説明

X線発生装置

【課題】 X線の線量を維持しつつ、電子ビームがターゲットに衝突する焦点を容易に変更することができるX線発生装置を提供する。
【解決手段】 陰極1とターゲット3とを結ぶ軸Aに沿って2段に第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とが設けられている。衝突位置変更制御部21は、これら偏向コイル11、13を連動操作することで、電子ビームeの中心軌道Eが絞り孔8を通過しつつ、絞り孔8へ入射する電子ビームeの中心軌道Eの方向を変える。これにより、絞り孔8を通過しターゲット3に到達する電子の量が減少することがないので、発生するX線の線量も低下することがない。さらに、絞り孔8へ入射する電子ビームeの中心軌道Eの方向を変えるようにすることで、焦点Fの位置を容易にかつ自在に変えることができる。したがって、焦点が損傷しても、容易に焦点Fの位置を変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業分野、医療分野などに用いられるX線発生装置に係り、特に、電子源から発生する電子ビームを偏向させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、X線の発生方式によって透過型や反射型のX線発生装置がある。図3(a)は、透過型のX線発生装置を例示している。陰極31から発生した電子ビームeは、ターゲット33に衝突しX線に変換される。陰極31とターゲット33との間には電子ビームeを集束させるフォーカスコイル35を備え、電子ビームeがターゲット33に衝突する焦点Fを微小化する。さらに、このフォーカスコイル35内には不要な電子ビームeをカットするアパーチャ37が挿入されている。
【0003】
透過型の場合、ターゲット33は、例えば、アルミニウム板を基材として、その陰極31側の表面に厚さ数ミクロンのタングステン膜が蒸着されている。このタングステン膜に電子ビームeがあたると、電子の運動エネルギーは、その数パーセントがX線となるほかは大部分が熱エネルギーに変換される。よって、タングステン膜は、高温になるとともに電子の衝突による衝撃を受ける。長時間にわたりX線を発生していくと、焦点位置のタングステン膜は穴があく等損傷し、むき出しとなるアルミニウム板に直接電子ビームeがあたるのでX線が発生しなくなる。
【0004】
ターゲット33が損傷すると、X線発生装置の運転を止めて、手作業でターゲット33を動かして電子ビームeが再びタングステン膜に衝突するようにターゲット33上の焦点位置をずらすように調整する作業を行う。
【0005】
なお、タングステン膜を厚くすることは、ターゲット33の長寿命化が期待できるかもしれないが、発生したX線をタングステン膜自体が吸収してしまい、所望のX線の線量が得られないので好ましくない。
【0006】
一方、反射型の場合では、ターゲットの熱伝導が比較的よいので、透過型に比べてターゲットが高温とならず、ターゲットの損傷も激しくない。よって、より長時間の使用に耐えることができる。しかしながら、ターゲットの表面が荒れ、最終的にX線が発生しなくなるのは透過型と同様である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−188092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には次のような問題がある。
【0008】
すなわち、従来の装置では、電子ビームeがターゲット33上に衝突する焦点Fをずらす作業に時間と労力がかかり煩わしい。
【0009】
そこで、図3(b)に示すように、陰極31とフォーカスコイル35との間に偏向コイル41を設けて、電子ビームeを偏向させる構成が考えられる。これによれば、ターゲット33を動かすことなく焦点Fをずらすことができる。
【0010】
しかし、電子ビームeを偏向するほど電子ビームeの中心軌道Eがアパーチャ37の絞り孔38からずれるので、フォーカスコイル35を通過する電子ビームeの量が減る。これにより、発生するX線の線量も低下し、投影像等が暗くなるという問題を招く。
【0011】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、X線の線量を維持しつつ、電子ビームがターゲットに衝突する焦点を容易に変更することができるX線発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の発明は、電子ビームを発生する電子源と、電子源に対向配置され、電子ビームの衝突によりX線を発生するターゲットと、電子源とターゲットとの間に配置され、通過する電子ビームの範囲を制限するように絞り孔が形成されている絞り手段とを備えるX線発生装置において、電子源と絞り手段との間に配置され、電子ビームを偏向する複数の偏向手段と、電子ビームの中心軌道が絞り孔を通過しつつ、絞り孔へ入射する電子ビームの中心軌道の方向を変えるように複数の偏向手段を連動操作して、電子ビームがターゲットに衝突する位置を変更する衝突位置変更制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、偏向手段を複数備えるので電子ビームを少なくとも2回以上偏向させることができる。よって、衝突位置変更制御手段により複数の偏向手段を連動して操作することで、電子ビームの中心軌道が絞り手段の絞り孔を通過するようにすることができる。このため、絞り孔を通過しターゲットに到達する電子の量が減少することがない。よって、ターゲットで発生するX線の線量も低下することがない。さらに、絞り孔へ入射する電子ビームの中心軌道の方向を変えるようにすることで、絞り孔を通過した電子ビームがターゲットに衝突する焦点の位置を容易にかつ自在に変えることができる。したがって、焦点が損傷しても、容易に焦点の位置を変更することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線発生装置において、前記衝突位置変更制御手段は、複数の偏向手段と絞り手段との配置情報に基づいて、各偏向手段による電子ビームの偏向角度が互いに所定の相関関係を満たすように、複数の偏向手段を操作することを特徴とするものである。
【0016】
[作用・効果]電子ビームの中心軌道が絞り孔を通過するときは、各偏向手段による電子ビームの偏向角度は互いに所定の相関関係が成立し、この相関関係は複数の偏向手段と絞り手段との配置情報に基づくものである。したがって、請求項2に記載の発明によれば、衝突位置変更制御手段は、複数の偏向手段と絞り手段との配置情報に基づくことにより、電子ビームの中心軌道が絞り孔を通過しつつ、絞り孔へ入射する電子ビームの中心軌道の方向を変えることを好適に実現できる。
【0017】
なお、本明細書は、次のようなX線発生装置に係る発明も開示している。
【0018】
(1)電子ビームを発生する電子源と、電子源に対向配置され、電子ビームの衝突によりX線を発生するターゲットと、電子源とターゲットとの間に配置され、電子ビームを集束させる集束手段とを備えるX線発生装置において、前記電子源と集束手段との間に配置され、電子ビームを偏向する複数の偏向手段と、電子ビームの中心軌道が集束手段の中央部を通過しつつ、集束手段へ入射する電子ビームの中心軌道の方向を変えるように複数の偏向手段を連動操作して、電子ビームがターゲットに衝突する位置を変更する衝突位置変更制御手段とを備えることを特徴とするX線発生装置。
【0019】
(作用・効果)絞り手段を備えていないX線発生装置の場合、本願の課題を有することはない。しかしながら、絞り手段を備えていない場合であっても、集束手段を備えるX線発生装置においては次のような課題が存在する。すなわち、電子ビームが通過する範囲が、円環状の集束手段の中央部から外れるほど、集束手段は電子ビームを適切に集束できなくなる。この結果、ターゲット上の焦点の寸法は大きくなり、このとき発生するX線では高拡大率の画像を得ることができないという問題がある。そこで、前記(1)に記載の発明によれば、電子ビームの中心軌道が集束手段の中央部を通過させることができるので、集束手段は好適に電子ビームを集束させることができる。なお、集束手段へ入射する電子ビームの中心軌道の方向を変えるようにすることで、焦点の位置を容易にかつ自在に変えることができる点は、請求項1に記載の発明と同様である。したがって、焦点が損傷しても、容易に焦点の位置を変更することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係るX線発生装置によれば、偏向手段を複数備えるので、電子ビームを少なくとも2回以上偏向させることができる。よって、衝突位置変更制御手段によって、複数の偏向手段を連動して操作することで、電子ビームの中心軌道を絞り手段の絞り孔を通過させるようにすることができる。これにより、絞り孔を通過する電子の量が減少することがない。よって、ターゲットで発生するX線の線量も低下することがない。さらに、絞り孔へ入射する電子ビームの中心軌道の方向を変えるようにすることで、絞り孔を通過した電子ビームがターゲットに衝突する焦点の位置を容易にかつ自在に変えることができる。したがって、焦点が損傷しても、容易に焦点の位置を変更することができる。以上より、X線の線量を維持しつつ、電子ビームがターゲットに衝突する焦点を容易に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
【0022】
図1は、実施例に係るX線管の構成を示す概略断面図である。
【0023】
本実施例に係るX線管は、いわゆる透過型のマイクロフォーカスX線管である。X線管は、電子ビームeを発生させる陰極1と、この陰極1に対向配置され、電子ビームeの衝突によりX線を発生するターゲット3とを有している。陰極1とターゲット3との間には電子ビームeを集束させるフォーカスコイル5が設けられている。フォーカスコイル5内には、通過する電子ビームeの範囲を制限するアパーチャ7が挿入されている。陰極1とアパーチャ7(フォーカスコイル5)との間には、さらに、陰極1とターゲット3とを結ぶ軸Aに沿って2段に、電子ビームeを偏向する偏向コイル11、13を設けている。このうち、陰極1側を第1偏向コイル11とし、アパーチャ7側を第2偏向コイル13として区別して呼ぶ。X線管は、この発明におけるX線発生装置に相当する。
【0024】
陰極1は、タングステンの細線で形成されるフィラメント、または6ホウ化ランタン(LaB6)や6ホウ化セリウム(CeB6)などで形成される単結晶あるいは焼結体のチップが用いられている。陰極1は、この発明における電子源に相当する。
【0025】
陰極1の電子ビームeを照射する側には図示省略の加速電極等が設けられ、高温状態とした陰極1から引き出される熱電子をターゲット3に向かって加速させる。図1では、電子ビームeが進行するとともに広がる様子を2点鎖線で模式的に表している。
【0026】
ターゲット3は、ベリリウム(Be)やアルミニウム(Al)などのX線吸収の少ない軽金属を基材とし、この基材の陰極1側の表面にタングステン(W)やモリブデン(Mo)などのX線発生効率のよい重金属の薄膜(例えば、厚さ3μm〜5μm)を蒸着して形成される。ターゲット3は、この発明におけるターゲットに相当する。
【0027】
ターゲット3に電子ビームeが衝突すると、上記した重金属の薄膜においてX線が発生する。発生したX線は、ターゲット3の陰極1と反対側から放射する。
【0028】
フォーカスコイル5は軸Aを中心とした円環状に構成されて、フォーカスコイル5を通過する電子ビームeを集束させる。焦点Fは、電子ビームeがターゲット3上に集束する点である。焦点Fの大きさは、フォーカスコイル5に流れる電流を制御することで微小化される。フォーカスコイル5は、この発明における集束手段に相当する。
【0029】
アパーチャ7は、その中心部に、軸Aに沿って所定の径の絞り孔8が形成されている。そして、フォーカスコイル5によって集束される電子ビームeを、絞り孔8を通過する電子ビームeのみに制限する。アパーチャ7は、この発明における絞り手段に相当する。
【0030】
第1偏向コイル11は、XZ平面内に軸Aを中心として左右(X軸方向)に対称な一対のX偏向コイル(11xn、11xs)を有している。同様に、図示を省略するが、第1偏向コイル11は、YZ平面内であってX偏向コイルと同一のXY平面上に、軸Aを中心としてY軸方向に対称な一対のY偏向コイル(11yn、11ys)を有している。したがって、第1偏向コイル11は、4個のコイル(11xn、11xs、11yn、11ys)を備える。
【0031】
対向する一対のX偏向コイル(11xn、11xs)は、その間を通過する電子ビームeの進行方向をX軸方向に偏向させる。また、対向する一対のY偏向コイル(11yn、11ys)は、電子ビームeの進行方向をY軸方向に偏向させる。さらに、X偏向コイルとY偏向コイルとを併せて、電子ビームeを任意の方向に偏向させることができる。以下の説明では、とくに区別して呼ぶ必要がないときは、「第1偏向コイル11」と総称する。
【0032】
第2偏向コイル13も、第1偏向コイル11と同様に、X偏向コイル(13xn、13xs)と図示省略のY偏向コイル(13yn、13ys)を有している。以下では、とくに区別して呼ぶ必要が無いときは、「第2偏向コイル13」と総称する。なお、第1偏向コイル11、第2偏向コイル13は、それぞれこの発明における偏向手段に相当する。
【0033】
また、電子ビームeの偏向角度は、それぞれ第1偏向コイル11、第2偏向コイル13に流れる電流の大きさに応じたものとなる。
【0034】
第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とは、それぞれ第1電源15と第2電源17とに電気的に接続されて給電されている。この第1電源15と第2電源17とは、さらに衝突位置変更制御部(以下、適宜「変更制御部」という)21に制御されている。すなわち、変更制御部21は、第1電源15と第2電源17との給電量を制御して、第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とに流れる電流を制御している。なお、変更制御部21は、この発明における衝突位置変更制御手段に相当する。
【0035】
ここで、変更制御部21を詳しく説明する。
【0036】
変更制御部21は、電子ビームeの中心軌道Eが絞り孔8を通過しつつ、絞り孔8へ入射する電子ビームeの中心軌道Eの方向を変えるように、第1電源15(第1偏向コイル11)と第2電源17(第2偏向コイル13)とを制御する。
【0037】
図2を参照する。図2は、電子ビームeの中心軌道Eのみを模式的に表したX線管の断面図である。なお、第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とによる偏向は、説明の便宜上、X軸方向に限定して説明する。
【0038】
まず、第1偏向コイル11と第2偏向コイル13との間の距離をL1とし、第2偏向コイル13とアパーチャ7(フォーカスコイル5)との間の距離をL2とする。また、第1偏向コイル11、第2偏向コイル13による電子ビームの偏向角度をそれぞれ偏向角度θ1、偏向角度θ2とする。絞り孔8へ入射する電子ビームeの中心軌道Eの方向は、入射角度θ3に相当する。以下、L1とL2との関係により2つの場合に分けて説明する。
【0039】
(1)L1とL2が等しい場合
この場合、電子ビームeの中心軌道がアパーチャ7の絞り孔8を通過するとき、次式(1)が成立する。
【0040】
θ2 = 2θ1 ・・・(1)
さらに、各偏向角度(θ1、θ2)について、式(1)に示す所定の相関関係を満たしつつ、それぞれ増減変更させると、入射角度θ3を変えることができる。
【0041】
図2では、各偏向角度(θ1、θ2)をそれぞれ偏向角度(θ1´、θ2´)に変えることで、入射角度θ3は入射角度θ3´に変わり、ターゲット3上の焦点Fは焦点F´にずれることを模式的に表している。
【0042】
したがって、変更制御部21は、各偏向角度(θ1、θ2)が所定の相関関係を保ちつつ、各偏向角度(θ1、θ2)をそれぞれ変えるように、第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とに流れる電流を制御すればよい。これによって、電子ビームeの中心軌道Eが絞り孔8を通過しつつ、絞り孔8へ入射する電子ビームeの中心軌道Eの方向を変えることができる。
【0043】
図2から明らかなように、変更制御部21が絞り孔8へ入射する電子ビームeの中心軌道Eの方向を連続的に変えることで、焦点Fを連続的にずらすことができる。ここで、電子ビームeの偏向方向をX軸方向に限定している都合上、軸Aとターゲット3との交点Oを通りX軸と平行な直線XL上を焦点Fが移動することになる。しかし、X軸方向に加えてY軸方向にも電子ビームeを偏向させると、焦点Fをターゲット3上の任意の位置に自在に変更させることができる。
【0044】
(2)L1とL2が等しくない場合
この場合、電子ビームeの中心軌道がアパーチャ7の絞り孔8を通過するとき、次式(2)が成立する。
【0045】
θ2 = θ1(1+L1/L2) ・・・(2)
式(2)に示すように、第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とアパーチャ7(フォーカスコイル5)との配置に基づいて、偏向角度θ1と偏向角度θ2との所定の相関関係が存在する。そして、この所定の相関関係を満たしつつ、各偏向角度(θ1、θ2)とを変えることで、入射角度θ3を変えることができる。よって、変更制御部21は各偏向角度(θ1、θ2)が所定の相関関係を保ちつつ、各偏向角度(θ1、θ2)をそれぞれ変えるように、第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とに流れる電流を制御すればよい。これによって、電子ビームeの中心軌道Eが絞り孔8を通過しつつ、絞り孔8へ入射する電子ビームeの中心軌道Eの方向を変えることができる。
【0046】
なお、式(2)にL1=L2を代入すると式(1)が導かれる。よって、L1とL2が等しい場合も、L1とL2が等しくない場合と同様に、各偏向角度の相関関係は、第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とアパーチャ7(フォーカスコイル5)との配置情報に基づくものである。
【0047】
以上のように、本実施例に示したX線管によれば、偏向コイルとして第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とを2段設けているので、電子ビームeを2回偏向させることができる。よって、電子ビームeの中心軌道Eはアパーチャ7の絞り孔8を通過することができる。したがって、ターゲット3に到達する電子の量は減少することがなく、変換されるX線の線量も低下することがない。
【0048】
さらに、電子ビームeの中心軌道Eが絞り孔8を通過しつつ、絞り孔8へ入射する電子ビームeの中心軌道Eの方向を変えることができるので、ターゲット3上の焦点Fの位置を任意に変更することができる。すなわち、変更制御部21は、第1偏向コイル11と第2偏向コイル13を連動操作して、電子ビームeのターゲット3上の焦点位置を制御することができる。したがって、ターゲット3上の焦点Fが損傷しても、容易に焦点Fの位置をずらすことができる。よって、ターゲット3上の焦点Fが損傷したからといってX線管を停止させる必要はなく、X線管を稼動しつづけることができる。
【0049】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0050】
(1)上述した各実施例では、X線の発生方式が透過型のX線管であったが、反射型のX線管にも適用できる。
【0051】
(2)上述した各実施例では、偏向コイルは第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とを軸Aに沿って2段に設けていたが、偏向コイルを軸Aに沿って3段以上備える構成であってもよい。
【0052】
(3)上述した各実施例では、第1偏向コイル11と第2偏向コイル13とも、X軸方向とY軸方向とに対向して配置される一対のコイルを2組備える構成であった。しかし、対向配置されるコイルの組数は、1組でもよく、また3組以上でもよい。
【0053】
(4)上述した各実施例では、アパーチャ7を備える構成であった。しかし、アパーチャ7を備えていないX線管においても、本実施例の変更制御部21等を適用することができる。すなわち、電子ビームeの中心軌道Eがフォーカスコイル5の中央部を通過しつつ、フォーカスコイル5へ入射する電子ビームeの中心軌道Eの方向を変えるように変更制御部21が制御してもよい。これにより、フォーカスコイル5は、電子ビームeを微小焦点に集束させることができる。
【0054】
(5)上述した実施例では、焦点Fが損傷すると、別の位置を焦点Fとするように運転する場合を説明したが、焦点Fの位置を連続的にずらしながら電子ビームeをターゲット3に衝突させるように運転するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例に係るX線管の構成を示す概略断面図である。
【図2】(a)電子ビームeの偏向の様子を模式的に示すX線管の概略断面図と、(b)焦点Fがずれる様子を模式的に示すターゲット3の平面図である。
【図3】従来のX線管の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 …陰極
3 …ターゲット
5 …フォーカスコイル
7 …アパーチャ
8 …絞り孔
11 …第1偏向コイル
13 …第2偏向コイル
21 …衝突位置変更制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを発生する電子源と、電子源に対向配置され、電子ビームの衝突によりX線を発生するターゲットと、電子源とターゲットとの間に配置され、通過する電子ビームの範囲を制限するように絞り孔が形成されている絞り手段とを備えるX線発生装置において、電子源と絞り手段との間に配置され、電子ビームを偏向する複数の偏向手段と、電子ビームの中心軌道が絞り孔を通過しつつ、絞り孔へ入射する電子ビームの中心軌道の方向を変えるように複数の偏向手段を連動操作して、電子ビームがターゲットに衝突する位置を変更する衝突位置変更制御手段とを備えることを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線発生装置において、前記衝突位置変更制御手段は、複数の偏向手段と絞り手段との配置情報に基づいて、各偏向手段による電子ビームの偏向角度が互いに所定の相関関係を満たすように、複数の偏向手段を操作することを特徴とするX線発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−24522(P2006−24522A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203513(P2004−203513)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】