説明

X線検査装置およびX線検査プログラム

【課題】搬送コンベアの状態に関わらず、高精度なキャリブレーションを実施して被検査物の検査を正確に行うことが可能なX線検査装置およびX線検査プログラムを提供する。
【解決手段】X線検査装置は、コンベア上に載置された商品に対して照射されたX線の透過光をX線ラインセンサにおいて検出することで商品に含まれる異物の有無を検出する装置であって、X線ラインセンサに含まれる複数の画素のキャリブレーションを行う際には、X線検査装置に搭載された制御コンピュータ20において形成される判定部20aやキャリブレーション実行部20b等の各種制御ブロックによって、コンベアにおけるキャリブレーションを実施するために適した位置を探して、その位置においてX線ラインセンサが検出した結果に基づいてキャリブレーションを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象となる物品に対してX線を照射して物品の検査を行うX線検査装置およびX線検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品などの商品の生産ラインにおいては、商品への異物混入や商品の割れ欠けがある場合にその不良商品が出荷されることを防止するために、X線検査装置を用いた商品不良検査が行われている。このX線検査装置では、搬送コンベアによって連続搬送されてくる被検査物に対してX線を照射し、そのX線の透過状態をラインセンサ等のX線受光部において検出して、被検査物中に異物が混入していないか、あるいは被検査物に割れ欠けが生じていたり被検査物内の単位内容物の数量が不足していたりしないかを判別する。
【0003】
例えば、特許文献1には、バックグラウンドデータの角度に対する強度曲線と強度レベルとに関して、強度曲線を標準試料の測定データに基づいて求め、強度曲線のレベルを強度レベルに基づいて調整することで、測定対象に依存しない適正なバックグラウンドデータを得ることが可能なX線回折装置(X線検査装置)について開示されている。
【特許文献1】特開平10−339707号公報(平成10年12月22日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のX線検査装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、一般的に、このようなX線検査装置では、ラインセンサの出力のオフセットとレンジとを得るためにキャリブレーションが実施される。これにより、キャリブレーションによってラインセンサごとのX線検出の感度を補正することで、検査対象となる物品を透過したX線を正確に検出して、異物混入等の検査を高精度に実施することが可能になる。
【0005】
しかし、上記公報に開示されたX線検査装置では、測定データから背景画像を除去することで測定対象に依存しない正確なバックグラウンドデータを取得することができるものの、検査対象となる商品を搬送する搬送コンベアが劣化したり傷ついたりした場合や、例えばフィンガー継手によって連結された搬送コンベアを用いる場合には、その劣化部分や傷の部分、継手の部分にX線が吸収されるため、ラインセンサの出力が劣化等のない部分と比較して小さくなる(図9(b)および図9(c)参照)。このため、この劣化部分等を含む位置を基準にしてキャリブレーションを行った後で被検査物の検査を行った場合には、劣化等の無い部分が必要以上に検出量が大きくなって、検出データに基づいて作成されるX線画像が明るくなり過ぎて、適切なX線画像が得られず、被検査物の検査を正確に実施することができなくなるおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、搬送コンベアの状態に関わらず、高精度なキャリブレーションを実施して被検査物の検査を正確に行うことが可能なX線検査装置およびX線検査プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るX線検査装置は、被検査物に対して照射されたX線の透過光を検出して被検査物の検査を行うX線検査装置であって、搬送コンベアと、X線照射部と、ラインセンサと、判定部と、キャリブレーション実行部と、を備えている。搬送コンベアは、被検査物を所定の方向に搬送する。X線照射部は、搬送コンベアによって搬送される被検査物に対してX線を照射する。ラインセンサは、X線照射部から照射されたX線を、搬送コンベアを介して検出する複数の画素を含む。判定部は、搬送コンベアに被検査物を載置しない状態で搬送コンベアの各位置ごとに取得されたX線照射器から照射されたX線のラインセンサにおける検出結果に基づいて、搬送コンベアの各位置がラインセンサのキャリブレーションを行うのに適した位置であるか否かを判定する。キャリブレーション実行部は、判定部においてキャリブレーションを行うのに適した位置と判定された位置においてラインセンサの検出結果に基づいてキャリブレーションを行う。
【0008】
ここでは、搬送される被検査物に対して照射されたX線の透過光を、搬送コンベアを介して検出して被検査物に含まれる異物等の混入検査を行うX線検査装置において、X線を検出するラインセンサに含まれる複数の画素のキャリブレーションを実施する際には、被検査物を搬送する搬送コンベアを被検査物が載置されていない状態で複数回停止させて各停止位置ごとにX線を検出する。そして、これらの複数の停止位置における検出結果のうち、各画素ごとの検出結果に所定値以上の差がある停止位置については、キャリブレーションを行うのに不適な位置として判定する一方、所定値未満の差の停止位置については、キャリブレーションを行うのに適した位置として判定する。その後、上記キャリブレーションを行うのに適した位置と判定された停止位置において検出されたラインセンサの検出結果に基づいてキャリブレーションを実行する。
【0009】
ここで、上記キャリブレーションを行うとは、実際にキャリブレーションを実施する場合や、キャリブレーション用のデータを蓄積すること等のようなキャリブレーションを実施する前段階の行為も含まれる。
これにより、例えば、搬送コンベアの一部が局所的に劣化していたり傷、汚れ等が入っていたりする場合や、搬送コンベアがフィンガー継手等を含む場合でも、キャリブレーションを行うために不適切な搬送コンベアの停止位置を特定することで、その位置以外の位置においてキャリブレーションを実施することができる。この結果、その劣化部分や継手部分等を透過するX線の一部が吸収されてしまうことに起因して、高精度なキャリブレーションが実施できなくなることを防止して、被検査物の検査を正確に行うことができる。
【0010】
なお、フィンガー継手等のように、使用初期の段階から常に継手部分を透過したX線量が減少する場合には、使用初期段階でキャリブレーション用のデータを取得し、このデータをそれ以降も使用すればよい。一方、搬送コンベアの劣化や傷については、運転開始時等ごとに上記停止位置を選んでキャリブレーションを行うことで、経年変化する搬送コンベアの状態に応じて適正なキャリブレーションを実施することができる。
【0011】
第2の発明に係るX線検査装置は、第1の発明に係るX線検査装置であって、搬送コンベアの各位置がラインセンサのキャリブレーションを行うのに適した位置であるか否かを判定するためのデータを取得する際には、搬送コンベアを1周させる。
ここでは、搬送コンベアにおける劣化部分や傷の部分等の不適正位置を特定するために、キャリブレーションを実施する前に搬送コンベアを1周させながら各位置においてラインセンサによって透過X線の検出データを取得する。
【0012】
これにより、搬送コンベアにおける不適正位置を全て特定することができる。この結果、不適正位置を避けた位置においてキャリブレーションを実施することで、高精度にキャリブレーションを実施することができる。さらに、複数の被検査物を搬送しながら連続して検査を行う場合でも、特定された不適正位置を避けるようにして検査を行うことで、高精度に検査を行うことが可能になる。
【0013】
第3の発明に係るX線検査装置は、第1または第2の発明に係るX線検査装置であって、搬送コンベアの各位置において、ラインセンサに含まれる各画素ごとに取得された検出データに基づいてヒストグラムを作成するヒストグラム作成部をさらに備えている。そして、判定部は、ヒストグラムの中心を基準として判定を行う。
ここでは、ラインセンサにおいて取得された搬送コンベアの各位置ごとの検出データに基づいてヒストグラムを作成する。そして、判定部は、ヒストグラムの中央値、つまり最も均一な部分の検出データの値を基準にして、各位置における検出データとの差を算出し、それぞれの位置が適正位置か不適正位置かの判定を行う。
【0014】
これにより、適正位置の中に点在する劣化や傷の部分(不適正位置)を容易に判別して、これを正確に特定することができる。
【0015】
第4の発明に係るX線検査装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、キャリブレーション実行部は、判定部における判定用に取得されたラインセンサにおける検出結果を用いて、キャリブレーションを実行する。
ここでは、搬送コンベアにおける各位置が適正位置であるか不適正位置であるかを判別するために、各位置ごとにラインセンサにおいて取得された検出データのうち、適正位置と判定された位置における検出データに基づいてキャリブレーションを行う。
これにより、適正位置と不適正位置とを判別するために取得された検出データを1回取得するだけでキャリブレーションまで実施することができるため、キャリブレーションの実施効率を向上させることができる。
【0016】
第5の発明に係るX線検査装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、キャリブレーション実行部は、判定部における判定後に、ラインセンサにおいてキャリブレーション用のデータを新たに取得する。
ここでは、搬送コンベアにおける各位置が適正位置であるか不適正位置であるかを判別した後、適正位置と判定された位置においてラインセンサによって新たに取得された検出データに基づいてキャリブレーションを行う。
これにより、適正位置において新たに取得した検出データに基づいてキャリブレーションを実施することができるため、従来よりも高精度なキャリブレーションを実施することが可能になる。
【0017】
第6の発明に係るX線検査装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、搬送コンベアを制御する制御部をさらに備えている。そして、制御部は、判定部において不適と判定された位置に被検査物を搬入しないように搬送コンベアを制御する。
【0018】
ここでは、例えば、劣化部分や傷の部分を含む搬送コンベアが被検査物の受入れ位置へまわってきた場合には、搬送速度を早める等の制御を行うことで、劣化部分等の上に被検査物が載置されないようにする。
これにより、被検査物に対して照射されたX線を検出して得られるX線画像中に、搬送コンベアの劣化部分や傷の部分が含まれてしまうことを防止することができる。この結果、搬送コンベアの劣化部分等を誤って被検査物中に混入した異物として判定してしまうことを回避することができる。
【0019】
第7の発明に係るX線検査装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、画像作成部と、画像処理部とをさらに備えている。画像作成部は、被検査物に対して照射されたX線のラインセンサにおける検出結果に基づいてX線画像を作成する。画像処理部は、被検査物の検査を行う場合には、判定を行うためにラインセンサにおいて取得された検出データに基づいて、画像作成部において作成されたX線画像に対して減算処理を行う。
【0020】
ここでは、被検査物に対して照射されたX線の検出結果に基づいて作成されたX線画像に対して、搬送コンベアの不適正な位置の特定のために複数の位置において取得された検出データを用いて減算処理を行う。
これにより、被検査物の検査を行う際に作成されたX線画像から背景部分を排除することができる。この結果、高精度なキャリブレーションを実施した後、事前に取得された検出データを用いて被検査物のX線画像から背景部分を排除して、高精度に異物検出等を行うことができる。
【0021】
第8の発明に係るX線検査装置は、被検査物に対して照射されたX線の透過光を検出して被検査物の検査を行うX線検査装置であって、搬送コンベアと、X線照射部と、ラインセンサと、キャリブレーション実行部と、を備えている。搬送コンベアは、被検査物を所定の方向に搬送する。X線照射部は、搬送コンベアによって搬送される被検査物に対してX線を照射する。ラインセンサは、X線照射部から照射されたX線を検出する。キャリブレーション実行部は、X線照射部からX線を照射して、被検査物を載置せずに搬送コンベアを作動させた状態でラインセンサに含まれる複数の画素において検出されたX線量の平均値を算出し、平均値に基づいて前記ラインセンサのキャリブレーションを行う。
【0022】
ここでは、被検査物を載置せずに搬送コンベアを作動させながらX線を照射して各画素においてX線照射時の各画素における検出データを平均値として算出する。そして、この平均値をX線非照射時の各画素における検出データと比較して、ラインセンサにおけるキャリブレーションを行う。
これにより、搬送コンベアにおける劣化や傷を含む位置が全体の一部分である場合には、各画素における検出データの平均値を算出することにより、劣化や傷等の影響を排除することができる。よって、この平均値に基づいてラインセンサのキャリブレーションを実施することで、搬送コンベアにおける劣化等の影響を受けずに、被検査物の検査を高精度に実施することが可能になる。
【0023】
第9の発明に係るX線検査プログラムは、被検査物に対して照射されたX線の透過光を検出して被検査物の検査を行うX線検査プログラムであって、第1および第2のステップを備えている。第1のステップは、搬送コンベアに被検査物を載置しない状態で搬送コンベアの各位置ごとに取得されたX線のラインセンサによる検出結果に基づいて、搬送コンベアの各位置がラインセンサのキャリブレーションを行うのに適した位置であるか否かを判定する。第2のステップは、第1のステップにおいてキャリブレーションを行うのに適した位置と判定された位置におけるラインセンサの検出結果に基づいてキャリブレーションを行う。
【0024】
ここでは、搬送される被検査物に対して照射されたX線の透過光を、搬送コンベアを介して検出して被検査物に含まれる異物等の混入検査を行うX線検査プログラムにおいて、X線を検出するラインセンサに含まれる複数の画素のキャリブレーションを実施する際には、被検査物を搬送する搬送コンベアを被検査物が載置されていない状態で複数回停止させて各停止位置ごとにX線を検出する。そして、これらの複数の停止位置における検出結果のうち、各画素ごとの検出結果に所定値以上の差がある停止位置については、キャリブレーションを行うのに不適な位置として判定する一方、所定値未満の差の停止位置については、キャリブレーションを行うのに適した位置として判定する。その後、上記キャリブレーションを行うのに適した位置と判定された停止位置において検出されたラインセンサの検出結果に基づいてキャリブレーションを実行する。
【0025】
ここで、上記キャリブレーションを行うとは、実際にキャリブレーションを実施する場合や、キャリブレーション用のデータを蓄積すること等のようなキャリブレーションを実施する前段階の行為も含まれる。
これにより、例えば、搬送コンベアの一部が局所的に劣化していたり傷、汚れ等が入っていたりする場合や、搬送コンベアがフィンガー継手等を含む場合でも、キャリブレーションを行うために不適切な搬送コンベアの停止位置を特定することで、その位置以外の位置においてキャリブレーションを実施することができる。この結果、その劣化部分や継手部分等を透過するX線の一部が吸収されてしまうことに起因して、高精度なキャリブレーションが実施できなくなることを防止して、被検査物の検査を正確に行うことができる。
【0026】
なお、フィンガー継手等のように、使用初期の段階から常に継手部分を透過したX線量が減少する場合には、使用初期段階でキャリブレーション用のデータを取得し、このデータをそれ以降も使用すればよい。一方、搬送コンベアの劣化や傷については、運転開始時等ごとに上記停止位置を選んでキャリブレーションを行うことで、経年変化する搬送コンベアの状態に応じて適正なキャリブレーションを実施することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のX線検査装置によれば、搬送コンベアにおける不適正位置を全て特定することができる。この結果、不適正位置を避けた位置においてキャリブレーションを実施することで、高精度にキャリブレーションを実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の一実施形態に係るX線検査装置10について、図1〜図10を用いて説明すれば以下の通りである。
[X線検査装置10全体の構成]
本実施形態のX線検査装置10は、図1に示すように、食品等の商品の生産ラインにおいて品質検査を行う装置の1つである。X線検査装置10は、連続的に搬送されてくる商品に対してX線を照射し、商品を透過したX線量に基づいて商品に異物が混入しているか否かの検査を行う。
【0029】
X線検査装置10の被検査物である商品Gは、図2に示すように、前段コンベア60によりX線検査装置10に運ばれてくる。商品Gは、X線検査装置10において異物混入の有無が判断される。このX線検査装置10での判断結果は、X線検査装置10の下流側に配置される振分機構70に送信される。振分機構70は、商品GがX線検査装置10において良品と判断された場合には商品Gをそのまま正規のラインコンベア80へと送る。一方、商品GがX線検査装置10において不良品と判断された場合には、下流側の端部を回転軸とするアーム70aが搬送路を遮るように回動する。これにより、不良品と判断された商品Gを、搬送路から外れた位置に配置された不良品回収箱90によって回収することができる。
【0030】
X線検査装置10は、図1に示すように、主として、シールドボックス11と、コンベア(搬送コンベア)12と、遮蔽カーテン16と、タッチパネル機能付きのモニタ(表示装置)26と、を備えている。そして、その内部には、図3に示すように、X線照射器(X線照射部)13と、X線ラインセンサ(ラインセンサ)14と、制御コンピュータ(判定部、キャリブレーション実行部、ヒストグラム作成部、制御部、画像作成部、画像処理部)20(図4参照)とを備えている。
【0031】
[シールドボックス11]
シールドボックス11は、商品Gの入口側と出口側の双方の面に、商品を搬出入するための開口11aを有している。このシールドボックス11の中に、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサ14、制御コンピュータ20などが収容されている。
また、開口11aは、図1に示すように、シールドボックス11の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽カーテン16によって塞がれている。この遮蔽カーテン16は、鉛を含むゴム製のノレン部分を有しており、商品が搬出入されるときには商品によって押しのけられる。
【0032】
また、シールドボックス11の正面上部には、モニタ26の他、キーの差し込み口や電源スイッチが配置されている。
[コンベア12]
コンベア12は、シールドボックス11内において商品Gを所定の方向へ搬送するものであって、図4の制御ブロックに含まれるコンベアモータ12fによって駆動される。コンベア12による搬送速度は、作業者が入力した設定速度になるように、制御コンピュータ20によるコンベアモータ12fのインバータ制御によって細かく制御される。
【0033】
また、コンベア12は、図3に示すように、コンベアベルト12a、コンベアフレーム12bを有しており、シールドボックス11に対して取り外し可能な状態で取り付けられている。これにより、食品等の検査を行う場合においてシールドボックス11内を清潔に保つために、コンベアを取り外して頻繁に洗浄することができる。
コンベアベルト12aは、無端状ベルトであって、ベルトの内側からコンベアフレーム12bによって支持されている。そして、コンベアモータ12fの駆動力を受けて回転することで、ベルト上に載置された物体を所定の方向に搬送する。
【0034】
コンベアフレーム12bは、無端状のベルトの内側からコンベアベルト12aを支持するとともに、図3に示すように、コンベアベルト12aの内側の面に対向する位置に、搬送方向に対して直角な方向に長く開口した開口部12cを有している。開口部12cは、コンベアフレーム12bにおける、X線照射器13とX線ラインセンサ14とを結ぶ線上に形成されている。換言すれば、開口部12cは、コンベアフレーム12bにおけるX線照射器13からのX線照射領域に、商品Gを透過したX線がコンベアフレーム12bによって遮蔽されないように形成されている。
【0035】
[X線照射器13]
X線照射器13は、図3に示すように、コンベア12の上方に配置されており、コンベアフレーム12bに形成された開口部12cを介して、コンベア12の下方に配置されたX線ラインセンサ(ラインセンサ)14に向かって扇形形状にX線を照射する(図3の斜線部参照)。
【0036】
[X線ラインセンサ14]
X線ラインセンサ14は、コンベア12(開口部12c)の下方に配置されており、商品Gやコンベアベルト12aを透過してくるX線を検出する。このX線ラインセンサ14は、図3および図5に示すように、コンベア12による搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置された複数の画素14aから構成されている。
【0037】
また、X線検査装置10内における商品Gに対するX線照射状態では、図5に示すように、その時のX線ラインセンサ14を構成する各画素14aにおいて検出されるX線量は異物に相当する部分の画素14aにおける検出結果が周囲と比較して小さくなる。そして、商品Gを搬送するコンベア12のコンベアベルト12a等にゴミや汚れ、劣化部分等が含まれる場合、あるいはコンベア12がフィンガー継手を有する場合には、図9(a)に示す正常な状態と比較して、図9(b)および図9(c)に示すようにX線ラインセンサ14における検出結果にばらつきが生じる。
【0038】
さらに、X線ラインセンサ14に含まれる画素14aは、それぞれの検出特性によって感度に誤差があるため、後述するX線検査プログラムに従って、感度の誤差を排除するためのキャリブレーションが行われる。なお、本実施形態における各画素14aのキャリブレーションの実施方法については、後段にて詳述する。
[モニタ26]
モニタ26は、フルドット表示の液晶ディスプレイである。また、モニタ26は、タッチパネル機能を有しており、初期設定や不良判断に関するパラメータ入力などを促す画面を表示する。
【0039】
また、モニタ26は、後述する画像処理が施された後のX線画像を表示する。これにより、商品Gに含まれる異物の有無、場所、大きさ等を、ユーザに対して視覚的に認識させることができる。
さらに、モニタ26は、後述するX線照射量の不安定化によってX線画像に形成される暗いスジ部分を補正する前後のX線画像や、X線照射器13の照射量の不安定化によって検査不能である旨の表示を行う。
【0040】
[制御コンピュータ20]
制御コンピュータ20は、CPU21において、制御プログラムに含まれる画像処理ルーチン、検査判定処理ルーチンなどを実行する。また、制御コンピュータ20は、CF(コンパクトフラッシュ:登録商標)25等の記憶部に、不良商品に対応するX線画像や検査結果、X線画像の補正用データ等を保存蓄積する。
【0041】
具体的な構成として、制御コンピュータ20は、図4に示すように、CPU21を搭載するとともに、このCPU21が制御する主記憶部としてROM22、RAM23、およびCF25を搭載している。CF25には、後述するキャリブレーションを行う位置として適しているか否かを判定するためのコンベア12の各位置における検出データ25aや、これに基づく判定結果ログファイル25b、X線画像を補正するための背景部分として特定された部分(画素14a)やその部分の明るさ等を記憶する補正用データ、検査画像や検査結果を記憶する検査結果ログファイル等が収納されている。
【0042】
また、制御コンピュータ20は、モニタ26に対するデータ表示を制御する表示制御回路、モニタ26のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート、外部接続端子としてのUSB24等を備えている。
そして、CPU21、ROM22、RAM23、CF25などは、アドレスバス,データバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
【0043】
さらに、制御コンピュータ20は、コンベアモータ12f、ロータリーエンコーダ12g、X線照射器13、X線ラインセンサ14、光電センサ15等と接続されている。
ロータリーエンコーダ12gは、コンベアモータ12fに装着され、コンベア12の搬送速度を検出して制御コンピュータ20に送信する。
光電センサ15は、被検査物である商品GがX線ラインセンサ14の位置にくるタイミングを検出するための同期センサであり、コンベアを挟んで配置される一対の投光器および受光器から構成されている。
【0044】
本実施形態では、制御コンピュータ20において、CPU21がROM22あるいはRAM23等の記憶部に格納されているX線検査プログラムを読み込むことにより、図6に示すように、判定部20a、キャリブレーション実行部20b、ヒストグラム作成部20c、搬送制御部(制御部)20d、画像作成部20eおよび画像処理部20fから構成される機能ブロックを形成する。
【0045】
判定部20aは、後述するX線検査プログラムに従って、コンベア12の各位置における状態がキャリブレーションを行うために適した位置であるか否かの判定を行う。
キャリブレーション実行部20bは、上記判定部20aにおいてキャリブレーションを行うために適した位置であると判定されたコンベア12の位置において、X線ラインセンサ14に含まれる各画素14aのキャリブレーションを行う。具体的には、図8(a)に示すように、商品Gが載置されていないコンベア12に対して照射されたX線をX線ラインセンサ14に含まれる各画素14aにおいて検出して得られたデータを、図8(b)に示すように均一化する。このようなキャリブレーションを実施することで、各画素14aごとに異なる感度の差を補正して、商品Gの検査を高精度に実施することができる。
【0046】
ヒストグラム作成部20cは、後述するX線検査プログラムに従って、コンベア12の各位置における状態がキャリブレーションを行うために適した位置であるか否かの判定を行うために、各位置における各画素14aの検出結果のヒストグラム(図10(a)〜図10(c)参照)を作成する。
搬送制御部20dは、コンベア12の搬送速度、搬送開始および停止等のタイミングを制御する装置であって、後述するX線検査プログラムに従って実施された判定結果に基づいて、キャリブレーションを実施するために適していないと判定された劣化や傷等を含む位置を避けて商品Gが搬送されるようにコンベア12を制御する。
【0047】
画像作成部20eは、図5に示すX線ラインセンサ14に含まれる各画素14aにおける検出結果に基づいて、異物混入検査を行うためのX線画像を作成する。
画像処理部20fは、画像作成部20eにおいて作成されたX線画像から背景部分を除去したり、キャリブレーションの結果を反映させたり、異物部分を発見し易くするための画像処理を行う。なお、本実施形態では、上記判定部20aによる判定結果に基づいて、キャリブレーションを実施した後、コンベア12上に載置された商品Gに対して照射されたX線を検出して異物混入検査を実施する際には、後述するコンベア12におけるキャリブレーションを実施するために適した位置であるか否かの判定用に取得した検出結果を用いて、上記画像処理部20fによってX線画像から背景部分を除去することが可能である。
【0048】
<制御コンピュータ20によるコンベア12の位置ごとの状態判定>
本実施形態では、上述した制御コンピュータ20において、CPU21がX線検査プログラムを読み込んで実行される図7に示すフローに従って、コンベア12の各停止位置における状態を判定した後、X線ラインセンサ14の各画素14aの感度誤差のキャリブレーションを実行する。
【0049】
すなわち、ステップS1では、X線ラインセンサ14において、商品Gをコンベア12上に載置せず、X線を照射していない状態で各画素のオフセットデータを取得する。
次に、ステップS2では、商品Gが載置されていない状態でコンベア12を作動させる。
次に、ステップS3では、商品Gが載置されていない状態でコンベア12に対してX線照射器13からX線を照射する。
【0050】
次に、ステップS4では、コンベア12を複数の所定位置において停止させながらX線ラインセンサ14においてX線の検出を行い、コンベア12が1周したところでコンベア12の作動を停止させる。
次に、ステップS5では、コンベア12の各停止位置におけるX線ラインセンサ14に含まれる画素14aによる検出結果に基づいて、図10(a)〜図10(c)に示すようなヒストグラムを作成する。このヒストグラムは、コンベア12の各位置における検出結果に対応する明るさとその頻度との関係を示すものである。そして、図10(a)のヒストグラムは、コンベア12の状態が正常であって、かつ商品Gが載置されていない場合の結果を示すものである。図10(b)のヒストグラムは、例えば、コンベア12を構成するコンベアベルト12aやコンベアフレーム12bにゴミや劣化部分が含まれている場合の結果を示すものである。図10(c)のヒストグラムは、コンベア12がフィンガー継手の場合の結果を示すものである。以上のように、図10(a)〜図10(c)に示す結果から、コンベア12の状態が正常である場合には、ほぼ一定の明るさの検出結果が得られ、コンベア12の一部分にゴミや劣化部分を含む場合には、その部分にX線が吸収されたり透過したりすることで、明るさにバラつきが生じることが分かる。
【0051】
次に、ステップS6では、ステップS5において作成したヒストグラムの中心を求める。つまり、コンベア12の各停止位置における明るさの平均を求める。例えば、図10(a)に示すように、コンベア12の状態が正常である場合には、頻度が最も高い部分がヒストグラム中心となり、図10(b)に示すように、コンベア12にゴミや劣化部分が含まれる場合には正常な部分よりも暗い部分の頻度が高くなるため、ヒストグラム中心は暗い側へ移動する。換言すれば、コンベア12に含まれる劣化部分等が広範囲に及ぶほど、その停止位置においてX線ラインセンサ14における検出結果に基づいて作成されたヒストグラムは暗い側へと移動するため、コンベア12の状態が正常な位置におけるヒストグラムと比較して、その中心となる明るさの差は大きくなる。
【0052】
次に、ステップS7では、各位置における結果とヒストグラム中心とを比較して、その差を算出する。なお、ここでの処理は、ヒストグラムにおける最も頻度の高い明るさの部分を正常な状態のコンベア12を通過したX線の量として特定するものである。
次に、ステップS8では、ステップS7における差が所定量以上であるか否かに応じて、コンベア12の各停止位置における状態を判定する。具体的には、差が所定量以上である場合には、その位置を異常な部分として判定し、差が所定量未満である場合には、その位置を正常な位置として判定する。このように、ヒストグラム中心に相当する検出結果と、実際に各位置における検出結果との差が所定量以上の場合には、劣化部分等の範囲が大きいものと推定されるため、これを異常な部分(劣化や傷の部分)として判定することで、コンベア12の正常な状態の部分の中に点在する異常な部分を容易に特定することができる。
【0053】
次に、ステップS9では、ステップS8において正常な位置として判定された位置の中から1箇所を選択し、その位置において実際に検出された検出結果のデータと、ステップS1において取得されたオフセットデータとを用いて、キャリブレーションを行う。これにより、改めてキャリブレーション用の検出データを取得する必要がないため、キャリブレーションの処理を効率よく実施することができる。
【0054】
本実施形態では、以上のように、商品Gが載置されていない状態のコンベア12を作動させた状態で取得された複数の停止位置における検出結果に基づいて、コンベア12の各停止位置における状態が正常であるか否かを判定する。ここで、正常でない部分(異常な部分)を含む場合には、この異常な部分を避けるようにして正常な部分を通して取得された検出結果を用いてキャリブレーションを行う。
【0055】
これにより、コンベア12に劣化部分や傷等を含む場合でも、その場所を避けて取得された検出結果に基づいてキャリブレーションを実施することで、コンベア12の状態にかかわらず、常に高精度なキャリブレーションを実施することができる。
[本X線検査装置10の特徴]
(1)
本実施形態のX線検査装置10は、図3に示すように、コンベア12上に載置された商品Gに対して照射されたX線の透過光をX線ラインセンサ14において検出することで商品Gに含まれる異物の有無を検出する装置であって、X線ラインセンサ14に含まれる複数の画素14aのキャリブレーションを行う際には、X線検査装置10に搭載された制御コンピュータ20において形成される各種制御ブロック(図6参照)によって、コンベア12におけるキャリブレーションを実施するために適した位置を探して、その位置においてX線ラインセンサ14が検出した結果に基づいてキャリブレーションを行う。
【0056】
具体的には、図7に示すように、図6に示す判定部20aが、コンベア12における各停止位置において検出された検出結果に基づいて、各位置におけるコンベア12の状態の良否を判定した後、キャリブレーション実行部20bが、コンベア12の状態が良い位置において取得された検出結果を用いてキャリブレーションを行う。
通常、コンベアを構成する表面のコンベアベルト等が劣化している場合には、その部分にX線が吸収されたり透過量が増加したりして、その下方に配置されたX線ラインセンサにおける出力には、X線ラインセンサに含まれる各画素の感度差以外のバラつきが生じる。このため、コンベアの状態にかかわらず、正常なキャリブレーションを実施するためには、コンベアの劣化や傷の部分等を避けてキャリブレーションを実施する必要がある。
【0057】
これにより、コンベア12を構成するコンベアベルト12aやコンベアフレーム12b等の一部に劣化や傷の部分がある場合でも、このようなキャリブレーションを実施するために適さない位置を避けてキャリブレーションを実施することで、コンベア12の状態にかかわらず、常に高精度なキャリブレーションを実施することが可能になる。
(2)
本実施形態のX線検査装置10では、コンベア12の状態の判定を行う際には、図7のステップS4に示すように、コンベア12を1周させて各位置において検出データを取得する。
【0058】
これにより、コンベア12全体の中における劣化等の部分をほぼ全て認識することができるため、搬送制御部20dによって、商品Gがその劣化等の部分に載置されないようにコンベア12の搬送制御を行う等の措置を採ることができる。
(3)
本実施形態のX線検査装置10では、コンベア12の状態の判定を行う際には、図7のステップS5に示すように、各停止位置においてX線ラインセンサ14の各画素14aによって取得された検出結果に基づいて、図6に示すヒストグラム作成部20cが図10(a)〜図10(c)に示すようなヒストグラムを作成する。そして、図7のステップS6に示すように、ヒストグラムの中心を求め、この中心の明るさと各停止位置における検出結果との差の大きさに応じて、キャリブレーションを実施するために適した位置であるか否かの判定を行う。
【0059】
これにより、ヒストグラムの中心を正常な位置における検出結果に相当する明るさとして認識することで、その正常位置における明るさと差がある部分を、コンベア12におけるキャリブレーションに適さない部分として特定することができる。この結果、コンベア12に劣化や傷を含む部分が含まれる場合でも、その位置を容易に特定して正常な位置において高精度なキャリブレーションを実施することができる。
【0060】
(4)
本実施形態のX線検査装置10では、図7のステップS9に示すように、キャリブレーション実行部20bが、判定部20aにおいてキャリブレーションを実施するために適していると判定されたコンベア12の位置における検出結果を用いて、キャリブレーションを行う。
【0061】
これにより、コンベア12の状態を判定する処理を行った後、判定結果を踏まえてコンベア12が正常な位置において改めて検出結果を取得する場合と比較して、高精度なキャリブレーションの処理を効率よく行うことができる。
(5)
本実施形態のX線検査装置10では、図6に示す搬送制御部20dが、上述した判定部20aにおける判定結果としてキャリブレーションに適していないと判定されたコンベア12の位置には商品Gを載置しないようにコンベア12を制御する。
【0062】
これにより、コンベア12の劣化部分や傷を含む部分の上に商品Gが載置されることを防止して、高精度なキャリブレーションを行った後で、高精度な異物検出検査を実施することができる。
(6)
本実施形態のX線検査装置10では、上述したコンベア12の状態を判定した後でキャリブレーションを実行した後、実際に商品Gをコンベア12によって搬送しながら照射されたX線を検出して画像作成部20e(図6参照)においてX線画像を作成し、画像処理部20f(図6参照)が、画像作成部20eにおいて作成されたX線画像から背景部分を除去する際には、上記判定用に取得した検出結果を用いる。
【0063】
すなわち、上述したコンベア12の状態の判定では、コンベア12を所定の停止位置において取得された検出結果が用いられる。このため、これらの検出結果の平均値を算出し、この平均値をX線画像の背景部分として除去する。つまり、各停止位置におけるX線ラインセンサ14における検出結果の平均値を算出することで、コンベア12における正常部分の一部分に存在する劣化部分等に相当するX線透過量が少ない部分等の影響を平均化することができる。
【0064】
これにより、キャリブレーションを高精度に実施するために取得された検出データをそのまま使用してX線画像の背景部分を除去することで、商品Gに含まれる異物検出の有無の検査を、高精度に効率よく実施することが可能になる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
(A)
上記実施形態では、図7に示すように、コンベア12の各停止位置におけるX線ラインセンサ14の検出結果に基づいて作成されたヒストグラムの中央値とオフセット値とを比較して、コンベア12の各位置の状態を判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0066】
例えば、図11に示すように、ステップS11〜ステップS13において、図7に示すステップS1〜ステップS3までと同様の処理を行い、ステップS14においてコンベア12を作動させた状態でX線ラインセンサ14においてX線を検出した後、ステップS15において各画素14aにおける検出結果の平均値を算出する。そして、ステップS16において、この各画素14aにおける検出結果の平均値と、X線非照射時における各画素の出力値(オフセット値)との差を算出し、ステップS17において、この差をラインセンサの各画素におけるX線検出レンジとして設定し、キャリブレーションを実行してもよい。
【0067】
この場合でも、コンベア12を作動させながら各画素14aにおいて検出されたX線量の平均値をとることにより、コンベア12に含まれるコンベアベルト12aの劣化等により状態が悪い部分を平均化して除去することができる。この結果、コンベア12の劣化や傷等の状態にかかわらず、正確なキャリブレーションを実施することが可能になる。
(B)
上記実施形態では、コンベア12における適正な位置を特定するために複数の位置において取得された検出データをそのまま用いてキャリブレーションを行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
例えば、図12のフローチャートに示すように、コンベア12の複数の停止位置においてX線ラインセンサ14によって取得された検出データに基づいてヒストグラムを作成し、コンベア12における適正な位置を特定した後(ステップS21〜ステップS28参照)、ステップS29において、キャリブレーションを実施するために適している(状態がよい)と判定された位置までコンベア12を回転させた後、ステップS30において、その位置において新たにX線を検出してキャリブレーションを実施してもよい。
【0069】
この場合には、搬送コンベアにおける劣化や傷の部分を避けてキャリブレーションを行うことができるため、上記実施形態と同様に、高精度なキャリブレーションを実施することができる。
(C)
上記実施形態では、キャリブレーションを行うために不適正な位置を特定するために、コンベア12を1周させて複数の位置においてX線ラインセンサ14によって検出データを取得する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
例えば、上記不適正な位置を特定するために、搬送コンベアを作動させ、複数の位置において取得した検出データに基づいて適正な位置が特定された場合には、そこで搬送コンベアの作動および検出データの取得を終了してもよい。
この場合には、不適正な位置を避けて適正な位置を特定した時点で下流側における上記検出データの取得を行わないで済むため、キャリブレーションを行うために適正な位置を特定するために要する時間を短縮して、より効率よく高精度なキャリブレーションを実施することができる。
【0071】
(D)
上記実施形態では、キャリブレーションを行うために適していないと判定されたコンベア12の位置に商品Gが載置されないようにするために、搬送制御部20dがコンベア12を制御する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、判定部20aにおける判定結果を踏まえ、キャリブレーションを行うために適していないと判定されたコンベア12の位置に商品Gが載置されないようにする方法としては、コンベア12を制御するのではなく、コンベア12に対して商品Gを搬送してくる上流側の装置を制御するようにしてもよい。この場合には、制御コンピュータ20の判定部20aにおける判定結果を上流側の装置に対して送信することで、コンベア12に対して商品Gを搬入するタイミングを変化させて、不適正なコンベア12の位置へ商品Gが載置されないようにすることができる。
【0072】
(E)
上記実施形態では、1052個の画素を含むX線ラインセンサ14を例として挙げて説明した。
しかし、本発明では、ラインセンサに含まれる画素の数としては、これに限定されるものではなく、1052画素よりも少ない画素を含むラインセンサ、あるいは1052画素よりも多い画素を含むラインセンサを用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のX線検査装置は、搬送コンベアの状態に関わらず、常に高精度なキャリブレーションを実施することができるという効果を奏することから、搬送コンベアを搭載した各種X線検査装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の外観斜視図。
【図2】X線検査装置の前後の構成を示す図。
【図3】X線検査装置のシールドボックス内部の簡易構成図。
【図4】図1のX線検査装置に搭載された制御コンピュータの構成を示すブロック図。
【図5】図1のX線検査装置によるX線検査の原理を示す模式図。
【図6】図4の制御コンピュータ内に形成される機能ブロックを示すブロック図。
【図7】図4の制御コンピュータにおいてX線検査プログラムが読み込まれて実行されるキャリブレーションの流れを示すフローチャート。
【図8】(a),(b)は、図1のX線検査装置に含まれるX線ラインセンサのキャリブレーションの原理を示す説明図。
【図9】(a)〜(c)は、コンベアの状態に応じて変化するX線ラインセンサにおける検出結果の例を示すグラフ。
【図10】(a)〜(c)は、図9(a)〜図9(c)に示す検出結果のグラフに基づいて作成されたヒストグラムを示す図。
【図11】本発明の他の実施形態に係るキャリブレーションの流れを示すフローチャート。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係るキャリブレーションの流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0075】
10 X線検査装置
11 シールドボックス
11a 開口
12 コンベア(搬送コンベア)
12a コンベアベルト
12b コンベアフレーム
12c 開口部
12f コンベアモータ
12g ロータリーエンコーダ
13 X線照射器(X線照射部)
14 X線ラインセンサ(ラインセンサ)
14a 画素
15 光電センサ
16 遮蔽カーテン
20 制御コンピュータ(判定部、キャリブレーション実行部、ヒストグラム作成部、制御部、画像作成部、画像処理部)
20a 判定部
20b キャリブレーション実行部
20c ヒストグラム作成部
20d 搬送制御部(制御部)
20e 画像作成部
20f 画像処理部
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 USB
25 CF(コンパクトフラッシュ:登録商標)
26 モニタ
G 商品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に対して照射されたX線の透過光を検出して前記被検査物の検査を行うX線検査装置であって、
前記被検査物を所定の方向に搬送する搬送コンベアと、
前記搬送コンベアによって搬送される前記被検査物に対してX線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部から照射されたX線を、前記搬送コンベアを介して検出する複数の画素を含むラインセンサと、
前記搬送コンベアに前記被検査物を載置しない状態で前記搬送コンベアの各位置ごとに取得された前記X線照射器から照射されたX線の前記ラインセンサにおける検出結果に基づいて、前記搬送コンベアの各位置が前記ラインセンサのキャリブレーションを行うのに適した位置であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部において前記キャリブレーションを行うのに適した位置と判定された位置において前記ラインセンサの検出結果に基づいて前記キャリブレーションを行うキャリブレーション実行部と、
を備えているX線検査装置。
【請求項2】
前記搬送コンベアの各位置が前記ラインセンサの前記キャリブレーションを行うのに適した位置であるか否かを判定するためのデータを取得する際には、前記搬送コンベアを1周させる、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記搬送コンベアの各位置において、前記ラインセンサに含まれる各画素ごとに取得された検出データに基づいてヒストグラムを作成するヒストグラム作成部をさらに備えており、
前記判定部は、前記ヒストグラムの中心を基準として前記判定を行う、
請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記キャリブレーション実行部は、前記判定部における判定用に取得された前記ラインセンサにおける検出結果を用いて、前記キャリブレーションを実行する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記キャリブレーション実行部は、前記判定部における判定後に、前記ラインセンサにおいて前記キャリブレーション用のデータを新たに取得する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記搬送コンベアを制御する制御部をさらに備えており、
前記制御部は、前記判定部において不適と判定された位置に前記被検査物を搬入しないように前記搬送コンベアを制御する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記被検査物に対して照射されたX線の前記ラインセンサにおける検出結果に基づいてX線画像を作成する画像作成部と、
前記被検査物の検査を行う場合には、前記判定を行うために前記ラインセンサにおいて取得された検出データに基づいて、前記画像作成部において作成された前記X線画像に対して減算処理を行う画像処理部と、
をさらに備えている、
請求項1から6のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項8】
被検査物に対して照射されたX線の透過光を検出して前記被検査物の検査を行うX線検査装置であって、
前記被検査物を所定の方向に搬送する搬送コンベアと、
前記搬送コンベアによって搬送される前記被検査物に対してX線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部から照射されたX線を検出するラインセンサと、
前記X線照射部からX線を照射して、前記被検査物を載置せずに前記搬送コンベアを作動させた状態で前記ラインセンサに含まれる複数の画素において検出されたX線量の平均値を算出し、前記平均値に基づいて前記ラインセンサのキャリブレーションを行うキャリブレーション実行部と、
を備えているX線検査装置。
【請求項9】
被検査物に対して照射されたX線の透過光を検出して前記被検査物の検査を行うX線検査プログラムであって、
搬送コンベアに前記被検査物を載置しない状態で前記搬送コンベアの各位置ごとに取得されたX線のラインセンサによる検出結果に基づいて、前記搬送コンベアの各位置が前記ラインセンサのキャリブレーションを行うのに適した位置であるか否かを判定する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて前記キャリブレーションを行うのに適した位置と判定された位置における前記ラインセンサの検出結果に基づいてキャリブレーションを行う第2のステップと、
を備えているX線検査方法をコンピュータに実行させるX線検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−26198(P2008−26198A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200283(P2006−200283)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】