15分後に、そして再度、一晩経過後の翌日、ただし一日当たり投薬の初回前(即ち採血前)に試験することにより、ピークおよび定常状態のレベルを観察した。sRII−9Glyのレベルは投薬直後は1D11と同等(150〜300μg/ml)であったが;定常状態のレベルは14〜60ug/mlの低値であった。
【0095】
効果エンドポイント−拮抗剤の効果は、実施例4における分析と同様の組織病理学的採点および腎線維症の定量により評価した。組織切片をH&E染色し、そして盲検方式において組織病理学的特徴に関して採点した。H&E染色腎切片は13C4投与群と比較してsRII−9Gly(p<0.01)および1D11(p<0.05)投与群において腎臓の形態学的特徴の有意な保存を示していた(図8A)。ヒドロキシプロリンアッセイによるコラーゲンレベルの定量は、1D11投与動物におけるコラーゲンの有意に低値のレベル(p<0.01)およびsRII−9Gly投与群における同様の傾向を示していた(図8B)。
【0096】
総括すれば、ラットUUOモデルにおいて観察されたsRII−9Glyの一日当たり多数回投薬の効果は、腎臓の形態学的特徴および腎線維症の定量により評価した場合、1D11抗TGF−β抗体で達成されたものに匹敵していた。
【0097】
実施例6:マウスUUOモデルにおけるインビボ効果
体重25〜30gの成体雄性C57BL/6マウス(10〜12週齢;Charles River Laboratories)を使用し、そして上記したラットモデルと同様に外科的処置を行った。マウスには表11に示す通り投薬した。尿管結紮2週間後に動物を屠殺し、そして灌流した腎臓を採取して分析に供した。
【0098】
(表11)処置群(毎日投薬マウス試験)

【0099】
血流中の検出可能なsRII−9Glyのレベルを定量したところ、第7および15日にはそれぞれ8および2ug/mlであることがわかった。sRII−9Gly投与動物の大部分が毎日の静脈内投薬にも関わらず検出可能な血中sRII−9Glyレベルの低下を有していた。この低下は、ELISAプレート上のTGF−β1へのsRII−9Glyの結合を妨害した可能性のあるヒトsRII−9Glyタンパク質に対する中和抗体の形成に起因すると考えられる。
【0100】
ヒトsRII−9Glyに対する潜在的抗体形成を第15日の血漿試料中で評価した。ELISAプレートをCHO生産ヒトsRII−9Glyでコーティングし、その後第15日の血漿試料を添加した。HRPにコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG抗体を添加し、その後ODP基質を添加した。発色反応はレファレンス650nmとして490nmでプレートを読み取ることにより定量した。抗体力価はOD>0.100(試験のバックグラウンドは<0.05であった)をもたらす希釈度の逆数として定義した。結果によれば、マウス全9匹ともsRII−9Gly可溶性ヒトTGF−β受容体コンストラクトに対する抗体を有していたが、この試験はTGF−β結合に干渉しない非中和抗体とTGF−β結合に干渉する中和抗体とを区別しなかった。
【0101】
ヒトsRII−9Glyタンパク質への抗体の応答はげっ歯類では予測されたが、抗体の発生は、特に形成された抗体がTGF−βを中和するsRII−9Glyの能力を相殺した場合に、sRII−9Glyコンストラクトの効果に影響する可能性がある。第7日と比較した場合に第15日にマウスの大半の循環系中のELISAにより検出されたsRII−9Glyレベルが低値であったことは、これらの抗体が実際にTGF−βへのsRII−9Glyの結合を低減したことを示唆しており、従ってUUO動物モデルは治療用TGF−β拮抗剤としてのヒトsRII−9Glyの効果を大きく過小評価していると考えられる。
【0102】
マウスUUOモデルにおけるsRII−9Glyの効果を、実施例4において上記実施した分析と同様の組織病理学的採点、腎線維症の定量および転写分析により評価した。H&E染色腎切片を盲検方式において採点したところ、13C4投与群と比較して1D11(5mg/kg)およびsRII−9Gly投与動物の両方において腎臓の形態学的特徴が有意に保存されていた(p<0.05)(図9A)。さらにまた、ヒドロキシプロリンアッセイによるコラーゲンレベルの定量によれば、1D11投与動物におけるコラーゲンの有意に低値のレベル(p<0.01)およびsRII−9Gly投与群における同様の傾向が示されていた(図9B)。
【0103】
コラーゲンIIIおよびプラスミノーゲン活性化物質阻害剤−1(PAI−1)の腎転写物レベルをRT−PCRにより試験した。1D11およびsRII−9Glyの両方とも、PBSおよび13C4投与動物と比較してコラーゲンIII(1D11でp<0.001およびsRII−9Glyでp<0.01)(図9C)およびPAI−1 mRNAレベル(1D11およびsRII−9Glyの両方でp<0.001)(図9D)を有意に低減した。
【0104】
総括すれば、sRII−9Glyおよび対照抗体1D11は腎臓の形態学的特徴を保存し、そして線維症関連の遺伝子の転写およびその後の線維症を低減することにより、マウスUUOモデルにおいて効果を示した。
【0105】
実施例7:単回投与後の正常マウスにおけるsRII−9Glyの生体分布
ヒトsRII−GlyをIODO−GEN法(Pierce)を用いて125Iで標識し、そしてSephadex G−25カラム(Pierce)を用いて精製した。6匹の雄性Balb/cマウスにsRII−9Gly 10mg/kgを静脈内投与した(マウス当たり約680μCiの総放射能を有する125I標識sRII−9Gly 22μgを包含するsRII−9Gly200μg)。選択された臓器(心臓、左右の腎臓、肺、胃、甲状腺、脳、筋肉、陰嚢および全身)をSPECT/CTを用いて投与後30分、2〜3、8および24時間にスキャンし、そして対象領域(ROI)の計数値を算出した。最終画像の後、マウスを屠殺し、そして選択された臓器を切開し、そして放射能を集計した(肝臓、心臓、腎臓、肺、脾臓、舌、胃、食道、小腸および大腸、結腸、直腸、脳、大腿骨、皮膚[耳]および筋肉)。切除した臓器に関する数値を組織重量により標準化した。
【0106】
SPECT/CT画像は心臓、頸動脈、左右腎臓、胃および膀胱中の30分におけるsRII−9Glyを示している(図10)。時間とともに活性の低下が観察され、sRII−9Glyの急速なクリアランスが示された。膀胱における強力なsRII−9Glyシグナルおよび肝臓および脾臓で検出された低いレベルは、sRII−9Glyのクリアランスが主に腎臓を経由して起こったことを示していた。8および24時間において、それぞれ総計数値の10〜47%および80〜85%が除去された。甲状腺を除き24時間には放射能は殆ど観察されなかった。より後期の時点に関してSPECT/CT画像の尺度を増大させたところ、時間経過の全体にわたって同じ臓器におけるsRII−9Glyの局在化が示された(心臓、胃、および膀胱)。
【0107】
24時間におけるsRII−9Glyの生体分布もまた摘出した臓器の放射能を集計することにより調べた。これは1)投与された際の活性と比較した場合の摘出組織における総放射能(cpm)のパーセント(図11A)、および2)組織重量により標準化した組織計数値のパーセント(図11B)として表示した。
【0108】
摘出した臓器における放射能は血液、胃、肝臓、腎臓および小腸において最高値であった(>0.2%)。組織重量に関して標準化したところ、sRII−9Glyの最高量は、血液、皮膚および胃(1.5〜1.8%)において、そして次いで腎臓および肺(0.7〜0.8%)、そして心臓および舌(0.5%)において観察された。分析した臓器の残余は、僅か0.04%のみ含有していた脳を除き、0.2〜0.3%であった。
【0109】
総括すると、125I標識sRII−9Glyの生体分布をSPECT/CTスキャンにより正常マウスにおいて試験した。摘出した臓器のSPECT/CT撮影および放射能の定量の両方とも、全動物で同等および同様であった。予測された通り、被験物の大部分は腎臓により24時間以内に除去され、物質の残余は大部分が血液、皮膚および胃において検出可能であった。これらの結果はsRII−9Glyは皮膚および胃、並びに腎臓および肺に効率的に保持され得ることを示唆している。従ってsRII−9Glyは、sRII−9Glyが効率的に保持されるこれらの組織および臓器が罹患している疾患および障害、例えば皮膚の硬化性および線維性の疾患および障害(例えば硬皮症)、皮膚癌(例えば黒色腫)、腎臓の疾患および障害(例えば糖尿病性腎症)、および肺の疾患および障害(例えば肺癌および気管支肺異形成)の治療において特に有用であるといえる。
【0110】
本明細書は参照により全体が本明細書に組み込まれる本明細書中で引用した参考文献の教示内容に鑑みて最もよく理解される。本明細書中の実施形態は本発明の実施形態の例示であり、本発明の範囲を限定すると考えてはならない。多くの他の実施形態が本発明に包含されることは当業者のよく知る通りである。本開示内で引用した全ての刊行物および特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書における任意の参考文献の引用はその参考文献が本発明の先行技術であることを許容するものではない。分子メカニズムおよび経路の表示は本発明の理解を容易にするためにのみ提示しており、これに拘束されると考えてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TGF−β受容体IIのTGF−β結合ドメイン2つを含む融合タンパク質であって、該結合ドメインがペプチドリンカーにより相互に連結されている、融合タンパク質。
【請求項2】
第1のTGF−β結合ドメインのC末端がリンカーにより第2のTGF−β結合ドメインのN末端に連結されている、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項3】
2つのドメインが同一である、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項4】
リンカーが50以下のアミノ酸からなる、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項5】
リンカーの最大計算長が65Åである、請求項4記載の融合タンパク質。
【請求項6】
リンカーが1つ以上のグリシンを含む、請求項5記載の融合タンパク質。
【請求項7】
リンカーが9つのグリシン残基を含む、請求項5記載の融合タンパク質。
【請求項8】
TGF−β結合ドメインの一方または両方が配列番号:31のアミノ酸28〜136と少なくとも60%同一である配列を含む、請求項5記載の融合タンパク質。
【請求項9】
TGF−β結合ドメインの一方または両方が配列番号:8に示す配列を含む、請求項5記載の融合タンパク質。
【請求項10】
TGF−β結合ドメインの一方または両方が配列番号:31のアミノ酸28〜129を含む、請求項9記載の融合タンパク質。
【請求項11】
100kDa未満の分子量を有する、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項12】
融合タンパク質が可溶性である、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項13】
i)配列番号:31に示す配列を各々有するTGF−β結合ドメイン2つ、ii)該2つのドメインを連結する9Glyリンカー、および任意でiii)1つ以上のアダプターアミノ酸、を含む、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項14】
配列番号:9のアミノ酸24〜アミノ酸310に示すアミノ酸配列を含む請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項15】
配列番号:9に示すアミノ酸配列を含む、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項16】
請求項1記載の融合タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項1記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項18】
配列番号:10に記載する配列を含む、請求項17記載の核酸。
【請求項19】
請求項17記載の核酸を含むベクター。
【請求項20】
請求項17記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項21】
哺乳類細胞である、請求項20記載の宿主細胞。
【請求項22】
CHOまたはHEK293細胞である、請求項21記載の宿主細胞。
【請求項23】
請求項20記載の宿主細胞を培養する段階、および細胞培養物から融合タンパク質を回収する段階を含む、融合タンパク質の製造方法。
【請求項24】
請求項1記載の融合タンパク質または請求項17記載の核酸を哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類におけるTGF−β発現に関連する疾患または状態を治療する方法。
【請求項25】
疾患または状態が腎臓の疾患または状態である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
腎臓の疾患または障害が糖尿病性腎症、放射線腎症、閉塞性腎症、多嚢胞性腎臓疾患、髄質海綿腎、馬蹄腎、腎炎、糸球体腎炎、腎硬化症、腎石灰症、バージャー病(IgA腎症)、全身性高血圧、糸球体高血圧、尿細管間質性腎症、尿細管性アシドーシス、腎結核、および腎梗塞からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
疾患または状態が癌である、請求項24記載の方法。
【請求項28】
癌が胃癌、腸癌、皮膚癌、乳癌、および甲状腺癌からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
癌が黒色腫である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
癌が骨癌である、請求項27記載の方法。
【請求項31】
癌が肺癌である、請求項27記載の方法。
【請求項32】
疾患または状態が線維性または硬化性の疾患または障害である、請求項24記載の方法。
【請求項33】
線維性または硬化性の疾患または障害が硬皮症、アテローム性動脈硬化症、肝線維症(liver fibrosis)、びまん性全身硬化症、肺線維症(pulmonary fibrosis)、糸球体腎炎、神経瘢痕形成、皮膚瘢痕形成、肺線維症(lung fibrosis)、放射線誘導線維症、肝線維症(hepatic fibrosis)、および骨髄線維症からなる群より選択される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
疾患または障害が気管支肺異形成である、請求項24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2010−529859(P2010−529859A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512388(P2010−512388)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/066941
【国際公開番号】WO2008/157367
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(501475594)ジェンザイム、コーポレーション (3)
【氏名又は名称原語表記】GENZYME CORPORATION
【Fターム(参考)】