説明

p−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンとテレフタル酸とを含むアモルファスコポリアミド

【課題】式:PACM.T/D.X/X1.Y1のコポリアミド。
【解決手段】PACMと、テレフタル酸と、ジアミンDと、二酸Xと、ジアミンX1と、二酸Y1との縮合で得られる(ここで、PACMはp-ビス(アミノシクロヘキシル)メタンを表し、Tはテレフタル酸を表し、Dは芳香族、芳香脂肪族および脂環式のジアミンから選択されるジアミンを表し、Xは8〜20の炭素原子を有する二酸HOOC-(CH2)n-COOHを表し、X1は脂肪族ジアミンを表し、Y1は6〜20の炭素原子を有する二酸HOOC-(CH2)n-COOHを表し、PACM.Tのモル比率は(PACM.T)/(PACM.T+D.X)が0.5以上となり、1まで増加することができるような比率であり、X1のモル比率は16%〜38%であり、X1.Y1の一部または全体を9〜20の炭素原子を有するZ、ラクタムまたはα、ω−アミノカルボン酸で置換でき、この場合のZのモル比率は33%〜75%)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタンとテレフタル酸とを含むアモルファスな透明コポリアミドに関するものである。
p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタンまたは4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)は一般に「PACM」と記載される。
本発明はこの組成物から得られる物体にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドはその多様な特性のために広く使用されているポリマーである。特に、ポリアミドは以下の特性のいくつかまたは全てを有している:透明性、耐衝撃性、張力および/または圧縮強度、外部からの攻撃(冷却、加熱、化学薬品、放射線、特に、紫外線、その他)に対する高い耐久性。従って、メガネのフレーム、各種ハウジング、自動車付属品、外科材料、包装材料またはスポーツ用品のような物品がポリアミドをベースにして作られている。
【0003】
下記特許文献1には下記(i)と(ii):
(i) 14〜22の炭素原子を有する少なくとも一種のアルキル置換された脂環式ジアミンおよび、
(ii)少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸と一緒に用いる7〜14の炭素原子を有する少なくとも一種の分岐のない脂肪族ジカルボン酸(少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸は20モル%以下の量で存在する)、
から作られる透明で無色なアモルファスコポリアミドと、その混合物またはアロイが開示されている:
【特許文献1】米国特許第US 6 277 911号明細書
【0004】
このコポリアミド、混合物またはアロイは加工上および/または使用上必要な添加剤を含むことができる。さらに、上記コポリアミドは1.6以上の溶液粘度を有し、他のポリアミドはホモポリアミドおよび透明なコポリアミドの中から選択される。この発明はこの材料から作られる物品にも関するものである。この特許のコポリアミドおよびコポリアミドと脂肪族ホモポリアミドまたはアモルファスコポリアミドとの混合物およびアロイは、長鎖の脂肪族モノマーユニットが少なくとも一つのシクロヘキサン環を有する少なくとも一種の脂環式モノマー単位と組み合わせられたものであるのが好ましい。この組合せの結果、得られたコポリアミドは極めて高い交互曲げ強度と、高い強靭性、高い剛性、高温度下での加熱変形に対する高い耐久性および優れた耐溶媒性とを示す。
【0005】
下記文献にも透明で無色なアモルファスポリアミドまたは少なくとも一種の脂肪族ホモポリアミドとのその混合物またはアロイが記載されている。
【特許文献2】米国特許第US 5 696 202号明細書
【0006】
この透明ポリアミドは1.7以上の高い相対溶液粘度を有し、実際にはビス-(3- メチル-4- アミノシクロヘキシル)アルカン(アルカンは1〜3つのC-原子を有する)から成る4〜22の炭素原子を有する少なくとも一種のアルキル置換された脂環式ジアミンと、8〜14の炭素原子を有する少なくとも一種の分岐していない脂肪族ジカルボン酸とで作られる。
【0007】
下記文献にも透明な無色のアモルファスポリアミドと、それと少なくとも一種のホモポリアミドとのブレンドまたはアロイとが記載されている。
【特許文献3】米国特許第US 5 773 558号明細書
【0008】
この透明なポリアミドは1.5以上の相対溶液粘性を有し、8〜14の炭素原子を有する分岐していない少なくとも一種の脂肪族ジアミンと、少なくとも一種のシクロヘキサン環を有する8〜22の炭素原子を有する少なくとも一種の脂環式ジカルボン酸とで実質的に作られたポリアミドであり、酸は最大で20モル%を少なく一種の芳香族ジカルボン酸で置換できる点に特徴がある。このポリアミドおよび混合物またはアロイは加工および/または使用状態に合わせて必要に応じて添加剤を添加できる。
下記文献に記載の透明な無色のアモルファスポリアミドは実質的に下記の(a)または(b)から作られる:
【特許文献4】米国特許第US 6 008 2888号明細書
【0009】
(a)好ましくは14〜22の炭素原子を有するアルキル-置換された脂環式ジアミンを7〜36、好ましくは8〜14の炭素原子を有する長鎖の分岐していない脂肪族ジカルボン酸(好ましくは少量、好ましくは最大20モル%、特に好ましくは最大10モル%が芳香族ジカルボン酸で置換される)と組み合わせたものか、
(b)8〜14の炭素原子を有する長鎖の分岐していない脂肪族ジアミン(好ましくは4〜6つの炭素原子を有する短鎖の分岐したまたは分岐していない脂肪族ジアミン、例えばペンタメチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミンと最大で90モル%置換でき)と少なくとも一種のシクロヘキサン環を有する脂環式ジカルボン酸とから作ることができる。この酸は最大で20モル%、好ましくは最大で10モル%を少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸と置換するのが好ましい。
【0010】
下記文献には少なくともラクタムと、テレフタル酸と、必要に応じて用いられるイソフタル酸およびアルキル置換された脂環式ジアミンとから作られるポリアミドが記載されている。
【特許文献5】欧州特許第EP 313 436号公報
【0011】
しかし、全ての実施例は2,2'-ジメチル-4,4'- メチレンビス(シクロヘキシルアミン)またはビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンから作られている。このジアミンは「BMACM」の名称でよばれることが多い。
下記文献も上記と同じである。
【特許文献6】米国特許第US 5 310 860号明細書
【0012】
下記文献には少なくともラクタム、テレフタル酸、イソフタル酸およびアルキル置換された脂環式ジアミンから作られるポリアミドが記載されている。
【特許文献7】欧州特許第EP 550 308号公報
【0013】
しかし、全ての実施例はBMACMを用いて作られる。このポリアミドは更に脂肪族ポリアミドとブレンドされる。
下記文献には2種のアモルファスポリアミドの混合物が記載されている。このポリアミドは少なくともラクタム、テレフタル酸、イソフタル酸およびアルキル置換された脂環式ジアミンから作られる。
【特許文献8】欧州特許第EP 553 581号公報
【0014】
全ての実施例はBMACMを用いて作られる。
下記文献には半結晶質ポリアミドと、アモルファスポリアミドとのブレンドが記載されている。
【特許文献9】欧州特許第EP 628 602号公報
【0015】
アモルファスポリアミドはPACMを含まない。
下記文献には少なくとも一つのコポリアミドを含むコポリアミド組成物と、それから成形された物品とが記載されている。
【特許文献10】米国特許第US 5 700 900号明細書
【0016】
コポリアミドは以下の(1)と(2)とから成る:
(1)約20〜約96重量部、好ましくは約30〜約96重量部の、ポリアミドに長鎖構造を作るのに適した、9〜12の炭素原子を有する少なくとも一種の長鎖モノマー、
(2)約4〜約80重量部、好ましくは約4〜約重量70の、半芳香族ポリアミドのための先駆モノマー(このの先駆モノマーはほぼ等モルの少なく一つのジアミン(H2N−R−NH2)と少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸とをからなる)(Rは2〜12の炭素原子を有する直鎖ラジカル、2〜12の炭素原子を有する分岐した脂肪族ラジカル、7〜12の炭素原子を有する芳香脂肪族ラジカル、6〜42の炭素原子を有する脂環式ラジカルから成る群の中から選択される)(少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸の最大約15%までは、9〜36の炭素原子を有する長鎖の脂肪族ジカルボン酸と置換できる)(置換は任意であるが、置換を選択した場合、少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸の約0.0001〜約15モル%を置換できる)。実施例ではBMACM.T/12および6.T/12である。
【0017】
下記文献には耐応力亀裂性と、アルコール、エステル、ケトン、燃料および沸騰水に対する抵抗性に優れた衝撃強度の強い無色透明なポリアミド成形組成物が記載されている。
【特許文献11】米国特許第US 5 360 891号明細書
【0018】
このポリアミド成形組成物は下記(I)と(II)の反応生成物から成る:
(I)直鎖の脂肪族ジカルボン酸、
(II)(a) 35〜60モル%のトランス、トランス−ビス(4-アミノシクロヘキシル)−メタン、
(II)(b) 65-40モル% の出発成分としての他の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族または芳香族ジアミン、
成分(I)と(II)のモル比率は0.95〜1.05:1、好ましくは0.98〜1.02:1で変化する。
この特許に記載の耐応力亀裂性と、アルコール、エステル、ケトン、燃料および沸騰水に対する抵抗性に優れた衝撃強度の強い無色透明なポリアミド成形組成物の製造方法では、下記:
(I)直鎖の脂肪族ジカルボン酸、
(II)(a) 35〜60モル%のトランス、トランス−ビス(4- アミノシクロヘキシル)−メタン、
(II)(b) 65〜40モル%の他の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族または芳香族ジアミン、
を25O〜320℃の溶融温度での溶融して重縮合する。成分(I)と(II)のモル比率は0.95〜1.05:1、好ましくは0.98〜1.02:1で変化する。
適した酸成分(I)は6〜20の炭素原子を有する直鎖ジカルボン酸、例えばオクタン二酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸およびトリドデカンジオン酸(tridecanedioic acid)、n-デカンジオン酸(n-セバシン酸)およびn-ドデカンジオン酸であるのが好ましい。実施例ではC10とC12二酸のみが用いられている。
【0019】
下記文献には融解エンタルピーが0〜12J/gの間にることを特徴とする透明なポリアミドが記載されている。
【特許文献12】米国特許第2003 0235666号明細書
【0020】
このポリアミドは下記の(1)〜(3)で構成される:
(1)10〜70モル%のPACM [ビス-(4- アミノ−シクロヘキシル)−メタン](50重量%以下のトランス、トランス−異性体を有する)と、90〜30モル-%のMACM [ビス-(4-アミノ−3-メチル−シクロヘキシル)−メタン]1とのジアミン混合物 100モル%(必要に応じて0〜10モル%を6〜12の炭素原子を有する他の脂肪族ジアミン、脂環式、アルキル-置換された脂環式、分岐された脂肪族ジアミンまたは3〜12のアミノ基を有するマルチアミンまたはこれらの混合物と置換できる)
(2)8〜14の炭素原子を有する長鎖脂肪族ジカルボン酸またはこれらジカルボン酸の混合物 100モル%(0〜10モル%は8〜16の炭素原子を有する他の芳香族または脂環式ジカルボン酸、特にイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはこれらの混合物の中から成る群の中から選択されるジカルボン酸と置換できる)
(3)任意成分としての他の長鎖脂肪族ジアミン 0〜10モル%(この他の長鎖脂肪族ジアミンの0〜10モル%は0〜20モル%の6〜12の炭素原子を有するα、ω-アミノカルボン酸または6〜12の炭素原子を有するラクタムとして添加できる)
【0021】
下記文献には芳香族、芳香脂肪族および脂環式ジアミンの中から選択される少なくとも一種のジアミンと、テトラデカンジオン酸またはテトラデカンジオン酸と少なくとも50モル%の脂肪族、芳香族および脂環式ジカルボン酸の中から選択される少なくとも一種二酸との混合物との縮合で得られる透明なアモルファスポリアミドが記載されている。
【特許文献13】欧州特許第EP 1 595 907号公報
【0022】
この特許はさらに、1〜100重量%の上記ポリアミドと、99〜0重量%の半結晶ポリアミドとから成る組成物にも関するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上記の全ての既存の透明なアモルファスポリアミドは有利なものではあるが、欠点もある。例えば下位概念の半アモルファス透明アモルファスポリアミドの場合には、射出成形が可能で、多くの場合、耐応力亀裂性に優れるという利点はあるが、紫外線抵抗性および衝撃抵抗性に欠点がある。脂環式のカテゴリに入る透明なアモルファスポリアミドは利点と欠点が全く逆で、耐UV性および耐衝撃耐性は良いが、射出成形性が悪く、耐応力亀裂性も悪い。
本発明の目的は、重大な欠点がなく、従って、より広く使用可能な透明なアモルファスポリアミドを見出だすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、PACMと、テレフタル酸と、ジアミンDと、二酸(ジアシッド)Xと、ジアミンX1と、二酸Y1との縮合で得られる下記式のコポリアミドを提供する:
PACM.T/D.X/X1.Y1
(ここで、
PACMはp-ビス(アミノシクロヘキシル)メタンを表し、
Tはテレフタル酸を表し、
Dは芳香族、芳香脂肪族および脂環式のジアミンから選択されるジアミンを表し、
Xは8〜20の炭素原子を有する二酸HOOC−(CH2n−COOHを表し、
X1は脂肪族ジアミンを表し、
Y1は6〜20の炭素原子を有する二酸HOOC−(CH2n−COOHを表し、
PACM.Tのモル比率は(PACM.T)/(PACM.T+D.X)が0.5以上となり、1まで増加することができるような比率であり、
X1のモル比率は16%〜38%であり、
X1.Y1の一部または全体を9〜20の炭素原子を有するZ、ラクタムまたはα、ω−アミノカルボン酸で置換でき、この場合のZのモル比率は33%〜75%にすることができる)
【0025】
本発明はさらに、1〜100重量%の上記コポリアミドと、99〜0重量%の半結晶ポリアミドおよび衝撃改質剤(ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーを含む)の中から選択されるポリマーとから成る組成物にも関するものである。
本発明はさらに、本発明組成物から成る物体、例えばパネル、フィルム、シート、パイプ、プロフィルまたは射出成形品にも関するものである。
本発明はさらに、本発明組成物から成る透明な保護膜で被覆された物体に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のコポリアミドの例としてはPACM.T/PACM.10/6.10、PACM.T/PACM.10/6.14、PACM.T/PACM.14/6.14、PACM.T/6.18、PACM.T/12、PACM.T/BMACM.14/12、PACM.T/BMACM.14/6.14、PACM.T/IPD.14/6.14を挙げることができる。式IPDはイソホロンジアミンを表す。
【0027】
ジアミンDの種類は芳香族、芳香脂肪族または脂環式で、6〜36の炭素原子を有するのが好ましく、単独または組み合わせて使うことができる。ジアミンの少量のモル%を直鎖の脂肪族ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミンまたはドデカンジアミンや、分岐した脂肪族ジアミン、例えばまたはメチルペンタメチレンジアミンで置換することもできる。芳香族、芳香脂肪族または脂環式ジアミンまたはそれらの混合物が好ましく、芳香脂肪族または脂環式ジアミンが好ましい。芳香脂肪族ジアミンの中ではメタ-キシリレンジアミンが挙げられる。
【0028】
6〜36の炭素原子を有する芳香脂肪族、脂環式ジアミンおよびその混合物の中では脂環式ジアミンが好ましい。脂環式ジアミンの例とその製法は下記文献に記載されているが、これに限定されるものではない。
【非特許文献1】"Cycloaliphatic Amines" (Encyclopaedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer, 4th Edition (1992), pp. 386-405)
【0029】
このジアミンは一般に工業的製造プロセスの種類に起因する異性体から成ることが多い。市販の多くの脂環式ジアミンは1つまたは2つの置換された脂環式リングを含むことが多い。脂環式リングを含む脂環式ジアミンの例としては例えばイソホロンジアミン(CAS [2855-13-2 ])、1,4-シクロヘキサンジアミン(CAS [3114-70-3])または1,3-ジアミノメチルシクロヘキサン(CAS [ 2579-20-6])が挙げられる。本発明では2つの脂環式リングを有する脂環式ジアミンが好ましい。このジアミンは下記一般式(I)に対応する:
【0030】
【化1】

【0031】
(ここで、
R1〜R4は水素原子および1〜6の炭素原子を有するアルキル基の中から選択され、互いに同じでも異なっていてもよく、
Xは単結合か、下記からなる二価の基を表す:
(1)1〜10の炭素原子を有する直鎖または分岐した脂肪族鎖、
(2)6〜12の炭素原子を有する脂環式基、
(3)6〜8の炭素原子を有する脂環式基で置換された1〜10の炭素原子を有する直鎖または分岐した脂肪族鎖、
(4)シクロヘキシル基またはベンジル基を有する直鎖または分岐したジアルキルを有する8〜12の炭素原子を有する基
【0032】
PACM、PACPおよびBMACMは既に述べた少なくとも2つの脂環式環を有する脂環式ジアミンである。さらに、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、−エタン、−プロパンまたは-ブタンジアミンを挙げることもできる。これらジアミンとその製造方法は下記文献に記載されている。
【特許文献14】米国特許第US 4 293 687号明細書
【0033】
二酸「X」は直鎖のα、ω-ジアシッドにすることができ、分岐したまたは直鎖の二酸(直鎖)の混合物または分岐した二酸にすることができる。Xは10〜14の炭素原子を有し、直鎖であるのが有利である。
【0034】
「X1.Y1」のジアミンX1は直鎖のα、ω−ジアミンにすることができ、分岐でも、直鎖ジアミン(直鎖)の混合物および分岐したジアミンにすることができる。二酸Y1は直鎖のα、ω−ジアシッドにすることができ、分岐でも、直鎖二酸(直鎖)の混合物および分岐した二酸にすることができる。有利なX1.Y1は以下である:
(1)どちらのX1も6〜10の炭素原子を有するジアミンで、Y1が10〜14の炭素原子を有する二酸、
(2)どちらのX1も六つの炭素原子を有するジアミンで、Y1が15〜20の炭素原子を有する二酸1
他の実施例では、X1.Y1がZで、カプロラクタムまたはラウリルラクタムの縮合で得られ、好ましくはラウリルラクタムの縮合で得られる。
【0035】
本発明のコポリアミドと半結晶ポリアミドとの混合物(ブレンド)の例としては以下が挙げられる。半結晶ポリアミドの例としてはヘキサメチレンジアミン(PA 6-9、6-10、6-12(6-14)、ノナンジアミン(PA 9-10、9-12、9-14)、デカンジアミン(PA 10-10、10-12、10-14)、ドデカンジアミン(PA 12-10、12-12、12-14)、をベースにしたポリアミドと、PA10、PA11およびPA12が挙げられる。さらに、90%以上が11であるか、90%以上が12であるコポリアミド11/12から作ることもできる。このポリアミドは11−アミノウンデカン酸およびラウリルラクタム(またはC12α、ω-アミノ酸)の縮合で得られる。混合物(ブレンド)は通常の装置、例えば押出機で融解状態で作ることができる。触媒を、加えることもできる。この触媒はアモルファスポリアミドの製造または半結晶ポリアミドの製造で使用した任意成分の触媒の残りでもよい。有機または無機の触媒、好ましくはリン酸または次リン酸であるのが好ましい。触媒の量はアモルファスポリアミドに対して3000ppmまで、半結晶ポリアミドに対して50〜1000重量ppmにすることができる。この種の触媒は下記文献に開示されている。
【特許文献15】欧州特許第EP 550 308号公報
【0036】
本発明の実施例では、本発明コポリアミドと半結晶ポリアミドとの混合物は約40重量%以下の半結晶ポリアミドを含み、従って、コポリアミドは60重量%以上含まなければならない。この混合物は透明なアモルファスポリアミドである。半結晶ポリアミドの配合比率を約40%以上にすると、混合物の透明性が無くなり、ガラス遷移温度が低くなり過ぎる。半結晶性重合体は高温での充分な混和性を得るため、従って、最終的に透明なブレンドを得るために平均としてアミド基近い濃度を有する必要があのが好ましい。これに関する研究は上記のT.Sエリスの論文を参照されたい。
【0037】
衝撃改質剤との混合物では、ポリオレフィン、架橋ポリオレフィン、EPR、EPDM、SBSおよびSEBSエラストマーを挙げることができ、ポリアミドとの相溶化をより簡単にするためにエラストマーはグラフト加工するのが好ましい。その例としてはアクリルエラストマー、例えばNBR、HNBRまたはX−NBRタイプのものを挙げることができる。
【0038】
本発明のコポリアミドはポリアミドおよびコポリアミドの合成で使用されている従来の任意の製造方法を使用して製造できる。合成は触媒の存在下で実行できる。有機または無機の触媒、好ましくはリン酸または次リン酸であるのが有利である。触媒量はアモルファスコポリアミドに対して3000ppm以下、好ましくは50〜1000重量ppmである。本発明の透明なアモルファスコポリアミドと、それと一種以上の他のポリアミドとの混合物またはアロイは添加剤を含むことができる。使用可能な添加剤の例としては、補強用または非補強用の充填材、加熱または紫外線に対する安定剤、内部または外部滑剤、可塑剤、難燃剤、顔料、色素、伝導剤、帯電防止充填剤、衝撃改質剤または鎖終端剤等を挙げることができる。
本発明のアモルファス・コポリアミドおよびそれと一種以上の他のポリアミドとの混合物またはアロイは、熱可塑性材料の公知の成形方法、例えば射出成形または共射出成形、シート、フィルム、パネル、プロフィル、フィラメント、パイプまたは管への押出成形またはフラスコ、ビンまたはタンクへの押出ブロー成形等で成形できる。これらの成形方法で作られた物品も本発明の対象物である。
【実施例】
【0039】
PはPACM20([表1]に詳細を示す)である。このPACMはPACM48と比較して好ましい。その理由は過度にマイクロ−結晶質な製品にならず、従って、重合および製造がより簡単(重合温度が低い)であるためガラス遷移温度Tgが高い(Tg>100℃)組成物を簡単に製造できる。PACM20(登録商標)はエアープロダクト(Air Product)社から入手できる。
【0040】
【表1】

【0041】
BはBMACM(MACMともよばれる)である。
P48はバスフ(BASF)社からダイシケーヌ(Dycicane)の名称で市販のPACM48である。
IPDはIPD(イソホロン・ジアミン)である。
Tはテレフタル酸である。
Iはイソフタル酸である。
12はラウリルラクタムである。
10は10個の炭素原子を有する二酸である。
14は14個の炭素原子を有する二酸である。
式はモルで表され、P.T/121.6は「P」が1モル、「.14」が1モル、「12」が1.6モルであることを表す。
【0042】
実施例1
P.T/12(12が33モル%)
80リットル容の加圧された反応装置中に13.4kgのラウリルラクタムと、7.135kgの-44'-ジアミノジシクロヘキシルメタン(エアープロダクト(Air Product)社製のPACM20)と、5.7kgのテレフタル酸と、0.5kgの水とを入れた。この混合物を不活性雰囲気下で270℃の温度で、30バールまで加熱した。3時間維持した後に2時間かけて圧力を大気圧に戻した。所望のポリマー粘度が得られるまで窒素をフラッシュしながら縮合重合反応を295℃で約2時間続けた。透明な顆粒を9O℃で8時間、真空乾燥した。得られた製品の固有溶液粘度(m-クレゾール中0.5%)は1.15 dl/gで、ガラス転移温度は114℃である。
【0043】
以下の実施例1では上記と類似の方法を使用して製造した。
実施例2
0.8.T0.8/P0.2.100.2/122
実施例3
0.8.T0.8/P0.2.140.2/122
実施例4
1.T1/123(12が60モル%)
実施例5
1.T1/122(12が50モル%)
実施例6
0.8.T0.8/P0.4.140.4/121.6(12が40モル%)
実施例7
0.8.T0.8/P0.2.100.2/6.10
実施例8
0.8.T0.8/P0.2.100.2/6.14
実施例9
0.8.T0.8/P0.2.140.2/6.14
実施例10
PT/6.18
実施例11
1.T1/60.5.180.5(6が16モル%)
実施例12
1.T1/61.5.181.5(6が30モル%)
実施例13
0.8.T0.8/B0.4.140.4/121.6
実施例14
0.8.T0.8/IPD0.4.140.4/121.6
実施例15
0.8.T0.8/B0.4.140.4/60.8.140.8
実施例16
P.T/6.14
実施例17
P48.T/123
【0044】
【表2】

【0045】
(1)「射出成形性」は射出成形適合性である:ショトサイクル時間、変形なし、気泡なし、欠陥なし
(2)「耐応力亀裂性」は、射出成形した厚さ2mmのダンベルを23℃で180度に曲げた時の破断しないエチルアルコールの最高濃度に対応する。
(3)「重合の容易さ」は困難でない条件下で重合できる能力:300℃以上でなく、サイクル時間が長くなく、粘度が高くなく、(所定の重合温度)等
(4)「可撓性」は23℃、50% RHの条件下で15日間維持した後のISO178に対応する曲げモジュラス。剛性が高すぎるものはメガメのフレームに適していない。
(5)「耐衝撃性」はメガメフレムでテストした。メガメフレムにボールを150フィート/秒で落下させた。
(6)「紫外線抵抗性」はQUV法で評価した。初期サンプルと黄変度を比較した。
PA12はポリアミド12、比較例2はPA12とPA−B.T/B.I/12の化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PACMと、テレフタル酸と、ジアミンDと、二酸Xと、ジアミンX1と、二酸Y1との縮合で得られる下記式のコポリアミド:
PACM.T/D.X/X1.Y1
(ここで、
PACMはp-ビス(アミノシクロヘキシル)メタンを表し、
Tはテレフタル酸を表し、
Dは芳香族、芳香脂肪族および脂環式のジアミンから選択されるジアミンを表し、
Xは8〜20の炭素原子を有する二酸HOOC−(CH2n−COOHを表し、
X1は脂肪族ジアミンを表し、
Y1は6〜20の炭素原子を有する二酸HOOC−(CH2n−COOHを表し、
PACM.Tのモル比率は(PACM.T)/(PACM.T+D.X)が0.5以上となり、1まで増加することができるような比率であり、
X1のモル比率は16%〜38%であり、
X1.Y1の一部または全体を9〜20の炭素原子を有するZ、ラクタムまたはα、ω−アミノカルボン酸で置換でき、この場合のZのモル比率は33%〜75%にすることができる)
【請求項2】
DがPACMである請求項1に記載のコポリアミド。
【請求項3】
DがPACM20である請求項2に記載のコポリアミド。
【請求項4】
DがBMACMである請求項1に記載のコポリアミド。
【請求項5】
Xが10〜14の炭素原子を有する二酸である請求項1〜4のいずれか一項に記載のコポリアミド。
【請求項6】
X1.Y1がラウリルラクタムに置換された請求項1〜5のいずれか一項に記載のコポリアミド。
【請求項7】
X1が6〜10の炭素原子を有するジアミンで、Y1が10〜14の炭素原子を有する二酸である請求項1〜6のいずれか一項に記載のコポリアミド。
【請求項8】
X1が6つの炭素原子を有するジアミンで、Y1が15〜20の炭素原子を有する二酸である請求項1〜7のいずれか一項に記載のコポリアミド。
【請求項9】
40〜100重量%の請求項1〜8のいずれか一項に記載のアモルファスコポリアミドと、0〜60重量%の半結晶ポリアミドおよび衝撃改質剤の中から選択されるポリマーとから成る組成物。
【請求項10】
補強用充填材または非補強用充填材、熱安定剤または紫外線安定剤、内部または外部滑剤、可塑剤、難燃剤、顔料、色素、伝導性充填材、帯電防止充填材または鎖終端剤の中から選択される添加剤をさらに含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
さらに触媒を含む請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の組成物から成る物体、例えばパネル、フィルム、シート、パイプ、プロフィルまたは射出成形品。
【請求項13】
請求項1〜8に記載のアモルファスコポリアミドまたは19〜12のいずれか一項に記載の組成物から成る透明な保護膜で被覆された物体。
【請求項14】
触媒の存在下でモノマーを縮合する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアモルファスコポリアミドの製造方法。
【請求項15】
触媒の存在下で各成分を溶融混合する請求項9に記載の組成物の製造方法。

【公表番号】特表2009−528399(P2009−528399A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555767(P2008−555767)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051553
【国際公開番号】WO2007/096326
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】