ZnO系化合物半導体素子
【課題】ZnO系化合物半導体素子においてp型層を形成するための新規な技術を提供する。
【解決手段】ZnO系化合物半導体素子は、基板と、基板上方に形成され、NがドープされたZnO系化合物半導体層と、NがドープされたZnO系化合物半導体層上に形成され、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層とを有する。
【解決手段】ZnO系化合物半導体素子は、基板と、基板上方に形成され、NがドープされたZnO系化合物半導体層と、NがドープされたZnO系化合物半導体層上に形成され、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZnO系化合物半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛(ZnO)は、室温で3.37eVのバンドギャップエネルギーを持つ直接遷移型の半導体であり、励起子の結合エネルギーが60meVと他の半導体と比較して非常に大きい。この値は、室温のエネルギーである25meVに比べても十分に大きく、室温でも励起子が解離しないことから、励起子発光を用いた高効率な発光素子材料としての研究が進められている。
【0003】
また、ZnOは、現在広く普及しているGaN系発光素子の屈折率2.4と比較して、屈折率が2.0と小さいため、発光素子を作製した場合の光取り出し効率がGaN系発光素子より高くなるというメリットも有する。さらに、原材料自体が安価であるとともに、環境や人体への悪影響が少ないという特徴も有する。
【0004】
ZnO系化合物半導体の伝導性制御について、特にp型化に関し、特許文献や論文による発表が数多くなされている(例えば特許文献1参照)。しかし、ZnO系化合物半導体のp型伝導性は、再現性や安定性を向上させることが難しい。
【0005】
ZnOのp型化の方法として、NとTeをコドーピングする方法が発表されている(非特許文献1参照)。非特許文献1は、MBEにより、ZnO基板上に成長され、NとTeがコドーピングされたZnO膜において、キャリア密度4×1016cm−3、抵抗率13Ω・cmのp型伝導性が得られたと報告している。
【0006】
また、ZnO系化合物半導体を含有するp型II−VI族化合物半導体として、不純物ドーピングされていないZnO層と、p型不純物であるNがドーピングされたZnTeとを交互に積層した積層構造(アンドープZnO/ZnTe:N交互積層構造)が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
NがドープされたMgZnO層のp型伝導性について、非特許文献2に説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−197410号公報
【特許文献2】特許第3492551号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Appl. Phys. Express 3 (2010) 031103
【非特許文献2】Appl. Phys. Lett. 97, 013501 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一目的は、ZnO系化合物半導体素子においてp型層を形成するための新規な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、基板と、前記基板上方に形成され、NがドープされたZnO系化合物半導体層と、前記NがドープされたZnO系化合物半導体層上に形成され、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層とを有するZnO系化合物半導体素子が提供される。
【発明の効果】
【0012】
NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層の下に、NがドープされたZnO系化合物半導体層を挿入することにより、ZnO系化合物半導体素子の電気的特性改善等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1実施例によるZnO系LEDの概略断面図である。
【図2】図2Aは、第1実施例によるZnO系LEDの電流−電圧特性であり、図2Bは、第1実施例によるZnO系LEDのN濃度及びTe濃度のプロファイルである。
【図3】図3Aは、第2実施例によるZnO系LEDの概略断面図であり、図3Bは、交互層の概略断面図である。
【図4】図4は、第2実施例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。
【図5】図5A及び図5Bは、第3実施例によるサンプルのN濃度及びTe濃度のプロファイルである。
【図6】図6は、第4実施例による発光素子の概略断面図である。
【図7】図7Aは、第5実施例による発光素子の概略断面図であり、図7Bは、交互層の概略断面図である。
【図8】図8A及び図8Bは、変形例による活性層構造を示す概略断面図である。
【図9】図9は、MBE装置の例を示す概略断面図である。
【図10】図10は、第1比較例によるZnO系LEDの概略断面図である。
【図11】図11Aは、第1比較例によるZnO系LEDの電流−電圧特性であり、図11Bは、第1比較例によるZnO系LEDのN濃度及びTe濃度のプロファイルである。
【図12】図12Aは、第2比較例によるZnO系LEDの概略断面図であり、図12Bは、交互層の概略断面図である。
【図13】図13は、第2比較例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、ZnO系化合物半導体層及びZnTe系化合物半導体層の成長に用いられる結晶製造装置について説明する。結晶製造方法として、以下に説明する比較例や実施例では、分子線エピタキシ(MBE)を用いる。ここで、ZnO系化合物半導体はZnとOとを含む。ZnTe系化合物半導体はZnとTeとを含む。
【0015】
図9は、MBE装置の例を示す概略断面図である。真空チャンバ101が、Znソースガン102、Mgソースガン103、Teソースガン104、Oソースガン105、及び、Nソースガン106を備える。
【0016】
Znソースガン102、Mgソースガン103、Teソースガン104は、それぞれ、Zn固体ソース(例えば純度7N)、Mg固体ソース(例えば純度6N)、及びTe固体ソース(例えば純度6N)を収容するクヌーセンセルを含み、Znビーム、Mgビーム、Teビームを出射する。
【0017】
Oソースガン105、Nソースガン106は、それぞれ、例えば13.56MHzのラジオ周波(RF)を用いた無電極放電管を含み、O2ガス(例えば純度6N)、N2ガス(例えば純度6N)をプラズマ化して、Oラジカルビーム、Nラジカルビームを出射する。
【0018】
なお、N源は、N元素を含むものであればN2に限らない。N2の他、例えば、N2O、NO、N2+O2、NH3などの種々のN源を用いることも可能である。
【0019】
真空チャンバ101内に、ヒータを含むステージ107が配置され、ステージ107が、基板108を保持する。基板108上に、所望のビームを供給することにより、所望の結晶層を成長させることができる。
【0020】
本MBE装置は、反射高速電子回折(RHEED)用のガン109、及びRHEED像を映すスクリーン110を備える。RHEED像から、成長した結晶層の結晶性を評価できる。単結晶が2次元的に成長し表面が平坦である場合は、RHEED像がストリークパターンを示し、単結晶が3次元的に成長し表面が平坦でない場合は、RHEED像がスポットパターンを示す。
【0021】
ZnOにMgを添加することにより、バンドギャップを広げることができる。ただし、ZnOはウルツ鉱構造(六方晶)で、MgOは岩塩構造(立方晶)であるため、Mg組成が高すぎると相分離を起こしてしまう。MgZnOのMg組成をxと明示したMgxZn1−xOにおいて、Mg組成xは、ウルツ鉱構造を保つため0.6以下とするのが好ましい。ここで、Mg組成x=0も含めることにより、MgxZn1−xOという表記に、Mgの添加されていないZnOも含める。
【0022】
なお、ZnOにBe、Ca等を添加することにより、バンドギャップを広げることもできる。必要に応じて、MBE装置にBeソースガン、Caソースガン等を追加することができる。
【0023】
ZnOに例えばS、Se、Cd等を添加することにより、バンドギャップを狭めることができる。必要に応じて、MBE装置にSソースガン、Seソースガン、Cdソースガン等を追加することができる。
【0024】
ZnO系化合物半導体のn型伝導性は、n型不純物を添加しなくても得ることができる。n型キャリア濃度を高めるために、Al、Ga、In等を添加することもできる。必要に応じて、MBE装置にAlソースガン、Gaソースガン、Inソースガン等を追加することができる。
【0025】
ZnO系化合物半導体のp型伝導性を得るために、N及びTeを同時に添加(NとTeをコドープ)することができる。
【0026】
また、ZnO系化合物半導体を含有するp型II−VI族化合物半導体として、N及びTeがコドープされたZnO系化合物半導体層と、NがドープされたZnTe系化合物半導体層とを交互に積層した積層構造を形成することができる。なお、上記[背景技術]の欄で説明した特許文献2記載の積層構造は、アンドープZnOと、NがドープされたZnTeとを交互に積層した構造である。
【0027】
ZnO系化合物半導体素子の作製に用いられる基板には、酸化亜鉛(ZnO)基板、 サファイア(Al2O3)基板、炭化珪素(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、六方晶系MgxZn1−xO基板(0<x≦0.5)、立方晶系MgxZn1−xO基板(0.5<x≦1)、シリコン(Si)基板などがある。
【0028】
結晶性の良いZnO系半導体層を得るためには、格子不整合度の小さい基板ほど良く、特に好ましいのはZnO基板である。また発光素子を作製する場合は、基板が活性層からの放射光を吸収してしまうことで、素子からの放射光の取り出し効率が落ちてしまうのを抑制するために、ZnOに比べてバンドギャップが大きいMgZnO基板を用いるのも好ましい。
【0029】
基板は、+c面、−c面、a面、m面など種々の面を用いて、その上にZnO系化合物半導体層を成長させることができる。
【0030】
さらに例えば、+c面基板について、m方向やa方向などにオフ角をつけた種々の基板を用いることもできる。
【0031】
また、上記の基板上に、MgZnO膜、ZnO膜、GaN膜などを厚さ1μm以上形成したテンプレートを用いても良い。
【0032】
次に、第1比較例によるZnO系発光ダイオード(LED)について説明する。
【0033】
図10は、第1比較例によるZnO系LEDの概略断面図である。洗浄された+c面ZnO基板41上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープZnO緩衝層(バッファ層)42を、およそ30nm程度の厚さ形成した。成長温度は350℃とし、Znビームは、フラックスを0.12nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射した。次に、バッファ層42を高品質化させるためにアニールを行った。例えば、アニール温度は900℃で、アニール時間は20分である。
【0034】
次に、バッファ層42の上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープZnO層(活性層)43を、およそ100nm程度の厚さ形成した。成長温度は900℃とし、Znビームは、フラックスを0.12nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射した。
【0035】
次に、アンドープZnO層43上に、Znビーム、Oラジカルビーム、Nラジカルビーム、及びTeビームを同時照射して、NとTeがコドープされたZnO層(ZnO:[N+Te]層)44Aを、およそ70nm程度の厚さ形成した。
【0036】
成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.12nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量1sccm、RFパワー100Wとして照射し、Teビームは、フラックスを0.003nm/sとして照射した。
【0037】
ZnO基板41の裏面上に厚さ5nmのTi層を堆積し、Ti層上に厚さ400nmのAl層を堆積して、n側電極45nを形成した。ZnO:[N+Te]層44A上に厚さ1nmのNi層を堆積し、Ni層上に厚さ10nmのAu層を堆積して、p側透光性電極45pを形成した。電極用の各金属層の堆積には、EB蒸着を用いた。この後、300℃の酸素ガス雰囲気中で、電極の合金化処理を行った。合金処理時間は30秒である。このようにして、第1比較例によるZnO系LEDを作成した。
【0038】
次に、第1比較例によるZnO系LEDの課題について説明する。
【0039】
図11Aは、第1比較例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。縦軸にmA単位で電流値を示し、横軸にV単位で電圧値を示す。pn接合によるダイオード特性が観測されるが、およそ7V以下の低電圧領域でリーク電流成分が観測される。
【0040】
LEDにおけるリーク電流の原因として、一般に、結晶中の欠陥が挙げられる。結晶中の欠陥がバンドギャップ中に準位を形成すると、電子-正孔は、その欠陥を介した再結合電流となって非発光再結合する。この非発光再結合過程は、例えばクラッド層中や活性層中などの欠陥、ヘテロ界面の欠陥などが形成するバンドギャップ中の準位を介して起こるため、低電圧でも、クラッド層、ヘテロ界面を通して起こり、低電圧領域でのリーク電流として現れる。測定された電流―電圧特性より、第1比較例によるZnO系LEDは、結晶中に多くの欠陥を含有していることが示唆される。
【0041】
図11Bは、第1比較例によるZnO系LEDに対し、2次イオン質量分析(SIMS)で測定されたN濃度及びTe濃度のプロファイルである。ZnO:[N+Te]層には、およそ1×1020cm−3のTeと、3×1020cm−3のNがほぼ均一にドーピングされている。
【0042】
しかし、ZnO:[N+Te]層(p型半導体層)44AとアンドープZnO層(活性層)43との界面には、N濃度及びTe濃度のパイルアップが見られ、N及びTeともに、パイルアップの濃度がZnO:[N+Te]層中の濃度よりも高くなっている。
【0043】
このパイルアップは、結晶中の欠陥と関連していると考えられ、パイルアップに起因する欠陥が、電流-電圧特性におけるリーク電流の原因になっているのではないかと推察される。
【0044】
次に、第2比較例によるZnO系LEDについて説明する。
【0045】
図12Aは、第2比較例によるZnO系LEDの概略断面図である。アンドープZnO層43までは、第1比較例と同様な工程で形成される。第2比較例では、アンドープZnO層43上に、ZnO:[N+Te]層と、NがドープされたZnTe層(ZnTe:N層)とが交互に積層されたZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層44Bを形成した。
【0046】
図12Bは、ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層44Bの概略断面図である。交互層44Bは、ZnO:[N+Te]層44aとZnTe:N層44bとを交互に6周期積層し、最表面にZnO:[N+Te]層44aを積層して形成した。ZnO:[N+Te]層44aの1層当たりの膜厚はおよそ5nmであり、ZnTe:N層44bの1層当たりの膜厚はおよそ0.4nmである。
【0047】
ZnO:[N+Te]層44aの形成において、成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量0.5sccm、RFパワー90Wとして照射し、Teビームは、フラックスを0.001nm/sとして照射した。
【0048】
ZnTe:N層44bの形成において、成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Teビームは、フラックスを0.001nm/sとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量0.5sccm、RFパワー90Wとして照射した。
【0049】
ZnO基板41の裏面上に、第1比較例と同様にして、n側電極45nを形成した。ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層44B上に、第1比較例と同様にして、p側透光性電極45pを形成した。このようにして、第2比較例によるZnO系LEDを作成した。
【0050】
次に、第2比較例によるZnO系LEDの課題について説明する。
【0051】
図13は、第2比較例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。pn接合によるダイオード特性が観測されるが、およそ5V以下の低電圧領域でリーク電流成分が観測される。第2比較例によるZnO系LEDも、結晶中に多くの欠陥を含有していると推測される。
【0052】
次に、第1実施例によるZnO系LEDについて説明する。以下に説明するように、第1実施例によるZnO系LEDは、第1比較例によるZnO系LEDのZnO:[N+Te]層の下に、NがドープされたZnO層(ZnO:N層)が挿入された構造である。
【0053】
図1は、第1実施例によるZnO系LEDの概略断面図である。洗浄された+c面ZnO基板1上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープZnO緩衝層(バッファ層)2を、およそ30nm程度の厚さ形成した。成長温度は350℃とし、Znビームは、フラックスを0.12nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射した。次に、バッファ層2を高品質化させるためにアニールを行った。例えば、アニール温度は900℃で、アニール時間は20分である。
【0054】
次に、バッファ層2の上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープZnO層(活性層)3を、およそ100nm程度の厚さ形成した。成長温度は900℃とし、Znビームは、フラックスを0.12nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射した。
【0055】
次に、アンドープZnO層3上に、Znビーム、Oラジカルビーム、及びNラジカルビームを同時照射して、ZnO:N層4を、およそ20nm程度の厚さ形成した。成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量1sccm、RFパワー100Wとして照射した。
【0056】
次に、ZnO:N層4上に、Znビーム、Oラジカルビーム、Nラジカルビーム、及びTeビームを同時照射して、ZnO:[N+Te]層5Aを、およそ80nm程度の厚さ形成した。成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量0.5sccm、RFパワー90Wとして照射し、Teビームは、フラックスを0.0006nm/sとして照射した。
【0057】
その後、第1比較例でのn側電極45n及びp側透光性電極45pの形成工程と同様にして、ZnO基板1の裏面上にn側電極6nを形成し、ZnO:[N+Te]層5A上にp側透光性電極6pを形成した。このようにして、第1実施例によるZnO系LEDを作成した。
【0058】
図2Aは、第1実施例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。縦軸にmA単位で電流値を示し、横軸にV単位で電圧値を示す。pn接合によるダイオード特性が観測され、第1比較例に比べてリーク電流が抑えられている。第1実施例では、第1比較例に比べ結晶中の欠陥が少ないことが推測される。電気特性が改善した理由について、以下、N濃度及びTe濃度のプロファイルを参照して考察する。
【0059】
図2Bは、第1実施例によるZnO系LEDのSIMSによるN濃度及びTe濃度のプロファイルである。ZnO:[N+Te]層において、Te濃度はおよそ1×1020cm−3であり、N濃度はおよそ3×1020cm−3であり、ドーピング量は第1比較例とほぼ等しい。ZnO:N層にも、ZnO:[N+Te]層とおおよそ等しい2×1020cm−3程度のNがドープされている。
【0060】
ただし、驚くべきことに、第1実施例の濃度プロファイルでは、第1比較例のようなZnO:[N+Te]層の下側界面におけるN濃度及びTe濃度のパイルアップが見られない。
【0061】
第1実施例では、p型層であるZnO:[N+Te]層の成長界面にN濃度及びTe濃度のパイルアップがみられないことから、層界面の高濃度なN及びTeに起因する結晶中の欠陥発生が抑制されていると思われ、このことが電流−電圧特性におけるリーク電流低減につながったと推察される。
【0062】
このように、ZnO:[N+Te]層の下地としてZnO:N層を挿入することにより、N濃度及びTe濃度のパイルアップが抑制でき、ダイオード特性を改善できることがわかった。ダイオード特性の改善より、発光特性の改善も期待される。
【0063】
なお、ZnO:N層4とZnO:[N+Te]層5Aの積層工程を、ひとまとまりのZnO[N+Te]層形成工程として捉えることもできる。このように捉えたとき、Nのドープ開始タイミングを、Teのドープ開始タイミングより先にすることにより、N濃度及びTe濃度のパイルアップが抑制できるといえる。
【0064】
次に、第2実施例によるZnO系LEDについて説明する。以下に説明するように、第2実施例によるZnO系発光LEDは、第2比較例によるZnO系発光LEDのZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層の下に、ZnO:N層が挿入された構造である。
【0065】
図3Aは、第2実施例によるZnO系LEDの概略断面図である。ZnO:N層4までは、第1実施例と同様な工程で形成される。ただし、第2実施例では、ZnO:N層4の厚さをおよそ30nmとした(第1実施例は、ZnO:N層4の厚さをおよそ20nmとした)。第2実施例では、ZnO:N層4上に、ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層5Bを形成した。
【0066】
図3Bは、ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層5Bの概略断面図である。交互層5Bは、ZnO:[N+Te]層5aとZnTe:N層5bとを交互に6周期積層し、最表面にZnO:[N+Te]層5aを積層して形成した。ZnO:[N+Te]層5aの1層当たりの膜厚はおよそ5nmであり、ZnTe:N層5bの1層当たりの膜厚はおよそ0.4nmである。
【0067】
交互層5Bの最下層はZnO:[N+Te]層5aであり、ZnO:[N+Te]層の下にZnO:N層が挿入されているという構造は、第1実施例と同様である。
【0068】
ZnO:[N+Te]層5aの形成において、成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量0.5sccm、RFパワー90Wとして照射し、Teビームは、フラックスを0.001nm/sとして照射した。
【0069】
ZnTe:N層5bの形成において、成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Teビームは、フラックスを0.001nm/sとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量0.5sccm、RFパワー90Wとして照射した。
【0070】
その後、第2比較例でのn側電極45n及びp側透光性電極45pの形成工程と同様にして、ZnO基板1の裏面上にn側電極6nを形成し、ZnO:[N+Te]層5B上にp側透光性電極6pを形成した。このようにして、第2実施例によるZnO系LEDを作成した。
【0071】
図4は、第2実施例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。pn接合によるダイオード特性が観測され、第2比較例に比べてリーク電流が抑えられている。第2実施例においても、ZnO[N+Te]層の下にZnO:N層が挿入されていることで、ZnO[N+Te]層の欠陥生成が抑制されて、リーク電流成分が減少したと推測される。第2実施例によるZnO系LEDについても、ダイオード特性改善に伴う発光特性改善が期待される。
【0072】
次に、第3実施例について説明する。第3実施例では、ZnO:N層とZnO:[N+Te]層の積層構造におけるZnO:N層のN濃度を変化させた2つのサンプル(サンプル1とサンプル2)を作製した。
【0073】
洗浄された+c面n型ZnO基板上に、アンドープZnO緩衝層(バッファ層)を、成長温度350℃にて、およそ30nm程度形成した。次に、バッファ層を高品質化させるためにアニールを行った。アニール温度は900℃で、アニール時間は20分である。
【0074】
バッファ層の高品質化までの工程は、サンプル1及びサンプル2とも共通である。バッファ層上にZnO:N層を積層し、ZnO:N層上にZnO:[N+Te]層を積層した。サンプル1、サンプル2のZnO:N層及びZnO:[N+Te]層の形成条件は以下の通りである。
[サンプル1]
・ZnO:N層 : 成長温度700℃、Znビームフラックス0.15nm/s、O2流量1sccm/RFパワー300W、N2流量1sccm/RFパワー140W
・ZnO:[N+Te]層 : 成長温度700℃、Znビームフラックス0.15nm/s、O2流量2sccm/RFパワー300W、N2流量0.5sccm/RFパワー90W、Teビームフラックス0.0006nm/s
[サンプル2]
・ZnO:N層 : 成長温度700℃、Znビームフラックス0.09nm/s、O2流量2sccm/RFパワー300W、N2流量0.2sccm/RFパワー80W
・ZnO:[N+Te]層 : 成長温度400℃、Znビームフラックス0.12nm/s、O2流量2sccm/RFパワー300W、N2流量1.0sccm/RFパワー120W、Teビームフラックス0.01nm/s
サンプル1のZnO:N層は、N濃度が5×1020cm−3で、層厚がおよそ15nm程度であり、サンプル2のZnO:N層は、N濃度が2×1019cm−3で、層厚がおよそ40nm程度である。
【0075】
図5A及び図5Bは、それぞれ、第3実施例によるサンプル1及びサンプル2のSIMSによるN濃度及びTe濃度のプロファイルである。サンプル1及びサンプル2はともに、ZnO:[N+Te]層/ZnO:N層界面での、N濃度及びTe濃度のパイルアップはみられない。このことより、ZnO:N層の挿入によって、結晶中の欠陥発生が抑制されているものと推測される。
【0076】
この結果より、ZnO:[N+Te]層の下に挿入されるZnO:N層のN濃度が2×1019cm−3〜5×1020cm−3の範囲については、ダイオード特性等の改善効果が得られると考えられる。なお、第3実施例の実験で確認した範囲より少し広いN濃度範囲、例えば1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下の範囲に対して、同様な効果を期待してもよいであろう。
【0077】
なお、上述の実施例では、ZnO:[N+Te]層の下地層としてZnO:N層を用いたが、下地層として、その他のZnO系化合物半導体にNがドープされた層を用いることもできるであろう。例えば、NがドープされたMgxZn1−xO(0<x≦0.6)層(MgxZn1−xO:N(0<x≦0.6)層)を用いることができるであろう。
【0078】
また、上述の実施例では、ZnO:N層の直上に形成される上側層としてZnO:[N+Te]層を形成したが、上側層として、その他のZnO系化合物半導体にNとTeがコドープされたp型層を用いることもできるであろう。例えば、NとTeがコドープされたMgxZn1−xO(0<x≦0.6)層(MgxZn1−xO:[N+Te](0<x≦0.6)層)を用いることができるであろう。
【0079】
なお、上述の実施例では、上側層(ZnO:[N+Te]層)にNとともにコドープされる元素をTeとしたが、Nとともにコドープされる元素としてTe以外に、同じVI族元素であるS、Seなども用いることができるのではないかと思われる。
【0080】
なお、上述の第2実施例では、ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層を形成したが、交互層において、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層上に形成されるp型層は、ZnTe:N層に限らず、その他のZnTe系化合物半導体にNがドープされた層を用いることもできるのではないかと思われる。例えば、NがドープされたMgxZn1−xTe(0<x≦0.6)層を用いることができるであろう。
【0081】
次に、下地層として用いられるMgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層の好適な膜厚範囲について考察する。下地層の直上に形成される上側層は、例えばMgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層である。下地層の直下に、例えばアンドープのMgxZn1−xO(0≦x≦0.6)による活性層が形成されている。
【0082】
下地層が活性層表面を覆って、上側層と活性層とを接触させないことにより、上述のような効果を生じさせていると推測すると、下地層の厚みの下限は、例えば(c軸方向で)ZnOの2分子層分の厚みである、およそ0.5nm程度ではないかと推察される。
【0083】
素子作製の観点から、下地層膜厚の上限について考察する。発光素子のように素子の上下間に電流を印加する場合、挿入される下地層の伝導型や抵抗率などが素子特性にとって重要になる。例えば上記[背景技術]の欄に記載した[非特許文献2]によると、MgZnO:N層は、p型伝導性を持つものの、ホール効果やゼーベック効果などによる測定が行えるほどアクセプタ密度の向上がなされていない。つまり、高抵抗なp型膜である。
【0084】
例えばZnO系化合物半導体発光素子を作製する場合、挿入されるMgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)下地層があまりに厚いと、電流印加時の素子の抵抗が高くなる為、電流印加によって素子が発熱してしまうことに起因して、例えば、発光効率が低下するなどの問題が発生する。よって、例えば発光素子に適用する場合のMgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)下地層の膜厚は、30nm程度以下とするのが好ましいであろう。
【0085】
次に、第4実施例による発光素子について説明する。
【0086】
図6は、第4実施例による発光素子の概略断面図である。洗浄された+c面ZnO基板21上に、ZnO緩衝層(バッファ層)22を形成する。バッファ層22の厚さは10nm〜30nm程度が望ましく、成長温度200℃〜400℃で成長させる。次に、バッファ層22を高品質化させるためにアニールを行う。アニール温度は500℃〜1000℃で、アニール時間は3分〜30分である。
【0087】
次に、バッファ層22上に、例えばAlがドープされたn型MgwZn1−wO (0≦w≦0.6)層23を形成する。厚さは5nm〜200nmで、Al濃度は1×1017cm−3以上が好ましい。成長温度700℃〜1000℃で成長させる。
【0088】
n型MgwZn1−wO (0≦w≦0.6)層23上に、アンドープのMgxZn1−xO(0≦x≦0.6) 活性層24を形成する。成長温度は、500℃〜1000℃である。
【0089】
なお、図8A及び図8Bに示す変形例のように、活性層24は単一層に限らず、例えば、MgaZn1−aO(0≦a≦0.6)障壁層24bとMgbZn1−bO (0≦b≦0.6、b<a)井戸層24wとを交互に積層した量子井戸構造とすることもできる。図8Aは一重量子井戸(SQW)構造を示す概略断面図、図8Bは多重量子井戸(MQW)構造を示す概略断面図である。
【0090】
活性層24上に、MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層25を形成する。成長温度は300℃〜1000℃であり、厚さは0.5nm〜30nmである。
【0091】
MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層25上に、p型半導体層として、MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層26Aを形成する。厚さは5nm〜200nmで、成長温度300℃〜700℃で成長させる。
【0092】
なお、n型MgwZn1−wO (0≦w≦0.6)層23、MgxZn1−xO(0≦x≦0.6) 活性層24、MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層25、p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層26AのMg組成w、x、y及びzについて、x≦w、y、zである。
【0093】
その後、ZnO基板21の裏面に、例えば、Ti層を厚さ2nm〜10nm堆積し、Ti層上にAl層を厚さ300nm〜500nm堆積して、n側電極27nを形成する。p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層26A上に、例えば、Ni層を厚さ0.5nm〜5nm堆積し、Ni層上にAu層を厚さ1nm〜20nm堆積して、p側透光性電極27pを形成する。
【0094】
p側透光性電極27p上に、例えば、Ni層を厚さ100nm堆積し、Ni層上に厚さAu層を1000nm堆積して、ボンディング用パッド電極28を形成する。電極のパターニングには、例えば、レジストパターンを用いたリフトオフ等を用いることができる。
【0095】
この後、例えば300℃〜700℃の酸化性ガス雰囲気中で、電極合金化処理を行う。合金処理時間は例えば30秒〜10分程度である。以上のようにして、第4実施例による発光素子が形成される。
【0096】
次に、第5実施例による発光素子について説明する。
【0097】
図7A及び図7Bは、それぞれ、第5実施例による発光素子の概略断面図、及び交互層の概略断面図である。MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層25までは、第4実施例と同様な工程で形成される。第5実施例では、MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層25上に、p型半導体層として、MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層26aとZnTe:N層26bとが交互に積層された、p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)/ZnTe:N交互層26Bを形成する。
【0098】
その後、第4実施例と同様にして、ZnO基板21の裏面上にn側電極27nを形成し、交互層26B上にp側透光性電極27pを形成し、p側透光性電極27p上にボンディング用パッド電極28を形成する。以上のようにして、第5実施例による発光素子が形成される。
【0099】
なお、第4実施例及び第5実施例では、n型導電性を有する+c面ZnO基板を用いる例を示したが、基板として、例えばサファイア(Al2O3)などの絶縁性基板を用いることもできる。この場合には、基板裏面側から電極を取ることができないため、素子上方からドライエッチングなどでn型半導体層を露出させて、露出部にn側電極を作製することができる。
【0100】
なお、第4実施例及び第5実施例の発光素子ではn型半導体層にAlをドーピングしたが、n型半導体層は、1×1017cm−3程度のn型キャリア密度を有すれば、アンドープでも構わないし、例えばGaやInなど、Al以外のその他のドナー元素をドーピングしても構わない。また、2つ以上のドナー元素を同時にドーピングしてn型半導体層を作製することも可能である。
【0101】
以上、実施例に沿って説明したように、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層の下に、NがドープされたZnO系化合物半導体層を挿入することにより、ZnO系化合物半導体素子の電気的特性改善等を図ることができる。
【0102】
なお、上述の実施例では、結晶成長方法としてMBEを例示したが、他の結晶成長方法、例えばパルスレーザ堆積(PLD)や、有機金属化学気相堆積(MOCVD)などを用いることもできるであろう。
【0103】
実施例の方法で得られるZnO系化合物半導体素子構造は、例えば、短波長(紫外〜青)の発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)に利用でき、また、これらの応用製品(各種インジケータ、LEDディスプレイ等)に利用できる。また、白色LEDやその応用製品(照明器具、各種インジケータ、ディスプレイ、各種表示器のバックライト等)に利用できる。また、ZnO系トランジスタ等の電子デバイスやその応用製品に利用でき、ZnO系センサ(湿度センサ、紫外センサ等)やその応用製品に利用できる。
【0104】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0105】
101 真空チャンバ
102 Znソースガン
103 Mgソースガン
104 Teソースガン
105 Oソースガン
106 Nソースガン
107 ステージ
108 基板
109 RHEED用ガン
110 スクリーン
1 ZnO基板
2 ZnOバッファ層
3 アンドープZnO層
4 ZnO:N層
5A ZnO:[N+Te]層
5B ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層
5a ZnO:[N+Te]層
5b ZnTe:N層
6n n側電極
6p p側電極
21 ZnO基板
22 ZnOバッファ層
23 n型MgwZn1−wO (0≦w≦0.6)層
24 MgxZn1−xO (0≦x≦0.6) 活性層
25 MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層
26A p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層
26B p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)/ZnTe:N交互層
26a p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層
26b ZnTe:N層
27n n側電極
27p p側電極
28 ボンディング用パッド電極
41 ZnO基板
42 ZnOバッファ層
43 アンドープZnO層
44A ZnO:[N+Te]層
44B ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層
44a ZnO:[N+Te]層
44b ZnTe:N層
45n n側電極
45p p側電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZnO系化合物半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛(ZnO)は、室温で3.37eVのバンドギャップエネルギーを持つ直接遷移型の半導体であり、励起子の結合エネルギーが60meVと他の半導体と比較して非常に大きい。この値は、室温のエネルギーである25meVに比べても十分に大きく、室温でも励起子が解離しないことから、励起子発光を用いた高効率な発光素子材料としての研究が進められている。
【0003】
また、ZnOは、現在広く普及しているGaN系発光素子の屈折率2.4と比較して、屈折率が2.0と小さいため、発光素子を作製した場合の光取り出し効率がGaN系発光素子より高くなるというメリットも有する。さらに、原材料自体が安価であるとともに、環境や人体への悪影響が少ないという特徴も有する。
【0004】
ZnO系化合物半導体の伝導性制御について、特にp型化に関し、特許文献や論文による発表が数多くなされている(例えば特許文献1参照)。しかし、ZnO系化合物半導体のp型伝導性は、再現性や安定性を向上させることが難しい。
【0005】
ZnOのp型化の方法として、NとTeをコドーピングする方法が発表されている(非特許文献1参照)。非特許文献1は、MBEにより、ZnO基板上に成長され、NとTeがコドーピングされたZnO膜において、キャリア密度4×1016cm−3、抵抗率13Ω・cmのp型伝導性が得られたと報告している。
【0006】
また、ZnO系化合物半導体を含有するp型II−VI族化合物半導体として、不純物ドーピングされていないZnO層と、p型不純物であるNがドーピングされたZnTeとを交互に積層した積層構造(アンドープZnO/ZnTe:N交互積層構造)が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
NがドープされたMgZnO層のp型伝導性について、非特許文献2に説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−197410号公報
【特許文献2】特許第3492551号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Appl. Phys. Express 3 (2010) 031103
【非特許文献2】Appl. Phys. Lett. 97, 013501 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一目的は、ZnO系化合物半導体素子においてp型層を形成するための新規な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、基板と、前記基板上方に形成され、NがドープされたZnO系化合物半導体層と、前記NがドープされたZnO系化合物半導体層上に形成され、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層とを有するZnO系化合物半導体素子が提供される。
【発明の効果】
【0012】
NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層の下に、NがドープされたZnO系化合物半導体層を挿入することにより、ZnO系化合物半導体素子の電気的特性改善等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1実施例によるZnO系LEDの概略断面図である。
【図2】図2Aは、第1実施例によるZnO系LEDの電流−電圧特性であり、図2Bは、第1実施例によるZnO系LEDのN濃度及びTe濃度のプロファイルである。
【図3】図3Aは、第2実施例によるZnO系LEDの概略断面図であり、図3Bは、交互層の概略断面図である。
【図4】図4は、第2実施例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。
【図5】図5A及び図5Bは、第3実施例によるサンプルのN濃度及びTe濃度のプロファイルである。
【図6】図6は、第4実施例による発光素子の概略断面図である。
【図7】図7Aは、第5実施例による発光素子の概略断面図であり、図7Bは、交互層の概略断面図である。
【図8】図8A及び図8Bは、変形例による活性層構造を示す概略断面図である。
【図9】図9は、MBE装置の例を示す概略断面図である。
【図10】図10は、第1比較例によるZnO系LEDの概略断面図である。
【図11】図11Aは、第1比較例によるZnO系LEDの電流−電圧特性であり、図11Bは、第1比較例によるZnO系LEDのN濃度及びTe濃度のプロファイルである。
【図12】図12Aは、第2比較例によるZnO系LEDの概略断面図であり、図12Bは、交互層の概略断面図である。
【図13】図13は、第2比較例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、ZnO系化合物半導体層及びZnTe系化合物半導体層の成長に用いられる結晶製造装置について説明する。結晶製造方法として、以下に説明する比較例や実施例では、分子線エピタキシ(MBE)を用いる。ここで、ZnO系化合物半導体はZnとOとを含む。ZnTe系化合物半導体はZnとTeとを含む。
【0015】
図9は、MBE装置の例を示す概略断面図である。真空チャンバ101が、Znソースガン102、Mgソースガン103、Teソースガン104、Oソースガン105、及び、Nソースガン106を備える。
【0016】
Znソースガン102、Mgソースガン103、Teソースガン104は、それぞれ、Zn固体ソース(例えば純度7N)、Mg固体ソース(例えば純度6N)、及びTe固体ソース(例えば純度6N)を収容するクヌーセンセルを含み、Znビーム、Mgビーム、Teビームを出射する。
【0017】
Oソースガン105、Nソースガン106は、それぞれ、例えば13.56MHzのラジオ周波(RF)を用いた無電極放電管を含み、O2ガス(例えば純度6N)、N2ガス(例えば純度6N)をプラズマ化して、Oラジカルビーム、Nラジカルビームを出射する。
【0018】
なお、N源は、N元素を含むものであればN2に限らない。N2の他、例えば、N2O、NO、N2+O2、NH3などの種々のN源を用いることも可能である。
【0019】
真空チャンバ101内に、ヒータを含むステージ107が配置され、ステージ107が、基板108を保持する。基板108上に、所望のビームを供給することにより、所望の結晶層を成長させることができる。
【0020】
本MBE装置は、反射高速電子回折(RHEED)用のガン109、及びRHEED像を映すスクリーン110を備える。RHEED像から、成長した結晶層の結晶性を評価できる。単結晶が2次元的に成長し表面が平坦である場合は、RHEED像がストリークパターンを示し、単結晶が3次元的に成長し表面が平坦でない場合は、RHEED像がスポットパターンを示す。
【0021】
ZnOにMgを添加することにより、バンドギャップを広げることができる。ただし、ZnOはウルツ鉱構造(六方晶)で、MgOは岩塩構造(立方晶)であるため、Mg組成が高すぎると相分離を起こしてしまう。MgZnOのMg組成をxと明示したMgxZn1−xOにおいて、Mg組成xは、ウルツ鉱構造を保つため0.6以下とするのが好ましい。ここで、Mg組成x=0も含めることにより、MgxZn1−xOという表記に、Mgの添加されていないZnOも含める。
【0022】
なお、ZnOにBe、Ca等を添加することにより、バンドギャップを広げることもできる。必要に応じて、MBE装置にBeソースガン、Caソースガン等を追加することができる。
【0023】
ZnOに例えばS、Se、Cd等を添加することにより、バンドギャップを狭めることができる。必要に応じて、MBE装置にSソースガン、Seソースガン、Cdソースガン等を追加することができる。
【0024】
ZnO系化合物半導体のn型伝導性は、n型不純物を添加しなくても得ることができる。n型キャリア濃度を高めるために、Al、Ga、In等を添加することもできる。必要に応じて、MBE装置にAlソースガン、Gaソースガン、Inソースガン等を追加することができる。
【0025】
ZnO系化合物半導体のp型伝導性を得るために、N及びTeを同時に添加(NとTeをコドープ)することができる。
【0026】
また、ZnO系化合物半導体を含有するp型II−VI族化合物半導体として、N及びTeがコドープされたZnO系化合物半導体層と、NがドープされたZnTe系化合物半導体層とを交互に積層した積層構造を形成することができる。なお、上記[背景技術]の欄で説明した特許文献2記載の積層構造は、アンドープZnOと、NがドープされたZnTeとを交互に積層した構造である。
【0027】
ZnO系化合物半導体素子の作製に用いられる基板には、酸化亜鉛(ZnO)基板、 サファイア(Al2O3)基板、炭化珪素(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、六方晶系MgxZn1−xO基板(0<x≦0.5)、立方晶系MgxZn1−xO基板(0.5<x≦1)、シリコン(Si)基板などがある。
【0028】
結晶性の良いZnO系半導体層を得るためには、格子不整合度の小さい基板ほど良く、特に好ましいのはZnO基板である。また発光素子を作製する場合は、基板が活性層からの放射光を吸収してしまうことで、素子からの放射光の取り出し効率が落ちてしまうのを抑制するために、ZnOに比べてバンドギャップが大きいMgZnO基板を用いるのも好ましい。
【0029】
基板は、+c面、−c面、a面、m面など種々の面を用いて、その上にZnO系化合物半導体層を成長させることができる。
【0030】
さらに例えば、+c面基板について、m方向やa方向などにオフ角をつけた種々の基板を用いることもできる。
【0031】
また、上記の基板上に、MgZnO膜、ZnO膜、GaN膜などを厚さ1μm以上形成したテンプレートを用いても良い。
【0032】
次に、第1比較例によるZnO系発光ダイオード(LED)について説明する。
【0033】
図10は、第1比較例によるZnO系LEDの概略断面図である。洗浄された+c面ZnO基板41上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープZnO緩衝層(バッファ層)42を、およそ30nm程度の厚さ形成した。成長温度は350℃とし、Znビームは、フラックスを0.12nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射した。次に、バッファ層42を高品質化させるためにアニールを行った。例えば、アニール温度は900℃で、アニール時間は20分である。
【0034】
次に、バッファ層42の上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープZnO層(活性層)43を、およそ100nm程度の厚さ形成した。成長温度は900℃とし、Znビームは、フラックスを0.12nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射した。
【0035】
次に、アンドープZnO層43上に、Znビーム、Oラジカルビーム、Nラジカルビーム、及びTeビームを同時照射して、NとTeがコドープされたZnO層(ZnO:[N+Te]層)44Aを、およそ70nm程度の厚さ形成した。
【0036】
成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.12nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量1sccm、RFパワー100Wとして照射し、Teビームは、フラックスを0.003nm/sとして照射した。
【0037】
ZnO基板41の裏面上に厚さ5nmのTi層を堆積し、Ti層上に厚さ400nmのAl層を堆積して、n側電極45nを形成した。ZnO:[N+Te]層44A上に厚さ1nmのNi層を堆積し、Ni層上に厚さ10nmのAu層を堆積して、p側透光性電極45pを形成した。電極用の各金属層の堆積には、EB蒸着を用いた。この後、300℃の酸素ガス雰囲気中で、電極の合金化処理を行った。合金処理時間は30秒である。このようにして、第1比較例によるZnO系LEDを作成した。
【0038】
次に、第1比較例によるZnO系LEDの課題について説明する。
【0039】
図11Aは、第1比較例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。縦軸にmA単位で電流値を示し、横軸にV単位で電圧値を示す。pn接合によるダイオード特性が観測されるが、およそ7V以下の低電圧領域でリーク電流成分が観測される。
【0040】
LEDにおけるリーク電流の原因として、一般に、結晶中の欠陥が挙げられる。結晶中の欠陥がバンドギャップ中に準位を形成すると、電子-正孔は、その欠陥を介した再結合電流となって非発光再結合する。この非発光再結合過程は、例えばクラッド層中や活性層中などの欠陥、ヘテロ界面の欠陥などが形成するバンドギャップ中の準位を介して起こるため、低電圧でも、クラッド層、ヘテロ界面を通して起こり、低電圧領域でのリーク電流として現れる。測定された電流―電圧特性より、第1比較例によるZnO系LEDは、結晶中に多くの欠陥を含有していることが示唆される。
【0041】
図11Bは、第1比較例によるZnO系LEDに対し、2次イオン質量分析(SIMS)で測定されたN濃度及びTe濃度のプロファイルである。ZnO:[N+Te]層には、およそ1×1020cm−3のTeと、3×1020cm−3のNがほぼ均一にドーピングされている。
【0042】
しかし、ZnO:[N+Te]層(p型半導体層)44AとアンドープZnO層(活性層)43との界面には、N濃度及びTe濃度のパイルアップが見られ、N及びTeともに、パイルアップの濃度がZnO:[N+Te]層中の濃度よりも高くなっている。
【0043】
このパイルアップは、結晶中の欠陥と関連していると考えられ、パイルアップに起因する欠陥が、電流-電圧特性におけるリーク電流の原因になっているのではないかと推察される。
【0044】
次に、第2比較例によるZnO系LEDについて説明する。
【0045】
図12Aは、第2比較例によるZnO系LEDの概略断面図である。アンドープZnO層43までは、第1比較例と同様な工程で形成される。第2比較例では、アンドープZnO層43上に、ZnO:[N+Te]層と、NがドープされたZnTe層(ZnTe:N層)とが交互に積層されたZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層44Bを形成した。
【0046】
図12Bは、ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層44Bの概略断面図である。交互層44Bは、ZnO:[N+Te]層44aとZnTe:N層44bとを交互に6周期積層し、最表面にZnO:[N+Te]層44aを積層して形成した。ZnO:[N+Te]層44aの1層当たりの膜厚はおよそ5nmであり、ZnTe:N層44bの1層当たりの膜厚はおよそ0.4nmである。
【0047】
ZnO:[N+Te]層44aの形成において、成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量0.5sccm、RFパワー90Wとして照射し、Teビームは、フラックスを0.001nm/sとして照射した。
【0048】
ZnTe:N層44bの形成において、成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Teビームは、フラックスを0.001nm/sとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量0.5sccm、RFパワー90Wとして照射した。
【0049】
ZnO基板41の裏面上に、第1比較例と同様にして、n側電極45nを形成した。ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層44B上に、第1比較例と同様にして、p側透光性電極45pを形成した。このようにして、第2比較例によるZnO系LEDを作成した。
【0050】
次に、第2比較例によるZnO系LEDの課題について説明する。
【0051】
図13は、第2比較例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。pn接合によるダイオード特性が観測されるが、およそ5V以下の低電圧領域でリーク電流成分が観測される。第2比較例によるZnO系LEDも、結晶中に多くの欠陥を含有していると推測される。
【0052】
次に、第1実施例によるZnO系LEDについて説明する。以下に説明するように、第1実施例によるZnO系LEDは、第1比較例によるZnO系LEDのZnO:[N+Te]層の下に、NがドープされたZnO層(ZnO:N層)が挿入された構造である。
【0053】
図1は、第1実施例によるZnO系LEDの概略断面図である。洗浄された+c面ZnO基板1上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープZnO緩衝層(バッファ層)2を、およそ30nm程度の厚さ形成した。成長温度は350℃とし、Znビームは、フラックスを0.12nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射した。次に、バッファ層2を高品質化させるためにアニールを行った。例えば、アニール温度は900℃で、アニール時間は20分である。
【0054】
次に、バッファ層2の上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、アンドープZnO層(活性層)3を、およそ100nm程度の厚さ形成した。成長温度は900℃とし、Znビームは、フラックスを0.12nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射した。
【0055】
次に、アンドープZnO層3上に、Znビーム、Oラジカルビーム、及びNラジカルビームを同時照射して、ZnO:N層4を、およそ20nm程度の厚さ形成した。成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量1sccm、RFパワー100Wとして照射した。
【0056】
次に、ZnO:N層4上に、Znビーム、Oラジカルビーム、Nラジカルビーム、及びTeビームを同時照射して、ZnO:[N+Te]層5Aを、およそ80nm程度の厚さ形成した。成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量0.5sccm、RFパワー90Wとして照射し、Teビームは、フラックスを0.0006nm/sとして照射した。
【0057】
その後、第1比較例でのn側電極45n及びp側透光性電極45pの形成工程と同様にして、ZnO基板1の裏面上にn側電極6nを形成し、ZnO:[N+Te]層5A上にp側透光性電極6pを形成した。このようにして、第1実施例によるZnO系LEDを作成した。
【0058】
図2Aは、第1実施例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。縦軸にmA単位で電流値を示し、横軸にV単位で電圧値を示す。pn接合によるダイオード特性が観測され、第1比較例に比べてリーク電流が抑えられている。第1実施例では、第1比較例に比べ結晶中の欠陥が少ないことが推測される。電気特性が改善した理由について、以下、N濃度及びTe濃度のプロファイルを参照して考察する。
【0059】
図2Bは、第1実施例によるZnO系LEDのSIMSによるN濃度及びTe濃度のプロファイルである。ZnO:[N+Te]層において、Te濃度はおよそ1×1020cm−3であり、N濃度はおよそ3×1020cm−3であり、ドーピング量は第1比較例とほぼ等しい。ZnO:N層にも、ZnO:[N+Te]層とおおよそ等しい2×1020cm−3程度のNがドープされている。
【0060】
ただし、驚くべきことに、第1実施例の濃度プロファイルでは、第1比較例のようなZnO:[N+Te]層の下側界面におけるN濃度及びTe濃度のパイルアップが見られない。
【0061】
第1実施例では、p型層であるZnO:[N+Te]層の成長界面にN濃度及びTe濃度のパイルアップがみられないことから、層界面の高濃度なN及びTeに起因する結晶中の欠陥発生が抑制されていると思われ、このことが電流−電圧特性におけるリーク電流低減につながったと推察される。
【0062】
このように、ZnO:[N+Te]層の下地としてZnO:N層を挿入することにより、N濃度及びTe濃度のパイルアップが抑制でき、ダイオード特性を改善できることがわかった。ダイオード特性の改善より、発光特性の改善も期待される。
【0063】
なお、ZnO:N層4とZnO:[N+Te]層5Aの積層工程を、ひとまとまりのZnO[N+Te]層形成工程として捉えることもできる。このように捉えたとき、Nのドープ開始タイミングを、Teのドープ開始タイミングより先にすることにより、N濃度及びTe濃度のパイルアップが抑制できるといえる。
【0064】
次に、第2実施例によるZnO系LEDについて説明する。以下に説明するように、第2実施例によるZnO系発光LEDは、第2比較例によるZnO系発光LEDのZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層の下に、ZnO:N層が挿入された構造である。
【0065】
図3Aは、第2実施例によるZnO系LEDの概略断面図である。ZnO:N層4までは、第1実施例と同様な工程で形成される。ただし、第2実施例では、ZnO:N層4の厚さをおよそ30nmとした(第1実施例は、ZnO:N層4の厚さをおよそ20nmとした)。第2実施例では、ZnO:N層4上に、ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層5Bを形成した。
【0066】
図3Bは、ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層5Bの概略断面図である。交互層5Bは、ZnO:[N+Te]層5aとZnTe:N層5bとを交互に6周期積層し、最表面にZnO:[N+Te]層5aを積層して形成した。ZnO:[N+Te]層5aの1層当たりの膜厚はおよそ5nmであり、ZnTe:N層5bの1層当たりの膜厚はおよそ0.4nmである。
【0067】
交互層5Bの最下層はZnO:[N+Te]層5aであり、ZnO:[N+Te]層の下にZnO:N層が挿入されているという構造は、第1実施例と同様である。
【0068】
ZnO:[N+Te]層5aの形成において、成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O2流量2sccm、RFパワー300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量0.5sccm、RFパワー90Wとして照射し、Teビームは、フラックスを0.001nm/sとして照射した。
【0069】
ZnTe:N層5bの形成において、成長温度は500℃とし、Znビームは、フラックスを0.15nm/sとして照射し、Teビームは、フラックスを0.001nm/sとして照射し、Nラジカルビームは、N2流量0.5sccm、RFパワー90Wとして照射した。
【0070】
その後、第2比較例でのn側電極45n及びp側透光性電極45pの形成工程と同様にして、ZnO基板1の裏面上にn側電極6nを形成し、ZnO:[N+Te]層5B上にp側透光性電極6pを形成した。このようにして、第2実施例によるZnO系LEDを作成した。
【0071】
図4は、第2実施例によるZnO系LEDの電流−電圧特性である。pn接合によるダイオード特性が観測され、第2比較例に比べてリーク電流が抑えられている。第2実施例においても、ZnO[N+Te]層の下にZnO:N層が挿入されていることで、ZnO[N+Te]層の欠陥生成が抑制されて、リーク電流成分が減少したと推測される。第2実施例によるZnO系LEDについても、ダイオード特性改善に伴う発光特性改善が期待される。
【0072】
次に、第3実施例について説明する。第3実施例では、ZnO:N層とZnO:[N+Te]層の積層構造におけるZnO:N層のN濃度を変化させた2つのサンプル(サンプル1とサンプル2)を作製した。
【0073】
洗浄された+c面n型ZnO基板上に、アンドープZnO緩衝層(バッファ層)を、成長温度350℃にて、およそ30nm程度形成した。次に、バッファ層を高品質化させるためにアニールを行った。アニール温度は900℃で、アニール時間は20分である。
【0074】
バッファ層の高品質化までの工程は、サンプル1及びサンプル2とも共通である。バッファ層上にZnO:N層を積層し、ZnO:N層上にZnO:[N+Te]層を積層した。サンプル1、サンプル2のZnO:N層及びZnO:[N+Te]層の形成条件は以下の通りである。
[サンプル1]
・ZnO:N層 : 成長温度700℃、Znビームフラックス0.15nm/s、O2流量1sccm/RFパワー300W、N2流量1sccm/RFパワー140W
・ZnO:[N+Te]層 : 成長温度700℃、Znビームフラックス0.15nm/s、O2流量2sccm/RFパワー300W、N2流量0.5sccm/RFパワー90W、Teビームフラックス0.0006nm/s
[サンプル2]
・ZnO:N層 : 成長温度700℃、Znビームフラックス0.09nm/s、O2流量2sccm/RFパワー300W、N2流量0.2sccm/RFパワー80W
・ZnO:[N+Te]層 : 成長温度400℃、Znビームフラックス0.12nm/s、O2流量2sccm/RFパワー300W、N2流量1.0sccm/RFパワー120W、Teビームフラックス0.01nm/s
サンプル1のZnO:N層は、N濃度が5×1020cm−3で、層厚がおよそ15nm程度であり、サンプル2のZnO:N層は、N濃度が2×1019cm−3で、層厚がおよそ40nm程度である。
【0075】
図5A及び図5Bは、それぞれ、第3実施例によるサンプル1及びサンプル2のSIMSによるN濃度及びTe濃度のプロファイルである。サンプル1及びサンプル2はともに、ZnO:[N+Te]層/ZnO:N層界面での、N濃度及びTe濃度のパイルアップはみられない。このことより、ZnO:N層の挿入によって、結晶中の欠陥発生が抑制されているものと推測される。
【0076】
この結果より、ZnO:[N+Te]層の下に挿入されるZnO:N層のN濃度が2×1019cm−3〜5×1020cm−3の範囲については、ダイオード特性等の改善効果が得られると考えられる。なお、第3実施例の実験で確認した範囲より少し広いN濃度範囲、例えば1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下の範囲に対して、同様な効果を期待してもよいであろう。
【0077】
なお、上述の実施例では、ZnO:[N+Te]層の下地層としてZnO:N層を用いたが、下地層として、その他のZnO系化合物半導体にNがドープされた層を用いることもできるであろう。例えば、NがドープされたMgxZn1−xO(0<x≦0.6)層(MgxZn1−xO:N(0<x≦0.6)層)を用いることができるであろう。
【0078】
また、上述の実施例では、ZnO:N層の直上に形成される上側層としてZnO:[N+Te]層を形成したが、上側層として、その他のZnO系化合物半導体にNとTeがコドープされたp型層を用いることもできるであろう。例えば、NとTeがコドープされたMgxZn1−xO(0<x≦0.6)層(MgxZn1−xO:[N+Te](0<x≦0.6)層)を用いることができるであろう。
【0079】
なお、上述の実施例では、上側層(ZnO:[N+Te]層)にNとともにコドープされる元素をTeとしたが、Nとともにコドープされる元素としてTe以外に、同じVI族元素であるS、Seなども用いることができるのではないかと思われる。
【0080】
なお、上述の第2実施例では、ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層を形成したが、交互層において、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層上に形成されるp型層は、ZnTe:N層に限らず、その他のZnTe系化合物半導体にNがドープされた層を用いることもできるのではないかと思われる。例えば、NがドープされたMgxZn1−xTe(0<x≦0.6)層を用いることができるであろう。
【0081】
次に、下地層として用いられるMgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層の好適な膜厚範囲について考察する。下地層の直上に形成される上側層は、例えばMgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層である。下地層の直下に、例えばアンドープのMgxZn1−xO(0≦x≦0.6)による活性層が形成されている。
【0082】
下地層が活性層表面を覆って、上側層と活性層とを接触させないことにより、上述のような効果を生じさせていると推測すると、下地層の厚みの下限は、例えば(c軸方向で)ZnOの2分子層分の厚みである、およそ0.5nm程度ではないかと推察される。
【0083】
素子作製の観点から、下地層膜厚の上限について考察する。発光素子のように素子の上下間に電流を印加する場合、挿入される下地層の伝導型や抵抗率などが素子特性にとって重要になる。例えば上記[背景技術]の欄に記載した[非特許文献2]によると、MgZnO:N層は、p型伝導性を持つものの、ホール効果やゼーベック効果などによる測定が行えるほどアクセプタ密度の向上がなされていない。つまり、高抵抗なp型膜である。
【0084】
例えばZnO系化合物半導体発光素子を作製する場合、挿入されるMgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)下地層があまりに厚いと、電流印加時の素子の抵抗が高くなる為、電流印加によって素子が発熱してしまうことに起因して、例えば、発光効率が低下するなどの問題が発生する。よって、例えば発光素子に適用する場合のMgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)下地層の膜厚は、30nm程度以下とするのが好ましいであろう。
【0085】
次に、第4実施例による発光素子について説明する。
【0086】
図6は、第4実施例による発光素子の概略断面図である。洗浄された+c面ZnO基板21上に、ZnO緩衝層(バッファ層)22を形成する。バッファ層22の厚さは10nm〜30nm程度が望ましく、成長温度200℃〜400℃で成長させる。次に、バッファ層22を高品質化させるためにアニールを行う。アニール温度は500℃〜1000℃で、アニール時間は3分〜30分である。
【0087】
次に、バッファ層22上に、例えばAlがドープされたn型MgwZn1−wO (0≦w≦0.6)層23を形成する。厚さは5nm〜200nmで、Al濃度は1×1017cm−3以上が好ましい。成長温度700℃〜1000℃で成長させる。
【0088】
n型MgwZn1−wO (0≦w≦0.6)層23上に、アンドープのMgxZn1−xO(0≦x≦0.6) 活性層24を形成する。成長温度は、500℃〜1000℃である。
【0089】
なお、図8A及び図8Bに示す変形例のように、活性層24は単一層に限らず、例えば、MgaZn1−aO(0≦a≦0.6)障壁層24bとMgbZn1−bO (0≦b≦0.6、b<a)井戸層24wとを交互に積層した量子井戸構造とすることもできる。図8Aは一重量子井戸(SQW)構造を示す概略断面図、図8Bは多重量子井戸(MQW)構造を示す概略断面図である。
【0090】
活性層24上に、MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層25を形成する。成長温度は300℃〜1000℃であり、厚さは0.5nm〜30nmである。
【0091】
MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層25上に、p型半導体層として、MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層26Aを形成する。厚さは5nm〜200nmで、成長温度300℃〜700℃で成長させる。
【0092】
なお、n型MgwZn1−wO (0≦w≦0.6)層23、MgxZn1−xO(0≦x≦0.6) 活性層24、MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層25、p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層26AのMg組成w、x、y及びzについて、x≦w、y、zである。
【0093】
その後、ZnO基板21の裏面に、例えば、Ti層を厚さ2nm〜10nm堆積し、Ti層上にAl層を厚さ300nm〜500nm堆積して、n側電極27nを形成する。p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層26A上に、例えば、Ni層を厚さ0.5nm〜5nm堆積し、Ni層上にAu層を厚さ1nm〜20nm堆積して、p側透光性電極27pを形成する。
【0094】
p側透光性電極27p上に、例えば、Ni層を厚さ100nm堆積し、Ni層上に厚さAu層を1000nm堆積して、ボンディング用パッド電極28を形成する。電極のパターニングには、例えば、レジストパターンを用いたリフトオフ等を用いることができる。
【0095】
この後、例えば300℃〜700℃の酸化性ガス雰囲気中で、電極合金化処理を行う。合金処理時間は例えば30秒〜10分程度である。以上のようにして、第4実施例による発光素子が形成される。
【0096】
次に、第5実施例による発光素子について説明する。
【0097】
図7A及び図7Bは、それぞれ、第5実施例による発光素子の概略断面図、及び交互層の概略断面図である。MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層25までは、第4実施例と同様な工程で形成される。第5実施例では、MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層25上に、p型半導体層として、MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層26aとZnTe:N層26bとが交互に積層された、p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)/ZnTe:N交互層26Bを形成する。
【0098】
その後、第4実施例と同様にして、ZnO基板21の裏面上にn側電極27nを形成し、交互層26B上にp側透光性電極27pを形成し、p側透光性電極27p上にボンディング用パッド電極28を形成する。以上のようにして、第5実施例による発光素子が形成される。
【0099】
なお、第4実施例及び第5実施例では、n型導電性を有する+c面ZnO基板を用いる例を示したが、基板として、例えばサファイア(Al2O3)などの絶縁性基板を用いることもできる。この場合には、基板裏面側から電極を取ることができないため、素子上方からドライエッチングなどでn型半導体層を露出させて、露出部にn側電極を作製することができる。
【0100】
なお、第4実施例及び第5実施例の発光素子ではn型半導体層にAlをドーピングしたが、n型半導体層は、1×1017cm−3程度のn型キャリア密度を有すれば、アンドープでも構わないし、例えばGaやInなど、Al以外のその他のドナー元素をドーピングしても構わない。また、2つ以上のドナー元素を同時にドーピングしてn型半導体層を作製することも可能である。
【0101】
以上、実施例に沿って説明したように、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層の下に、NがドープされたZnO系化合物半導体層を挿入することにより、ZnO系化合物半導体素子の電気的特性改善等を図ることができる。
【0102】
なお、上述の実施例では、結晶成長方法としてMBEを例示したが、他の結晶成長方法、例えばパルスレーザ堆積(PLD)や、有機金属化学気相堆積(MOCVD)などを用いることもできるであろう。
【0103】
実施例の方法で得られるZnO系化合物半導体素子構造は、例えば、短波長(紫外〜青)の発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)に利用でき、また、これらの応用製品(各種インジケータ、LEDディスプレイ等)に利用できる。また、白色LEDやその応用製品(照明器具、各種インジケータ、ディスプレイ、各種表示器のバックライト等)に利用できる。また、ZnO系トランジスタ等の電子デバイスやその応用製品に利用でき、ZnO系センサ(湿度センサ、紫外センサ等)やその応用製品に利用できる。
【0104】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0105】
101 真空チャンバ
102 Znソースガン
103 Mgソースガン
104 Teソースガン
105 Oソースガン
106 Nソースガン
107 ステージ
108 基板
109 RHEED用ガン
110 スクリーン
1 ZnO基板
2 ZnOバッファ層
3 アンドープZnO層
4 ZnO:N層
5A ZnO:[N+Te]層
5B ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層
5a ZnO:[N+Te]層
5b ZnTe:N層
6n n側電極
6p p側電極
21 ZnO基板
22 ZnOバッファ層
23 n型MgwZn1−wO (0≦w≦0.6)層
24 MgxZn1−xO (0≦x≦0.6) 活性層
25 MgyZn1−yO:N(0≦y≦0.6)層
26A p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層
26B p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)/ZnTe:N交互層
26a p型MgzZn1−zO:[N+Te](0≦z≦0.6)層
26b ZnTe:N層
27n n側電極
27p p側電極
28 ボンディング用パッド電極
41 ZnO基板
42 ZnOバッファ層
43 アンドープZnO層
44A ZnO:[N+Te]層
44B ZnO:[N+Te]/ZnTe:N交互層
44a ZnO:[N+Te]層
44b ZnTe:N層
45n n側電極
45p p側電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上方に形成され、NがドープされたZnO系化合物半導体層と、
前記NがドープされたZnO系化合物半導体層上に形成され、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層と
を有するZnO系化合物半導体素子。
【請求項2】
前記NがドープされたZnO系化合物半導体層が、NがドープされたMgxZn1−xO(0≦x≦0.6)層である請求項1に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項3】
前記NがドープされたZnO系化合物半導体層のN濃度範囲が、1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下である請求項1または2に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項4】
前記NがドープされたZnO系化合物半導体層の厚さが、0.5nm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項5】
前記NがドープされたZnO系化合物半導体層の厚さが、30nm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項6】
前記VI族元素が、Teである請求項1〜5のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項7】
前記p型ZnO系化合物半導体層が、NとTeとがコドープされたMgxZn1−xO(0≦x≦0.6)層である請求項1〜6のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項8】
さらに、前記基板上方に形成されたn型ZnO系化合物半導体層と
前記n型ZnO系化合物半導体層上方に形成されたZnO系化合物半導体活性層と
を有し、
前記ZnO系化合物半導体活性層上に、前記NがドープされたZnO系化合物半導体層が形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項9】
さらに、前記p型ZnO系化合物半導体層上に形成され、Nがドープされたp型ZnTe系化合物半導体層を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項10】
さらに、前記p型ZnTe系化合物半導体層上に、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層とNがドープされたp型ZnTe系化合物半導体層との交互積層が形成されている請求項9に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項11】
前記p型ZnTe系化合物半導体層が、NがドープされたZnTe層である請求項9または10に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項1】
基板と、
前記基板上方に形成され、NがドープされたZnO系化合物半導体層と、
前記NがドープされたZnO系化合物半導体層上に形成され、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層と
を有するZnO系化合物半導体素子。
【請求項2】
前記NがドープされたZnO系化合物半導体層が、NがドープされたMgxZn1−xO(0≦x≦0.6)層である請求項1に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項3】
前記NがドープされたZnO系化合物半導体層のN濃度範囲が、1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下である請求項1または2に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項4】
前記NがドープされたZnO系化合物半導体層の厚さが、0.5nm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項5】
前記NがドープされたZnO系化合物半導体層の厚さが、30nm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項6】
前記VI族元素が、Teである請求項1〜5のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項7】
前記p型ZnO系化合物半導体層が、NとTeとがコドープされたMgxZn1−xO(0≦x≦0.6)層である請求項1〜6のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項8】
さらに、前記基板上方に形成されたn型ZnO系化合物半導体層と
前記n型ZnO系化合物半導体層上方に形成されたZnO系化合物半導体活性層と
を有し、
前記ZnO系化合物半導体活性層上に、前記NがドープされたZnO系化合物半導体層が形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項9】
さらに、前記p型ZnO系化合物半導体層上に形成され、Nがドープされたp型ZnTe系化合物半導体層を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項10】
さらに、前記p型ZnTe系化合物半導体層上に、NとVI族元素とがコドープされたp型ZnO系化合物半導体層とNがドープされたp型ZnTe系化合物半導体層との交互積層が形成されている請求項9に記載のZnO系化合物半導体素子。
【請求項11】
前記p型ZnTe系化合物半導体層が、NがドープされたZnTe層である請求項9または10に記載のZnO系化合物半導体素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−69722(P2013−69722A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205145(P2011−205145)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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