説明

X線較正装置

【課題】患者の腹部をモデル化したX線較正装置を提供する。
【解決手段】X線較正装置300は、第1のX線減弱係数の第1の材料を含むコア302を含む。コア302は、X線較正装置300のX線減弱係数を変えるために、異なるX線減弱係数のプラグを受けるように構成されるキャビティ306を画成する。X線較正装置300は、さらに、コア302を少なくとも部分的に囲繞する外層304を含む。外層304は、第2のX線減弱係数の第2の材料を含む。第2のX線減弱係数は、第1のX線減弱係数よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、内臓脂肪組織(VAT)測定値を確認するのに使用可能なX線較正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医師にとって、体重、脂肪量、身長、胴回り、性別、年齢などの個人の特徴は、死亡率および罹患率のリスクを増減させ得る特定の健康リスクを予測するのに有用な臨床上のディスクリプタである。例えば、皮下脂肪組織(SAT)または内臓脂肪組織(VAT)などの腹部脂肪の量またはタイプは、冠状動脈性心疾患および糖尿病など、有害な代謝性危険因子および特定の疾患と関係があり、それらの有用な予測因子である。さらに、内臓脂肪組織の測定は、例えば、メタボリックシンドローム(すなわち、心臓疾患および/または糖尿病のリスクを増大させる恐れがある内科的疾患の組み合わせ)に結び付くことがある。メタボリックシンドロームを患う人には、高血糖、高血圧、腹部肥満、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールが低い、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールが高い、総コレステロールが高いおよび/または高トリグリセリドのうちのいくつかまたは全てがあることがある。
【0003】
VATを測定する従来の方法およびシステムは、主に、人間型測定器(anthropomorphic gauges)、生体インピーダンス測定器、体重計などを使用して実施する。これらの装置は、しばしば、正確なVAT測定値を提供することができない。というのは、実際の脂肪含量が測定されるわけではなく、計算過程である程度の仮定/推定がなされる、および/または装置が正確に較正されていないからである。さらに、再現性を得るのが難しく、その結果、検査間での比較が不正確になってしまうことがある。
【0004】
医用診断イメージングシステムは、VAT含量の測定にも使用されてきた。しかし、これらのシステムの使用は、しばしば高価であり、また、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステムを使用すると患者を高いレベルの電離放射線に曝してしまうことにもなり得る。さらに、これらのイメージングシステムは、必ずしも臨床に使用できるとは限らず、長い走査時間を必要とするものもある。さらに、ある種の測定値は、より多くの人に正確とはいえない。
【0005】
VATを求める従来の方法およびシステムは、しばしば、簡単なモデルを使用することによって、腹腔を皮下脂肪の厚さの測定値の推定から近似する。しかし、これらの方法およびシステムでは、しばしばSATが正確に推定されないので、結果的にVATの推定が不正確になってしまう。例えば、通常の腹部の二重エネルギX線吸収法(DXA)での画像は、平面的な二次元(2D)画像であり、VATを明確に測定できない。というのは、垂直面におけるSATの厚さを測定できないからである。腹部まわり、特に臀部近くの皮下脂肪層の厚さを求めるのは非常に難しいとされている。というのは、過去に使用されていたモデルは、臀部近くの腹部まわりの皮下脂肪層の厚さの違いを考慮に入れていないからである。
【0006】
VATは、あるモデルをDXAシステムで取得されるデータと組み合わせて使用することにより推定可能であることが分かっている。しかし、依然として、特定のDXAシステムで得られたVAT測定値を確認するためのX線較正装置が望まれている。さらに、CTシステムで得られたVAT測定値とDXAシステムで得られたVAT推定値とを相互に関連付ける相互較正分析に使用できるX線較正装置が望まれている。DXAとCTシステムの間の相互較正分析からのデータは、例えば、DXAシステムでVATを推定するのに使用するモデルもしくはアルゴリズムの修正、または新しいモデルおよび/もしくはアルゴリズムの性能の確認に使用することができる。特にCTデータを使用した相互較正分析に関して、実際の患者で走査を実施すると、患者を不必要なX線線量に曝すことになるので、VAT測定値を求めるために患者の腹部をモデル化したX線較正装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様によれば、X線較正装置は、第1のX線減弱係数の第1の材料を含むコアを含む。コアは、X線較正装置のX線減弱係数を変えるために異なるX線減弱係数のプラグを受けるように構成されるキャビティを画成する。X線較正装置は、さらに、コアを少なくとも部分的に囲繞する外層を含む。外層は、第2のX線減弱係数の第2の材料を含む。第2のX線減弱係数は、第1のX線減弱係数よりも小さい。
【0008】
本開示の一態様によれば、X線較正装置は、いくつものX線減弱係数をもたらすように調整することができる調整可能材料を含むコアアセンブリを含む。X線較正装置は、さらに、コアアセンブリを外接して囲む外層を含む。外層のX線減弱係数は、コアアセンブリよりも小さい。
【0009】
本開示の一態様によれば、X線較正装置は、全体的に円筒形のコアを含む。コアは、少脂肪身体組織と概ね等しいX線減弱係数の第1の材料を含む。コアは2つのキャビティを画成する。X線較正装置は、コアを外接して囲む外層を含む。外層は、脂肪と概ね等しいX線減弱係数の第2の材料を含む。X線較正装置は、2つのキャビティに嵌合するように形作られる第1の複数のプラグを含む。第1の複数のプラグは、第1のX線減弱係数の第1の材料を含む。X線較正装置は、2つのキャビティに嵌合するように形作られる第2の複数のプラグを含む。第2の複数のプラグは、第2のX線減弱係数の第2の材料を含む。X線較正装置のX線減弱係数は、2つのキャビティに挿入される第1の複数のプラグと第2の複数のプラグの組み合わせに基づいて調整され得る。
【0010】
様々な他の特徴、態様および利点は、添付の図面およびその詳細な説明を読めば当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】被験体の腹部の内臓脂肪組織量を求めるために対象腹部領域を識別する二重エネルギX線画像の例示的な一実施形態の図である。
【図2】図1の二重エネルギX線画像を取得するのに使用可能な二重エネルギX線イメージングシステムの例示的な一実施形態の概略図である。
【図3】例示的な一実施形態によるX線較正装置の概略斜視図である。
【図4】一実施形態によるX線較正装置の概略断面図である。
【図5】一実施形態による複数のプラグの概略図である。
【図6】一実施形態によるX線較正装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照すると、図1は、身体(例えば被験体の身体)の二重エネルギX線画像20、より具体的には、二重エネルギX線イメージングシステムを使用した被験体の全身走査から生成され得る全身二重エネルギX線画像20の例示的な実施形態の図である。図示の二重エネルギX線画像20は、二重エネルギ組織画像である。画像20は、全身走査から生成され、いくつかの実施形態では、例えば単一イメージングパスまたは動作である単一走査中に全ての骨および組織の情報を取得することを含む。全身走査画像は、例えば、GE Healthcareから市販されているLunar iDXAイメージングシステムまたは他の骨密度測定システムなどの様々な二重エネルギX線イメージングシステムを使用して取得され得る。Lunar iDXAイメージングシステムは、一般的に、横断走査方向の視差がない。二重エネルギX線イメージングシステムの一実施形態については、図2に関連して以下でより詳細に説明する。
【0013】
画像20によって、画像化された身体の対象となる様々な部分または領域を識別することができる。例えば、画像20を使用して、画像化された身体のアンドロイド領域(android region)22を求めることができる。例えば、画像化された身体の組織情報に基づいて、アンドロイド領域22が識別され、取得された組織情報を用いてその内臓脂肪組織量が推定すなわち計算され得る。アンドロイド領域22の下側境界24および上側境界26は、二重エネルギX線走査中に取得された、画像20、ならびに多脂肪(fat)組織および少脂肪(lean)組織の情報を含む組織情報を含む情報を使用して求められ識別され得る。アンドロイド領域22は、全体的に被験体の腹領域すなわち腹部に対応する。
【0014】
一般的に、二重エネルギX線イメージングシステムから生成される画像20は、三次元(3D)の身体を二次元(2D)の画像にしたものである。具体的には、画像20は、二重エネルギX線イメージングシステムを使用して取得される身体の前後方向(AP)の画像である。画像20は、身体の後前方向(PA)の画像と呼ばれることもある。二重エネルギX線イメージングシステムを使用して、2つの異なるX線エネルギ範囲での1つまたは複数のX線減弱の投影測定(projection measurements)から、骨情報および組織情報(特に軟組織情報)の両方を取得することができる。例えば、被験体が、被験体の下にあるX線源と被験体の上にあるX線検出器の(または逆の)間にあるテーブルに横になる場合では、X線検出器は、被験体を通過する2つの異なるエネルギレベルのX線の透過の結果として、組織ならびに脊柱、骨またはその諸部分を含む身体組成の二重エネルギX線吸収法(DXA)でのAPビューについての情報を得ることができる。例示的な一実施形態では、被験体は、人間の患者(すなわち患者)、動物または物体であってよい。
【0015】
図2は、二重エネルギX線イメージングシステムの例示的な一実施形態の概略図である。図では、二重エネルギX線イメージングシステムは、二重X線吸収法(DXA)システム30として示されており、骨密度測定を実施することができる二重エネルギ骨密度測定システムとも呼ばれることがある。システム30は、様々な実施形態に従って構成され、組織の厚さ、骨面積、骨長、骨塩量(BMC)および骨塩密度(BMD)を含む少なくとも軟組織組成(身体組成)を測定するように構成される。BMDは、BMCを骨面積で除算して計算する。動作中、異なるエネルギレベルの2つのX線ビームは、被験体の走査に使用され、例えば人間の患者(例えば患者)の身体を走査して被験体の身体を画像化するのに使用される。取得された1つまたは複数の画像は、画像化された身体の組織および骨の情報、具体的には求められた組織組成(身体組成)および組織の厚さの情報を含み、被験体の腹部領域の内臓脂肪組織量の計算に使用される。1つまたは複数の画像は、二重エネルギX線走査中に取得される、求められた組織情報および骨密度情報から一部生成されてもよい。
【0016】
二重エネルギX線イメージングシステム30は、例えば患者である被験体34を長手方向軸36に沿って仰臥位または横臥位で支持する水平面を形成するテーブル32を含む。二重エネルギX線イメージングシステム30は、さらに、Cアームなどのイメージングアセンブリ38を含む。イメージングアセンブリ38は、テーブル32の下に配置されその一方の端部に配置されるX線源42を支持する下側アーム40を含む。イメージングアセンブリ38は、さらに、テーブル32の上に配置されその一方の端部にあるX線検出器46を支持する上側アーム44を含む。イメージングアセンブリ38は、下側アーム40と上側アーム44を連結するように構成され、それによってX線源42とX線検出器46が互いに一致した動きをするようになる。しかし、X線源42およびX線検出器46の位置は逆であってもよいことに留意されたい。X線検出器46は、例えば、エネルギ弁別をもたらす多重素子テルル化カドミウム亜鉛(CZT)検出器として製造されてもよい。X線源42およびX線検出器46は、被験体34の一連の横断走査50を追跡するように、横断ラスタパターン48で動かされる。その場合、X線源42およびX線検出器46は、X線検出器46により二重エネルギX線イメージングデータが収集される間、被験体34の全長に沿って、長手方向軸36に垂直に左右に動く。二重エネルギX線イメージングデータは、X線源42とX線検出器46の横断(左右)方向の移動中にしか収集されない。横断ラスタパターンは、並進コントローラ52で制御されるアクチュエータ(図示せず)によって形成される。動作中、X線源42は、長手方向軸36と平行な平面にX線ファンビーム54を生成する。しかし、いくつかの実施形態の中には、X線ファンビーム54が長手方向軸36に垂直な平面に形成されるものもある。いくつかの実施形態では、横断ラスタパターン48は、X線ファンビーム54の連続する横断走査50の間において幾分オーバーラップする(例えば約10%のわずかなオーバーラップを有する)ように調整される。
【0017】
他の二重エネルギX線イメージングシステムの中には、X線源およびX線検出器が、被験体の一連の縦走査を追跡するように縦方向ラスタパターンで動かされるものもある。その場合、X線源およびX線検出器は、被験体の全長に沿って長手方向軸と平行に頭部から脚部およびその逆に動く。
【0018】
X線源42、X線検出器46および並進コントローラ52は、コンピュータ60と通信し、その制御を受ける。コンピュータ60は、専用回路だけでなく、1つまたは複数のプロセッサを含むことができる。1つまたは複数のプロセッサは、例えばメモリまたはソフトウェアに格納されているコンピュータ60についての命令である格納プログラムを実行する機能を有する。例示的な一実施形態では、コンピュータ60は、さらに、体脂肪測定モジュール70を含む。体脂肪測定モジュール70は、二重エネルギX線画像データ、具体的には取得された組織および骨の情報を用いて、被験体34の走査身体の内臓脂肪組織量、より具体的には腹部内臓脂肪組織量を求める。動作中、体脂肪測定モジュール70は、身体の一部または全身の走査画像(すなわち全身走査画像)を取得するように二重エネルギX線イメージングシステム30に指示を出す。組織情報ならびに骨情報は、走査画像から識別され得る。骨の目標の配置は、自動、手動、または例えばオペレータが自動的に生成された目標を調整するかたちで半自動で決定され、画像化される身体の対象領域の識別に使用され得る。
【0019】
さらに、体脂肪測定モジュール70は、取得した組織情報、特に軟組織情報および骨情報を含む二重エネルギX線イメージデータを用いて被験体の1つまたは複数の対象領域内の内臓脂肪組織量を求めることができる。様々な実施形態では、組織および骨の情報または測定値を異なる方法またはモデルと組み合わせて使用することで、腹部内臓脂肪組織が求められ得る。内臓脂肪組織量が求められるべき1つまたは複数の対象領域の識別には様々な目標が使用され得ることに留意されたい。さらに、二重エネルギX線イメージングシステム30からの1つまたは複数の様々な断面の二次元平面画像において内臓脂肪組織量を求めるのに様々な方法またはモデルが使用され得ることにも留意されたい。さらに、様々な実施形態が二重エネルギX線イメージングシステムに関連して述べられているが、様々な実施形態は二重エネルギX線イメージングシステムまたはその特定の構造に限定されないことにも留意されたい。
【0020】
再び図2を参照すると、コンピュータ60は、オペレータによる入力およびオペレータへのテキストおよび画像の出力を可能にするディスプレイ64、キーボード66、およびマウス68などのカーソル制御装置を含むワークステーション62などの端末と通信する。いくつかの実施形態では、コンピュータ60は、ワークステーション62から離れた場所に配置される。適宜、コンピュータ60はワークステーション62の一部を形成してもよい。コンピュータ60は、1つはまたは複数の処理動作を実行するように構成される。例えば、画像、密度および厚さの情報である取得された組織および骨の情報は、走査セッション中、データが受信されるときにリアルタイムで処理され表示され得る。それに加えてまたは別法として、走査セッション中、データは、コンピュータ60のメモリ装置に一時的に格納され、その後オフライン動作で処理され表示されてもよい。さらに、情報は、同じ被験体の追跡検査走査中などの後の時点でそれにアクセスできるように(例えばハードドライブまたはサーバである)長期記憶装置に格納されてもよく、それによって被験体の内臓脂肪組織量の変化を監視することもできる。ディスプレイ64は、検査、診断および/または解析のために、組織および骨の情報をオペレータに提供することを含む、走査画像を含む被験体の情報を示す1つまたは複数のモニタを含むことができる。キーボード66、マウス68またはディスプレイ64自体のタッチスクリーンアイコンを使用して、表示されている画像を修正してもよく、ディスプレイ64の表示設定を手動で調整してもよい。
【0021】
動作中、二重エネルギX線イメージングシステム30は、二重エネルギX線モードまたは単一エネルギX線モードのいずれかで動作するように構成され得る。単一エネルギX線モードでは、X線源42は、約20〜150keVの診断イメージング範囲内で、数keVの狭い帯域のエネルギのX線を放射する。二重エネルギX線モードでは、X線源42は、同時または高速で連続的に放射される2つ以上のエネルギ帯域で放射線を放射する。X線源42は、さらに、診断イメージング域全体にわたって数keVを超える単一の広帯域エネルギを放射するように構成されてもよい。二重エネルギX線イメージングシステム30は、X線源42の電圧および/または電流を増減させることによって、二重エネルギX線モードと単一エネルギX線モードの間で切り替え可能である。二重エネルギX線イメージングシステム30は、さらにK−エッジフィルタを除去または追加することによって、二重エネルギX線モードと単一エネルギX線モードとの間で切り替えることもできる。X線源42は、様々なエネルギまたは様々なエネルギ範囲のX線を放射可能であることに留意されたい。
【0022】
X線源42は、図2に示されるようにファンビームのX線54を出力するように構成され得る。X線源42は、X線を、細いビーム(図示せず)、円錐状ビームまたは他の形状で出力するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、体脂肪測定モジュール70は、二重エネルギX線イメージングシステム30を単一エネルギX線モードまたは二重エネルギX線モードで動作させるように制御して、組織および骨の情報を取得して被験体の1つまたは複数の部分または領域の内臓脂肪組織量を求める。二重エネルギX線モードによって、例えば脂肪密度または脂肪厚さ情報などの軟組織情報である組織情報だけでなく骨格の骨情報も取得することができる。したがって、二重エネルギX線モードによって、様々なエネルギレベルからの減弱情報を使用した被験体34の軟組織の画像化だけでなく骨格の画像化も可能になる。単一エネルギX線モードではより高い解像度の画像も生成可能であることに留意されたい。
【0023】
様々な実施形態によって、被験体の1つまたは複数の異なる部分または領域の内臓脂肪組織量の計算または推定が可能になる。内臓脂肪組織量の計算に使用される組織および骨の情報は、様々な実施形態において、1回または複数回の二重エネルギX線走査を使用して取得される。例えば、内臓脂肪組織量の計算に使用するために、被験体34の一部または一領域(例えば腹部領域)だけを走査するかたちで、領域を特定したX線走査を実施してもよい。他の実施形態では、身体全体すなわち全身のX線走査が実施される。
【0024】
CTシステムまたはDXAシステムのいずれかで実施されるような内臓脂肪組織(VAT)測定は、患者の内臓脂肪の程度の判定を試みるものである。皮下脂肪層は、一般的に、VAT測定には含まれない。上述のように、各CT走査に関連する費用および線量の問題があるので、CTはVAT測定についての適切な選択肢にはあげられない。しかし、DXAの費用および線量はCT走査よりも低い。
【0025】
図3は、例示的な一実施形態によるX線較正装置300の概略斜視図である。X線較正装置300は、図2に示されるDXAシステム30のようなDXAシステムと共に使用可能である。X線較正装置300は、コア302および外層304を含む。コア302は、4つのキャビティである、第1のキャビティ306、第2のキャビティ308、第3のキャビティ310および第4のキャビティ312を画成するように形作られる。コア302は、少脂肪身体物質のX線減弱をシミュレートする材料で作られる。言い換えれば、コア302に使用される材料のX線減弱係数は、患者の少脂肪身体物質で見られるのと概ね等しい。いくつかの実施形態によれば、コア302は、全体的に円柱または長円柱として形作られる。他の実施形態は、典型的な患者の腹部により厳密に合う形状のコアを含むことができる。例えば、コアは、患者の腹部の後部に対応する平らな側を有することができる。コアは、さらに、前側に対応する側により複雑な断面を有することができる。一実施形態によれば、コア302に使用される少脂肪身体物質は、DXAシステムによる測定で、0%脂肪〜20%脂肪のX線減弱係数を有することができる。例示的な一実施形態によれば、コア302は、DXAシステムによる測定で0%脂肪〜20%脂肪のX線減弱係数を得るために、カルシウム粉末、リン酸カルシウム、シリコンなどのより高いz材料で変性されたポリスチレンまたは他のプラスチックなどのベース材料を含むことができる。例示的な一実施形態は高z材料で変性されたプラスチックを使用しているが、コア302には、適切な放射線学的特性がある任意の物質を使用することができると当業者には理解されたい。0〜20%脂肪のX線減弱係数のコア材料の使用は、DXA走査の実施の際、少脂肪と考えられる組織と一致する。これは、患者の少脂肪身体物質が、依然として、細胞構造により測定可能な脂肪量を含むことによるものである。
【0026】
X線較正装置300は、典型的な患者の腹部をモデル化するように形作られる。例示的な一実施形態によれば、X線較正装置300は、長さが約20cmであってよい。図4は、図3に示されるX線較正装置300の断面を概略的に示したものである。図3、4では、同一構造を識別するのに共通の参照番号を使用する。一実施形態によれば、X線較正装置300は、図4に示されるように、全体的に長円の断面を有することができる。長軸320は約32cmであり、短軸322は約21cmである。X線較正装置300は、患者の腹部の解剖学的構造をより厳密にモデル化するために、断面は完全な長円ではない。例えば、底部側324は、典型的な患者の腹部の後部側に類似するようなかたちで、実質的に平らである。さらに、底部側324を平らにすることによって、X線較正装置300が、走査中、揺れ動くまたは移動しないようになる。
【0027】
外層304は、コア302を囲繞する。外層304は、典型的な患者の腹部領域を囲繞する皮下脂肪層と等しいX線減弱係数の材料から作られる。例示的な一実施形態によれば、外層304は、DXAシステムでの測定で70〜90%脂肪と等しいX線減弱係数の材料を含むことができる。外層304は、図3、4に示されるように、コア302を外接して囲む。
【0028】
図3、4に示される実施形態によれば、コア302を囲繞する外層304は、厚さが均一である。しかし、他の実施形態によるによれば、外層304は、典型的な皮下脂肪層により厳密に似せるために、様々な厚さのものであってもよい。
【0029】
上述のように、X線較正装置300は、4つのキャビティである、第1のキャビティ306、第2のキャビティ308、第3のキャビティ310および第4のキャビティ312を画成する。一実施形態によれば、第1のキャビティ306および第2のキャビティ308は、同じ形状であってよい。例えば、それらは、第1の直径の円柱の形状であってよい。第3のキャビティ310もまた、第4のキャビティ312と寸法および形状が同じであってよい。一実施形態によれば、それらは、第1の直径よりも小さい第2の直径の円柱であってよい。4つのキャビティ306、308、310、312は、X線較正装置300の長さについて、全体的に断面積が一定であってよい。キャビティ306、308、310、312のそれぞれは、プラグを受けるように構成され得る。キャビティは、様々なプラグの簡単な出し入れを促すために、開口端キャビティとすることができる。以下でキャビティおよびプラグについてさらに詳細に説明する。
【0030】
図5は、一実施形態による複数のプラグ350の概略図である。図3、5を参照すると、第1の複数のプラグ352は、第1のキャビティ306または第2のキャビティ308に嵌合するような寸法および形状であり、第2の複数のプラグ354は、第3のキャビティ310または第4のキャビティ312に嵌合するような寸法および形状である。プラグ350は、キャビティに押入れられ、そこで圧入により固定され得る。一実施形態によれば、プラグ356、358は、第1のX線減弱係数の第1の材料で作られ、プラグ360、362は、第2のX線減弱係数の第2の材料で作られる。同様に、第2の複数のプラグ354のうち、プラグ364、366は第1の材料で作られ、プラグ368、370は第2の材料で作られる。一実施形態によれば、第1の材料は、コア302に使用される材料と同じであってよく、第2の材料は、外層304に使用される材料と同じであってよい。
【0031】
X線較正装置300は、多数の内臓脂肪組織の組成物で得られるVAT測定値を確認するためのファントムとして使用することができる。言い換えれば、VAT測定を実施するときは、X線較正装置300を走査すればよい。図5に関して述べたように、プラグは、様々なX線減弱係数の様々な材料で作られる。プラグは、コア302によって画成されるキャビティに挿入され得る。どのプラグをキャビティに挿入するかを調整することによって、X線較正装置300の全体的なX線減弱係数を調整することができる。説明を簡単にするために、コア302と同じ組成のプラグを「少脂肪プラグ」と呼び、外層304と同じ組成のプラグを「脂肪プラグ」と呼ぶことにする。さらに、X線較正装置のコア302および挿入プラグを含む部分を、X線較正装置300の「コアアセンブリ」と呼ぶことにする。コアアセンブリは、コア302および挿入プラグを含むので、調整可能材料である。挿入プラグのうちの1本を取り除きそれを異なるX線減弱係数の他のプラグと置き換えることによって、コアアセンブリの全体のX線減弱係数を簡単に変えることができる。4本全ての少脂肪プラグをキャビティに挿入すれば、コアアセンブリは少脂肪材料と等しいX線減弱を有することになる。他方で、4本全ての脂肪プラグを挿入すれば、コアアセンブリは数パーセントの脂肪がある組織と等しいX線減弱係数を有することになる。脂肪の正確なパーセンテージは、4本のプラグの体積およびコア302の体積の幾何学的計算に基づいて求めることができる。さらに、一実施形態によれば、脂肪プラグと少脂肪プラグを任意に組み合わせて、コア302により画成されるキャビティに挿入することもできる。他の実施形態によれば、少脂肪および脂肪以外の組成のプラグも使用することができる。例えば、他の実施形態では、組成が少脂肪と脂肪の間のプラグが使用され得る。コアアセンブリのX線減弱係数は、全プラグが少脂肪である構成と全プラグが脂肪であるである構成の間の多数のレベルのうちのどれかに調整することができると理解されたい。この場合も、各プラグの体積および組成が既知であるので、予想されるVAT測定結果は、簡単に計算でき、CTシステム(図示せず)または(図2に示される)DXAシステム30のようなDXAシステムによる結果と比較することができる。
【0032】
X線較正装置300は、いくつかの理由により、DXAシステムまたはCTシステムのいずれかで得られたVAT測定値の確認に良く適している。第1に、X線較正装置300は、全体的に患者の腹部のような形状であり、ファントムとして有用であるほど十分に正確に内臓組織をモデル化している。第2に、X線較正装置300の外層304は皮下脂肪層を表しており、それは典型的な患者で見られるようなものと同様である。したがって、X線較正装置300は、特定のVAT推定アルゴリズムが皮下脂肪を正確に表しているかを確認するのに使用することができる。第3に、X線較正装置300のプラグは異なるX線減弱係数のプラグに簡単かつ迅速に切り替えられるように構成されているので、X線較正装置300の全体のX線減弱は、様々な既知の脂肪レベルを表すように迅速に調整可能である。したがって、使用者は、X線較正装置300を使用して、多数の脂肪レベルで、CTによるVAT測定値、およびDXAによるVAT測定値を確認することができる。
【0033】
図6は、一実施形態によるX線較正装置400の概略斜視図である。X線較正装置400は、4つのキャビティを画成するコア402を含む。図には4本のプラグ404がコア402によって画成される4つのキャビティに挿入されているX線較正装置400が示されている。プラグ404は、箱形であり、その形状はキャビティと補完関係にある。コアアセンブリ405は、コア402だけでなくプラグ404も含む。外層406は、コア402を外接して囲む。図6に示される実施形態の外層406は、人間の皮下脂肪層をより厳密にモデル化するために、その厚さを変えることができる。例えば、外層406は、患者の腹部に対応するポイント410よりも、患者の脇腹に対応するポイント408でより薄くなっている。X線較正装置400は、全体的に、形状が長円柱である。
【0034】
他の実施形態は、図3、4、6に示される実施形態とは異なった形状であってもよい。さらに、他の実施形態は、様々なX線減弱レベルのプラグを受けるように構成されるキャビティの数が異なってもよい。例えば、諸実施形態は、わずか1つのキャビティを画成するコアを有することができ、諸実施形態は、4つより多いキャビティを画成するコアを有することもできる。さらに、諸実施形態は、2つより多いX線減弱係数を示すプラグを有することもできる。例えば、それぞれが異なるX線減弱係数の様々なプラグを使用することによって多くの様々なレベルの内臓脂肪をモデル化するのに、1つのキャビティしか画成しないX線較正装置を使用することも依然として可能である。
【0035】
本開示を様々な実施形態を参照して説明してきたが、当業者には、本開示の精神から逸脱することなく、実施形態に特定の置換、代替および省略を行うことができると理解されよう。したがって、前述の説明は、単なる例示に過ぎず、以下の特許請求の範囲で明記されるような本開示の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0036】
20 二重エネルギX線画像
22 アンドロイド領域
24 下側境界
26 上側境界
30 二重エネルギX線イメージングシステム
32 テーブル
34 被験体または患者
36 長手方向軸
38 イメージングアセンブリ
40 下側アーム
42 X線源
44 上側アーム
46 X線検出器
48 横断ラスタパターン
50 横断走査
52 並進コントローラ
54 X線ファンビーム
60 コンピュータ
62 ワークステーション
64 ディスプレイ
66 キーボード
68 マウス
70 体脂肪測定モジュール
300 X線較正装置
302 コア
304 外層
306 第1のキャビティ
308 第2のキャビティ
310 第3のキャビティ
312 第4のキャビティ
320 長軸
322 短軸
324 底部側
350 プラグ
352 第1の複数のプラグ
354 第2の複数のプラグ
356 プラグ
358 プラグ
360 プラグ
362 プラグ
364 プラグ
366 プラグ
368 プラグ
370 プラグ
400 X線較正装置
402 コア
404 プラグ
405 コアアセンブリ
406 外層
408 ポイント
410 ポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線較正装置(300)であって、
第1のX線減弱係数の第1の材料を含むコア(302)であって、前記X線較正装置(300)のX線減弱係数を変えるために、異なるX線減弱係数のプラグ(350)を受けるように構成されるキャビティ(306)を画成する、コア(302)と、
前記コア(302)を少なくとも部分的に囲繞する外層(304)であって、前記第1のX線減弱係数よりも小さい第2のX線減弱係数の第2の材料を含む、外層(304)と
を備える、X線較正装置(300)。
【請求項2】
前記コア(302)が、全体的に円柱として形作られる、請求項1記載のX線較正装置(300)。
【請求項3】
前記コア(302)が、全体的に長円柱として形作られる、請求項1記載のX線較正装置(300)。
【請求項4】
前記キャビティ(306)の形状が、全体的に円筒形である、請求項1記載のX線較正装置(300)。
【請求項5】
前記キャビティ(306)が、全体的に箱形である、請求項1記載のX線較正装置(300)。
【請求項6】
前記コア(302)のX線減弱係数が、少脂肪身体物質のX線減弱係数と概ね等しい、請求項1記載のX線較正装置(300)。
【請求項7】
前記第2のX線減弱係数が、脂肪のX線減弱係数と概ね等しい、請求項6記載のX線較正装置(300)。
【請求項8】
前記キャビティ(306)に嵌合するように形作られる複数のプラグ(350)であって、それぞれが異なるX線減弱係数の材料を含む複数のプラグ(350)をさらに備える、請求項1記載のX線較正装置(300)。
【請求項9】
いくつものX線減弱係数をもたらすように調整され得る調整可能材料を含むコアアセンブリ(405)と、
前記コアアセンブリ(405)を外接して囲み、前記コアアセンブリ(405)よりも小さいX線減弱係数を有する、外層(304)と
を備える、X線較正装置(300)。
【請求項10】
前記コアアセンブリ(405)が、キャビティ(306)を画成するコア(302)を備える、請求項9記載のX線較正装置(300)。
【請求項11】
前記コアアセンブリ(405)が、前記コア(302)によって画成される前記キャビティ(306)に嵌合するように形作られ前記コア(302)とは異なる減弱係数を有する第1のプラグ(356)をさらに備える、請求項10記載のX線較正装置(300)。
【請求項12】
前記コアアセンブリ(405)が、前記コア(302)によって画成される前記キャビティ(306)内に嵌合するように形作られ前記第1のプラグ(356)とは異なる減弱係数を有する第2のプラグ(360)をさらに備え、前記コアアセンブリ(405)の前記X線減弱係数が、前記第1のプラグ(356)または前記第2のプラグ(360)のどちらが前記キャビティ(306)内に配置されるかに基づいて調整され得る、請求項11記載のX線較正装置(300)。
【請求項13】
X線較正装置(300)であって、
全体的に円筒形のコア(302)であって、少脂肪身体組織と概ね等しいX線減弱係数の第1の材料を含み、2つのキャビティを画成する、コア(302)と、
前記コア(302)を外接して囲む外層(304)であって、脂肪と概ね等しいX線減弱係数の第2の材料を含む、外層(304)と、
前記2つのキャビティ内に嵌合するように形作られる第1の複数のプラグ(352)であって、第1のX線減弱係数の第1の材料を含む、第1の複数のプラグ(352)と、
前記2つのキャビティ内に嵌合するように形作られる第2の複数のプラグ(354)であって、第2のX線減弱係数の第2の材料を含む、第2の複数のプラグ(354)と
を備え、
前記X線較正装置(300)のX線減弱係数が、前記2つのキャビティに挿入される前記第1の複数のプラグ(352)と前記第2の複数のプラグ(354)の組み合わせに基づいて調整され得る、
X線較正装置(300)。
【請求項14】
前記第1の複数のプラグ(352)および前記第2の複数のプラグ(354)が、圧入で前記コア(302)内に配置されるように構成される、請求項13記載のX線較正装置(300)。
【請求項15】
前記コア(302)が、前記第1の複数のプラグ(352)と前記第2の複数のプラグ(354)の挿入を可能にするように開口端キャビティを画成する、請求項13記載のX線較正装置(300)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−81770(P2013−81770A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215557(P2012−215557)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.アンドロイド
2.ANDROID
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】