説明

RAS媒介性腫瘍形成の治療のためのRAS不活性化のキナーゼサプレッサー

本発明は、Rasのキナーゼサプレッサー(KSR)の特異的な阻害のための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、KSR(特にKSR発現)の特異的な阻害のための遺伝的アプローチ及び核酸を提供する。本発明は、KSR RNAに対して実質的に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド及び核酸の発現に関する。オリゴヌクレオチド及び核酸組成物が提供される。本発明は、KSR発現の阻害を含む、KSRを阻害する方法を提供する。gf Rasにより媒介される腫瘍形成、転移をブロックするための方法、及び癌治療のための方法が提供される。細胞に対して放射線感受性を与える方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の支援)
本発明をもたらす研究は、少なくとも部分的に、National Institute of Healthの助成金番号CA42385および助成金番号CA52462からの助成により支援された。従って、連邦政府は本発明において、特定の権利を有し得る。
【0002】
(技術分野)
本発明は、Rasのキナーゼサプレッサー(KSR)の特異的な阻害のための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、KSR(特にKSR発現)の特異的な阻害のための遺伝的アプローチ及び核酸を提供する。本発明は、KSRを特異的に阻害し、gf Rasにより媒介される腫瘍形成をブロックする、KSR RNAに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド及び核酸の発現に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
Rasは、腫瘍化形質転換及び発生において必須の役割を果たす。腫瘍形成H−、K−、及びN−Rasは、少数の部位に限定された点変異から生じる(アミノ酸12、13、59、及び61)。通常のRasとは異なり、腫瘍形成rasタンパク質は、GTPアーゼ活性を本質的に欠いており、構成的に活性化されたままである(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。ヒトの癌における腫瘍形成rasの関与は30%であると概算されている(非特許文献4)。
【0004】
突然変異は、しばしば、ras遺伝子の1つのみに限定されており、頻度は、組織特異的又は腫瘍型特異的である。K−rasは、ヒトの癌において最も通常に突然変異する癌遺伝子である(特に、コドン−12突然変異)。一方、1個のヌクレオチド置換から生じるH−、K−、及びN−Rasの癌遺伝子活性化がヒトの癌の30%において観察され(非特許文献5)、ヒト膵臓癌の90%より多くがコドン12K−ras突然変異であることを明らかにする(非特許文献4;非特許文献6;非特許文献7)。膵臓管腺癌(膵臓で最も普通の癌)は、その急速な発症及び処置に対する耐性で有名である。ヒト膵臓腫瘍におけるK−ras突然変異の頻度が高いことは、構成的なRas活性化が膵臓の腫瘍形成中に重要な役割を果たすことを示唆する。膵臓外分泌部の腺癌は、西欧諸国において癌に関連する死亡率の第4の主因を表す。処置の成功は限られたものであり、5年生存率は5%未満であり、外科的に切除不能な腫瘍を有する患者について平均生存度は4ヶ月である(非特許文献8;非特許文献9)。この点変異は、通常の立方骨の膵臓管上皮が平坦な増殖性の病変へ進行する場合、疾患の経過で初期に同定することができ、この病変は膵臓癌の病因論における原因であるとみなされる(非特許文献10;非特許文献11)。しかし、ヒト膵臓癌における癌遺伝子K−rasシグナル形成の制御は、主に未知のままである。
【0005】
K−ras突然変異は、直腸及び肺の癌の50%に存在する(非特許文献12;非特許文献13)。尿路及び膀胱の癌において、突然変異は主にH−ras遺伝子においてである(非特許文献14;非特許文献15)。N−ras遺伝子の突然変異は、白血病及び肝癌の30%に存在する。ヒトの皮膚病変のほぼ25%は、Ha−Rasの突然変異を含む(扁平上皮細胞癌種について25%、及び黒色腫について28%)(非特許文献5;非特許文献16)。甲状腺癌の50〜60%は、全ての3つの遺伝子において固有の突然変異を有する(非特許文献17)。
【0006】
Rasの構成的活性化は、腫瘍形成突然変異を介して、又は過剰に活性化された増殖因子レセプター(例えばEGFR)を介して達成することができる。EGFRファミリーのメンバー、特にEGFR及びHER2の発現及び/又は増幅の増加は、ヒトの悪性疾患の種々の形態に関連している(非特許文献18にまとめられるように)。これらの癌のいくつか(膵臓、直腸、膀胱、肺を含む)では、EGFR/HER2の過剰発現は、腫瘍形成Ras突然変異の存在によって悪化する。腫瘍におけるこれらのレセプターの異常活性化は、過剰発現、遺伝子増幅、構成的活性化突然変異又はオートクリン増殖因子ループに起因する場合がある(非特許文献19)。増殖因子レセプター(特にEGFR)について、これらのレセプターの増殖又は/及び過剰発現は、乳癌、卵巣癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、肺癌、直腸神経芽細胞腫において頻繁に起こる。
【0007】
種々の治療ストラテジーがRas−Raf−MAPKカスケードの重要化合物を失活するために開発されたが、機能獲得又は構成的Ras(gf Ras)作用の特異的な阻害は臨床的には達成されなかった(非特許文献17;非特許文献20)。
【非特許文献1】Trahey,M.及びMcCormick,F.、Science(1987)238:542−5
【非特許文献2】Tabin,C.J.et al.、Nature(1982)300:143−9
【非特許文献3】Taparowsky,E.et al.、Nature(1982)300:762−5
【非特許文献4】Almoguera,C.et al.、Cell(1988)53:549−54
【非特許文献5】Bos,J.L.、Cancer Res(1989)49,4682−9
【非特許文献6】Smit,V.T.et al.、Nucleic Acids Res(1988)16,7773−82
【非特許文献7】Bos,J.L.、Cancer Res(1989)49,4682−9
【非特許文献8】Jemal,A et al.、CA Cancer J Clin(2002)52,23−47
【非特許文献9】Burris,H.A.,3rd et al.、J Clin Oncol(1997)15,2403−13
【非特許文献10】Hruban,R.H.et al.、Clin Cancer Res(2000)6,2969−72
【非特許文献11】Tada,M.et al.、Gastroenterology(1996)110,227−31
【非特許文献12】Bos,J.L.et al.、Nature(1987)327:293−7
【非特許文献13】Rodenhuis,S.et al.、Cancer Res.(1988)48:5738−41
【非特許文献14】Fujita,J.et al.、Nature(1984)309:464−6
【非特許文献15】Visvanathan,K.V.et al.、Oncogene Res.(1988)3:77−86
【非特許文献16】Migley,R.S.及びKerr,D.J.、Crit Rev Oncol Hematol.(2002)44:109−20
【非特許文献17】Adjei,A.A.、J Natl Cancer Inst.(2001)93:1062−74
【非特許文献18】Prenzel,N.et al.、Endocr Relat Cancer.(2001)8:11−31
【非特許文献19】Voldborg,B.R.et al.、Ann Oncol.(1997)8:1197−206
【非特許文献20】Cox,A.D.及びDer,C.J.、Curr Opin Pharmacol(2002)2,388−93
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故に、Ras経路(特にRasにより媒介される癌)を失活又は阻害するための従来技術の方法に付随する上述の欠乏の観点から、Ras経路を特異的に阻害するための、特にgf Rasを阻害するための方法及び組成物についての当該技術分野における必要性がなお存在することが明らかであるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書中の参考文献の引用は、本発明に対する従来技術であることを承認するものとは解釈されるべきではない。
【0010】
(要旨)
本発明は、Rasのキナーゼサプレッサー(KSR)の特異的な阻害のための方法及び組成物に関する。本発明の組成物及び方法は、KSRの発現及び/又は活性を阻害する。1つの局面では、本発明は、KSRの特異的な阻害のための遺伝的アプローチ及び核酸を提供する。KSRの特定の阻害について、Ras経路が破壊され、特に、Rasにより媒介される腫瘍及び腫瘍形成が阻害されるか又はブロックされ、既存の腫瘍が退縮し、転移が阻害され、腫瘍又は癌細胞の増殖が阻害されることが、本明細書中に示される。
【0011】
本発明はさらに、KSA発現及び/又は活性を特異的に阻害することによって、特に過剰発現性の癌細胞又は腫瘍細胞に放射線感受性を与えるための方法及び手段に関する。1つのこのような局面では、過剰発現性の癌細胞又は腫瘍細胞は、イオン化放射線(IR)により誘導されるアポトーシス又は細胞死に耐性である。KSRに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与又は発現によるものを含むKSRの阻害は、イオン化放射線に対する感受性を細胞に与え、それによって細胞の分割又は増殖がブロックされるか、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの非存在下でのIRよりも効果的に細胞が殺される。KSRに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与又は発現は、放射線治療を含む癌治療を促進し、向上させる。
【0012】
本発明はさらに、特に、KSRの発現及び/又は活性の活性化又は阻害の際にVEGF発現を調整することによる、血管形成を調整するための方法及び手段に関する。VEGF発現は、KSRの発現及び/又は活性の特異的な阻害又は活性化によって調整される。KSRの活性化又は発現を高めることにより、細胞中又は細胞によるVEGFの量又は発現が増加する。このように、細胞又は組織におけるKSRの活性化又は発現を高めることは、血管形成を刺激する方法を提供する。KSRの阻害、妨害又は減少は、VEGFの量又は発現を減少させ、それによって抗血管形成効果を有する。1つのこのような局面では、癌細胞又は腫瘍細胞のVEGF発現は、KSRに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与又は発現によるものを含むKSRの阻害によってブロックされ、癌又は腫瘍における血管形成を阻害する。1つの局面では、KSRに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与又は発現によるものを含むKSRの阻害は、腫瘍、KSRを発現する組織又は細胞、特に、gf Rasを発現する組織又は細胞において血管形成を阻害する方法を提供し、ここで、Ras経路が過剰に活性化されるか、又はRasが過剰発現されるか又は増幅される。
【0013】
本発明は、KSRの発現及び活性を特異的に阻害するか又はブロックするオリゴヌクレオチド及び核酸を提供する。特に、KSR RNAに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド及び核酸の発現は、KSRの発現を特異的に阻害し、gf Rasにより媒介される腫瘍形成をブロックする。本発明は、KSR RNAの領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドを提供し、ここで、上記オリゴヌクレオチドはKSRの発現を阻害する。本発明はさらに、哺乳動物KSRをコードする核酸に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドを提供する。特定の実施形態では、哺乳動物KSR、特にヒトKSR及びマウスKSRをコードする核酸に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドが提供される。
【0014】
本発明の1つの局面では、哺乳動物KSRをコードするmRNAの翻訳開始部位、5’未翻訳領域、コード領域又は3’未翻訳領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドが提供される。このように、1つのこのような局面では、本発明は、図14及び配列番号24に提供されるような、ヒトKSRをコードするmRNAの翻訳開始部位、5’未翻訳領域、コード領域又は3’未翻訳領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドを提供する。特定の実施形態では、本発明は、哺乳動物KSR mRNAのN−末端コード領域に対して、特に、哺乳動物KSR mRNAのコード領域のヌクレオチド1〜761の領域に対して実質的に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。1つの実施形態では、本発明は、KSRのCA1領域に対して実質的に相補的な配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。本発明は、ヒトKSRの配列のアミノ酸33〜72及びマウスKSRの配列のアミノ酸42〜82をコードするヌクレオチドに対して実質的に相補的な配列、又はそれらの一部分を含むオリゴヌクレオチドを提供する。
【0015】
さらなる実施形態では、本発明は、ヒトKSRのコード配列のヌクレオチド97〜216(配列番号25)又はマウスKSRのコード配列のヌクレオチド124〜243(配列番号1)に対して実質的に相補的な配列、又はそれらの一部分を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド(このヌクレオチドはヒトKSRの配列のアミノ酸33〜72(配列番号26)及びマウスKSRの配列のアミノ酸42〜82(配列番号2)又はそれらの一部分をコードする)を含む。特に、本発明のオリゴヌクレオチドとしては以下からなる群から選択されるヌクレオチドに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる:マウスKSRの配列のヌクレオチド151〜168に対応する、ヒトKSRの配列のヌクレオチド124〜141(配列番号3);マウスKSRの配列のヌクレオチド181〜198(配列番号4)に対応するヒトKSRの配列のヌクレオチド154〜171(配列番号27)(5’最末端ヌクレオチドで1個の塩基対が異なる);及びマウスKSRの配列のヌクレオチド214〜231に対応する、ヒトKSRの配列のヌクレオチド187〜204(配列番号5)。本発明は、配列番号6〜8及び配列番号29〜38の群から選択される配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0016】
本発明のオリゴヌクレオチドは、検出可能な標識で標識されてもよい。特定の局面では、標識は、酵素、リガンド、蛍光を発する化学物質及び放射性元素から選択されてもよい。放射能活性な標識、例えば、同位体H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、I25I、131I及び186Reが使用される場合、既知の従来から利用可能な計測手段を使用してもよい。標識が酵素である場合、検出は、現在利用され、当該技術分野で既知の比色技術、分光光度技術、蛍光分光光度技術、電流測定技術又は気体定量技術のいずれかによって達成されてもよい。
【0017】
特定の局面では、本発明の核酸及びオリゴヌクレオチドは、核酸の化学骨格の操作によって、又は他の部分の共有結合又は非共有結合のいずれかによって改変されてもよい。いずれかの場合又は任意の場合では、このような操作又は結合は、核酸及びオリゴヌクレオチドの安定性、細胞、組織又は臓器への取り込みを改変し、又は効力を高めるためになされてもよい。本発明のさらなる局面では、オリゴヌクレオチドは他の分子(限定されないが、ポリペプチド、炭水化物、脂質又は脂質様部分、リガンド、化学薬剤又は化合物が挙げられる)に共有結合され、オリゴヌクレオチドの取り込み、安定性を高めるか、又はオリゴヌクレオチドを標的化するためになされてもよい。
【0018】
さらなる実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、化学骨格において改変されている。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホロチオエート(P−S)結合を含む。
【0019】
哺乳動物KSR RNAに対して相補的なアンチセンスRNAの転写をコードする核酸配列又はそれらの一部分を含む組換えDNA分子が本発明によって提供される。さらに、組換えDNA分子は、転写制御配列に操作可能に結合した核酸配列を含む。これらの組み換えDNA分子でトランスフェクトされた細胞株も本発明に含まれる。
【0020】
さらなる局面では、KSR RNAのコード配列に対して実質的に相補的な核酸、又はそれらの一部分を発現可能であり、上記核酸がKSRの発現を阻害する、発現ベクターが提供される。特定の局面では、この発現ベクターは、KSR RNA(特にマウスKSR又はヒトKSR(配列番号1又は配列番号25))のコード配列のCA1領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチド、又はそれらの一部分を発現可能であり、上記オリゴヌクレオチドがKSRの発現を阻害する、発現ベクターを含む。
【0021】
核酸及びオリゴヌクレオチドの組成物は、本発明のさらなる局面である。本発明は、KSR RNAの領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドと薬学的に受容可能なキャリア又は希釈剤とを含む組成物を含む。このように、本発明は、治療的に有効量のKSR RNAの領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドと、薬学的に受容可能なキャリア又は希釈剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0022】
さらなる局面では、1つ以上の化学治療剤又は放射能治療剤と、哺乳動物KSRをコードするmRNAに対して標的化されるオリゴヌクレオチドとを含み、KSR発現を阻害する組成物が提供される。
【0023】
さらなる実施形態では、本発明は、発現ベクターと、薬学的に受容可能なキャリア又は希釈剤とを含み、上記発現ベクターが、KSR RNAのコード配列に対して実質的に相補的な核酸、又はそれらの一部分を発現可能であり、上記核酸がKSRの発現を阻害する、組成物を提供する。
【0024】
KSRの発現を阻害する方法が提供される。1つの局面では、KSRを発現する細胞と、KSRをコードするmRNAの一部分に対して相補的な有効量の核酸とを接触させる工程を含む、哺乳動物KSRの発現を阻害する方法が含まれる。特に、KSRを発現する細胞と、本発明の有効量のオリゴヌクレオチドとを接触させ、それにより哺乳動物KSRの発現が阻害される工程を含む、哺乳動物KSRの発現を阻害する方法が提供される。さらなる局面では、組織又は腫瘍、特にgf Rasを発現する組織又は腫瘍は、又はRas経路が過剰に活性化されるか、又はRasが過剰発現されるか又は増幅される場合に、有効量の本発明のオリゴヌクレオチド又は核酸と接触され、このようにしてKSRの発現を阻害する、KSRの発現を阻害する方法が提供される。
【0025】
さらなる実施形態では、本発明は、KSRのキナーゼ又はホスホリル化活性を含む、KSRの活性を阻害又は妨害するための組成物及び方法を提供する。さらなる局面では、組織、腫瘍又はKSRを発現させる細胞、特にgf Rasを発現する組織又は腫瘍は、又はRas経路が過剰に活性化されるか、又はRasが過剰発現されるか又は増幅される場合に、有効量の本発明の核酸又は組成物と接触され、KSRの活性を阻害する、KSRの発現を阻害する方法が提供される。
【0026】
本発明はさらに、哺乳動物KSRタンパク質の発現を阻害する治療的に有効量の組成物又は薬剤を上記哺乳動物に投与する工程を含む、gf−Rasの発現に関連する過剰増殖状態、又は哺乳動物におけるRasの高められた発現を処置又は予防する方法を含む。本方法の1つの局面では、上記化合物又は薬剤は、KSRをコードするmRNAの一部分に特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0027】
KSRをコードするmRNAの一部分に対して相補的な治療的に有効量の核酸を上記哺乳動物において発現させるか、又は上記哺乳動物に投与する工程を含む、gf−Rasの発現に関連する過剰増殖状態、又は哺乳動物におけるRasの高められた発現を処置又は予防する方法が提供される。
【0028】
さらなる局面では、哺乳動物KSRタンパク質の発現を阻害する治療的に有効量の化合物又は薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において癌の進行を処置又は予防する方法が含まれる。本発明の方法に対して感受性の癌としては、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、食道癌及び前立腺癌の群から選択される癌が挙げられる。このように、治療的に有効量の本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドを哺乳動物に対して投与する工程を含む、哺乳動物において癌の進行を処置又は阻害する方法が提供される。
【0029】
本発明は、治療的に有効量のKSR発現及び/又は活性の1つ以上のインヒビターを哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において過剰増殖性の癌細胞又は腫瘍細胞におけるイオン化放射線又は他の放射線又は化学治療に対して感受性を与える方法を提供する。本発明は、治療的に有効量の本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドを哺乳動物に対して投与する工程を含む、哺乳動物において過剰増殖性の癌細胞又は腫瘍細胞におけるイオン化放射線に対して感受性を与える方法を提供する。
【0030】
本発明は、KSRの発現及び/又は活性の活性化又は阻害の際に、VEGF発現を調整することによって、哺乳動物において血管形成を調整する方法を提供する。KSRの阻害、妨害又は減少は、VEGFの量又は発現を減少させ、それによって抗血管形成効果を有する。1つの特定のこのような局面では、癌細胞又は腫瘍細胞のVEGF発現は、KSRに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与又は発現によるものを含むKSRの阻害によってブロックされ、癌又は腫瘍における血管形成が阻害される。本発明は、腫瘍、KSRを発現する組織又は細胞、特にgf Rasを発現する組織又は腫瘍は、又はRas経路が過剰に活性化されるか、又はRasが過剰発現されるか又は増幅される場合に、上記哺乳動物にKSRのインヒビター(治療的に有効量の1つ以上のKSRに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)を投与する工程を含む、血管形成を阻害する方法を提供する。血管形成を調整するためのさらなる方法では、KSRの活性化又は発現を高めることにより、細胞中又は細胞によるVEGFの量又は発現が増加する。細胞又は組織においてKSRを活性化又は発現を高める工程を含む、血管形成を刺激する方法が提供される。
【0031】
それに加えて、以下の工程:
(a)候補化合物又は薬剤の存在下及び非存在下で、KSRを発現する細胞をインキュベートする工程;及び
(b)候補化合物又は薬剤の存在下及び非存在下で、KSRの発現を検出又は測定する工程を含み、上記候補化合物又は薬剤の非存在下でのKSRの発現に対して、上記候補化合物又は薬剤の存在下でのKSRの発現が減少することが、上記化合物又は薬剤がKSRの発現を阻害することを示す、KSRの発現を阻害する化合物又は薬剤を同定する方法が提供される。
【0032】
本発明は、KSR mRNAの翻訳をブロックすることによって、又はRNAの破壊又は不安定化を促進することによって翻訳が有効に起こりえないような転写レベルで、タンパク質、特にKSRの発現を阻害可能なさらなる組成物を含む。この局面では、本発明は、KSR mRNAを開裂するリボザイムを提供する。
【0033】
本発明は、本明細書中に示されるように既知の組み換え技術を含む、本発明の核酸及びオリゴヌクレオチドを調製するためのいくつかの手段が自然と意図され、本発明は、このような合成的調製をその範囲内に含むことが意図される。本明細書中に開示されるようなKSRのcDNA及びアミノ酸配列の知識は、このような組み換え技術によって本発明の核酸の調製を容易にし、従って、本発明は、組換えDNA技術による宿主系において発現するために開示されたDNA配列から調製された発現ベクター、及び得られた形質転換宿主にまで拡張される。
【0034】
他の目的及び利点は、以下の例示的な図面を参照して進められる以下の記載の観点から、当業者に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(詳細な記載)
本発明によれば、当該技術分野の熟練の範囲内の従来の分子生物学、微生物学及び組換えDNA技術が使用されてもよい。このような技術は、文献において完全に説明される。例えば、Sambrook et al,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」 Volumes I−III[Ausubel,R.M.,ed.(1994)];「Cell Biology:A Laboratory Handbook」 Volumes I−III[J.E.Celis,ed.(1994)];「Current Protocols in Immunology」
Volumes I−III[Coligan,J.E.,ed.(1994)];「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait ed.1984);「Nucleic Acid Hybridization」[B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985)];「Transcription And Translation」[B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984)];「Animal Cell Culture」[R.I.Freshney,ed.(1986)];「Immobilized Cells And Enzymes」[IRL Press,(1986)];B.Perbal,「A Practical Guide To Molecular Cloning」(1984)を参照。
【0036】
それ故に、本明細書中に記載される場合、以下の用語は、以下に記載される定義を有する。
【0037】
用語「オリゴヌクレオチド」、「アンチセンス」、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「KSR ODN」、「KSRアンチセンス」、及び特別に列挙されていない任意の改変体は、本明細書中で互換可能に使用されてもよく、1個又は複数の核酸を含む核酸物質を参照して本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される場合、及び本明細書中に記載される核酸配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドまで拡張され、図12A、図12B及び図14及び配列番号11、12及び24にあらわされるようなものを含み、図11、15及び16に示されるようなそれらの保存ドメイン及び活性ドメインを含み、特に、KSRの発現を阻害可能な、本明細書及び特許請求の範囲に記載される活性のプロフィールを有する。特に、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号1又は配列番号25に提供されるような、KSRに対して特異的な核酸配列、又は、例えば配列番号3、4、5、及び27において提供されるようなそれらの一部分に対して実質的に相補的であってもよい。例示的なオリゴヌクレオチドとしては、配列番号6〜8及び配列番号28〜39のいずれかが挙げられる。従って、実質的に等価又は改変された活性を示す核酸及びそれらの類似体も同様に考慮される。これらの改変は、例えば、部位指向性の突然変異生成を介して得られた改変を考慮してもよいか、又は、例えば、核酸又はKSRの産生者である宿主における突然変異を介して得られるように、偶発的であってもよい。
【0038】
NHは、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を指す。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシル基を指す。標準的なポリペプチド命名法J.Biol.Chem.,243:3552−59(1969)に合わせて、アミノ酸残基の省略形は、以下の対応表に示される:
【0039】
【化1−1】

【0040】
【化1−2】

全てのアミノ酸残基配列が、左から右への方向がアミノ酸末端からカルボキシ末端の従来の方向である式によって本明細書中にあらわされることが注記されるべきである。さらに、アミノ酸残基配列の最初及び最後のダッシュ記号が、1つ以上のアミノ酸残基のさらなる配列に対するペプチド結合を示すことが注記されるべきである。上記の表は、本明細書中で代替的にあらわれてもよい3−文字及び1−文字表記法を相関させるためにあらわされる。
【0041】
「レプリコン」は、インビボでのDNA複製の自立単位として機能する(すなわち、それ自身の制御下で複製可能な)任意の遺伝要素(例えば、プラスミド、染色体、ウイルス)である。
【0042】
「ベクター」は、レプリコン(例えば、プラスミド、ファージ、ウイルス、レトロウイルス又はコスミド)であり、これに対して、別のDNAセグメントが、接続したセグメントの複製をもたらすように接続してもよい。
【0043】
「DNA分子」は、一本鎖形態、又は二本鎖らせんのいずれかにおけるデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン又はシトシン)のポリマー形態を指す。この用語は、分子の一次構造及び二次構造のみを指し、任意の特定の三次構造に限定しない。このように、この用語は、特に、直鎖DNA分子(例えば、制限フラグメント)、ウイルス、プラスミド、及び染色体中に見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造の議論において、DNAの転写されていない鎖(すなわち、mRNAに対して相同性の配列を有する鎖)に沿って5’から3’方向における配列のみを与える通常の関連に従って、配列が本明細書中で記載されてもよい。
【0044】
「複製開始点」は、DNA合成に関与するDNA配列を指す。
【0045】
DNA「コード配列」は、適切な制御配列の制御下におかれる場合、インビボでポリペプチドに転写され、翻訳される二本鎖DNA配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端で開始コドンによって、及び3’(カルボキシ)末端で翻訳停止コドンによって決定される。コード配列は、限定されないが、原核生物の配列、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば哺乳動物)DNA由来のゲノムDNA配列、及び合成DNA配列を含むことができる。ポリアデニル化シグナル及び転写末端配列は、通常は、コード配列の3’に位置する。
【0046】
転写及び翻訳制御配列は、DNA制御配列、例えば、宿主細胞においてコード配列を発現するために提供される、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター等である。
【0047】
「プロモーター配列」は、細胞においてRNAポリメラーゼを結合可能であり、下流の(3’方向の)コード配列の転写を開始するDNA制御領域である。本発明を定義する目的のために、プロモーター配列は、転写開始部位によってその3’末端に限られ、バックグラウンドの上の検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な塩基又は要素の最少数を含むために上流(5’方向)に延びる。プロモーター配列が、転写開始部位(ヌクレアーゼS1を用いたマッピングによって従来は定義される)、及びRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)であることがわかる。真核生物プロモーターは、しばしば、常にではないが、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含有する。原核生物プロモーターは、−10〜−35コンセンサス配列に加えて、Shine−Dalgarno配列を含有する。
【0048】
「発現制御配列」は、別のDNA配列の転写及び翻訳を制御し、調整するDNA配列である。コード配列は、RNAポリメラーゼがmRNAにコード配列を転写し、次いでコード配列によってコードされるタンパク質に翻訳される場合、細胞における転写及び翻訳制御配列の「制御下」にある。
【0049】
「シグナル配列」は、コード配列の前に含まれることができる。この配列は、細胞表面にポリペプチドを向けるか、又はポリペプチドを媒体内に分泌する宿主細胞に対して通信するシグナルペプチド(ポリペプチドに対してN−末端)をコードし、このシグナルペプチドは、タンパク質が細胞を離れる前に宿主細胞によって取り除かれる。シグナル配列は、原核生物及び真核生物に対してネイティブな種々のタンパク質と関連することがわかり得る。
【0050】
用語「オリゴヌクレオチド」は、本発明の核酸を参照して本明細書中で使用される場合、2つ以上のリボヌクレオチド、好ましくは3つより多いリボヌクレオチドで構成される分子として定義される。その実寸は、最終的な機能及びオリゴヌクレオチドの使用に順に依存する多くの要因に依存する。特に、本発明に従って、オリゴヌクレオチドは、特にKSRをコードするRNAと関連づけられるべきであり、RNAの発現(すなわち翻訳)がブロックされるか、又はRNAの安定性が負の影響を受けるような、標的RNAと特異的及び安定に関連するような適切な配列及びサイズ又は長さを有するべきである。本発明の1つの特定の局面では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約8〜約50ヌクレオチド長、特に10〜30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド、特に15〜25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドである。
【0051】
用語「プライマー」は、本明細書中で使用される場合、プライマー伸長産物(核酸鎖に対して相補的である)の合成が誘発される条件下に置かれる場合に(すなわち、ヌクレオチドの存在下で、例えばDNAポリメラーゼのような誘発剤の存在下及び適切な温度及びpHで)合成の開始点として作用可能であり、精製された制限消化におけるように天然に生じるか又は合成的に生じる、オリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、一本鎖又は二本鎖のいずれかであってもよく、誘発剤の存在下で所望の伸長産物の合成を進めるのに十分長くなければならない。プライマーの正確な長さは、多くの因子(温度、プライマー供給源及び使用方法を含む)に依存する。例えば、診断適用のために、標的配列の複雑さに依存して、オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には、15〜25又はそれ以上のヌクレオチドを含有することができるが、それより少ないヌクレオチドを含有してもよい。
【0052】
プライマーは、本明細書中で、特定の標的DNA配列の異なる鎖に対して「実質的に」相補的であるように選択される。このことは、プライマーが、それらの対応する鎖とハイブリダイズするのに十分に相補的でなければならないことを意味する。それ故に、プライマー配列は、テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的なヌクレオチドフラグメントが、プライマーの5’末端に結合していてもよく、プライマー配列の残りの配列が鎖と相補的であってもよい。あるいは、非相補的塩基又はより長い配列が、プライマー中に散在していてもよいが、但し、プライマー配列は、鎖とハイブリダイズして、伸長産物の合成のためのテンプレートを形成するのに十分な相補性を有する。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」は、それぞれが特定のヌクレオチド配列又はその付近で二本鎖DNAを切断する細菌酵素を指す。
【0054】
細胞は、外因性又は異種DNAが細胞内に導入される場合、このようなDNAによって「形質転換」される。形質転換DNAは、細胞のゲノムを作る染色体DNA内に組み込まれて(共有結合されて)も組み込まれていなくてもよい。原核生物、酵母及び哺乳類細胞では、例えば、形質転換DNAはプラスミドのようなエピソーム要素上に維持されていてもよい。真核細胞に関して、安定に形質転換された細胞は、染色体複製中に娘細胞に遺伝するように形質転換DNAが染色体に組み込まれたものである。この安定性は、真核細胞が形質転換DNAを含有する娘細胞の集合で構成される細胞株又はクローンを確立する能力によって示される。「クローン」は、有糸分裂によって1個の細胞又は共通の祖先から誘導される細胞の集合である。「細胞株」は、多世代のためのインビトロで安定に増殖可能な一次細胞のクローンである。
【0055】
2個のDNA配列は、ヌクレオチドの少なくとも約75%(好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90又は95%)がDNA配列の定義される長さにわたってマッチする場合に、「実質的に相同性」である。実質的に相同性である配列を、配列データバンクにおいて入手可能な標準的なソフトウェアを用いて、又は、たとえば、特定のシステムについて定義されるようなストリンジェントな条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験において配列を比較することによって同定することができる。定義する適切なハイブリダイゼーション条件は当該技術分野の技術内である。例えば、Maniatis et al.,前出;DNA Cloning,Vols.I&II,前出;Nucleic Acid Hybridization,前出を参照。
【0056】
また、配列番号11及び配列番号12を含むが、これらの配列を縮重させる、本明細書中で開示されるKSR配列と同じアミノ酸配列を有するKSRをコードするDNA又は核酸配列が本発明の範囲内であることが理解されるべきである。「〜に縮重する」は、異なる3−文字コドンが特定のアミノ酸を特定化するために使用されることを意味する。以下のコドンがそれぞれの特定のアミノ酸をコードするために互換可能に使用可能であることは当該技術分野で周知である:
【0057】
【化2−1】

【0058】
【化2−2】

上に特定されるコドンがRNA配列についてであることが理解されるべきである。DNAについての対応するコドンはUがTに置換される。
【0059】
突然変異は、特定のコドンが異なるアミノ酸をコードするコドンに変更されるようにksrにおいてなされることができる。このような突然変異は、一般的に、最も少ないヌクレオチド変化を可能にすることによってなされる。この種の置換変異は、得られたタンパク質において非保存的な様式でアミノ酸を変更するために(すなわち、特定のサイズ又は特徴を有するアミノ酸のグループに属するアミノ酸から別のグループに属するアミノ酸にコドンを変更することによって)、又は保存的な様式でアミノ酸を変更するために(すなわち、特定のサイズ又は特徴を有するアミノ酸のグループに属するアミノ酸から同じグループに属するアミノ酸にコドンを変更することによって)なすことができる。このような保存的変更は、一般的に、得られたタンパク質の構造及び機能における変化をあまり生じない。非保存的変更は、得られたタンパク質の構造、活性又は機能を変更すると考えられる。本発明は、得られたタンパク質の活性又は結合特徴を顕著に改変しない保存的変更を含有する配列を含むとみなされるべきである。
【0060】
以下のものは、アミノ酸の種々のグループ分けの一例である:
非極性R基を有するアミノ酸
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン
電荷を有さない極性R基を有するアミノ酸
グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン
荷電した極性R基を有するアミノ酸(pH6.0で負に荷電)
アスパラギン酸、グルタミン酸
塩基性アミノ酸(pH6.0で正に荷電)
リシン、アルギニン、ヒスチジン
別のグループ分けは、フェニル基を有するアミノ酸であってもよい:
フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン
別のグループ分けは、分子量(すなわち、R基のサイズ)に従っていてもよい:
【0061】
【化3−1】

【0062】
【化3−2】

特に好ましい置換は以下のものである:
−正電荷が維持され得るように、LysをArgに、及びArgをLysに;
−負電荷が維持され得るように、GluをAspに、及びAspをGluに;
−遊離−OHを維持可能なように、SerとThrに;及び
−遊離NHを維持可能なように、GlnをAsnに。
【0063】
アミノ酸置換はさらに、特に好ましい性質を有するアミノ酸を置換するために導入されてもよい。例えば、Cysは、別のCysとのジスルフィド架橋のための潜在的な部位に導入されてもよい。Hisは、特に「触媒的」部位として導入されてもよい(すなわち、Hisが酸又は塩基として作用可能であり、生化学触媒作用において最も一般的なアミノ酸である)。Proは、タンパク質構造においてβ−回転を誘導する、その特定の平面構造のために導入されてもよい。
【0064】
2つのアミノ酸配列は、少なくとも約70%のアミノ酸残基(好ましくは、少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90又は95%)が同一であるか、又は保存的置換をあらわす場合、「実質的に相同性で」ある。
【0065】
DNA構築物の「異種」領域は、天然においてさらに大きな分子と関連して発見されない、さらに大きなDNA分子内のDNAの同定可能なセグメントである。このように、異種領域が哺乳動物の遺伝子をコードする場合、その遺伝子は、通常は、供給源の有機体のゲノムにおいて哺乳動物ゲノムDNAをフランキングしないDNAによってフランキングされる。異種コード配列の別の例は、コード配列自身が天然で見い出されない構築物(例えば、ゲノムコード配列がイントロンを含有するcDNA、又はネイティブ遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。対立遺伝子改変体又は天然に生じる変異事象は、本明細書中に定義されるようなDNAの異種領域には生じない。
【0066】
句「薬学的に受容可能な」は、ヒトに投与された場合に、生理学的に許容可能であり、典型的にはアレルギー又はそれに類似した有害反応(例えば胃不調、めまいなど)を生じない分子存在物及び組成物を指す。
【0067】
句「治療的に有効量」は、その存在及び活性に関与し得るように、標的細胞塊の有糸分裂活性における臨床的に顕著な変化、又は病理学の他の特徴(例えば、腫瘍重量の減少、腫瘍細胞増殖の減少、変異能力の減少、又はアポトーシスの向上)を防ぐ、好ましくは少なくとも約30%減らす、さらに好ましくは少なくとも50%減らす、さらに好ましくは少なくとも70%減らす、最も好ましくは少なくとも90%減らすのに十分な量を意味するために本明細書中で使用される。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「pg」はピコグラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「ug」又は「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「ul」又は「μl」はマイクロリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「l」はリットルを意味する。
【0069】
DNA配列は、発現制御配列がDNA配列の転写及び翻訳を制御及び調整する場合、発現制御配列に「操作可能に結合」する。用語「操作可能に結合する」は、発現されるDNA配列の前側に適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有し、発現制御配列の制御下でのDNA配列の発現及びDNA配列によってコードされる所望な産物の産生を可能にする正しいリーディングフレームを維持することを含む。組換えDNA分子への挿入が望まれる遺伝子が適切な開始シグナルを含有しない場合、このような開始シグナルは遺伝子の前側に挿入することができる。
【0070】
用語「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション及び洗浄の両方で5×SSC及び65℃に実質的に等価な塩及び温度の条件を指す。しかし、このような「標準的なハイブリダイゼーション条件」が、バッファー中のナトリウム及びマグネシウムの濃度、ヌクレオチド配列長及び濃度、ミスマッチの割合、ホルムアミドの割合などを含む特定の条件に依存することを当業者は理解する。また、「標準的なハイブリダイゼーション条件」の決定において重要なことは、2つの配列のハイブリダイゼーションがRNA−RNA、DNA−DNA又はRNA−DNAのいずれであるかである。このような標準的なハイブリダイゼーション条件は、周知の式に従って当業者によって容易に決定され、ハイブリダイゼーションは、典型的には、所望の場合、さらに高いストリンジェンシーの洗浄を用いて、予想されるか又は決定されるTの10〜20℃下である。
【0071】
本発明は、Rasのキナーゼサプレッサー(KSR)の発現及び/又は活性の特異的な阻害のための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、KSRの特異的な阻害のための遺伝的アプローチ及び核酸を提供する。KSRの特異的な阻害について、Ras経路が破壊され、特に、Rasにより媒介される腫瘍、腫瘍形成及び転移の退縮が阻害されるか、又はブロックされることが本明細書中に示される。特に、KSR RNAに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド及び核酸の発現が、KSRの発現を特異的に阻害し、gf Rasにより媒介される腫瘍形成をブロックする。
【0072】
本発明は、KSR RNAの領域に対して実質的に相補的であり、上記オリゴヌクレオチドがKSRの発現を阻害するオリゴヌクレオチドを提供する。本発明はさらに、哺乳動物KSRをコードする核酸に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドを提供する。特定の実施形態では、ヒトKSRをコードする核酸に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドが提供される。
【0073】
本発明の1つの局面では、哺乳動物KSRをコードするmRNAの翻訳開始部位、5’未翻訳領域、コード領域又は3’未翻訳領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドが提供される。1つのこのような局面では、このように、本発明は、図14及び配列番号24に提供されるような、ヒトKSRをコードするmRNAの翻訳開始部位、5’未翻訳領域、コード領域又は3’未翻訳領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドを提供する。特定の実施形態では、本発明は、哺乳動物KSR mRNAのN−末端コード領域に対して、特に、哺乳動物KSR mRNAのコード領域のヌクレオチド1〜761の領域に対して実質的に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。1つの実施形態では、本発明は、KSRのCA1領域に対して実質的に相補的な配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む(配列番号1及び配列番号25)。本発明は、ヒトKSRの配列のアミノ酸33〜72(配列番号26)及びマウスKSRの配列のアミノ酸42〜82(アミノ酸配列番号2)をコードするヌクレオチドに対して実質的に相補的な配列、又はそれらの一部分を含むオリゴヌクレオチドを提供する。
【0074】
さらなる実施形態では、本発明は、ヒトKSRのコード配列のヌクレオチド97〜216(配列番号25)又はマウスKSRのヌクレオチド124〜243(配列番号1)に対して実質的に相補的な配列、又はそれらの一部分を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。本発明は、ヒトKSRの配列のアミノ酸33〜72(配列番号26)及びマウスKSRの配列のアミノ酸42〜82(配列番号2)をコードするヌクレオチドに対して実質的に相補的な配列、又はそれらの一部分を含むオリゴヌクレオチドを提供する。特に、本発明のオリゴヌクレオチドとしては以下からなる群から選択されるヌクレオチドに対して実質的に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる:マウスKSRの配列のヌクレオチド151〜168に対応する、ヒトKSRの配列のヌクレオチド124〜141(配列番号3);マウスKSRの配列のヌクレオチド181〜189(配列番号4)に密接に対応するヒトKSRの配列のヌクレオチド154〜171(配列番号27)(5’最末端ヌクレオチドで1個の塩基対と共に);及びマウスKSRの配列のヌクレオチド214〜231に対応する、ヒトKSRの配列のヌクレオチド187〜204(配列番号5)。本発明は、配列番号6〜8及び配列番号28〜39の群から選択される配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0075】
特定の局面では、本発明の核酸及びオリゴヌクレオチドは、核酸の化学骨格の操作によって、又は他の部分の共有結合又は非共有結合によって、改変されていてもよい。各々又は任意の場合において、このような操作又は結合が、安定性、細胞、組織、又は臓器への取り込みを改変し、核酸の効力を高め、他の分子(限定されないが、取り込み、安定性を高め、又はオリゴヌクレオチドを標的化するのに役立ち得る、ポリペプチド、炭水化物、脂質又は脂質様部分、リガンド、化学薬剤又は化合物)に共有結合することに役立ち得る。
【0076】
さらなる実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、それらの化学骨格中で改変される。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む。
【0077】
本発明のオリゴヌクレオチドは、混合によって、又は非共有結合又は共有結合によって、他の標的に対して指向するオリゴヌクレオチドと組み合わせてもよい。例えば、本発明のKSRアンチセンスオリゴヌクレオチドは、米国特許第6,391,636号(本明細書中で参考として組み込まれる)に記載されるようなrafに対して指向するアンチセンス、又は他の腫瘍形成タンパク質又は増殖タンパク質に対して指向するアンチセンスと組み合わせてもよい。
【0078】
哺乳動物KSR RNAに対して相補的なアンチセンスRNAの転写をコードする核酸配列を含む組換えDNA分子又はそれらの一部分が本発明によって提供される。さらに、組換えDNA分子は、転写制御配列に操作可能に結合する核酸配列を含む。これらの組換えDNA分子を用いてトランスフェクトされた細胞株もまた本発明に含まれる。
【0079】
さらなる局面では、KSR RNAのコード配列に対して実質的に相補的な核酸又はそれらの一部分を発現可能であり、上記核酸がKSRの発現を阻害する、発現ベクターが提供される。特定の局面では、この発現ベクターは、KSR RNAのコード配列のCA1領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチド、又はそれらの一部分を発現可能であり、上記オリゴヌクレオチドがKSRの発現を阻害する、発現ベクターを含む。
【0080】
さらなる実施形態では、本発明は、発現ベクターと、薬学的に受容可能なキャリア又は希釈剤とを含み、上記発現ベクターが、KSR RNAのコード配列に対して実質的に相補的な核酸、又はそれらの一部分を発現可能であり、上記核酸がKSRの発現を阻害する、組成物を提供する。
【0081】
KSRの発現を阻害する方法が提供される。1つの局面では、KSRを発現する細胞と、KSRをコードするmRNAの一部分に対して相補的な有効量の核酸とを接触させる工程を含む、哺乳動物KSRの発現を阻害する方法が含まれる。特に、KSRを発現する細胞と、本発明の有効量のオリゴヌクレオチドとを接触させ、それにより哺乳動物KSRの発現が阻害される工程を含む、哺乳動物KSRの発現を阻害する方法が提供される。さらなる局面では、KSRを発現する細胞と、KSR活性を調整する有効量の薬剤又は化合物とを接触させる工程を含む、KSR活性を調整する方法が提供される。1つのこのような局面では、KSRを発現する細胞と、KSRの活性をブロックし、阻害し、又は減少させる有効量の薬剤又は化合物とを接触させる工程を含む、KSR活性を調整する方法が提供される。
【0082】
それに加えて、以下の工程:
(a)候補化合物又は薬剤の存在下及び非存在下で、KSRを発現する細胞をインキュベートする工程;及び
(b)候補化合物又は薬剤の存在下及び非存在下で、KSRの発現を検出又は測定する工程を含み、上記候補化合物又は薬剤の非存在下でのKSRの発現に対して、上記候補化合物又は薬剤の存在下でのKSRの発現が減少することが、上記化合物又は薬剤がKSRの発現を阻害することを示す、KSRの発現を阻害する化合物又は薬剤を同定する方法が提供される。
【0083】
KSRの活性(好ましくはキナーゼ又はホスホリル化活性を含む)を阻害するための方法が提供される。1つの局面では、KSRを発現する細胞と、KSRを阻害し、又はブロックする有効量の化合物又は薬剤とを接触させる工程を含む、哺乳動物KSRの活性を阻害する方法が含まれる。特に、KSRを発現する細胞と、本発明の有効量の化合物、薬剤又は組成物とを接触させ、それにより哺乳動物KSRの活性が阻害される工程を含む、哺乳動物KSRの活性を阻害する方法が提供される。
【0084】
それに加えて、以下の工程:
(a)候補化合物又は薬剤の存在下及び非存在下で、KSRを発現する細胞をインキュベートする工程;及び
(b)候補化合物又は薬剤の存在下及び非存在下で、KSRの活性を検出又は測定する工程を含み、上記候補化合物又は薬剤の非存在下でのKSRの活性に対して、上記候補化合物又は薬剤の存在下でのKSRの活性が減少することが、上記化合物又は薬剤がKSRの活性を阻害することを示す、KSRの活性(キナーゼ活性又はホスホリル化活性を含む)を阻害する化合物又は薬剤を同定する方法が提供される。本発明の1つの局面では、KSRの活性及び/又は発現は、KSRキナーゼ標的、又はキナーゼ標的配列ドメインを含むペプチドのホスホリル化状態を決定することによって、評価又はモニタリングされてもよい。例えば、Raf又はRafにより誘導されるペプチドのホスホリル化状態は、このような評価に利用されてもよい。KSRの活性又は発現はさらに、腫瘍細胞又は腫瘍動物モデルにおいてインビトロ又はインビボで評価されてもよく、本明細書中の実施例に記載されるようなものを含む、Rasにより媒介される腫瘍形成、腫瘍増殖又は転移がモニタリングされる。
【0085】
本発明は、本明細書中に示されるように既知の組み換え技術を含む、本発明の核酸及びオリゴヌクレオチドを調製するためのいくつかの手段が自然と意図され、本発明は、このような合成的調製をその範囲内に含むことが意図される。本明細書中に開示されるようなKSRのcDNA及びアミノ酸配列の知識は、このような組み換え技術によって本発明の核酸の調製を容易にし、従って、本発明は、組換えDNA技術による宿主系において発現するために開示されたDNA配列から調製された発現ベクター、及び得られた形質転換宿主にまで拡張される。
【0086】
本発明の別の特徴は、本明細書中に開示される核酸の発現である。当該技術分野で周知であるように、核酸又はDNA配列は、適切な発現ベクターにおいてそれらを発現制御配列に操作可能に結合し、適切な単細胞宿主を形質転換するために発現ベクターを使用することによって発現されてもよい。発現制御配列への本発明の核酸配列のこのような操作可能な結合は、もちろん、すでにDNA配列の一部分ではない場合には、DNA配列の上流の正しいリーディングフレームにおける開始コドン、ATGの供給を含む。
【0087】
本発明のDNA配列の発現において、多種多様の宿主/発現ベクターの組合せが使用されてもよい。有用な発現ベクターは、例えば、染色体、非染色体及び合成DNA配列のセグメントからなってもよい。適切なベクターとしては、SV40及び既知の細菌プラスミド(例えば、E.Coliプラスミドcol El、pCRl、pBR322、pMB9及びそれらの誘導体)、RP4のようなプラスミド;ファージDNAS、例えば、ファージλの多くの誘導体、例えば、NM989、及び他のファージDNA、例えばM13及び糸状一本鎖ファージDNA;酵母プラスミド(例えば、2μプラスミド又はそれらの誘導体);真核細胞において有用なベクター、例えば、昆虫又は哺乳動物細胞において有用なベクター;プラスミド及びファージDNAの組合せ(例えば、ファージDNA又は他の発現制御配列を使用するために改変されたプラスミド)から誘導されるベクターなどが挙げられる。それに加えて、ウイルスベクター及びレトロウイルスベクターとしては、限定されないが、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルスが挙げられ、これらは、このような発現において有用であり得る。
【0088】
多種多様な発現制御配列のいずれか−それに操作可能に結合するDNA配列の発現を制御する配列−は、本発明のDNA配列を発現するためにこれらのベクター中で使用されてもよい。このような有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期又は後期プロモーター、CMV、ワクシニア、ポリオーマ又はアデノウイルス、lacシステム、trpシステム、TACシステム、TRCシステム、LTRシステム、ファージλの主要なオペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセラートキナーゼのためのプロモーター、又は他の解糖酵素のためのプロモーター、酸ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母交接因子のプロモーター、及び真核細胞又は原核細胞又はそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られた他の配列、及び種々のこれらの組合せが挙げられる。
【0089】
多種多様な単核宿主細胞はさらに、本発明のDNA配列の発現において有用である。これらの宿主は、周知の真核生物及び原核生物の宿主(例えば、E.coli、Pseudomonas、Bacillus、Streptomyces、真菌、例えば、酵母、及び動物細胞、例えば、CHO、R1.1、B−W細胞及びL−M細胞、African Green Monkey腎臓細胞(例えば、COS1、COS7、BSC1、BSC40、及びBMT10)、昆虫細胞(例えばSf9)、及び腫瘍細胞、形質転換された細胞、組織培養物中のヒト細胞及び植物細胞)を含んでもよい。
【0090】
全てのベクター、発現制御配列及び宿主が、本発明のDNA配列を発現するのに十分に等しい機能を有するわけではないことが理解される。全ての宿主機能が同じ発現システムを伴って十分等しいわけでもない。しかし、当業者は、本発明の範囲から逸脱しない範囲で所望な発現を達成するために、過度な実験をすることなく、適切なベクター、発現制御配列、及び宿主を選択することができる。例えば、ベクターの選択において、宿主は、ベクターがその中で機能されなければならないために、考慮されなければならない。ベクターの複製数、複製数を制御する能力、及びベクターによってコードされる任意の他のタンパク質(例えば、抗菌マーカー)の発現もまた考慮される。
【0091】
発現制御配列の選択において、種々の因子が通常は考慮される。これらとしては、例えば、システムの相対強度、その制御性、及び、特に潜在的な二次構造に関して、発現される特定のDNA配列又は遺伝子との適合性が挙げられる。適切な単細胞宿主は、例えば、選択されたベクターとの適合性、その分泌特徴、タンパク質を正しく折りたたむ能力、及びそれらの発酵要求、及び発現されるDNA配列によってコードされる産物の宿主に対する毒性、及び発現産物の精製容易性を考慮することによって選択される。これら及び他の因子を考慮すると、当業者は、発酵又は大スケール動物培養物において本発明のDNA配列を発現する種々のベクター/発現制御配列/宿主の組合せを構築可能である。
【0092】
本発明はさらに、KSRがノックアウトされるか又は無効化された(本明細書中でksr−/−動物におけるように)、又はKSRが本明細書中でさらに記載されるように過剰発現された、トランスジェニック動物及び動物モデルを含む。このような動物モデルとしては、たとえば、マウス、ラット、ブタ、ウサギ、イヌ、サルなど、及び研究のための他の認識された脊椎系又は非脊椎系(カモ、魚、drosphila、C.elegansなどを含む)の哺乳動物が挙げられる。無効化されたKSRの場合には、これらの動物は、KSRを含まないバックグラウンドにおける、腫瘍形成又は転移における他の因子を同定することを含む、腫瘍形成の研究又は腫瘍形成のブロックのために有用である。腫瘍形成、細胞増殖及び転移が高められるKSR過剰発現者の場合には、これらのシステムは、腫瘍モデルの迅速な研究のために、及び潜在的な抗癌化合物又は薬剤(KSRを標的化するもの及び他の経路を含む)を評価するために有用であり得る。
【0093】
上述のように、本発明の核酸及びオリゴヌクレオチドは、クローン化よりも全身的に調製することができる。一般的に、配列が発現のために使用される場合、目的の宿主のための好ましいコドンが選択される。完全な配列は、標準的な方法によって調製されるオリゴヌクレオチドをオーバーラップさせ、完全なコード配列内で組み立てることによって組み立てられる。例えば、Edge,Nature,292:756(1981);Nambair et al.,Science,223:1299(1984);Jay et al.,J.Biol.Chem.,259:6311(1984)を参照。
【0094】
アンチセンス核酸は、特異的なmRNA分子の少なくとも一部分に対して相補的なDNA又はRNA分子である(Weintraub,1990;Marcus−Sekura,1988を参照)。細胞において、それらはそのmRNAにハイブリダイズし、二本鎖分子を形成し、タンパク質内でのmRNAの発現と干渉する。アンチセンス方法は、インビトロで多くの遺伝子の発現を阻害するために使用される(Marcus−Sekura,1988;Hambor et al.,1988)。
【0095】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、KSR mRNAの領域に対して実質的に相補的であるように選択される。領域に対して相補的であってもよい本発明のオリゴヌクレオチドは以下に挙げられるが、これらに限定されない:(a)mRNA分子の5‘−cap部位(Ojala et al.(1997)Antisense Nucl.Drug Dev.7:31−38);(b)転写開始部位(Monia et al.(1992)J.Biol.Chem.267:19954−19962);(c)翻訳開始コドン(Dean et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:11762−11766);(d)翻訳停止コドン(Wang et al.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3318−3322);(e)mRNAスプライス部位(Agrawal et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:7790−7794;Colige et al.(1993)Biochem.32:7−11);(f)mRNA分子の5’−未翻訳領域(Duff et al.(1995)J.Biol.Chem.270:7161−7166;Yamagami et al.(1996)Blood 87:2878−2884);(g)mRNA分子の3’−未翻訳領域(Bennett et al.(1994)J.Immunol.152:3530−3540;Dean et al.(1994)J.Biol.Chem.269:16146−16424);及び(h)コード領域(Laptev et al.(1994)Biochem.33:11033−11039;Yamagami et al.(1996)Blood 87:2878−2884)。
【0096】
当業者は、KSR発現の阻害において有効な、核酸及びオリゴヌクレオチドのための選択プロセスを容易にし、単純化するためのいくつかのストラテジーを容易に利用することができる。オリゴヌクレオチドとmRNA分子中の相補配列との間の結合エネルギーの予測又は熱力学指数の計算を利用してもよい(Chiang et al.(1991)J.Biol.Chem.266:18162−18171;Stull et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:3501−3508)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは二次構造に基づいて選ばれてもよい(Wickstrom et al(1991)in Prospects for Antisense Nucleic Acid Therapy of Cancer and AIDS,Wickstrom,ed.,Wiley−Liss,Inc.,New York,pp.7−24;Lima et al.(1992)Biochem.31:12055−12061)。Schmidt及びThompson(米国特許第6,416,951号)は、RNAとオリゴヌクレオチドとをハイブリダイズする工程と、インターカレーション染料の存在下でハイブリダイズすることによってハイブリダイゼーションの動力学をリアルタイムで測定する工程、又は標識を組み込む工程と、標識されていないオリゴヌクレオチドの存在下で染料又は標識のシグナルの分光学的性質を測定する工程とを含む、機能性アンチセンス薬剤を同定する方法を記載する。それに加えて、当業者によって認識される種々の判断基準(例えば、自己相補性の非存在、ヘアピンループの非存在、安定なホモダイマー及び二本鎖形成(安定性が予測されたエネルギー(kcal/mol)によって評価される)の非存在を含む)を利用する適切なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列又はアンチセンス標的を予測する種々のコンピュータープログラムのいずれかを利用してもよい。このようなコンピュータープログラムの例は、用意に入手可能であり、当業者に既知であり、OLIGO4又はOLIGO6プログラム(Molecular Biology Insights,Inc.,Cascade,CO)及びOligo Techプログラム(Oligo Therapeutics Inc.,Wilsonville,OR)が挙げられる。
【0097】
それに加えて、本発明において適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション条件下で、オリゴヌクレオチドライブラリー、又は核酸分子のライブラリーをスクリーニングし、標的RNA又は核酸にハイブリダイズすることについて選択することによって同定されてもよい(例えば、米国特許第6,500,615号参照)。Mishra及びToulmeはさらに、標的に結合するオリゴヌクレオチドの選択的な増幅に基づく選択手順を開発した(Mishra et al(1994)Life Sciences 317:977−982)。オリゴヌクレオチドはさらに、RNAse Hによって標的RNAの開裂を媒介する能力によって、開裂フラグメントの選択及び特徴決定によって選択されてもよい(Ho et al(1996)Nucl Acids Res 24:1901−1907;Ho et al(1998)Nature Biotechnology 16:59−630)。RNA分子のGGGAモチーフに対するオリゴヌクレオチドの生成及び標的化もさらに記載されている(米国特許第6,277,981号)。
【0098】
ksr遺伝子発現の阻害は、例えば、当業者に周知のようなmRNA発現のノーザンブロットアッセイ又はタンパク質発現のウェスタンブロットアッセイによって、当該技術分野で日常的な様式で測定することができる。細胞増殖又は腫瘍細胞増殖に対する効果もまた、本出願の実施例に教示されるものを含む当業者に周知の方法によって、インビトロ又はインビボで細胞、腫瘍又は動物モデルシステムにおいて測定することができる。同様に、KSR活性の阻害、特にホスホリル化又はキナーゼ活性の阻害が測定されてもよい。
【0099】
「実質的に相補的な」は、安定で特異的な結合がDNA又はRNA標的とオリゴヌクレオチド又は核酸との間に生じるような十分な程度の相補性を示すために使用される。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能な標的核酸配列に対して100%相補的である必要はないことが理解される。オリゴヌクレオチドは、標的に対するオリゴヌクレオチドの結合が標的分子の正常な機能と干渉して有用性又は発現の損失を生じる場合に、特異的にハイブリダイズ可能であり、インビボアッセイ又は治療的処置の場合に、又はインビトロアッセイの場合に、アッセイが行われる条件下で、生理学的条件下で非標的配列に対するオリゴヌクレオチドの非特異的結合を避けるのに十分な相補性度が存在する。
【0100】
本発明の内容において、用語「オリゴヌクレオチド」は、天然に生じる塩基、糖及び糖間(骨格)結合からなるヌクレオチド又はヌクレオシドモノマーのオリゴマー又はポリマーを指す。オリゴヌクレオチドとしては、同様に機能する非天然に生じるモノマー、又はそれらの一部分を含むオリゴマーが挙げられ、このような改変又は置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、細胞取り込みが高められ、ヌクレアーゼに対する安定性が高められているため、ネイティブ形態よりも好ましい場合がある。本発明のオリゴヌクレオチドは、2つ以上の化学的に別個の領域を含有してもよく、それぞれは少なくとも1つのヌクレオチドから作られ、例えば、1つ以上の有利な性質(例えば、ヌクレアーゼ耐性の増加、細胞への取り込みの増加、RNA標的に対する結合アフィニティーの増加)を与える改変されたヌクレオチドの少なくとも1つの領域、及びRNA:DNA又はRNA:RNAハイブリッドを開裂可能な酵素(例えば、RNase H−RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を開裂する細胞エンドヌクレアーゼ)のための基質である領域から作られる。
【0101】
好ましい実施形態では、KSR mRNA結合アフィニティーを増加させるために改変されるオリゴヌクレオチドの領域は、糖の2’位で、最も好ましくは2’−O−アルキル、2’−O−アルキル−O−アルキル又は2’−フルオロ改変されたヌクレオチドで改変される少なくとも1つのヌクレオチドを含む。このような改変は、日常的にオリゴヌクレオチドに組み込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対して2’−デオキシオリゴヌクレオチドよりもより高いTm(すなわち、より高い標的結合アフィニティー)を有することが示されている。別の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性を高めるために改変される。細胞は、核酸を分解可能な種々のエキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼを含有する。多くのヌクレオチド及びヌクレオシド改変は、ヌクレアーゼ消化に対して比較的大きな耐性を与えることが示されている。少なくとも1つのホスホロチオエート改変を含有するオリゴヌクレオチドは、現時点で最も好ましい(Geary,R.S.et al(1997)Anticancer Drug Des 12:383−93;Henry,S.P.et al(1997)Anticancer Drug Des 12:395−408;Banerjee,D.(2001)Curr Opin Investig Drugs 2:574−80)。いくつかの場合では、標的結合アフィニティーを高めるオリゴヌクレオチド改変はさらに、独立して、ヌクレアーゼ耐性を高めることができる。
【0102】
本発明のために想像されるいくつかの好ましいオリゴヌクレオチドの具体例としては、改変された骨格を含有するもの、例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキル又はシクロアルキル糖間結合又は短鎖ヘテロ原子又はヘテロ環の糖間結合を含有するものが挙げられる。最も好ましいのは、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチド及びヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオチドである。De Mesmaeker et al.(1995)Acc.Chem.Res.28:366−374に開示されるアミド骨格も好ましい。また、モルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドもまた好ましい(Summerton and Weller,米国特許第5,034,506号)。他の好ましい実施形態では、例えば、ペプチド核酸(PNA)骨格、オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格は、ポリアミド骨格と交換され、核酸塩基が直接又は間接的にポリアミド骨格のアザ窒素原子に結合する(Nielsen et al.,Science,1991,254,1497)。オリゴヌクレオチドはさらに、1つ以上の置換糖部分を含有してもよい。好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下のものの1つを含む:OH、SH、SCH、F、OCN、ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA開裂基;リポーター基;インターカレーター;オリゴヌクレオチドの薬動力学の性質を改良するための基;又はオリゴヌクレオチドの薬力学的性質を改良するための基及び類似した性質を有する他の置換基。同様の改変はさらに、オリゴヌクレオチドの他の位置でなされてもよく、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位置、及び5’末端ヌクレオチドの5’位置でなされてもよい。
【0103】
オリゴヌクレオチドはさらに、さらなる又は代替の塩基改変又は置換を含んでもよい。本明細書中で使用される場合、「改変されていない」又は「天然」の核酸塩基としては、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)が挙げられる。改変された核酸塩基としては、天然の核酸中にまれに又は一次的にのみ見出される核酸塩基、例えば、ヒポキサンチン、6−メチルアデニン、5−メチルピリミジン、特に5−メチルシトシン(5−me−C)(Sanghvi,Y.S.,in Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、5−ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMC及びジェントビオシル(gentobiosyl)HMC、及び合成核酸塩基(限定されないが、2−アミノアデニン、2−チオウラシル、2−チオチミン、5−ブロモウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、8−アザグアニン、7−デアザグアニン)(Kornberg,A.,DNA Replication,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,1980,pp75−77;Gebeyehu,G.,et al.,1987,Nucl.Acids Res.15:4513)が挙げられる。当該技術分野で既知の「普遍的な」塩基、例えばイノシンが含まれてもよい。
【0104】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の改変は、オリゴヌクレオチドの活性又は細胞取り込みを高めるオリゴヌクレオチドの1つ以上の部分又は接合体に対する化学結合を含む。このような部分としては、限定されないが、脂質部分、例えば、コレステロール部分、コレステリル部分(Letsinger et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553)、コール酸(Manoharan et al. (1994)Bioorg.Med.Chem.Let.4:1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al.(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:306;Manoharan et al.(1993)Bioorg.Med.Chem.Let.3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison−Behmoaras et al.(1991)EMBO J.10:111;Kabanov et al.(1990)FEBS Lett.259:327;Svinarchuk et al.(1993)Biochimie 75:49)、リン脂質、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.(1995)Nucleosides & Nucleotides 14:969)が挙げられる。親油性部分を含むオリゴヌクレオチド、及びこのようなオリゴヌクレオチドを調製するための方法は当該技術分野で、例えば、米国特許第5,138,045号、同第5,218,105号及び同第5,459,255号で既知である。
【0105】
Farrel and Kloster(米国特許第6,310,047号)は、高アフィニティーDNA結合多核白金化合物を用いたアンチセンスオリゴヌクレオチドの送達及びインビボヌクレアーゼ耐性の向上を記載する。
【0106】
所与のオリゴヌクレオチドにおける全ての位置が均一に改変されることは必要ではなく、上述の改変のうち1つより多くが1個のオリゴヌクレオチドに組み込まれるか、又はオリゴヌクレオチド内の1個のヌクレオシドに組み込まれてもよい。
【0107】
本発明に従うオリゴヌクレオチドは、好ましくは、約8〜約50ヌクレオチド長である。特に好ましいオリゴヌクレオチドは、10〜30ヌクレオチド長、特に好ましいのは15〜25ヌクレオチド長である。本発明の内容では、本明細書中で先に記載されたような、8〜50モノマーを有する非天然に生じるオリゴマーを包含することが理解される。
【0108】
本発明に従って使用されるオリゴヌクレオチドは、固相合成の周知の技術を介して簡便に日常的に製造されてもよい。このような合成のための装置は、Applied Biosystemsを含む種々のベンダーによって販売されている。このよな合成のための任意の他の手段をさらに使用してもよく;オリゴヌクレオチドの実際の合成は、十分に当業者の能力の範囲内である。他のオリゴヌクレオチド、例えば、ホスホロチオエート及びアルキル化誘導体を調製するための同様の技術を使用することも十分に知られている。
【0109】
本発明の方法及び組成物、特にオリゴヌクレオチドによって高められる治療的な可能性は、遺伝子ノックアウトによって、アンチセンスオリゴヌクレオチドを利用する発現の阻害によって、及び逆相補RNA又はアンチセンスDNA構築物の発現によるKSRの失活が、Rasにより媒介される腫瘍形成及び細胞過剰増殖(gf−Rasを介するものを含む)の特異的な妨害、及び癌の進行の処置又は阻害を生じるという本明細書中の実施例における説明から誘導される。本発明は、過剰発現されるか、又は増幅され、過剰活性化されるか又は腫瘍形成Ras(gf−Rasを含む)が、Rasにより媒介される腫瘍、腫瘍形成、転移及び血管形成の進行を縮退、ブロック、処置又は阻害することが意図される、反応のカスケードにおける薬学的介入を考慮する。このように、Ras(gf−Rasを含む)を減少又は阻害することが望ましい場合には、本発明の核酸及びオリゴヌクレオチドは、Ras経路をブロック又は阻害するために導入される。
【0110】
本発明はさらに、哺乳動物KSRタンパク質の発現又は活性を阻害する治療的に有効量の化合物又は薬剤を上記哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物におけるgf−Rasの発現に関連する過剰増殖状態、又はRasの高められた発現又は過剰活性化又はRas経路を処置又は予防する方法を含む。本方法の1つの局面では、上記化合物又は薬剤は、KSRをコードするmRNAの一部分に特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドである。KSRをコードするmRNAの一部分に対して相補的な治療的に有効量の核酸を上記哺乳動物において発現させるか、又は上記哺乳動物に投与する工程を含む、gf−Rasの発現に関連する過剰増殖状態、又は哺乳動物におけるRasの高められた発現又は過剰活性化を処置又は予防する方法が提供される。
【0111】
本発明はさらに、治療的に有効量のKSR発現及び/又は活性の1つ以上のインヒビターを哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において過剰増殖性の癌細胞又は腫瘍細胞におけるイオン化放射線又は他の放射線又は化学治療に対して感受性を与える方法を提供する。本発明は、治療的に有効量の本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドを哺乳動物に対して投与する工程を含む、哺乳動物において過剰増殖性の癌細胞又は腫瘍細胞におけるイオン化放射線又は他の放射線又は化学治療に対して感受性を与える方法を提供する。
【0112】
本発明はさらに、KSRの発現及び/又は活性の活性化又は阻害の際に、特にVEGF発現を調整することによって、血管形成を調整する方法を提供する。VEGF発現は、KSRの発現及び/又は活性の特定の阻害又は活性化によって調整される。KSRの活性化又は発現を高めることにより、細胞中又は細胞によるVEGFの量又は発現が増加する。このように、細胞又は組織におけるKSRの活性化又は発現を高めることは、血管形成を刺激する方法を提供する。KSRの阻害、妨害又は減少は、VEGFの量又は発現を減少させ、それによって抗血管形成効果を有する。1つのこのような局面では、癌細胞又は腫瘍細胞のVEGF発現は、KSRに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与又は発現によるものを含むKSRの阻害によってブロックされ、癌又は腫瘍における血管形成を阻害する。KSRに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与又は発現によるものを含むKSRの阻害は、腫瘍、KSRを発現する組織又は細胞、特に、gf Rasを発現する組織又は細胞において血管形成を阻害する方法を提供し、又はここで、Ras経路が過剰に活性化されるか、又はRasが過剰発現されるか又は増幅される。
【0113】
さらなる局面では、哺乳動物KSRタンパク質の発現又は活性を阻害する治療的に有効量の化合物又は薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において癌の進行を処置又は予防する方法が含まれる。本発明の方法に対して感受性の癌としては、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝癌、甲状腺癌、大腸癌、腸癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、食道癌及び前立腺癌の群から選択される癌が挙げられる。1つの局面では、哺乳動物KSRタンパク質の発現又は活性を阻害する治療的に有効量の化合物又は薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において膵臓癌の進行を処置又は阻害する方法が提供される。
【0114】
このように、治療的に有効量の本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドを哺乳動物に対して投与する工程を含む、哺乳動物において癌の進行を処置又は阻害する方法が提供される。治療的に有効量の本発明の1つ以上のオリゴヌクレオチドを哺乳動物に対して投与する工程を含む、哺乳動物において膵臓癌の進行を処置又は阻害する方法が提供される。
【0115】
本発明はさらに、本発明の治療方法の実施において有用な治療組成物を考察する。目的の治療組成物は、薬学的に受容可能なキャリア(賦形剤)又は希釈剤と、活性成分として、本明細書中に記載されるような本発明の1つ以上の核酸又はオリゴヌクレオチドとを混合物で含む。好ましい実施形態では、この組成物は、KSRの発現を阻害可能なオリゴヌクレオチドを含む。
【0116】
核酸及びオリゴヌクレオチドの組成物は、本発明のさらなる局面である。本発明は、KSR RNAの領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチドと薬学的に受容可能なキャリア又は希釈剤とを含む組成物を含む。このように、本発明は、KSR RNAの領域に対して実質的に相補的な治療的に有効量のオリゴヌクレオチドと薬学的に受容可能なキャリア又は希釈剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0117】
さらなる局面では、1つ以上の化学治療剤又は放射能治療剤と、哺乳動物KSRをコードするmRNAに対して標的化されるオリゴヌクレオチドとを含み、KSR発現を阻害する組成物が提供される。
【0118】
活性成分として核酸、オリゴヌクレオチド、又は類似体を含有する治療組成物の調製は、当該技術分野で十分に理解される。このような組成物は、注射可能なものとして、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして調製可能である。注射の前に液体にする、溶液又は懸濁液のために適切な固体形態をさらに調製することができる。この組成物は、持放性処方物を含む固体丸薬形態で調製されてもよい。この組成物は、経皮適用のためのパッチ形態、特に持放性処方のパッチ形態であってもよい。この調製物はさらに乳化させることもできる。活性治療成分は、しばしば、活性成分と薬学的に受容可能で適合性の賦形剤と混合される。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組合せである。それに加えて、所望の場合、この組成物は、少量の活性成分の有効性を高める補助基質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤を含有することができる。
【0119】
核酸又はオリゴヌクレオチドは、中和された薬学的に受容可能な塩形態として治療組成物に処方化することができる。薬学的に受容可能な塩としては、酸付加塩(ポリペプチド又は抗体分子の遊離アミノ基と形成された)、及び無機酸、例えば塩酸、又はリン酸、又は有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などと形成される塩が挙げられる。遊離カルボキシル基から形成される塩はさらに、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄、及び有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導することができる。
【0120】
治療核酸、オリゴヌクレオチド、類似体又は活性フラグメントを含有する組成物は、例えば、単位用量を注射することによるように、静脈内投与されてもよい。用語「単位用量」は、本発明の治療組成物を参照して使用される場合、ヒトのために一体的な投薬量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の希釈剤(すなわち、キャリア又はビヒクル)と関連して所望の治療効果を得るように計算された所定の量の活性物質を含有する。
【0121】
治療組成物はさらに、有効量の核酸又はオリゴヌクレオチドと、1つ以上の以下の活性成分又は薬剤を含んでもよい:化学治療剤、放射線治療剤、免疫調整剤、及び抗分裂剤。
【0122】
本発明の薬学的組成物は、局所的又は全身的な処置のどちらが望ましいかに依存して、及び処置される領域に依存した多くの様式で投与されてもよい。投与は、局所的(眼内、膣内、直腸内、鼻腔内、経皮)、経口、又は非経口であってもよい。非経口投与は、点滴静注又は注入、皮下、腹腔内、又は筋肉内注射、例えば、吸入又は注入を含む肺投与、又はクモ膜下又は心室内投与を含む。経口投与のために、吸収特性及び分布特性のために、少なくとも1つの2’−置換リボヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドが特に有用であることがわかった。米国特許番号第5,591,721号(Agrawal et al.)は、経口投与のために適切であり得る。局所投与のための処方物は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、座薬、スプレー、液体及び粉末を含んでもよい。従来の薬学的キャリア、水性ベース、粉末ベース又は油性ベース、増粘剤などは、必要であるか、望ましい場合がある。コーティングされたコンドーム、手袋などもまた有用であり得る。経口投与のための組成物としては、粉末又は顆粒、水又は非水媒体中の懸濁液又は溶液、カプセル、サッシェ又は錠剤があげられる。増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤、又はバインダーも望ましい。非経口、髄腔内又は心室内投与のための組成物は、バッファー、希釈剤及び他の適切な添加剤を含有してもよい滅菌水溶液を含んでもよい。このような薬学的キャリアに加えて、カチオン性脂質は、オリゴヌクレオチド取り込みを容易にするために処方物に含まれてもよい。取り込みを容易にするために示される1つのこのような組成物は、Lipofectin(BRL Bethesda Md.)である。
【0123】
投薬は、数日から数カ月まで持続する一連の処置と共に、又は治癒が効果をあらわすか又は疾患状態の減少が成し遂げられるまで、処置される状態の重篤度及び応答性に依存している。最適な投薬スケジュールは、体内の投薬の蓄積の測定値から計算することができる。当業者は、最適な投薬量、投薬方法論及び繰り返し率を容易に決定することができる。最適な投薬は、個々のオリゴヌクレオチドの相対的な効力に依存して変動し得、一般的に、インビトロ及びインビボの動物実験におけるIC50又はEC50に依存して計算することができる。例えば、化合物の分子量(オリゴヌクレオチド配列及び化学構造から誘導される)、及び例えば有効な投薬量(例えばIC50)(実験的に誘導される)が与えられ、投薬量(mg/kg)が日常的に計算される。
【0124】
本発明のオリゴヌクレオチドはさらに、KSR発現の検出及び診断のために有用である。例えば、放射能標識されたオリゴヌクレオチドは、KSR発現の疑いのある組織又は細胞サンプル又はgf−Ras発現の疑いのある組織又は細胞サンプルと接触させ、未結合のオリゴヌクレオチドが除去される、5’末端又は3’末端に放射能活性な(例えば、32P)標識をする(ポリヌクレオチドキナーゼを用いることを含む)ことによって調製することができる。放射能活性をサンプル中に維持していることは、結合したオリゴヌクレオチドを示し(順にKSR又はgf−Rasの存在を示す)、シンチレーションカウンター又は他の日常的な手段を用いて定量化することができる。放射能標識されたオリゴヌクレオチドはさらに、研究、診断又は治療目的のために、KSR又はgf−Ras発現の局在化、分布及び定量を決定するための組織のオートラジオグラフィーを行なうために使用することができる。それに加えて、放射能標識は、細胞死を促進し、又は細胞増殖をブロックする治療効果を有する場合がある。raf発現の蛍光検出のための類似のアッセイは、放射能標識の代わりに、蛍光又は他の蛍光タグと接合した本発明のオリゴヌクレオチドを用いて開発することができる。
【0125】
本発明のオリゴヌクレオチドは、検出可能な標識を用いて標識されてもよい。特定の局面では、標識は、酵素、蛍光を発する化学物質及び放射性元素から選択されてもよい。放射能活性な標識、例えば、同位体H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、I25I、131I及び186Reが使用される場合、既知の従来から利用可能な計測手段を使用してもよい。標識が酵素である場合、検出は、現在利用され、当該技術分野で既知の比色技術、分光光度技術、蛍光分光光度技術、電流測定技術又は気体定量技術のいずれかによって達成されてもよい。多くの蛍光材料が知られており、標識として使用可能である。これらとしては、例えば、フルオレスセイン、ローダミン、オウラミン、Texas Red、AMCAブルー及びLucifer Yellowが挙げられる。特定の検出材料は、ヤギから調製され、イソチオシアネートを介してフルオレセインで接合された抗−ウサギ抗体である。酵素標識も有用であり、現時点で利用される比色技術、分光光度技術、蛍光分光光度技術、電流測定技術又は気体定量技術のいずれかによって検出することができる。酵素は、架橋分子(例えば、カルボジイミド、ジイソシアナート、グルタルアルデヒドなど)を用いた反応により、選択された粒子に接合される。これらの手順において使用可能な多くの酵素が知られており、限定されないが、ペルオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼが上げられる。米国特許第3,654,090号;同第3,850,752号;及び同第4,016,043号は、代替の標識物質及び方法の開示のための一例として挙げられる。
【0126】
本発明は、KSR mRNAの翻訳をブロックすることによって、又はRNAの破壊又は不安定化を促進することによって翻訳が有効に起こりえないような転写レベルで、タンパク質、特にKSRの発現を阻害可能なさらなる組成物を含む。この局面では、本発明は、KSR mRNAを開裂するリボザイムを提供する。
【0127】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼにいくらか類似の様式で他の一本鎖RNA分子を特異的に開裂する能力を有するRNA分子である。リボザイムは、特定のmRNAがそれら自身のイントロンを切断する能力を有するという観察から発見された。これらのRNAのヌクレオチド配列を改変することによって、研究者は、RNA分子中で特定のヌクレオチド配列を認識し、それを開裂する分子を設計することができた(Cech,1988)。これらは配列特異的であるため、特定の配列を有するmRNAのみが失活する。
【0128】
観察者は、2種類のリボザイムTetrahymena型及び「ハンマーヘッド」型(Hasselhoff and Gerlach,1988)を同定した。Tetrahymena型リボザイムは、4個の塩基配列を認識し、一方、「ハンマーヘッド」型は11〜18個の塩基配列を認識する。認識配列が長ければ長いほど、標的mRNA種において排他的に認識が起こると考えられる。それ故に、ハンマーヘッド型リボザイムは、特異的なmRNA種を失活するのにTetrahymena型リボザイムよりも好ましく、18塩基認識配列が、より短い認識配列よりも好ましい。
【0129】
KSRの発現を阻害するためのRNA干渉ストラテジーの使用は、さらに本発明に包含される。このように、RNA干渉の方法及び小さな干渉RNA組成物は、本発明の方法及び組成物に含まれる。RNA干渉は、二本鎖RNA(dsRNA)による特異的な遺伝子のサイレンシングを指す(Fine,A.et al(1998)Nature 391;806−811)。1つの実施形態では、短い又は小さい干渉RNA(siRNA)が利用される(Elbashir,S.M.et al(2001)Nature 411:494−498)。それに加えて、長い二本鎖RNAヘアピンが使用されてもよい(Tavernarakis,N.et al(2000)Nature Genet 24:180−183;Chuang,C.F.及びMeyerowitz,E.M.(2000)PNAS USA 97:4985−90;Smith,NA et al(2000)Nature 407:319−20)。K−Rasに対するウイルスにより媒介されるRNA干渉が記載されている(B rummelkamp,T.R.et al(2002)Cancer Cell 2:243−247)。
【0130】
本発明は、以下の本発明の例として提供される非限定的な実施例を参照してよりよく理解されてもよい。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をさらに完全に説明するために示されるが、本発明の広い範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0131】
これらの研究は、哺乳動物KSRがEGFR/Ras/MAPKシグナル形成モジュールを介するシグナル形成を集積することを示す。EGFR、Ras及びKSRは、哺乳動物細胞における同じシグナル形成経路であり、MEFにおけるEGFにより誘発されるMAPKシグナル形成を弱めることによって、及び複数の実験モデルにおけるEGFR−/Rasにより媒介される腫瘍形成の妨害によって、KSRノックアウトマウスにおいて明らかにされ、KSRノックアウトで繰り返される。さらに、遺伝的及び薬理学的アプローチは、インビトロ及びインビボで腫瘍形成の種々の局面のために要求されるようにKSRを同定した。インビトロで、KSR機能がなくなることは、MEF、A431及びMCF−7細胞の増殖を減らし、Rasにより媒介されるMEF形質転換を妨害し、A431及びMCF−7細胞浸潤を減らした。インビボで、KSRの失活は、新生物の成長のために野生型Rasを必要とする、ν−Ha−Rasにより媒介される腫瘍形成及び確立されたEGFRにより誘導される腫瘍の増殖を阻止した。C.elegans2,3におけるように、KSRは、ほとんどの場合、通常の成長のために重要ではなく見えるが、EGF刺激において急性に、又はRasにより媒介される腫瘍において慢性的に、EGFR/Ras経路を介するシグナル形成の増加が必要な場合に、必要とされる。このことは、薬理学的な失活が治療的な利益をもたらすかもしれないことを示唆する。実際に、本明細書中に示される結果は、Rasにより媒介される腫瘍形成のインビボモデルを含み、ksrの失活に対する細胞増殖及び細胞浸潤の顕著な阻害を示す。これらの研究は、癌及び腫瘍形成(特にK−Rasにより媒介される腫瘍形成)における治療アプローチとしてのksrアンチセンスオリゴヌクレオチド(KSR−AS ODN)の使用を示す。
【0132】
(実施例1)
(要約)
Drosophila melanogaster及びCaenorhabditis elegansにおいて、Rasのキナーゼサプレッサー(KSR)は、Raf1〜3に対して上流又は平行のいずれかに対してRas/分裂促進因子により活性化されたタンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル形成をポジティブに調整する。しかし、哺乳動物KSRの正確なシグナル形成機構、及びRasにより媒介される形質転換におけるその役割は、いまだ明らかでない。組換えKSRを顕著に過剰発現する細胞を利用することによって、いくつかの群が、KSRがMAPK活性化及びRasにより誘発される形質転換を阻害することが報告される4〜6一方、他のグループがその効果を高めることが報告された7〜10。証拠は、これらの矛盾が遺伝子投与量の効果を反映することを示唆する11。インビボでのKSR機能における洞察を得るために、本願発明者らは、KSRを有さないマウス同種接合を作成した。ksr−/−マウスは生存可能であり、大きな発達上の瑕疵は存在しない。しかし、生まれたばかりのマウスは、EGFRが欠損しているマウスにおいて以前に観察された固有な毛嚢表現型を示し、このことは、EGFR、Ras及びKSRが哺乳動物において同じシグナル形成経路上にあることを示すための遺伝的支持を与える。ksr−/−動物由来の胚繊維芽細胞は、MAPK経路のEGF活性化を欠いており、増殖能力が減少しており、Ras依存性形質転換力も損なわれていた。皮膚特異的なν−Ha−ras発現から生じるTg.Acマウスにおける腫瘍形成が、ksr−/−バックグラウンドにおいて失われていた。このように、本明細書中に示される証拠は、KSRが、抗−KSR治療ストラテジーによって潜在的に標的化され得るEGFR−/Ras−により媒介される新形成を変換することを示唆する。
【0133】
(導入)
Rasのキナーゼサプレッサー(KSR)を、Rafに対して上流又は平行のいずれかでシグナル形成するRas/分裂促進因子により活性化されたタンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル形成のポジティブモジュレーターとしてDrosophiula melanogaster及びCaenorhabditis elegansにおいて同定した(1〜3)。哺乳類のKSRの生化学的性状を解明することに集中的な努力が向けられたが、その正確なシグナル形成機構はいまだ明らかでない。特に、Rasにより媒介される形質転換におけるその役割は、納得がいくように対処されなかった。いくつかの群が、KSRがMAPK活性化及びRasにより誘発される形質転換を阻害することが報告される(4〜6)一方、他のグループがその効果を高めることが報告された(8〜10)。これらの実験は、内因性KSRよりもかなり高いレベルで組換えKSRを過剰発現する細胞系を利用し、この証拠は、これらの矛盾が遺伝子投与量の効果を反映することを示唆する(11)。本願発明者ら及び他の研究者は、Raf−MAPKカスケードの最適な活性化のための、キナーゼ及びKSRの足場となる機能の両方の必要性を議論し(26〜30)、他の研究者は、KSRがその足場となる機能を介して単にシグナル形成すると考えている(9、12、31)。
【0134】
KSRのインビボ機能における洞察を得るために、本願発明者らは、KSRを有さないマウス同種接合を作成した。ksr−/−マウスは生存可能であり、大きな発達上の瑕疵は存在しない。しかし、生まれたばかりのマウスは、EGFRが欠損しているマウスにおいて以前に観察された固有な毛嚢表現型を示す。ksr−/−動物由来のマウス胚繊維芽細胞(MEF)は、増殖能力が減少しており、腫瘍形成ν−Ha−Ras依存性形質転換力も損なわれていた。さらに、EGF及びTPAは、MEFと同様の程度までMAPKカスケードを活性化するが、EGFの分裂促進用量によるc−Raf−1活性化のみがksrに依存する。KSRノックアウトマウスは、このように、c−Raf−1活性化のKSR依存性及び非依存性機構の描写を可能にする。さらに、皮膚特異的なν−Ha−ras発現から生じ、形質転換にMAPKシグナル形成を使用する(32)Tg.Acマウスにおける腫瘍形成が、ksr−/−バックグラウンドにおいて失われていた。増殖、形質転換及び腫瘍形成におけるこれらの欠損は、KSRがRasにより媒介される新形成のいくつかの形態を変換することを示唆する。
【0135】
(結果及び考察)
哺乳動物におけるKSRのインビボ機能を観察するために、本願発明者らは、KSR発現において欠損したマウスを得るために、マウスksr遺伝子座を標的化した。ksr−/−マウスを、図1aに示されるpF9標的化ベクターを用いて、胚幹(ES)細胞における相同組換えによって作成した。標的化領域は、開始メチオニン(ksr cDNAにおけるnt83でのATGコドン)を含んでおり、その後の74アミノ酸がKSR固有CA1ドメインの85%を含んでいる。2つの標的化ESクローン(図1b)は、C57BL/6尾胞に微量注入され、両方とも、生殖系列を介して変異ksr対立遺伝子を移されたキメラマウスを生じた。ksr+/−マウスの交差は、予想されるメンデル頻度の遺伝子型を有する子孫を生じた。PCRに基づくスクリーニングストラテジーを開発して、マウスゲノムDNA由来の野生型(wt)及び変異型対立遺伝子の両方を検出した(図1c)。
【0136】
以前に報告されている(12)ように、ノーザンブロット分析は、6.4kb及び7.4kbのwtKSR転写物を明らかにした。より小さな転写物は、胎児7日目までに検出され、一方、さらに大きな転写物は、11日目から観察された(図1d)。成体において、多くの組織(心臓、脾臓、肺、胸腺及び脳を含む)がksr転写物を発現した(図1e)。腎臓は、ksr mRNAをほとんど示さなかったが、さらに大きな転写物が脳に対して制限された。このさらに大きなmRNAの存在は、Morrison及び共同研究者によって報告され、マウスKSR1(B−KSR1と称される)のスプライス改変体を示している(12)。重要なことに、ksr−/−マウスは、試験されるいずれの組織においてもksr mRNAを検出可能なレベルで発現しなかった(図1e)。KSR1及びB−KSR1タンパク質はさらに、ksr−/−マウス由来の組織又はマウス胚繊維芽細胞(MEF)におけるウェスタンブロット分析によって検出されなかった(図1f)。KSRの欠失はさらに、ksr cDNAの3’−UTRに特異的なプライマーを用いたRT−PCR分析によって確認された(図示せず)。本願発明者らのデータは、開始コード部位及びCA1ドメインのほとんどを含むksrの5’領域の交換が、マウスKSR形態の発現を首尾よく阻止することを示唆する。
【0137】
KSRノックアウトマウスは生存可能であり、多産であり、大きな発達欠損は有さなかった。主要器官の全体の組織学的異常は、若いマウス又は1歳までの成体マウスにおいて明らかであった。動物の体重、挙動及び1腹子数はさらに、KSRノックアウトによって影響を受けなかった。しかし、10日齢のksr−/−マウスの皮膚の組織学的検査により、毛嚢が顕著に少ないことがわかり、これは、皮膚の位置(深さ)及び配置(方向)において方向性がなく、非同期的な成長が明らかとなった(図2a対図2b、c)。さらに、有意な割合は、曲がりくねった形態を示した(図2b)。他の小胞において、内毛根鞘は毛幹と分離しており、これは、水疱または嚢胞を形成した(図2c)。この表現型は、著しく、EGFR欠損マウスの皮膚において見出されるものと密接に類似している(13)(図2d)。肉眼で見ると、egfr−/−マウスは、第1週齢に、短い、波打った毛皮及びちぢれたひげを示し、この毛皮及び鼻毛はまばらであり、時間と共に萎縮性であり、最終的には脱毛症となった(13)。これらの全体的な表現型がksr−/−マウスにおいて見られなかったにもかかわらず、ホルボールエステル12−O−テトラデカノイルホルボール13−アセテート(TPA)で処理した後に、同様に処置したksr+/+コントロールと比較して、脱毛症及びまばらな発毛の増加が観察された(図示せず)。両方のノックアウトによるこの固有な毛嚢表現型の徴候は、EGFR及びKSRがマウスにおいて同じ経路上にあることを支持する。
【0138】
EGFR/MAPK経路の活性化に対するKSR破壊の効果をさらに説明するために、本願発明者らはksr+/+及びksr−/−同腹子由来のMEFを作成し、低い分裂促進用量のEGF及びTPA(MAPKカスケードを活性化することが知られている2つの増殖刺激)に対するそれらの応答を評価した。血清飢餓の48時間後、さまざまな用量のEGF(0.01〜100ng/ml)又はTPA(10nM〜1uM)に応答するMAPK活性を、モノクローナル及び抗−ホスホ−p44/42MAPK(Thr202/Thr204)抗体を用いたウエスタンブロット分析によって決定した。ksr−/−MEFは、全ての用量で試験されるEGF−及びTPA−により誘導されるMAPK(ERK1/2)活性化の顕著な減少を示し、一方、全MAPK含量は主に不変のままであった(図3A)。EGF刺激について、MAPK活性化の阻害は、0.01ng/mlの低い容量であらわれ(図示せず)、100ng/mlのEGFでは、MAPK活性化は部分的に回復した(図3A、上側パネル、レーン8)。
【0139】
MAPK阻害条件下でRaf−1活性化を試験するために、内因性Raf−1を全てのMEF溶解物から均一に免疫沈降させ(図示せず)、キナーゼ不活性のMEK(K97M)を基質として用いて活性をアッセイした。Raf−1活性が、分裂促進用量のEGFに応答してksr−/−MEFにおいて大きく阻害され(>90%)(図3B、上側パネル、レーン4及び6)、一方、100ng/mlのEGFで刺激される場合には阻害は観察されなかった(図3B、上側パネル、レーン8)。このように、ksr−/−MEFにおける100ng/mlのEGFに応答するMAPK活性化の部分的な阻害は、Raf−1活性化から独立しており、KSRの既知のMAKの足場となる機能から生じると考えられる。これらの結果は、MEFにおけるEGFにより刺激されたRaf−1活性化が用量依存性であり、KSR依存性及び非依存性の機構を介して生じ得ることを示し、これは、本願発明者らの見解と一致している(28)。
【0140】
TPAにより誘導されるc−Raf−1活性化のための必要条件は、分裂促進用量のEGFのための必要条件とは異なっていた。ksrを欠失した場合の分裂促進用量のEGFを用いた刺激の後のc−Raf−1活性化の完全な阻害と対照的に、TPAにより誘導されるRaf−1活性化は、ksr−/−MEFにおいて変化がなかった(図3B、下側パネル)。このように、KSRノックアウトMEFの使用は、c−Raf−1活性化の2つの機構(分裂促進EGF刺激に必要なKSR依存性機構、及びTPA、及びおそらく薬理学的用量のEGFによって用いられるKSR非依存性機構)の定義を可能にする。KSRがないことにより、c−Raf−1活性化がおこらず、及びKSRのMEKの足場となる機能を失うことを介して、2つの機構によってMAPK活性化に影響を与えることができる。
【0141】
インビボでの細胞増殖に対するMAPK阻害の生物学的結果を検討するために、細胞発育の指数増殖期のMEFを用いて増殖アッセイを行なった。増殖シグナルを提供するMAPK分裂促進経路を介するシグナル形成の減少と一致して、ksr−/−MEFSにおける成長率の50%低下が観察された(図3C)。
【0142】
Rasにより媒介される形質転換におけるKSR失活の潜在的な影響を決定するために、c−Myc及びHa−rasV12構築物を、高タイターレトロウイルスを用いてksr+/+及びksr−/−初期継代MEFに形質導入し、軟質寒天においてコロニーとして成長する能力を記載されるように評価した(15)。ksr+/+繊維芽細胞は軟質寒天においてコロニーを形成せず、これらはMyc及びRas癌遺伝子の存在下でコロニーを形成しなかった(図示せず)。対照的に、ksr−/−MEFは、c−Mycによって不死化されたが、Ha−rasV12によって形質転換されなかった。まとめると、これらの全ての結果は、遺伝的欠失によるKSRの失活が、EGFR/Ras/MAPK経路を介するシグナル形成を弱めることを示す。
【0143】
ヒトの癌における癌遺伝子rasの関与は30%であると推定され(33)、ヒトにおける皮膚の病変の約25%がHa−Rasの突然変異を含む(扁平上皮癌について約25%、黒色腫において28%)(34、35)。ksr−/−マウスが、おそらくEGFEシグナル形成の欠陥を介して毛嚢の通常の発現を欠損していることが示されたため、本願発明者らは、皮膚における機能獲得RasにおけるKSRの役割を検討した。これらの研究のために、二段階皮膚発癌の研究の標準化されたモデルである、本願発明者らはζ−グロブリンプロモーターに融合したハーバー癌遺伝子ν−Ha−rasを有するTg.Acマウスを使用した(16〜18)。Tg.Acマウスのν−Ha−ras導入遺伝子は、マウスの皮膚においてKSRが局在化しているという本願発明者らの結果と一致する部位である毛嚢の外毛根鞘細胞に密接に関連する潜在的な新生物細胞(推定上の幹細胞)に導入されるまで、転写的に沈黙している(19)(図示せず)。Tg.Acマウス(FVB/N株バックグラウンドにおける)を、ksr−/−マウス(混合したC57BL/6:129svバックグラウンドにおける)と交差させた。ksr遺伝子について異種のF1世代は、ksr+/+及びksr−/−バックグラウンドにおいてν−Ha−ras導入遺伝子を有するF2世代を得るために交配された。ksrの破壊がこのモデルにおける腫瘍形成に影響を与えるか否かを決定するために、本願発明者らは、F2マウスの背に、ビヒクル(アセトン)、又は5μgのTPAを15週間のあいだ、週に2回局所処置した。20週間、皮膚の悪性発現について動物をモニタリングした。
【0144】
ν−Ha−ras導入遺伝子mRNAを検出するためのRT−PCRを用いた初期コントロール試験は、ksr−/−マウスにおけるKSR機能の欠損が、皮膚においてTPAにより誘導される癌遺伝子ν−Ha−ras導入遺伝子の発現に影響を与えないことを示した(図4A)。しかし、ksr+/+バックグラウンドにおけるTg.Acトランスジェニックマウスの70%で乳頭腫が進行し、一方、ksr−/−バックグラウンドにおいて10%のみが乳頭腫を示した(図4B)。本願発明者らの研究における乳頭腫の平均数は、各グループにおいてマウスあたり2〜4であった。Tg.Acマウスを用いたこれらの研究は、KSRの遺伝的失活がEGFR−/Ras−により媒介される皮膚腫瘍形成を防ぐことを示す。
【0145】
まとめると、これらの研究は、哺乳動物KSRが、EGFR/Ras/MAPKシグナル形成モジュールを介したシグナル形成を一体化することを示す。EGFR、Ras及びKSRは、哺乳動物細胞において同じシグナル形成経路上にあり、MEFにおけるEGFにより誘発されるMAPKシグナル形成を弱めることによって、及び複数の実験モデルにおけるEGFR−/Rasにより媒介される腫瘍形成の妨害によって、EGFRノックアウトマウスにおいてあらわれ、KSRノックアウトにおいて繰り返される通常ではない毛嚢表現型によって支持される(実施例2も参照)。これらの研究はさらに、Raf−1活性化がKSR依存性及び非依存性の機構によって起こり得ることを示す。本願発明者らは、この観察結果が、Ras/Raf−1−MAPKモジュールの上流要素に関する問題のいくつかを解決する役に立ち得、さらなる観察のための新しい標的及び試薬を提供すると考える。C.elegans(2、3)において、KSRは、ほとんどの場合、通常の成長のために重要ではなく見えるが、EGF刺激において急性に、又はRasにより媒介される腫瘍において慢性的に、EGFR/Ras経路を介するシグナル形成の増加が必要な場合及び発癌遺伝子Rasにより変換されMAPKにより媒介される腫瘍形成のいくつかの形態に必要とされ、このことは、KSR失活が治療的利点を与え、特に、ヒト腫瘍形成のRas/MAPKシグナル形成の選択的な阻止に治療的利点を与えることを示す。
【0146】
(方法)
遺伝子標的化。マウスksr cDNA(Genbank accession #U43585)の5’コード領域(nt1〜786)を用いてマウス株129/sv(Stratagene,La Jolla,CA)から調製したλFixIIファージライブラリーをスクリーニングすることによって、マウスksrゲノムDNAクローンを単離した。マウスksr cDNA配列を図12Aに示す。標的化ベクターpF9を、マウスksrゲノムクローンの5’末端由来の2.5−kbのSpeI−SmaIフィルインフラグメントをpPGK−NTKベクター(Dr.Frank Sirotnakより寄贈)のNotIフィルイン部位に挿入することによって構築した。マウスksrゲノムクローンの3’下流領域由来の6.3−kbのSpeI−HindIIIフィルインフラグメントを、ClaIフィルイン部位でベクターに挿入した。得られたプラスミドをKpnIを用いて線形にし、129/Svにより誘導されたW9.5ES細胞(Chrysalis DNX Transgenic Sciences,Princeton,New Jersey)に電気穿孔した。200のG418/ガンシクロビル耐性のES細胞クローンを、pF9中に存在するもののすぐ外側(5’)に位置するゲノム配列から誘導される0.6kbのBglII−SpeIプローブを用いてサザンブロットによって分析した。このプローブを、wt ksr対立遺伝子について5.7−kbのDNAフラグメントにハイブリダイズし、破壊された対立遺伝子について3.1−kbのフラグメントにハイブリダイズする。Sloan−Kettering Institute’s Transgenic Core Facilityで、尾胞段階C57BL/6マウス胚に異種接合ES細胞を微量注入した。次いで、注入された尾胞を、擬似妊娠C57BL/6マウスの子宮に移植した。キメラ雄をC57BL/6雌と交配させた。アグーチF1世代において生殖系列の伝達をサザンブロットによってモニタリングした。マウス遺伝子型特定のために、ゲノムDNAをDNeasyキット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)を用いてマウスの尾から単離し、BglII及びXhoIのいずれかで消化し、ES細胞についてのようにサザンブロットによって試験するか、又は2セットのプライマーを用いたPCR増幅によって分析した。wt対立遺伝子のためのプライマーは、マウスksr CA1ドメインのcDNA配列から誘導された:上流プライマー、5’−TATCTCCATCGGCAGTCT−3’(配列番号:20)、下流プライマー、5’−TCGACGCTCACACTTCAA−3’(配列番号:21)。変異対立遺伝子のためのプライマーは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子の配列由来であった:上流プライマー、5’−CTGACCGCTTCCTCGTG−3’(配列番号22);下流プライマー、5’−ATAGAGCCCACCGCATCC−3’(配列番号23)。予想産物のサイズはwtについて493−bpであり、破壊された対立遺伝子について312−bpであった。標準的なPCR条件を使用した:初期変性94℃で5分、その後、アニーリング56℃、伸長72℃、及び変性94℃の30サイクル、すべて30秒。
【0147】
ノーザン及びウェスタンブロット分析。ポリARNAを、Qiagen Inc.(Valencia,CA)からのOligotexキットを用いて成体マウス組織から調製した。マウスksr cDNA(1.47−kb)のCA2〜CA4ドメインに対応する特異的な32P−標識されたプローブを用いてブロットをハイブリダイズした。胚組織について、本願発明者らは、マウス胚MTN Blot(BD Biosciences,San Diego,CA)を使用した。ksr+/+及びksr−/−組織から、又はRIPAバッファー中のMEFからタンパク質均質物を調製し、SDS−PAGE(100μgタンパク質/レーン)によってフラクション化した。マウスモノクローナル抗−KSR抗体(BD Biosciences,San Diego,CA)又はKSRのアミノ酸855〜871に対して作成されたヤギポリクローナル抗−KSR抗体(c−19,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)を用いて、KSR発現をウェスタンブロットによって検出した。MEFにおけるMEK及びMAPK活性化を、抗−ホスホ−MEK及び抗−ホスホ−MAPK特異的抗体:ポリクローナル抗−MEK、ポリクローナル抗−p44/42MAPK、モノクローナル抗−ホスホ−p44/42MAPK(Thr202/Thr204)及びポリクローナル抗−ホスホMEK1/2(Ser217/Ser221)(Cell Signaling,Beverly,CA)を用いたウェスタンブロットによって検出した。
【0148】
組織学。10日齢のksr+/+、ksr−/−、及びegfr−/−(Dr.Laura Hansenによって親切にも提供された)マウスから皮膚組織を集め、10%中性緩衝化ホルマリン中で15〜18時間固定し、70%エタノールで2時間洗浄し、パラフィンブロック中に包埋した。このブロックを4〜6μm厚に切断し、ガラススライド上に置き、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
【0149】
MEF研究。ksr+/+及びksr−/−の12〜13日目の胚から誘導されるMEFを記載されるように調製した15。0.25×10の初期継代MEF(PDL<6)を6ウェルプレートに接種し、10%FBSを追加したDMEM中で37℃で24時間増殖させた。血清を含まない培地中で48時間後、細胞を0.05〜1.0ng/mlのEGFで3分間刺激し、PBSで洗浄し、0.2mlのNP−40溶解バッファー(20mMのTris−HCl、137mMのNaCl、2mMのEDTA、10%のグリセロール、1%のNonidet P−40及びプロテアーゼ及びホスファターゼインヒビター)中に溶解した。Raf−1活性を以前に記載されたように行なった(27)。簡単に言うと、300ugの完全溶解物をポリクローナル抗−Raf−1抗体(Upstate Biotechnology,Lake Placid,NY)で免疫沈降させ、0.5MのNaClを含有するNP−40バッファーで洗浄し、キナーゼを殺したGST−MEK−1(K97M)と共にインキュベートした。活性化されたMEK−1を、ポリクローナル抗−ホスホ−MEK抗体(Cell Signaling,Beverly,CA)を用いてウェスタンブロットによって視覚化した。細胞増殖を分析するために、0.15×10のksr+/+又はksr−/−の低継代MEFを60mmプレートに接種し、血球計によって所定の時間点で計測した。データ(mean+/−SD)は、3つの独立実験から編集される。形質転換能力を評価するために、ksr+/+及びksr−/−マウス由来のMEFを、レトロウイルスプラスミドpWZL−Hygro−c−myc及びpBabe−Puro−H−RasV12(Scott Lowe,Cold Spring Harbor Laboratoriesによって親切にも提供された)順次形質導入し、記載されるように、0.3%の貴重な寒天中に再懸濁させ、60mmプレートに接種した(15)。少なくとも50細胞からなるコロニーを3週間後に計測した。
【0150】
Tg.AC/ksr−/−マウスの生成。同種接合の雌雄Tg.ACトランスジェニックマウス(16)を、Charles River Laboratories Inc.(Wilmington,MA)から、3〜4週齢で得た。標的集合を作成するために、ksr−/−マウスを最初に、ν−Ha−ras導入遺伝子を含有するヘミ接合性Tg.ACマウスになるまで育てた。ksrについて異種接合性でありTg.AC導入遺伝子についてヘミ接合性である、得られたF1世代の雌及び雄を、ksrバックグラウンドにおいて子孫を得るまで育てた。不応答性Tg.ACマウス(17)を研究グループから排除した。Tg.AC導入遺伝子の存在を以下のようなPCR増幅によって決定した:初期の変性74℃で1分10秒、その後、アニーリング55℃で1分、伸長72℃で3分、及び変性94℃で1分を30サイクル。順方向プライマーの配列は、5’−GGAACCTTACTTCTGTGGTGTGAC−3’(配列番号13)であり、逆方向プライマーの配列は5’−TAGCAGACACTCTATGCCTGTGTG−3’(配列番号14)であった。PCRの結果を記載されるようなサザンブロット分析によって確認した(17)。
【0151】
皮膚腫瘍実験。5μgのTPA(Sigma Chemical Company,St.Louis,Missouri)を用いてマウスを15週間の間、週に2回処置し、記載されるように乳頭腫成長について観察した(16)。Charles River LaboratoryからのFVB/Nバックグラウンドにおける元々のTg.ACマウスからの子孫をコントロールとして使用した。乳頭腫を20週間のあいだ週に1回計測した。TPA処置の後の皮膚におけるν−Ha−ras導入遺伝子発現を、記載されるような枝分かれPCR(nested PCR)によって評価した(24)。
【0152】
【化4−1】

【0153】
【化4−2】

【0154】
【化4−3】

【0155】
【化4−4】


【0156】
(実施例2)
(要約)
ヒトの癌における腫瘍形成ras突然変異の罹患率が与えられ、機能獲得(gf)Rasシグナル形成の失活は、非常に魅力的な治療的アプローチをあらわすが、臨床的には達成されていない。ここで、gf Rasシグナル形成は、Ras1のキナーゼサプレッサー(KSR1)(gf Rasについて選択的なすぐ下流のエフェクター)の遺伝的又は薬理学的失活を経て、間接的に標的化された。KSR1失活は、いくつかのヒト腫瘍細胞株及びヌードマウス異種移植片において、構成的に活性化された表皮増殖因子レセプター又は腫瘍形成K−Ras突然変異によって誘導されるgf Rasにより媒介される腫瘍形成を阻止した。KSRアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS−ODN)の連続的注入によるksr1の阻害は、ヌードマウスにおいて、腫瘍形成K−ras依存性ヒトPANC−1膵臓及びA549非小細胞肺癌(NSCLC)異種移植片の増殖を防止し、確立されたPANC−1腫瘍の縮退に影響を与え、明らかな毒性を有さずに、A549肺転移を阻害した。これらの研究は、gf Ras依存性ヒト悪性腫瘍の処置としての、特に現在は有効な治療が存在しない膵臓癌の処置としての、KSR AS−ODNが示唆される。
【0157】
(導入)
膵臓外分泌部の腺癌は、西欧諸国において癌に関連する死亡率の第4の主因を表す。処置の成功は限られたものであり、5年生存率は5%未満であり、外科的に切除不能な腫瘍を有する患者について平均生存度は4ヶ月である(1、2)。1個のヌクレオチド置換から生じるH−、K−、及びN−Rasの腫瘍形成活性化は、ヒトの癌の30%で観察され(5)、ヒト膵臓癌の90%を超えるものがコドン12K−ras変異を明らかにする(3〜5)。この点変異は、通常の立方骨の膵臓管上皮が平坦な増殖性の病変へ進行する場合、疾患の経過で初期に同定することができ、この病変は膵臓癌の病因論における原因であるとみなされる(6、7)。しかし、ヒト膵臓癌における癌遺伝子K−rasシグナル形成の制御は、主に未知のままである。種々の治療ストラテジーがRas−Raf−MAPKカスケードの重要化合物を失活するために開発されたが、gf Rasの特異的な阻害は臨床的には達成されなかった(8、9)。
【0158】
最近の研究は、Rasのキナーゼサプレッサー(KSR1)は、EGFR/Ras経路のRas/MAPKシグナル形成アームをポジティブに調整することを示した。KSR1はRasの下流で、Drosophila及びC.elegansにおけるRafの上流又はRafに対して平行のいずれかで作用する(10〜12)。配列相同性に基づいて同定された(12)KSR1の哺乳動物形態は、KSRシグナル形成が進化的に保存されていることを示唆する。しかし、哺乳動物KSRシグナル形成及び生物学的機能の正確な機構は、主に未知のままである。ksr−1欠損C.elegans及びマウスからの遺伝研究は、ksr1が通常の進化のために重要でないが(10、11、13)、MAPKカスケードを介するgf Rasシグナル形成について必須であってもよい(上述の実施例1参照)。C.elegansでは、KSRの機能損失(lf)は、哺乳動物Rasに腫瘍形成能力を与える同じコドン13変異によって生じる、gf Rasにより媒介される複数外陰部表現型に戻る(10、11)。
【0159】
Rasにより媒介されるヒト悪性腫瘍(特に膵臓癌)におけるKSR1の役割を解明するために、及びKSR1を治療標的として使用する実現可能性を探るために、哺乳動物ksr1を遺伝的及び薬理学的に失活するためにアンチセンスアプローチが使用された。本願発明者らは、構成的に活性化されたEGFR又は腫瘍形成K−Ras突然変異のいずれかを介した、腫瘍形成のgf Rasシグナル形成を阻止するKSR1失活に対する両方のアプローチを報告した。さらに、KSR AS−ODNの連続的注入を介するksr1遺伝子発現のアンチセンスにより媒介される阻害は、ヌードマウスにおけるヒトPANC−1膵臓及びA549非小細胞肺癌(NSCLC)異種移植片の腫瘍形成K−ras依存性増殖を妨害し、確立されたPANC−1腫瘍の退縮を誘発し、明らかな毒性なしにA549肺転移を阻害する。これらの研究は、KSR AS−ODNが、腫瘍形成K−ras依存性ヒト悪性腫瘍の処置のための腫瘍特異的な治療薬剤をあらわすことを示す。
【0160】
(結果)
(ksr1遺伝子発現の阻害が、A431細胞における形態学的な変化を誘発する。)
C.elegansにおいて、KSR1は、LET−23(EGFRホモログ)を介して開始される経路である、外陰部成長のgf Rasシグナル形成を調整する(10、11)。EGFRにより媒介される腫瘍形成における哺乳動物KSR1の役割を調査するために、本願発明者らは、100倍過剰の活性化されたEGFR/HER1(10レセプター/細胞)により腫瘍増殖が野生型Rasにより開始されるA431ヒトエピデルモイド癌腫瘍株を使用した(14)。本願発明者らは、Retro−Tet−Offシステムを用いた、野生型KSR1(KSR−S)、アンチセンスKSR1(KSR−AS)及び優性なネガティブKSR1(DN−KSR)の誘導可能な形態を安定に発現するA431細胞株を生成した。Flag−タグ化KSR−S及びDN−KSRは、同様のレベルで発現し(図5A)、KSR−ASの安定な発現は、内因性KSR発現を60%減少させた(図5B)。さらに、ドキシサイクリン(Dox)処置は、KSR−S発現の用量依存性阻害を誘発し(図5C)、Doxの抜き取り後、その添加は、KSR−S発現を効果的に回復した(図示せず)。同様の結果は、DN−KSR及びKSR−AS細胞において見いだされた(図示せず)。これらの観察結果は、KSR−Tet−OffシステムがDoxによってしっかり調整されていることを示す。
【0161】
安定にトランスフェクトされたA431細胞の形態学についてのKSR1レベルを操作する効果は最初に試験された。トランスフェクトされていない(図示せず)ベクターでトランスフェクトされた、KSR−SでトランスフェクトされたA431細胞が、あまり分化していない鱗片状の上皮細胞の同様の敷石状の上皮細胞形態学を示し(図5D)、KSR−ASによるksr1発現の阻止は、細胞形態学において顕著な変化をもたらした。KSR−AS細胞体質が徐々に拡大し、平らにされ、細胞質内プロセスが引っ込み、細胞はより分散された形態で増殖した(図5D)。さらに、これらの細胞は、多核化し(図5E)、このことは、得られた増殖欠陥を有する完全な細胞質分裂に対する失敗を示す(以下を参照)(15)。位相差顕微鏡法は、80%を超えるKSR−AS細胞が多核を含有し、多核化細胞がコントロール又はKSR−S細胞においてまれにみられる(<8%)ことをあらわす。同様の形態学的変化はDN−KSR細胞において観察され(図5D及び5E)、このことは、A431細胞におけるksr1遺伝子発現の阻害が、この腫瘍細胞株におけるEGFRにより媒介される生物学的事象について効果を示した。
【0162】
(ksr1遺伝子発現の阻害はA431腫瘍形成を減らす。)
A431細胞の悪性に対するKSR1阻害のコンセンサス、及びEGFに対するインビトロでの応答を評価するために、細胞増殖、浸潤及び形質転換アッセイを行なった。KSR−SがA431細胞によって過剰発現される場合、ベースライン及びEGFにより刺激される増殖(図6A)、浸潤(図6C)及び形質転換(図6D)が顕著に高まった。対照的に、KSR−AS細胞におけるksr発現の減少は、ベースライン増殖、浸潤及び形質転換の顕著な阻害を生じ(図6、各場合においてp<0.05)、EGF応答の阻止を生じた(図6)。DN−KSR効果を、KSR−ASを用いて同様に観察した(図6)。
【0163】
細胞増殖における観察された変更と一致して、KSRは、FACS分析によって決定されるように、細胞サイクル分布に顕著に影響を与えた(図6B)。指数的に増殖するKSR−S細胞においてS−期細胞の顕著な増加が存在するが、G2/M−期細胞の付随する増加に連結するS−期細胞における激しい減少は、ベクターでトランスフェクトされたコントロールと比較してKSR−AS細胞において観察された(各場合においてp<0/05)。これらの観察結果は、Ki−67染色によって確認された(図示せず)。刺激及び阻害をそれぞれ調整することにおいて、細胞増殖、浸潤及び形質転換のKSR−S及びKSR−ASの特異性は、KSR−S及びKSR−AS発現をDox処置により止めることによって確認された(図示せず)。これらの観察結果は、KSRの過剰発現がA431細胞の新生物性を高め、KSR−AS又はDN−KSRの失活はA431細胞の悪性を減らした。
【0164】
KSR1下方修正が同様の抗増殖活性をインビボで有するか否かを解明するために、10KSR−S、KSR−AS、DN−KSR又はベクターでトランスフェクトされたA431細胞を免疫不全(ヌード)マウスの右横腹に皮下注射した。採取された腫瘍が、KSR−S及びベクターでトランスフェクトされた細胞を受けるマウスにおいて100%であった場合、KSR−S腫瘍は初期の発症を有し(図7A、左側にシフトした増殖曲線、p<0.05)、25日目でサイズは200%さらに大きく、匹敵するサイズのベクターでトランスフェクトされた腫瘍よりもKi−67ポジティブ細胞で2.5倍を有する(図示せず)。25日目で除去される腫瘍標本の試験は、Flag−KSR−Sの連続した発現をあらわした(図示せず)。これらの効果を媒介するKSR−Sの特異性は、KSR−S腫瘍を有するマウスのグループにDoxを含有する水を与えて腫瘍性KSR−S発現を効率よくシャットアウトすることによって確認され(図示せず)、A431腫瘍に対するKSR−Sの増殖刺激効果をほとんど完全に防いだ(図7A、KSR−S対KSR−S+Dox、p<0.01)。対照的に、10のA431KSR−AS又はDS−KSR細胞を注射したマウスは、120日まで観察された場合、いずれの腫瘍も成長することができなかった(図7A及び図示せず)。接種菌のサイズが10×10まで増加し、50%Matrigel中で調製し、それぞれの場合において20匹のマウスのうち1匹のみが遅発性の発症が進行し(KSR−ASについて42日、DN−KSRについて36日)、腫瘍がゆっくりと成長した。さらに、鱗片状の分化は、ベクター−腫瘍及びKSR−S腫瘍の両方で明らかである(図7B(i)及び(ii)、黒い矢印)が、KSR−S腫瘍はケルトヒアリン(kertohyalin)顆粒及びさらに高い分裂係数を有していた(図示せず)。対照的に、鱗片状の分化は、KSR−AS及びDN−KSR腫瘍には存在しなかった(図7B(iii)及び(iv))。さらに、本願発明者らのインビトロでの観察と一致して、25%のKSR−AS及び18%のDS−KSR腫瘍細胞は、インビボで多核化した(図7B(iii)及び(iv)、黒い矢印、及び(v))。
【0165】
これらの観察は、KSR−ASによるA431腫瘍形成の阻害が増殖の減少及び多核化の誘導に関与することを示す。KSR−ASによるA431腫瘍形成の予防がKSR−ASによるksr1発現の阻害に起因することを確認するために、本願発明者らは、ksr1発現を薬理学的に失活するために、マウス及びヒトの間で保存されるKSR1の固有のCA1ドメイン(配列番号1)(アミノ酸42〜82(配列番号2))(12)に対するホスホロチオエートAS−ODNを設計した。試験されるAS−ODNの中で、KSR1のヌクレオチド214〜231(配列番号5)に対するAS−ODN(AS−ODN1(214〜231)と命名される)は、任意の他の哺乳動物遺伝子に対して相同な配列を有さず、最も強力で特異的なアンチセンス効果を示し、さらなる特性決定のために選択された。1μMのKSR AS−ODN(配列番号8)で24時間のA431細胞のインビトロ処置において、免疫蛍光法染色(図8A)、及びウェスタンブロッティング(図示せず)によって決定される場合、内因性KSR1発現の90%減少を生じ、一方、コントロールODNは明らかな効果を有さなかった(図8A及び図示せず)。さらに、他の細胞タンパク質(EGFR、H−Ras、c−Raf−1及びMAPKを含む)の発現は、KSR AS−ODN又はコントロールODNの処置によって改変されず(図示せず)、このことは、アンチセンス効果がKSRに特有であることを示す。全長KSR−ASの安定な発現によるKSRの失活と同様に、KSR AS−ODN処置は、用量依存性様式でA431細胞増殖(図8B)及び浸潤(図8C)を弱めた(p<0.05)。1mMで、KSR AS−ODNはA431細胞増殖及び浸潤をそれぞれ80%及び70%阻害した。対照的に、コントロール−ODN(図8C)は、任意の哺乳動物遺伝子に対する相同性を欠いているか(16)、又はセンス−ODN又はミスマッチAS−ODNに対する相同性を欠いており(図示せず)、効果がなかった。
【0166】
KSR AS−ODNの抗腫瘍活性をインビボで評価するために、AS−ODN又はコントロールODNを連続的な皮下注入を経て送達し、持続した腫瘍暴露を提供した。安定状態のODN血漿レベルに到達させる目的で、注入を腫瘍移植の2日前に開始した。10のA431細胞をヌードマウスに皮下注射し、400mmの種腫瘍を得た。次いで、約50mgの新しく調製した種腫瘍フラグメントをAS−ODN−又はコントロール−ODN−処置されたマウスに移植した。5mg/kg/日のKSR AS−ODNを用いた処置は、明らかな毒性なく(この治療アプローチの毒性がないことが知られていることと一致)、腫瘍KSR1レベルを85%まで効果的に減少させ、A431腫瘍増殖を80%まで弱めた(図8D、p<0.01)(17)。対照的に、ビヒクル単独(食塩水)又は同一用量のコントロール−ODN、又はセンス−ODNを用いた処置後に、抗腫瘍効果は観察されなかった(図8D及び図示せず)。150mmの確立されたA431腫瘍を有するマウスを用いた処置が開始される場合、同様の結果が得られた(図示せず)。全体的に、これらの結果は、KSR1が、過剰活性化された野生型Rasを介するインビボでのA431腫瘍形成のEGFRシグナル形成のために必須であることを示す。さらに、KSR AS−ODNの抗腫瘍活性は、高い特異性を有してksr1遺伝子発現の選択的な阻害を介して達成されると考えられた。これらの研究は、ヒト腫瘍形成のEGFR/Rasシグナル形成を阻止するのにKSR AS−ODNを用いることが可能であることを示唆する。
【0167】
(ksr1発現の阻害が、Ras/Raf−MAPKシグナル形成の特異的な弱化を介して腫瘍形成K−rasにより媒介されるヒト膵臓腫瘍形成を阻止する。)
ヒト腫瘍形成の腫瘍形成Rasシグナル形成の媒介におけるKSR1の重要性を解明し、KSR AS−ODNの治療的潜在性を探索するために、本願発明者らは、ヒト膵臓癌PANC−1異種移植片マウスモデルを使用した。この腫瘍は、K−rasの腫瘍形成コドン12−突然変異を明らかにする。A431細胞と同様に、KSR AS−ODNを用いたインビトロでのPANC−1細胞の処置は、用量依存様式で、細胞増殖(図9A)、浸潤(図9C)及び形質転換(図9D)を弱めた(図9及び図示せず)(それぞれの場合においてp<0.05)。さらに、5μMのAS−ODNを用いた処置により、内因性KSR1発現が90%減少した(図9E)。腫瘍形成K−ras機能の阻害におけるKSR AS−ODNの有効性を確認するために、コドン−12K−ras変異したヒト膵臓癌細胞株のパネルを5μMのKSR AS−ODNで処置し、細胞増殖のためにアッセイした。全ての細胞株においてAS−ODN処置後に細胞増殖が50〜80%阻害される(それぞれp<0.01)が、センス−ODNはなんら明らかな効果を有さなかった(図9B)。
【0168】
本願発明者らは、KSR1活性が、分裂促進用量のEGF刺激に応答したインビトロでのc−Raf−1及びそれに続くMAPK活性化のために必要であることを示した(18、19)。腫瘍形成K−rasシグナル形成においてKSR1及びRaf−1に分子的に指令を与えるために、PANC−1細胞を5μMのAS−ODNで処置し、優性ポジティブなBXB−Raf−1でトランスフェクトし、細胞浸潤及び形質転換についてアッセイした。Raf−1がKSRの下流である場合、gf Raf−1(BXB−Raf−1)は、PANC−1細胞浸潤及び形質転換について、AS−ODNによるKSR失活の阻害効果を逆転させるべきである。実際に、BXB−Raf−1は内因性KSR1発現に効果を有しなかった(図9E)が、PANC−1細胞浸潤(図9C)及び形質転換(図9D)に対するAS−ODNの阻害効果を完全に逆転させる。これらの観察は、本願発明者らのインビトロでの発見及び現在の文献(19〜22)と一致して、c−Raf−1がKSR1に対して上位であることを示す。機構を試験するさらなる研究を行ない、それにより、KSR1失活は腫瘍形成Rasにより媒介される細胞内シグナル形成に影響を与えた。これらの研究のために、AS−ODN処置された及びBXB−Raf−1トランスフェクトされたPANC−1細胞を、48時間血清を激減させ、1ng/mlのEGFで刺激した。MAPK及びPI−3キナーゼ活性を、ホスホ−MAPK及びホスホ−Akt特異的抗体を用いて、ウェスタンブロット分析によって分析した。AS−ODN処置は、EGFにより誘導されるMAPK活性をブロックし(図9F、上側パネル、レーン6対レーン2)、一方、Akt活性について明らかな効果は有さなかった(図9F、下側パネル、レーン6対レーン2)。センス−ODNはMAPK又はAkt活性のいずれかには影響を与えなかった(図9F)。さらに、MAPK活性に対するAS−ODNの阻害効果は、BXB−Raf−1の発現によって完全に逆転した(図9F、上側パネル、レーン4対レーン2)。全MAPK及びAkt含量は、主にODNを用いた処置又はBXB−Raf−1を用いたトランスフェクションによって影響を受けなかった(図9F及び図示せず)。これらの結果は、KSR AS−ODNによる膵臓癌細胞における腫瘍形成K−Rasシグナル形成の阻止が、Ras−Raf−MAPKカスケードの特異的阻害によって同様に達成されることを示唆する。ヒト膵臓癌を処置するためのKSR AS−ODNの治療潜在性を試験するために、10培養されたPANC−1細胞(図10A(i))から、又は新しく採取した種PANC−1腫瘍(上に記載されるように調製した)(図10A(ii))からのPANC−1異種移植片を、ヌードマウスに移植した。5及び10mg/kg/日の注入用量についての定常状態の血漿AS−ODNレベルを、それぞれ63及び123ng/mlでOliGreen及びHPLCアッセイによって決定し、これらは、同様の用量を用いる文献において報告されるものと一致した(23)。注射された細胞から生じるPANC−1腫瘍について、AS−ODN処置の開始前に腫瘍を100mmに到達させた。10mg/kg/日のAS−ODNを14日間注入することは、100%応答率で腫瘍体積を40%減少させた(図10A(i)、p<0.05対コントロール−ODN)。縮退したAS−ODN処置された細胞のグループを、処置をやめた後に腫瘍再増殖についてモニタリングした。5腫瘍のうち1つのみが、再増殖を示し、一方、残りは退縮したままであり、4週間まで安定であった(図示せず)。PANC−1異種移植片は、インビボで連続継代を経て伝播されるため、KSR AS−ODNの連続注入は腫瘍移植の2日前に開始され、用量依存性様式でPANC−1腫瘍の増殖を弱めた(図10A(ii))。任意の用量で明らかな毒性(体重減少、行動変更、臓器肥大症、炎症、出血)は観察されず、剖検で多くの組織の組織学的試験によって確認された(図示せず)。75mg/kg/日で、PANC−1腫瘍増殖は完全に阻止され、処置をやめた後、すべてのマウスは4週間まで腫瘍を有さないままである(図10A(ii)及び図示せず)。対照的に、ビヒクル単独(食塩水)での処置、コントロール−ODN、又はセンス−ODNでの処置は、試験されるすべての用量で抗腫瘍効果を示さなかった(図10A及び図示せず)。これらの観察は、KSR AS−ODNについて観察される抗腫瘍効果が作用のアンチセンス機構を介して生じるという結果を支持する。KSR AS−ODNの同様の抗新生物性効果は、膵臓嚢の組織下で同所移植されたPANC−1腫瘍において観察された(図示せず)。
【0169】
膵臓腫瘍形成のK−rasシグナル形成の媒介においてKSRの特異性を確認するために、本願発明者らは、食塩水−、センス−ODN及びAS−ODN注入されたPANC−1腫瘍において内因性ksr1遺伝子発現を試験した。KSR1発現は、試験される全てのAS−ODN処置された動物において90%まで阻害され、一方、食塩水又はセンス−ODN注入によって主に変化せず(図10B)、配列特異的な標的効果を確認する。さらなるコントロールとして、Ras活性化についてのインビボでのAS−ODN処置の効果を、方法において記載されるようなGST−RBD−Raf−1プルダウンアッセイを用いて、PANC−1腫瘍におけるGTP−Rasの量を決定することによって測定した。培養物中のA431及びPANC−1細胞のデータと一致して(図示せず)、AS−ODN処置はRas活性化について明らかな効果を有さず(図10C)、このことは、Ras活性化の上流のシグナル形成事象は損なわれておらず、KSR欠失によるPANC−1細胞における腫瘍形成K−rasシグナル形成の失活はRasの下流に生じることを示す。
【0170】
他の腫瘍形成K−ras依存性ヒト腫瘍を遅らせるKSR AS−ODNの有効性を確認するために、コドン12K−ras変異されたA549ヒト非小細胞肺癌モデル(NSCLC)を選択した。これらの研究のために、上のようなA431及びPANC−1種腫瘍と同様に調製した50mgのA549種腫瘍フラグメントを皮下でヌードマウスに移植した。KSR AS−ODNを用いた処置は、A549腫瘍が150mmに到達する場合に開始された。10mg/kg/日で、KSR AS−ODNは、確立されたA549腫瘍の増殖を完全に阻害し、一方、食塩水、コントロール−ODN又はセンス−ODNは明らかな効果を有さなかった(図10D(i))。動物を実験の最後に屠殺し、肺をセンス−ODN−又はAS−ODN−処置されたマウスから切除し、Indianインクで染色して、全身散布を介して誘導される表面肺転移を視覚化した。コントロール−ODN−処置された肺は平均で8〜11の転移巣を有していた。AS−ODN処置は、A549肺転移の用量依存性阻害を引き出した(図10D(ii)、p<0.05)。これらの観察は、KSR1がK−ras依存性原発性腫瘍増殖に必須であるが、これらの腫瘍の転移成長において必須の役割を示し得ることを示唆する。さらに、KSR AS−ODNは、K−ras−依存性ヒト悪性腫瘍の管理において有効な薬剤である。
【0171】
(考察)
本研究は、KSR1が組織レベルでgf Rasのシグナル形成に必須であり、ksr1発現の阻害がgf Ras依存性腫瘍の選択的退縮を導くという証拠を提供する。以前の臨床研究は、今日まで主にうまくいっていないRas/Raf−1/MAPKシグナル形成カスケードの要素の阻害によって、gf Ras依存性腫瘍を処置するために設計された(9)。ほとんどの薬剤についての毒性が受容可能であるが、処置の成功は、近年のデータが別の生物学的機能を有し得ることを示唆し(24〜26)、gf 対 生理学的Rasシグナル形成に対する選択性が欠如している(8、9)、異なるRasイソ型の阻害における特異性の欠如によって限定されている。Raf−1/MEK1/MAPKカスケードの要素を阻害するために設計された実験薬物について同様の問題が存在する(9)。KSR AS−ODNについての本研究は、Ras依存性ヒト腫瘍の処置における、gf Rasシグナル形成を特異的に弱めるためのアプローチを提供する。
【0172】
AS−ODN技術を用いたDNA配列の標的化は、癌の処置に対する魅力的な治療アプローチをあらわし(27)、このアプローチの有する主な問題は、目的の遺伝子についてのAS−ODN効果の特異性の設計であった。本願発明者らは、KSR AS−ODNを用いて観察された腫瘍形成の阻害が、ksr1の阻害を介したgf K−rasシグナル形成の選択的失活に起因するという考えを支持する多くの異なる証拠を提供する。本願発明者らのデータは、KSR AS Tet−Off構築物によるksr1発現の遺伝的阻害が、KSR AS−ODNとしてインビトロ及びインビボでかなりのアンチセンスにより媒介される効果を得たことを示す。さらに、種々のODN(配列依存性及び配列非依存性非アンチセンス人工産物を制御するために設計される)は、ksr1遺伝子発現になんら効果を有さないか、又は細胞培養物中又はインビボで腫瘍増殖についてなんら効果を有さなかった。ODN配列特異性に加えて、ksr1発現に対するKSR AS−ODNの効果は、EGFR−Ras−MAPK経路の他の遺伝子の発現が影響を受けないような、目的の標的について特異的であった。最後に、A431細胞によるKSR−Sの条件的な過剰発現は、KSR−ASによるKSR失活に反する表現型を送達し、KSR−S及びKSR−ASの効果は両方とも、Dox処置によって発現を停止させることによってTet−Offシステムにおいて可逆性であった。これらの結果は、全体的に、KSR AS−ODNの抗腫瘍効果がアンチセンス機構によって達成されることを証明する。
【0173】
KSR AS−ODNを用いて処置された動物における正常な組織の毒性の欠如は、ksr1がC.elegans及びマウスにおける通常の成長のために重要ではないという最近の報告と一致している(10、11、13及び上述の実施例1参照)。近年の観察は、第2のksr対立遺伝子であるC.elegans中(28)及びマウス中(29)のksr2をカバーしておらず、KSR AS−ODNによるksr1の欠如後の組織毒性の欠如は、正常な細胞機能についてksr2による修正に起因する場合がある。あるいは、毒性の欠如は、KSRのトポロジー分布を反映している場合がある。近年の証拠は、Ras/Raf−1/MAPK経路の要素が、膜微小ドメインの1つより多い種類に区画わけされることを示唆し(26、30)、この区画わけは、活性の調整と関連する。この観点では、Ras及びc−Raf−1は、血漿膜中、及びバルク膜フラクションと共にスフィンゴ脂質豊富な微小ドメイン(ラフト(raft)としても知られる)と関連する。少なくともc−Raf−1についてのラフト関連は、スフィンゴ脂質セラミドに対する結合を含むと考えられる(31)。さらに、活性状態に依存して、Ras形態は、コンパートメント(32)と、バルク膜を優先的に標的化するgf Rasとの間を通行してもよい。
【0174】
いくつかの議論された基がセラミド活性化されたKSR(20、33)がgf Ras活性化プロセスにおいて特定の役割をはたすかどうか、及びその失活が通常の細胞機能にわずかに影響を及ぼすかどうか、将来の観察の主題である。最後に、AS−ODNのホスホロチオエート種類(最も一般的にはAS−ODNが使用される)が一般的に十分に許容可能であるため、本願発明者らのKSR ODNの毒性の明らかな欠如は驚くべきことではない。臨床前のモデル及びヒト臨床試験における連続的な注入を介する投与は、配列依存性の毒性(相補系の活性化、活性化された部分トロンボプラスチン時間の延長、及び血液学的パラメーターの変更)が、薬理学的アンチセンス効果が達成される用量では通常成し遂げられないことを確立した。
【0175】
これらの試験はさらに、KSR AS−ODNの治療的利点が腫瘍形成K−ras依存ヒトがんに限られず、腫瘍種類のさらに広いスペクトルを含み、KSR AS−ODNを用いた本願発明者らの試験は腫瘍株A431に対して有効であることがわかり、これらは過剰活性化された野生型Rasによって開始される。インビボで確立された腫瘍に対するKSR AS−ODNの治療作用は、腫瘍細胞増殖及び腫瘍細胞死の誘発の両方の阻害を含むと考えられる。KSR1失活の抗増殖効果は、S段階の細胞における減少及びインビトロ及びインビボでの多核表現型の誘導によって明らかになった。さらに、AS−ODN処置された−A431及びPANC−1腫瘍は、大きな壊死領域(切断面の表面の60〜80%)を含有していた。しかし、後者の効果の機構は、未知のままである。以前の試験は、重要な微小血管内皮のアポトーシスがまた、ras失活の結果として抗腫瘍効果に貢献することを示した(37)。しかし、本願発明者らのモデルでは、散発的な血管内皮細胞アポトーシスだけは、KSR AS−ODNで処置されるPANC−1腫瘍のCD34及びTUNEL染色によって検出された(図示せず)。血管形成におけるKSRの役割は、腫瘍血管形成のさらに関連するモデルにおけるさらなる観察結果を待たなければならない。
【0176】
本試験から出される別の重要な発見は、KSRが腫瘍形成Rasにより媒介される腫瘍転移の進行のために必要とされると考えられることである。KSR AS−ODNで処置されたA549肺転移の阻害は、本願発明者の予備データと一致し、MMP−2及び9活性は、A431−KSR−S細胞中で増加し、A431−KSR−AS細胞中で阻害される(データは図示せず)。観察は、腫瘍進行におけるKSRの役割を説明するために進行中である。
【0177】
KSR AS−ODNの有効な使用はさらに、gf Rasシグナル形成が関与する重要な下流事象の調整の改良された理解を提供し、現時点では、部分的にしか知られていない。Raf−MAPK及びPI−3キナーゼモジュールは、腫瘍形成のgf Rasシグナル形成を媒介する2つの確立された下流経路である(38〜41)。ここで、本願発明者らは、KSR1が、Raf−1−MAPKシグナル形成アームの特異的な調整を介して同様にgf Rasの重要なメディエーターとして機能するという証拠を提供した。この概念の支持は、MMTV−MT依存性の乳腺腫瘍起源(野生型Rasを経て主にsrc及びPI−3キナーゼを介してシグナル形成される)がksr−/−マウスにおいて影響を受けないことを示す最近の研究から誘導される(13)。対照的に、腫瘍形成v−Ha−Rasにより媒介される表皮性の皮膚腫瘍の腫瘍形成(c−Raf−1/MAPKカスケードを介してシグナル形成される)は、ksr1−/−マウスにおいて阻止される(Lozano及びKolesnick、未公開)。さらに、KSRアンチセンスを用いた本研究は、哺乳動物KSR1に対して上位としてのc−Raf−1の分子の秩序化を支持し、これは、Drosophila及びC.elegansからの遺伝的結果と一致する(10、11)。本願発明者らは、これらの観察結果がRas/Raf−1/MAPKモジュールの上流要素に関する破壊のいくつかを解決するのに役立ち得ると考える。
【0178】
要約すると、現在の研究は、gf Rasシグナル形成に依存するヒト悪性腫瘍の処置のための新規な分子標的としてKSR1を支持する元々の観察結果を提供する。
【0179】
(方法)
Retro−Tet−Off A431細胞株の細胞培養物及び生成。ヒト表皮癌細胞株A431、肺癌細胞株A549及び膵臓細胞株PANC−1、Capan−2、PL−45、HPAF−II、AsPc−1及びMiapaPa−2をATCC(Manassas、VA)から得た。全長野生型マウスksr1 cDNA(ヒトksr1と90%以上同一である(12))を、pRetro−Tet−Off(Clontech,Palo Alto,CA)においてドキシサイクリン誘発性プロモーターの制御下でセンス(KSR−S)及びアンチセンス(KSR−AS)位置の両方においてpRetor−TREにクローン化した。DN−KSR(D683A/D700A/R589M)を同様にサブクローン化させた。A431細胞を、KSR−S、KSR−AS、DN−KSR又は空のベクターでトランスフェクトされたPT67パッケージング細胞から集められた培地で感染させ、二重の選択下(0.1mg/mlのネオマイシン及び0.1mg/mlのハイグロマイシン)で維持した。
【0180】
ウェスタンブロット、免疫蛍光法及び免疫組織化学。細胞溶解物全体及び腫瘍溶解物を記載されるようにNP−40バッファー中で調製した(18、42)。免疫沈降(IP)又はウェスタンブロッティング(WB)を製造業者のプロトコルに従って、以下の抗体を用いて行なった:Sigma(St Louis,MO)からのモノクローナル抗−Flag M2抗体、Cell Signaling(Beverly,CA)からのポリクローナル抗−p44/42MAPK、モノクローナル抗−ホスホ−p44/42MAPK(Thr202/Tyr204)、ポリクローナル抗−ホスホ−MEK1/2(Ser217/Ser221)及びポリクローナル抗−ホスホ−Akt(Ser473)抗体、及びUpstate Biotechnology Inc.(Lake Placid,NY)からのポリクローナル抗−c−Raf−1抗体。内因性KSR1発現を、全1mgの溶解物からの免疫沈降及びWB分析によって、又はモノクローナル抗−KSR抗体(BD Biosciences,San Diego,CA)(1:100希釈)及びHRP−又はTexas−Redに接合したヤギ抗−マウス二次抗体をそれぞれ用いた免疫蛍光顕微鏡検査法によって決定した(Molecular Probes,Eugene,Oregon)。組織学及び免疫組織化学を、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した腫瘍又は組織標本で行なった。5mm切断片を脱パラフィン化し、段階的なアルコール中で再水和させ、H&E染色又はアビジン−ビオチンイムノペルオキシダーゼ(Vector Laboratories,Burlingame,CA)法を用いて免疫染色した(43)。以下の一次抗体を使用した:PharMingen(San Diego,CA)からのラット抗−マウスCD34(1:50)抗体及びポリクローナル抗−ヒトKi67抗体(1:100)(Vector Laboratories)。記載されるように、ジアミノベンジジンを色原体として使用し、核対比染色としてヘマトキシリンを使用した(43)。記載されるように、末端デオキシトランスフェラーゼにより媒介されるデオキシウリジントリホスフェートニックエンド標識(TUNEL)(Roch,Mannheim,Germany)によってアポトーシスを評価した(43)。
【0181】
増殖、マトリゲル浸潤及び軟寒天形質転換アッセイ。2×10のA431細胞又は1〜3×10ヒト膵臓細胞を6ウェルプレートに接種した。細胞/ウェルの全数を所定の時間点で計測し、細胞増殖曲線を作る。EGF処置のために、1.0ng/mlのEGFを培養物に添加し、1日おきに交換した。記載されるように、浸潤アッセイを行なった(42)。フィルターの下側の細胞を10個のランダムに選択したフィールドで計測し(40倍拡大)、フィールドごとに浸潤した細胞の平均数として報告した。EGF処置のために、実験の2時間前に細胞を無血清培地と交換した。軟質寒天アッセイを、0.5%寒天及び5%FBSを含有する1.5mlの培地でコーティングされた35mm培養プレート中で設定した。5×10細胞を0.1%寒天及び5%FBSを含有する1.5mlの培地に懸濁させ、寒天であらかじめコーティングされたプレートに添加した。解剖顕微鏡を使用して、50細胞より多い細胞からなるコロニーをインキュベーションの14〜21日後に計測した。EGF処置のために、FBSを培地から排除した。
【0182】
細胞サイクル分析。細胞サイクル分布をFACS分析によって決定した。これらの試験のために、指数的に増殖する単一層から集められた細胞ペレットを、0.5%FBSを含有するPBSで2回洗浄し、100%エタノールで15分間固定した。固定された細胞をRNaseA(0.1mg/ml)を用いて37℃で30分処置し、プロピジウムヨージド(0.05mg/ml)で染色した。異なる段階の細胞サイクルにおける細胞の比率を、実験的蛍光ヒストグラムから計算した。
【0183】
KSR AS−ODNを用いたインビトロ処置。KSR1 AS−ODN(5’−CTTTGCCTCTAGGGTCCG−3’)(配列番号8)(AS−ODN1(214〜231))及びKSRセンス−ODN(5’−CGGACCCTAGAGGCAAAG−3’)(配列番号15)を、KSR1の固有のCAドメイン(アミノ酸(AA)42〜82)のヌクレオチド214〜231(配列番号1)(Genelink Inc.(Hawthorne,NY))に対して、ホスホロチオエート誘導体として作成した。コントロールODN(5’−CACGTCACGCGCGCACTATT−3’)(配列番号16)を同様に調製した。インビトロ試験のために、ODNを滅菌水に溶解し、製造業者の指示に従って、細胞が30〜40%密集度になった場合に、Oligofectamine(Invitrogen,Carlsbad,CA)によって細胞に送達した。細胞増殖を所定の時間点でアッセイした。処置48時間後、浸潤及び形質転換アッセイを上述のように設定した。いくつかの試験のために、コントロール−及びAS−ODN−処置されたPANC−1細胞を優性ポジティブのRSV−Raf−BXB(Dr.Joseph Bruder,NCIによって親切にも提供された)でトランスフェクトした。
【0184】
KSR AS−ODNを用いた腫瘍誘発及びインビボ処置。腫瘍誘発のために、10の培養された腫瘍細胞を0.1mlのPBS中で懸濁させるか、又は順次継代した種腫瘍から新しく収穫した50mgの腫瘍フラグメントを、6〜8週齢のオス胸腺欠損NCRnu(Germantown、NY)の右横腹に皮下移植した。腫瘍増殖を1日おきにカリパスで測定し、腫瘍体積を記載されるように計算した(42)。A431腫瘍形成に対するKSR−Sの特異性を決定するために、KSR−S腫瘍を有するマウスのグループにDox含有水(100mg/ml)を与えた。KSR−AS ODNの抗腫瘍活性をインビボで決定するために、Alzet浸透圧ミニポンプを介したセンス−、コントロール−、又はAS−ODNを用いた注入を、腫瘍移植の2日前か、又は腫瘍が100〜150mmに到達した場合かのいずれかに開始した。5.0〜75mg/kg体重/日の用量範囲のODNを、同様のインビボでのAS試験に基づいて選択した(34、44)。
【0185】
Ras活性化アッセイ。コントロールODN又はAS−ODN処置されたPANC−1細胞又は腫瘍におけるRas活性化状態(GTP−Ras)を、記載されるように製造業者の指示に従って、Ras活性化アッセイキット(Upstate Biotechnology Inc.,Lake Placid,NY)を用いて測定した(45)。
【0186】
統計分析。全てのデータは、スチューデントのt検定(両側)によってp<0.05とみなし有意性を有して評価された。
【0187】
【化5−1】

【0188】
【化5−2】

【0189】
【化5−3】

【0190】
【化5−4】


【0191】
(実施例3)
さらなるアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成し、表1に示されるようなA431細胞における増殖アッセイにおいて試験した。アンチセンスヌクレオチド及びそれらの配列を基準に基づいて(ハイブリダイゼーション条件に基づいて)選択し、安定なホモダイマーを形成せず、ヘアピンループを形成せず、自己相補性配列を形成せず、及び安定な二本鎖を形成しなかった(<−6kcal/mol)。オリゴ4プログラム(Molecular Biology Insights,Inc.,Cascade,CO)を用いて配列を選択し、その後、Oligo Techプログラム(Oligo Therapeutics Inc.,Wilsonville,OR)を用いて検証した。KSR CA1ドメインのヌクレオチド151〜168に対してアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS−ODN(151〜168))(ASオリゴ配列5’−CAGCCCGCGCAGACTGCC−3’)(配列番号6)及びヌクレオチド181〜198(AS−ODN2(181〜198))(ASオリゴ配列5’−GAGGTCGTTAGACACTGA−3’)(配列番号7)を生成した(両方ともP−Sオリゴヌクレオチドであった)。これらのオリゴヌクレオチドを、実施例2に記載されるように、ヌクレオチド214〜231(AS−ODN1(214〜231))(ASオリゴ配列 配列番号8)に対するAS−ODNオリゴヌクレオチドに沿って試験した。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、それぞれKSRのCA1ドメインのアミノ酸配列GSLRGL(配列番号17)、AVSNDL(配列番号18)及びRTLEAK(配列番号19)をコードする核酸の逆相補体をあらわす。A431細胞を所定量のKSR AS−ODNでトランスフェクトし、細胞増殖を処置72時間後に評価した。A431細胞増殖に対するAS−ODNの効果をビヒクル処置された(オリゴフェクタミン単独)の阻害割合としてあらわした。これは、4つの類似の試験のうちの1つの代表例である。
【0192】
【表1】

(実施例4)
gf Rasシグナル形成の媒介におけるKSR1の特異性を確立するために、十分に特性決定されたヒト慢性骨髄性白血病細胞系K562を使用した。K562は、Bcr−ablにより開始され、それ故に、gf Rasシグナル形成から独立している。AS―ODN処置によるPANC−1細胞増殖の特異的及び用量依存性阻害は、図13に示される。PANC−1及びK562細胞を所定用量のコントロール−またはAS−ODNを用いて処置し、細胞増殖アッセイを行なった(図13A)。AS−ODN−1及びAS−ODN−2は、それぞれksr1 cDNAのヌクレオチド214〜231及び181〜198に対応する。PANC−1細胞増殖は予想されるように阻害されるが、K562細胞増殖はODN処置によって影響を受けなかった。5μMのKSR AS−ODN−1を用いたK562細胞の処置は、ウェスタンブロット分析によって決定される場合、PANC−1細胞において観察されたものに対して内因性KSR1遺伝子発現のかなりの減少(80%を超える)を誘発した(図13B)。それにもかかわらず、増殖の阻害はPANC−1細胞においてのみ観察された(図13A)。ゲル類の等しい負荷が全P44/42MAPKを用いて確認された。ウェスタンブロットのためのポジティブコントロールとして役立つ精製されたFlag−KSRは、Flag−タグに起因する内因性KSRよりもわずかに遅く移動する(図13B)。これらの結果は、gf Rasシグナル形成がKSR1に対して特異的にカップリングするという証拠を与える。
【0193】
(実施例5)
ヒトKSR1の全長mRNA配列が決定された。この配列を図14に示す(配列番号24)。アンチセンスオリゴヌクレオチド(上述のものを含む)をヒトKSR核酸のCA1ドメインに対して設計した。ヒトKSRアンチセンスオリゴヌクレオチドを、図15において注釈を付けられたヒトKSR配列上に示した。ヒト配列のヌクレオチド187〜204に対する、オリゴヌクレオチドAS−ODN1(187〜204)(5’CTTTGCCTCTAGGGTCCG3’)(配列番号28)は、上述のAS−ODN1(214〜231)(配列番号8)に対する配列に対応する。このように、AS−ODN1は、それぞれヒト及びマウスcDNAの位置187〜204及び214〜231でのヌクレオチドに対して相補的である。ヒト配列のヌクレオチド124〜141に対するオリゴヌクレオチドAS−ODN3(124〜141)(5’CAGCCCGCGCAGACTGCC3’)(配列番号29)は、上述のAS−ODN1(151〜168)(配列番号6)に対する配列に対応する。このように、AS−ODN3は、それぞれヒト及びマウスcDNA配列の位置124〜141及び151〜168でのヌクレオチドに対して相補的である。オリゴヌクレオチドAS−ODN2(154〜171)は、ヒト配列のヌクレオチド154〜171に対して設計される。AS−ODN2は、それぞれヒト及びマウスcDNAの位置154〜171及び181〜198でのヌクレオチドに対して相補的である。ヒト配列は、対応する位置でのマウス配列からのアンチセンス配列のほぼ5’bpにおいて1個の塩基対が異なり、ヒトAS−ODN2(154〜171)配列が5’GAGGTCGTTAGACACTGC3’(配列番号30)であり、マウス配列が5’GAGGTCGTTAGACACTGA3’(配列番号7)である(異なるヌクレオチドは太字で示される)。図16は、所定のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有する注釈を付けられたマウスKSR cDNA配列を示す。本願発明者らは、元々のAS−ODN2(181〜198)と修正されたヒトAS−ODN2(154〜171)とを比較し、それらがPANC−1細胞の増殖(腫瘍形成K−ras依存性ヒト膵臓細胞であり、ほぼ同一である)を阻害することを発見した(図18)。
【0194】
(実施例6)
本願発明者らは、ヒトKSR1の他のヌクレオチドに対するさらに潜在的なAS−ODNを設計した。これらのODN(AS−ODN4〜AS−ODN12)が図17に記載され、ヒトKSR1ヌクレオチド配列上に注釈が付けられた。表2は、これらの新しく設計されたODNと対応するヒトヌクレオチド標的配列のリストである。
【0195】
【表2】


【0196】
(実施例7)
(放射線増感剤としてのKSRアンチセンスオリゴヌクレオチド)
(背景)
イオン化放射線(IR)はヒトの癌のための主要な処置であるが、放射線治療に対して応答しないことが、この種の有効性を制限する。蓄積された証拠は、細胞増殖及び分化の経路の類似したシグナル形質導入経路がIR耐性を導くという主張を支持する。さらに特定的には、gf Rasを介するEGFR/Ras経路の構成的活性化又はEGFRの過剰活性化は、ヒト腫瘍細胞において放射線耐性を導く(1〜27)。EGFR及びRasのこの作用の基礎をなす正確な機構は十分に理解されていない。それ故に、IRに対する応答におけるEGFR及びRasエフェクターシグナル形成の下流要素の同定は、IR処置のための機構に基づく治療ストラテジーの開発にとって重要である。EGFR及びRasエフェクターシグナル形成経路の中で、Ras−Raf−MAPK(10、28〜32)及びRas−PI3−キナーゼ(3、33、34)経路は、IRに対する放射能感受性のEGFR/Ras調整を媒介することに関与している。これらの2つのシグナル形成経路の相対的な寄与は、腫瘍の種類に特異的である場合がある。
【0197】
EGFR/Rasにより媒介される放射線耐性の基礎をなす潜在的な機構としては、以下のものが挙げられる:DNA損傷修復の能力の増加、生存する腫瘍細胞の再増殖促進、IRによって誘発されたアポトーシスに対する耐性、及びIRにより誘発される細胞サイクルチェックポイントの遅れがないこと。IRにより誘発されるEGFR/Ras活性化は、MAPKシグナル形成カスケードを介する用量依存性増殖応答の延長を生じ、少なくとも部分的に、増殖の促進の機構、放射能治療の失敗の原因に貢献する(49、50)。腫瘍細胞増殖のgf EGFR/Ras−Raf−1−MAPKシグナル形成の絶対的なメディエーターとして(51)、KSRの失活は、生存する腫瘍細胞の再増殖の促進を阻止することによって、IR治療の効力を増加させる場合がある。
【0198】
EGFR及びRasを介する放射線耐性を潜在的に媒介することに加えて、KSRはさらに、脂質の第2のメッセンジャーセラミドのためのシグナルを送ってもよい。生じたデータは、IRがいくつかの細胞種の血漿膜に直接作用し、酸スフィンゴミエリナーゼを活性化し、スフィンゴミエリンの酵素的加水分解によってセラミドを生成することを示唆する。次いで、セラミドが、細胞種及び細胞の内容物に特異的なアポトーシス応答を開始又は阻害する第2のメッセンジャーとして作用する(13、15、35〜38)。EGFRがKSR活性化を利用するチロシンキナーゼに基づく機構に加えて、セラミドはさらにKSRを直接的に活性化してもよい。この観点では、KSRは、Kolesnick及び共同開発者によってセラミド活性化タンパク質キナーゼ(CAPK)として同定された(39)。セラミドが、c−Junキナーゼ及び遺伝子産物(例えば、Fasリガンド又は死応答を媒介するTNFα)の転写調整を介していくつかの細胞種においてアポトーシスをシグナル形成することができるが(13、14、45)、アポトーシス前Bcl−2ファミリーメンバーBADを含有する他の細胞において、セラミドは、KSR、c−Raf−1、及びMEK1の連続的なRas依存性活性化を含む機構を介してアポトーシスを直接誘発する(44、46〜48)。この場合には、1個の標的(例えばBAD(44))の利用可能性は、通常は増殖性及び/又は抗アポトーシス性であるMAPKカスケードをアポトーシス前シグナル経路に変換する。それ故に、KSRは、細胞種に特異的な様式でセラミド依存性及び非依存性アポトーシス応答の調整によって、放射線感受性を調整する場合がある。KSRがアポトーシスのいくつかの形態が生じるのを防止し得るという概念を支持して、Polk及び共同開発者らは、YAMC直腸細胞におけるKSRの失活が、TNFレセプターから出される抗アポトーシスシグナルを拮抗し、TNFをこれらの細胞におけるアポトーシスのインデューサーに変換することを示した(41、42)。
【0199】
本実施例では、本願発明者らは、このストラテジーを放射線感受性に導くことができる法則における証拠としてEGFR/Ras経路の失活に研究を限定する。この意見を調べるために、本願発明者らは、(上に記載されるような)KSR機能を薬理学的に阻害するために、KSRに特異的なAS−ODNを合成し、A431細胞を使用し、これは、活性化されたEGFRの100倍の過剰発現によって野生型Rasを介して開始される。インビトロで試験される場合、AS−ODNは、核内で特異的に採取され、内因性KSR遺伝子発現を減少させ、A431増殖、浸潤、形質転換及び腫瘍形成を阻害した(実施例2参照)。さらに、本願発明者らは、遺伝的(KSR−ASの発現)又は薬理学的(AS−ODN)なアプローチを介するKSRの失活により、A431細胞がIRにより誘発されるインビトロでのアポトーシスに対して感受性になることを示す。
【0200】
(結果)
AS−KSR及びDN Ki−KSRがA431細胞をIRにより誘発されるアポトーシスに対して感受性にする:
KSRの失活がIRにより誘発される細胞死に対する感受性を高めるという仮説を試験するために、異なるKSR構築物で安定にトランスフェクトされたA431細胞を、IRにより誘発されるアポトーシスに対する感受性について分析した。活性化されたEGFRの過剰発現に起因して、A431細胞は、放射線耐性であることが知られている(43)。血清不足のA431細胞を20Gyの単一線量で照射し、IR24時間後にアネキシンV−FITC(Sigma)を用いたフローサイトメトリーによってアポトーシスを決定した。図19は、野生型Flag−KSR(KSR−S)を発現するA431細胞は、最小限のIRにより誘導されるアポトーシスを示したことを示す。Flag−AS−KSR(KSR−S)又は優性ネガティブFlag−Ki−KSR(Ki−KSR)の放射線感受性化されたA431細胞の発現は、IRにより誘発されるアポトーシスをかなり増加させた(n=3)。ほぼ40%のA431−KSR−AS及びKi−KSR細胞は、IRの24時間後にアポトーシスを受けた。これらの結果は、予備的ではあるが、KSRがIRに対する細胞感受性において鍵となる役割を果たし得ることを強力に示唆する。アポトーシスがビスベンズイミド染色で計測される場合に、匹敵する結果が得られた。
【0201】
KSR AS−ODNはIRにより誘発されたアポトーシスに対してA431細胞を感受性にする:上述のように、遺伝的アプローチ(AS−KSR及びDN−Ki−KSR)によるKSR機能の阻止は、IRにより誘発されたアポトーシスに対してA431細胞を感受性にした。放射線感受性に対するAS−ODNによるKSR1遺伝子発現の薬理学的阻害の有効性を試験するために、IR前に、A431細胞を200nMのAS−214231で36時間処置した。アネキシンV−FITCを用いたフローサイトメトリーによってアポトーシスを定量した。図20に示されるように、AS−214231はA431細胞を感受性にし、72時間後にIRにより誘発されるアポトーシスにおいて2倍増加させた。この効果の大きさは、AS−KSRの過剰発現で観察されたものと匹敵する。対照的に、コントロールODNは、IRにより誘発されたアポトーシスに対して放射線感受性に対してなんら効果を有さなかった。使用されるオリゴフェクタミンの濃度で、基礎レベルのアポトーシスの顕著な増加は検出されなかったことを注記すべきである(図示せず)。これらの結果は、AS−214231の放射線感受性にする効果は、KSR配列特異性であり、放射線感受性剤としてKSR AS−ODNを使用することが可能であることを示す。
【0202】
KSR−ASによるKSR1の失活は、IRにより誘発されたクローン原性の生存に対してA431細胞を阻害する:A431細胞でKSR1がイオン化放射線の致死作用に関与しているか否かを評価するために、KSR−S−及びKSR−AS−トランスフェクトされたA431細胞のクローン原性の生存を、放射線暴露の線量を増加させた後に決定した。A431−pTRE、KSR−S及びKSR−AS細胞をそれぞれ3.4×10、1.4×10、又は7.0×10細胞/cmの接種密度で60mm皿に4日間接種し、85%密集度に到達させた。照射の前に、培地を、0.2%ヒトアルブミンを含有する無血清細胞増殖培地と20〜24時間交換した。次いで、60Co源を用いて、培養物を1〜15Gyの放射線に2.24Gy/分の線量速度でさらした。次いで、培地を再び、10%のTetで認可されたFBSを含有する新しい増殖培地とさらに24時間交換した。その後、細胞をトリプシン化によって収穫し、クローン原性生存アッセイを標準的な手順を用いて行なった。細胞を異なる希釈度で接種し、各放射線線量について60mm培養皿あたり25〜80コロニーを作成し、5%CO中37℃で12日間インキュベートし、50を超える細胞を含有するコロニーをクリスタルバイオレットで染色して、生存フラクションを決定した。図21は、KSR−Sの過剰発現がA431−pTREコントロールと比較した場合に、少し放射線耐性が高められ、これは線量−生存曲線の肩幅(D)の増加と関係があり、傾斜(D)には顕著な変化がなかったことを示す。対照的に、KSR−ASによるKSR1の失活は、A431細胞を顕著に放射線感受性にし、このことは、線量−生存曲線の肩の完全な消失及びDの減少によって明らかにされた。KSR失活の際の10%生存率(D10)での線量改変因子(MDF)は2.44であった。これらの結果は、KSR1が放射線により誘発される細胞死を阻止するのに必須であり、KSR1が放射線感受性にするための新規な分子標的をあらわすことを示す。
【0203】
【化6−1】

【0204】
【化6−2】

【0205】
【化6−3】

【0206】
【化6−4】

【0207】
【化6−5】

【0208】
【化6−6】


【0209】
(実施例8)
(KSR1による血管形成の調整)
背景:血管形成(先に存在する脈管系からの新規な血管の形成)は、通常の成長、創傷治癒の組織再生及び虚血後の組織修復中に重要な役割をはたす。それに加えて、血管形成は、腫瘍増殖、進行及び散布に対して主要であるa、b、c、d。新しい血管の成長及び成熟は非常に複雑に組み合わされたプロセスであり、多くのリガンドによる一連のレセプターの連続的な活性化を必要とするe、f。血管内皮成育因子(VEGF)は、血管形成の鍵となるレギュレーターである。VEGFシグナル形成は、2つのレセプターチロシンキナーゼVEGFR−1及びVEGFR−2によって媒介され、生理学的血管形成(胚形成、骨格成長及び再生機能)においてだけではなく、病理学的血管形成(例えば腫瘍増殖に関連するもの)においても重要な律速段階である。
【0210】
選択的mRNAスプライシングで、ヒトVEGF遺伝子は、シグナル配列の開裂後にそれぞれ121、163、189、及び201アミノ酸を有する4つの主なVEGFイソ型(VEGF121、VEGF165、VEGF189、及びVEGF201)を生じるh、i。VEGF121が遊離の拡散性タンパク質であり、VEGF189、及びVEGF206はヘパリンについて高いアフィニティーを有し、細胞外マトリックス(ECM)でヘパリンを含有するプロテオグリカンにほとんど結合しているj、k。VEGF165(主要なイソ型)は分泌されるが、それでも、有意部分については、細胞表面又はECMに結合したままである。VEGFの生物学的機能は、2つのレセプターチロシンキナーゼVEGFR−1(Flt−1としても知られる)及びVEGFR−2(Flk−1又はKDRとしても知られる)によって媒介される。VEGFR−2は、内皮細胞の有糸分裂誘発及び生存、血管形成及び微小血管透過のVEGFシグナル形成の主なメディエーターである。対照的に、VEGFR−1は、分裂促進シグナルを効果的に送らない。VEGFを封鎖することによってVEGFR−2活性を阻害し、VEGFR−2に結合するのを妨害する。それに加えて、VEGFR−1は脈管床から組織特異的な増殖因子の放出を調整する
【0211】
VEGFの遺伝子発現をしっかりと調整する。VEGF mRNA発現は、低酸素又は酸素圧に応答した低酸素症により誘発される因子(HIF)を介して上方調整される。それに加えて、レセプターチロシンキナーゼ(例えば、EGFR)の過剰活性化又はRasの腫瘍形成活性化は、VEGF発現の転写上方調整を導くg、m。さらに、DePinho及び同僚は、近年、腫瘍形成H−Rasシグナル形成がVEGF産生及び内皮細胞生存の調整を介して黒色腫腫瘍の維持のために必須であることを示す。さらに、血管形成におけるRas−Raf−1の重要性は、Raf−1が内部及び外部アポトーシス刺激に応答して脈管の生存を与えるというCheresh及び共同研究者の観察によって強められた
【0212】
血管形成におけるVEGFの重要性は、癌処置のための治療標的として確立し、種々のVEGFインヒビターの臨床的開発を導いた。1993年に、VEGFを標的化したモノクローナル抗体が腫瘍増殖をインビボで顕著に抑制し、これによりこのVEGF抗体のヒト化改変体であるベバシズマブ(Avastin;Genentech)を抗癌剤として開発した。転移性結直腸癌のもっとも重要な治療としてのベバシズマブのUS FDAによる最近の承認は、VEGFが腫瘍血管形成の鍵となるメディエーターであり、血管形成をブロックすることがヒトの癌を処置するのに有効なストラテジーであるという考えが正等であることを証明する
【0213】
結果:KSR1はA431細胞においてVEGF産生のために必要とされる
KSR1が腫瘍形成の機能獲得Rasシグナル形成の重要なメディエーターであるためr、s、本願発明者らは、本願発明者らにより以前に特性決定されたA431−pTRE−Tet−Off−KSR細胞株における、EGFにより刺激されるVEGF産生におけるKSR1の関係を評価した。これらの研究のために、A431−pTRE−KSR細胞をそれぞれ6×10細胞(pTRE及びKSR−S細胞について)又は3×10細胞(KSR−AS及びDN−KSR細胞について)で6ウェル培養プレートに接種し、80%密集度になるまで48時間増殖させた。次いで、細胞をPBSで2回洗浄し、EGFの存在下(1〜100ng/ml)又は非存在下で1mlの無血清培地中でさらに24時間又は48時間インキュベートした。所定の時間点で、VEGFの分泌形態を含有する馴化培地を集め、細胞片を遠心分離によって除去し、さらなる特性決定を行なうまで−80℃で保存した。ELISAイムノアッセイ(R&D Systems)を行って、製造業者の指示に従って、VEGFの全てのイソ型を認識する抗体を利用して、馴化培地中でVEGFの可溶性形態を測定した。図22は、約400pg/ml/10細胞のVEGFがA431−pTRE細胞から24時間かけて分泌されることを示し、これは、文献において報告された値と一致している。A431−KSR−S細胞におけるFlag−KSR1の過剰発現は、A431−pTRE細胞の場合と比較して、基礎となるVEGF産生を3倍増加させる。対照的に、KSR−AS又は優性ネガティブのKSR1突然変異(DN−KSR1)のいずれかによるKSR1の失活は、試験されるすべての時間点でベースラインVEGF分泌を阻止した。さらに、トランスフェクトされていないA431細胞又はA431−pTRE及びKSR−S細胞におけるVEGFが100ng/mlのEGF処置を用いた刺激によってさらに増加する一方、A431−KSR1−AS及びA431−DN−KSR1細胞はEGF刺激に対する応答がなかった。低用量のEGFで刺激された場合、同様の結果が観察された。これらの結果は、KSR1がベースライン及びインビトロでのEGFにより誘発されたVEGFリガンド産生に必須であり、KSR1が病理学的血管形成(例えば癌)と関連する状態を処置するための抗−血管形成治療のための新しい標的をあらわし得ることを示唆する。さらなる試験により、A431細胞におけるインビトロでの、A431腫瘍異種移植片におけるインビボでのVEGF発現の阻害におけるKSR1 AS−ODNの有効性を評価する。
【0214】
【化7】


【0215】
本発明は、他の形態において実施されてもよく、又はそれらの精神又は必須の特徴から逸脱することなく他の様式で行なわれてもよい。それ故に、本開示は、全ての局面において例示的であり制限的ではないものとみなされ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって示され、その意味の中にある全ての変化及び等価体の範囲は、本発明に包含されることが意図される。
【0216】
種々の参考文献は、本明細書全体にわたって引用され、これらはそれぞれ、その全体において参考として本明細書中に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1A】図1は、マウスにおけるksr遺伝子の標的化された破壊を示す。A、ksr対立遺伝子を標的化するためのストラテジー。野生型ksr対立遺伝子、標的化ベクター、及び変異した対立遺伝子の5’領域の単純化された制限マップが示される。内因性ksrを用いた相同組換えは、内部の1.1−kb SmaI−SpeIゲノムフラグメントとNeoカセットとを交換する。脳が、わずかに短いB−KSR1イソ型を発現する一方、肺及び脾臓は、より長いKSR1イソ型を発現することに注記する。さらに、溶解物をksr+/+、ksr−/−MEFの2つの独立したセットから調製した。抗−α−チューブリン抗体を用いたブロットを再プローブ化することによって、等しいローディングが確認された。
【図1B】図1は、マウスにおけるksr遺伝子の標的化された破壊を示す。B、標的化構築物の正しい挿入を示すESクローンのサザンブロット分析。ES細胞から単離されたゲノムDNAを、BglII及びXhoIで消化し、Aに示されるようなksr標的化領域の5’アームのすぐ外側に位置する5’プローブにハイブリダイズした。野生型対立遺伝子は5.7−Kbフラグメントを与え、一方、変異対立遺伝子は3.1−kbフラグメントを与える。脳が、わずかに短いB−KSR1イソ型を発現する一方、肺及び脾臓は、より長いKSR1イソ型を発現することに注記する。さらに、溶解物をksr+/+、ksr−/−MEFの2つの独立したセットから調製した。抗−α−チューブリン抗体を用いたブロットを再プローブ化することによって、等しいローディングが確認された。
【図1C】図1は、マウスにおけるksr遺伝子の標的化された破壊を示す。C、PCRによるksr−/−マウスの遺伝子型特定。PCR産物のサイズは野生型対立遺伝子について493bpであり、変異した対立遺伝子について312bpである。脳が、わずかに短いB−KSR1イソ型を発現する一方、肺及び脾臓は、より長いKSR1イソ型を発現することに注記する。さらに、溶解物をksr+/+、ksr−/−MEFの2つの独立したセットから調製した。抗−α−チューブリン抗体を用いたブロットを再プローブ化することによって、等しいローディングが確認された。
【図1D】図1は、マウスにおけるksr遺伝子の標的化された破壊を示す。D、野生型マウス胚におけるksrの発現。2つの転写物のサイズは6.4kb及び7.4kbである。脳が、わずかに短いB−KSR1イソ型を発現する一方、肺及び脾臓は、より長いKSR1イソ型を発現することに注記する。さらに、溶解物をksr+/+、ksr−/−MEFの2つの独立したセットから調製した。抗−α−チューブリン抗体を用いたブロットを再プローブ化することによって、等しいローディングが確認された。
【図1E】図1は、マウスにおけるksr遺伝子の標的化された破壊を示す。E、組織ksr mRNAのノーザンブロット分析。成体のksr+/+、ksr+/−、ksr−/−マウスの異なる組織から単離されたポリ−ARNAを、ksr cDNAにおけるドメインCA2〜CA4に対応するプローブでハイブリダイズした。NIH3T3細胞由来のmRNAをコントロールとして使用した。脳が、わずかに短いB−KSR1イソ型を発現する一方、肺及び脾臓は、より長いKSR1イソ型を発現することに注記する。さらに、溶解物をksr+/+、ksr−/−MEFの2つの独立したセットから調製した。抗−α−チューブリン抗体を用いたブロットを再プローブ化することによって、等しいローディングが確認された。
【図1F】図1は、マウスにおけるksr遺伝子の標的化された破壊を示す。F、KSRタンパク質発現。野生型及びksr−/−組織から調製した溶解物を、特定の抗−KSRモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。脳が、わずかに短いB−KSR1イソ型を発現する一方、肺及び脾臓は、より長いKSR1イソ型を発現することに注記する。さらに、溶解物をksr+/+、ksr−/−MEFの2つの独立したセットから調製した。抗−α−チューブリン抗体を用いたブロットを再プローブ化することによって、等しいローディングが確認された。
【図2】図2は、生まれたてのksr−/−マウスにおける皮膚表現型を示す。10日齢のksr+/+、ksr−/−、及びegfr−/−マウスの皮膚全体の厚みの切断物を4〜6μm厚に切断し、ガラススライド上に置き、ヘマトキシリン−エオジンで染色した。s−曲がりくねっている、bl−水膨れ、do−方向性なし。
【図3A】図3は、ksr−/−MEFにおけるEGF−及びTPA−により誘導されるMAPKシグナル形成及び増殖における欠損を示す。A、EGF及びTPA処置の際のMAPK活性のウェスタンブロット分析。ksr+/+及びksr−/−から誘導される低継代MEFは、血清を含まない培地中で48時間インキュベーションすることによって鎮静され、低用量のEGFで3分間(上のパネル)又はTPAで10分間(下のパネル)で刺激された。細胞をNP40バッファー中で溶解し、MAPKカスケードの活性化を、MAPKの活性化形態(ERK1/2)について抗−ホスホロに特異的な抗体を用いてウェスタンブロットによって試験した。4つの独立した実験の1つからの代表的なブロットが示される。
【図3B】図3は、ksr−/−MEFにおけるEGF−及びTPA−により誘導されるMAPKシグナル形成及び増殖における欠損を示す。B、EGF(上のパネル)及びTPA(下のパネル)処置の際の内因性Raf−1の活性化を、方法において本明細書中に記載されるようなRaf−1活性アッセイによって決定した。MEK1ホスホリル化を、MEK1の活性化形態について抗−ホスホに特異的な抗体を用いたウェスタンブロットによって試験した。1又は4つの独立した実験から代表的なブロットが示される。
【図3C】図3は、ksr−/−MEFにおけるEGF−及びTPA−により誘導されるMAPKシグナル形成及び増殖における欠損を示す。C、MEFの増殖。0.15×10のksr+/+及びksr−/−低継代MEFを、60mmプレートに接種し、方法において記載されるように増殖させた。細胞を1日おきにトリプシン化し、血球計によって計数した。データ(平均±SD)を、3つの独立実験から編集する。
【図4A】図4。ksr−/−マウスにおける、ksr遺伝子の破壊によって阻止された腫瘍形成Rasにより媒介される腫瘍形成。A、Tg.AC/ksr+/+及びTg.AC/ksr−/−マウスの表皮から単離された全RNA由来のν−Ha−ras発現、その後のTPA処置によるRT−PCR検出。ν−Ha−ras導入遺伝子の3’UTR領域について特異的なイントロンにわたるプライマーを使用した。さらに大きな279bp単位複製配列は、逆転写酵素[RT(−)]の非存在下で検出され、DNA及びスプライシングされていないRNAから誘導される。さらに小さな214bp単位複製配列は、スプライシングされたmRNAから誘導され、導入遺伝子発現を示す。
【図4B】図4。ksr−/−マウスにおける、ksr遺伝子の破壊によって阻止された腫瘍形成Rasにより媒介される腫瘍形成。B、遺伝子型に従って分けられたマウス(10/グループ)を、15週間、5μgのTPAで週に2回処置した。乳頭腫を、20週間、週に1度計測した。
【図5A】図5。誘発性A431−Tet−Off−pTRE−KSR細胞。A及びB、野生型Flag−KSR−S及びFlag−DN−KSR発現(A)、及びKSR−ASによる内因性KSR1発現の阻害(B)のウェスタンブロット分析。Flag−KSR−S及びDN−KSRは、モノクローナル抗−Flag(M2)抗体で免疫沈降(IP)され、WBによって検出された。Flag−KSRの同一性は、モノクローナル抗−KSR抗体(BD Biosciences)で再プローブ化することによって確認された。内因性KSR1を方法において記載されるように免疫沈降し、上述のように検出した。
【図5B】図5。誘発性A431−Tet−Off−pTRE−KSR細胞。A及びB、野生型Flag−KSR−S及びFlag−DN−KSR発現(A)、及びKSR−ASによる内因性KSR1発現の阻害(B)のウェスタンブロット分析。Flag−KSR−S及びDN−KSRは、モノクローナル抗−Flag(M2)抗体で免疫沈降(IP)され、WBによって検出された。Flag−KSRの同一性は、モノクローナル抗−KSR抗体(BD Biosciences)で再プローブ化することによって確認された。内因性KSR1を方法において記載されるように免疫沈降し、上述のように検出した。
【図5C】図5。誘発性A431−Tet−Off−pTRE−KSR細胞。C、ドキシサイクリンによるFlag−KSR−S発現の用量依存性阻害。KSR−S細胞を所定の用量のドキシサイクリン(Dox)で24時間処置し、Dox処置の後のFlag−KSR−S発現を、上述のようにWBによって決定した。
【図5D】図5。誘発性A431−Tet−Off−pTRE−KSR細胞。D及びE、KSR−AS又はDN−KSRによるKSR1の失活により形態の変更を生じ(D)、多核性の表現型の成長を生じる(E)。A431−pTRE細胞を、位相差顕微鏡の下で試験し、細胞形態(D)について20倍の拡大で撮影し、多核性形成(E)について40倍の拡大で撮影した。
【図5E】図5。誘発性A431−Tet−Off−pTRE−KSR細胞。D及びE、KSR−AS又はDN−KSRによるKSR1の失活により形態の変更を生じ(D)、多核性の表現型の成長を生じる(E)。A431−pTRE細胞を、位相差顕微鏡の下で試験し、細胞形態(D)について20倍の拡大で撮影し、多核性形成(E)について40倍の拡大で撮影した。
【図6A】図6。KSR1の失活は、A431細胞におけるEGFにより刺激された生体反応を阻止する。A、(i)EFG刺激なし及び(ii)EFG刺激ありでの細胞増殖アッセイ。増殖アッセイを方法において記載されるように行なった。
【図6B】図6。KSR1の失活は、A431細胞におけるEGFにより刺激された生体反応を阻止する。B、A431−pTRE細胞の細胞サイクル分布を方法において記載されるようにFACS分析によって決定した。細胞周期の異なる段階の細胞の比率を、実験的な蛍光ヒストグラムから算出した。
【図6C】図6。KSR1の失活は、A431細胞におけるEGFにより刺激された生体反応を阻止する。C、EGF刺激に応答するマトリゲル浸潤分析。A431細胞浸潤についてKSR−Sの過剰発現の刺激効果を最適化するために、アッセイを12時間後に終了させた(i)。A431細胞浸潤についてKSR−AS及びDN−KSRの阻害効果を最大化するために、アッセイを18時間後に終了させた(ii)。
【図6D】図6。KSR1の失活は、A431細胞におけるEGFにより刺激された生体反応を阻止する。D、EGF刺激に応答する軟質寒天コロニー形成アッセイを、方法におけるように行なった。それぞれの細胞株又は処置のために、4プレートを計測した。これらの結果は、4個の同様の試験のうち1個をあらわす。
【図7A】図7。KSR1の失活はA431腫瘍形成を防ぐ。A、A431腫瘍の増殖曲線。方法において記載されるように、10のA431−pTRE細胞をヌードマウスに皮下で注射した。A431腫瘍形成についてKSR−Sの特異性を決定するために、Dox(100mg/ml)を、腫瘍移植の3日前に、KSR−S腫瘍を有するマウスのグループの飲み水に添加し(KSR−S+Dox)、KSR−S発現が中断するまで実験全体にわたって計測した。KSR−AS及びDN−KSR細胞を受けるマウスを120日までモニタリングした。これらの結果は、3個の同様の実験のうち1つをあらわす。それぞれの実験グループに5匹ずつのマウスが存在した。
【図7B】図7。KSR1の失活はA431腫瘍形成を防ぐ。B、A431腫瘍のH&E染色。ホルマリンで固定され、パラフィンに包埋され、5mmに切断されたA431−pTRE腫瘍断片を、方法において記載されるようにH&Eを用いて染色した。(i)及び(ii)における黒色の矢印は、扁平上皮細胞の分化を示す。(iii)及び(iv)における黒色の矢印は、多核性腫瘍細胞を示し、(v)は、多核性細胞の(iii)中のフレームフィールドの拡大である。
【図8A】図8。AS−ODNによるKSR1の失活は、A431腫瘍形成を減らす。A、1mMのコントロール−又はAS−ODNで処理した後の内因性KSR1発現の免疫蛍光染色を、方法におけるように行なった。核をDAPIでカウンター染色した。蛍光標識の強度を比較するために、KSR発現の全ての画像を同じ露光時間で行なった。
【図8B】図8。AS−ODNによるKSR1の失活は、A431腫瘍形成を減らす。B及びC、AS−ODN処置による、A431細胞増殖の用量依存性阻害(B)及び浸潤(C)。増殖アッセイのために、図3におけるように、30%の融合性のA431細胞を所定用量のコントロール−又はAS−ODNで処置した。ODN処置後の細胞増殖を、未処置コントロールの割合として計算した。浸潤アッセイを上述のようなODN処置の48時間後に設定した。
【図8C】図8。AS−ODNによるKSR1の失活は、A431腫瘍形成を減らす。B及びC、AS−ODN処置による、A431細胞増殖の用量依存性阻害(B)及び浸潤(C)。増殖アッセイのために、図3におけるように、30%の融合性のA431細胞を所定用量のコントロール−又はAS−ODNで処置した。ODN処置後の細胞増殖を、未処置コントロールの割合として計算した。浸潤アッセイを上述のようなODN処置の48時間後に設定した。
【図8D】図8。AS−ODNによるKSR1の失活は、A431腫瘍形成を減らす。D、AS−ODN5mg/kg/日の連続的注入によるA431腫瘍形成の減少。方法において記載されるように新しく調製したA431種腫瘍フラグメントを、ヌードマウスの右脇腹に皮下移植した。ODNの連続注入を腫瘍移植の2日前に開始した。それぞれの処置グループに5匹ずつのマウスが存在した。これらの結果は、3個の同様の実験のうち1つをあらわす。
【図9A】図9。AS−ODNによるKSR1の失活は、PANC−1においてインビトロで腫瘍形成K−rasシグナル形成を阻害する。A、AS−ODN処置によるPANC−1細胞増殖の用量依存性阻害。PANC−1細胞を所定用量のコントロール−又はAS−ODNで処置し、細胞増殖アッセイを図7におけるように行なった。
【図9B】図9。AS−ODNによるKSR1の失活は、PANC−1においてインビトロで腫瘍形成K−rasシグナル形成を阻害する。B、AS−ODN処置(5μM)は、ヒト膵臓癌細胞株のパネルの増殖を減らした。各細胞株についての接種密度は、ODNでトランスフェクトされた場合に全ての細胞株が30〜40%融合性であるように、前研究において決定した。
【図9C】図9。AS−ODNによるKSR1の失活は、PANC−1においてインビトロで腫瘍形成K−rasシグナル形成を阻害する。C及びD、c−raf−1はKSR1に対して上位である。PANC−1細胞を最初にセンス−又はAS−ODNで48時間処置し、方法において記載されるようにBXB−Rafでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、浸潤及びコロニー形成アッセイを図7におけるように設定した。PANC−1細胞浸潤(C)及び形質転換(D)についてのAS−ODNの阻害効果を、優性ポジティブなBXB−Rafによって逆転させた。
【図9D】図9。AS−ODNによるKSR1の失活は、PANC−1においてインビトロで腫瘍形成K−rasシグナル形成を阻害する。C及びD、c−raf−1はKSR1に対して上位である。PANC−1細胞を最初にセンス−又はAS−ODNで48時間処置し、方法において記載されるようにBXB−Rafでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、浸潤及びコロニー形成アッセイを図7におけるように設定した。PANC−1細胞浸潤(C)及び形質転換(D)についてのAS−ODNの阻害効果を、優性ポジティブなBXB−Rafによって逆転させた。
【図9E】図9。AS−ODNによるKSR1の失活は、PANC−1においてインビトロで腫瘍形成K−rasシグナル形成を阻害する。E、AS−ODN処置は、PANC−1細胞における内因性KSR1発現を阻害した。内因性KSR1を、未処置の(NT)、センス−ODN処置した又はAS−ODN処置したPANC−1細胞から免疫沈降し、KSR1発現を方法において記載されるようにWBによって決定した。精製したFlag−KSRを、WBのためのポジティブコントロールとして役立てた。
【図9F】図9。AS−ODNによるKSR1の失活は、PANC−1においてインビトロで腫瘍形成K−rasシグナル形成を阻害する。F、EGFに応答するAS−ODN処置されたPANC−1細胞、及びBXB−Raf−1でトランスフェクトされたPANC−1細胞におけるMAPK及びPI−3キナーゼ活性を、方法において記載されるように、ホスホ−MAPK及びホスホ−Akt特異性抗体を用いてWB分析した。これらの条件下で、b−アクチン及び全Aktは変化しなかった(図示せず)。これらの結果は、3個の同様の実験のうち1つをあらわす。
【図10A】図10。AS−ODN処置は、PANC−1及びA549腫瘍形成をインビボで阻止した。A、AS−ODNの連続注入は、PANC−1腫瘍増殖を阻止した。10PANC−1細胞から(i)、又は新しく収穫した種PANC−1腫瘍から(ii)誘導されたPANC−1異種移植片を、方法において記載されるようにヌードマウスに移植した。A(i)、確立されたPANC腫瘍(約100mm)を、コントロール−又はAS−ODN10mg/kg/日で14日間処置した。退縮したASA−ODN処置された腫瘍を有するマウスを4週間までモニタリングした。A(ii)、新しく調製したPANC−1種腫瘍フラグメントをヌードマウスに上述のように移植した。ODNを用いた注入を、腫瘍移植の2日前に開始し、さらに14日間続けた。これらの結果は、3個の同様の実験のうちの1つをあらわす。それぞれの処置グループに5匹ずつのマウスが存在した。
【図10B】図10。AS−ODN処置は、PANC−1及びA549腫瘍形成をインビボで阻止した。B、AS−ODN処置は、内因性腫瘍KSR1発現を阻害した。腫瘍KSR1を、食塩水−、センス−、又はAS−ODN処置されたPANC−1腫瘍から免疫沈降させ、上述のようにWBによって発現を決定した。
【図10C】図10。AS−ODN処置は、PANC−1及びA549腫瘍形成をインビボで阻止した。C、ksr1の阻害は、PANC−1腫瘍におけるRas活性化に影響を与えなかった。図10。AS−ODN処置は、PANC−1及びA549腫瘍形成をインビボで阻止した。Ras活性化状態は、食塩水−、コントロール−ODN−、センス−ODN−又はAS−ODN−処置されたPANC−1腫瘍におけるGTP−Rasの量によって測定され、これらはRas活性化アッセイキットによって決定された。
【図10D】図10。AS−ODN処置は、PANC−1及びA549腫瘍形成をインビボで阻止した。D、KSR AS−ODN処置はA549腫瘍増殖を防ぎ(i)、全身性内転移を介した肺転移を阻害した(ii)。方法におけるように新しく調製されたA549種腫瘍フラグメントを、ヌードマウスに移植した。腫瘍が150mmに達した場合にコントロール−又はAS−ODNを用いた処理を開始し、さらに18日間続けた(i)。動物を実験の終了時に屠殺し、肺をコントロール−又はAS−ODN−処置されたマウスから切除し、インディアンインクで染色して、全身性内転移を介して誘導される表面肺転移を視覚化した(ii)。これらの結果は、3個の同様の実験のうちの1つをあらわす。各処置グループに5匹ずつのマウスが存在した。
【図11】図11は、マウスKSRポリペプチド配列(配列番号9)及びヒトKSRポリペプチド配列(配列番号10)の比較配列を示す。
【図12】図12。A、マウスksrの配列をコードする核酸(cDNA)を示す(配列番号11)。B、ヒトksrの配列をコードする部分的な核酸(cDNA)を示す(配列番号12)。
【図13A】図13は、AS−ODN処置によるPANC−1細胞増殖の特異的阻害及び用量依存性阻害を示す。A、AS−ODN処置によるPANC−1細胞増殖の用量依存性阻害;K562細胞の増殖はAS−ODN処置によって阻害されない。
【図13B】図13は、AS−ODN処置によるPANC−1細胞増殖の特異的阻害及び用量依存性阻害を示す。B、K562及びPANC−1細胞における内因性KSR1遺伝子発現のウェスタンブロット分析。5μMのKSR AS−ODN−1を用いたK562の処置は、PANC−1細胞において観察されるものに対して、内因性KSR1遺伝子発現のかなりの減少(80%を超える)を引き出した。
【図14】図14は、ヒトKSR1全長mRNA配列(配列番号24)を示す。
【図15A】図15は、CA1〜CA5ドメインの位置に注釈を付けられたヒトKSR核酸及びタンパク質配列及びAS−ODNについての標的配列を示す。全長ヒトKSRタンパク質は866アミノ酸を有すると予想される。
【図15B】図15Aの続き。
【図15C】図15Bの続き。
【図16A】図16は、CA1〜CA5ドメインの位置に注釈を付けられたマウスKSR核酸及びタンパク質配列及びAS−ODNについての標的配列を示す。
【図16B】図16Aの続き。
【図16C】図16Bの続き。
【図17】図17は、示されるヒトAS−ODN1〜AS−ODN12についての核酸標的配列を有するヒトKSR−1全長mRNA配列を示す。
【図18】図18は、コントロールODN、AS―ODN2(181〜198)(マウス)(AS−ODN2−old)及びAS−ODN2(154〜171)(ヒト)(AS−ODN2−new)で処置されたPANC−1細胞の増殖アッセイを示す。
【図19】図19は、ベクターを発現するA431細胞、野生型Flag−KSR(KSR−S)、Flag−AS−KSR(KSR−AS)又は優性ネガティブFlag−Ki−KSR(Ki−KSR)において、アネキシンV染色を用いて記録されるような、イオン化放射線により誘発されるアポトーシスの割合を示す。
【図20】図20は、AS−ODN2(214〜231)、コントロールODN又は発現ベクターで処理されたA431細胞において、アネキシンV染色を用いて記録されるような、イオン化放射線により誘発されるアポトーシスの割合を示す。
【図21】図21A及び図21Bは、KSR−ASの発現がイオン化放射線に対してA431細胞を放射線増感することを示す。
【図22A】図22A及び図22Bは、(KSR−AS発現による)KSRの失活が、A431細胞においてothベースライン及びEGFにより刺激されるVEGF産生を阻止することを示す。
【図22B】図22A及び図22Bは、(KSR−AS発現による)KSRの失活が、A431細胞においてothベースライン及びEGFにより刺激されるVEGF産生を阻止することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
KSRの発現を阻害する、KSR RNAの領域に対して実質的に相補的な、オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
哺乳動物KSRをコードする核酸に対して実質的に相補的な、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
ヒトKSRをコードする核酸に対して実質的に相補的な、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
哺乳動物KSRをコードするmRNAの翻訳開始部位、5’未翻訳領域、コード領域又は3’未翻訳領域に対して実質的に相補的な、オリゴヌクレオチド。
【請求項5】
KSRのCA1領域に対して実質的に相補的な配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
マウスKSRのコード配列のヌクレオチド124〜243(配列番号1)又はヒトKSRのヌクレオチド97〜216(配列番号25)、又はそれらの一部分に対して実質的に相補的な配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
以下からなる群から選択されるヌクレオチドに対して実質的に相補的な配列を含む、請求項6に記載のオリゴヌクレオチド:
(a)マウスKSRの配列の151〜168に対応する、ヒトKSRの配列の124〜141(配列番号3)、
(b)ヒトKSRの配列の154〜171(配列番号27)、
(c)マウスKSRの配列の181〜198(配列番号4);及び
(d)マウスKSRの配列の214〜231に対応する、ヒトKSRの配列の187〜204(配列番号5)。
【請求項8】
配列番号6〜8及び配列番号28〜39の群から選択される配列を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
検出可能な標識で標識された請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記標識が、酵素、リガンド、蛍光を発する化学物質及び放射性元素から選択される、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
哺乳動物KSR RNAに対して相補的なアンチセンスRNAを転写の際にコードする核酸配列又はそれらの一部分を含む、組換えDNA分子。
【請求項13】
前記核酸配列が、転写制御配列に操作可能に結合する、請求項12の組換えDNA分子。
【請求項14】
請求項13に記載の組換えDNA分子を用いてトランスフェクトされた細胞株。
【請求項15】
KSR RNAのコード配列に対して実質的に相補的な核酸、又はそれらの一部分/フラグメントを発現可能であり、該オリゴヌクレオチド/核酸がKSRの発現を阻害する、発現ベクター。
【請求項16】
KSR RNAのコード配列のCA1領域に対して実質的に相補的なオリゴヌクレオチド、又はそれらの一部分/フラグメントを発現可能であり、該オリゴヌクレオチドがKSRの発現を阻害する、発現ベクター。
【請求項17】
請求項1に記載の治療的に有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドと、薬学的に受容可能なキャリア又は希釈剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項18】
請求項1に記載のオリゴヌクレオチドと、薬学的に受容可能なキャリア又は希釈剤とを含む、組成物。
【請求項19】
1つ以上の化学治療剤又は放射能治療剤と、哺乳動物KSRをコードするmRNAに対して標的化されるオリゴヌクレオチドとを含み、KSR発現を阻害する組成物。
【請求項20】
発現ベクターと、薬学的に受容可能なキャリア又は希釈剤とを含み、前記発現ベクターが、KSR RNAのコード配列に対して実質的に相補的な核酸、又はそれらの一部分/フラグメントを発現可能であり、前記核酸がKSRの発現を阻害する、組成物。
【請求項21】
KSRを発現する細胞と、KSRをコードするmRNAの一部分に対して相補的な有効量の核酸とを接触させる工程を含む、哺乳動物KSRの発現を阻害する方法。
【請求項22】
KSRを発現する細胞と、請求項1に記載の有効量のオリゴヌクレオチドとを接触させ、それにより哺乳動物KSRの発現が阻害される工程を含む、哺乳動物KSRの発現を阻害する、方法。
【請求項23】
哺乳動物におけるgf−Rasの発現又はRasの高められた発現に関連する過剰増殖状態を処置又は予防する方法であって、哺乳動物KSRタンパク質の発現を阻害する治療的に有効量の化合物又は薬剤を該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項24】
前記化合物又は薬剤が、KSRをコードするmRNAの一部分に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物におけるgf−Rasの発現又はRasの高められた発現に関連する過剰増殖状態を処置又は予防する方法であって、KSRをコードするmRNAの一部分に対して相補的な治療的に有効量の核酸を該哺乳動物において発現させるか又は該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項26】
哺乳動物において癌の進行を処置又は阻害する方法であって、哺乳動物KSRタンパク質の発現を阻害する治療的に有効量の化合物又は薬剤を該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項27】
前記癌が、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、食道癌及び前立腺癌の群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
治療的に有効量の請求項1に記載のオリゴヌクレオチドを哺乳動物に対して投与する工程を含む、哺乳動物において癌の進行を処置又は阻害する、方法。
【請求項29】
哺乳動物KSRタンパク質の発現を阻害する治療的に有効量の化合物又は薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において腫瘍細胞におけるイオン化放射線に対して放射線感受性を与える、方法。
【請求項30】
治療的に有効量の請求項1に記載のオリゴヌクレオチドを哺乳動物に対して投与する工程を含む、哺乳動物において腫瘍細胞におけるイオン化放射線に対して放射線感受性を与える、方法。
【請求項31】
哺乳動物KSRタンパク質の発現を阻害する治療的に有効量の化合物又は薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において腫瘍細胞の血管形成を阻害する、方法。
【請求項32】
腫瘍細胞が、膵臓癌、肺癌、皮膚癌、尿路癌、膀胱癌、肝癌、甲状腺癌、結腸癌、腸癌、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、食道癌及び前立腺癌の群から選択される癌細胞である、請求項29、30、又は31に記載の方法。
【請求項33】
治療的に有効量の請求項1に記載のオリゴヌクレオチドを哺乳動物に対して投与する工程を含む、哺乳動物において血管形成を阻害する、方法。
【請求項34】
哺乳動物KSRタンパク質の発現を阻害する治療的に有効量の化合物又は薬剤を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物においてVEGFの発現又は活性を阻害又は減らすための、方法。
【請求項35】
治療的に有効量の請求項1に記載のオリゴヌクレオチドを哺乳動物に対して投与する工程を含む、哺乳動物においてVEGFの発現又は活性を阻害又は減らすための、方法。
【請求項36】
哺乳動物KSRタンパク質の発現を活性化する治療的に有効量の化合物又は薬剤、又は哺乳動物KSRを発現するベクターを哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物において血管形成を刺激する、方法。
【請求項37】
KSRの発現を阻害する化合物又は薬剤を同定する方法であって、以下の工程:
(c)候補化合物又は薬剤の存在下及び非存在下で、KSRを発現する細胞をインキュベートする工程;及び
(d)候補化合物又は薬剤の存在下及び非存在下で、KSRの発現を検出又は測定する工程を含み、
前記候補化合物又は薬剤の非存在下でのKSRの発現に対して、前記候補化合物又は薬剤の存在下でのKSRの発現が減少することが、前記化合物又は薬剤がKSRの発現を阻害することを示す、方法。
【請求項38】
KSR mRNAを開裂するリボザイム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12A−1】
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【図12A−2】
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【図12B−1】
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【図12B−2】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【公表番号】特表2007−512844(P2007−512844A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542782(P2006−542782)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/040506
【国際公開番号】WO2005/056756
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(500213834)
【Fターム(参考)】