説明

c−MET阻害薬としての四環式化合物

本発明は式(I)および式(II)の化合物(式中R−R10およびGは本明細書において定義されている)、およびそれらの医薬的に受容可能な塩に関する。これらの化合物はc−Metの活性を調節し、そのためc−Metに関連する障害、例えば癌の予防および治療において有用であることが期待される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2003年7月2日に提出された米国仮特許出願第60/484,222号の利益を主張し、同出願の開示をその全内容において本明細書にて参照として援用する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
[0002]以下は背景の情報としてのみ提供しており、本発明に対する先行分野であることを認めるものではない。
【0003】
[0003]プロテインキナーゼ(“PK”)は、タンパク質のチロシン残基、セリン残基およびトレオニン残基のヒドロキシ基のリン酸化を触媒する酵素である。この一見シンプルな活性のもたらすものは驚異的である;細胞の成長、分化および増殖、すなわち事実上細胞の生命のすべての側面が、何らかの形でPK活性に依存している。さらに異常なPK活性は、相対的に生命の脅威とはならない疾患 例えば乾癬から、極めて悪性の疾患 例えば膠芽腫(脳の癌)までの範囲に及ぶ障害のホストに関連していた。
【0004】
[0004]PKは便宜的に、プロテインチロシンキナーゼ(PTK)およびセリン−トレオニンキナーゼ(STK)という2つのクラスに分類することができる。
[0005]PTK活性の最も重要な側面の1つは、それらの増殖因子受容体との関与である。増殖因子受容体は細胞表面タンパク質である。増殖因子のリガンドが結合すると、増殖因子受容体は、細胞膜内側表面上のタンパク質と相互作用する活性型に変換される。この変換が、この受容体およびその他のタンパク質のチロシン残基のリン酸化、および細胞内での様々な細胞質のシグナリング分子との複合体の形成をもたらし、次には多数の細胞の応答 例えば細胞の分裂(増殖)、細胞の分化、細胞の成長、細胞外の微小環境への代謝の影響の発現、等に影響を与えることになる。より完全な考察についてはSchlessinger and Ullrich, Neuron 9:303-391 (1992)を参照のこと、同文献を、本明細書に完全に記載されているかのように、あらゆる図面を含めて参照として援用する。
【0005】
[0006]PTK活性を有する増殖因子受容体は、受容体型チロシンキナーゼ(“RTK”)として知られている。それらは種々の生物学的活性を有する、膜貫通受容体の大きなファミリーを包含する。現在、少なくとも19の別個のRTKのサブファミリーが同定されている。これらの一例は、 “HER”RTKと表記されるサブファミリーであり、このサブファミリーはEGFR(上皮増殖因子受容体)、HER2、HER3およびHER4を含む。これらのRTKは細胞外のグリコシル化されたリガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびタンパク質上のチロシン残基をリン酸化することのできる細胞内の細胞質の触媒ドメインから成る。
【0006】
[0007]もう1つのRTKサブファミリーはインスリン受容体(IR)、インスリン様増殖因子I受容体(IGF−1R)およびインスリン受容体関連受容体(IRR)から成る。IRおよびIGF−1Rはインスリン、IGF−IおよびIGF−IIと相互作用して、完全に細胞外のグリコシル化された2つのサブユニット、および細胞膜を横切りそしてチロシンキナーゼドメインを含有する2つのサブユニットによるヘテロテトラマーを形成する。
【0007】
[0008]第3のRTKサブファミリーは、血小板由来増殖因子受容体(“PDGFR”)グループと言われ、PDGFR、CSFIR、c−kitおよびc−fmsを含む。これらの受容体は、様々な数の免疫グロブリン様ループから構成されるグリコシル化された細胞外ドメイン、およびチロシンキナーゼドメインが無関係のアミノ酸配列により中断されている細胞内ドメインから成る。
【0008】
[0009]もう1つのグループは、PDGFRサブファミリーとの類似性から、時には後者のグループに組み入れられる、胎児肝臓キナーゼ(“flk”)受容体サブファミリーである。このグループは、キナーゼ挿入ドメイン−受容体/胎児肝臓キナーゼ−1(KDR/FLK−1)、flk−1R、flk−4およびfms様チロシンキナーゼ1(flt−1)から構成されると考えられている。増殖因子受容体ファミリーのなおもう1つのメンバーは、血管内皮増殖因子(“VEGF”)受容体のサブグループである。VEGFは、PDGFに類似するダイマーの糖タンパク質であるが、in vivo では異なる生物学的機能および異なる標的細胞への特異性を有する。特にVEGFは現在、脈管形成(vasculogenesis) および血管形成(angiogenesis)において必須の役割を担っていると考えられている。
【0009】
[0010]チロシンキナーゼ増殖因子受容体ファミリーのさらなるメンバーは、線維芽細胞増殖因子(“FGF”)受容体サブグループである。このグループはFGFR1−4の4つの受容体、およびFGF1−7の7つのリガンドから成る。まだ十分に明らかにされていないが、これら受容体は様々な数の免疫グロブリン様ループを含有するグリコシル化された細胞外ドメイン、およびチロシンキナーゼ配列が無関係のアミノ酸配列の領域により中断されている細胞内ドメインから成るようである。
【0010】
[0011]チロシンキナーゼ増殖因子受容体ファミリーのまだもう1つのメンバーはMETであり、しばしばc−Metと言われる。c−metはまた、肝細胞増殖因子受容体または散乱因子受容体としても知られている。c−Metは、原発性の腫瘍の成長および転移において一役を担っていると考えられている。
【0011】
[0012]公知のRTKサブファミリーのより完全な一覧は、Plowman et al., DN&P, 7(6): 334-339 (1994)に記載されており、同文献を、本明細書に完全に記載されているかのように、あらゆる図面を含めて参照として援用する。
【0012】
[0013]RTKに加えて、“非受容型チロシンキナーゼ”または“細胞質チロシンキナーゼ”と言われる完全に細胞内のPTKのファミリーも存在する。この後者の呼称を “CTK”と略して、本明細書において使用することにする。CTKは細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含有しない。現在、11のサブファミリー(Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes、Fps、Fak、JakおよびAck)における24を越えるCTKが同定されている。SrcサブファミリーはこれまでのところCTKの最大のグループであるようであり、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、FgrおよびYrkを含む。CTKのより詳細な議論については、Bolen, Oncogene, 8: 2025-2031 (1993)を参照のこと、同文献を、本明細書に完全に記載されているかのように、あらゆる図面を含めて参照として援用する。
【0013】
[0014]CTKと同様に、セリン/トレオニンキナーゼ、すなわちSTKは、STKタイプの少数の受容体キナーゼはあるが、主として細胞内に存在する。STKは最も一般的な細胞質ゾルのキナーゼ;すなわち細胞質の細胞小器官および細胞骨格以外の細胞質の部分でその機能を果たすキナーゼである。細胞質ゾルは、細胞の中間代謝活性および生合成活性のほとんどが起こる細胞内の領域である;例えばタンパク質がリボソーム上で合成されるのは、細胞質ゾル内である。
【0014】
[0015]RTK、CTKおよびSTKはすべて、癌を有意に含む病原性の状態のホストにかかわっていた。PTKの関与していたその他の病原性の状態は、非限定的に、乾癬、肝硬変、糖尿病、血管形成、再狭窄、眼の疾患、リウマチ様関節炎、およびその他の炎症性障害、免疫学的障害 例えば自己免疫疾患、心血管の疾患 例えばアテローム硬化症、および様々な腎障害を含む。
【0015】
[0016]癌に関して、腫瘍の発病を導く過剰な細胞の増殖を説明するために提示された2つの主な仮説は、PKに制御されることが知られている機能に関する。すなわち悪性の細胞の増殖は、細胞の分割および/または分化をコントロールする機序の故障に起因することが示唆された。相当数の癌原遺伝子のタンパク質産生物が、細胞の増殖および分化を制御するシグナル伝達経路に関与することが示された。癌原遺伝子のこれらのタンパク質産生物には、上述した細胞外増殖因子、膜貫通増殖因子PTK受容体(RTK)、細胞質PTK(CTK)および細胞質ゾルSTKを含む。
【0016】
[0017]PKの関連する細胞の活性と広範囲の多様なヒトの障害との明白なリンクを考慮すれば、PK活性を調節する方法を同定する試みに多大な努力が費やされてきていることは、驚くに値しない。これらのいくつかは、実際の細胞のプロセスに関与する分子にパターン化された大型分子を用いるバイオミメティックスのアプローチ(例えば突然変異のリガンド(米国特許出願第4,966,849号);可溶性の受容体および抗体(特許出願第WO 94/10202号、Kendall and Thomas, Proc. Nat’l Acad. Sci., 90: 10705-10709 (1994)、Kim, et al., Nature, 362: 841-844 (1993));RNAリガンド(Jelinek, et al., Biochemistry, 33; 10450-56);Takano, et al., Mol. Bio. Cell, 4:358A (1993); Kinsella, et al., Exp. Cell Res., 199: 56-62 (1992); Wright, et al., J. Cellular Phys., 152: 448-57)およびチロシンキナーゼ阻害薬(WO 94/03427;WO 92/21660;WO 91/15495;WO 94/14808;米国特許第5,330,992号;Mariani, et al., Proc. Am. Assoc. Cancer Res., 35: 2268 (1994))を伴っていた。
【0017】
[0018]上記に加えて、PK阻害薬として作用する小型分子を同定する試みが行われた。例えばビス−単環式、二環式、および複素環式のアリール化合物(PCT WO92/20642)、ビニレン−アザインドール誘導体(PCT WO94/14808)および1−シクロプロピル−4−ピリジルキノロン(米国特許第5,330,992号)が、チロシンキナーゼ阻害薬として記載された。スチリル化合物(米国特許第5,217,999号)、スチリルで置換されたピリジル化合物(米国特許第5,302,606号)、キナゾリン誘導体(ヨーロッパ特許出願第0 566 266 A1号)、セレナインドール(selenaindole)およびセレニド(PCT WO 94/03427)、三環式のポリヒドロキシル基化合物(PCT WO 92/21660)およびベンジルホスホン酸化合物(PCT WO 91/15495)はすべて、癌の治療に有用なPTK阻害薬として記載された。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の概要)
[0019]本発明は式Iの化合物:
【0019】
【化1】

【0020】
式中:
はアリール基またはヘテロアリール基であり、前記のアリール基もしくはヘテロアリール基は置換されていない、または所望によりハロゲン、−OH、−OR、−COR、−COOR、−CONR、−NR、−CN、−NO、−S(O)、−SONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、およびアリールから成る群より選択される1つもしくはそれより多くの置換基で置換されている;
各RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、−OH、−OR、−NR、−CN、−COR、−COOR、−CONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、およびアルキニルから成る群より選択される;または
およびRはそれらの結合する炭素原子と共に、シクロアルキルまたは複素環を形成することができる;
、R、R、およびRは独立して、水素、ハロゲン、−OR、−COR、−COOR、−CONR、−NR、−CN、−NO、−S(O)(式中nは0、1または2である)、−SONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、およびアリールから成る群より選択される;そして
各RおよびRは独立して、水素、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキルから成る群より選択される、またはRおよびRはそれらの結合する原子と共に、所望によりアルキル、−OHおよびアミノから成る群より選択される基で置換された脂環式複素環(heteroalicyclic ring)を形成する;そして
pは1、2、3、4または5であり、pが1より大きな整数である場合、各炭素原子上のRおよびRの基は、あらゆる隣接する炭素原子上のRおよびRの基と同じでも、または異なっていてもよいと理解される;あるいは
医薬的に受容可能なその塩、に関する。
【0021】
[0020]好ましい態様において、式Iの化合物の可変部pは1である。
[0021]もう1つの好ましい態様において、式Iの化合物のアリール基はフェニルである。
【0022】
[0022]まだもう1つの好ましい態様において、式Iの化合物のアリール基は−OH基またはハロ基で置換されたフェニル基である。
[0023]本発明はさらに式IIの化合物:
【0023】
【化2】

【0024】
式中:
各R10は独立して、ハロゲン、−OH、−OR、−COR、−COOR、−CONR、−NR、−CN、−NO、−S(O)、−SONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、およびアリールから成る群より選択される;
qは1、2、3、4または5である;
Gは窒素または炭素である;
各RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、−OH、−OR、−NR、−CN、−COR、−COOR、−CONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、およびアルキニルから成る群より選択される;または
およびRはそれらの結合する炭素原子と共に、シクロアルキルまたは複素環を形成することができる;
、R、R、およびRは独立して、水素、ハロゲン、−OR、−COR、−COOR、−CONR、−NR、−CN、−NO、−S(O)(式中nは0、1または2である)、−SONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、およびアリールから成る群より選択される;そして
各RおよびRは、水素、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、およびジアルキルアミノアルキルから成る群より選択される、またはRおよびRはそれらの結合する原子と共に、所望によりアルキル、−OHおよびアミノから成る群より選択される基で置換された脂環式複素環を形成する;そして
pは1、2、3、4または5であり、pが1より大きな整数である場合、各炭素原子上のRおよびRの基は、あらゆる隣接する炭素原子上のRおよびRの基と同じでも、または異なっていてもよいと理解される;あるいは
医薬的に受容可能なその塩、に関する。
【0025】
[0024]好ましい態様において、式IIの化合物の可変部pは1である。
[0025]もう1つの好ましい態様において、式IIの化合物のR10は−OHまたはハロであり、qは1である。
【0026】
[0026]まだもう1つの好ましい態様において、式IIの化合物の可変部Gは窒素である。
[0027]なおもう1つの態様において、式Iまたは式IIの化合物は以下から成る群:
【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
より選択される化合物、または医薬的に受容可能なその塩である。
[0028]まだもう1つの態様において、式Iまたは式IIの化合物は:
【0030】
【化5】

【0031】
である。
[0029]本発明はさらに、c−Metに関連する障害を式Iまたは式IIの化合物を用いて治療する方法に関する。
【0032】
[0030]好ましい態様において、c−Metに関連する障害は癌である。
[0031]もう1つの好ましい態様において癌は、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、神経膠腫、肝臓癌、胃癌、頭部の癌、頸部の癌、黒色腫、腎臓癌、白血病、骨髄腫、および肉腫から成る群より選択される。
【0033】
[0032]本発明はまださらに、式Iもしくは式IIの化合物または医薬的に受容可能なその塩、および医薬的に受容可能な担体または賦形剤を包含する医薬組成物に関する。
(好ましい態様の詳細な説明)
[0033]c−Metを調節する能力を呈し、異常なc−Met活性に関連する障害に対して改善効果を有する新規四環式化合物のファミリーが発見された。c−Metは臨床的展望から魅力的な標的である、なぜなら:1)c−Metはほとんどのタイプの癌の成長および転移に関係していた;2)2次的部位での成長が、転移の律速段階であるらしい;そして3)診断時までに疾患はおそらく既に拡散してしまっている;からである。
【0034】
[0034]c−Metは、Met癌原遺伝子によりコードされており、分散因子(SF)とも言われる肝細胞増殖因子(HGF)の生物学的効果を変換する受容体型チロシンキナーゼである。Jiang et al., Crit. Rev. Oncol. Hematol. 29: 209-248 (1999)。c−MetおよびHGFの発現は、正常では主として各々上皮由来細胞および間葉系由来細胞に限られるが、これらが多数の組織で発現される。c−MetおよびHGFは、正常な哺乳類の発達に必要であり、細胞の遊走、細胞の増殖および生存、形態形成の分化、ならびに3次元の管状構造(例えば腎尿管細胞、腺形成等)の組織化に重要であることが示された。c−Metに依存する腫瘍の成長、侵入および播種は、これらの細胞の活動により仲介されることが提案された。上皮細胞におけるその効果に加えて、HGF/SFは血管形成因子であることが報告され、したがって上皮細胞におけるc−Metシグナリングが、血管形成に必要な多くの細胞の応答(増殖、運動性、侵入)を誘導し得る。
【0035】
[0035]c−Met受容体は、いくらかのヒトの癌で発現されることが示された。c−MetおよびそのリガンドであるHGFはまた、多様なヒトの癌(特に肉腫)で上昇したレベルで共発現されることが示された。しかし、この受容体とリガンドは通常異なる細胞のタイプにより発現されるため、c−Metシグナリングは最も一般的には、腫瘍−基質(腫瘍−ホスト)相互作用により制御される。さらにc−Met遺伝子の増幅、突然変異、および再配列が、ヒトの癌の1つのサブセットで観察された。c−Metキナーゼを活性化する生殖細胞系の突然変異をもつ家族は、多発性の腎臓腫瘍ならびに他の組織の腫瘍になりやすい。多数の研究が、c−Metおよび/またはHGF/SFの発現と異なるタイプの癌(肺、結腸、乳房、前立腺、肝臓、膵臓、脳、腎臓、卵巣、胃、皮膚、および骨の癌を含む)の疾患の進行の状態との相関を示した。さらにc−MetまたはHGFの過剰発現が、肺、肝臓、胃、および乳房を含むいくらかの主要なヒトの癌における、悪い予後および疾患の結果に相関することが示された。c−Metと転移および侵入の生物学ならびに疾患の病因との強い相関は、転移癌の治療に関する新たなメカニズムを包含する。
【0036】
[0036]c−Metは、成功する治療レジメンのない癌、例えば膵臓癌、神経膠腫、および肝細胞癌に直接かかわっていた。c−Metキナーゼ阻害薬は、これらの癌の治療における未だ検討されていない医学的ニーズを満たすことができるであろう。
【0037】
[0037]これらの観察は、c−Metキナーゼ阻害薬がc−Metにより導かれる原発腫瘍のための有効な治療となるであろう、しかしより重要なこととして散在性の微小転移巣が生命を脅かす転移に成長することを予防するであろうということを示唆する。したがってc−Met阻害薬の有用性は、予防的な状況およびアジュバントの治療の状況にまで拡大される。加えて、c−Metの突然変異/遺伝子の変化により導かれ、成長および生存に関してはc−Metに依存すると考えられるある種の癌(例えば腎乳頭細胞癌、一部の胃癌および肺癌)を治療することができる。これらの癌は、治療への感受性があると予測される。
【0038】
[0038]様々なヒトの癌が、c−Metアンタゴニストの最初の標的としての適応症である。これらの癌には、主要な癌 例えば乳癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌;ならびに膵臓癌、神経膠腫、肝臓癌、胃癌、頭部および頸部の癌、黒色腫、腎臓癌、白血病、骨髄腫、および肉腫を含む。
【0039】
[0039]本明細書に提供する化合物は例示に過ぎず、いかなる方法でも本発明の領域を限定するものとして解釈されないものとする。
[0040]1つの側面において本発明は、式(I)および式(II)の1つもしくはそれより多くの化合物、または医薬的に受容可能なその塩、および医薬的に受容可能な賦形剤を包含する医薬組成物への方向付けを行う。
【0040】
[0041]本明細書に記載する化合物またはその塩は、上で考察した疾患および障害の治療のためのその他の化学療法薬と併用してもよいこともまた、本発明の1つの側面である。例えば本発明の化合物または塩は、アルキル化薬 例えばフルオロウラシル(5−FU)の単独、もしくはロイコボリンをさらに併用して;またはその他のアルキル化薬 例えば非限定的に他のピリミジン類似体 例えばUFT、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン、アルキルスルホネート系 例えばブスルファン(慢性顆粒球性白血病の治療に使用される)、イムプロスルファンおよびピポスルファン(piposurufan);アジリジン系 例えばベンゾデパ(benzodepa)、カルボクオン(carboquone)、メツレデパ(meturedepa)、およびウレデパ(uredepa);エチレンイミンおよびメチルメラミン 例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびトリメチルオルメルアミン(trimetylolmelamine);ならびに窒素マスタード 例えばクロランブシル(慢性リンパ性白血病、原発性大グロブリン血症および非ホジキンリンパ腫の治療に使用される)、シクロホスファミド(ホジキン病、多発性骨髄腫、神経芽腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、ウイルムス腫瘍および横紋筋肉腫の治療に使用される)、エストラムスチン、イフォスファミド、ノベムブリチン(novembrichin)、プレドニムスチン(prednimustine)およびウラシルマスタード(原発性血小板増加症、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病および卵巣癌の治療に使用される);ならびにトリアジン系 例えばダカルバジン(軟組織肉腫の治療に使用される)と併用してもよい。
【0041】
[0042]同様に本発明の化合物または塩は、他の代謝拮抗物質の化学療法薬、例えば非限定的に葉酸類似体 例えばメトトレキサート(急性リンパ性白血病、絨毛癌、菌状息肉腫、乳癌、頭部および頸部の癌、ならびに骨肉腫の治療に使用される)およびプテロプテリン;ならびにプリン類似体 例えば急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病および慢性顆粒球性白血病の治療への使用が見出せるメルカプトプリンおよびチオグアニン、と併用して有益な効果を有することが期待されると思われる。
【0042】
[0043]本発明の化合物または塩はまた、天然生成物に基づいた化学療法薬、例えば非限定的に、ビンカアルカノイド類 例えばビブラスチン(乳癌および睾丸の癌の治療に使用される)、ビンクリスチンおよびビンデシン;エピポドフィロトキシン系 例えばエトポシドおよびテニポシド、双方とも精巣の癌およびカポジ肉腫の治療に有用である;抗生物質の化学療法薬 例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ミトマイシン(胃、子宮頸、結腸、乳房、膀胱および膵臓の癌を治療するために使用される)、ダクチノマイシン、テモゾロミド、プリカマイシン、ブレオマイシン(皮膚、食道および尿生殖路の癌の治療に使用される);ならびに酵素の化学療法薬 例えばL−アスパラギナーゼ、と併用して効能を証明することが期待されると思われる。
【0043】
[0044]上記に加えて本発明の化合物または塩は、プラチナ配位錯体(シスプラチン等);置換された尿素 例えばヒドロキシ尿素;メチルヒドラジン誘導体 例えばプロカルバジン;副腎皮質抑制薬 例えばミトタン、アミノグルテチミド;ならびにホルモンおよびホルモンアンタゴニスト 例えば副腎皮質ステロイド(例えばプレドニソン)、プロジェスチン(例えばヒドロキシプロジェステロンカプロエート);エストロゲン(例えばジエチルスチルベステロール);抗エストロゲン 例えばタモキシフェン;アンドロジェン 例えばテストステロンプロピオネート;ならびにアロマターゼ阻害薬(例えばアナストロゾール)と併用して使用して有益な効果を有することが期待されると思われる。
【0044】
[0045]最後に本発明の化合物の併用は、固形腫瘍癌または白血病 例えば非限定的に急性骨髄性(非リンパ性)白血病の治療のためのミトキサトロンまたはパクリタキセルとの併用において、特に有効であることが期待されると思われる。
【0045】
[0046]上の方法は、有糸分裂阻害薬、アルキル化薬、代謝拮抗薬、細胞周期の阻害薬、酵素、トポイソメラーゼ阻害薬、生物学的応答の調節薬、抗ホルモン薬、抗血管新生薬 例えばMMP−2、MMP−9およびCOX−2の阻害薬、ならびに抗アンドロジェン薬から成る群より選択される化学療法薬と併用して行うことができる。
【0046】
[0047]有用なCOX−II阻害薬の例として、Vioxx(登録商標)、CELEBREX(登録商標)(アレコキシブ)、バルデコキシブ、パラコキシブ、ロフェコキシブ、およびCox189を含む。有用なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬の例は、WO 96/33172(1996年10月24日に公開)、WO 96/27583(1996年3月7日に公開)、ヨーロッパ特許出願第97304971.1号(1997年7月8日に提出)ヨーロッパ特許出願第99308617.2号(1999年10月29日に提出)、WO 98/07697(1998年2月26日に公開)、WO 98/03516(1998年1月29日に公開)、WO 98/34918(1998年8月13日に公開)、WO 98/34915(1998年8月13日に公開)、WO 98/33768(1998年8月6日に公開)、WO 98/30566(1998年7月16日に公開)、ヨーロッパ特許公開公報606,046(1994年7月13日に公開)、ヨーロッパ特許公開公報931,788(1999年7月28日に公開)、WO 90/05719(1990年5月31日に公開)、WO 99/52910(1999年10月21日に公開)、WO 99/52889(1999年10月21日に公開)、WO 99/29667(1999年6月17日に公開)、PCT国際特許出願第PCT/IB98/01113号(1998年7月21日に提出)、ヨーロッパ特許出願第99302232.1(1999年3月25日に提出)、英国特許出願第9912961.1号(1999年6月3日に提出)、米国仮特許出願第60/148,464号(1999年8月12日に提出)、米国特許第5,863,949号(1999年1月26日に発行)、米国特許第5,861,510号(1999年1月19日に発行)、およびヨーロッパ特許公開公報780,386(1997年6月25日に公開)を含み、これらのすべてをそれらの全内容において本明細書にて参照として援用する。
【0047】
[0048]好ましいMMP−2およびMMP−9の阻害薬は、MMP−1を阻害する活性をほとんどまたは全く有していないものである。より好ましくは、他のマトリックス−メタロプロテイナーゼ(すなわちMMP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12、およびMMP−13)と比較して、MMP−2および/またはMMP−9を選択的に阻害するものである。本発明に有用なMMP阻害薬の一部の具体的な例は、AG−3340、RO32−3555、RS13−0830、および以下のリストに列記する化合物である:
3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイル−シクロペンチル)−アミノ]−プロピオン酸;3−エキソ−3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;(2R,3R)1−[4−(2−クロロ−4−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンゼンスルホニル]−3−ヒドロキシ−3−メチル−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキシアミド;4−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイル−シクロブチル)−アミノ]−プロピオン酸;4−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸ヒドロキシアミド;(R)3−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−ピラン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;(2R,3R)1−[4−(4−フルオロ−2−メチル−ベンジルオキシ)−ベンゼンスルホニル]−3−ヒドロキシ−3−メチル−ピペリジン−2−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(1−ヒドロキシカルバモイル−1−メチル−エチル)−アミノ]−プロピオン酸;3−[[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニル]−(4−ヒドロキシカルバモイル−テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−アミノ]−プロピオン酸;3−エキソ−3−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;3−エンド−3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−8−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;および;(R)3−[4−(4−フルオロ−フェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]−テトラヒドロ−フラン−3−カルボン酸ヒドロキシアミド;ならびに前記化合物の医薬的に受容可能な塩および溶媒和物。
【0048】
[0049]他のCOX−II阻害薬および他のMMP阻害薬を含む他の抗血管新生薬もまた、本発明において使用することができる。
[0050]式(I)および式(II)の化合物はまた、シグナル伝達の阻害薬、例えばEGFR(表皮増殖因子受容体)の応答を阻害することのできる薬品、例えばEGFR抗体、EGF抗体、およびEGFR阻害薬である分子;VEGF(血管内皮細胞増殖因子)阻害薬;およびerbB2受容体阻害薬、例えばerbB2受容体に結合する有機分子または抗体、例えばHERCEPTIN.TM.(Genentech, Inc. of South San Francisco, Calif., USA)と共に使用することができる。EGFR阻害薬は、例えばWO 95/19970(1995年7月27日に公開)、WO 98/14451(1998年4月9日に公開)、WO 98/02434(1998年1月22日に公開)、および米国特許第5,747,498号(1998年5月5日に発行)に記載されており、そのような物質を本発明において本明細書で記載したように使用することができる。
【0049】
[0051]EGFRを阻害する薬品は、モノクローナル抗体C225および抗EGFR22Mab(ImClone Systems Incorporated of New York, N.Y., USA)、化合物ZD−1839(AstraZeneca)、BIBX−1382(Boehringer Ingelheim)、MDX−447(Medarex Inc. of Annandale, N.J., USA)およびOLX−103(Merk & Co. of Whitehouse Station, N.J., USA)、VRCTC−310(Ventech Research)およびEGF融合毒素(Seragen Inc. of Hopkinton, Mass.)を含むが、これに限定されない。
【0050】
[0052]これらおよびその他のEGFRを阻害する薬品を、本発明において使用することができる。
[0053]VEGF阻害薬、例えばSU−5416、SU 11248、SU−6668(Sugen Inc. of South San Francisco, Calif., USA)もまた、式(I)および式(II)の化合物と併用することができる。VEGF阻害薬は、例えばWO 99/24440(1999年5月20日に公開)、PCT国際特許出願 PCT/IB99/00797(1999年5月3日に提出)、WO 95/21613(1995年8月17日に公開)、WO 99/61422(1999年12月2日に公開)、米国特許第5,834,504号(1998年11月10日に発行)、WO 01/60814、WO 98/50356(1998年11月12日に公開)、米国特許第5,883,113号(1999年3月16日に発行)、米国特許第5,886,020号(1999年3月23日に発行)、米国特許第5,792,783号(1998年8月11日に発行)、WO 99/10349(1999年3月4日に公開)、WO 97/32856(1997年9月12日に公開)、WO 97/22596(1997年6月26日に公開)、WO 98/54093(1998年12月3日に公開)、WO 98/02438(1998年1月22日に公開)、WO 99/16755(1999年4月8日に公開)、およびWO 98/02437(1998年1月22日に公開)に記載されており、これらのすべてをその全内容において本明細書にて参照として援用する。本発明に有用ないくつかの具体的なVEGF阻害薬のその他の例は、IM862(Cytran Inc. of Kirkaland, Wash., USA); Genentech, Inc. of South San Francisco, Calif. の抗VEGFモノクローナル抗体;およびアンジオザイム(angiozyme)、すなわちRibozyme(Boulder, Colo)およびChiron(Emeryville, Calif.)からの合成リボザイムである。これらおよびその他のVEGF阻害薬を、本発明において本明細書に記載したように使用することができる。
【0051】
[0054]erbB2受容体阻害薬、例えばGW−282974(Glaxo Wellcome plc)、およびモノクローナル抗体AR−209(Aronex Pharmaceuticals Inc. of The Woodlands, Tex., USA)および2B−1(Chiron)は、さらに式(I)または式(II)の化合物、例えばWO 98/02434(1998年1月22日に公開)、WO 99/35146(1999年7月15日に公開)、WO 99/35132(1999年7月15日に公開)、WO 98/02437(1998年1月22日に公開)、WO 97/13760(1997年4月17日に公開)、WO 95/19970(1995年7月27日に公開)、米国特許第5,587,458号(1996年12月24日に発行)、および米国特許第5,877,305号(1999年3月2日に発行)に示されているものと併用することができ、これらの文献すべてを本明細書によりそれらの全内容において参照として援用する。本発明に有用なerbB2受容体阻害薬はまた、1999年1月27日に提出された米国仮特許出願第60/117,341号、および1999年1月27日に提出された米国仮特許出願第60/117,346号にも記載されており、これら双方をそれらの全内容において本明細書にて参照として援用する。前述のPCT特許出願、米国特許、および米国仮特許出願に記載されているerbB2受容体阻害薬の化合物および物質、ならびにerbB2受容体を阻害するその他の化合物および物質を、本発明に従って式(I)および式(II)の化合物と共に使用することができる。
【0052】
[0055]式(I)および式(II)の化合物はまた、抗腫瘍免疫応答を強化することのできる薬品、例えばCTLA4(細胞傷害性リンパ球抗原4)抗体、およびCTLA4を遮断することのできるその他の薬品;および増殖阻害薬(anti-proliferative agents)、例えば他のファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬、例えば米国特許第6,258,824 B1号の“背景”の項目に引用された参考文献に記載されているファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害薬を含むがこれに限定されない、癌を治療する上で有用なその他の薬品と共に使用することができる。本発明に使用することのできる具体的なCTLA4抗体は、米国仮特許出願60/113,647(1998年12月23日に提出)に記載されているもの(その全内容において参照として援用する)を含むが、他のCTLA4抗体を本発明に使用することもできる。
【0053】
[0056]上の方法はまた放射線療法と併用して行うことができ、その場合放射線療法と併用しての式(I)および式(II)の化合物の量は、上の疾患を治療する上での有効量である。照射される放射線療法の線量は、本発明の好ましい態様の化合物と併用して行う場合には、有効量以下に減量してよい。
【0054】
[0057]放射線療法を行うための技術は当業界に公知であり、これらの技術を本明細書に記載した併用療法に使用することができる。この併用療法における本発明の化合物の投与は、本明細書に記載するように決定することができる。
【0055】
[0058]本発明のもう1つの側面は、異常なMetキナーゼ活性により仲介される疾患の治療に有用である、医薬剤の調製における式(I)および式(II)の化合物の使用への方向付けを行う。
【0056】
[0059]“医薬的に受容可能な塩”または“医薬的に受容可能なその塩”は、フリーの塩基の生物学的な有効性および特性を保持していて、無機酸または有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸(ベシレート(besylate))、安息香酸、カンホルスルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、粘液酸、パモ酸、パントテン酸、コハク酸、酒石酸、等との反応により得られるそれらの塩を言う。
【0057】
[0060]“医薬組成物”は、本明細書に記載した1つもしくはそれより多くの化合物、または生理学的に受容可能なそれらの塩の、他の化学成分、例えば生理学的に受容可能な担体および賦形剤との混合物を言う。医薬組成物の目的は、生物体への化合物の投与を促進することである。
【0058】
[0061]本明細書で使用する場合“生理学的に受容可能な担体”は、生物体への有意な刺激の原因とならず、投与される化合物の生物学的な活性および特性を損なわない、担体または希釈剤を言う。
【0059】
[0062]“賦形剤”は、化合物の投与をさらに促進するために医薬組成物に添加される不活性な物質を言う。賦形剤の例として非限定的に、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類およびデンプンのタイプ、セルロース誘導体(微結晶セルロースを含む)、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、希釈剤、顆粒化剤、滑剤、結合剤、崩壊剤、等を含む。
【0060】
[0063]“アルキル”は、直鎖、分枝鎖または環式の基を含む飽和脂肪族炭化水素を言う。好ましくはアルキル基は、1から20の炭素原子を有する(数字の範囲;例えば“1−20”と本明細書で言う場合はいつも、その基、この場合はアルキル基が1つの炭素原子、2つの炭素原子、3つの炭素原子、等、20までおよび20を含む炭素原子を含有してよいことを意味する)。より好ましくはアルキル基は、1から10の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくはアルキル基は、1から4の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、各置換基は好ましくは、ハロゲン、−ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CZ、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、脂環式複素環(heteroalicycle)、ヘテロアリール、およびアリールより独立して選択される1つまたはそれより多くである。RおよびR’は独立して、H、アルキル、またはアリールであり、その場合アルキルまたはアリールはさらにハロゲン、(CHN(R”)、(CHCOR”、(CHOR”、(CHOC(O)R”、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノカルボニル、脂環式複素環(heterocyclic ring)、アリール、アルコキシ、−OCZ、アリールオキシ、C(O)NHまたはヘテロアリールで置換されていてよい。R”はH、アルキルまたはアリールである。nは0−3である。
【0061】
[0064]“アルケニル”は少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖または環式の基を含む、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素を言う。好ましくはアルケニル基は、2から20の炭素原子を有する(数字の範囲;例えば“2−20”と本明細書で言う場合はいつも、その基、この場合はアルケニル基が2つの炭素原子、3つの炭素原子、等、20までおよび20を含む炭素原子を含有してよいことを意味する)。より好ましくはアルケニル基は、2から10の炭素原子を有する中程度のサイズのアルケニルである。最も好ましくはアルケニル基は、2から6の炭素原子を有する低級アルケニルである。アルケニル基は置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、各置換基は好ましくは、ハロゲン、−ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CZ、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、脂環式複素環、ヘテロアリール、およびアリールより独立して選択される1つまたはそれより多くである。式中RおよびR’は本明細書で定義している。
【0062】
[0065]“アルキニル”は少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖、分枝鎖または環式の基を含む、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する脂肪族炭化水素を言う。好ましくはアルキニル基は、2から20の炭素原子を有する(数字の範囲;例えば“2−20”と本明細書で言う場合はいつも、その基、この場合はアルキニル基が2つの炭素原子、3つの炭素原子、等、20までおよび20を含む炭素原子を含有してよいことを意味する)。より好ましくはアルキニル基は、2から10の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキニルである。最も好ましくはアルキニル基は、2から6の炭素原子を有する低級アルキニルである。アルキニル基は置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、各置換基は好ましくは、ハロゲン、−ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CZ、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、脂環式複素環、ヘテロアリール、およびアリールより独立して選択される1つまたはそれより多くである。式中RおよびR’は本明細書で定義している。
【0063】
[0066]“シクロアルキル”基または“脂環式”基は、すべてが炭素の単環または縮合環(すなわち隣接する一組の炭素原子を共有する環)の基で、そのうち1つまたはそれより多くの環が完全に共役したπ電子系を有していないものを言う。シクロアルキル基の例は、非限定的に、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、アダマンタン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、およびシクロヘプタトリエンである。シクロアルキルは置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、各置換基は好ましくは、ハロゲン、−ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CZ、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、脂環式複素環、ヘテロアリール、およびアリールより独立して選択される1つまたはそれより多くである。式中RおよびR’は本明細書で定義している。
【0064】
[0067]“アリール”基は、完全に共役したπ電子系を有する、すべて炭素の単環式または縮合環の多環式(すなわち隣接する炭素原子のペアを共有する環)の基を言う。アリール基の例は、非限定的に、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルである。アリール基は置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、各置換基は好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、−COR’、−COOR’、OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CZ、−OCZ、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、脂環式複素環、ヘテロアリール、およびアリールより選択される1つまたはそれより多くである。式中RおよびR’は本明細書で定義している。
【0065】
[0068]本明細書で使用する場合“ヘテロアリール”基は、窒素、酸素およびイオウから成る群より選択される1つまたはそれより多くの原子を環(単数または複数)中に有し、そしてさらに完全に共役したπ電子系を有する、単環式または縮合環(すなわち隣接する一組の炭素原子を共有する環)の基を言う。ヘテロアリール基の例は、非限定的に、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、プリンおよびカルバゾールである。ヘテロアリール基は置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、各置換基は好ましくは、ハロゲン、−ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CZ、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、脂環式複素環、ヘテロアリール、およびアリールより選択される1つまたはそれより多くであり、この場合Zはハロゲンである。式中RおよびR’は本明細書で定義している。
【0066】
[0069]“脂環式複素環(heteroalicyclic ring)”または“脂環式複素環(heteroalicycle)”の基は、窒素、酸素およびイオウから成る群より選択される1つまたはそれより多くの原子を環(単数または複数)中に有する、単環式または縮合環の基を言う。これらの環はまた、1つまたはそれより多くの二重結合を有していてもよい。しかしこれらの環は完全に共役したπ電子系を有していなくてはならない。脂環式複素環は置換されていても置換されていなくてもよい。脂環式複素環は1つまたはそれより多くのオキソ基を含有してもよい。置換されている場合、置換基(単数または複数)は好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、−COR’、−COOR’、OCOR’、−CONRR’、−RNCOR’、−NRR’、−CN、−NO、−CZ、−SR’、−SOR’、−SOR’、−SOOR’、−SONRR’、チオカルボニル、−RNSOR’、ペルフルオロアルキル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、シリル、アンモニウム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、脂環式複素環、ヘテロアリール、およびアリールより選択される1つまたはそれより多くである。式中RおよびR’は本明細書で定義している。
【0067】
[0070]Zは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から成る群より選択されるハロゲンの基を言う。
[0071]“ヒドロキシ”基は、−OH基を言う。
【0068】
[0072]“アルコキシ”基は本明細書で定義する場合、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の双方を言う。
[0073]“アルコキシカルボニル”は、−C(O)−ORを言う。
【0069】
[0074]“アミノカルボニル”は、−C(O)−NRR’を言う。
[0075]“アリールオキシカルボニル”は、−C(O)−Oアリールを言う。
[0076]“アリールオキシ”基は本明細書で定義する場合、−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の双方を言う。
【0070】
[0077]“アリールアルキル”基は、−アルキル−アリールを言い、この場合アルキルおよびアリールは本明細書で定義している。
[0078]“アリールスルホニル”基は、−SO−アリールを言う。
【0071】
[0079]“アルキルスルホニル”基は、−SO−アルキルを言う。
[0080]“ヘテロアリールオキシ”基は、ヘテロアリール−O−基を言い、ヘテロアリールは本明細書で定義した通りである。
【0072】
[0081]“脂環式複素環オキシ(heteroalicycloxy)”基は、脂環式複素環−O−基を言い、脂環式複素環は本明細書で定義した通りである。
[0082]“カルボニル”基は、−C(=O)−Rを言う。
【0073】
[0083]“アルデヒド”基は、Rが水素であるカルボニル基を言う。
[0084]“チオカルボニル”基は、−C(=S)−R基を言う。
[0085]“トリハロメタンカルボニル”基は、ZC−C(O)−基を言う。
【0074】
[0086]“C−カルボキシル”基は、−C(O)O−R基を言う。
[0087]“O−カルボキシル”基は、R−C(O)O−基を言う。
[0088]“カルボン酸”基は、Rが水素であるC−カルボキシル基を言う。
【0075】
[0089]“ハロ”基または“ハロゲン”基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を言う。
[0090]“トリハロメチル”基は、−CZ基を言う。
[0091]“トリハロメタンスルホニル”基は、ZCS(O)基を言う。
【0076】
[0092]“トリハロメタンスルホンアミド”基は、ZCS(O)NR−基を言う。
[0093]“スルフィニル”基は、−S(O)−R基を言う。
[0094]“スルホニル”基は、−S(O)−R基を言う。
【0077】
[0095]“S−スルホンアミド”基は、−S(O)−NRR’基を言う。
[0096]“N−スルホンアミド”基は、−NR−S(O)−R基を言う。
[0097]“O−カルバミル”基は、−OC(O)NRR’基を言う。
【0078】
[0098]“N−カルバミル”基は、ROC(O)NR−基を言う。
[0099]“O−チオカルバミル”基は、−OC(S)NRR’基を言う。
[0100]“N−チオカルバミル”基は、ROC(S)NR’−基を言う。
【0079】
[0101]“アミノ”基は、−NHまたは−NRR’基を言う。
[0102]“C−アミド”基は、−C(O)NRR’基を言う。
[0103]“N−アミド”基は、R’C(O)NR−基を言う。
【0080】
[0104]“ニトロ”基は、−NO基を言う。
[0105]“シアノ”基は、−CN基を言う。
[0106]“シリル”基は、−Si(R)基を言う。
【0081】
[0107]“ホスホニル”基は、P(=O)(OR)基を言う。
[0108]“アミノアルキル”基は、−アルキルNRR’基を言う。
[0109]“アルキルアミノアルキル”基は、−アルキル−NR−アルキル基を言う。
【0082】
[0110]“ジアルキルアミノアルキル”基は、−アルキル−N−(アルキル)基を言う。
[0111]“ペルフルオロアルキル”基は、水素原子すべてがフッ素原子で置き換えられているアルキル基を言う。
【0083】
[0112]R−R10、G、R、R’およびR”の定義は、本明細書において定義している。
[0113]同じ分子式を有するが、それらの原子の結合の性質もしくは配列、または空間におけるそれらの原子の配置の異なる化合物を、“異性体”と言う。空間においてそれらの原子の配置の異なる異性体を“立体異性体”と言う。互いに鏡像ではない立体異性体を“ジアステレオマー”と言い、互いに重ね合わせることのできない鏡像であるものを“エナンチオマー”と言う。化合物が不斉中心を有する、例えばその中心に4つの異なる基が結合する場合、1対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーはその不斉中心の絶対配置により特徴付けることができ、Cahn およびPrelog のRおよびSの配列の法則により記載されるか、または分子が偏光面の回転のしかたにより、右旋性もしくは左旋性として(すなわち各々(+)異性体もしくは(−)異性体として)表される。キラル化合物は個々のエナンチオマーとして、またはそれらの混合物としてのいずれかで存在し得る。等しい比率のエナンチオマーを含有する混合物を、“ラセミ混合物”と呼ぶ。本明細書で言及する化学式は、互変異性および構造異性の現象を呈してもよい。本発明は、C−Met活性を調節する能力を有するあらゆる互変異性または構造異性の形およびそれらの混合物を包括的に含み、いずれか1つの互変異性または構造異性の形に限定されない。本発明は、C−Met活性を調節する能力を有するあらゆる互変異性または構造異性の形およびそれらの混合物を包括的に含み、いずれか1つの互変異性または構造異性の形に限定されない。
【0084】
[0114]本発明の化合物は1つまたはそれより多くの不斉中心を有してもよい;したがってそのような化合物は、個々の(R)−立体異性体もしくは(S)−立体異性体として、またはそれらの混合物として生成することができる。例えば式(I)の化合物におけるRおよびRの置換基が異なる場合には、その炭素は不斉中心である。したがって式(I)の化合物は(R)立体異性体−または(S)−立体異性体として存在し得る。他に指摘がなければ本明細書および請求項における特定の化合物の記載または命名は、個々のエナンチオマーおよびそれらの混合物、すなわちラセミ混合物またはそれ以外の混合物の双方を含むことを意図する。立体化学の決定および立体異性体の分離のための方法は、当業界で周知である("Advanced Organic Chemistry” 第4版、J. March, John Wiley and Sons, New York, 1992 の第4章の考察を参照のこと)。したがって本発明はまた、c−Met活性を調節する能力を有するあらゆる立体異性の形、ならびにそれらの対応するエナンチオマー(d−およびl−または(+)および(−)の異性体)およびそれらのジアステレオマー、ならびにそれらの混合物を包括的に含み、いずれか1つの立体異性の形に限定されない。
【0085】
[0115]式(I)および(II)の化合物は、互変異性および構造異性の現象を呈してもよい。例えば本明細書に記載する化合物は、二重結合についてEもしくはZの立体配置をとってもよいし、またはそれらはEおよびZの混合物でもよい。本発明は、c−Met活性を調節する能力を有するあらゆる互変異性または構造異性の形およびそれらの混合物を包括的に含み、いずれか1つの互変異性または構造異性の形に限定されない。
【0086】
[0116]式(I)および式(II)の化合物は、生物体 例えばヒト、の体内の酵素により代謝されて、c−Met活性を調節することのできる代謝産物を産生するであろうと考えられる。そのような代謝産物は、本発明の領域の範囲内である。
【0087】
[0117]“方法”という用語は、化学、医薬、生物学、生化学および医学の業界に従事している者により知られている、または公知の手法、手段、技術および手順から容易に発展させられる、それらの手法、手段、技術および手順を含むがこれに限定されない、与えられた課題を達成するための手法、手段、技術および手順を言う。
【0088】
[0118]本明細書で使用する場合“調節”または“調節すること”という用語は、c−Metの触媒活性を変化させることを言う。特に調節することは、c−Metが暴露される化合物もしくは塩の濃度に依存しての、c−Metの触媒活性の活性化、好ましくはc−Metの触媒活性の活性化もしくは阻害、またはより好ましくはc−Metの触媒活性の阻害を言う。
【0089】
[0119]“接触させること”という用語は本明細書で使用する場合、本発明の化合物が直接的に、すなわちc−Metそのものと相互作用することによる、または間接的に、すなわちc−Metの触媒活性が依存する別の分子と相互作用することによる、のいずれかによりc−Metの触媒活性に影響を及ぼすことができるように、該化合物とc−Metを一緒にもっていくことを言う。そのような“接触させること”は、in vitroで、すなわち試験管、ペトリ皿などの中で達成することができる。試験管において、接触させることには化合物およびc−Metのみを含んでもよいし、全細胞を含んでもよい。細胞はまた細胞培養皿で維持または成長させ、その環境内で化合物と接触させてもよい。本文脈において、c−Metに関連する障害に影響を及ぼす特定の化合物の能力、すなわち以下に定義する該化合物のIC50は、より複雑な生体を用いたin vivoでの該化合物の使用を試みる前に決定することができる。生物体の体外の細胞に関して、直接的な細胞へのマイクロインジェクションおよび非常に多くの膜貫通キャリアーの技術を含むがこれに限定されない、c−Metを該化合物と接触させるための多数の方法があり、これらは当業者に周知である。
【0090】
[0120]“in vitro”は、例えば非限定的に試験管内または培地内のような人工的な環境で行う手順を言う。当業者は、例えば単離したc−Metを、in vitro の環境で調節物質と接触させてよいことを理解するだろう。あるいは単離した細胞を、in vitro の環境で調節物質と接触させてもよい。
【0091】
[0121]本明細書で使用する場合“in vivo”は、生体、例えば非限定的にマウス、ラット、ウサギ、有蹄動物、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、霊長類、またはヒトの体内で行う手順を言う。
【0092】
[0122]本明細書で使用する場合“c−Metに関連する障害”は、c−Metの触媒活性の不適当な状態、すなわち低活性、またはより一般的には過剰な活性を特徴とする状態を言う。“c−Metに関連する障害”はまた、c−Metを産生する遺伝子における突然変異、すなわち今度は増加したまたは減少したc−Metの触媒活性を有するc−Metを産生する突然変異があってもよい状態も言う。
【0093】
[0123]不適当な触媒活性は以下のいずれかの結果として起こり得る:(1)正常ではc−Metを発現しない細胞内でのc−Metの発現、(2)望ましくない細胞の増殖、分化および/または成長をもたらす増加したc−Metの発現、または(3)細胞の増殖、分化および/または成長における望ましくない低減をもたらす減少したc−Metの発現。c−Metの過剰な活性は、c−Metをコードする遺伝子の増幅、または細胞の増殖、分化および/もしくは成長の障害と相関し得るc−Met活性の一定レベルの産生(すなわちc−Metのレベルが増加すると、細胞の障害の1つまたはそれより多くの症状の重症度が増大する)のいずれかを言う。低活性はもちろんその逆であり、その場合c−Met活性レベルが減少すると、細胞の障害の1つまたはそれより多くの症状の重症度が増大する。
【0094】
[0124]本明細書で使用する場合、“予防する”“予防すること”および“予防”という用語は、まず第一にc−Metに関連する障害に罹ることから生物体を防御するための方法を言う。
【0095】
[0125]本明細書で使用する場合、“治療する”“治療すること”“治療”という用語は、c−Metの仲介する細胞の障害および/またはそれに付随する症状を軽減または排除する方法を言う。特に癌に関してはこれらの用語は単に、癌にかかっている個体の余命が増加することになる、またはその疾患の1つまたはそれより多くの症状を低減することになることを意味する。
【0096】
[0126]“生物体”という用語は、少なくとも1つの細胞から成るあらゆる生命の実体を言う。生体は、例えば1つの真核細胞と同じ位シンプルであることも、または哺乳動物と同じ位複雑であることもできる。好ましい側面において、生物体は哺乳動物である。特に好ましい側面において哺乳動物はヒトである。
【0097】
[0127]“治療有効量”という用語は本明細書で使用する場合、治療する障害の1つまたはそれより多くの症状をある程度緩和することになる、投与する化合物の量を言う。癌の治療に関しては、治療有効量は以下の効果を有するその量を言う。すなわち(1)腫瘍のサイズを低減すること、(2)腫瘍の転移を阻害すること(すなわちある程度遅延させること、好ましくは停止させること)、(3)腫瘍の成長をある程度阻害すること(すなわちある程度遅延させること、好ましくは停止させること)、および/または、(4)癌に伴う1つもしくはそれより多くの症状をある程度緩和すること(または好ましくは除去すること)。
【0098】
[0128]“モニターすること”により、化合物をc−Metを発現する細胞と接触させることの効果を観察または検出することを意味する。観察または検出された効果は、細胞の表現型における変化、c−Metの触媒活性における変化、またはc−Metの本来の結合パートナーとの相互作用における変化とすることができる。そのような効果を観察または検出するための技術は当業界において周知である。例えばc−Metの触媒活性は、標的分子のリン酸化の速度または量を決定することにより観察してよい。
【0099】
[0129]“細胞の表現型”は、細胞もしくは組織の外面的な様子、または細胞もしくは組織の生物学的機能を言う。細胞の表現型の例は、非限定的に、細胞のサイズ、細胞の成長、細胞の増殖、細胞の分化、細胞の生存、アポトーシス、ならびに栄養素の取り込みおよび使用が挙げられる。そのような表現系の特徴は、当業界に周知の技術により測定可能である。
【0100】
[0130]“本来の結合パートナー”は、細胞内でc−Metに結合するポリペプチドを言う。本来の結合パートナーは、c−Metを介したシグナル伝達経路でシグナルを伝播する上で一役を担うことができる。本来の結合パートナーとc−Metとの相互作用における変化は、c−Met/本来の結合パートナーの複合体の増加した濃度または減少した濃度としてそれ自体を明示し、そしてその結果として、シグナル伝達を仲介するc−Metの能力の観察可能な変化で明示することができる。
【0101】
[0131]本明細書で使用する場合“投与する”または“投与”は、c−Metに関連する障害の予防または治療の目的のための、本発明の化合物もしくは塩、または本発明の化合物もしくは塩を含有する医薬組成物の、生物体への送達を言う。
【0102】
[0132]“医薬組成物”は、本明細書に記載した1つまたはそれより多くの化合物、または医薬的に受容可能なその塩もしくはプロドラッグと、他の化学成分、例えば医薬的に受容可能な賦形剤との混合物を言う。医薬組成物の目的は、化合物の生物体への投与を促進することである。
【0103】
[0133]“医薬的に受容可能な賦形剤”は、化合物の投与をさらに促進するために医薬組成物に添加する不活性物質を言う。賦形剤の例は非限定的に、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類およびデンプンのタイプ、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ならびにポリエチレングリコールを含む。
【0104】
[0134]“医薬的に受容可能な塩”は、親化合物の生物学的有効性および特性を保持している、それらの塩を言う。そのような塩は以下を含む:
[0135](1)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸等、または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、(D)もしくは(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、またはマロン酸等、好ましくは塩酸または(L)−リンゴ酸との、親化合物のフリーの塩基の反応により得られる酸付加塩;あるいは
[0136](2)親化合物中に存在する酸性のプロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンにより置き換えられる;または有機塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、等と配位結合する、いずれかの場合に形成される塩。
【0105】
[0137]式(I)および式(II)の化合物はまたプロドラッグとして作用してもよい。“プロドラッグ”は、in vivo で親の薬剤に変換される剤を言う。プロドラッグは、状況によってはプロドラッグの方が親の薬剤より投与し易い可能性があるため、しばしば有用である。例えば、親の薬剤はそうではないのに、プロドラッグは経口投与でバイオアベイラブルであると可能性がある。プロドラッグはまた、親の薬剤を上回る医薬組成物における改善された溶解度を有する可能性がある。プロドラッグの例はとして非限定的に、エステル(いわゆる“プロドラッグ”)、カルバメートまたは尿素として投与される本発明の化合物が挙げられるだろう。
【0106】
適応症
[0139]本発明の化合物、特に本発明の化合物からin vivo で産生される化合物がc−Metを阻害する機序の詳細な理解は、本発明を実践する目的には必要でない。しかし、本明細書によりいかなる特定の機序または理論にも結びつけられるものではないが、該化合物はc−Metの触媒領域においてアミノ酸と相互作用すると考えられる。したがって本明細書で開示した化合物は、c−Metに関するin vitro のアッセイとして、同様にc−Metとの相互作用を通してin vivo で治療効果を呈するものとして有用性があると思われる。
【0107】
[0140]もう1つの側面において本発明は、本発明の化合物またはその塩の治療有効量を生物体に投与することにより、c−Metに関連する障害を治療または予防するための方法に関する。
【0108】
[0141]本発明の化合物またはその塩を含有する医薬組成物を、c−Metに関連する障害を予防または治療する目的のために生物体に投与することもまた、本発明の1つの側面である。
【0109】
[0142]したがって本発明は、c−Metの酵素活性に影響を及ぼし、それによりc−Metにより伝達されるシグナルを妨げることにより、PKシグナル伝達を調節する化合物への方向付けを行う。より具体的には、本発明は、本明細書に記載した多くの癌を治療するための治療的アプローチとして、c−Metを介したシグナル伝達経路を調節する化合物への方向付けを行う。
【0110】
[0143]c−Metの酵素活性を調節する化学化合物を同定するための方法は、本発明のもう1つの側面である。この方法は、c−Metを発現する細胞を本発明の化合物(またはその塩)と接触させ、化合物が細胞に及ぼすあらゆる効果について細胞をモニターすることを伴う。あるいはこの方法は、c−Metタンパク質それ自体(すなわち細胞内ではない)を本発明の好ましい態様の化学化合物と接触させ、化合物がタンパク質に及ぼすあらゆる効果についてタンパク質をモニターすることを伴ってもよい。この効果は裸眼でまたは装置の使用を通してのいずれで観察できてもよい。この効果は例えば細胞の表現型における変化の有無であってよい。モニターする細胞の表現型における変化の有無は、例えば非限定的に、細胞内のc−Metの触媒活性の変化の有無でも、または本来の結合パートナーとのc−Metの相互作用の変化の有無でもよい。
【0111】
医薬組成物および使用
[0144]本発明の化合物または生理学的に受容可能なその塩は、例えばヒトの患者に投与することができる、または前述の材料を適切な担体または賦形剤(単数または複数)と混合した医薬組成物にて投与することができる。薬剤の製剤化および投与のための技術は、”Remington’s Pharmacological Sciences”, Mack Publishing Co., Easton, PA, 最新版に見出してもよい。
【0112】
投与経路
[0145]適切な投与経路は、非限定的に、経口、口腔内、経直腸、経粘膜もしくは経腸の投与、または筋肉内、皮膚上、非経口、皮下、経皮、骨髄内、包膜内、心室内に直接、静脈内、硝子体内(intravitreal)、腹腔内、鼻腔内、筋肉内、硬膜内、呼吸器内、鼻への吸入、または眼内への注入を含む。好ましい投与経路は経口および非経口である。
【0113】
[0146]あるいは全身への投与法よりむしろ局部的に、例えば化合物の直接的な固形腫瘍内への注入により、しばしばデポ製剤または持続的放出の製剤にて化合物を投与してもよい。
【0114】
[0147]さらに標的への薬剤送達システムにて、例えば腫瘍特異的な抗体でコーティングしたリポソームにて、薬剤を投与してもよい。リポソームは腫瘍を標的とし、腫瘍により選択的に取り込まれることになる。
【0115】
組成物/製剤
[0148]本発明の医薬組成物は、当業界に周知の工程により、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠の作製、糊状化、乳化、カプセル化、エントラッピング(entrapping)、凍結乾燥の工程またはスプレー乾燥により製造してよい。
【0116】
[0149]本発明の方法において使用するための医薬組成物は、薬学のあらゆる方法により調製してよいが、すべての方法は活性成分を1つまたはそれより多くの必要な成分を構成する担体と合わせるステップを含む。特に本発明に従って使用するための医薬組成物は、医薬的に使用することのできる調製物中への活性化合物の加工を促進する賦形剤および助剤を包含する、生理学的に受容可能な1つまたはそれより多くの担体を使用する従来の手法で製剤化してよい。適正な製剤は選ばれる投与経路に依存する。
【0117】
[0150]剤形は錠剤、トローチ、分散剤(dispersion)、懸濁液、溶液、カプセル、パッチ、シロップ、エリキシル、ゲル、粉末、マグマ剤、ロゼンジ、軟膏、クリーム、ペースト、膏剤、ローション、ディスク、坐剤、鼻または口用のスプレー、エアゾール等を含む。
【0118】
[0151]注入用として、本発明の化合物は水溶液中に、好ましくは生理学的に融和性のバッファー、例えば低濃度の界面活性剤もしくは共溶媒を含むもしくは含まないバッファー、または生理食塩水のバッファー中に製剤化してよい。経粘膜投与用には、透過するバリアーに適当な浸透剤を製剤中に使用する。そのような浸透剤は当業界において一般的に知られている。
【0119】
[0152]経口投与用として該化合物は、当業界に周知の医薬的に受容可能な担体と活性化合物とを組み合わせることにより製剤化することができる。そのような担体は、本発明の化合物を錠剤、ピル、ロゼンジ、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として、患者による経口摂取用に製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、固体の賦形剤を用い、所望であれば他の適切な助剤を加えた後に、所望により得られる混合物を挽き、そして顆粒の混合物を加工して製造し、錠剤または糖衣錠の核を得ることができる。有用な賦形剤は特に、充填剤 例えばラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類、セルロース調製物 例えば、例えばトウモロコシのデンプン、小麦のデンプン、米のデンプンおよびイモ類のデンプン、ならびにその他の材料 例えばゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニル−ピロリドン(PVP)である。所望であれば、崩壊剤、例えば架橋したポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸を加えてもよい。塩、例えばアルギン酸ナトリウムをまた使用してもよい。
【0120】
[0153]糖衣錠の核は適切なコーティングをして提供する。この目的のため、所望によりアラビアゴム、タルク、ポリビリルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒または有機溶媒混合液を含有してもよい糖の濃縮溶液を使用してよい。色素または顔料を、同定のためまたは活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
【0121】
[0154]経口的に使用できる医薬組成物は、ゼラチンで製造された押し出し式(push-fit)のカプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤 例えばグリセロールまたはソルビトールで製造されたソフトタイプのシール式(sealed)カプセルを含む。押し出し式のカプセルは、充填剤 例えばラクトース、結合剤 例えばデンプン、および/または滑剤 例えばタルクもしくはステアリン酸マグネシウム、および所望により安定剤の混合材料中に活性成分を含有することができる。ソフトカプセルでは、活性化合物は適切な液体、例えば不揮発性油(fatty oils)、流動パラフィン、液体ポリエチレングリコール、クレモホール、カプムル(capmul)、中鎖または長鎖のモノ−、ジ−またはトリグリセリド中に溶解または懸濁してよい。安定剤もまたこれらの製剤に加えてもよい。
【0122】
[0155]吸入による投与用として、本発明に従って使用するための化合物は、加圧パックまたはネブライザーおよび適切な高圧ガス、例えば非限定的に、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素を使用するエアゾールスプレーの形で、使い勝手よく送達する。加圧式のエアゾールの場合、投与量のユニットは、計量された量を送達するためのバルブを提供することによりコントロールしてよい。吸入器または吹き入れ器に使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、該化合物および適切な粉末ベース 例えばラクトースまたはデンプンの粉末混合物を含有して、製剤化してよい。
【0123】
[0156]該化合物はまた、例えばボーラス注入または持続的な点滴による非経口投与用に製剤化してもよい。注入用の製剤は、ユニット剤形で、例えば添加した防腐剤を含むアンプルまたは複数回用量の容器にて提供してよい。この組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形をとってよく、製剤化の材料、例えば懸濁剤、安定剤および/または分散剤を含有してよい。
【0124】
[0157]非経口投与用の医薬組成物は、活性化合物の水溶性の形、例えば非限定的に、塩の水溶液を含む。加えて、活性化合物の懸濁液を脂肪親和性のビヒクル中に調製してもよい。適切な脂肪親和性ビヒクルは、不揮発性油 例えばゴマ油、合成脂肪酸エステル 例えばオレイン酸エチルおよびトリグリセリド、またはリポソームのような材料を含む。水溶性の注入懸濁液は、懸濁液の粘性を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含有してよい。所望により懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加して、高濃度の溶液を調製できるようにする適切な安定剤および/または作用物質を含有してもよい。
【0125】
[0158]あるいは活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば滅菌した発熱物質を含まない水で構成するための粉末の形としてもよい。
[0159]該化合物はまた直腸用の組成物 例えば坐剤または停留性の浣腸剤に、例えば従来の坐剤ベース 例えばココアバターまたはその他のグリセリドを使用して、製剤化してもよい。
【0126】
[0160]先に記載した製剤に加えて、該化合物はまたデポ調製剤として製剤化してもよい。そのような長期間作用する製剤は、植込み(例えば皮下または筋肉内に)により、または筋肉内注入により投与してよい。本発明の化合物は、適切なポリマー材もしくは疎水性の材料を用いて(例えば薬学的に受容可能な油とのエマルジョン中に)、イオン交換樹脂を用いて、または緩やかに溶解する誘導体、例えば非限定的に緩やかに溶解する塩として、この投与経路用に製剤化してよい。
【0127】
[0161]本発明の疎水性化合物のための医薬的担体の非限定的な例は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性の有機ポリマー、および水相を包含する共溶媒系、例えばVPD−共溶媒系である。VPDは、3%w/v ベンジルアルコール、8%w/v 非極性界面活性剤ポリソルベート80、および65%w/v ポリエチレングリコール300の、無水エタノールにて体積を調整した溶液である。VPD共溶媒系(VPD:D5W)は、水溶液中の5%デキストロースで1:1に希釈したVPDから成る。この共溶媒系は疎水性の化合物をよく溶解し、それ自身は全身投与で低い毒性を示す。本来そのような共溶媒系の比率は、その溶解度および毒性の特徴を損なわなければかなり変えてもよい。さらに共溶媒の成分そのものを変えてもよい:例えば他の低い毒性の非極性界面活性剤をポリソルベート80の代わりに使用してよく、ポリエチレングリコールのフラクションサイズを変えてもよく、他の生物学的に融和性のポリマー、例えばポリビニルピロリドンにポリエチレングリコールを取り替えてもよく、そしてデキストロースを他の糖類または多糖類に置き換えてもよい。
【0128】
[0162]あるいは疎水性医薬化合物のための他の送達システムを使ってもよい。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬剤のための送達ビヒクルまたは担体の周知の例である。さらにはある種の有機溶媒 例えばジメチルスルホキシドもまた、しばしばより高い毒性という代償を支払わなければならないが、使ってもよい。
【0129】
[0163]加えて、該化合物は徐放性のシステム、例えば治療薬を含有する固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを用いて送達してもよい。多様な徐放性の材料が確立されており、当業者に周知である。徐放性のカプセルは、それらの化学的性質に依存して、数週間から100日を越えるまでの間化合物を放出してよい。治療試薬の化学的性質および生物学的安定性に依存して、タンパク質の安定化のための付加的な戦略を使ってもよい。
【0130】
[0164]本明細書における医薬組成物はまた、適切な固相またはゲル相の担体または賦形剤を包含してもよい。このような担体または賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、多様な糖類、デンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー 例えばポリエチレングリコールを含むがこれに限定されない。
【0131】
[0165]本発明のPKを調節する化合物の多くは、請求項に記載の化合物が負または正に荷電した種を形成してよい、生理学的に受容可能な塩として提供してよい。化合物が正に荷電した部分を形成する塩の例は、非限定的に第四級アンモニウム(本明細書の他所で定義する)の塩 例えば塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、メチルスルホン酸塩(CHSO)を含み、この場合第四級アンモニウム基の窒素原子は、適当な酸と反応した本発明の選択された化合物の窒素である。本発明の化合物が負に荷電した種を形成する塩は、非限定的に、該化合物中のカルボン酸基が適当な塩基(例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))等)と反応することにより形成される、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩を含む。
【0132】
投与量
[0166]本発明における使用に適する医薬組成物は、意図する目的、すなわちPK活性の調節またはPKに関連する障害の治療もしくは予防を達成するために十分な量で活性成分を含有する組成物を含む。
【0133】
[0167]より具体的には治療有効量は、疾患の症状を予防、軽減もしくは改善する、または治療する被験者の余命を延長するために有効な化合物の量を意味する。
[0168]治療有効量の決定は、特に本明細書に提供した詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0134】
[0169]本発明の方法において使用するあらゆる化合物に関して、治療有効量または用量は、細胞培養のアッセイから最初に見積もることができる。次に、細胞培養で決定された際のIC50(すなわちc−Met活性の最大の阻害の1/2を達成する検査化合物の濃度)を含む血中濃度の範囲を達成するように、動物モデルで使用するための投与量を処方することができる。次にそのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
【0135】
[0170]本明細書に記載する化合物の毒性および治療効能は、細胞培養または実験動物における標準的な医薬的手順により、例えば主題化合物に関するIC50およびLD50(これらの双方とも本明細書の他所で論じる)を決定することにより、決定することができる。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトにおいて使用するための投与量の範囲を処方する上で使用することができる。投与量は、使う剤形および利用する投与経路に依存して変えてよい。的確な製剤、投与経路、および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。(例えばFingl, et al., 1975, “The Pharmacological Basis of Therapeutics” の第1章 p.1 を参照のこと)。
【0136】
[0171]投与量および投与間隔は、キナーゼを調節する効果を維持するために十分な活性種の血漿レベルを提供するように、個々に調整してよい。これらの血漿レベルを、最小有効濃度(MEC)と言う。MECは各化合物ごとに変わることになるが、in vitro のデータ、例えば本明細書に記載するアッセイを用いて確認してよいキナーゼの50−90%の阻害を達成するために必要な濃度、から見積もることができる。MECを達成するために必要な投与量は、個々の特徴および投与経路に依存することになる。HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して血漿濃度を決定することができる。
【0137】
[0172]投与間隔はまたMEC値を用いて決定することができる。化合物は、その時間帯の10−90%の間、好ましくは30−90%の間、そして最も好ましくは50−90%の間、MEC以上の血漿レベルを維持するレジメンを用いて投与すべきであろう。現時点では式(I)および式(II)の化合物の治療有効量は、1日あたりおよそ10mg/mから1000mg/mの範囲としてよい。さらにより好ましくは25mg/mから500mg/mである。
【0138】
[0173]局部的な投与または選択的な取り込みの場合、薬剤の有効な局部の濃度は血漿濃度と関連していなくてよく、また当業界で公知のその他の手順を使って正確な投与量および投与間隔を決定してもよい。
【0139】
[0174]投与する組成物の量は、もちろん治療する被験者、苦痛の重症度、投与法、処方する医師の判断、等に依存することになる。
【0140】
包装
[0175]該組成物は所望であれば、活性成分を含有する1またはそれより多くのユニット剤形を含有してよい、パックまたはディスペンサー装置にて、例えばFDAに認可されたキットとして提供してよい。パックは例えば金属またはプラスチックホイル、例えばブリスターパックを包含してよい。パックまたはディスペンサー装置は、投与のための使用説明書を添付してよい。パックまたはディスペンサーはまた、医薬物の製造、使用または販売を規定する政府機関により指定された書式で、容器に貼付する注意書きを添付してもよく、この注意書きが組成物の形またはヒトもしくは獣医的な投与に関する政府機関による認可を反映する。そのような注意書きは、例えば処方薬に関する米国食品医薬品局により認可されたラベルの表示の注意書きでも、または認可された製品の添付文書(insert)の注意書きでもよい。融和性の医薬的担体中に製剤化した本発明の化合物を包含する組成物はまた、調製し、適当な容器に入れ、そして適応の状態の治療用にラベル表示してもよい。ラベル上で適応とされる適切な状態は、腫瘍の治療、血管形成の阻害、線維症、糖尿病、等の治療を含んでよい。
【実施例】
【0141】
(実施例)
実験部分:
【0142】
【化6】

【0143】
実施例1:(4−ヒドロキシ−フェニル)−酢酸ヒドラジド
【0144】
【化7】

【0145】
[0176]ニートの無水ヒドラジン 21.0g(654mmol)を、MeOH(100mL)中のp−ヒドロキシフェニル酢酸メチルエステル 27.18g(163.5mmol)の溶液に加え、混合液を50−55℃に加熱し、この温度で90分間撹拌した(水浴)。冷却し、さらに1時間撹拌し、沈殿物を濾過して集め、フリット(frit)上に圧縮し、MeOH(3×10mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させた。上清を−15℃に一晩冷却し、形成された沈殿物を濾過することにより第2の分画を得た。
【0146】
[0177]合わせた収量:白色結晶固体 25.13g(92.5%)
【0147】
【化8】

【0148】
実施例2:4−(5−アミノ−[1,3,4]オキサジアゾル−2−イルメチル)−フェノール
【0149】
【化9】

【0150】
[0179]固体のBrCN 6.059g(57.2mmol)を、MeOH(100mL)中の(4−ヒドロキシ−フェニル)−酢酸ヒドラジド 8.642g(52.0mmol)およびKHCO6.510g(65mmol)の、氷で冷却したスラリー中に一度に加えた。混合液を0−5℃で1時間撹拌し、氷浴を融けるままに放置し、室温で一晩(18時間)撹拌した。反応混合液を水(100mL)で希釈し、1時間撹拌し、沈殿物を濾過して集め、水で洗浄し、高真空下で乾燥させた。上清を濃縮して冷却した後、第2の分画を沈殿させた。
【0151】
[0180]合わせた収量:白色結晶固体 9.018g(90.5%)
【0152】
【化10】

【0153】
実施例3:4−(4,5−ジアミノ−4H−[1,2,4]トリアゾル−3−イルメチル)−フェノール
【0154】
【化11】

【0155】
[0182]4−(5−アミノ−[1,3,4]オキサジアゾル−2−イルメチル)−フェノール 4.902g(25.64mmol)、水 40mL、および無水ヒドラジン 13mLの混合液を油浴(190℃)にて18時間還流した。混合液を冷却し、室温で2時間結晶化させた後、冷凍庫(−20℃)に一晩(16時間)置いた。沈殿した生成物を濾過して集め、冷却したMeOH(−15℃)で洗浄し、高真空下で乾燥させた。粗生成物を水(80mL、一晩+4℃までにて還流)から再結晶させた。濾過し氷冷水で洗浄し、高真空下で乾燥させた。
【0156】
[0183]Y=白色結晶固体 1.658g(31.5%)
【0157】
【化12】

【0158】
実施例4:(4−フルオロ−フェニル)−酢酸ヒドラジド
【0159】
【化13】

【0160】
[0187]ニートの無水ヒドラジン 20mLを、MeOH(120mL)中の(4−フルオロフェニル)酢酸メチルエステル(Acros Organics USA, Morris Plains, NJ,25.66g、152.5mmol)のスラリーに加え、混合液を還流冷却器にて窒素下で2時間60℃に加熱した。室温に冷却し、乾燥するまで蒸発させた(室温から60℃に、100トルから7トルに)。固体残渣を1−プロパノール 100mLから再結晶させた(還流から室温まで、一晩)。結晶生成物を濾過して集め、1−プロパノールで洗浄し、高真空下で乾燥させた。[第1の分画]
[0188]上清を高真空下で乾燥するまで蒸発させ、得られた固体残渣を高真空下で一晩乾燥させた。次に残渣をベンゼンから再結晶させた。(還流から室温まで、一晩)。沈殿生成物を濾過して集め、ベンゼン−ヘキサン(1:1)混合液で、次にヘキサンで洗浄した。高真空下で乾燥させた。[第2の分画]
[0189]合わせた収量:白色層状結晶 24.855g(97%)
【0161】
【化14】

【0162】
実施例5:5−(4−フルオロ−ベンジル)−[1,3,4]オキサジアゾル−2−イルアミン
【0163】
【化15】

【0164】
[0191]固体のBrCN 13.37g(130mmol、1.1等量)を、1Lフラスコ内で、MeOH(150mL)中の(4−フルオロ−フェニル)−酢酸ヒドラジド(19.85g、118mmol)およびKHCO 14.77g(147.5mmol、1.25当量)の、氷で冷却したスラリー中に一度に加えた。(その後MeOH 10mLで漏斗を洗浄した)。混合液を氷浴にて0−5℃で2時間、ゆるく栓をしたフラスコ内で撹拌した後、氷浴を徐々に氷が融けるままに放置し、その後混合液を5から20℃で一晩(17時間)撹拌した。反応混合液を水(200mL)で希釈し、フラスコの栓をはずして1時間撹拌した後、水浴で冷却した。沈殿物を濾過して集め、水で洗浄し、高真空下で乾燥させた。[第1の分画]。上清を水浴にて温めた(40℃)ロータリーエバポレータで濃縮して、すべてのMeOHおよび一部の水を除去した。得られたスラリーを室温に冷却し、沈殿物を濾過して集め、水で洗浄し、高真空下で乾燥させた。[第2の分画]。合わせた収量:白色結晶固体 20.836g(91.5%)
【0165】
【化16】

【0166】
実施例6:5−(4−フルオロ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾール−3,4−ジアミン
【0167】
【化17】

【0168】
[0193]5−(4−フルオロ−ベンジル)−[1,3,4]オキサジアゾル−2−イルアミン 10.182g(52.7mmol)、水 80mL、および無水ヒドラジン 20mLの混合液を窒素下、油浴(190−200℃)にて23時間還流した。混合液を冷却し、室温で窒素下にて一晩放置して結晶させた。沈殿した生成物を濾過して集め氷冷水(10mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させた。粗生成物を水 60mLから再結晶させた(窒素下で還流、その後冷蔵庫内で一晩+4℃に)。生成物を濾過し、氷冷水で洗浄し、高真空下で乾燥させた。
【0169】
[0194]Y=大きな白色結晶 6.210g(56.5%)
【0170】
【化18】

【0171】
実施例7:3,3,4−トリクロロ−5−メトキシ−1,3−ジヒドロ−インドル−2−オン
【0172】
【化19】

【0173】
[0196]Tetrahedron 27, 3263-70 (1971) においてR.J. Bass により公開された方法に従って、5−メトキシインドール−2−カルボン酸の塩素処理により、3,3,4−トリクロロ−5−メトキシ−1,3−ジヒドロ−インドル−2−オンを47%の収量(再結晶後)で得た。
【0174】
【化20】

【0175】
実施例8:4−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−2,3−ジオン
【0176】
【化21】

【0177】
[0197]Tetrahedron 27, 3263-70 (1971) に公開された方法に従った、MeOH−水の混合液中の3,3,4−トリクロロ−5−メトキシ−1,3−ジヒドロ−インドル−2−オンの加水分解により、4−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−2,3−ジオンを濃褐色の光沢のある結晶として、96%の収量で得た。
【0178】
【化22】

【0179】
実施例9:3,3,4,7−テトラクロロ−5−メトキシ−1,3−ジヒドロ−インドル−2−オン
【0180】
【化23】

【0181】
[0199]3,3,4−トリクロロ−5−メトキシ−1,3−ジヒドロ−インドル−2−オン(43.3mmol)11.54gを氷酢酸(200mL)中に懸濁した。N,N−ジクロロウレタン 3.343g(21.7mmol)を加え、混合液を60℃で2日間撹拌した。反応混合液を室温に冷却し、沈殿物を濾過して集め、高真空下で乾燥させた。ベンゼン(150mL)から再結晶させ、生成物 6.135g(5%の出発物質を不純物として含有する)を得た。
【0182】
[0200]反応混合物からのAcOHの上清を水(200mL)で希釈し、沈殿した第2の分画を濾過して集め、高真空下で乾燥させた。この第2の分画を、第1の分画の再結晶に使用したベンゼンの上清を蒸発させた残渣と合わせ、ベンゼン(2×100mL)から2回再結晶させた。この再結晶させた材料(2.300g)は、8%の出発物質を不純物として含有していた。
【0183】
[0201]合わせた収量:白色結晶固体 8.521g(65.5%)。
【0184】
【化24】

【0185】
実施例10:4,7−ジクロロ−5−メトキシ−1H−インドール−2,3−ジオン
【0186】
【化25】

【0187】
[0203]3,3,4,7−テトラクロロ−5−メトキシ−1,3−ジヒドロ−インドル−2−オン 3.841g(12.76mmol)を、MeOH(125mL)および水(75mL)の混合液中で32時間還流した。一晩放置して結晶させ、沈殿した生成物を濾過して集め、高真空下で乾燥させた。
【0188】
[0204]Y=濃い赤褐色の光沢のある結晶固体 2.708g(86%)
[0205]生成物は出発材料の不純物に由来する3%の4−クロロ−5−メトキシイサチンを含有していた。
【0189】
【化26】

【0190】
実施例11:4−クロロ−5−ヒドロキシ−1H−インドール−2,3−ジオン
【0191】
【化27】

【0192】
[0207]4−クロロ−5−ヒドロキシ−1H−インドール−2,3−ジオン 2.116g(10mmol)を無水ジクロロメタン(20mL)中に懸濁し、窒素下で氷浴にて冷却した。三臭化ホウ素 3.00mL(31.7mmol)をニートで(10分にわたり)加え、得られた混合液を窒素下にて0℃から室温までで30分間、そして室温で一晩(16時間)撹拌した。氷浴で冷却しながら、反応混合液に砕いた氷をゆっくり加えることにより反応を停止させ、その後混合液をメタノール(80mL)および水(150mL)で希釈し、15分間撹拌した。沈殿物を濾過して集め、メタノール+水(1:2)の混合液で洗浄し、高真空下で乾燥させた。
【0193】
[0208]Y=褐色固体 1.716g(87%)。
【0194】
【化28】

【0195】
実施例12:4−クロロ−2,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボン酸の合成(2段階)
【0196】
【化29】

【0197】
2−クロロ−4−(2−ヒドロキシイミノ−アセチルアミノ)−安息香酸
【0198】
【化30】

【0199】
[0210]抱水クローラル(1.0g、6.00mmol;Spectrum Quality Products, Inc., New Brunswick, NJ)および水(80mL)の溶液に、硫酸ナトリウム(5g)、4−アミノ−2−クロロ−安息香酸(855mg、4.98mmol;Acros)、濃HCl水溶液(5mL)および塩酸ヒドロキシルアミン(1.15g、16.5mmol;Aldrich)を加えた。これを20分間還流した。混合液を室温に冷却し、沈殿物を濾過し、水で洗浄した。表題の化合物(1.08g、90%)を白色固体として得た。
【0200】
【化31】

【0201】
4−クロロ−2,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボン酸(主な異性体)
【0202】
【化32】

【0203】
[0212]2−クロロ−4−[(2−(ヒドロキシイミノ)エタノイル)アミノ]安息香酸(300mg、1.24mmol)を濃硫酸(5mL)に溶かした。これを80℃で3時間撹拌した。反応混合液を室温に冷却し、氷水中に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。表題の化合物を、12%の位置異性体(6−クロロ−2,3−ジオキソインドリン−5−カルボン酸)を含有するオレンジ色の固体(256mg、92%)として得た。
【0204】
【化33】

【0205】
実施例13:4,7−ジメチル−5−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−1H−インドール−2,3−ジオン
【0206】
【化34】

【0207】
【化35】

【0208】
ステップ1:N−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−フェニル)−アセトアミド
[0214]水 30mL中の4−アミノ−2,5−ジメチル−フェノール(6.85g、50mmol)の懸濁液に、無水酢酸(5.67mL、60mmol)を加えた。混合液を70℃で20分間激しく撹拌した後、室温に冷却した。固体を濾過して集め、水で洗浄して、N−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−フェニル)−アセトアミドを灰色固体(8.1g、90%)として得た。
【0209】
【化36】

【0210】
ステップ2:N−[2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−フェニル]−アセトアミド
[0216]ジオキサン 50mL中のN−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−フェニル)−アセトアミド(8.0g、44.6mmol)および4−(2−クロロ−エチル)−モルホリンヒドロクロリド(9.97g、53.6mmol)の懸濁液に、NaOH溶液(水 50mL中に4.29g)を加えた。混合液を2時間還流し、減圧下で乾燥するまで蒸発させた。残渣をCHClに溶かし、0.5N NaOHで洗浄した。有機相を乾燥(NaSO)、蒸発させ、CHCl−ヘキサンから結晶させて、N−[2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−フェニル]−アセトアミドを、灰色固体(11.6g、89%)として得た。
【0211】
【化37】

【0212】
ステップ3:2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−フェニルアミン塩化水素
[0218]3N HCl水溶液(100mL)中のN−[2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−フェニル]−アセトアミド(11.4g、39mmol)の混合液を2時間還流した後、減圧下で濃縮した。残渣を凍結乾燥して、2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)アニリンジヒドロクロリドを、灰色固体として定量的に得た。
【0213】
【化38】

【0214】
ステップ4:N−[2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシイミノ−アセトアミド
[0220]水 12mL中の抱水クローラル(910mg、5.5mmol)の溶液に、以下の化合物:無水NaSO 13g;水(3mL)中の2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−フェニルアミン塩化水素(1.61g、5mmol)の溶液;そして最後に水 5mL中の塩酸ヒドロキシルアミン(1.12g、16mmol)の溶液を、順に加えた。混合液を油浴(130℃)にて撹拌しながら15分間加熱した後、室温に冷却し、水で希釈し、濃NaHCO水溶液でpH7に中和し、EtOAcで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、乾燥(NaSO)、減圧下で濃縮して、N−[2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシイミノ−アセトアミドを黄色固体(1.45g、91%)として得た。
【0215】
【化39】

【0216】
ステップ5:4,7−ジメチル−5−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−1H−インドール−2,3−ジオン
60℃の濃HSO(3.5mL)に、N−[2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシイミノ−アセトアミド(1.4g、4.36mmol)を撹拌しながら分割して加えた。添加終了後、混合液を75℃に過熱し、この温度で15分間維持した。暗紫色の溶液が形成され、それを砕いた氷上に注いだ。その後固体のNaHCOを加え、pHを8.0に調整した。混合液からCHClで抽出し、乾燥させ(NaSO)、CHCl−ヘキサンから結晶させ、4,7−ジメチル−5−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−1H−インドール−2,3−ジオンを、褐色固体(1.15g、87%)として得た。
【0217】
【化40】

【0218】
実施例14:5−(2−ジエチルアミノ−エチル)−4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリド
【0219】
【化41】

【0220】
【化42】

【0221】
ステップ1.N−[4−(2−ブロモ−アセチル)−2,5−ジメチル−フェニル]−アセトアミド
[0223]ニートのブロモアセチルブロミド 40.11g(198.7mmol)を、無水ジクロロエタン(40mL)中の塩化アルミニウム 34.2g(256.5mmol)の撹拌スラリー中に、0℃で1分間にわたり加え、混合液を氷浴にて乾燥窒素下で1時間撹拌した。熱した無水ジクロロエタン(80mL)中に2,5−ジメチルアセトアニリド 16.624g(101.85mmol)を溶解させることにより調製した溶液を熱いうちに(すばやく、出発物質のアセトアニリド溶液が凝結するのを防ぐため)氷で冷却した塩化アルミニウム混合液中に加え、得られた均一な混合液を0−5℃で90分間(氷浴が融けるまま放置した)、そして5−10℃で30分間の後、10℃から室温でさらに4時間半、窒素下で撹拌した。反応混合液を大きなビーカー内の砕いた氷の上に注ぎ、10分間撹拌した。水相を流して除去し、残っている白色のねばねばした半固体の材料をヘキサン(0.7L)と混合し、混合液を15分間撹拌した。
【0222】
[0224]沈殿物を濾過して集め、多量のヘキサンおよび水で(繰り返し)洗浄し、フリット上に圧縮し、水で再度洗浄し、その後吸引乾燥の後、高真空下で(2日間)乾燥させた。
【0223】
[0225]Y=白色固体 29.08g(100%)。
[0226]材料は、3%の類似のクロロアセチル生成物を不純物として含有していた。
【0224】
【化43】

【0225】
ステップ2:N−[4−(2−ブロモ−エチル)−2,5−ジメチル−フェニル]−アセトアミド
[0228]トリエチルシラン 60mL(375mmol)をトリフルオロ酢酸 360mLに加え、均一な混合液が得られるまで撹拌した(15分)。次にこの混合液を、氷で冷却したフラスコ内の固体のN−[4−(2−ブロモ−アセチル)−2,5−ジメチル−フェニル]−アセトアミド 28.88g(101.64mmol)に加えた。フラスコにDryerite を満たした管(ガスの出口として)で栓をして、混合液を氷浴にて1時間、その後室温で1日の間撹拌した。反応混合液を蒸発させ、得られたどろどろした残渣をヘキサン(0.3L)中に懸濁した。水(100mL)を加え、混合液を約1時間撹拌し、時々振盪させた。形成された沈殿物を濾過して集め、多量のヘキサンおよび水で繰り返し洗浄し、フリット上に圧縮し、吸引乾燥の後、高真空下で乾燥させた。
【0226】
[0229]Y=白色固体 27.30g(99.5%)。
[0230]材料は、出発材料の不純物に由来する3%の類似のクロロアセチル生成物を含有していた。
【0227】
【化44】

【0228】
ステップ3:N−[4−(2−ジメチルアミノ−エチル)−2,5−ジメチル−フェニル]−アセトアミド
[0232]N−[4−(2−ブロモ−エチル)−2,5−ジメチル−フェニル]−アセトアミド 9.00g(33.3mmol)、ジエチルアミン 150mL、およびアセトニトリル(110mL)の混合液を還流(油浴)にて14時間撹拌した。混合液を蒸発させ、得られた固体を水(200mL)に懸濁し、15% NaOH(20mL)で強アルカリとし、混合液を6時間撹拌し、時々振盪させた。固体を濾過して集め、フリット上に圧縮し、水で洗浄し、高真空下で乾燥させた。(これを分画1とした)。
【0229】
[0233]濾液を重炭酸ナトリウム飽和水溶液 100mLで希釈し、酢酸エチル(2×250mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥(硫酸マグネシウム)、蒸発させた。固体残渣を高真空下で乾燥させた。(分画2)。あわせた分画(1+2)を熱したベンゼン(100mL)中に溶かし、得られた濁った溶液をエーテル(200mL)で希釈し、濾過し、さらにエーテル(200mL)で希釈した。撹拌しながら、ジオキサン(20mL)中の4M HClを滴化させながら加え、得られたスラリーを2時間撹拌した。沈殿した固体をすばやく濾過して集め、エーテルですすぎ、高真空下で乾燥させた。
【0230】
この粗アセトアニリド中間体のHCl塩(収量 9.55g、96%)を水(100mL、超音波にて)に溶かし、濁った溶液を濾過して少量の不溶性の不純物を除去した(さらなる水 3×10mLで洗浄した)。濾液を、全容積が約100mLに減量するまで濃縮し、濃塩酸(100mL)を加え、混合液を油浴(170−180℃)にて2時間還流した。反応混合液を蒸発させて乾燥させ、残渣を高真空下で乾燥させた。
【0231】
[0234]Y=淡黄褐色の非常に吸湿性の固体 8.101g(83% 全体で)。
【0232】
【化45】

【0233】
ステップ4:5−(2−ジエチルアミノ−エチル)−4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリド
[0236]N−[4−(2−ジメチルアミノ−エチル)−2,5−ジメチル−フェニル]−アセトアミド.2HCl 8.100g(27.62mmol)、抱水クローラル 5.000g(30.2mmol)および硫酸ナトリウム(無水)36gを、水 100mL中で20分間撹拌した。水 30mL中の塩酸ヒドロキシルアミン 6.25g(90mmol)を加え、混合液を室温で10分間撹拌した後、油浴に入れ、80−85℃で90分間撹拌した。反応混合液を飽和NaCl(250mL)で希釈し、室温で一晩撹拌した。沈殿物を濾過して集め、飽和NaClで洗浄し、吸引乾燥の後、高真空下で一晩乾燥させた。
【0234】
[0237]得られた乾燥した中間体(多少の塩を含有する)を、濃硫酸(96%)および水の、氷で冷却した5:1(v/v)混合液 50mL中に、0.5L広口フラスコ内で10分間にわたり少量ずつ加えた。(HClガスの発生による起沸があった)。冷却用の水浴をはずし、中間体の固まりがすべて溶けるまで混合液を室温で撹拌した(2時間)。次に形成された暗色のどろどろした混合液を油浴にて75−80℃で1時間撹拌した。反応混合液を氷浴にて冷却し、氷(片手1杯分)を加え、続いて10分後に飽和NaCl(450mL)を加えた。濃い紫色の混合液を氷浴にて3時間撹拌した。沈殿した固体を濾過して集め、氷冷飽和NaClで洗浄し、吸引乾燥後、高真空下で乾燥させた。塩を含有する生成物を、無色の材料がすべて抽出されるまで、クロロホルム−無水エタノール 1:1(v/v)混合液 200mLにてソックスレー抽出器で抽出した(油浴、半日還流)。抽出物を室温で一晩放置して結晶させ、沈殿した生成物の第1の分画(4.412g)を濾過して集め、無水エタノールで洗浄し、高真空下で乾燥させた。上清を、少ない容量(約40mL)に濃縮し、再度加熱して還流し、続いて一晩結晶させることにより、第2の分画(1.262g)を集めた。
【0235】
[0238]合わせた収量:オレンジ色結晶固体 5.674g(66% 全体で)
【0236】
【化46】

【0237】
実施例15:4,7−ジメチル−5−(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリド
【0238】
【化47】

【0239】
ステップ1:2,5−ジメチル−4−(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−フェニルアミン
[0240]N−[4−(2−ブロモ−エチル)−2,5−ジメチル−フェニル]−アセトアミド 9.00g(33.3mmol)およびニートのピロリジン 150mLの混合液を70℃で4時間半撹拌した。反応混合液を蒸発させ、残渣を高真空下で乾燥させ、固体を得た。この材料を水(100mL)に溶かし、15% NaOH水溶液(20mL)で処理し、氷浴にて1時間冷却した。沈殿物を濾過して集め、水で洗浄し、高真空下で乾燥させた。(分画1)。濾液を重炭酸ナトリウム飽和水溶液 100mLで希釈し、酢酸エチル(2×250mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥(硫酸マグネシウム)、蒸発させた。固体残渣を高真空下で乾燥させた。(分画2)。
【0240】
[0241]合わせた分画を熱したベンゼン(100mL)中に溶かし、THF(100mL)を加え、エーテル(0.5L)で希釈した。撹拌しながら、ジオキサン(20mL)中の4M HClを滴下させながら加え、得られたスラリーを2時間撹拌した。沈殿した固体を迅速濾過により集め、エーテルですすぎ、高真空下で乾燥させた。
【0241】
[0242]この粗アセトアニリド中間体−HCl塩(9.85g、99.5%)を水に溶かし(70mL、30分間撹拌しながら)、得られた濁った溶液を濾過して少量の不溶性不純物を除去した(さらなる水 3×10mLで洗浄した)。濾液を濃塩酸(100mL)と合わせ、混合液を油浴(170−180℃)にて2時間還流した。反応混合液を乾燥するまで蒸発させ、残渣を高真空下で乾燥させた。
【0242】
[0243]Y=淡褐色の吸湿性の固体 8.53g(88% 全体で)。
【0243】
【化48】

【0244】
ステップ2:4,7−ジメチル−5−(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリド
[0245]2,5−ジメチル−4−(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−フェニルアミン.2HCl 8.35g(29.29mmol)、抱水クローラル 5.293g(32mmol)および硫酸ナトリウム(無水)38gを、水 100mL中に懸濁し、塩酸ヒドロキシルアミン 6.60g(95mmol)および水 40mLを加え、混合液を窒素下、油浴(140−150℃)にて1時間還流した。反応混合液を室温で一晩撹拌し、沈殿した固体を濾過して(洗浄せずに)集め、吸引乾燥の後、高真空下で乾燥させた。得られた中間体を、氷で冷却した濃硫酸(96%)および水の5:1(v/v)混合液 50mL中に、0.5L広口フラスコ内で10分間にわたり少量ずつ加えた。冷却用の水浴をはずし、中間体の固まりがすべて溶けるまで混合液を室温で撹拌した(1時間)。次に形成された濃い色のどろどろした混合液を油浴にて75−80℃で1時間撹拌した。反応混合液を氷浴にて冷却し、氷(片手1杯分)を加え、続いて10分後に飽和NaCl(450mL)を加えた。
【0245】
[0246]この方法の残りの過程は、上の5−(2−ジエチルアミノ−エチル)−4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリドの場合と事実上全く同じであった。
【0246】
[0247]合わせた生成物の収量は角状の赤色結晶固体 4.536g(50% 全体で)であった。
【0247】
【化49】

【0248】
実施例16:4,7−ジメチル−5−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリド
【0249】
【化50】

【0250】
ステップ1:2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−フェニルアミンヒドロクロリド
[0249]N−[4−(2−ブロモ−エチル)−2,5−ジメチル−フェニル]−アセトアミド 9.00g(33.3mmol)およびニートのモルホリン 150mLの混合液を70℃で6時間撹拌した。反応混合液を蒸発させ、残渣を高真空下で乾燥させ、固体を得た。この材料を沸騰している水(50mL)に溶かし、15%NaOH水溶液(20mL)で処理し、氷浴にて3時間冷却した。沈殿物(少量の材料、ほとんど不純物)を濾過して集め、水で洗浄し、捨てた。濾液を重炭酸ナトリウム飽和水溶液 100mLで希釈し、大量の酢酸エチル(8×250mL)で繰り返し抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥(硫酸マグネシウム)、蒸発させた。固体の残渣を高真空下で乾燥させた。材料を還流ベンゼン(100mL)中に溶かし、熱したヘキサン(200mL)で希釈し、室温で一晩撹拌した。
形成された沈殿物を濾過して集め、ヘキサンで洗浄し、高真空下で乾燥させた。(分画1、7.888g)。ベンゼン/ヘキサンの上清を乾燥するまで蒸発させ、残渣を熱したベンゼン(50mL)に溶かし、溶液を熱したヘキサン(150mL)で希釈し、一晩放置して結晶させた。沈殿した材料を濾過して集め、ヘキサンで洗浄し、高真空下で乾燥させた。(分画2、0.570g)
[0250]このアセトアニリド中間体の分画を合わせたもの(1+2)(8.458g、92%)を、水 80mLに溶かし、濃塩酸 80mLを加えた。混合液を油浴(170−180℃)にて3時間還流した。反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、残渣を高真空下で乾燥させた。
【0251】
[0251]Y=薄い黄色の吸湿性の固体 9.343g(92% 全体で)。
【0252】
【化51】

【0253】
ステップ2:4,7−ジメチル−5−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリド
[0253]2,5−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−フェニルアミン.2HCl 8.100g(27.62mmol)、抱水クローラル 5.000g(30.2mmol)および硫酸ナトリウム(無水)36gを、水 100mL中で20分間撹拌した。水 30mL中の塩酸ヒドロキシルアミン 6.25g(90mmol)を加え、混合液を室温で10分間撹拌した後、油浴に入れ、80−85℃で90分間撹拌した。反応混合液を飽和NaCl(250mL)で希釈し、室温で一晩撹拌した。沈殿物を濾過して集め、飽和NaClで洗浄し、吸引乾燥の後、高真空下で一晩乾燥させた。
【0254】
[0254]得られた乾燥した中間体(多少の塩を含有する)を、氷で冷却した濃硫酸(96%)および水の5:1(v/v)混合液 50mL中に、0.5L広口フラスコ内で10分間にわたり少量ずつ加えた。(HClガスの発生による起沸があった)。冷却用の水浴をはずし、中間体のすべての固まりが溶けるまで混合液を室温で撹拌した(2時間)。次に形成された濃い色のどろどろした混合液を油浴にて75−80℃で1時間撹拌した。反応混合液を氷浴にて冷却し、氷(片手1杯分)を加え、続いて10分後に飽和NaCl(450mL)を加えた。濃い紫色の混合液を氷浴にて3時間撹拌した。沈殿した固体を濾過して集め、氷冷飽和NaClで洗浄し、吸引乾燥後、高真空下で乾燥させた。塩を含有する生成物を、無色の材料がすべて抽出されるまで、クロロホルム−無水エタノール 1:1(v/v)混合液 200mLにてソックスレー抽出器で抽出した(油浴、半日還流)。抽出物を室温で一晩放置して結晶させ、沈殿した生成物の第1の分画(4.412g)を濾過して集め、無水エタノールで洗浄し、高真空下で乾燥させた。上清を、少ない容量(約40mL)に濃縮し、再度加熱して還流し、続いて一晩結晶させることにより、第2の分画(1.262g)を得た。
【0255】
[0255]合わせた収量:オレンジ色結晶固体 5.674g(66% 全体で)
【0256】
【化52】

【0257】
実施例17:4−(9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール
【0258】
【化53】

【0259】
[0256]加圧試験管(pressure tube)内で、トリフルオロエタノール(8mL)および水(4mL)の混合液中の、1H−インドール−2,3−ジオン 74mg(0.500mmol)および4−(4,5−ジアミノ−4H−[1,2,4]トリアゾル−3−イルメチル)−フェノール 103mg(0.500mmol)を、125℃で一晩(19時間)撹拌した。混合液を室温に冷却し、3時間放置して結晶させた。沈殿した生成物を濾過して集め、MeOH+水 1:1で、次にMeOHで洗浄し、高真空で乾燥させた。
【0260】
[0257]Y=黄色固体 126mg(79.5%)。
[0258] [類似の平衡する実験を、EtOH(4mL)+水(4mL)+AcOH(0.10mL)の混合液中で行い、同一の生成物 126mg(79.5%)を得た]。
【0261】
【化54】

【0262】
実施例18:4−(5,8−ジクロロ−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール(一般的な環化の方法)
【0263】
【化55】

【0264】
[0262]加圧試験管内で、トリフルオロエタノール(8mL)および水(4mL)の混合液中の、4,7−ジクロロ−1H−インドール−2,3−ジオン 0.60mmol(130mg)および4−(4,5−ジアミノ−4H−[1,2,4]トリアゾル−3−イルメチル)−フェノール 0.65mmol(133.5mg)を、125℃で一晩(16時間)撹拌した。混合液を室温に冷却し、2時間放置して結晶させた。沈殿した生成物を濾過して集め、MeOH+水 1:1で、次に冷却したMeOHで洗浄した。高真空で乾燥させた。
【0265】
[0263]Y=濃い黄色の固体 209mg(90.5%)。
【0266】
【化56】

【0267】
実施例19:4−(5−クロロ−6−メトキシ−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール
【0268】
【化57】

【0269】
[0267]一般的な環化の方法(実施例18に関する)に従って、4−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−2,3−ジオン 127mg(0.6mmol)を調製に使用した。
【0270】
[0268]Y=淡赤色固体 190mg(83%)。
【0271】
【化58】

【0272】
実施例20:4−(5,8−ジクロロ−6−メトキシ−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール
【0273】
【化59】

【0274】
[0272]一般的な環化の方法(実施例18に関する)に従って、4,7−ジクロロ−5−メトキシ−1H−インドール−2,3−ジオン 148mg(0.6mmol)を調製に使用した。
【0275】
[0273]Y=淡赤色固体 239mg(96%)。
【0276】
【化60】

【0277】
実施例21:4−(5−クロロ−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール
【0278】
【化61】

【0279】
[0277]一般的な環化の方法(実施例18に)に従って、4−クロロ−1H−インドール−2,3−ジオン 109mg(0.6mmol)を調製に使用した。
[0278]Y=黄色固体 175mg(83%)。
【0280】
【化62】

【0281】
実施例22:4−(8−クロロ−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール
【0282】
【化63】

【0283】
[0282]一般的な環化の方法(実施例18に関する)に従って、7−クロロ−1H−インドール−2,3−ジオン 109mg(0.6mmol)を調製に使用した。
[0283]Y=黄色固体 195mg(92.5%)。
【0284】
【化64】

【0285】
実施例23:4−(5,6,8−トリクロロ−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール
【0286】
【化65】

【0287】
[0287]一般的な環化の方法(実施例18に関する)に従って、4,5,7−トリクロロ−1H−インドール−2,3−ジオン 150.5mg(0.6mmol)を調製に使用した。
【0288】
[0288]Y=黄色固体 237mg(94%)。
【0289】
【化66】

【0290】
実施例24:4−(5,8−ジメチル−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール、二水和物
【0291】
【化67】

【0292】
[0292]一般的な環化の方法(実施例18に関する)に従って、4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオン 105.5mg(0.6mmol)を調製に使用した。
[0293]Y=淡褐色固体 67.5mg(29.5%)。
【0293】
【化68】

【0294】
実施例25:4−(6,8−ジメチル−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール
【0295】
【化69】

【0296】
[0297]一般的な環化の方法(実施例18に関する)に従って、5,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオン 105.5mg(0.6mmol)を調製に使用した。
[0298]Y=黄色固体 159mg(77%)。
【0297】
【化70】

【0298】
実施例26:4−(6−クロロ−8−メチル−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール
【0299】
【化71】

【0300】
[0302]一般的な環化の方法(実施例18に関する)に従って、5−クロロ−7−メチル−1H−インドール−2,3−ジオン 117.5mg(0.6mmol)を調製に使用した。
【0301】
[0303]Y=黄色固体 201mg(92%)。
【0302】
【化72】

【0303】
実施例27:5,8−ジクロロ−3−(4−フルオロ−ベンジル)−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオリン(一般的な環化の方法)
【0304】
【化73】

【0305】
[0307]加圧試験管内で、トリフルオロエタノール(8mL)および水(4mL)の混合液中の、4,7−ジクロロ−1H−インドール−2,3−ジオン 0.60mmol(130mg)および5−(4−フルオロ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾール−3,4−ジアミン 0.70mmol(145mg)を、125℃で一晩(14時間)撹拌した。混合液を室温に冷却し、2時間放置して結晶させた。沈殿した生成物を濾過して集め、MeOH+水 1:1で、次に冷却したMeOHで洗浄した。高真空下で乾燥させた。
【0306】
[0308]Y=濃い黄色の固体 209mg(90%)。
【0307】
【化74】

【0308】
実施例28:5−クロロ−3−(4−フルオロ−ベンジル)−8−メチル−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン
【0309】
【化75】

【0310】
[0310]一般的な環化の方法(実施例27に関する)に従って、4−クロロ−7−メチル−1H−インドール−2,3−ジオン 0.60mmol(117.5mg)および5−(4−フルオロ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾール−3,4−ジアミン 0.70mmol(145mg)を調製に使用した。
【0311】
[0311]Y=黄色固体 188mg(85.5%)。
【0312】
【化76】

【0313】
実施例29:5,8−ジクロロ−3−(4−フルオロ−ベンジル)−6−メトキシ−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン
【0314】
【化77】

【0315】
[0313]一般的な環化の方法(実施例27に関する)に従って、4,7−ジクロロ−1H−インドール−2,3−ジオン 0.60mmol(148mg)および5−(4−フルオロ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾール−3,4−ジアミン 0.70mmol(145mg)を調製に使用した。
【0316】
[0314]Y=明赤色固体 240mg(96%)。
【0317】
【化78】

【0318】
実施例30:3−(4−フルオロ−ベンジル)−5,8−ジメチル−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン
【0319】
【化79】

【0320】
[0316]一般的な環化の方法(実施例27に関する)に従って、エチレングリコール 2mL中の4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオン 0.60mmol(105mg)および(4−フルオロ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾール−3,4−ジアミン 0.70mmol(145mg)を、125℃で一晩(18時間)撹拌した。混合液を室温に冷却し、水(10mL)で希釈し、15分間撹拌した。沈殿した生成物を濾過して集め、MeOH+水 1:1で洗浄した。高真空で乾燥させた。粗生成物(187mg)を無水エタノール(6mL)中に懸濁し、還流まで加熱し、熱い間に超音波処理し、放置して一晩冷却し、濾過し、氷冷メタノールで洗浄し、濾過して、高真空で乾燥させた。
【0321】
[0317]Y=オレンジがかった褐色の固体 165mg(79.5%)
【0322】
【化80】

【0323】
実施例31:4−(5−クロロ−8−メチル−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル)−フェノール
【0324】
【化81】

【0325】
[0321]一般的な環化の方法(実施例27に関する)に従って、4−クロロ−7−メチル−1H−インドール−2,3−ジオン 0.60mmol(117.5mg)および4−(4,5−ジアミノ−4H− [1,2,4]トリアゾル−3−イルメチル)−フェノール 0.70mmol(144mg)を調製に使用した。
【0326】
[0322]Y=褐色がかった黄色の固体 157mg(71.5%)。
【0327】
【化82】

【0328】
実施例32:5−クロロ−3−(4−フルオロ−ベンジル)−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−6−オル
【0329】
【化83】

【0330】
[0326]実施例30の環化の方法に従って、エチレングリコール 2mL中の、4−クロロ−5−ヒドロキシ−1H−インドール−2,3−ジオン 0.60mmol(118.5mg)および(4−フルオロ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾール−3,4−ジアミン 0.70mmol(145mg)を、125℃で一晩(16時間)撹拌した。
【0331】
[0327]Y=褐色固体 170mg(77%)。
【0332】
【化84】

【0333】
実施例33:5−クロロ−3−(4−ヒドロキシ−ベンジル)−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−6−オル
【0334】
【化85】

【0335】
[0331]実施例30の環化の方法に従って、エチレングリコール 2mL中の、4−クロロ−5−ヒドロキシ−1H−インドール−2,3−ジオン 0.60mmol(118.5mg)および4−(4,5−ジアミノ−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イルメチル)−フェノール 0.70mmol(144mg)を、125℃で一晩(16時間)撹拌した。
【0336】
[0332]Y=淡褐色固体 178mg(81%)。
【0337】
【化86】

【0338】
実施例34:[(3S)−3−アミノ−ピロリジン−1−イル]−[5−クロロ−3−(4−フルオロ−ベンジル) −9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−6−イル]−メタノン
【0339】
【化87】

【0340】
ステップ1.
【0341】
【化88】

【0342】
[0336]4−クロロ−2,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボン酸(114mg、0.51mmol)および5−(4−フルオロ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾール−3,4−ジアミン(105mg、0.51mmol)をエタノール中に溶解した。これを24時間還流した。反応混合液を室温に冷却した。沈殿物を濾過し、エタノールで洗浄した。表題の化合物を良好な純度で得た。
【0343】
【化89】

【0344】
ステップ2.
【0345】
【化90】

【0346】
[0338]5−クロロ−3−(4−フルオロ−ベンジル) −9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−6−カルボン酸(68.5mg、0.17mmol)、ピロリジン−3−イル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(49mg、0.26mmol)、HOBt(38.5mg、0.29mmol)、EDC(46mg、0.24mmol)、およびTEA(57μl、0.41mmol)をDMF(3mL)に溶解した。これを24時間室温で撹拌した。DMFを除去し、ジクロロメタンを加えた。これを飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトトロン(ジクロロメタン中の15%メタノール)により精製した。
【0347】
[0339]BOC基を、ジクロロメタン中の10% TFAにて切断した。溶媒を除去し、残渣を凍結乾燥した。表題の化合物をふわふわした黄色固体として得た(59%)。
【0348】
【化91】

【0349】
実施例35:4−[5,8−ジメチル−6−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル]−フェノール
【0350】
【化92】

【0351】
[0341]エタノール(15mL)中の4,7−ジメチル−5−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−1H−インドール−2,3−ジオン(121.6mg、0.4mmol)および4−(4,5−ジアミノ−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イルメチル)−フェノール(82mg、0.4mmol)を、加圧試験管内で120℃で72時間、撹拌しながら加熱した。溶媒を除去し、残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl:MeOH:NHOH=100:7:0.7)にて精製し、表題の化合物をピンク色の固体として得た(50mg、27%)。
【0352】
【化93】

【0353】
実施例36:3−(4−フルオロ−ベンジル) −5,8−ジメチル−6−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオリン
【0354】
【化94】

【0355】
[0343]試薬の1つとして5−(4−フルオロ−ベンジル)−[1,2,4]トリアゾール−3,4−ジアミンを用いて、実施例36の方法に類似する反応により、3−(4−フルオロ−ベンジル) −5,8−ジメチル−6−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオリン(28%)をピンク色の固体として得た。
【0356】
【化95】

【0357】
実施例37:4−[6−(2−ジメチルアミノ−エチル)−5,8−ジメチル−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル]−フェノールヒドロクロリド
【0358】
【化96】

【0359】
[0345]エチレングリコール 1.5mL中の、5−(2−ジメチルアミノ−エチル)−4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリド 0.60mmol(186.5mg)および4−(4,5−ジアミノ−4H− [1,2,4]トリアゾル−3−イルメチル)−フェノール 0.70mmol(144mg)を、125℃で1日の間撹拌した。混合液を室温に冷却し、水(5mL)で希釈し、10分間撹拌した。冷蔵庫内(+5℃)で一晩放置して結晶させた。沈殿した生成物を濾過して集め、水(3×1mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させた。
【0360】
[0346]Y=褐色がかったオレンジ色の固体 206mg(71.5%)。
【0361】
【化97】

【0362】
実施例38:4−[5,8−ジメチル−6−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル]−フェノールヒドロクロリド
【0363】
【化98】

【0364】
[0350]実施例37の方法に従って、エチレングリコール 1.5mL中の5−(N−モルホリノ−2−エチル)−4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオン 0.60mmol(195mg)および4−(4,5−ジアミノ−4H− [1,2,4]トリアゾル−3−イルメチル)−フェノール 0.70mmol(144mg)を、125℃で1日の間撹拌した。Y=ベージュ色の固体 207.5mg(70%)。
【0365】
【化99】

【0366】
実施例39:4−[5,8−ジメチル−6−(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−3−イルメチル]−フェノールヒドロクロリド
【0367】
【化100】

【0368】
[0354]実施例37の方法に従って、エチレングリコール 1.5mL中の5−(N−ピロリジノ−2−エチル)−4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオン 0.60mmol(185.5mg)および4−(4,5−ジアミノ−4H− [1,2,4]トリアゾール−3−イルメチル)−フェノール 0.70mmol(144mg)を、125℃で1日の間撹拌した。Y=ベージュ色の固体 191mg(66.5%)。
【0369】
【化101】

【0370】
実施例40:3−(4−フルオロ−ベンジル)−5,8−ジメチル−6−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオリンヒドロクロリド
【0371】
【化102】

【0372】
[0358]実施例37の方法に従って、エチレングリコール 1.5mL中の5−(N−モルホリノ−2−エチル)−4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリド 0.60mmol(195mg)および(4−フルオロ−ベンジル)− [1,2,4]トリアゾール−3,4−ジアミン 0.70mmol(145mg)を、125℃で1日の間撹拌した。
【0373】
[0359]Y=オレンジ色の固体 149mg(50%)。
【0374】
【化103】

【0375】
実施例41:3−(4−フルオロ−ベンジル)−5,8−ジメチル−6−(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオリンヒドロクロリド
【0376】
【化104】

【0377】
[0362]実施例37の方法に従って、エチレングリコール 1.5mL中の5−(N−ピロリジノ−2−エチル)−4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリド 0.60mmol(185.5mg)および(4−フルオロ−ベンジル)− [1,2,4]トリアゾル−3,4−ジアミン 0.70mmol(145mg)を、125℃で1日の間撹拌した。
【0378】
[0363]Y=オレンジ色の固体 87mg(30%)。
【0379】
【化105】

【0380】
実施例42:ジエチル−{2−[3−(4−フルオロ−ベンジル) −5,8−ジメチル−9H−1,2,3a,4,9,10−ヘキサアザ−シクロペンタ[b]フルオレン−6−イル]エチル}−アミンヒドロクロリド
【0381】
【化106】

【0382】
[0367]エチレングリコール 1.5mL中の5−(N,N−ジエチルアミノ−2−エチル)−4,7−ジメチル−1H−インドール−2,3−ジオンヒドロクロリド 0.60mmol(186.5mg)および(4−フルオロ−ベンジル)− [1,2,4]トリアゾール−3,4−ジアミン 0.70mmol(145mg)を、125℃で1日の間撹拌した。混合液を室温に冷却し、水(5mL)で希釈し、ニートのジエチルアミン 0.5mLを加えた。3時間撹拌し、沈殿物を濾過して集め、水で洗浄し、高真空下で乾燥させた。得られたフリーの塩基を水(10mL)に懸濁し、2M HCl 0.5mLを加え、熱して沸騰させ、熱いうちに手早く超音波処理した後、冷蔵庫内(+5℃)に一晩放置して結晶させた。沈殿物を濾過して集め、氷冷水(2×1mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させた。
【0383】
[0368]Y=オレンジ色がかったベージュ色の固体 172mg(59.5%)。
【0384】
【化107】

【0385】
生物学的実施例
[0372]以下のアッセイを使って、これらの化合物が至適な程度の所望の活性を示すことを見出した。
【0386】
(アッセイの方法)
[0373]以下のアッセイを使用して、1つまたはそれより多くのPKにおける本発明の異なる化合物の活性および効果のレベルを決定してよい。同様のアッセイを、当業界に周知の技術を用いて、あらゆるPKに関して同一のラインに沿ってデザインすることができる。
【0387】
[0374]本明細書に記載する幾つかのアッセイは、ELISA(酵素結合免疫吸着サンドイッチ検定法)のフォーマット(Voller, et al., 1980, “Enzyme-Liked Immunosorbent Assay,” Manual of Clinical Immunology, 2d ed., Rose and Friedman, Am. Soc. Of Microbiology, Washington, D.C., pp. 359-371)において行う。この一般的な方法は以下の通りである:検査するキナーゼを天然にまたはリコンビナント的にのいずれかにより発現する細胞に、検査するキナーゼが受容体であれば、その受容体を活性化することが知られているリガンドを加えた後、選択された時間の間、化合物を導入する。細胞を溶解させ、酵素のリン酸化反応の基質を認識する特異的な抗体で予めコーティングしたELISAプレートのウェルに、溶解物を移す。細胞の溶解物の基質以外の成分を洗い流し、基質上のリン酸化の量を、検査化合物と接触させなかったコントロールの細胞と比較して、ホスホチロシンを特異的に認識する抗体を用いて検出する。
【0388】
[0375]特定のPKに関するELISAの実験を行うための現時点での好ましいプロトコルを以下に提供する。しかし他のRTK、ならびにCTKおよびSTKに対する化合物の活性を決定するためにこれらのプロトコルを適用することは、十分に当業者の知識の領域内である。本明細書に記載するその他のアッセイは、検査するキナーゼの活性化に応答して産生されるDNAの量を測定するが、この方法は増殖応答の一般的な方法である。このアッセイのための一般的な方法は以下の通りである:検査するキナーゼを天然にまたはリコンビナント的にのいずれかにより発現する細胞に、検査するキナーゼが受容体であれば、その受容体を活性化することが知られているリガンドを加えた後、選択された時間の間、化合物を導入する。少なくとも一晩インキュベーションの後、DNAを標識する試薬、例えば5−ブロモデオキシウリジン(BrdU)またはH−チミジンを加える。標識されたDNAの量を、抗BrdU抗体を用いて、または放射能を測定することによるいずれかにより検出し、検査化合物と接触させなかったコントロールの細胞と比較する。
【0389】
[METリン酸基転移アッセイ]
[0376]本アッセイを使用して、ポリ(グルタミン酸:チロシン(4:1))基質のホスホチロシンのレベルを、基質のmetリン酸基転移のアゴニスト/アンタゴニストを同定するための手段として測定する。
【0390】
材料および試薬:
1.Corning 96ウェル Elisaプレート(Corning Catalog # 25805-96)。
2.ポリ(glu, tyr)4:1(Sigma, Cat. No; P 0275)。
3.PBS(Gibco Catalog # 450-1300EB)。
4.50mM HEPES
5.ブロッキングバッファー:PBS 500ml中にウシ血清アルブミン(Sigma Cat. No A-7888)25gを溶解し、4μmフィルターを通す。
6.Metキナーゼドメインを含有する精製GST融合タンパク質(Sugen, Inc.)。
7.TBSTバッファー
8.10% DMSO水溶液(MilliQue HO)。
9.10mM アデノシン−5’−トリホスフェート水溶液(dHO)(Sigma Cat. No. A-5394)。
10.2×キナーゼ希釈バッファー:100mLに対して、dHO 88.4mL中に、1M HEPES pH7.5 10mLを、5% BSA/PBS 0.4mL、0.1M オルトバナジン酸ナトリウム 0.2mL、および5M 塩化ナトリウム 1mLと混合。
11.4×ATP 反応混合液:10mLに対して、dHO 9.56mL中に、1M 塩化マンガン 0.4mLおよび0.1M ATP 0.02mLを混合。
12.4×ネガティブコントロール混合液:10mLに対して、dHO 9.6mL中に、1M 塩化マンガン 0.4mLを混合。
13.NUNC96ウェルV底ポリプロピレンプレート(Applied Scientific Catalog # S-72092)。
14.500mM EDTA。
15.抗体希釈バッファー:100mLに対して、5% BSA/PBS 10mL、PBS中の5% Carnation Instant Milk(登録商標)0.5mL、および88.4mL TBST中の0.1M オルトバナジン酸ナトリウム 0.1mLを混合。
16.ウサギポリクローナル抗ホスホチロシン抗体(Sugen, Inc.)。
17.ヤギ抗ウサギセイヨウワサビオキシダーゼを複合させた抗体(Biosource, Inc.)。
18.ABTS溶液:1Lに対して、クエン酸 19.21g、NaHPO 35.49gおよびABTS 500mgを、十分量のdHOと混合して1Lとする。
19.ABTS/H:使用5分前に、ABTS溶液 15mLを2μL Hと混合。
20.0.2M HCl
【0391】
方法:
1.ELISAプレートを、PBS 100μL中のポリ(Glu−Tyr)2μgでコーティングし、4℃で一晩保存する。
2.プレートを、5% BSA/PBS 150μLで60分間ブロックする。
3.プレートをPBSで2回、50mM Hepesバッファー pH7.4で1回洗浄する。
4.希釈したキナーゼ 50μlをすべてのウェルに加える。(精製キナーゼをキナーゼ希釈バッファーで希釈する。最終濃度を10ng/ウェルとしなければならない。)
5.検査化合物(4% DMSO中)、またはコントロール用のDMSOのみ(4% dHO中)25μLをプレートに加える。
6.キナーゼ/化合物の混合物を15分間インキュベーションする。
7.40mM MnCl 25μLをネガティブコントロールのウェルに加える。
8.ATP/MnCl混合液 25μLを(ネガティブコントロールを除く)すべての他のウェルに加える。5分間インキュベーションする。
9.500mM EDTA 25μLを加えて、反応を止める。
10.プレートをTBSTで3回洗浄する。
11.抗体希釈バッファー中に1:10,000に希釈したウサギポリクローナル抗Ptyr 100μLを各ウェルに加える。振盪しながら室温で1時間インキュベーションする。
12.TBSTでプレートを3回洗浄する。
13.HRPを複合させた抗ウサギ抗体 (Biosource)を、抗体希釈バッファー中に1:6,000に希釈する。1ウェルあたり100μL加え、室温で振盪させながら1時間インキュベーションする。
14.プレートをPBSで1回洗浄する。
15.ABTS/H溶液 100μlを各ウェルに加える。
16.必要であれば、1ウェルあたり0.2M HCl 100μlを加えて、反応の展開を止める。
17.Dynatech MR7000 ELISAリーダーにて、410nMでの検査用フィルター、630nMでのリファレンスフィルターにて、プレートを読み取る。
【0392】
MET リン酸基転移アッセイの結果
[0377]表1は、本発明の好ましい態様の多数の化合物から得られたIC50の値を示す。
【0393】
【表1−1】

【0394】
【表1−2】

【0395】
【表1−3】

【0396】
[0378]本発明を十分に適合させて、目的を実行し、記述された結果および利点、ならびに本明細書に固有の結果および利点を得ることについて、当業者は容易に理解するだろう。本明細書に記載された分子の複合体およびその方法、手順、治療、分子、具体的な化合物は、現時点での好ましい態様の典型であり、代表例であり、したがって本発明の領域を限定するものとして意図しているのではない。本発明の精神の範囲内に包括的に含まれ、主張の領域により定義されるそれらにおける変更およびその他の使用を、当業者は思いつくことだろう。
【0397】
[0379] 本発明の領域および精神から離れずに、置換および修飾の変更を本明細書に開示された本発明に対して行ってもよいことは、当業者には容易に明らかとなるだろう。
[0380]本明細書に記述されたすべての特許および公開は、本発明の属する当業者のレベルを示すものである。すべての特許および公開は、個々の各公開について参照として援用することを具体的におよび個別に示したかのように同程度に、本明細書において参照として援用する。
【0398】
[0381]本明細書において説明的に記載された本発明は、本明細書に具体的に開示されていないいずれかの1つまたは複数の要素、すなわちいずれか1つまたは複数の限定なしに、適切に実行してもよい。したがって例えば本明細書の各事例において、“包含する”“本質的に〜から成る”および“〜から成る”といういずれの用語も、他の2つの用語のいずれかに替えてよい。使われた用語および表現は限定するのではなく、記載する用語として使用されており、示され記載された特色のあらゆる均等物またはそれらの一部を除外するそのような用語および表現の使用の意図はないが、主張された本発明の領域の範囲内で多様な修飾が可能であることものと認識する。したがって本発明は、好ましい態様、および所望による特色により具体的に開示しているが、本明細書に開示された概念の修飾および変更を当業者が行ってもよく、そのような修飾および変更は、本発明の領域の範囲内であるとみなすことと、理解されなければならない。
【0399】
[0382]加えて、本発明の特色または側面がマーカッシュの群の用語において記載される場合、当業者は、本発明はまたそれによりマーカッシュの群のあらゆる個々のメンバーまたはメンバーの亜群の用語にて記載されることと、認識するだろう。例えばXが、臭素、塩素およびヨウ素から成る群より選択されると記載される場合、Xが臭素であるという主張、ならびにXが臭素および塩素であるという主張が、完全に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

式中:
はアリール基またはヘテロアリール基であり、前記のアリール基もしくはヘテロアリール基は置換されていない、または所望によりハロゲン、−OH、−OR、−COR、−COOR、−CONR、−NR、−CN、−NO、−S(O)、−SONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、およびアリールから成る群より選択される1つもしくはそれより多くの置換基で置換される;
各RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、−OH、−OR、−NR、−CN、−COR、−COOR、−CONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、およびアルキニルから成る群より選択される;または
およびRはそれらの結合する炭素原子と共に、シクロアルキルまたは複素環を形成することができる;
、R、R、およびRは独立して、水素、ハロゲン、−OR、−COR、−COOR、−CONR、−NR、−CN、−NO、−S(O)(式中nは0、1または2である)、−SONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、およびアリールから成る群より選択される;そして
各RおよびRは独立して、水素、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキルから成る群より選択される、またはRおよびRはそれらの結合する原子と共に、所望によりアルキル、−OHおよびアミノから成る群より選択される基で置換された脂環式複素環を形成する;そして
pは1、2、3、4または5であり、pが1より大きな整数である場合、各炭素原子上のRおよびRの基は、あらゆる隣接する炭素原子上のRおよびRの基と同じでも、または異なっていてもよいと理解される;あるいは
医薬的に受容可能なその塩。
【請求項2】
pが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記フェニル基が1つの−OH基または1つのハロ基で置換されている、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
式IIの化合物:
【化2】

式中:
各R10は独立して、ハロゲン、−OH、−OR、−COR、−COOR、−CONR、−NR、−CN、−NO、−S(O)、−SONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、およびアリールから成る群より選択される;
qは1、2、3、4または5である;
Gは窒素または炭素である;
各RおよびRは独立して、水素、ハロゲン、−OH、−OR、−NR、−CN、−COR、−COOR、−CONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、およびアルキニルから成る群より選択される;または
およびRはそれらの結合する炭素原子と共に、シクロアルキルまたは複素環を形成することができる;
、R、R、およびRは独立して、水素、ハロゲン、−OR、−COR、−COOR、−CONR、−NR、−CN、−NO、−S(O)(式中nは0、1または2である)、−SONR、−CF、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、およびアリールから成る群より選択される;そして
各RおよびRは、水素、低級アルキル、シクロアルキル、複素環、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、およびジアルキルアミノアルキルから成る群より選択される、またはRおよびRはそれらの結合する原子と共に、所望によりアルキル、−OHおよびアミノから成る群より選択される基で置換された脂環式複素環を形成する;そして
pは1、2、3、4または5であり、pが1より大きな整数である場合、各炭素原子上のRおよびRの基は、あらゆる隣接する炭素原子上のRおよびRの基と同じでも、または異なっていてもよいと理解される;あるいは
医薬的に受容可能なその塩。
【請求項6】
可変部pが1である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
10が−OHまたはハロであり、qが1である、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
可変部Gが窒素である、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
以下から成る群:
【化3】

【化4】

より選択される化合物、または医薬的に受容可能なその塩。
【請求項10】
【化5】

である化合物。
【請求項11】
c−Metに関連する障害に罹っている被験者に、請求項1に記載の化合物の治療有効量を投与することを包含する、c−Metに関連する障害を治療するための方法。
【請求項12】
c−Metに関連する障害が癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、神経膠腫、肝臓癌、胃癌、頭部の癌、頸部の癌、黒色腫、腎臓癌、白血病、骨髄腫、および肉腫から成る群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1の化合物または医薬的に受容可能なその塩、および医薬的に受容可能な担体または賦形剤を包含する医薬組成物。

【公表番号】特表2007−521299(P2007−521299A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518721(P2006−518721)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/020929
【国際公開番号】WO2005/004808
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(598009739)スージェン・インコーポレーテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】SUGEN,INC.
【住所又は居所原語表記】230 East Grand Avenue,South San Francisco,California 94080,United States of America
【Fターム(参考)】