説明

siRNA発現カセットを合成するための方法およびキット

siRNA発現カセットを迅速に産生するための、増幅に基づく方法およびキットを提供する。細胞において、増幅されたsiRNA発現カセットを発現するための方法もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、同時係属米国仮出願第60/391,718号、2002年8月1日出願および第60/408,298号、2002年9月6日出願の優先権を請求する。
【0002】
政府の権利の言及
[0002]本発明は、助成金番号AI29329のもと、米国保健社会福祉省の公衆衛生局からシティー・オブ・ホープ癌センターへの政府の援助を受けて行った。米国政府は、本発明に一定の権利を有しうる。
【0003】
発明の分野
[0003]本発明は、RNA干渉(RNAi)に関連し、そして多数のRNAi遺伝子構築物をスクリーニングして、既定の標的に対して最も効果的であるものを同定するのに有用である。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
[0004]RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)が相同転写物の転写後分解を誘導するプロセスであり、そして植物、真菌、昆虫、原生動物、および哺乳動物を含む、多様な生物で観察されてきている(Moss, E.G.ら、2001;Bernstein, E.ら、2001;Elbashir, S.M.ら、2001;Elbashir, S.M.ら、2001)。RNAiは、トランスフェクションまたは内因性発現いずれかを介して、細胞をdsRNAに曝露することによって開始される。二本鎖RNAは、siRNA(小干渉RNA)として知られる、21〜23ヌクレオチド(nt)断片へとプロセシングされる(Elbashir, S.M.ら、2001;Elbashir, S.M.ら、2001)。これらのsiRNAは、RNAに誘導されるサイレンシング複合体またはRISCとして知られる複合体を形成し(Bernstein, E.ら、Hammond, S.M.ら、2001)、この複合体が相同標的RNA分解において機能する。哺乳動物の系において、配列特異的なRNAiの効果は、21〜23塩基転写物またはより長いヘアピン前駆体のトランスフェクションまたは内因性発現いずれかを介して、siRNAを導入することによって観察されうる。siRNAを使用すると、dsRNAが誘導する、遺伝子発現の非特異的阻害を導く、インターフェロン経路およびPKR経路が回避される(Elbashir, S.M.ら、2001)。
【0005】
[0005]最近、いくつかのグループによって、ヒト細胞において、siRNAがPolIIIプロモーターによって有効に転写され、そして標的特異的mRNA分解を誘発しうることが立証された(Lee, N.S.ら、2002;Miyagishi, M.ら、2002;Paul, C.P.ら、2002;Brummelkamp, T.R.ら、2002;Ketting, R.F.ら、2001)。これらのsiRNAコード遺伝子は、搬送のため、プラスミドまたはエピソーム・ウイルス主鎖を用いて、ヒト細胞に一過性にトランスフェクションされた。一過性siRNA発現は、長期siRNA発現が得られるように設計された構築物を作成する前に、迅速に表現型を決定するのに有用でありうる。特に興味深いのは、既定のmRNAに沿ったすべての部位が、siRNAが仲介する下方制御に等しく感受性であるのではないという事実である(Elbashir, S.M.ら、2001;Lee, N.S.ら、2001;Yu, J.Y.ら、2002;Holen, T.ら、2002)。
【0006】
[0006]短いsiRNAによるmRNAの分解を伴う転写後サイレンシングと対照的に、長いsiRNAを用いてDNAをメチル化すると、植物における遺伝子サイレンシングの代替手段が提供されることが示されている(Hamiltonら)。より高次の真核生物において、DNAは、CpG二ヌクレオチドのグアノシンの5’に位置するシトシンでメチル化される。この修飾は、遺伝子発現に重要な制御効果を有し、これは、多くの遺伝子のプロモーター領域に位置する、CpGアイランドとして知られるCpGリッチ領域が関与する場合、特に当てはまる。ほぼすべての遺伝子関連アイランドは、常染色体に対するメチル化から保護されている一方、CpGアイランドの徹底的なメチル化は、選択された、インプリントされた遺伝子およびメスの不活性X染色体上の遺伝子の転写不活性化に関連付けられてきている。通常はメチル化されていないCpGアイランドの異常なメチル化は、不死化されそして形質転換された細胞では比較的頻繁な事象であることが立証されており、そしてヒト癌において、定義される腫瘍サプレッサー遺伝子の転写不活性化に関連付けられてきている。最後の状況では、プロモーター領域の過剰メチル化は、腫瘍抑制遺伝子機能を除去する際のコード領域突然変異の代替法として存在する(Hermanら)。標的遺伝子のメチル化を指示するためのsiRNAの使用が、本明細書に援用される米国仮出願第60/447,013号、2003年2月13日提出に記載される。
【0007】
[0007]既定のmRNA標的に関するsiRNA標的部位選択に適用される規則は、現時点ではない。したがって、潜在的な標的配列を迅速にスクリーニングして、siRNAが仲介する分解を受けやすい単数または複数の配列を同定可能であることが重要である。この問題に取り組む最初の試みは、細胞抽出物における、リボザイムなど、核酸産物による対形成を含む塩基対形成にアクセス可能な部位を同定するように設計された、天然mRNA転写物に対するオリゴヌクレオチド/RNアーゼH法を利用していた。このアプローチはまた、siRNAの結合部位を同定するのにも適用されてきた(Lee, N.S.ら、2001)。オリゴヌクレオチド/RNアーゼH法でアクセス可能部位を同定したとしても、なお、アクセス可能部位の標的に対するsiRNAを生成する必要がある。このアプローチはまた、siRNA部位アクセス可能性にも適用されてきている(Lee, N.S.ら、2001)。しかし、このプロセスは時間がかかる可能性もあり、そして結局、なお、最終試験のため、siRNA遺伝子を合成する必要がある。
【0008】
[0008]したがって、本発明の目的は、siRNAが仲介する分解を受けやすい潜在的な標的配列の迅速なスクリーニングを可能にするため、siRNA遺伝子を迅速に合成するための方法およびキットの形で、増幅に基づくアプローチを提供することである。
【0009】
[0009]本発明の別の目的は、増幅されたsiRNA発現カセットを細胞にトランスフェクションすることによって、標的遺伝子の発現を調節するかまたは阻害する方法を提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
[00010]本発明は、プロモーター含有siRNA発現カセットを迅速に合成し、そして続いて細胞にトランスフェクションするための、増幅に基づくアプローチ(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR))を提供する。このアプローチには方法および該方法を実行するためのキットが含まれ、該アプローチを、siRNAコード遺伝子の容易なスクリーニングに利用して、既定の標的に対して、最適な機能的活性を有するsiRNAをコードするものを同定することも可能である。該アプローチを、プロモーターから独立に発現されるsiRNA、あるいはヘアピン前駆体または他の前駆体として発現されるsiRNAを用いて、利用することも可能である。該アプローチを用いて産生される増幅産物を、細胞にトランスフェクションし、その後、機能アッセイを行うことによって、続くクローニングなしに直接使用することも可能である。
【0011】
[00011]本発明の方法は、迅速で、そして安価であり、ベクターにクローニングする前に、多数の異なるsiRNA遺伝子候補および/またはプロモーター候補を有効性に関して迅速にスクリーニングすることを可能にする。
【0012】
[00012]本発明の方法は、siRNA遺伝子ライブラリーをスクリーニングするのに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の詳細な説明
[00022]本発明は、プロモーター含有siRNA発現カセットを産生するための、増幅に基づく方法を提供する。
【0014】
1つの態様において、該方法は:
i)増幅反応混合物中で、二本鎖プロモーター配列または構築物の一方の鎖を、プロモーター配列の5’端に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーで処理して;
ii)増幅反応混合物中で、プロモーター配列または構築物の他方の鎖を、プロモーター配列の3’端に相補的な第二のオリゴヌクレオチドプライマーで処理して、ここで第二のプライマーは、siRNA分子のセンス配列または(および/または)アンチセンス配列をコードする配列に相補的な1以上の配列を含んでなり、場合によってそれとともに、ループ配列およびターミネーター配列の一方または両方を含んでなる;そして
iii)増幅反応中、プロモーター配列または構築物上に前記プライマーをアニーリングさせ、そして伸長させる温度で、そして伸長産物を変性させる温度で、工程(i)および(ii)の増幅反応混合物を処理して、プロモーター、siRNAのセンス配列または(および/または)アンチセンス配列をコードする1以上の配列、並びにループ配列およびターミネーター配列の一方または両方を含んでなる増幅産物を提供することを含んでなる。
【0015】
[00023]工程(i)〜(iii)を十分な回数反復して、プロモーター含有siRNA発現カセットを増幅しそして検出することも可能である。本発明において、ループ配列および/またはターミネーター配列の代替物であって、ループ配列およびターミネーター配列と同じ機能または目的を達成可能な前記代替物を利用することも可能であることもまた、認識される。上述の工程の変型が本発明内に含まれ、その場合、これらの変型もまた、プロモーター含有siRNA発現カセットを産生する、増幅に基づく方法を提供することもまた、認識される。用語、相補的は、好ましい態様においては、2つの配列間の完全な塩基対形成マッチを指すが、こうしたものである必要はなく、そしてしたがって、用語、相補的は、完全な塩基対形成マッチを持たないが、別の方式で、本発明の意図する結果を達成可能な配列もまた、含む。
【0016】
[00024]用語「ループ配列」および「ターミネーター配列」は、ループ要素およびターミネーター要素に対応する配列を指し、最終配列、および最終配列をコードする配列などの前駆体配列いずれか、および相補配列いずれかを含む。
【0017】
[00025]好ましい態様において、該方法は、PCRに基づく方法である。しかし、本発明は、現在知られるか、または将来知られる、他の増幅法に基づいて、実施することも可能であることが認識される。
【0018】
[00026]プロモーターは、siRNA分子を転写可能ないかなるプロモーターであることも可能であり、そして好ましくは、哺乳動物細胞において、siRNAを転写することも可能なものである。好ましい態様において、プロモーターはPolIIIプロモーターであり、より好ましくは哺乳動物U6プロモーターであり、そして最も好ましくはヒトU6プロモーターである。他のプロモーター、例えばH1プロモーター、U1またはtRNAプロモーター、例えばtRNA Va1、MetまたはLys3もまた、本発明に有用である可能性もある。U1 snRNAプロモーターなどのPolIIプロモーターを使用することもまた可能である。
【0019】
[00027]ターミネーター配列は、機能するターミネーター配列をコードする配列いずれであることも可能である。好ましい態様において、ターミネーター配列は、デオキシアデノシン、好ましくは約4〜6のデオキシアデノシン、そしてより好ましくは6のデオキシアデノシンの配列を含んでなる。
【0020】
[00028]別の態様において、第二のプライマーは、機能するsiRNAコード配列を同定するタグ配列をさらに含んでなることも可能である。より好ましい態様において、タグ配列は、クローニングに有用な制限部位をさらに含んでなる。
【0021】
[00029]1つの態様において、第二のプライマーは、センス配列をコードする配列に相補的な配列とともに、ターミネーター配列またはループ配列を含んでなる。
[00030]別の態様において、第二のプライマーは、アンチセンス配列をコードする配列に相補的な配列とともに、ターミネーター配列またはループ配列を含んでなる。
【0022】
[00031]さらに別の態様において、第二のプライマーは、前記siRNA分子のセンス配列をコードする配列に相補的な配列およびアンチセンス配列をコードする配列に相補的な配列とともに、ターミネーター配列を含んでなる。
【0023】
[00032]上述の態様の好ましい態様において、センス配列およびアンチセンス配列は、ループ配列によって付着されていることも可能である。ループ配列は、本発明にしたがって、機能するsiRNA発現カセットの発現を可能にする配列または長さいずれを含んでなることも可能である。好ましい態様において、ループ配列は、他のヌクレオチド塩基よりも多量のウリジンおよびグアニンを含有する。ループ配列の好ましい長さは、約4〜約9ヌクレオチド塩基であり、そして最も好ましくは約8または9ヌクレオチド塩基である。
【0024】
[00033]本発明の方法の増幅産物は、上述の態様のどれが選択されるかに応じて多様であろう。
[00034]センス配列およびアンチセンス配列をコードする配列または構築物は、好ましくは約19〜29ヌクレオチド、より好ましくは約19〜23ヌクレオチド、そして最も好ましくは約21ヌクレオチドを含有する。siRNA分子はまた、3’ヌクレオチド、好ましくは3’UUを含む3’二ヌクレオチドオーバーハングも含有することも可能である。より一般的に、RNAiまたはsiRNA分子にはまた、当該技術分野に知られるものも含まれる。
【0025】
[00035]1つの態様において、増幅産物は、プロモーター配列、およびsiRNA分子のセンス配列またはアンチセンス配列いずれかをコードする配列または構築物を含んでなる。増幅産物はまた、ループ配列またはターミネーター配列を含有することも可能である。
【0026】
[00036]別の態様において、増幅産物は、プロモーター、siRNA分子のセンス配列またはアンチセンス配列いずれかをコードする配列または構築物、およびターミネーター配列を含んでなる。
【0027】
[00037]別の態様において、増幅産物は、プロモーター、siRNA分子のセンス配列またはアンチセンス配列いずれかをコードする配列または構築物、およびループ配列を含んでなる。この態様において、別の増幅反応中、増幅産物を処理して別の増幅産物を提供することも可能である。第三のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、これを達成することも可能である。この第三のプライマーの一部は、第一の増幅産物のループ配列に相補的である。第三のプライマーはまた、第一の増幅産物がセンスコード配列を含有する場合はアンチセンス配列をコードする配列に相補的な配列、または第一の増幅産物がアンチセンスコード配列を含有する場合はセンス配列をコードする配列に相補的な配列も含んでなる。第三のプライマーはまたターミネーター配列も含むことも可能である。
【0028】
[00038]別の態様において、増幅産物は、プロモーター、siRNA分子のセンス配列をコードする配列または構築物、およびアンチセンス配列をコードする配列または構築物を含んでなる。この態様において、センスおよびアンチセンスコード配列または構築物は、ループ配列によって付着されていることも可能である。増幅産物はまた、ターミネーター配列も含有することも可能である。
【0029】
[00039]さらに別の態様において、プロモーター、siRNA分子のセンス配列をコードする配列または構築物、およびアンチセンス配列をコードする配列または構築物を含んでなる増幅産物が産生される。センスおよびアンチセンスコード配列または構築物は、ループ配列によって付着されていることも可能である。増幅産物はまた、ターミネーター配列も含有することも可能である。
【0030】
[00040]さらに別の態様において、増幅産物は、別の増幅反応中、第四のオリゴヌクレオチドプライマーであって、その一部がタグ配列に相補的である前記第四のオリゴヌクレオチドプライマーで処理することも可能である。
【0031】
[00041]好ましい態様において、該方法は、増幅されたプロモーター含有siRNA発現カセットを精製する工程をさらに含んでなることも可能である。多様な精製技術が当該技術分野に知られ、そして本発明で使用可能である。例を以下に記載する。
【0032】
[00042]別の態様において、増幅された、そして好ましくは精製された、本発明にしたがって産生されたプロモーター含有siRNA発現カセットを、スクリーニングのため、細胞にトランスフェクションする。トランスフェクション後、siRNAが発現されて、遺伝子サイレンシングを誘導することも可能である。
【0033】
[00043]別の態様において、選択された、そして好ましくは精製された、プロモーター含有siRNA発現カセットを、選択されたベクターにクローニングする。この態様のため、制限部位をsiRNA発現カセットの末端に、好ましくは産生中に、例えばプライマー内に制限部位コード配列を含むことによって、挿入することも可能であることが認識される。この態様の略図が図9に示されるとともに、本明細書に援用される米国仮出願第60/399,397号、2002年7月31日出願に示される。
【0034】
[00044]好ましい態様において、選択される細胞は哺乳動物細胞である。
[00045]別の好ましい態様において、オリゴヌクレオチドプライマーの1以上が、好ましくはリン酸化によって、修飾されている。
【0035】
[00046]別の態様において、該方法はまた、発現されたsiRNA分子に感受性であるmRNA上の標的部位に関してスクリーニングする工程も含んでなる。
[00047]別の態様において、該方法は、対照カセットなどの陽性および/または陰性対照を含む。
【0036】
[00048]別の側面において、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。該方法は、siRNAが発現され、そして標的遺伝子を阻害することが可能であるように、増幅された、そして好ましくは精製された、siRNA発現カセットを細胞にトランスフェクションすることを含んでなる。好ましい態様において、2以上の異なるsiRNA発現カセットで細胞をトランスフェクションする。1つの態様において、異なるsiRNA発現カセットは、異なるループ配列を含む、異なるsiRNAコード遺伝子、および/または異なるプロモーターを含有する。
【0037】
[00049]別の側面において、本発明は、本発明にしたがって、増幅されたsiRNA発現カセットを細胞にトランスフェクションすることによって、例えば遺伝子のプロモーター領域を含む標的遺伝子のメチル化を指示することによって、哺乳動物において、遺伝子機能を修飾する方法を提供する。
【0038】
[00050]別の側面において、本発明は、プロモーター含有siRNA発現カセットを産生するためのキットの形のPCRに基づくアプローチを提供する。該キットは、二本鎖のプロモーター含有テンプレート、プロモーター含有テンプレートの5’端に相補的なオリゴヌクレオチドプライマー、およびプロモーター含有テンプレートの3’端に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを含んでなる。3’プライマーは、siRNA分子のセンス配列または(および/または)アンチセンス配列をコードする配列に相補的な1以上の配列もまた含んでなる。
【0039】
[0051]3’プライマーは、ループ配列をさらに含んでなることも可能であり、この場合、キットはループ配列に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含んでなり、該プライマーは、siRNA分子のセンス配列またはアンチセンス配列をコードする配列に相補的な配列を含んでなる。
【0040】
[00052]1つの態様において、キットは、センス配列をコードする配列に相補的な配列を含んでなる3’プライマー、およびアンチセンス配列をコードする配列に相補的な配列を含んでなる別の3’プライマーを含んでなる。
【0041】
[00053]別の態様において、3’プライマーは、センス配列をコードする配列に相補的な配列、アンチセンス配列をコードする配列に相補的な配列、およびターミネーター配列を含んでなる。センスおよびアンチセンスコード配列に相補的な配列は、好ましくは、ループ配列によって付着される。
【0042】
[00054]好ましい態様において、オリゴヌクレオチドプライマーは、好ましくはリン酸化によって、修飾されている。
[00055]該キットはまた、PCR増幅試薬および増幅されたsiRNA発現カセットを精製する試薬も含んでなることも可能である。
【0043】
[00056]別の好ましい態様において、該キットはまた、陽性対照および陰性対照の一方または両方も含んでなる。
[00057]本発明の好ましい態様を以下に記載する;が、本発明は、以下の態様に限定されないことが理解される。
【0044】
哺乳動物細胞におけるsiRNAのPCR増幅、トランスフェクション、および発現
[00058]PCRに基づくアプローチの手順を図1に模式的に示す。好ましい態様において、PCR反応において、ヒトU6プロモーターの5’端に相補的な普遍的プライマーとともに、プロモーターの3’端に相補的なプライマー(単数または複数)であって、センスまたはアンチセンスsiRNA遺伝子に相補的な付加配列を宿する、前記の3’端に相補的なプライマーを用いる(図1A)。センス配列またはアンチセンス配列に転写ターミネーター配列(Ter)が続き、該配列は、好ましくは約4〜6のデオキシアデノシンのストレッチであり、そしてより好ましくは6デオキシアデノシンのストレッチであり、そしてこれに短いさらなる「スタッファー・タグ」配列が続き、この配列は、より後の段階で行いうるクローニングのための制限部位を含むことも可能である。生じるPCR産物には、U6プロモーター配列、siRNAセンスまたはアンチセンスコード配列、ターミネーター配列、および産物の3’末端の短いタグ配列が含まれる。
【0045】
[00059]別の態様において、センス配列およびアンチセンス配列両方が、同一カセットに含まれることも可能である(図1B、図1D)。この場合、好ましくは9ヌクレオチドを含有するヌクレオチドループを、センスおよびアンチセンスsiRNA配列間に挿入する。生じる単一PCR産物には、U6プロモーター、ステム・ループの形のsiRNAセンスおよびアンチセンスコード配列、PolIIIターミネーター配列、および「スタッファー」タグ配列が含まれる(図1D)。このカセットを構築するため、2つの3’プライマーを用いる。第一のPCR反応は、5’U6普遍的プライマー、およびU6プロモーターの20ヌクレオチドに相補的な配列に続いてsiRNAセンスコード配列に相補的な配列および9ntループを有する3’プライマーを使用する(図1B)。この第一の反応の1マイクロリットルを、同じ5’U6プライマー、並びにアンチセンス鎖に付加された9ntループに相補的な配列、Terおよび「スタッファー」タグ配列を宿する3’プライマーを使用する、第二のPCR反応で再増幅する(図1B)。
【0046】
[00060]別の態様において、センス、ループ、アンチセンス、Terおよび「スタッファー」タグ配列を宿する単一の3’プライマーを用いて、一工程PCR反応を行う(図1C)。一般的には有効であるが、このアプローチは、かなり長くそして構造化された3’PCRプライマーを使用し、該プライマーはいくつかの配列では、望ましい全長二本鎖PCR産物を得る際に困難を引き起こしうる。
【0047】
[00061]U6プロモーターに相補的な領域が変化しないため、PCR条件は、すべてのsiRNA遺伝子に関して、比較的標準的である。いくつかのカセットを構築するため、各PCR工程に1分間およびアニーリング温度として55℃を用いて、各場合で最適増幅を達成した。直接トランスフェクションを行い、そしてPCR増幅siRNA遺伝子を試験するため、PCRプライマーの5’末端を、例えばリン酸化によって、好ましくはDNAポリヌクレオチドキナーゼおよび非放射性ATPを用いて、修飾することも可能である。プライマーのこの修飾は、PCR産物を細胞内で安定化させ、それによって、PCR産物の有効性を増進する。
【0048】
[00062]PCR反応が完了したら、例えばゲルろ過カラムを介してプライマーから産物をカラム精製するか、または電気泳動後、ゲルから直接切除することも可能である。以下に記載され、そして本明細書に援用される同時係属出願第60/356,127号、2002年2月14日出願に記載されるものなどの、陽イオン性リポソームキャプシド形成および/または標準的トランスフェクション法の後、精製産物を細胞に適用することも可能である。ノーザンブロッティング解析によって、トランスフェクションPCR産物の細胞内発現を検出し(図3A)、こうしてすぐれたトランスフェクション効率が立証された。
【0049】
siRNAコードPCR産物を用いた、機能するsiRNAおよびアクセス可能標的部位の迅速スクリーニング
[00063]増進緑色蛍光タンパク質(EGFP)コード配列に融合したHIV rev配列(Leeら、2002)を用いて、細胞における有効性に関して、PCR増幅siRNAコードDNAを試験した。この構築物を、エクジソン誘導性pINDベクター系(Invitrogen)に挿入した。その後、誘導性プロモーターのトランス活性化因子を安定して発現する293細胞に、ベクターをトランスフェクションした。この系を使用すると、培地にポナステロンA(Invitrogen)を添加した後、強いEGFP発現が生じる(図3A)。
【0050】
[00064]多数のsiRNA遺伝子を試験しようとする場合、トランス活性化因子および標的構築物両方を発現する安定細胞株が好ましい可能性があるが、標的−EGFP融合構築物との同時トランスフェクションは、siRNA有効性に関する、迅速でそして高感度の試験を提供する。標的配列cDNAは、この誘導性ベクター系に容易にクローニングされ、望ましいEGFP融合体を生成することも可能である。この系を利用すると、PCR産物から発現される有効なsiRNAが、EGFP発現を阻害し、siRNA機能のFACSまたは顕微鏡に基づく解析いずれかが可能になるであろう。
【0051】
[00065]PCRアプローチを試験するため、センスまたはアンチセンスsiRNA遺伝子いずれかを含有するU6カセット(図1A)、またはセンスおよびアンチセンスsiRNA両方をコードするヘアピン構築物(図1C)を増幅した。PCR産物をカラム精製した。その後、精製されたPCR産物と、誘導性rev−EGFP融合構築物を、エクジソン・トランス活性化因子発現細胞株に同時トランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、培養物にポナステロンAを添加して、標的mRNA発現を誘導した。この系を用いると、誘導12時間後に、siRNAによるEGFP発現の強いそして特異的な下方制御が検出可能であった(図2)。センスsiRNA(図2B)、アンチセンスsiRNA(図2C)または無関係のsiRNA(未提示)のみを発現するU6発現カセットなどの対照カセットのトランスフェクションは、EGFP発現にまったく影響を及ぼさなかった。しかし、センスおよびアンチセンスsiRNAを発現するカセットを標的と同時トランスフェクションするか、またはヘアピンsiRNA遺伝子を含有する単一カセットを用いると、標的の特異的でそして有効な下方制御が検出された(図2DおよびE)。最適でそして最も再現性がある阻害(ほぼ90%)は、ヘアピンsiRNA発現カセットで得られた。これらの結果は、独立に5回、再現された。これらの実験に用いた、9塩基ループ(UUUGUGUAG)の選択される長さおよび配列は、いくつかのマイクロ−RNA前駆体に見られるループの系統発生比較に基づく。上記ループを用いた場合、siRNAセンス鎖の配列は、好ましくは、3’塩基としてUを含んではならず、これは、これが4ウリジンのストレッチを生成し、このストレッチがPolIIIターミネーター要素として作用しうるためである。
【0052】
[00066]上記結果は、本発明のトランスフェクション−PCR方法論を容易に用いて、細胞におけるsiRNA標的化および機能を迅速に試験することも可能であることを示す。
【0053】
[00067]有効なsiRNAの設計において、重要な要素は、最適な阻害活性を生じるsiRNA/標的配列の組み合わせの選択である。これは、siRNAおよびトランスフェクション法を用いて達成可能であるが、これは費用が高くそして時間がかかる可能性もある。PCR戦略を利用することによって、いくつかのsiRNA遺伝子が単一トランスフェクション実験において、同時に試験可能となる。
【0054】
[00068]機能するsiRNA遺伝子の同定を容易にするため、「スタッファー」タグ配列をPolIII転写ターミネーターのすぐ後に挿入した(図1を参照されたい)。このタグを利用することによって、トランスフェクション細胞からトランスフェクションPCRカセットを増幅し、そして続いてsiRNA配列を同定することも可能である(図1D)。これは、5’U6普遍的プライマー、およびタグ配列に相補的なプライマーを利用することによって、達成可能である(図1D)。タグ配列は、Ter配列の6つのTで始まり、これに、その後のクローニングに使用可能な制限部位、および6つの余分なヌクレオチドの「スタッファー」が続くことも可能である(全部で18nt)。いくつかのsiRNAの混合物を、誘導性標的−EGFPカセットとともに、トランス活性化因子を含有する細胞株に同時トランスフェクションすることも可能である。ポナステロンAを添加した12時間後、EGFP陰性細胞およびEGFP陽性細胞をFACS分取によって収集し、そして両方の分画からDNAを採取することも可能である。その後、単離されたPCR産物を第二周期の選択および増幅のためにトランスフェクションして、最も強力なsiRNAを発現するsiDNA遺伝子を選択することも可能である。その後、生じたPCR産物をクローニングし、そして配列決定することも可能である。EGFPをなお発現する細胞には存在しないが、EGFP陰性分画には存在するであろうため、機能するsiRNAを同定することも可能である。
【0055】
[00069]上記アプローチの変型を用いると、いくつかの発現カセットを生成し、そして既定のmRNAいずれかの上のsiRNA感受性標的部位に関して同時にスクリーニングするのに用いることも可能である。標的配列をEGFPまたは類似のレポーターに融合させ、そしてFACS解析および分取を介して、スクリーニングを迅速に達成することも可能である。陽性選択がある場合、またはFACS分取可能な表現型が利用可能である場合、この戦略を、内因性標的に対して利用することも可能である。本発明にしたがった増幅戦略は、siRNAの細胞内発現のための迅速でそして安価なアプローチを提供し、そして続いて、siRNAによる下方制御に対する標的部位の感受性の試験を提供する。
【0056】
[00070]本発明は、以下の実施例にさらに詳述され、該実施例は、例示のために提供され、そしていかなる方式でも本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
標的構築およびsiRNA標的部位の位置決定
[00071]先に記載されるように(Leeら、2002)、pIND誘導性ベクター(Invitrogen)にクローニングされた、EGFP遺伝子が続くHIV−rev配列を、siRNA標的部位として選択した。siRNAのアクセス可能標的部位の選択は、先の研究に基づき、そしてU6発現系を用いて有効なsiRNA標的であることが示された(Leeら、2002)。標的部位の配列は:
【0058】
【化1】

【0059】
(配列番号1)であり、rev−AUG開始コドンの213ヌクレオチド下流に位置する。
(実施例2)
ポリメラーゼ連鎖反応
[00072]ヒトU6プロモーターをテンプレートとして含有するプラスミドを用いて、PCR反応を行った。5’オリゴヌクレオチド(5’U6普遍的プライマー)は、U6プロモーターの5’端の29ヌクレオチドに相補的であり(太字斜体)
【0060】
【化2】

【0061】
(配列番号2)、そして該オリゴヌクレオチドをすべてのPCR工程に用いた。センス、アンチセンス、またはセンスおよびアンチセンス両方のいずれかを含有する3’オリゴヌクレオチドを図1に示し、そして本明細書に記載する。すべての3’PCRプライマーの3’端の最後の20ヌクレオチドは、U6プロモーターの最後の20ヌクレオチドに相補的であり、これは:
【0062】
【化3】

【0063】
(配列番号3)である。すべてのPCR反応を以下のとおりに行った:94℃1分間、55℃1分間および72℃1分間を30周期。増幅前に、非放射性ATPを用いてPCRプライマーをキナーゼ処理し(kinased)、そしてPCR反応に用いる前に、Qiagenカラム上で精製した。PCR産物もまた、Quiagenカラム上で精製した。siDNAコードオリゴの配列は:
1.siRNA rev−のセンス
【0064】
【化4】

【0065】
(配列番号4)
2.siRNA rev−のアンチセンス
【0066】
【化5】

【0067】
(配列番号5)
3.ヘアピンsiRNAオリゴ1−センス
【0068】
【化6】

【0069】
(配列番号6)
4.ヘアピンsiRNAオリゴ2−アンチセンス
【0070】
【化7】

【0071】
(配列番号7)である。
[00073]斜体配列は、siRNAコード配列である。
(実施例3)
細胞株および培養条件
[00074]10%ウシ胎児血清(Irvine Scientific)、1mM L−グルタミン、および100単位/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補ったDMEM(Irvine Scientific、カリフォルニア州サンタアナ)で293細胞を増殖させた。エクジソン誘導性安定A293クローンが先に記載されており(Leeら、2002)、そして100μg/mlのゼオシン(Invitrogen)を含有するDMEM中で、該細胞を維持した。
【0072】
(実施例4)
siRNA−PCR産物のトランスフェクション条件
[00075]250ngの標的プラスミドを:1)50ngのセンスsiRNA発現PCRカセット、および/または50ngのアンチセンスsiRNA発現PCRカセット;または2)9ntループによって連結されたセンスおよびアンチセンス両方を発現する単一カセット100ng、いずれかと同時トランスフェクションした。わずか25ngのステム・ループsiRNAが標的発現を遮断するのに有効であった。さらなる対照として、無関係なステム・ループsiRNAを用い、そして該siRNAは標的発現にいかなる影響も生じなかった(未提示)。
【0073】
[00076]少量のPCR増幅DNAのトランスフェクションを容易にするため、キャリアーとして作用する400ngのBluescriptプラスミドを各反応に添加した。トランスフェクション48時間後、5μMのポナステロンAを培地に添加して、そして誘導12時間後、EGFP発現に関して細胞を解析した。製造者に記載されるように、Lipofectamine PlusTM試薬(Life Technologies、GibcoBRL)を用いて、6ウェルプレートにおいて、トランスフェクションを行った。顕微鏡画像化のため、細胞を増殖させ、そして0.5%ゼラチン(Sigma)で処理したカバーガラス上でトランスフェクションした。誘導12時間後、6ウェルプレートからカバーガラスを持ち上げ、そして細胞固定のため、4%PFAを用いて室温で10分間処理した。マウント溶液にDAPIを添加して、細胞核を視覚化した。FACS解析によって、rev−EGFP mRNAの下方制御を定量化した。
【0074】
(実施例5)
ノーザン解析
[00077]製造者の指示にしたがって、RNA STAT−60(TEL−TEST B Inc.、テキサス州フレンドウッド)を用いて、総RNAを単離した。5μgの総RNAを8M−6%PAGEによって分画し、そしてHybond−N+膜(Amersham Pharmacia Biotech)にトランスファーした。si−アンチセンスRNAに相補的な32P放射標識21量体プローブをハイブリダイゼーション反応に用い、該反応は、37℃で16時間行った。21量体DNAオリゴヌクレオチドをRNA試料と並べて電気泳動し、そしてサイズ対照およびハイブリダイゼーション対照として用いた(未提示)。
【0075】
(実施例6)
細胞溶解物からのsiRNAの直接増幅
[00078]FACS分取によって、EGFP陰性および陽性細胞分画を収集した。分取した分画を遠心分離することによって、細胞ペレットを直ちに回収した。50mM KCl、10mM Tris−HCl(pH8.0)、1.25mM MgCl、0.45%NP40、0.45%Tween、および0.75μg/μlプロテイナーゼK中、37℃で一晩、ペレットを溶解させた。95℃で10分間熱不活性化させた後、3μlの細胞溶解物をPCR反応に直接用いた。
【0076】
(実施例7)
[00079]HIV−rev部位を標的とするsiRNAヘアピンをコードするPCR増幅遺伝子15ngとともに、無関係なsiRNA PCR産物15ngを、誘導性標的EGFPカセットを伴って、トランス活性化因子を発現する293細胞株に同時トランスフェクションした。トランスフェクション12時間後、ポナステロンAを添加してEGFP発現を誘導し、そしてEGFP陰性および陽性細胞をFACS分取した。EGFP陰性および陽性細胞両方から、遠心分離によって、細胞ペレットを収集し、溶解緩衝液中で一晩溶解させ、そして適切なプライマーセットを利用したPCRによって、DNAを直接増幅した。2つの異なるsiRNAコードDNAカセットを区別する2つの異なる3’プライマーを用いた。機能しないsiRNA発現カセットは、どちらの細胞分画においても、PCR増幅によって検出可能なはずである一方、機能するsiRNA発現カセットは、その産物が機能してEGFP発現を下方制御しているであろうため、EGFP陰性分画でのみ検出可能であろうと予期された。2回の独立の実験の結果を図3BおよびCに示す。どちらの場合も、機能しないsiRNAをコードする遺伝子はすべての分画からPCR増幅され(図3B)、一方、機能するsiRNAをコードする発現構築物は、主に、EGFP陰性細胞分画で検出された(図3B)。
【0077】
(実施例8)
[00080]テンプレートとしてU6+1プロモーター構築物(pTZU6+1)、普遍的5’プライマー、および特異的3’プライマーを用いたPCRによって、抗HIV U6+1短ヘアピンsiRNA(shRNA)PCR産物を産生した。標準的な5’から3’方向で、プライマーを表1に示す。センス標的配列−ループ−アンチセンス標的配列−UUUUU(pol3ターミネーター)形式で転写されるように、shRNAを設計した。U6+1プロモーターの5’端にアニーリングする普遍的5’プライマーの配列もまた、表1に示す。表1はさらに、予期されるPCR産物の3’端の対応する配列(上段、標準的な5’から3’方向で、コード鎖を示す)を示し、該配列は、U6+1プロモーターの3’端から始まり、転写の+1開始部位で終わり、その後、ヘアピンRNAをコードする配列(センス標的/ループ/アンチセンス)、PolIIIターミネーター、Bgl2部位および余分なヌクレオチドが続く。3’プライマーの配列もまた、表1において、各PCR産物の配列の後に示す。
【0078】
[00081]表1はまた、SELEX2144 tRNALys3−tat/rev標的21−ステムshRNAも示す。
(実施例9)
[00082]アンチ−tat siRNAを発現するPCR増幅発現カセットは、HIV感染を強力に阻害することが見出された。遺伝子U6+1NLS1(tat/rev)shRNAをコードするPCR増幅短ヘアピンRNAを、プラスミドベクター中の同一遺伝子(pBS U6+1NLS1(tat/rev)shRNA)と対比して、図4に示す量で、0.5マイクログラムのHIV pNL4−3とともに、293細胞に同時トランスフェクションして、そしてウイルスがコードするp24抗原アウトプットを3日間に渡って測定した。対照として、空のベクター主鎖(pBSまたはpTZU6+1)またはアンチ−tat shRNAの部位9、10および11での三重突然変異(U6+1mNLS1shRNA(PCR産物)またはpBSU6+1mNLS1shRNA(プラスミドに基づく系))を、HIV−1とともに、PCR増幅遺伝子としてトランスフェクションした。図4の結果は、プラスミドベクター中の同一遺伝子に比較して、本発明にしたがって産生したカセットを用いて得られる阻害が数対数に相当することを示す。
【0079】
[00083]図4は、U6+1 tat/rev shRNAが、カセットがPCR産物として直接トランスフェクションされるか、またはプラスミド主鎖の一部であるかに関わりなく、同等のモル比で、匹敵するHIV阻害を特異的に仲介することを示す。このパネルはまた、少量のshRNA構築物が、影響を受けやすい標的部位を通じて実質的なHIV阻害を仲介可能であることも例示する。
【0080】
(実施例10)
[00084]図5は、PCR産物から発現されたshRNAによるHIV阻害の持続を示す。陽性対照および陰性対照として、U6+1 tat/rev shoRNAとU6+1 tat/rev突然変異体shRNA構築物を用いて、実施例9に記載するように、HIV同時トランスフェクション阻害アッセイを行った。第3日にウイルス上清を収集した後、集密293細胞を10%集密で、新鮮な培地中に再度蒔き、そしてアッセイのためにウイルス上清を収集する前に、さらに3日間増殖させた。図5は、これらの実験条件下で、PCR産物が仲介するHIV阻害が、少なくとも6日間持続することを示す。
【0081】
(実施例11)
[00085]図6は、クローニングされたU6+1env shRNA構築物(表1)を用いたHIV阻害試験の結果を示す。293細胞を〜50%集密で含有する6クラスタープレートの各ウェルに、製造者の指示にしたがって、Lipofectamine Plusを用いて、6クラスタープレートのウェルあたり、0.5μgのクローニングされたプラスミドshRNAおよび0.5μgのpNL4−3プロウイルスDNAを同時トランスフェクションした。ウイルス上清のアリコットを、示した時間で採取して、そしてp24抗原に関してアッセイした。Tat/rev、阻害の陽性対照;Mtat/rev、プロセシングされたアンチセンス鎖の5’端に比較して10位、11位および12位の標的部位でミスマッチした、阻害の陰性対照。
【0082】
(実施例12)
[00086]図7は、一組のPCR反応から精製された各200ngのU6+1 env shRNA PCR産物を用いた、HIV阻害アッセイの結果を示す。pTZU6+1は、U6+1プロモーターを含有する陰性対照プラスミドである。
【0083】
(実施例13)
[00087]図8は、別の組のPCR反応から精製された各100ngのU6+1 env shRNA PCR産物を用いた、U6+1 env shRNAによるHIV阻害を示す。U6+1 tat/rev shRNAおよびU6+1 tat/rev突然変異体shRNA PCR産物を対照として含んだ。
【0084】
[00088]本発明の背景を解明し、そして本発明の実施に関するさらなる詳細を提供するために本明細書に用いた刊行物および他の資料は、本明細書に個々に援用されるかのように、本明細書に援用される。
【0085】
[00089]本発明は、本発明の好ましい態様の詳細に関連して本特許出願に開示されているが、該開示は、限定する意味よりも例示的な意味で意図されていることが理解されるはずであり、これは本発明の精神および付随する請求項の範囲内の修飾が当業者に容易に思い浮かぶであろうことが意図されるためである。
【0086】
【化8】

【0087】
【化9】

【0088】
【化10】

【0089】
【化11】

【0090】
参考文献
【0091】
【化12】

【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、siRNAを発現するU6転写カセットを得るのに用いるPCR戦略の略図である。5’PCRプライマーは、U6プロモーターの5’端に相補的であり、そしてすべてのPCR反応の標準である。A)3’PCRプライマーは、U6プロモーターの3’端の配列に相補的であり、そしてセンス配列またはアンチセンス配列いずれか、4〜6のデオキシアデノシンのストレッチ(Ter)およびさらなる「スタッファー・タグ」配列が続く。アデノシンは、U6 PolIIIプロモーターの終結シグナルであり;したがって、このシグナルの後に付加されるいかなる配列も、PolIIIポリメラーゼによって転写されず、そしてsiRNAの一部とならないであろう。B)センス配列およびアンチセンス配列が、2工程PCR反応によって、9ntループにより連結され、そしてカセットに挿入される。C)9ヌクレオチドループに連結されるセンス配列およびアンチセンス配列、並びにそれに続くアデノシンストレッチ、並びにTag配列が、単一の3’プライマーに含まれる。D)PCR反応によって得られる完全PCR発現カセット。トランスフェクション細胞から、機能するsiRNAを増幅し、そして同定するため、またはDに示したPCR産物の収量を増加させるため、図に示すように、普遍的5’U6プライマーおよびTag配列に相補的な3’プライマー(やはり標準的)を用いて、入れ子(nested)PCRを行うことも可能である。
【図2】[00014]図2は、293細胞にトランスフェクションしたsiRNA含有PCRカセットを用いた、増進緑色蛍光タンパク質(EGFP)発現の阻害を示す。センス、アンチセンス、またはセンスおよびアンチセンス両方のsiRNAいずれかを含有するPCRカセットを、標的構築物とともに、エクジソン・トランス活性化因子を発現する293細胞に同時トランスフェクションした。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)rev標的は、誘導性プロモーターから発現される緑色蛍光タンパク質mRNAと融合している。ポナステロンAを添加した後、EGFP発現は、対照細胞(A)で検出可能であるが、センスおよびアンチセンスsiRNA発現PCR産物の混合物(D)、またはヘアピン構築物を発現するPCRカセット(E)いずれかをトランスフェクションした細胞では検出不能である。パネルBおよびCは、標的およびセンスのみ(B)またはアンチセンスのみ(C)を発現するPCRカセットの細胞への同時トランスフェクションを示す。Rev−EGFPタンパク質は、Rev部分の核小体局在シグナルのため、主に細胞核小体にある。
【図3】[00015]図3は、トランスフェクション細胞におけるsiRNAの検出およびsiRNAコードDNAのPCR増幅を示す。A293細胞においてトランスフェクションされたPCR産物から発現されるsiRNAのノーザンゲル解析。レーン1、EFGP標的構築物のみをトランスフェクションされた細胞;レーン2、アンチセンスコード構築物のみをトランスフェクションされた細胞;レーン3、アンチセンスおよびセンスコード構築物を同時トランスフェクションされた細胞;レーン4、ヘアピン発現構築物をトランスフェクションされた細胞。プローブは、アンチセンスに相補的である。レーン2〜4において、siRNAコードDNA構築物を、誘導性EGFP構築物と同時トランスフェクションした。ヘアピン産物は、個々に発現されたsiRNAより小さいようであり、ヘアピンループがプロセシングされたことを立証する。BおよびC。トランスフェクションされたPCR構築物のPCR増幅。B。EGFP陽性細胞および陰性細胞を分取する、蛍光活性化細胞分取(FACS)からの非特異的siRNAコードDNAのPCR増幅。機能しない構築物は、すべての細胞分画で検出される。レーン1およびレーン4は、EGFP陽性分画からの増幅結果を示す。レーン2および3は、EGFP陰性分画からの増幅結果を示す。C。FACS分取された、EGFP発現細胞および非発現細胞からの、機能するヘアピン発現構築物のPCR増幅。増幅結果によって、EGFP陰性分画のみに、機能するsiRNAが存在することが示される(レーン2〜3)。レーン4では、増幅された産物が少量あり、これはおそらくEGFP陰性細胞のある程度の混入に由来するものであろう。NCは陰性PCR対照を示す。
【図4】[00016]図4は、PCR産物およびプラスミドから発現されるshRNAによるHIV阻害の比較を示すグラフである。
【図5】[00017]図5は、本発明にしたがったPCR産物から発現されるshRNAによるHIV阻害の持続を示すグラフである。
【図6】[00018]図6は、クローニングされたU6+1 shRNA構築物を用いる、HIV阻害の試験の結果を示すグラフである。
【図7】[00019]図7は、本発明にしたがった、精製U6+1 shRNA PCR産物を用いるHIV阻害アッセイの結果を示すグラフである。
【図8】[00020]図8は、本発明にしたがった、精製U6+1 shRNA産物を用いるHIV阻害アッセイの結果を示すグラフである。
【図9】[00021]図9は、PCR増幅siRNA発現カセットをクローニングベクターにクローニングする、本発明の態様を図式的に示す。
【配列表】


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロモーター含有siRNA発現カセットを産生するための、増幅に基づく方法であって:
i)増幅反応混合物中で、二本鎖プロモーター配列の一方の鎖を、プロモーター配列の5’端に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーで処理して;
ii)増幅反応混合物中で、プロモーター配列の他方の鎖を、プロモーター配列の3’端に相補的な第二のオリゴヌクレオチドプライマーで処理して、ここで第二のプライマーは、siRNA分子のセンス配列および/またはアンチセンス配列をコードする配列に相補的な1以上の配列とともに、ループ配列およびターミネーター配列の一方または両方を含んでなる;そして
iii)増幅反応中、プロモーター配列上に前記プライマーをアニーリングさせ、そして伸長させる温度で、そして伸長産物を変性させる温度で、工程(i)および(ii)の増幅反応混合物を処理して、プロモーター、siRNA分子のセンス配列および/またはアンチセンス配列をコードする1以上の配列、並びにループ配列およびターミネーター配列の一方または両方を含んでなる増幅産物を提供することを含んでなり、そして工程(i)〜(iii)を、プロモーター含有siRNA発現カセットを増幅するのに十分な回数反復する、前記方法。
【請求項2】
PCRに基づく方法である、請求項1の方法。
【請求項3】
プロモーターがPolIIIプロモーターである、請求項1の方法。
【請求項4】
PolIIIプロモーターが哺乳動物U6プロモーターである、請求項3の方法。
【請求項5】
U6プロモーターがヒトU6プロモーターである、請求項4の方法。
【請求項6】
ターミネーター配列をコードする配列が、約4〜6のデオキシアデノシンの配列を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項7】
ターミネーター配列をコードする配列が、6のデオキシアデノシンの配列を含んでなる、請求項6の方法。
【請求項8】
第二のプライマーが、機能するsiRNAコード配列を同定するためのタグ配列をさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項9】
タグ配列が、クローニングに有用な制限部位をさらに含んでなる、請求項8の方法。
【請求項10】
第二のプライマーが、前記siRNA分子のセンス配列をコードする配列に相補的な配列およびアンチセンス配列をコードする配列に相補的な配列とともに、ターミネーター配列を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項11】
センス配列およびアンチセンス配列をコードする配列に相補的な配列が、ループ配列によって付着されている、請求項12の方法。
【請求項12】
ループ配列が、約6〜約9ヌクレオチドを含有する、請求項13の方法。
【請求項13】
増幅産物が、プロモーター配列、siRNA分子のセンス配列またはアンチセンス配列いずれかをコードする配列、およびループ配列またはターミネーター配列を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項14】
増幅産物が、プロモーター配列、siRNA分子のセンス配列またはアンチセンス配列いずれかをコードする配列、およびターミネーター配列を含んでなる、請求項13の方法。
【請求項15】
増幅産物が、プロモーター配列、siRNA分子のセンス配列またはアンチセンス配列いずれかをコードする配列、およびループ配列を含んでなる請求項13の方法であって、別の増幅反応中、増幅産物を第三のオリゴヌクレオチドプライマーで処理する工程をさらに含んでなり、第三のオリゴヌクレオチドプライマーの一部が第一の増幅産物のループ配列に相補的であり、そして第三のオリゴヌクレオチドプライマーは、第一の増幅産物がセンスコード配列を含有する場合にはアンチセンス配列をコードする配列に相補的な配列、または第一の増幅産物がアンチセンスコード配列を含有する場合にはセンス配列をコードする配列に相補的な配列とともに、ターミネーター配列を含んでなり、第二の増幅産物を提供する、前記方法。
【請求項16】
第二の増幅産物が、プロモーター配列、ループ配列によって付着されているsiRNA分子のセンス配列をコードする配列およびアンチセンス配列をコードする配列、並びにターミネーター配列を含んでなる、請求項15の方法。
【請求項17】
増幅されたプロモーター含有siRNA発現カセットを細胞にトランスフェクションし、siRNA分子が発現される工程をさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項18】
選択される細胞が哺乳動物細胞である、請求項17の方法。
【請求項19】
オリゴヌクレオチドプライマーの1以上が修飾されている、請求項17の方法。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドプライマーの1以上が、リン酸化によって修飾されている、請求項19の方法。
【請求項21】
発現されたsiRNA分子に感受性であるmRNA上の標的部位に関してスクリーニングする工程をさらに含んでなる、請求項17の方法。
【請求項22】
2以上の異なるsiRNA発現カセットを細胞にトランスフェクションする、請求項17の方法。
【請求項23】
異なるsiRNA発現カセットが、異なるsiRNAコード遺伝子および異なるプロモーターの一方または両方を含有する、請求項22の方法。
【請求項24】
プロモーター含有siRNA発現カセットを産生するためのキットの形のPCRに基づくアプローチであって、二本鎖のプロモーター含有テンプレート、プロモーター含有テンプレートの5’端に相補的なオリゴヌクレオチドプライマー、およびプロモーター含有テンプレートの3’端に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを含んでなり、3’プライマーが、siRNAまたはsiRNA分子のセンス配列および/またはアンチセンス配列をコードする配列に相補的な1以上の配列を含んでなる、前記アプローチ。
【請求項25】
プロモーターがPolIIIプロモーターである、請求項24のPCRに基づくアプローチ。
【請求項26】
PolIIIプロモーターが哺乳動物U6プロモーターである、請求項25のPCRに基づくアプローチ。
【請求項27】
U6プロモーターがヒトU6プロモーターである、請求項26のPCRに基づく方法。
【請求項28】
siRNAが仲介する分解を受けやすい潜在的な標的配列をスクリーニングする方法であって、siRNA分子が発現され、そして潜在的な標的配列の分解を仲介することが可能である条件下で、増幅されたsiRNA発現カセットを細胞にトランスフェクションすることを含んでなる、前記方法。
【請求項29】
標的遺伝子の発現を阻害する方法であって、siRNA分子が発現され、そして標的遺伝子の発現を阻害することが可能である条件下で、増幅されたsiRNA発現カセットを細胞にトランスフェクションすることを含んでなる、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−515158(P2006−515158A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526233(P2004−526233)
【出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/023830
【国際公開番号】WO2004/013288
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(598004424)シティ・オブ・ホープ (15)
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
【住所又は居所原語表記】1500 East,Duarte Road,Duarte,California 91010−0269,United States of America
【Fターム(参考)】