説明

ガス処理のためのシステム

本発明によれば、化石燃料の燃焼により生じる煙道ガスを処理するためのシステム(1)を備える電気エネルギーを発生させるための発電プラントは、煙道ガスの第1の低圧圧縮のための断熱圧縮機(5)と、第2の多段式低圧煙道ガス圧縮システム(14)と、多段式高圧CO圧縮システム(15)とを備える。低圧煙道ガス圧縮システムと高圧CO圧縮システムとの両方は、単一の装置(C2)内で結合されており、1つの共通駆動装置(17)により駆動される1つの共通シャフト(16)上に配置されている。熱交換器(8)は、断熱圧縮された煙道ガスの冷却の結果得られる熱の回収の向上を容易にする。本発明によれば、本処理システムと統合された発電プラントの全体の動力効率を向上することができるとともに、投資コストを削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを発生させるための化石燃料火力発電プラントより生じるガスを処理するためのシステムに関する。本発明は、特に、二酸化炭素の輸送及び貯蔵を容易にするためにこのようなガスを精製するガス処理のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスである二酸化炭素(CO)の大気への排出を削減する観点から、電気エネルギーを発生させるための化石燃料火力発電プラントの煙道ガスには、典型的には、いわゆるCO捕捉システムが備えられている。煙道ガスに含まれるCOガスは、先ず分離され、その後に圧縮、乾燥及び冷却されることにより、永久貯蔵のために、又は石油増進回収等の更なる利用のために調整される。安全な輸送、貯蔵又は更なる利用のためには、このCOはある程度の品質を有する必要がある。例えば、石油増進回収用には、このガスは、CO濃度が少なくとも95%、温度が50℃未満、圧力が13.8Mpaである必要がある。化石燃料火力発電プラントからの煙道ガスには、COだけでなく、水蒸気、酸素、窒素、アルゴン、並びにSO、SO、NO及びNOといった、多くの更なる汚染物質が含まれている。SO、SO、NO及びNOは、環境規制や、COの輸送・貯蔵のための要件を満たすために除去する必要がある。化石燃料の種類、燃焼パラメーター及び燃焼器の設計に応じて、これら全ての汚染物質やCOそれ自体は、様々な濃度で存在する。煙道ガスに含まれるCOの比率は、ガスタービン用ガスの燃焼の場合における4%から、燃焼プロセスに酸素を更に供給する空気分離ユニットを備える石炭焚きボイラーの場合における60%〜90%に及ぶ。煙道ガスからの汚染物質の除去は、技術的な障害によって制限されるのではなく、むしろ、追加されるコストとエネルギーに対する要求及びその結果生じる発電プラント全体での効率の低下により制限される。
【0003】
Minish M. Shah, “Oxyfuel combustion for CO2 capture from pulverized coal boilers”, GHGT-7, Vancouver, 2004には、化石燃料焚きボイラーより生じる煙道ガスを扱うためのシステムの一例が開示されている。このシステムは、空気分離ユニットからの酸素と供に煙道ガスの一部を前記石炭焚きボイラーへと戻すためのリサイクルラインを含む。この煙道ガスは織布フィルター又は静電集塵機等の灰分及び粉塵の除去用フィルターに通され、更にSOxの除去のための煙道ガス脱硫ユニットに通され、最後にCO精製圧縮用ガス処理ユニットに通される。本ユニットは、O、N及びAr等の凝縮できないガスを除去するためのシステムと、水蒸気を除去するための脱水システムと、一連の圧縮・冷却システムとを備える。これらは、未精製の煙道ガスの第1の低圧圧縮システムと精製されたCOの高圧圧縮システムとを含む。第1の低圧圧縮システムと高圧圧縮システムはそれぞれ一体化された冷却器を備える。
【0004】
この圧縮のために、このようなシステムは、例えば、多段式遠心圧縮機を2機、すなわち低圧圧縮機と高圧圧縮機と、該低圧及び高圧圧縮機の間に配置された脱水用及び不活性ガスの低温除去用装置を備える。圧縮の動力消費量を最小化するために、前記多段式遠心圧縮機は、各圧縮機段に続く中間冷却器を有する。この多段式遠心圧縮は、典型的には4〜6段の圧縮段を含む。圧縮機段数が多いため、低圧及び高圧圧縮機はそれぞれ別の駆動装置を備える独立したシャフト上に配置される。中間冷却器より得られる熱は、70〜80℃の低レベル熱であり、この熱は典型的には回収されることなく、発電プラントの冷却水システム内で散逸される。この不活性ガスの除去のための低温システムは、加圧下不活性ガス流を生み出す。不活性ガス流は典型的には適当なタービン内で膨張させる。膨張した不活性ガスは、次に、発電機を駆動する、又は圧縮機を駆動するための機械的動力の一部を供給するよう配置される。
【0005】
更に、Bin Xu, R.A. Stobbs, Vince White, R.A. Wall, “Future CO2 Capture Technology for the Canadian Market”, Department for Business Enterprises & Regulatory reform, Report No. COAL R309, BERR//Pub, URN 07/1251, March 2007の124〜129頁には、脱水、圧縮、冷却及び低温処理を含む、煙道ガスを処理するためのシステムが開示されている。使用されている圧縮機は断熱圧縮機であり、これにより動力消費量と冷却に関する要求の点での向上が可能となる。
【0006】
米国特許第6,301,927号公報には、自動冷却により供給ガスからCOを分離する方法が開示されている。ここでは、前記供給ガスを先ず圧縮し、タービン内で膨張させる。供給ガス中に含まれるCOは、その後、液化され、気液分離機内で供給ガスのガス状成分と分離される。
【0007】
米国特許第4,977,745号公報には、煙道ガスからの低純度COを回収する方法が開示されている。該方法は、煙道ガスを圧縮することと、圧縮された煙道ガスを水洗装置及び乾燥機を経由し、最終的にCO分離ユニットに誘導することとを含む。
【0008】
米国特許第7,416,716号公報には、二酸化炭素を精製するための、特に、石炭燃焼プロセスにより生じるCO煙道ガスからSO及びNOxを除去するための方法及び装置が開示されている。このためには、煙道ガス又は未処理のCOガスは、圧縮されたガスの冷却のための中間冷却器を備えた圧縮機構により高い圧力まで圧縮される。ここで、圧縮の一部は断熱的に行われる。水蒸気、O、SOx及びNOxを含む圧縮されたガスは、その後、SOx及びNOxを除去するために水でガス状のCOを洗浄するための気液接触装置へと導かれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の背景技術に鑑み、本発明は、発電プラント用の化石燃料の燃焼により生じる煙道ガスを処理するための改良された煙道ガス処理システムを備えた、電気エネルギーを発生させるための化石燃料火力発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、化石燃料火力発電プラントは、燃焼後煙道ガス処理システムを備え、前記システムは、
中間冷却を行わない断熱軸流式圧縮機である第1の低圧煙道ガス圧縮機と、
前記第1の低圧煙道ガス圧縮機の下流に配置され、圧縮された煙道ガスから前記発電プラントへ又は前記発電プラントに接続されたシステムへの熱移動を行うように構成・配置された1つ以上の熱交換器と、
前記1つ以上の熱交換器の下流に配置され、1つ以上の段と1つ以上の冷却器とを有する第2の低圧煙道ガス圧縮機と、
前記第2の低圧煙道ガス圧縮機の下流に配置された、前記煙道ガスから不活性ガスを除去することにより前記煙道ガスを低温精製するためのユニットと、
前記低温精製するためのユニットの下流に配置され、前記低温精製するためのユニットより生じるCO流を圧縮するよう構成・配置された、幾つかの段と1つ以上の冷却器とを有する高圧CO圧縮機システムと
を備え、
前記第2の低圧煙道ガス圧縮機と前記高圧CO圧縮システムのとの両方は、単一の装置内で結合され、1つの共通駆動装置により駆動される1本の共通シャフト上に配置されている。
【0011】
本発明に係る燃焼後煙道ガス処理システムを備える上記発電プラントによれば、断熱圧縮機が統合されているので、煙道ガス圧縮に必要な総動力消費量を削減できる。更に、中間冷却器を有さない断熱圧縮機により、煙道ガスから熱を回収すること、及び、その熱を発電プラント内で又は産業需要家や熱を必要とする他の需要家等の該発電プラントに接続されたシステム内で使用することができる。これにより、発電プラントから取り出されていた例えば給水予熱に必要とされる熱を圧縮された煙道ガスから取り出すことができるようになる。従って、本発明に係るシステムによれば、圧縮機装置の数を増加させることなく、煙道ガス処理システムとこのように統合された発電プラントの全体効率を容易に向上できる。
【0012】
更に、本発明に係る煙道ガス処理システムによれば、システムの初期投資コストを削減することができる。このシステムは、2つの駆動装置と2本のシャフトを備えた合計2つの圧縮装置のみを備える。すなわち、一方は煙道ガス断熱圧縮機であり、他方は第2の低圧煙道ガス圧縮機と多段式高圧CO圧縮機とを結合したものである。断熱圧縮機を追加したにもかかわらず、システムの装置の総数は同じままである。最後に、第2の低圧煙道ガス圧縮機と高圧CO圧縮機を結合し1つの装置とした結果、投資コストが削減されるだけでなく、発電プラント建設において空間の効率化を図ることができる。
【0013】
本発明の特定の実施形態の1つにおいては、第2の低圧煙道ガス圧縮システムと高圧CO圧縮システムとは、2段の低圧圧縮機段と4〜6段の高圧圧縮機段を備え、1本のシャフト上に配置される1つの装置として結合される。
【0014】
本発明の別の特定の実施形態においては、前記煙道ガス処理システムは、第2の低圧煙道ガス圧縮機の下流に配置された脱水ユニットを備える。これにより、得られるCOの取り扱いと利用の可能性を広げることができる。
【0015】
本発明の別の特定の実施形態においては、前記煙道ガス処理システムは、断熱圧縮機の下流に煙道ガスの冷却のための1つ以上の熱交換器を備える。ここで、該1つ以上の熱交換器は、発電プラントの水/蒸気サイクルの一部であってもよい水流と、又は、プラント内若しくは該発電プラントに接続されたシステム内の熱回収のための他の任意の水流システムとの熱交換を行うように構成される。本実施形態において、煙道ガス断熱圧縮機は、煙道ガスの吐出圧力が選択された圧力範囲となるように構成されている。この圧力範囲は、例えば、発電プラントの水/蒸気サイクル、断熱圧縮機の最適に最小化された動力消費量、及び、煙道ガス断熱圧縮機の下流の低圧及び高圧圧縮段の統合に関連した最適な熱回収を考慮して選択される。
【0016】
一実施形態において、煙道ガス断熱圧縮機の吐出圧力は、7〜9bar absに設定することができる。この圧力範囲を超えると、中間冷却式遠心圧縮機内の圧縮よりも多くの動力消費量が断熱圧縮に必要となる。この吐出圧力であれば、断熱圧縮機の吐出時における温度は、170から280℃までの範囲となる。これにより、例えば専用の熱交換器を用い発電プラント蒸気/水サイクルからの凝縮物を加熱することにより効率的な熱回収を行うことができる。この熱回収の後、煙道ガスの温度は50℃程度となる。煙道ガスはその後第2の交換器内で更に冷却される。第2の交換器では、熱は散逸される。煙道ガスはその後、中間冷却器を備える遠心圧縮機である第2の低圧煙道ガス圧縮機の2段により30〜40bar absまで圧縮される。これらの2段は、例えば、6〜8段を備える1つの統合ギア圧縮機を用いることにより、4〜6段を有する高圧CO圧縮機と容易に結合することができる。
【0017】
断熱圧縮機により、圧縮された煙道ガスの冷却の結果得られる熱の回収を容易に向上できる。これにより、この種の煙道ガス処理システムと統合された発電プラントの全体効率を更に向上することができる。本発明に係る発電プラントの更なる利点は、断熱圧縮機及び遠心圧縮機からなる煙道ガス圧縮機の数が、遠心圧縮機のみを有する従来技術の発電プラントと比べ変わらないことにある。
【0018】
本発明の別の特定の実施形態においては、第1の低圧煙道ガス圧縮機及び第2の低圧煙道ガス圧縮機は、断熱圧縮機の吐出圧力の低圧煙道ガス圧縮機の1段目の吐出圧力に対する比率が1.5から2.5までの範囲となるよう構成される。
【0019】
発電プラントは、空気分離ユニットにより更に供給される酸素の存在下又は不存在下で運転できる石炭焚きボイラーを備える蒸気タービン発電プラントを含むいかなる種類の化石燃料火力発電プラントであってもよい。化石燃料火力発電プラントにはまた、ガスタービン又はコンバインドサイクル発電プラントが含まれる。
【0020】
別の実施形態において、本発明に係るシステムは、SOx及びNOxを除去又は還元するためのシステムを更に備える。このようなシステムは、煙道ガス圧縮の上流の低圧煙道ガス処理システム内、又は、断熱圧縮機の下流のどちらにも配置することができる。SOx及びNOx除去システムが、煙道ガス断熱圧縮機の下流に配置される場合であっても、本提案の発明はなお、1つの駆動装置により駆動される1つの装置内で、煙道ガス圧縮に必要とされる残りの遠心段と、CO圧縮に必要となる段とを結合することにより実現される。SOx及びNOx除去反応のキネティックス及び反応器のサイズ設定は、断熱圧縮機の吐出圧力選択に影響を与える。例えば、吐出圧力は、後に15bar abs程度まで上昇させることができ、それにより1つの多段式遠心圧縮機内で煙道ガス圧縮の1つの段をCO圧縮と結合させておく。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る、電気を発生させる発電プラントに統合可能な煙道ガス処理システムの一実施形態の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、化石燃料火力発電プラントより生じる煙道ガスを処理するための煙道ガス処理システム1を示す。タービンを駆動する作動媒体を発生させるために化石燃料を燃焼させることにより生じる煙道ガスを誘導するライン2を除き、発電プラント自体は示されていない。処理システム1は、基本的に、煙道ガスを第1の圧縮機システムC1、熱回収システムHR、第2の圧縮機システムC2へと誘導する煙道ガスライン2と、分離されたCOを更なる利用のための設備へと誘導するためのCOライン3とを備える。第1の圧縮機システムC1と、熱回収システムHRと、第2の圧縮機システムC2とはすべて、上述した順番で直列に配置される。煙道ガスライン2は発電プラントから第1の圧縮機システムC1へと通じている。第1の圧縮機システムC1は、煙道ガス断熱圧縮機5を備える。熱回収システムHRは、圧縮機C1から放出される圧縮された煙道ガスを冷却するため及び煙道ガスから発電プラントへの熱移動を行うための熱交換器を備える。第2の圧縮機システムC2は、煙道ガスを低圧圧縮するため及び精製されたCOを高圧圧縮するための結合多段式中間冷却式圧縮機システムを備える。最後に、ライン3は、精製・圧縮されたCOがシステム1を離れ、輸送、貯蔵又は石油増進回収等のCOの更なる利用のための更なるシステム4へと導く。
【0023】
図示したように、煙道ガスは、ライン2経由でシステム1に導かれる。ライン2において、煙道ガスは、例えば、石炭焚きボイラー、ガス燃焼室、又は酸素吹石炭焚きボイラーより生じたものである。そのため、このような煙道ガスは、煙道ガス再循環を行う又は行わないガスタービン発電プラントの場合における4%以上や、蒸気タービン発電プラント用の酸素吹石炭焚ボイラーの場合における最大60〜90%等様々な濃度でCOガスを含む。このボイラー又は燃焼室の後で、煙道ガスは、静電集塵機や織布フィルターのようなフィルターや、他の硫黄除去のための任意の処理ユニットにおいて前処理されていてもよい。更に、煙道ガスは、NOx又は水銀を除去するための装置において、処理されていてもよい。
【0024】
煙道ガスライン2は、CO含有煙道ガスを、駆動装置6により駆動され煙道ガスを5から20bar absまでの吐出圧力まで圧縮するよう構成された低圧煙道ガス断熱圧縮機5へと運ぶ。圧縮の動力消費量が最小化されるのは、吐出圧力が5から8bar absまで、例えば7bar absとなるよう構成したときである。断熱圧縮機5は20barを越えない吐出圧力まで圧縮を行うように構成される。この限界を超える吐出圧力まで圧縮すると、断熱圧縮機を使用することによる利点がもはや何ら無くなる程度まで動力消費量が増加する。これは、8bar abs程度の圧力以降では、断熱式(軸流式)動力消費量が、中間冷却式遠心圧縮機のそれを上回るようになるためである。この圧力以降では、軸流式装置においてより効率的なホイールを有するという利点が、中間冷却不在によるガス温度上昇による動力消費量の増加により相殺され、この増加が利点を上回るようになる。圧縮機の吐出時、圧縮された煙道ガスの温度はおよそ200℃〜280℃である。断熱圧縮機の最適な吐出圧力は、動力消費量を最小化することにより設定されることとなるが、水/蒸気サイクルの統合、もし存在するのならばSOx及びNOxの中間除去等の付属パラメーターや、装置の選択によっても設定される。
【0025】
ライン7は、低圧煙道ガス圧縮機5の吐出部から第1の熱交換器8へと通じている。第1の熱交換器8内では、圧縮された高温煙道ガスは水又は他の冷媒の流れに対し向流で流れる。冷媒は、熱交換器8からライン9経由で発電プラント内のシステム内又は発電プラントに接続されたシステム内の熱回収のためのシステムへと導かれる。煙道ガス断熱/軸流式圧縮機5は、この場所で遠心圧縮機を代わりに用いた場合と比べ高い温度(170〜240℃)で煙道ガスから熱を回収することを可能にする。この熱は発電プラント内で有効に用いることができる。例えば、図示された実施形態においては、熱回収システムは、蒸気タービンシステムの水/蒸気サイクル9である。特定の一例において、この水流は、給水予熱器又は凝縮物抽出ポンプに接続される。凝縮物の一部は直接煙道ガスで加熱することができ、それにより、低圧加熱器を迂回できる。低圧加熱器の蒸気消費量は減少し、その結果、より多くの蒸気がサイクル蒸気タービン内で膨張するので、プラントはより多くの電力を生成できる。煙道ガス断熱/軸流式圧縮機を使用することにより、煙道ガス遠心式圧縮機のみを有する発電プラントの正味出力に対し、発電プラントの正味発電出力を0.5%から1%までの範囲で上昇させることができる。本発明に係る発電プラントは、遠心圧縮機のみを備える発電プラントと同数の圧縮装置を備えているにもかかわらず、より大きな出力を達成する。
【0026】
熱交換器8を通過後の煙道ガスの温度は例えば50℃である。煙道ガス側では、熱交換器8は、ライン10経由で、更なる熱交換器又は冷却器11に接続さている。そこで、煙道ガスは例えば30℃の温度まで更に冷却される。この冷却の結果得られる熱は低品位なものであり、散逸させてよい。
【0027】
ライン13は、冷却器11から、駆動装置17により駆動される結合圧縮システムC2へと通じている。結合圧縮システムC2は、シャフト16上に配置され駆動装置17により駆動される低圧煙道ガス圧縮機14及び高圧CO圧縮機15を備える。低圧煙道ガス圧縮機は、例えば、中間冷却器を備えた2段式の遠心圧縮機を有することができる。一方、高圧CO圧縮機は、例えば、中間冷却器を備えた4〜6段を有することができる。断熱圧縮機の吐出圧力がより低い場合、すなわち、5〜20bar absの吐出圧力範囲にある場合、低圧煙道ガス遠心圧縮機は2段ではなく3段を有していてもよい。煙道ガスは、低圧圧縮機14により例えば30bar absの圧力に圧縮され、ライン18経由で脱水ユニット19へと導かれ、その後低温ユニット20へと導かれる。低温ユニットにおいて、煙道ガスは分離され、精製COガス流、及び、窒素、酸素アルゴン等の不活性ガスを含むベントガスになる。ベントガスは、ライン21経由でエキスパンダー22へと送られる。エキスパンダー22は、同一のシャフト16に取り付けることも、独立したシャフトに取り付けることもできる。本発明に係る煙道ガス処理システムにおいては、低圧煙道ガス圧縮システム14と高圧CO圧縮システム15とは同じシャフト上に配置される。一方で、低圧煙道ガス圧縮システムは、低温精製システムの上流に配置され、高圧CO圧縮システムは精製システムの下流に配置される。
【0028】
輸送や貯蔵に十分な濃度のCOを主に含有するに至った低温精製された煙道ガスは、ユニット20から、110bar absの圧力へと更に圧縮するための高圧圧縮機システム15へと導かれる。そこから、精製された煙道ガスは最終的に、ライン3を経由して、COの更なる利用のためのシステム4へと導かれる。この低温処理は、精製COガスが、それぞれ異なる2つの圧力の2つの別の流れとして圧縮機システム15へと供給される点で最適化することができる。これにより、圧縮機の動力消費量は最小化される。一方の第1の低圧ラインは、精製COガスを圧縮機システム15の前部入口へと供給し、第2の中間圧力ラインは、精製COガスを圧縮機システム15の中間段へと供給する。
【符号の説明】
【0029】
1 煙道ガス処理用システム
2 発電プラントからの煙道ガスライン
3 精製COガス用ライン
4 精製COの輸送、貯蔵又は更なる利用のためのシステム
5 断熱圧縮機
6 駆動装置
7 煙道ガスライン
8 熱交換器
9 冷媒用システム
10 煙道ガスライン
11 熱交換器
12 冷媒用システム
13 煙道ガスライン
14 煙道ガス用低圧圧縮機
15 COガス用高圧圧縮機
16 シャフト
17 結合された低圧及び高圧圧縮機用駆動装置
18 煙道ガスライン
19 脱水ユニット
20 低温ユニット
21 不活性ガス用ライン
22 ベント不活性ガス用エキスパンダー
C1 断熱圧縮機
C2 結合圧縮装置
HR 熱回収システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料の燃焼により生じる煙道ガスを処理するためのシステムを備える電気エネルギーを発生させるための化石燃料火力発電プラントにおいて、
前記煙道ガス処理システムは、
中間冷却を行わない断熱軸流式圧縮機である第1の低圧煙道ガス圧縮機(5)と、
前記第1の低圧煙道ガス圧縮機(5)の下流に配置され、圧縮された前記煙道ガスから前記発電プラントへ又は前記発電プラントに接続されたシステムへの熱移動を行うように構成・配置された1つ以上の熱交換器(8,11)と、
前記1つ以上の熱交換器(8,11)の下流に配置され、1つ以上の段と1つ以上の冷却器とを有する第2の低圧煙道ガス圧縮機(14)と、
前記第2の低圧煙道ガス圧縮機(14)の下流に配置された、前記煙道ガスから不活性ガスを除去することにより前記煙道ガスを低温精製するためのユニット(20)と、
前記低温精製するためのユニット(20)の下流に配置され、前記低温精製するためのユニット(20)より生じるCO流を圧縮するよう構成・配置された、幾つかの段と1つ以上の冷却器とを有する高圧CO圧縮機システム(15)と
を備え、
前記第2の低圧煙道ガス圧縮機(14)と前記高圧CO圧縮機システム(15)との両方は、単一の装置(C2)内で結合され、1つの共通駆動装置(17)により駆動される1本の共通シャフト(16)上に配置されていることを特徴とする化石燃料火力発電プラント。
【請求項2】
前記煙道ガス処理システム(1)は、前記第2の低圧煙道ガス圧縮機(14)の下流に配置された脱水ユニット(19)を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の発電プラント。
【請求項3】
前記第2の低圧煙道ガス圧縮機(14)は2段の低圧圧縮機段を備え、
前記高圧CO圧縮機システム(15)は4〜6段の高圧圧縮機段を備え、
前記2段の低圧圧縮機段と前記4〜6段の高圧圧縮機段とは単一のシャフト上に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の発電プラント。
【請求項4】
前記第2の低圧煙道ガス圧縮機(14)は3段の低圧圧縮機段を備え、
前記高圧CO圧縮機システム(15)は4〜6段の高圧圧縮機段を備え、
前記3段の低圧圧縮機段と前記4〜6段の高圧圧縮機段とは単一のシャフト上に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の発電プラント。
【請求項5】
前記熱交換器(8)は、熱回収のために水流システム(9)との熱交換を行うように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の発電プラント。
【請求項6】
前記水流システム(9)は、蒸気タービン発電プラントの水/蒸気サイクルの一部であることを特徴とする、請求項5に記載の発電プラント。
【請求項7】
前記水流システム(9)は、凝縮物抽出ポンプに接続されていることを特徴とする、請求項6に記載の発電プラント。
【請求項8】
前記断熱圧縮機(5)は、前記煙道ガスの吐出圧力が5bar absから20bar absまでの範囲の圧力となるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の発電プラント。
【請求項9】
前記断熱圧縮機(5)は、前記煙道ガスの吐出圧力が7bar absから9bar absまでの範囲の圧力となるように構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の発電プラント。
【請求項10】
前記第1の低圧煙道ガス断熱圧縮機(5)及び前記第2の低圧煙道ガス圧縮機(14)は、前記第2の低圧煙道ガス圧縮機(14)の第1段の吐出圧力に対する前記第1の断熱圧縮機(5)の吐出圧力の比率が1.5から2.5までの範囲となるよう構成されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発電プラント。
【請求項11】
低圧精製COガス用の第1のラインが、前記低温精製ユニット(20)から前記高圧CO圧縮システム(15)の第1の入口へと通じており、
中圧精製COガス用の第2のラインが、前記低温精製ユニット(20)から前記高圧CO圧縮システム(15)の中間段へと通じていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発電プラント。
【請求項12】
前記煙道ガス処理システム(1)は、前記煙道ガス圧縮機(5,14)の上流の低圧煙道ガス処理システム内に又は前記断熱圧縮機(5)の後に配置されたSOx及びNOxの除去又は還元用システムを備えることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発電プラント。
【請求項13】
前記発電プラントは、ガス、石炭又は酸素吹石炭を燃料とするプラント、若しくは、ガスタービン発電プラントであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発電プラント。

【図1】
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【公表番号】特表2012−533025(P2012−533025A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519990(P2012−519990)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059971
【国際公開番号】WO2011/006862
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】