説明

USB装置、印刷装置、USB装置の制御方法及びそのプログラム

【課題】USBホスト機器と又はUSBデバイス機器との間の無線でのデータ通信をより円滑に行う。
【解決手段】プリンタ20は、USBホスト機器とデータの送受信を無線で行う送受信機32を有するUSB装置30を備えている。そして、USB装置30がデバイス機器(デジタルカメラ40)から受信した印刷用データの印刷処理を実行中である実行中期間であるときには、USBホスト機器(ユーザPC60)との通信接続を解除する。その後、印刷処理が終了すると、USB装置30のリブート処理を実行してUSBホスト機器との再接続を図るのである。このように、USB装置30は、USBホスト機器からのデータの処理ができないときには、予めUSBホスト装置との通信を切断するのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、USB装置、印刷装置、USB装置の制御方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、USB装置としては、画像出力装置に配設されており、ワイヤレスUSBにおいて、USBデバイスクラスと画像出力装置との間のデータのやり取りを行うと共に、画像出力装置とUSBホストクラスとの間のデータのやり取りを行うホストワイヤアダプタの機能を有したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載されたUSB装置は、USBホスト機器とUSBデバイス機器とが1つの無線USBインタフェースで情報のやり取りを行うことができる。
【特許文献1】特開2007−48029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この特許文献1に記載されたUSB装置が配設された画像出力装置は、USBデバイスとしてもUSBホストとしても動作するものである。ここで、USBデバイス機器とUSBホスト機器とのいずれかとデータの送受信を行うと、そのデータを用いて画像出力装置が所定の処理(例えば印刷など)を行うことがある。このとき、ワイヤレスUSBでは、物理的にUSBデバイス機器とUSBホスト機器と接続されていないから、データの送受信をどのように行うのかが問題となる。このような場合には、USBホスト機器と又はUSBデバイス機器との間のデータ通信を円滑に行うことが望まれていた。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、USBホスト機器と又はUSBデバイス機器との間の無線でのデータ通信をより円滑に行うことができるUSB装置、印刷装置、USB装置の制御方法及びそのプログラムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明のUSB装置は、
USBホスト及びUSBデバイスの機能を有するUSB装置であって、
USBホスト機器とのデータの送受信とUSBデバイス機器とのデータの送受信とを併用して無線で行う無線手段と、
USBホスト機器との送受信条件に関する通信情報を保存する情報記憶手段と、
USBホストとして振舞い前記無線手段が前記USBデバイス機器との間で所定の処理用データを送信又は受信し該処理用データを用いる所定のデータ処理をデータ処理実行手段が実行中である期間に基づく実行中期間であるときには前記無線手段に前記USBホスト機器との接続を解除させ、前記データ処理実行手段が前記データ処理を終了したあとには前記情報記憶手段に保存された前記通信情報を用いて前記無線手段に前記USBホスト機器と再接続させる通信制御手段と、
を備えたものである。
【0007】
このUSB装置では、USBホストとして振舞いUSBデバイス機器との間で所定の処理用データを送信又は受信しこの処理用データを用いる所定のデータ処理を実行中である期間に基づく実行中期間であるときにはUSBホスト機器との接続を解除させ、データ処理を終了したあとには保存されたUSBホスト機器との送受信条件に関する通信情報を用いてUSBホスト機器と再接続する。このように、USBデバイス装置からのデータの処理中であり、USBホスト機器からのデータの処理ができないときには、予めUSBホスト装置との接続を解除し、このデータ処理が終わるとUSBホスト装置との接続を回復するのである。したがって、USBホスト機器と又はUSBデバイス機器との間の無線でのデータ通信を円滑に行うことができる。ここで、「データ処理を実行中である期間に基づく実行中期間」とは、データ処理を実行中の全期間としてもよいし、データ処理の実行準備期間を含む期間としてもよいし、デバイス機器からのデータ処理を実行中である期間とその後のホスト側からのデータ送受信の実行期間とが一部重なるような期間としてもよい。
【0008】
本発明のUSB装置において、前記通信制御手段は、未接続のUSBデバイス機器と接続を確立した際に前記USBデバイス機器との送受信条件に関する通信情報を前記情報記憶手段へ保存し、該USBデバイス機器との接続確立中の期間を含む前記実行中期間に亘って前記無線手段に前記USBホスト機器との接続を解除させるものとしてもよい。こうすれば、接続したUSBデバイス機器の通信情報を保存するため、あとでこの通信情報を用いてこのUSBデバイス機器との間の無線でのデータ通信を円滑に行うことができる。また、USBデバイス機器と接続している間は、この機器からのデータ処理を行うことが多いから、接続している機器を優先的な取り扱いとしてデータ通信を円滑に行うことができる。
【0009】
本発明のUSB装置において、前記データ処理実行手段は、前記処理用データである印刷処理用データを用いて印刷媒体へ印刷処理する印刷処理実行手段であり、前記通信制御手段は、USBホストとして振舞い前記無線手段が前記デバイス機器から印刷処理用データを受信し該受信した印刷処理用データを用いて前記印刷処理実行手段が印刷処理を実行中である期間に基づく実行中期間であるときには、前記無線手段に前記USBホスト機器との接続を解除させるものとしてもよい。印刷処理は、数多くの印刷処理用データの印刷処理を実行することができないことが多いため、本発明を適用する意義が高い。
【0010】
本発明のUSB装置において、前記通信制御手段は、前記USBホスト機器との接続を解除させたあと前記無線手段に前記USBホスト機器と再接続させるに際して、USB装置のリブート処理を実行するものとしてもよい。こうすれば、リブート処理を用いて比較的簡単な処理でUSBホスト機器と再接続することができる。リブート処理とは、USBデバイスとの接続確立前にUSBホストと接続していた際の通信情報を元に、USB装置を再起動させることを意味する。
【0011】
本発明のUSB装置は、前記無線手段を1つのみ備えたものとしてもよい。こうすれば、簡素な構成でUSBデバイス機器又はUSBホスト機器との通信を行うことができる。
【0012】
本発明の印刷装置は、上述したいずれか1つに記載のUSB装置と、前記USB装置からの前記処理用データである印刷処理用データを用いて印刷媒体へ印刷処理する前記データ処理実行手段としての印刷処理実行手段と、を備えたものである。この印刷装置は、上述したUSB装置のいずれかを備えているから、これと同様の効果、例えば、USBホスト機器と又はUSBデバイス機器との間の無線でのデータ通信をより円滑に行うことができる効果を奏する。
【0013】
本発明のUSB装置の制御方法は、
USBホスト機器とのデータの送受信とUSBデバイス機器とのデータの送受信とを併用して無線で行う無線手段、を備え、USBホスト及びUSBデバイスの機能を有するUSB装置の制御方法であって、
(a)USBホストとして振舞い前記無線手段が前記USBデバイス機器との間で所定の処理用データを送信又は受信し該処理用データを用いる所定のデータ処理を実行中である期間に基づく実行中期間であるときには前記無線手段に前記USBホスト機器との接続を解除させるステップと、
(b)前記ステップ(a)のあと、前記データ処理を終了したあとにはUSBホスト機器との送受信条件に関する通信情報を用いて前記無線手段に前記USBホスト機器と再接続させるステップと、
を含むものである。
【0014】
このUSB装置の制御方法においても、USBホスト機器と又はUSBデバイス機器との間の無線でのデータ通信をより円滑に行うことができる。なお、このUSB装置の制御方法において、上述したUSB装置の種々の態様を採用してもよいし、また、上述したUSB装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【0015】
本発明のプログラムは、上述したUSB装置の制御方法の各ステップを1又は複数のコンピュータ(例えばCPU)に実現させるためのものである。このプログラムは、CPUが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してサーバなどのコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのCPUに実行させるか又は複数のCPUに各ステップを分担して実行させれば、上述したUSB装置の制御方法の各ステップが実行されるため、該制御方法と同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である無線USBシステム10の構成の概略を示す構成図である。本実施形態の無線USBシステム10は、USBホストとUSBデバイスとしての機能を備えたデュアルロールデバイスであり印刷用データの印刷などを行うプリンタ20と、USBホストとUSBデバイスとしての機能を備えたデュアルロールデバイスであり撮像した画像データの送信などを行うデジタルカメラ40と、USBホストとしてプリンタ20とデジタルカメラ40と無線(ワイヤレス)USBを介して情報のやりとりを行うユーザパソコン(PC)60とによって構成されている。なお、本実施例のデジタルカメラ40はデュアルロールデバイスの例を示しているが、USBデバイス機能のみを備えた構成としてもよい。
【0017】
プリンタ20は、装置全体の制御を司るコントローラ21と、着色剤としてインクを用いて記録紙Sに印刷を行う印刷機構25と、ユーザへ情報を表示可能でありユーザの指示を入力可能である操作パネル26と、外部機器(例えばデジタルカメラ40)との間で無線によりデータの送受信を行うUSB装置30と、を備えている。コントローラ21は、CPU22を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムを記憶したROM23と、一時的にデータを記憶するRAM24とを備えている。このコントローラ21は、バス29を介して印刷機構25や操作パネル26、USB装置30などと接続されている。印刷機構25は、図示しないが、各色のインクに圧力をかけ、この加圧されたインクを記録紙Sに吐出して印刷処理を実行するインクジェット方式の機構である。なお、インクへ圧力をかける機構は、圧電素子の変形によるものとしてもよいしヒータの熱による気泡の発生によるものとしてもよい。USB装置30は、無線あるいは有線で接続された外部機器と情報のやり取りを制御するUSBコントローラ31と、USBホスト機器と又はUSBデバイス機器とのデータの送受信を併用して無線で行う送受信機32と、USBケーブル37,38を装着するレセプタクル34と、情報を保存・消去可能なフラッシュROM39と、を備えている。このプリンタ20では、送受信機32を1つだけ備えている。レセプタクル34は、送受信機32と対に用いられることがあり、AB型レセプタクルとして構成されている。なお、レセプタクル34は、A型レセプタクルとB型レセプタクルをそれぞれ備えてもよい。操作パネル26は、ユーザがプリンタ20に対して各種の指示を入力するためのデバイスであり、各種の指示に応じた文字や画像が表示される表示部27や、ユーザの指示を各種ボタンにより入力可能である操作部28などが設けられている。操作部28には、カーソルを上下左右に移動する際に押下されるカーソルキー28aや選択対象を決定する際に押下される決定キー28b、初めて通信する機器との接続を確立するときに押下される接続キー28cなどが配設されている。なお、USBケーブル36,37,38は、その一端にAプラグが設けられ、他端にはBプラグが設けられており、適したレセプタクルに装着・装着解除可能なケーブルとして構成されている。
【0018】
デジタルカメラ40は、各種制御を実行するコントローラ41と、入射した光を撮像素子(例えばCMOSなど)により電気信号に変換し画像ファイルを生成する撮影部45と、画像ファイルを書き込み消去可能なメモリカード12と、ユーザへ情報を表示可能な表示部47やユーザの指示を入力可能である操作部48が配設された操作パネル46と、外部機器(例えばプリンタ20)との間で無線によりデータの送受信を行うUSB装置50と、を備えている。コントローラ41は、CPU42を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムを記憶したROM43と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM44とを備えている。操作部48には、ユーザがカーソルなどを移動させるときに押下されるカーソルキー48aや処理選択などを決定するときに押下される決定キー48b、初めて通信する機器との接続を確立するときに押下される接続キー48cなどが配置されている。USB装置50は、無線あるいは有線で接続された外部機器と情報のやり取りを制御するUSBコントローラ51と、USBホスト機器と又はUSBデバイス機器とのデータの送受信を併用して無線で行う送受信機52と、USBケーブル36,37を装着するレセプタクル54と、情報を保存・消去可能なフラッシュROM59と、を備えている。このデジタルカメラ40では、送受信機52を1つだけ備えている。レセプタクル54は、送受信機52と対に用いられることがあり、AB型レセプタクルとして構成されている。なお、レセプタクル54は、A型レセプタクルとB型レセプタクルをそれぞれ備えてもよい。また、デジタルカメラ40がUSBデバイスとして構成されている場合は、レセプタクル54はB型レセプタクルとして構成されていればよい。メモリカード12は、データの書き込み及び消去可能な不揮発性のメモリであり、デジタルカメラ40などの撮影装置により撮影された複数の画像ファイルなどが保存されている。
【0019】
ユーザPC60は、周知の汎用パソコンであり、各種制御を実行するCPU62や各種制御プログラムを記憶するROM63、データを一時記憶するRAM64などを備えたコントローラ61と、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する大容量メモリであるHDD65と、外部機器(例えばプリンタ20)との間で無線によりデータの送受信を行うUSBコントローラ66と、を備えている。USBコントローラ66には、データの送受信時に用いる情報などを保存したフラッシュROM67が設けられ、USBホストとしてデータの送受信を無線により実行する送受信機68やレセプタクル69などが電気的に接続されている。また、ユーザPC60は、各種情報を画面表示するディスプレイ72やユーザが各種指令を入力するキーボード及びマウス等の入力装置74などを備え、ディスプレイ72に表示されたカーソル等をユーザが入力装置74を介して入力操作するとその入力操作に応じた動作を実行する機能を有している。このユーザPC60は、インストールされたプログラムによりプリンタ20に対して印刷処理を指令したり、デジタルカメラ40に記憶された画像データを取得したりする。
【0020】
次に、こうして構成された本実施形態の無線USBシステム10の動作について、特に、無線USBを介してデータを送受信しプリンタ20で印刷処理する際の動作について説明する。ここでは、プリンタ20とユーザPC60とは既に無線USBで接続済み(アソシエーション済み)であり、プリンタ20の処理について主として説明する。まず、プリンタ20とユーザPC60との電源をオンする。すると、プリンタ20のUSBコントローラ31は、図2に示すデュアルロールプリンタ処理ルーチンを実行する。図2は、プリンタ20のUSBコントローラ31により実行されるデュアルロールプリンタ処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンを実行するとUSBコントローラ31は、アソシエーション時に保存したコネクション・コンテキスト情報を元にUSBホストとの接続を回復し(ステップS100)、USBホスト側との転送速度設定やセキュリティ設定などを行い(ステップS110)、ユーザPC60との通信接続を確立する。ここで、コネクション・コンテキストには、ユーザPC60とのアソシエーションを行うために必要な情報、例えば、ホストおよびデバイスのIDや、セキュリティ情報などが含まれている。また、通信接続の確立は、例えば4ウェイハンドシェイクにより行うものとする。この4ウェイハンドシェイクは、例えば、以下の手順で行うことができる。USBホストとUSBデバイスは、マスター鍵であるCK(Connection Key)を相互で保有している。まず、USBホスト(ユーザPC60)がユニークなHNonce及びTKID(Temporal Key Identifier)を送受信機68を介してUSBデバイス(プリンタ20)側へ送信し、これを受けたUSBコントローラ31が、自ら生成したユニークなDNonce、HNonce及びCKからPTK(Pairwise Temporal Key)CK、HNonce、DNonceを元にPTKを生成し、正しいPTKをUSBデバイス側が有していることを確認する。これは、USBホストとUSBデバイスが同じCKを所有していれば、HNonceおよびDNonceからは、必ず同じPTKが生成されることに基づく。続いて、USBホストがPTKの使用開始をUSBデバイスへ通知し、これを受けたUSBデバイスが、正しいPTKをUSBホスト側が有していることを確認し、PTKの使用開始をUSBホストへ通知する。これにより、PTKによるUSBホストとUSBデバイス間の暗号化通信を行うことができる。このように、USBホストとUSBデバイスとの通信接続を確立することができる。
【0021】
また、ここで、初めて無線USBで機器間の通信接続の確立を行うアソシエーションについて説明する。アソシエーションとしては、USBケーブルを利用するUSBケーブル方式(Out of Band方式)と、無線USBの送受信機を利用するニューメリック方式(In Band方式)とがある。USBケーブル方式では、USBケーブル37の一端(A型プラグ)をレセプタクル69に装着すると共に、USBケーブル37の他端(B型プラグ)をレセプタクル34に装着する。すると、USBコントローラ31は、USB装置30のディスクリプタをUSBケーブル37を介してUSBコントローラ66へ送信する。これを受けたUSBコントローラ66は、このディスクリプタをフラッシュROM67に保存すると共に、ディスクリプタに無線USBの対応機器である情報が含まれているので、USBケーブル37を介してコネクション・コンテキストを交換し、その後、4ウェイハンドシェイクを実行し、無線USBを使用可能な状態とする。なお、ディスクリプタの格納場所は、HDD65などの不揮発性記憶領域に保存してもよい。一方、ニューメリック方式では、例えば、ユーザは、図3に示すワイヤレスUSBアソシエーション画面80をプリンタ20の表示部27に表示させ、アソシエーションを開始させる。このワイヤレスUSBアソシエーション画面80には、上下左右に移動可能なカーソル81のほか、アソシエーション済みのホスト機器名を表示するホスト機器表示部82と、アソシエーション済みのデバイス機器名を表示するデバイス機器表示部84と、接続する機器がホスト側であるかデバイス側であるかを選択する機器種選択欄86とが含まれており、これらの機器を確認可能となっている。このとき、ユーザは、同様のアソシエーション開始のための画面をユーザPC60のディスプレイ72にも表示させる。そして、ユーザは、ディスプレイ72の画面上の図示しない接続開始ボタンをクリックすると共に、カーソル81によりホスト機器との接続のためプリンタ20の接続キー28cを押下する。すると、USBコントローラ31は、数字列である公開キー(Public Key cryptography)の交換をUSBコントローラ66との間で行い、USBホストおよびUSBデバイスの両者でこれらの双方の公開キーを元にハッシュ値を求めて、USBデバイスが表示可能な2桁または4桁の値を確認用数値として表示部27に表示する。また、ユーザPC60も前記確認用数値をUSBホストから通知された桁数でディスプレイ72に表示する。ここで、USBホスト及びUSBデバイスにて同じ確認用数値が表示されたときはアソシエーションが成功であり、違う数値が表示されたときは違うホストとアソシエーションが行われた等の理由により失敗である。USBホスト及びUSBデバイスにおいて同一の確認用数値を確認した場合、ユーザにより、ディスプレイ72の画面上の図示しない接続確認ボタンがクリックされると共に、カーソル81により接続確認ボタンを押下される。USBコントローラ31は、CK(Connection Key)を生成し、CHID(Connection Host ID)およびCDID(Connection Device ID)と共にコネクション・コンテキストとしてフラッシュROM39に保存する。なお、フラッシュROM39には、複数(少なくとも一つ)のコネクション・コンテキストを保存する領域が設けられている。その後、4ウェイハンドシェイクを実行し、無線USBを使用可能な状態とする。USBアソシエーション画面80の、アソシエーション済みのホスト機器名を表示するホスト機器表示部82と、アソシエーション済みのデバイス機器名を表示するデバイス機器表示部84には、フラッシュROM39に保存されているコネクション・コンテキストの情報を元に、過去に接続された機器の一覧が表示される。過去に接続されたUSBホストと接続する場合は、ホスト機器表示部82から接続するホストを選択して対応するコネクション・コンテキスト情報を元に接続を回復することができる。その後、4ウェイハンドシェイクを実行し、無線USBを使用可能な状態とする。
【0022】
さて、ステップS110のあと、ユーザPC60のUSBコントローラ66は、USBのデバイス列挙処理を行い、プリンタ20を認識する。次に、USBコントローラ31は、USBホスト側から印刷指令を受信したか否かを判定し(ステップS120)、印刷指令を受信したときは、送受信機68から無線送信された印刷用データの送受信処理を送受信機32により実行し(ステップS130)、印刷終了したか否かを判定する(ステップS140)。ここで、「送受信処理」には、印刷用データの受信やプリンタのステータス・データの送信を行うためのバルクデータの送受信を行うため、有線のUSBで規定されているトークン、データ、ハンドシェイクからなるトランザクションなどの処理が含まれている。このUSB装置30が受信した印刷用データは、RAM24の所定領域に格納される。また、印刷処理では、CPU22により、RAM24に記憶されている印刷用データをラスタデータに展開し、図示しない駆動モータを駆動して搬送ローラを回転させて記録紙Sを搬送し、印刷ヘッドへの電圧を制御することにより、展開したラスタデータに基づいて記録紙Sに画像を印刷する処理を行う。印刷処理を終了していないときは、印刷処理が終了するのを待ち、印刷処理が終了したときは、電源OFFか否かを判定する(ステップS150)。電源OFFでないときには、ステップS120以降の処理を実行する。このように、ユーザPC60から無線で送信された印刷用データを受信して、印刷処理を実行するのである。
【0023】
一方、ステップS120でホスト側から印刷指令を受信していないときには、デバイス側への通信接続指令、即ちアソシエーション要求があるか否かを判定する(ステップS160)。デバイス側への通信接続指令がないときには、ステップS150以降の処理を実行する。一方、デバイス側への通信接続指令があるときには、USBホスト側への接続を解除し(ステップS170)、デバイス側とのアソシエーション処理を実行する(ステップS180)。USBホスト機器との接続解除は、例えばUSBホスト機器へデバイスDNディスコネクトを送信することにより行うことができる。以下、未アソシエーションのUSBデバイス機器としてのデジタルカメラ40とプリンタ20との間のアソシエーションが通信接続指令として実行された場合について説明する。この場合、プリンタ20は、ユーザPC60に対してUSBデバイス装置として振る舞っていたが、デジタルカメラ40に対してはUSBホスト装置として振る舞う。即ち、プリンタ20がデジタルカメラ40に記憶されている画像ファイルを読み出して印刷する場合などである。まず、上述したUSBケーブル方式又はニューメリック式のアソシエーションがユーザにより実行されると、USBコントローラ31は、コネクション・コンテキストが設定されるまで待機し(ステップS190)、コネクション・コンテキストが設定されたときにはそのコネクション・コンテキストをコネクション・コンテキスト情報39aに格納し(ステップS200)、デバイス側との転送速度設定及びセキュリティ設定を行う(ステップS210)。この時点で無線USBの接続が完了するため、その後通常のUSBのデバイス列挙の処理を行い(ステップS220)、デジタルカメラ40が認識されるので、USBデバイスと通信が可能となるようにデバイスを構成する。
【0024】
図4は、フラッシュROM39に保存されたコネクション・コンテキスト情報39aの一例の説明図である。このコネクション・コンテキスト情報39aには、アソシエーション済みのホスト機器及びデバイス機器が対応する転送速度、セキュリティ情報(例えば暗号キーなど)などが格納されている。このコネクション・コンテキスト情報39aと同様の情報がフラッシュROM59やフラッシュROM67にも記憶されている。また、CPU22は、コネクション・コンテキスト情報39aを利用してワイヤレスUSBアソシエーション画面80を作成することができる。なお、ここで説明したアソシエーションではなく、アソシエーション済みのデバイス機器とのコネクションを実行する場合についても、上述したステップS180〜S220に準じた処理を行うことにより無線USBでのデータ送受信を実現することができる。この保存されたコネクション・コンテキストを利用して接続する場合は、コネクション・コンテキストを設定するまでの一連の処理をスキップすることができる。ステップS220のあと、デジタルカメラ40の送受信機52から送信されたデータを送受信機32により受信するなどのデータ送受信処理を実行し(ステップS230)、印刷処理が終了するまで待機する(ステップS240)。この間、USBコントローラ66とは接続が解除された状態である。ステップS240で印刷処理が終了したときには、デバイス機器との通信接続を解除すると共に(ステップS250)、USB装置30のリブート処理(USBおよび無線USBに基づいた切断・接続処理)を実行し、コネクション・コンテキスト情報39aを利用しUSBホストとの再接続を実行し(ステップS260)、ステップS150以降の処理を実行し、ステップS150で電源がOFFされたときには、このルーチンを終了する。このように、他の印刷用データの印刷処理ができない期間である、USBデバイス機器からの印刷用データの印刷処理を実行中である実行中期間に亘ってUSBホストとの通信接続を解除することによりUSBホスト機器から印刷用データを受信しないようにし、その後印刷処理が終了すると、USB装置30をリブートしてUSBホストとの接続を回復するのである。
【0025】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のUSB装置30が本発明のUSB装置に相当し、ユーザPC60がUSBホスト機器に相当し、デジタルカメラ40がUSBデバイス機器に相当する。また、送受信機32が無線手段に相当し、コントローラ21及び印刷機構25がデータ処理実行手段及び印刷処理実行手段に相当し、USBコントローラ31が通信制御手段に相当し、フラッシュROM39が情報記憶手段に相当する。また、印刷用データが処理用データ及び印刷処理用データに相当し、コネクション・コンテキスト情報39aが通信情報に相当し、記録紙Sが印刷媒体に相当する。なお、本実施形態では、プリンタ20の動作を説明することにより本発明のUSB装置の制御方法の一例も明らかにしている。
【0026】
以上詳述した本実施形態の無線USBシステム10によれば、USBホスト機器からのデータの処理ができないときである、USB装置30がデバイス機器から受信した印刷用データの印刷処理を実行中である実行中期間であるときには、USBホスト機器との接続を解除し印刷処理が終了するとUSBホスト機器との通信接続を回復するため、USBホスト機器とUSB装置30との間の無線でのデータ通信及びUSBデバイス機器とUSB装置30との間の無線でのデータ通信をより円滑に行うことができる。また、接続したUSBデバイス機器のディスクリプタをフラッシュROM39に保存するため、あとでこの情報を用いてこのUSBデバイス機器との間の無線でのデータ通信を円滑に行うことができる。また、USBデバイス機器と接続している間は、この機器からのデータ処理を行うことが多いから、接続している機器を優先的な取り扱いとしてデータ通信をより円滑に行うことができる。更に、印刷処理は、数多くの印刷用データの印刷処理を実行することができないことが多いため、本発明を適用する意義が高い。更にまた、リブート処理を用いて比較的簡単な処理でUSBホスト機器と再接続することができる。そしてまた、送受信機32を1つのみ備えているため、簡素な構成でUSBデバイス機器又はUSBホスト機器との通信を行うことができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
例えば、上述した実施形態では、本発明のUSB装置を備えたプリンタ20として説明したが、本発明のUSB装置を備えたデジタルカメラ40としてもよい。図5は、デジタルカメラ40のUSBコントローラ51により実行されるデュアルロールデジタルカメラ処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。なお、上述したデュアルロールプリンタ処理ルーチンと同様の処理には同じ符号を付してその説明を省略する。ここでは、ユーザPC60をUSBホスト機器とし、デジタルカメラ40がUSBデバイスとして振舞っているときに、プリンタ20がUSBデバイス機器としてデジタルカメラ40に通信接続し、デジタルカメラ40がUSBホストとして振舞うような場合について、具体的に説明する。即ち、デジタルカメラ40がメモリカード12に記憶されている画像ファイルをプリンタ20に送信して直接印刷を実行する場合などである。デジタルカメラ40のUSBコントローラ51は、上述したステップS100,S110を実行したあと、ホスト機器からデータ送信依頼を受信したか否かを判定し(ステップS300)、データ送信依頼を受信したときには、送受信機52から送受信機68へデータの送受信を行い(ステップS310)、ステップS150以降の処理を実行する。一方、データ送信依頼を受信していないときには、デジタルカメラ40から印刷用データ(画像データ)をプリンタ20へ送信して印刷を実行させる指令があったか否かを図示しない直接印刷ボタンが押下されたか否かに基づいて判定し(ステップS320)、この印刷指令がないときには上述したステップS150以降の処理を実行し、印刷指令があったときには、上述したステップS170〜S230の処理を実行し、印刷用データの送信が終了するのを待って(ステップS330)、ステップS250以降の処理を実行する。こうしても、USBホスト機器との間の無線でのデータ通信又はUSBデバイス機器との間の無線でのデータ通信をより円滑に行うことができる。
【0029】
上述した実施形態では、USBデバイス機器からの印刷用データの印刷処理を実行準備中の期間(印刷用データを送信前の期間)を含む実行中期間であるときにはUSBホスト機器との通信接続を解除するものとしたが、USBデバイス機器からの印刷用データの印刷処理を実行中の期間に基づく実行中期間であるときにはUSBホスト機器との通信接続を解除するものとしてもよい。例えば、印刷処理を実行中である期間に基づく実行中期間として、印刷処理を実行している全期間としてもよいし、デバイス機器からのデータ処理を実行中である期間とその後のホスト側からの印刷用データの送受信の実行期間とが一部重なるような期間としてもよい。こうすれば、デバイス機器からの印刷用データの印刷終了間際に、ホスト装置からの次の印刷用データをRAM24にバッファすることができるから、より円滑に印刷処理を実行することができる。
【0030】
上述した実施形態では、USBホスト側及びUSBデバイス側を併用する送受信機32を1つ備えるものとしたが、この併用する送受信機32を2以上備えるものとしてもよい。こうしても、構成は増えるが、無線でのデータ通信をより円滑に行うことができる。
【0031】
上述した実施形態では、USB装置30を備えたプリンタ20として説明したが、USB装置30とスキャナとを備えたマルチファンクションプリンタとしてもよいし、USB装置30を備えたFAXなどの印刷装置としてもよい。また、印刷装置に限らず、他の電子機器、例えばデジタルビデオ、ゲーム機器などとしてもよい。また、上述したプリンタ20では、インクジェット式の印刷機構25としたが、特にこれに限られず、カラーのドットインパクト方式、カラーの電子写真方式、カラーの熱転写式の印刷機構としてもよいし、これらのモノクロのものとしてもよい。また、上述した実施形態では、プリンタ20が備えるUSB装置30として説明したが、USB装置30単独としてもよいし、このUSB装置30の制御方法の形態としてもよいし、そのプログラムの形態としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】無線USBシステム10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】デュアルロールプリンタ処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】ワイヤレスUSBアソシエーション画面80の説明図である。
【図4】コネクション・コンテキスト情報39aの一例の説明図である。
【図5】デュアルロールデジタルカメラ処理ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
10 無線USBシステム、12 メモリカード、20 プリンタ、21 コントローラ、22 CPU、23 ROM、24 RAM、25 印刷機構、26 操作パネル、27 表示部、28 操作部、28a カーソルキー、28b 決定キー、28c 接続確認キー、29 バス、30 USB装置、31 USBコントローラ、32 送受信機、34 レセプタクル、36,37,38 USBケーブル、39 フラッシュROM、39a コネクション・コンテキスト情報、40 デジタルカメラ、41 コントローラ、42 CPU、43 ROM、44 RAM、45 撮影部、46 操作パネル、47 表示部、48 操作部、48a カーソルキー、48b 決定キー、48c 接続キー、50 USB装置、51 USBコントローラ、52 送受信機、54 レセプタクル、59 フラッシュROM、60 ユーザPC、61 コントローラ、62 CPU、63 ROM、64 RAM、65 HDD、66 USBコントローラ、67 フラッシュROM、68 送受信機、69 レセプタクル、72 ディスプレイ、74 入力装置、80 ワイヤレスUSBアソシエーション画面、81 カーソル、82 ホスト機器表示部、84 デバイス機器表示部、86 機器種選択欄、S 記録紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
USBホスト及びUSBデバイスの機能を有するUSB装置であって、
USBホスト機器とのデータの送受信とUSBデバイス機器とのデータの送受信とを併用して無線で行う無線手段と、
USBホスト機器との送受信条件に関する通信情報を保存する情報記憶手段と、
USBホストとして振舞い前記無線手段が前記USBデバイス機器との間で所定の処理用データを送信又は受信し該処理用データを用いる所定のデータ処理をデータ処理実行手段が実行中である期間に基づく実行中期間であるときには前記無線手段に前記USBホスト機器との接続を解除させ、前記データ処理実行手段が前記データ処理を終了したあとには前記情報記憶手段に保存された前記通信情報を用いて前記無線手段に前記USBホスト機器と再接続させる通信制御手段と、
を備えたUSB装置。
【請求項2】
前記通信制御手段は、未接続のUSBデバイス機器と接続を確立した際に前記USBデバイス機器との送受信条件に関する通信情報を前記情報記憶手段へ保存し、該USBデバイス機器との接続確立中の期間を含む前記実行中期間に亘って前記無線手段に前記USBホスト機器との接続を解除させる、請求項1に記載のUSB装置。
【請求項3】
前記データ処理実行手段は、前記処理用データである印刷処理用データを用いて印刷媒体へ印刷処理する印刷処理実行手段であり、
前記通信制御手段は、USBホストとして振舞い前記無線手段が前記デバイス機器から印刷処理用データを受信し該受信した印刷処理用データを用いて前記印刷処理実行手段が印刷処理を実行中である期間に基づく実行中期間であるときには、前記無線手段に前記USBホスト機器との接続を解除させる、請求項1又は2に記載のUSB装置。
【請求項4】
前記通信制御手段は、前記USBホスト機器との接続を解除させたあと前記無線手段に前記USBホスト機器と再接続させるに際して、USB装置のリブート処理を実行する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のUSB装置。
【請求項5】
前記無線手段を1つのみ備えた、請求項1〜4のいずれか1項に記載のUSB装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のUSB装置と、
前記USB装置からの前記処理用データである印刷処理用データを用いて印刷媒体へ印刷処理する前記データ処理実行手段としての印刷処理実行手段と、
を備えた印刷装置。
【請求項7】
USBホスト機器とのデータの送受信とUSBデバイス機器とのデータの送受信とを併用して無線で行う無線手段、を備え、USBホスト及びUSBデバイスの機能を有するUSB装置の制御方法であって、
(a)USBホストとして振舞い前記無線手段が前記USBデバイス機器との間で所定の処理用データを送信又は受信し該処理用データを用いる所定のデータ処理を実行中である期間に基づく実行中期間であるときには前記無線手段に前記USBホスト機器との接続を解除させるステップと、
(b)前記ステップ(a)のあと、前記データ処理を終了したあとにはUSBホスト機器との送受信条件に関する通信情報を用いて前記無線手段に前記USBホスト機器と再接続させるステップと、
を含むUSB装置の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載のUSB装置の制御方法の各ステップを1以上のコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−207090(P2009−207090A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50062(P2008−50062)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】