説明

X線検査装置

【課題】多列の物品の検査における誤検査を防止する。
【解決手段】X線検査装置10は、コンベア12と、X線照射器13と、X線ラインセンサ14と、品質検査部21cと、初期設定部21bとを備える。コンベア12は、左右方向に並ぶ3つの商品G1〜G3を所定の搬送方向に搬送する。左右方向とは、コンベア12の搬送方向を基準とする。X線照射器13は、商品G1〜G3に向けてX線を扇状に照射する。X線ラインセンサ14は、商品G1〜G3を透過したX線を受光する。品質検査部21cは、X線ラインセンサ14が受光したX線の濃度値に基づいて、各商品G1〜G3を検査する。初期設定部21bは、商品G1〜G3間の左右方向の適正な間隔を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関し、特に、多列の物品を検査するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の商品の生産ラインにおいては、不良品が出荷されないようにするために、X線検査装置によって検査が為されることがある。このようなX線検査装置は、商品をコンベア等によって搬送しながら商品に向けてX線を照射し、商品を透過したX線の濃度値を検出し、検出した濃度値に基づいて商品の異常の有無を検査する。例えば、検出した濃度値が所定の閾値を下回る場合に、X線を大きく減衰させる異物の存在を確認することができる。
【0003】
特許文献1のX線検査装置では、検体となる商品が多列に搬送され、複数の商品が扇状に広がるX線の照射範囲を略同時に通過するようになっている。
【特許文献1】特開2003−139723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多列の商品の検査においては、X線の照射範囲を略同時に通過する複数の商品どうしが互いに近づきすぎてしまうと、隣接する商品の像どうしが重なり合ってしまうことがある。X線の照射範囲が扇状に広がっている場合には、X線が商品を斜めに透過し得、その結果、ある列の商品を透過したX線が、隣接する別の列の商品を透過してしまうことがあるからである(図8(b)参照)。かかる場合、各商品の異常が正しく検査されなくなってしまう。
【0005】
本発明の課題は、多列の物品の検査における誤検査を防止するX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係るX線検査装置は、搬送部と、X線源と、X線受光部と、検査部と、判断部とを備える。搬送部は、第1方向に並ぶ複数の物品を第1方向と交差する第2方向に搬送する。X線源は、物品に向けてX線を扇状に照射する。X線受光部は、物品を透過したX線を受光する。検査部は、X線受光部が受光したX線の濃度値に基づいて、各物品を検査する。判断部は、複数の物品間の第1方向の適正な間隔を判断する。
【0007】
上述したとおり、従来の方式では、搬送方向(第2方向)に交差する方向(第1方向)に並ぶ複数の物品にX線を扇状に照射して物品の検査を行う場合、これらの物品どうしが第1方向に近づきすぎてしまうと、ある物品の像が別の物品の像として認識され得る。第1発明に係るX線検査装置は、物品間の第1方向の適正な間隔を判断する機能を有している。これにより、多列の物品の検査において、物品間の第1方向の間隔が不適となることに由来する誤検査を防止することができる。
【0008】
第2発明に係るX線検査装置は、第1発明に係るX線検査装置であって、適正な間隔とは、所定の最小距離以上の長さである。
【0009】
ここでは、物品間の第1方向の適正な間隔が所定の最小距離以上の長さとなる。これにより、物品どうしが第1方向に近づきすぎてしまうことに由来する誤検査を防止することができる。
【0010】
第3発明に係るX線検査装置は、第2発明に係るX線検査装置であって、判断部は、適正な間隔に基づいて、検査部による各物品の検査の可否をさらに判断する。
【0011】
ここでは、各物品を検査部が正しく検査できるか否かが判断される。
【0012】
第4発明に係るX線検査装置は、第2発明又は第3発明に係るX線検査装置であって、間隔調整部をさらに備える。間隔調整部は、X線源の上流側に位置し、複数の物品間の第1方向の実際の間隔を適正な間隔となるように調整する。
【0013】
ここでは、X線源の上流側で、複数の物品間の第1方向の実際の間隔が、適正な間隔となるように調整される。したがって、物品は、第1方向に適切な間隔をあけた状態でX線の照射範囲を通過することになる。これにより、X線の照射範囲内で、物品どうしが第1方向に近づきすぎてしまうのを防止することができる。
【0014】
第5発明に係るX線検査装置は、第1発明から第4発明のいずれかに係るX線検査装置であって、判断部は、物品の形状に基づいて、適正な間隔を判断する。
【0015】
ここでは、物品間の第1方向の適正な間隔を、物品の形状に基づいて判断することができる。
【0016】
第6発明に係るX線検査装置は、第5発明に係るX線検査装置であって、判断部は、物品の上下方向の長さに基づいて、適正な間隔を判断する。
【0017】
ここでは、物品間の第1方向の適正な間隔を、物品の上下方向の長さに基づいて判断することができる。
【0018】
第7発明に係るX線検査装置は、第5発明又は第6発明に係るX線検査装置であって、記憶部をさらに備える。記憶部は、物品の多種類の形状に対応する適正な間隔を記憶する。判断部は、記憶部を参照して、適正な間隔を判断する。
【0019】
このX線検査装置は、物品の形状と、当該形状を有する物品間の第1方向の適正な間隔とを対応付けた情報を保持しており、当該情報に基づいて物品間の第1方向の適正な間隔を判断することができる。
【0020】
第8発明に係るX線検査装置は、第4発明に係るX線検査装置であって、間隔調整部は、第1方向に最小距離以上離れて配置される2つの壁部材を有する。
【0021】
ここでは、X線源の上流側に、2つの壁部材が第1方向に所定の最小距離以上離れた状態で配置される。このため、第1方向に隣接する2つの壁部材の外側を通過する物品どうしは、第1方向に所定の最小距離以上の間隔をあけた状態でX線の照射範囲に達する。したがって、ここでは、第1方向に所定の最小距離以上の間隔をあけた状態の物品をX線の照射範囲に流すことができる。
【0022】
第9発明に係るX線検査装置は、第4発明に係るX線検査装置であって、間隔調整部は、第1方向に最小距離以上の幅を有する壁部材を有する。
【0023】
ここでは、X線の上流側に、第1方向に所定の最小距離以上の幅を有する壁部材が配置される。このため、壁部材の両側を通過する物品どうしは、第1方向に所定の最小距離以上の間隔をあけた状態でX線の照射範囲に達する。したがって、ここでは、第1方向に所定の最小距離以上の間隔をあけた状態の物品をX線の照射範囲に流すことができる。
【0024】
第10発明に係るX線検査装置は、第1発明から第9発明のいずれかに係るX線検査装置であって、出力部をさらに備える。出力部は、判断部による判断結果を出力する。
【0025】
ここでは、物品間の第1方向の適正な間隔など、判断部による判断結果がオペレータに向けて出力される。これにより、例えば、オペレータは、第9発明における2つの壁部材間の距離を調節したり、第10発明における適当な幅の壁部材を用意したりが可能になる。したがって、ここでは、物品間の第1方向の間隔が不適となることに由来する誤検査を防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るX線検査装置は、物品間の第1方向の適正な間隔を判断する機能を有している。これにより、多列の物品の検査において、物品間の第1方向の間隔が不適となることに由来する誤検査を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態および第2実施形態にかかるX線検査装置10,110について説明する。
【0028】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るX線検査装置10は、食品等の商品Gの生産ラインに組み込まれており、商品GにX線を照射することにより商品Gの品質検査を行う装置である。X線検査装置10は、最大で3列の商品Gを検査することが可能ないわゆる多列検査装置である。以下では、主として、商品Gが3列に配列される場合を例に説明するが、左右方向に並ぶ3つの商品Gのうち、最左の商品Gを商品G1、中央の商品Gを商品G2、最右の商品Gを商品G3とする。なお、本明細書中における左右は、コンベア12の搬送方向についての左右をいうものとする。
【0029】
検体となる商品Gは、図4に示すように、前段コンベア60によってX線検査装置10のところまで次々に運ばれてくる。X線検査装置10における商品Gの品質検査の結果は、X線検査装置10の下流側に配置されている振分機構70へと送られる。振分機構70は、X線検査装置10において良品と判断された商品Gを正規のラインコンベア80へと送り、X線検査装置10において不良品と判断された商品Gを不良品貯留コンベア90へと送る。
【0030】
図1、図2および図5に示すように、X線検査装置10は、主として、シールドボックス11と、コンベア12と、X線照射器13と、X線ラインセンサ14と、商品位置調整機構40と、モニタ30と、制御コンピュータ20とから構成されている。
【0031】
〔各部の構成〕
(1)シールドボックス
シールドボックス11の両側面には、商品Gをシールドボックス11の内外に搬入出するための開口11aが形成されている。開口11aは、シールドボックス11の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽ノレン(図示せず)によって塞がれている。この遮蔽ノレンは、鉛を含むゴムから成形されており、商品Gが開口11aを通過する時に商品Gによって押しのけられるようになっている。
【0032】
シールドボックス11内には、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサ14および制御コンピュータ20等が収容されている。また、シールドボックス11の正面上部には、モニタ30の他、キーの差し込み口および電源スイッチ等が配置されている。
【0033】
(2)コンベア
コンベア12は、商品Gを搬送するものであり、図1に示すように、シールドボックス11の両側面に形成された開口11aを貫通するように配置されている。そして、コンベア12は、コンベアモータ12a(図5参照)によって駆動される駆動ローラによって無端状のベルトを回転させながら、ベルト上に載置された商品Gを搬送する。
【0034】
コンベア12による商品Gの搬送速度は、オペレータの設定どおりになるように、制御コンピュータ20によるコンベアモータ12aのインバータ制御によって細かく制御される。また、コンベアモータ12aには、コンベア12による搬送速度を検出して制御コンピュータ20に送るエンコーダ12b(図5参照)が装着されている。
【0035】
(3)X線照射器
X線照射器13は、図2、図7(a)および図8(a)に示すように、コンベア12の左右方向の中央の上方に配置されており、下方のX線ラインセンサ14に向けて扇状の照射範囲YにX線を照射する。照射範囲Yは、搬送方向に略直交する平面内に形成され、扇状の照射範囲Yの中心角θ1を二等分する直線は、鉛直方向に平行する。したがって、X線の照射方向は、鉛直方向に対して最大でθ1/2傾くことになる。
【0036】
(4)X線ラインセンサ
X線ラインセンサ14は、図7(a)および図8(a)に示すように、コンベア12の下方に配置されており、主として多数の画素センサ14aから構成されている。これらの画素センサ14aは、左右方向に一列に並んで配置されている。各画素センサ14aは、商品Gやコンベア12を透過したX線を検出し、X線透視像信号を出力する。X線透視像信号は、X線の明るさ(濃度値)を示す信号である。
【0037】
(5)商品位置調整機構
商品位置調整機構40は、商品G1〜G3の左右方向の位置の調整を行う。より正確には、商品G1と商品G2との左右方向の間隔U1、および、商品G2と商品G3との左右方向の間隔U2の調整を行う。商品位置調整機構40は、X線照射器13およびX線ラインセンサ14よりも、コンベア12の搬送方向について上流側に配置されている。したがって、左右方向に並ぶ3つの商品G1〜G3は、商品位置調整機構40によって左右方向に位置合わせされた状態で、X線の照射範囲Yを略同時に通過することになる。
【0038】
図6(a)および図6(b)に示すように、商品位置調整機構40は、第1ガイド板51と、第2ガイド板52と、第3ガイド板53と、第4ガイド板54と、4枚のガイド板51〜54をそれぞれ左右方向に平行移動させる第1ネジ棒61と、第2ネジ棒62と、第3ネジ棒63と、第4ネジ棒64とを有している。
【0039】
ガイド板51〜54は、それぞれ逆T字状の薄板であり、逆T字状の面を互いに対向させた状態でこの順に左から右に並んでいる。より具体的には、ガイド板51〜54は、それぞれ左右方向から見て、コンベア12の搬送方向に細長く伸びる略矩形状の下部分51a〜54aと、下部分51a〜54aからそれぞれ鉛直上方へと細長く伸びる略矩形状の上部分51b〜54bとを有している。下部分51a〜54aと、上部分51b〜54bとは、それぞれ一体的に形成されている。下部分51a〜54aは、互いに同じ形状を有しており、左右方向から見て互いに重なるように配置されている。一方、上部分51b〜54bは、互いに同じ形状を有しているが、左右方向から見て互いにずれて配置されている。
【0040】
そして、上部分51b〜54bの上端部付近には、それぞれ螺旋状の溝を有するネジ穴51c〜54cが形成されており、ネジ穴51c〜54cをそれぞれネジ棒61〜64が左右方向に貫通している。ネジ棒61〜64は、ネジ穴51c〜54cの螺旋状の溝に対応する形状を有している。ネジ棒61〜64の左端部には、それぞれネジ棒61〜64をその中心軸について回転させ易いよう、つまみ61a〜64aが取り付けられている。つまみ61a〜64aを時計周りに回転させると、それぞれガイド板51〜54が左方向に平行移動し(すなわち、つまみ61a〜64aから離れるように移動し)、つまみ61a〜64aを反時計回りに回転させると、それぞれガイド板51〜54が右方向に平行移動する(すなわち、つまみ61a〜64aに近づくように移動する)。
【0041】
ガイド板51〜54は、それぞれコンベア12の搬送面(ベルト面)との間にわずかな間隔を空けた状態で、ネジ棒61〜64に吊り下げられている。これにより、コンベア12のベルトの回転は、ガイド板51〜54との摩擦によって妨げられることがないようになっている。
【0042】
4枚のガイド板51〜54は、各商品G1〜G3用の通路を並列に規定する。より具体的には、第1ガイド板51の左側の空間S1は、商品G1の通路となり、第2ガイド板52の右側かつ第3ガイド板53の左側の空間S2は、商品G2の通路となり、第4ガイド板54の右側の空間S3は、商品G3の通路となる。
【0043】
ガイド板51〜54が図6(a)および図6(b)に示すような位置にセットされている場合、ガイド板51〜54の上流側まで搬送されてきた3つの商品G1〜G3は、それぞれ空間S1〜S3内に分かれて入り、空間S1〜S3内を同様の速度で前進する。商品G1〜G3は、それぞれ空間S1〜S3を抜けると、直ちにX線の照射範囲Yに入る。したがって、3つの商品G1〜G3が照射範囲Yを略同時に通過する間、左側の商品G1と中央の商品G2との間には、第1ガイド板51と第2ガイド板52との左右方向の間隔T1以上の距離が左右方向に確実に保たれ、中央の商品G2と右側の商品G3との間には、第3ガイド板53と第4ガイド板54との左右方向の間隔T2以上の距離が左右方向に確実に保たれることになる。
【0044】
(6)モニタ
モニタ30は、液晶ディスプレイであり、X線画像P(図7(b)および図8(b)参照)等の各種データの表示を行う。また、モニタ30は、タッチパネル機能を有しており、オペレータからの検査パラメータ等の各種データの入力を受け付ける。
【0045】
(7)制御コンピュータ
制御コンピュータ20は、図5に示すように、CPU(中央演算処理装置)21、ROM(リードオンリーメモリ)22、RAM(ランダムアクセスメモリ)23およびHDD(ハードディスク)24を搭載している。
【0046】
CPU21は、ROM22およびHDD24に格納されている各種プログラムを実行する。HDD24には、検査パラメータおよび検査結果が保存蓄積される。検査パラメータについては、モニタ30のタッチパネル機能を使ったオペレータからの入力によって設定及び変更が可能である。
【0047】
さらに、制御コンピュータ20には、モニタ30でのデータ表示を制御する表示制御回路(図示せず)、モニタ30に入力されたデータを取り込む入力制御回路(図示せず)、プリンタ等の外部機器およびLAN等のネットワークとの接続を可能にする通信ポート(図示せず)なども搭載されている。
【0048】
そして、制御コンピュータ20の各部21〜24は、アドレスバスやデータバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
【0049】
また、制御コンピュータ20は、コンベアモータ12a、エンコーダ12b、光電センサ15、X線照射器13およびX線ラインセンサ14等に接続されている。光電センサ15は、商品GがX線の照射範囲Yを通過するタイミングを検知するための同期センサであり、主として、コンベア12を挟んで配置される一対の投光器および受光器から構成されている。
【0050】
HDD24には、画像生成モジュール、初期設定モジュールおよび品質検査モジュールを含む検査プログラムが格納されている。そして、CPU21は、HDD24から画像生成モジュール、初期設定モジュールおよび品質検査モジュールを読み出して実行することにより、それぞれ画像生成部21a、初期設定部21bおよび品質検査部21c(図5参照)として動作する。
【0051】
a)画像生成部
画像生成部21aは、X線ラインセンサ14から出力されるX線透視像信号に基づいて、3つの商品G1〜G3を写すX線画像P(図7(b)および図8(b)参照)を生成する。
【0052】
より具体的には、画像生成部21aは、商品G1〜G3がX線の照射範囲Yを通過する間にX線ラインセンサ14の各画素センサ14aから出力されるX線透視像信号を細かい時間間隔で取得する。なお、商品G1〜G3がX線の照射範囲Yを通過するタイミングは、光電センサ15からの信号により判断される。続いて、画像生成部21aは、細かい時間間隔毎のX線透視像信号をマトリクス状に時系列につなぎ合わせる。これにより、3つの商品G1〜G3を写す1枚のX線画像Pが生成される。
【0053】
図7(b)に示すX線画像Pは、商品G1と商品G2との左右方向の間隔U1が最小距離U0よりも広くなっている場合(図7(a)参照)に撮像された画像である。一方、図8(b)に示すX線画像Pは、商品G1と商品G2との左右方向の間隔U1が最小距離U0よりも狭くなっている場合(図8(a)参照)に撮像された画像である。X線画像P上において暗く写っている領域R1は左側の商品G1の像であり、領域R2は中央の商品G2の像であり、領域R3は右側の商品G3の像である。なお、図7(a)および図8(a)の両方の場合において、商品G2と商品G3との左右方向の間隔U2は、最小距離Uよりも広くなっている。
【0054】
図8(b)のX線画像P上では、商品G1の像と商品G2の像とが重なり合っている。商品G1と商品G2とが実際に一定の間隔U1(U0>U1>0)をあけているのにも関わらず、商品G1の像と商品G2の像とが重なり合ってしまうのは、X線がX線照射器13から鉛直方向に対して常に平行に放射されるのではなく、最大でθ1/2傾いて放射されるからである。その結果、図8(a)および(b)に示すように、中央の商品G2の左上に異物が含まれている場合であっても、X線画像Pを見ただけでは、異物が左側の商品G1に含まれているのか、中央の商品G2に含まれているのかを判断することができなくなる。
【0055】
ところが、商品G1,G2が左右方向に最小距離U0以上の間隔U1を保っている図7(a)および図7(b)の場合には、異物が混入しているのは左側の商品G1ではなく、中央の商品G2であることをX線画像Pから読み取ることができる。商品G1の像と商品G2の像とが重なり合っていないからである。
【0056】
b)品質検査部
品質検査部21cは、画像生成部21aにより生成されるX線画像Pに画像処理を施すことにより、各商品G1〜G3への異物の混入を検査する。品質検査部21cにより検出される異物(図3参照)は、主として金属片など、X線を大きく減衰させるような異物である。
【0057】
c)初期設定部
品質検査部21cによる本検査時に必要となる検査パラメータは、検体となる商品G1〜G3に応じて異なる。初期設定部21bは、品質検査部21cによる本検査のための初期設定を行う。
【0058】
〔品質検査の流れ〕
以下、商品G1〜G3の品質検査の流れを説明する。
【0059】
(1)初期設定
オペレータは、本検査の前に、商品G1〜G3に合わせて初期設定を行う必要がある。
【0060】
X線画像Pに基づいて各商品G1〜G3の品質検査を行うためには、X線画像P上に商品G1〜G3の像を互いに重なり合わないように写し出すことが重要である。そして、そのためには、商品G1と商品G2との間隔U1、および、商品G2と商品G3との間隔U2を、どちらも最小距離U0以上の適切な間隔とする必要がある。
【0061】
最小距離U0については、X線照射器13からのX線の傾きが最大でθ1/2であることを考慮すると、
U0=H1・tan(θ1/2)・・・(式1)
とすることができる。ただし、H1は商品G1〜G3の鉛直方向の高さである。
【0062】
つまり、初期設定時には、U1>U0、かつ、U2>U0となるように、商品位置調整機構40の設定を行う必要がある。商品位置調整機構40の設定とは、主として、各ガイド板51〜54を左右方向に位置合わせする作業である。ガイド板51〜54の左右方向の適切な位置は、初期設定部21bによる初期設定機能を利用しつつ、オペレータが手動で決定する。
【0063】
オペレータは、初期設定を行うに当たり、モニタ30のタッチパネル機能を用いて初期設定部21bを起動させる。初期設定部21bは、まず、商品G1〜G3の鉛直方向の高さH1の入力をオペレータに求める画面をモニタ30に表示させる。オペレータが高さH1を入力すると、初期設定部21bは、(式1)に基づき、最小距離U0を算出する。なお、θ1の値は、予めHDD24に格納されているものとする。
【0064】
続いて、初期設定部21bは、第1ガイド板51と第2ガイド板52との間隔T1、および、第3ガイド板53と第4ガイド板54との間隔T2の入力をオペレータに求める画面をモニタ30に表示させる。オペレータが間隔T1,T2を入力すると、初期設定部21bは、間隔T1と最小距離U0との大小関係、および、間隔T2と最小距離U0との大小関係を判断する。そして、T1>U0、かつ、T2>U0となっている場合には、品質検査部21cによる各商品G1〜G3の本検査が可能であると判断し、その旨をモニタ30に表示させる。一方、T1>U0、かつ、T2>U0となっていない場合には、品質検査部21cによる各商品G1〜G3の本検査が不可能であると判断し、その旨をモニタ30に表示させる。オペレータは、本検査が不可能である旨が表示された場合には、ガイド板51〜54を左右方向に移動させて間隔T1,T2を調節し、再度、T1>U0、かつ、T2>U0となっているか否かについて初期設定部21bに判断させ、その判断結果をモニタ30に表示させる。オペレータは、このような手順を、モニタ30に本検査が可能である旨が表示されるまで繰り返す。これにより、各商品G1〜G3の適切な通路S1〜S3が規定される。
【0065】
続いて、オペレータは、異物を含まない正常な商品G1〜G3をコンベア12に流し、画像生成部21aによる画像作成機能を利用しつつ、正常な商品G1〜G3のX線画像Pを撮像する。当該X線画像P上には、先の商品位置調整機構40の設定により、商品G1〜G3の像が互いに重なることなく別々の領域R1〜R3として表われることになる。
【0066】
そして、初期設定部21bは、当該X線画像Pからエッジ(領域R1〜R3の輪郭線)を抽出し、本検査時に用いる検査パラメータとしてHDD24に保存する。さらに、初期設定部21bは、各領域R1〜R3の平均的な明るさ(濃度値)を算出し、本検査時に用いる検査パラメータとしてHDD24に保存する。
【0067】
(2)本検査
上記初期設定により、本検査を行う準備が整う。本検査中、コンベア12の搬送面上には、前段コンベア60から商品G1〜G3が次々に運ばれてくる。コンベア12の搬送面上に載せられた商品G1〜G3は、商品位置調整機構40を通り抜ける間に左右方向に位置合わせされる。その結果、商品G1〜G3は、商品G1,G2間に最小距離U0以上の間隔U1を保ち、商品G2,G3間に最小距離U0以上の間隔U2を保った状態で、X線の照射範囲Yを通過する。したがって、本検査中に撮像されるX線画像P上には、商品G1〜G3の像が互いに重なることなく別々の領域R1〜R3として表われることになる。画像生成部21aは、商品G1〜G3がX線の照射範囲Yを通過するたびに、商品G1〜G3のX線画像Pを撮像する。
【0068】
品質検査部21cは、画像生成部21aがX線画像Pを撮像するたびに当該X線画像Pに画像処理を施し、各商品G1〜G3に異物が混入しているか否かを判断する。より具体的には、品質検査部21cは、X線画像P上から各商品G1〜G3に対応する領域R1〜R3を抽出する。このとき、初期設定時にHDD24に保存されたエッジに関する検査パラメータを参照する。
【0069】
続いて、品質検査部21cは、抽出された領域R1を構成する各画素の明るさ(濃度値)を所定の閾値と比較し、少なくとも1つの画素の明るさ(濃度値)が当該閾値よりも暗いと判断される場合には、商品G1に異物が混入しているものと判断する。一方、全ての画素の明るさ(濃度値)が当該閾値よりも明るいと判断される場合には、商品G1には異物が混入していないものと判断する。なお、当該閾値は、初期設定時にHDD24に保存された領域R1の平均的な明るさ(濃度値)に基づいて決定される。
【0070】
さらに、品質検査部21cは、残りの領域R2,R3に対しても同様の画像処理を施し、商品G2,G3に異物が混入しているか否かを判断する。その後、品質検査部21cは、異物が混入していると判断した商品Gが不良品貯留コンベア90に振り分けられるよう、振分機構70に指示を送る。
【0071】
〔第1実施形態の特徴〕
左右方向に並ぶ商品G1〜G3にX線を扇状に照射する場合、商品G1〜G3どうしが左右方向に近づきすぎてしまうと、図8(b)に示すように、商品G1〜G3の像どうしが互いに重なり合ってしまう。しかしながら、X線検査装置10には、商品G1〜G3間の左右方向の適正な(最小距離U0以上の)間隔を判断する機能が搭載されている。商品G1〜G3間に適正な間隔を確保することは、商品G1〜G3の像どうしが互いに重なり合わないようにすることである。これにより、X線検査装置10では、多列の商品G1〜G3の検査において、商品G1〜G3間の左右方向の実際の間隔U1,U2が不適となることに由来する誤検査を防止することができる。
【0072】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態に係るX線検査装置110について、第1実施形態に係るX線検査装置10との相違点を中心に説明する。X線検査装置110は、商品位置調整機構40の代わりに商品位置調整機構140を、制御コンピュータ20の代わりに制御コンピュータ120を備えている点で、X線検査装置10と相違する。以下、簡単のため、X線検査装置10と共通する部位については同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0073】
〔各部の構成〕
(1)商品位置調整機構
商品位置調整機構140は、第1実施形態に係る商品位置調整機構40と同様に、商品G1と商品G2との左右方向の間隔U1、および、商品G2と商品G3との左右方向の間隔U2の調整を行う機構である。商品位置調整機構140は、X線照射器13およびX線ラインセンサ14よりも、コンベア12の搬送方向について上流側に配置されている。したがって、左右方向に並ぶ3つの商品G1〜G3は、商品位置調整機構140によって左右方向に位置合わせされた状態で、X線の照射範囲Yを略同時に通過することになる。
【0074】
商品位置調整機構140は、商品位置調整機構40の第1ネジ棒61および第4ネジ棒64を、それぞれ第1軸棒161および第4軸棒164に置換したものである。第1軸棒161および第4軸棒164は、それぞれ第1ネジ棒61および第4ネジ棒64からねじ山をなくしたものである。
【0075】
すなわち、図10(a)および図10(b)に示すように、商品位置調整機構140は、第1ガイド板51と、第2ガイド板52と、第3ガイド板53と、第4ガイド板54と、内側2枚のガイド板52,53をそれぞれ左右方向に平行移動させる第2ネジ棒62と、第3ネジ棒63と、外側2枚のガイド板51,54をそれぞれ支える第1軸棒161と、第4軸棒164と有している。内側のガイド板52,53は、第1実施形態と同様に左右方向に移動可能となっているが、外側のガイド板51,54は、第1実施形態と異なり固定されている。
【0076】
第1ガイド板51は、左右方向に伸びるX線ラインセンサ14を3等分する2点のうち左側の点の直上の位置に固定されており、第4ガイド板54は、左右方向に伸びるX線ラインセンサ14を3等分する2点のうち右側の点の直上の位置に固定されている。そして、このような第1ガイド板51および第4ガイド板54の存在により、第2ガイド板52および第3ガイド板53は、左右方向に伸びるX線ラインセンサ14を3等分する2点間のみを左右方向に移動可能になっている。
【0077】
(2)制御コンピュータ
制御コンピュータ120は、図11(a)に示すように、X線ラインセンサ14を構成する画素センサ14aを仮想的に左右方向に3等分し、3つのブロックB1〜B3に分けて管理する。ブロックB1は、左側の3分の1の画素センサ14aから構成され、ブロックB2は、中央の3分の1の画素センサ14aから構成され、ブロックB3は、右側の3分の1の画素センサ14aから構成される。そして、制御コンピュータ120は、ブロックB1に属する画素センサ14aで受光されたX線透視像信号を、左側の商品G1の品質検査に用い、ブロックB2に属する画素センサ14aで受光されたX線透視像信号を、中央の商品G2の品質検査に用い、ブロックB3に属する画素センサ14aで受光されたX線透視像信号を、右側の商品G3の品質検査に用いる。
【0078】
HDD24には、画像生成モジュール、初期設定モジュールおよび品質検査モジュールを含む検査プログラムが格納されている。そして、CPU21は、HDD24から画像生成モジュール、初期設定モジュールおよび品質検査モジュールを読み出して実行することにより、それぞれ画像生成部121a、初期設定部121bおよび品質検査部121c(図9参照)として動作する。
【0079】
a)画像生成部
画像生成部121aは、X線ラインセンサ14から出力されるX線透視像信号に基づいて、商品G1を写すX線画像P1、商品G2を写すX線画像P2、および、商品G3を写すX線画像P3(図11(b)参照)を生成する。
【0080】
より具体的には、画像生成部121aは、商品G1〜G3がX線の照射範囲Yを通過する間にX線ラインセンサ14の各画素センサ14aから出力されるX線透視像信号を、ブロックB1〜B3に対応付けて細かい時間間隔で取得する。なお、商品G1〜G3がX線の照射範囲Yを通過するタイミングは、光電センサ15からの信号により判断される。続いて、画像生成部121aは、ブロックB1に属する画素センサ14aからの細かい時間間隔毎のX線透視像信号をマトリクス状に時系列につなぎ合わせることにより、X線画像P1を生成する。同様に、ブロックB2に属する画素センサ14aからの細かい時間間隔毎のX線透視像信号をマトリクス状に時系列につなぎ合わせることにより、X線画像P2を生成する。同様に、ブロックB3に属する画素センサ14aからの細かい時間間隔毎のX線透視像信号をマトリクス状に時系列につなぎ合わせることにより、X線画像P3を生成する。これにより、3つの商品G1〜G3をそれぞれ写す3枚のX線画像P1〜P3が生成される。
【0081】
図11(b)に示すX線画像P1〜P3は、商品G1と商品G2との左右方向の間隔U1が最小距離U0よりも広くなっており、かつ、商品G2と商品G3との左右方向の間隔U2も最小距離U0よりも広くなっている場合に撮像された画像である。X線画像P1上において暗く写っている領域R1は、左側の商品G1の像であり、X線画像P2上において暗く写っている領域R2は、中央の商品G2の像であり、X線画像P3上において暗く写っている領域R3は、右側の商品G3の像である。
【0082】
b)品質検査部
品質検査部121cは、画像生成部121aにより生成されるX線画像P1〜P3に画像処理を施すことにより、各商品G1〜G3への異物の混入を検査する。品質検査部121cにより検出される異物(図3参照)は、主として金属片など、X線を大きく減衰させるような異物である。
【0083】
c)初期設定部
品質検査部121cによる本検査時に必要となる検査パラメータは、検体となる商品G1〜G3に応じて異なる。初期設定部121bは、品質検査部121cによる本検査のための初期設定を行う。
【0084】
〔品質検査の流れ〕
以下、商品G1〜G3の品質検査の流れを説明する。
【0085】
(1)初期設定
オペレータは、本検査の前に、商品G1〜G3に合わせて初期設定を行う必要がある。
【0086】
X線画像P1〜P3に基づいてそれぞれ商品G1〜G3の品質検査を行うためには、X線画像P1上に商品G1の全体像を写し出し、X線画像P2上に商品G2の全体像を写し出し、X線画像P3上に商品G3の全体像を写し出すことが必要になる。そして、そのためには、商品G1と商品G2との間隔U1、および、商品G2と商品G3との間隔U2を、どちらも最小距離U0以上の適切な間隔とする必要がある。
【0087】
最小距離U0については、
U0=H1・tan(θ2/2)・・・(式2)
とすることができる。ただし、H1は商品G1〜G3の鉛直方向の高さであり、θ2は、中央のブロックB2に属する画素センサ14aで受光されるX線の扇状の照射範囲の中心角である(図11(a)参照)。
【0088】
つまり、初期設定時には、U1>U0、かつ、U2>U0となるように、商品位置調整機構140の設定を行う必要がある。商品位置調整機構140の設定とは、主として、各ガイド板51〜54を左右方向に位置合わせする作業である。ガイド板51〜54の左右方向の適切な位置は、初期設定部121bによる初期設定機能を利用しつつ、オペレータが手動で決定する。
【0089】
オペレータは、初期設定を行うに当たり、モニタ30のタッチパネル機能を用いて初期設定部121bを起動させる。初期設定部121bは、まず、商品G1〜G3の鉛直方向の高さH1の入力をオペレータに求める画面をモニタ30に表示させる。オペレータが高さH1を入力すると、初期設定部121bは、(式2)に基づき、最小距離U0を算出する。なお、θ2の値は、予めHDD24に格納されているものとする。
【0090】
続いて、初期設定部121bは、第1ガイド板51と第2ガイド板52との間隔T1、および、第3ガイド板53と第4ガイド板54との間隔T2の入力をオペレータに求める画面をモニタ30に表示させる。オペレータが間隔T1,T2を入力すると、初期設定部121bは、間隔T1と最小距離U0との大小関係、および、間隔T2と最小距離U0との大小関係を判断する。そして、T1>U0、かつ、T2>U0となっている場合には、品質検査部121cによる各商品G1〜G3の本検査が可能であると判断し、その旨をモニタ30に表示させる。一方、T1>U0、かつ、T2>U0となっていない場合には、品質検査部121cによる各商品G1〜G3の本検査が不可能であると判断し、その旨をモニタ30に表示させる。オペレータは、本検査が不可能である旨が表示された場合には、ガイド板51〜54を左右方向に移動させて間隔T1,T2を調節し、再度、T1>U0、かつ、T2>U0となっているか否かについて初期設定部121bに判断させ、その判断結果をモニタ30に表示させる。オペレータは、このような手順を、モニタ30に本検査が可能である旨が表示されるまで繰り返す。これにより、各商品G1〜G3の適切な通路S1〜S3が規定される。
【0091】
続いて、オペレータは、異物を含まない正常な商品G1〜G3をコンベア12に流し、画像生成部121aによる画像作成機能を利用しつつ、正常な商品G1〜G3のX線画像P1〜P3を撮像する。当該X線画像P1〜P3上には、先の商品位置調整機構140の設定により、それぞれ商品G1〜G3の全体像が表われることになる。
【0092】
そして、初期設定部121bは、当該X線画像P1〜P3それぞれからエッジ(領域R1〜R3の輪郭線)を抽出し、本検査時に用いる検査パラメータとしてHDD24に保存する。さらに、初期設定部21bは、各領域R1〜R3の平均的な明るさ(濃度値)を算出し、本検査時に用いる検査パラメータとしてHDD24に保存する。
【0093】
(2)本検査
上記初期設定により、本検査を行う準備が整う。本検査中、コンベア12の搬送面上には、前段コンベア60から商品G1〜G3が次々に運ばれてくる。コンベア12の搬送面上に載せられた商品G1〜G3は、商品位置調整機構140を通り抜ける間に左右方向に位置合わせされる。その結果、商品G1〜G3は、商品G1,G2間に最小距離U0以上の間隔U1を保ち、商品G2,G3間に最小距離U0以上の間隔U2を保った状態で、X線の照射範囲Yを通過する。したがって、本検査中に撮像される3枚のX線画像P1〜P3上には、それぞれ商品G1〜G3の全体像が領域R1〜R3として表われることになる。画像生成部121aは、商品G1〜G3がX線の照射範囲Yを通過するたびに、商品G1〜G3のX線画像P1〜P3を撮像する。
【0094】
品質検査部121cは、画像生成部121aがX線画像P1〜P3を撮像するたびに当該X線画像P1〜P3に画像処理を施し、各商品G1〜G3に異物が混入しているか否かを判断する。より具体的には、品質検査部121cは、X線画像P1上から商品G1に対応する領域R1を抽出する。このとき、初期設定時にHDD24に保存されたエッジに関する検査パラメータを参照する。
【0095】
続いて、品質検査部121cは、抽出された領域R1を構成する各画素の明るさ(濃度値)を所定の閾値と比較し、少なくとも1つの画素の明るさ(濃度値)が当該閾値よりも暗いと判断される場合には、商品G1に異物が混入しているものと判断する。一方、全ての画素の明るさ(濃度値)が当該閾値よりも明るいと判断される場合には、商品G1には異物が混入していないものと判断する。なお、当該閾値は、初期設定時にHDD24に保存された領域R1の平均的な明るさ(濃度値)に基づいて決定される。
【0096】
さらに、品質検査部121cは、残りのX線画像P2,P3に対しても同様の画像処理を施し、商品G2,G3に異物が混入しているか否かを判断する。その後、品質検査部121cは、異物が混入していると判断した商品Gが不良品貯留コンベア90に振り分けられるよう、振分機構70に指示を送る。
【0097】
<第2実施形態の特徴>
第2実施形態に係るX線検査装置110には、第1実施形態に係るX線検査装置10と同様に、商品G1〜G3間の左右方向の適正な(最小距離U0以上の)間隔を判断する機能が搭載されている。商品G1〜G3間に適正な間隔を確保することは、商品G1〜G3の像どうしが互いに重なり合うことを回避することである。これにより、X線検査装置110では、多列の商品G1〜G3の検査において、商品G1〜G3間の左右方向の実際の間隔U1,U2が不適となることに由来する誤検査を防止することができる。
【0098】
なお、第2実施形態に係るX線検査装置110の、第1実施形態に係るX線検査装置10との主な相違点は、X線ラインセンサ14を構成する画素センサ14aが、制御コンピュータ20上で仮想的に3つのブロックB1〜B3に分割されている点である。そして、第2実施形態では、ブロックB1〜B3ごとに別個のX線画像P1〜P3が生成され、当該別個のX線画像P1〜P3に基づいて商品G1〜G3が別個に検査される。すなわち、商品G1を透過したX線はブロックB1に属する画素センサ14aによってのみ、商品G2を透過したX線はブロックB2に属する画素センサ14aによってのみ、商品G3を透過したX線はブロックB3に属する画素センサ14aによってのみ、受光されるようになっている。
【0099】
<その他の実施形態>
〔A〕
第1および第2実施形態では、初期設定部21b,121bが、ガイド板51,52間の間隔T1と最小距離U0との大小関係、および、ガイド板53,54間の間隔T2と最小距離U0との大小関係を判断し、当該大小関係に基づいて品質検査部21c,121cによる各商品G1〜G3の本検査の可否を判断し、当該判断結果をモニタ30に出力するようになっている。
【0100】
しかしながら、これに変えて又は加えて、初期設定部21b,121bが、最小距離U0を算出した後、ガイド板51,52間およびガイド板53,54間に最小距離U0以上の間隔を確保する必要がある旨をモニタ30に出力するようになっていてもよい。この場合、オペレータは、モニタ30に出力された最小距離U0を見て、ガイド板51,52間の間隔T1およびガイド板53,54間の間隔T2を、最小距離U0以上となるように簡易に調節することができる。
【0101】
〔B〕
第1および第2実施形態では、初期設定部21b,121bが、ガイド板51,52間の間隔T1と最小距離U0との大小関係、および、ガイド板53,54間の間隔T2と最小距離U0との大小関係を判断し、当該大小関係に基づいて品質検査部21c,121cによる各商品G1〜G3の本検査の可否を判断し、当該判断結果をモニタ30に出力するようになっている。また、ガイド板51〜54は、オペレータが手動で左右方向に移動させるようになっている。
【0102】
しかしながら、これに変えて又は加えて、制御コンピュータ20,120がガイド板51〜54の左右方向の位置を調節できるようになっており、初期設定部21b,121bが、最小距離U0を算出した後、ガイド板51,52間およびガイド板53,54間に最小距離U0以上の間隔が確保されるよう、ガイド板51〜54の左右方向の位置を自動的に調節するようになっていてもよい。
【0103】
当該実施形態を実現するためには、例えば、図12に示すように、ネジ棒61〜64それぞれにモータ61b〜64bを連結し、当該モータ61b〜64bの回転を制御コンピュータ20,120から制御可能にすればよい。
【0104】
〔C〕
第1および第2実施形態において、X線画像P,P1〜P3に施す画像処理の方法は、上述した方法に限られない。
【0105】
また、第1および第2実施形態において、品質検査部21c,121cが、X線画像P,P1〜P3に基づく異物検査以外の品質検査を実行できるようになっていてもよい。この場合、検体となる商品G1〜G3に必要となる品質検査のみを、モニタ30のタッチパネル機能を介してオペレータが選択可能になっていることが好ましい。
【0106】
X線画像P,P1〜P3に基づく異物検査以外の品質検査としては、商品G1〜G3の形状を検査する形状検査、商品G1〜G3の重量を推定する重量検査等がある。
【0107】
なお、1つの商品Gに対して多種類の品質検査を実行する場合には、全ての品質検査をクリアした商品Gのみを、最終的に良品と判断することができる。
【0108】
〔D〕
第1実施形態に係るX線検査装置10は、商品Gの1列検査および2列検査にも用いることができる。このような場合には、4枚のガイド板51〜54のうち不要なものを、適切な場所(例えば、コンベア12の左又は右側)に収納しておけばよい。
【0109】
また、逆に、ガイド板の枚数を増やすことにより、X線検査装置10を3列以上の商品Gの検査に用いることも可能である。
【0110】
〔E〕
第1および第2実施形態では、初期設定部21b,121bは、品質検査部21c,121cによる各商品G1〜G3の本検査の可否を判断するために、角度θ1,θ2の値を用いている。しかしながら、この方法に代えて、図13に示すように、X線照射器13とコンベア12の搬送面との距離H2に基づいて、品質検査部21c,121cによる各商品G1〜G3の本検査の可否を判断してもよい。
【0111】
当該実施形態では、オペレータは、初期設定を行うに当たり、モニタ30のタッチパネル機能を用いて初期設定部21b,121bを起動させる。初期設定部21b,121bは、まず、商品G1〜G3の鉛直方向の高さH1の入力をオペレータに求める画面をモニタ30に表示させる。また、初期設定部21b,121bは、角度θ1,θ2の二等分線と各ガイド板51〜51との距離A1〜A4の入力をオペレータに求める画面をモニタ30に表示させる。オペレータが高さH1および距離A1〜A4を入力すると、初期設定部21b,121bは、以下の(式3)が成立するか否かを判断する。なお、X線照射器13とコンベア12の搬送面との距離H2の値は、予めHDD24に格納されているものとする。
【0112】
A1/H2>A2/(H2−H1)
かつ
A4/H2>A3/(H2−H1)・・・(式3)
そして、(式3)が成立すると判断される場合には、品質検査部21c,121cによる各商品G1〜G3の本検査が可能であると判断し、その旨をモニタ30に表示させる。一方、(式3)が成立しないと判断される場合には、品質検査部21c,121cによる各商品G1〜G3の本検査が不可能であると判断し、その旨をモニタ30に表示させる。オペレータは、本検査が不可能である旨が表示された場合には、ガイド板51〜54を左右方向に移動させて間隔T1,T2を調節し、再度、(式3)が成立するか否かについて初期設定部21b,121bに判断させ、その判断結果をモニタ30に表示させる。オペレータは、このような手順を、モニタ30に本検査が可能である旨が表示されるまで繰り返す。これにより、各商品G1〜G3の適切な通路S1〜S3が規定される。
【0113】
なお、当該実施形態においても、上記〔A〕のように、初期設定部21b,121bにより(式3)を満たすように決定された距離A1〜A4を、モニタ30に出力するようにしてもよい。また、上記〔B〕のように、初期設定部21b,121bにより(式3)を満たすように決定された距離A1〜A4が確保されるように、ガイド板51〜54を自動的に移動させてもよい。
【0114】
〔F〕
第1および第2実施形態では、2つの商品G1,G2間の間隔U1を確保するために、2枚の薄いガイド部材51,52を用い、同様に、2つの商品G2,G3間の間隔U2を確保するために、2枚の薄いガイド部材53,54を用いている。
【0115】
しかしながら、2つの商品G1,G2間の間隔U1を確保するために、2枚のガイド部材51,52を用いるのではなく、左右方向に幅のある1つのガイド部材を用いてもよい。同様に、2つの商品G2,G3間の間隔U2を確保するために、2枚のガイド部材53,54を用いるのではなく、左右方向に幅のある1つのガイド部材を用いてもよい。オペレータは、初期設定時に、商品G1,G2間に最小距離U0以上の間隔U1を確保し、商品G2,G3間に最小距離U0以上の間隔U2を確保することができるような適切な幅の(すなわち、最小距離U0以上の)ガイド部材を商品G1〜G3に合わせて用意する必要がある。
【0116】
〔G〕
第1および第2実施形態において、最小距離U0の算出方法は、上記態様に限定されない。また、最小距離U0は、商品G1〜G3の鉛直方向の高さH1および角度θ1,θ2以外のパラメータに基づいて算出されるようになってもよい。
【0117】
〔H〕
第1および第2実施形態では、最小距離U0が(式1)又は(式2)に基づいて算出されるようになっている。
【0118】
しかしながら、商品G1〜G3の多種類の形状のそれぞれに対応する最小間隔U0をHDD24に予め格納しておき、制御コンピュータ20,120に当該データを参照させることにより処理を簡略化することができる。例えば、商品G1〜G3の高さH1と最小間隔U0との対応関係を定めるテーブルデータを用意しておくことが考えられる。
【0119】
〔I〕
第2実施形態に係る制御コンピュータ120は、X線ラインセンサ14を構成する画素センサ14aを仮想的に左右方向に3等分し、3つのブロックB1〜B3に分けて管理している。
【0120】
しかしながら、ブロックB1〜B3の位置を、ガイド板51〜54の位置に合わせて可変としてもよい。この場合、オペレータに入力させる等により、ガイド板51〜54の位置を制御コンピュータ120が取得できるようになっている必要がある。
【0121】
〔J〕
第1および第2実施形態において、商品位置調整機構40,140に、左側の商品G1の通路S1の左壁を規定するためのガイド部材、および、右側の商品G3の通路S3の右壁を規定するためのガイド部材をさらに付加してもよい。これらのガイド部材は、商品G1,G3がX線の照射範囲Yからはみ出さないようにすることができる。
【0122】
〔K〕
第1および第2実施形態において、制御コンピュータ20,120にかかる処理が、その他のソフトウェア、ハードウェア、又はこれらの任意の組み合わせにより実現されるようになっていてもよい。
【0123】
また、制御コンピュータ20,120にかかる処理が、X線検査装置10,110本体とは別に設けられた装置において実現されるようになっていてもよい。例えば、制御コンピュータ20,120から各種データが別体のコンピュータに送られ、上記処理の全部または一部が当該コンピュータにおいて実行され、当該コンピュータにおける処理結果がX線検査装置10,110本体に戻されるようになっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、多列の物品の検査において誤検査を防止することができるX線検査装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の第1実施形態に係るX線検査装置の外観の斜視図。
【図2】シールドボックス内の斜視図。
【図3】X線検査の原理を示す模式図。
【図4】X線検査装置の周辺の平面図。
【図5】第1実施形態に係る制御コンピュータのブロック構成図。
【図6】(a)第1実施形態に係る商品位置調整機構の周辺の平面図。(b)第1実施形態に係る商品位置調整機構の周辺を右から左に見た側面図。
【図7】(a)第1実施形態に係る適正な間隔を保持した状態の商品の周辺をコンベアの搬送方向について上流側から下流側に見た側面図。(b)(a)に示す状態で撮像された商品のX線画像を示す図。
【図8】(a)第1実施形態に係る適正な間隔を保持していない状態の商品の周辺をコンベアの搬送方向について上流側から下流側に見た側面図。(b)(a)に示す状態で撮像された商品のX線画像を示す図。
【図9】第2実施形態に係る制御コンピュータのブロック構成図。
【図10】(a)第2実施形態に係る商品位置調整機構の周辺の平面図。(b)第2実施形態に係る商品位置調整機構の周辺を右から左に見た側面図。
【図11】(a)第2実施形態に係る適正な間隔を保持した状態の商品の周辺をコンベアの搬送方向について上流側から下流側に見た側面図。(b)(a)に示す状態で撮像された商品のX線画像を示す図。
【図12】変形例〔B〕に係る商品位置調整機構の周辺の平面図。
【図13】変形例〔E〕に係る商品の周辺をコンベアの搬送方向について上流側から下流側に見た側面図。
【符号の説明】
【0126】
10,110 X線検査装置
13 X線照射器(X線源)
14 X線ラインセンサ(X線受光部)
20,120 制御コンピュータ
21 CPU(数量検査部、位置決定部)
21a,121a 画像生成部
21b,121b 初期設定部
21c,121c 品質検査部
30 モニタ(出力部)
40,141 商品位置調整機構(位置調整部)
51 第1ガイド板
52 第2ガイド板
53 第3ガイド板
54 第4ガイド板
P X線画像
Y 照射範囲
U0 最小距離
U1 商品G1,G2間の実際の間隔
U2 商品G2,G3間の実際の間隔
T1 ガイド板51,52間の間隔
T2 ガイド板53,54間の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並ぶ複数の物品を前記第1方向と交差する第2方向に搬送する搬送部と、
前記物品に向けてX線を扇状に照射するX線源と、
前記物品を透過したX線を受光するX線受光部と、
前記X線受光部が受光したX線の濃度値に基づいて、前記各物品を検査する検査部と、
前記複数の物品間の前記第1方向の適正な間隔を判断する判断部と、
を備える、X線検査装置。
【請求項2】
前記適正な間隔とは、所定の最小距離以上の長さである、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記判断部は、前記適正な間隔に基づいて、前記検査部による前記各物品の検査の可否をさらに判断する、
請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線源の上流側に位置し、前記複数の物品間の前記第1方向の実際の間隔を前記適正な間隔となるように調整する間隔調整部、
をさらに備える、
請求項2又は3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記判断部は、前記物品の形状に基づいて、前記適正な間隔を判断する、
請求項1から4のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記判断部は、前記物品の上下方向の長さに基づいて、前記適正な間隔を判断する、
請求項5に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記物品の多種類の形状に対応する前記適正な間隔を記憶する記憶部、
をさらに備え、
前記判断部は、前記記憶部を参照して、前記適正な間隔を判断する、
請求項5又は6に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記間隔調整部は、前記第1方向に前記最小距離以上離れて配置される2つの壁部材を有する、
請求項4に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記間隔調整部は、前記第1方向に前記最小距離以上の幅を有する壁部材を有する、
請求項4に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記判断部による判断結果を出力する出力部、
をさらに備える、
請求項1から9のいずれかに記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−168590(P2009−168590A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6477(P2008−6477)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】