説明

X線CT装置

【課題】ファントムの位置合わせを高精度に行うことができる。
【解決手段】スキャン実行部31cは、位置合わせの指示があったファントムのサイズに合うスキャン条件で、ファントムを撮影するように各部を制御する。算出部32aは、データ収集部25から送信されてきた投影データを再構成処理して断層像データを生成する。算出部32aは、位置合わせの指示があったファントムのサイズに合うFOVを選択し、基準位置を算出する。算出部32aは、算出した基準位置と、データ収集部25から送信されてきた投影データから、ファントムの傾きおよび移動量を算出する。表示制御部32bは、生成された断層像データに基づく画像を画像表示部42に表示させるとともに、算出されたファントムの傾きと移動量の情報、およびファントムを正しく設置できた場合の基準位置を示す情報やスケールを画像上に重畳表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置に関し、特に、多列化したX線検出器を有するX線CT装置用のファントムの位置合わせを高精度に行うことができるX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置は、X線源にてX線ビームを発生し、寝台上の被検体を透過したX線ビームをX線検出器により検出してX線投影データとし、このX線投影データに対して再構成処理を施すことにより被検体の内部形態を表す2次元の断層像データを生成することができる。
【0003】
高精度の断層像データを取得するためには、定期的に、X線CT装置の性能評価を実施する必要がある。そして、性能が落ちてきた場合には、性能を維持するためにX線CT装置を調整することが行われている。
【0004】
X線CT装置の性能評価では、実際の人体の代わりに、人体を模したファントムと呼ばれる疑似的な物体を用いて補正データを収集し、収集した補正データから分解能などを評価してキャリブレーションを実行する。
【0005】
ファントムは、例えば、中空に形成された円筒状の物体からなり、中空部には、水などの充填物が充填されている。このファントを用いた性能評価の精度を確保するために、ファントムをX線CT装置の好適な設置位置に配置しなければならない。
【0006】
従来、ファントムの位置合わせは、次のようにして行われていた。例えば、図14に示すように、ファントム100を撮影する準備として、X線CT装置の被検体を載置する天板101にフォルダ102をセットし、そのフォルダ102にファントム100を固定させる。このような準備を行った後、ファントム100をX線CT装置の検査領域の中心に配置して撮影を行い、断層像データを再構成して表示させる。
【0007】
操作者は、この断層像を観察しつつ、ファントムが明瞭に表示されるようにウィンドウ幅やウィンドウレベルを調整する。次に、断層像の中心位置が、どの方向にどれだけ変位しているかを目分量で特定する。そして、ファントムの設置位置を、特定した目分量だけ移動させるとともに、再度断層像を観察して移動後の位置を確認する。このような一連の作業を繰り返して、ファントムを目的の位置に配置する。
【0008】
このような一連の作業は、時間も労力も必要であり、操作者に対する負担が大きかった。そこで、例えば、特許文献1には、容易かつ迅速にファントムの位置合わせを行うことができる技術が提案されている。
【特許文献1】特開2007−222599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のX線CT装置では、補正データの収集を行うために使用するファントムの体軸方向の大きさが小さかったため、ファントムを設置する場合に、ファントムの傾きを考慮する必要がなかった。
【0010】
しかしながら、近年、検出器の列数が多列化してきたことにともなって、使用するファントムのサイズが大きくなってきた。そのため、ファントムの位置合わせに加えて、左右方向のズレおよび上下方向のダレを調整しなくてはならなくなってきた。
【0011】
上述した特許文献1の技術では、左右方向のズレや上下方向のダレを表示させることができず、より高精度にファントムの位置合わせを行うことができない課題があった。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、多列化したX線検出器を有するX線CT装置において、ファントムの位置合わせを高精度に行うことができるX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明の特徴は、X線を曝射するX線管と多列化したX線検出器を有するX線CT装置において、充填物が充填された筐体であるファントムの周りで、X線管とX線検出器を回転して投影データを収集する撮影制御手段と、ファントムの投影データに基づいて断層像を再構成する再構成手段と、断層像中のファントムの端部近傍に設定された複数のエリアの画像を抽出し、その複数のエリアの画像を合成した傾き確認用の画像を生成する画像生成手段と、傾き確認用の画像を表示する表示制御手段とを備える。
【0014】
請求項5記載の発明の特徴は、X線を曝射するX線管と多列化したX線検出器を有するX線CT装置において、充填物が充填された筐体であるファントムとX線管を相対的に平行移動させて投影データを収集する撮影制御手段と、ファントムの投影データに基づいて断層像を再構成する再構成手段と、ファントムの傾きおよび移動量を算出する算出手段と、断層像とともに、ファントムの傾きおよび移動量を示す情報を表示する表示制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多列化したX線検出器を有するX線CT装置用のファントムの位置合わせを高精度に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るX線CT装置1の構成例を示す図である。このX線CT装置1は、ガントリ2、コンピュータ装置3、および、コンソール4から構成される。
【0018】
ガントリ2は、回動可能な支持体21を内蔵している。この支持体21には、X線管22と、X線検出器23とが支持されている。支持体21は、図示せぬ駆動部により寝台24に載置される被検体Pの周りを回転移動する。X線管22およびX線検出器23は、支持体21の回転に伴って被検体Pの周りを回転移動する。
【0019】
X線管22は、図示せぬ高電圧発生部によって印加される所定の管電圧と管電流に基づいてX線を発生し、被検体Pの周囲を回転移動しながら、ガントリ2の寝台24に載置される被検体Pに向けてこのX線を曝射する。
【0020】
X線検出器23は、X線管22に対向する位置に支持されており、被検体Pを透過したX線ビームのX線量を検出する。このX線検出器23は、複数のX線検出チャネルを2次元マトリクス状に配置した複数チャネルおよび複数列の多列化した検出器の構成とされている。検出された透過X線量のデータはデータ収集部25に出力される。
【0021】
データ収集部25は、いわゆるDAS(Data Acquisition System)と呼ばれ、DASチップが配列された複数のデータ収集素子列を有し、検出器23で検出された透過X線量のデータを収集する。データ収集部25は、収集した透過X線量のデータに対して増幅処理やA/D(Analog to Digital)変換処理等を施した後、コンピュータ装置3の画像再構成部32に送信する。
【0022】
コンピュータ装置3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびHDD(Hard Disc Drive)などを実装した汎用のコンピュータで構成され、X線CT装置1の各部を統括的に制御する。またコンピュータ装置3は、ガントリ2やコンソール4の間でデータや信号の送受信を行うためのインターフェイスなどを内蔵している。
【0023】
このコンピュータ装置3には、ガントリ2の各部の動作制御を行う撮影制御部31、ガントリ2により収集されたデータに基づく画像データの生成処理や各種の画像処理を行う画像再構成部32、およびプログラムや各種データなどを記憶するデータ記憶部33が設けられている。
【0024】
撮影制御部31は、操作コンソール41からの入力信号に基づいて、支持体21の回転動作の制御、X線管22の動作制御、X線検出器23の動作制御、およびデータ収集部25の動作制御などを実行する。
【0025】
画像再構成部32は、再構成領域サイズ、再構成マトリクスサイズ、および関心部位を抽出するための閾値等の所定の再構成パラメータに基づいて、データ収集部25から送信されてきた投影データを再構成処理し、所定のスライス分の断層像データを生成する。画像再構成部32は、生成した断層像データに基づく断層像を、コンソール4の画像表示部42に表示させる。また画像再構成部32は、データ収集部25から送信されてきた投影データおよび生成した断層像データをデータ記憶部33に記憶させる。
【0026】
コンソール4には、操作者の入力を受け付ける操作コンソール41、画像表示を行う画像表示部42が設けられている。
【0027】
操作コンソール41は、例えば、キーボードやマウスで構成され、操作者の入力に対する信号を撮影制御部31に出力する。画像表示部42は、例えば、液晶ディスプレイで構成され、画像再構成部32で生成された断層像データに基づく断層像を表示する。
【0028】
以上のような構成を有するX線CT装置1は、装置性能を維持するために、水などの充填物が充填された筐体を有するファントムと呼ばれる疑似的な物体を用いて、ノイズ、コントラストスケール、空間分解能、スライス厚、高コントラスト分解能、および低コントラスト分解能などを評価してキャリブレーションを実行する。
【0029】
例えば、図2に示すように、フォルダ102に固定されたファントム100を撮影して補正データを収集し、収集した補正データから装置性能を評価してキャリブレーションを実行する。X線CT装置1は、性能評価を精度良く行うために、ファントム100の位置合わせのための画像を表示するようにも構成されている。この画像の表示例の詳細は、後述する。
【0030】
図3は、X線CT装置1のコンピュータ装置3の機能構成例を示すブロック図である。図3に示す機能部のうちの少なくとも一部は、位置合わせ制御プログラムなどがCPUに読み込まれることによって実現される。
【0031】
撮影制御部31は、操作検出部31a、スキャン条件選択部31b、およびスキャン実行部31cの機能を有し、画像再構成部32は、算出部32a、および表示制御部32bの機能を有する。
【0032】
撮影制御部31は、ファントム100の周りで、X線管とX線検出器を回転させてデータ収集部25に投影データを収集させるように制御する撮影制御手段としての役割を果たす。また撮影制御部31は、ファントム100とX線管を相対的に平行移動させてデータ収集部25に投影データを収集させるように制御する撮影制御手段としての役割も果たす。
【0033】
画像再構成部32は、ファントムの投影データに基づいて断層像を再構成する再構成手段としての役割を果たす。
【0034】
操作検出部31aは、操作コンソール41から供給された入力信号から、ファントム100の位置合わせを実行するための指示を検出したとき、その検出結果をスキャン条件選択部31bおよび算出部25に供給する。また操作検出部31aは、操作コンソール41から供給された入力信号から、各種操作画面を表示させるための指示を検出したとき、その検出結果を表示制御部32bに供給する。
【0035】
スキャン条件選択部31bは、操作検出部31aから供給された検出結果に基づいて、予め記憶されている位置合わせ用のスキャン条件の中から、位置合わせの指示があったファントム100のサイズに合うスキャン条件を選択し、選択したスキャン条件をスキャン実行部31cに供給する。
【0036】
スキャン実行部31cは、スキャン条件選択部31bから供給されたスキャン条件で、ファントム100の撮影を行うようにガントリ2の各部を制御する。具体的には、スキャン実行部31cは、X線管21を0度および90度の回転角度に固定して天板24を移動させて広範囲をスキャンさせるように制御する。
【0037】
算出部32aは、データ収集部25から送信されてきた投影データを再構成処理して断層像データを生成する。また算出部32aは、生成した断層像データの中から複数のエリアの画像(例えば、ファントム100の端部近傍に設定された複数の画像)を抽出し、抽出した画像を合成した傾き確認用の画像を生成する画像生成手段として機能する。
【0038】
さらに算出部32aは、操作検出部31aから供給された検出結果に基づいて、予め記憶されているFOV(Field Of View)に関する情報の中から、位置合わせの指示があったファントム100のサイズに合うFOVを選択し、基準位置を算出する。
【0039】
算出部32aは、算出した基準位置と、データ収集部25から送信されてきた投影データから、ファントム100の傾きおよび移動量を算出する算出手段として機能する。
【0040】
具体的には、算出部32aは、ファントム100に相当する部分の断層像のCT値と、ファントム100の周囲の空気に相当する部分の断層像のCT値に差があることを利用して、ファントム100に相当する部分の断層像の画素を抽出する。そして、算出部32aは、抽出した画素からファントム100の輪郭を探索して傾きを算出するとともに、抽出した画素をカウントして移動量を算出する。
【0041】
算出部32で生成された断層像データ、および算出されたファントム100の傾きと移動量の情報は、表示制御部32bに供給される。
【0042】
表示制御部32bは、算出部32aから供給されてきた断層像データに基づく傾き確認用の画像を画像表示部42に表示させる表示制御手段として機能する。表示制御部32は、算出部32aから供給されてきた傾きと移動量の情報、およびファントム100を正しく設置できた場合の基準位置を示す情報やスケール(目盛)を画像上に重畳表示させる。
【0043】
また表示制御部32bは、操作検出部31aから供給された検出結果に基づいて、各種操作画面を画像表示部42に表示させる。
【0044】
次に、ファントム100の位置合わせを行うための画像の表示例について説明する。
【0045】
図4および図5は、ファントム100の位置合わせを行うために撮影されたスキャノ画像(平面透過像)の表示例を示している。図4は、X線管21が0度の位置におけるスキャノ画像の表示例を示し、図5は、X線管21が90度の位置におけるスキャノ画像の表示例を示している。
【0046】
図4および図5に示すスキャノ画像には、天板24に相当する部分の断層像24a、ファントム100に相当する部分の断層像100a、およびフォルダ102に相当する部分の断層像102aが含まれている。なお、断層像24a、断層像100a、および断層像102aの周囲の背景領域は、天板24、ファントム100、およびフォルダ102の周囲の空気に相当する。
【0047】
またスキャノ画像上には、算出部32aによって算出されたファントム100の傾き(チルト)および移動量(ズレやダレ)が重畳表示されている。
【0048】
図4に示すようなX線管21が0度の場合のスキャノ画像と、図5に示すようなX線管21が90度の場合のスキャノ画像をそれぞれ表示することにより、ファントム100の設置基準位置との傾き、および設置基準位置からの移動量を容易に確認することができる。
【0049】
図6は、ファントム100の位置合わせを行うために撮影されたMPR(Multi Planer Reconstruction)画像の表示例(多断面再構成画像の表示例)を示している。
【0050】
図6の表示例では、ファントム100に相当する部分のMPRによるアキシャル画像100bが画面の左上方に表示され、コロナル画像100cが画面の右上方に表示され、サジタル画像100dが画面の左下方に表示されている。これらのMPR画像100b乃至100dには、ファントム100を正しく設置できた場合の中心位置となる基準線が図中点線で十字方向に表示され、ファントム100を正しく設置できた場合の基準位置が図中太線で表示されている。
【0051】
また画面の右下方には、算出部32aによって算出されたファントム100の傾きおよび移動量の情報が重畳表示されている。
【0052】
図6に示すようなMPR画像を表示することにより、アキシャル画像100bからファントム100の設置基準位置からの移動量を確認することができ、コロナル画像100cからファントム100の設置基準位置との左右の傾きを確認することができ、サジタル画像100dからファントム100の設置基準位置との上下の傾きを確認することができる。
【0053】
図7および図8は、ファントム100の位置合わせを行うために撮影されたアキシャル画像の表示例を示している。
【0054】
図7および図8の表示例では、離れたスライス位置における2つのアキシャル画像が表示されている。例えば、図9に示すように、ファントム100のZ方向(体軸方向)に対する前端部のスライス位置を1rowとし、後端部のスライス位置をXrowとした場合、スライス位置1rowにおけるアキシャル画像100b−1が画面の左方に表示され、スライス位置Xrowにおけるアキシャル画像100b−xが画面の右方に表示されている。また、ファントム100を正しく設置できた場合の中心位置となる基準線が図中点線で十字方向に表示されている。
【0055】
図7の表示例では、ファントム100が設置基準位置に合っているため、図中点線で示される基準線の中心位置にアキシャル画像100b−1,100b−xが表示されている。
【0056】
図8の表示例では、ファントム100が前端部では設置基準位置に合っているものの、後端部にかけてずれているため、スライス位置1rowにおけるアキシャル画像100b−1は基準線の中心位置に表示されているが、スライス位置Xrowにおけるアキシャル画像100b−xは中心位置からずれて表示されている。
【0057】
このように、図7および図8に示すような離れたスライス位置における2つのアキシャル画像をそれぞれ表示することにより、ファントム100の設置基準位置からのずれを容易に確認することができる。
【0058】
また、図7および図8に示したアキシャル画像が表示されている状態で、操作者により操作コンソール41が用いられて拡大表示が指示された場合、図10および図11に示すような部分拡大表示を行うことも可能である。
【0059】
図10は、図7に示したアキシャル画像が表示されている状態で拡大表示が指示された場合の表示例を説明する図であり、図11は、図8に示したアキシャル画像が表示されている状態で拡大表示が指示された場合の表示例を説明する図である。
【0060】
図10の例の場合、スライス位置1rowにおけるアキシャル画像100b−1のうち、基準位置と交差する領域を含むエリアA1乃至A4がそれぞれ拡大され、スライス位置Xrowにおけるアキシャル画像100b−xのうち、基準位置と交差する領域を含むエリアA5乃至A8がそれぞれ拡大される。そして、拡大処理が施されると、図中白抜き矢印で示す先にある画像の表示に切り替わる。これらの部分拡大表示されたアキシャル画像には、ファントム100を正しく設置できた場合の中心位置となる基準線が図中点線で十字方向に表示され、ファントム100を正しく設置できた場合の基準位置が図中太線で表示され、さらに、位置合わせ用のスケールも表示されている。
【0061】
図10の表示例では、ファントム100が設置基準位置に合っているため、図中点線で示される基準線の中心位置にアキシャル画像100b−1と100b−xが部分拡大表示されている。
【0062】
同様に、図11の例の場合も、アキシャル画像100b−1のエリアA1乃至A4がそれぞれ拡大され、アキシャル画像100b−xのエリアA5乃至A8がそれぞれ拡大される。そして、拡大処理が施されると、図中白抜き矢印で示す先にある画像の表示に切り替わる。
【0063】
図11の表示例では、ファントム100が前端部では設置基準位置に合っているものの、後端部にかけてずれているため、スライス位置1rowにおけるアキシャル画像100b−1は、基準線の中心位置に部分拡大表示されているが、スライス位置Xrowにおけるアキシャル画像100b−xは中心位置からずれて部分拡大表示されている。
【0064】
このように、図10および図11に示すような離れたスライス位置における2つのアキシャル画像の基準位置と交差する部分をそれぞれ拡大表示することにより、ファントム100の設置基準位置からのずれをより詳細に確認することができる。そして、操作者は、拡大表示されている画像のずれをスケールから容易に読み取ることができる。
【0065】
次に、図12のフローチャートを参照して、コンピュータ装置3が実行する、ファントム100の位置合わせのための表示制御処理について説明する。この処理は、操作者により操作コンソール41が用いられ、X線CT装置1の性能評価を行うための補正データ収集が指示されたときに、ファントム100を好適な設置位置に合わせるために行われる。
【0066】
操作検出部31aは、操作コンソール41から供給された入力信号から、補正データ収集画面を表示させるための指示を検出したとき、その検出結果を表示制御部32bに供給する。
【0067】
ステップS1において、表示制御部32bは、操作検出部31aから供給された検出結果に基づいて、X線CT装置1の性能評価を行うために用いる補正データ収集画面を表示する。
【0068】
図13は、補正データ収集画面51の表示例を示す図である。
【0069】
補正データ収集画面51には、スキャンモードの選択項目やFOVの選択項目が表示されており、操作者が、選択項目の中から、所定のスキャンモードやFOVを選択することができるようになされている。
【0070】
操作者により、補正データ収集を行うファントム100のサイズが選択されたとき、ダイアログボックス52が表示される。このダイアログボックス52には、「ファントムの位置合わせを行いますか?」のメッセージとともに、ファントム100の位置合わせを行う場合に選択される「OK」ボタン53、および、既にファントム100の位置合わせが行われている場合に選択される「Cancel」ボタン54が表示されている。
【0071】
ステップS2において、操作検出部31aは、操作者によりファントム100の位置合わせが指示されたか否かを判定する。すなわち、図13に示す補正データ収集画面51において、補正データ収集を行うファントム100のサイズが選択され、「OK」ボタン53が選択されたか否かを判定する。
【0072】
なお、図13に示す補正データ収集画面51において、「Cancel」ボタン54が選択された場合には、既にファントム100の位置合わせが行われており、次の処理として補正データ収集処理が行われる。
【0073】
ステップS2において、ファントム100の位置合わせが指示されたと判定された場合、ステップS3に進み、算出部32aは、操作検出部31aから供給されたファントム位置合わせの指示に基づいて、予め記憶されているFOVに関する情報の中から、位置合わせの指示があったファントム100のサイズに合うFOVを選択し、基準位置を算出する。
【0074】
例えば、「L」サイズのファントム100の位置合わせが指示された場合、一回り大きい「LL」サイズのFOVが選択され、「LL」サイズのFOVにより決まる基準位置が算出される。
【0075】
ステップS4において、スキャン条件選択部31bは、操作検出部31aから供給されたファントム位置合わせの指示に基づいて、予め記憶されている位置合わせ用のスキャン条件の中から、位置合わせの指示があったファントム100のサイズに合うスキャン条件を選択する。
【0076】
ステップS5において、スキャン実行部31cは、ステップS4で選択されたスキャン条件でファントム100の撮影を行うように、ガントリ2の各部を制御する。これにより、ガントリ2の各部が駆動し、データ収集部25によって、検出器23で検出された透過X線量のデータが収集され、画像再構成部32に送信される。
【0077】
ステップS6において、算出部32aは、データ収集部25から送信されてきた画像データを取得する。
【0078】
ステップS7において、算出部32aは、ステップS3の処理で算出した基準位置と、ステップS6の処理で取得した画像データからファントム100の傾きを算出する。すなわち、ファントム100の断層像のCT値と、ファントム100の周囲の断層像のCT値の差から画素が抽出され、抽出した画素からファントム100の輪郭が探索され、傾きが算出される。
【0079】
ステップS8において、算出部32aは、ステップS3の処理で算出した基準位置と、ステップS6の処理で取得した画像データからファントム100の移動量を算出する。すなわち、ステップS7の処理で抽出されたファントム100の断層像の画素がカウントされ、移動量が算出される。
【0080】
ステップS9において、表示制御部32bは、ステップS6の処理で取得した画像データに基づく画像を画像表示部42に表示させるとともに、ステップS7とステップS8の処理で算出されたファントム100の傾きおよび移動量の情報を重畳表示させる。これにより、図4乃至図8に示したような画像が画像表示部42に表示されるため、操作者は、ファントム100の設置基準位置からのずれを容易に確認することができる。また操作者は、必要に応じて、図10および図11に示したような部分拡大表示を行うことにより、より詳細なずれをスケールから読み取ることが可能になる。さらに操作者は、スケールから読み取った移動量から、ファントム100の設置位置の調整もスムーズに行うことができる。そして、ファントム100がX線CT装置1の好適な位置に設置されると、X線CT装置1の性能評価を行うための補正データ収集処理が行われる。
【0081】
以上のように、本発明を適用することによって、多列化した検出器を有するX線CT装置の装置性能の評価を行うためのファントムが大きくなっても、高精度にファントムの位置合わせを行うことができ、性能評価を精度良く行うことが可能になる。
【0082】
なおこの発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化したり、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせたりすることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
【図2】ファントムが天板に載置された場合のX線CT装置の外観斜視図である。
【図3】コンピュータ装置の機能構成例を示す図である。
【図4】スキャノ画像の表示例を示す図である。
【図5】スキャノ画像の他の表示例を示す図である。
【図6】MPR画像の表示例を示す図である。
【図7】アキシャル画像の表示例を示す図である。
【図8】アキシャル画像の他の表示例を示す図である。
【図9】ファントムの状態を表す概略斜視図である。
【図10】図7の画像の部分拡大表示例を示す図である。
【図11】図8の画像の部分拡大表示例を示す図である。
【図12】キャリブレーション処理を説明するフローチャートである。
【図13】補正データ収集画面の表示例を示す図である。
【図14】ファントムの設置状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0084】
1 X線CT装置
31 撮影制御部
31a 操作検出部31a
31b スキャン条件選択部
31c スキャン実行部
32 画像再構成部
32a 算出部
32b 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を曝射するX線管と多列化したX線検出器を有するX線CT装置において、
充填物が充填された筐体であるファントムの周りで、前記X線管と前記X線検出器を回転して投影データを収集する撮影制御手段と、
前記ファントムの投影データに基づいて断層像を再構成する再構成手段と、
前記断層像中のファントムの端部近傍に設定された複数のエリアの画像を抽出し、その複数のエリアの画像を合成した傾き確認用の画像を生成する画像生成手段と、
前記傾き確認用の画像を表示する表示制御手段と
を備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記画像生成手段は、離間して設けられた複数の前記エリアの画像を隣接するように配置して、前記傾き確認用の画像を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記ファントムの傾きおよび移動量を算出する算出手段をさらに備え、
前記表示制御手段は、前記算出手段により算出された前記ファントムの傾きおよび移動量を示す情報をさらに表示する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記ファントムのMPR画像を表示する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項5】
X線を曝射するX線管と多列化したX線検出器を有するX線CT装置において、
充填物が充填された筐体であるファントムと前記X線管を相対的に平行移動させて投影データを収集する撮影制御手段と、
前記ファントムの投影データに基づいて断層像を再構成する再構成手段と、
前記ファントムの傾きおよび移動量を算出する算出手段と、
前記断層像とともに、前記ファントムの傾きおよび移動量を示す情報を表示する表示制御手段と
を備えることを特徴とするX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−4959(P2010−4959A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165092(P2008−165092)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】