説明

VEGFR−1/NRP−1標的化ペプチド

本発明は、分子薬物の分野および治療剤の標的化された送達に関する。より具体的には、本発明は、アミノ酸Leu−Pro−Arg(LPR)、特に、(LPR)を組み込み、VEGFR−1およびNRP−1発現細胞を選択的に標的とする新規なペプチド配列の同定に関する。本発明に従う標的化された分子は、新生血管もしくは血管新生VEGF関連障害(癌、肥満、糖尿病、喘息、関節炎、肝硬変および眼の疾患が挙げられるが、これらに限定されない)の処置および検出において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、National Institutes of Healthからの助成金CA103056およびCA100632の下、米国政府の支援によってなされた。したがって、米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
この出願は、2007年8月8日に出願された、米国仮特許出願第60/954,750号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【0003】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、分子薬物の分野および治療剤の標的化された送達に関する。より具体的には、本発明は、VEGFR−1およびNRP−1を、新生血管のもしくは血管新生のVEGF関連障害(癌、肥満、糖尿病、喘息、関節炎、肝硬変および眼の疾患が挙げられるが、これらに限定されない)の処置および検出のための治療標的として、選択的に標的とする新規なペプチド配列の同定に関する。
【背景技術】
【0004】
(2.関連技術の説明)
血管は、酸素および栄養素をほぼ全ての器官および組織に送達する、必須の身体構成要素である。大部分の血管は、胚の発生の間に形成され、成人では、新たな血管の形成(血管新生といわれるプロセス)は、主に、創傷治癒および正常女性生殖器サイクルの間に制限されている。このことは、治療のための機会を引き起こす。なぜなら、いくつかの疾患は、それらが新たな血管の形成を誘導する場合にのみ進行し得るからである;癌、肥満、糖尿病、喘息、関節炎、肝硬変および眼の疾患は、おそらく、血管新生インヒビターの発生によって遅らせられるかもしくはブロックされる多くの病気の間に存在する。
【0005】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、血管新生における中心的な分子制御因子として認識されており、3種の抗VEGF薬物が、良好ではあるが、理想的でない治療効果を有する、癌の特定のタイプの処置について、米国食品医薬品局によって現在承認されている(Kamba and McDonald,2007)。従って、上記VEGF経路を標的とする新世代の薬物の開発は、おそらく、いくつかの疾患のための治療レジメンにおいて顕著に影響を有するはずである。VEGFは、血管新生の重要な調節因子であり、内皮細胞の細胞分裂および細胞表面VEGFチロシンキナーゼレセプター(VEGFR−1およびVEGFR−2)に、およびニューロフィリン(NRP)に結合することによる移動を刺激する。VEGFR−2は、VEGF有糸分裂細胞内シグナル伝達の主な媒介因子であるので、今日の臨床における大部分の薬物は、直接的もしくは間接的に、この特定のレセプターにねらいを定めている。他方で、VEGFR−1およびNRP−1は、デコイまたはVEGF(VEGFR−1)のためのへこみ(sink)もしくはVEGFR−2活性のモジュレーター(NRP−1)のいずれかであると最初は考えられていた。しかし、過去数年間に行われた研究は、他のことを示唆する。両方のレセプターは、血管新生において顕著な役割を有し(非特許文献1;非特許文献2;Luttunら,2004;Kaplanら,2005;Wuら,2006;Panら,2007)、そして血管新生治療のための重要な標的である。例えば、VEGFR−1およびNRP−1に対するモノクローナル抗体は、抗腫瘍薬剤として、特に、化学療法と組み合わせると、有望な結果を示した(Wuら,2006;Panら,2007)。
【0006】
多くの抗VEGF薬物(例えば、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))およびラニビズマブ(ルセンティス(登録商標))は、臨床的に用いられており、新生血管障害(種々のタイプの癌を含む)および眼に影響を及ぼす新生血管形成状態(例えば、加齢性黄斑変性)の処置および管理においてある程度の効力を示してきた。不運なことに、このような非特異的VEGF治療は、潜在的に重篤な副作用(特に、心臓関連毒性(例えば、胸痛、発作、一過性虚血(ministroke)、欝血性心不全および心臓発作)、出血、蛋白尿、高血圧症、欝血性心不全、動脈性血栓塞栓症、および胃腸穿孔が挙げられる)を有することが実証されてきた。研究は、このような副作用を、このクラスの薬物(すなわち、血管内皮増殖因子(VEGF−A;VEGF165)を直接標的とする薬物)が、レセプターを選択的に標的とすることとは対照的に、正常なVEGF経路に有害な影響をもたらし得るという事実に関連づけた(Betsholtzら,2006)。VEGF−Aは、血管形成の調節に関与する多くの分子の間で異例の位置を持っている。胚の発生の間に、上記VEGF−Aは、血管系の最も初期の細胞先祖の拡大から、内皮細胞の増殖および移動の制御までに及ぶ非常に多くのプロセス、血管リモデリング、ならびに動静脈特定化(arteriovenous specification)を制御する(Ferrara,2004)。VEGF−Aタンパク質の正確なレベルは、血管発生にとって絶対的に重要である。なぜなら、半分までの発現の低下もしくは2倍までの増加はともに、マウス胚にとって致死的状態である。
【0007】
VEGFに関する治療と関連する毒性は、正常な毛細血管床、ならびに正常な細胞機能および血管新生に必要なVEGFを有する心臓細胞の剥奪(depriving)に関連していると考えられる。興味深いことに、上記VEGF依存性毛細管床は、それらが、2型および3型レセプター(それぞれ、VEGFR−2およびVEGFR−3)として公知のVEGFレセプターの高い発現を示すが、VEGFR−1レセプターをほとんどもしくは全く示さないという点で共通の特徴を共有する。しかし、VEGFR−1レセプターは、望ましい疾患標的と関連する組織(網膜血管および腫瘍血管系を含む)において発現されることが見いだされる。従って、VEGFR−1レセプターを特異的に標的とする抗VEGF治療が、低下した毒性を潜在的に示しつつ、望ましい治療活性を維持するという点で、このような治療を開発することが非常に望ましい。本発明は、VEGFR−1を選択的に標的とするペプチドリガンドを提供することに関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Carmelietら、Nat.Med.(2001)7:575−583
【非特許文献2】Autieroら、Nat.Med.(2003)9:936−943
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、VEGFR−1およびNRP−1(本明細書中以降、「VEGFR−1/NRP−1」といわれる)を、標的化モチーフLPR(Leu−Pro−Arg)、およびより好ましくは、(LPR)の使用を介して、選択的に標的とするための方法および組成物を提供することによって、先行技術における欠陥を克服する。LPRモチーフの使用を介するVEGFR−1/NRP−1の選択的標的化は、例えば、癌、または血管新生もしくは血管増殖と関連する他の疾患状態(例えば、肥満、糖尿病、喘息、関節炎、肝硬変および眼の疾患)の処置において有用である。
【0010】
特定の実施形態において、本発明は、単離されたLPR標的化ペプチド(すなわち、その構造内に、例えば、上記ペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端に、または内部に位置する、連続するLPR配列を含む標的化ペプチド)に関する。末端に上記LPR配列が位置することは、最も好ましいと考えられる一方で、にもかかわらず、LPRの内部に位置することは、VEGFR−1/NRP−1標的化能力を提供することが企図される。調製および取り扱いの容易さのために、本発明の特定のこのような実施形態は、少なくとも連続するアミノ酸配列Leu Pro Argを含む10アミノ酸以下の大きさの単離されたペプチドに関する。同様にこの理由で、さらに短いペプチド(例えば、7アミノ酸もしくは5アミノ酸以下の大きさのペプチド)、およびさらに上記LPRトリペプチドはそれ自体、皿により好ましい。従って、本発明の標的化ペプチドは、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、もしくは10アミノ酸を含み得、ここで上記連続するLPR配列もしくは配列番号1のLPR配列は、その中に位置する。
【0011】
さらに他の特定の実施形態において、本発明者らは、環状形態で調製され得る上記LPR配列を組み込む特定のペプチド(例えば、システイン残基(「C」)を両方の末端に有するペプチド)を企図する。このペプチドは、望ましい場合、環状形態で(例えば、ジシステイン(すなわち、シスチン)の形態を通じて)提供され得る。このようなペプチドの例は、Cys Leu Pro Arg Cys(配列番号1)である。このような環状ペプチドは、ペプチド中のジスルフィド結合が、上記ペプチドを化学的分解、熱分解もしくは酵素的分解に対して顕著に安定にするという点で特に重要であり得る。このような環状ペプチドは、治療的適用および診断的適用において特に重要であり得る。ここで不十分なアベイラビリティー、タンパク質分解に対する感受性、および短いインビボ半減期が関連する。
【0012】
さらに他の実施形態において、本発明は、前述のペプチドの全てもしくは一部分の調製のためのDアミノ酸の使用を企図する。Dアミノ酸から構成されるペプチドは、Dアミノ酸の使用が本発明の標的化ペプチドを、プロテアーゼおよびペプチダーゼの効果に一般に耐性にするという点で、Lアミノ酸から構成されるものより特定の利点を有する。全体的にDアミノ酸からなる標的化ペプチド(例えば、(Leu Pro Arg)および(Cys Leu Pro Arg Cys)(配列番号1))は、本発明の特定の局面のために特に好ましい。
【0013】
特定の実施形態において、LPR標的化部分(例えば、上記のもの)は、第2の分子もしくは物質に作動可能に結合体化され得る。好ましい実施形態において、化学的結合体(例えば、化学的リンカーの使用を介して形成される)もしくは融合構築物(例えば、VEGFR−1/NRP−1を標的とすることが望ましい、望ましいタンパク質もしくはペプチドをコードする核酸コード領域とインフレームで融合されたこのようなペプチドの基礎にある核酸コード領域を融合することによって形成される)によって例示されるように、上記結合は、共有結合である。標的化タンパク質もしくはペプチドの場合において、上記標的化ペプチドは、そのように標的とすることが望ましい上記タンパク質もしくはペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端付近に(すなわち、最初のもしくは最後の20アミノ酸内に)位置し得る。
【0014】
種々の選択された実施形態において、上記第2の分子もしくは物質は、診断剤、薬物、化学療法剤、放射性同位体、抗血管新生薬剤、アポトーシス促進剤、細胞傷害性薬剤、ペプチド、タンパク質、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、抗生物質、抗体もしくはフラグメントもしくは一本鎖抗体、画像化剤、生存因子(survival factor)、抗アポトーシス剤、ホルモンアンタゴニストもしくは抗原である。これら分子もしくは物質は、単なる代表であり、実質的には、癌の処置のために治療的利益もしくは診断的利益を生じ得る任意の分子は、LPR標的化部分に結合され得、そして/または本発明の範囲内で被験体に投与され得る。
【0015】
従って、標的とされるべき分子がアポトーシス促進剤である場合、例示的薬剤としては、エトポシド、セラミド、スフィンゴミエリン、Bcl−2、Bax、Bid、Bik、Bad、カスパーゼ−3、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9、fas、fasリガンド、fadd、fap−1、tradd、faf、rip、reaper、apoptin、インターロイキン−2変換酵素、アネキシンV、(KLAKLAK)(配列番号2);(KLAKKLA)(配列番号3);(KAAKKAA)(配列番号4);もしくは(KLGKKLG)(配列番号5)が挙げられる。本発明のペプチドの全てと同様に、前述のような配列は、D形態もしくはL形態のいずれかにおいて提供され得ることが注意されるべきである。例えば、アポトーシス促進ペプチド(例えば、配列番号2〜5)に関して、D形態およびL形態の両方が、類似のアポトーシス促進活性を有し、D形態は、それらの相対的プロテイナーゼ耐性に起因して、実質的により長い半減期を有すると考えられている。しかし、いくつかの場合において、上記L形態は、実際には、潜在的に低下した毒性の副作用に起因して(それらの短い半減期に起因して)利点を有する。
【0016】
さらに、抗血管新生薬剤において分子が標的とされる実施形態において、例示的薬剤としては、トロンボスポンジン、アンジオスタチン(例えば、アンジオスタチン5)、アンジオテンシン、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター、組織メタロプロテイナーゼインヒビター、インターフェロン、サイトカイン(例えば、インターロイキン12)、血小板因子4、IP−10、Gro−β、2−メトキシエストラジオール、プロリフェリン(proliferin)関連タンパク質、カルボキサミドトリアゾール、CM101、Marimastat、ペントサンポリスルフェート、アンジオポイエチン2(Regeneron)、ハービマイシン(herbimycin)A、PNU145156E、16K プロラクチンフラグメント、リノマイド(Linomide)、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン(genistein)、TNP−470、エンドスタチン(例えば、エンドスタチン XVIIおよびエンドスタチンXV、パクリタキセル、ドセタキセル)、ポリアミン、プロテアソームインヒビター、キナーゼインヒビター、シグナル伝達ペプチド、アキュチン(accutin)、シドフォビル(cidofovir)、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM−1470、ミノサイクリン、マトリクスメタロプロテイナーゼ−2のC末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノゲンのkringle 5ドメイン、エンドスタチンとアンジオスタチンとの融合タンパク質、エンドスタチンとヒトプラスミノゲンのkringle 5ドメインとの融合タンパク質、インターフェロン−γによって誘導されるモノカイン(Mig)、MigとIP10との融合タンパク質、可溶性FLT−1(fins様チロシンキナーゼ1レセプター)、キナーゼ挿入ドメインレセプター(KDR)、色素上皮由来因子、インターフェロン−α(ライン4におけるインターフェロン)、シグナル伝達インヒビター(SU5416,SU6668,Sugen,South San Francisco,CA)が挙げられる。
【0017】
上記標的化分子がサイトカインであるさらに好ましい実施形態において、例示的なサイトカインとしては、インターロイキン1(IL−1)、IL−2、IL−5、IL−10、IL−11、IL−12、IL−18、IL−24、インターフェロン−γ(INF−γ)、INF−α、INF−β、腫瘍壊死因子(例えば、TNF−α)、もしくはGM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)が挙げられる。
【0018】
前述の例は代表に過ぎず、当該分野で公知の他のアポトーシス促進剤、抗血管新生薬剤もしくはサイトカインを排除することを意図しない。
【0019】
本発明の他の実施形態において、上記単離されたペプチドは、高分子複合体に結合され得る。好ましい実施形態において、上記高分子複合体は、ウイルス、バクテリオファージ、細菌、リポソーム、微粒子、ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子)、磁性粒子、酵母細胞、哺乳動物細胞、もしくは細菌細胞である。ウイルスの場合において、特に好ましいものとしては、バクテリオファージ、レンチウイルス、パポバウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、AAV、ワクシニアウイルスもしくはヘルペスウイルスが挙げられる。これらは代表に過ぎず、本発明の範囲内の高分子複合体としては、標的化ペプチドに結合され得かつ被験体に投与され得る実質的に任意の複合体が挙げられ得る。他の好ましい実施形態において、上記単離されたペプチドは、真核生物発現ベクターに、より好ましくは、遺伝子治療ベクターに結合され得る。
【0020】
さらなる実施形態において、上記単離されたペプチドは、固体支持体、好ましくは磁性ビーズ、セファロースビーズ、アガロースビーズ、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、カラムクロマトグラフィーマトリクス、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)マトリクス、高性能液体クロマトグラフィー(FPLC)マトリクス、マイクロタイタープレートもしくはマイクロチップに結合され得る。
【0021】
なおさらなる実施形態において、本発明は、選択されたタンパク質に融合して、タンパク質融合構築物を形成する前述のLPR標的化ペプチドのいずれか1つを含むタンパク質融合構築物に関する。好ましくは、得られたタンパク質融合構築物は、上記LPR標的化部分をさらに含めることによって、人工的なものであり、天然に存在するタンパク質ではない。概して、このような好ましい実施形態において、このようなタンパク質融合構築物は、上記のクラスの分子のいずれかを使用して調製され得る。
【0022】
なおさらなる実施形態において、本発明は、VEGFR−1/NRP−1標的化構築物の調製に関し、上記調製は、上記のようにLPR標的化ペプチドを得る工程、および上記ペプチドをある分子に結合させて、上記構築物を、好ましくは、共有結合によって調製する工程を包含する。上記のように、標的とされるべき分子がタンパク質もしくはペプチドである場合、好ましい標的化構築物は、標的化ペプチドが、このような分子のアミノ末端もしくはカルボキシ末端において、またはその付近において結合されるものである。
【0023】
本発明はまた、分子もしくはタンパク質の、VEGFR−1もしくはNRP−1を発現する細胞への送達を標的化するための方法に関し、ここで上記方法は、上記のように、LPR標的化ペプチドもしくはタンパク質融合構築物、または上記のように調製された標的化構築物を得る工程、および上記ペプチドもしくはタンパク質融合構築物を細胞集団に投与する工程を包含する。ここで上記集団は、VEGFR−1もしくはNRP−1を発現する細胞を含み、それによって、上記分子もしくはタンパク質を上記細胞に送達する。概して、上記結合体もしくは融合構築物が、被験体(例えば、ヒト被験体)に対する診断的適用もしくは治療的適用を意図される場合、上記結合体もしくは融合構築物は、薬学的に受容可能な組成物に処方され、上記組成物は、上記被験体に投与される。
【0024】
疾患もしくは障害を有する被験体の治療的処置の場合に、上記被験体は、代表的には、抗血管新生治療の必要性があることが企図される。このような疾患および障害としては、過剰増殖疾患、体重障害(weight disorder)、肥満、糖尿病、喘息、関節炎、肝硬変もしくは眼の疾患が挙げられる。本発明に従って治療的結合体を使用して治療に反応しやすいと予期される例示的な過剰増殖疾患としては、関節リウマチ、炎症性腸疾患、変形性関節症、平滑筋腫、腺腫、脂肪腫、血管腫、線維腫、脈管閉塞、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、前癌病変(例えば、腺腫様過形成および前立腺上皮細胞内腫瘍)、非浸潤性癌腫(carcinoma in situ)、もしくは口腔毛状白板症(oral hairy leukoplakia)、または乾癬が挙げられる。
【0025】
本発明はまた、本発明の結合体が、広い範囲の癌、特に、非常に血管新生である癌の処置において有用であることを予期する。例示的な癌としては、歯肉、舌、肺、皮膚、肝臓、腎臓、眼、脳、白血病、中皮腫、神経芽細胞腫、頭部、頸部、乳房、膵臓、前立腺、腎、骨、精巣、卵巣、中皮腫、子宮頸部、肝臓、子宮頸部、頭頸部、骨、食道、子宮、膀胱、胃腸、リンパ腫、脳、結腸、肉腫、胃、および膀胱の癌が挙げられる。
【0026】
なおさらなる実施形態において、処置されるべき被験体は、眼内の細胞増殖もしくは新生血管形成によって特徴づけられる眼の疾患もしくは障害を有することが企図される。例示的な障害としては、加齢性黄斑変性、増殖性糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、緑内障、増殖性硝子体網膜症、眼の虚血症候群に起因する新生血管形成、網膜静脈分子閉塞症に起因する新生血管形成、網膜中心静脈閉塞症に起因する新生血管形成、もしくは鎌状赤血球網膜症に起因する新生血管形成が挙げられる。
【0027】
他の実施形態において、本発明は、本発明の結合体が、体重障害(例えば、肥満)の処置において有用であることを企図する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1A、図1B。(LPR)は、新生血管形成をインビボで阻害する。7日間の移植の後の、500μg/mlの(LPR)もしくはコントロールペプチドを含むMatrigelプラグの代表的写真。(a,下側パネル)。上記Matrigelプラグを切り出し、血管新生を、上記Matrigelマトリクス中のヘモグロビン含有量を測定することによって定量した。棒グラフは、同じ実験からの代表的動物を示す(a,上側パネル)。(b)ヒトフォンビルブランド因子について陽性の血管数(P<0.01)。
【図2】図2A、図2B、図2C。(LPR)による虚血誘導性網膜血管新生の阻害。(a)網膜新生血管形成を、75% 酸素に曝すことによってC57B6新生児マウスにおいて誘導し、続いて、(LPR)処置(20mg/Kgにおいて1日1回注射)を行った。(b)H&E網膜切片(P19日)は、コントロール動物と比較して、網膜内表面(矢印)において新たな血管の顕著な低下を示した。(c)P19日における内表面の内皮細胞核定量。
【図3】図3A、図3B。腫瘍を有するマウスの、(LPR)での処置は、腫瘍増殖を低下させる。EF43.fgf4由来腫瘍を有するBalb/cマウスを、群に分け(N=7)、50mg/Kgの(LPR)もしくはその環状形態(CLPR)、コントロールペプチドもしくはビヒクルのみで1日1回処置した。(a)処置の5日後に、(LPR)もしくはその環状形態(CLPRC)を受けた動物は、コントロール動物と比較して、低下した腫瘍体積を示した。(b)ボックスプロットは、メジアンおよび誤差を示す。(LPR)もしくはその環状形態(CLPRC)を受けた動物の間の腫瘍体積の差異は、統計学的に有意であった(P<0.02)。2回の独立した実験を行ったところ、類似の結果が得られた。
【図4】図4A、図4B、図4C。VEGF模倣化合物(CLPRC)を使用する肥満処置。高カロリーかつ高脂肪食を与えた(40〜50gの間の重量)肥満マウス(C57BL/6)を、この研究に使用した。動物を、4群に分け、(a)VEGF模倣ペプチド(CLPRC)腹腔内注射(50mg/Kg);(b)Fat−zapperペプチド(CKGGRAKDC−GG−(KLAKLAK);Koloninら,2004)(50mg/KgのVEGF模倣ペプチド(CLPRC)と組み合わせて1mg/Kgを皮下注射);または(c)3mg/Kgのfat−zapperで1日1回処置した。コントロール群の動物には、ビヒクル(リン酸緩衝化生理食塩水溶液、PBS)のみを注射した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(例示的実施形態の説明)
(1.概説)
コンビナトリアルライブラリーによって同定されるペプチドは、薬物発見および設計に関して重要な手がかりである。それらは、容易に合成され得、かつ種々の官能基で容易に改変され得、このことは、科学および医療に、合理的薬物設計および選択的標的化の強力なツールを提供する。抗体のような高分子と比較して上記ペプチドのより小さな分子量が原因で、ペプチドは、組織透過性および生体分布において利点を有し、このことによって、上記ペプチドは、薬物発見および開発のための優れたリード化合物になる(Falcianiら,2005によって総説される)。実際に、ファージディスプレイによっって同定されたペプチドは、化学療法剤(Arap,1998 #10)、アポトーシス促進性ペプチド(Ellerby,1999 #69)を送達するため、または画像化および遺伝子治療のためのウイルス(Hajitou,2006 #6744)を送達するために、標的化治療においてインビボで成功裏に使用されてきた。しかし、薬物開発におけるれらの適用性は、困難によって妨げられてきた。
【0030】
ペプチドそれ自体は、しばしば、適切な薬物ではない。なぜなら、ペプチドは、プロテアーゼによって迅速に分解され、かつ血漿から除去されるからである。プロテアーゼ発現は、しばしば、細胞増殖、移動および組織リモデリングが必要である生物学的プロセス(大部分の病理学的プロセス(例えば、血管新生)に共通する)においてアップレギュレートされ、このことは、増大した局所的タンパク質分解活性およびペプチド分解を生じる。薬物設計の観点から、ペプチドは、しばしば、広いコンホメーションの変動性を示し、構造的研究を扱いにくくかつ困難にする(Giordanoら,2005)。従って、ファージディスプレイによって同定されたペプチドリードに基づくペプチド模倣化合物の設計は、困難な課題であり得、しばしば、合成能力および大規模な化学ライブラリーの利用手段を有する製薬会社もしくは実験室に制限される。
【0031】
血管新生は、既存の血管から新たな血管が発生することであり、腫瘍増殖および転移(Folkman,1971)、ならびにいくつかの病理的障害(例えば、糖尿病、乾癬、肥満、および関節リウマチ(Carmeliet,2005)における必須の成分である。成人の間は、血管新生は、創傷治癒、妊娠および月経サイクルの間にのみ生じ、従って、新生血管(angiogenic blood vessel)を標的とする薬物は、多くの疾患において重要な臨床的適用を有するようである(Carmelietら,2005)。血管内皮増殖因子(VEGF)およびそれらのレセプターは、血管発生におけるそれらの中心的な役割に起因して、現場における注意の中心であった。VEGFは、チロシンキナーゼレセプター(VEGFR−1、VEGFR−2)およびニューロフィリン−1(NRP−1)に結合することによってその効果を発揮する(Olssonら,2006)。VEGFの細胞内シグナル伝達および有糸分裂効果の大部分は、VEGFR−2によって媒介され、この経路を標的とするいくつかの薬物が、現在では臨床において調査中である(Cardones & Banez,2006;Schneider & Sledge,2007)。上記プロセスにおいて重要な参加者であるにも拘わらず、VEGFR−1およびNRP−1は、最初に、潜在的な治療標的として十分な意気込みを生み出せなかった。これは変化し、過去数年間において行われた研究は、両方のレセプターが血管新生において顕著な役割を有することを示唆する(Luttunら,2004;Wuら,2006;Panら,2007)。遺伝子欠失研究は、VEGFR−1およびNPR−1が、血管発生の間に必須であることを示した。両方の分子は、VEGFおよび胎盤増殖因子(PlGF)のレセプターであり、そしてPlGFは、VEGFR−1とともに、病理的血管新生(Carmelietら,2001)、腫瘍増殖(Luttunら,2002)、VEGFR−1/VEGFR−2交叉活性化による細胞シグナル伝達の増強(Autieroら,2003)および新生血管形成の間の骨髄からの先祖細胞の補充(Jinら,2006;Liら,2006)に関与していた。細菌の報告はまた、VEGFR1+造血性先祖の補充が、腫瘍転移の開始にとって重要であることを示唆した(Kaplanら,2005)。同様に、NRP−1は、VEGFの、VEGFR−2への結合を増加させるのみならず(Sokerら,2002)、内皮細胞結合およびVEGFR−2活性化とは無関係の移動をも誘導する(Wangら,2003;Murgaら,2005)。NRP−1のVEGF結合ドメインに対するモノクローナル抗体およびVEGFR−1に対するモノクローナル抗体、その両方は、血管新生を低下させ、腫瘍増殖を減少させる(Wuら,2006;Panら,2007)。従って、上記VEGFR−1およびNRP−1経路を標的とする薬物は、臨床において重要な適用性を見いだすようである。
【0032】
本発明は、独特の血管新生インヒビターおよびVEGFR−1標的化薬剤、LPRおよび(LPR)を提供し、これらは、3つの異なるアッセイにおいて血管新生の顕著な低下を示す。(LPR)はまた、全身投与の後に、2種の動物モデルにおいて新生血管形成を阻害した。膵臓の酵素の混合物に対する分解に対しての(LPR)の耐性を考慮すると、これらのデータは、この化合物、およびこの配列を組み込むより大きなペプチド構造物は、明らかに消化管に耐え、患者に経口投与され得ることを示す。従って、本発明は、VEGFR−1/NRP−1を選択的に標的化させる組成物の調製のためのLPRモチーフ、例えば、新生血管もしくは血管新生のVEGF関連障害(癌、肥満、糖尿病、喘息、関節炎、肝硬変および目の疾患が挙げられるが、これらに限定されない)の処置および/もしくは検出のための、治療剤および/もしくは診断剤を同定することによって、先行技術における欠陥を克服する。
【0033】
特定の実施形態において、本発明は、VEGFR−1/NPR−1発現細胞を標的にしようとする特定の標的化部分(大部分は、一般に、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質であって、このようなペプチドもしくはタンパク質の内部、またはより好ましくは、N末端もしくはC末端にもしくはその付近のいずれかに、LPRモチーフを含むように改変されたものを含む)に関する。顕著には、上記Dアミノ酸形態は、プロテアーゼの分解効果かに対するその実質的な耐性に起因して好ましい一方で、本発明は、さほど好ましくはないL形態の使用も、Dアミノ酸およびLアミノ酸の混合物の使用も排除しない。特定の実施形態は、治療剤もしくは診断剤に作動可能に連結されているVEGFR−1/NPR−1標的化部分に関する。特定の実施形態において、治療剤は、ウイルスエンベロープタンパク質もしくはファイバータンパク質VEGFR−1/NPR−1標的化ペプチドを発現するもしくはこれを組み込むもしくはこれと会合するように操作され得るウイルスである。次いで、標的化ウイルスは、種々の疾患状態(癌を含む)の処置のための遺伝子治療に使用され得る。ペプチド、改変ペプチド、抗体、ウイルス、および/もしくは他のアフィニティー試薬で、腫瘍中および/もしくは腫瘍付近の血管系におけるVEGFR−1/NPR−1を選択的に標的とする能力は、増大した効力および有効性を生じ得る、癌の処置についての顕著な利点を提供する。
【0034】
(2.定義)
本明細書において使用される場合、「a」もしくは「an」は、1つ以上を意味し得る。特許請求の範囲において使用される場合、語句「含む」に関連して、語句「a」もしくは「an」は、1つ以上もしくは1つより大きいを意味し得る。本明細書において使用される場合、「別の、もう一方の」とは、少なくとも第2のもしくはある項目の他を意味し得る。
【0035】
「標的化部分」とは、ある物質の、動物における特定の位置(器官、組織、特定の細胞型、罹患組織もしくは腫瘍を含む)への局在もしくは結合を増強するために使用され得る、種々のタイプのアフィニティー試薬を包含する用語である。標的化部分は、ペプチド、ペプチド模倣物、ポリペプチド、抗体、抗体様分子、核酸、アプタマー、およびそのフラグメントを含み得る。標的化部分はまた、低分子を含む。特定の実施形態において、標的化部分は、ある物質の、VEGFR−1/NRP−1を細胞外で発現している(すなわち、VEGFR−1/NRP−1は、上記細胞表面に会合しているか、または取り囲んでいる細胞外マトリクスに会合している)細胞への局在を増強する。本発明の標的化部分(例えば、標的化ペプチド、ならびにその改変体およびフラグメント)の選択的結合は、上記標的化部分が標的(例えば、VEGFR−1/NRP−1)に結合しかつ非関連タンパク質に顕著に結合しない場合である。標的化部分はさらに、たとえ、上記標的化部分が、上記標的と実質的に相同でない他のタンパク質に結合しても、このようなタンパク質が、上記抗体のペプチド標的のフラグメントもしくはドメインと相同性を共有する限りにおいて、選択的に結合すると考えられている。この場合、上記標的に結合する標的部分が、ある程度の交差反応性にもかかわらず、なお選択的であることが理解される。代表的には、上記交差反応性の程度は決定され得、上記標的への結合とは区別され得る。
【0036】
「標的化ペプチド」とは、LPRアミノ酸の連続する配列を含むペプチドであって、特定の組織もしくは細胞型において特異的に発現もしくは生成される細胞外タンパク質もしくは分子と特定の結合を含む、ある器官、組織、もしくは細胞型への選択的局在によって特徴づけられる。選択的局在化は、例えば、以下に開示される方法によって決定され得る。ここで上記推定標的化ペプチド配列は、ファージの外表面にディスプレイされるタンパク質に組み込まれる。
【0037】
「被験体」とは、一般に、哺乳動物をいう。特定の実施形態において、上記被験体は、マウス、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、もしくは霊長類である。特定の実施形態において、上記被験体は、ヒトである。
【0038】
(3.タンパク質およびペプチド)
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1つのタンパク質もしくはペプチドを含む新規な組成物に関する。本明細書において使用される場合、タンパク質もしくはペプチドは、一般に、約200アミノ酸より大きく、最大遺伝子から翻訳される全長配列までのタンパク質;約100アミノ酸より大きいポリペプチド;および/もしくは約3〜約100アミノ酸のペプチドをいうが、これらに限定されない。便宜上、用語「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において交換可能に使用される。
【0039】
特定の実施形態において、少なくとも1つのタンパク質もしくはペプチドの大きさは、1アミノ酸残基、2アミノ酸残基、3アミノ酸残基、4アミノ酸残基、5アミノ酸残基、6アミノ酸残基、7アミノ酸残基、8アミノ酸残基、9アミノ酸残基、10アミノ酸残基、11アミノ酸残基、12アミノ酸残基、13アミノ酸残基、14アミノ酸残基、15アミノ酸残基、16アミノ酸残基、17アミノ酸残基、18アミノ酸残基、19アミノ酸残基、20アミノ酸残基、21アミノ酸残基、22アミノ酸残基、23アミノ酸残基、24アミノ酸残基、25アミノ酸残基、26アミノ酸残基、27アミノ酸残基、28アミノ酸残基、29アミノ酸残基、30アミノ酸残基、31アミノ酸残基、32アミノ酸残基、33アミノ酸残基、34アミノ酸残基、35アミノ酸残基、36アミノ酸残基、37アミノ酸残基、38アミノ酸残基、39アミノ酸残基、40アミノ酸残基、41アミノ酸残基、42アミノ酸残基、43アミノ酸残基、44アミノ酸残基、45アミノ酸残基、46アミノ酸残基、47アミノ酸残基、48アミノ酸残基、49アミノ酸残基、50アミノ酸残基、51アミノ酸残基、52アミノ酸残基、53アミノ酸残基、54アミノ酸残基、55アミノ酸残基、56アミノ酸残基、57アミノ酸残基、58アミノ酸残基、59アミノ酸残基、60アミノ酸残基、61アミノ酸残基、62アミノ酸残基、63アミノ酸残基、64アミノ酸残基、65アミノ酸残基、66アミノ酸残基、67アミノ酸残基、68アミノ酸残基、69アミノ酸残基、70アミノ酸残基、71アミノ酸残基、72アミノ酸残基、73アミノ酸残基、74アミノ酸残基、75アミノ酸残基、76アミノ酸残基、77アミノ酸残基、78アミノ酸残基、79アミノ酸残基、80アミノ酸残基、81アミノ酸残基、82アミノ酸残基、83アミノ酸残基、84アミノ酸残基、85アミノ酸残基、86アミノ酸残基、87アミノ酸残基、88アミノ酸残基、89アミノ酸残基、90アミノ酸残基、91アミノ酸残基、92アミノ酸残基、93アミノ酸残基、94アミノ酸残基、95アミノ酸残基、96アミノ酸残基、97アミノ酸残基、98アミノ酸残基、99アミノ酸残基、100アミノ酸残基、約110アミノ酸残基、約120アミノ酸残基、約130アミノ酸残基、約140アミノ酸残基、約150アミノ酸残基、約160アミノ酸残基、約170アミノ酸残基、約180アミノ酸残基、約190アミノ酸残基、約200アミノ酸残基、約210アミノ酸残基、約220アミノ酸残基、約230アミノ酸残基、約240アミノ酸残基、約250アミノ酸残基、約275アミノ酸残基、約300アミノ酸残基、約325アミノ酸残基、約350アミノ酸残基、約375アミノ酸残基、約400アミノ酸残基、約425アミノ酸残基、約450アミノ酸残基、約475アミノ酸残基、約500アミノ酸残基、約525アミノ酸残基、約550アミノ酸残基、約575アミノ酸残基、約600アミノ酸残基、約625アミノ酸残基、約650アミノ酸残基、約675アミノ酸残基、約700アミノ酸残基、約725アミノ酸残基、約750アミノ酸残基、約775アミノ酸残基、約800アミノ酸残基、約825アミノ酸残基、約850アミノ酸残基、約875アミノ酸残基、約900アミノ酸残基、約925アミノ酸残基、約950アミノ酸残基、約975アミノ酸残基、約1000アミノ酸残基、約1100アミノ酸残基、約1200アミノ酸残基、約1300アミノ酸残基、約1400アミノ酸残基、約1500アミノ酸残基、約1750アミノ酸残基、約2000アミノ酸残基、約2250アミノ酸残基、約2500アミノ酸残基、もしくはそれ以上のアミノ酸残基、またはそこから得られるアミノ酸残基の任意の範囲(例えば、約200〜約2500アミノ酸残基)を含み得るが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書において使用される場合、「アミノ酸残基」とは、当該分野で公知の任意の天然に存在するアミノ酸、任意のアミノ酸誘導体もしくは任意のアミノ酸模倣物をいう。特定の実施形態において、上記タンパク質もしくはペプチドの残基は、アミノ酸残基の配列を遮る任意の非アミノ酸なしで連続する。他の実施形態において、上記配列は、1個以上の非アミノ酸部分を含み得る。特定の実施形態において、上記タンパク質もしくはペプチドの残基の配列は、1個以上の非アミノ酸部分によって遮られ得る。
【0041】
従って、用語「タンパク質もしくはペプチド」とは、天然に存在するタンパク質に見いだされる20個の一般のアミノ酸のうちの少なくとも1個、または少なくとも1個の改変もしくは通常でないアミノ酸(Aad、2−アミノアジピン酸;EtAsn、N−エチルアスパラギン;Baad、3−アミノアジピン酸、Hyl、ヒドロキシリジン;Bala、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸;AHyl、アロ−ヒドロキシリジン;Abu、2−アミノ酪酸;3Hyp、3−ヒドロキシプロリン;4Abu、4−アミノ酪酸、ピペリジン酸;4Hyp、4−ヒドロキシプロリン;Acp、6−アミノカプロン酸、Ide、イソデスモシン;Ahe、2−アミノヘプタン酸;AIle、アロ−イソロイシン;Aib、2−アミノイソ酪酸;MeGly、N−メチルグリシン、サルコシン;Baib、3−アミノイソ酪酸;MeIle、N−メチルイソロイシン;Apm、2−アミノピメリン酸;MeLys、6−N−メチルリジン;Dbu、2,4−ジアミノ酪酸;MeVal、N−メチルバリン;Des、デスモシン;Nva、ノルバリン;Dpm、2,2’−ジアミノピメリン酸;Nle、ノルロイシン;Dpr、2,3−ジアミノプロピオン酸;Orn、オルニチン;およびEtGly、N−エチルグリシンが挙げられるが、これらに限定されない)を含むアミノ酸配列を包含する。
【0042】
タンパク質もしくはペプチドは、当業者に公知の任意の技術(標準的な分子生物学的技術を介したタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドの発現、天然の供給源からのタンパク質もしくはペプチドの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学的合成を含む)によって作製され得る。種々の遺伝子に対応するヌクレオチドおよびタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの配列は、以前に開示されており、当業者に公知のコンピューター化されたデータベースにおいて見いだされ得る。1つのこのようなデータベースは、National Center for Biotechnology InformationのGenbankデータベースおよびGenPeptデータベース(ncbi.nlm.nih.govのワールドワイドウェブ)である。公知の遺伝子のコード領域は、本明細書において開示される技術を使用して、もしくは当業者に公知であるように、増幅および/もしくは発現され得る。あるいは、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの種々の市販の調製物は、当業者に公知である。
【0043】
(4.融合タンパク質)
タンパク質結合体の他の実施形態は、融合タンパク質に関する。これら分子は、一般に、N末端もしくはC末端において、第2のポリペプチドもしくはタンパク質の全てもしくは一部に連結された、標的化ペプチド(例えば、LPR標的化ペプチド)の全てもしくは実質的な部分を有する。例えば、融合物は、他の種からのリーダー配列を使用して、異種宿主におけるタンパク質の組換え発現を可能にし得る。別の有用な融合物は、例えば、上記融合タンパク質の生成を容易にするために、免疫学的に活性なドメイン(例えば、抗体エピトープ、)の付加を含む。上記融合接合部にもしくはその付近に切断部位を含めると、精製後に、外来ポリペプチドの除去が容易になる。他の有用な融合物は、機能的ドメイン(例えば、酵素の活性部位、グリコシル化ドメイン、細胞標的化シグナルもしくは膜貫通領域)の連結を含む。好ましい実施形態において、本発明の融合タンパク質は、治療的タンパク質もしくはペプチドに連結されたLPR標的化ペプチドを含む。融合タンパク質に組み込まれ得るタンパク質もしくはペプチドの例としては、細胞増殖抑制性タンパク質、細胞破壊性タンパク質、アポトーシス促進剤、抗血管新生薬剤、ホルモン、サイトカイン、増殖因子、ペプチド薬物、抗体、Fabフラグメント抗体、抗原、レセプタータンパク質、酵素、レクチン、MHCタンパク質、細胞接着タンパク質および結合タンパク質が挙げられる。これら例によって、限定であることを意味せず、本発明の範囲内で、実質的に任意のタンパク質もしくはペプチドが、標的化ペプチドを含む融合タンパク質に組み込まれ得ることが企図される。融合タンパク質を生成するための方法は、当業者に周知である。このようなタンパク質は、例えば、二官能性架橋試薬を使用する化学的結合によって、完全な融合タンパク質のデノボ合成によって、または標的化ペプチドをコードするDNA配列の、第2のペプチドもしくはタンパク質をコードするDNA配列への結合、続いて、インタクトな融合タンパク質の発現によって、生成され得る。
【0044】
(5.タンパク質精製)
特定の実施形態において、タンパク質もしくはペプチドは、単離もしくは精製され得る。タンパク質精製技術は、当業者に周知である。これら技術は、あるレベルにおいて、上記細胞、組織もしくは器官の均質化、ならびにそのポリペプチドおよび非ポリペプチド画分への粗い分画を包含する。目的のタンパク質もしくはポリペプチドは、部分的もしくは完全な精製(均質になるまでの精製)を達成するために、クロマトグラフィー技術および電気泳動技術を用いてさらに精製され得る。純粋なペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ポリアクリルアミド電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィーおよび等電点電気泳動である。アフィニティークロマトグラフィーによるレセプタータンパク質精製の例は、米国特許第5,206,347号(その本文全体は、本明細書に参考として援用される)に開示されている。ペプチドを精製するための特に効率的な方法は、高性能液体クロマトグラフィー(FPLC)もしくは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。
【0045】
精製タンパク質もしくはペプチドは、他の成分から単離可能な組成物をいうことが意図され、ここで上記タンパク質もしくはペプチドは、その天然に得られ得る状態に対して任意の程度に精製される。単離されたもしくは精製されたタンパク質もしくはペプチドはまた、従って、天然に生じ得る環境から離れたタンパク質もしくはペプチドをいい得る。一般に、「精製された」とは、種々の他の成分を除去するために分画に供されたタンパク質もしくはペプチド組成物をいい、この組成物は、実質的に、その発現される生物学的活性を保持する。用語「実質的に精製された」が使用される場合、この指定は、上記タンパク質もしくはペプチドが上記組成物の主要な成分(例えば、上記組成物中のタンパク質のうちの約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、もしくはそれ以上を構成する)を形成する組成物をいう。
【0046】
上記タンパク質もしくはペプチドの精製の程度を定量するための種々の方法は、本開示に鑑れば、当業者に公知である。これらは、例えば、活性画分の比活性を決定する工程、もしくはSDS/PAGE分析による画分内のポリペプチドの量を評価する工程を包含する。画分の純度を評価するための好ましい方法は、is to calculate 上記画分の非活性を計算するため、それを、上記最初の抽出物の比活性と比較するため、および「〜精製倍数」によって評価されるその純度の程度を計算するためである。活性の量を表すために使用される実際の単位は、当然のことながら、精製の後に行うために選択される特定のアッセイ技術、およびその発現されるタンパク質もしくはペプチドが、検出可能な活性を示すか否かに依存する。
【0047】
タンパク質精製における使用に適した種々の技術は、当業者に周知である。これらとしては、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などによる沈澱、もしくは熱変性によるもの、続いて、以下:遠心分離;クロマトグラフィー工程(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびアフィニティークロマトグラフィー);等電点電気泳動;ゲル電気泳動;ならびにこれらおよび他の技術の組み合わせが挙げられる。一般に当該分野で公知であるように、種々の精製工程を行う順番は変化させ得るか、または特定の工程が省略され得、実質的に精製されたタンパク質もしくはペプチドの調製のための適切な方法をなお生じると考えられる。
【0048】
上記タンパク質もしくはペプチドが常に、それらの最も精製された状態において提供され得るということは一般に必要はない。実際に、それほど実質的に精製された生成物が、特定の実施形態における有用性を有することが企図される。部分精製は、より少ない精製工程を組み合わせて使用することによって、または同じ一般的精製スキームの異なる形態を利用することによって、達成され得る。例えば、HPLC装置を利用して行われるカチオン交換カラムクロマトグラフィーが、一般に、低圧クロマトグラフィーシステムを利用する同じ技術より大きな「倍数」精製を生じることが認識される。相対的精製のより低い程度を示す方法は、タンパク質生成物の完全な回収、または発現されるタンパク質の活性を維持することにおいて利点を有し得る。
【0049】
アフィニティークロマトグラフィーは、単離されるべき物質と特異的に結合され得る分子との間の特定の親和性に依存するクロマトグラフィー手順である。このことは、レセプター−リガンドタイプの相互作用である。そのカラム物質は、不溶性マトリクスへの結合パートナーのうちの1つを共有結合することによって合成される。上記カラム物質は、次いで、上記物質を上記溶液から特異的に吸着させることができる。溶出は、結合が起こらないものに対する条件(例えば、変化したpH、イオン強度、温度など)を変化させることによって起こる。上記マトリクスは、それ自体が任意の顕著な程度にまで分子を吸着せず、かつ広い範囲の化学的安定性、物理的安定性および熱的安定性を有する物質であるべきである。上記リガンドは、その結合特性に影響を与えないような方法で連結されるべきである。上記リガンドはまた、相対的に緊密な結合を提供するはずである。そして上記物質を、上記サンプルもしくは上記リガンドを破壊することなく、溶出することは可能であるはずである。
【0050】
(6.合成ペプチド)
それらの相対的に小さな大きさが原因で、本発明の標的化ペプチドは、従来の技術に従って、溶液中でまたは固体支持体で、合成され得る。種々の自動化合成機は商業的に利用可能であり、公知のプロトコルに従って使用され得る。例えば、Stewart and Young,1984;Tamら,1983;Merrifield,1986;Barany and Merrifield,1979(本明細書に各々参考として援用される)を参照のこと。短いペプチド配列(通常は、約6から最大約35〜50アミノ酸まで)は、このような方法によって容易に合成され得る。あるいは、組換えDNA技術が使用され得、ここで本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列は、発現ベクターに挿入され、適切な宿主細胞に形質転換もしくはトランスフェクトされ、そして発現に適した条件下で培養される。
【0051】
(7.治療的結合体もしくは診断的結合体)
これら方法を使用して同定される標的化部分は、種々の物質(マウスモデルシステムにおいて望ましい器官、組織もしくは細胞型への結合体の選択的送達のための、治療剤もしくは診断剤を含む)に連結もしくは結合され得る。例えば、化学療法剤およびアポトーシス促進ペプチドの、腫瘍血管新生の血管系に位置するレセプターの標的化された送達は、治療的な効力における顕著な増加および腫瘍保有マウスモデルにおける全身毒性の減少を生じる(Arapら,1998;Ellerbyら,1999)。
【0052】
本発明の実施形態は、種々の疾患状態と関連する新生血管形成(例えば、腫瘍血管系)の処置に関する。腫瘍増殖に加えて、血管新生は、他の疾患において重要である。制御されない血管新生は、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、子宮内膜症、加齢性黄斑変性、および乾癬の進行に寄与する。血管の増殖は、血管腫の形成、および審美的な合併症から生命を脅かす出血に及ぶ種々の臨床問題を引き起こす動静脈奇形を生じる。本発明のさらなる実施形態は、これら例示的疾患状態および新生血管形成と関連する他のものの処置に関する。
【0053】
あるいは、VEGFR−1/NRP−1のアップレギュレーションまたは血管新生促進化合物もしくは物質の標的化は、血管新生を促進するために使用され得る。VEGFR−1/NRP−1のアップレギュレーションは、VEGFR−1(すなわち、Flt−1)もしくはNRP−1トランスジーンの送達によって達成され得、これは、次いで、当業者に公知の種々の遺伝子治療ベクターによって送達され得る。
【0054】
(A.サイトカインおよびケモカイン)
特定の実施形態において、器官、組織もしくは細胞型への標的化送達のために、1種以上の標的化部分へ特異的生体活性薬剤を連結することが望ましい。このような薬剤としては、サイトカイン、ケモカイン、アポトーシス促進因子および抗血管新生因子が挙げられるが、これらに限定されない。用語「サイトカイン」とは、細胞内媒介因子として別の細胞に対して作用する1つの細胞集団によって放出されるタンパク質についての包括的用語である。
【0055】
このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、増殖因子および伝統的なポリペプチドホルモンである。成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン);副甲状腺ホルモン;サイロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH));肝臓増殖因子;プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子−αおよび腫瘍壊死因子−β;ミュラー管抑制因子;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経増殖因子(例えば、NGF−β);血小板増殖因子;トランスホーミング増殖因子(TGF)(例えば、TGF−αおよびTGF−β);インスリン様増殖因子−Iおよびインスリン様増殖因子−II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導性因子;インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、およびインターフェロン−γ);コロニー刺激因子(CSF)(例えば、マクロファージ−CSF(M−CSF);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF);ならびに顆粒球−CSF(G−CSF));インターロイキン(IL)(例えば、IL−1、IL−1a、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12; IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、LIF、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、EPO、kitリガンドもしくはFLT−3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子、およびLTが、サイトカインの中に含まれる。本明細書において使用される場合、用語「サイトカイン」は、天然供給源に由来するもしくは組換え細胞培養物に由来するタンパク質、およびネイティブ配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0056】
サイトカインは、一般に、ケモカイン発現の部位に免疫エフェクター細胞を増員するために、化学誘引物質として作用する。特定のケモカイン遺伝子を、例えば、サイトカイン遺伝子と組み合わせて発現し、処置部位への他の免疫系成分の増員を増強することは有利である得る。ケモカインとしては、RANTES、MCAF、MIP1−α、MIP1−β、およびIP−10が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、特定のサイトカインは、化学誘引効果を有することが公知であり、同様に、用語サイトカインの下で分類され得ると認められる。
【0057】
(B.画像化剤および放射性同位体)
特定の実施形態において、本発明の標的化部分は、種々に罹患器官、組織もしくは細胞型の画像化および診断の用途の画像化剤に結合され得る。多くの適切な画像化剤は、当該分野で公知であり、タンパク質もしくはペプチドへのそれらの結合のための方法もまた同様である(例えば、米国特許第5,021,236号および同第4,472,509号(ともに本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。特定の結合方法は、例えば、有機キレート化剤を使用する金属キレート錯体の使用(例えば、タンパク質もしくはペプチドに結合したDTPA(米国特許第4,472,509号))を伴う。タンパク質もしくはペプチドはまた、カップリング剤(例えば、グルタルアルデヒドもしくは過ヨウ素酸塩)の存在下で酵素と反応させられ得る。フルオレセインマーカーとの結合体は、これらカップリング剤の存在下で、もしくはイソチオシアネートとの反応によって、調製される。
【0058】
画像化剤としての潜在的に有用な常磁性イオンの非限定的例としては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)が挙げられ、ガドリニウムが特に好ましい。他の状況(例えば、X線画像化)において有用なイオンとしては、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、および特にビスマス(III)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
画像化剤もしくは治療剤として潜在的に有用な放射性同位体としては、211アスタチン、14炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、67銅、152Eu、67ガリウム、水素、123ヨウ素、125ヨウ素、131ヨウ素、111インジウム、59鉄、32リン、186レニウム、188レニウム、75セレン、35硫黄、99mテクネチウムおよび90イットリウムが挙げられる。125Iはしばしば、特定の実施形態における使用に好ましく、99mテクネチウムおよび111インジウムはまた、しばしば、その低いエネルギーおよび長い範囲検出の適切性に起因して好ましい。
【0060】
本発明の放射活性的に標識されたタンパク質もしくはペプチドは、当該分野で周知の方法に従って生成され得る。例えば、それらは、ヨウ化ナトリウムもしくはヨウ化カリウムおよび化学的酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)もしくは酵素的酸化剤(例えば、ラクトペルオキシダーゼ)との接触によってヨウ素化され得る。本発明に従うタンパク質もしくはペプチドは、配位子交換プロセスによって、例えば、ペルテクネート(pertechnate)をスズ(II)溶液で還元し、上記還元したテクネチウムを、セファデックスカラム上でキレート化し、そして上記ペプチドをこのカラムに載せることによって、または直接標識技術によって、例えば、ペルテクネート(還元剤(例えば、SNCl)、緩衝溶液(例えば、フタル酸ナトリウム−カリウム溶液、および上記ペプチド)をインキュベートすることによって、99mテクネチウムで標識され得る。金属イオンとして存在する放射性同位体をペプチドに結合するためにしばしば使用される中間の官能基は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。蛍光標識(ローダミン、フルオレセインイソチオシアネートおよびレノグラフィンが挙げられる)もまた、使用について企図される。
【0061】
特定の実施形態において、特許請求されたタンパク質もしくはペプチドは、二次的結合リガンド、または色素産生性基質と接触させると、着色した生成物を生じる酵素(酵素タグ)に連結され得る。適切な酵素の例としては、ウレアーゼ、アルカリフォスファターゼ、(西洋ワサビ)ペルオキシダーゼ(hydrogen peroxidase)およびグルコースオキシダーゼが挙げられる。好ましい二次的結合リガンドは、ビオチンとアビジンもしくはストレプトアビジン化合物である。このような標識の使用は、能力のある当業者に周知であり、例えば、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号および同第4,366,241号(各々本明細書に参考として援用とされる)において記載される。
【0062】
なおさらなる実施形態において、標的化部分は、ナノ粒子に作動可能に連結され得る。ナノ粒子としては、コロイド性の金および銀のナノ粒子が挙げられるが、これらに限定されない。金属ナノ粒子は、可視範囲領域の色を示す。It is believed that これら色は、金属粒子における表面プラズモン共鳴の励起の結果であり、大きさ、形状、および粒子の凝集状態;周りの媒体の誘電性特性;上記粒子表面のイオンの吸着(例えば、米国特許出願第20040023415号(これは、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)に対して非常に感度が高い。
【0063】
(C.架橋剤)
二官能性架橋試薬は、種々の目的(アフィニティーマトリクスの調製、多様な構造の改変および安定化、リガンドおよびレセプター結合部位の同定、ならびに構造研究を含む)のために広範囲に使用されてきた。2つの同一の官能基を有するホモ二官能性試薬は、同一の高分子および異なる高分子もしくは高分子のサブユニット間の架橋、それら特異的結合部位に対するポリペプチドリガンドの連結を誘導することにおいて非常に効率的であることが判明した。ヘテロ二官能性試薬は、2つの異なる官能基を含む。上記2つの異なる反応器の異なる反応性を利用することによって、架橋は、選択的にかつ逐次的に制御され得る。上記二官能性架橋試薬は、それらの官能基(例えば、アミノ、スルフヒドリル、グアニジノ、インドール、カルボキシル特異性基(carboxyl specific group)の特異性に従って分けられ得る。当然のことながら、遊離アミノ基に指向される試薬は、れらの商業的利用可能性、合成の容易さおよびこれらが適用される穏和な反応条件が原因で、特に平易になった。ヘテロ二官能性架橋試薬の大部分は、一級アミン反応性基およびチオール反応性基を含む。
【0064】
リポソームへリガンドを架橋するための例示的方法は、米国特許第5,603,872号および同第5,401,511号(各々、その全体が本明細書に具体的に参考として援用される)に記載されている。種々のリガンドは、アミン残基の架橋を介して、リポソーム表面に共有結合され得る。リポソーム、特に、マルチラメラ小胞(MLV)もしくはユニラメラ小胞(例えば、ミクロ乳化リポソーム(MEL)および大きなユニラメラリポソーム(LUVET))(各々、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む)は、確立された技術によって調製されている。リポソーム中にPEを含めると、架橋目的で、リポソーム表面上に活性な官能性残基、一級アミンが提供される。リガンド(例えば、表皮増殖因子(EGF))は、PEリポソームで成功裏に連結されてきた。リガンドは、上記リポソーム表面上の別個の部位に共有結合される。これら部位の数および表面密度は、リポソーム処方およびリポソーム型によって規定される。上記リポソーム表面はまた、非共有結合的会合のための部位を有し得る。リガンドおよびリポソームの共有結合的結合体を形成するために、架橋試薬は、有効性および生体適合性について研究されている。架橋試薬としては、グルタルアルデヒド(GAD)、二官能性オキシラン(OXR)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、および水溶性カルボジイミド(好ましくは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))が挙げられる。架橋の複雑な化学を介して、認識物質およびリポソームのアミン残基の連結が、確立される。
【0065】
別の例において、ヘテロ二官能性架橋試薬および架橋試薬を使用する方法は、記載されている(米国特許第5,889,155号(その全体が具体的に本明細書に参考として援用される))。上記架橋試薬は、求核性ヒドラジド残基を、求電子性マレイミド残基と合わせて、一例においては、アルデヒドを遊離チオールへと連結することを可能にする。上記架橋試薬は、種々の官能基を架橋するように改変され得る。
【0066】
(8.核酸)
本発明に従う核酸は、標的化ペプチド、標的化抗体、標的化抗体フラグメント、治療的ポリペプチド、融合タンパク質、または他のタンパク質もしくはペプチドをコードし得る。上記核酸は、ゲノムDNA、相補的DNA(cDNA)もしくは合成DNAから得られ得る。
【0067】
「核酸」は、本明細書において使用される場合、一本鎖分子および二本鎖分子、ならびにDNA、RNA、化学的に改変される核酸および核酸アナログを含む。本発明の範囲内の核酸は、ほとんど任意の大きさでであり得、上記コードされるタンパク質もしくはペプチドの長さによって一部決定されることが企図される。
【0068】
標的化ペプチドおよび融合タンパク質が、適切なアミノ酸配列をコードする任意の核酸配列によってコードされ得ることは企図される。望ましいアミノ酸配列をコードする核酸の設計および生成は、標準化コドン票を使用して、当業者に周知である。好ましい実施形態において、各アミノ酸をコードするために選択される上記コドンは、目的の宿主細胞における核酸の発現を最適化するために改変され得る。
【0069】
(9.遺伝子治療ベクターの標的化送達)
遺伝子治療ベクターが細胞に導入され得る多くの方法が存在する。本発明の特定の実施形態において、上記遺伝子治療ベクターは、ウイルスを含む。特定のウイルスがレセプター媒介性エンドサイトーシスを介して細胞に入って、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、エピソームに維持され、そしてウイルス遺伝子を安定にかつ効率的に発現させる能力によって、それらは哺乳動物細胞への外来遺伝子の移入についての魅力的な候補になった(Ridgeway,1988;Nicolas and Rubinstein,1988;Baichwal and Sugden,1986;Temin,1986)。好ましい遺伝子治療ベクターは、一般にウイルスベクターである。遺伝子治療ベクターとして使用されるDNAウイルスとしては、パポバウイルス(例えば、シミアンウイルス40、ウシパピローマウイルス、およびポリオーマ)(Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986)およびアデノウイルス(Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986)が挙げられる。
【0070】
インビボ送達のための好ましい方法のうちの1つは、アデノウイルス発現ベクターの使用を要する。アデノウイルスベクターは、ゲノムDNAへの組み込みについての低い能力を有することが公知であるが、この特徴は、これらベクターが影響を及ぼす遺伝子移入の高い効率によって均衡される。「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)構築物のパッケージングを保持し、そして(b)そこにクローニングされたアンチセンスもしくはセンスポリヌクレオチドを発現するために十分なアデノウイルス配列を含む構築物が挙げられるが、これらに限定されないことを意味する。
【0071】
アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子発現(Levreroら,1991;Gomez−Foixら,1992)およびワクチン開発(Grunhaus and Horwitz,1992;Graham and Prevec,1991)において使用されてきた。組換えアデノウイルスを異なる組織に投与することにおける研究は、気管滴下(Rosenfeldら,1991;Rosenfeldら,1992)、筋肉注射(Ragotら,1993)、末梢静脈内注射(Herz and Gerard,1993)および脳への定位接種(stereotactic innoculation)(Le Gal La Salleら,1993)が挙げられる。
【0072】
好ましい実施形態において、特定の利点は、治療的分子もしくは物質を、罹患組織(例えば、腫瘍もしくは新血管床)の血管系を標的とするLPR標的化部分にカップリングすることから得られ得る。具体的には、細胞傷害性薬物もしくはアポトーシス促進性ペプチドに連結して、化合物を得る腫瘍血管系へ戻る部分は、腫瘍異種移植片を有するマウスの実験モデルにおける非経口的化合物より効率的でありかつあまり毒性ではなかった(Arapら,1998;Ellerbyら,1999)。RGD−4Cペプチドをアデノウイルスの表面タンパク質へ挿入して、腫瘍標的化遺伝子治療のために使用され得るアデノウイルスベクターを生成した(Arapら,1998)。
【0073】
本発明に従う「線維タンパク質」は、好ましくは、アデノウイルス線維タンパク質を含む。ヒトおよび非ヒトのアデノウイルスの血清型のいずれか1つ(例えば、キメラ線維タンパク質)は、線維タンパク質もしくは線維遺伝子の供給源として使用され得る。しかし、必要に応じて、上記アデノウイルスは、Ad2アデノウイルスもしくはAd5アデノウイルスである(米国特許第6,649,407号(これは、その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。
【0074】
上記線維タンパク質は、野生型アデノウイルスから単離される(すなわち、ネイティブタンパク質もしくは野生型タンパク質を含む)としてタンパク質中に代表的には見いだされないアミノ酸残基を含む点で、「キメラ」である。上記線維タンパク質は、従って、「非ネイティブアミノ酸配列」を含む。「非ネイティブアミノ酸配列」とは、任意の適切な長さ、好ましくは、約3〜約200アミノ酸、最適には、約3〜約30アミノ酸の配列を意味する。望ましくは、上記非ネイティブアミノ酸配列は、遺伝子発現のレベルで(すなわち、「非ネイティブアミノ酸配列をコードする核酸配列」の導入によって)、上記線維タンパク質に導入される。このような非ネイティブアミノ酸配列は、アデノウイルス配列の代わりに導入されるか、またはアデノウイルス配列に加えて導入されるかのいずれかである。導入の性質に拘わらず、DNAもしくはタンパク質いずれかのレベルでのアデノウイルス線維タンパク質への上記非ネイティブアミノ酸配列の組み込みは、得られたキメラ線維タンパク質においてペプチドモチーフの生成(すなわち、ペプチド結合モチーフ)を生じる。
【0075】
上記ペプチドモチーフは、例えば、本発明の標的化部分および/もしくは細胞表面結合部位のリガンドを含めることによって細胞標的化を可能にする。上記ペプチドモチーフは、必要に応じて、細胞標的化において使用する他の要素(例えば、一本鎖抗体配列)を含み得る。上記ペプチド結合モチーフは、挿入によって生成され得、そして例えば、ネイティブおよび非ネイティブ配列を含み得るか、または全体的に非ネイティブ配列から作製され得る。非ネイティブアミノ酸配列を上記キメラ線維タンパク質へ挿入することから生じる上記ペプチドモチーフは、高親和性ペプチド(すなわち、比較的低濃度で提供される場合に、そのコグネイト結合部位(例えば、VEGFR−1/NRP−1)を結合するもの)または低親和性ペプチド(すなわち、比較的高濃度で提供される場合に、そのコグネイト結合部位(例えば、VEGFR−1/NRP−1)を結合するもの)のいずれかであり得る。しかし、好ましくは、上記得られたペプチドモチーフは、高親和性モチーフ、特に、上記アデノウイルス線維タンパク質内のその制約に起因してそのコグネイト結合部位について高親和性を有するものである。
【0076】
他の遺伝子移入ベクターは、レトロウイルスから構築され得る(Coffin,1990.)。レトロウイルスベクターを構築するために、目的のタンパク質をコードする核酸は、特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入されて、複製欠損であるウイルスを生成する。ビリオンを生成するために、gag、polおよびenv遺伝子を含むが、LTRおよびパッケージング成分がないパッケージング細胞株が、構築される(Mannら,1983)。cDNAを、レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列と一緒に含む組換えプラスミドが、(例えば、リン酸カルシウム沈澱によって)この細胞株に導入される場合、上記パッケージング配列は、ウイルス粒子へとパッケージングされるべき上記組換えプラスミドのRNA転写を可能にし、次いで、上記組換えプラスミドは、培養培地へと分泌される(Nicolas and Rubenstein,1988;Temin,1986;Mannら,1983)。次いで、上記組換えレトロウイルスを含む培地は回収され、必要に応じて濃縮され、遺伝子移入のために使用される。レトロウイルスベクターは、広い範囲の種々の細胞型に感染し得る。しかし、組み込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を要する(Paskindら,1975)。
【0077】
他のウイルスベクターは、標的化遺伝子治療ベクターとして使用され得る。ワクシニアウイルス(Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986)、アデノ随伴ウイルス(AAV)(Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986;Hermonat and Muzycska,1984)、およびヘルペスウイルスのようなウイルスから得られるベクターが、使用され得る。
【0078】
本発明のさらなる実施形態において、遺伝子治療構築物は、リポソーム中に閉じこめられ得る。リポソーム媒介性核酸送達および外来DNAのインビトロでの発現は、非常に成功してきた。Wongら,(1980)は、リポソーム媒介性送達、ならびに外来DNAの培養ニワトリ胚、HeLa細胞、および肝癌細胞における発現の可能性を実証した。Nicolauら,(1987)は、静脈内注射後のラットにおける、成功裏のリポソーム媒介性遺伝子移入を達成した。
【0079】
本発明の遺伝子治療ベクターは、種々のトランスジーンを含み得、このトランスジーンは、代表的には、発現ベクターのコードされるDNAもしくはRNAである。遺伝子治療は、新生血管形成を増強するための治療遺伝子の発現、VEGFR−1/NRP−1の発現のために、または新生血管形成と関連する疾患状態の処置のためのVEGFR−1/NRP−1発現の阻害のために、使用され得る。DNAは、cDNA、インビトロで重合されたDNA、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部、ウイルス由来の遺伝物質、直線状DNA、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、組換えDNA、染色体DNA、オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、もしくはこれらの群の誘導体の形態で存在し得る。RNAは、オリゴヌクレオチドRNA、tRNA(トランスファーRNA)、snRNA(低分子核RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、インビトロで合成されたRNA、組換えRNA、キメラ配列、アンチセンスRNA、siRNA(低分子干渉RNA)、リボザイム、もしくはこれら群の誘導体の形態で存在し得る。アンチセンスポリヌクレオチドは、DNAおよび/もしくはRNAの機能を妨害するポリヌクレオチドである。アンチセンスポリヌクレオチドとしては、モルホリノ、2’−O−メチルポリヌクレオチド、DNA、RNAなどが挙げられるが、これらに限定されない。SiRNAは、二本鎖構造を含み、代表的には、15〜50塩基対、および好ましくは、21〜25塩基対を含み、そして上記細胞内で発現される標的遺伝子もしくはRNAに同一もしくはほぼ同一なヌクレオチド配列を有する。妨害は、発現の抑制を生じ得る。さらに、DNAおよびRNAは、一本鎖、二本鎖、三本鎖、もしくは四本鎖であり得る。
【0080】
(10.薬学的組成物)
本発明の薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中に溶解もしくは分散された本明細書に記載される標的化部分をを含む1種以上の組成物の量を含む。語句「薬学的」もしくは「薬理学的に受容可能な」とは、適切な場合、動物(例えば、例えば、ヒト)に投与された場合に、有害な反応、アレルギー反応もしくは他の望ましくない反応を生じない分子実体および組成物をいう。本発明の少なくとも1つの組成物(例えば、LPR標的化部分)もしくはさらなる活性成分を含む薬学的組成物の調製は、本開示に鑑みれば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版.Mack Printing Company,1990(本明細書に参考として援用される)によって例示されるように、当業者に公知である。さらに、動物(例えば、ヒト)投与については、調製が、生物学的標準のFDA局によって必要とされる場合に、無菌性、発熱性、一般的安全性および純度の標準を満たすべきであることが理解される。
【0081】
本明細書において使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」とは、当業者に公知であるように(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,1990(本明細書に参考として援用される)を参照のこと)、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤(isotonic agent)、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、矯味矯臭剤、染料、このような同様の物質およびこれらの組み合わせを含む。任意の従来のキャリアが上記活性成分と不適合である範囲を除いて、治療的組成物もしくは薬学的組成物におけるその使用が、企図される。
【0082】
本発明の治療的組成物および診断的組成物は、上記組成物が固体、液体もしくはエアロゾル形態において投与されるべきか否か、および上記組成物がこのような投与経路について安全である(sterile)必要があるか否かに依存して、種々のタイプのキャリアを含み得る。本発明の組成物は、当業者(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版.Mack Printing Company,1990(本明細書に参考として援用される)を参照のこと)に公知であるように、当業者に公知の任意の方法によって(例えば、経口的に、静脈内に、皮内に、動脈内に、鞘内に、眼内に、結膜下に、網膜下に、硝子体内に、前眼房に、眼のテノン下腔に、局所的に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、胸膜内に、気管内に、腫瘍内に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、小胞内に、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、連続注入、localized perfusion bathing 標的細胞を直接に、カテーテルを介して、洗浄(lavage)を介して、液体組成物において(例えば、リポソーム)、または他の方法もしくは前述の任意の組み合わせによって)、投与され得ることが企図される。
【0083】
被験体に投与される本発明の組成物の実際の投与量は、物理的要因および生理学的要因(例えば、体重、状態の重篤度、処置される疾患のタイプ、前のもしくは現在の治療的介入、上記患者の突発性疾患および投与経路によって決定され得る。投与に責任のある開業医は、いずれにしても、組成物中の活性成分の濃度および個々の被験体に適した濃度を決定する。
【0084】
特定の実施形態において、薬学的組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の実施形態において、活性化合物は、例えば、上記単位の重量の約2%〜約75%、または約25%〜約60%、およびその中で得られる任意の範囲を含み得る。他の非限定的例において、1回の投与あたり、約1mgペプチド/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約50mg/kg体重、約100mg/kg体重、約200mg/kg体重もしくはそれ以上、およびその中で得られる任意の範囲を含み得る。本明細書中で列挙される数からの得られる範囲の非限定的例において、約1mg/kg体重〜約100mg/kg体重の範囲が好ましく、複数日用量(イブプロフェン、アスピリンなどと同様であり、4〜8時間毎)において20〜50mg/kgの範囲が特に好ましい。
【0085】
任意の場合において、上記組成物は、1種以上の成分の酸化を遅らせるために種々の抗酸化剤を含み得る。さらに、微生物活動の妨害は、保存剤(例えば、種々の抗菌剤および抗真菌剤)によってもたらされ得、これら保存剤としては、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、もしくはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
上記組成物が液体形態で存在する実施形態において、キャリアは、溶媒もしくは分散媒であり得、上記キャリアとしては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物性油、リポソーム)およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。多くの場合において、等張剤(例えば、例えば、糖、塩化ナトリウムもしくはこれらの組み合わせ)を含むことが好ましい。
【0087】
無菌注射用溶液は、必要な場合、上記LPR標的化部分もしくはその結合体を、上記で挙げた種々の他の成分とともに適切な溶媒中に必要量で組み込み、続いて、濾過滅菌することによって、調製される。一般に、分散物は、上記種々の滅菌活性成分を、上記基本的分散媒および/もしくは他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液、懸濁物もしくはエマルジョンの調製のための滅菌粉末の場合においては、調製の好ましい方法は、真空乾燥もしくは凍結乾燥技術である。これら技術は、上記活性成分および任意のさらなる望ましい成分の予め滅菌濾過された液体媒体から、上記活性成分および任意のさらなる望ましい成分の粉末を得る。上記液体媒体は、必要であれば、適切に緩衝化されるべきであり、上記液体希釈剤は、まず、十分な塩類もしくはグルコースで注射の前に等張性にされる。直接注射のための組成物の調製がまた、DMSOの溶媒としての使用が、極めて迅速な浸透、高濃度の上記活性成分の、小さい領域への送達を生じることが想定される場合に企図される。
【0088】
上記組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定であり、そして微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作用に対して保存されなければならない。エンドトキシン夾雑は、安全レベルで最小限(例えば、0.5ng/mgタンパク質未満)に保持されなければならないことが認識される。
【0089】
本明細書に記載される組成物は、必要に応じて、本明細書に記載される疾患のうちのいずれかの処置もしくは予防に関する1種以上の二次的治療剤を含み得る。
【0090】
(11.治療剤)
特定の実施形態において、治療剤は、例えば、VEGFR−1/NRP−1を発現する腫瘍血管系への選択的送達のために、標的化ペプチドもしくは融合タンパク質に作動可能に連結され得る。使用に適した薬剤もしくは因子は、アポトーシス、細胞死、細胞静止および/もしくは抗血管新生を誘導する任意の化合物を含み得る。
【0091】
(A.プログラムされた細胞死の調節因子)
アポトーシス、またはプログラムされた細胞死は、正常な胚発生、生体組織においてはホメオスタシスを維持すること、および発癌現象を抑制することに必須のプロセスである(Kerrら,1972)。タンパク質のBcl−2ファミリーおよびICE様プロテアーゼは、他の系におけるアポトーシスの重要な調節因子およびエフェクターであると実証された。上記Bcl−2タンパク質は、濾胞性リンパ腫と関連して発見され、アポトーシスを制御し、多様なアポトーシス刺激に応答して細胞生存を高めることにおいて顕著な役割を果たしている(Bakhshiら,1985;Cleary and Sklar,1985;Clearyら,1986;Tsujimotoら,1985;Tsujimoto and Croce,1986)。進化的に保存されたBcl−2タンパク質は、いまや、死のアゴニストもしくは死のアンタゴニストとして分類され得る関連タンパク質のファミリーのメンバーであると認識されている。
【0092】
その発見の後に、Bcl−2は、種々の刺激によって誘発される細胞死を抑制するように作用することが示された。また、現在は、共通する構造および配列相同性を有するBcl−2細胞死調節タンパク質のファミリーが存在することが明らかである。これら異なるファミリーメンバーは、Bcl−2に類似の機能を有する(例えば、BclXL、Bcl、Bcl、Mcl−1、A1、Bfl−1)か、またはBcl−2機能を中和しかつ細胞死を促進する(例えば、Bax、Bak、Bik、Bim、Bid、Bad、Harakiri)かのいずれかであることを示した。
【0093】
(B.血管新生インヒビター)
本発明の特定の実施形態において、抗血管新生薬剤(例えば、アンジオテンシン、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター、組織メタロプロテイナーゼインヒビター、インターフェロン、インターロイキン12、血小板因子 4、IP−10、Gro−β、トロンボスポンジン、2−メトキシエストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキサミドトリアゾール、CM101、Marimastat、ペントサンポリスルフェート、アンジオポイエチン 2(Regeneron)、インターフェロン−α、ハービマイシンA、PNU145156E、16K プロラクチンフラグメント、リノマイド、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP−470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン、アンジオスタチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM−1470、血小板因子 4もしくはミノサイクリン)に作動可能に連結される標的化部分の投与に関し得る。
【0094】
腫瘍細胞の増殖は広範囲の腫瘍血管系に大いに依存し、この血管系は、癌進行に付随する。従って、抗血管新生薬剤での新たな血管形成の阻害および既にある血管の標的化された破壊は、腫瘍処置に対する有効かつ比較的非毒性のアプローチとして導入された(Arapら,1998;Arapら,1998;Ellerbyら,1999)。種々の抗血管新生薬剤および/もしくは血管インヒビターは、公知である(例えば、Folkman,1997;Eliceiri and Cheresh,2001)。
【0095】
(C.細胞傷害性薬剤)
化学療法(細胞傷害性)剤は、種々の疾患状態(癌を含む)を処置するために使用され得る。潜在的に有用な化学療法(細胞傷害性)剤としては、5−フルオロウラシル、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、シクロホスファミド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エストロゲンレセプター結合剤、エトポシド(VP16)、ファルネシル−プロテイントランスフェラーゼインヒビター、ゲムシタビン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシン、ナベルビン、ニトロソウレア、プリカマイシン(plicomycin)、プロカルバジン、ラロキシフェン、タモキシフェン、タキソール、テモゾロミド(DTICの水性形態)、トランス白金(transplatinum)、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、ビンクリスチン、または前述の任意のアナログもしくは誘導改変体(derivative variant)が挙げられるが、これらに限定されない。大部分の化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、コルチコステロイドホルモン、有糸分裂インヒビター、およびニトロソウレア、ホルモン薬剤、種々雑多な薬剤、およびその任意のアナログもしくは誘導改変体の分類に入る。
【0096】
化学療法剤および投与方法、投与量などは、当業者に周知であり(例えば、「Physicians Desk Reference」,Goodman & Gilman’s 「The Pharmacological Basis of Therapeutics」ならびに「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版,pp1035−1038および1570−1580(関連する部部が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)、本明細書中の開示に鑑みれば、本発明と組み合わせられ得る。投与量におけるいくらかの変動は、処置されている被験体の状態に依存して、必然的に存在する。投与に責任のあるひとは、いずれにしても、個々の被験体にとって適した用量を決定する。当然のことながら、全ての投与量および本明細書に記載される薬剤は、限定ではなく例示であり、他の用量もしくは薬剤は、特定の患者もしくは適用のために当業者によって使用され得る。これらの点の中間的な任意の投与量、またはその中から得られる範囲はまた、本発明において有用であると予測される。
【0097】
(D.アルキル化剤)
アルキル化剤は、ゲノムDNAと直接相互作用して、細胞を増殖させないようにする薬物である。化学療法剤のこの分類は、細胞周期の全ての相に影響を及ぼす(すなわち、それらは非相特異的である)薬剤を表す。アルキル化剤は、トロジェンマスタード、エチレンイミン、メチルメラミン、アルキルスルホネート、ニトロソウレアもしくはトリアジンが挙げられ得るが、これらに限定されない。アルキル化剤としては、ブスルファン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド(サイトキサン)、ダカルバジン、イホスファミド、メクロレタミン(マスタージェン(mustargen))、およびメルファランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
(E.代謝拮抗物質)
代謝拮抗物質は、DNAおよびRNA合成を乱す。アルキル化剤とは異なり、代謝拮抗物質は、S期の間に、細胞周期に特異的に影響を及ぼす。代謝拮抗物質は、種々の分類に区別され得る(例えば、葉酸アナログ、ピリミジンアナログおよびプリンアナログならびに関連する阻害性化合物)。代謝拮抗物質としては、5−フルオロウラシル(5−FU)、シタラビン(Ara−C)、フルダラビン、ゲムシタビンおよびメトトレキサートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
(F.天然の生成物)
天然の生成物は、一般に、天然供給源から最初に単離され、薬理学的活性を有すると同定された化合物をいう。このような化合物、そのアナログおよび誘導体は、天然供給源から単離され得るか、化学的に合成され得るか、または当業者に公知の任意の技術によって組換え生成され得る。天然の生成物は、有糸分裂インヒビター、抗腫瘍抗生物質、酵素および生物学的応答改変因子のような分類を含む。
【0100】
有糸分裂インヒビターとしては、植物アルカロイドおよび細胞分裂もしくは有糸分裂に必要とされるいずれかのタンパク質合成を阻害し得る他の天然薬剤が挙げられる。これらは、細胞周期の特定の相の間に機能する。有糸分裂インヒビターとしては、例えば、ドセタキセル、エトポシド(VP16)、テニポシド、パクリタキセル、タキソール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンが挙げられる。
【0101】
タキソイドは、トネリコ(ash tree)、Taxus brevifoliaの樹皮から単離される関連化合物のクラスである。タキソイドとしては、ドセタキセルおよびパクリタキセルのような化合物が挙げられるが、これらに限定されない。パクリタキセルは、チューブリンに結合し(ビンカアルカロイドによって使用されるものとは異なる部位において)、微小管のアセンブリを促進する。
【0102】
ビンカアルカロイドは、薬学的活性を有すると同定されたあるタイプの植物アルカロイドである。それらは、ビンブラスチン(VLB)およびビンクリスチンのような化合物を含む。
【0103】
(G.抗生物質)
特定の抗生物質は、抗微生物活性および細胞傷害性活性の両方を有する。これら薬物はまた、酵素および有糸分裂を化学的に阻害するかまたは細胞膜を変化させることによって、DNAを妨害する。これら薬剤は、相特異的ではなく、その結果、細胞周期の全ての相において作用する。細胞傷害性抗生物質の例としては、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびイダルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
(H.種々雑多な薬剤)
前述の分類に入らない種々雑多な細胞傷害性薬剤としては、白金配位錯体、アントラセンジオン、置換されたウレア、メチルヒドラジン誘導体、アムサクリン、L−アスパラギナーゼ、およびトレチノインが挙げられるが、これらに限定されない。白金配位錯体としては、カルボプラチンおよびシスプラチン(cis−DDP)のような化合物が挙げられる。例示的なアントラセンジオンは、ミトキサントロンである。例示的な置換されたウレアは、ヒドロキシウレアである。例示的なメチルヒドラジン誘導体は、プロカルバジン(N−メチルヒドラジン,MIH)である。これら例は限定ではなく、任意の公知の細胞傷害性、細胞増殖抑制性もしくは細胞破壊性の薬剤が、標的化ペプチドに結合され得、本発明の範囲内で標的化された器官、組織もしくは細胞型に投与され得ることが企図される。
【実施例】
【0105】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含められる。本発明者らによって発見された代表的技術に従う実施例中に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能し、従って、その実施のための好ましいモデルを構成すると考えられ得ることは、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示に鑑みれば、多くの変更が開示される特定の実施形態において行われ得、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなお類似もしくは同様の結果を得ることを認識すべきである。
【0106】
(実施例1:VEGF経路を標的とする抗血管新生化合物)
(1.材料および方法)
試薬およびペプチド。ペプチドを合成し、95%より大きな純度で本発明者らの仕様にHPLC精製した:L−Arg−L−Pro−L−Leu(RPL)、D−Leu−D−Pro−D−Arg[(LPR)]、D−Cys−D−Ala−D−Pro−D−Ala−D−Cys[(CAPAC);配列番号6](Polypeptide Laboratories(Torrence,CA)による)およびD−Ala−D−Pro−D−Ala[(APA)](Genemed Synthesis Inc.(San Francisco,CA)による)。組換えレセプター(VEGFR−1およびNPR−1)および増殖因子(ヒトVEGF165)を、R&D Systems(Minneapolis,MN)から得た。ヘパリン、Drabkin試薬、ヒトヘモグロビン、brij−35を、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から得た。
【0107】
動物。マウス実験は、University of Texas M.D.Anderson Cancer CenterのAnimal Care and Use Committeeが承認した。C57BL/6およびBalb/cマウスを、商業的に得た(Harlan,Indianapolis)。この研究は、Use of Animals in Ophthalmic and Vision ResearchのAssociation for Research in Vision and Ophthalmology Statementを厳守した。
【0108】
ファージアッセイ。ファージを、E.coli K91kanの長期培養の感染、37℃で250rpm、カナマイシン(100μg/ml)およびテトラサイクリン(20μg/ml)を補充したLuria−Bertani(LB)培地中での一晩増殖によって調製した。ファージを、PEG/NaCl方法によって培地上清から沈澱させ、ファージ力価を、段階希釈およびコロニー計数によって決定した(Giordano,2001)。ファージ結合および競合アッセイについて、VEGFR−1、NRP−1もしくはBSA(PBS中で10μg/ml)を、一晩4℃でマイクロタイターウェル上に固定化した。ウェルを2回洗浄し、PBS 3% BSAで2時間、室温でブロックし、10TUのCPQPRPLCもしくはPBS 3% BSA中の陰性コントロール挿入無し(Fd−tet)ファージとともにインキュベートした。室温で1時間の後に、ウェルをPBSで10回洗浄し、上記固定化レセプターに結合したファージを、細菌感染によって回収した(Giordano,2001)。
【0109】
プロテアーゼ耐性アッセイ。上記(LPR)およびRPLペプチドを、PBS中で500μg/mlに希釈し、漸増濃度のパンクレアチン(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)とともに37℃で2時間インキュベートした。次いで、サンプルを、質量分析(MALDI−TOF)によって分析した。
【0110】
血管新生アッセイ。本発明者らは、インビボマトリゲル血管新生アッセイを使用し、上記アッセイにおいて、ペプチド模倣化合物(500μg)を含むまたは含まない組換えヒトVEGF165(1μg/ml)およびヘパリン(10U/ml)に浸した、増殖因子を減少させたMatrigelマトリクス(BD Biosciences,Bedford,MA)を、インビボで、Balb−cマウスの背部領域の皮下に移植した(0.5ml)。(CAPAC)をコントロールペプチド模倣物として使用した。7日後、まうすを屠殺し、マトリゲルプラグを切り出し、写真撮影し、Dounceホモジナイザーの助けを借りて、Brij 0.35%溶液中でホモジナイズし、13.000gで5分間遠心分離した。上記上清を二連で使用して、Drabkin試薬でヘモグロビン(Hb)、および同時に測定したHb標準に基づいて計算されたHb濃度を測定した。
【0111】
ヒト血管新生のSCIDマウスモデル。マウスを、マトリゲル/足場中に10個のヒト皮膚ミクロ内皮細胞(HDMEC)、マウス1匹あたり2つの足場を移植し、1つは各足幅に移植した。移植12日後のに、マウスを、(LPR)もしくはコントロールペプチド模倣(APA)(2mg/ml 溶液の100μL 腹腔内注射)で毎日処置した。薬物を、DMSO中の、20mg/mlのストック濃度への溶解によって両方とも処方し、PBS中の新たな希釈(1/10)を、各注射のために作製した。足場を回収し、10% ホルマリン/PBS中で固定した。組織切片を、フォンウィルブランド因子抗体(Neomarkers,Freemont,CA)で標識し、AEC(DABCO)で可視化し、ヘマトキシリンで対比染色した。光学顕微鏡下で、200×倍率((LPR)についてはn=6およびコントロールペプチド模倣物についてはn=4)において、足場1つにつき6つの足場を、計数した。統計学的分析を、Sigmastatで行った。
【0112】
網膜の新生血管形成血管新生アッセイ(Retinal neovascularization angiogenesis assay)。上記網膜の新生血管形成アッセイのために、本発明者らは、養母と一緒に、C57BL/6マウスの仔を使用した。マウス(P7)を、75% 酸素に5日間曝し、部屋の空気(20.8% O)(P12)に戻し、(LPR)、コントロールペプチド模倣物(CAPAC;配列番号6)(ビヒクルとしてのリン酸緩衝化生理食塩水中20mg/Kg)もしくはビヒクルを、7日間(P12〜P18)、1日1回注射した。組織学的分析については、マウスを、血管新生ピークのP19で屠殺し、眼を摘出し、固定し、連続的に切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。内部制限膜(internal limiting membrane)の硝子側上の内皮細胞核を計数した。少なくとも10仔のH&E染色した切片を眼について評価し、核の平均数を、各条件について4〜6個計数した。
【0113】
腫瘍増殖。上記EF43.fgf4細胞を、ウシ胎児血清、グルタミンおよび抗生物質を補充したダルベッコ改変イーグル培地中で培養した。細胞を、コンフルエントなる前に回収し、上記Balb/cマウスの乳腺脂肪パッドの皮下に注射した。10日後に、腫瘍は約50〜80mmに達し、次いで、7匹の動物を有する(N=7)4つの群に分けた。各群の動物を、ビヒクルのみ(リン酸緩衝化生理食塩水溶液)あるいはコントロールペプチド(CAPAC)(配列番号6)もしくは(LPR)(50mg/Kgで)またはその環状バージョン(CLPRC)(配列番号7)(25mg/Kgで)のいずれかで処置した。腫瘍体積を、各腫瘍の長辺(L)および短辺(S)の長さを測定することによって計算した(V=S×L×0.04)。
【0114】
統計学的分析。インビボ実験については、差異の統計学的有意性を、クラスカル−ウォリス検定(ノンパラメトリック1因子ANOVA法)によって計算した(各処置日についてp<0.05)。ウィルコクソン順位和検定を使用して、クラスカル−ウォリス検定からの統計学的有意性を示した処置日に対して、各対様式の研究群の間の差異をさらに計算した。複数比較を、Bejamini&Hochberg法によって調節した。全ての統計学的分析を、R(Version 2.4.1) Project for Statistical Computingを使用して計算した。
【0115】
(2.実験結果)
上記ペプチド模倣化合物(LPR)がVEGFR−1およびNRP−1結合を示すか否かを評価するために、競合実験を行った。その親CPQPRPLC(配列番号8)ファージの、上記固定化VEGFレセプターNRP−1およびVEGFR−1への結合を、本発明の、漸増濃度のRPLペプチドもしくは上記(LPR)ペプチド模倣物の存在下で行った。本発明者らの以前の研究(Giordanoら,2005)から予測されるように、上記RPLペプチドは、CPQPRPLC(配列番号8)ファージの両方のレセプターへの結合を完全に抑制した。興味深いことに、上記(LPR)ペプチド模倣物はまた、RPLと比較して、非常に類似のレベルでファージ結合を阻害した。両方のペプチド、RPLおよび(LPR)は、用量依存性様式でファージ結合を阻害した一方で、最高濃度(100μM)で使用したコントロールペプチドは、CPQPRPLC(配列番号8)ファージ結合に対して何ら影響を有さなかった。ファージ結合(IC50)の50%を阻害するのに必要とされるペプチドの濃度は、上記レセプターに対する上記ペプチドの親和性に反比例するので、本発明者らのデータは、RPLおよび(LPR)はともに、CPQPRPLC(配列番号8)ペプチド(Giordanoら,2001)と比較して、VEGFR−1およびNRP−1に対してより高い親和性を有したことを示唆する。両方のレセプターに対する(LPR)のIC50は、VEGFR−1(約1nM)もしくはNRP−1(約50〜100nM)について以前記載されたCPQPRPLC(配列番号8)のIC50と比較して(Giordanoら,2001)、有意に低い(1〜10pM)。
【0116】
次に、(LPR)のタンパク質分解に対する耐性を試験した。RPLおよび(LPR)の両方を、漸増濃度のパンクレアチン(膵臓によって生成されるいくつかの消化酵素の混合物)とともにインキュベートし、上記分解生成物を、質量分析法によって分析した。試験されたペプチド濃度(400pg/nmol)あたりの酵素の最高比の上記(LPR)ペプチド模倣物で、何ら分解生成物を認めなかった。しかし、RPLペプチドは、PLジペプチド分解生成物の存在とともに、有意な分解を示した。まとめると、これらデータは、(LPR)がタンパク質分解しにくいRPL模倣物であり、VEGFR−1およびNRP−1に高い親和性で結合し、血管新生においてRPLモチーフの効果を研究するためのよりよい薬物−リード候補であることを示す。
【0117】
上記(LPR)ペプチド模倣化合物を同定し、特徴づけた後、新血管形成に対する(LPR)の効果を調査した。この目的については、血管新生の2匹の動物モデルを使用した:マウス宿主におけるインビボMatrigelおよびヒト内皮細胞の増殖(Norら,2001)。最初の研究を、インビボMatrigelアッセイモデルで行った。ここでマウスに、VEGF165および上記(LPR)ペプチド模倣物を含むMatrigelを皮下注射した。7日移植した後、(LPR)を含浸したMatrigelプラグは、VEGF165のみを有する陽性コントロールMatrigelプラグと比較して、低下した血管新生を示した;新生血管形成に対する効果は、コントロールペプチド模倣物を含むプラグにおいて何ら認められなかった(図1A)。
【0118】
次に、ヒト血管新生の上記SCIDマウスモデルにおける(LPR)の効果を、調査した。このモデルにおいて、ヒト内皮細胞を、ポリマーインプラント内で、インビボで培養し、増殖させて、微小血管を形成させた。次いで、この微小血管は、マウス毛細管と合流した。新血管は機能的であり、血管新生マーカーを発現するヒト内皮細胞で覆われ、マウス血球を輸送する。この血管新生動物モデルにおける(LPR)の効果を評価するために、マウスに、ヒト内皮細胞を含む足場を移植し、12日間増殖させた。この12日間の間に、内皮細胞は、空の内腔を含む機能しない管状構造を形成し、これは、マウス血球を含む完全に機能的な血管にゆっくりと成熟していった(Norら,2001)。次いで、マウスを、12日目から開始して21日目まで、(LPR)もしくはコントロールペプチド模倣物(25mg/Kg/日)で処置した。ペプチド模倣化合物を1日1回、腹腔内注射し、処置の最後に、上記足場を取り出し、機能的欠陥を形成する内皮細胞の数を決定した。21日目に、全ての動物は、予測される細胞密度を有する機能的血管を発生させ;これら血管は機能的であり、血管新生マーカーについて陽性であった。本発明者らは、上記コントロールペプチド模倣物で処置した動物と比較して、上記(LPR)ペプチドで処置した動物の群における血管形成において36.7%の減少を認めた((LPR)の存在下で20.3と対照的に、拡大視野あたり32.1)(図1B)。まとめると、これらデータは、上記(LPR)ペプチド模倣物が、2匹の異なる血管形成動物モデルにおいて、インビボで血管の形成および成熟を阻害することを示す。
【0119】
次いで、上記(LPR)ペプチド模倣化合物が、異常性理学的血管新生を処置するための薬物として使用され得るか否かという問題に対処するために、研究を行った。その目的のために、血管新生が疾患進行において重要な役割を果たすことが公知である2つの疾患:未熟児網膜症(ROP)および癌のための動物モデルを選択した。ROP研究のために、酸素誘導性網膜症のマウスモデル(Smithら,1994;Lahdenrantaら,2001)を使用した。ここで、新生児マウス(7日齢)を、5日間、高レベルの酸素(75%)に曝し、部屋の空気(20.8% 酸素)に戻した。酸素レベルにおける変化は、上記内皮細胞が、酸素応答性要素(例えば、低酸素症誘導性因子−1(HIF−1)およびVEGF)を活性化させることによって応答した動物において相対的低酸素症を誘導した(Smithら,1994;Lahdenrantaら,2001)。部屋の空気に戻すと(12日目)、動物を、(LPR)もしくはコントロールペプチド模倣物で1日1回、7日間処置した(20mg/Kg)。処置の最後(19日目)に、その眼を摘出し、血管数および網膜からはみ出す内皮細胞を計数することによって、新生血管形成のレベルを決定するために試験した(図2A)。(LPR)ビヒクルのみもしくはコントロールペプチド模倣物で処置した動物と比較して(図2B、2C)、血管新生における顕著な低下(68.5%)を認めた(ビヒクルのみで処置した動物における29.8±3.8核/網膜;コントロールペプチド模倣物で処置した動物において29.3±6.0核/網膜;(LPR)で処置した動物において9.4±1.0核/網膜)。
【0120】
次に、研究を、上記(LPR)ペプチドが、腫瘍誘導性新生血管形成に対して影響を有するか否かを決定するために行った。これら研究のために、乳癌EF43.fgf4の非常に血管新生性のマウスモデル(Deroanneら,1997;Hajitouら,1998)を選択した。このモデルにおいて、上記癌細胞は、VEGFの自己分泌生成を誘導する線維芽細胞増殖因子−4(FGF−4)を生成および分泌し、このことは、非常に血管化する腫瘍を生じる。動物に、乳腺脂肪パッドの皮下に乳ガン細胞を皮下注射し、腫瘍が小さなサイズ(50〜80mm)に達するまで腫瘍を増殖させた。次いで、上記腫瘍を有する動物を、(LPR)(50mg/Kg)、コントロールペプチド模倣物もしくはビヒクルのみの腹腔内注射で1日1回処置した。処置の5日後に、腫瘍体積の明確な縮小を、(LPR)で処置した動物において検出した(図3)。これら研究のために、上記(LPR)ペプチド模倣物の環状改変体(CLPRC)を使用した。(CLPRC)(25mg/Kg)で処置した腫瘍を有する動物も、腫瘍体積において有意な縮小を示した(図3)。コントロールペプチド模倣物で処置した動物においては、腫瘍増殖に対する効果を何ら認めなかった。
【0121】
まとめると、上記データは、(LPR)ペプチド模倣物およびその環状バージョンは、新規なクラスの血管新生インヒビターおよび標的化薬剤であることを示し、このことは、診療所において重要な適用を、および後期段階において(例えば、管形成および成熟)用途を見いだすはずである(ヒト血管新生のSCIDマウスモデル)。マウスに全身投与された場合の(LPR)は、病理的な血管新生の間の血管形成(ROPのマウスモデル)および腫瘍誘導性血管形成を有意に低下させる。
【0122】
(実施例2:脂肪細胞標的化/肥満研究)
食事およびライフスタイルは、先進国において肥満の高発生率に寄与する。米国において、成人集団のうちの約65%は標準体中を超えており(ボディーマスインデックスは、25kg/m以上)、30%超が肥満である(ボディーマスインデックスは、30kg/m以上)。肥満は、糖尿病、癌および心疾患の増大した危険性と関連し、しばしば、ヒトの寿命を短くする原因である。従って、肥満の処置における進歩は、逆に制限されており、異常な脂肪蓄積を制御するために利用可能な薬物はほとんどない(Claphamら,2001)。大部分の抗肥満薬剤は、脳におけるレセプターに対して作用することによって、エネルギーバランス経路および食欲の変更に基づく。このクラスのいくつかの薬物(例えば、フェンフルラミン)は、予測外の毒性に起因して、市場から退けられた。胃腸管を介する脂肪吸収を阻害する化合物を開発しようとする試み(例えば、オルリスタット(orlistat)、Rocheによって商標名Xenical(登録商標)の下で販売されている)は、抗肥満処置を改善し得る。なお、最も有効な薬物ですら、最大5%まで体重を低下させ得るに過ぎず、厳密な食物摂取は、さらなる体重減少に必要である(Claphamら,2001;Padwal & Majumdar,2007)。
【0123】
非新生物組織増殖(すなわち、脂肪組織)はまた、新血管の形成(血管新生)に依存することが示された。例えば、抗血新生薬剤を受けた異なる肥満モデルのマウスは、処置用量依存性の可逆性体重減少および脂肪組織喪失を示した(Rupnickら,2002)。これら研究は、脂肪組織塊が、血管新生インヒビターに対して感受性であることを示す。
【0124】
本発明者らは、従って、上記LPR、本発明のVEGFR−1標的化ペプチドが脂肪組織を標的とし、それによって食事誘導性肥満マウスの体重を減少させる能力を評価するために研究を行った。この目的で、食事誘導性肥満マウスをグループに分け、VEGFR−1/NRP−1標的化ペプチドで処置した。C57BL/6 J−60% DIOマウス(36週齢)を、The Jackson Laboratoryから購入した。これら動物に、高カロリー食(J−60%)を与えて、食事誘導性肥満(DIO)表現型を引き起こした。動物を群に分け、以下で1日1回処置した:[群1](CLPRC)(配列番号7)(N=5);[群2]CKGGRAKDC−GG−(KLAKLAK)(配列番号9)(N=3);[群3](CLPRC)と合わせてCKGGRAKDC−GG−(KLAKLAK)(配列番号10)(N=4);[群4]ビヒクルのみ(N=4)。全ての動物に、処置の30分前に、1mlの生理食塩水溶液(0.9% 塩化ナトリウム溶液,米国局方品質)の腹腔投与によって水を与えた(hydrated)。マウスを、50mg/Kg/体重用量においてリン酸緩衝化生理食塩水ビヒクル(PBS)中に溶解した(CLPRC)(100μl 全注射)(群1および3)を1日1回処置し;PBS中CKGGRAKDC−GG−(KLAKLAK)(配列番号9)を、3mg/Kgで皮下投与する(100μl 全容積)(群2)か、または(CLPRC)と組み合わせた場合に1mg/Kgにおいて1週間に5日投与した(群3)(月曜日〜金曜日)。マウスを、1週間に1回秤量した。
【0125】
上記研究の結果を、図4A〜4Cにおいて示す。1日1回腹腔内注射(50mg/Kg)で、(CLPRC)で処置した肥満マウスの群において、約3gのかなり実質的な体重低下(体重の約6%)が、処置期間にわたって認められるのに対して、上記コントロールマウスは、体重の相対的増加を示したことが認められ得る(図4A)。次に、(CLPRC)の体重減少効果を確認するために、組み合わせ治療実験を設計した。肥満マウスを、上記VEGFR−1/NRP−1標的化ペプチドと一緒に、上記fat−zapper抗肥満化合物で処置した。以前の研究において、本発明者らは、白色脂肪の除去が、アポトーシス促進性ペプチド(KLAKLAK)(配列番号2)に結合体化した上記ホーミンングペプチドCKGGRAKDC(配列番号11)で脂肪血管系の選択的標的化によって達成し得ることを示した(Koloninら,2004)。この化合物(「Fat zapper」といわれる)(配列CKGGRAKDC−GG−(KLAKLAK))(配列番号9)は、3mg/Kg/体重以上の治療的用量での脂肪除去を誘導する。しかし、組み合わせ実験については、上記VEGFR−1/NRP−1標的化ペプチド(CLPRC)(配列番号7)を、(CLPRC)の抗血管新生効果がFat−zapperの組織除去効果と相乗作用を示すことを予測して、治療的用量未満のFat−zapper(1mg/Kg)と組み合わせた。
【0126】
実際に、約8g(最大16%体重まで)の顕著な体重減少は、動物が両方の薬物を受けた場合に観察された(図4B)。組み合わせ治療を受けている動物は、3mg/Kgの最適な治療的用量のfat−zapperのみを受けているマウスの群(これは、約10g(20%体重)を減らした)と類似の体重減少を示した(図4C)。まとめると、これらデータは、VEGFR−1/NRP−1標的化ペプチドが肥満マウスにおいて体重減少を誘導し、他の抗肥満治療と相乗効果を示し得ることを示す。上記VEGFR−1/NRP−1標的ペプチドは、ヒト肥満の処置において重要な適用を見いだし得る。
【0127】
本明細書において開示され、特許請求された組成物および方法の全ては、本開示に鑑みて、過度の実験なくして作製および行われ得る。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して記載されてきたが、バリエーションが、上記組成物および方法に対して、そして本明細書に記載される方法の工程においてもしくは工程の順番において、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、適用され得ることは、当業者にとって明らかである。より具体的には、化学的にかつ生理学的に関連する特定の薬剤が、本明細書に記載される薬剤の代わりに使用され得るが、同じもしくは類似の結果が達成されることは明らかである。当業者に明らかである全てのこのような類似の置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の趣旨、範囲および概念の範囲内であると考えられる。
【0128】
(参考文献)
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載されるものを補充する、例示的な手順的詳細もしくは他の詳細を提供する程度に、本明細書において参考として援用される。
【0129】
【数1】

【0130】
【数2】

【0131】
【数3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
10アミノ酸以下の大きさの、少なくとも連続するアミノ酸配列Leu Pro Argを含む、単離されたペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、7アミノ酸以下の大きさである、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドは、5アミノ酸以下の大きさである、請求項2に記載の単離されたペプチド。
【請求項4】
Cys Leu Pro Arg Cys(配列番号1)を含むとしてさらに定義される、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項5】
配列番号1からなるとしてさらに定義される、請求項4に記載の単離されたペプチド。
【請求項6】
環状ペプチドとしてさらに定義される、請求項5に記載の単離されたペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドは、配列Leu Pro Argからなる、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドは、(Leu Pro Arg)からなる、請求項7に記載の単離されたペプチド。
【請求項9】
1個以上のDアミノ酸を含むとしてさらに定義される、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドは、Dアミノ酸からなる、請求項9に記載の単離されたペプチド。
【請求項11】
前記ペプチドは、ある分子に結合される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の単離されたペプチド。
【請求項12】
前記分子はタンパク質であり、前記ペプチドは、タンパク質結合体を形成するために、該タンパク質に結合体化される、請求項11に記載の単離されたペプチド。
【請求項13】
前記ペプチドは、前記タンパク質の末端に位置する、請求項12に記載の単離されたペプチド。
【請求項14】
前記分子は薬物、化学療法剤、診断剤、放射性同位体、アポトーシス促進剤、抗血管新生薬剤、ホルモン、サイトカイン、増殖因子、細胞傷害性薬剤、ペプチド、タンパク質、抗生物質、抗体またはそのフラグメントもしくは一本鎖抗体、画像化剤、生存因子、抗アポトーシス剤、ホルモンアンタゴニスト、抗原である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の単離されたペプチド。
【請求項15】
前記分子は、グラミシジン;マガイニン;メリチン;ディフェンシン;セクロピン;(KLAKLAK)(配列番号2);(KLAKKLA)(配列番号3);(KAAKKAA)(配列番号4);(KLGKKLG)(配列番号5);Bcl−2;Bad;Bak;Bax;およびBikからなる群より選択されるアポトーシス促進剤である、請求項14に記載の単離されたペプチド。
【請求項16】
前記分子は、トロンボスポンジン、アンジオスタチン、色素上皮由来因子、アンジオテンシン、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター、組織メタロプロテイナーゼインヒビター、インターフェロン、インターロイキン12、血小板因子4、IP−10、Gro−β、トロンボスポンジン、2−メトキシエストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキサミドトリアゾール、CM101、Marimastat、ペントサンポリスルフェート、アンジオポイエチン2、ハービマイシン A、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノマイド、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP−470、エンドスタチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ポリアミン、プロテアソームインヒビター、キナーゼインヒビター、シグナル伝達ペプチド、アキュチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM−1470、血小板因子4、ミノサイクリン、エンドスタチンXVIII、エンドスタチンXV、マトリクスメタロプロテイナーゼ−2のC末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノゲンのkringle 5ドメイン、エンドスタチンとアンジオスタチンとの融合タンパク質、エンドスタチンとヒトプラスミノゲンのkringle 5ドメインとの融合タンパク質、インターフェロン−γによって誘導されるモノカイン(Mig)、MigとIP10との融合タンパク質、可溶性FLT−1(fins様チロシンキナーゼ1レセプター)、およびキナーゼ挿入ドメインレセプター(KDR)からなる群より選択される抗血管新生薬剤である、請求項14に記載の単離されたペプチド。
【請求項17】
前記分子は、インターロイキン1(IL−1)、IL−2、IL−5、IL−10、IL−11、IL−12、IL−18、インターフェロン−γ(IF−γ)、IF−α、IF−β、腫瘍壊死因子、およびGM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)からなる群より選択されるサイトカインである、請求項14に記載の単離されたペプチド。
【請求項18】
前記ペプチドは、高分子複合体に結合される、請求項11に記載の単離されたペプチド。
【請求項19】
前記複合体は、ウイルス、バクテリオファージ、細菌、リポソーム、微粒子、磁性ビーズ、酵母細胞、もしくは哺乳動物細胞である、請求項18に記載の単離されたペプチド。
【請求項20】
前記ペプチドは、ウイルスに結合される、請求項19に記載の単離されたペプチド。
【請求項21】
前記ウイルスは、レンチウイルス、パポバウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、AAV、ワクシニアウイルスもしくはヘルペスウイルスである、請求項20に記載の単離されたペプチド。
【請求項22】
前記ペプチドは、固体支持体に結合される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の単離されたペプチド。
【請求項23】
前記固体支持体は、マイクロタイターディッシュもしくはマイクロチップである、請求項22に記載の単離されたペプチド。
【請求項24】
選択されたタンパク質に融合して、タンパク質融合構築物を形成する請求項1〜10のいずれか1項に記載の単離されたペプチドを含む、タンパク質融合構築物であって、ここで該タンパク質融合構築物は、天然に存在するタンパク質ではない、タンパク質融合構築物。
【請求項25】
前記選択されたタンパク質は、アポトーシス促進剤、抗血管新生薬剤、ホルモン、サイトカイン、増殖因子、細胞傷害性薬剤、タンパク質抗生物質、抗体またはそのフラグメントもしくは一本鎖、抗アポトーシス剤、ホルモンアンタゴニスト、あるいは抗原である、請求項24に記載の融合構築物。
【請求項26】
前記選択されたタンパク質は、グラミシジン;マガイニン;メリチン;ディフェンシン;セクロピン;(KLAKLAK)(配列番号2);(KLAKKLA)(配列番号3);(KAAKKAA)(配列番号4);(KLGKKLG)(配列番号5);Bcl−2;Bad;Bak;Bax;およびBikからなる群より選択されるアポトーシス促進剤である、請求項25に記載の融合構築物。
【請求項27】
前記選択されたタンパク質は、トロンボスポンジン、アンジオスタチン、色素上皮由来因子、アンジオテンシン、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター、組織メタロプロテイナーゼインヒビター、インターフェロン、インターロイキン12、血小板因子 4、IP−10、2−メトキシエストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、アンジオポイエチン 2、16K プロラクチンフラグメント、エンドスタチン、エンドスタチン XVIII、エンドスタチン XV、マトリクスメタロプロテイナーゼ−2のC末端ヘモペキシンドメイン、ヒトプラスミノゲンのkringle 5ドメイン、エンドスタチンとアンジオスタチンとの融合タンパク質、エンドスタチンとヒトプラスミノゲンのkringle 5ドメインとの融合タンパク質、インターフェロン−γによって誘導されるモノカイン(Mig)、MigとIP10との融合タンパク質、可溶性FLT−1(fins様チロシンキナーゼ1レセプター)、キナーゼ挿入ドメインレセプター(KDR)からなる群より選択される抗血管新生薬剤である、請求項25に記載の融合構築物。
【請求項28】
前記選択されたタンパク質は、インターロイキン1(IL−1)、IL−2、IL−5、IL−10、IL−11、IL−12、IL−18、インターフェロン−γ(IF−γ)、IF−α、IF−β、腫瘍壊死因子、およびGM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)からなる群より選択されるサイトカインである、請求項25に記載の融合構築物。
【請求項29】
VEGFR−1/NRP−1標的化構築物を調製するための方法であって、該方法は、請求項1〜10のいずれか1項に記載のペプチドを得る工程、および該ペプチドをある分子に結合させて、該構築物を調製する工程、を包含する、方法。
【請求項30】
ある分子もしくはタンパク質の、VEGFR−1もしくはNRP−1を発現する細胞への送達を標的化するための方法であって、該方法は、
(a)請求項11〜21のいずれか1項に記載のペプチド、請求項24〜28のいずれか1項に記載のタンパク質融合構築物または請求項29に記載の方法によって調製された標的化構築物を得る工程;ならびに
(b)該ペプチドもしくはタンパク質融合構築物を細胞集団に投与する工程であって、ここで該集団は、VEGFR−1もしくはNRP−1を発現する細胞を含み、それによって、該分子もしくはタンパク質を該細胞に送達する、工程、
を包含する、方法。
【請求項31】
前記VEGFR−1もしくはNRP−1を発現する細胞は、被験体に存在し、該ペプチドもしくはタンパク質融合構築物は、薬学的に受容可能な組成物中に処方され、該組成物は、該被験体に投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記被験体は、ヒト被験体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は、検出方法としてさらに定義され、該方法は、前記細胞に送達された前記ペプチドもしくはタンパク質を検出する工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記被験体は、疾患もしくは障害を有し、前記方法は、治療方法としてさらに定義される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記被験体は、血管新生成分を伴う疾患もしくは障害を有し、該被験体は、抗血管新生治療の必要がある、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患もしくは障害は、過剰増殖疾患、体重障害、肥満、糖尿病、喘息、関節炎、肝硬変、もしくは眼の疾患である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記被験体は、過剰増殖疾患を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記過剰増殖疾患は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、変形性関節症、平滑筋腫、腺腫、脂肪腫、血管腫、線維腫、脈管閉塞、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、前癌病変(例えば、腺腫様過形成および前立腺上皮細胞内腫瘍)、非浸潤性癌腫、口腔毛状白板症、もしくは乾癬である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記過剰増殖疾患は癌である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記癌は、歯肉、舌、肺、皮膚、肝臓、腎臓、眼、脳、白血病、中皮腫、神経芽細胞腫、頭部、頸部、乳房、膵臓、前立腺、腎臓、骨、精巣、卵巣、中皮腫、子宮頸部、胃腸、リンパ腫、脳、結腸、肉腫および膀胱の癌の群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記被験体は、眼内細胞増殖もしくは新生血管形成によって特徴づけられる眼の疾患もしくは障害を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記眼の疾患は、加齢性黄斑変性、増殖性糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、緑内障、および増殖性硝子体性網膜症(proliferative vitreoretiriopathy)からなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記被験体は、体重障害を有する、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−504458(P2011−504458A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520333(P2010−520333)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/072675
【国際公開番号】WO2009/032477
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(501100582)ボード オブ リージェンツ, ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム (19)
【出願人】(510035473)ユニバーシデイド フェデラル ド リオ デ ジャネイロ (1)
【Fターム(参考)】