説明

Webシステム、方法及びプログラム

【課題】Webサーバの障害時に、障害発生前に提供されたサービスと連続する最新のサービスを、ユーザの付加的な操作を要求することなく提供すること。
【解決手段】ユーザ端末(10)、Webサーバ(20)、リダイレクト先Webサーバ(30)を備えるWebシステム(1)において、ユーザ端末(10)は、Webサーバ(20)から送信されたプログラムに従い、URL及び属性情報からなるWebページ要求をWebサーバ(20)に送信する度に、このWebページ要求をユーザ端末(10)のローカルストレージ領域に記憶する。そして、Webページ要求に対するWebサーバ(20)からの応答が所定期間以上得られない場合に、ローカルストレージ領域に記憶したWebページ要求に含まれるURLをリダイレクト先Webサーバ(30)に対応するURLに変更した属性情報を含むWebページ要求を、リダイレクト先Webサーバ(30)に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Webシステム、方法及びプログラム、より詳しくは、Webページを送信するWebサーバに障害が発生したときであっても、ユーザ端末からの要求に応じて最新のWebページを配信可能なWebシステム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの爆発的な普及により、ポータルサイトや動画投稿サイトなどの様々なサービスが提供されるようになっている。このような大規模なサービスを提供するサイトは、多数のユーザが利用しており、ひとたびWebサーバに障害が生じるとサービスを提供することが出来なくなる。そこで、このような大規模なサービスを提供するサイトにおいては、負荷分散及び障害対応の目的で、複数のWebサーバを一のURLに対応させて冗長構成としている場合がある(図9参照)。
この場合、ユーザ端末から所定のURLのWebページ要求を受け付けたWebサーバが障害を起こした場合においても、当該ユーザ端末から当該所定のURLについて再度Webページ要求をすれば、冗長構成となっている他のWebサーバが当該Webページの要求に応答することが出来るようにしている。しかしながら、上述のようにユーザに再度同じWebページ要求を強いることになる(図9(1)参照)。
更に、停電や災害などで冗長構成としているサーバ群の全てが停止した場合には対応することが出来ない(図9(1)参照)。
【0003】
一方、Webサーバの障害発生時におけるサービス提供に関して特許文献1や特許文献2に開示された技術が知られている。
特許文献1には、インターネット上のコンテンツのうち所定の分量をユーザ端末に予めキャッシュしておき、オフライン状態であってもコンテンツを閲覧可能にすることで、Webサーバと通信不可能な状態であってもサービスを提供可能なシステムが開示されている。
また、特許文献2には、金融機関やコンビニエンスストアなどに設置された自動取引装置において、Webページ表示障害発生時に障害発生画面を一定時間表示した後、初期画面を表示することで障害を復旧する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−213173号公報
【特許文献2】特開2004−151861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムでは、Webサーバと通信不可能な状態に提供されるサービスは、ユーザ端末に予めキャッシュされたものであるため、最新のサービスである保証がない。
【0006】
また、特許文献2に開示された方法では、障害復旧後に初期画面が表示されてしまうため、障害発生時に提供されるべきであったサービスを再度提供するためには、ユーザに同じ操作を再度強いることになってしまう。
ここで、インターネット上のサービスでは、Webページにおいてユーザが入力した情報(ログイン情報や検索キーワードなど)に基づいて、特定のユーザに特化したサービスを提供することが一般的に行われている。具体的には、ログインしたユーザに最適な情報を提供したり、検索キーワードからユーザの関心のある情報を推測し、当該情報に関連する広告を提供することなどが行われている。
Webサーバの障害時にこのような情報の入力を再度ユーザに強いることは煩わしく、また、インターネット上における連続的なサービスの提供という観点からも望ましくない。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、Webサーバの障害時に、障害発生前に提供されたサービスと連続する最新のサービスを、ユーザの付加的な操作を要求することなく提供可能なWebシステム、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
なお、以下では、「属性情報」という表現を使用するが、「属性情報」とは、ログイン情報や検索キーワードなどといったWebページにおいてユーザが入力した情報(URLパラメータ)及びリンク元のWebページなどを示すリファラ、を含むものである。より具体的には、URL(Uniform Resource Locator)の後に付加される疑問符「?」で始まる情報をいう。
【0009】
(1) ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じてWebページを送信するWebサーバと、を備え、前記Webサーバの障害時であってもWebページを送信可能なWebシステムであって、前記Webサーバと同一のデータを管理するリダイレクト先Webサーバを備え、前記ユーザ端末が、URL及び属性情報からなるWebページ要求を前記URLに対応する前記Webサーバに送信するWebページ要求手段と、前記Webサーバから前記Webページを受信する受信手段と、前記Webページ要求を送信する度に、前記Webページ要求を前記ユーザ端末のローカルストレージ領域に記憶するWebページ要求記憶手段と、前記Webサーバから前記Webページ要求に対する応答が所定期間以上得られない場合に前記Webページ要求記憶手段に記憶された前記Webページ要求に含まれるURLを前記リダイレクト先Webサーバに対応するURLに変更するURL変更手段と、前記URL変更手段により変更されたURL及び前記属性情報に基づいて前記リダイレクト先WebサーバにWebページ要求を送信するリダイレクト要求手段と、を備えるWebシステム。
【0010】
(1)のWebシステムによれば、ユーザ端末は、Webサーバからの応答が得られない場合には、ユーザ端末のローカルストレージ領域に記憶されたWebページ要求に含まれるURLをリダイレクト先Webサーバに対応するURLに変更した上でWebページ要求する。これにより、Webサーバに障害が発生した場合などであっても、同一のデータを管理するリダイレクト先Webサーバが最新のWebページを提供できる。
また、リダイレクト先Webサーバへは、変更されたURLに加え属性情報が付加された状態で、Webページ要求が送信される。そのため、例えば、ユーザに再度の入力を要求することなく、連続したサービスを提供することができる。
【0011】
(2) 前記受信手段は、前記Webページ要求記憶手段、前記URL変更手段及び前記リダイレクト要求手段を前記ユーザ端末に機能させる所定のプログラムを更に受信する(1)に記載のWebシステム。
【0012】
(2)記載のWebシステムによれば、Webページと共に送信されるプログラムによって、(1)と同様の効果を奏することができる。
【0013】
(3) 前記リダイレクト要求手段は、前記Webページ要求記憶手段に記憶されたWebページ要求に属性情報が含まれない場合には、前記リダイレクト先Webサーバに属性情報を含まないWebページ要求を送信する(1)又は(2)に記載のWebシステム。
【0014】
(3)のWebシステムによれば、属性情報が得られない場合には、リダイレクト先Webサーバに属性情報を含まないWebページ要求を送信することができる。
【0015】
(4) ユーザ端末からの要求に応じてWebページを送信するWebサーバの障害時にWebページを配信可能な方法であって、前記Webサーバと同一のデータを管理するリダイレクト先Webサーバを備え、前記ユーザ端末は、URL及び属性情報からなるWebページ要求を前記URLに対応する前記Webサーバに送信するステップと、前記Webサーバから前記Webページを受信するステップと、前記Webページ要求を送信する度に、前記Webページ要求を前記ユーザ端末のローカルストレージ領域に記憶するステップと、前記Webサーバから前記Webページ要求に対する応答が所定期間以上得られない場合に前記ローカルストレージ領域に記憶された前記Webページ要求に含まれるURLを前記リダイレクト先Webサーバに対応するURLに変更するステップと、変更されたURL及び前記属性情報に基づいて前記リダイレクト先WebサーバにWebページ要求を送信するステップと、を含む方法。
【0016】
(5) ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じてWebページを送信するWebサーバと、を備えるWebシステムにおいて、前記ユーザ端末に、URL及び属性情報からなるWebページ要求を前記URLに対応する前記Webサーバに送信するWebページ要求手順と、URL及び属性情報からなるWebページ要求を前記Webサーバに送信する度に、前記Webページ要求を前記ユーザ端末のローカルストレージ領域に記憶するWebページ要求記憶手順と、前記Webサーバから前記Webページ要求に対する応答が所定期間以上得られない場合に前記ローカルストレージ領域に記憶された前記Webページ要求に含まれるURLを、前記Webサーバと同一のデータを管理するリダイレクト先Webサーバに対応するURLに変更するURL変更手順と、前記URL変更手順により変更されたURL及び前記属性情報に基づいて前記リダイレクト先WebサーバにWebページ要求を送信するリダイレクト要求手順と、を実行させるためのプログラム。
【0017】
(4)の方法及び(5)のプログラムによれば、(1)のWebシステムと同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、Webサーバの障害時に、障害発生前に提供されたサービスと連続する最新のサービスを、ユーザの付加的な操作を要求することなく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の概要を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態のWebシステムの構成を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態のWebシステムに含まれるWebページ要求DBを示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態のスクリプトプログラムの規定内容を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態のスクリプトプログラムに従い、ユーザ端末で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態のWebシステムの動作例を示す図である。
【図7】クロスドメイン制限を回避するための方法の一例を示す図である。
【図8】別実施形態のプログラム提供方法を示す図である。
【図9】従来のWebシステムにおける障害発生時の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0021】
[概要]
図1を参照して、本発明の第1実施形態の概要について説明する。
本第1実施形態は、ユーザ端末10と、ユーザ端末10からの要求に応じてWebページを送信するWebサーバ20(詳細には、Webサーバ群であるが、説明を容易にするためWebサーバとしている)と、を備えるWebシステム1において、Webサーバ20に障害が発生し、ユーザ端末10からのWebページ要求に対するレスポンスが所定時間以上ない場合に、Webサーバ20と同一のデータを管理しWebサーバ20のバックアップとして機能するリダイレクト先Webサーバ30にWebページ要求を行い、リダイレクト先Webサーバ30から当該Webページ要求に対するレスポンスを受けるものである。このとき、Webサーバ20へのWebページ要求に含まれる「属性情報(URLパラメータやリファラなど)」もリダイレクト先Webサーバ30へのWebページ要求に含まれる結果、障害発生前に提供されたサービスと連続する最新のサービスを提供すること可能としている。そして、本第1実施形態は、このような制御を、障害発生前にWebサーバ20から送信されたWebページと共にユーザ端末10に予め送信されていたスクリプトプログラムに従い行うことを特徴としている。
以下、図面を参照して、詳細に説明する。
【0022】
[Webシステム1の構成]
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るWebシステム1について説明する。
Webシステム1は、ユーザ端末10と、Webサーバ20と、リダイレクト先Webサーバ30と、から構成される。ユーザ端末10は、ネットワークを介してWebサーバ20及びリダイレクト先Webサーバ30と通信可能であり、Webサーバ20及びリダイレクト先Webサーバ30にWebページ要求を送信する。Webサーバ20は、ユーザ端末10からの要求に応じてWebページ及びスクリプトプログラムを送信する。リダイレクト先Webサーバ30は、Webサーバ20と同一のデータを管理しWebサーバ20のバックアップとして機能し、ユーザ端末10からの要求に応じてWebページ及びスクリプトプログラムを送信する。
【0023】
また、ユーザ端末10は、Webページ要求手段11と、Webページ要求記憶手段12と、Webページ要求データベース(以下、データベースを「DB」と表記する)13と、レスポンス監視手段14と、Webページ受信手段15と、Webページ表示手段16と、URL変更手段17と、リダイレクト要求手段18と、を備える。
【0024】
Webページ要求手段11は、Webサーバ20へWebページ要求を行う。ここで、「Webページ要求」とは、URL及び属性情報からなり、ユーザの操作により又はユーザの操作によらず自動的に構成され、Webサーバ20へ送信される。
【0025】
Webページ要求記憶手段12は、Webサーバ20から受信したスクリプトプログラムに従い、Webページ要求手段11がWebページ要求を送信する度に、このWebページ要求をWebページ要求DB13に記憶する。なお、スクリプトプログラムの詳細については、後で図4を参照して説明する。
Webページ要求DB13は、ユーザ端末10のローカルストレージ領域に設けられ、図3に示すようにURL及び属性情報からなるWebページ要求を順次記憶する。
【0026】
レスポンス監視手段14は、Webページ要求の後、所定時間以内にWebページ要求に対するレスポンス(Webページ)を受信したか監視する。そして、所定時間以内にレスポンスを受信しない場合にはタイムアウトと判定する。なお、所定時間に関しては、任意に設定可能である。
【0027】
Webページ受信手段15は、Webサーバ20及びリダイレクト先Webサーバ30からWebページ及びスクリプトプログラムを受信する。なお、スクリプトプログラムの詳細については、図4を参照して説明するが、スクリプトプログラムには、タイムアウトした場合にWebページ要求に含まれるリダイレクト元URLをリダイレクト先URLに変更することが規定されている。例えば、スクリプトプログラムには、Webサーバ20に障害が発生し、Webページ要求(URL「http://abc.co.jp」)がタイムアウトした場合には、URL「http://abc2.co.jp」に変更することが規定されている。
【0028】
Webページ表示手段16は、受信したWebページをユーザ端末10の表示画面に表示する。
【0029】
URL変更手段17は、レスポンス監視手段14によりタイムアウトと判定された場合に、現在表示されているWebページと共に、或いはそれ以前に受信したスクリプトプログラムに従って、Webページ要求DB13に記憶されたWebページ要求に含まれるURLをリダイレクト先Webサーバ30に対応するURLに変更する。
具体的には、URL変更手段17は、最新の(タイムアウトと判定された)Webページ要求と、スクリプトプログラムに規定されたリダイレクト元URLと、を対比し、一致する部分まで(前方一致)をリダイレクト先URLに変更する。そして、最新のWebページ要求に属性情報がある場合には、リダイレクト先URLに当該属性情報を追加する。
【0030】
リダイレクト要求手段18は、現在表示されているWebページと共に、或いはそれ以前に受信したスクリプトプログラムに従って、リダイレクト先URL及び属性情報に基づくWebページ要求をリダイレクト先Webサーバ30に対して送信する。
【0031】
このように、本第1実施形態では、最新のWebページ要求に属性情報が含まれている場合には、この属性情報を保持したままリダイレクト先Webサーバ30にWebページ要求を送信する。これにより、Webサーバ20の障害時に、障害発生前に提供されたサービスと連続する最新のサービスを、ユーザの付加的な操作を要求することなく提供できる。
【0032】
具体的には、属性情報の一例である検索キーワードを例にすると、検索キーワードが入力されWebページ要求(検索ボタン操作に伴う要求)がされると、URLに加え検索キーワードを示す属性情報がWebサーバ20に送信される。このとき、Webサーバ20に障害が発生している場合には、リダイレクト先Webサーバ30にWebページ要求が送信される。この場合において、リダイレクト先Webサーバ30に検索キーワードが送信されないと、リダイレクト先Webサーバ30は検索結果を返信できず、ユーザ端末10には、再度検索画面が表示されることになる。これに対して、本第1実施形態では、リダイレクト先Webサーバ30に検索キーワードも送信するため、リダイレクト先Webサーバ30は、検索結果をユーザ端末10に返信することができる。
したがって、本第1実施形態では、障害発生前に提供されたサービスと連続する最新のサービスを、ユーザの付加的な操作を要求することなく提供できる。
【0033】
[本第1実施形態のハードウェア及びソフトウェアの構成]
本第1実施形態は、コンピュータ及びその周辺装置に適用される。本第1実施形態における各手段は、コンピュータ及びその周辺装置が備えるハードウェア並びに当該ハードウェアを制御するソフトウェアによって構成される。
【0034】
上記ハードウェアには、制御装置(制御部)としてのCPUの他、記憶装置(記憶部)、通信装置(通信部)、表示装置(表示部)及び入力装置(入力部)が含まれる。記憶装置(記憶部)としては、例えば、メモリ(RAM、ROMなど)、ハードディスクドライブ(HDD)及び光ディスク(CD、DVDなど)ドライブが挙げられる。通信装置(通信部)としては、例えば、各種有線及び無線インターフェース装置が挙げられる。表示装置(表示部)としては、例えば、液晶ディスプレイ及びプラズマディスプレイなどの各種ディスプレイが挙げられる。入力装置(入力部)としては、例えば、キーボード及びポインティング・デバイス(マウスなど)が挙げられる。
【0035】
上記ソフトウェアには、上記ハードウェアを制御するコンピュータ・プログラムやデータが含まれる。コンピュータ・プログラムやデータは、記憶装置(記憶部)により記憶され、制御装置(制御部)により適宜実行、参照される。
【0036】
[スクリプトプログラムの規定]
次に、図4を参照して、本第1実施形態に係るスクリプトプログラムの規定する内容について説明する。
本第1実施形態に係るスクリプトプログラムは、例えば、JavaScript(登録商標)により規定され、Webページ(詳細にはHTML:HyperText Markup Language)と共に、Webサーバ20及びリダイレクト先Webサーバ30から送信される。このスクリプトプログラムは、ユーザ端末10に対し少なくとも以下の(1)〜(4)の手順を実行させる。
(1)Webページ要求をWebサーバ20に送信する度に、当該Webページ要求をユーザ端末10のローカルストレージ領域(Webページ要求DB13)に記憶する手順。
(2)Webサーバ20からタイムアウト時までにWebページを受信したか判定する手順。
(3)時までにWebページを受信しない場合に、ローカルストレージ領域に記憶された最新のWebページ要求のURL部分を、リダイレクト先Webサーバ30のURLに変更する(属性情報は、最新のWebページ要求と同じ)手順。
(4)リダイレクト先Webサーバ30に(3)の手順で変更されたWebページ要求を送信する手順。
【0037】
なお、詳しくは後述するが、スクリプトプログラムには、異なるドメインからデータをリクエストする際のセキュリティー上の制限(クロスドメイン制限)を回避するためのプログラムが規定されていると好ましい。
【0038】
[ユーザ端末10における処理フロー]
次に、図5を参照して、上記スクリプトプログラムに従って、ユーザ端末10で行われる処理の流れについて説明する。
【0039】
S1において、Webページ要求手段11が、Webサーバ20に対してWebページ要求を送信すると、Webページ要求記憶手段12は、スクリプトプログラムに従い、当該Webページ要求をユーザ端末10のローカルストレージ領域に記憶する(S2)。なお、スクリプトプログラムは、現在表示されているWebページと共に、或いはそれ以前に、Webサーバ20から受信したものである。
【0040】
続いて、レスポンス監視手段14は、タイムアウト時までにWebページ要求に対応するWebページを受信したか否かをスクリプトプログラムに従い判定する(S3)。このとき、タイムアウト時までにWebページを受信している場合には、ユーザ端末10の制御部はスクリプトプログラムに従いタイマーをキャンセルし(S4)、Webページ表示手段16がWebページを表示する(S5)。
【0041】
他方、タイムアウト時までにWebページを受信していない場合には、ユーザ端末10の制御部は、Webサーバ20に対するWebページ要求をスクリプトプログラムに従いキャンセルする(S11)。そして、URL変更手段17は、スクリプトプログラムに従いWebページ要求のURLをリダイレクト先URLに変更すると共に(S12)、最新のWebページ要求に属性情報がある場合には、変更したリダイレクト先URLに当該属性情報を追加する(S13)。
【0042】
続いて、リダイレクト要求手段18は、スクリプトプログラムに従い、リダイレクト先Webサーバ30にWebページ要求を送信する(S14)。その後、Webページ受信手段15が、リダイレクト先Webサーバ30からWebページを受信すると(S15)、Webページ表示手段16はWebページを表示する(S5)。
【0043】
[Webシステム1における動作]
次に、図6を参照して、Webシステム1における動作の流れを説明する。
【0044】
図6(1)において、ユーザ端末10にはWebサーバ20から送信された検索ページ100が表示されている。なお、ユーザ端末10には、検索ページ100と共に、或いはそれ以前にスクリプトプログラムも送信されている。検索ページ100は、キーワード入力欄101と検索ボタン102とを備えるWebページであり、キーワード入力欄101に検索キーワードが入力され、検索ボタン102が操作されることで、Webサーバ20から検索結果が返信される。
【0045】
図6(1)において、キーワード入力欄101に「patent」と入力され、検索ボタン102が操作されると、Webサーバ20には、「http://abc.co.jp?p=patent&search.x=1&fr=top_ga1・・・」というWebページ要求110が送信されると共に、ユーザ端末10のローカルストレージ領域に設けられたWebページ要求DB13にWebページ要求110が記憶される。なお、ローカルストレージ領域への記憶は、検索ページと共に、或いはそれ以前に送信されたスクリプトプログラムに従い行われる。
Webページ要求110のうち、疑問符「?」より前の部分がURLであり、後の部分が属性情報111である。Webページ要求110の属性情報111は、検索キーワードが「patent」であることなどを示している。
【0046】
その後、Webサーバ20からの検索結果の返信が所定時間以上ない場合には、ユーザ端末10では、スクリプトプログラムに従い、Webページ要求110のURL部分「http://abc.co.jp」をリダイレクト先URL「http://abc2.co.jp」に変更する。そして、このリダイレクト先URLに最新のWebページ要求110に含まれていた属性情報111を追加してWebページ要求120とし、リダイレクト先Webサーバ30へWebページ要求120を送信する(図6(2))。
【0047】
リダイレクト先Webサーバ30では、Webページ要求120に対応するWebページをユーザ端末10に返信する。ここで、Webページ要求120には、検索キーワードを示す属性情報111が含まれるため、リダイレクト先Webサーバ30は、検索結果を返信することができ、ユーザ端末10には、検索結果ページ130が表示される(図6(3))。
【0048】
このように、本件発明に係るWebシステム1では、Webサーバ20に障害が発生した際に、最新のWebページ要求に含まれる属性情報を保持したまま、リダイレクト先Webサーバ30にWebページ要求を行う。そのため、Webサーバ20の障害時に、障害発生前に提供されたサービスと連続する最新のサービスを、ユーザの付加的な操作を要求することなく提供することができる。
【0049】
[クロスドメイン制限の回避]
ここで、本件発明では、Webサーバ20の障害時にWebサーバ20とはURL(ドメイン)の異なるリダイレクト先Webサーバ30からWebページを受信することとしている。インターネット上のサービス提供では、セキュリティーの関係上異なるドメインからのデータのリクエスト(いわゆる、クロスドメイン)に制限がかけられることがある。本第1実施形態では、Webページと共にWebサーバ20から送信されるスクリプトプログラムに従い、このような制限を回避する。このような、クロスドメイン制限の回避方法について、図7を参照して説明する。
【0050】
図7は、スクリプトプログラムに従ってユーザ端末10で実行される処理の流れを示したフローチャートである。図7は、クロスドメイン制限の回避した上で、リダイレクト先Webサーバ30からWebページを受信する方法を示し、図5のフローチャートに加え、S14A〜S16Aの処理を行う。以下、Webサーバ20へのWebページ要求がタイムアウトした場合の処理(S11〜S16A)を参照して、クロスドメイン制限を回避した上で、リダイレクト先Webサーバ30からWebページを受信する方法について説明する。
【0051】
S11において、タイムアウト時までにWebページを受信していない場合には、ユーザ端末10の制御部は、Webサーバ20に対するWebページ要求をスクリプトプログラムに従いキャンセルする。そして、URL変更手段17は、スクリプトプログラムに従いWebページ要求のURLをリダイレクト先URLに変更すると共に(S12)、最新のWebページ要求に属性情報がある場合には、変更したリダイレクト先URLに当該属性情報を追加する(S13)。ここまでは、図5のフローチャートと同じである。
【0052】
続く、リダイレクト要求手段18がリダイレクト先Webサーバ30にWebページ要求を送信する処理において、クロスドメイン制限を回避すべく、リダイレクト要求手段18は、フレームを利用してリダイレクト先Webサーバ30に対しWebページ要求を行う。具体的には、Webページをフレームで分割すると共に、メイン画面のフレームから分割されたフレームに、異なるドメイン(リダイレクト先Webサーバ30)のWebページを要求する。
【0053】
その後、リダイレクト先Webサーバ30からのWebページを分割されたフレームで受信し(S15A)、当該分割されたフレームで受信したWebページをそのままメイン画面のフレームに(postMessageにより)送信し(S16)、メイン画面にそのWebページを表示する(S5)。
【0054】
ここで、フレームは必要なときに動的に作成することができ、また、フレーム部分は非表示であってもよい。フレーム部分を非表示とすることにより、Webサーバ20からリダイレクト先Webサーバ30に切り換えた場合であっても、表示上の連続性を持たせることができ好適である。
【0055】
以上、クロスドメイン制限を回避する方法の一例について、図7を参照して説明したが、図7の方法は一例に過ぎず、他の方法によりクロスドメイン制限を回避することとしてもよい。例えば、HTML/XHTMLにおいて、scriptタグのsrc属性に呼び出したい相手先のURLを指定し、JSON(JavaScript(登録商標) Object Notation)形式で返された処理結果を関数評価することで、最終的な処理結果を得るJSONP(JSON with padding)を用いることとしてもよい。scriptタグのsrc属性には、呼び出し側とは異なるドメインのURLを指定することができるため、異なるドメインにJSONによるリクエストを投げ、他のドメインで提供されている機能を直接呼び出すことが可能となる。
【0056】
なお、クロスドメイン制限の回避は、Webサーバ20からWebページと共に送信されるスクリプトプログラムに従い実行される。
【0057】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、各種手順を実行させるためのプログラムの一例として、Webページ(HTML)と共に送信されるJavaScript(登録商標)を用いて説明したが、プログラムは、Webページと共に送信されるプログラムに限られるものではない。以下では、各種手順を実行させるためのプログラムの別実施形態について説明する。なお、Webシステム1の構成及び処理の流れについては基本的に第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
図8(1)を参照して、第1実施形態のスクリプトプログラムでは、ユーザ端末10からのWebページ要求に伴いWebページと共に送信されることを特徴としていた。これに対し、第2実施形態のプログラムは、図8(2)に示すように、リダイレクトサービスを行うサービス提供者により配布され、ユーザ端末10に予めインストールされたプログラムであることを特徴とする。
【0059】
第2実施形態のプログラムは、サービス提供者が提供するサービスのリダイレクト先を予め記憶すると共に、ユーザ端末10(Webブラウザ)に対して、上記第1実施形態の図4、図5、図7に記載した各種手順を実行するためのプログラムが規定され、例えば、ユーザ端末10のWebブラウザにインストールされたツールバーの一機能として提供されることが考えられる。
【0060】
第2実施形態のプログラムは、予めユーザ端末10にインストールしなければならないものの、サービス提供者の管理するWebページに逐次規定する必要がなく、また、ツールバーの他機能と併せて用いることで、ユーザに対して更に細かなサービスの提供が可能になる点で好適である。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0062】
例えば、本発明の実施形態では、「属性情報」の一例として検索キーワード用いているが、上述したように、「属性情報」は検索キーワードに限られるものではない。「属性情報」とは、ログイン情報や検索キーワードなどといったWebページにおいてユーザが入力した情報(URLパラメータ)及びリンク元のWebページなどを示すリファラ、を含むものであり、URLの後に付加される疑問符「?」で始まる情報をいう。
【符号の説明】
【0063】
1 Webシステム
10 ユーザ端末
11 Webページ要求手段
12 Webページ要求記憶手段
13 Webページ要求DB
14 レスポンス監視手段
15 Webページ受信手段
16 Webページ表示手段
17 URL変更手段
18 リダイレクト要求手段
20 Webサーバ
30 リダイレクト先Webサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じてWebページを送信するWebサーバと、を備え、前記Webサーバの障害時であってもWebページを送信可能なWebシステムであって、
前記Webサーバと同一のデータを管理するリダイレクト先Webサーバを備え、
前記ユーザ端末が、URL及び属性情報からなるWebページ要求を前記URLに対応する前記Webサーバに送信するWebページ要求手段と、
前記Webサーバから前記Webページを受信する受信手段と、
前記Webページ要求を送信する度に、前記Webページ要求を前記ユーザ端末のローカルストレージ領域に記憶するWebページ要求記憶手段と、
前記Webサーバから前記Webページ要求に対する応答が所定期間以上得られない場合に前記Webページ要求記憶手段に記憶された前記Webページ要求に含まれるURLを前記リダイレクト先Webサーバに対応するURLに変更するURL変更手段と、
前記URL変更手段により変更されたURL及び前記属性情報に基づいて前記リダイレクト先WebサーバにWebページ要求を送信するリダイレクト要求手段と、
を備えるWebシステム。
【請求項2】
前記受信手段は、前記Webページ要求記憶手段、前記URL変更手段及び前記リダイレクト要求手段を前記ユーザ端末に機能させる所定のプログラムを更に受信する請求項1に記載のWebシステム。
【請求項3】
前記リダイレクト要求手段は、前記Webページ要求記憶手段に記憶されたWebページ要求に属性情報が含まれない場合には、前記リダイレクト先Webサーバに属性情報を含まないWebページ要求を送信する請求項1又は請求項2に記載のWebシステム。
【請求項4】
ユーザ端末からの要求に応じてWebページを送信するWebサーバの障害時にWebページを配信可能な方法であって、
前記Webサーバと同一のデータを管理するリダイレクト先Webサーバを備え、
前記ユーザ端末は、
URL及び属性情報からなるWebページ要求を前記URLに対応する前記Webサーバに送信するステップと、
前記Webサーバから前記Webページを受信するステップと、
前記Webページ要求を送信する度に、前記Webページ要求を前記ユーザ端末のローカルストレージ領域に記憶するステップと、
前記Webサーバから前記Webページ要求に対する応答が所定期間以上得られない場合に前記ローカルストレージ領域に記憶された前記Webページ要求に含まれるURLを前記リダイレクト先Webサーバに対応するURLに変更するステップと、
変更されたURL及び前記属性情報に基づいて前記リダイレクト先WebサーバにWebページ要求を送信するステップと、
を含む方法。
【請求項5】
ユーザ端末と、前記ユーザ端末からの要求に応じてWebページを送信するWebサーバと、を備えるWebシステムにおいて、前記ユーザ端末に、
URL及び属性情報からなるWebページ要求を前記URLに対応する前記Webサーバに送信するWebページ要求手順と、
URL及び属性情報からなるWebページ要求を前記Webサーバに送信する度に、前記Webページ要求を前記ユーザ端末のローカルストレージ領域に記憶するWebページ要求記憶手順と、
前記Webサーバから前記Webページ要求に対する応答が所定期間以上得られない場合に前記ローカルストレージ領域に記憶された前記Webページ要求に含まれるURLを、前記Webサーバと同一のデータを管理するリダイレクト先Webサーバに対応するURLに変更するURL変更手順と、
前記URL変更手順により変更されたURL及び前記属性情報に基づいて前記リダイレクト先WebサーバにWebページ要求を送信するリダイレクト要求手順と、
を実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−170683(P2011−170683A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34848(P2010−34848)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)
【Fターム(参考)】