説明

invivoでのニューロン特異的な最適化された連続DOPA合成用の新規ウイルスベクター構築物

【課題】
【解決手段】本発明は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)及びGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)といった2つのポリペプチドをコードする配列を含む1ベクター発現系に関する。2つのポリペプチドは、3:1乃至15:1、例として3:1乃至7:1の比で選択的に発現させることができる。本発明は、限定はされないが、パーキンソン病を含むドーパミン欠乏障害等、カテコールアミン欠乏障害の治療に有用である。更に、本発明は、カテコールアミンの生産増加を制限するために、必要とする細胞へ、ベクター構築物を送達する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国仮出願第61/259,502号に基づく優先権を主張する国際出願である。本願において引用した全ての特許及び非特許文献は、出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、ウイルスベクター構築物、特に、標的細胞において差次的に発現されるべき2つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単一rAAVベクター構築物に関する。本発明は、更に、前記ベクターを含む医薬組成物及びヒトの脳組織への送達と、カテコールアミン機能不全に関連する病気の治療のための前記ベクターの医学的使用とに関する。特に、本発明は、パーキンソン病及び関連障害等、ドーパミン欠乏に関連する疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病は、年齢30歳以上の人々に影響を及ぼしている。発病の平均年齢は、約60歳である。主要な臨床症状は、固縮、運動緩慢、及び静止振戦である。加えて、この疾患は、低血圧、認知障害、姿勢動揺、その他多くの様々な症状を示す場合がある。
【0004】
この疾患は、主に、脳内の黒質線条体ドーパミン作動系(ドーパミン(DA)を信号伝達物質として使用する神経細胞であり、被殻及び尾状核へ向けて突出する脳幹の黒質に位置する)の変性により生じる大脳基底核障害である。
【0005】
現在の治療標準は、L-DOPA(脳内でドーパミンに転換する)又は他のドーパミン受容体刺激剤の添加によるドーパミンの置換に基づいている。ドーパミン欠乏の置き換えを目的とした現在の治療戦略は、疾患の初期段間(7年から10年まで)において非常に有効となる場合が多いが、最終的に殆どの患者では治療反応が減少し、有害事象が増加し始める。これらの最も大きな問題は、現在の選択薬、L-DOPA、又はドーパミン作動薬による治療の結果として現れるL-DOPA誘発性ジスキネジアである。パーキンソン病の患者は、近年の治療の向上により、更に長きにわたって疾患と共に生きる傾向にあるため、L-DOPA誘発性ジスキネジアは、特に疾患が早発した患者にとって、深刻化する問題を引き起こす。現在、ジスキネジアには治療の選択肢が少なく、更にこれらは複雑である場合が多く、利用機会が制限されている。
【0006】
パーキンソン病の前臨床動物モデルにおいて試験されている1手法は、ドーパミン欠乏が最も進行する被殻及び尾状核における局所的ドーパミン置換を達成するために、遺伝子治療手法を用いて、古典的な薬理的ドーパミン置換戦略を改良することである。この手法は、「酵素補充療法」と呼ばれる。この治療の理論的根拠は、経口L-DOPA投薬により誘発される重度の異常不随意運動(即ち、ジスキネジア)を、静脈経路又は十二指腸経路を介して注入したL-DOPA又はDA作動薬により軽減可能であることを示唆した、パーキンソン病(PD)患者における臨床観察に由来する。したがって、現在の仮説では、ジスキネジアは、少なくとも部分的には、経口L-DOPA送達のパラダイムにより生じるDAの断続的な拍動性の供給により発生する。こうした患者には、連続的なDA刺激、更には、「オフ」状態で過ごす合計時間の劇的な減少が有効となる。
【0007】
ドーパミンの生産には3種類の酵素、即ち、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)、及び芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)が必要となる。最初の2種は、チロシン(食事由来のアミノ酸)からのL-DOPAの生産を調節する一方、AADCは、L-DOPAをドーパミンに転換する。これらの酵素は、何れもドーパミン作動性ニューロンに特有のものではなく、非ドーパミン作動性細胞にも存在し得る。こうした酵素の除神経標的領域への添加により、L-DOPA又はドーパミンの生産を局所的に発生させることができる。この戦略の利点は、L-DOPAの血漿レベル(及び更に脳レベル)が変動する従来の経口療法と比較して、L-DOPAの一定した生産をもたらすこととなり得る。更に、置換を必要とする脳領域に対する治療を局所化する一方、身体の他の部分は「治療」されない状態として、好ましい効果対副作用比をもたらす。
【0008】
この手法を使用した公開済み前臨床データでは、以下の観察結果が提供されている。
【0009】
1. 複数のrAAVベクターを用いた形質導入により3種類全ての遺伝子の発現を被殻及び尾状核において得ることができる[Kaplitt MG, et al: Long-term gene expression and phenotypic correction using adeno-associated virus vectors in the mammalian brain; Nat Genet 1994 8 148-54; Mandel RJ, et al: Characterization of intrastriatal recombinant adeno-associated virus-mediated gene transfer of human tyrosine hydroxylase and human GTP-cyclohydrolase I in a rat model of Parkinson's disease; J Neurosci 1998 18 4271-84; Shen Y, et al: Triple transduction with adeno-associated virus vectors expressing tyrosine hydroxylase, aromatic-L-amino-acid decarboxylase, and GTP cyclohydrolase I for gene therapy of Parkinson's disease; Hum Gene Ther 2000 11 1509-19]。
【0010】
2. THの効率は、(補助因子テトラヒドロビオプテリン、BH4を生産する)GCH1に依存する。Mandel及び共同研究者は、マイクロダイアリシスを用いてL-DOPAのレベルを測定することによりこれを証明した[Mandel RJ, et al: Characterization of intrastriatal recombinant adeno-associated virus-mediated gene transfer of human tyrosine hydroxylase and human GTP-cyclohydrolase I in a rat model of Parkinson's disease; J Neurosci 1998 18 4271-84]。
【0011】
3. パーキンソン病のサルモデル(MPTPモデル)において、AADCの発現は、より有効な経口L-DOPAの転換をもたらし、この機構により、サルUPDRS運動スコアにおいて機能を改善することができる(UPDRSは、パーキンソン症状の標準臨床評価尺度である)[Bankiewicz KS, et al: Long-term clinical improvement in MPTP-lesioned primates after gene therapy with AAV-hAADC; Mol Ther 2006 14 564-70]。
【0012】
4. 三種類全ての遺伝子の発現は、パーキンソン病のラットモデル[Shen Y, et al: Triple transduction with adeno-associated virus vectors expressing tyrosine hydroxylase, aromatic-L-amino-acid decarboxylase, and GTP cyclohydrolase I for gene therapy of Parkinson's disease; Hum Gene Ther 2000 11 1509-19]及びサルモデル[Muramatsu S, et al: Behavioral recovery in a primate model of Parkinson's disease by triple transduction of striatal cells with adeno-associated viral vectors expressing dopamine-synthesizing enzymes. Hum Gene Ther 2002 13 345-54]の両方において機能改善が可能である。
【0013】
5. TH及びGCH1の発現は、パーキンソン病のラットモデルにおける機能改善が可能な線条体L-DOPAレベルを得る上で十分であり、更に、L-DOPA誘発性ジスキネジアを大幅に低減することができる[Kirik D, et al: Reversal of motor impairments in parkinsonian rats by continuous intrastriatal delivery of L-dopa using rAAV-mediated gene transfer; Proc Natl Acad Sci 2002 99 4708-13; Carlsson et al: Reversal of dyskinesias in an animal model of Parkinson's disease by continuous L-DOPA delivery using rAAV vectors; Brain 2005 128 559-69]。しかしながら、これらの研究は、共に大きな合成プロモーター(サイトメガロウイルスプロモーターからのエンハンサー要素により始まる、ウサギγグロブリンイントロンを含むニワトリβアクチンプロモーターで、ニワトリβアクチンCBAプロモーターと呼ばれる)の制御下にあるGCH1遺伝子又はTH遺伝子をそれぞれ含む、2つの別個のAAV血清型2のベクターを用いて実施された。そのため、2遺伝子の発現比を細胞レベルで制御することが可能な方法は存在せず、発現をニューロンに限定することが可能なプロモーターも存在しない。
【0014】
本発明の分野における現在の技術水準に関して、Sun et al (2004)は、それぞれニューロン特異的なプロモーターにより調節される2つの転写単位を有する非AAVウイルス発現ベクターを記述している。2つの単位の転写の相対レベルは記述されていない。in vitroでは、三遺伝子及び四遺伝子ベクターの両方により形質導入した時、TH及びGCH-1を発現する細胞は同程度の量で存在する。何れの場合も、TH及びGCH-1は、異なる転写産物上に存在する。四遺伝子ベクターGCH-1は、IRES部位(VMAT-2のORFの後)から翻訳される。
【0015】
Shen et al 2000は、AAV-TH、AAV-AADC、及びAAV-GCH-1によるHEK-293細胞の同時形質導入を記述している。用量設定研究において、293細胞を、AAV-TH、AAV-AADC、及び様々な量のAAV-GCH-1により形質導入した。結果では、AAV-GCH-1の力価の増加と共に、L-DOPA及びドーパミンの両方が増加している。AAVGCH-1は、AAV-THと同じ力価となるまで試験された。記述された比は、1:10、1:2、及び1:1である(AAV-GCH-1:AAV-TH)。In vivoの遺伝子治療は、2つのベクターの比を1:1として実施された(AAV-AADC存在下及び非存在下)。
【0016】
Kirik et al, 2002及びCarlsson et al 2005は、AAV-THの力価がAAV-GCH-1の力価の略3.5倍(比1:3.5)となるAAV-TH及びAAV-GCH-1の1:1混合物の同時投与を記述している。これらの参考文献には、この比を使用した理由は記載されていない。
【0017】
US 7,419,829 (Oxford Biomedica)は、突然変異WPRE要素と、IRES配列により分離されたTH、AADC、及びGCH-1を有する三遺伝子ベクター(EIAV)におけるその使用とを記述している。WPRE要素は、三遺伝子の発現を同程度まで促進する。
【0018】
WO 96/05319 (Arch Development)は、上流及び下流のシストロンの発現を制御するIRES部位又は5’レトロウイルスLTR内のプロモーターを有するジシストロニックベクターを記述している。線維芽細胞による二重形質導入実験において、242.6pmol/mg/分のTH活性及び35.8pmol/mg/分のGCH1活性が開示されている。これは、活性を基準とした、2つの酵素間での1:6.8の比に変換される。加えて、同文献は、最大のTH活性を達成するために最適なBH4濃度(500QM)を記述している。TH形質導入細胞におけるL-DOPA濃度は、50QM超のBH4において最大となり、より高濃度のBH4では更に増加しなかった。
【0019】
言及した参考文献の中で、TH及びGCH-1の両方をコードする構築物を備えたAAVベクターを記述したものはない。TH及びGCH-1の両方をコードする先行技術における全ての1ベクター系は、かなり大きな核酸断片を含むウイルスベクターにおいて作成されていた。先行技術の殆どの1ベクター系は、AADCをコードする発現構築物を更に含む。AAVベクターは、HSV、EIAV、及びレトロウイルスに基づく1ベクター系に対して、臨床目的での利点をもたらす。加えて、AADCの欠如も、形質導入細胞においてDAではなくL-DOPAの発生につながることから、従来技術に対する利点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】WO 96/05319
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Kaplitt MG, et al, Long-term gene expression and phenotypic correction using adeno-associated virus vectors in the mammalian brain. Nat Genet (1994) 8 pp.148-54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、現在の治療戦略が不十分である、或いは現在の治療が重篤な副作用に関連する、及び/又は治療を受けた個人が前記治療に対する抵抗を示す障害を治療するための新規の分子ツールを開発することである。更に具体的には、本発明は、カテコールアミン生合成に関与し、そのため、必要とする対象者において正常なカテコールアミンバランスを回復する方法において有用となる酵素のレベルを調節する、新規の発現構築物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
特に、本発明は、神経障害、好ましくは、患者の大部分が長期の治療中に治療反応の減少と有害事象の増加とを経験する、治癒不能な変性神経障害の治療方法における、前記発現構築物の使用に関する。
【0024】
本発明は、主に、現在の治療戦略ではL-DOPA又は他のドーパミン受容体刺激剤の投与が含まれる、パーキンソン病の治療に関する。現在の治療は、特に疾患の早期段階において有効であるが、長期の治療中に、殆どの患者は、L-DOPA誘発性ジスキネジアを発症する。ジスキネジアの発症は、L-DOPA又は他のドーパミン受容体刺激剤の非連続的な送達に関連すると考えられている。本発明の主な目的は、特にパーキンソン病の治療に必要となる化合物を、必要な場所に局所的に、任意の悪影響を減少させる連続的な割合で供給することにより、現在の治療を改良することである。
【0025】
本発明は、中枢神経系に局所的に投与すべき、2つのポリペプチドをコードする2つのポリヌクレオチドを備える、1ベクター発現系に関し、前記ベクター発現系は、所定の神経障害の最適な治療に必要となる発現ポリペプチドの正確な割合を得るために2つのコードされたポリペプチドを差次的に発現することができる。
【0026】
第1の態様において、本発明は、1ベクター発現系であって、
a)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まないことを条件とする、第1及び第2の発現カセット、又は
b)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である、第1及び第2の発現カセット、又は
c)プロモーター、第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記プロモーターは、前記第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結され、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする、発現カセット、又は
d)第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合し、前記第2のヌクレオチド配列に結合された前記翻訳開始ヌクレオチド配列に結合された前記第1のヌクレオチド配列を含む配列は、5’及び3’末端反復に隣接し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記末端反復は、作動可能に連結されたポリペプチドの発現を指揮することが可能な配列を含む、発現カセット、を備える、1ベクター発現系に関する。
【0027】
別の態様において、本発明は、1ベクター発現系であって、
a)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されたポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されたポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まないことを条件とする、第1及び第2の発現カセット、又は
b)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されたポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されたポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である、第1及び第2の発現カセット、又は
c)プロモーター、第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記プロモーターは、前記第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結され、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されたポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されたポリペプチドと少なくとも70%同一である、発現カセット、又は
d)第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合し、前記第2のヌクレオチド配列に結合された前記翻訳開始ヌクレオチド配列に結合された前記第1のヌクレオチド配列を含む配列は、5’及び3’末端反復に隣接し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されたポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されたポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記末端反復は、作動可能に連結されたポリペプチドの発現を指揮することが可能な配列を含む、発現カセット、を備える、1ベクター発現系に関する。
【0028】
特定の実施形態において、ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)にすることができる。好適な実施形態において、本発明は、コードされたポリペプチドの差次的発現を調節するために、ベクター構築物内に、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)等の調節要素を含む。特定の実施形態において、ポリペプチドの差次的発現は、意図されたパーキンソン病治療用のDOPAが連続的に巡るために利点を有する。更に、前記ベクターを、哺乳類細胞、好ましくは神経細胞において、機能させる上で有利となり得る。
【0029】
2つ以上のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの差次的発現が可能な1ベクター構築物は、2つ以上のポリペプチド間での特定のストイキオメトリが望ましい他の障害の治療等、他の用途にも有用となる場合がある。
【0030】
他の態様において、本発明は、GTPシクロヒドロキシラーゼ1ポリペプチド(SEQ ID NO.1、2、3、4、5、及び6)及びチロシンヒドロキシラーゼポリペプチド(SEQ ID NO.7、8、9、10、11、12、13、及び14)それぞれの、又はその変異体の、発現比を決定する方法であって、前記ポリペプチドは、本明細書に定めるベクターによりコードされ、
a.ポリペプチドの酵素活性、又は
b.生産されたBH4の量、又は
c.前記ポリペプチドの発現量、又は
d.GTPシクロヒドロキシラーゼ1ポリペプチド及びチロシンヒドロキシラーゼのポリペプチドにそれぞれ対応する転写mRNAのレベル、を測定することを備える方法に関する。
【0031】
本発明の特定の実施形態において、前記比は、好ましくは、発現mRNAの量を決定すること、より好ましくは、発現したタンパク質の量を決定すること、又は発現したTH(チロシンヒドロキシラーゼ)及びGCH1(GTPシクロヒドロキシラーゼ1ポリペプチド)酵素の活性を決定することにより測定される。発現したTH及びGCH1酵素の比は、15:1乃至1:1、好ましくは10:1乃至3:1、より好ましくは8:1乃至3:1、より好ましくは7:1乃至4:1、例としてより好ましくは7:1乃至5:1、例えば6:1である(図3において詳述)。
【0032】
別の態様において、本発明は、本明細書に定義されるベクターを含む単離宿主細胞に関する。
【0033】
他の態様において、本発明は、本発明のベクター発現系、ベクターのポリヌクレオチド、及びコードされたポリペプチドの医学的使用に関する。
【0034】
好ましくは、医学的使用は、神経系の疾患、障害、又は損傷の治療用であり、より好ましくは、パーキンソン病等の変性神経障害の治療用である。
【0035】
他の態様において、本発明は、本発明のベクターにより形質転換又は形質導入した単離宿主細胞と、本発明の感染性ビリオンを生産可能なパッケージング細胞株とに関する。
【0036】
一態様において、本発明のベクターは、薬剤として使用される。
【0037】
更に、本発明は、本明細書に定義されるベクターと医薬的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物に関する。
【0038】
一態様において、医薬組成物は、パーキンソン病の治療方法において使用するためのものであり、前記組成物は、1ベクター発現系と、前記ベクターを大脳基底核へ送達するための処方とを含み、前記1ベクター発現系は、
a)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まないことを条件とする、第1及び第2の発現カセット、又は
b)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である、第1及び第2の発現カセット、又は
c)プロモーター、第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記プロモーターは、前記第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結され、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合しており、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする、発現カセット、又は
d)第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合しており、前記第2のヌクレオチド配列に結合された前記翻訳開始ヌクレオチド配列に結合された前記第1のヌクレオチド配列を含む配列は、5’及び3’末端反復に隣接し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記末端反復は、作動可能に連結されたポリペプチドの発現を指揮することが可能な配列を含む、発現カセット、を備える。
【0039】
他の態様において、本発明は、本発明の医薬組成物を投与する方法に関し、前記医薬組成物は、注入(注射)による投与、錠剤等による経口投与、スプレーによる投与、皮膚投与、又は吸入による投与が行われる。前記注入は、好ましくは、頭蓋内、大脳内、硝子体内、鼻腔内、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、又はボーラス又は連続注入である。
【0040】
更に、本発明の医薬組成物を備えるキットが提供され、前記キットは、更に、本発明の医薬組成物の投与に関する指示を含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(A)本発明の連続DOPA送達戦略の概要。(B)GCH及びTHの相対発現レベルを制御する可能性が欠如した従来の2ベクター系を使用する比較例。
【図2】ベクター構築物。遺伝子構築物は、単一のベクターゲノムからチロシンヒドロキシラーゼ(TH)及びGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)の両方を発現するように生成した。GCH1に対してTHの発現を増加させるために、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)を追加した。両遺伝子は、ヒトシナプシン1プロモーター(SYN-1)により駆動し、SV40ポリアデニル化配列(pA)を用いて輸送を促進した。完全な遺伝子配列は、AAV血清型2からの逆方向末端反復(ITR)間に挿入した。
【図3】TH機能に関するBH4及びGCH1依存性のモデル化。in vivo及びin vitroのTH酵素活性測定値について、様々な比でrAAV5-TH及びrAAV5-GCH1ベクターを混合した6群におけるTHタンパク質測定値に対する半定量的ウェスタンブロットと併せて、量をZスコアに標準化することにより単一の読み出し変数に統一した。これにより、これにより、直接的な比較及びモデル化が可能な無次元量が生じる。(a)rAAV5-TH及びrAAV5-GCH1形質導入後のDA枯渇線条体におけるBH4合成の関数としてのin vivo及びin vitroのTH酵素活性及びTHタンパク質レベルの個別のZスコア。この工程により、線条体BH4レベルの関数としてプロットした時に、3つのアッセイからの結果が1つの一般的なパターンに実際に収束することが明らかとなった。(b)注入したrAAV5-GCH1のゲノムコピー(gc)の関数としてプロットした線条体BH4レベル。線条体におけるBH4レベルは、rAAV5-GCH1の力価の増加と共に直線的に増加しなかったが、代わりに3.6E9 gcを上回るレベルでの明確な飽和を示した。(c)TH酵素機能の3試験のZスコアを、線条体BH4レベルの関数としてプロットした単一のモデルへグループ化したもの。(d)注入したrAAV5-GCH1のゲノムコピーの関数としてプロットした、TH機能の3試験の平均Zスコア。B乃至Dの実線は、修正したレーベンバーグ-マルカートアルゴリズムを用いて、飽和モデルy=Ax/(B+x)+Cを適用した後に達成された非線形フィットを表している。
【図4】運動機能の回復。完全な片側DA除神経を施した動物を、一連の行動試験においてテストした。円筒試験(a)及び薬物誘発性の回転行動(d、e)における成績に基づいて、偽手術(Les-Sham群)を行うか、或いは治療用の単一rAAVベクター(TH-GCH1)を与えた。TH-GCH1群では、円筒試験(a)及び足踏み試験(b)において、5週間以内に完全な回復が見られた。これは、実験を通して維持された。これは、回廊試験(c)においても見られたが、アンフェタミン(d)及びアポモルヒネ(e)誘発性の回転行動では回復は部分的だった。階段試験等の複雑な運動機能の回復も顕著となった(f)。*=Les-Sham群と有意に異なる。
【図5】導入遺伝子発現及びDA合成の死後分析。6-OHDA損傷動物へのrAAV注入の6ヶ月後、単一rAAV TH-GCH1ベクターの機能の生化学的評価及び免疫組織化学的検査を用いた評価を行った。免疫組織化学的検査により、TH(a)及びGCH1(b)導入遺伝子の両方の強固な発現が明らかとなった。この発現は、無傷の線条体内(dの白棒)よりも遙かに高い程度に達するDOPA(cの黒棒)及びBH4(dの黒棒)両方の非常に効率的な生産に結びついた。ドーパミンレベルも、著しく復旧し(e)、中間代謝産物DOPACのレベルは正常値の50%まで回復し(f)、最終代謝産物HVA(g)は、正常レベルの2倍まで上昇した。
【図6】本発明の一実施形態の構築物のベクターマップ。
【図7】運動機能の回復に関する用量反応関係。完全な片側DA除神経を施した動物を、AAV注入前に回廊試験においてテストした(損傷ベースラインと呼ぶ)。その後、成績に基づいて4群に割り振った。全ての損傷動物に対しては、rAAV5-TH:GCH1ベクター[5μl]を等量で、但し濃度を増加させつつ定位的注入を行った。これにより、以下の4用量群が生じた:0.7%[9.1E8 gc]、3.4%[4.6E9 gc]、9.8%[1.3E10 gc]、100%[1.3E11 gc]。同じサイズの無傷年齢適合対照群を、全ての時点に参照として含めた。その後、AAV注入後12週目に動物を回廊試験において再テストした。高いベクター濃度、即ち、13E10 gcのrAAV5-TH:GCH1までの用量を受けた2つの治療群において、完全な回復が見られた。4.6E9 gcベクターでは、50%の回復が生じたが、9.1E8 gcの用量からの回復は、有意に低かった。*=2元配置分散分析法(Two-way Factorial ANOVA)及びその後のTukeyのHSD事後試験における有意差。
【図8】細胞外ドーパミンレベルのマイクロダイアリシスによる定量化。完全な片側DA除神経を施した動物を、2群に分けた(TH-GCH1群及び6-OHDA損傷のみ)。TH-GCH1群の動物には、全力価のrAAV5-TH:GCH1ベクターの定位的注入を施した。損傷のない無傷年齢適合対照群を調査に含めた(無傷対照)。少なくとも6ヶ月後に、オンラインマイクロダイアリシスを用いて細胞外ドーパミンレベルを定量化した。細胞外ドーパミンレベルは、損傷対照群において90%近く減少した。一方、rAAV5-TH:GCH1注入後、細胞外ドーパミンレベルは、無傷動物のものの2倍以上まで回復した。*=1元配置分散分析法(one-way ANOVA)及びその後のTukeyのHSD事後試験による有意差。
【発明を実施するための形態】
【0042】
定義
【0043】
作動薬:本明細書で使用される「作動薬」という用語は、細胞の受容体と結合し、細胞による反応を引き起こす薬物を示す。
【0044】
生物活性を有する:本発明のベクター構築物によりコードされた酵素に関して使用される場合、「生物活性を有する」という用語は、前記酵素の酵素活性を示し、特定の酵素反応を触媒する能力を意味する。特に、細胞活性とは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)及びGTPシクロヒドロラーゼ(GCH1)の酵素活性を示す。
【0045】
生物活性を有する断片:本明細書での使用において「生物活性を有する断片」という用語は、全長ポリペプチドの生物活性を共有する、酵素を含むポリペプチドの一部を示す。断片の生物活性は、天然全長ポリペプチドの酵素活性と比較して小さい場合、大きい場合、或いは等しい場合があり得る。
【0046】
生物活性を有する変異体:本明細書での使用において「生物活性を有する変異体」という用語は、天然全長タンパク質と同じ生物活性を有する、酵素等のタンパク質のポリペプチド部分を示す。断片の生物活性は、天然全長ポリペプチドの酵素活性と比較して小さい場合、大きい場合、或いは等しい場合があり得る。
【0047】
カテコールアミン機能不全:本明細書での使用において「カテコールアミン機能不全」という用語は、健康な個体における同じパラメータと比較した際のカテコールアミンの合成、調節、貯蔵、放出、吸収、又は代謝の異常を示す。特に、カテコールアミン機能不全は、ドーパミン欠乏等のドーパミン機能不全である。当業者は、カテコールアミン機能不全の診断が可能である。
【0048】
認知障害:本明細書で使用される「認知障害」という用語は、混乱、健忘、及び集中困難を伴う精神機能不良の状態を示す。
【0049】
保存的置換:本明細書で定める「保存的アミノ酸置換」という用語は、1つ以上の化学的及び/又は物理的特性を共有した状態で、1つのアミノ酸が別のものに置き換えられる置換を示す。アミノ酸は、共有特性に応じてグループ分けし得る。保全的アミノ酸置換とは、所定の群内のアミノ酸が同様又は実質的に同様の特性を示す場合に、所定のアミノ酸群内の1つのアミノ酸を同群内の別のアミノ酸と置換することである。
【0050】
障害:本明細書で使用される「障害」という用語は、疾患又は医学的問題を示し、特定の症状及び兆候を伴い、身体機能を悪化させる生物の異常状態である。侵入微生物等の外的要因により生じる場合があり、或いは、カテコールアミンの生産又は輸送の低下等、内的機能不全により生じる場合がある。特に、本明細書での使用において、障害とは、ドーパミン生産の機能不全又はドーパミンの異常な生理学的濃度である。
【0051】
発現:ポリペプチドをコードする核酸配列の「発現」という用語は、その核酸配列のmRNAとしての転写、及び/又は、そのタンパク質の生産をもたらす、その核酸配列の転写及び翻訳を意味する。
【0052】
発現カセット:本明細書での使用において「発現カセット」という用語は、in vivoでのタンパク質の合成をもたらすために必要な全ての要素を提供するゲノム配列を示す。これには、必ずしも限定はされないが、DNAからmRNAへの転写を駆動する配列、即ち、プロモーター配列と、対象のタンパク質のためのゲノム配列を含むオープンリーディングフレームと、mRNAのポリアデニル化を可能にする3’非翻訳領域とを含めることができる。
【0053】
哺乳類細胞において機能する:本明細書での使用において「哺乳類細胞において機能する」という用語は、哺乳類細胞に導入した時に、生物活性を有するポリペプチドへの翻訳をもたらす配列、例えば、ベクター等のヌクレオチド配列を意味する。
【0054】
遺伝子治療:本明細書で使用される「遺伝子治療」という用語は、疾患を治療するための個体の細胞及び組織への遺伝子の挿入を示す。
【0055】
核酸配列:本明細書での使用において核酸配列という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、DNA又はRNAの類似体、mRNA、及びcDNAを限定せずに含む、2個以上のヌクレオチド塩基の1本鎖又は2本鎖の鎖を示す。
【0056】
作動可能に連結する:本明細書での使用において「作動可能に連結する」という用語は、対象となる1つ以上のポリペプチドをコードする核酸配列と、転写調節配列とが、細胞に導入した際に核酸配列の発現が可能となるような形で接続されることを示す。
【0057】
パーキンソン病:本明細書で使用される「パーキンソン病(Parkinson’s disease)」(Parkinson disease又はPDとしても知られる)という用語は、患者の運動能力、発話、及び他の機能を低下させる場合が多い中枢神経系の変性障害を示す。パーキンソン病は、運動障害と呼ばれる状態群に属する。筋固縮、振戦、身体的運動の緩慢化、更に極端な場合には、身体的運動の喪失を特徴とする。PDは、慢性且つ進行性である。
【0058】
医薬品:「医薬品」又は「薬物」又は「薬剤」という用語は、患者の疾病、苦痛、状態、疾患、又は損傷の治療(予防、診断、緩和、又は治癒を含む)に使用し得る任意の治療薬又は予防薬を示す。治療的に有用な遺伝的決定因子、ペプチド、ポリペプチド、及びポリヌクレオチドは、医薬品又は薬物という用語の意味に含み得る。本明細書での定義において、「治療薬」、「予防薬」、或いは「薬物」又は「薬剤」は、生物活性剤の一種である。
【0059】
医薬組成物:又は薬物、薬剤又は薬品は、患者に適切に投与された時に所望の治療効果を誘導可能な任意の化学的又は生物学的物質、化合物、又は組成物を示す。一部の薬物は、医薬活性を有する代謝産物へin vivoで転換される不活性形態で販売される。本発明の目的では、「医薬組成物」及び「薬剤」という用語は、不活性薬物及び活性代謝産物の両方を包含する。
【0060】
ポリペプチド:本明細書での使用において「ポリペプチド」という用語は、少なくとも2個のアミノ酸を含む分子を示す。アミノ酸は、天然又は合成となり得る。「オリゴペプチド」は、本明細書において、100アミノ酸以下の長さのポリペプチドとして定義される。「ポリペプチド」という用語は、更に、タンパク質、即ち、少なくとも1つのポリペプチドを含む機能的生体分子を含むものとし、少なくとも2個のポリペプチドを含む場合、これらは、錯体を形成し、共有結合又は非共有結合し得る。タンパク質中のポリペプチドは、グリコシル化可能であり、及び/又は脂質化可能であり、及び/又は補欠分子族を含むことが可能である。
【0061】
ポリヌクレオチド:本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、鎖状に共有結合したヌクレオチド単量体から成る有機高分子を示す。本明細書での使用において「ポリヌクレオチド」は、少なくとも2個の核酸を含む分子を示す。核酸は、自然発生のもの、或いはロック核酸(LNA)又はペプチド核酸(PNA)等、修飾されたものとなり得る。本明細書での使用においてポリヌクレオチドは、一般的に以下に関連する。
【0062】
i)所定のコード配列を含むポリヌクレオチド、又は
ii)所定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、又は
iii)ポリヌクレオチド(i)又は(ii)によりコードされたポリペプチドの断片であり、本明細書で指定する少なくとも1つの所定の活性を有する断片をコードするポリヌクレオチド、及び
iv)相補鎖が(i)、(ii)、及び(iii)の何れかに定めたポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、本明細書で指定する所定の少なくとも1つの活性を有するポリペプチド又はその断片をコードするポリヌクレオチド、及び
v)ポリヌクレオチド(iii)又は(iv)のヌクレオチド配列へ縮重するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
又はこうしたポリヌクレオチドの相補鎖。
【0063】
プロモーター:本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、特定の遺伝子の転写を促進するDNAの領域を示す。プロモーターは、一般に、そのプロモーターが調節する遺伝子の近くで、同じ鎖上の上流に位置する。
【0064】
タンパク質:本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、少なくとも好ましくは3個以上のアミノ酸を有するペプチドであるポリペプチドとしても知られる有機化合物を示す。総称としてのアミノ酸は、何れも「D」又は「L」異性体となり得る、天然及び非天然アミノ酸の両方を含む。
【0065】
配列同一性:配列同一性は、一実施形態において、少なくとも25個の隣接アミノ酸を含み、本発明の何れかのSEQ ID NOのアミノ酸配列と少なくとも80%、例として85%、例えば90%、例として95%、例えば99%同一であるアミノ酸配列を有するプロニューロトロフィン活性モジュレータペプチドの断片を利用して決定し、同一性パーセントは、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0中のアルゴリズムであるGAP、BESTFIT、又はFASTAにより、デフォルトのギャップウェイトを用いて決定する。
【0066】
以下の用語は、2つ以上のポリヌクレオチド間の配列関係を説明するために使用される:「所定配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、及び「実質的同一性」。
【0067】
「所定配列」とは、配列比較の基準として使用される規定配列であり、所定配列は、例えば、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.16、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.18、SEQ ID NO.19、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、及びSEQ ID NO.22から成る群から選択されたポリヌクレオチド配列等、配列表に記載された全長DNA又は遺伝子配列のセグメントとして、大きな配列のサブセットであってよく、或いは完全なDNA又は遺伝子配列を含んでもよい。一般に、所定配列は、少なくとも20ヌクレオチドの長さであり、しばしば少なくとも25ヌクレオチドの長さとなり、多くの場合、少なくとも50ヌクレオチドの長さである。
【0068】
2個のポリペプチドは、それぞれ(1)2個のポリヌクレオチド間で類似する配列(即ち、完全なポリヌクレオチド配列の一部)を含み得ると共に、(2)更に、2個のポリヌクレオチド間で相違する配列を含み得るため、2個(以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、一般に、局所的領域の配列類似性を特定及び比較するために「比較ウィンドウ」上で2個のポリヌクレオチドの配列を比較することにより実行される。本明細書での使用において、「比較ウィンドウ」は、ポリヌクレオチド配列を少なくとも20個の隣接ヌクレオチドの所定配列と比較し得る、少なくとも20の隣接ヌクレオチド位置の概念的セグメントを示し、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の一部は、2配列の最適なアラインメントのための所定配列(追加又は欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下の追加又は欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。
【0069】
比較ウィンドウを整合させるための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2: 482の局所的相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48: 443の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 85: 2444の類似性検索方法、こうしたアルゴリズムのコンピュータによる実施(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)、又は検査(閲覧)により実行してよく、様々な方法により生成された最善のアラインメント(即ち、比較ウィンドウ上で最高パーセンテージの相同性をもたらすもの)が選択される。
【0070】
「配列同一性」という用語は、2つのポリヌクレオチド配列が、比較のウィンドウ上で(即ち、ヌクレオチド毎を基準として)同一であることを意味する。「配列同一性のパーセンテージ」という用語は、比較のウィンドウ上で最適にアラインメントされた2つの配列を比較し、両配列内で同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、又はI)が発生する位置の数を決定して一致した位置数を求め、一致した位置数を比較のウィンドウ内の位置の総数(即ち、ウィンドウサイズ)で割り、結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。
【0071】
本明細書での使用において、「実質的に同一」という用語は、少なくとも20のヌクレオチド位置の比較ウィンドウ、多くの場合は少なくとも25乃至50のヌクレオチドのウィンドウ上の所定配列と比較して、ポリヌクレオチドが少なくとも85パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90乃至95パーセントの配列同一性、更に通常は少なくとも99パーセントの配列同一性を有する配列を含む際のポリヌクレオチド配列の特性を示し、ここで配列同一性のパーセンテージは、所定配列を、比較のウィンドウ上で所定配列の合計20パーセント以下となる欠失又は追加を含み得るポリヌクレオチド配列と比較することにより計算される。所定配列は、例えば、本明細書に示した全長のSEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、又はSEQ ID NO:22のポリヌクレオチド配列のセグメントとして、大きな配列のサブセットであってよい。
【0072】
ポリペプチドに応用される場合、アミノ酸配列の同一性の度合いは、アミノ酸配列が共有する同一アミノ酸の位置の数の関数である。アミノ酸配列の相同性又は類似性の度合いは、アミノ酸配列が共有する(構造的に関連する)アミノ酸の位置の数の関数である。
【0073】
「無関係」又は「非相同」の配列という用語は、別の配列と40パーセント未満の同一性を共有する配列を意味するが、好ましくは、本発明のポリペプチドと25パーセント未満の同一性を有する配列を意味する。「実質的同一性」という用語は、デフォルトのギャップウェイトを用いるGAP又はBESTFITプログラム等により最適にアラインメントした時、2つのペプチド配列が、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセント以上の配列同一性(例えば、99パーセントの配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なっている。
【0074】
保存的アミノ酸置換は、類似する側鎖を有する残基の互換性を示す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンである。好適な保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0075】
加えて、変異体は、本明細書において以下に定める所定の数の保存的アミノ酸置換に基づいて決定される。本明細書での使用において、保存的アミノ酸置換は、あるアミノ酸(所定のアミノ酸群内)の別のアミノ酸(同じ群内)との置換に関し、ここで両アミノ酸は、類似するか又は実質的に類似する特性を示す。
【0076】
本明細書に適用される「保存的アミノ酸置換」という用語の意味において、あるアミノ酸は、次に示すアミノ酸の群内で別のアミノ酸と置換し得る。
i)極性側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyr、及びCys)、
ii)非極性側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Pro、及びMet)
iii)脂肪族側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile)
iv)環状側鎖を有するアミノ酸(Phe、Tyr、Trp、his、Pro)
v)芳香族側鎖を有するアミノ酸(Phe、Tyr、Trp)
vi)酸性側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu)
vii)塩基性側鎖を有するアミノ酸(Lys、Arg、His)
viii)アミド側鎖を有するアミノ酸(Asn、Glu)
ix)ヒドロキシ側鎖を有するアミノ酸(Ser、Thr)
x)硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(Cys、Met)、
xi)天然弱疎水性アミノ酸(Pro、Ala、Gly、Ser、Thr)
xii)親水性の酸性アミノ酸(Gln、Asn、Glu、Asp)
xiii)疎水性アミノ酸(Leu、Ile、Val)
【0077】
したがって、本発明による変異体又はその断片は、同じ配列変異体又はその断片内、又は異なる配列変異体又はその断片間において、互いに独立して導入される複数の置換等、少なくとも1個の置換を含み得る。
【0078】
同じ変異体又はその断片が、本明細書に定義される保存的アミノ酸の2つ以上の群からの2つ以上の保存的アミノ酸置換を含む場合があることは、上述した概略から明らかである。
【0079】
少なくとも1個のアミノ酸の追加又は欠失は、好ましくは2乃至250個のアミノ酸、例として10乃至20個のアミノ酸、例えば20乃至30個のアミノ酸、例として40乃至50個のアミノ酸の追加又は欠失となり得る。しかしながら、50個を超えるアミノ酸の追加又は欠失、例として50乃至100個のアミノ酸の追加、100乃至150個のアミノ酸の追加、150乃至250個のアミノ酸の追加も、本発明に含まれる。欠失及び/又は追加は、互いに独立した状態で、配列内及び/又は配列の終わりに存在する欠失及び/又は追加となり得る。
【0080】
本発明によるポリペプチド断片は、その任意の機能的等価物を含め、一実施形態において、250個未満のアミノ酸残基、例として240個未満のアミノ酸残基、例えば225個未満のアミノ酸残基、例として200個未満のアミノ酸残基、例えば180個未満のアミノ酸残基、例として160個未満のアミノ酸残基、例えば150個未満のアミノ酸残基、例として140個未満のアミノ酸残基、例えば130個未満のアミノ酸残基、例として120個未満のアミノ酸残基、例えば110個未満のアミノ酸残基、例として100個未満のアミノ酸残基、例えば90個未満のアミノ酸残基、例として85個未満のアミノ酸残基、例えば80個未満のアミノ酸残基、例として75個未満のアミノ酸残基、例えば70個未満のアミノ酸残基、例として65個未満のアミノ酸残基、例えば60個未満のアミノ酸残基、例として55個未満のアミノ酸残基、例えば50個未満のアミノ酸残基を含む。
【0081】
本発明での使用において「機能的等価」は、当該配列の所定の断片の対応する機能性を参照することにより定まる好適な一実施形態に従う。
【0082】
TH又はGCH-1の機能的等価物又は変異体は、挿入、欠失、及び保存的置換を含む置換の数及び範囲が増加するに従って、好適な所定のTH又はGCH-1配列から徐々に異なるアミノ酸配列となることは理解されよう。この差異は、好適な所定配列と断片又は機能的等価物との間の相同性の減少として測定される。
【0083】
SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、及びSEQ ID NO:14の全ての断片又は機能的等価物は、本明細書で開示した、それぞれの所定TH及びGCH-1配列に対して示す相同性の度合いに関係なく、本発明の範囲に含まれる。この理由は、TH及びGCH-1の一部の領域は、結果的に生じる断片の結合活性に有意の影響を与えることなく、容易に突然変異可能となり得る、或いは、完全に欠失可能となり得るためである。
【0084】
置換により得られる機能的変異体は、機能的に類似するアミノ酸側鎖を含む残基が置換された場合、何らかの形態又は度合いの天然TH及びGCH-1活性を十分に示しつつ、相同性が低くなり得る。この点における機能的な類似とは、疎水性、塩基性、中性、又は酸性等の側鎖の支配的特性、或いは立体容積の有無を示す。したがって、本発明の一実施形態において、同一性の度合いは、断片が本発明による好適な所定の断片の変異体又は機能的等価物であることの主要な尺度ではない。
【0085】
アミノ酸配列間の相同性は、BLOSUM30、BLOSUM40、BLOSUM45、BLOSUM50、BLOSUM55、BLOSUM60、BLOSUM62、BLOSUM65、BLOSUM70、BLOSUM75、BLOSUM80、BLOSUM85、及びBLOSUM90の何れかといった周知のスコア行列を用いて計算し得る。
【0086】
SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、及びSEQ ID NO:14のそれぞれの断片と相同性を共有する断片は、それぞれの前記所定断片配列と好ましくは少なくとも約90パーセントの相同性、例えば少なくとも92パーセントの相同性、例として少なくとも94パーセントの相同性、例えば少なくとも95パーセントの相同性、例として少なくとも96パーセントの相同性、例えば少なくとも97パーセントの相同性、例として少なくとも98パーセントの相同性、例えば少なくとも99パーセントの相同性を有する時、本発明の範囲に含まれると見做すべきである。本発明の一実施形態によれば、相同性パーセンテージは、同一性パーセンテージを示す。
【0087】
本明細書で使用される意味による機能的等価物を決定する時に考慮に入れ得る追加要素は、i)本発明によるTH又はGCH-1の断片を検出する抗血清の能力、又はii)対応するTH又はGCH-1の断片とアッセイにおいて競合する機能的に等価なTH又はGCH-1断片の能力である。公知のアミノ酸配列内において、免疫原性活性アミノ酸の配列を決定する一方法は、GeysenによりUS5,595,915において説明されており、出典を明記することにより本願明細書の一部とする。
【0088】
更に適切に応用可能な、ペプチド断片の構造及び機能の関係を決定する方法は、出典を明記することにより本願明細書の一部とするUS6,013,478において説明されている。更に、受容体部分に対するアミノ酸配列の結合をアッセイする方法は、当業者に公知である。
【0089】
好適な所定のTH若しくはGCHポリペプチド又はその断片の任意の位置に導入される保存的置換に加えて、こうしたポリペプチドの任意の1つ以上の位置に非保存的置換を導入することが望ましい場合もある。
【0090】
TH又はGCH-1の機能的等価断片の形成につながる非保存的置換は、例えば、i)極性が実質的に異なり、例えば、非極性側鎖を有する残基(Ala、Leu、Pro、Trp、Val、Ile、Leu、Phe、又はMet)によるGly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、又はGln等の極性側鎖を有するアミノ酸又はAsp、Glu、Arg、又はLys等の荷電アミノ酸の置換、或いは、荷電又は極性残基による非極性残基の置換であり、及び/又は、ii)ポリペプチド骨格の配向性に対する影響が実質的に異なり、例えば、Pro又はGlyによる置換又は他の残基によるこれらの置換であり、及び/又は、iii)電荷が実質的に異なり、例えば、Glu又はAsp等の負荷電残基による、Lys、His、又はArg等の正荷電残基の置換(及びその逆)であり、及び/又は、iv)立体容積が実質的に異なり、His、Trp、Phe、又はTyr等の大きな残基による、Ala、Gly、又はSer等の小さな側鎖を有するものの置換(及びその逆)となる。
【0091】
アミノ酸の置換により得られる変異体は、好適な一実施形態において、疎水性値及び親水性値と、電荷、大きさ等を含むアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性とに基づいて作成される。様々な前記特性を考慮に入れたアミノ酸置換基の例は、当業者に周知であり、アルギニンとリジンの置換、グルタミン酸とアスパラギン酸の置換、セリンとトレオニンの置換、グルタミンとアスパラギンの置換、バリン、ロイシン、及びイソロイシンの間の置換を含む。
【0092】
本明細書に記載の変異体に加えて、立体的に類似する変異体を、変異体構造の主要部分を模倣するように処方してよく、こうした化合物も、本発明の変異体と同じ形で使用し得る。これは、当業者に公知のモデリング及び化学設計手法により達成し得る。こうした立体的に類似する変異体が全て本発明の範囲に含まれることは理解されよう。
【0093】
他の実施形態において、本発明は、置換したアミノ酸の値の+/-4.9以内、例えば+/-4.7以内、例として+/-4.5以内、例えば+/-4.3以内、例として+/-4.1以内、例えば+/-3.9以内、例として+/-3.7以内、例えば+/-3.5以内、例として+/-3.3以内、例えば+/-3.1以内、例として+/-2.9以内、例えば+/-2.7以内、例として+/-2.5以内、例えば+/-2.3以内、例として+/-2.1以内、例えば+/-2.0以内、例として+/-1.8以内、例えば+/-1.6以内、例として+/-1.5以内、例えば+/-1.4以内、例として+/-1.3以内、例えば+/-1.2以内、例として+/-1.1以内、例えば+/-1.0以内、例として+/-0.9以内、例えば+/-0.8以内、例として+/-0.7以内、例えば+/-0.6以内、例として+/-0.5以内、例えば+/-0.4以内、例として+/-0.3以内、例えば+/-0.25以内、例として+/-0.2以内である親水性値又はハイドロパシー指標を有する置換アミノ酸を含む機能的変異体に関する。
【0094】
相互作用する生物学的機能をタンパク質に与える上での親水性及びハイドロパシーアミノ酸指標の重要性は、当業者に良く理解されている(それぞれ出典を明記することにより本願明細書の一部とするKyte & Doolittle, 1982及びHopp、米国特許第4,554,101号)。
【0095】
本明細書での使用において、アミノ酸ハイドロパシー指標値は、次の通りである:イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、トレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リジン(-3.9)、及びアルギニン(-4.5)(Kyte & Doolittle, 1982)。
【0096】
アミノ酸親水性値は、次の通りである:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0+/-1)、グルタミン酸(+3.0+/-1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、トレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5+/-1)、アラニン(-0.5)、ヒスチジン(-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)、トリプトファン(-3.4)(米国特許第4,554,101号)。
【0097】
本明細書に記載のペプチジル化合物に加えて、立体的に類似する化合物を、ペプチド構造の主要部分を模倣するように処方してよく、こうした化合物も、本発明のペプチドと同じ形で使用し得る。これは、当業者に公知のモデリング及び化学設計手法により達成し得る。例えば、エステル化及び他のアルキル化を利用して、例えばジアルギニンペプチド骨格のアミノ末端を修飾し、テトラペプチド構造を模倣し得る。こうした立体的に類似する変異体が全て本発明の範囲に含まれることは理解されよう。
【0098】
N末端アルキル化及びC末端エステル化を有するペプチドも、本発明の範囲内に包含される。機能的等価物は、更に、二量体を含め、同じ又は他のTH又はGCH-1断片及び/又はTH又はGCH-1分子又は無関係の化学的部分により形成されたグリコシル化及び共有結合性又は凝集性の結合体も包含する。そのような機能的等価物は、当該技術分野において公知の手段による、N末端及びC末端の一方又は両方におけるものを含む、断片中に見られる基への官能性の連結により調製される。
【0099】
したがって、機能的等価物は、カルボキシル末端の脂肪族又はアシルエステル又はアミド、アルキルアミン、又はカルボキシル側鎖を含む残基に結合した断片、例えば、アスパラギン酸残基でのアルキルアミンに対する結合体であり、ヒドロキシル基含有残基のO-アシル誘導体、及びアミノ末端アミノ酸又はアミノ基含有残基のN-アシル誘導体、例えばfMet-Leu-Pheとの結合体を含み得る。アシル基の誘導体は、アルキル部分(C3乃至C10直鎖アルキルを含む)の群から選択され、これによりアルカノイル種及び炭素環又は複素環化合物が形成され、これによりアロイル種が形成される。反応基は、好ましくは、反応性側基を介した不溶性マトリクスに対する架橋タンパク質において使用される自体公知の2官能性化合物である。
【0100】
共有結合性又は凝集性の機能的等価物及びその誘導体は、イムノアッセイ又はアフィニティー精製手順の試薬として有用である。例えば、本発明によるTH又はGCH-1の断片は、自体公知の方法による臭化シアン活性化セファロースとの共有結合により不溶性にしてよく、或いは、抗TH又は抗GCH-1抗体又は細胞表面受容体のアッセイ又は精製において使用するために、グルタルアルデヒド架橋が有る状態又は無い状態で、ポリオレフィン表面に吸着させてよい。断片は、検出可能な基により標識してよく、例えば、クロラミンT手順による放射性ヨウ化、希土類キレートとの共有結合、又は例えば診断分析において使用する別の蛍光部分との結合を行ってよい。
【0101】
TH又はGCH-1の好適な所定断片の突然変異生成は、通常は、約1乃至10個程度のアミノ酸残基、好ましくは約1乃至5個のアミノ酸残基でのアミノ酸挿入、或いは、約1乃至10個の残基、例として2乃至5個の残基の欠失を形成することより実施可能である。
【0102】
一実施形態において、TH又はGCH-1の断片は、自動合成により合成される。成長するアミノ酸鎖に連続的にアミノ酸を添加するメリフィールド固相合成法(Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2146, 1963参照)等、市販される固相法の何れかを採用し得る。
【0103】
ポリペプチドの自動合成用の機器は、カリフォルニア州フォスターシティのApplied Biosystems, Inc.等の供給業者から市販されており、一般的には製造業者の指示に従って操作し得る。固相合成により、本発明のTH又はGCH-1の任意の断片への所望のアミノ酸置換の取り込みが可能となる。置換、欠失、挿入、又はその任意の部分的組み合わせは、機能的等価物の最終的な配列に到達するように組み合わせ得ることは理解されよう。挿入は、例えば、疎水性又は免疫原性タンパク質、或いは任意のポリペプチド等の担体又は担体の役割を果たすスカフォールド構造とのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合を含むと理解されるものとする。
【0104】
本発明によるTH及び/又はGCH-1の断片のホモ2量体及びヘテロ2量体を含む2量体を含めたオリゴマも提供され、本発明の範囲内に含まれる。TH又はGCH-1機能的等価物及び変異体は、他のアミノ酸配列又は天然TH又はGCH-1配列とのホモ2量体及びヘテロ2量体として生産可能である。ヘテロ2量体は、免疫反応性TH断片と共に、生物活性を有する必要又は発揮する必要が無いGCH-1断片を含有する2量体を含む。
【0105】
シャム手術:は、プラセボ手術としても知られ、治療的に必要と考えられるステップを省略した手術的介入である。対照研究において、シャム手術は、プラセボ効果を無効化してバイアスを減らすことにより研究中の介入の効果を評価するために、対照個体群において実施される。しかしながら、不活性の「シュガーピル」を代表的な例とするプラセボとは異なり、シャム手術は、実際の外科的介入を伴い、麻酔、切開の外傷、及び手術前後の処置の影響を補い、通常の手術という錯覚を維持する。本願において、シャム手術は、「Les Sham群」と呼ばれる対照群の動物において実施されている。
【0106】
[発明の詳細な説明]
【0107】
最適なDOPA送達のためのTH及びGCH1発現レベル間の化学量論的関係は、脳内において十分に研究されてきていない。現在まで、TH及びGCH1の送達を利用する殆どの研究は、その相対的発現レベルを制御することに関係の無い設計を利用してきた。TH酵素は、DOPA合成のために補助因子BH4を必要とする。BH4は、GCH1が第1の律速酵素となる3段階の酵素反応において、GTPから合成される。後続の2つの酵素は、普遍的に発現する。このプロセスに注目する理由は多数存在する。第一に、TH酵素活性は、複雑に調節され、THタンパク質の安定性も同じく調節される。活性に影響する一要因は、周囲のBH4の量である。BH4が少なすぎると、酵素は効率的に働くことができず、BH4が多すぎると、機能を阻害する恐れがある。
【0108】
第二に、BH4の1分子は、チロシンのDOPAへの転換毎に消費されるが、GCH1酵素は、決して消費されない。基質GTPが細胞内に豊富である時、GCH1の発現の必要性は、THの発現よりも遙かに少なくなり得る。連続的DOPA送達は、最適なTH酵素機能のための環境を確立するのに寄与する幾つかの要因に依存する。
【0109】
本発明により得られる結果は、TH酵素の活性化が、GCH1発現量に対する3段階の動力学的関係に従うことを示唆している。GCH1:TH比が1:7までの初期段階において、TH機能及びBH4合成は、GCH1の増加と共に両方とも直線的に増加する。GCH1がGCH1ゲノムコピー数5.5E9(1:3のGCH1:TH比に相当するレベル)まで更に増加した第2の段階において、BH4レベルの増加は引き続き直線的だが、TH機能は飽和の兆候を示し始める。第3の段階では、rAAV5-GCH1の力価がゲノムコピー数5.5E9を超えて増加する時、TH機能及びBH4合成の両方で飽和が明白となる。総合すると、これらのデータは、GCH1:TH比が1:3乃至1:7の動作範囲において、TH機能が最適化された状態で、効率的なDOPA合成をもたらすことが可能なことを示している。
【0110】
したがって、特定の実施形態において、TH遺伝子は、GCH1よりも約3乃至7倍高いレベルで発現する。更に、本明細書に記載のベクター及び方法及びベクターを使用して、明確に定義された安定した導入遺伝子発現レベルの比を維持して、予測可能且つ最適化された発現レベルをin vivoで提供することができる。
【0111】
以前の戦略では、2ベクター設計又は単一ベクター多シストロン性ベクターの何れかを利用していた。それぞれが遺伝子の一方をコードする別個のウイルスベクターの使用は、多数の制限を有する。第一に、「産物」は、実際には、それぞれが独自の生産変動を有する2つの薬物となる。これはin vitroでの評価が困難であることから、臨床グレードの生産は、非常に面倒となる恐れがある。第二に、全体的スケールでは2つの遺伝子の発現パターンは似ているように見えるが、個別の細胞内では、2ベクターのコピー数が劇的に変化し、DOPA合成のレベルの変化をもたらす場合がある。加えて、この影響は、多くの細胞が遺伝子を全く受領しない又は一方のみ受領する状態により悪化し、そのため、存在するとしても非常に限定されたDOPA合成を示す恐れがある。
【0112】
より魅力的な手法は、遺伝子を単一のベクター内に統合し、2つの遺伝子が常に同じ細胞において発現され、「産物」が1つのみ存在するようにすることである。しかしながら、この手法は、特定のベクター構築物、例えば、組み換えAAVベクターに収めるには遺伝子配列が大きすぎることが妨げとなっていた。AAVのパッケージング容量は、野生型AAVゲノム(4.7kb)のサイズ程度に最適化されている。組み換えゲノムがこのサイズを大きく上回る場合、生産力価及びin vivoでの有効性は、共に大きく損なわれる。
【0113】
遺伝子治療において、好適なウイルスベクターのタイプは、AAVである。AAVは、多数の特徴により、遺伝子治療に有利となる。特に重要であるのは、野生型ウイルスの病原性の欠如である。非分裂細胞にも感染可能であり、長期的に安定した遺伝子発現を提供することができる。所望の遺伝子を、遺伝子の転写を駆動するプロモーターと共に、1本鎖ベクターDNAが宿主細胞DNAポリメラーゼ複合体により2本鎖DNAに転換された後、核におけるコンカテマー形成を支援する逆方向末端反復(ITR)間に挿入することができる。AAVに基づく遺伝子治療ベクターは、宿主細胞核内でエピソームコンカテマーを形成する。AAVがもたらす免疫原性は非常に低く、中和抗体の生成に限定されると思われる一方、明確に定められる細胞傷害反応を誘発しない。こうした特徴により、AAVは、特に中枢神経系(CNS)における遺伝子治療にとって魅力的な候補となる。
【0114】
ドーパミン合成経路は一般に2つの主要な酵素TH及びAADCを含むと考えられるが、本発明者は、本明細書において、AADCを発現せず、TH及びGCH1を発現するベクター又はベクター群を用いた遺伝子治療により、症状軽減及び/又は治療的緩和を提供可能であることを示している。AAVベクター等の特定のウイルスベクターの限られたパッケージング容量により、3つの遺伝子TH、GCH1、及びAADC全てを含めることが妨げられる、或いは制限されるため、これは何よりも重要となる。更に、2つの遺伝子TH及びGCH1の組み合わせは、従来の2シストロンベクターゲノム構築物では不可能である。TH酵素をN末端において切断して、遺伝子のサイズを低減することは可能となり得るが、これは、フィードバック抑制及びリン酸化反応という本質的な安全機構の除去を犠牲として成り立つ。こうした切断酵素は、細胞質DA濃度が毒性レベルに近づく場合でも引き続き有効となる。これは、本発明において利用する全長TH cDNAには当てはまらない。
【0115】
本明細書で説明する特定の実施形態は、根本的に異なるプラスミド設計を含む。例えば、内部リボソーム進入部位を使用して2重遺伝子発現を可能にする代わりに、特定の実施形態では、2重発現カセットを2つのプロモーターと共に利用する。サイトメガロウイルスプロモーターからのエンハンサー要素により始まる、ウサギγグロブリンイントロンを含む合成ニワトリβアクチンプロモーター(ニワトリβアクチンCBAプロモーターと呼ばれる)等、遺伝子治療において従来使用される合成融合プロモーターでは、このプラスミド設計は実現しない。小さく強力な内因性プロモーターにより、この異なるプラスミド設計手法が可能となっている。
【0116】
1ベクター発現系
【0117】
特定の実施形態において、本発明は、差次的に発現するように設計された2つのポリペプチドをコードする2つのポリヌクレオチドを含む1ベクター発現系に関する(図2に記載)。2つのコードポリペプチド、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)及びGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)は、3:1乃至7:1の比で選択的に発現させることができる。
【0118】
他のポリペプチドと共に、TH及びGCH1は、ドーパミンの生産において必須酵素であり、チロシンからのL-DOPAの生産を調節する。ドーパミン合成には他の要因が関与するが、THとGCH1との間の化学量論的関係は、このプロセスにおける制限要因となり得る。
【0119】
したがって、本発明の主な目的は、最適な割合のTH及びGCH1を送達するベクター構築物を提供することである。更に、本発明は、ドーパミンの生産増加を、必要とする細胞に限定するために、ベクター構築物を局所的に送達する方法を提供する。
【0120】
ウイルスベクター
【0121】
一般的に、遺伝子治療では、新たな遺伝物質を患者の細胞に伝達し、治療的な利益を患者へもたらそうとする。こうした利益には、広範な疾患、障害、及び他の状態の治療又は予防が含まれる。
【0122】
遺伝子治療は、2つの別個の種類、即ち、遺伝物質が生殖細胞へ伝達されるため遺伝性となる生殖細胞系遺伝子治療と、遺伝物質が体細胞へ伝達されるため遺伝性とならない体細胞遺伝子治療とに分類し得る。
【0123】
Ex vivo遺伝子治療手法は、患者への注入、グラフト、又は他の形での移植が可能な、幹細胞等の単離細胞の改変を含む。米国特許第4,868,116号、第5,399,346号、及び第5,460,959号を参照されたい。In vivo遺伝子治療では、逆に、宿主患者組織を直接的にin vivoで標的とする。
【0124】
ウイルスベクターは、遺伝物質を宿主生物内へ送達するために有用なツールである。遺伝子導入ベクターとして有用なウイルスには、パポバウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、及びHIV、SIV、FIV、EIAV、MoMLV等のレトロウイルスが含まれる。
【0125】
中枢神経系の障害の治療に好適なウイルスは、レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルスである。両タイプのウイルスは、細胞分裂無しでゲノムに組み込み可能であり、何れのタイプも、神経系、特に中枢神経系における適応症について、前臨床動物研究において試験されてきた。
【0126】
好適なウイルスベクターのタイプは、AAVである。AAVは、多数の特徴から、遺伝子治療において興味深いものとなる。最も大きな特徴は、野生型ウイルスにおける病原性の明らかな欠如、及び非分裂細胞にも感染可能なことである。野生型AAVゲノムは、ヒト19番染色体の特異的部位(AAVS1と命名された)に最も頻繁に組み込まれ、ゲノムへのランダムな取り込みの発生は、無視できる頻度となる。この特徴のため、ランダム挿入及び突然変異生成の恐れがあるレトロウイルスに比べ、AAVでは予測可能性が幾分高くなる。しかしながら、遺伝子治療ベクターとしてのAAVでは、この組み込み能力を、ベクターのDNAからのrep及びcapの除去により取り除くことができる。rep及びcap遺伝子は、複製欠損ウイルスベクターにおいて機能的価値を有していないため、ベクターゲノムから取り除くことができる。こうした野生型AAV遺伝子の代わりに、所望の遺伝子(群)を、遺伝子の転写を駆動するプロモーターと共に、逆方向末端反復(ITR)間に挿入することができる。ITRは、ベクターDNAのウイルスベクターパッケージングにとって重要であり、1本鎖ベクターDNAが宿主細胞DNAポリメラーゼ複合体により2本鎖DNAに転換された後、核におけるコンカテマー形成を支援する。
【0127】
AAVに基づく遺伝子治療ベクターは、宿主細胞核内でエピソームコンカテマーを形成することができる。非分裂細胞において、こうしたコンカテマーは、宿主細胞の寿命に渡って完全な状態を維持できる。分裂細胞において、AAV DNAは、細胞分裂により失われる可能性があり、これはエピソームDNAが宿主細胞DNAと共に複製されないためである。AAV DNAの宿主ゲノムへのランダムな組み込みは少ないが、検出可能となり得る。AAVがもたらす免疫原性は低く、中和抗体の生成に限定されると思われる一方、明確に定められる細胞傷害反応を誘発しない。こうした特徴は、静止細胞に感染する能力と共に、ヒト遺伝子治療用のベクターとして、アデノウイルスに優る幾つかの利点をもたらす。こうした特徴から、AAVは、特に中枢神経系(CNS)における遺伝子治療にとって、ウイルスベクターを形成するための魅力的な候補となる。
【0128】
AAVベクターを含むウイルスベクターは、一定のクローニング能力を有しており、即ち、一定量のポリヌクレオチドを運ぶことができる。したがって、特定の実施形態において、本発明は、1乃至40kb、例として1乃至30kb、例えば1乃至20kb、例として1乃至15kb、例えば1乃至10kb、例として1乃至8kb、例えば2乃至7kb、例として3乃至6kb、例えば4乃至5kbの範囲のパッケージング容量を有するウイルスベクターに関する。好適な実施形態において、本発明は、4.8kbのパッケージング容量を有するAAVベクターに関する。
【0129】
少なくとも11のAAV血清型が現在存在している。血清型2は、最も広範に調査されており、AAV2は、例えば、骨格筋、血管平滑筋細胞、肝細胞、及び、特に神経細胞に対する自然の向性を示す。しかしながら、他の血清型は、遺伝子治療のツールとして有効であることが証明されており、例えば、AAV6は、気道上皮細胞の感染に特に有用であると思われ、AAV7は、マウス骨格筋細胞での高い形質導入率をもたらし(AAV1及びAAV5に類似する)、AAV8は、肝細胞の形質導入に特に有用であり、AAV1乃至5は、血管内皮細胞への遺伝子送達に効率的である。
【0130】
野生型AAVの感染が引き起こす液性免疫は、非常に一般的な事象であると考えられる。最も一般的に使用される血清型AAV2の有用性は、関連する中和活性により、特定の用途において制限される。したがって、現在行われている臨床試験の大部分は、免疫学的に特殊な臓器である脳に対するAAV2の送達に関与する。
【0131】
様々なAAV血清型を用いることに加え、ある血清型のプラスミドを別の血清型のカプシド内にパッケージして使用する等、異なる血清型を組み合わせることが可能である。
【0132】
一実施形態において、本発明のアデノ随伴ベクター(AAV)ベクターは、AAV2ベクターである。
【0133】
他の実施形態において、AAV2ベクターは、AAV2カプシド以外のAAVカプシド内にパッケージされる。
【0134】
更に他の実施形態において、AAV2ベクターは、AAV5カプシド内にパッケージされる。
【0135】
AAVベクターは、ヒト細胞株単層培養又は浮遊昆虫細胞という2種類の主要な原理を使用して調製することができる。単層細胞培養物は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、又は他の手段により、ベクターゲノムを有するトランスファープラスミドと、ベクターカプシド合成に必要な遺伝子を含む1種類又は2種類のヘルパープラスミドとを含む2種類又は3種類のプラスミド調製物の混合物により、トランスフェクトする。昆虫細胞培養物では、このプロセスは、通常、同じ機能を含むバキュロウイルス構築物を用いた細胞のトランスフェクションに置き換えられる。その後、細胞、上清、又は両方を採取して、ベクターの精製及び濃縮を行う。これは、塩化セシウム又はイオジキサノール勾配精製、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過及びアフィニティークロマトグラフィー、及び超遠心分離法の任意の組み合わせにより達成することができる。AAVの調製方法は、当該技術分野において説明されており、例えば、US5,677,158、US6,309,634、及びUS6,451,306では、中枢神経系へのAAVの送達の例が説明されている。
【0136】
したがって、主要な態様において、本発明は、1ベクター発現系であって、
a)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まないことを条件とする、第1及び第2の発現カセット、又は
b)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結された第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である、第1及び第2の発現カセット、又は
c)プロモーター、第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記プロモーターは、前記第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結され、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合しており、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする、発現カセット、又は
d)第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合し、前記第2のヌクレオチド配列に結合された前記翻訳開始ヌクレオチド配列に結合された前記第1のヌクレオチド配列を含む配列は、5’及び3’末端反復に隣接し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記末端反復は、作動可能に連結されたポリペプチドの発現を指揮することが可能な配列を含む、発現カセット、を備える、1ベクター発現系に関する。
【0137】
上述したベクターの一実施形態において、前記第1の発現カセットにより発現されるGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットにより発現されるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である。
【0138】
本明細書に定義されるベクターの別の実施形態において、発現されるGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットにより発現される前記チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である。
【0139】
本明細書に定義されるベクターの別の実施形態において、コードされるGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、コードされるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である。
【0140】
本明細書に定義されるベクターの別の実施形態において、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、コードされるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である。
【0141】
特定の実施形態において、AADC遺伝子をベクターに含めることは、多数の理由の何れかにより不利となる場合がある。第一に、調節無しでチロシンをドーパミンに転換可能な新たな系が生成される。線条体内の形質導入細胞にはドーパミンを小胞に隔離するための機構が欠如しているため、ドーパミンは、サイトゾルに急速に蓄積し得る。TH酵素にN末端調節領域が残されている場合、生産されるドーパミンは、負のフィードバックによりDOPA合成を直接的に阻害し、治療の有効性を深刻に制限し得る。一方、TH酵素が切断されている場合、細胞質ドーパミンレベルは、形質導入細胞でもドーパミンを放出する機構が欠如しているため、急速に増加し得る。こうした細胞質ドーパミンの増加は、症状の軽減を無くすだけでなく、パーキンソン病を、代わりの治療が殆ど無いL-DOPAに無反応の障害である多系統萎縮症(MSA)に転換させる恐れがある、線条体ニューロンの変性につながることが明らかとなっている。
【0142】
第二に、AADC遺伝子を含めることは、経口L-DOPA薬物療法に対する患者の反応にも影響を与える可能性がある。L-DOPA薬物療法の主な有害事象の1つは、ジスキネジアであることが知られている。これらは、少なくとも部分的には、拍動性の投与経路が引き起こす線条体のドーパミンレベルの変動により生じると考えられている。L-DOPAからドーパミンへの転換率を局部的に向上させた場合には、変動が悪化し、更にジスキネジアが増加する恐れがある。これは、AADC遺伝子により形質導入した動物モデルにおいて実際に観察されている。
【0143】
一方、AADC遺伝子を省略することで、利用可能な大きなアミノ酸輸送体を介して線条体ニューロンからのDOPAの往復がもたらされ、これにより、安全機構が提供され、転換速度は、利用可能なAADC酵素により調節できるようになる。内因性AADC酵素活性を有するニューロンもドーパミンを格納及び放出する能力を有することができるため、ドーパミン毒性のリスクが低減される。そのため、特定の実施形態において、ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まない。
【0144】
したがって、別の主要な態様において、本発明は、1ベクター発現系であって、
a)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まないことを条件とする、第1及び第2の発現カセット、又は
b)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である、第1及び第2の発現カセット、又は
c)プロモーター、第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記プロモーターは、前記第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結され、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合しており、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である、発現カセット、又は
d)第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合しており、前記第2のヌクレオチド配列に結合される前記翻訳開始ヌクレオチド配列に結合される前記第1のヌクレオチド配列を含む配列は、5’及び3’末端反復に隣接し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記末端反復は、作動可能に連結されるポリペプチドの発現を指揮することが可能な配列を含む、発現カセット、を備える、1ベクター発現系に関する。
【0145】
別の態様において、本発明は、1ベクター発現系であって、
a)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも75%同一であり、例として少なくとも80%同一であり、例えば少なくとも90%同一であり、例として少なくとも92%同一であり、例えば少なくとも95%同一であり、例として少なくとも97%同一であり、例えば少なくとも98%同一であり、例として少なくとも99%同一であり、例えば少なくとも99.5%同一であり、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも75%同一であり、例として少なくとも80%同一であり、例えば少なくとも90%同一であり、例として少なくとも92%同一であり、例えば少なくとも95%同一であり、例として少なくとも97%同一であり、例えば少なくとも98%同一であり、例として少なくとも99%同一であり、例えば少なくとも99.5%同一であり、前記ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まないことを条件とする、第1及び第2の発現カセット、又は
b)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも75%同一であり、例として少なくとも80%同一であり、例えば少なくとも90%同一であり、例として少なくとも92%同一であり、例えば少なくとも95%同一であり、例として少なくとも97%同一であり、例えば少なくとも98%同一であり、例として少なくとも99%同一であり、例えば少なくとも99.5%同一であり、前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である、第1及び第2の発現カセット、又は
c)プロモーター、第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記プロモーターは、前記第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結され、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合しており、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも75%同一であり、例として少なくとも80%同一であり、例えば少なくとも90%同一であり、例として少なくとも92%同一であり、例えば少なくとも95%同一であり、例として少なくとも97%同一であり、例えば少なくとも98%同一であり、例として少なくとも99%同一であり、例えば少なくとも99.5%同一であり、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である、発現カセット、又は
d)第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合しており、前記第2のヌクレオチド配列に結合される前記翻訳開始ヌクレオチド配列に結合される前記第1のヌクレオチド配列を含む配列は、5’及び3’末端反復に隣接し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも75%同一であり、例として少なくとも80%同一であり、例えば少なくとも90%同一であり、例として少なくとも92%同一であり、例えば少なくとも95%同一であり、例として少なくとも97%同一であり、例えば少なくとも98%同一であり、例として少なくとも99%同一であり、例えば少なくとも99.5%同一であり、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記末端反復は、作動可能に連結されるポリペプチドの発現を指揮することが可能な配列を含む、発現カセット、を備える、1ベクター発現系に関する。
【0146】
一実施形態において、本発明のベクターは、最小限の組み込みを行うベクターである。
【0147】
一実施形態において、本発明のベクターは、図6に記載のベクターである。
【0148】
一実施形態において、本明細書に定義されるベクターは、1乃至40kb、例えば1乃至30kb、例として1乃至20kb、例えば1乃至15kb、例として1乃至10、例えば1乃至8kb、例として2乃至7kb、例えば3乃至6kb、例として4乃至5kbのパッケージング容量を有する。
【0149】
好適な実施形態において、本明細書に定義されるベクターは、4.5乃至4.8kbのパッケージング容量を有する。
【0150】
一実施形態において、本発明のベクターは、ウイルスベクターであり、前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びレトロウイルスベクターから成る群から選択される。
【0151】
好適な実施形態において、ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である。
【0152】
AAVベクターが好適であるが、他のベクターを本発明に使用してもよい。したがって、別の実施形態において、本発明のベクターは、プラスミドベクターである。
【0153】
更に別の実施形態において、本発明のベクターは、合成ベクターである。
【0154】
一実施形態において、ベクターは、哺乳類細胞において機能する。一実施形態において、ベクターは、哺乳類細胞においてのみ機能する。
【0155】
一実施形態において、本発明は、ヒト、ヒト以外の霊長類、他の哺乳類種において確認される任意のAAV血清型に基づくベクター、又はそのキメラ型に関する。
【0156】
好適な実施形態において、本発明は、改変された又は新規の外被タンパク質を発現するように修飾された任意の血清型のAAVベクターに基づくベクターに関する。より好適な実施形態において、本発明は、AAVベクター、より好ましくは、血清型2のAAVベクター、より好ましくは、血清型5のAAVカプシドにパッケージされた血清型2のAAVベクターに関する。カプシドの選択に関しては、2つの要因が好適な血清型の選択に寄与する。第1は、野生型等価物での中和抗体の存在である。様々なヒト個体群において最も頻度の高い血清型は血清型2であることが明らかとなっている。したがって、血清型2及び他の血清型とのカプシド相同性が最も低い血清型を使用することに意味がある。血清型5は、他のAAV血清型1乃至9とのカプシド配列相同性が僅か53乃至57%である(Daya and Berns. Gene therapy using adeno-associated virus vectors. ClinMicrobiol Rev (2008) vol. 21 (4) pp. 583-93)。ヒトの脳における形質導入の広まりに寄与しうる第2の要因は、ベクターカプシドが親和性を示す細胞表面残基である。AAV血清型2は、ヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に対する強い親和性を有しているが、AAV5血清型は有していない。HSPGは脳内に豊富に存在するため、これは広まりを支援し得る。
【0157】
遺伝子の発現は、転写、翻訳、又は翻訳後のレベルにおいて制御される。転写開始は、遺伝子発現における初期の重大な事象である。これは、プロモーター及びエンハンサー配列に依存し、こうした配列と相互作用する特定の細胞因子の影響を受ける。AAVは、起源の異なる1つ以上のポリヌクレオチドを含むように設計し得る。ベクター構築物は、1つ以上のプロモーターを含み得る。本発明の一実施形態において、前記プロモーター(群)は、哺乳類細胞に特異的であり、限定はされないが、ヒトニューロンを含むヒト神経細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、マウス線維芽細胞-3T3細胞、アフリカミドリザル細胞株、ラット副腎褐色細胞腫、AT3細胞、ラットグリア腫瘍細胞、ラット神経細胞、及びラット海馬細胞から成る群から選択される。
【0158】
好適な実施形態において、本発明は、例えば線条体ニューロン等のニューロンにおける高い発現を可能にする1つ以上のプロモーター(群)により酵素の発現が制御される、ゲノム配列を含むベクターに関する。より好適な実施形態において、前記プロモーター(群)は、ニューロン特異的である。最も好適な実施形態において、前記プロモーター(群)は、ヒトシナプシンプロモーター(群)である。
【0159】
一実施形態において、本明細書に定義される本発明の発現構築物の第1及び/又は第2のプロモーターは、哺乳類細胞に特異的なプロモーターである。他の実施形態において、前記哺乳類細胞は、神経細胞である。更に他の実施形態において、前記神経細胞は、ニューロンである。
【0160】
一実施形態において、前記第1及び前記第2のプロモーターは、両方ともシナプシン1プロモーターである。
【0161】
別の実施形態において、前記第1又は前記第2のプロモーターの何れかは、シナプシン1プロモーターである。
【0162】
一実施形態において、本発明において使用されるプロモーターは、構成的プロモーターであり、前記構成的活性プロモーターは、CAG、CMV、ヒトUbiC、RSV、EF-1α、SV40、Mt1から成る群から選択される。
【0163】
別の実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーターであり、前記誘導性プロモーターは、Tet-On、Tet-Off、Mo-MLV-LTR、Mx1、プロゲステロン、RU486、及びラパマイシン誘導プロモーターから成る群から選択される。
【0164】
本発明のプロモーターは、構成的プロモーターにしてよく、限定はされないが、CAGプロモーター、CMVプロモーター、ヒトUbiCプロモーター、RSVプロモーター、EF-1αプロモーター、SV40プロモーター、及びMt1プロモーターから成る群を含む。
【0165】
プロモーターに加え、発現ベクターは、1つ以上のポリアデニル化配列(群)を含んでもよい。ポリアデニル化配列は、転写産物のポリペプチドへの翻訳に関して、成熟mRNAの生産に必要となる。本発明の一実施形態において、ポリアデニル化配列は、本発明のTH又はGCH-1をコードする配列と作動可能に連結される。より好適な実施形態において、ポリアデニル化配列の5’末端は、本発明のTH又はGCH-1をコードする配列の3’末端と作動可能に連結される。より好適な実施形態において、前記ポリアデニル化配列は、SV40ポリアデニル化配列である。
【0166】
本発明の一実施形態において、前記第1の発現カセット又は前記第2の発現カセットは、ポリアデニル化配列を含む。
【0167】
本発明の別の実施形態において、前記第1の発現カセット及び前記第2の発現カセットは、両方ともポリアデニル化配列を含む。
【0168】
一実施形態において、ポリアデニル化配列は、SV40ポリアデニル化配列であり、前記ポリアデニル化配列の5’末端は、本明細書に定義される第1及び/又は前記第2のヌクレオチド配列の3’と作動可能に連結される。
【0169】
本発明の一実施形態において、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする前記第1のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.18の配列を含む。
【0170】
本発明の別の実施形態において、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする前記第2のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.21の配列を含む。
【0171】
IRESは、内部リボソーム進入部位の略であり、より大きなタンパク質合成プロセスの一部として、mRNA配列の途中で翻訳開始を可能にするヌクレオチド配列である。一実施形態において、内部リボソーム進入部位(IRES)は、本発明の発現ベクター構築物に含まれてもよい。
【0172】
遺伝子配列を宿主DNAに挿入するために、ウイルスは、長末端反復(LTR)及び逆方向末端反復(ITR)を含む、いわゆる反復又は末端反復と呼ばれる数千回まで繰り返すDNAの配列を使用する場合が多く、前記反復配列は、5’及び3’末端反復の両方としてよい。ITRは、1本鎖ベクターDNAが宿主細胞DNAポリメラーゼ複合体により2本鎖DNAに転換された後、核におけるコンカテマー形成を支援する。ITR配列は、ウイルスベクター、好ましくはAAV、より好ましくはAAV2に由来してよい。
【0173】
一実施形態において、本発明によるベクターの発現カセットは、5’末端反復及び3’末端反復を含む。
【0174】
一実施形態において、前記5’及び3’末端反復は、逆方向末端反復[ITR]及び長末端反復[LTR]から選択される。
【0175】
一実施形態において、前記5’及び3’末端反復は、AAV逆方向末端反復[ITR]である。
【0176】
他の一実施形態において、前記逆方向末端反復は、SEQ ID NO.15及びSEQ ID NO.16の配列を含む。
【0177】
発現ベクターは、更に、導入遺伝子発現のレベルの増大又は調節のために、転写後調節要素等、1つ以上のエンハンサー又は調節要素を含む。これは、ウイルスベクターに含まれる1つ以上のポリヌクレオチド配列の発現を、エンハンサー又はレギュレーターの無いベクターにおける発現有効性と比較して、増加又は低減し得ることを意味する。前記エンハンサー及び/又はレギュレーターを使用することで、ベクターに含まれる2つ以上の遺伝子を差次的に発現させることも可能となる。したがって、2つ以上のポリヌクレオチド配列を有するベクター内の個別のポリヌクレオチド配列に、エンハンサー又はレギュレーターを向けることができる。エンハンサー及びレギュレーターは、限定はされないが、SP163、ラットインスリンII-イントロン又は他のイントロン、CMVエンハンサー、及びニワトリβグロブリンインスレーター又は他のインスレーターを含む。
【0178】
好適な実施形態において、本発明のポリヌクレオチド配列は、ベクターに埋め込まれた転写後調節要素により調節される。より好適な実施形態において、前記調節要素は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)である。より好適な実施形態において、前記WPREは、本発明の2つのポリヌクレオチド間の発現比を、好ましくは、THの発現を増加させることにより調節する。
【0179】
本発明の一実施形態において、前記第2のヌクレオチド配列は、転写後調節要素と作動可能に連結され、前記転写後調節要素は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)であり、前記ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素は、SEQ ID NO.22の配列を含み得る。
【0180】
特定の一実施形態において、本発明の2つのポリペプチドの発現は、THの発現がGCH1の発現より高くなる比で生じる。好適な実施形態において、TH:GCH1の比は、1:1乃至50:1、例として1:1乃至45:1、例えば1:1乃至40:1、例として1:1乃至35:1、例えば1:1乃至30:1、例として1:1乃至29:1、例えば1:1乃至28:1、例として1:1乃至27:1、例えば1:1乃至26:1、例として1:1乃至25:1、例えば1:1乃至24:1、例として1:1乃至23:1、例えば1:1乃至22:1、例として1:1乃至21:1、例えば1:1乃至20:1、例として1:1乃至19:1、例えば1:1乃至18:1、例として1:1乃至17:1、例えば1:1乃至16:1、例として1:1乃至15:1、例えば1:1乃至14:1、例として1:1乃至13:1、例えば1:1乃至12:1、例として1:1乃至11:1、例えば1:1乃至10:1、例として1:1乃至9:1、例として1:1乃至8:1、例えば1:1乃至7:1、例として7:1、例えば6:1、例として5:1、例えば4:1、例として3:1、例えば2:1乃至8:1、例として3:1乃至7:1である。
【0181】
発現比が所望の範囲となるように制御するためには、幾つかの可能性が存在する。試料内に存在するmRNAのレベルは、RT-PCRにより測定し得る。RT-PCRでは、cDNAの2本鎖のそれぞれに定義された配列に対して相補的な1対のプライマーを利用する。これらのプライマーは、その後、DNAポリメラーゼにより伸長し、鎖の複製を各サイクル後に作成して対数増幅を行う。RT-PCRには、3つの主要ステップが含まれる。第1のステップは、逆転写であり、逆転写酵素及びプライマーを用いて、RNAをcDNAに逆転写する。次のステップは、dsDNAの変性を含み、2本鎖は分離され、プライマーは、より低い温度で再結合し、新たな連鎖反応を開始することが可能となる。
【0182】
PCR増幅の最後のステップは、耐熱性のTaq DNAポリメラーゼにより行われるプライマーからのDNAの伸長である。アンプリコンは、増幅が進展する際に、蛍光レポータ分子を用いて視覚化することができる。
【0183】
タンパク質の量は、幾つかの方法で測定し得る。
【0184】
ポリヌクレオチドレベルは、ラジオイムノアッセイ(RIA)により検出し得る。RIAは、生物検定を用いる必要無く抗原の濃度を測定するために使用される非常に敏感な手法である。ラジオイムノアッセイを行うためには、多くの場合はチロシンに付着させたヨウ素のγ放射性同位体により標識することで、既知の量の抗原を放射性とする。この放射性標識抗原を、その抗原に対する既知の量の抗体と混合し、結果として、両方を互いに化学的に結合させる。その後、未知の量の同じ抗原を含む患者からの血清試料を添加する。これにより、血清からの無標識(又は「コールド」)抗原は、抗体結合部位について放射性標識抗原と競合する。「コールド」抗原の濃度が増加すると、その中の更に多くが抗体と結合し、放射性標識変異体に取って代わり、遊離放射性標識抗原に対する抗体結合放射性標識抗原の比を減少させる。その後、結合抗原を非結合抗原から分離し、上清に残存する遊離抗原の放射能を測定する。既知の標準を用いて、患者の血清における抗原の量を導くことが可能な結合曲線を生成することができる。
【0185】
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を利用してもよい。ELISAは、試料中のタンパク質又は他の任意の抗原の存在を検出するために使用される定量的手法である。ELISAでは、未知の量の抗原を表面に付着させ、その後、特異抗体を表面に流し、抗原と結合可能にする。この抗体は酵素に結合しており、最終ステップにおいて、酵素を何らかの検出可能な信号に転換可能な基質を加える。
【0186】
間接ELISA、サンドウィッチELISA、競合ELISA、及びリバースELISAを含め、幾つかの種類のELISAが存在している。化学発光免疫測定法及び解離促進ランタニドイムノアッセイ等、他の免疫に基づくアッセイを使用してもよい。ネフェロメトリ及び比濁法も、タンパク質の測定に応用可能である。
【0187】
タンパク質の量を決定する他の方法は、クロマトグラフィーに基づく方法、より具体的には、液体クロマトグラフィーによるものとなる。アフィニティークロマトグラフィーは、検体と特異的分子との間の選択的な非共有相互作用に基づいている。
【0188】
イオン交換クロマトグラフィーは、イオン交換機構を用いて検体を分離する。イオン交換クロマトグラフィーは、荷電固定相を用いて荷電化合物を分離する。従来の方法では、固定相は、保持すべき化合物の逆荷電基と相互作用する荷電官能基を備えたイオン交換樹脂である。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又はゲル濾過クロマトグラフィーとしても知られている。SECは、分子をその大きさ(或いは、より正確には、流体力学的直径又は流体力学的体積)により分離するために使用される。小さな分子は、媒質の孔に進入可能であるため、溶出に長い時間がかかり、一方、大きな分子は、孔から閉め出されるため、早く溶出する。
【0189】
逆相クロマトグラフィーは、移動相の極性が固定相よりも著しく高い溶出手順である。したがって、極性化合物が最初に溶出し、非極性化合物は保持される。
【0190】
他の方法には、電気泳動が含まれる。電気泳動は、電場の影響下において、流体に対して相対的な分散粒子の運動を利用する。粒子は、その相対的な電荷に応じた速度で移動する。より具体的には、以下の電気泳動法をCD163の検出に使用し得る:ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、ロケット免疫電気泳動、アフィニティー免疫電気泳動、及び等電点電気泳動。
【0191】
フローサイトメトリーも、タンパク質量の決定に使用し得る。フローサイトメトリーでは、信号波長の光線を、流体力学的に集中させた流体の流れに当てる。多数の検出器(一部は蛍光性)を、流れが光線を通過する点に向け、1つを光線に沿った状態とし、幾つかの検出器を光線に対して垂直にする。光線を通過する0.2乃至150マイクロメートルの各懸濁粒子は、何らかの形で光を散乱させ、粒子内に見られる或いは粒子に付着させた蛍光化学物質は、励起状態となり、光源よりも長い波長で発光し得る。この散乱光と蛍光との組み合わせを検出器により取り出し、各検出器において明るさの変動を分析することにより、個々の粒子の物理的及び化学的構造について様々な種類の情報を引き出すことができる。
【0192】
ルミネックス技術は、試料からの特異的抗原を特異的に捕捉する試薬によりミクロスフィアを被覆する手法に基づいている。
【0193】
MSは、試料又は分子の元素組成を決定するための分析手法である。MSもタンパク質及び他の化合物等の分子の化学構造を明らかにするために使用される。MSの原理は、荷電分子又は分子断片を生成するために化合物をイオン化することと、その質量対電荷比の測定とにより構成される。
【0194】
酵素活性は、様々な方法で測定し得る。全ての酵素アッセイでは、経時的な基質の消費又は産物の生産を測定する。一般には、殆どの場合4種類の実験が用いられる:初速度の実験、進行曲線の実験、遷移速度の実験、又は緩和の実験。これらのアッセイには、分光光度測定、蛍光測定、熱量測定、化学発光測定、光散乱測定、放射測定、クロマトグラフィー、及びMTTアッセイ等の比色測定が含まれる。
【0195】
したがって、一実施形態において、発現比は、存在するGCH1をコードするポリヌクレオチドの量に対するTHをコードするポリヌクレオチドの量、より好ましくは、GCH1 mRNAの量に対するTH mRNAの量を測定することにより決定される。別の実施形態において、TH及びGCH1ポリペプチドの発現は、発現したタンパク質の量により測定される。更に別の好適な実施形態において、発現比は、TH及びGCH1ポリペプチドの酵素活性を測定することにより決定される。
【0196】
本発明の一実施形態において、TH:GCH1の比は、少なくとも3:1、例として4:1、例えば5:1、例として6:1、例えば7:1、例として10:1、例えば15:1、例として20:1、例えば25:1、例として30:1、例えば35:1、例として40:1、例えば45:1、例として50:1である。
【0197】
本発明の好適な実施形態において、TH:GCH1の比は、7:1である。
【0198】
一実施形態において、本発明のTH及びGCH1の発現レベル間の比は、発現したTH及びGCH1酵素の活性を測定することにより決定される。
【0199】
別の実施形態において、本発明のTH及びGCH1の発現レベル間の比は、カテコールアミン/ドーパミン生合成の中間産物であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)の量を測定することにより決定される。
【0200】
別の実施形態において、本発明のTH及びGCH1の発現レベル間の比は、転写されたmRNAの量を測定することにより決定される。
【0201】
別の実施形態において、本発明のTH及びGCH1の発現レベル間の比は、発現したタンパク質の量を測定することにより決定される。
【0202】
チロシンヒドロキシラーゼ
【0203】
チロシンヒドロキシラーゼ、略称THは、ドーパミンの前駆物質である3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)へのチロシンの転換を触媒するモノオキシゲナーゼである。TH活性は、環境の変化とニューロン及びホルモン刺激とに応答して、転写及び転写後機構により調整される。TH活性の最も急性の調節は、リン酸化反応を介したタンパク質の転写後修飾により発生する。
【0204】
上述したように、チロシンヒドロキシラーゼの主な機能は、チロシンのドーパミンへの転換である。THは、主にドーパミン作動性ニューロンに見られるが、これらに限定されない。TH遺伝子は、胚発生に必須であり、THノックアウト遺伝子型は、マウスにおいて胎生期14日以内に致死する一方、TH突然変異についてヘテロ接合性であるマウスでは、通常、カテコールアミンレベルの僅かな減少のみが生じる。TH酵素は、特異性が高く、インドール誘導体を受け入れず、カテコールアミンの生産に関与する他の多くの酵素が受け入れることから、これは普通とは異なる。カテコールアミンの合成における律速酵素として、THは、アドレナリン作動性ニューロンの生理において重要な役割を有する。ドーパミン等のカテコールアミンは、前記アドレナリン作動性ニューロンの信号伝達における主要な要素である。アドレナリン作動性ニューロンの機能不良は、一般に、末梢神経障害、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、虚血性発作、急性脳損傷、急性脊髄損傷、神経系腫瘍、多発性硬化、末梢神経外傷又は損傷、神経毒への曝露、糖尿病又は腎機能不全等の代謝疾患、及び感染性因子による損傷といった幾つかの神経変性疾患、或いは、鬱病等の気分障害を発生させる。
【0205】
本発明の構築物及び方法により投与されるTHは、パーキンソン病の治療に使用し得る。
【0206】
本発明のTHをコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14に記載されている。好適な実施形態において、本発明は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、及びSEQ ID NO.12と、前記SEQ ID NOに対して少なくとも70%の配列同一性を備え、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、及びSEQ ID NO.12との75%の配列同一性、例えば少なくとも80%の配列同一性、例として少なくとも85%の配列同一性、例えば少なくとも90%の配列同一性、例として少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性、例として少なくとも97%の配列同一性、例えば少なくとも98%の配列同一性、例として少なくとも99%の配列同一性を備える、THポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列変異体とに関する。
【0207】
本発明のベクター構築物に含まれる、THをコードするポリヌクレオチドは、更に、生物活性を有するTHポリペプチドの断片又は変異体をコードしてもよい。
【0208】
好適な実施形態において、本発明によりコードされたTHポリヌクレオチドのこうした断片又は変異体は、少なくとも50個の隣接アミノ酸、例として75個の隣接アミノ酸、例えば100個の隣接アミノ酸、例として150個の隣接アミノ酸、例えば200個の隣接アミノ酸、例として250個の隣接アミノ酸、例えば300個の隣接アミノ酸、例として350個の隣接アミノ酸、例えば400個の隣接アミノ酸、例として450個の隣接アミノ酸を含み、問題となる配列において指定された任意のアミノ酸が異なるアミノ酸へ変化するのは、このように変化する前記断片又は変異体内のアミノ酸が15個以内の場合である。
【0209】
SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14の突然変異及び置換したもの及び本発明のコードされたTHポリペプチドも対象となる。一実施形態において、アミノ酸配列における置換は、保存的であり、アミノ酸は、類似する化学的及び又は物理的特性を有する別のアミノ酸と置換される。突然変異は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14及び/又はコードされたTHポリペプチド内の1つ以上の部位で発生し得る。好適な実施形態において、本発明は、例えば、中立突然変異又はサイレント突然変異等、THに生物活性を与える任意の突然変異に関する。より好適な実施形態において、本発明は、セリン残基S8、S19、S31、S40、又はS404の1つ以上が変化した突然変異に関する。
【0210】
一実施形態において、本発明によるベクター構築物により発現される、生物活性を有する断片は、少なくとも50個の隣接アミノ酸を含み、選択される配列において指定された任意のアミノ酸が異なるアミノ酸へ変化するのは、このように変化する配列内のアミノ酸残基が15個以内の場合である。
【0211】
一実施形態において、本発明によるベクター構築物により発現されるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチドは、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも75%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも80%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも85%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも90%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも95%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも96%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも97%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも98%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも99%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと100%同一である。
【0212】
一実施形態において、本発明によるベクター構築物により発現される生物活性を有する断片は、チロシンヒドロキシラーゼの触媒ドメインである。
【0213】
一実施形態において、本発明によるベクター構築物により発現される生物活性を有する断片は、突然変異したチロシンヒドロキシラーゼポリペプチドであり、残基S19、S31、S40、又はS404の1つ以上が別のアミノ酸残基に変化している。
【0214】
GTPシクロヒドロラーゼ1
【0215】
GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)は、GTPシクロヒドロラーゼ酵素群の構成要素である。GCH1は、葉酸及びビオプテリン生合成経路の一部となる。GCH1は、テトラヒドロビオプテリン(BH4)生合成における第1の律速酵素であり、GTPの7,8-DHNP-3’-TPへの転換を触媒する。BH4は、モノアミン神経伝達物質セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT))、メラトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、及びアドレナリンの生合成において、芳香族アミノ酸ヒドロキシラーゼ(AAAH)が必要とする必須補助因子である。この遺伝子における突然変異は、悪性のフェニルケトン尿症及び高フェニルアラニン血症と、L-DOPA反応性ジストニアとに関連する。異なるイソ型をコードする、選択的にスプライシングされた幾つかの転写変異体が記述されているが、しかしながら、全ての変異体が機能的酵素を発生させる訳ではない。
【0216】
GCH1は、多数の臨床的な意味を有し、幾つかの障害に関与する。GCH1の欠損は、GTPシクロヒドロラーゼ1欠乏症の原因となる(GCH1D、GTPシクロヒドロラーゼ1欠乏症による非定型重度フェニルケトン尿症としても知られる)。GCH1Dは、テトラヒドロビオプテリン欠乏症による悪性高フェニルアラニン血症の原因の1つである。更に、神経伝達物質ドーパミン及びセロトニンの枯渇による神経伝達不全にも関与し、パーキンソン病等の疾患を引き起こす。主な症状には、精神運動遅滞、緊張障害、痙攣、眠気、易刺激性、異常運動、高体温、唾液分泌過多、及び嚥下困難が含まれる。一部の患者は、重度高フェニルアラニン血症とジストニア5型(日内変動を呈するジストニア-パーキンソニズム)との中間の重症度の表現型を示す場合がある。この中間表現型では、顕著な運動遅滞が有るが、精神遅滞は無く、高フェニルアラニン血症は有ったとしても最小限である。GCH1の欠損は、ジストニア5型(DYT5)の原因であり、これは日内変動を呈する進行性ジストニア、常染色体優性セガワ症候群、又は日内変動を呈するジストニア-パーキンソニズムとしても知られる。DYT5は、DOPA反応性ジストニアである。ジストニアは、姿勢異常につながることが多い持続性の不随意筋収縮の存在により定義される。DYT5は、下肢のジストニアによる歩行の問題及び夕方にかけてのジストニアの悪化と共に、一般に、小児期に見られる。顕著な日内変動を示す姿勢及び運動の乱れを特徴とする。体幹の捻転はまれである。症状は、睡眠後に軽減され、疲労及び運動により悪化する。L-DOPAには副作用も無く良好に反応する。
【0217】
本発明の構築物及び方法により投与されるGCH1は、パーキンソン病の治療に使用し得る。
【0218】
本発明のGCH1をコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6に記載されている。好適な実施形態において、本発明は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4と、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4に対して少なくとも70%の配列同一性を備え、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、及びSEQ ID NO.4との75%の配列同一性、例えば少なくとも80%の配列同一性、例として少なくとも85%の配列同一性、例えば少なくとも90%の配列同一性、例として少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性、例として少なくとも97%の配列同一性、例えば少なくとも98%の配列同一性、例として少なくとも99%の配列同一性を備える、GCH1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列変異体とに関する。
【0219】
本発明のベクター構築物に含まれる、GCH1をコードするポリヌクレオチドは、更に、生物活性を有するGCH1ポリペプチドの断片又は変異体をコードしてもよい。
【0220】
好適な実施形態において、本発明によりコードされたGCH1ポリヌクレオチドのこうした断片又は変異体は、少なくとも50個の隣接アミノ酸、例として75個の隣接アミノ酸、例えば100個の隣接アミノ酸、例として150個の隣接アミノ酸、例えば200個の隣接アミノ酸、例として250個の隣接アミノ酸を含み、問題となる配列において指定された任意のアミノ酸が異なるアミノ酸へ変化するのは、このように変化する前記断片又は変異体内のアミノ酸が15個以内の場合である。
【0221】
SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6の突然変異及び置換したもの及び本発明のコードされたGCH1ポリペプチドも対象となる。一実施形態において、アミノ酸配列における置換は、保存的であり、アミノ酸は、類似する化学的及び又は物理的特性を有する別のアミノ酸と置換される。突然変異は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6及び/又はコードされたGCH1ポリペプチド内の1つ以上の部位で発生し得る。好適な実施形態において、本発明は、例えば、中立突然変異又はサイレント突然変異等、GCH1に生物活性を与える任意の突然変異に関する。
【0222】
一実施形態において、本発明によるベクター構築物により発現される、生物活性を有する断片は、少なくとも50個の隣接アミノ酸を含み、選択される配列において指定された任意のアミノ酸が異なるアミノ酸へ変化するのは、このように変化する配列内のアミノ酸残基が15個以内の場合である。
【0223】
一実施形態において、本発明によるベクター構築物により発現されるGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチドは、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも75%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも80%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも85%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも90%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも95%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも96%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも97%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも98%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも99%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと100%同一である。
【0224】
神経変性疾患の治療のための標的組織
【0225】
神経変性疾患の治療における課題の1つは、薬剤を局所的に付与し、大量の副作用を回避することである。現在、脳障害を治療する殆どの薬剤は、脳全体に到達する形で投与され、殆どの場合は経口投与される。更に、経口で送達された場合、薬剤は、レベルの変動が患者に問題を引き起こす標的領域に、拍動する形で到達する。in vivo遺伝子治療にとって重要なパラメータは、適切な標的組織の選択である。パーキンソン病の治療では、被殻及び尾状核が特に関係する。更に具体的には、治療は、黒質の緻密部領域のドーパミン作動性ニューロンに集中させるべきである。パーキンソン病では、現在の選択薬であるL-DOPAによる長期的な治療に続いて起こるジスキネジアは、脳内での薬物レベルの変動の結果と考えられている。
【0226】
パーキンソン病の前臨床動物モデルにおいて試験されている1手法は、ドーパミン欠乏が最も進行する被殻及び尾状核においてドーパミン置換を局所的に実施可能な遺伝子治療手法を用いて、ドーパミン置換戦略を改良することである。この手法は、「酵素補充療法」と呼ばれる。この治療の理論的根拠は、経口L-DOPA投薬により誘発される重度のジスキネジアが、静脈経路又は十二指腸経路を介して注入したL-DOPAにより軽減可能であることを示唆した、PD患者における臨床観察に由来する。したがって、現在の仮説では、ジスキネジアは、少なくとも部分的には、経口L-DOPA送達のパラダイムにより生じるDAの断続的な拍動性の供給により発生する。
【0227】
ドーパミン又はL-DOPAを供給する代わりに、遺伝子治療では、ドーパミンを生産する酵素の調節が可能となる。
【0228】
したがって、本発明の特定の実施形態では、TH及びGCH1酵素をコードするポリヌクレオチドを、パーキンソン病の治療を施すべき個体の脳内へ送達する。好適な実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、単一のAAVベクターにおいて送達される。より好適な実施形態において、前記ポリヌクレオチドを含む前記ベクターは、前記個体の脳内、好ましくは尾状核及び/又は被殻内へ送達される。更により好適な実施形態において、前記ベクターは、黒質の緻密部領域のドーパミン作動性ニューロンにおいて効果的となるように送達される。
【0229】
投薬及び送達プロトコル
【0230】
重要なパラメータは、標的組織内へ送達されるべきTH及びGCH1の用量である。この点において、「単位用量」とは、一般に、TH及びGCH1組成物の1ml当たりのTH及びGCH1の濃度を示す。ウイルスベクターでは、TH及びGCH1濃度は、神経栄養組成物の1ml当たりのウイルス粒子数により定義し得る。ウイルス発現ベクターを用いたTH及びGCH1の送達には、TH及びGCH1の各単位用量は、2.5乃至25μLのTH及びGCH1組成物を含むことが最適であり、組成物は、医薬的に許容可能な流体中のウイルス発現ベクターを含み、1mlのTH及びGCH1組成物当たり、1010乃至1015までのTH及びGCH1発現ウイルス粒子を提供する(図7に例示)。こうした高い力価は、本発明において説明するAAVベクター等のアデノ随伴ウイルスに特に有用である。実施例2では、本発明のベクターの投薬形態を説明している。
【0231】
一実施形態において、必要とする患者に投与するベクターの用量は、被殻灰白質1ミリリットル当たり1.5E+10乃至2.2E+12のベクターゲノムコピーである。
【0232】
別の実施形態において、カテコールアミン機能不全治療用の薬剤の調製に使用するベクターの用量は、ベクターの投与対象となる個体の被殻灰白質1ミリリットル当たり1.5E+10乃至2.2E+12のベクターゲノムコピーである。
【0233】
好適な実施形態において、投与部位は、脳の線条体であり、特に、尾状核及び/又は被殻である。被殻内への注入により、脳の様々な個別の領域、例えば、淡蒼球、扁桃体、視床下核、又は黒質を標識化することができる。好適な実施形態において、(複数の)標的部位(又はその1つ)は、黒質であり、より好ましくは黒質内の緻密部領域である。注入は、線条体及び黒質内の両方に行ってもよい。
【0234】
特定の標的部位において、ベクター系は、標的細胞を形質導入し得る。標的細胞は、ニューロン、星状細胞、乏突起膠細胞、小グリア細胞、又は上衣細胞等、神経組織に見られる細胞にしてよい。好適な実施形態において、標的細胞は、ニューロンであり、特に黒質内の緻密部領域のドーパミン作動性ニューロンである。
【0235】
ベクター系は、好ましくは、直接注入により投与される。脳内(特に線条体内)への注入のための方法は、当該技術分野において周知である(Bilang-Bleuel et al (1997) Proc. Acad. Natl. Sci. USA 94:8818-8823; Choi-Lundberg et al (1998) Exp. Neurol.154:261-275; Choi-Lundberg et al (1997) Science 275:838-841; and Mandel et al (1997) Proc. Acad. Natl. Sci. USA 94:14083-14088)。定位的注入を行ってよい。
【0236】
当業者には、本発明で採用する直接送達方法により、in vivo遺伝子治療に関連する制限的な危険因子が取り除かれることは明らかであろう。本発明において、送達は直接的であり、送達部位は選択されるため、分泌されたTH及びGCH1の拡散は、制御され且つ事前に定められた脳の領域で生じ、標的ニューロンとの接触が最適化される一方、非標的細胞との接触が最低限となる。
【0237】
ベクターカプシド特性の改変により、髄腔内(IT)注入又は脳室内への注入(ICV)後に、線条体領域をベクターの標的とすることも可能となる。これは、カプシドの特異的領域の修飾により達成し得る。例えば、位置587のアミノ酸の突然変異により、AAV血清型2のHSPG結合親和性を取り除き、細胞型特異的な他の細胞表面残基との結合を可能にし得る。別の代替手法は、混合された2つの血清型から異なる結合特性を受け継いだキメラAAV血清型を生成することである。
【0238】
医薬品
【0239】
本発明で使用するTH及びGCH1組成物を形成するために、TH及びGCH1コード発現ウイルスベクターは、医薬的に許容可能な懸濁液、溶液、又は乳液中に入れてよい。適切な媒体には、生理食塩水及びリポソーム製剤が含まれる。
【0240】
更に具体的には、医薬的に許容可能な担体は、無菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及び乳液を含み得る。非水溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の野菜油、及びオレイン酸エチル等の注入可能な有機エステルが含まれる。水性担体には、水、アルコール/水溶液、乳液、又は懸濁液が含まれ、生理食塩水及び緩衝媒体が含まれる。非経口手段には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル液、又は不揮発性油が含まれる。
【0241】
静脈内媒体には、流体及び栄養補液、電解質補液(リンゲルデキストロースに基づくもの等)などが含まれる。
【0242】
保存料及び他の添加物、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガス等が存在してもよい。更に、TH及びGCH1導入遺伝子の組成物は、当該技術分野において周知の手段を用いて凍結乾燥し、その後、本発明により元に戻して使用し得る。コロイド分散系を標的遺伝子の送達に使用してもよい。
【0243】
コロイド分散系には、巨大分子複合体、ミクロスフィア、ビーズ、及び脂質に基づく系が含まれ、水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、及びリポソームが含まれる。リポソームは、in vitro及びin vivoでの送達手段として有用な人工の膜小胞である。0.2乃至4.0μmの大きさの大単ラメラ小胞(LUV)は、大きなマクロ分子を含有する水性緩衝液の相当な割合を封入可能であることが明らかとなっている。RNA、DNA、及び無傷ビリオンを、水性の内部に封入し、生物活性を有する形態で細胞へ送達することができる(Fraley, et al., Trends Biochem. Sci., 6: 77,1981)。哺乳類細胞に加え、リポソームは、植物、酵母、及びバクテリア細胞において動作可能にコードした導入遺伝子の送達に使用されてきた。リポソームを効率的な遺伝子導入手段とするためには、以下の特性が存在するべきである:(1)生物活性を損なうことのない、TH及びGCH1をコードする遺伝子の高い効率での封入、(2)非標的細胞と比較して、選択的且つ実質的な標的細胞との結合、(3)標的細胞の細胞質に対する、小胞の水性内容物の高い効率での送達、及び(4)遺伝情報の正確且つ効果的な発現(Mannino, et al., Biotechniques, 6: 682,1988)。
【0244】
リポソームの生産に有用な脂質の例には、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン等のホスファチジル化合物、スフィンゴリピド、セレブロシド、及びガングリオシドが含まれる。特に有用なものは、脂質部分が14乃至18個の炭素、特に16乃至18個の炭素を含み飽和している、ジアシルホスファチジルグリセロールである。リン脂質の例としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及びジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。
【0245】
リポソームのターゲティングは、解剖学的及び機構的要因に基づいて分類することができる。解剖学的分類は、選択性のレベル、例えば、臓器特異性、細胞特異性、及び細胞小器官特異性に基づく。機構的ターゲティングは、受動的か能動的かに基づいて区別することができる。受動的ターゲティングでは、洞様毛細血管を含む臓器の細網内皮系(RES)の細胞に分布しやすいというリポソームの自然な性質を利用する。
【0246】
一方、能動的ターゲティングでは、自然に局在する部位以外の臓器及び細胞型に対するターゲティングを達成するために、モノクローナル抗体、糖、糖脂質、又はタンパク質といった特異的リガンドにリポソームを結合させる、或いは、リポソームの組成又はサイズを変化させることによるリポソームの改変が含まれる。
【0247】
標的遺伝子送達系の表面は、様々な形で修飾し得る。リポソーム標的送達系の場合、標的化リガンドのリポソーム2重層との安定した関係を維持するために、脂質基をリポソームの脂質2重層に組み込むことができる。様々な連結基を用いて、脂質鎖を標的化リガンドに接合することができる。
【0248】
したがって、一態様において、本発明は、パーキンソン病の治療方法において使用するための医薬組成物に関し、前記組成物は、1ベクター発現系と、前記ベクターを大脳基底核へ送達するための処方とを含み、前記1ベクター発現系は、
a)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まないことを条件とする、第1及び第2の発現カセット、又は
b)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である、第1及び第2の発現カセット、又は
c)プロモーター、第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記プロモーターは、前記第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結され、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合しており、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする、発現カセット、又は
d)第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合しており、前記第2のヌクレオチド配列に結合される前記翻訳開始ヌクレオチド配列に結合される前記第1のヌクレオチド配列を含む配列は、5’及び3’末端反復に隣接し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記末端反復は、作動可能に連結されるポリペプチドの発現を指揮することが可能な配列を含む、発現カセット、を備える。
【0249】
本発明の一実施形態において、前記第1の発現カセットにより発現されるGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットにより発現されるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である。
【0250】
本発明の一実施形態において、発現されるGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットにより発現される前記チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である。
【0251】
本発明の一実施形態において、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、コードされるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である。
【0252】
本発明の一実施形態において、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、コードされるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である。
【0253】
本発明の一実施形態において、本明細書に定義される医薬組成物は、マニトール、ヘパリン、又はガドリニウムに基づくMRI造影剤を含む。
【0254】
別の実施形態において、本明細書に定義される医薬組成物は、栄養素又は可逆的プロテアソーム阻害剤を含む。
【0255】
医学的使用及び治療方法
【0256】
一態様において、本発明のベクターは、薬剤として使用される。
【0257】
一態様において、本発明は、カテコールアミン機能不全に関連する疾患を治療する薬剤の調製のための、本明細書に定義されるベクターの使用に関する。
【0258】
一態様において、本発明は、カテコールアミン機能不全に関連する疾患を治療する方法において使用する、本明細書に定義されるベクターに関する。
【0259】
一態様において、本発明は、必要とする患者において、カテコールアミン機能不全に関連する疾患を治療する方法に関し、前記方法は、本明細書に定義されるベクターを前記個体に投与することを備える。
【0260】
本発明の一実施形態において、カテコールアミン機能不全は、カテコールアミン欠乏である。
【0261】
本発明の他の実施形態において、カテコールアミン機能不全は、カテコールアミン過多である。
【0262】
好適な一実施形態において、カテコールアミン欠乏は、ドーパミン欠乏である。
【0263】
別の実施形態において、カテコールアミン過多は、ドーパミン過多である。
【0264】
一実施形態において、カテコールアミン機能不全に関連する前記疾患は、中枢及び/又は末梢神経系の疾患、障害、又は損傷である。
【0265】
他の実施形態において、中枢及び/又は末梢神経系の前記疾患、障害、又は損傷は、神経変性障害である。
【0266】
別の実施形態において、カテコールアミン機能不全に関連する前記疾患は、大脳基底核の疾患である。
【0267】
一実施形態において、本発明のベクターを用いて治療可能な疾患は、パーキンソン病(PD)、DOPA反応性ジストニア、ADHD、統合失調症、鬱病、血管性パーキンソニズム、本態性振戦、慢性ストレス、遺伝的ドーパミン受容体異常、慢性的なオピオイド、コカイン、アルコール、又はマリファナの使用、副腎不全、高血圧、ノルアドレナリン欠乏、外傷後ストレス障害、病的賭博障害、認知症、レヴィー小体認知症から成る群から選択される。
【0268】
好適な実施形態において、本発明のベクターを用いて治療可能な神経変性障害は、パーキンソン病(PD)である。
【0269】
一態様において、本発明は、神経系障害の治療用の薬剤を調製するための、本発明によるベクターの使用に関する。神経系障害は、末梢神経系又は中枢神経系の障害となる場合がある。
【0270】
治療とは、治癒的治療のみではなく、予防的(preventive)(完全な予防ではない)又は防止的(prophylactic)治療も意図している。治療は、改善的(完全な改善ではない)又は対症的であってもよい。
【0271】
好ましくは、CNS障害は、神経変性又は神経疾患であり、本発明の好適な一実施形態において、神経変性疾患は、パーキンソン病である。
【0272】
神経系疾患は、必要とする個体に対して、治療的に有効な量の本発明のウイルスベクター、又は治療的に有効な量の本発明の医薬組成物を投与することにより治療し得る。
【0273】
医薬組成物
【0274】
したがって、一態様において、本発明は、本明細書に定義されるベクターと、医薬的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物に関する。
【0275】
本発明の一実施形態において、本明細書に定義される医薬組成物のpHは、pH4乃至pH9である。
【0276】
別の実施形態において、医薬組成物の注入は、頭蓋内、大脳内、静脈内、硝子体内、鼻腔内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、ボーラス又は連続投与である。
【0277】
一実施形態において、前記医薬組成物は、注入、舌下錠又はスプレー、皮膚投与、又は吸入による投与用に処方される。
【0278】
一実施形態において、本明細書に定義される医薬組成物は、注入、坐薬、経口投与、舌下錠又はスプレー、皮膚投与、吸入による投与用、或いは植込型生体適合性カプセルを使用した局所投与用に処方される。
【0279】
他の実施形態において、注入は、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、ボーラス又は連続投与である。
【0280】
一実施形態において、医薬組成物は、30分乃至24時間の間隔で投与される。
【0281】
別の実施形態において、医薬組成物は、1乃至6時間の間隔で投与される。
【0282】
本発明の一実施形態において、治療の継続時間は、6至72時間である。
【0283】
本発明の重要な一態様において、治療の継続時間は、一生涯である。
【0284】
他の実施形態において、本明細書に定義される医薬組成物は、注入、坐薬、経口投与、舌下錠又はスプレー、皮膚投与、吸入による投与用、或いは植込型生体適合性カプセルを使用した局所投与用に処方される。
【0285】
一実施形態において、本発明による医薬組成物中の有効成分、即ち、ベクターの用量は、体重1kg当たり10μg乃至500mg、例として20μg乃至400mg、例えば30μg乃至300mg、例として40μg乃至200mg、例えば50μg乃至100mg、例として60μg乃至90μg、例えば70μg乃至80μgである。
【0286】
他の実施形態において、本発明による医薬組成物は、72時間乃至少なくとも7日間、例として80時間、例えば96時間、例として5日間、例えば6日間、例として週1回の間隔で投与される。
【0287】
他の実施形態において、本発明による医薬組成物は、7日間乃至1ヶ月、例として2週間に1回、例えば3週間毎の間隔で投与される。
【0288】
植込型宿主細胞
【0289】
一態様において、本発明は、本発明に定めたベクターを含む単離宿主細胞に関する。
【0290】
一態様において、本発明は、本発明によるベクターにより形質導入した単離宿主細胞に関する。こうした細胞は、コードされたTH及びGCH1を正しく分泌及び処理可能であることから、好ましくは、哺乳類宿主細胞である。
【0291】
好適な種には、齧歯類(マウス、ラット)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、サル、ヒトから成る群が含まれる。
【0292】
本発明のベクターによる形質導入の良好な候補となる初代培養及び細胞株の例には、CHO、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b、神経細胞、胎児細胞、ARPE-19、MDX12、C2C12、HeLa、HepG2、線条体細胞、ニューロン、星状細胞、介在ニューロンから成る群が含まれる。
【0293】
一実施形態において、本発明の宿主細胞は、真核細胞、好ましくは哺乳類細胞、より好ましくは霊長類細胞、より好ましくはヒト細胞から成る群から選択される。
【0294】
別の実施形態において、本発明の宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、CHO-K1、ベビーハムスター腎臓細胞、マウス線維芽細胞-3T3細胞、アフリカミドリザル細胞株、ラット副腎褐色細胞腫、AT3細胞、ラットグリア腫瘍細胞、ラット神経細胞、及びラット海馬細胞から成る群から選択される。
【実施例】
【0295】
実施例1:パーキンソン病の動物モデルにおける連続的DOPA送達用の単一rAAVベクターの効果
【0296】
材料及び方法
【0297】
実験設計
【0298】
下記実験の全てのラット(無傷対照群の動物除く)では、内側前脳束(MFB)への6-OHDAの片側注入を施し、黒質線条体路の完全損傷を達成した。損傷後4乃至5週目に、全ての損傷動物を、アンフェタミン誘発回転試験後、回転試験において選別した[Ungerstedt and Arbuthnott: Quantitative recording of rotational behavior in rats after 6-hydroxy-dopamine lesions of the nigrostriatal dopamine system; Brain Res 1970 24 485-93]。DA枯渇側への>6.0全身回転/分を示した動物のみを調査に含めた(n=54)。
【0299】
確認済み6-OHDA損傷を有する20匹のラットを、円筒試験及びアンフェタミン及びアポモルヒネ誘発性の回転における成績に基づいて、2群に割り振った(Les-Sham及びTH-GCH1)(図3)。損傷後6週目に、TH-GCH1群の動物に、3.5E10 gcのrAAV5-TH:GCH1ベクターの定位的注入を施し、対照群には、頭皮を開き、正しい部位に穴を開けるが、硬膜は貫通させないシャム手術を施した。rAAV注入後5乃至10週目に、同じ薬物誘発性の回転試験を用いて動物を再試験した。rAAV後5、9、及び13週目に、同じロトメータ機器において、前回の薬理学的チャレンジ無し(自発的回転)で動物を採点した。円筒試験は、注入後5、12、及び14週目に繰り返した。運動学習、感覚運動統合、及び運動機能の治療効果を調査するために、治療の治癒的効果が十分に現れた後、足踏み、階段、及び回廊試験の訓練を開始した。足踏み試験は、rAAV注入後5、10、及び12週目に行った。階段試験は、形質導入後22乃至24週目に、21日間に渡る単一の試験セッションとして行った。その後、動物に回廊試験を行い、28週目に致死させた。
【0300】
確認済みの6-OHDA損傷を有する40匹のラットを、円筒試験、足踏み試験、及び回廊試験における成績に基づいて4群に割り振った。損傷後6週目に、動物には、等量のrAAV5-TH:GCH1ベクター[5μl]の定位的注入を施した。4群に、ベクター調製物の濃度を増加させつつ与え、次の4用量群を生じさせた:0.7%[9.1E8 gc]GCH1-TH(n=10)、3.4%[4.6E9 gc]GCH1-TH(n=10)、9.8%[1.3E10 gc]GCH1-TH(n=10)、100%[1.3E11 gc]GCH1-TH(n=10)。同じサイズの無傷年齢適合対照群を、参照として含めた(n=10)。6-OHDA損傷後5週目(AAV注入前)及びAAV後12週目の両方に、動物を回廊試験において採点した。
【0301】
確認済み6-OHDA損傷を有する8匹の動物を、回廊及びアンフェタミン誘発性の回転における成績に基づいて、2群に分けた(Les-Sham及びTH-GCH1)。TH-GCH1群の動物に、全力価のAAV5-TH:GCH1ベクターの定位的注入を以下に説明するように施し、AAV注入後少なくとも6ヶ月目に、オンラインマイクロダイアリシスを用いて評価した。全ての動物は、断頭して脳を迅速に取り除き、線条体組織を切り取り、生化学分析用に急速冷凍した。中脳は、6-OHDA損傷の検証用に4%パラホルムアルデヒド(PFA)において後固定した
【0302】
ベクター構築物
【0303】
この研究において利用したウイルスベクターは、対象となる導入遺伝子がAAV5カプシドにパッケージされたAAV2の逆方向末端反復に隣接する偽型rAAV2/5ベクターである(本明細書では単にrAAVと称する)。本発明では、導入遺伝子TH及びGCH1の両方を発現する新規のプラスミドを構築した。ここでは、2つの発現カセットを融合し、単一のAAVプラスミドとした。TH及びGCH1は、ヒトシナプシン1(Syn-1)プロモーターの下で発現させた。GCH1遺伝子には、後期SV40 poly-A配列が続き、その後ろにTH遺伝子の発現を制御する第2のSyn-1プロモーターが存在した。GCH1に対して、TH遺伝子の発現が優る状態とするために、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)の添加により、TH mRNAの輸送を向上させた。全配列は、初期SV40 poly-A配列により終了させた(図1)。rAAVベクターは、以前の記述のように、適切なトランスファープラスミドと必須アデノウイルスパッケージング遺伝子を含むヘルパープラスミドとによる2重トランスフェクション法を用いて生産した[Grimm et al: Novel tools for production and purification of recombinant adenoassociated virus vectors; Hum Gene Ther 1998 18 2745-60; Hauswirth et al: Production and purification of recombinant adeno-associated virus; Meth Enzymol 2000 316 743-61]。その後、他の詳細な記述のように、イオジキサノール段階勾配及びセファロースQカラムクロマトグラフィーにより精製を行った[Ulusoy et al: Dose Optimization for Long-term rAAV-mediated RNA Interference in the Nigrostriatal Projection Neurons; Mol Ther 2009 17 1574-84]。精製したウイルスベクター懸濁液は、他の記述のように、TaqMan定量PCRを用いて用量設定し[Ulusoy et al: Dose Optimization for Long-term rAAV-mediated RNA Interference in the Nigrostriatal Projection Neurons; Mol Ther 2009 17 1574-84]、但しプライマー及びプローブはWPRE配列を標的とした。注入したベクター懸濁液の最終的な力価は、1.0E13 gc/mとした。
【0304】
外科的処置
【0305】
全ての外科的処置は、腹腔内注入した合計量略6ml/kgのフェンタニル及びドミトール(Apoteksbolaget、スウェーデン)の20:1混合物による麻酔下で実施した。注入は、定位フレーム(Stoelting、イリノイ州ウッドデール)に動物を取り付けた状態で、10μlハミルトンシリンジを用いて行った。前後方向(AP)及び内外方向(ML)の座標は、ブレグマから計算し、背腹方向(DV)の座標は、硬膜表面から計算した[Watson and Paxinos: The rat brain in stereotaxic coordinates; Academic Press San Diego 1986]。
【0306】
6-OHDA損傷。黒質線条体路の完全損傷を達成するため、動物には、右MFBへの6-OHDA(Sigma-Aldrich AB、スウェーデン)の注入を施した(アスコルビン酸塩-生理食塩水(0.02%)中の14μgの遊離塩基を3.5μg/μlの濃度で注入)[Ungerstedt and Arbuthnott: Quantitative recording of rotational behavior in rats after 6-hydroxy-dopamine lesions of the nigrostriatal dopamine system; Brain Res 1970 24 485-93]。注入は、以下の座標において実施した:AP:-4.4mm、ML:-1.2mm、及びDV:-7.8mm、トゥースバー(tooth bar)を-2.4mmに設定[Carlsson et al: Serotonin neuron transplants exacerbate L-DOPA-induced dyskinesias in a rat model of Parkinson's disease; J Neurosci 2007 27 8011-22]。注入は、26ゲージの針をハミルトンシリンジに取り付け、1μl/分の注入速度で行い、針は、3分間余分に所定位置で維持した後、ゆっくりと引き抜いた。
【0307】
rAAVベクターの注入。ベクター処理群の動物には、リンゲル乳酸懸濁液中の5μlのrAAV5ベクターの定位的注入を施した。注入は、次の座標の2本の針経路それぞれに沿って、1.5μlのデポジット1回及び1μlのデポジット1回として行った:(1)AP:+1.0mm、ML:-2.6mm、及びDV:-4.5、-3.5mm、及び(2)AP:0mm、ML:-3.2mm、及びDV:-5.0、-4.0mm、トゥースバーを-2.4mmに設定。注入は、ハミルトンシリンジに取り付けた22ゲージの針にプルドガラスキャピラリ(外径60乃至80μm直径)を装着して行った。注入速度は0.4μl/分として、針を第1のデポジット後、1分間、第2のデポジットを送達した後、3分間、所定位置に維持した後、脳実質からゆっくりと引き抜いた。
【0308】
行動試験
【0309】
薬物誘発性回転は、D-アンフェタミン硫酸塩(2.5mg/kg、腹腔内、Apoteksbolaget、スウェーデン)又は塩酸アポモルヒネ(0.05mg/kg、皮下、Sigma-Aldrich AB、スウェーデン)の注入後、自動ロトメータボウル(AccuScan Instruments Inc.、オハイオ州コロンバス)を用いて、左右の全身回転を測定して評価し、それぞれ90及び40分間の観察を行った。回転非対称性スコアは、正味の360°回転/分により表現し、同側性回転(即ち、注入側へ向かうもの)に正の値を割り当てた。
【0310】
前肢使用の非対称性を評価する円筒試験は、基本的には[Kirik et al: Growth and functional efficacy of intrastriatal nigral transplants depend on the extent of nigrostriatal degeneration; J Neurosci 2001 21 2889-96]に記載の通りに実施し、[Schallert and Tillerson: Innovative models of cns disease: from molecule to therapy. Intervention strategies for degeneration of dopamine neurons in parkinsonism: optimising behavioral assessment of outcome; 1999 131-51]による僅かな修正を加えた。ラットを個別に20cmガラス円筒内に配置し、デジタルビデオカメラにより記録しつつ自由に移動させた。2枚の垂直な鏡をガラス円筒の後ろに配置し、円筒の全表面が画面上で明瞭に見えるようにした。動物を円筒内に残し、少なくとも20回円筒壁に触れるまでを観察した。その後、この探査段階中の円筒壁上での前肢の配置及び使用を、動物の群同一性を知らされていない観察者によるフレーム毎の分析を用いてオフラインで採点した。立ち上がりの際の円筒壁との20回の接触中に使用した足を採点し、左前足の接触数として、合計接触数のパーセンテージにより示した。この試験において、正常な動物のスコアは、平均50%となる。
【0311】
足踏み(前肢無動症)試験。前肢無動症は、[Schallert et al: Excessive bracing reactions and their control by atropine and L-DOPA in an animal analog of Parkinsonism; Exp Neurol 1979 64 33-43]により最初に記述され、[Olsson et al: Forelimb akinesia in the rat Parkinson model: differential effects of dopamine agonists and nigral transplants as assessed by a new stepping test; J Neurosci 1995 15 3863-75]により横歩き試験として修正され、以前の記述[Winkler et al: L-DOPA-induced dyskinesia in the intrastriatal 6-hydroxydopamine model of parkinson's disease: relation to motor and cellular parameters of nigrostriatal function; Neurobiol Dis 2002 10 165-86]のように準備された足踏み試験を用いて、個別のラットの群同一性を知らされていない調査者により評価した。簡潔に言うと、調査者は、両手を使ってラットをしっかりと保持し、両後足と一方の前足をテーブルから持ち上げるが、拘束していない足はテーブル表面に接触可能とする。次に、動物を、テーブル表面上で、定められた90cmの距離に渡り、一定のゆっくりとした速度で5秒間動かした。調査者は、調整する横歩き数をフォアハンド及びバックハンド方向の両方で2回に渡り採点し、平均を計算した。動物は、6-OHDA損傷後3週目の間に4日間訓練した。動物が安定した基本成績に達した5乃至7日目の平均スコアを、最終的な従属変数とした。この時点でのデータを、処理前の基礎スコアとした。したがって、最後の3日間の平均を、処理前成績スコアとして使用した。rAAV注入後6、9、12週目のその後の3回の試験セッションでは、まず1日又は2日で動物を試験に慣らした後、3日間連続で評価を行った。
【0312】
階段試験は、[Montoya et al: The "staircase test": a measure of independent forelimb reaching and grasping abilities in rats; J Neurosci Methods 1991 36 219-28]に記載の元の試験設計を、以前に[Winkler et al: Intranigral transplants of GABA-rich striatal tissue induce behavioral recovery in the rat Parkinson model and promote the effects obtained by intrastriatal dopaminergic transplants; Exp Neurol 1999 155 165-86]に記載されるように修正したものを採用して、前肢の熟練した到達能力及び把持能力を評価するために使用した。砂糖ペレット(TestDiet、バージニア州リッチモンド)を、幅広の中央プラットフォーム(35mm)により分割された2重階段のステップ上に配置し、全体を小さなプレキシグラスの箱(285×60×90mm)により囲む。動物には、最初の試験日の前、48時間、食物を与えず、試験期間中を通して食物摂取を抑制した状態を維持し(6乃至8g/日)、食物は毎日の試験セッション後にのみ与えた。回廊試験は、rAAV注入後の21週間に、単一のセッションとして実行した。動物は、10個の砂糖ペレットを両側のステップ2乃至5のそれぞれに置き(合計40ペレット/片側)、21日間連続(15分/日)で階段試験の訓練を行い、1日目を、ラットが砂糖ペレットを回収し始めた最初の日として定めた。11乃至15日目のデータを使用して、安定成績スコアとした。16乃至18及び19乃至21日目には、それぞれ砂糖ペレットを左及び右の棚上にのみ配置し、ラットに強制選択の課題を与えた。前肢技能の成績は、パーキンソン(左)側での食餌ペレット数(取上げ-落し)により表現する。失敗率は、落しのパーセンテージとして定めた((取上げ-食餌/取上げ)×100)。
【0313】
回廊試験は、6-OHDA MFB損傷後AAV注入前の5週目(所定の損傷ベースライン)、又はAAV注入後12週目又は25週目に、以前の記述[Dowd et al: The Corridor Task: a simple test of lateralised response selection sensitive to unilateral dopamine deafferentation and graft-derived dopamine replacement in the striatum; Brain Res Bull 2005 68 24-30]に従って実施し、側方化した感覚運動反応選択を調査した。簡潔に言うと、床に沿って均等に分布した、隣り合った10対の蓋が付いた回廊(150cm×7cm×23cm)の終わりにラットを配置した。各蓋は、5乃至10個の砂糖ペレットで満たした。ラットが個々のカップに鼻を突き入れる毎に、ペレットを食べたかどうかに関係なく、回収と定めた。他の回収を間に挟まずに再訪した場合は採点に含めなかった。各ラットを、20回の回収を行うまで、或いは、最長時間の5分が経過するまで試験した。試験前及び試験中は、階段試験において説明したように食物を制限し、2日間に渡り10分間、砂糖ペレットを床に散乱させた状態で回廊内に慣らした。探査行動を減らすため、採点前にラットを空の回廊内に配置した。その後、4日間に渡りラットを採点し、結果を最後の2日間の平均として示している。データは、 反対側での回収数を、行われた総回収のパーセンテージとして表現している。
【0314】
生化学分析
【0315】
12匹のラットを断頭により致死させ、その後、脳を取り出し、脳の型(brain mould)を用いて、冠状軸で2つの部分にスライスした。次に、前部の各半球から線条体組織を迅速に切り取り、ドライアイス上で個別に冷凍し、その後の分析まで-80℃で保存した。中脳-後脳領域を含む尾側部は、4%パラホルムアルデヒド(PFA)において24時間4℃で後固定し、その後、少なくとも24時間、25%スクロース中で保持した。切り取った脳組織は、同じ試料からの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるモノアミン及びBH4の検出、in vitro TH活性及びウェスタンブロット分析を可能にする、以前に記述されたプロトコルの修正版を用いて、均質化及び調製した[Romero-Ramos et al: Low selenium diet induces tyrosine hydroxylase enzyme in nigrostriatal system of the rat; Brain Res Mol Brain Res 2000 84 7-16]。簡潔に言うと、超音波破砕器を用いて、トリス酢酸緩衝液(5μl/mg、20mM、pH6.1)中の氷上で組織を均質化した。次に、100μlのホモジネートを、等量の氷温0.8mM過塩素酸中にピペットで加え、HPLC測定を行った。残りのホモジネートは、10分間に渡り、17,000G、4℃で遠心分離した。40μlの上清を、0.6%トリトンX-100を含むトリス酢酸緩衝液10μl(20mM、pH6.1)において更に希釈し、in vitro TH活性検査用に-20℃で保存した。
【0316】
マイクロダイアリシス
【0317】
マイクロダイアリシス実験(図8)をイソフルラン麻酔下で行った。長さ3mmの半透膜(35kDカットオフPES膜、Microbiotech AB)を有するマイクロダイアリシスプローブを、右(損傷及び形質導入)線条体に次の座標で挿入した:AP:+0.5mm、ML:-2.9mm、及びDV:-4.25、-3.5mm及び(2)AP:0mm、ML:-3.2mm、及びDV:-5.5、トゥースバーを-2.4mmに設定。プローブにaCSFを流量0.67μl/分で流し、直接接続したHPLC-EC機器の注入ループへの取り込みを行い、15分の時間分解能での分析を可能にした。DA及び代謝産物は、以前の記述に従って検出及び定量化した(Ulusoy et al. Presynaptic dopaminergic compartment determines the susceptibility to L-DOPA-induced dyskinesia in rats. ProcNatlAcadSci USA (2010) vol. 107 (29) pp. 13159-64)。データは、プローブの埋め込み後、少なくとも1時間の平衡後に収集した3回連続の測定の平均として示している。
【0318】
モノアミン及びBH4のHPLC分析
【0319】
過塩素酸中の組織ホモジネートを、少なくとも20分間、氷上でインキュベートした後、遠心分離した(4℃、9,000Gで15分間)。上清を、ワットマンフィルターのプレートフィルターにより、更に2分間、9,000Gで濾過した。その後、試料をミリQ濾過した脱イオン水中で1:4に希釈し、-80℃で分析まで保存した。その後、組織抽出物を、HPLC-ECにより(1)DA及びセロトニン(5-HT)、(2)DOPA、及び(3)BH4という3種類の別個の測定値において分析した。各測定値について、各試料25μlを、冷却したオートサンプラー(Spark Holland Midas)により、ガードセル(ESA5020)及びガラスカーボン電極分析セル(ESA5011)に結合された電気化学的検出器(ESA Coulochem III)へ注入した。DA/5-HT及びDOPAの検出には、逆相C18カラム(3μm ReproSil-pur、4.6mmφ、長さ150mm、Chrompack)を使用して化合物を分離し、一方、BH4の検出には、C8カラム(5μm ReproSil80、4.6mmφ、長さ33mm、Chrompack)に続く別の逆相C18カラム(5μm ReproSil-pur、4.6mmφ、長さ250mm、Chrompack)により、これを置き換えた。
【0320】
DA/5-HT検出用の移動相は、60mM酢酸ナトリウム、90μM Na2-EDTA、460μM 1-オクタンスルホン酸を9%メタノール中に含め、pHは4.2に調整した。DOPA検出用では、H3PO4によりpH3.0に調整した100mM NaH2PO4、90μM Na2-EDTA、1mM硫酸オクチルナトリウムを10%メタノール中に含めた。一方、BH4検出用の移動相は、以前に記述されたEC BH4検出プロトコル[Howells and Hyland: Direct analysis of tetrahydrobiopterin in cerebrospinal fluid by high-performance liquid chromatography with redox electrochemistry: prevention of autoxidation during storage and analysis; Clin Chim Acta 1987 167 23-30]から修正し、5%メタノール中の50mM酢酸ナトリウム、5mMクエン酸、48μM EDTA、160μM DTEにより構成し、pH5.2とした。移動相は、カテコールアミンには流量500μl/分、BH4には1ml/分で送給した。ピークの特定及び定量化は、Clarity Chromatographicソフトウェアパッケージ(DataApex、チェコ共和国、プラハ)を使用して実施した。
【0321】
組織学的分析
【0322】
動物のうち8匹を、ペントバルビタールナトリウム(Apoteksbolaget、スウェーデン)の過量投与により深麻酔とし、生理食塩水50mlにより、また、その後に、pH7.4とした0.1Mリン酸緩衝液中の、新たに調製した氷温の4%PFA250mlにより、経心的に灌流した。脳を取り出し、同じ溶液中で2時間に渡り後固定し、その後、25%スクロース中で24乃至48時間に渡り凍結保護した後、切片化した。固定した脳及び後固定した中脳領域は、半自動凍結ミクロトーム(Microm HM450)上で40μmの冠状切片とし、6つのシリーズとして収集し、不凍液(0.5Mリン酸ナトリウム緩衝液、30%グリセロール、及び30%エチレングリコール)中において-20℃で次の処理まで保存した。免疫組織化学的検査は、TH(ウサギIgG 1:10,000、Pel-Freez、アーカンソー州ロジャース)及びGCH1(特注のウサギIgG、1:5,000)に対して作成した抗体を使用して行った。染色は、ビオチン化した2次抗体(ヤギ抗ウサギBA1000、Vector Laboratories、カリフォルニア州バーリンゲーム)の使用に続いて、0.01%H2O2発色反応において3,3’-ジアミノベンジジンにより現像するアビジン-ビオチンペルオキシダーゼ溶液(ABC Elite、Vector Laboratories)による1時間のインキュベーションにより視覚化した。
【0323】
実施例2:用量の計算
【0324】
完全ドーパミン除神経のラットモデルにおける単一ベクターAAV仲介DOPA送達を利用した齧歯類の研究での発見により、我々は、機能回復に必要な用量範囲を正確に決定することが可能となった。慎重な評価により、9.1E8 gc GCH1-THの用量(0.7%として定義、表1A)が、10匹中2匹の動物に回廊試験での有意な回復をもたらしたことを発見した。次の用量である4.6E9 gc GCH1-TH(3.4%)は 10匹中8匹の動物に回復をもたらしたが、試験した最も高い2つの用量、1.3E10 gc GCH1-TH(9.8%)及び1.3E11 gc GCH1-TH(100%)では、この試験において10匹中10匹の動物の完全回復が可能となった。しかしながら、100%の用量は、より迅速な回復をもたらし、手術後3週間で既に完全となった。
【0325】
非ヒト霊長類及びヒトでの投薬同等量の計算のために、MR及び組織学的評価に関する文献データに基づいて、被殻領域の倍率を計算した(表1B)。こうしたデータから、齧歯類とヒトとの間での倍率1:60が得られた。こうした数字により、種間での等価総用量の計算が可能となり(表1C)、現在達成可能なウイルス生産力価に基づいて、こうした用量が現実的であることも確認することができた。3E13 gc/mlの想定生産力価に基づいて、ヒトの被殻当たりの注入用量は、1.82μl乃至260μlとなる(表1D)。
【0326】
個々の患者の被殻体積及び体重の差に合わせた定義では、用量を、gc/cm3被殻灰白質又はkg体重として再定義した(表1E)。加えて、ベクター調製物の一本鎖DNA(ssDNA)のμgでの同等量は、ベクターゲノムの分子量(1.4g/μmol)に基づいて生成した。
【0327】
表1.治療用量範囲の定義
【0328】
【表1A】

【0329】
【表1B】

【0330】
【表1C】

【0331】
【表1D】

【0332】
【表1E】

【0333】
本発明の用量の決定に当たっては、以下の参考文献に依拠した。
(1)Chakos et al. Striatal enlargement in rats chronically treated with neuroleptic. Biol Psychiatry (1998) vol. 44 (8) pp. 675-84
(2)Yin et al. Striatal volume differences between non-human and human primates. J Neurosci Methods (2009) vol. 176 (2) pp. 200-5
(3)Beyer et al. Weight change and body composition in patients with Parkinson's disease. J Am Diet Assoc (1995) vol. 95 (9) pp. 979-83
(4)Uc et al. Predictors of weight loss in Parkinson's disease. MovDisord (2006) vol. 21 (7) pp. 930-6
(5)Delikanaki-Skaribas et al. Daily energy expenditure, physical activity, and weight loss in Parkinson's disease patients. MovDisord (2009) vol. 24 (5) pp. 667-71
【0334】
実施及び本明細書に提示された全ての実験手順は、ルンド-マルメ地域実験動物使用倫理委員会の承認を得た。倫理許可番号:M59-06及びM267-08。
【0335】
実施例3:本発明に含まれる配列
【0336】
SEQ ID NO 1:GTPシクロヒドロラーゼ1(ヒト)
SEQ ID NO 2:GTPシクロヒドロラーゼ1アイソフォームGCH-2(ヒト)
SEQ ID NO 3:GTPシクロヒドロラーゼ1アイソフォームGCH-3(ヒト)
SEQ ID NO 4:GTPシクロヒドロラーゼ1アイソフォームGCH-4(ヒト)
SEQ ID NO 5:GTPシクロヒドロラーゼ1(ラット)
SEQ ID NO 6:GTPシクロヒドロラーゼ1(マウス)
SEQ ID NO 7:チロシン3-ヒドロキシラーゼ(ヒト)
SEQ ID NO 8:チロシン3-モノオキシゲナーゼ(ヒト)
SEQ ID NO 9:チロシンヒドロキシラーゼ(ヒト)
SEQ ID NO 10:チロシンヒドロキシラーゼ(ヒト)
SEQ ID NO 11:チロシン3-モノオキシゲナーゼ(ヒト)
SEQ ID NO 12:チロシン3-モノオキシゲナーゼ(ヒト)
SEQ ID NO 13:チロシン3-ヒドロキシラーゼ(ラット)
SEQ ID NO 14:チロシン3-ヒドロキシラーゼ(マウス)
SEQ ID NO 15:アデノ随伴ウイルス2左末端配列
SEQ ID NO 16:アデノ随伴ウイルス2右末端配列
SEQ ID NO 17:ヒトシナプシン1(SYN1)プロモーター配列
SEQ ID NO 18:ヒトGTPシクロヒドロラーゼ(GCH1)、転写変異体1
SEQ ID NO 19:サルウイルス40初期ポリアデニル化配列
SEQ ID NO 20:サルウイルス40後期ポリアデニル化配列
SEQ ID NO 21:ヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH)、転写変異体2
SEQ ID NO 22:ウッドチャック肝炎Bウイルス(WHV8)転写後調節要素配列
【0337】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1ベクター発現系であって、
a)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まないことを条件とする、第1及び第2の発現カセット、又は
b)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である、第1及び第2の発現カセット、又は
c)プロモーター、第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記プロモーターは、前記第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結され、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする、発現カセット、又は
d)第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合し、前記第2のヌクレオチド配列に結合される前記翻訳開始ヌクレオチド配列に結合される前記第1のヌクレオチド配列を含む配列は、5’及び3’末端反復に隣接し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記末端反復の少なくとも1つは、作動可能に連結されるポリペプチドの発現を指揮することが可能な配列を含む、発現カセット、を備える1ベクター発現系。
【請求項2】
前記第1の発現カセットにより発現される前記GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットにより発現される前記チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である、請求項1a)記載のベクター。
【請求項3】
発現される前記GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットにより発現される前記チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である、請求項1b)記載のベクター。
【請求項4】
コードされたGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、コードされたチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である、請求項1c)記載のベクター。
【請求項5】
コードされたGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、コードされたチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である、請求項1d)記載のベクター。
【請求項6】
前記ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まない、請求項1乃至5記載のベクター。
【請求項7】
前記ベクターは、1乃至40kb、例えば1乃至30kb、例として1乃至20kb、例えば1乃至15kb、例として1乃至10、例えば1乃至8kb、例として2乃至7kb、例えば3乃至6kb、例として4乃至5kbのパッケージング容量を有する、請求項1記載のベクター。
【請求項8】
前記ベクターは、4.5乃至4.8kbのパッケージング容量を有する、請求項1記載のベクター。
【請求項9】
前記ベクターは、ウイルスベクターである、請求項1乃至8記載のベクター。
【請求項10】
前記ベクターは、プラスミドベクターである、請求項1乃至8記載のベクター。
【請求項11】
前記ベクターは、合成ベクターである、請求項1乃至8記載のベクター。
【請求項12】
前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びレトロウイルスベクターから成る群から選択される、請求項9記載のベクター。
【請求項13】
前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である、請求項9記載のベクター。
【請求項14】
前記アデノ随伴ベクター(AAV)は、AAV2ベクターである、請求項12記載のベクター。
【請求項15】
前記AAV2ベクターのカプシドは、AAV2カプシド以外のAAVカプシドにパッケージされる、請求項14記載のベクター。
【請求項16】
前記AAV2ベクターは、AAV5カプシドにパッケージされる、請求項15記載のベクター。
【請求項17】
前記ベクターは、哺乳類細胞において機能する、請求項1乃至16の何れかに記載のベクター。
【請求項18】
前記生物活性を有する断片は、少なくとも50個の隣接アミノ酸を含み、選択される配列において指定された任意のアミノ酸が異なるアミノ酸へ変化するのは、このように変化する配列内のアミノ酸残基が15個以内の場合である、請求項1乃至5の何れかに記載のベクター。
【請求項19】
前記生物活性を有する断片は、チロシンヒドロキシラーゼの触媒ドメインである、請求項18記載のベクター。
【請求項20】
前記生物活性を有する変異体は、突然変異したチロシンヒドロキシラーゼポリペプチドであり、残基S19、S31、S40、又はS404の1つ以上が別のアミノ酸残基に変化している、請求項1記載のベクター。
【請求項21】
前記GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチドは、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも75%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも80%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも85%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも90%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも95%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも96%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも97%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも98%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも99%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと100%同一である、請求項1乃至20の何れかに記載のベクター。
【請求項22】
前記チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチドは、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも75%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも80%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも85%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも90%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも95%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも96%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも97%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも98%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも99%同一であり、より好ましくはSEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと100%同一である、請求項1乃至20の何れかに記載のベクター。
【請求項23】
前記第1及び/又は第2のプロモーターは、哺乳類細胞に特異的なプロモーターである、請求項1記載のベクター。
【請求項24】
前記哺乳類細胞は、神経細胞である、請求項23記載のベクター。
【請求項25】
前記神経細胞は、ニューロンである、請求項34記載のベクター。
【請求項26】
前記第1及び前記第2のプロモーターは、シナプシン1プロモーターである、請求項1記載のベクター。
【請求項27】
前記第1又は前記第2のプロモーターは、シナプシン1プロモーターである、請求項1記載のベクター。
【請求項28】
前記プロモーターは、構成的プロモーターである、請求項1記載のベクター。
【請求項29】
前記構成的活性プロモーターは、CAG、CMV、ヒトUbiC、RSV、EF-1α、SV40、Mt1から成る群から選択される、請求項28記載のベクター。
【請求項30】
前記プロモーターは、誘導性プロモーターである、請求項1記載のベクター。
【請求項31】
前記誘導性プロモーターは、Tet-On、Tet-Off、Mo-MLV-LTR、Mx1、プロゲステロン、RU486、及びラパマイシン誘導プロモーターから成る群から選択される、請求項30記載のベクター。
【請求項32】
前記第1の発現カセット又は前記第2の発現カセットは、更に、ポリアデニル化配列を含む、請求項1記載のベクター。
【請求項33】
前記第1の発現カセット及び前記第2の発現カセットは、更に、ポリアデニル化配列を含む、請求項1記載のベクター。
【請求項34】
前記ポリアデニル化配列は、SV40ポリアデニル化配列である、請求項32又は33記載のベクター。
【請求項35】
前記ポリアデニル化配列の5’は、前記第1及び/又は前記第2のヌクレオチド配列の3’と作動可能に連結される、請求項32乃至34の何れかに記載のベクター。
【請求項36】
GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする前記第1のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.18の配列を含む、請求項1記載のベクター。
【請求項37】
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする前記第2のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.21の配列を含む、請求項1記載のベクター。
【請求項38】
前記第2のヌクレオチド配列は、転写後調節要素と作動可能に連結される、請求項1乃至37の何れかに記載のベクター。
【請求項39】
前記転写後調節要素は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)である、請求項38記載のベクター。
【請求項40】
前記ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素は、SEQ ID NO.22の配列を含む、請求項39記載のベクター。
【請求項41】
前記ベクターの発現カセットは、5’末端反復及び3’末端反復を含む、請求項1乃至40の何れかに記載のベクター。
【請求項42】
前記5’及び3’末端反復は、逆方向末端反復[ITR]及び長末端反復[LTR]から選択される、請求項41記載のベクター。
【請求項43】
前記5’及び3’末端反復は、AAV逆方向末端反復[ITR]である、請求項41記載のベクター。
【請求項44】
前記逆方向末端反復は、SEQ ID NO.15及びSEQ ID NO.16の配列を含む、請求項43記載のベクター。
【請求項45】
TH:GCH1の比は、少なくとも3:1、例として4:1、例えば5:1、例として6:1、例えば7:1、例として10:1、例えば15:1、例として20:1、例えば25:1、例として30:1、例えば35:1、例として40:1、例えば45:1、例として50:1である、請求項1乃至44の何れかに記載のベクター。
【請求項46】
TH:GCH1の比は、7:1である、請求項1乃至44の何れかに記載のベクター。
【請求項47】
前記比は、発現したTH及びGCH1酵素の活性を測定することにより決定される、請求項45乃至46の何れかに記載のベクター。
【請求項48】
前記比は、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の量を測定することにより決定される、請求項45乃至46の何れかに記載のベクター。
【請求項49】
前記比は、転写されたmRNAの量を測定することにより決定される、請求項45乃至46の何れかに記載のベクター。
【請求項50】
前記比は、発現したタンパク質の量を測定することにより決定される、請求項45乃至46の何れかに記載のベクター。
【請求項51】
前記ベクターは、図6において定義されたベクターである、先行請求項の何れかに記載のベクター。
【請求項52】
前記ベクターは、最小限の組み込みを行うベクターである、請求項1乃至51の何れかに記載のベクター。
【請求項53】
薬剤として使用するための請求項1乃至52の何れかに記載のベクター。
【請求項54】
請求項1乃至53の何れかに記載のベクターを含む単離宿主細胞。
【請求項55】
前記細胞は、真核細胞、好ましくは哺乳類細胞、より好ましくは霊長類細胞、より好ましくはヒト細胞から成る群から選択される、請求項54記載のベクター。
【請求項56】
前記細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、CHO-K1、ベビーハムスター腎臓細胞、マウス線維芽細胞-3T3細胞、アフリカミドリザル細胞株、ラット副腎褐色細胞腫、AT3細胞、ラットグリア腫瘍細胞、ラット神経細胞、及びラット海馬細胞から成る群から選択される、請求項55記載のベクター。
【請求項57】
カテコールアミン機能不全に関連する疾患を治療する薬剤の調製のための請求項1乃至56の何れかに記載のベクターの使用
【請求項58】
前記カテコールアミン機能不全は、カテコールアミン欠乏である、請求項57記載の使用。
【請求項59】
前記カテコールアミン機能不全は、カテコールアミン過多である、請求項57記載の使用。
【請求項60】
前記カテコールアミン欠乏は、ドーパミン欠乏である、請求項58記載の使用。
【請求項61】
前記カテコールアミン過多は、ドーパミン過多である、請求項59記載の使用。
【請求項62】
カテコールアミン機能不全に関連する前記疾患は、中枢及び/又は末梢神経系の疾患、障害、又は損傷である、請求項57乃至61の何れかに記載の使用。
【請求項63】
中枢及び/又は末梢神経系の前記疾患、障害、又は損傷は、神経変性障害である、請求項62記載の使用。
【請求項64】
カテコールアミン機能不全に関連する前記疾患は、大脳基底核の疾患である、請求項57乃至63の何れかに記載の使用。
【請求項65】
前記疾患は、パーキンソン病(PD)、DOPA反応性ジストニア、ADHD、統合失調症、鬱病、血管性パーキンソニズム、本態性振戦、慢性ストレス、遺伝的ドーパミン受容体異常、慢性的なオピオイド、コカイン、アルコール、又はマリファナの使用、副腎不全、高血圧、ノルアドレナリン欠乏、外傷後ストレス障害、病的賭博障害、認知症、レヴィー小体認知症から成る群から選択される、請求項64記載の使用。
【請求項66】
前記神経変性障害は、パーキンソン病(PD)である、請求項65記載の使用。
【請求項67】
カテコールアミン機能不全に関連する疾患を治療する方法において使用するための請求項1乃至53の何れかに記載のベクター。
【請求項68】
前記カテコールアミン機能不全は、カテコールアミン欠乏である、請求項67記載のベクター。
【請求項69】
前記カテコールアミン機能不全は、カテコールアミン過多である、請求項67記載のベクター。
【請求項70】
前記カテコールアミン欠乏は、ドーパミン欠乏である、請求項68記載のベクター。
【請求項71】
前記カテコールアミン過多は、ドーパミン過多である、請求項69記載のベクター。
【請求項72】
カテコールアミン機能不全に関連する前記疾患は、中枢及び/又は末梢神経系の疾患、障害、又は損傷である、請求項67乃至71の何れかに記載のベクター。
【請求項73】
中枢及び/又は末梢神経系の前記疾患、障害、又は損傷は、神経変性障害である、請求項72記載のベクター。
【請求項74】
カテコールアミン機能不全に関連する前記疾患は、大脳基底核の疾患である、請求項67乃至73の何れかに記載のベクター。
【請求項75】
前記疾患は、パーキンソン病(PD)、DOPA反応性ジストニア、ADHD、統合失調症、鬱病、血管性パーキンソニズム、本態性振戦、慢性ストレス、遺伝的ドーパミン受容体異常、慢性的なオピオイド、コカイン、アルコール、又はマリファナの使用、副腎不全、高血圧、ノルアドレナリン欠乏、外傷後ストレス障害、病的賭博障害、認知症、レヴィー小体認知症から成る群から選択される、請求項74記載のベクター。
【請求項76】
前記神経変性障害は、パーキンソン病(PD)である、請求項75記載のベクター。
【請求項77】
必要とする患者において、カテコールアミン機能不全に関連する疾患を治療する方法であって、請求項1乃至53の何れかに記載のベクターを前記個体に投与することを備える方法。
【請求項78】
前記カテコールアミン機能不全は、カテコールアミン欠乏である、請求項77記載の方法。
【請求項79】
前記カテコールアミン機能不全は、カテコールアミン過多である、請求項77記載の方法。
【請求項80】
前記カテコールアミン欠乏は、ドーパミン欠乏である、請求項78記載の方法。
【請求項81】
前記カテコールアミン過多は、ドーパミン過多である、請求項79記載の方法。
【請求項82】
カテコールアミン機能不全に関連する前記疾患は、中枢及び/又は末梢神経系の疾患、障害、又は損傷である、請求項77乃至81の何れかに記載の方法。
【請求項83】
中枢及び/又は末梢神経系の前記疾患、障害、又は損傷は、神経変性障害である、請求項82記載の方法。
【請求項84】
カテコールアミン機能不全に関連する前記疾患は、大脳基底核の疾患である、請求項77乃至83の何れかに記載の方法。
【請求項85】
前記疾患は、パーキンソン病(PD)、DOPA反応性ジストニア、ADHD、統合失調症、鬱病、血管性パーキンソニズム、本態性振戦、慢性ストレス、遺伝的ドーパミン受容体異常、慢性的なオピオイド、コカイン、アルコール、又はマリファナの使用、副腎不全、高血圧、ノルアドレナリン欠乏、外傷後ストレス障害、病的賭博障害、認知症、レヴィー小体認知症から成る群から選択される、請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記神経変性障害は、パーキンソン病(PD)である、請求項84記載の方法。
【請求項87】
パーキンソン病の治療方法において使用するための医薬組成物であって、前記組成物は、1ベクター発現系と、前記ベクターを大脳基底核へ送達するための処方とを含み、前記1ベクター発現系は、
a)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含まないことを条件とする、第1及び第2の発現カセット、又は
b)第1及び第2の発現カセットであり、前記第1の発現カセットは、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第1のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記第2の発現カセットは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする第2のヌクレオチド配列と作動可能に連結される第2のプロモーター配列を含むヌクレオチド配列を含み、前記ベクターは、アデノ随伴ベクター(AAV)である、第1及び第2の発現カセット、又は
c)プロモーター、第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記プロモーターは、前記第1のヌクレオチド配列と作動可能に連結され、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードする、発現カセット、又は
d)第1のヌクレオチド配列、内部リボソーム進入部位(IRES)等の翻訳開始ヌクレオチド配列、及び第2のヌクレオチド配列を含む発現カセットであり、前記翻訳開始ヌクレオチド配列は、前記第1及び前記第2のヌクレオチド配列を結合し、前記第2のヌクレオチド配列に結合される前記翻訳開始ヌクレオチド配列に結合される前記第1のヌクレオチド配列を含む配列は、5’及び3’末端反復に隣接し、前記第1のヌクレオチド配列は、GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記第2のヌクレオチド配列は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体をコードし、前記末端反復は、作動可能に連結されるポリペプチドの発現を指揮することが可能な配列を含む、発現カセット、を備える組成物。
【請求項88】
前記第1の発現カセットにより発現される前記GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットにより発現される前記チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である、請求項87a)記載の組成物。
【請求項89】
発現される前記GTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、前記第2の発現カセットにより発現される前記チロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である、請求項87b)記載の組成物。
【請求項90】
コードされたGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、コードされたチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である、請求項87c)記載の組成物。
【請求項91】
コードされたGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH1)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、及びSEQ ID NO.6から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一であり、コードされたチロシンヒドロキシラーゼ(TH)ポリペプチド、又は生物活性を有するその断片若しくは変異体は、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、及びSEQ ID NO.14から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも70%同一である、請求項87d)記載の組成物。
【請求項92】
前記処方は、マニトール、ヘパリン、又はガドリニウムに基づくMRI造影剤を含む、請求項91記載の医薬組成物。
【請求項93】
更に、栄養素又は可逆的プロテアソーム阻害剤を含む、請求項91乃至92の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項94】
、請求項1乃至53の何れかに記載のベクターと、医薬的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項95】
注入、舌下錠又はスプレー、皮膚投与、又は吸入による投与用に処方される、請求項94記載の医薬組成物。
【請求項96】
前記注入は、頭蓋内、大脳内、静脈内、硝子体内、鼻腔内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、ボーラス又は連続投与である、請求項95記載の医薬組成物。
【請求項97】
前記組成物のpHは、pH4乃至pH10である、請求項91乃至96の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項98】
ベクターの用量は、被殻灰白質1ミリリットル当たり1.5E+10乃至2.2E+12のベクターゲノムコピーである、請求項91乃至97の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項99】
投与は、30分乃至24時間の間隔で行われる、請求項91乃至98の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項100】
投与は、1乃至6時間の間隔で行われる、請求項91乃至98の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項101】
治療の継続時間は、6乃至72時間である、請求項91乃至98の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項102】
治療の継続時間は、一生涯である、請求項91乃至98の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項103】
GTPシクロヒドロキシラーゼ1ポリペプチド(SEQ ID NO.1、2、3、4、5、及び6)及びチロシンヒドロキシラーゼポリペプチド(SEQ ID NO.7、8、9、10、11、12、13、及び14)それぞれの、又はその変異体の、発現比を決定する方法であって、前記ポリペプチドは、請求項1乃至53の何れかに記載のベクターによりコードされ、
a.前記ポリペプチドの酵素活性、又は
b.生成されたBH4の量、又は
c.前記ポリペプチドの発現量、又は
d.GTPシクロヒドロキシラーゼ1ポリペプチド及びチロシンヒドロキシラーゼのポリペプチドにそれぞれ対応する転写mRNAのレベル、を測定することを備える方法。
【請求項104】
前記比は、前記ポリペプチドの活性と前記ポリペプチドの存在量との組み合わせにより決定される、請求項103記載の方法。
【請求項105】
複数の部分に分かれたキットであって、請求項91乃至102の何れかに記載の医薬組成物と、投与に関する指示とを備えるキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【図6−7】
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【図6−8】
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【図6−9】
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【図6−10】
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【図6−11】
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【図6−12】
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【図6−13】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−509890(P2013−509890A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538313(P2012−538313)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067155
【国際公開番号】WO2011/054976
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512120144)ジーンポッド セラピューティクス アーベー (1)
【氏名又は名称原語表記】GENEPOD THERAPEUTICS AB
【Fターム(参考)】