説明

VEGF−関連タンパク質

【課題】容体型チロシンキナーゼFlt4に結合しそのリン酸化を刺激するリガンドを提供する。
【解決手段】受容体型チロシンキナーゼFlt4に結合しそのリン酸化を刺激するヒトVEGF関連タンパク質(VRP)を単離し同定した。このVRPは、VEGFタンパク質ファミリーの第3のメンバーと仮定される。VRPに結合してVRPの生物学的活性を無効にする抗体、VRPまたは抗体を含む組成物、使用方法、キメラポリペプチドおよびVRPのシグナルポリペプチドを、該VRPから生産した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、受容体型タンパク質チロシンキナーゼ(rPTK)リガンドに関する。より特定すると、本発明は、VEGF関連タンパク質(VRP)もしくはVH1と称され、Flt4チロシンキナーゼ受容体(Sal−S1受容体としても知られている)に結合し、そのリン酸化を刺激する新規なリガンド、ならびにその単離および組換え産生に関する。
【背景技術】
【0002】
新しい血管の、胚発生の間に分化する内皮細胞からの(脈管形成:vasculogenesis)、または成人生活の間の既存の管からの(血管形成:angiogenesis)形成は、高等生物における器官発生、再生、および創傷治癒の重要な特徴である。Folkman and Shing, J.Biol.Chem., 267:10931-10934(1992);Reynolds et al., FASEB J., 6:886-892(1992);Risau et al.,Development, 102:471-478(1988)。血管形成はまた、腫瘍形成(Folkman, Nature Medicine, 1:27-31[1995])および網膜症を含む特定の病的過程にも必然的である。Miller et al., Am.J.Pathol., 145:574-584(1994)。
【0003】
いくつかの増殖因子は血管形成を刺激するが(Klagsbrun and D'Amore, Ann.Rev.Physiol., 53:217-239[1991];Folkman and Klagsbrun, Science, 235:442-447[1987])、血管内皮増殖因子(VEGF)(Ferrara et al., Endo.Rev.,13:18-32[1992])は、内皮細胞特異的受容体型チロシンキナーゼfms様チロシンキナーゼ(Flt1) (Shibuya et al., Oncogene, 5:519-524[1990];deVries et al., Science, 255:989-991[1992])および胎児肝キナーゼ(Flk1)(KDRとも称される)を介して作用する有力な血管形成の因子である。Quinn et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:7533-7537(1993);Millauer et al., Cell, 72:835-846(1993);Matthews et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 88:9026-9030(1991);Terman et al., Biochem.Biophys.Res.Commun.,187:1579-1586(1992);Terman et al., Oncogene, 6:1677-1683(1991);Oelrichs et al., Oncogene, 8:11-18(1993)。これら2つのVEGF受容体および第3のオーファン受容体Flt4(Pajusola et al., Cancer Res., 52:5738-5743[1992];Galland et al., Oncogene, 8:1233-1240[1993]:Finnerty et al., Oncogene, 8:2293-2298[1993])は、III型受容体型チロシンキナーゼのサブファミリーを構成し、それらは7つの細胞外免疫グロブリン様ドメインおよび分離した細胞内チロシンキナーゼドメインを有している。Mustonen and Alitalo, J.Cell.Biol., 129:895-898(1995)。1994年5月11日に公開されたWO94/10202および1993年1月22日に出願されたPCT/US93/00586(Avraham et al.)も参照されたい。これら3つの受容体は、31−36%のアミノ酸同一性をその細胞外リガンド結合ドメインに有する。
【0004】
Flt1(Fong et al.,Nature,376:66-70[1995])またはFlk1(Shalaby et al., Nature, 376:62-66[1995])に欠陥のあるマウス(胚性幹細胞中でジーンターゲティングにより作成された)には、脈管形成に重大な欠陥があり、子宮内で胚の8−9日目で死亡する。しかしながら、受容体欠陥マウスの表現型は、著しく異なる。Flt1を欠くマウスには、主要な脈管ならびに微小血管系に広がる組織崩壊した(disorganized)血管内皮があるが、内皮細胞分化は正常のようである。Fong et al.前出。Flk1を欠くマウスには成熟した内皮細胞の発生における主な欠陥と、造血前駆細胞の重大な減少がある。Shalaby et al.前出。したがって、VEGFは、脈管形成の1以上の段階で内皮細胞に作用し得る。
【0005】
Flt4はまた、内皮細胞内で特異的に発現される;それはまず内皮前駆細胞内で8.5日齢のマウス胚で観察された。Kaipainen et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 92:3566-3570(1995);Kaipainenn et al., J.Exp.Med., 178:2077-2088(1993)。Hatva et al., Am.J.Pathol., 146:368-378(1995)もまた参照されたい。発生が進むにつれ、Flt4発現は静脈およびリンパ内皮に限られるようになり、最終的にはリンパ管に制限される。この発見と一致して、成人ヒト組織はFlt4発現をリンパ内皮に示すものの、動脈、静脈、および毛細管内での発現はない。Kaipainen et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA、前出。ヒトおよびマウスFlt4をコードするクローンが、保存されたチロシンキナーゼ領域由来のプライマーによるPCR (Finnerty et al.,前出;PCT/US93/00586前出;Aprelikova et al., Cancer Res.,52:746-748[1992])、あるいは低ストリンジェンシーのFlk2プローブとのハイブリダイゼーションのいずれかにより単離された。Galland et al., Genomics, 13:475-478(1992)。Flt4mRNAのオルタナティブスプライシング(alternative splicing)は、C−末端で65アミノ酸が異なる2つの変種タンパク質を生成する。Pajusola et al., Oncogene, 8:2931-2937(1993)。これらの変種は、170−190kDaのバンドとして移動し、これは細胞外ドメインで部分的にタンパク質分解的に開裂されて約125kDaの形態を生じる。Pajusola et al., Oncogene 8、前出;Pajusola et al., Oncogene,9:3545-3555(1994)。CSF−1受容体の細胞外ドメインとの、Flt4のより長くスプライシングされた形態のキメラとしての発現は、Flt4の細胞内ドメインが、齧歯類線維芽細胞内でリガンド依存的成長応答をシグナル伝達し得ることを示す。Pajusola et al., Oncogene,9、前出;Borg et al., Oncogene, 10:973-984(1995)。Flt4は、ヒト染色体の5q34−q35に局在している(Aprelikova et al.,前出;Galland et al., Genomics,前出);Flt1およびFlk1は13q12 (Imbert et al., Cytogenet.Cell Genet., 67:175-177[1994])および4q12に位置する。Sait et al., Cytogenet.Cell Genet., 70:145-146(1995);Spritz et al., Genomics, 22:431-436(1994)。
VEGFは、そのmRNAのオルタナティブスプライシングにより、少なくとも4つの形態で生じ得るホモ二量体のシステインを多く含むタンパク質である。Ferrara et al、前出。VEGFはFlt1およびFlk1に高親和性のリガンドであるが、それはFlt4に結合せず、活性化もしない。Pajusola et al., Oncogene,9、前出。他の非常に関連のある唯一のVEGFのメンバーは、胎盤増殖因子(PlGF)であり、それはVEGFと47%のアミノ酸同一性がある。Maglione et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9267-9271(1991)。PlGFはまた2つの異なる部位でスプライシングされた形態で生じ、それらは21アミノ酸の塩基性ヘパリン結合ドメインの存在または不在という点で異なっている。Maglione et al., Oncogene,8:925-931(1993):Hauser and Weich, Growth Factors, 9:259-268(1993)。PlGFはFlt1には結合するがFlk1には結合しない(Park et al., J.Biol.Chem., 269:25646-25654[1994]);そのFlt4への結合は測定されていないと考えられている。PlGFは、VEGFの毛細管内皮細胞有糸分裂誘発または血管透過性作用を反復することはなく、それはこれらの作用がFlk1受容体によって仲介されていることを示唆する。Park et al.前出。
【0006】
Flk1受容体を調節するか、VEGF受容体の活性化を無効にする分子が、特許文献中に開示されている。例えば、1995年8月17日に公開されたWO95/21613は、脈管形成および血管形成を制御するかおよび/または調節するようなKDR/Flk1受容体シグナル伝達を調節する化合物を開示し、そしてFlk1調節に関与するVEGFの薬剤および類似体を、アゴニスト活性もしくはアンタゴニスト活性により評価しスクリーニングするために、Flk1を用いることを開示している;1995年8月17日に公開されたWO95/21865は、動物の神経上皮キナーゼ(NYK)/Flk1と免疫応答する分子であって、血管形成依存性表現型の処置、予防および診断用の薬剤を供給するために用いられ得る分子を開示している;そして1995年8月17日に公開されたWO95/21868は、VEGF受容体の細胞外ドメインに特異的に結合し、受容体の活性化を無効にするモノクローナル抗体を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
VRPと称され、受容体型チロシンキナーゼFlt4に結合し、リン酸化を刺激する新規なタンパク質をコードするcDNAクローンが、今や同定された。VRPはアミノ酸配列においてVEGFと関連するが、VEGF受容体であるFlt1およびFlk1とは、認め得る相互作用はない。
【0008】
1つの局面において、本発明は、少なくとも265アミノ酸を含む単離された生物学的に活性なヒトVRPを提供する。別の局面において、本発明は、図1の少なくとも残基+1から29まで(両端を含む)を含むアミノ酸配列を含む単離された生物学的に活性なヒトVEGF-関連タンパク質(VRP)を供給する。さらなる局面において、本発明は、図1の残基−20から399まで(両端を含む)または残基1から399まで(両端を含む)として示されるアミノ酸配列を含む単離された生物学的に活性なヒトVRPを供給する。
【0009】
本発明はまた、別のポリペプチドに融合されたVRPを含むキメラにも関する。例えば、本発明は、標識(tag)ポリペプチド配列に融合されたVRPを含むキメラポリペプチドを提供する。そのようなキメラの例は、エピトープ−標識VRPである。
【0010】
別の局面において、本発明は、生物学的に活性なVRPおよび薬学的に受容可能な担体を含む組成物を提供する。より具体的な実施態様において、本発明は、血管内皮細胞もしくはリンパ内皮細胞の成長の促進に有用な、治療的有効量のVRPを薬学的に受容可能な担体中に含む医薬組成物を提供する。別の局面において、この組成物はさらに、別の細胞増殖因子、例えば、VEGFおよび/またはPDGFを含む。
【0011】
さらなる局面において、本発明は、哺乳動物において血管組織を処置し、新脈管形成を促進する方法であって、その哺乳動物にVRPを含む有効量の前記組成物を投与する工程を包含する方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、血管内皮に影響を与える損傷の処置方法であって、その損傷を受けた哺乳動物にVRPを含む有効量の前記組成物を投与する工程を包含する方法を提供する。その損傷は、例えば、糖尿病性の潰瘍または血管もしくは心臓の創傷である。他の実施態様において、本発明は、哺乳動物においてVRPに対する受容体の活性化の欠如または阻害の欠如によって特徴づけられる機能不全状態の処置方法であって、その哺乳動物にVRPを含む有効量の前記組成物を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、Flt4受容体をVRPに接触させてそのキナーゼドメインのリン酸化を引き起こす工程を含む方法を提供する。例えば、本発明は、Flt4受容体のチロシンキナーゼドメインのリン酸化を刺激する方法であって、Flt4受容体の細胞外ドメインをVRPに接触させる工程を包含する方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、VRPに結合し、好ましくはそのタンパク質の生物学的活性を無効にするモノクローナル抗体も提供する。1つの生物学的活性は哺乳動物における新生血管形成または脈管透過性または脈管内皮細胞成長を促進することを特徴とする。代替的にまたは結合的に、本発明は、図1に示したアミノ酸配列の残基−20から137(両端を含む)または残基+1から137(両端を含む)のN−末端部分に結合するモノクローナル抗体を提供する。この抗体は、例えば、VRPを有することが疑われる生物学的試料中の該タンパク質の存在を検出するため、あるいは患者を処置するために用いられ得る。本発明は、そのような抗体および薬学的に受容可能な担体を含む医薬組成物、ならびに哺乳動物において望ましくない過剰な新生血管形成または脈管透過性により特徴づけられる疾患もしくは障害を処置する方法であって、その哺乳動物に有効量の上記の抗体の一つを投与する工程を包含する方法を意図する。さらに、本発明により包含されるのは、哺乳動物におけるVRPに対する受容体の過剰な活性化または阻害により特徴づけられる機能不全状態を処置する方法であって、その哺乳動物に有効量の上記の抗体の一つを投与する工程を包含する方法である。
【0014】
さらに、本発明は、図1の残基−20から−1(両端を含む)として示されるアミノ酸配列から成るペプチドを意図する。
【0015】
さらなる実施態様において、本発明は、VRPまたはVRPキメラをコードする単離された核酸分子を提供する。一つの局面において、この核酸分子は、生物学的に活性なVRPをコードするRNAもしくはDNAであるか、あるいはそのようなVRPをコードする核酸配列に相補的なものであり、ストリンジェントな条件下でそれに安定に結合し続けるものである。この核酸分子は、場合により、図1の核酸配列のシグナル配列をコードする領域を含む。1つの実施態様において、この核酸配列は:
(a)図1の核酸配列のコード領域であって、残基−20から残基399のプレタンパク質をコードするか、あるいは残基1から残基399の成熟タンパク質をコードするコード領域(すなわち、図1にSEQ ID NO:1として示した核酸配列の、ヌクレオチド372から1628(両端を含む)あるいはヌクレオチド432から1628(両端を含む));または
(b)遺伝的コードの縮重の範囲内で(a)の配列に相当する配列
から選択される。
【0016】
別の局面において、この核酸分子は、複製可能なベクター中に提供され得、そのベクターは、それによってトランスフェクションされたか形質転換された宿主細胞によって認識される制御配列に作動可能に連結された核酸分子を含む。本発明はさらに、上記ベクターまたは核酸分子を含む宿主細胞を提供する。この核酸分子を含む宿主細胞を培養する工程およびこの宿主細胞培養物からそのタンパク質を回収する工程を包含するVRPの産生方法もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1A〜1Dは、本明細書中に記載されるヒトVRPの、ヌクレオチドコード配列(SEQ ID NO:1)、ヌクレオチド相補配列(SEQ ID NO:2)および推定アミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を示す。
【図1B】図1A〜1Dは、本明細書中に記載されるヒトVRPの、ヌクレオチドコード配列(SEQ ID NO:1)、ヌクレオチド相補配列(SEQ ID NO:2)および推定アミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を示す。
【図1C】図1A〜1Dは、本明細書中に記載されるヒトVRPの、ヌクレオチドコード配列(SEQ ID NO:1)、ヌクレオチド相補配列(SEQ ID NO:2)および推定アミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を示す。
【図1D】図1A〜1Dは、本明細書中に記載されるヒトVRPの、ヌクレオチドコード配列(SEQ ID NO:1)、ヌクレオチド相補配列(SEQ ID NO:2)および推定アミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を示す。
【図2】図2は、Flt4/IgGおよびRse/IgG(無関係な受容体融合タンパク質)のヒト神経膠腫細胞系G61への結合を示す。その結合はFACS分析により評価した。
【図3A】図3Aおよび3Bは、それぞれ、ヒトVRPをコードするcDNAクローンのマップ、ならびにVRP(SEQ ID NO:3)、VEGF121(SEQ ID NO:4)およびPlGF131(SEQ ID NO:5)のタンパク質配列のアラインメントを示す。図3Aは、4つのVRPcDNAクローンの範囲を示す;点線はVH1.1およびVH1.3の不明な部分を示す。矢印は、制限酵素部位を示す;陰のついた部分は推定される分泌シグナル配列を示す;白い囲まれた部分は成熟タンパク質を示す;白い囲まれた部分内のY型の指定は、可能性のあるN結合グリコシル化部位を示す;そして垂直な線はシステイン残基を示す。VEGF121の図を比較のために示す。ヒドロパシープロット(Kyle and Doolittle, J.Mol.Biol., 157:105-132[1982])は、VRPについてである。図3Bにおいて、重なって線が引かれているところ(overlining)は、HSC1WF111と称されるGenBankからのエクスプレスドシークエンスタグ(EST)(cDNAクローンの部分の配列)によってコードされる領域を示す。
【図3B】図3Aおよび3Bは、それぞれ、ヒトVRPをコードするcDNAクローンのマップ、ならびにVRP(SEQ ID NO:3)、VEGF121(SEQ ID NO:4)およびPlGF131(SEQ ID NO:5)のタンパク質配列のアラインメントを示す。図3Aは、4つのVRPcDNAクローンの範囲を示す;点線はVH1.1およびVH1.3の不明な部分を示す。矢印は、制限酵素部位を示す;陰のついた部分は推定される分泌シグナル配列を示す;白い囲まれた部分は成熟タンパク質を示す;白い囲まれた部分内のY型の指定は、可能性のあるN結合グリコシル化部位を示す;そして垂直な線はシステイン残基を示す。VEGF121の図を比較のために示す。ヒドロパシープロット(Kyle and Doolittle, J.Mol.Biol., 157:105-132[1982])は、VRPについてである。図3Bにおいて、重なって線が引かれているところ(overlining)は、HSC1WF111と称されるGenBankからのエクスプレスドシークエンスタグ(EST)(cDNAクローンの部分の配列)によってコードされる領域を示す。
【図4】図4は、本明細書中の完全長ヒトVRPのcDNAクローンと公知の11のESTのマップを示す。11のEST部分アミノ酸配列フラグメントはH07991およびH07899(同じクローン化されたフラグメントのそれぞれ5’および3’末端)、H05134およびH05177(同じクローン化されたフラグメントのそれぞれ3’および5’末端)、HSC1WF112およびHSC1WF111(同じクローン化されたフラグメントのそれぞれ3’および5’末端)、T81481およびT81690(同じクローン化されたフラグメントのそれぞれ3’および5’末端)、R77495(クローン化されたフラグメントの3’末端)およびT84377およびT89295(同じクローン化されたフラグメントのそれぞれ5’および3’末端)である。
【図5A】図5は、125I−Flt4/IgGの精製VRPへの結合を示す。この結合は、100nMの受容体IgG融合タンパク質の非存在下(−)もしくは存在下(+)で(図5A)、あるいはFlt4/IgGの濃度を上昇させながら(図5B)行われた。
【図5B】図5は、125I−Flt4/IgGの精製VRPへの結合を示す。この結合は、100nMの受容体IgG融合タンパク質の非存在下(−)もしくは存在下(+)で(図5A)、あるいはFlt4/IgGの濃度を上昇させながら(図5B)行われた。
【図6】図6は、有糸分裂誘発活性の評価と比較のための、ヒト肺微小血管内皮細胞の細胞計数の、細胞培養培地中のVEGFまたはVRPの濃度の関数としてのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.定義
本発明を記載する場合、以下の用語を用い、それらは以下に示すように定義されることが意図される。
【0019】
「ヒトVRP」は、本明細書中では、図1に示すアミノ酸配列の少なくとも残基−20から399(両端を含む)あるいは残基+1から399(両端を含む)を含むポリペプチド配列であって、図1に示すアミノ酸配列の残基−5から399(両端を含む)および残基−4から399(両端を含む)を含み、同時に上記の配列の生物学的に活性な欠失、挿入または置換変種であって少なくとも265アミノ酸を有するかおよび/または図1の少なくとも残基+1から29(両端を含む)を有するものと定義される。好ましい実施態様においては、タンパク質配列は、図1の少なくとも残基+1から137(両端を含む)、より好ましくは図1の少なくとも残基−20から29(両端を含む)、そしてもっとも好ましくは図1の少なくとも残基−20から137(両端を含む)を有する。別の好ましい実施態様においては、生物学的に活性な変種は、265から約450アミノ酸残基、より好ましくは約300−450、さらにより好ましくは350−450、そしてもっとも好ましくは約399−419アミノ酸残基の長さを有する。別の好ましい変種のセットは、挿入的もしくは置換的変種、または欠失がシグナル配列内にあるか、および/または分子のN−末端領域(すなわち、残基1−29、好ましくは残基1−137)にはない欠失変種である変種である。VRPの定義は、すべての公知のEST配列、例えば、H07991、H05134、H05177、HSC1WF112、HSC1WF111、T81481、R77495、H07899、T84377、T81690、およびT89295、ならびにVEGFおよびPlGFのすべての形態を除く。
【0020】
本明細書中で目的とする「生物学的に活性」とは、Flt4受容体に結合し、そしてそのリン酸化を刺激する能力を有することを意味する。一般に、このタンパク質は、Flt4受容体の細胞外ドメインに結合し、それによりその細胞内チロシンキナーゼドメインを活性化するかまたは阻害する。最終的に、そのタンパク質の受容体への結合は、in vivoでまたはin vitroでVRPに対するFlt4受容体を有する細胞の増殖および/または分化および/または活性化の促進または阻害にいたる。このタンパク質のFlt4受容体への結合は、例えばRIA、ELISAのような競合結合法、および他の競合結合アッセイを含む従来の技術を用いて測定され得る。リガンド/受容体複合体は濾過、遠心分離、フローサイトメトリー(例えば、Lyman et al., Cell, 75:1157-1167[1993];Urdal et al., J.Biol.Chem., 263:2870-2877[1988]およびGearing et al., EMBO J., 8:3667-3676[1989]を参照されたい)などのような分離方法を用いて同定され得る。結合研究の結果は、スキャッチャード分析(Scatchard, Ann.NY Acad.Sci., 51:660-672[1949];Goodwin et al., Cell, 73:447-456[1993])などのような結合データの従来のいかなる図表による表示を用いても分析され得る。VRPはFlt4受容体のリン酸化を誘導するので、従来のチロシンリン酸化アッセイ、例えば、本明細書の実施例5に記載したアッセイもまたFlt4受容体/VRP複合体の形成の指標として用いられ得る。
【0021】
本明細書中で用いられる場合の用語「エピトープ標識(epitope tagged)」とは、「標識(tag)ポリペプチド」に融合されたVRP全体もしくはその部分を含むキメラポリペプチドをいう。標識ポリペプチドは、エピトープを提供するのに十分な残基を有し、そのエピトープに対してそれに対する抗体が形成され得るが、VRPの活性を妨げないほど十分短い長さである。標識ポリペプチドはまた、好ましくは、それに対する抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しないよう、かなりユニークである。適切な標識ペプチドは、一般に、少なくとも6アミノ酸残基を有し、通常、約8−50アミノ酸残基の間(好ましくは約9−30残基の間)である。
【0022】
「単離された」とは、本明細書中に開示される種々のタンパク質を記載するために用いられる場合、その天然の環境の成分から同定され分離され、および/または回収されたタンパク質を意味する。天然の環境の混入成分は、このタンパク質の診断もしくは治療用途を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性もしくは非タンパク質性溶質を含み得る。好ましい実施態様においては、このタンパク質は、(1)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用により、少なくとも15残基のN−末端または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、または(2)クーマシーブルー、または、好ましくは銀染色を用いて非還元または還元条件下でSDS-PAGEにより均一になるまで、精製される。単離されたタンパク質は、組換え細胞内にin situでタンパク質を含む。なぜならVRPの天然の環境の少なくとも1つの成分は存在しないであろうからである。しかしながら、通常、単離されたタンパク質は、少なくとも1精製工程により調製される。
【0023】
「実質的に純粋な」タンパク質とは、組成物の全重量を基にして少なくとも約90重量%の、好ましくは約95重量%のタンパク質を含む組成物を意味する。「実質的に均一な」タンパク質とは、組成物の全重量を基にして少なくとも約99重量%のタンパク質を含む組成物を意味する。
【0024】
「単離された」VRP核酸分子は、それが通常、VRP核酸の天然の供給源中に付随する少なくとも1つの混入核酸分子から同定され分離された核酸分子である。単離されたVRP核酸分子は、それが天然で見出される形態もしくは設定(setting)ではないものである。単離されたVRP核酸分子は、したがって、天然の細胞内で存在するVRP核酸分子とは区別される。しかしながら、単離されたVRP核酸分子は、VRPを通常発現する細胞内に含まれたVRP核酸分子を含み、そこでは、例えば、この核酸分子は天然の細胞のそれとは異なる染色体の位置にある。
【0025】
単離されたVRPポリペプチド、VRP核酸またはVRP抗体は、診断およびプローブ目的のため、VRP抗体の使用についての考察において下記にさらに記載され定義されるような標識を用いて標識化されてもよい。
【0026】
「制御配列」という表現は、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列をいう。原核生物に適している制御配列は、例えば、プロモーター、場合によりオペレーター配列、リボゾーム結合部位、および可能ならば未だによくわかっていない他の配列を含む。真核生物細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナル部位およびエンハンサーを利用することが知られている。
【0027】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に配置されている場合に、「作動可能に連結されている」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドのDNAに、それがそのポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現されるならば、作動可能に連結されている;プロモーターまたはエンハンサーは、それがその配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作動可能に連結されている;あるいは、リボゾーム結合部位はそれが転写を容易にするように配置されているならコード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結されている」とは、連結されているDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合には、隣接しかつ読み取りフェーズにあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは隣接している必要はない。連結は適当な制限部位で連結反応により行われる。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来のプラクティスにしたがって用いられる。
【0028】
用語「抗体」は、最も広い意味で用いられ、特に、1つの抗−VRPモノクローナル抗体(アゴニストおよびアンタゴニスト抗体を含む)およびポリエピトープ特異性を有する抗−VRP抗体組成物を包含する。
【0029】
本明細書中で用いる用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得た抗体、すなわちその集団の全体を構成する個々の抗体が、量は少ないが起こり得る可能性のある天然に生じる変異以外は同一である、をいう。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、1つの抗原性部位に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の1つの決定基に対するものである。
【0030】
本明細書中のモノクローナル抗体は、抗−VRP抗体の可変(超可変を含む)ドメインを定常ドメインと(例えば、「ヒト化」抗体)、または軽鎖を重鎖と、またはある種由来の鎖を別の種由来の鎖と接合することにより、または種の起源もしくは免疫グロブリンクラスもしくはサブクラス指定に関わりなく異種タンパク質との融合により産生したハイブリッドおよび組換え抗体、ならびに抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab'),およびF)を、それらが所望の生物学的活性を示す限り、含む。例えば、米国特許第4,816,567号、およびMage and Lamoyi, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.79-97(Marcel Dekker, Inc: New York, 1987)を参照されたい。
【0031】
したがって、修飾語句「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体産生を必要とするとは解釈されない。例えば、本発明により用いられるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature, 256:495(1975)によって初めて記載されたハイブリドーマ法により作成されてもよいし、組換えDNA法により作成されてもよい。米国特許第4,816,567号。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、McCafferty et al., Nature, 348:552-554(1990)に記載された技術を用いて生成されたファージライブラリーから単離してもよい。
【0032】
「ヒト化された」形態の非ヒト(例えばネズミ)抗体は、特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含むそれらのフラグメント(例えば、F、Fab、Fab'、F(ab')、または抗体の他の抗原結合サブ配列)である。ほとんどの部分については、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(受容体抗体)であり、その内部では受容側の相補性決定領域(CDR)由来の残基が、マウス、ラットもしくはウサギのような所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(供与体抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられている。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFフレームワーク領域(FR)の残基が、対応する非ヒト残基により置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、受容抗体にも移入されるCDRもしくはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の能力を高め最適化するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、実質的に少なくとも1つの、代表的には2つの可変ドメインの全てを含み、そこでは、CDR領域の全てもしくは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、FR領域の全てもしくは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のそれに対応する。ヒト化抗体はまた、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、代表的にはヒト免疫グロブリンのそれを含む。
【0033】
本明細書中で用いられる「血管内皮細胞増殖因子」または「VEGF」とは、元々ウシ下垂体小胞細胞から誘導された哺乳動物増殖因子で、WO90/13649の図2のアミノ酸配列を有し、WO90/13649の図10のヒトアミノ酸配列を有するものをいう。120アミノ酸のウシVEGFおよび121アミノ酸のヒトVEGFを開示している米国特許第5,194,596号もまた参照されたい。天然のVEGFの生物学的活性は、血管内皮細胞の選択的な成長を促進し得るが、ウシ角膜内皮細胞、レンズ上皮細胞、副腎皮質細胞、BHK−21線維芽細胞またはケラチノサイトの成長は促進しない。
【0034】
「血管内皮に影響を及ぼす損傷」という表現は、器官の血管網を含む血管または心臓への外傷のような損傷をいい、その対象は動物またはヒト、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。そのような損傷の例は、創傷、切開、および潰瘍、最も好ましくは血管または心臓の糖尿病性潰瘍および創傷または裂傷を含む。損傷は、内的な事象ならびに、病原体のような外来性の物質によって負わされたそれらにより引き起こされる状態を含み、それは血管内皮細胞成長の促進により改善され得る。それはまた、新生血管形成または再内皮化(re-endothelialization)が治癒のために必要とされる創傷の処置をもいう。
【0035】
「血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞成長の促進」とは、ヒト肺微小血管内皮細胞を含む血管内皮細胞またはリンパ内皮細胞の成長を誘導するかまたは増加させることをいう。
【0036】
「脈管形成および血管形成に関連する障害」は、ガン、糖尿病、血管腫およびカポジ肉腫を含む。
【0037】
「望ましくない過剰な新生血管形成または血管透過性により特徴づけられる疾患または障害」とは、例を挙げると、過剰な新生血管形成、腫瘍、および特に固形悪性腫瘍、慢性関節リューマチ、乾癬、アテローム硬化症、糖尿病性のもしくは他の網膜症、水晶体後線維増殖、加齢性黄斑変性、血管新生緑内障、血管腫、甲状腺過形成(グレーブズ病を含む)、角膜もしくは他の組織の移植、および慢性的な炎症を含む疾患または障害をいう。望ましくない過剰な血管透過性により特徴づけられる疾患または障害の例は、脳腫瘍に関連した浮腫、悪性疾患に関連した腹水、メグズ症候群、肺の炎症、ネフローゼ症候群、心内膜液浸出(例えば心膜炎に関連したもの)、および胸水を含む。
【0038】
「VRPに対する受容体(Flt4を含むそのような受容体)の過剰な活性化または阻害により特徴づけられる機能不全状態」とは、そのような病的状態を有する哺乳動物に、VRPに対するアンタゴニスト、例えばFlt4のキメラまたはその細胞外ドメイン(例えば、Flt4と融合したIgG)あるいはVRPに対する抗体を提供することにより恩恵を受けるように処置される障害もしくは疾患をいう。
【0039】
「VRPに対する受容体の活性化の欠如または阻害の欠如によって特徴づけられる機能不全状態」(Flt4を含むそのような受容体)とは、VRPまたはVRP受容体アゴニストを、そのような病的状態の哺乳動物に提供することにより恩恵を受けるように処置される障害もしくは疾患をいう。
【0040】
「処置」とは、治療的処置および予防的または防御的手段の両方をいう。処置の必要な者は、すでに障害を有している者ならびにその障害に罹りやすい者またはその疾患が予防されるべきものである者を含む。
【0041】
処置を目的とする「哺乳動物」とは、哺乳動物として分類される任意の動物をいい、ヒト、家畜および農場の動物、ならびに動物園、スポーツ、またはペット動物、例えば、イヌ、馬、ネコ、ウシなどを含む。好ましくは本明細書中の哺乳動物はヒトである。
【0042】
VRP、VRP組成物、抗体もしくは抗体組成物の「有効量」または「治療的有効量」とは、処置される状態を防御し、その悪化を減少させ、緩和し、あるいは治療するかのいずれかにとって有効である量である。例えば、有効量のVRPは、in vivoで血管内皮の成長を促進するのに、あるいは損傷を処置するのに十分な量を含み、そして「有効量の」VRP抗体は、過剰な新生血管形成および血管形成を低下させるのに十分である量を含む。
【0043】
II.本発明を実施するための態様
本発明は、Flt4受容体に結合し、そのリン酸化を刺激する新規なVRPを見出したことに基づく。
3つの方法が、Flt4受容体に結合し、そのリン酸化を刺激するタンパク質を同定するために採用された。最初に、完全長受容体を293細胞内で安定に発現させてFlt4活性化の受容体型チロシンキナーゼリン酸化アッセイを確立した。このアッセイを用いて約400の細胞上清および組織抽出物をスクリーニングしたが陽性の結果はなかった。
【0044】
第2に、この受容体の細胞外ドメインを免疫グロブリンのFcドメインとの融合タンパク質として発現させた。この融合タンパク質(Flt4/IgG)を用いて、細胞系を膜結合リガンドについてFACS分析によりスクリーニングすることにより、1つの陽性の細胞系を同定した。ヒト神経膠腫G61は、約10倍シフトしたFlt4/IgGに特異的なピーク蛍光強度を生じた(図2)。発現のための試みは、この推定膜結合リガンドを、cDNAクローンのプールをCOS細胞にトランスフェクションすることによりクローン化し、次いで、標識したFlt4/IgGでスクリーニングしたが、それぞれ1000−5000クローンの640プールからは陽性は生じなかった。Flt4/IgGはまた、アゴニスト活性を有し、かつ実施例5に記載したようなFlt4チロシンキナーゼアッセイを開発するために用いられるポリクローナル血清およびモノクローナル抗体を作成するためにも用いられた。
【0045】
第3に、候補となるリガンドタンパク質は、それらがFlt4/IgGに結合する能力について、またはそれらがFlt4リン酸化アッセイを活性化する能力についてテストされた。標識したVEGFはFlt4/IgGに結合しなかったものの、VEGFのFlt1/IgG、またはFlk1/IgGへの予想された結合はルーチンで検出された。VEGFのFlt4への結合またはそのリン酸化の刺激が無かったことは、Pajusola et al., Oncogene, 9、前出により報告された。さらなる候補リガンドタンパク質がクローニング技術の使用により見いだされ、その詳細は以下の実施例3に提供されている。ヒトVRPcDNA配列は、図1A−1Dに示されている。このタンパク質の予想される分子量は、44.8kDaである。
【0046】
どのようにして生物学的に活性なヒトVRPを調製し得るかについての説明は以下の通りである。
1.VRPの調製
以下の考察の大部分は、VRP核酸を含むベクターによって形質転換された細胞を培養し、その細胞培養物からポリペプチドを回収することによるVRPの産生に関する。さらに、本発明のVRPが、1991年5月16日に公開されたWO91/06667において提供された相同組換えにより産生され得ることももくろまれている。
【0047】
簡単にいうと、この方法は、ヒトVRPをコードする遺伝子を有する一次ヒト細胞を、増幅遺伝子[例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)または他の以下に考察したもの]、およびVRP遺伝子のコード領域の遺伝子座のDNA配列と相同な少なくとも1つの少なくとも約150bpの長さのフランキング領域を、VRP遺伝子の増幅を提供するために含む構築物(例えばベクター)で形質転換することを含む。この増幅遺伝子は、VRP遺伝子の発現を妨害しない部位になければならない。形質転換は、増幅可能な領域を規定するため、この構築物が、一次細胞のゲノムに相同組換えにより組み込まれるように行われる。
【0048】
この構築物を含む一次細胞は、次いで、構築物中に存在する増幅遺伝子または他のマーカーという手段により選択される。マーカー遺伝子の存在は、宿主ゲノム中の構築物の存在と組み込みを立証する。一次細胞のさらなる選択をする必要はない。なぜなら、選択は二次宿主においてなされるからである。所望ならば、相同組換えということが起こるのは、PCRを用いることにより、そして、正しく相同組換えにより組み込まれたもののDNAが存在する場合には、得られた増幅されたDNA配列を配列決定するか適切なPCRフラグメントの長さを測定することにより、そしてそのようなフラグメントを含むそれらの細胞だけを拡張することにより決定され得る。また、所望ならば、選択された細胞は、標的遺伝子の多重コピーを得られるよう、この時点で、適切な増幅物質(例えば、増幅遺伝子がDHFRの場合、メトトレキセート)を用いて細胞にストレスを与えることにより増幅されても良い。しかしながら、好ましくはこの増幅工程は、下記の2回目の形質転換後まで行われない。
【0049】
選択工程の後、増幅領域全てを含むのに十分大きいゲノムのDNA部分を、選択された一次細胞から単離する。二次哺乳動物発現宿主細胞を、次いで、これらのゲノムDNA部分を用いて形質転換し、クローン化し、そして増幅領域を含んでいるクローンを選択する。次いで、増幅領域を、一次細胞内ですでに増幅されていない場合には、増幅物質という手段により増幅させる。最後に、いまやVRPを含む増幅領域の多重コピーを含んでいる二次発現宿主細胞を、その遺伝子を発現しタンパク質を産生させるように成長させる。
【0050】
A.VRPをコードするDNAの単離
VRPをコードするDNAは、VRPmRNAを有し、それを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製した任意のcDNAライブラリーから得ても良い。したがって、ヒトVRP DNAは、ヒト脳組織、例えば、グリア細胞系から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得られ得る。VRPをコードする遺伝子はまた、ゲノムライブラリーから、またはオリゴヌクレオチド合成によって得られても良い。
ライブラリーは、目的の遺伝子またはそれによってコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(例えば、VRPに対する抗体または約20−80塩基のオリゴヌクレオチド)を用いてスクリーニングされる。cDNAまたはゲノムライブラリーの選択されたプローブによるスクリーニングは、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)の10〜12章に記載されたような標準的な手法を用いて行うことが出来る。VRPをコードする遺伝子を単離する他の手段は、Sambrook et al.前出の14節に記載されたようなPCR法を用いることである。
【0051】
本発明を実施する好ましい方法は、慎重に選択されたオリゴヌクレオチド配列を用いて種々のヒト組織、好ましくは脳細胞系由来のcDNAライブラリーをスクリーニングすることである。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、偽陽性を最小にするため、十分な長さで、かつ十分に明白であるべきである。
【0052】
オリゴヌクレオチドは、それが、スクリーニングされるライブラリー中のDNAとのハイブリダイゼーションに際して、検出可能であるように標識されている必要がある。好ましい標識方法は、当該分野で周知であるように、オリゴヌクレオチドを放射性標識するためにポリヌクレオチドキナーゼによる32P−標識ATPを用いることである。しかしながら、ビオチン化または酵素標識を含むがこれらに限定されない他の方法を用いてオリゴヌクレオチドをラベルしても良い。
【0053】
いくつかの好ましい実施態様において、核酸配列は、天然のVRPシグナル配列を含む。タンパク質のコード配列全てを有する核酸は、選択されたcDNAまたはゲノムライブラリーを、本明細書中に初めて開示された推定アミノ酸配列を用いてスクリーニングすることにより、そして、必要ならば、Sambrook et al.前出の7.79節に記載されたような従来のプライマー伸長法を用いて前駆体を検出し、そしてcDNAに逆転写されなかったかもしれないmRNAの中間体をプロセシングすることにより得られる。
【0054】
VRPのアミノ酸配列変種は、適当なヌクレオチド変化をVRP DNAに誘導することにより、あるいは所望のVRPポリペプチドの合成により調製される。そのような変種は、図1にVRPについて示されたアミノ酸配列の内部、または一方の端もしくは両端での残基の挿入、置換および/または欠失を示す。好ましくは、これらの変種は、図1にVRPについて示された成熟配列の内部、または一方の端もしくは両端での挿入および/または置換、および/またはシグナル配列の内部、または一方の端もしくは両端での挿入、置換および/または欠失を示す。最終構築物に到達するために、その最終構築物が本明細書中に定義されるような所望の生物学的活性を有する限り、挿入、置換および/または欠失の任意の組み合わせが行われる。アミノ酸変化もまた、VRPの翻訳後過程を変更し得る。例えば、VRPのリーダー配列に挿入、欠失またはそうでなければ影響を与えることにより、グリコシル化部位の数と位置を変化させる、膜結合特性を変更する、および/またはVRPの細胞内位置を変更する。
【0055】
上記のような天然の配列における変化は、米国特許第5,364,934号に説明された保存的および非保存的変異誘導についての任意の技術および指針を用いて起こすことが出来る。これらは、オリゴヌクレオチド仲介(部位特異的)変異誘発、アラニンスキャニング、およびPCR変異誘導を含む。例えば、変更、付加または欠失のためのアミノ酸の選択についての手引きについては、その表1およびその表の周辺の考察も参照されたい。
【0056】
B.核酸の複製可能なベクターへの挿入
天然または変種VRPをコードする核酸(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)は、さらなるクローニング(そのDNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。多くのベクターが利用可能である。ベクターの構成要素は一般に、1またはそれ以上の次のものを含むがこれらに限定されない:シグナル配列、複製の起点、1またはそれ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、および転写終結配列。
【0057】
(i)シグナル配列構成要素
本発明のVRPは、直接組換えだけでなく、異種ポリペプチドであって、好ましくはシグナル配列との、または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端に特異的な開裂部位を有する他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして組換えにより産生されてもよい。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成要素であってもよいし、またはそれはベクターに挿入されるVRP DNAの一部であってもよい。好適に選択される異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識されプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより開裂される)ものである。天然のVRPシグナル配列を認識もプロセシングすることもない原核生物宿主細胞では、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置換される。酵母での分泌については、天然のシグナル配列は、例えば、酵母のインベルターゼリーダー、α因子リーダー(SaccharomycesおよびKluyveromycesのα因子リーダー、後者は1991年4月23日に発行された米国特許第5,010,182号に記載されている、を含む)または酸ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日に公開されたEP362,179号)または1990年11月15日に公開されたWO90/13646に記載されたシグナルにより置換されてもよい。哺乳動物細胞発現では、天然のシグナル配列(例えば、通常in vivoでVRPのヒト細胞からの分泌を行わせるVRPプレ配列)で十分であるが、他の哺乳動物シグナル配列、例えば、他の動物VRP由来のシグナル配列およびその動物または関連する種の分泌されたポリペプチド由来のシグナル配列、ならびにウイルスの分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルもまた適切であり得る。
【0058】
そのような前駆体領域に対するDNAは、リーディングフレームで成熟VRPをコードするDNAに連結される。
【0059】
(ii)複製起点構成要素
発現およびクローニングベクターはどちらも、そのベクターが1またはそれ以上の選択された宿主細胞内で複製するのを可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターでは、この配列はベクターが宿主の染色体DNAとは独立して複製するのを可能にするものであり、複製の起点または自律的に複製する配列を含む。そのような配列は、種々の細菌、酵母、およびウイルスについて周知である。プラスミドpBR322由来の複製の起点はほとんどのグラム陰性細菌に適しており、2μプラスミドの起点は酵母に適切であり、そして種々のウイルスの起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は、哺乳動物細胞内でのクローニングベクターに有用である。一般に、複製の起点構成要素は、哺乳動物発現ベクターには必要とされない(SV40起点が代表的に用いられるのは、それはそれが初期プロモーターを有しているからである)。
【0060】
ほとんどの発現ベクターは「シャトル」ベクターである。すなわち、それらは少なくとも1つのクラスの生物において複製が可能であるが、発現のためには他の生物にトランスフェクションされ得る。例えば、あるベクターはE.coli内でクローン化され、次いで、同じベクターが、たとえそれが宿主細胞の染色体とは独立して複製されないとしても、酵母もしくは哺乳動物細胞に発現のためにトランスフェクションされる。
DNAはまた、宿主のゲノムへの挿入によって増幅されてもよい。これは、Bacillus種を宿主として用いて、例えば、BacillusのゲノムDNAに見られる配列に相補的なDNA配列をベクター内に含むことにより、容易に行われる。このベクターによるBacillusのトランスフェクションは、結果としてゲノムとの相同組換えおよびVRP DNAの挿入になる。しかしながら、VRPをコードするゲノムDNAの回収は、外因的に複製したベクターのそれと比べてより複雑である。なぜなら制限酵素消化がVRP DNAの切り出しに必要とされるからである。
【0061】
(iii)選択遺伝子構成要素
発現およびクローニングベクターは、選択遺伝子(選択マーカーとも呼ばれる)を含むべきである。この遺伝子は、選択培養培地内で増殖する形質転換された宿主細胞の生存もしくは増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されなかった宿主細胞は、その培養培地内で生存しない。代表的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートまたはテトラサイクリンへの耐性を与える、(b)栄養要求性欠損を補足する、あるいは(c)複合培地からは利用できない必須栄養分を供給するタンパク質をコードし、例えば、BacilliについてはD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。
【0062】
選択スキームの一例は、宿主細胞の生育を抑える薬剤を利用する。異種遺伝子で成功裏に形質転換されたこれらの細胞は、薬剤耐性を生じ、したがって選択レジメンを生き残るタンパク質を産生する。そのような優位性選択の例は、薬剤ネオマイシン(Southern et al, J.Molec.Appl.Genet., 1:327[1982])、ミコフェノール酸(Mulligan et al., Science,209:1422[1980])、またはヒグロマイシンを用いる。Sugden et al., Mol.Cell.Biol., 5:410-416(1985)。上に挙げた3つの例は、それぞれ適切な薬剤G418またはネオマイシン(ゲネチシン)、xgpt(ミコフェノール酸)またはヒグロマイシンに対する耐性を与えるために真核生物制御下で細菌遺伝子を用いている。
【0063】
哺乳動物細胞にとって適切な選択マーカーの他の例は、VRP核酸を取り込むのに適した細胞の同定を可能にするものであり、例えば、DHFRもしくはチミジンキナーゼがある。哺乳動物細胞形質転換体は、その形質転換体のみがマーカーを取り込んだことによって生き残るように独特に適合させた選択圧力下におかれる。選択圧力は、その形質転換体を、培地中の選択剤の濃度が連続的に変更され、それにより選択遺伝子およびVRPをコードするDNAの両方の増幅を導く条件下で培養することにより負荷される。増幅は、それにより成長にとって重要なタンパク質の産生が非常に要求される遺伝子が、組換え細胞の連続した世代の染色体内で縦に並んで繰り返される過程である。増加した量のVRPがこの増幅されたDNAから合成される。増幅遺伝子の他の例には、メタロチオネイン-Iおよび-IIがあり、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどである。
【0064】
例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、まず、メトトレキセート(Mtx)、すなわちDHFRの競合的アンタゴニストを含む培養培地内で全ての形質転換体を培養することにより同定される。野生型のDHFRが用いられる場合の適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系であり、Urlaub and Chasin, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 77:4216(1980)によって記載されたようにして調製し増殖させる。形質転換された細胞を、次いで、増加したレベルのメトトレキセートに曝露する。これは、DHFR遺伝子の多重コピーと、それに付随して、発現ベクターを含む他のDNA、例えば、VRPをコードするDNAの多重コピーの合成を導く。この増幅技術は、内在性DHFRの存在に関わらず、例えば、Mtxに高度に耐性な変異体DHFR遺伝子が用いられる場合には、任意の、そうでなければ適切な宿主、例えば、ATCC No.CCL61 CHO-K1とともに用いられ得る(EP 117,060)。
【0065】
あるいは、VRPをコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質および他の選択マーカー、例えば、アミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)で形質転換されたか同時形質転換された宿主細胞[特に、内在性DHFRを含む野生型宿主]が、アミノグリコシド系抗生物質のような選択マーカー用の選択剤、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418を含む培地内の細胞増殖により選択され得る。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
【0066】
酵母における使用にとって適切な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である。Stinchcomb et al., Nature, 282:39(1979);Kingsman et al., Gene, 7:141(1979);Tschemper et al., Gene, 10:157(1980)。このtrp1遺伝子は、トリプトファン中での生育の能力を欠いている酵母の変異体株、例えば、ATCC No.44076またはPEP4-1、の選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12(1977)。そして、酵母宿主細胞ゲノム中のtrp1損傷の存在は、トリプトファン不在下での増殖により形質転換を検出するのに有効な環境を提供する。同様に、Leu2−欠損酵母株(ATCC 20,622または38,626)がLeu2遺伝子を有する公知のプラスミドにより補足される。
【0067】
さらに、1.6μmの環状プラスミドpKD1から誘導されるベクターは、Kluyveromyces酵母の形質転換に用いられ得る。Bianchi et al., Curr.Genet., 12:185(1987)。より最近になって、組換え子ウシキモシンの大規模な産生のための発現系がK.lactisについて報告された。Van Den Berg, Bio/Technology, 8:135(1990)。工業的な株であるKluyveromycesによる成熟組換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定な多重コピー発現ベクターが開示された。Fleer et al., Bio/Technology, 9:968-975(1991)。
【0068】
(iv)プロモーター構成要素
発現およびクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、VRP核酸に作動可能に連結されているプロモーターを含む。プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(5')(一般に約100〜1000bp以内)に位置する非翻訳配列であり、それらが作動可能に連結されているVRP核酸配列のような特定の核酸配列の転写および翻訳を制御する。そのようなプロモーターは代表的に2つのクラス、すなわち誘導および構成に分類される。誘導プロモーターは、それらの制御下で培養条件における変化、例えば、栄養素の存在もしくは非存在あるいは温度の変化、に応答してDNAからの増加したレベルの転写を開始させる。現在、可能性のある種々の宿主により認識される多数のプロモーターが周知である。これらのプロモーターは、VRPをコードするDNAに、このプロモーターを供給源DNAから制限酵素消化により取り出して、その単離されたプロモーター配列をベクターに挿入することにより、作動可能に連結されている。天然のVRPプロモーター配列および多くの異種プロモーターはどちらも、VRP DNAの増幅および/または発現を行わせるために用いることができる。しかしながら、異種プロモーターが好ましいのは、それらが一般に、天然のVRPプロモーターと比べてVRPのより高い転写とより高い収率を可能にするからである。
【0069】
原核生物宿主と共に用いるのに適したプロモーターは、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系(Chang et al., Nature, 275:615[1978];Goeddel et al., Nature, 281:544[1979])、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel, Nucleic Acid Res., 8:4057[1980];EP 36,776)、およびtacプロモーターのようなハイブリッドプロモーターを含む。deBoer et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 80:21-25(1983)。しかしながら、他の公知の細菌プロモーターが適切である。それらのヌクレオチド配列は公開されており、それにより、熟練者が、それらを、任意の必要とされる制限部位を供給するリンカーまたはアダプターを用いて、VRPをコードするDNAに作動可能に連結することが可能になる(Siebenlist et al., Cell, 20:269[1980])。細菌系における使用のためのプロモーターもまた、VRPをコードするDNAに作動可能に連結されたシャイン-ダルガーノ(S.D)配列を含む。
【0070】
プロモーター配列は、真核生物について公知である。実質的には、全ての真核生物遺伝子には、転写が開始される部位から約25−30塩基上流に位置するATリッチな領域がある。多くの遺伝子の転写開始部から70−80塩基上流に見られるもう一つの配列は、CXCAAT領域で、ここで、Xは任意のヌクレオチドであってよい。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端にはAATAAA配列があり、それは、コード配列の3’末端へのポリAテールの付加のためのシグナルであり得る。これらの配列の全ては真核生物発現ベクターに適切に挿入される。
【0071】
酵母宿主と共に用いるために適切なプロモーティング配列の例は、3−ホスホグリセレートキナーゼのプロモーター(Hitzeman et al., J.Biol.Chem., 255:2073[1980])か、または他の解糖系酵素(Hess et al., J.Adv.Enzyme Reg., 7:149[1968];Holland, Biochemistry, 17:4900[1978])、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼのプロモーターを含む。
【0072】
他の酵母プロモーターは、生育条件により制御される転写のさらなる利点を有する誘導プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連した分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、およびマルトースおよびガラクトースの利用を司る酵素のプロモーター領域である。酵母での発現における使用にとって適切なベクターおよびプロモーターは、EP73,657にさらに記載されている。酵母エンハンサーもまた、酵母プロモーターと好都合に用いられる。
【0073】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからのVRP転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日に公開されたUK2,211,504)、アデノウイルス(例えば、Adenovirus 2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスのようなウイルス、そして最も好ましくはSimian Virus 40(SV40)のゲノムから、異種哺乳動物プロモーターから、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターから、そして通常VRP配列に関連しているプロモーターから得たプロモーターにより、そのようなプロモーターが宿主細胞系に適合可能である限り、制限される。
【0074】
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、やはりSV40ウイルスの複製起点を含んでいるSV40制限フラグメントとして簡便に得られる。Fiers et al., Nature, 273:113(1978);Mulligan and Berg, Science, 209, 1422-1427(1980);Pavlakis et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 78:7398-7402(1981)。ヒトサイトメガロウイルスの超初期プロモーターは、HindIII E制限フラグメントとして簡便に得られる。Greenaway et al., Gene, 18:355-360(1982)。ウシパピローマウイルスをベクターとして用いて哺乳動物宿主内でDNAを発現させる系が米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の改変は、米国特許第4,601,978号に開示されている。免疫インターフェロンをコードするcDNAのサル細胞における発現についてのGray et al., Nature, 295:503-508(1982);ヘルペス単純ウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのヒトβ−インターフェロンcDNAのマウス細胞における発現についてのReyes et al., Nature, 297:598-601(1982);ヒトインターフェロンβ1遺伝子の培養されたマウスおよびウサギ細胞における発現についてのCanaani and Berg, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 79:5166-5170(1982);およびラウス肉腫ウイルスの末端反復配列をプロモーターとして用いる細菌CAT配列のCV−1サル腎臓細胞、トリ胚線維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞およびマウスNIH-3T3細胞における発現についてのGorman et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 79:6777-6781(1982)もまた参照されたい。
【0075】
(v)エンハンサーエレメント構成要素
この発明のVRPをコードするDNAの高等真核生物による転写は、しばしばエンハンサー配列をベクターに挿入することにより増加される。エンハンサーは、シスに作用するDNAの要素で、通常約10〜300bpであり、プロモーターに作用してその転写を増加させる。エンハンサーは、比較的方向性および位置に非依存性であり、転写ユニットに対して5'(Laimins et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 78:993[1981])および3'(Lusky et al., Mol.Cell Bio., 3:1108[1983])、イントロン内(Banerji et al., Cell, 33:729[1983])、ならびにコード配列自身の中に見出されてきた。Osborne et al., Mol.Cell Bio., 4:1293(1984)。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、およびインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が現在では知られている。しかしながら、代表的には、真核生物細胞ウイルス由来のエンハンサーを用いる。例は、複製起点の後期側(bp100−270)のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含む。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンシング要素に関して、Yaniv, Nature, 297:17-18(1982)もまた参照されたい。エンハンサーは、VRPをコードする配列の5'または3'の位置でベクターにスプライスされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’側に位置する。
【0076】
(vi)転写終結構成要素
真核生物宿主細胞内(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)で用いられる発現ベクターはまた、転写の終結とmRNAの安定化に必要な配列を含む。そのような配列は、真核生物またはウイルスのDNAもしくはcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から通例利用可能である。これらの領域は、ポリアデニル化されたフラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを、VRPをコードするmRNAの非翻訳部分に含んでいる。
【0077】
(vii)ベクターの構築と分析
1またはそれ以上の上に挙げた構成要素を含む適切なベクターの構築には、標準的な連結技術を用いる。単離されたプラスミドまたはDNAフラグメントを開裂し、調整し、そして必要とされるプラスミドを生成するために望ましい形態に再連結する。
構築されたプラスミド内の正しい配列を確認するための分析には、連結混合物を用いて、E.coli K12株294(ATCC 31,446)を形質転換し、適切ならば、成功した形質転換体をアンピシリンまたはテトラサイクリン耐性で選択する。形質転換体由来のプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、および/またはMessing et al., Nucleic Acid Res., 9:309(1981)の方法により、あるいはMaxam et al., Methods in Enzymology, 65:499(1980)の方法により配列決定する。
【0078】
(viii)一過性の発現ベクター
本発明の実施において特に有用なのは、哺乳動物細胞内でVRPをコードするDNAの一過性の発現を提供する発現ベクターである。一般に、一過性の発現には、宿主細胞内で効率的に複製し得、その結果その宿主細胞が発現ベクターの多くのコピーを蓄積し、次いでこの発現ベクターによってコードされる高レベルの所望のポリペプチドを合成するような発現ベクターの使用が包含される。Sambrook et al.,前出、pp.16.17-16.22。一過性発現系は、適切な発現ベクターおよび宿主細胞を含み、クローン化されたDNAによりコードされるポリペプチドの便利な陽性同定、ならびにそのようなポリペプチドの所望の生物学的および生理学的特性についての迅速なスクリーニングを可能にする。したがって、一過性発現系は、生物学的に活性なVRPであるVRPの類似体および変種を同定するという目的のために、本発明において特に有用である。
【0079】
(ix)適切な典型的な脊椎動物細胞ベクター
組換え脊椎動物細胞培養物におけるVRPの合成への適合化にとって適切な他の方法、ベクターおよび宿主細胞は、Gething et al., Nature, 293:620-625(1981);Mantei et al., Nature, 281:40-46(1979);EP 117,060;およびEP 117,058に記載されている。VRPの哺乳動物細胞培養発現にとって特に有用なプラスミドは、pRK5(EP 307,247)またはpSVI6Bである。1991年6月13日に発行されたWO91/08291。
【0080】
C.宿主細胞の選択と形質転換
本明細書中のベクター中のDNAをクローニングするかまたは発現させるのに適切な宿主細胞は、上記の原核生物、酵母、または高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、グラム陰性またはグラム陽性生物のような真正細菌、例えば、Escherichiaのような腸内細菌、例えば、E.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、 Proteus、Salmonella(例えば、Salmonella typhimurium)、Serratia(例えば、Serratia marcescans)、およびShigella、ならびにB.subtilisおよびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日に公開されたDD 266,710に開示されたB.licheniformis 41P)のようなBacilli、P.aeruginosaのようなPseudomonas、およびStreptomycesを含む。1つの好ましいE.coliクローニング宿主は、E.coli 294(ATCC 31,446)であるが、E.coli B、E.coli X1776(ATCC 31,537)およびE.coli W3110(ATCC 27,325)のような他の株が適切である。これらの例は、限定ではなくむしろ例示である。W3110株が特に好ましい宿主または親宿主であるのは、それが組換えDNA生成発酵のための一般的な宿主株であるからである。好ましくは、この宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、W3110株は、タンパク質をコードする遺伝子内で遺伝的変異を起こすように改変されてもよく、そのような宿主の例にはE.coli W3110の27C7株がある。27C7の完全な遺伝子型はtonAΔptr3 phoAΔE15Δ(argF-lac)169ompTΔdegP41kanrである。27C7株は、1991年10月30日にAmerican Type Culture CollectionにATCC No.55,244として寄託された。あるいは、1990年8月7日に発行された米国特許第4,946,783号に開示された変異ペリプラズムプロテアーゼを有するE.coliの株が用いられてもよい。あるいはまた、クローニング方法、例えば、PCRまたは他の核酸ポリメラーゼ反応でも適切である。
【0081】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母のような真核生物微生物がVRPをコードするベクターの適切なクローニングまたは発現宿主である。Saccharomyces cerevisiaeまたは通常のパン酵母が、下等真核生物宿主微生物の間で最もよく用いられる。しかしながら、多くの他の属、種および株が通常利用でき、本明細書中でも有用である。例えば、Schizosaccharomyces pombe(Beach and Nurse, Nature, 290:140[1981];1985年5月2日公開のEP 139,383);Kluyveromyces宿主(米国特許第4,943,529号;Fleer et al.,前出)、例えば、K.lactis[MW98-8C, CBS683, CBS 4574;Louvencourt et al., J.Bacteriol., 737(1983)]、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaricus(ATCC 16,045)、K wickeramii(ATCC 24,178)、K waltii(ATCC 56,500)、K.drosphilarum(ATCC 36,906;Van den Berg et al.,前出)、K.thermotoleransおよびK.marxianus;yarrowia[EP 402,226];Pichia pastoris(EP 183,070;Sreekrishna et al., J.Basic Microbiol., 28:265-278[1988]);Candida;Trichoderma reesia(EP 244,234);Neurospora crassa(Case et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 76:5259-5263[1979]);Schwanniomyces、例えば、Schwanniomyces occidentalis(1990年10月31日公開のEP 394,538);および糸状菌、例えば、Neurospora, Penicillium, Tolypocladium(1991年1月10日公開のWO91/00357)、およびAspergillus宿主、例えば、A.nidulans(Ballance et al., Biochem.Biophys.Res.Commun., 112:284-289[1983];Tilburn et al., Gene, 26:205-221[1983];Yelton et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 81:1470-1474[1984]およびA.niger. Kelly and Hynes, EMBO J., 4:475-479(1985)。
【0082】
グリコシル化されたVRPの発現に適した宿主細胞は、多細胞生物から由来する。そのような宿主細胞は、複雑なプロセシングとグリコシル化活性が可能である。原則として、脊椎動物由来であろうと無脊椎動物由来であろうと、いかなる高等真核生物細胞培養物も使用可能である。無脊椎動物細胞の例には、植物と昆虫細胞が含まれる。多くのバキュロウイルス株および変種ならびにSpodoptera frugiperda(イモムシ)Aedes aegypti(蚊)Aedes albopictus(蚊)Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)、およびBombyx moriのような宿主に由来する、対応する許容昆虫宿主細胞が同定されてきた。例えば、Luckow et al., Bio/Technology, 6:47-55(1988);Miller et al.,の Genetic Engineering, Setlow et al.,編、第8巻(Plenum Publishing, 1986),pp.277-279;およびMaeda et al., Nature, 315:592-594(1985)を参照されたい。トランスフェクション用の種々のウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL-1変種およびBombyx mori NPVのBm-5株が公的に利用可能であり、このようなウイルスは、本発明にしたがって本明細書中でウイルスとして、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションに用いられてもよい。
【0083】
綿、トウモロコシ、馬鈴薯、ダイズ、ペチュニア、トマト、およびタバコの植物細胞培養物が宿主として用いられ得る。代表的には、植物細胞は、特定の株である細菌、Agrobacterium tumefaciensとインキュベーションすることによりトランスフェクションされる。この株はあらかじめVRPをコードするDNAを含むように操作されている。植物細胞培養物とA.tumefaciensとのインキュベーションの間に、VRPをコードするDNAは、植物細胞宿主がトランスフェクションされ、適切な条件下でVRPをコードするDNAが発現するように、植物細胞宿主に移される。さらに、植物細胞と適合性のある調節配列およびシグナル配列が利用可能であり、例えば、ノパリンシンターゼプロモーターおよびポリアデニル化シグナル配列がある。Depicker et al., J.Mol.Appl.Gen., 1:561(1982)。さらに、T−DNA780遺伝子の上流領域から単離したDNAセグメントは、組換えDNAを含む植物組織において植物発現遺伝子の転写レベルを活性化または増大させることができる。1989年6月21日公開のEP 321,196。
【0084】
しかしながら、最大の関心は脊椎動物細胞にあり、培養物(組織培養物)中での脊椎動物細胞の増殖は慣用的な手法になってきている。例えば、Tissue Culture, Academic Press, Kruse and Patterson編者(1973)を参照されたい。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓系(293細胞または懸濁培養物中での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al., J.Gen.Virol., 36:59[1977]);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO,Ulraub and Chasin, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 77:4216[1980]);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather et al., Biol.Reprod., 23:243-251[1980]);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頚癌細胞(HELA ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2, HB 8065);マウス乳ガン(MMT 060562, ATCC CCL 51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad.Sci., 383:44-68[1982]);MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝臓ガン系(Hep G2)である。
【0085】
宿主細胞は、VRP産生のため、上記の発現ベクターまたはクローニングベクターを用いてトランスフェクションされ、好ましくは形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、あるいは所望の配列をコードする遺伝子を増幅させるのに適切なように改変された従来の栄養培地内で培養される。
【0086】
トランスフェクションとは、任意のコード配列が実際に発現されてもされなくても、発現ベクターを宿主細胞によって取り込むことをいう。多くのトランスフェクションの方法が当業者に公知であり、例えば、CaPOおよびエレクトロポレーションがある。トランスフェクションの成功は、一般に、このベクターの作用のいかなるものであってもよい指標が宿主細胞内で生じた場合に認められる。
【0087】
形質転換とは、DNAを、そのDNAが、染色体外要素としてまたは染色体に組み込まれたものとしてのいずれかで複製可能であるように生物内に導入することを意味する。用いられる宿主細胞に依存して、形質転換は、そのような細胞に適した標準的な技術を用いて行われる。Sambrook et al.前出の1.82節に記載されたような塩化カルシウムを用いるカルシウム処理またはエレクトロポレーションが、原核生物または実質的な細胞壁障壁を有する他の細胞に対して一般に用いられる。Agrobacterium tumefaciensによる感染は、Shaw et al., Gene, 23:315(1983)および1989年6月29日に公開されたWO89/05859に記載されたように、ある種の植物細胞の形質転換に用いられる。さらに、植物は、1991年1月10日に公開されたWO91/00358に記載されたように超音波処理を用いてトランスフェクションされてもよい。
【0088】
そのような細胞壁のない哺乳動物細胞については、Graham and van der Eb, Virology, 52:456-457(1978)のリン酸カルシウム沈殿法が好ましい。哺乳動物細胞宿主系の形質転換についての一般的な側面は、1983年8月16日に発行された米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母への形質転換は、代表的には、Van Solingen et al., J.Bact., 130:946(1977)およびHsiao et al., Proc.Natl.Acad.Sci.(USA), 76:3829(1979)の方法にしたがって行われる。しかしながら、DNAを細胞に導入するための他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、細菌プロトプラストの昆虫細胞との、またはポリカチオン、例えば、ポリブレン、ポリオルニチン等との融合なども用いることができる。哺乳動物細胞の形質転換のための種々の技術については、Keown et al., Methods in Enzymology, 185:527-537(1990)およびMansour et al., Nature, 336:348-352(1988)を参照されたい。
【0089】
D.宿主細胞の培養
この発明のVRPポリペプチドを産生するために用いられる原核生物細胞は、Sambrook et al.前出に一般に記載されたような適切な培地内で培養される。
この発明のVRPを産生するために用いられる哺乳動物宿主細胞は、種々の培地内で培養することができる。Ham's F10(Sigma)、Minimal Essential Medium([MEM], Sigma)、RPMI-1640(Sigma)およびDulbecco's Modified Eagle's Medium([DMEM],Sigma)のような市販の培地が宿主細胞を培養するのに適している。さらに、Ham and Wallace, Meth.Enz., 58:44(1979)、Barnes and Sato, Anal.Biochem., 102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;または同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国特許Re.30,985号に記載された任意の培地を、宿主細胞のための培養培地として用いてもよい。これらの培地の任意のものは、ホルモン、および/または他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオシド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、GentamycinTM薬)、微量元素(無機化合物として定義され、通常最終濃度でマイクロモルの範囲で存在する)、およびグルコースまたは同等のエネルギー源が必要なものとして一緒に補充されてもよい。他のいかなる必要な補充物も当業者に公知の適切な濃度で含まれてもよい。温度、pH等のような培養条件は、発現のために選択された宿主に先に用いた条件であり、当業者には明らかであろう。
【0090】
一般に、哺乳動物細胞培養物の生産性を最大にするための原理、プロトコール、および実際的な技術は、Mammalian Cell Biotechnology; a Practical Approach, M.Butler編(IRL Press, 1991)に見出すことができる。
【0091】
この開示で引用される宿主細胞は、培養中の細胞ならびに宿主動物内にある細胞を意図する。
【0092】
E.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子増幅および/または発現は、試料中で直接的に、例えば、従来のサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するためのノーザンブロッティング(Thomas, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 77:5201-5205[1980])、ドットブロッティング(DNA分析)、またはin situハイブリダイゼーションにより、適切に標識されたプローブを用いて、本明細書中に提供された配列に基づいて、測定することができる。種々の標識を用いることができるが、最も一般的には放射性元素、特に32Pである。しかしながら、他の技術も用いてもよく、例えば、ポリヌクレオチドへの導入にはビオチン−修飾ヌクレオチドを用いてもよい。このときビオチンは、アビジンまたは抗体への結合のための部位を提供し、それは、幅広い種々の標識、例えば、放射性核種、蛍光色素、酵素などで標識することができる。あるいは、特定の二本鎖(DNA二本鎖、RNA二本鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二本鎖、またはDNA−タンパク質二本鎖を含む)を認識することが可能な抗体が用いられてもよい。次に、この抗体は標識されて、その二本鎖が表面に結合しているところでアッセイが行われ、その結果、表面上での二本鎖の形成の際に、その二本鎖に結合した抗体の存在が検出される。
【0093】
遺伝子発現は、あるいは、遺伝子産物の発現を直接的に定量するために、免疫学的方法、例えば、組織切片の免疫組織化学染色および細胞培養物または体液のアッセイにより測定されてもよい。免疫組織化学染色技術では、細胞試料を、代表的には、脱水と固定により調製し、結合した遺伝子産物に対して特異的な標識した抗体との反応が続き、ここで、標識は、通常、例えば、酵素的標識、蛍光的標識、発光的標識などのように視覚的に検出可能である。本発明における使用に適切な特に感度のよい染色技術は、Hsu et al., Am.J.Clin.Path.,75:734-738(1980)によって記載されている。
免疫組織化学染色および/または試料流体のアッセイに有用な抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれでもよく、いかなる哺乳動物においても調製できる。便利なことに、抗体は、天然のVRPポリペプチドに対して、または本明細書中に提供されるDNA配列に基づく合成のペプチドに対して、以下の第4節にさらに記載するように、調製することができる。
【0094】
F.VRPポリペプチドの精製
VRPは、好ましくは、培養培地から分泌されたポリペプチドとして回収されるが、それはまた、分泌シグナルなしに直接産生された場合には、宿主細胞破砕物から回収されてもよい。VRPが膜に結合している場合には、それは膜から、適切な界面活性剤溶液(例えば、Triton-X 100)を用いて離すことができる。
VRPがヒト起源のもの以外の組換え細胞内で産生される場合、このVRPはヒト起源のタンパク質もしくはポリペプチドを全く持たない。しかしながら、VRPを組換え細胞タンパク質もしくはポリペプチドから精製して、VRPと実質的に均一な調製物を得ることが必要である。第1段階として、培養培地または破砕物を遠心分離して粒状の細胞破片を取り除く。その後VRPを混在する可溶性タンパク質およびポリペプチドから、適切な精製手法の例である以下の手法を用いて精製する:イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはDEAEのような陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー;等電点クロマトグラフィー;SDS−PAGE;硫安沈殿;例えば、Sephadex G-75を用いるゲルろ過;およびIgGのような混入物を取り除くプロテインA Sepharoseカラム。
【0095】
好ましい実施態様においては、Flt4受容体−IgG融合物が、アフィニティークロマトグラフィーカラムに固定され、VRPはこのカラムを用いてアフィニティー精製により単離され得る。あるいは、VRPをそのN−末端でグリコプロテインD配列に結合させ、アフィニティークロマトグラフィーカラムを通過させるが、そのカラム上には、グリコプロテインD配列に対して特異的である、5B6のような抗-gDモノクローナル抗体が固定されている。
【0096】
残基が欠失、挿入または置換されているVRP変種は、変化によって引き起こされた性質の実質的な変更を考慮に入れて、天然のVRPと同じ方法で回収される。例えば、VRPの、他のタンパク質またはポリペプチドとの、例えば、細菌もしくはウイルス抗原との融合物の調製物は、精製を容易にする;その抗原に対する抗体を含むイムノアフィニティーカラムを用いて融合ポリペプチドを吸着することができる。ウサギポリクローナル抗−VRPカラムのようなイムノアフィニティーカラムを用いて、VRP変種を少なくとも1つの残っている免疫エピトープに結合させることにより、それを吸着することができる。
【0097】
フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)のようなプロテアーゼ阻害剤もまた精製中のタンパク質分解を阻害するのに有用であり、そして抗生物質は、付随的な混入物の増殖を妨げるために含まれてもよい。当業者は、天然のVRPに適した精製法には、組換え細胞培養物における発現の際の、VRPまたはその変種の性質の変化を補償する改変が必要であることを理解するであろう。
【0098】
G.VRPポリペプチドの共有結合修飾
VRPポリペプチドの共有結合修飾は、本発明の範囲に含まれる。天然のVRPおよびVRPのアミノ酸配列変種は共有結合修飾されてもよい。VRPの共有結合修飾の1つの型は、VRPの標的化されたアミノ酸残基と、VRPの選択された側鎖またはN−もしくはC−末端の残基と反応し得る有機誘導体化剤(organic derivatizing agent)とを反応させることにより分子に誘導される。
【0099】
最も一般的なシステイニル残基は、α−ハロアセテート(および対応するアミン)と、例えば、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドと反応して、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を生じる。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジルスフィド、メチル 2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾエート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、またはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によっても誘導体化される。
【0100】
ヒスチジル残基は、ジエチルピロカルボネートとのpH5.5−7.0での反応により誘導体化されるが、それは、この物質が比較的ヒスチジル側鎖に対して特異的であるからである。パラ−ブロモフェナシルブロミドもまた有用である;反応は、好ましくは、0.1Mカコジル酸ナトリウム中pH6.0で行われる。
【0101】
リシニルおよびアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。これらの物質による誘導体化は、リシニル残基の電荷を逆にするという効果を有する。α−アミノ含有残基の誘導体化のための他の適切な試薬は、メチルピコリンイミデートのようなイミドエステル、ピリドキサールホスフェート、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソウレア、2,4−ペンタンジオンおよびグリオキシレートによるトランスアミナーゼ触媒反応を含む。
【0102】
アルギニル残基は、1つまたはいくつかの従来の試薬(それらには、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンがある)との反応により修飾される。アルギニン残基の誘導体化には、グアニジン官能基のpKが高いので、反応が、アルカリ性条件下で行われることが必要とされる。さらに、これらの試薬は、リジンの基ならびにアルギニンイプシロン−アミノ基と反応し得る。
【0103】
チロシル残基の特定の修飾は、スペクトル標識を、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によりチロシル残基に導入することに特に関心を持って行うことができる。最も一般的には、N−アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンが、それぞれO−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体を形成するために用いられる。チロシル残基は、125Iまたは131Iを用いてヨード化されて、ラジオイムノアッセイで用いるための標識タンパク質が調製されるが、クロラミンT法が適切である。
【0104】
カルボキシル側鎖基(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R−N=C=N−R’)との反応により選択的に修飾され、式中RおよびR’は異なるアルキル基であり、例えば、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4’−ジメチルペンチル)カルボジイミドである。さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基はアンモニウムイオンとの反応により、アスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換される。
二官能性物質による誘導体化は、VRPが、抗−VRP抗体を精製する方法における使用のための水不溶性支持体マトリックスまたは表面に架橋するのに、有用であり、逆もまた同じである。一般に用いられている架橋剤は、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4−アジドサリチル酸とのエステル、3,3−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)のようなジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタンのような二官能性マレイミドを含む。メチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートのような誘導体化剤は、光の存在下で架橋を形成し得る光で活性化される中間体を生じる。あるいは、シアノゲンブロミド活性化炭水化物のような反応性の水不溶性のマトリックス、および米国特許第3,969,287号;同第3,691,016号;同第4,195,128号;同第4,247,642号;同第4,229,537号;および同第4,330,440号に記載された反応性基質がタンパク質の固定に用いられる。
【0105】
グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、それぞれ対応するグルタミルおよびアスパルチル残基に頻繁に脱アミド化される。これらの残基は、中性または塩基性の条件下で脱アミド化される。脱アミド化された形態のこれらの残基は、本発明の範囲に入る。
【0106】
他の修飾は、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H.Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86[1983])、N−末端アミンのアシル化、およびC−末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0107】
本発明の範囲に含まれるVRPポリペプチドの別のタイプの共有結合修飾は、ポリペプチドの天然のグリコシル化パターンを変更することを含む。変更することにより、天然のVRPに見られる1またはそれ以上の炭水化物部分の削除、および/または天然のVRPには存在しない1またはそれ以上のグリコシル化部位の付加が意味される。
【0108】
ポリペプチドのグリコシル化は、代表的には、N−結合型またはO−結合型のいずれかである。N−結合型とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への付着をいう。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(式中Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素的付着のための認識配列である。したがって、これらのトリペプチド配列のいずれかがポリペプチド中に存在する場合、可能性のあるグリコシル化部位が創出される。O−結合グリコシル化とは、糖である、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの1つのヒドロキシルアミノ酸への、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの付着をいうが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもまた用いてもよい。
【0109】
VRPポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが1またはそれ以上の上記のトリペプチド配列を含むように変更することにより簡便に行われる(N−結合グリコシル化部位について)。この変更は、1またはそれ以上のセリンまたはスレオニン残基の天然のVRP配列への付加またはそれによる置換によって行われてもよい(O−結合グリコシル化部位について)。容易さのため、VRPアミノ酸配列は、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンを生成するように、好ましくは、DNAレベルでの、特にVRPポリペプチドをコードしているDNAのあらかじめ選択された塩基で変異させることによる変化により変更される。このDNA変異は、上記および米国特許第5,364,934号、前出、に記載された方法を用いて行うことができる。
【0110】
VRPポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドの化学的または酵素的なポリペプチドへのカップリングによる。これらの手法は、それらがN−結合またはO−結合グリコシル化のグリコシル化能を有する宿主細胞内でのポリペプチドの産生を必要としないという点で好都合である。用いられるカップリングモードに依存して、糖は(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離のカルボキシル基、(c)システインのそれのような遊離のスルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリンのそれのような遊離のヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンのそれのような芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に付着されてもよい。これらの方法は、1987年9月11日に公開されたWO87/05330およびAplin and Wriston, CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259-306(1981)に記載されている。
【0111】
VRPポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的にまたは酵素的に行われ得る。化学的な脱グリコシル化は、トリフルオロメタンスルホン酸化合物もしくは同等の化合物へのポリペプチドの曝露を必要とする。この処理は、連結糖(linking sugar)(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外のほとんどもしくは全ての糖を開裂するが、ポリペプチドは元のまま残る。化学的な脱グリコシル化は、Hakimuddin et al., Arch.Biochem.Biophys., 259:52(1987)およびEdge et al., Anal. Biochem., 118:131(1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的な開裂は、Thotakura et al., Meth. Enzymol., 138:350(1987)によって記載された種々のエンド−およびエキソ−グリコシダーゼの使用により行われ得る。
【0112】
可能性のあるグリコシル化部位でのグリコシル化は、Duskin et al., J.Biol.Chem., 257:3105(1982)によって記載された化合物ツニカマイシンの使用により妨げることができる。ツニカマイシンは、タンパク質−N−グリコシド結合の形成を遮断する。
【0113】
VRPの共有結合修飾の別のタイプは、VRPポリペプチドを種々の非タンパク質性ポリマーの1つ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンに、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144;同第4,670,417号;同第4,791,192号;または同第4,179,337号に説明されたようにして連結させることを含む。
【0114】
変種VRPの性質を前もって予測することはしばしば困難なので、回収した変種のいくつかのスクリーニングが最適な変種を選択するために必要とされることが理解される。VRP分子の免疫学的性質の変化、例えば、与えられた抗体に対する親和性、もまた競合型のイムノアッセイによって測定することが可能である。変種は、その分裂促進活性の抑制または促進における変化について、同アッセイ中で天然のVRPについて観察された活性との比較によりアッセイされる。例えば、変種VRPがFlt4受容体のプロテインキナーゼ活性を刺激する能力については、本明細書中の実施例5に記載されたようにしてスクリーニングすることができる。酸化還元もしくは温度安定性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性、または担体とのもしくは多量体への凝集しやすさのような、タンパク質またはポリペプチドの性質の他の可能な修飾が、当該分野で周知の方法によりアッセイされる。
【0115】
H.エピトープ標識VRP
この発明は、別のポリペプチドに融合されたVRPを含むキメラポリペプチドを包含する。1つの好ましい実施態様において、このキメラポリペプチドは、VRPと、抗標識抗体がそれに対して選択的に結合するエピトープを提供する標識ポリペプチドとの融合物を含む。エピトープ標識は、一般に、VRPのアミノ末端もしくはカルボキシ末端に配置される。そのようなエピトープ標識した形態のVRPが望ましいのは、その存在が、標識ポリペプチドに対する標識抗体を用いて検出され得るからである。また、エピトープ標識の提供により、VRPが抗標識抗体を用いるアフィニティー精製によって容易に精製されるようになる。抗体を含むアフィニティー精製技術および診断アッセイは本明細書中で後で記載する。
【0116】
標識ポリペプチドおよびそれらのそれぞれの抗体は当該分野で周知である。例には、flu HA標識ポリペプチドおよびその抗体12CA5(Field et al., Mol.Cell.Biol., 8:2159-2165[1988]);c-myc標識およびそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体(Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616[1985]);および単純ヘルペスウイルスグリコプロテインD(gD)標識およびその抗体がある。Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6):547-553(1990)。他の標識ポリペプチドが開示されている。例は、Flag-ペプチド(Hopp et al., BioTechnology, 6:1204-1210[1988]);KT3エピトープペプチド(Martin et al., Science, 255:192-194[1992]);α-チューブリンエピトープペプチド(Skinner et al., J.Biol.Chem., 266:15163-15166[1991]);およびT7遺伝子10タンパク質ペプチド標識。Lutz-Freyermuth et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 87:6393-6397(1990)を含む。一旦標識ポリペプチドが選択されると、それに対する抗体が、本明細書中に開示される技術により生成され得る。
【0117】
エピトープ標識VRPの構築と産生に適した一般的な方法は、(天然のもしくは変種の)VRPについて本明細書中でこれまでに開示されたものと同じである。VRP-標識ポリペプチド融合物は、VRP部分をコードするcDNA配列を、インフレームで標識ポリペプチドDNA配列に融合し、得られたDNA融合構築物を適切な宿主細胞内で発現させることにより、最も簡便に構築される。通常、本発明のVRP-標識ポリペプチドキメラを調製する場合、VRPをコードする核酸は、その3’末端で標識ポリペプチドのN−末端をコードする核酸に融合されるが、5’融合物もまた可能である。
エピトープ-標識VRPは、抗標識抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより簡便に精製され得る。アフィニティー抗体を付着させるマトリックスは、最もしばしばアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である(例えば、制御された孔のガラスもしくはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン)。エピトープ-標識VRPは、アフィニティーカラムから、例えば、緩衝液のpHまたはイオン強度を変化させることにより、あるいはカオトロピック剤を添加することにより溶出される。
【0118】
2.VRPの治療用途、組成物および投与
VRPは、Flt4受容体または1つ以上の他のVRP受容体を有する細胞の増殖および/または分化および/または活性化の促進または阻害により、哺乳動物を処置するための治療用途を提供すると考えられる。外因性VRPは、こういう状況で患者に投与することができる。ヒトVRPは、内因性VRPのレベルが低下しているヒト、好ましくはこのようなレベルの低下が病気をもたらす状況にあるか、またはFlt4受容体若しくは1つ以上の他のVRP受容体の活性化若しくは阻害が欠損している状況にあるヒトに投与することができる限り、明らかに有用である。
【0119】
VRPの種々の可能性ある治療用途は、VEGFが有用である用途を含む。これらの例は、外傷を取り囲む血管内皮細胞の増殖の、VEGFによる証明された迅速な促進という観点から、および本発明で確立されたVEGFとVRPとの間の関係という観点から、血管網に対する外傷の治療のような、血管内皮に関連する用途を含む。そのように治療することができる外傷の例は、外科切開(特に心臓に関係するもの)、創傷(血管の裂傷、切開、および穿通を含む)、および表面潰瘍(糖尿病性、血友病性、および静脈瘤性潰瘍のような血管内皮に関する)を含むが、これらに限定されない。VRPの選択的分裂促進性に基づき改善することができる他の生理的状態もまた本発明に含まれる。
【0120】
上述の外傷性適応症のため、VRP分子は、治療すべき具体的疾患、個々の患者の症状、VRPの送達部位、投与の方法、および医師の知る他の因子を考慮した、良好な医療行為と矛盾のない方法で処方され、投与される。
【0121】
VRPの更なる適応症は、皮膚潰瘍のような全層創傷(褥瘡、静脈潰瘍、および糖尿病性潰瘍のカテゴリーを含む)、さらには皮膚移植または皮膚弁移植のために熱傷または損傷部位に脈管形成を必要とする、全層熱傷および損傷の治療におけるものである。この場合に、VRPは、直接その部位に適用するか、または移植に先立ち移植される皮膚または皮膚弁を浸漬するのに使用するかのいずれかである。同様の方法で、VRPは、熱傷若しくは他の外傷により、または美容目的で再生術が必要とされるときに形成外科において使用することができる。
【0122】
脈管形成はまた、創傷を清浄かつ感染なく保つ上で重要である。したがってVRPは、一般外科手術に伴い、また切り傷および裂傷の修復後に使用することができる。感染のリスクの高い腹部創傷の治療には特に有用である。骨損傷の部位で血管が発生するため、新生血管形成は骨折修復にも重要である。したがって骨折部位へのVRPの投与は、もう1つの有用性である。
【0123】
上述のように、VRPが局所創傷治癒に使用される場合には、VRPは、血管組織の再内皮化のために以下に述べられる任意の経路により、またはさらに好ましくは局所経路により投与することができる。これらの場合に、VRPは、液剤、噴霧剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、または乾燥粉剤のいずれかとして直接損傷部位に投与される。VRPを損傷部位に導く徐放デバイスも使用される。局所適用において、VRPは、単回適用で、または1週間〜数週間の期間毎日または数日毎の投薬処方で、約50〜1,000μg/mLの範囲の濃度で適用される。一般に、投与される局所製剤の量は、創傷の表面積を基に、VRP約0.1〜100μg/cm適用するのに十分な量である。
【0124】
VRPは、アテローム硬化斑の圧迫と共に、血管内皮細胞が除去または損傷される処置である、バルーン血管形成術における術後創傷治癒剤として使用することができる。VRPは、静脈内ボーラス注射剤または注入剤として、全身性または局所性静脈内適用により血管内表面に適用することができる。所望ならば、VRPは、測微計ポンプを用いて時間をかけて投与することができる。静脈内投与に適切な組成物は、内皮細胞増殖を促進するのに有効な量のVRP、および非経口用担体物質を含む。VRPは、患者1人当たり3〜10mLの注射を用いて、単回または多回適用が可能な投薬処方で投与される場合、例えば、組成物中に約50μg/mL〜約1,000μg/mLの広い範囲の濃度で存在してよい。普通の生理食塩水または5〜10%デキストロースのような、任意の公知の非経口用担体ビヒクルを使用することができる。
【0125】
VRPはまた、血管移植手術において内皮化を促進するために使用することができる。移植された血管または合成材料を使用する血管移植の場合には、例えば、VRPは、血管内皮細胞の増殖を促進するために、移植片の表面および/または移植片と存在する脈管構造との接合部に適用することができる。このような適用のために、VRPは、バルーン血管形成術について上述したように静脈内適用するか、あるいは術前または術中に、移植片の表面および/または存在する脈管構造に直接適用することができる。このような場合には、VRPが損傷表面に付着するように、粘性の高い担体物質中のVRPを適用することが望ましい。適切な担体物質は、例えば、1〜5%カルボポールを含む。VRPは、例えば、約50μg/mg〜約1,000μg/mgの広い範囲の濃度で担体中に存在してよい。あるいは、VRPは、非経口用液剤として測微計ポンプによりその部位に送達することができる。
【0126】
VRPはまた、心筋梗塞後の血管損傷を修復するため、および側副血行の増大を促進することにより冠動脈バイパス手術の必要を回避するために利用することができる。VRPは、この目的のため、個々の注射で、または上述のように時間をかけて測微計ポンプにより、または損傷心筋部位への直接注入若しくは注射により、静脈内に投与される。
【0127】
VRPの治療用製剤は、所望の純度のVRPを、場合により生理学的に受容可能な担体、賦形剤、または安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A.編、[1980])と混合することにより、凍結乾燥ケーキまたは水性液剤の剤型で保存用に調製される。受容可能な担体、賦形剤、または安定化剤は、使用される用量および濃度で受容者に対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸のような緩衝化剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリシンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート化剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成性対イオン;および/またはTween、Pluronicsまたはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤を含む。
【0128】
VRPはまた、例えば、コアセルベーション法または界面重合により調製したマイクロカプセル(例えば、各々、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ[メチルメタクリレート]マイクロカプセル)、コロイド薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロエマルション、ナノ−パーティクル、およびナノカプセル)、またはマクロエマルションに捕捉させることもできる。このような方法は、Remington's Pharmaceutical Sciences、前出、に開示されている。
【0129】
インビボ投与に使用されるVRPは、無菌でなければならない。これは、凍結乾燥および再構成の前または後に、無菌濾過膜による濾過により容易に達成される。VRPは、普通は凍結乾燥剤形態または溶液で保存される。
【0130】
治療用VRP組成物は一般に、無菌的な出入口を有する容器、例えば、皮下注射針により貫通可能な栓を有する静注液バッグまたはバイアルに入れる。
【0131】
VRP投与の経路は、公知の方法、例えば、具体的な適応症について上述した経路、さらには静脈内、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼内、動脈内、または病変部内手段による注射または注入の一般経路、あるいは後述のような徐放システムによる。VRPは、注入により連続的に、またはボーラス注射により投与される。一般に、その疾患が許せば、VRPを部位特異的送達のために処方して投薬すべきである。これは、創傷および潰瘍の場合には便利である。
【0132】
徐放性製剤の適切な例は、タンパク質を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、成型品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル[例えば、Langer et al., J. Biomed. Mater. Res., 15:167-277 (1981)およびLanger, Chem. Tech., 12:98-105 (1982)により記載されたポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)]、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L−グルタミン酸とγ-L−グルタミン酸エチルとのコポリマー(Sidman et al., Biopolymers, 22:547-556 [1983])、非分解性エチレン−酢酸ビニル(Langer et al.,前出)、Lupron DepotTM(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)を含む注射可能なミクロスフェア)のような分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)を含む。
【0133】
エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーでは、100日間にわたる分子の放出が可能であるが、一方ある種のヒドロゲルでは、これより短い期間タンパク質を放出する。カプセル化されたタンパク質が、体内に長期間残存する場合、37℃での水分への暴露の結果として変性または凝集してしまい、生物学的活性が消失して免疫原性が変化することもある。タンパク質安定化のための合理的な方策は、関係する機作に依存して案出することができる。例えば、凝集機作がチオ−ジスルフィド交換による分子間S−S結合形成であることが発見されたならば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含量を制御し、適切な添加物を使用し、そして特異的ポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成することができる。
【0134】
徐放性VRP組成物はまた、リポソームに捕捉されたVRPを含む。VRPを含有するリポソームは、それ自体公知の方法により調製される:DE 3,218,121;Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688-3692 (1985);Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030-4034 (1980);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;日本特許出願83-118008;米国特許第4,485,045号および4,544,545号;およびEP 102,324。普通リポソームは、脂質含量が約30mol%コレステロール以上(最適なVRP治療のために、選択される比率は調整する)の小さい(約200〜800Å)単層型のものである。
【0135】
局所適用されるとき、VRPは適切には、担体および/または補助剤のような他の成分と合わせられる。このような他の成分の性質には、薬学的に受容可能なものであり、かつ意図した投与にとって有効でなければならず、そして組成物の活性成分の活性を分解しえないものであるという以外には、何ら制限はない。適切なビヒクルの例は、精製コラーゲンを含むかまたは含まない、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、または懸濁剤を含む。本組成物はまた、経皮パッチ、硬膏剤、および包帯中に、好ましくは液体または半液体の形態で含浸させることができる。
【0136】
ゲル製剤を得るために、液体組成物に処方されたVRPは、有効量の水溶性多糖類またはPEGのような合成ポリマーと混合して、局所適用するのに適正な粘度のゲルを形成することができる。使用することができる多糖類は、例えば、エーテル化セルロース誘導体(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、およびアルキルヒドロキシアルキルセルロースを含む)、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースのような、セルロース誘導体;デンプンおよび分画デンプン;寒天;アルギン酸およびアルギン酸塩;アラビアゴム;プルラン;アガロース;カラゲナン;デキストラン;デキストリン;フルクタン(fructans);イヌリン;マンナン;キシラン;アラビナン;キトサン;グリコーゲン;グルカン;および合成生体高分子;さらにはゴム類、例えば、キサンタンガム;グアールガム;ローカストビーンガム;アラビアゴム;トラガカントゴム;およびカラヤゴム(karaya gum);並びにこれらの誘導体および混合物を含む。本発明の好適なゲル化剤は、生体系に対して不活性であり、非毒性であり、調製が容易であり、そして流動性も粘性も高すぎないものであり、かつそこに保持されるVRPを不安定にしないものである。
【0137】
好ましくは多糖類は、エーテル化セルロース誘導体、さらに好ましくは十分に明確な、精製され、そして米国薬局方にリストされているものであり、例えば、メチルセルロース;並びにヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースのような、ヒドロキシアルキルセルロース誘導体である。本発明において最も好適なものは、メチルセルロースである。
【0138】
ゲル化のために有用なポリエチレングリコールは典型的には、適正な粘度を得るために低分子量および高分子量PEGの混合物である。例えば、分子量400〜600のPEGと分子量1500のPEGとの混合物は、糊状物を得るために適正な比で混合すると本目的に有効であろう。
【0139】
多糖類およびPEGに適用される「水溶性」という用語は、コロイド溶液および分散液を含むことを意味する。一般に、セルロース誘導体の溶解度は、エーテル基の置換の程度により決定され、そして本発明において有用な安定化誘導体は、その誘導体が水溶性であるために十分な量の、セルロース鎖のアンヒドログルコース単位当たりのこのようなエーテル基を有するはずである。アンヒドログルコース単位当たり少なくとも0.35エーテル基のエーテル置換の程度が、一般に十分な程度である。さらに、セルロース誘導体は、アルカリ金属塩、例えば、Li、Na、K、またはCs塩の形態で存在してもよい。
【0140】
ゲルにメチルセルロースを使用するならば、好ましくはゲルの約2〜5%、さらに好ましくは約3%を占め、VRPは、ゲル1ml当たり約300〜1000mgの量で存在する。
【0141】
治療用に使用されるVRPの有効量は、例えば、治療目的、投与の経路、および患者の症状に依存する。したがって、治療専門家は、最適な治療効果を得るのに必要とされるように、投薬量を滴定して投与の経路を調節することが必要とされる。典型的には、医師は、目的の効果を達成する用量までVRPを投与する。全身治療のための典型的な1日用量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg〜10mg/kgまたはそれ以上の範囲であろう。一般的な代替案としては、VRPは、約0.1ng/cc以上、有効ではあるが不当に毒性のない最大用量以下のVRPレベルをその組織で確立することができる用量で、標的部位または組織に対して処方して送達される。この組織内濃度は、可能であれば、連続注入、徐放、局所適用、または経験的に決定した頻度での注射により維持される。この治療法の経過は、従来のアッセイにより容易にモニターすることができる。
【0142】
細胞増殖および修復を促進することにおいて、VRPを含む任意の増殖因子の活性を増強するために、VRP療法を他の新規なまたは従来の治療法[例えば、VEGF、酸性または塩基性線維芽細胞増殖因子(各々、aFGFまたはbFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF−IまたはIGF−II)、神経成長因子(NGF)、タンパク質同化ステロイド、EGFまたはTGF−αのような増殖因子と組合せることは本発明の範囲に含まれる。このような併用薬がそれ自体本発明の組成物に含まれる必要はないが、そのような薬剤がタンパク性である場合には含まれると便利であろう。このような混合物は適切には、単独で使用されるVRPと同じ方法でかつ同じ目的で投与される。このような第二の増殖因子に対するVRPの有用なモル比は、典型的には1:0.1〜10であり、大体等モル量が好適である。
【0143】
3.VRPの非治療用、診断用途
VRPをコードする核酸は、組織特異的分類のための診断薬として使用することができる。例えば、インサイチューハイブリダイゼーション、ノーザンおよびサザンブロッティング、並びにPCR分析のような方法は、VRPをコードするDNAおよび/またはRNAが、評価される細胞型に存在するかどうかを決定するのに使用することができる。VRP核酸またはポリペプチドはまた、診断マーカーとして使用することができる。例えば、VRPを、本明細書に記載される方法を用いて標識して、Flt4受容体または別のVRP受容体をコードする核酸分子の発現を標識VRPを使用して定量することができる。
【0144】
ヒトVRPをコードする核酸が、あるヒト染色体に局在するならば、ヒトVRPの核酸は、このヒト染色体のマーカーとして使用することができる。
【0145】
VRP核酸はまた、本明細書に例示される組換え法によるVRPポリペプチドの調製に有用である。
【0146】
単離されたVRPポリペプチドは、それに対して未知量のVRPを含有する試料が準備される標準または対照として、定量的診断アッセイにおいて使用することができる。
【0147】
VRP調製物はまた、抗体の作製において、VRPのアッセイにおける標準として(例えば、放射免疫アッセイ、放射性受容体アッセイ、または酵素結合免疫アッセイにおける標準としての用途のためにVRPを標識することにより)、生物学的試料中のFlt4受容体または1つ以上の他のVRP受容体の存在を検出するために(例えば、標識VRPを使用して)、アフィニティー精製法において、および放射性ヨウ素、酵素、発蛍光団、スピン標識などで標識すると競合型受容体結合アッセイにおいて有用である。
【0148】
VRPはまた、診断手段として有用である。例えば、VRPは、本明細書に詳述される方法を用いて原核生物細胞において産生することができ、こうして産生されたグリコシル化されていないタンパク質を分子量マーカーとして使用することができる。VRPの推定分子量(mw)は、約44.8kDaである。分子量マーカーとしてVRPを使用するには、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーまたはSDS−PAGEを使用して、分子量を測定したいタンパク質を実質的に通常法で分離する。VRPおよび他の分子量マーカーは、分子量の範囲を提供するための標準として使用される。例えば、ホスホリラーゼb(mw=97,400)、ウシ血清アルブミン(mw=68,000)、オボアルブミン(mw=46,000)、VRP(mw=44,800)、トリプシンインヒビター(mw=20,100)、およびリゾチーム(mw=14,400)は、mwマーカーとして使用することができる。ここで述べられる他の分子量マーカーは、例えば、Amersham Corporation, Arlington Heights, ILから市販されており購入することができる。しばしば分子量マーカーは、分離後の検出を容易にするために標識される。抗体およびタンパク質の標識法は、本明細書において検討されており、当該分野ではよく知られている。例えば、分子量マーカーは、ビオチン化して、例えば、SDS−PAGEによる分離後、ブロットはストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼと共にインキュベートすることができる。そしてバンドは光検出により検出することができる。
【0149】
VRPを血管新生因子または増殖因子として使用して、エクスビボでFlt4受容体または1つ以上の他のVRP受容体を有するある種の細胞を増殖させることも有用であり得る。したがって、例えば、VRPは、内皮細胞のインビトロ培養における増殖因子として使用することができる。このような用途のために、VRPは、約10pg/mL〜約10ng/mLの濃度で細胞培養の培地に加えることができる。
【0150】
エクスビボで増殖させようとするこれらの細胞は、同時に他の公知の増殖因子またはサイトカインに暴露されてもよい。サイトカインの例としては、インターロイキン(例えば、IL−3)、顆粒球-マクロファージ-コロニー刺激因子(GM−CSF)、VEGF、マクロファージ-コロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、エリスロポエチン(Epo)、リンホトキシン、幹細胞因子(steel factor:SLF)、腫瘍壊死因子(TNF)、およびγ−インターフェロンを含む。これにより、Flt4受容体または1つ以上の他のVRP受容体を有する細胞の増殖および/または分化が起こる。
【0151】
本発明のさらに別の側面では、VRPは、Flt4受容体または1つ以上の他のVRP受容体のアフィニティー精製に使用することができる。簡単に述べると、この方法は、不活性な多孔性マトリックス(例えば、臭化シアンと反応したアガロース)へのVRPの共有結合を伴う。次にFlt4受容体または他のVRP受容体を含有する溶液を、クロマトグラフィー材料を通過させて、次いで溶離条件を変化させることにより(例えば、pHまたはイオン強度を変えることにより)放出させることができる。
【0152】
精製VRP、およびこれをコードする核酸はまた、正常な増殖および発生、さらには異常な増殖および発生(例えば、悪性腫瘍)におけるVRPおよびFlt4受容体または他のVRP受容体の役割を検討するために、VRPおよびその同種の受容体の機作の検討のための試薬としても販売することができる。
【0153】
VRPは、Flt4受容体または他のVRP受容体への結合についての、潜在的なアゴニストまたはアンタゴニストの競合的スクリーニングに使用することができる。VRPの変種は、使用される分析系(例えば、抗VRP抗体)により認識されるならば、VRPのアッセイにおける標準または対照として有用である。
【0154】
4.VRP抗体調製
本明細書で明確化される抗体例の産生に関して以下に記す。これらの抗体例は、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性(bispecific)、またはヘテロ結合(heteroconjugate)抗体を含む。
【0155】
A.ポリクローナル抗体
VRPに対するポリクローナル抗体は、一般にVRPとアジュバントの多数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により動物において産生させる。VRPを、免疫される種において免疫原性であるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、またはダイズトリプシンインヒビター)に二官能性試薬または誘導体化剤[例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基により結合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、またはRN=C=NR(ここでRおよびRは、異なるアルキル基である)]を用いて結合させることは有用である。
【0156】
1mgまたは1μgの結合体(各々、ウサギまたはマウスについて)を3容量のフロイントの完全アジュバントと合わせて、この溶液を複数部位に皮内注射することにより、動物を免疫原性結合体または誘導体に対して免疫する。1ヶ月後、複数部位の皮下注射による、元の1/5〜1/10量の、フロイントの完全アジュバント中の結合体により、動物を追加免疫する。7〜14日後、動物を出血させて、血清を抗VRP抗体力価についてアッセイする。抗体力価がプラトーに達するまで動物を追加免疫する。好ましくは、同じVRPと異なるタンパク質との結合体で動物を追加免疫するか、および/または結合は、異なる架橋試薬を介して行う。結合体はまた、タンパク質融合物として組換え細胞培養で作製することができる。また、免疫応答を増強するため、ミョウバンのような凝集剤も使用される。
【0157】
B.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団から得られる、ということは即ち、集団を構成する個々の抗体が、微量に存在する起こりうる天然の突然変異以外には同一であるということである。したがって修飾語句の「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではない抗体の性質を示している。
【0158】
例えば、本発明の抗VRPモノクローナル抗体は、最初にKohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)により報告されたハイブリドーマ法を用いて作製してもよいし、または組換えDNA法により作製してもよい。米国特許第4,816,567号。
【0159】
ハイブリドーマ法において、マウス、またはハムスターのような他の適切な宿主動物を前述のように免疫して、免疫に使用したタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球を誘導する。あるいは、インビトロでリンパ球を免疫してもよい。次いでリンパ球を、PEGのような適切な融合剤を使用してミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を生成する。Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103, (Academic Press, 1986)。
【0160】
こうして調製したハイブリドーマ細胞を、好ましくは未融合の親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含有する適切な培地に接種して増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞に酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)が欠損しているならば、ハイブリドーマ用の培地は、典型的にはヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含んでおり(HAT培地)、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる。
【0161】
好適なミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル発現を支持し、そしてHAT培地のような培地に感受性である細胞である。これらの中で好適なミエローマ細胞株は、ソーク研究所細胞頒布センター(Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California, USA)から利用可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍から誘導した株、およびAmerican Type Culture Collection, Rockville, Maryland, USAから利用可能なSP−2細胞のようなネズミミエローマ株である。ヒトミエローマおよびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株もヒトモノクローナル抗体の産生用に報告されている。Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)。また、ヒトモノクローナル抗体の産生法については、Boerner et al., J. Immunol., 147:86-95 (1991)および1991年11月28日に公開のWO 91/17769も参照のこと。
【0162】
ハイブリドーマ細胞が増殖する培養培地は、VRPに対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法、または放射免疫アッセイ(RIA)若しくは酵素結合免疫アッセイ(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイにより測定する。
【0163】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard(Anal. Biochem., 107:220 (1980))のスキャッチャード解析により求めることができる。
目的の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞の同定後、クローンは限界希釈法によりサブクローン化して、標準法により増殖させることができる。Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-104 (Academic Press, 1986)。この目的に適切な培地は、例えば、Dulbecco's Modified Eagle's MediumまたはRPMI−1640培地を含む。さらに、ハイブリドーマ細胞は動物の腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0164】
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、適切には培地、腹水、または血清から、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーのような従来のイムノグロブリン精製法により分離される。
【0165】
あるいは、今や、内因性イムノグロブリン産生がなくても免疫により全レパートリーのヒト抗体を産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することができる。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合体欠失により、内因性抗体産生の完全な阻害が起こることが報告されている。このような生殖細胞系変異マウスへのヒト生殖細胞系イムノグロブリン遺伝子アレイの移入により、抗原投与によるヒト抗体の産生が起こる。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551-255 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993)を参照のこと。
【0166】
さらに別の実施態様において、抗体または抗体フラグメントは、McCafferty et al., Nature, 348:552-554 (1990)に報告された方法を使用して作製した抗体ファージライブラリーから、適切な抗体または抗体フラグメントを選択するためにVRPを用いて単離することができる。Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用した、ネズミおよびヒト抗体の単離をそれぞれ報告している。続く発表では、チェーンシャッフリング(chain shuffling)(Mark et al., Bio/Technol., 10:779-783 [1992])、さらには非常に大きなファージライブラリーを作製するための方策として、組合せ感染およびインビボ組換えによる、高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生を報告している。Waterhouse et al., Nuc. Acids Res., 21:2265-2266 (1993)。即ちこれらの方法は、本発明に包含される「モノクローナル」抗体(特にヒト抗体)の単離に関する従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な代替法である。
【0167】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来法を用いて(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離されて配列決定される。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好適な供給源として供される。一旦単離したら、このDNAを発現ベクターに入れて、次にこれをサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または他にはイムノグロブリンタンパク質を産生しないミエローマ細胞のような宿主細胞にトランスフェクションして、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を生じる。また、DNAは、例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を、相同なネズミ配列の代わりに置き換えることにより(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 6851 [1984])、またはイムノグロブリンコード配列に、非イムノグロブリンポリペプチドのコード配列の全て若しくは一部を共有結合することにより、修飾することができる。このようにして、本発明の抗VRPモノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。
【0168】
典型的には、このような非イムノグロブリンポリペプチドで、本発明の抗体の定常ドメインを置換するか、または本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインを置換して、VRPに対する特異性を有する1つの抗原結合部位と、異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作製する。
【0169】
キメラまたはハイブリッド抗体はまた、架橋剤を伴う方法を含む、合成タンパク質化学における公知の方法を用いてインビトロで調製することができる。例えば、イムノトキシンは、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することにより作製することができる。この目的のために適切な試薬の例は、イミノチオラート(iminothiolate)およびメチル−4−メルカプトブチルイミダート(methyl-4-mercaptobutyrimidate)を含む。
【0170】
診断応用のために、本発明の抗体は、典型的には検出可能な成分で標識する。検出可能な成分は、直接または間接に検出可能なシグナルを生成することができる任意の成分であってよい。例えば、検出可能な成分は、H、14C、32P、35S、または125Iのような放射性同位体;フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、またはルシフェリンのような、蛍光または化学発光化合物;あるいはアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、または西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素である。
【0171】
Hunter et al., Nature, 144:945 (1962);David et al., Biochemistry, 13:1014 (1974);Pain et al., J. Immunol. Meth., 40:219 (1981);およびNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)により報告された方法を含む、別々に抗体を検出可能な成分に結合させる当該分野において公知の任意の方法を使用することができる。
本発明の抗体は、競合結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイのような、任意の公知のアッセイで使用することができる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp. 147-158 (CRC Press, Inc., 1987)。
【0172】
競合結合アッセイは、限定量の抗体との結合について、標識した標準物質(これはVRP、またはその免疫学的に反応性の部分であろう)が試料中のアナライト(VRP)と競合する能力に基づく。試料中のVRPの量は、抗体に結合する標準物質の量に逆比例する。結合する標準物質の量の測定を容易にするために、一般に抗体は、競合の前または後に不溶化して、抗体に結合した標準物質およびアナライトを、未結合で残る標準物質およびアナライトから便利に分離できるようにする。
【0173】
サンドイッチアッセイは、各々検出すべきタンパク質(VRP)の異なる免疫原性部分、即ちエピトープに結合することができる、2つの抗体の使用を伴う。サンドイッチアッセイにおいて、試料中アナライトは、固相支持体に固定化された第一抗体と結合し、次に第二抗体がそのアナライトに結合して不溶性三成分複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号を参照のこと。第二抗体は、それ自体検出可能な成分で標識してもよいし(直接サンドイッチアッセイ)、または検出可能な成分で標識した抗イムノグロブリン抗体を用いて測定してもよい(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1つの型は、ELISAアッセイであり、この場合に検出可能な成分は酵素である。
【0174】
C.ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該分野ではよく知られている。一般に、ヒト化抗体は、ヒトでない供給源からそれに導入した1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「輸入(import)」残基と呼ばれており、典型的には「輸入(import)」可変ドメインからとられる。ヒト化は、本質的にはWinterとその共同研究者達の方法(Jones et al., Nature, 321:522-525 [1986];Riechmann et al., Nature, 332:323-327 [1988];Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 [1988])にしたがって、齧歯類CDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置き換えることにより、実施することができる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号、前出)、実質的に完全長ヒト可変ドメインより短い配列が、ヒト以外の種からの対応する配列により置換されている。実際、ヒト化抗体は、典型的には、幾つかのCDR残基、および恐らく幾つかのFR残基が、齧歯類抗体中の類似部位からの残基により置換されているヒト抗体である。
【0175】
抗体が、抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的性質を保持させながら、ヒト化されることは重要である。この目標を達成するために、好適な方法により、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いる、親配列および種々の概念のヒト化産物の解析の過程により、ヒト化抗体を調製する。三次元イムノグロブリンモデルは、当業者にはよく知られている。選択された候補イムノグロブリン配列の可能性の高い三次元コンホメーション構造を図解して表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を点検すると、候補イムノグロブリン配列が機能するときの残基が果たしそうな役割の解析、即ち、抗原に結合する候補イムノグロブリンの能力に影響する残基の解析が可能になる。このように、FR残基をコンセンサス配列および重要な配列から選択して組合せることができ、それにより標的抗原に対する親和性の上昇のような、所望の抗体の特徴を達成する。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を与えることに直接かつ最も実質的に関与している。更なる詳細は、1992年12月23日公開のWO 92/22653を参照のこと。
【0176】
D.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する、好ましくはヒトまたはヒト化されたモノクローナル抗体である。この場合、結合特異性の一方は、VRPに対するものであり、もう一方は、任意の他の抗原、そして好ましくは受容体または受容体サブユニットに対するものである。例えば、Flt4受容体とVRPに特異的に結合する二重特異性抗体は、本発明の範囲に含まれる。
【0177】
二重特異性抗体の作製方法は、当該分野で公知である。従来、二重特異性抗体の組換え産生は、2つのイムノグロブリン重鎖/軽鎖対(ここで、2つの重鎖は、異なる特異性を有する)の同時発現に基づく。Millstein and Cuello, Nature, 305:537-539 (1983)。イムノグロブリン重鎖および軽鎖のランダムな取り合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ(quadromas))は、10種の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があり、このうちの1種のみが正しい二重特異的構造を有する。正しい分子の精製(通常アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる)は、相当に厄介であり、産物の収量は低い。同様な方法は、1993年5月13日に公開のWO 93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
【0178】
別のさらに好適なアプローチにより、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)はイムノグロブリン定常ドメイン配列に融合される。この融合物は、好ましくは、少なくともヒンジ、CH2、およびCH3領域の部分を含む、イムノグロブリン重鎖定常ドメインとの融合物である。好ましくは、少なくとも融合物の1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含有する第一の重鎖定常領域(CH1)を含む。イムノグロブリン重鎖融合物、および所望ならばイムノグロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクションする。このことにより、構成に使用される3つのポリペプチド鎖の比が等しくないときに最適な収量が得られる場合、実施態様における3つのポリペプチドフラグメントの相互割合を調整するのに融通性が大きくなる。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい比の発現により高収量が得られるか、またはその比が特別に重要でない場合には、1つの発現ベクターに2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を挿入することは可能である。このアプローチの好適な実施態様において、二重特異性抗体は、一方のアームの第一結合特異性を有するハイブリッドイムノグロブリン重鎖、およびもう一方のアームのハイブリッドイムノグロブリン重鎖/軽鎖対(第二結合特異性を与える)よりなる。この非対称性構造は、二重特異的分子の半分のみのイムノグロブリン軽鎖の存在が分離の容易な方法を与えるため、目的としないイムノグロブリン鎖組合せからの所望の二重特異的化合物の分離を容易にすることが判った。このアプローチは、1994年3月3日に公開のWO 94/04690に開示されている。二重特異性抗体作製の更なる詳細については、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照のこと。
【0179】
E.ヘテロ結合抗体
ヘテロ結合抗体も本発明の範囲に含まれる。ヘテロ結合抗体は、2つの共有結合した抗体よりなる。このような抗体は、例えば、不必要な細胞に対する免疫系細胞を標的とする(米国特許第4,676,980号)ため、およびHIV感染症の治療のために提案されてきた。WO 91/00360;WO 92/200373;EP 03089。ヘテロ結合抗体は、任意の便利な架橋法を用いて作製することができる。適切な架橋剤は、当該分野でよく知られており、例えば、米国特許第4,676,980号に多くの架橋法と共に開示されている。
【0180】
5.VRP抗体の用途
i.治療用途
VRP抗体は、幾つかの治療適応症において、VRPの活性を遮断するため(例えば、Flt4受容体またはVRPに結合する別の受容体の過剰な活性化または阻害を遮断するため、並びに新生血管形成、再内皮化、および新血管形成を遮断するため)に有用であろう。具体的には、VRP抗体は、種々の腫瘍および非腫瘍疾患および障害の治療に有用である。治療しやすい腫瘍および関連症状は、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、大腸癌、肝癌、卵巣癌、莢膜細胞腫、アレノブラストーマ、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、頭部および頸部癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、肝芽腫、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、膵臓癌、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、膠芽腫、シュワン鞘腫、乏突起細胞腫、髄芽腫、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路癌、甲状腺癌、ウィルムス腫瘍、腎細胞癌、前立腺癌、母斑症に伴う異常血管増殖、水腫(例えば脳腫瘍に伴う)、およびメージュ症候群を含む。
【0181】
治療しやすい非腫瘍症状は、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム動脈硬化症、糖尿病性および他の網膜症、水晶体後部線維増殖症、血管新生緑内障、老年性黄斑変性症、甲状腺過形成(グレーブス病を含む)、角膜および他の組織の移植、慢性炎症、肺炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、腹水、心膜液(心膜炎に伴うような)、および胸膜滲出液を含む。
【0182】
老年性黄斑変性症(AMD)は、老年層における重篤な視覚消失の主要な原因である。AMDの滲出型は、脈絡膜の新生血管形成および網膜色素上皮細胞の剥離を特徴とする。脈絡膜の新生血管形成は、予後の劇的な悪化に関係するため、本発明のVRP抗体は、AMDの重篤度を低下させるのに特に有用であることが期待されている。
【0183】
治療適用のために、本発明のVRP抗体は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)に、薬学的に受容可能な投薬剤型で投与され、それには、ヒトにボーラス注射として静脈内に、若しくは時間をかけて連続注入により、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、硬膜下腔内、経口、局所、または吸入経路により投与することができる剤型があげられる。VRP抗体はまた、局所性並びに全身性の治療効果を発揮させるために、腫瘍内、腫瘍周囲、病変部内、若しくは病変部周囲への経路により、またはリンパにも適切に投与される。腹腔内経路は、例えば、卵巣癌の治療において、特に有用であることが期待されている。
【0184】
このような投薬剤型は、本質的に非毒性かつ非治療用の薬学的に受容可能な担体を包含する。このような担体の例は、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝化剤、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースを基にした物質、およびPEGのような電解質を含む。VRP抗体の局所用またはゲル基剤の担体は、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはメチルセルロースのような多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、PEG、およびウッドワックス(wood wax)アルコールを含む。全ての投与のために、従来のデポー剤型が適切には使用される。このような剤型は、例えば、マイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入剤型、鼻噴霧剤、舌下錠、および徐放性製剤を含む。VRP抗体は、典型的には約0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度でこのようなビヒクル中に処方される。
【0185】
徐放性製剤の適切な例は、VRP抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、成型品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル[例えば、Langer et al.,前出、およびLanger、前出、に記載されたポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγ-L−グルタミン酸エチルとのコポリマー(Sidman et al.,前出)、非分解性エチレン−酢酸ビニル(Langer et al.,前出)、Lupron DepotTM(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)よりなる注射可能なミクロスフェア)のような分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーでは、100日間にわたる分子の放出が可能であるが、一方ある種のヒドロゲルでは、これより短い期間タンパク質を放出する。カプセル化されたVRP抗体は、体内に長期間残存するとき、37℃での水分への暴露の結果として変性または凝集してしまい、生物学的活性が消失して免疫原性が変化することもある。安定化のための合理的な方策は、関係する機作に依存して案出することができる。例えば、凝集機作がチオ−ジスルフィド交換による分子間S−S結合形成であることが発見されたならば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含量を制御し、適切な添加物を使用し、そして特異的ポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成することができる。
【0186】
徐放性VRP抗体組成物はまた、リポソームに捕捉された抗体を含む。VRP抗体を含有するリポソームは、Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688 (1985);Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030 (1980);並びに米国特許第4,485,045号および4,544,545号に記載されるような、当該分野で公知の方法により調製される。普通リポソームは、脂質含量が約30mol%コレステロール以上(最適なVRP抗体治療のために、選択される比率は調整する)の小さい(約200〜800Å)単層型である。循環時間を延長したリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0187】
本発明の別の用途は、VRP抗体を成型品に組み込むことである。このような成型品は、内皮細胞増殖および血管形成を調節するのに使用することができる。さらに、腫瘍の浸潤および転移をこれらの成型品で調節することができる。
【0188】
疾患の予防または治療のために、VRP抗体の適切な用量は、上述のような治療すべき疾患の型、疾患の重篤度と経過、その抗体が予防目的で投与されるか、それとも治療目的で投与されるか、以前の治療法、患者の病歴およびVRP抗体に対する応答、並びに担当医の裁量に依存する。VRP抗体は、患者に1回または一連の治療にわたって適切に投与される。
【0189】
疾患の型および重篤度により、約1μg/kg〜15mg/kgのVRP抗体が、例えば、1回以上の別々の投与によるか、または連続注入によるかの、患者への投与の初期の候補用量である。典型的な1日用量は、上述の要因により、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であろう。数日間以上にわたる反復投与については、症状により、治療は、目的とする症状の抑制が得られるまで継続する。しかし別の投薬処方も有用でありうる。本治療の経過は、例えば、放射線撮影腫瘍イメージングを含む、従来の方法およびアッセイにより容易にモニターされる。
【0190】
本発明の別の実施態様により、疾患を予防または治療する際のVRP抗体の有効性は、VRP抗体を連続して、あるいは以下に列挙されるようなそういった目的に有効な別のタンパク性物質、または1つ以上の従来の治療薬(例えば、アルキル化剤、葉酸アンタゴニスト、核酸代謝の代謝拮抗物質、抗生物質、ピリミジン類似体、5−フルオロウラシル、シスプラチン、プリンヌクレオシド、アミン、アミノ酸、トリアゾールヌクレオシド、またはコルチコステロイドなど)と組合せて投与することにより改善することができる。このような他の物質は、投与される組成物中に存在してもよいし、別々に投与されてもよい。また、VRP抗体は、連続して、または放射線医学的処置(照射または放射活性物質の投与を伴う)と組合せて、適切に投与される。
【0191】
1つの実施態様において、腫瘍の血管形成を組合せ療法で攻撃する。1つ以上のVRP抗体は、腫瘍担持患者に、例えば、腫瘍の壊死または存在すればその転移巣を観察することにより求められた治療有効用量で投与する。この治療法は、さらに有益な効果が観察されないか、または臨床検査により腫瘍若しくは転移巣の痕跡が認められなくなるまで続けられる。次いでタンパク性補助剤を、単独または別の補助剤と組合せて投与する。このような物質は、例えば、TNF、aFGF若しくはbFGFまたは肝細胞増殖因子(HGF)の血管形成活性を阻害または中和することができる抗体、WO 94/10202、前出、に記載されるrhVEGFアンタゴニスト、α−、β−、またはγ−インターフェロン、抗HER2抗体、ヘレグリン(heregulin)、抗ヘレグリン抗体、D因子、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、GM−CSF、あるいは抗プロテインC抗体、抗プロテインS抗体、またはC4b結合タンパク質(1991年2月21日に公開のWO 91/01753)のような、腫瘍内の微小血管凝固を促進する物質、あるいは熱または放射線を含む。
【0192】
補助剤はその有効性が色々であるため、従来法でのマトリックススクリーニングにより、腫瘍に及ぼすこれらの影響を比較することが望ましい。VRP抗体およびTNFおよび/または他の補助剤の投与は、目的とする臨床効果が達成されるまで反復する。あるいは、VRP抗体または複数のVRP抗体を、TNF、および場合により他の補助剤と共に投与する。固形腫瘍が、四肢または他の全身循環から孤立しやすい位置に見い出された場合には、本明細書中に記載される治療薬は、その孤立した腫瘍または臓器に投与される。他の実施態様では、抗FGFまたは抗PDGF中和抗体のような、FGFまたは血小板由来増殖因子(PDGF)のアンタゴニストを、VRP抗体と共に患者に投与する。VRP抗体による治療は、最適には、創傷の治癒または望ましい新生血管形成の期間は停止することができる。
【0193】
ii.他の用途
本発明のVRP抗体はまた、アフィニティー精製用物質として有用である。この過程において、VRPに対する抗体は、セファデックス樹脂または濾紙のような適切な支持体に、当該分野で周知の方法を用いて固定化される。次に固定化抗体を、精製すべきVRPを含有する試料と接触させ、次いでこの支持体を、固定化抗体に結合しているVRP以外の、実質的に全ての試料中の物質を除去する適切な溶媒により洗浄する。最後に、グリシン緩衝液(pH5.0)のようなVRPを抗体から離す別の適切な溶媒で、この支持体を洗浄する。
【0194】
VRP抗体はまた、VRPの診断的アッセイ(例えば、特定の細胞、組織、または血清中のVRPの発現の検出)においても有用であり得る。抗体は、上述のVRPと同じ方法で標識するか、および/または不溶性マトリックスに固定化する。VRP抗体はまた、組換え細胞培養物または天然の供給源からのVRPの親和性精製用に有用である。他のタンパク質と検出可能なほど交差反応しないVRP抗体は、他の公知のタンパク質を含まないVRPを精製するのに使用することができる。VRPおよびその抗体のための適切な診断的アッセイは、上述のとおりである。
【0195】
III.実験
以下は、本発明を実施するための具体的な実施態様の例である。実施例は、例示目的でのみ提供されるものであり、本発明の範囲を何ら限定しようとするものではない。
前出のまたは後出の本明細書に引用される全ての刊行物、特許および特許出願を、その全体を参考として本明細書に援用する。
【実施例】
【0196】
実施例1
ヒトFlt4受容体をコードするcDNAクローンの単離
ヒト巨核球白血病細胞株CMK11−5から精製したmRNAから合成したcDNAを、チロシンキナーゼ受容体の保存領域に基づく重複PCRプライマーにより増幅した。Wilks, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:1603-1607 (1989)。ユニークDNA配列を含む約180bpの1つの増幅フラグメント(SAL−S1またはtk1と呼ばれる;PCT/US93/00586、前出)を使用して、完全長の短型のFlt4受容体(1298アミノ酸)をコードする重複クローンを得るために、CMK11−5およびDAMI細胞由来のcDNAライブラリーをスクリーニングした(Janssen et al.,前出)。集めて整理したFlt4をコードするクローンの配列は、欠性赤白血病(anerythroleukemia)細胞株から報告されたクローン(Pajusola et al., Cancer Res.、前出)に適合し;別の報告されたFlt4配列とは8アミノ酸異なってコードする。Galland et al., Oncogene、前出。長型のFlt4(1363アミノ酸)をコードするクローンは、発表された配列(Pajusola et al., Oncogene, 8、前出)に基づき約200bpの異なる3’DNA配列を合成することにより構築した。
【0197】
実施例2
受容体IgG融合タンパク質、Flt4/IgG抗血清、およびG61 FACS解析
Flt1/IgG(Park et al.,前出)、Flk1/IgG(Park et al.,前出)、Rse/IgG(Godowski et al., Cell, 82:355-358 [1995])、およびHtk/IgG(Bennett et al., J. Biol. Chem., 269:14211-14218 [1994])をこれらの引用文献に記載されたように作製した。Flt4/IgGについては、Flt4受容体の細胞外ドメイン(アミノ酸1〜775)をコードするDNAを、プラスミドpBSSK-Fc中のユニークBstEII部位でヒトIgG重鎖のFc領域にスプライシングした(pBSSK-CH2CH3)。Bennett et al., J. Biol. Chem., 266:23060-23067 (1991)。Flt4/IgGをコードするオープンリーディングフレームを、哺乳動物発現ベクターpRK5(Suva et al., Science, 237:893-896 [1987])にクローン化して、プラスミドpRK5.tk 1 ig 1.1を得た。このプラスミドをエレクトロポレーション(Janssen et al.,前出)により293細胞(ATCC CRL 1651)中にトランスフェクションして、3〜4日後、プロテインAアガロース(Calbiochem)により無血清順化培地からFlt4/IgGを精製した。精製したFlt4/IgGのウサギへの注射によりFlt4抗血清を作製した。
この融合タンパク質を使用して、FACS解析により膜結合VRPに関して細胞株をスクリーニングすることにより、以下に記載した1つの陽性細胞株G61を同定した。
ヒト膠腫細胞株G61(Hamel et al., J. Neurosci. Res., 34:147-157[1993])を、10%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、および抗生物質を含有するF12:DMEM(50:50)(高グルコース)中で培養した。G61細胞へのFlt4/IgG結合のFACS解析のため、100万個の細胞を、リン酸緩衝化食塩水(PBS)、5%ヤギ血清、2%ウサギ血清中で70nM受容体−IgG融合タンパク質と共に4℃で60分間インキュベーションし、次に10μg/mLビオチン−SP−結合ヤギ抗ヒトFc抗体および10μg/mL R−フィコエリトリン−結合ストレプトアビジン(Jackson Immuno Research)で染色した。G61は、関連のないチロシンキナーゼ受容体複合体のRse/IgGに比べてFlt4/IgGに特異的なピーク蛍光強度に約10倍のシフトを引き起こした(図2)。COS細胞へのcDNAクローンのプールのトランスフェクションにより、この推定膜結合VRPを発現クローン化しようと試み、次いで標識Flt4/IgGでのスクリーニングにより、各1000〜5000クローンの640個のプールからは陽性クローンは得られなかった。
【0198】
実施例3
ヒトVRPをコードするcDNAクローンの単離
ヒト膠腫細胞株G61(Hamel et al.,前出)から、Cathala et al., DNA: 2:329-335 (1983)およびAviv and Leder, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69:1408-1412 (1972)に記載されたように単離したポリA+RNAからcDNAライブラリーを調製した。cDNAは、このRNAからGIBCO/BRLの試薬(SuperScript)により調製して、XhoIおよびNotIで消化したプラスミドpRK5B(Holmes et al., Science, 253:1278-1280 [1991])にクローン化した。VRPをコードするクローンは、EST配列(GenBank locus HSC1WF111)に基づく合成オリゴヌクレオチドプローブでcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより単離し、それはVEGFとの妥当な適合を示した。HSC1WF111のEST配列は、299bpであり、そしてVEGFアミノ酸56で始まる13残基の内の11残基のマッチを含めて、50残基でVEGFに36%同一である。配列は以下のとおりである:
5'-CCGTCTACAGATGTGGGGGTTGCTGCAATAGTGAGGGGCTGCAGTGCATGAACACCAGCACGAGCTACCTCAGNAAGACGTTATTTGAAATTACAGTGCCTCTCTCTCAAGGCCCCAAACCAGTAACAATCAGTTTTGCCAATCACACTTCCTGCCGATGCATGTCTAAACTGGATGTTTACAGACAAGTTCATTCCATTATTAGACGTTCCCTGCCAGCAACACTACCACAGTGTCAGGCAGCGAACAAGACCTGCCCCACCAATTACATGTGGAATAATCACATCTGC AGATGCCTG(SEQ ID NO:6)
使用したオリゴヌクレオチドプローブovh1.4およびovh1.5の配列を以下に示す。
ovh1.4:5'-CTGGTGTTCATGCACTGCAGCCCCTCACTATTGCAGCAACCCCCACATCT(SEQ ID NO:7)
ovl1.5:5'-GCATCTGCAGATGTGATTATTCCACATGTAATTGGTGGGGCAGGTCTTGT(SEQ ID NO:8)
これら2つのプローブを32P標識し、42℃で20%ホルムアミド中でハイブリダイズさせて55℃で30mM NaCl/3mMクエン酸三ナトリウム中で最後に洗浄した。Janssen, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(1995)。スクリーニングした650,000クローンから、7個の陽性クローンを同定して特徴づけした。制限地図化およびDNA配列決定により、陽性クローンは3群に分かれた。
クローンVH1.4(pRK.vh1.4.1)およびVH1.6は、全コード領域を含んでおり(図3A)、完全に配列決定した。これらは、長さのみ異なっており、VH1.6には3’ポリA配列に先立つ2個のTの欠失がある。クローンVH1.2は、VH1.4と同一線上にある。クローンVH1.3、VH1.5、およびVH1.7は、同一であり、VH1.4と比較すると557bpの欠失(bp519〜1075の欠失)があり、そしてクローンVH1.1は、VH1.4と比較すると152bpの欠失(bp924〜1075の欠失)がある。VH1.4のヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列を、図1に示す。
この配列は、翻訳開始部位と予測される−3位のプリン残基に続くATGコドンで始まる419アミノ酸のオープンリーディングフレームを含んでいた。Kozak, Nucl. Acids Res., 12:857-872 (1984)。このATGの約250bp5’側には、2個のインフレームATGコドンがあり、それに終止コドンが短く続いていた(4または10アミノ酸)。これらのATGは両方とも、−3位にピリミジンがあり、強い翻訳開始部位として機能するとは考えられない。Kozak、前出。419アミノ酸のリーディングフレームの開始点に直接続くコードされるアミノ酸配列は、疎水性であり、アミノ末端分泌シグナル配列であることを暗示している。Perlman and Halvorson, J. Mol. Biol., 167:391-409 (1983)。図3Aを参照のこと。この配列の最も可能性高い切断部位は、残基15または16の後の切断を排除することはできないが、アミノ酸20の後であろう。von Heijne, Nucl. Acids Res., 14:4683-4690 (1986)。オープンリーディングフレームの前には、約380bpのGCの豊富な5’非翻訳領域があり、後には約400bpの3’非翻訳領域がある。
ヒトVRPの予測される成熟アミノ酸配列は、399アミノ酸残基(翻訳されたM=44.8kDa)を含み、その内37個(9.3%)はシステイン残基である;N結合グリコシル化の可能性ある部位が3つある(図3A)。6つの形態のVEGFおよびPlGFとのVRPのアミノ酸配列のアラインメントにより、VRPはVEGF121(32%同一)およびPlGF131(27%同一)と最も類似していることが判った(図3B);9個のシステイン残基の内8個の位置が保存されている。VRPは、幾つかの形のVEGFおよびPlGFで見られる塩基性アミノ酸の領域を含有しないが、それは、VEGFよりかなり大きく、かつVEGFには見られないシステインの豊富な分子のC末端の半分を含有する。このシステインの豊富なドメインは、双翅類のバルビアニ環の3つのタンパク質に50回以上見られる反復である、Cys、次に10個の非Cys残基、次にCys−X、次にCys−X、そして次にCysのパターン4コピーを含む(図3B)。Paulsson et al., J. Mol. Biol., 211:331-349 (1990)。いずれかの理論に限定されることなく、VRPは、システイン残基を介してこれらの細胞上の他の膜結合タンパク質と相互作用するであろう;このような分子間相互作用は、バルビアニタンパク質に関して提唱されている。Paulsson et al.,前出。
2つのcDNAクローン(VH1.1およびVH1.3)は、VH1.4と比較すると152または557bp欠失していた(図3A)。これらの欠失体は両方とも、同じヌクレオチドで終わり、オルタナティブスプライシングの結果であろうと推定される。両方の欠失体は、15アミノ酸以内の終止コドンで終結する、欠失の3’側の同じフレームシフトしたタンパク質をコードすることが予測される。VH1.3によりコードされるタンパク質は、VEGFと類似したコアのシステイン領域を全然含まないであろう。VH1.1は、VEGFと類似の領域の多くを含有する;しかし、その欠失は、種々の公知の形のVEGFまたはPlGFと類似していない。Ferrara et al.,前出;Maglione et al.,前出;Hauser and Weich、前出。
図4は、GenBankからの11個のEST cDNAとのVH1.4(上)のアラインメントを開示する。3’ESTがポリA末端にあり、ESTがVH1.4の完全長配列の半分と少しを占めるだけであることに注目されたい。
【0199】
実施例4
35S標識VRPの受容体IgG沈降
VRPがFlt4のリガンドであるかどうか決定するために、VH1.4cDNAクローンを含有する発現プラスミド、さらには対照プラスミド(単独の、またはVEGF若しくはPlGF DNAを含む、発現ベクター)をCOS7細胞中にトランスフェクションして、タンパク質を35Sアミノ酸で標識した。これらの細胞からの順化培地をFlt4/IgGおよびFlk1/IgGと共に沈降させた。具体的には、約360bpの5’非翻訳配列(VH1.4のAgeI部位(図3A)の5’)を欠失させることにより、VRP発現プラスミドのpRK.vh1.4.2を構築した。このDNA、およびVEGF165(Houck et al., Mol. Endocrinol., 5:1806-1814 [1991])、PlGF152(Park et al.,前出)をコードするか、またはベクター単独(pRK5;Suva et al.,前出)の対照プラスミドを、DEAE−デキストランによりCOS7細胞中にトランスフェクションした。Janssen et al.,前出。トランスフェクションの2日後、100μCi/mLの35Sアミノ酸(Pro-MixTMブランド;Amersham #SJQ0079)を補足したメチオニン−およびシステイン−非含有DMEM5mLにより、37℃で5時間10cmシャーレ中で細胞を瞬間標識し、次いで7時間DMEM中で追跡した。標識した順化培地をスピン濃縮(Centricon-10TMブランド;Amicon #4203)により10倍濃縮した。濃縮培地50μLを受容体IgG 3μgおよびプロテインAアガロース(Calbiochem)の50%スラリー80μLと共に4℃で一晩インキュベートした。沈降物をPBS/0.1%TritonX-100で洗浄し、SDS試料緩衝液中で煮沸して、12%SDSポリアクリルアミドゲル(Novex #EC60052)で電気泳動した。このゲルをオートラジオグラフィー増強剤(duPont #NEF974)で処理して−70℃で一晩感光した。
53kDaと33kDaの2つの特異的バンドが、Flt4/IgGによるVRPトランスフェクション物から沈降した;これらのバンドはベクタートランスフェクション物では存在しなかった。これら2つのバンドの特異的な沈降は、Flt1/IgGまたはFlk1/IgGではほとんどまたは全然見られなかった。時々、幾つかのVRP沈降物をFlk1/IgGで検出したが、これはVRPがFlk1と低親和性相互作用しうることを示唆している。VEGF発現プラスミドによるトランスフェクションでは、Flt1/IgGおよびFlk1/IgGにより約22kDaの強いバンドの予測された沈降が見られた(DeVries et al.,前出;Quinn et al.,前出;Milauer et al.,前出;Terman et al., Biochem. Biophys. Res. Commun.前出)が、Flt4/IgGによる沈降はなかった。標識PlGFによる同様な実験では、Flt4/IgGによる沈降はなく、Flt1/IgGによる予測された沈降はあったが、Flk1/IgGによる沈降はなかった。Park et al.,前出。これらのデータは、VRPが、Flt4受容体の細胞外ドメインに結合するが、VEGF受容体のFlt1またはFlk1とは相互作用しない(またははるかに弱く相互作用する)ことを示している。またこれらは、Flt4とのVEGFの相互作用がないこと(Pajusola et al., Oncogene, 9前出)を確認し、PlGFもこの受容体のリガンドではないことを示している。
【0200】
実施例5
Flt4受容体のチロシンリン酸化
Flt4のチロシンリン酸化(PCT/US93/00586、前出、にも記載されている)をアッセイするために、Flt4を293細胞で発現させて、ホスホチロシン免疫ブロットによりFlt4リン酸化をモニターした。具体的には、長型のヒトFlt4をコードするDNAを哺乳動物発現ベクターpRK5(Suva et al.,前出)中にクローン化して、プラスミドpRK.tk1-3.1を得た。このプラスミドを、ミログリコシドホスホトランスフェラーゼ(ネオ)転写単位を含有するプラスミドと共に293細胞中にリン酸カルシウム沈降により同時トランスフェクションし(Janssen et al.,前出)、安定にトランスフェクションされた株をG418(Gibco)での増殖により選択した。Flt4/IgG抗血清でのFACS解析により決定されたFlt4を発現する1つのクローンの細胞株(クローン31)、およびトランスフェクションしていない293細胞を、Flt4チロシンリン酸化アッセイにおいて使用した。PBS/0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)100μL中の100万細胞を試料100μLと混合して、37℃で15分間インキュベーションした。次に細胞を遠心分離により回収し、0.15M NaCl、10%グリセロール、1%Triton X-100、50mM HEPES(pH7.3)、4μg/mL PMSF、0.02u/mLアプロチニン(Sigma A6279)、および20mMオルトバナジン酸ナトリウム250μL中で溶解した。ウサギFlt4/IgG抗血清8μLおよびプロテインAアガロース30μLの添加により、Flt4を免疫沈降した。洗浄した沈降物をSDS試料緩衝液中で煮沸して、ポリアクリルアミドゲル(Novex)で電気泳動し、ニトロセルロースに移して(Janssen et al.,前出)、抗ホスホチロシンモノクローナル抗体(Upstate Biotechnology)およびアルカリホスファターゼ検出系(Promega)を用いて調べた。
VH1.4(pRK.vh1.4.2)またはVEGF(Houck et al.,前出)をコードする発現プラスミドの293細胞中へのエレクトロポレーション、および3日間の無血清順化培地の20倍濃縮(Centricon-10, Amicon)により、VRPまたはVEGFを含有する試料を調製した。受容体IgG競合実験では、濃縮順化培地を受容体IgGと共に4℃で1時間プレインキュベートした。
刺激がない場合、Flt4発現または非発現293細胞は、Flt4チロシンリン酸化をほとんどまたは全然示さなかった。Flt4/IgG抗血清によるFlt4発現細胞の刺激により、180および120kDaの2つのバンドのチロシンリン酸化が見られた。免疫前血清では基線リン酸化を超える上昇は観察されず、非発現細胞のFlt4/IgG抗血清刺激ではバンドは見られなかった。およそこのサイズの2つのFlt4バンドは、DAMIおよびHEL細胞により発現されることが報告されている。Pajusola et al., Oncogene, 8、前出。さらに、精製Flt4/IgGのSDSゲル解析により、これが、150、80、および70kDaのペプチドよりなることが判った。Flt4/IgGペプチドのN末端アミノ酸配列により、150および70kDaバンドが、アミノ酸配列:YSMTPPTL(SEQ ID NO:9)(残基25で開始するFlt4配列に適合する)を有し、80kDaバンドが、配列:SLRRRQQQD(SEQ ID NO:10)(残基473で始まるFlt4配列に適合する)を有することが判った。即ち、Flt4/IgGおよび完全長Flt4の両方とも、細胞外ドメインで部分的に切断されていると考えられ、そしてFlt4リン酸化アッセイで観察された180および120kDaのチロシンリン酸化バンドは、Flt4/IgGの150および80kDaペプチドに対応するものであろう。Flt4発現細胞にポリクローナル抗血清を添加すると、180および120kDaの2つのFlt4バンドのチロシンリン酸化が見られた;非発現細胞ではどのバンドも観察されなかった。これらのデータは、Flt4受容体の細胞外ドメインに対して生成したポリクローナル抗体が、Flt4チロシンリン酸化を活性化することができることを示している。
VRPが、Flt4のチロシンリン酸化を活性化できるかどうかを決定するために、VRP発現プラスミドでトランスフェクションした哺乳動物細胞からの順化培地をアッセイした。この順化培地は、アゴニストのポリクローナル抗体により見られた同じ180および120kDaバンドのチロシンリン酸化を促進したが、このことは、VRPが、Flt4に結合できるだけでなく、Flt4のリン酸化を促進することができることを証明している。VEGF発現細胞からの順化培地では、Flt4チロシンリン酸化を活性化することができなかった。
VEGFファミリーの受容体へのVRP結合の特異性を確認するために、Flt4/IgG、Flt1/IgG、Flk1/IgG、およびHtk/IgGを、VRP刺激Flt4リン酸化に競合するこれらの能力に関して試験した。VRPがFlt4のリガンドであならば予測されるとおり、Flt4/IgGは、VRP刺激リン酸化を妨害し、一方Flt1/IgG、Flk1/IgG、および無関係のチロシンキナーゼ受容体からの融合タンパク質であるHtk/IgGは、ほとんどまたは全然作用しなかった。これらのデータは、VRPが、Flt4のチロシンリン酸化を誘導することができることを示している。
【0201】
実施例6
VRPの精製および標識Flt4/IgGへの結合
ヘルペスグリコプロテインDのN末端分泌シグナル配列および約30アミノ酸をコードするリーディングフレーム(Lasky and Dowbenko, DNA, 3:23-29 [1984];Pennica et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:1142-1146 [1995])を、短いリンカー配列によりVRPの推定成熟配列に融合した。哺乳動物細胞からの分泌後、この構築物からN末端グリコプロテインD配列:KYALADASLKMADPNRFRGKDLPVLDQLLEGGAAHYALLP(SEQ ID NO:11)とそれに続く成熟VRP配列:GPREAPAAAAAFE(SEQ ID NO:12)が得られることが期待される。この融合タンパク質をコードするDNAを、ベクターpRK5にクローン化して、プラスミドpRK.vh1.4.5を得た。このプラスミドをエレクトロポレーションにより293細胞中にトランスフェクションして(Janssen et al.,前出)、VRPを、3〜4日の無血清順化培地からモノクローナル抗体(5B6)アフィニティークロマトグラフィーにより精製して、比色アッセイ(Bio-Rad)により定量した。この抗体は、VRPのN末端に融合したグリコプロテインD配列に対して特異的である。
Flt4/IgGを、IodobeadsTMブランドのヨウ素化ビーズ(Pierce)により1000〜1500Ci/mmolの比活性までヨウ素化した。結合は、〜30μg抗gDモノクローナル抗体(5B6)に結合したガラスビーズの50%スラリー20μLを含有する、PBS、0.5% BSA、0.02%Tween-20TM界面活性剤、1μg/mLヘパリン(結合緩衝液)中の、〜20,000cpm125I−Flt4/IgGおよびVH1.4 gD融合タンパク質12ngにより、最終容量100μLで22℃で4〜6時間行った。ビーズを濾過(Millipore Multiscreen-HV)により回収し、結合緩衝液200μLで5回洗浄して、計数した。Flt4/IgGの濃度を増加させながらの結合(図5B)には、結合緩衝液は、DMEM(低グルコース):F12(50:50)、20mM HEPESナトリウム(pH7.2)、10%ウシ胎児血清、0.2%ゼラチン、および1μg/mLヘパリンとした。
精製VRPは、125I−Flt4/IgGに特異的に結合し、この結合は、未標識Flt1/IgGまたはFlk1/IgGにより競合を受けなかった(図5A)。未標識Flt4/IgGを増加させながらの結合競合(図5B)は、〜0.7nMのこの相互作用のEC50を与えたが、これは、Flt4へのVRPの結合が、VRPがFlt4の生物学的に相当するリガンドであるならば予測されるような高親和性であることを示唆している。
RNAブロット
ポリ(A)+ヒトRNAを含有するブロットは、Clontechから入手した。G61膠腫細胞株について、ポリ(A)+およびポリ(A)−RNA5μgを1%アガロース/2.2Mホルムアルデヒドゲルで電気泳動して、ニトロセルロースに移した(Janssen et al.,前出)。ブロットを、32P標識プローブのovh1.4およびovh1.5とハイブリダイズさせて、30mM NaCl/3mMクエン酸三ナトリウム中で55℃で洗浄した。
VRPのクローニングに使用したG61膠腫細胞株は、約2.4kbの主要なVRP RNAバンドを発現する。約2.2kbの小さなバンドも存在し得る。2.4kbバンドは、心臓、胎盤、卵巣、および小腸由来の成人ヒト組織で発現していた;弱い方のバンドは、肺、骨格筋、脾臓、前立腺、精巣、および結腸で見い出された。2.4kb mRNAの発現は、胎児肺および腎臓でも見い出された。
【0202】
実施例7
VRPの分裂促進活性
VRPが、VEGFで見られるような分裂促進活性を有するかどうか試験するために、VRPまたはVEGFの濃度を増加させながらヒト肺内皮細胞の増殖をアッセイした(図6)。具体的には、ヒト肺微小血管内皮細胞(HMVEC−L、Clonetics, San Diego, CA)を、推奨される増殖培地(5%ウシ胎児血清を含むEGM−MV)で維持培養した。分裂促進性のアッセイのため、継代数の少ない(<6)細胞を48ウェルプレート(Costar)に6500細胞/ウェルで接種して、推奨される増殖培地で一晩維持培養した。培地を除き、ウシ脳抽出物を含まずVEGFまたはVRPを補足した増殖培地(2%ウシ胎児血清)で細胞を維持培養した。4日後、細胞をトリプシンで取り出し、クールター計数器(Hialeah, FL)で計数した。
VRPは、これら内皮細胞の増殖を促進し(図6を参照のこと)、そしてVEGFとこの分裂促進活性を共有している。このことは、PlGFとは対照的であり、PlGFはこのような分裂促進活性を欠いている(≦35nMで)ことが報告されている。Park et al.,前出。有効な分裂促進剤ではあっても、VRPは、このアッセイではVEGFより約100倍活性が弱かった。
結論として、今や、Flt4リガンドであり、かつ受容体型チロシンキナーゼFlt4のチロシンリン酸化を促進する、新規な分泌タンパク質のVRPが同定された。VRPは、VEGFタンパク質ファミリーの第三のメンバーであり、VEGFおよびPlGFと約30%のアミノ酸同一性がある。VEGF様ドメインに加えて、VRPは、VEGFファミリーの他のメンバーには見られない、〜180アミノ酸のC末端のシステインの豊富なドメインを含有する。VRPは、VEGF受容体のFlt1およびFlk1とは認めうる相互作用はできない。
【0203】
材料の寄託
下記のプラスミドは、American Type Culture Collection, 12301 Parklawn Drive, Rockville, MD, USA(ATCC)に寄託した:
プラスミド ATCC寄託番号 寄託日
pRK.vh1.4.1 97249 1995年9月6日
この寄託は、「特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約およびその規則」(ブダペスト条約)の規定のもとに行った。これにより、寄託の日から30年間寄託物の生存培養物の保存を確保する。寄託物は、ブダペスト条約に基づきATCCにより利用可能とされ、ジェネンテク社(Genentech, Inc.)とATCCとの間の契約の対象となるが、この契約は、米国特許の発行に基づき、または任意の米国若しくは外国特許出願の公衆への公開に基づき、いずれが先に来ようと、公衆への寄託培養継代物の永久的かつ無制限の利用可能性を確保するものであり、そして米国特許法(35USC)§122およびその施行規則(Commissioner's rules)(特に886OG638に関する特許法施行規則(37CFR)§1.14を含む)により特許付与するために米国特許商標庁長官が決定した者へのその培養継代物の利用可能性を確保するものである。
本出願の譲受人は、寄託したプラスミドの培養物が、適切な条件下で培養したときに死滅または消失または崩壊したならば、通知により、そのプラスミドを別の同じプラスミドで迅速に置き換えることに同意している。寄託したプラスミドの利用可能性は、いずれの政府の当局のもとでも、その特許法により付与される権利に反して、本発明を実施するための実施権を構成するものではない。
前述の明細書は、当業者が本発明を実施するのに十分な内容であると考えられる。寄託した実施態様が本発明のある側面の1つの例示として意図されたものであり、同等に機能する任意の構築物は本発明の範囲に含まれるので、本発明は、寄託した構築物により範囲を限定されるものではない。本発明の材料の寄託は、本明細書に含まれる記述が、本発明の任意の側面(その最良の実施態様を含む)の実施を可能にするのに不適切であることの承認を構成するものでも、また、これが表す具体的な例示に請求の範囲を限定するものと解釈すべきものでもない。実際、本明細書に示し記載したものに加えて本発明の種々の改変が、前述の説明から当業者には明らかとなるであろうが、これらも添付した請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも265アミノ酸を含む単離された生物学的に活性なヒトVEGF関連タンパク質(VRP)。
【請求項2】
265から約450アミノ酸を含む請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
約300〜450アミノ酸を含む請求項1に記載のタンパク質。
【請求項4】
約350〜450アミノ酸を含む請求項1に記載のタンパク質。
【請求項5】
約399〜419アミノ酸を含む請求項1に記載のタンパク質。
【請求項6】
図1の少なくとも残基+1〜29(両端を含む)を有するアミノ酸配列を含む請求項1に記載のタンパク質。
【請求項7】
図1の少なくとも残基+1〜137(両端を含む)を有するアミノ酸配列を含む請求項6に記載のタンパク質。
【請求項8】
図1の少なくとも残基−20〜29(両端を含む)を有するアミノ酸配列を含む請求項6に記載のタンパク質。
【請求項9】
図1の少なくとも残基−20〜137(両端を含む)を有するアミノ酸配列を含む請求項6に記載のタンパク質。
【請求項10】
図1の少なくとも残基+1〜29(両端を含む)を含むアミノ酸配列を含む単離された生物学的に活性なヒトVEGF関連タンパク質(VRP)。
【請求項11】
図1の少なくとも残基+1〜137(両端を含む)を有するアミノ酸配列を含む請求項10に記載のタンパク質。
【請求項12】
図1の少なくとも残基−20〜29(両端を含む)を有するアミノ酸配列を含む請求項10に記載のタンパク質。
【請求項13】
図1の少なくとも残基−20〜137(両端を含む)を有するアミノ酸配列を含む請求項10に記載のタンパク質。
【請求項14】
図1の残基−20〜399(両端を含む)もしくは残基1〜399(両端を含む)として示されるアミノ酸配列を含む単離された生物学的に活性なヒトVEGF関連タンパク質(VRP)。
【請求項15】
前記配列が、図1の残基−20〜399(両端を含む)として示される、請求項14に記載のタンパク質。
【請求項16】
前記配列が、図1の残基1〜399(両端を含む)として示される、請求項14に記載のタンパク質。
【請求項17】
請求項1に記載のタンパク質および薬学的に受容可能な担体を含む組成物。
【請求項18】
治療的に有効量の請求項1に記載のタンパク質を、薬学的に受容可能な担体中に含む脈管内皮細胞成長を促進するのに有用な医薬組成物。
【請求項19】
さらに、前記タンパク質以外の細胞増殖因子を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
脈管内皮に影響を及ぼす損傷を処置する方法であって、該損傷を受けている哺乳動物に有効量の請求項18に記載の組成物を投与することを包含する方法。
【請求項21】
前記哺乳動物に前記タンパク質以外の有効量の細胞増殖因子を投与することをさらに包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物においてVRPに対する受容体の活性化の欠如または阻害の欠如により特徴付けられる機能不全状態を処置する方法であって、該哺乳動物に有効量の請求項17に記載の組成物を投与することを包含する方法。
【請求項23】
Flt4受容体のチロシンキナーゼドメインのリン酸化を刺激する方法であって、該Flt4受容体の細胞外ドメインを請求項1に記載のタンパク質と接触させることを包含する方法。
【請求項24】
標識ポリペプチド配列に融合された請求項1に記載のタンパク質を含むキメラポリペプチド。
【請求項25】
請求項1に記載のタンパク質に結合して該タンパク質の生物学的活性を無効にするモノクローナル抗体。
【請求項26】
前記タンパク質の生物学的活性が、哺乳動物における新生血管形成もしくは血管透過性もしくは脈管内皮細胞成長を促進する請求項25に記載の抗体。
【請求項27】
請求項25に記載の抗体および薬学的に受容可能な担体を含む組成物。
【請求項28】
哺乳動物における望ましくない過剰な新生血管形成もしくは血管透過性により特徴付けられる疾患もしくは障害の処置方法であって、該哺乳動物に有効量の請求項27に記載の組成物を投与することを包含する方法。
【請求項29】
哺乳動物においてVRPに対する受容体の過剰な活性化または阻害により特徴付けられる機能不全状態を処置する方法であって、該哺乳動物に有効量の請求項27に記載の組成物を投与することを包含する方法。
【請求項30】
図1に示されるアミノ酸配列のN−末端部分の残基−20〜137(両端を含む)、もしくは残基1〜137(両端を含む)に結合するモノクローナル抗体。
【請求項31】
図1の残基−20〜−1(両端を含む)として示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項32】
哺乳動物においてVRPに対する受容体の過剰な活性化または阻害により特徴付けられる機能不全状態を処置する方法であって、該哺乳動物に有効量のVRPアンタゴニストを投与することを包含する方法。
【請求項33】
哺乳動物においてカポジ肉腫を処置する方法であって、該哺乳動物に有効量のVRPアンタゴニストを投与することを包含する方法。
【請求項34】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする単離された核酸分子。
【請求項35】
さらに前記核酸分子に作動可能に連結されたプロモーターを含む請求項34に記載の核酸分子。
【請求項36】
請求項34に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項37】
前記ベクターによって形質転換された宿主細胞により認識される制御配列に作動可能に連結された請求項34に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項38】
請求項34に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項39】
請求項38に記載の宿主細胞を培養する工程、および該宿主細胞培養物からVRPを回収する工程を包含するVRPの産生方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−68806(P2010−68806A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−266168(P2009−266168)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【分割の表示】特願2008−52407(P2008−52407)の分割
【原出願日】平成8年8月30日(1996.8.30)
【出願人】(509012625)ジェネンテック インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】