説明

X線CT装置

【課題】 3DBP演算を行う画像処理装置にあって、3DBP演算と2DBP演算とを切り替えて行えるように構成し、2DBP演算処理の速度をより高速で行うことのできるCT装置を提供すること。
【解決手段】 多列検出器を備えるX線CT装置1において,X線の体軸方向に対する照射開き角(コーン角)を考慮し、かつ、X線検出器を列方向とチャンネル方向の2次元で取り扱う逆投影(3DBP)演算を行う複数の3DBP演算器の処理にあたって、前記逆投影(3DBP)演算データを記憶するメモリPM、及び前記3DBP演算器の分配を切り替えて、1次元検出器相当のデータを使う逆投影(2DBP)演算を高速に行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置に係り、特に多列検出器及び面検出器を持ち、3DBP演算と2DBP演算のそれぞれを切り替えて、2DBP演算も高速で行うことのできるCT装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、寝台に載置された被検体の周囲をX線発生装置と多列検出器とが対となって回転しながら被検体にX線を照射し、一定角度毎にデータをサンプリングするようになっている。この一定角度のデータをビューデータは、称されている。
この多列検出器から出力されるサンプリングデータは、順次、ビュー毎に画像処理装置に送出される。
【0003】
そして、この画像処理装置には、投影データに基づいて逆投影演算を行うBack Projection Unit(逆投影ユニット、以下「BP Unit」という)が備えられている。この逆投影ユニット(BP Unit)の構成は、図9に示されている。以下、図9に基づいて、図9に図示の逆投影ユニット(BP Unit)100について説明する。
【0004】
図9に図示の逆投影ユニット(BP Unit)100は、複数の逆投影演算器(以下「BP演算器」という)BP、BP、……BPn−1、BPによって構成されている。そして、この各BP演算器は、フィルタリング処理を終えた 2次元投影データ(Projection Dataと呼ぶ)を必要となる最大量保存可能なProjection Memory(プロジェクションメモリ)120と、演算に使うデータをProjection Dataより抽出するAddress Generator(アドレスジェネレータ、以下「AG」という)130と、3DBP演算を行う算術演算装置(Arithmetic Logical Unit、以下「ALU」)110とによって構成されている。
このBP演算器BP、BP、……BPn−1、BPの実現手段には、Discreet ICでの構築や、汎用プロセッサ、プログラミングできる集積回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)、特定用途向けIC集積回路(Appication Specific Integrated Circuits、以下「ASIC」という)等の高集積ICを用いた手法がとられる。
【0005】
Projection Dataは、ビュー毎に各BP演算器のプロジェクションメモリ(Projection Memory)にロードされ、このロードされたProjection Dataに対して各ALU110において3DBP演算が行われる。
【0006】
逆投影演算器BPで演算された結果は、順次、隣の逆投影演算器BPに送られる。すなわち、まず、BP演算器BP1で演算された結果は、隣のBP演算器BP2に出力され、BP演算器BP2で演算された結果は、隣のBP演算器BP3に出力されと、順次、隣のBP演算器BPに送出される。
【0007】
BP演算器BP1で演算された結果を入力したBP演算器BP2においては、プロジェクションメモリ(Projection Memory)のデータから演算した結果に、BP演算器BP1から出力されてきた演算結果を加算して、BP演算器BP3へ送出するようになっている。
【0008】
この演算処理をパイプライン処理で行い、高速に断面積を求めている。図9に図示の逆投影ユニット(BP Unit)100では、逆投影演算器BPをN個備えたN段のパイプライン処理を行う例が示されている。この図9に図示のように逆投影演算器BPをN個備えてN段のパイプライン処理を行う場合には、逆投影演算器BP単体で処理する時間Tの約1/Nの時間で処理を行うことができる。
【0009】
近年、プロジェクションメモリ(Projection Memory)の有効活用を図り、処理時間を短縮できるX線CT装置及び逆投影演算器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1は、画像処理手段において、ライン数設定手段が処理ラインの段数を複数設定した場合、複数の処理ラインのうちの一の処理ラインと他の処理ラインとが、異なるビュー方向の投影データに基づく逆投影演算処理を同時に実行できるようにしたものである。
【0010】
このように特許文献1の逆投影手段または逆投影演算器は、投影データ量に応じて処理ラインを組んで処理を行うため、プロジェクションメモリ(Projection Memory)の有効活用を図り、処理時間を短縮できるようになっている。
【0011】
特許文献1の画像処理装置は、図10に示す如き構成を有している。すなわち、画像処理装置200を構成する演算処理装置210は、Pre-processing Unit(前処理ユニット)220と、Re-constructionn Unit(再構成ユニット)230と、及びPost-processing Unit(後処理ユニット)240とによって構成されている。
【0012】
図10に図示のPre-processing Unit(前処理ユニット)220は、Offset補正処理(オフセット補正処理)、Reference補正処理(リファレンス補正処理)、Air Calibration処理(エァキャリブレーション処理)、Phantom Calibration処理(ファントムキャリブレーション処理)、及びその他の処理を行うようになっている。
このPre-processing Unit(前処理ユニット)220によって、計測系の歪が補正される(このデータをRaw data(ローデータ)と呼ぶ)。
【0013】
このRaw dataは、Pre-processing Unit(前処理ユニット)220からRe-construction Unit(再構成ユニット)230に出力される。このRe-construction Unit(再構成ユニット)230は、Raw dataに対して、Rebinning処理、Filter処理をした後、3D Back Projection(3次元逆投影、以下「3DBP」という)処理を行う。そして、Re-construction Unit(再構成ユニット)230においては、3DBP処理の演算結果をPost-processing Unit(後処理ユニット)240に出力する。
【0014】
このPost-processing Unit(後処理ユニット)240においては、Re-construction Unit(再構成ユニット)230から出力された3DBP処理の演算結果に対して、1画像フィルタ処理、CT値調整処理などを行う。これによって、任意断面の断面像を作成する。
【0015】
逆投影演算器BPをN個備えたN段のパイプライン処理を行う図9に図示の逆投影ユニット(BP Unit)100は、複数(N個)のBP演算器BP、BP、……BPn−1、BPによって構成され、IC集積回路(ASIC)によって1チップに構成されている。
【特許文献1】特開2007−14601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このような特許文献1の画像処理装置においては、Pre-processing Unit(前処理ユニット)220によって、計測系の歪が補正されたRaw dataに対して、Rebinning処理、Filter処理をした後、3DBP処理を行うものとなっている。しかし、この特許文献1の画像処理装置は、IC集積回路(ASIC)によって1チップで構成されており、3DBP処理を基本としているため、2D Back Projection(2次元逆投影、以下「2DBP」という)処理を行う場合は、従来の2DBP処理を行う画像処理装置に比べて処理速度が遅く、再構成を短時間で行うことができないという問題点を有している。
【0017】
すなわち、3DBP演算では、図11(a)のように2次元検出器相当のProjection Dataを用い、求める逆投影点の近傍4点のデータから4点補間にて値を演算し、2DBP演算では、図11(b)のように1次元検出器相当のProjection Dataを用い、求める逆投影点の近傍2点のデータから2点補間にて値を演算する。そのため、2DBP演算処理の際にProjection Memory、ALUは有効に活用されず、扱うデータ量が少なくなっても処理時間が変わらないという問題点を有している。
【0018】
本発明の目的は、3DBP演算を行う画像処理装置にあって、3DBP演算と2DBP演算とを切り替えて行えるように構成し、2DBP演算処理の速度をより高速で行うことのできるCT装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するため、本発明に係るCT装置は、多列検出器を備えるX線CT装置において,
X線の体軸方向に対する照射開き角(コーン角)を考慮し、かつ、X線検出器を列方向とチャンネル方向の2次元で取り扱う逆投影(3DBP)演算を行う複数の3DBP演算器の処理にあたって、前記逆投影(3DBP)演算データを記憶するメモリ、及び前記3DBP演算器の分配を切り替えて、1次元検出器相当のデータを使う逆投影(2DBP)演算を高速に行うことを特徴とする。
【0020】
また、前記目的を達成するため、本発明に係るCT装置は、被検体にX線ビームを照射するX線源と、前記被検体を挟んで前記X線源に対向して配置され、前記X線源が所定の角度から照射したX線を検出することによりビュー方向毎の投影データを出力する多列検出器と、前記X線源及び前記多列検出器を搭載して回転可能な回転手段と、前記投影データに基づいて前記被検体の断面を再構成して断面像を生成する画像処理装置と、前記断面像を表示する表示装置と、を備えたX線CT装置であって,
前記画像処理装置は、前記投影データに基づいて逆投影演算処理を行う逆投影演算器を備え、前記逆投影演算器は、前記投影データを記憶する少なくとも一の記憶手段と、その記憶手段に記憶された投影データに基づいて逆投影演算を行う少なくとも一つの演算手段と、前記記憶手段と前記演算手段とを含んで構成される処理ラインの段数を、前記断面像の再構成に必要な投影データ量に応じて設定するライン数設定手段と、を備え,
前記画像処理装置の逆投影演算器を前記投影データに基づいて3次元逆投影演算処理と2次元逆投影演算処理を切り替えて行う2DBP/3DBP演算器で構成するとともに、前記投影データに基づいて2次元逆投影演算処理を行う2DBP演算器とを設け、前記2DBP/3DBP演算器と2DBP演算器を切り換える切換器を設け,
1次元検出器相当のデータを使う逆投影演算を、前記切換器によって切り替えて、高速処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のX線CT装置は、多列検出器をもつX線CT装置において、X線の体軸方向に対する照射開き角を考慮し、かつ、検出器を列方向とチャンネル方向の2次元で取り扱う逆投影演算において、近傍4点を補間して逆投影点の値を求める。しかし、2DBP演算では、1次元検出器相当のProjection Dataを用い、求める逆投影点の近傍2点のデータから2点補間にて値を演算する。そのため、Projection Memory、ALUは有効に活用されず、扱うデータ量が少なくなっても処理時間が変わらない。そこで、3DBP演算器のProjection Memoryと Address Generator、ALUを最適に組み合わせることで、パイプラインの段数を増やし3DBP演算器において2DBP演算をより高速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に従って、本発明に係るX線CT装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0023】
図1には、本発明の一実施の形態に係るマルチスライスX線CT装置1のハードウェア構成を示すブロック図が示されている。
【0024】
図1のマルチスライスX線CT装置1は、投影データを出力する計測部10と、投影データに基づいて画像再構成処理を行い、再構成画像を生成する画像処理装置20と、再構成画像を表示する画像表示装置30とを備えている。
【0025】
計測部10は、図2に示す如く構成されている。すなわち、計測部10は、円錐又は角錐状に広がるX線ビームを照射するX線管球11を備えたX線源と、透過X線を検出する二次元検出器、例えば、64列配列された多列検出器12とを備えている。
また、計測部10には、X線源11と多列検出器12とを対向させた状態で寝台40に載置した被検体50の周囲を回転させる回転盤13が設けられている。
そして、多列検出器12からは、被検体50を透過した透過X線を検出して投影データが出力すされる。
また、計測部10は、プリアンプ14により投影データを増幅し、画像処理装置20に増幅後の投影データを転送する。
【0026】
画像処理装置20は、CPU21と、前処理ユニット、再構成ユニット、及び後処理ユニットを含む演算処理装置22と、画像処理装置20等の制御プログラムを格納する主メモリ23と、投影データや画像処理プログラム等を格納する磁気ディスク24と、有効視野範囲等のパラメータの設定を行うためのキーボード25と、マウスやトラックボール、ジョイスティック等からなるポインティングデバイス26及びそのコントローラ27と、画像表示装置30に表示させる画像データを一次的に格納する表示メモリ28と、計測部10から投影データを取得する入出力インターフェース29と、を備えている。
この画像処理装置20の各構成要素は、共通バスBUSにより互いに接続されている。そして、画像処理装置20は、記憶装置として主メモリ23及び磁気ディスク24によって構成されているが、画像処理装置20は、その他の記憶装置、例えばFDD、CD−RWドライブ、MO(光ディスク)ドライブ、ZIPドライブによって構成してもよい。
【0027】
画像処理装置20には、ハードウェア及びハードウェアにX線撮影を行う範囲である有効視野範囲(以下「FOV」という。)を設定する処理を実行させるプログラムからなる有効視野範囲設定部が設けられている。このFOVは、マルチスライスX線CT装置1の操作者が、X線撮影の度にキーボード24等を操作して、FOVの数値を入力するようになっている。このFOVは、予め設定された固定の数値を入力するように構成してもよい。
【0028】
そして、マルチスライスX線CT装置1を構成する画像表示装置30は、CRT装置や液晶ディスプレイ装置等により構成されている。
【0029】
図3には、本発明に係るX線CT装置の実施の形態に係るBP演算器の基本構成が示されている。
図3は、マルチスライスX線CT装置1に実装されるBP演算処理装置22のうち、3DBPの演算処理を行う逆投影ユニット(BP Unit)40に搭載されるBP演算器のハードウェア構成が示されている。
この逆投影ユニット(BP Unit)40は、プロジェクションメモリ(Projection Memory、以下「PM」という)を複数のメモリで構成する。そして、このPMと複数のアドレスジェネレータ(Address Generator、以下「AG」という)、ALU(Arithmetic Logical Unit、算術演算装置)との間を、アドレスセレクタ(Address Selector)とメモリアウトプツトセレクタ(Memory Output Selector)によって接続する。
【0030】
すなわち、図3のBP演算器40は、PM41をn個のメモリ手段PM、PM、……PMn−1で構成する。同様に、BP演算器40は、アドレスジェネレータAG42をn個のアドレスジェネレータAG、AG、……AGn−1によって構成する。
このプロジェクションメモリPM41とアドレスジェネレータAG42との間は、アドレスセレクタ(Address Selector)43によって接続されている。また、プロジェクションメモリPM41と算術演算装置ALU44の間をメモリアウトプットセレクタ(Memory Output Selector)45によって接続されている。
【0031】
このプロジェクションメモリPM41から出力されたデータは、メモリアウトプットセレクタ(Memory Output Selector)45によってALU44に出力される。
すなわち、このプロジェクションメモリPM41から出力されたデータは、メモリアウトプットセレクタ(Memory Output Selector)45によって、PMのデータはALUに、プロジェクションメモリPMのデータは算術演算装置ALUに、プロジェクションメモリPM41と算術演算装置ALU44が1対1に接続されるようにデータが入力される。
【0032】
算術演算装置ALU〜ALUn−1の各算術演算装置ALU44で3DBP演算を行う中で、4点補間によって逆投影点の値を求める。
そして、算術演算装置ALUで3DBPの演算を行った結果は、算術演算装置ALUに送られ、算術演算装置ALUにおいては、算術演算装置ALUの演算結果と、算術演算装置ALUで3DBPの演算を行った演算した結果を加算して算術演算装置ALUに送る。このように処理を算術演算装置ALUn−1まで行う。
【0033】
図4には、図3に図示のALU44のALU(Arithmetic Logical Unit、算術演算装置)の具体的構成が示されている。
図4において、1個のアドレスジェネレータ(Address Generator)AGにアドレスセレクタ(Address Selector)43を介して2つのプロジェクションメモリ(PM)PM0(0)、PM0(1)が接続されている。このプロジェクションメモリ(PM)PM0(0)、PM0(1)は、例えば、プロジェクションメモリPM0(0)が、偶数スライスデータを記憶し、プロジェクションメモリPM0(1)が奇数スライスデータを記憶するようになっている。
【0034】
そして、このプロジェクションメモリ(PM)PM0(0)、PM0(1)には、メモリアウトプットセレクタ(Memory Output Selector)45に接続されている。そして、このメモリアウトプットセレクタ(Memory Output Selector)45にALUが接続されている。
【0035】
アドレスを切り替えるアドレスジェネレータ(Address Generator)AGから出力される信号がアドレスセレクタ(Address Selector)43に入力され、このアドレスセレクタ(Address Selector)43においてPM0(0)かPM0(1)のそれぞれについてアドレスが選択される。すると、アドレスに相当するスライスデータがメモリアウトプットセレクタ(Memory Output Selector)45に出力される。
【0036】
このアドレスジェネレータ(Address Generator)AGから出力される信号に基づいて 、アドレスセレクタ(Address Selector)43によって、各プロジェクションメモリPMへ振り分け、必要なデータの入っているPMより求める逆投影点の近傍4点のデータを出力する。
このアドレスセレクタ(Address Selector)43においては、プロジェクションメモリ(PM)PM0(0)、PM0(1)から出力されたデータを、算術演算装置ALUに出力する。
【0037】
このALUは、チャンネル間の2点補間を行う2点補間処理部44a,44bと、モードセレクタ(Mode Selector)44c,44dと、列間の2点補間を行う2点補間処理部44eと、ALU0(0)44fと、ALU0(1)44gと、モードセレクタ(Mode Selector)44hとによって構成されている。
【0038】
プロジェクションメモリ(PM)PM0(0)から出力されたデータは、チャンネル間の2点補間を行う2点補間処理部44aに出力される。また、プロジェクションメモリPM0(1)から出力されたデータは、チャンネル間の2点補間を行う2点補間処理部44bに出力される。
この2点補間処理部44aにおける演算結果は、モードセレクタ(Mode Selector)44cに出力される。また、2点補間処理部44bにおける演算結果は、モードセレクタ(Mode Selector)44dに出力される。
【0039】
このモードセレクタ(Mode Selector)44c,44dにおいては、3DBP演算を行うのか、2DBP演算を行うのかのモード選択が行われる。このモードセレクタ(Mode Selector)44cにおいて、3DBP演算を行うことが選択されると、2点補間処理部44aにおける演算結果は、列間の2点補間を行う2点補間処理部44eに出力される。また、モードセレクタ(Mode Selector)44dにおいて、3DBP演算を行うことが選択されると、2点補間処理部44bにおける演算結果は、列間の2点補間を行う2点補間処理部44eに出力される。
【0040】
3DBP演算を行う場合は、このモードセレクタ(Mode Selector)44cとモードセレクタ(Mode Selector)44dとは、共に列間の2点補間を行う2点補間処理部44eの出力経路を選択することになる。
列間の2点補間を行う2点補間処理部44eにおいては、2点補間処理部44aにおける演算結果と、2点補間処理部44bにおける演算結果とによって、さらに2点補間処理が行われ(4点補間)、3DBP演算処理が行われ逆投影点の値を求める。
【0041】
この2点補間処理部44eにおいて演算された4点補間による3DBP演算結果(逆投影点の値)は、ALU0(0)(Arithmetic Logical Unit、算術演算装置)44fに出力される。この3DBP演算結果は、モードセレクタ(Mode Selector)44hに直接出力され、このモードセレクタ(Mode Selector)44hからイメージデータとしてALUから出力される。
【0042】
このようにプロジェクションメモリPMからプロジェクションメモリPMn−1へは、それぞれ順次ビューデータがロード(Load)される。そして、アドレス(Address)の計算は、アドレスジェネレータ(Address Generator)AG〜アドレスジェネレータ(Address Generator)AGn−1のそれぞれで各ビューに対して行う。
そして、このAddressは、アドレスセレクタ(Address Selector)43によって各プロジェクションメモリPM41へ振り分けられ、必要なデータの入っているプロジェクションメモリPM41より求める逆投影点の近傍4点のデータが出力される。
【0043】
したがって、図4に図示のプロジェクションメモリPM0(0),PM0(1)から出力されたデータは、メモリアウトプットセレクタ(Memory Output Selector)45を介して算術演算装置ALUのチャンネル間の2点補間を行う2点補間処理部44a,44bに入力される。
このようにして、ALU〜ALUn−1の各算術演算装置ALU44で3DBP演算を行う中で、4点補間によって逆投影点の値を求める。
【0044】
そして、算術演算装置ALUで3DBPの演算を行った結果は、次の算術演算装置ALUに送られ、算術演算装置ALUにおいては、算術演算装置ALUの演算結果と、算術演算装置ALUで3DBPの演算を行った演算した結果を加算して次の算術演算装置ALUに送る。このように処理を順次行って算術演算装置ALUn−1まで行う。
このようにして、3DBP演算をn段のパイプライン処理で実現することができ、処理時間を1/nにすることができる。
【0045】
また、2DBP演算の場合、使用するProjection Data(2次元投影データ)が2次元(チャンネル方向、列方向)ではなく1次元(チャンネル方向)となる。
【0046】
本実施例おいては、プロジェクションメモリPMを2つに分割し、2つのプロジェクションメモリPM0(0),PM0(1)から構成されている。したがって、ビューデータは、このプロジェクションメモリPM0(0),PM0(1)に順次(例えば、奇数チャンネルをPM0(0)に、偶数チャンネルPM0(1)に)ロード(Load)される。そして、それぞれのビューにて演算に使用する近傍2点を出力する(3DBP演算の際は、同一ビューの隣接する列を交互にロードする)。
【0047】
算術演算装置ALUにおいては、2DBP演算の際、この4点を用いて補間を行うわけだが、3DBP演算とは違い2点補間で良い。つまり、それぞれチャンネル方向に補間するだけで、列方向の補間は必要としない。
【0048】
そこで、4点補間の列補間を行わずに、2DBP演算を2ビュー分のデータに対して行えるように切り換えスイッチと2DBP演算部を追加し、算術演算装置ALU0(0)、算術演算装置ALU0(1)と2つの2DBP演算用の算術演算装置ALUとして動作できるようにしてある。
これにより2DBP演算の際は、2n段のパイプライン処理が実現でき、処理時間を1/2にすることができる。
【0049】
本実施の形態においては、マルチスライスX線CT装置1のスライス数が、16スライス、1スライスあたりのデータサイズを4kByte、ASIC(Appication Specific Integrated Circuits、特定用途向けIC集積回路)の最大搭載メモリサイズが2Mbit(256Byteに相当)の環境で動作するX線CT装置の画像処理装置20に備えられるものであるとする。
【0050】
図5には、図4に図示する如き2DBP演算/3DBP演算を切り替えて処理を行う手段を実現する回路がASIC(Appication Specific Integrated Circuits、特定用途向けIC集積回路)を作成し、それを基板に4個搭載するこれにより更に多段のパイプラインが組まれる。
そして、この2DBP演算/3DBP演算を切り替えて処理を行う手段を実現する回路は、この4個のASIC(Appication Specific Integrated Circuits、特定用途向けIC集積回路)と、4個のASICの計算結果をCache(記憶)するCache Memoryと、ASIC(Appication Specific Integrated Circuits、特定用途向けIC集積回路)をコントロールするための2つのDSP(Digital Signal Processor)と、ASICとDSPとCache MemoryとをInterfaceするChip Setとによって構成されている。
この一方のDSP(Digital Signal Processor)には、信号が入力され、他方のDSP(Digital Signal Processor)には、信号が出力されるようになっている。
【0051】
図6には、ASIC(Appication Specific Integrated Circuits、特定用途向けIC集積回路)によって実現した逆投影ユニット(BP Unit)40内の構成が示されている。
この逆投影ユニット(BP Unit)40は、4つの2DBP演算/3DBP演算を行える算術演算装置ALUと、32kByteのプロジェクションメモリ(Projection Memory)が8ブロック(block)と、4つのアドレスジェネレータ(Address Generator)AGと、メモリセレクタ(Memory Selector)が4ブロック(block)と、メモリアウトプットセレクタ(Memory Output Selector)とを備えている。
そして、逆投影ユニット(BP Unit)40は、さらに演算結果を入出力するためのイメージコントロールユニット(Image Contorol Unit)と、プロジェクションデータ(Projection Data)の入出力をコントロールするためのデータコントロールユニット(Data Contorol Unit)を有している。
【0052】
図7には、図5、図6に示す2DBP演算/3DBP演算を切り替えて処理を行う手段を実現する回路の動作を説明するための回路が示されている。
動作は、図7に示すように16スライスのデータを必要とする際には、8つのプロジェクションメモリ(Projection Memory)を64kByteの4つのメモリとして各々個別に扱う。そして、4つの算術演算装置ALU(ALU〜ALU)を用いて3DBP演算を行う。
これにより、パイプライン処理の段数を4段にすることができる。
【0053】
図8には、2DBP演算/3DBP演算を切り替えて2DBP演算処理を行う際の動作を説明するための回路が示されている。
次に、2DBP演算の際には、図8に示すように、32kByte毎に8つのメモリとして扱う。そして、それぞれの算術演算装置ALU(ALU〜ALU)で2ビュー分の2DBP演算を行う。これにより、パイプライン処理の段数を2倍にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】X線CT装置のハードウェア構成図である。
【図2】X線CT装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】図2に図示のパイプライン段数可変のBP Unitを示す構成図である。
【図4】3DBP演算対応の算術演算装置ALUの構成図である。
【図5】図4に図示のBP基板のブロック図である。
【図6】BP Unit ASICのブロック図である。
【図7】図6に図示のBP Unit ASICの16スライス時の動作を説明するための図である。
【図8】図6に図示のBP Unit ASICのシングルスライス相当の動作を説明するための図である。
【図9】従来のBP Unitの基本構成図である。
【図10】X線CT装置の基本構成図である。
【図11】2次元検出器データと1次元検出器データを示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1………………………………………マルチスライスX線CT装置
10……………………………………計測部
20……………………………………画像処理装置
21……………………………………CPU
22……………………………………演算処理装置
23……………………………………主メモリ
24……………………………………磁気ディスク
25……………………………………キーボード
26……………………………………ポインティングデバイス
27……………………………………コントローラ
28……………………………………表示メモリ
29……………………………………入出力インターフェース
30……………………………………画像表示装置
40……………………………………逆投影ユニット(BP Unit)演算器
41……………………………………PM
42……………………………………AG
43……………………………………アドレスセレクタ
44……………………………………算術演算装置(ALU)
44a,44b,44e……………2点補間処理部
44c,44d,44h……………モードセレクタ(Mode Selector)
44f…………………………………ALU0(0)
44g…………………………………ALU0(1)
45……………………………………メモリアウトプットセレクタ
ALU……………………………………Arithmetic Logical Unit
AG……………………………………Address Generator
PM……………………………………Projection Memory
BP演算器………………………………逆投影演算器
DSP……………………………………Digital Signal Processor
ASIC…………………………………Appication Specific Integrated Circuits

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多列検出器を備えるX線CT装置において,
X線の体軸方向に対する照射開き角(コーン角)を考慮し、かつ、X線検出器を列方向とチャンネル方向の2次元で取り扱う逆投影(3DBP)演算を行う複数の3DBP演算器の処理にあたって、前記逆投影(3DBP)演算データを記憶するメモリ、及び前記3DBP演算器の分配を切り替えて、1次元検出器相当のデータを使う逆投影(2DBP)演算を高速に行うことを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
被検体にX線ビームを照射するX線源と、前記被検体を挟んで前記X線源に対向して配置され、前記X線源が所定の角度から照射したX線を検出することによりビュー方向毎の投影データを出力する多列検出器と、前記X線源及び前記多列検出器を搭載して回転可能な回転手段と、前記投影データに基づいて前記被検体の断面を再構成して断面像を生成する画像処理装置と、前記断面像を表示する表示装置と、を備えたX線CT装置であって,
前記画像処理装置は、前記投影データに基づいて逆投影演算処理を行う逆投影演算器を備え、前記逆投影演算器は、前記投影データを記憶する少なくとも一の記憶手段と、その記憶手段に記憶された投影データに基づいて逆投影演算を行う少なくとも一つの演算手段と、前記記憶手段と前記演算手段とを含んで構成される処理ラインの段数を、前記断面像の再構成に必要な投影データ量に応じて設定するライン数設定手段と、を備え,
前記画像処理装置の逆投影演算器を前記投影データに基づいて3次元逆投影演算処理と2次元逆投影演算処理を切り替えて行う2DBP/3DBP演算器で構成するとともに、前記投影データに基づいて2次元逆投影演算処理を行う2DBP演算器とを設け、前記2DBP/3DBP演算器と2DBP演算器を切り換える切換器を設け,
1次元検出器相当のデータを使う逆投影演算を、前記切換器によって切り替えて、高速処理することを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
前記3DBP演算器は、列方向とチャンネル方向とスライス方向の3次元で取り扱う逆投影演算を行う演算器であり,
前記2DBP演算器は、列方向とチャンネル方向の2次元で取り扱う逆投影演算を行う演算器である請求項2に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−183574(P2009−183574A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28418(P2008−28418)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】