説明

X線強度調整体及びそれを用いたX線異物検査方法並びにX線異物検査装置

【課題】非破壊検査時にX線強度調整体を容易に用いることができるようにする。
【解決手段】X線強度調整体1は、上面に円形の開口部1aを、下面に円形の穴部1bを有している。X線強度調整体1の内部では、開口部1aから穴部1bにかけて、円錐面を成すテーパ部1cが形成されている。X線強度調整体1を球状の被検査物11のX線画像の撮像時に用いることにより、被検査物11とX線強度調整体1とを透過したX線画像の強度を被検査物11の全体について略一様にすることができ、精度良く非破壊検査を行うことができる。X線強度調整体1をX線エリアカメラ3とX線源2との間に配置した状態で、開口部1aを介してテーパ部1cに被検査物11を載置することにより、容易に、被検査物11を検査可能にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物に対してX線を照射して被検査物の表面や内部における異物や空隙等の有無について非破壊検査する際に用いられるX線強度調整体及びそれを用いたX線異物検査方法並びにX線異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査物のX線画像を撮像して非破壊検査を行うX線異物検査装置においては、例えば円筒形や球形等のように、被検査物の形状によっては中心部と周辺部においてX線の透過距離が不均一になることがあり、それにより、被検査物の画像が曖昧になり異物等の判別ができなくなることがある。そのため、例えば、被検査物にその外形形状に沿うような調整体を取り付け、被検査物の端部境界近傍においても確実に検査を行うことができるようにすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載の装置において、調整体は被検査物の両側方にそれぞれ別個に設けられ、1つの被検査物を検査する度に、被検査物をX線センサ上にセットし、その後、当該被検査物に対し調整体を位置決めして配置する作業を行う必要がある。従って、多くの被検査物を次から次へと検査するような場合や、コンベア等で搬送しながら被検査物を検査するような場合には、特許文献1に記載の構成を適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004―354215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、非破壊検査時に容易に用いることができ、中心部と周辺部においてX線透過距離が不均一になるような被検査物であっても精度良く検査可能にすることができるX線強度調整体及びそれを用いたX線異物検査方法並びにX線異物検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、X線源から照射され被検査物を透過したX線をX線エリアカメラに入射させてそのX線エリアカメラによって撮像されたX線画像に基づいて、前記被検査物の内部又は表面における異物又は欠陥の有無を判別するX線異物検査に用いられ、当該被検査物を透過し前記X線エリアカメラに到達するX線の強度が略一様になるような形状に形成されたX線強度調整体であって、上部に設けられた開口部を囲むように、かつ、上部から下方に向けX線の透過方向に略垂直な平面における断面積が増加するように形成されたテーパ部を有するものである。
【0006】
請求項2の発明は、被検査物とX線エリアカメラとの間に該X線エリアカメラに入射するX線の強度を略一様にするためのX線強度調整体を設け、X線源から照射され当該被検査物を透過したX線を前記X線エリアカメラに入射させてそのX線エリアカメラによってX線画像を撮像し、撮像したX線画像に基づいて、前記被検査物の内部又は表面における異物又は欠陥の有無を判別するX線異物検査方法であって、前記X線強度調整体は、上部に設けられた開口部を囲むように、かつ、上部から下方に向けX線の透過方向に略垂直な平面における断面積が増加するように形成されたテーパ部を有し、前記X線エリアカメラと前記X線源との間に前記X線強度調整体を配置し、その後、前記開口部を介して前記テーパ部に被検査物を載置し、X線画像を撮像するものである。
【0007】
請求項3の発明は、被検査物を保持する保持テーブルと、被検査物にX線を照射するX線源と、前記X線源から照射され被検査物を透過したX線を入射させてX線画像を撮像するX線エリアカメラと、前記X線エリアカメラによって撮像されたX線画像に基づいて被検査物の内部又は表面における異常又は欠陥の有無を判別する異常・欠陥判別部とを備えたX線検査装置において、当該被検査物を透過し前記X線カメラに到達するX線の強度が略一様になるような形状に形成されたX線強度調整体をさらに備え、前記X線強度調整体は、上部に設けられた開口部を囲むように、かつ、上部から下方に向けX線の透過方向に略垂直な平面における断面積が増加するように形成されたテーパ部を有するものである。
【0008】
請求項4の発明は、X線源から照射され被検査物を透過したX線をX線エリアカメラに入射させてそのX線エリアカメラによって撮像されたX線画像に基づいて、前記被検査物の内部又は表面における異物又は欠陥の有無を判別するX線異物検査に用いられ、当該被検査物を透過し前記X線エリアカメラに到達するX線の強度が略一様になるように形成されたX線強度調整体であって、前記被検査物の形状に応じて部位毎にX線の透過率が異なるように板状に形成されているものである。
【0009】
請求項5の発明は、被検査物とX線エリアカメラとの間に該X線エリアカメラに入射するX線の強度を略一様にするためのX線強度調整体を設け、X線源から照射され当該被検査物を透過したX線を前記X線エリアカメラに入射させてそのX線エリアカメラによってX線画像を撮像し、撮像したX線画像に基づいて、前記被検査物の内部又は表面における異物又は欠陥の有無を判別するX線異物検査方法であって、前記X線強度調整体は、前記被検査物の形状に応じて部位毎にX線の透過率が異なるように板状に形成されており、前記X線エリアカメラと前記X線源との間に前記X線強度調整体を配置し、その後、前記X線強度調整体の上面に被検査物を載置し、X線画像を撮像するものである。
【0010】
請求項6の発明は、被検査物を保持する保持テーブルと、被検査物にX線を照射するX線源と、前記X線源から照射され被検査物を透過したX線を入射させてX線画像を撮像するX線エリアカメラと、前記X線エリアカメラによって撮像されたX線画像に基づいて被検査物の内部又は表面における異常又は欠陥の有無を判別する異常・欠陥判別部とを備えたX線検査装置において、当該被検査物を透過し前記X線カメラに到達するX線の強度が略一様になるような形状に形成されたX線強度調整体をさらに備え、前記X線強度調整体は、前記被検査物の形状に応じて部位毎にX線の透過率が異なるように板状に形成されているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線強度調整体の上部の開口部からテーパ部上に被検査物を載置することにより、被検査物を検査可能にすることができるので、精度が良い被検査物の検査を容易に行うことができる。また、例えばコンベア等にX線強度調整体を載置することができるので、多数の被検査物をコンベア等により搬送しながら順次検査するような場合であっても、容易に被検査物を検査可能にすることができる。
【0012】
また、本発明の別の形態によれば、板状のX線強度調整体の上面に被検査物を載置することにより、被検査物を検査可能にすることができるので、精度が良い被検査物の検査を容易に行うことができる。また、例えばコンベア等にX線強度調整体を載置することができるので、多数の被検査物をコンベア等により搬送しながら順次検査するような場合であっても、容易に被検査物を検査可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るX線強度調整体を示す斜視図。
【図2】上記X線強度調整体を用いてX線異物検査装置において被検査物のX線画像の撮像を行う状態を示す図。
【図3】上記状態におけるX線異物検査装置の撮像部を示す側断面図。
【図4】上記X線強度調整体を用いて撮像されたX線画像の一例を示す図。
【図5】上記X線強度調整体を用いてX線異物検査装置においてコンベア上で被検査物を搬送しながらX線画像の撮像を行う状態を示す図。
【図6】(a)は上記X線強度調整体の一変型例を示す斜視図、(b)は同X線強度調整体上に被検査物を載置した状態を示す斜視図。
【図7】上記X線強度調整体のさらに別の変型例を示す斜視図。
【図8】本発明の第2実施形態に係るX線強度調整体を用いてX線画像の撮像を行う状態におけるX線異物検査装置の撮像部を示す側断面図。
【図9】(a)は上記X線強度調整体について撮像されたX線画像の一例を示す図、(b)は上記X線強度調整体を用いずに撮像された被検査物のX線画像の一例を示す図。
【図10】上記X線強度調整体を用いて撮像されたX線画像の一例を示す図。
【図11】(a)は上記X線強度調整体の構造を示す組み立て前の斜視図、(b)は組み立て後の斜視図。
【図12】(a)は上記とは別のX線強度調整体の構造を示す組み立て前の斜視図、(b)は組み立て後の断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るX線強度調整体(強度調整ブロック)の一例を示す。X線強度調整体1は、例えば、X線透過率が、後述する被検査物11と略同等である素材を用いて一体に形成されている。X線強度調整体1は、外形が上下方向が軸方向となる円柱形状であり、上部に外側面を端縁部とする円形の開口部1aを有しており、下面の中央部に円形の穴部1bを有している。X線強度調整体1の内部では、開口部1aから穴部1bにかけて、円錐面形状を成すテーパ部1cが形成されている。すなわち、テーパ部1cは、X線強度調整体1の上部から下方に向け、後述するようにX線の透過方向に略垂直な略水平面における断面積が増加するように、開口部1aを囲むように形成されている。X線強度調整体1は、被検査物11の検査時に、X線異物検査装置10と共に用いられる。
【0015】
図2は、X線強度調整体1を用いて行う被検査物11の検査時のX線異物検査装置10を示す。X線異物検査装置10は、X線を出射するX線源2と、X線源2の制御を行うX線制御装置2aと、X線源2から出射されたX線が入射するように配置され、被検査物11を透過したX線の画像を撮像するX線エリアカメラ3と、X線エリアカメラ3によって撮像されたX線画像を解析することにより、被検査物11の内部又は表面に異物や空隙等の欠陥が存在するかどうかを判別する異物検出手段として機能する画像処理装置5等によって構成されている。被検査物11の検査時には、X線エリアカメラ3とX線源2との間にX線強度調整体1を配置し、その後、X線強度調整体1上に被検査物11を載置し、その状態でX線エリアカメラ3によるX線画像の撮像を行う。被検査物11は、X線強度調整体1の開口部1aを介してテーパ部1c上に載置される。X線源2は例えば点光源であるため、被検査物11は、X線源2の真下に略中央部が位置するように配置される。
【0016】
X線源2は、X線制御装置2aによって制御され、鉛直下方向を中心に所定の照射角でX線を放射状に出射する。X線源2から出射されたX線は、被検査物11及びX線強度調整体1を透過して、X線エリアカメラ3によって検知される。X線エリアカメラ3は、入射したX線を電気信号に変換して出力する。これにより、X線エリアカメラ3によってX線画像が撮像される。
【0017】
図3は、本実施形態における被検査物11の検査時のX線画像の撮像部を示す。図において、2点鎖線はX線の光路の例を示す。被検査物11は、例えば、略球形状であるため、X線強度調整体1は、その被検査物11と当該X線強度調整体1を透過するX線の透過距離(図に太線で示す部分の距離)が、被検査物11の略全域において略等しくなるような形状に、被検査物11の形状に応じて形成されている。例えば、図1、図3に示すように被検査物11の形状が球形である場合、X線強度調整体21の中心部から離れるに従い、X線の透過方向における断面が増加するように、すり鉢状のテーパ部1cが形成されている。すなわち、X線源2から鉛直に出射されたX線は、被検査物11の中央部を透過し、穴部1bを通過してX線エリアカメラ3に入射する。このとき、X線は被検査物11の中心を通過するので、被検査物11内の透過距離は最大となる。他方、X線源2から被検査物11の側方に向けて出射されたX線は、被検査物11とX線強度調整体1とを透過してX線エリアカメラ3に入射する。このとき、被検査物11内の透過距離は、鉛直に出射されたX線の透過距離よりも短いが、さらにX線強度調整体1を透過することにより、被検査物11内の透過距離とX線強度調整体1内の透過距離との合計は、鉛直に出射されたX線の被検査物11内の透過距離とおよそ同等となる。X線強度調整体1は、テーパ部1cを有していることにより、被検査物11を透過したX線のX線強度調整体1内の透過距離は、X線の鉛直からの照射角が大きくなり、X線の透過する位置が被検査物11の中心から離れるにつれ、徐々に長くなる。すなわち、X線の鉛直からの照射角が大きくなるにつれ、被検査物11内の透過距離は短くなる一方で、X線強度調整体1内の透過距離は長くなるので、被検査物11とX線強度調整体1との両方における合計のX線の透過距離は、被検査物11の略全域において略等しくなる。
【0018】
なお、X線源2は点光源であるため、X線源2からX線エリアカメラ3に到達するまでのX線の照射距離は、X線エリアカメラ3上において、X線源2の鉛直真下の部位から離れるに従い長くなる。X線の強度は、X線源2からの照射距離の2乗に反比例するので、このX線強度調整体1のテーパ部1cは、その照射距離の違いも考慮して形成されている。すなわち、テーパ部1cは、照射距離の違いにより生じるX線エリアカメラ3上の各部におけるX線の強度の差も均一にするように、側面に近づくにつれてより高さが高くなるように形成されている。
【0019】
図4は、X線強度調整体1を用いて撮像した被検査物11についてのX線画像100の一例を示す。図において、ハッチングの濃淡が濃い部分は、X線エリアカメラ3に入射したX線の強度が比較的低いことを示している。本実施形態において、X線源2から上面視で被検査物11の側方に向けて出射された鉛直からの照射角が大きいX線の強度は、X線エリアカメラ3に入射する時点では、X線強度調整体1を透過することにより、鉛直に出射されたX線と略同等になる。すなわち、X線画像100上において、被検査物11の略全域においてX線強度が概ね同等となるため、被検査物11又はX線強度調整体1を透過したX線による像110aの濃淡が、少なくとも被検査物11を端部まで完全に含む部分において、略均一になる。従って、図に示すように、被検査物11上面視で端部となる部位の付近に異物等が存在する場合であっても、X線画像100上においてその異物等の像60が明確に現れるので、異物等の検知を高精度に行うことができる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態においては、X線強度調整体1をX線異物検査装置10に配置した後、その上部の開口部1aを介してテーパ部1c上に被検査物11を載置することにより、被検査物11を検査可能にすることができるので、被検査物11の検査を容易に精度良く行うことができる。
【0021】
なお、このX線強度調整体1は、例えば、被検査物11を搬送するコンベア等の上にも配置することができる。図5は、コンベア4上に被検査物11及びX線強度調整体1を載置した状態のX線異物検査装置15を示す。このように、X線強度調整体1を用いることにより、多数の被検査物をコンベア等により搬送しながら、順次、非破壊検査を行うような場合であっても、容易に被検査物を検査可能に配置し、高精度な検査を行うことができる。
【0022】
なお、本実施形態において、X線強度調整体の形状は、円柱形状に限られない。図6(a)、(b)は、例えば底面が正方形である直方体形状の外形を有するX線強度調整体の一例を示す。図6(a)に示すように、このX線強度調整体21の上部には、X線強度調整体21の各側面の上端部を端縁とする正方形の開口部21aが形成されており、下面の中央部には、開口部21aの相似形の穴部21bが形成されている。そして、X線強度調整体21の内部において、開口部21aから穴部21bにかけて、開口部21aの各辺とその辺に対応する穴部21bの辺とを通る4つの斜面で構成されるテーパ部21cが、開口部21aを囲むように形成されている。テーパ部21cは、上部から下方に向けX線強度調整体21の水平面における断面積が増加するように形成されている。
【0023】
図6(b)に示すように、このX線強度調整体21を用いたときにも、例えば球形状の被検査物11をX線強度調整体21の開口部21aを通してテーパ部21c上に載置し、容易に、高精度な非破壊検査を行うことができる。ここで、この場合、テーパ部21cが四角錐の側面形状に形成されているため、X線の鉛直からの照射角が等しい場合において球形状の被検査物11を透過したX線の強度が等しくても、その後X線強度調整体21における透過距離が若干異なる場合が生じる。そのため、撮像されたX線画像には、上記X線強度調整体1を用いた場合と比較し、微妙ではあるがムラが生じることになる。しかしながら、このようなムラの程度は、異物等の有無の判別にはほとんど影響を与えないものであり、X線強度調整体21を用いない場合と比較して、X線強度調整体21を使用することにより被検査物11の全体についてX線の強度を略一様にできるといえ、精度良く非破壊検査を行うことができる。
【0024】
また、図7は、例えば底面が長方形である直方体形状の外形を有するX線強度調整体の一例を示す。このX線強度調整体31は、例えば円柱形の被検査物12の検査の際に用いることができるものであり、上面に長方形形状の開口部31aを有し、下面に開口部31aよりも小さい長方形状の穴部31bを有している。そして、X線強度調整体31の内部において、開口部31aから穴部31bにかけて、開口部31aの各辺とその辺に対応する穴部31bの辺を通る4つの斜面で構成され水平面における断面が長方形となるテーパ部31cが開口部31aを囲むように形成されている。テーパ部31cは、上部から下方に向けX線強度調整体31の水平面における断面積が増加するように形成されている。
【0025】
このX線強度調整体31を用いて被検査物12の検査を行う際には、被検査物12を、被検査物12の長手方向がテーパ部31cの長手方向と一致するようにし、X線強度調整体31の開口部31aを介して、被検査物12の円筒側面がテーパ部31cに接触するようにX線強度調整体31上に容易に配置することができる。これにより、被検査物12の中心軸から離れた円筒側面近傍部位を透過するX線は、被検査物12内の透過距離が短くても、X線強度調整体31内の透過距離が長くなる。従って、被検査物12の全体について透過したX線の強度を略一様にすることができ、容易に、高精度な非破壊検査を行うことができる。
【0026】
次に、本発明の第2実施形態に係るX線強度調整体(強度調整板)について説明する。図8は、板状部材であるX線強度調整体51を用いた非破壊検査の例を示す。X線X線強度調整体51は、その部位毎にX線の透過率が異なるように構成されており、特に例えば球状の被検査物11の検査時に、特に有効に用いることができるものである。なお、X線強度調整体51は、例えば、図11に示すように、一定のX線の透過率を有する強度調整シート511〜516を多層に重ねた多層構造とし、その各層を構成する強度調整シート511〜516に、それぞれ、形状や大きさが他の層とは異なる切り抜き等を設けることにより、X線強度調整体51全体として、部位毎にX線の透過率が段階的に異なるように構成することができる。同図11に示したX線強度調整体51においては、平面視でX線強度調整体51の中心から離れるに従い透過率が段階的に低くなる。また、図12に示すように、X線の透過率が異なる複数のリング状の強度調整シート511〜516を組み合わせることで、X線強度調整体51全体として、部位毎にX線の透過率が異なるように構成することができる。なお、同図12(b)における切断面のハッチングの濃さはX線の吸収率を示し、外側の強度調整シートが内側の強度調整シートよりもX線の吸収率が高い材料で形成され、平面視でX線強度調整体51の中心から離れるに従い透過率が段階的に低くなる。このような構造でX線強度調整体51を構成することにより、部位毎のX線の透過率を容易且つ正確に設定及び調整することができ、また、X線強度調整体51を低コストで製造することができる。なお、X線強度調整体51は、例えば、X線の透過率が低い物質の濃度が部位毎に異なるようにして形成してもよい。
【0027】
X線強度調整体51を用いた非破壊検査は、上述のX線強度調整体1等を用いて行う非破壊検査と同様に行うことができる。すなわち、先ず、X線異物検査装置において、X線源2とX線エリアカメラ3の間における、被検査物11を配置するべき位置に対応する所定の位置に、X線強度調整体51を位置決めして配置する。そして、そのX線強度調整体51の上面の所定の位置すなわちX線源2の鉛直下部に被検査物11を配置し、X線画像の撮像を行い、異物等の有無の検出を行う。
【0028】
図9(a)、(b)は、X線エリアカメラ3上に、それぞれX線強度調整体51のみ又は被検査物11のみを載置してX線画像の撮像を行うと仮定した場合のX線画像の一例を示す。また、図10は、X線強度調整体51を用いて撮像した被検査物11についてのX線画像の一例を示す。X線強度調整体51は、図9(a)のX線画像140aにおける中心部51a近傍に相当するような、被検査物11が載置された状態で被検査物11の中心部に近い部位を透過したX線が透過する部位については、X線の透過率が高くなるように構成されている。そして、図9のX線画像140aにおける中心部51aから若干離れている部位に相当するような、被検査物11の中心部から離れた部位を透過したX線が透過する部位については、被検査物11の中心部から離れるに従って、X線の透過率が徐々に低くなるように構成されている。
【0029】
X線強度調整体51を用いない場合、図9(b)に示すように、上面視で周縁部となる部分のX線の透過距離が短いため、被検査物11を示す範囲11aの近傍でのX線の強度は大きくなる。そのため、被検査物11の上面視で周縁部近傍に異物等が存在しても、X線画像140bにおいて、その像60を確認することができない場合がある。それと比較して、X線強度調整体51を用いてX線画像を撮像する場合には、被検査物11を透過した時点で強度が低いX線について、X線強度調整体51を透過させてもあまり強度を下げることなく、その一方で、被検査物11を透過した時点で強度が高いX線について、X線強度調整体51の透過率が低い部位を透過させることにより強度を下げることができる。その結果、X線強度調整体51を透過しX線エリアカメラ3に入射するX線の強度が被検査物11の全体について略一様となり、図10に示すように、X線画像140において、被検査物11を示す像110aの濃淡が略均一になるため、被検査物11の周縁部近傍等に存在する異物等の像60が明確になり、異物等を精度良く検出することができる。従って、第2実施形態においても、X線強度調整体51をX線エリアカメラ3の上方に配置した後に被検査物11をそのX線強度調整体51上に配置する簡単な作業により、容易に、正確な非破壊検査を実行することができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記第1実施形態に係るX線強度調整体1は、例えば直方体形状の被検査物等の検査時にも用いることができる。すなわち、X線強度調整体1は、特に上面視で端縁部となる部位についてX線の透過距離が短くなるような形状の被検査物の検査時に用いることにより、上述と同様に高精度な検査を実行可能である。このとき、上述と同様に、被検査物は開口部1aを介してテーパ部1cに載置するだけの容易な作業により、X線画像の撮像を実行可能にすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1,21,31,51 X線強度調整体
1a,21a,31a 開口部
1c,21c,31c テーパ部
2 X線源
3 X線エリアカメラ
11,12 被検査体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源から照射され被検査物を透過したX線をX線エリアカメラに入射させてそのX線エリアカメラによって撮像されたX線画像に基づいて、前記被検査物の内部又は表面における異物又は欠陥の有無を判別するX線異物検査に用いられ、当該被検査物を透過し前記X線エリアカメラに到達するX線の強度が略一様になるような形状に形成されたX線強度調整体であって、
上部に設けられた開口部を囲むように、かつ、上部から下方に向けX線の透過方向に略垂直な平面における断面積が増加するように形成されたテーパ部を有することを特徴とするX線強度調整体。
【請求項2】
被検査物とX線エリアカメラとの間に該X線エリアカメラに入射するX線の強度を略一様にするためのX線強度調整体を設け、X線源から照射され当該被検査物を透過したX線を前記X線エリアカメラに入射させてそのX線エリアカメラによってX線画像を撮像し、撮像したX線画像に基づいて、前記被検査物の内部又は表面における異物又は欠陥の有無を判別するX線異物検査方法であって、
前記X線強度調整体は、上部に設けられた開口部を囲むように、かつ、上部から下方に向けX線の透過方向に略垂直な平面における断面積が増加するように形成されたテーパ部を有し、
前記X線エリアカメラと前記X線源との間に前記X線強度調整体を配置し、その後、前記開口部を介して前記テーパ部に被検査物を載置し、X線画像を撮像することを特徴とするX線異物検査方法。
【請求項3】
被検査物を保持する保持テーブルと、被検査物にX線を照射するX線源と、前記X線源から照射され被検査物を透過したX線を入射させてX線画像を撮像するX線エリアカメラと、前記X線エリアカメラによって撮像されたX線画像に基づいて被検査物の内部又は表面における異常又は欠陥の有無を判別する異常・欠陥判別部とを備えたX線検査装置において、
当該被検査物を透過し前記X線カメラに到達するX線の強度が略一様になるような形状に形成されたX線強度調整体をさらに備え、
前記X線強度調整体は、上部に設けられた開口部を囲むように、かつ、上部から下方に向けX線の透過方向に略垂直な平面における断面積が増加するように形成されたテーパ部を有することを特徴とするX線検査装置。
【請求項4】
X線源から照射され被検査物を透過したX線をX線エリアカメラに入射させてそのX線エリアカメラによって撮像されたX線画像に基づいて、前記被検査物の内部又は表面における異物又は欠陥の有無を判別するX線異物検査に用いられ、当該被検査物を透過し前記X線エリアカメラに到達するX線の強度が略一様になるように形成されたX線強度調整体であって、
前記被検査物の形状に応じて部位毎にX線の透過率が異なるように板状に形成されていることを特徴とするX線強度調整体。
【請求項5】
被検査物とX線エリアカメラとの間に該X線エリアカメラに入射するX線の強度を略一様にするためのX線強度調整体を設け、X線源から照射され当該被検査物を透過したX線を前記X線エリアカメラに入射させてそのX線エリアカメラによってX線画像を撮像し、撮像したX線画像に基づいて、前記被検査物の内部又は表面における異物又は欠陥の有無を判別するX線異物検査方法であって、
前記X線強度調整体は、前記被検査物の形状に応じて部位毎にX線の透過率が異なるように板状に形成されており、
前記X線エリアカメラと前記X線源との間に前記X線強度調整体を配置し、その後、前記X線強度調整体の上面に被検査物を載置し、X線画像を撮像することを特徴とするX線異物検査方法。
【請求項6】
被検査物を保持する保持テーブルと、被検査物にX線を照射するX線源と、前記X線源から照射され被検査物を透過したX線を入射させてX線画像を撮像するX線エリアカメラと、前記X線エリアカメラによって撮像されたX線画像に基づいて被検査物の内部又は表面における異常又は欠陥の有無を判別する異常・欠陥判別部とを備えたX線検査装置において、
当該被検査物を透過し前記X線カメラに到達するX線の強度が略一様になるような形状に形成されたX線強度調整体をさらに備え、
前記X線強度調整体は、前記被検査物の形状に応じて部位毎にX線の透過率が異なるように板状に形成されていることを特徴とするX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−258102(P2009−258102A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76490(P2009−76490)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】