説明

X線画像撮影装置

【課題】 腋窩に近い部分を適切にスキャンすることができ、また、仰臥位でX線乳房撮影を行うことができるX線画像撮影装置の提供。
【解決手段】 スキャンフレームは、テーブルに仰臥位で載置された被検体の乳房を収容するための空間部を有し、この空間部を挟んで相対向する位置に設けられたX線発生部とX線検出部とを保持する。スキャンフレームは、X線発生部及びX線検出部が乳房の周囲を旋回することで乳房の多方向からの透過データを収集するスキャンを行うことができるように、送り出し量を調整可能な回転ロッドを回転軸として回転可能に構成されている。このスキャンフレームは、テーブルに仰臥位で載置された被検体の肩幅方向に延在する支持フレームにスライド可能に支持される。そして、調整部により、このスキャンフレームの、支持フレームにおけるスライド位置、支持フレームに対する取付角度、回転ロッドの送り出し量が調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線照射によって被検体の乳房のX線画像を撮影するX線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乳腺・乳房のX線透視像を撮影するマンモグラフィ装置に対しては、さまざまな改良の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1は、診断情報量の増加を目的として、3次元データを取得し、ボリュームデータを計算する技術を開示している。
【0004】
また、特許文献2は、被検者の胸部を圧迫することなく3次元データを含む画像を取得し、ボリュームデータ等を計算する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−116825号公報
【特許文献2】特開2004−105729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
腋窩に近い部分の乳癌の発生頻度が高いことは、周知である。X線乳房撮影における撮影方向に内外側斜方向(MLO : medio-lateral oblique)が採用されているのはそのためである。被検者の胴体全体の断層像を撮影可能な全身CTスキャナを利用すれば腋窩部分の撮影も可能であるが、診断に不要な部位まで曝射してしまうという欠点や、再構成領域が大きくなってしまうために画像の分解能が不足するという欠点がある。つまり、腋窩に近い部分を適切にスキャンすることが乳房用CT撮影装置に要求される。しかし、従来の技術ではその要求は満足されていない。
【0007】
また、撮影されたCT画像を参照しながら乳癌部分の摘出手術を行う際には、手術する際の患者の姿勢(すなわち、仰臥位)と同じ姿勢のCT画像が必要となる。しかし、全身CTを除いては仰臥位でX線乳房撮影をする技術はなかった。
【0008】
本発明は、これらの課題の少なくとも1つを解決するX線画像撮影装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、被検体の乳房のX線画像を撮影するX線画像撮影装置であって、被検体を載置するためのテーブルと、前記テーブルに仰臥位で載置された被検体の乳房を収容するための空間部を有し、該空間部を挟んで相対向する位置に設けられたX線発生部とX線検出部とを保持するスキャンフレームと、前記X線発生部及び前記X線検出部が前記乳房の周囲を旋回することで前記乳房の多方向からの透過データを収集するスキャンを行うための、前記スキャンフレームの回転軸となる、送り出し量を調整可能な回転ロッドと、前記テーブルに仰臥位で載置された被検体の肩幅方向に延在し、前記回転ロッドを介して前記スキャンフレームをスライド可能に支持する支持フレームと、前記スキャンフレームの、前記支持フレームにおけるスライド位置、前記支持フレームに対する取付角度、前記回転ロッドの送り出し量の少なくともいずれか1つを調整する調整部と、前記被検体の乳房のX線画像に基づいて、前記スキャンフレームを移動させて透過データを収集するスキャンの回数を決定する決定手段とを有することを特徴とするX線画像撮影装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のX線画像撮影装置によれば、腋窩に近い部分を適切にスキャンすることができる。また、仰臥位でX線乳房撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態におけるX線画像撮影装置の全体構成図である。
【図2】、
【図3】実施形態におけるスキャンフレームの詳細構成を示す図である。
【図4】実施形態におけるスキャンフレームが形成する再構成領域を示す図である。
【図5】再構成された乳房部分の3次元画像
【図6】実施形態におけるスキャンフレームから収集される透過データの処理を説明する図である。
【図7】実施形態における透過データに基づくスキャンフレーム位置調整を説明する図である。
【図8】実施形態における透過データのヒストグラム解析を用いたスキャンフレーム位置調整を説明する図である。
【図9】実施形態における全身CTデータに基づくスキャン計画を説明する図である。
【図10】全身用CTスキャナ装置を更に有する場合の構成例を示す図である。
【図11】実施形態におけるスキャン計画でのマイルストンの設定と生成される画像の例を説明する図である。
【図12】ステップ移動とスパイラル移動によるプリスキャンを説明する図である。
【図13】検査部分を分割して複数回スキャンする例を説明する図である。
【図14】再構成領域を縮小するためのX線束変更部を設けた例を説明する図である。
【図15】標準の再構成領域を、縮小した再構成領域に分割して3回のスキャンを行う概念図である。
【図16】変形例に係るX線画像撮影装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施に有利な具体例を示すにすぎない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決手段として必須のものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態におけるX線画像撮影装置100の全体構成を示す図である。被検体1は、テーブル2の上に仰臥位で載置される。テーブル2を支持するテーブル支持部3は、図示しないスライド機構を有する。被検体1は、テーブル2のスライドによりガントリ4に形成された貫通穴部分に挿入される。ガントリ4には、支持フレーム5が円弧状に配置される。図1では、支持フレーム5は360度分を有するが、テーブル2に仰臥位で載置された被検体1の肩幅方向に延在していればよく、例えば上円部分だけでもよい。支持フレーム5には、被検体1に向かって、スキャンフレーム6が取り付けられている。スキャンフレーム6の先端部分には、被検体1の検査部分9である乳房を収容する空間部が形成されており、この空間部を挟んで相対向するX線発生部7、2次元X線検出部8が保持されている。X線発生部7からのX線曝射中にX線発生部7及び2次元X線検出部8が検査部分9である乳房の周囲を旋回するようにスキャンフレーム6が回転することにより、検査部分9の多方向(360度方向)からのX線透過データが収集される(スキャン)。ガントリ4に接続された、操作コンソール及び画像処理装置として機能するコンピュータ50は、この透過データを逆ラドン変換することにより検査部分9の断面を再構成し、モニタ51に表示することができる。
【0014】
図2及び図3は、スキャンフレーム6の詳細図である。図2は、スキャンフレーム6が、支持フレーム5に対して垂直に取り付けられている場合を示す。スキャンフレーム6は、被検体1に回転部分が直接触れないようにカバー10で覆われている。X線発生部7からのX線束11は、図示しないコリメータにより、2次元X線検出部8のみに入射するように整形される。
【0015】
図4はスキャンフレーム6が形成する再構成領域12を示す図である。図示のように、再構成領域12はファン角13によって決まる。スキャンフレーム6は、支持フレーム5にスライド可能に支持されており、図2に示すように、スキャンフレーム移動部14により支持フレーム5におけるスライド位置を変えることができる(矢印A)。もっとも、スキャンフレーム6の移動は、支持フレーム5自体を回転させることでも実現できる。
【0016】
スキャンフレーム6の上部にはスキャンフレーム6の回転軸となる回転ロッド17が取り付けられ、この回転ロッド17が支持フレーム5に支持される。この回転ロッド17がスキャンフレーム回転駆動部15により回転駆動されることで、スキャンフレーム6がCTスキャン回転される(矢印B)。
【0017】
また、回転ロッド17は図示しない公知の送り出し量調整機構又は伸縮機構を備えている。さらに、この回転ロッド17の端部には、スキャンフレーム6の、支持フレーム5におけるスライド位置、支持フレーム5に対する取付角度、回転ロッド17の送り出し量(又は伸縮量)を調整するスキャンフレーム角度距離調整部16が取り付けられている。図3は、スキャンフレーム6が支持フレーム5に対する取付角度を傾斜させた場合を示している。スキャンフレーム角度距離調整部16は、回転ロッド17の傾斜角度及び、回転ロッド17の送り出し量(矢印C)を調整する。これにより、スキャンフレーム6と被検体1との距離が調整可能である。
【0018】
2次元X線検出部8から取り込まれた透過データは、コンピュータ50により再構成処理が行われ、複数断面、いわゆる3次元画像18に変換される。再構成処理は、逆ラドン変換により行うことができる。逆ラドン変換は、透過データをフィルタ処理し、X線焦点に向かって逆投影することにより実現される。逆投影の角度及び位置は透過データを収集した際の、支持フレーム5におけるスキャンフレーム6のスライド位置、角度、回転ロッド17の送り出し長さ、及びスキャンの角度から決められる。逆ラドン変換の例として、フェルドカンプ (Feldkamp)のアルゴリズムを使用するができる。参考文献としては、Feldkamp等による "Practical Cone Beam Algorithm", J. Opt. Soc. Am. A1, 612-619, 1984 がある。再構成された乳房30の3次元画像18の例を図5に示す。
【0019】
図16は、図1に示したX線画像撮影装置100の変形例を示している。支持フレーム5はCアーム19で構成されており、このCアーム19にスキャンフレーム6が支持されている。スキャンフレーム6は、Cアーム19上をスライドして位置を変えることができる。そのかわりに、スキャンフレーム6がCアーム19に固定され、Cアーム19の送り出し量を変えることによりスキャンフレーム6の位置を変更する構成としてもよい。また、スキャンフレーム6の角度調整は、Cアーム19とスキャンフレーム6の取付角度を調整するかわりに、制御部161の制御指令によりCアーム上下回転部162の駆動を受けてCアーム19自体を傾斜させることで調整するようにしてもよい。
【0020】
以上の図1や図16に示したような構成によれば、被検体によって曲面形状やサイズの異なる乳房に対して、柔軟に対応でき、効率的に検査が行える。また、上記のような構成は、被検体を仰臥位にテーブルに載置し、両腕を重力方向に垂らし、乳房付近の胸郭が形成する曲面の露出を容易にし、乳房検査において重要となる腋窩部分の検査を容易にする。また、この構成によって、被検体を仰臥位に配置した状態での乳房検査を提供することにより、外科手術中と同じ体位での画像を収集することができる。
【0021】
図1の正面図には、被検体1の乳房付近が示されているが、乳房30は胸筋20に付いていて、胸筋20は肋骨21を覆っている。本実施形態におけるX線画像撮影装置100では、胸筋20を含んだ乳房部分を検査部分9としている。肋骨21をも含んでスキャンしてしまうと、被検体1に不要な被曝を与えるばかりでなく、透過データの信号値が低くなって、再構成画像のS/Nが低下する。そこで、本実施形態では、2次元X線検出部8からの透過データを解析して、スキャンフレーム6の角度及び回転ロッド17の送り出し量の調整を行う。
【0022】
図6において、(a)はスキャンフレーム6が乳房30に接近しすぎて肋骨21を含んでスキャンした場合の断面図、(b)はその透過データ、(c)はその透過データの2値化データを示している。X線がその高減衰部である肋骨21を透過すると透過データ値が極端に小さくなるので、透過データを予め決められた閾値で2値化処理することで肋骨21を含んでスキャンしているか否かの判断と、肋骨21の面積を知ることができる。
【0023】
図7は、図6の2値化データに基づいて、スキャンフレーム6の角度、回転ロッド17の送り出し量を調整した結果の例を示している。この透過データの解析とスキャンフレーム6の角度及び回転ロッド17の送り出し量の調整は、スキャンフレーム6の回転スキャン中にリアルタイムで行われる。送り出し量の調整とスキャンフレーム6の回転スキャンを同時に行うことにより、X線撮影にかかる時間を短縮することができる。
【0024】
図6及び図7では、透過データが肋骨21を含むことがないように制御したが、被検体1によっては厚い胸筋20を有する場合がある。この場合は、X線を大きく減衰させる胸筋20を薄くスキャンするようにスキャンフレーム6を制御する必要がある。この場合には、図8に示すように、ヒストグラム解析により、予め定められた2値化処理の閾値22を閾値23に変更するとよい。
【0025】
乳房のCT画像の断面は、胸壁に極力接近させることが要求される。スキャンフレーム6と胸壁とを極力接近させる際に、接触検知器等を使用すると、人体に負担となる。これに対し、上述の透過データに基づくスキャンフレーム6の角度及び回転ロッド17の送り出し量の調整の例によれば、接触検知器等を使用する必要がなく有利である。
【0026】
次に、被検体の乳房を含む胸郭全体の断層像に係る全身CTデータをもとに、スキャンフレーム6の、支持フレーム5におけるスライド位置、取付角度、回転ロッド17の送り出し量の調整を計画することについて説明する。図9に、被検体の乳房を含む胸郭全体の断層像を撮影可能な全身用CTスキャナ装置又は全身用MRI装置によって撮影された乳房30を含む胸郭全体の断層像の例を示す。全身CTによる断層像を予め決められた閾値で2値化処理することにより乳房部分の体積を3次元的に決めることができる。図4に示すように、一回のスキャンにより撮影できる領域も立体的に決まるので、乳房30が大きい場合は片側の乳房30に対して複数回スキャンの計画がされることになる。スキャンフレーム6の位置の計画は、2値化処理後の画像(検査部分9)をコンピュータ50のモニタ51に表示して、操作者が再構成領域12を重ねることにより行うことができる。
【0027】
この処理は、コンピュータ50により自動化することも可能である。コンピュータ50で自動化する場合は、左右の乳房30ごとに体積を求めて、それぞれの乳房30の体積、高さ、平面積が一回のスキャンによる再構成領域12以下であるか否かを判断する。一回のスキャンで収まらない場合は、乳房体積が一回のスキャンによる再構成領域12の何倍に相当するかを計算する。これによりスキャン回数が決定されれば、乳房体積をスキャン回数で分割し、分割された領域の重心にスキャン中心が合致するようにスキャン計画される(図13参照)。全身CTデータでスキャン計画された計画と、本実施形態に係るX線画像撮影装置100によるCT撮影のスキャンフレーム6の基準位置調整は、予め決められた最初のスキャン位置に、撮影技師がスキャンフレーム6を配置することで行われる。なお、この場合の全身CTデータはスキャン計画のために胸郭の概略形状が分かればよいので、低線量でスキャンされたものでよい。
【0028】
図10は、全身用CTスキャナ装置200を更に有する場合の構成例を示す図である。全身用CTスキャナ装置200は、テーブル2に横たえた被検体1を挿入する空洞部41を有するガントリ40を備える。このガントリ40には、X線発生部70と、空洞部41を挟んでX線発生部70と対向する位置に設けられるX線検出部80が設けられている。そして、これらX線発生部70とX線検出部80が空洞部41を周回することで全身スキャンが行われる。この場合のメリットは、X線画像撮影装置100で収集されるCTデータと全身用CTスキャナ装置200で収集される全身CTデータの位置関係が明確であることである。このため、全身CTデータでスキャン計画された計画と、X線画像撮影装置100によるCT撮影のスキャンフレーム6の基準位置調整が不要となる。
【0029】
次に、2次元X線検出部8を使用したプリスキャンによって得られる2次元又は3次元の透視画像に基づいて、スキャンフレーム6の、支持フレーム5におけるスライド位置、取付角度、回転ロッド17の送り出し量の調整を計画することについて説明する。
【0030】
図11にプリスキャンの方法を示す。図11の(a)に示すように、被検体1をテーブル2上に仰臥位に寝かせた状態で、技師が被検体1の胸郭の曲面に沿って複数点のマイルストン24をスイッチ(図示しない)等で登録する。コンピュータ50は、登録させたマイルストン24を通過するような曲線を計算し、低線量のX線を出しながらスキャンフレーム6が連続的に移動するよう制御する。この移動に際しては、コンピュータ50は、スキャンフレーム6の支持フレーム5上での位置、角度、回転ロッド17の送り出し量の調整を行う。
【0031】
プリスキャンにおいては、スキャンフレーム6を回転させる場合と回転させない場合がある。スキャンフレーム6を回転させない場合は、スキャンフレーム6の支持フレーム5におけるスライド位置を固定して透過データを収集することを支持フレーム5における複数のスライド位置(例えば各マイルストン24の位置)で行う。このようなスキャンフレーム6の移動は「ステップ移動」とよばれる。このステップ移動によるプリスキャンによれば、図11の(b)に示すような、2次元透視像が得られる。一方、スキャンフレーム6を回転させる場合は、具体的には次のようなプリスキャンとなる。すなわち、スキャンフレーム6を回転させながら、かつ、その回転と同期してスキャンフレーム6を支持フレーム5に沿って連続的に移動させながら透過データを収集する。この場合、X線発生部7及び2次元X線検出部8はそれぞれ螺旋状の軌跡を描くことから、このような移動は「スパイラル移動」とよばれ、また、そのとき収集される透過データは「スパイラルデータ」ともよばれる。
【0032】
図12の(a)は、ステップ移動とスパイラル移動によるプリスキャンを説明する図である。破線25がスパイラル移動、破線26がステップ移動による軌跡の例を示している。いずれの移動方式の場合でも、スキャンフレーム6を回転させた場合は、図5に示したような、胸壁に付く乳房30の3次元画像18が得られる。なお、プリスキャンの目的はメインスキャンの計画を立てるためのもので、検査部分9の輪郭を特定できれば十分であるから、プリスキャンは、メインスキャンに比べて低線量のスキャンでよい。
【0033】
スキャンフレーム6を回転させない場合は、被検体1の体軸方向(テーブル2の進行方向)に乳房領域を撮影するようにX線発生部7と2次元X線検出部8の向きが設定される。スキャンフレーム6を回転させないで、ステップ移動によるプリスキャンによって生成された2次元透視像の例を図12の(b)に示す。
【0034】
以上のようなプリスキャンによって得られた透過データに基づいて、スキャンフレーム6の支持フレーム5上での位置、角度及び回転ロッド17の送り出し量の調整を計画することができる。これには、前述のように操作者が決定する方法、コンピュータ50による自動化の方法がある。スパイラル移動による透過データの画像再構成処理も逆ラドン変換により行われる。逆ラドン変換の逆投影の角度及び位置は、透過データを収集した際の、支持フレーム5上のスキャンフレーム6の位置、角度、回転ロッド17の送出し量、及びスキャンの角度から決められる。
【0035】
メインスキャンにおいても、ステップ移動による第1のメインスキャンを実行するか、スパイラル移動による第2のメインスキャンを実行するかの選択をすることができる。スパイラル移動による第2のメインスキャンのメリットは、スキャンフレーム6の上下運動がないことからステップ移動による第1のメインスキャンに較べてスキャン時間が短いことである。ステップ移動による第1のメインスキャンを行うか、スパイラル移動による第2のメインスキャンを行うかの選択は、操作者が行ってもよいし、画像処理によって乳房30のサイズに依存して自動的に行うようにしてもよい。例えば、乳房30の体積、高さ、平面積が一回のスキャンによる再構成領域12以下であるか否かを判断する。ここで、乳房30の体積、高さ、平面積からして、スパイラル移動させるとスキャンフレーム6のカバー10に乳房30が触れて乳房30が変形するおそれがあると判断される場合は、ステップ移動による第1のメインスキャンが選択される。具体的には、乳房高さが再構成領域12の高さを超える場合、乳房平面積がスキャンフレーム6のスキャン直径を超える場合にステップ移動による第1のメインスキャンが選択される。
【0036】
ところで、検査部分9が再構成領域12よりも小さい場合、あるいは、複数回スキャンを行う場合において、分割された検査部分9が再構成領域12よりも小さい場合には、患者(被検体)にとっては不必要な被曝領域が生じているといえる。このような無駄な被曝は極力なくすことが望ましい。
【0037】
そこで、図14に示すように、X線発生部7の前面に、X線発生部7からのX線の照射範囲を変更するX線束変更部27を設けるとよい。これにより、X線束を変形させて再構成領域12を小さくした再構成領域29を形成することができる。例えば、スキャン計画時に、そのような不必要な被曝領域が生じていると判断される場合には、X線束変更部27に、X線発生部7からのX線の照射範囲を狭めるよう指示することができる。図15は、標準の再構成領域12を、縮小した再構成領域29に分割して3回のスキャンを行う概念図である。
【符号の説明】
【0038】
1 被検体
2 テーブル
3 テーブル支持部
4 ガントリ
5 支持フレーム
6 スキャンフレーム
7 X線発生部
8 2次元X線検出部
9 検査部分
10 カバー
12 再構成領域
13 ファン角
14 スキャンフレーム移動部
15 スキャンフレーム回転駆動部
16 スキャンフレーム角度距離調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の乳房のX線画像を撮影するX線画像撮影装置であって、
被検体を載置するためのテーブルと、
前記テーブルに仰臥位で載置された被検体の乳房を収容するための空間部を有し、該空間部を挟んで相対向する位置に設けられたX線発生部とX線検出部とを保持するスキャンフレームと、
前記X線発生部及び前記X線検出部が前記乳房の周囲を旋回することで前記乳房の多方向からの透過データを収集するスキャンを行うための、前記スキャンフレームの回転軸となる、送り出し量を調整可能な回転ロッドと、
前記テーブルに仰臥位で載置された被検体の肩幅方向に延在し、前記回転ロッドを介して前記スキャンフレームをスライド可能に支持する支持フレームと、
前記スキャンフレームの、前記支持フレームにおけるスライド位置、前記支持フレームに対する取付角度、前記回転ロッドの送り出し量の少なくともいずれか1つを調整する調整部と、
前記被検体の乳房のX線画像に基づいて、前記スキャンフレームを移動させて透過データを収集するスキャンの回数を決定する決定手段と、
を有することを特徴とするX線画像撮影装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記X線検出部からの透過データに基づいて、前記スキャンフレームの、前記支持フレームにおけるスライド位置、前記支持フレームに対する取付角度、前記回転ロッドの送り出し量の少なくともいずれか1つを調整することを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記X線検出部に入射するX線が被検体の高減衰部を透過したか否かの判断に基づいて、前記スキャンフレームの、前記支持フレームにおけるスライド位置、前記支持フレームに対する取付角度、前記回転ロッドの送り出し量の少なくともいずれか1つを調整することを特徴とする請求項2に記載のX線画像撮影装置。
【請求項4】
前記調整部は、被検体の乳房を含む胸郭全体の断層像に基づいて、前記スキャンフレームの、前記支持フレームにおけるスライド位置、前記支持フレームに対する取付角度、前記回転ロッドの送り出し量の少なくともいずれか1つを調整することを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項5】
被検体の乳房を含む胸郭全体の断層像を撮影可能な全身用CTスキャナ装置又は全身用MRI装置を更に有し、
前記調整部は、前記全身用CTスキャナ装置又は前記全身用MRI装置により撮影された被検体の乳房を含む胸郭全体の断層像に基づいて、前記スキャンフレームの、前記支持フレームにおけるスライド位置、前記支持フレームに対する取付角度、前記回転ロッドの送り出し量の少なくともいずれか1つを調整することを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記スキャンフレームを回転させずに該スキャンフレームの前記支持フレームにおけるスライド位置を固定して透過データを収集することを前記支持フレームにおける複数のスライド位置で行うプリスキャンによって得られる画像に基づいて、前記スキャンフレームの、前記支持フレームにおけるスライド位置、前記支持フレームに対する取付角度、前記回転ロッドの送り出し量の少なくともいずれか1つを調整することを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項7】
前記調整部は、前記スキャンフレームを回転させながら、かつ、該回転と同期して該スキャンフレームを前記支持フレームに沿って連続的に移動させながら透過データを収集するプリスキャンによって得られる画像に基づいて、前記スキャンフレームの、前記支持フレームにおけるスライド位置、前記支持フレームに対する取付角度、前記回転ロッドの送り出し量の少なくともいずれか1つを調整することを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項8】
前記スキャンフレームの前記支持フレームにおけるスライド位置を固定して前記スキャンフレームを回転させて透過データを収集することを前記支持フレームにおける複数のスライド位置で行う第1のメインスキャンと、前記スキャンフレームを回転させながら、かつ、該回転と同期して該スキャンフレームを前記支持フレームに沿って連続的に移動させながら透過データを収集する第2のメインスキャンのいずれを実行するかを選択する選択手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項9】
前記選択手段は、プリスキャンによって得られた画像又は被検体の乳房を含む胸郭全体の断層像に基づいて前記選択を行うことを特徴とする請求項8に記載のX線画像撮影装置。
【請求項10】
前記スキャンフレームは、前記X線発生部からのX線の照射範囲を変更するX線束変更部を更に有することを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載のX線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−78695(P2013−78695A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−21758(P2013−21758)
【出願日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【分割の表示】特願2007−189992(P2007−189992)の分割
【原出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】