説明

X線異物検出装置

【課題】 従来異物の有無を検査することができなかった領域についても検査することができ、異物の有無の判定の信頼性を従来より向上することができるX線異物検出装置を提供する。
【解決手段】 X線異物検出装置のコンピュータは、搬送される被検査体を透過したX線量に基づいて生成されたX線画像中の被検査体に対応すると想定される被検査体領域31を強影響領域31a及び非強影響領域31bに分割し、強影響領域31aのX線画像に対して強影響領域31a用の処理によって異物の有無を判断し、非強影響領域31bのX線画像に対して非強影響領域31b用の処理によって異物の有無を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体を透過したX線量に基づいて生成されたX線画像を処理して被検査体に含まれる異物の有無を検出するX線異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、X線異物検出装置として、図22に示すように、缶等の容器981と、容器981内に収納された内容物982とから構成されて搬送ベルト990によって搬送される被検査体980にX線911aを照射するX線源911と、X線源911によって照射されたX線911aを検出する検出素子が搬送ベルト990による被検査体980の搬送方向とは直交する方向に配列されたX線検出器912とを備え、X線検出器912の検出結果に基づいてX線画像930(図23参照。)を生成し、生成したX線画像930を処理して被検査体980に含まれる異物984の有無を判定するX線異物検出装置であって、容器981の影響によってX線911aが透過し難い領域983に対応する領域931(図23参照。)をX線画像930から除外して検査領域932(図23参照。)を設定し、検査領域932で異物984の有無を判定するX線異物検出装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特許第3567120号明細書(第3−4頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のX線異物検出装置においては、異物984の有無の判定を行わなかった領域983に異物984が存在していても、その異物984を検出できないという問題があった。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、従来異物984の有無を検査することができなかった領域983についても検査することができ、異物984の有無の判定の信頼性を従来より向上することができるX線異物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のX線異物検出装置は、搬送される被検査体を透過したX線量に基づいて生成されたX線画像を処理して前記被検査体に含まれる異物の有無を検出するX線異物検出装置において、前記X線画像中の前記被検査体に対応すると想定される被検査体領域を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記領域分割手段によって分割された前記領域毎の前記X線画像に対して前記領域毎用の処理によって前記異物の有無を判断する異物判断手段とを備えた構成を有している。
【0007】
この構成により、本発明のX線異物検出装置は、X線画像の被検査体領域中の領域毎に領域毎用の処理によって異物の有無を判断するので、従来異物の有無を検査することができなかった領域についても検査することができ、異物の有無の判定の信頼性を従来より向上することができる。
【0008】
また、本発明のX線異物検出装置は、前記被検査体中の一部の影響が強いと想定される強影響領域及び前記強影響領域以外の非強影響領域に前記被検査体領域を分割するための分割閾値を設定する分割閾値設定手段を備え、前記領域分割手段は、画素の濃度分布及び前記分割閾値設定手段によって設定された前記分割閾値に基づいて前記強影響領域及び前記非強影響領域を分割する構成を有している。
【0009】
この構成により、本発明のX線異物検出装置は、被検査体のX線画像のうち被検査体中の一部の影響が強いと想定される強影響領域に対しても、強影響領域以外の非強影響領域に対してと同様に異物の有無を検出することができる。
【0010】
また、本発明のX線異物検出装置の前記領域分割手段は、画素の濃度分布及び前記分割閾値設定手段によって設定された前記分割閾値に基づいて前記強影響領域の候補である強影響候補領域を分割し、前記被検査体領域の境界に接した前記強影響候補領域を前記強影響領域として分割する構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明のX線異物検出装置は、被検査体のX線画像のうち実際には異物に対応する領域が誤って強影響領域に含まれる可能性を低減することができる。
【0012】
また、本発明のX線異物検出装置は、画像を表示する表示手段と、前記強影響領域及び前記非強影響領域の少なくとも一方を前記X線画像に重ねて前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備え、前記分割閾値設定手段は、利用者によって指定された前記分割閾値を設定する構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明のX線異物検出装置は、分割閾値によって分割された強影響領域及び非強影響領域の少なくとも一方を利用者に見させながら利用者に分割閾値を指定させることができるので、利用者に分割閾値を容易に設定させることができる。
【0014】
また、本発明のX線異物検出装置は、画像を表示する表示手段と、前記強影響領域の前記X線画像における前記被検査体の搬送方向上の位置が等しい画素のうち濃度が最大の画素の濃度を前記位置毎に表したグラフ及び前記非強影響領域の前記X線画像における前記位置が等しい画素のうち濃度が最大の画素の濃度を前記位置毎に表したグラフの少なくとも一方を前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備えた構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明のX線異物検出装置は、強影響領域のX線画像に対して異物の有無を判断するための閾値と、非強影響領域のX線画像に対して異物の有無を判断するための閾値との少なくとも一方を利用者に容易に設定させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来異物の有無を検査することができなかった領域についても検査することができ、異物の有無の判定の信頼性を従来より向上することができるX線異物検出装置を提供することができるものである。
【0017】
更に、本発明のX線異物検出装置は、被検査体のX線画像のうち被検査体中の一部の影響が強いと想定される強影響領域に対しても、強影響領域以外の非強影響領域に対してと同様に異物の有無を検出することができる。
【0018】
更に、本発明のX線異物検出装置は、被検査体のX線画像のうち実際には異物に対応する領域が誤って強影響領域に含まれる可能性を低減することができる。
【0019】
更に、本発明のX線異物検出装置は、分割閾値によって分割された強影響領域及び非強影響領域の少なくとも一方を利用者に見させながら利用者に分割閾値を指定させることができるので、利用者に分割閾値を容易に設定させることができる。
【0020】
更に、本発明のX線異物検出装置は、強影響領域のX線画像に対して異物の有無を判断するための閾値と、非強影響領域のX線画像に対して異物の有無を判断するための閾値との少なくとも一方を利用者に容易に設定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の構成について説明する。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るX線異物検出装置10は、搬送ベルト90によって搬送される被検査体80にX線11aを照射するX線源11と、X線源11によって照射されたX線11aを検出する検出素子が搬送ベルト90による被検査体80の搬送方向とは直交する方向に配列されたX線検出器12と、X線検出器12の検出結果に基づいてX線画像30(図3参照。)を生成し、生成したX線画像30を処理して被検査体80に含まれる異物84の有無を判断するコンピュータ13と、コンピュータ13による異物84の判断結果等を表示する表示手段としてのディスプレイ14と、ディスプレイ14の画面に重ねて配置されて利用者の操作に応じた信号をコンピュータ13に入力するタッチパネル15とを備えている。
【0024】
コンピュータ13は、プログラムが記録された図示していないROM(Read Only Memory)、ROMに記録されたプログラムに基づいて動作する図示していないCPU(Central Processing Unit)、CPUの作業領域である図示していないRAM(Random Access Memory)等を含んで構成されている。
【0025】
本実施の形態に係る被検査体80は、容器81と、容器81内に収納された内容物82とから構成されている。なお、図2に示す容器81の形状は、図4に示すように円柱状である。
【0026】
次に、X線異物検出装置10の動作について説明する。
【0027】
まず、X線画像30中の被検査体80に対応すると想定される被検査体領域31(図5参照。)と被検査体領域31以外の被検査体外領域32とを分割するための閾値である第1分割閾値41(図6参照。)と、被検査体領域31のうち被検査体80中の容器81の影響が強いと想定される強影響領域31a(図7参照。)と強影響領域31a以外の非強影響領域31b(図7参照。)とを分割するための閾値である第2分割閾値42(図6参照。)とを設定する動作について説明する。
【0028】
第1分割閾値41及び第2分割閾値42の設定用の被検査体80が搬送ベルト90によって搬送されると、X線源11によって被検査体80にX線11aが照射され、X線検出器12の検出結果がコンピュータ13に入力される。
【0029】
コンピュータ13は、X線検出器12の検出結果が入力されると、図8に示す処理を開始する。なお、第1分割閾値41及び第2分割閾値42は、X線検出器12の検出結果が7ビット(128階調)の場合、図8に示す処理の開始前に初期値として例えば予め“100”に設定されている。
【0030】
即ち、コンピュータ13は、X線検出器12の検出結果に基づいてX線画像30を生成し(S101)、生成したX線画像30を図3に示すようにディスプレイ14のX線画像表示領域14aに表示させる(S102)。
【0031】
次いで、コンピュータ13は、X線画像30のうち現在の第1分割閾値41以上の濃度である画素の領域を被検査体領域31とし、X線画像30のうち被検査体領域31以外の領域を被検査体外領域32として分割し(S103)、分割した被検査体領域31のうち現在の第2分割閾値42以上の濃度である画素の領域を強影響領域31aとし、被検査体領域31のうち強影響領域31a以外の領域を非強影響領域31bとして分割する(S104)。
【0032】
そして、コンピュータ13は、現在の強影響領域31a、第1分割閾値41及び第2分割閾値42を図9に示すようにディスプレイ14のX線画像表示領域14aに表示させる(S105)。即ち、コンピュータ13は、現在の強影響領域31aをX線画像30に重ねてディスプレイ14のX線画像表示領域14aに表示させるとともに、ディスプレイ14の第1分割閾値41用の分割閾値表示領域14bに現在の第1分割閾値41を表示させ、ディスプレイ14の第2分割閾値42用の分割閾値表示領域14cに現在の第2分割閾値42を表示させる。
【0033】
次いで、コンピュータ13は、タッチパネル15のうちディスプレイ14の第1分割閾値41用の分割閾値調整領域14d、14e(図9参照。)に対応する部分が利用者によって触れられたか否かを判断する(S106)。
【0034】
そして、コンピュータ13は、タッチパネル15のうち分割閾値調整領域14d、14eに対応する部分が所定時間内に利用者によって触れられたとS106において判断すると、第1分割閾値41を再設定して(S107)、S103の処理に戻る。即ち、コンピュータ13は、タッチパネル15のうち分割閾値調整領域14dに対応する部分が利用者によって触れられたときには第1分割閾値41を1つ減算した値に再設定し、タッチパネル15のうち分割閾値調整領域14eに対応する部分が利用者によって触れられたときには第1分割閾値41を1つ加算した値に再設定して、S103の処理に戻る。
【0035】
一方、コンピュータ13は、タッチパネル15のうち分割閾値調整領域14d、14eに対応する部分が利用者によって触れられなかったとS106において判断すると、タッチパネル15のうちディスプレイ14の第2分割閾値42用の分割閾値調整領域14f、14g(図9参照。)に対応する部分が利用者によって触れられたか否かを判断する(S108)。
【0036】
そして、コンピュータ13は、タッチパネル15のうち分割閾値調整領域14f、14gに対応する部分が所定時間内に利用者によって触れられたとS108において判断すると、第2分割閾値42を再設定して(S109)、S104の処理に戻る。即ち、コンピュータ13は、タッチパネル15のうち分割閾値調整領域14fに対応する部分が利用者によって触れられたときには第2分割閾値42を1つ減算した値に再設定し、タッチパネル15のうち分割閾値調整領域14gに対応する部分が利用者によって触れられたときには第2分割閾値42を1つ加算した値に再設定して、S104の処理に戻る。
【0037】
一方、コンピュータ13は、タッチパネル15のうち分割閾値調整領域14f、14gに対応する部分が利用者によって触れられなかったとS108において判断すると、所定時間が経過したか否かを判断する(S110)。
【0038】
そして、コンピュータ13は、所定時間が経過していないとS110において判断するとS106の処理に戻り、所定時間が経過したとS110において判断すると図8に示す一連の処理を終了する。
【0039】
次に、被検査体80に含まれる異物84の有無を検出する動作について説明する。
【0040】
異物84の検出用の被検査体80が搬送ベルト90によって搬送されると、X線源11によって被検査体80にX線11aが照射され、X線検出器12の検出結果がコンピュータ13に入力される。
【0041】
コンピュータ13は、X線検出器12の検出結果が入力されると、図10に示す処理を開始する。
【0042】
即ち、コンピュータ13は、X線検出器12の検出結果に基づいてX線画像30を生成し(S121)、生成したX線画像30のうち図8に示す処理によって予め設定されていた第1分割閾値41以上の濃度である画素の領域を被検査体領域31とし、X線画像30のうち被検査体領域31以外の領域を被検査体外領域32として分割し(S122)、分割した被検査体領域31のうち図8に示す処理によって予め設定されていた第2分割閾値42以上の濃度である画素の領域を強影響領域31aとし、被検査体領域31のうち強影響領域31a以外の領域を非強影響領域31bとして分割する(S123)。
【0043】
次いで、コンピュータ13は、S123において分割した強影響領域のX線画像30に対して画素の濃度と、所定の異物検出閾値51(図11参照。)とに基づいて異物84の有無を判断し(S124)、S123において分割した非強影響領域31bのX線画像30に対して画素の濃度と、異物検出閾値51とは異なる所定の異物検出閾値52(図12参照。)とに基づいて異物84の有無を判断する(S125)。
【0044】
そして、コンピュータ13は、S124及びS125における判断の結果をディスプレイ14に表示して(S126)、図10に示す一連の処理を終了する。即ち、コンピュータ13は、S124及びS125の少なくとも一方において異物84が有ると判断したときは異物84が有る旨をディスプレイ14に表示し、S124及びS125の何れにおいても異物84が無いと判断したときは異物84が無い旨をディスプレイ14に表示して、図10に示す一連の処理を終了する。
【0045】
コンピュータ13は、異物84の検出用の新たな被検査体80が搬送ベルト90によって搬送される度に、図10に示す一連の処理を行う。
【0046】
なお、図10に示すS123において分割される強影響領域31a及び非強影響領域31bは、例えば被検査体80の容器81の形状が図4に示すように円柱状である場合に第1分割閾値41及び第2分割閾値42の設定用の被検査体80に対して図8に示す処理によって適切な第1分割閾値41及び第2分割閾値42が設定されているとき、異物84の検出用の被検査体80がX線源11及びX線検出器12の間を図2に示すように通過した場合に図7に示すようになり、異物84の検出用の被検査体80がX線源11及びX線検出器12の間を図13に示すように通過した場合に図14に示すようになる。
【0047】
また、図10に示すS123において分割される強影響領域31a及び非強影響領域31bは、例えば被検査体80の容器81の形状が図4に示すように円柱状であって4つの被検査体80が図15に示すように一塊にされている場合に第1分割閾値41及び第2分割閾値42の設定用の4つの被検査体80の塊に対して図8に示す処理によって適切な第1分割閾値41及び第2分割閾値42が設定されているとき、異物84の検出用の4つの被検査体80の塊がX線源11及びX線検出器12の間を図16に示すように通過した場合に図17に示すようになる。
【0048】
以上に説明したように、コンピュータ13は、図10に示すS123において強影響領域31a及び非強影響領域31bという複数の領域に被検査体領域31を分割するようになっており、領域分割手段を構成している。また、コンピュータ13は、図10に示すS124において強影響領域31aのX線画像30に対して異物84の有無を判断するようになっているとともに、図10に示すS125において非強影響領域31bのX線画像30に対して異物84の有無を判断するようになっており、異物判断手段を構成している。したがって、X線異物検出装置10は、被検査体領域31中の領域毎に領域毎用の処理によって異物84の有無を判断するので、従来異物84の有無を検査することができなかった領域83(図2、図13及び図16参照。)についても検査することができ、異物84の有無の判定の信頼性を従来より向上することができる。例えば、X線異物検出装置10は、図2、図13及び図16に示すように、容器81の影響によってX線11aが透過し難くX線画像30中の強影響領域31aに対応する領域83に異物84が存在していても、その異物84を検出することができる。
【0049】
なお、コンピュータ13は、各画素と異物検出閾値51又は異物検出閾値52とを単純に比較することによって異物84の有無を判断するようになっているが、異物84の有無をより適切に判断するために、X線画像30に所定のフィルタをかけた後、フィルタをかけたX線画像30に対して所定の閾値に基づいて異物84の有無を判断するようになっていても良い。コンピュータ13は、フィルタをかけたX線画像30に対して異物84の有無を判断するようになっている場合、強影響領域31aのX線画像30に対してかけるフィルタと、非強影響領域31bのX線画像30に対してかけるフィルタとを異ならせても良い。
【0050】
また、コンピュータ13は、図8に示すS109において強影響領域31a及び非強影響領域31bを分割するための第2分割閾値42を設定するようになっており、分割閾値設定手段を構成している。また、コンピュータ13は、図10に示すS123において画素の濃度分布と、第2分割閾値42とに基づいて強影響領域31a及び非強影響領域31bを分割するようになっている。したがって、X線異物検出装置10は、被検査体80のX線画像30のうち被検査体80中の容器81の影響が強いと想定される強影響領域31aに対しても、強影響領域31a以外の非強影響領域31bに対してと同様に異物84の有無を検出することができる。
【0051】
また、コンピュータ13は、図8に示すS105において強影響領域31aをX線画像30に重ねてディスプレイ14に表示させるようになっており、表示制御手段を構成している。また、コンピュータ13は、図8に示すS109において利用者によって指定された第2分割閾値42を設定するようになっている。したがって、X線異物検出装置10は、第2分割閾値42によって分割された強影響領域31aを利用者に見させながら利用者に第2分割閾値42を指定させることができるので、利用者に第2分割閾値42を容易に設定させることができる。コンピュータ13は、図8に示すS105において強影響領域31aをX線画像30に重ねてディスプレイ14に表示させるようになっているが、強影響領域31aに代えて非強影響領域31bをX線画像30に重ねてディスプレイ14に表示させるようになっていても良いし、強影響領域31a及び非強影響領域31bの両方をX線画像30に重ねてディスプレイ14に表示させるようになっていても良い。
【0052】
なお、コンピュータ13は、強影響領域31aのX線画像30における被検査体80の搬送方向上の位置が等しい画素のうち濃度が最大の画素の濃度を被検査体80の搬送方向上の位置毎に表したグラフ、即ち図11に示すようなグラフをディスプレイ14に表示させるようになっていれば、強影響領域31aのX線画像30に対して異物84の有無を判断するための異物検出閾値51を利用者に容易に設定させることができる。同様に、コンピュータ13は、非強影響領域31bのX線画像30における被検査体80の搬送方向上の位置が等しい画素のうち濃度が最大の画素の濃度を被検査体80の搬送方向上の位置毎に表したグラフ、即ち図12に示すようなグラフをディスプレイ14に表示させるようになっていれば、非強影響領域31bのX線画像30に対して異物84の有無を判断するための異物検出閾値52を利用者に容易に設定させることができる。
【0053】
また、コンピュータ13は、図8に示す処理の開始前に第1分割閾値41及び第2分割閾値42が初期値として予め“100”に設定されるようになっているが、X線検出器12の検出結果の入力後、図8に示す処理の開始前に第1分割閾値41及び第2分割閾値42の少なくとも一方を自動的に設定するようになっていても良い。例えば、コンピュータ13は、X線検出器12の検出結果が入力されると、第1分割閾値41及び第2分割閾値42の設定用の被検査体80の図6に示すようなX線画像30における画素の濃度分布に基づいて、最適な第1分割閾値41及び第2分割閾値42を自動的に設定した後、図8に示す処理を開始するようになっていても良い。
【0054】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るX線異物検出装置の構成は、コンピュータ13に記録されたプログラムが異なることを除いて、第1の実施の形態に係るX線異物検出装置10(図1参照。)の構成とほぼ同様であるので、X線異物検出装置10の構成と同一の符号を付して説明する。
【0055】
本実施の形態に係るX線異物検出装置の動作について説明する。
【0056】
まず、第1分割閾値41及び第2分割閾値42を設定する動作について説明する。
【0057】
コンピュータ13は、図18に示すように、図8に示すS101からS103までの処理と同様に、S141からS143までの処理を実行する。次いで、コンピュータ13は、S143において分割した被検査体領域31のうち現在の第2分割閾値42以上の濃度である画素の領域を強影響領域31aの候補である強影響候補領域33a(図19参照。)として分割し(S144)、分割した強影響候補領域33aのうち被検査体領域31の境界に接した領域を図20に示すように強影響領域31aとし、被検査体領域31のうち強影響領域31a以外の領域を非強影響領域31bとして分割する(S145)。そして、コンピュータ13は、図8に示すS105からS110までの処理と同様に、S146からS151までの処理を実行して、図18に示す一連の処理を終了する。
【0058】
次に、被検査体80に含まれる異物84の有無を検出する動作について説明する。
【0059】
コンピュータ13は、図21に示すように、図10に示すS121及びS122の処理と同様に、S161及びS162の処理を実行する。次いで、コンピュータ13は、S162において分割した被検査体領域31のうち図18に示す処理によって予め設定されていた第2分割閾値42以上の濃度である画素の領域を強影響領域31aの候補である強影響候補領域33aとして分割し(S163)、分割した強影響候補領域33aのうち被検査体領域31の境界に接した領域を強影響領域31aとし、被検査体領域31のうち強影響領域31a以外の領域を非強影響領域31bとして分割する(S164)。そして、コンピュータ13は、図10に示すS124からS126までの処理と同様に、S165からS167までの処理を実行して、図21に示す一連の処理を終了する。
【0060】
以上に説明したように、本実施の形態に係るX線異物検出装置のコンピュータ13は、画素の濃度分布及び第2分割閾値42に基づいて強影響候補領域33aを分割し、被検査体領域31の境界に接した強影響候補領域33aを強影響領域31aとして分割するようになっている。したがって、本実施の形態に係るX線異物検出装置は、被検査体80のX線画像30のうち実際には異物84に対応する領域が誤って強影響領域31aに含まれる可能性を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明に係るX線異物検出装置は、従来異物の有無を検査することができなかった領域についても検査することができ、異物の有無の判定の信頼性を従来より向上することができるという効果を有し、食品等の生産ライン上に設置されるX線異物検出装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置のブロック図
【図2】(a)図1に示すX線異物検出装置のX線源及びX線検出器の正面図 (b)図2(a)に示す状況における図2(a)に示すX線源及びX線検出器の側面図
【図3】図1に示すX線異物検出装置のディスプレイに表示される画像を示す図
【図4】(a)図2に示す被検査体の上面図 (b)図4(a)に示す被検査体の側面図
【図5】図1に示すX線異物検出装置によって生成されたX線画像の被検査体領域及び被検査体外領域を示す図
【図6】図1に示すX線異物検出装置によって生成されたX線画像における画素の濃度分布を示す図
【図7】図1に示すX線異物検出装置によって生成されたX線画像の被検査体領域の強影響領域及び非強影響領域を示す図
【図8】利用者によって分割閾値が設定されるときの図1に示すX線異物検出装置の動作のフローチャート
【図9】利用者によって分割閾値が設定されるときに図1に示すX線異物検出装置のディスプレイに表示される画像を示す図
【図10】被検査体に含まれる異物の有無を検出するときの図1に示すX線異物検出装置の動作のフローチャート
【図11】図1に示すX線異物検出装置によって分割された強影響領域のX線画像における被検査体の搬送方向上の位置が等しい画素のうち濃度が最大の画素の濃度を被検査体の搬送方向における位置毎に表したグラフを示す図
【図12】図1に示すX線異物検出装置によって分割された非強影響領域のX線画像における被検査体の搬送方向上の位置が等しい画素のうち濃度が最大の画素の濃度を被検査体の搬送方向における位置毎に表したグラフを示す図
【図13】(a)図2に示す被検査体が図2に示す状況とは異なる状況で搬送されたときの図1に示すX線異物検出装置のX線源及びX線検出器の正面図 (b)図13(a)に示す状況における図13(a)に示すX線源及びX線検出器の側面図
【図14】図13に示す状況で被検査体が搬送されたときに図1に示すX線異物検出装置によって分割される強影響領域及び非強影響領域を示す図
【図15】(a)図4に示す被検査体の塊の上面図 (b)図15(a)に示す塊の側面図
【図16】(a)図15に示す塊が搬送されたときの図1に示すX線異物検出装置のX線源及びX線検出器の正面図 (b)図16(a)に示す状況における図16(a)に示すX線源及びX線検出器の側面図
【図17】図16に示す状況で図15に示す塊が搬送されたときに図1に示すX線異物検出装置によって分割される強影響領域及び非強影響領域を示す図
【図18】利用者によって分割閾値が設定されるときの本発明の第2の実施の形態に係るX線異物検出装置の動作のフローチャート
【図19】本発明の第2の実施の形態に係るX線異物検出装置によって分割される強影響候補領域を示す図
【図20】本発明の第2の実施の形態に係るX線異物検出装置によって分割される強影響領域及び非強影響領域を示す図
【図21】被検査体に含まれる異物の有無を検出するときの本発明の第2の実施の形態に係るX線異物検出装置の動作のフローチャート
【図22】(a)従来のX線異物検出装置のX線源及びX線検出器の正面図 (b)図22(a)に示す状況における図22(a)に示すX線源及びX線検出器の側面図
【図23】図22に示すX線異物検出装置によって生成されたX線画像を示す図
【符号の説明】
【0063】
10 X線異物検出装置
13 コンピュータ(領域分割手段、異物判断手段、分割閾値設定手段、表示制御手段)
14 ディスプレイ(表示手段)
30 X線画像
31 被検査体領域
31a 強影響領域(領域)
31b 非強影響領域(領域)
33a 強影響候補領域
42 第2分割閾値(分割閾値)
80 被検査体
81 容器(被検査体中の一部)
84 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被検査体(80)を透過したX線量に基づいて生成されたX線画像(30)を処理して前記被検査体に含まれる異物(84)の有無を検出するX線異物検出装置(10)において、
前記X線画像中の前記被検査体に対応すると想定される被検査体領域(31)を複数の領域(31a、31b)に分割する領域分割手段(13)と、前記領域分割手段によって分割された前記領域毎の前記X線画像に対して前記領域毎用の処理によって前記異物の有無を判断する異物判断手段(13)とを備えたことを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項2】
前記被検査体(80)中の一部(81)の影響が強いと想定される強影響領域(31a)及び前記強影響領域以外の非強影響領域(31b)に前記被検査体領域(31)を分割するための分割閾値(42)を設定する分割閾値設定手段(13)を備え、
前記領域分割手段(13)は、画素の濃度分布及び前記分割閾値設定手段によって設定された前記分割閾値に基づいて前記強影響領域及び前記非強影響領域を分割することを特徴とする請求項1に記載のX線異物検出装置(10)。
【請求項3】
前記領域分割手段(13)は、画素の濃度分布及び前記分割閾値設定手段(13)によって設定された前記分割閾値(42)に基づいて前記強影響領域(31a)の候補である強影響候補領域(33a)を分割し、前記被検査体領域(31)の境界に接した前記強影響候補領域を前記強影響領域として分割することを特徴とする請求項2に記載のX線異物検出装置(10)。
【請求項4】
画像を表示する表示手段(14)と、前記強影響領域(31a)及び前記非強影響領域(31b)の少なくとも一方を前記X線画像(30)に重ねて前記表示手段に表示させる表示制御手段(13)とを備え、
前記分割閾値設定手段(13)は、利用者によって指定された前記分割閾値(42)を設定することを特徴とする請求項2に記載のX線異物検出装置(10)。
【請求項5】
画像を表示する表示手段(14)と、前記強影響領域(31a)の前記X線画像(30)における前記被検査体(80)の搬送方向上の位置が等しい画素のうち濃度が最大の画素の濃度を前記位置毎に表したグラフ及び前記非強影響領域(31b)の前記X線画像における前記位置が等しい画素のうち濃度が最大の画素の濃度を前記位置毎に表したグラフの少なくとも一方を前記表示手段に表示させる表示制御手段(13)とを備えたことを特徴とする請求項2に記載のX線異物検出装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−317259(P2006−317259A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139690(P2005−139690)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】