トイレ装置
【課題】トイレ室に設けられる各種のトイレ装置であって、誤検知を極力抑制して無駄な電力の消費を抑制しつつ、使用者が使用する際には所定の予備的動作を確実に実行可能なトイレ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】トイレ室内に設けられ、電波の送受信を行うドップラーセンサと、前記ドップラーセンサの出力信号に基づいて所定の制御を実行する制御部と、を備えたトイレ装置であって、前記制御部は、前記ドップラーセンサから出力されるドップラー信号の直流成分を検出する第1の検出手段と、前記ドップラーセンサ信号に含まれる周波数成分を検出する第2の検出手段と、を有し、トイレ室のドアの開動作に伴う前記ドップラーセンサ信号の直流成分と周波数成分の推移の少なくともいずれかに基づいてドアの設置環境を判定し、判定したドア設置環境に応じて検出閾値を設定して、前記ドアの開動作を検出するドア開検出モードを実行することを特徴とするトイレ装置を提供する。
【解決手段】トイレ室内に設けられ、電波の送受信を行うドップラーセンサと、前記ドップラーセンサの出力信号に基づいて所定の制御を実行する制御部と、を備えたトイレ装置であって、前記制御部は、前記ドップラーセンサから出力されるドップラー信号の直流成分を検出する第1の検出手段と、前記ドップラーセンサ信号に含まれる周波数成分を検出する第2の検出手段と、を有し、トイレ室のドアの開動作に伴う前記ドップラーセンサ信号の直流成分と周波数成分の推移の少なくともいずれかに基づいてドアの設置環境を判定し、判定したドア設置環境に応じて検出閾値を設定して、前記ドアの開動作を検出するドア開検出モードを実行することを特徴とするトイレ装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的にトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用と公共用とを問わず、トイレ装置に接近する使用者を検出できると便利な場合が多い。そのようなトイレ装置としては、例えば、便座を温めることができる暖房便座装置、使用者の「おしり」などを洗浄する温水洗浄便座装置、電動吐水機能を有する大便器や小便器、トイレ室に設置する手洗器、トイレ室の室内暖房装置、トイレ室の照明装置、トイレ室の音響再生装置などを挙げることができる。大便器や小便器などのトイレ装置の場合、使用者の接近を検知して、例えば、予め少量の洗浄水を流してボウル面を濡らすことにより、汚れの付着を抑制できる。また、手洗器などのトイレ装置の場合、使用者の接近を検知して、例えば、配管の水を急速加熱し、温かな水を提供できる。室内暖房装置、照明装置、音響再生装置などのトイレ装置の場合にも、使用者の接近を検知して、それぞれ、トイレ室内の急速暖房、照明の点灯、音響再生などを自動的に実行でき、便利であると同時に省エネルギーや節水などに資することができる。
【0003】
便座を温めることが可能な暖房便座装置において、トイレ室に入ってくる人を検知して便座を温めるための加熱部を駆動するものが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載されている技術は、マイクロ波を用いたドップラーセンサによって人を検知すると、便座のヒーターを駆動し、人を検知しないときは、ヒーターの駆動を停止して省電力と快適性の両立を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−230562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
家庭用であっても公共用であっても、便器が設置されている個々のトイレ室は、使用者一人が便器を使用可能なスペースがあれば足りることが多い。したがって、多くの場合、その奥行は、広くても数メートル程度である。また、トイレ空間は、日当たりがあまりよくない建物の隅に形成されることが多い。このため、特に冬場は、建物の他の空間よりも寒くなりがちである。
【0006】
特許文献1に記載の技術は、人を検知しない場合はヒーターの駆動を停止して省電力と快適性の両立を図るものである。しかしながら、上述したトイレ空間の特性を考慮すれば、トイレ室に人が入ったことを検知して便座のヒーターへの通電を開始しても、使用者が座るまでには十分に昇温できないおそれがある。
【0007】
このような事態に対処するため、ヒーターの昇温性能を高めたり、便座を熱伝導性の高い金属等によって形成したりといった工夫をすることも考えられる。
しかしながら、より高度の安全性と信頼性を担保することを考慮すれば、ヒーターは、通常の構造のままであり、便座も通常の樹脂製とすることが好ましい。
【0008】
このように、ヒーターは通常の構造のままであり、便座も通常の樹脂製とした場合でも、例えばドップラーセンサを用いてトイレ室の外にいる使用者を検知し、「入ってくるであろう」段階から便座の昇温を開始すれば、使用者が座るまでには便座を適温まで加熱することも容易となる。しかし、こうすると、使用者が実際にはトイレ室に入ってこなかった場合には、無駄な加熱を発生させることがあり得る。
【0009】
トイレ室の外にいる「人」を検知することはできても、その人が実際にトイレ室に入ってきて「使用者」となることを確実に検知するのは、難しい。トイレ室の外側を通った人が、そのまま通り過ぎてしまうか、それとも実際にトイレ室に入ってくるか、の判別は、単にドップラーセンサを設けるだけでは、容易ではない。
【0010】
これに対して、使用者がトイレ室に入ってくる過程で必ず行う、「ドアを開ける」という行為を検出すれば、使用者がトイレ室に入ってくることを確実に検出できる。しかし、トイレ室のドアの設置環境、すなわちドアの位置や開く方向などは、さまざまである。このため、それぞれの設置環境に応じてドア開を確実に検出する技術が、必要とされる。
【0011】
本発明の実施の形態は、このような課題の認識に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の実施の形態は、トイレ室に設けられる各種のトイレ装置であって、誤検知を極力抑制して無駄な電力の消費を抑制しつつ、使用者が使用する際には所定の予備的動作を確実に実行可能なトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係るトイレ装置は、トイレ室内に設けられ、電波の送受信を行うドップラーセンサと、前記ドップラーセンサの出力信号に基づいて所定の制御を実行する制御部と、を備えたトイレ装置であって、前記制御部は、前記ドップラーセンサから出力されるドップラー信号の直流成分を検出する第1の検出手段と、前記ドップラーセンサ信号に含まれる周波数成分を検出する第2の検出手段と、を有し、トイレ室のドアの開動作に伴う前記ドップラーセンサ信号の直流成分と周波数成分の推移の少なくともいずれかに基づいてドアの設置環境を判定し、判定したドア設置環境に応じて検出閾値を設定して、前記ドアの開動作を検出するドア開検出モードを実行することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るトイレ装置は、トイレ室のドアが開いたことをドップラーセンサにて検出し、それをトリガーとして、例えばヒーターを駆動させるなどの所定の動作を実行する。ドップラーセンサは、直流成分と周波数成分とが混ざったドップラー信号を出力するが、ドアの設置位置や開閉種類といった環境の違いにより、「ドアを開く」という操作においても、それらの信号成分が異なったドップラー信号が出力される。
【0014】
そこで本発明ではこの点に着目し、ドアを開く際に発生するドップラー信号に含まれる直流成分と周波数成分とを、例えば周波数フィルタにて取り出し、それらの電圧レベル(振幅)と周波数の変化によって、ドア設置環境を検出する。
【0015】
ドップラーセンサは、便座よりも前方に対しマイクロ波を送信しており、例えば、センサ前方が最も電波強度が強く、側方では前方よりも電波強度が弱くなっている。そのため、センサ前方でドアが開く場合には、大振幅の信号が出力され、センサー側方でドアが開く場合には小振幅の信号が出力される。このため、同一の閾値を用いて検出しようとすると、ドア設置環境毎に検出感度が異なってしまい、ドアの開動作を精度よく検出できず、便座の加熱など最適なタイミングで実行させることができない。また感度が高すぎる場合、トイレ室の外側傍を通った人を誤検出する可能性も高くなる。
【0016】
これに対して、本実施形態によれば、検出したドア設置環境に応じて、最適なドア検出閾値を自動的に設定することで、誤検出の可能性を効果的に低減できる。
【0017】
また、前記制御部は、前記トイレ室に入室する人を検出する人体検出モードをさらに実行可能であり、前記第1の検出手段により前記ドアの角度を検出し、前記検出した結果に基づいて前記ドアが閉状態であると判定したときは、前記ドア開検出モードを実行し、前記検出した結果に基づいて前記ドアが開状態であると判定したときは、人体検出モードを実行するようにしてもよい。
【0018】
すなわち、検出したドア設置位置に応じて、ドップラー信号の直流成分のレベルに基づいてドア角度を検出することができる。ドアが閉じている場合、ドアに遮られてトイレ室前を通り過ぎる人を検出し難くなっているため、ドア検出率を上げるため閾値を低く設定することができる。一方、ドアが完全に閉まっていない場合には、トイレ室前を通り過ぎてしまう人を検出してしまう可能性があるため閾値を高く設定することができる。
【0019】
また、ドアが開ききっている場合には、入室者がトイレ室に入るときドア開に対応するドップラー信号は発生せず、ドア開検出することができないため、人体検出に切り替えることもできる。
【0020】
また、前記制御部は、前記トイレ室に入室する人を検出する人体検出モードをさらに実行可能であり、前記ドア開検出モードの実行中にドアの開動作を検出しなかったにもかかわらず、トイレ室への人の入室に関する情報を入手した場合には、前記人体検出モードを実行するようにしてもよい。
【0021】
すなわち、ドア設置環境検出時に、ドア開動作に対応するドップラー信号がほとんど発生しない場合もあり得るため、ドア開信号を検出できない場合には、人体検出に切り替えてもよい。こうすれば、例えば、ドア設置環境によりドア信号が小さく検出できないような場合でも、人体検出モードに切り替えることで、未検出を防止することができる。
【0022】
また、前記第2の検出手段は、前記周波数成分を検出する周波数フィルタ処理を実行し、前記判定したドア設置環境に基づいて、前記周波数フィルタの帯域を設定するようにしてもよい。
こうすると、各ドア設置環境に対する周波数範囲のみを対象に検出処理するため、検出精度を向上できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トイレ室内に設けられた便器に取り付けられる暖房便座装置などの各種のトイレ装置であって、誤検知を極力抑制して無駄な電力の消費を抑制しつつ、使用者が使用する際には所定の予備的動作が確実に実行されるトイレ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態である暖房便座装置が設置されたトイレ室を表す模式側面図である。
【図2】本発明の実施形態である暖房便座装置が設置されたトイレ装置を表す模式平面図である。
【図3】本発明の実施形態である暖房便座装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】ドップラーセンサ部が送信するマイクロ波による定在波を示す模式平面図である。
【図5】ドップラーセンサ部が送信するマイクロ波による定在波を示す模式平面図である。
【図6】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図7】図6に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図8】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図9】図8に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図10】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図11】図10に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図12】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図13】図12に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図14】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図15】図14に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図16】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図17】図16に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図18】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図19】図18に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図20】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図21】図20に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図22】図3に示す暖房便座装置において、ドア設置環境を検出する処理を説明するためのフローチャートである。
【図23】ドア設置環境検出からドア開検出までの流れを示すフローチャートである。
【図24】ドア開検出の流れを示すフローチャートである。
【図25】ドア開検出の流れを示すフローチャートである。
【図26】ドア角度を検出するためのテーブルである。
【図27】ドア開状態における人体検出モードへの切り替え判定処理を示すフローチャートである。
【図28】ドア開検出の可否を判定する処理を示すフローチャートである。
【図29】ドア開検出不可時における人体検出モードへの切り替え判定処理を示すフローチャートである。
【図30】人体検出モードからドア開検出モードへの切り替え判定処理を示すフローチャートである。
【図31】ドア設置環境に応じて切り替える周波数フィルタの周波数帯域を示すテーブルである。
【図32】ドア設置環境の検出、ドア開検出及び人体検出の全体の処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は、適宜省略する。
本発明の実施形態に係るトイレ装置の一例としての暖房便座装置について、図1を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る暖房便座装置HSを、大便器SBに取り付けた状態を示す模式側面図である。
また、図2は、図1に対応する模式平面図である。
【0026】
図1及び図2に表したように、大便器SBは、トイレ室TRのなかに設置されている。トイレ室TRには、ドアDRが設けられ、人(使用者)Mは、このドアDRを開けて、トイレ室TRに入室する。
【0027】
大便器SBには、暖房便座装置HSが取り付けられている。暖房便座装置HSは、便座10と、便蓋11と、加熱部12と、ドップラーセンサ部13と、制御部14と、を備えている。
便座10は、大便器SBを使用する際に使用者が着座するための座であって、大便器SBの奥側を軸として回動可能に取り付けられている。便蓋11は、便座10を覆うように取り付けられている蓋であって、大便器SBの奥側を軸として回動可能に取り付けられている。
加熱部12は、便座10の着座面を所定の温度まで昇温させる加熱源を有する。加熱源としては、ヒータや、ランプ、電磁誘導加熱など、各種の方式のものを用いることができる。所定の温度は、例えば、使用者が便座10に着座した際に少なくとも冷たいとは感じない程度の温度である。所定の温度は、加熱部12が便座10を昇温する際の設定温度(定常状態となる温度)と同じ温度であっても、設定温度よりもある程度低い温度であってもよい。
【0028】
制御部14は、ドップラーセンサ部13の出力に基づいて加熱部12を駆動する制御を実行する。具体的には、制御部14は、例えば、ドップラーセンサ部13からのドップラー信号の電圧レベルが検出閾値を上回ると加熱部12を駆動する。
【0029】
ドップラーセンサ部13からは、便座10の前方側に向けて、送信波となるマイクロ波が送信される。図1に表した具体例の場合、大便器SB及び便座10は、トイレ室TRと通路CRとを隔てるドアDRに向けて設置されており、マイクロ波もドアDRに向けて送信されている。
【0030】
ドップラーセンサ部13から送信されたマイクロ波は、トイレ室TRの外側にいる人やトイレ室TRの中にいる人、ドアDRなどにより反射される。ドップラーセンサ部13は、この反射波を受信部(図3参照)で受信し、送信波と反射波との差分の情報を含んだドップラー信号を生成する。
ドップラーセンサ部13から送信される送信波によって形成される検知領域SAは、ドアDRにより減衰を受けるが、ドアDRを突き抜けた近傍にまで至っている。
【0031】
図2に表したように、ドップラーセンサ部13の検知領域SAは、ドアDRを含んでいる。なお、図2に表した具体例の場合、検知領域SAは、ドアDRを突き抜けてドアDR近傍の通路CRを含んでいる。このようにした場合、通路CRを通る人Mは、位置Maにいるときに検知領域SAに入る。しかし、人Mが、位置Maから位置Mbに移動し単にトイレ室TR前を通過してしまうのか、それとも位置Maから位置Mcに移動しドアDRを開けてトイレ室TRに入って使用者となるのか、は、不明である。
これに対して、本実施形態では、使用者がドアDRを開けてトイレ室TRに入る動作に着目し、ドアDRが開いたことを検出する。こうすることにより、使用者がトイレ室TRに入った場合のみ、便座10の温度を確実に上げておくことができる。したがって、本実施形態においては、ドップラーセンサ部13の検知領域SAは、ドアDRを含んでいればよく、必ずしもドアDRを突き抜けている必要はない。
【0032】
次に、図3を参照しながら、ドップラーセンサ部13、制御部14の具体的な構成及び動作について説明する。
図3は、暖房便座装置HSのブロック図である。
【0033】
ドップラーセンサ部13は、送信部131と、受信部132と、差分検出部133と、を有する。送信部131は、便座10の前方に向けて電波を送信するために例えば10.5GHzの電気信号である送信信号を生成する発振回路と、発振回路から出力される送信信号を10.5GHzのマイクロ波として送信するアンテナと、を有する。
【0034】
受信部132は、送信部131から送信されたマイクロ波が検出対象物によって反射された反射波を受信し、これを電気信号に変換した受信信号を出力する。差分検出部133は、送信信号と受信信号との差分の情報を含んだドップラー信号を生成して出力する。
【0035】
ドップラーセンサ部13を用いると、ドップラー効果を利用して以下の式(1)に基づいて検出対象物の動きを検出することができる。
ΔF=FS−Fb=2×FS×ν/c (1)
ΔF:ドップラー周波数(ドップラー信号の周波数)
FS:送信周波数(送信信号の周波数)
Fb:反射周波数(受信信号の周波数)
ν :検出対象物の移動速度
c :光速(3×108m/s)
送信部131から送信された周波数FSのマイクロ波は、速度νで移動している検出対象物(人MやドアDRなど)により反射される。この反射波は、相対運動によるドップラー周波数シフトを受けているため、その周波数はFbとなり、受信部132に受信される。そして、差分検出部133によって、送信波と反射波の周波数の差分となるドップラー周波数ΔFを含むドップラー信号が、検出信号として取り出される。このドップラー信号に基づいて、人体検出やドア検出が行われる。
【0036】
ドップラーセンサ部13から出力されるドップラー信号は、制御部14に出力される。制御部14において、ドップラー信号は、制御部14のA/D変換手段である受信出力部151によってデジタルドップラー信号に変換される。デジタルドップラー信号は、周波数フィルタ152によって、ドア検出、人体検出に必要な帯域以外の周波数成分が除去され、昇温開始判定部153に入力される。
【0037】
昇温開始判定部153は、第1の検出手段153aと、第2の検出手段153bと、を有する。第1の検出手段153aは、デジタルドップラー信号に含まれる直流成分(またはドップラー信号の電圧成分)を検出する。第2の検出手段153bは、デジタルドップラー信号に含まれる周波数成分を検出する。そして、昇温開始判定部153は、トイレ室TRのドアDRの開動作に伴うドップラーセンサ信号の直流成分と周波数成分の推移の少なくともいずれかに基づいて、ドアDRの設置環境を検出する。また、昇温開始判定部153は、デジタルドップラー信号の直流成分と周波数成分の推移の少なくともいずれかに基づいて、ドアの開閉や、人体の入室の検出を行う。制御部14は、所定の条件に従い加熱部12を制御して、便座10を加熱する。
【0038】
図4及び図5は、ドップラーセンサ部13から送信されるマイクロ波が、大便器SB周辺にどのように分布しているのかを例示する模式平面図である。
ドップラーセンサ部13から放射されたマイクロ波は、例えば、ドップラーセンサ部13を中心として同心円状に拡がる。
図4は、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対して垂直方向(すなわち、マイクロ波の進行方向と平行な方向)に人体Mが移動する場合を表し、図5は、同心円状の波面に対して平行方向(すなわち、マイクロ波の進行方向に対して垂直方向)に人体Mが移動する場合を表す。ここで、人体Mの移動速度は、一定とする。
【0039】
図4に表した具体例の場合、同心円状に広がるマイクロ波に対して垂直方向に人体Mが移動しており、単位時間あたりに強弱ポイントを通過する回数が最も多くなる。この場合に発生するドップラー信号の周波数をfaとする。
【0040】
図5に表した具体例の場合、同心円状に広がるマイクロ波に対して平行方向に人体Mが移動しており、強弱ポイントを通過する回数は0(ゼロ)である。この場合に発生するドップラー信号の周波数をfc(=0Hz)とする。
faとfcの関係は、fa>fcである。また、faとfcの中間の周波数をfbとすると、fa>fb>fcという関係が成り立つ。
【0041】
図6は、トイレ室のドアの設置環境の一例を表す模式平面図である。
また、図7は、図6に表したドア設置環境DT1において、ドアDRが閉止状態から開き終わるまでのドップラー信号の電圧波形を模式的に表したグラフである。
以下、図6及び図7を参照しつつ、ドア設置環境DT1において、ドアが閉止状態から開ききるまでに発生するドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドップラー信号は、直流成分(DC成分)と、周波数成分と、を有する。図7において、横軸の時間t0から時間t2に向けて直線的に低下している成分が、直流成分である。一方、この直流成分をベースラインとして上下に振動している成分が、周波数成分である。
【0042】
図6に表したドアDRは、大便器SBの前方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は外開きである。なお、本願明細書において、「設置環境」とは、ドアの開閉の種類と、ドアの開閉方向と、を含むものとする。ドアDRが閉止状態から開く場合、最初は同心円状のマイクロ波の波面に対して垂直方向に移動するため、ドップラー信号の周波数は高い。一方、ドアDRが開ききるときには、同心円状のマイクロ波の波面と平行に近い軌跡を移動するため、図7に表したように、周波数は低くなる。
【0043】
ドアDRが開き始めた瞬間の時間をt0、開き終わりの時間をt2、その中間の時間をt1、t0からt1までの平均周波数をf01、t1からt2までの平均周波数をf12、t0からt2までの平均周波数をf02とすると、f01>f12となる。
【0044】
t0からt1までの間で、ある時間間隔毎に周波数成分のピークトゥーピークの値を取り、その値の平均値をv01とする。t1からt2までの間、t0からt2までの間でも同様に、ある時間間隔毎に周波数成分のピークトゥーピークの値を振幅として取り、その振幅の平均値をv12およびv02とする。
ドアDRの開き始めにはマイクロ波が反射するドア面積は大きいが、開き終わりにはその面積は小さくなるため、周波数成分の振幅の平均値v01>v12となる傾向がある。
【0045】
また、直流成分においても周波数成分と同様で、ドア開き始めの方が開き終わりより反射波を発生させる面積が大きいため、t0、t1、t2におけるそれぞれの直流成分の電圧(振幅)をV0、V1、V2とすると、図7に表したように、V0>V1>V2となる傾向がある。
以上説明したように、図6に表した設置環境DT1の場合、ドップラー信号の電圧波形は、ドアDRの開き始めでは周波数も電圧も高く、ドアDRの開き終わりに向けて周波数と電圧(振幅)は、ともに低下する傾向がある。
【0046】
図8、図10、図12、図14、図16、図18、図20は、図6とは異なるドア設置環境DT2〜DT8をそれぞれ表す模式平面図である。
また、図9、図11、図13、図15、図17、図19、図21は、ドア設置環境DT2〜DT8において、ドアが閉止状態から開き終わるまでのドップラー信号の電圧波形を例示するグラフである。
【0047】
まず、図8及び図9を参照しつつ、ドア設置環境DT2におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT2では、ドアDRは大便器SBの前方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は内開きである。ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状のマイクロ波の波面に対して、ドアDRの開き始めには垂直方向に、開き終わりには平行方向の軌跡で移動するため、図9に表したように、周波数f01>f12となる傾向がある。
【0048】
また、マイクロ波が反射するドア面積の遷移については、ドア設置環境DT1と同様のため、図9に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる。ただし、ドア設置環境DT1とは異なり、内開きドアであるため、電界強度の強い方向へ開くことになるので、周波数成分の電圧(振幅)v01、v12、v02は、ドア設置環境DT1の場合よりも大きくなる傾向がある。
【0049】
次に、図10及び図11を参照しつつ、ドア設置環境DT3におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT3では、ドアDRは大便器SBの前方に設置されており、開閉種類は引き戸である。ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対して、ドアDRは平行方向に動くため周波数は低く(fc<f02<fb)、波面に対する角度がほぼ一定であるため、図11に表したように、周波数変動が少ない(f01≒f12)波形が発生する傾向がある。
【0050】
また、ドアDRの開き始めにはマイクロ波を反射するドア面積は大きいが、開き終わりにはその面積は小さくなるため、図11に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる傾向がある。
【0051】
次に、図12及び図13を参照しつつ、ドア設置環境DT4におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT4では、ドアDRは大便器SBの側方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は外開き、ヒンジ位置は大便器SBの遠方である。ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対して、ドアDRは垂直方向に動くため周波数は高く(fb<f02<fa)、波面に対する角度がほぼ一定であるため、図13に表したように、周波数変動が少ない(f01≒f12)波形が発生する傾向がある。
【0052】
また、ドアDRが閉止状態から開く場合、ドップラーセンサ部13の遠方である電界強度の弱い方向に開くため、図13に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる傾向がある。
【0053】
次に、図14及び図15を参照しつつ、ドア設置環境DT5におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT5では、ドアDRは大便器SBの側方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は内開き、ヒンジ位置は大便器SBの遠方である。ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状のマイクロ波の波面に対して、ドアDRは、開き始めには平行方向に動き、開き終わりには垂直方向に動くため、図15に表したように、f01<f12となる傾向がある。
【0054】
また、ドアDRが閉止状態から開く場合、ドップラーセンサ部13の遠方である電界強度の弱い方向に開くため、図15に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる傾向がある。
【0055】
次に、図16及び図17を参照しつつ、ドア設置環境DT6におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT6では、ドアDRは大便器SBの側方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は外開き、ヒンジ位置は大便器SBの近方である。ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状のマイクロ波の波面に対して、ドアDRは平行方向に動くため周波数が低く(fc<f02<fb)、マイクロ波の波面に対する角度がほぼ一定であるため、図17に表したように、周波数変動が少ない(f01≒f12)波形が発生する傾向がある。
【0056】
また、ドアDRの開き終わりには、側壁によるマイクロ波の減衰で、ドアに届く電界強度が低下するため、図17に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる傾向がある。
【0057】
次に、図18及び図19を参照しつつ、ドア設置環境DT7におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT7では、ドアDRは大便器SBの側方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は内開き、ヒンジ位置は大便器SBの近方である。ドアが閉止状態から開く場合、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対して、垂直方向に動くため周波数が高く(fb<f02<fa)、マイクロ波の波面に対する角度がほぼ一定であるため、図19に表したように、周波数変動が少ない(f01≒f12)波形が発生する傾向がある。
【0058】
また、ドアDRが閉止状態から開く場合、ドップラーセンサ部13の近方である電界強度の強い方向に開くため、図19に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01<v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0<V1<V2となる傾向がある。
【0059】
次に、図20及び図21を参照しつつ、ドア設置環境DT8におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT8では、ドアDRは大便器SBの側方に設置されており、開閉種類は引き戸である。また、ドアDRを開けると、トイレ室TRの側壁の裏側にドアDRが隠れるものとする。
ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対して、垂直方向に動くため周波数が高く(fb<f02<fa)、マイクロ波の波面に対する角度がほぼ一定であるため、図21に表したように、周波数変動が少ない(f01≒f12)波形が発生する傾向がある。
【0060】
また、ドアDRの開き終わりには、側壁による減衰で、ドアに届く電界強度が低下するため、図21に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる傾向がある。
なお、仮に、ドアDRを開いても、トイレ室TRの側壁の裏側にドアDRが隠れないような場合には、ドアDRの開き終わりにかけて、電圧(振幅)の低下は生じにくい。逆に、このような場合には、ドアDRを開くと、ドアDRがドップラーセンサ部13に近づくことにより周波数成分及び直流成分の電圧(振幅)は上昇する傾向がある。
【0061】
以上説明したように、ドアの設置環境に応じて、ドア開の動作にともなうドップラー信号の電圧波形には、それぞれ傾向がある。本実施形態においては、これらの傾向を識別することにより、ドップラーセンサ部13を用いて、ドアの設置環境を検出することが可能となる。
なお、このようなドア設置環境の検出は、例えば、トイレ装置をトイレ室に設置した後の初回の動作のときのみ実施し、検出したドア設置環境に応じて、適切なパラメータを設定し、以後の動作を実行するようにしてもよい。
【0062】
図22は、ドア設置環境を検出するためのステップを例示するフローチャートである。各ステップS01〜S05においては、図7、図9、図11、図13、図15、図17、図19、図21に例示したドップラー信号の電圧波形の傾向を比較することで処理を進める。
ステップS01では、ドア閉止状態における直流の電圧(振幅)成分V0とドアが開ききった場合の直流成分V2との大小を比較する。図6、図8、図10、図12、図14、図16、図18、図20に例示したドア設置環境DT1〜DT8の中で、ドア設置環境DT7のみがV2>V0という傾向を有する。そのためV2>V0を検出した場合には、ドア設置環境をDT7と判別し、ドア設置環境検出を終了する。V2>V0とならない場合には、ステップS02の処理に進む。
【0063】
ステップS02では、ドップラー信号の周波数成分において、t0からt1までの平均周波数f01と、t1からt2までの平均周波数f12と、の大小を比較する。f01>f12の場合には、ドア設置環境DT1とDT2と判別し、ドア設置環境検出を終了する。f01>f12とならない場合には、ステップS03の処理に進む。
【0064】
ステップS03では、ステップS02と同様に平均周波数f01とf12との大小を比較する。f01<f12となる場合には、ドア設置環境DT5と判別し、ドア設置環境検出を終了する。f01<f12とならない場合には、ステップS04の処理に進む。
【0065】
ステップS04では、t0からt2までの平均周波数f02の大小を判定する。マイクロ波の同心円の波面に対して常に垂直に近い角度でドア開動作が行われる場合、fb≦f02≦faとなる。この場合には、DT4もしくはDT8と判別し、ドア設置環境検出を終了する。fb≦f02≦faとならない場合には、ステップS05の処理に進む。
【0066】
ステップS05では、ステップS01からS04において判別できていないドア設置環境DT3とDT6を判別する。DT3とDT6では、ドアは閉止状態から開ききるまでの間に、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対してほぼ平行に移動するため、共に周波数は低い。ただし、ドア設置位置がDT3では大便器SBの前方、DT6では大便器SBの側方である。そのためドアが開ききった場合の直流成分V2が異なる。大便器SBの前方にてドアが全開の場合の直流成分の電圧(振幅)をVf、大便器SBの側面にてドアが全開の場合(ただし、開き戸でヒンジ位置が大便器SB近方側、内開きの場合を除く)の直流成分の電圧(振幅)をVsとすると、Vs>Vfとなる。
【0067】
これより、Vf<V2≦Vsとなる場合には、DT3と判別し、ドア設置環境検出を終了する。Vf<V2≦Vsとならない場合には、DT6と判別し、ドア設置環境検出を終了する。
【0068】
以上説明したフローにてドア設置環境を検出し、ドア設置環境に応じた閾値を設定する。
そして、このように設定した閾値に基づいて、ドア開検出、すなわちドアDRが開いたことの検出を実行する。
【0069】
図23は、ドア設置環境から閾値設定、ドア開検出までのステップを示すフローチャートである。
ドアDRの設置環境を検出し(ステップS01〜S05)、ドアが大便器SBの前方に設置されていている場合のドア検出閾値をTHaと設定し、ドアが大便器SBの側方に設置されている場合のドア検出閾値をTHbと設定する。このとき、THa>THbとすることが望ましい。
【0070】
ドア設置環境DT1、DT2、DT3の場合には、ドアが大便器SBの前方に設置されているため、ドア検出閾値をTHaと設定する(ステップS07、S10)。一方、ドア設置環境DT4、DT5、DT6、DT7、DT8の場合には、ドアが大便器SBの側方に設置されているためドア検出閾値をTHbと設定する(ステップS06、S08、S09、S11)。
ドア開検出(ステップS12)では、例えば、周波数成分の電圧振幅が閾値THを超えるとドア開と判定し、昇温を開始する。このとき、ドア設置環境により閾値THを可変することで、ドア前を通過する非使用者の誤検知を防止することができる。図1に表した具体例の場合、マイクロ波は大便器SBの前方に向けて送信され、前方方向での電界強度が最も強い。そのため、ドアが大便器SBの前方に設置されている場合には、トイレ室TRに入室せずにドア前を通り過ぎるだけ非使用者を誤検出しないように、ドア検出閾値を上げることが望ましい。
【0071】
一方、ドアが大便器SBの側方に設置されている場合には、前方よりも側方の方が電界強度が弱いことより、トイレ室TRに入室せずドア前を通り過ぎるだけの非使用者を誤検出する傾向は低くなるが、ドア開による検出信号そのものも低くなってしまうため、ドア検出閾値を低くする必要がある。
【0072】
図24は、ドア設置環境DT1、DT2、DT3の場合のドア開検出を示すフローチャートである。
また、図25は、ドア設置環境DT4、DT5、DT6、DT7、DT8の場合のドア開検出を示すフローチャートである。
【0073】
ドア閉状態での直流成分の電圧(振幅)V0は、どのドア設置環境においても等しい。しかし、ドア開状態や、ドア開状態に至るまでの直流成分がドア設置環境によって異なるため、これを利用してドア開閉状態を検出することができる。
各ドア設置環境におけるドア開閉状態に対する直流成分は、例えば図7、図9、図11、図13、図15、図17、図19、図21に表したとおりである。
各ドア設置環境における、半開き(t1)の場合の直流成分の電圧(振幅)、また、開き終わった場合(t2)の直流成分の電圧(振幅)を、それぞれ、ドア設置環境DT1、DT2、DT3の場合にはVx1、Vx2と設定し、ドア設置環境DT4、DT5、DT6、DT8の場合にはVy1、Vy2と設定し、ドア設置環境DT7の場合にはVz1、Vz2と設定する。
【0074】
各ドア設置環境において、ドア閉からドア開へと遷移する場合、直流成分の電圧(振幅)はV0から、Vx1もしくはVy1、Vx1を経て、Vx2もしくはVy2、Vz2へと変化する。この直流成分の変化量にて、ドア角度すなわち、ドアの開閉角度を検出することができる。
【0075】
図7を参照しながら、ドア設置環境DT1の場合について説明する。
ドア閉時からドア開時となるまでに、直流成分の電圧(振幅)はV0からVx1を経て、Vx2に変化する。この場合のドア開閉状態を、図6を参照しながら説明する。
ドア角度は、0度(ドア閉時)〜90度(ドア開時)へと変化する。ドア角度0度の場合には、直流成分の電圧(振幅)はV0である。ドア角度45度の場合には、直流成分の電圧(振幅)はVx1である。ドア角度90度の場合には、直流成分の電圧(振幅)はVx2となる。そのためV0からVx2に変化するまでの直流成分の電圧(振幅)の変化量によってドア角度を検出できる。例えば、ドア角度をAnとすると、V=(V0−Vx2)×An÷90+Vx2となるため、An=90(V−V2)÷(V0−Vx2)とすることで、おおよそのドア角度を検出することができる。
図26は、各ドア設置環境において、ドア角度を0度、45度、90度の3段階で検出するためのテーブルの一例である。
【0076】
ところで、ドア開の状態においてトイレ室TRに使用者が入室するとき、ドアは既に開状態にあるため、ドア開、すなわちドアDRが開くことを検出できない。そこで、直流成分の電圧(振幅)を検出し、図26に例示したテーブルなどを用いて、待機状態のドアDRの角度を検出する。そして、検出したドア角度に基づいて、ドアが開状態であると判定した場合には周波数フィルタ152の周波数通過域をドア開検出用の帯域から人体検出用の帯域に変更する。すなわち、検出モードをドア開検出モードから人体検出モードに切り替える。これにより、ドア開状態での使用者の入室検出を実現できる。
図27は、ドア開状態での人体検出モードへの切り替え処理を示すフローチャートである。
【0077】
ドア開検出用の周波数通過域をFd、人体検出用の周波数通過域をFmとする。例えば、ドア設置環境DT1の場合に、ドア角度45度以上で人体検出モードに切り替えるとする。この場合、直流成分が(Vx−V0)/2以上となると、周波数フィルタ152の周波数通過域をFdからFmへと切り替える(ステップS25)。
【0078】
すなわち、使用者が退室後の待機状態において、ドア角度を検出(ステップS23)し、直流成分が(Vx−V0)/2以上の場合には、ドアが開いていると判定(ステップS24:no)して周波数フィルタ152の周波数通過域をFmへと切り替える(ステップS25)。一方、直流成分が(Vx−V0)/2未満となった場合には、ドアが閉じていると判定(ステップS24:yes)して、周波数通過域をFdに維持し、ドア検出モードに戻す(ステップS21)。
【0079】
一方、使用者がドアDRを開けてトイレ室TRに入室したにもかかわらず、ドア開検出モードにおいて、ドアDRの開動作を検出できないこともあり得る。このような場合には、使用者の入室に関する情報を制御部14が入手したときに、ドア開検出モードから、人体検出モードに切り替えてもよい。ここで、トイレ室TRへの人の入室に関する情報とは、例えば、便座の着座スイッチや着座センサなどによる使用者の便座への着座を検知や、その他の人体検知センサによる使用者の存在の検出や、使用者によるトイレ装置のいずれかのスイッチの操作など、挙げることができる。
【0080】
すなわち、ドア開による周波数成分の電圧振幅がTHaもしくはTHbを超えず、ドア開検出モードでドア開を検出できないまま、トイレ室TRへの人の入室に関する情報が得られた場合は、ドアの開閉を検出できていないことになる。つまり、設定したドア開検出モードにより、ドアの開閉の検出ができていない。
そこで、このようにドア開検出モードによるドア開の検出がないまま、着座を検出する事象が1回あるいは複数回発生する場合には、ドア開検出モードから人体検出モードに切り替えるようにしてもよい。
【0081】
図28は、ドア開検出可否の判定処理を示すフローチャートである。
ドア検出モード(ステップS31)において、ドア開を検出しない(ステップS32:no)にもかかわらず、便座への着座を検出したとき(ステップS33:yes)は、ドア開の検出を失敗したと判断する(ステップS34)。
【0082】
図29は、ドア開可否判定処理結果に基づき、ドア開検出モードから人体検出モードへの切り替え判定処理を示すフローチャートである。
すなわち、ドア検出モード(ステップS41)のとき、ドア開検出可否の判定を複数回繰り返す(ステップS42〜S44)。そして、いずれの判定においてもドア開検出を失敗した(ステップS42〜44:no)場合には、人体検出モードに切り替える(ステップS45)。
【0083】
図30は、人体検出モードからドア開検出モードに切り替える処理を示すフローチャートである。
人体検出モード(ステップS51)では、周波数成分の電圧振幅が人体検出閾値THjを超えると、人体検出を確定する。
【0084】
ここで、人体検出モードでの検出が複数回(例えば10回)確定(ステップS52)する度に、人体検出モードと同時にドア開検出モードも動作(ステップS53)させ、ドア開検出モードによるドア開検出の後に人体検出モードでの人体の検出を確定(ステップS54:yes)する事象が複数回(例えば3回連続で)発生する場合(ステップS55、S56:yes)には、人体検出モードを停止し、ドア開検出モードのみを動作させる(ステップS57)ようにしてもよい。
【0085】
一方、ドア設置環境検出モードにおいては、周波数フィルタ152を、ドア設置環境DT1〜DT8全てを検出できるような周波数通過域に設定するが、ドア設置環境を検出した後は、検出したドア設置環境に応じた周波数通過域を設定する。ここで、ドア設置環境DT1〜DT8において発生する周波数成分を通過させる周波数帯域をそれぞれF1〜F8とする。ドア設置環境を検出した後に、対応した周波数帯域をF1〜F8の中から選択し、それ以外の周波数成分を除去する。
【0086】
例えば、ドア設置環境DT1の場合には、fc≦F1≦faとなる。同様に、ドア設置環境DT2〜DT8の場合においても、それぞれfc≦F2≦fa、fc≦F3≦fb、fb≦F4≦fa、fc≦F5≦fa、fc≦F6≦fb、fb≦F7≦fa、fb≦F8≦faとなる。
図31は、このように、ドア設置環境に応じて切り替える、周波数フィルタの周波数帯域を例示するテーブルである。
【0087】
図32は、ドア開検出及び、人体検出の全体の流れの一例を表すフローチャートである。
【0088】
まず、トイレ装置の電源の投入が初回であるか否かを判定(ステップS61)し、初回であれば、ドア開閉検出の可否を判定する(ステップS62)。すなわち、ドアを開けた時に、ドップラー信号の直流成分と周波数成分に所定の遷移が生ずるか否かを判定する。検出が可である場合には、ドア設置環境を検出する(ステップS63)。これは、図22に関して前述したフローに対応する。そして、検出したドア設置環境に応じて、ドア開検出の閾値を決定する(ステップS64)。その後、待機状態でのドア角度の検出を実行する(ステップS65)。これは、例えば、図26及び図27に関して前述した如くである。ドアが開いていると判断したとき(ステップS65:no)は、ステップS70に戻る。
一方、ドアが閉じていると判断したとき(ステップS65:yes)は、図24及び図25に関して前述したフローによりドア開を検出(ステップS66:yes)し、加熱部を駆動させ、便座を加熱する(ステップS67)。
【0089】
一方、ドア開閉検出が否である場合(ステップS62:no)は、人体検出モードに切り替え(ステップS70)、人体検出を実行する(ステップS71)。人体を検出したとき(ステップS71:yes)は、ドア開閉検出の可否を再び判定し(ステップS72)、その結果にかかわらず、加熱部を駆動させて便座の加熱を開始する(ステップS73、S74)。
そして、ドア開閉検出が可である場合(ステップS72:yes)には、ドア開検出モードに切り替えて(ステップS75)、ドア開検出を実行する。
【0090】
以上説明した本具体例によれば、まず、トイレ装置をトイレ室に設置した後の初回の動作において、ドアの設置環境を検出し、それに応じて検出条件を自動的に設定する。そして、設定された条件でドアの開閉を検知するとともに、待機状態でドアが開いていないかも検出する。またさらに、ドアの開閉を検知できていないと判断した場合には、人体検知モードに切り替えて動作を継続し、この場合でもドアの開閉を再び検出可能であると判断した場合には、ドア開検出モードに再び切り替えて動作を実行する。
【0091】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、動作、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0092】
10:便座
11:便蓋
12:加熱部
13:ドップラーセンサ部
14:制御部
131:送信部
132:受信部
133:差分検出部
151:受信出力部
152:周波数フィルタ
153:昇温開始判定部
CR:通路
DR:ドア
DT1:ドア設置環境
DT2:ドア設置環境
DT3:ドア設置環境
DT4:ドア設置環境
DT5:ドア設置環境
DT6:ドア設置環境
DT7:ドア設置環境
DT8:ドア設置環境
HS:暖房便座装置
M:人
Mc:位置
Mb:位置
Mc:位置
SA:検知領域
SB:大便器
TR:トイレ室
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的にトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用と公共用とを問わず、トイレ装置に接近する使用者を検出できると便利な場合が多い。そのようなトイレ装置としては、例えば、便座を温めることができる暖房便座装置、使用者の「おしり」などを洗浄する温水洗浄便座装置、電動吐水機能を有する大便器や小便器、トイレ室に設置する手洗器、トイレ室の室内暖房装置、トイレ室の照明装置、トイレ室の音響再生装置などを挙げることができる。大便器や小便器などのトイレ装置の場合、使用者の接近を検知して、例えば、予め少量の洗浄水を流してボウル面を濡らすことにより、汚れの付着を抑制できる。また、手洗器などのトイレ装置の場合、使用者の接近を検知して、例えば、配管の水を急速加熱し、温かな水を提供できる。室内暖房装置、照明装置、音響再生装置などのトイレ装置の場合にも、使用者の接近を検知して、それぞれ、トイレ室内の急速暖房、照明の点灯、音響再生などを自動的に実行でき、便利であると同時に省エネルギーや節水などに資することができる。
【0003】
便座を温めることが可能な暖房便座装置において、トイレ室に入ってくる人を検知して便座を温めるための加熱部を駆動するものが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載されている技術は、マイクロ波を用いたドップラーセンサによって人を検知すると、便座のヒーターを駆動し、人を検知しないときは、ヒーターの駆動を停止して省電力と快適性の両立を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−230562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
家庭用であっても公共用であっても、便器が設置されている個々のトイレ室は、使用者一人が便器を使用可能なスペースがあれば足りることが多い。したがって、多くの場合、その奥行は、広くても数メートル程度である。また、トイレ空間は、日当たりがあまりよくない建物の隅に形成されることが多い。このため、特に冬場は、建物の他の空間よりも寒くなりがちである。
【0006】
特許文献1に記載の技術は、人を検知しない場合はヒーターの駆動を停止して省電力と快適性の両立を図るものである。しかしながら、上述したトイレ空間の特性を考慮すれば、トイレ室に人が入ったことを検知して便座のヒーターへの通電を開始しても、使用者が座るまでには十分に昇温できないおそれがある。
【0007】
このような事態に対処するため、ヒーターの昇温性能を高めたり、便座を熱伝導性の高い金属等によって形成したりといった工夫をすることも考えられる。
しかしながら、より高度の安全性と信頼性を担保することを考慮すれば、ヒーターは、通常の構造のままであり、便座も通常の樹脂製とすることが好ましい。
【0008】
このように、ヒーターは通常の構造のままであり、便座も通常の樹脂製とした場合でも、例えばドップラーセンサを用いてトイレ室の外にいる使用者を検知し、「入ってくるであろう」段階から便座の昇温を開始すれば、使用者が座るまでには便座を適温まで加熱することも容易となる。しかし、こうすると、使用者が実際にはトイレ室に入ってこなかった場合には、無駄な加熱を発生させることがあり得る。
【0009】
トイレ室の外にいる「人」を検知することはできても、その人が実際にトイレ室に入ってきて「使用者」となることを確実に検知するのは、難しい。トイレ室の外側を通った人が、そのまま通り過ぎてしまうか、それとも実際にトイレ室に入ってくるか、の判別は、単にドップラーセンサを設けるだけでは、容易ではない。
【0010】
これに対して、使用者がトイレ室に入ってくる過程で必ず行う、「ドアを開ける」という行為を検出すれば、使用者がトイレ室に入ってくることを確実に検出できる。しかし、トイレ室のドアの設置環境、すなわちドアの位置や開く方向などは、さまざまである。このため、それぞれの設置環境に応じてドア開を確実に検出する技術が、必要とされる。
【0011】
本発明の実施の形態は、このような課題の認識に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の実施の形態は、トイレ室に設けられる各種のトイレ装置であって、誤検知を極力抑制して無駄な電力の消費を抑制しつつ、使用者が使用する際には所定の予備的動作を確実に実行可能なトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係るトイレ装置は、トイレ室内に設けられ、電波の送受信を行うドップラーセンサと、前記ドップラーセンサの出力信号に基づいて所定の制御を実行する制御部と、を備えたトイレ装置であって、前記制御部は、前記ドップラーセンサから出力されるドップラー信号の直流成分を検出する第1の検出手段と、前記ドップラーセンサ信号に含まれる周波数成分を検出する第2の検出手段と、を有し、トイレ室のドアの開動作に伴う前記ドップラーセンサ信号の直流成分と周波数成分の推移の少なくともいずれかに基づいてドアの設置環境を判定し、判定したドア設置環境に応じて検出閾値を設定して、前記ドアの開動作を検出するドア開検出モードを実行することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るトイレ装置は、トイレ室のドアが開いたことをドップラーセンサにて検出し、それをトリガーとして、例えばヒーターを駆動させるなどの所定の動作を実行する。ドップラーセンサは、直流成分と周波数成分とが混ざったドップラー信号を出力するが、ドアの設置位置や開閉種類といった環境の違いにより、「ドアを開く」という操作においても、それらの信号成分が異なったドップラー信号が出力される。
【0014】
そこで本発明ではこの点に着目し、ドアを開く際に発生するドップラー信号に含まれる直流成分と周波数成分とを、例えば周波数フィルタにて取り出し、それらの電圧レベル(振幅)と周波数の変化によって、ドア設置環境を検出する。
【0015】
ドップラーセンサは、便座よりも前方に対しマイクロ波を送信しており、例えば、センサ前方が最も電波強度が強く、側方では前方よりも電波強度が弱くなっている。そのため、センサ前方でドアが開く場合には、大振幅の信号が出力され、センサー側方でドアが開く場合には小振幅の信号が出力される。このため、同一の閾値を用いて検出しようとすると、ドア設置環境毎に検出感度が異なってしまい、ドアの開動作を精度よく検出できず、便座の加熱など最適なタイミングで実行させることができない。また感度が高すぎる場合、トイレ室の外側傍を通った人を誤検出する可能性も高くなる。
【0016】
これに対して、本実施形態によれば、検出したドア設置環境に応じて、最適なドア検出閾値を自動的に設定することで、誤検出の可能性を効果的に低減できる。
【0017】
また、前記制御部は、前記トイレ室に入室する人を検出する人体検出モードをさらに実行可能であり、前記第1の検出手段により前記ドアの角度を検出し、前記検出した結果に基づいて前記ドアが閉状態であると判定したときは、前記ドア開検出モードを実行し、前記検出した結果に基づいて前記ドアが開状態であると判定したときは、人体検出モードを実行するようにしてもよい。
【0018】
すなわち、検出したドア設置位置に応じて、ドップラー信号の直流成分のレベルに基づいてドア角度を検出することができる。ドアが閉じている場合、ドアに遮られてトイレ室前を通り過ぎる人を検出し難くなっているため、ドア検出率を上げるため閾値を低く設定することができる。一方、ドアが完全に閉まっていない場合には、トイレ室前を通り過ぎてしまう人を検出してしまう可能性があるため閾値を高く設定することができる。
【0019】
また、ドアが開ききっている場合には、入室者がトイレ室に入るときドア開に対応するドップラー信号は発生せず、ドア開検出することができないため、人体検出に切り替えることもできる。
【0020】
また、前記制御部は、前記トイレ室に入室する人を検出する人体検出モードをさらに実行可能であり、前記ドア開検出モードの実行中にドアの開動作を検出しなかったにもかかわらず、トイレ室への人の入室に関する情報を入手した場合には、前記人体検出モードを実行するようにしてもよい。
【0021】
すなわち、ドア設置環境検出時に、ドア開動作に対応するドップラー信号がほとんど発生しない場合もあり得るため、ドア開信号を検出できない場合には、人体検出に切り替えてもよい。こうすれば、例えば、ドア設置環境によりドア信号が小さく検出できないような場合でも、人体検出モードに切り替えることで、未検出を防止することができる。
【0022】
また、前記第2の検出手段は、前記周波数成分を検出する周波数フィルタ処理を実行し、前記判定したドア設置環境に基づいて、前記周波数フィルタの帯域を設定するようにしてもよい。
こうすると、各ドア設置環境に対する周波数範囲のみを対象に検出処理するため、検出精度を向上できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トイレ室内に設けられた便器に取り付けられる暖房便座装置などの各種のトイレ装置であって、誤検知を極力抑制して無駄な電力の消費を抑制しつつ、使用者が使用する際には所定の予備的動作が確実に実行されるトイレ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態である暖房便座装置が設置されたトイレ室を表す模式側面図である。
【図2】本発明の実施形態である暖房便座装置が設置されたトイレ装置を表す模式平面図である。
【図3】本発明の実施形態である暖房便座装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図4】ドップラーセンサ部が送信するマイクロ波による定在波を示す模式平面図である。
【図5】ドップラーセンサ部が送信するマイクロ波による定在波を示す模式平面図である。
【図6】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図7】図6に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図8】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図9】図8に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図10】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図11】図10に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図12】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図13】図12に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図14】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図15】図14に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図16】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図17】図16に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図18】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図19】図18に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図20】ドア設置環境を示す模式平面図である。
【図21】図20に示すドア設置環境において、ドアが開く場合に発生するドップラー信号電圧を示すグラフ図である。
【図22】図3に示す暖房便座装置において、ドア設置環境を検出する処理を説明するためのフローチャートである。
【図23】ドア設置環境検出からドア開検出までの流れを示すフローチャートである。
【図24】ドア開検出の流れを示すフローチャートである。
【図25】ドア開検出の流れを示すフローチャートである。
【図26】ドア角度を検出するためのテーブルである。
【図27】ドア開状態における人体検出モードへの切り替え判定処理を示すフローチャートである。
【図28】ドア開検出の可否を判定する処理を示すフローチャートである。
【図29】ドア開検出不可時における人体検出モードへの切り替え判定処理を示すフローチャートである。
【図30】人体検出モードからドア開検出モードへの切り替え判定処理を示すフローチャートである。
【図31】ドア設置環境に応じて切り替える周波数フィルタの周波数帯域を示すテーブルである。
【図32】ドア設置環境の検出、ドア開検出及び人体検出の全体の処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は、適宜省略する。
本発明の実施形態に係るトイレ装置の一例としての暖房便座装置について、図1を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る暖房便座装置HSを、大便器SBに取り付けた状態を示す模式側面図である。
また、図2は、図1に対応する模式平面図である。
【0026】
図1及び図2に表したように、大便器SBは、トイレ室TRのなかに設置されている。トイレ室TRには、ドアDRが設けられ、人(使用者)Mは、このドアDRを開けて、トイレ室TRに入室する。
【0027】
大便器SBには、暖房便座装置HSが取り付けられている。暖房便座装置HSは、便座10と、便蓋11と、加熱部12と、ドップラーセンサ部13と、制御部14と、を備えている。
便座10は、大便器SBを使用する際に使用者が着座するための座であって、大便器SBの奥側を軸として回動可能に取り付けられている。便蓋11は、便座10を覆うように取り付けられている蓋であって、大便器SBの奥側を軸として回動可能に取り付けられている。
加熱部12は、便座10の着座面を所定の温度まで昇温させる加熱源を有する。加熱源としては、ヒータや、ランプ、電磁誘導加熱など、各種の方式のものを用いることができる。所定の温度は、例えば、使用者が便座10に着座した際に少なくとも冷たいとは感じない程度の温度である。所定の温度は、加熱部12が便座10を昇温する際の設定温度(定常状態となる温度)と同じ温度であっても、設定温度よりもある程度低い温度であってもよい。
【0028】
制御部14は、ドップラーセンサ部13の出力に基づいて加熱部12を駆動する制御を実行する。具体的には、制御部14は、例えば、ドップラーセンサ部13からのドップラー信号の電圧レベルが検出閾値を上回ると加熱部12を駆動する。
【0029】
ドップラーセンサ部13からは、便座10の前方側に向けて、送信波となるマイクロ波が送信される。図1に表した具体例の場合、大便器SB及び便座10は、トイレ室TRと通路CRとを隔てるドアDRに向けて設置されており、マイクロ波もドアDRに向けて送信されている。
【0030】
ドップラーセンサ部13から送信されたマイクロ波は、トイレ室TRの外側にいる人やトイレ室TRの中にいる人、ドアDRなどにより反射される。ドップラーセンサ部13は、この反射波を受信部(図3参照)で受信し、送信波と反射波との差分の情報を含んだドップラー信号を生成する。
ドップラーセンサ部13から送信される送信波によって形成される検知領域SAは、ドアDRにより減衰を受けるが、ドアDRを突き抜けた近傍にまで至っている。
【0031】
図2に表したように、ドップラーセンサ部13の検知領域SAは、ドアDRを含んでいる。なお、図2に表した具体例の場合、検知領域SAは、ドアDRを突き抜けてドアDR近傍の通路CRを含んでいる。このようにした場合、通路CRを通る人Mは、位置Maにいるときに検知領域SAに入る。しかし、人Mが、位置Maから位置Mbに移動し単にトイレ室TR前を通過してしまうのか、それとも位置Maから位置Mcに移動しドアDRを開けてトイレ室TRに入って使用者となるのか、は、不明である。
これに対して、本実施形態では、使用者がドアDRを開けてトイレ室TRに入る動作に着目し、ドアDRが開いたことを検出する。こうすることにより、使用者がトイレ室TRに入った場合のみ、便座10の温度を確実に上げておくことができる。したがって、本実施形態においては、ドップラーセンサ部13の検知領域SAは、ドアDRを含んでいればよく、必ずしもドアDRを突き抜けている必要はない。
【0032】
次に、図3を参照しながら、ドップラーセンサ部13、制御部14の具体的な構成及び動作について説明する。
図3は、暖房便座装置HSのブロック図である。
【0033】
ドップラーセンサ部13は、送信部131と、受信部132と、差分検出部133と、を有する。送信部131は、便座10の前方に向けて電波を送信するために例えば10.5GHzの電気信号である送信信号を生成する発振回路と、発振回路から出力される送信信号を10.5GHzのマイクロ波として送信するアンテナと、を有する。
【0034】
受信部132は、送信部131から送信されたマイクロ波が検出対象物によって反射された反射波を受信し、これを電気信号に変換した受信信号を出力する。差分検出部133は、送信信号と受信信号との差分の情報を含んだドップラー信号を生成して出力する。
【0035】
ドップラーセンサ部13を用いると、ドップラー効果を利用して以下の式(1)に基づいて検出対象物の動きを検出することができる。
ΔF=FS−Fb=2×FS×ν/c (1)
ΔF:ドップラー周波数(ドップラー信号の周波数)
FS:送信周波数(送信信号の周波数)
Fb:反射周波数(受信信号の周波数)
ν :検出対象物の移動速度
c :光速(3×108m/s)
送信部131から送信された周波数FSのマイクロ波は、速度νで移動している検出対象物(人MやドアDRなど)により反射される。この反射波は、相対運動によるドップラー周波数シフトを受けているため、その周波数はFbとなり、受信部132に受信される。そして、差分検出部133によって、送信波と反射波の周波数の差分となるドップラー周波数ΔFを含むドップラー信号が、検出信号として取り出される。このドップラー信号に基づいて、人体検出やドア検出が行われる。
【0036】
ドップラーセンサ部13から出力されるドップラー信号は、制御部14に出力される。制御部14において、ドップラー信号は、制御部14のA/D変換手段である受信出力部151によってデジタルドップラー信号に変換される。デジタルドップラー信号は、周波数フィルタ152によって、ドア検出、人体検出に必要な帯域以外の周波数成分が除去され、昇温開始判定部153に入力される。
【0037】
昇温開始判定部153は、第1の検出手段153aと、第2の検出手段153bと、を有する。第1の検出手段153aは、デジタルドップラー信号に含まれる直流成分(またはドップラー信号の電圧成分)を検出する。第2の検出手段153bは、デジタルドップラー信号に含まれる周波数成分を検出する。そして、昇温開始判定部153は、トイレ室TRのドアDRの開動作に伴うドップラーセンサ信号の直流成分と周波数成分の推移の少なくともいずれかに基づいて、ドアDRの設置環境を検出する。また、昇温開始判定部153は、デジタルドップラー信号の直流成分と周波数成分の推移の少なくともいずれかに基づいて、ドアの開閉や、人体の入室の検出を行う。制御部14は、所定の条件に従い加熱部12を制御して、便座10を加熱する。
【0038】
図4及び図5は、ドップラーセンサ部13から送信されるマイクロ波が、大便器SB周辺にどのように分布しているのかを例示する模式平面図である。
ドップラーセンサ部13から放射されたマイクロ波は、例えば、ドップラーセンサ部13を中心として同心円状に拡がる。
図4は、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対して垂直方向(すなわち、マイクロ波の進行方向と平行な方向)に人体Mが移動する場合を表し、図5は、同心円状の波面に対して平行方向(すなわち、マイクロ波の進行方向に対して垂直方向)に人体Mが移動する場合を表す。ここで、人体Mの移動速度は、一定とする。
【0039】
図4に表した具体例の場合、同心円状に広がるマイクロ波に対して垂直方向に人体Mが移動しており、単位時間あたりに強弱ポイントを通過する回数が最も多くなる。この場合に発生するドップラー信号の周波数をfaとする。
【0040】
図5に表した具体例の場合、同心円状に広がるマイクロ波に対して平行方向に人体Mが移動しており、強弱ポイントを通過する回数は0(ゼロ)である。この場合に発生するドップラー信号の周波数をfc(=0Hz)とする。
faとfcの関係は、fa>fcである。また、faとfcの中間の周波数をfbとすると、fa>fb>fcという関係が成り立つ。
【0041】
図6は、トイレ室のドアの設置環境の一例を表す模式平面図である。
また、図7は、図6に表したドア設置環境DT1において、ドアDRが閉止状態から開き終わるまでのドップラー信号の電圧波形を模式的に表したグラフである。
以下、図6及び図7を参照しつつ、ドア設置環境DT1において、ドアが閉止状態から開ききるまでに発生するドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドップラー信号は、直流成分(DC成分)と、周波数成分と、を有する。図7において、横軸の時間t0から時間t2に向けて直線的に低下している成分が、直流成分である。一方、この直流成分をベースラインとして上下に振動している成分が、周波数成分である。
【0042】
図6に表したドアDRは、大便器SBの前方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は外開きである。なお、本願明細書において、「設置環境」とは、ドアの開閉の種類と、ドアの開閉方向と、を含むものとする。ドアDRが閉止状態から開く場合、最初は同心円状のマイクロ波の波面に対して垂直方向に移動するため、ドップラー信号の周波数は高い。一方、ドアDRが開ききるときには、同心円状のマイクロ波の波面と平行に近い軌跡を移動するため、図7に表したように、周波数は低くなる。
【0043】
ドアDRが開き始めた瞬間の時間をt0、開き終わりの時間をt2、その中間の時間をt1、t0からt1までの平均周波数をf01、t1からt2までの平均周波数をf12、t0からt2までの平均周波数をf02とすると、f01>f12となる。
【0044】
t0からt1までの間で、ある時間間隔毎に周波数成分のピークトゥーピークの値を取り、その値の平均値をv01とする。t1からt2までの間、t0からt2までの間でも同様に、ある時間間隔毎に周波数成分のピークトゥーピークの値を振幅として取り、その振幅の平均値をv12およびv02とする。
ドアDRの開き始めにはマイクロ波が反射するドア面積は大きいが、開き終わりにはその面積は小さくなるため、周波数成分の振幅の平均値v01>v12となる傾向がある。
【0045】
また、直流成分においても周波数成分と同様で、ドア開き始めの方が開き終わりより反射波を発生させる面積が大きいため、t0、t1、t2におけるそれぞれの直流成分の電圧(振幅)をV0、V1、V2とすると、図7に表したように、V0>V1>V2となる傾向がある。
以上説明したように、図6に表した設置環境DT1の場合、ドップラー信号の電圧波形は、ドアDRの開き始めでは周波数も電圧も高く、ドアDRの開き終わりに向けて周波数と電圧(振幅)は、ともに低下する傾向がある。
【0046】
図8、図10、図12、図14、図16、図18、図20は、図6とは異なるドア設置環境DT2〜DT8をそれぞれ表す模式平面図である。
また、図9、図11、図13、図15、図17、図19、図21は、ドア設置環境DT2〜DT8において、ドアが閉止状態から開き終わるまでのドップラー信号の電圧波形を例示するグラフである。
【0047】
まず、図8及び図9を参照しつつ、ドア設置環境DT2におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT2では、ドアDRは大便器SBの前方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は内開きである。ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状のマイクロ波の波面に対して、ドアDRの開き始めには垂直方向に、開き終わりには平行方向の軌跡で移動するため、図9に表したように、周波数f01>f12となる傾向がある。
【0048】
また、マイクロ波が反射するドア面積の遷移については、ドア設置環境DT1と同様のため、図9に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる。ただし、ドア設置環境DT1とは異なり、内開きドアであるため、電界強度の強い方向へ開くことになるので、周波数成分の電圧(振幅)v01、v12、v02は、ドア設置環境DT1の場合よりも大きくなる傾向がある。
【0049】
次に、図10及び図11を参照しつつ、ドア設置環境DT3におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT3では、ドアDRは大便器SBの前方に設置されており、開閉種類は引き戸である。ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対して、ドアDRは平行方向に動くため周波数は低く(fc<f02<fb)、波面に対する角度がほぼ一定であるため、図11に表したように、周波数変動が少ない(f01≒f12)波形が発生する傾向がある。
【0050】
また、ドアDRの開き始めにはマイクロ波を反射するドア面積は大きいが、開き終わりにはその面積は小さくなるため、図11に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる傾向がある。
【0051】
次に、図12及び図13を参照しつつ、ドア設置環境DT4におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT4では、ドアDRは大便器SBの側方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は外開き、ヒンジ位置は大便器SBの遠方である。ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対して、ドアDRは垂直方向に動くため周波数は高く(fb<f02<fa)、波面に対する角度がほぼ一定であるため、図13に表したように、周波数変動が少ない(f01≒f12)波形が発生する傾向がある。
【0052】
また、ドアDRが閉止状態から開く場合、ドップラーセンサ部13の遠方である電界強度の弱い方向に開くため、図13に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる傾向がある。
【0053】
次に、図14及び図15を参照しつつ、ドア設置環境DT5におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT5では、ドアDRは大便器SBの側方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は内開き、ヒンジ位置は大便器SBの遠方である。ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状のマイクロ波の波面に対して、ドアDRは、開き始めには平行方向に動き、開き終わりには垂直方向に動くため、図15に表したように、f01<f12となる傾向がある。
【0054】
また、ドアDRが閉止状態から開く場合、ドップラーセンサ部13の遠方である電界強度の弱い方向に開くため、図15に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる傾向がある。
【0055】
次に、図16及び図17を参照しつつ、ドア設置環境DT6におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT6では、ドアDRは大便器SBの側方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は外開き、ヒンジ位置は大便器SBの近方である。ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状のマイクロ波の波面に対して、ドアDRは平行方向に動くため周波数が低く(fc<f02<fb)、マイクロ波の波面に対する角度がほぼ一定であるため、図17に表したように、周波数変動が少ない(f01≒f12)波形が発生する傾向がある。
【0056】
また、ドアDRの開き終わりには、側壁によるマイクロ波の減衰で、ドアに届く電界強度が低下するため、図17に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる傾向がある。
【0057】
次に、図18及び図19を参照しつつ、ドア設置環境DT7におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT7では、ドアDRは大便器SBの側方に設置されており、開閉種類は開き戸、開閉方向は内開き、ヒンジ位置は大便器SBの近方である。ドアが閉止状態から開く場合、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対して、垂直方向に動くため周波数が高く(fb<f02<fa)、マイクロ波の波面に対する角度がほぼ一定であるため、図19に表したように、周波数変動が少ない(f01≒f12)波形が発生する傾向がある。
【0058】
また、ドアDRが閉止状態から開く場合、ドップラーセンサ部13の近方である電界強度の強い方向に開くため、図19に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01<v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0<V1<V2となる傾向がある。
【0059】
次に、図20及び図21を参照しつつ、ドア設置環境DT8におけるドア開時のドップラー信号の電圧波形について説明する。
ドア設置環境DT8では、ドアDRは大便器SBの側方に設置されており、開閉種類は引き戸である。また、ドアDRを開けると、トイレ室TRの側壁の裏側にドアDRが隠れるものとする。
ドアDRが閉止状態から開く場合、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対して、垂直方向に動くため周波数が高く(fb<f02<fa)、マイクロ波の波面に対する角度がほぼ一定であるため、図21に表したように、周波数変動が少ない(f01≒f12)波形が発生する傾向がある。
【0060】
また、ドアDRの開き終わりには、側壁による減衰で、ドアに届く電界強度が低下するため、図21に表したように、周波数成分の電圧(振幅)v01>v12となり、直流成分の電圧(振幅)V0>V1>V2となる傾向がある。
なお、仮に、ドアDRを開いても、トイレ室TRの側壁の裏側にドアDRが隠れないような場合には、ドアDRの開き終わりにかけて、電圧(振幅)の低下は生じにくい。逆に、このような場合には、ドアDRを開くと、ドアDRがドップラーセンサ部13に近づくことにより周波数成分及び直流成分の電圧(振幅)は上昇する傾向がある。
【0061】
以上説明したように、ドアの設置環境に応じて、ドア開の動作にともなうドップラー信号の電圧波形には、それぞれ傾向がある。本実施形態においては、これらの傾向を識別することにより、ドップラーセンサ部13を用いて、ドアの設置環境を検出することが可能となる。
なお、このようなドア設置環境の検出は、例えば、トイレ装置をトイレ室に設置した後の初回の動作のときのみ実施し、検出したドア設置環境に応じて、適切なパラメータを設定し、以後の動作を実行するようにしてもよい。
【0062】
図22は、ドア設置環境を検出するためのステップを例示するフローチャートである。各ステップS01〜S05においては、図7、図9、図11、図13、図15、図17、図19、図21に例示したドップラー信号の電圧波形の傾向を比較することで処理を進める。
ステップS01では、ドア閉止状態における直流の電圧(振幅)成分V0とドアが開ききった場合の直流成分V2との大小を比較する。図6、図8、図10、図12、図14、図16、図18、図20に例示したドア設置環境DT1〜DT8の中で、ドア設置環境DT7のみがV2>V0という傾向を有する。そのためV2>V0を検出した場合には、ドア設置環境をDT7と判別し、ドア設置環境検出を終了する。V2>V0とならない場合には、ステップS02の処理に進む。
【0063】
ステップS02では、ドップラー信号の周波数成分において、t0からt1までの平均周波数f01と、t1からt2までの平均周波数f12と、の大小を比較する。f01>f12の場合には、ドア設置環境DT1とDT2と判別し、ドア設置環境検出を終了する。f01>f12とならない場合には、ステップS03の処理に進む。
【0064】
ステップS03では、ステップS02と同様に平均周波数f01とf12との大小を比較する。f01<f12となる場合には、ドア設置環境DT5と判別し、ドア設置環境検出を終了する。f01<f12とならない場合には、ステップS04の処理に進む。
【0065】
ステップS04では、t0からt2までの平均周波数f02の大小を判定する。マイクロ波の同心円の波面に対して常に垂直に近い角度でドア開動作が行われる場合、fb≦f02≦faとなる。この場合には、DT4もしくはDT8と判別し、ドア設置環境検出を終了する。fb≦f02≦faとならない場合には、ステップS05の処理に進む。
【0066】
ステップS05では、ステップS01からS04において判別できていないドア設置環境DT3とDT6を判別する。DT3とDT6では、ドアは閉止状態から開ききるまでの間に、同心円状に拡がるマイクロ波の波面に対してほぼ平行に移動するため、共に周波数は低い。ただし、ドア設置位置がDT3では大便器SBの前方、DT6では大便器SBの側方である。そのためドアが開ききった場合の直流成分V2が異なる。大便器SBの前方にてドアが全開の場合の直流成分の電圧(振幅)をVf、大便器SBの側面にてドアが全開の場合(ただし、開き戸でヒンジ位置が大便器SB近方側、内開きの場合を除く)の直流成分の電圧(振幅)をVsとすると、Vs>Vfとなる。
【0067】
これより、Vf<V2≦Vsとなる場合には、DT3と判別し、ドア設置環境検出を終了する。Vf<V2≦Vsとならない場合には、DT6と判別し、ドア設置環境検出を終了する。
【0068】
以上説明したフローにてドア設置環境を検出し、ドア設置環境に応じた閾値を設定する。
そして、このように設定した閾値に基づいて、ドア開検出、すなわちドアDRが開いたことの検出を実行する。
【0069】
図23は、ドア設置環境から閾値設定、ドア開検出までのステップを示すフローチャートである。
ドアDRの設置環境を検出し(ステップS01〜S05)、ドアが大便器SBの前方に設置されていている場合のドア検出閾値をTHaと設定し、ドアが大便器SBの側方に設置されている場合のドア検出閾値をTHbと設定する。このとき、THa>THbとすることが望ましい。
【0070】
ドア設置環境DT1、DT2、DT3の場合には、ドアが大便器SBの前方に設置されているため、ドア検出閾値をTHaと設定する(ステップS07、S10)。一方、ドア設置環境DT4、DT5、DT6、DT7、DT8の場合には、ドアが大便器SBの側方に設置されているためドア検出閾値をTHbと設定する(ステップS06、S08、S09、S11)。
ドア開検出(ステップS12)では、例えば、周波数成分の電圧振幅が閾値THを超えるとドア開と判定し、昇温を開始する。このとき、ドア設置環境により閾値THを可変することで、ドア前を通過する非使用者の誤検知を防止することができる。図1に表した具体例の場合、マイクロ波は大便器SBの前方に向けて送信され、前方方向での電界強度が最も強い。そのため、ドアが大便器SBの前方に設置されている場合には、トイレ室TRに入室せずにドア前を通り過ぎるだけ非使用者を誤検出しないように、ドア検出閾値を上げることが望ましい。
【0071】
一方、ドアが大便器SBの側方に設置されている場合には、前方よりも側方の方が電界強度が弱いことより、トイレ室TRに入室せずドア前を通り過ぎるだけの非使用者を誤検出する傾向は低くなるが、ドア開による検出信号そのものも低くなってしまうため、ドア検出閾値を低くする必要がある。
【0072】
図24は、ドア設置環境DT1、DT2、DT3の場合のドア開検出を示すフローチャートである。
また、図25は、ドア設置環境DT4、DT5、DT6、DT7、DT8の場合のドア開検出を示すフローチャートである。
【0073】
ドア閉状態での直流成分の電圧(振幅)V0は、どのドア設置環境においても等しい。しかし、ドア開状態や、ドア開状態に至るまでの直流成分がドア設置環境によって異なるため、これを利用してドア開閉状態を検出することができる。
各ドア設置環境におけるドア開閉状態に対する直流成分は、例えば図7、図9、図11、図13、図15、図17、図19、図21に表したとおりである。
各ドア設置環境における、半開き(t1)の場合の直流成分の電圧(振幅)、また、開き終わった場合(t2)の直流成分の電圧(振幅)を、それぞれ、ドア設置環境DT1、DT2、DT3の場合にはVx1、Vx2と設定し、ドア設置環境DT4、DT5、DT6、DT8の場合にはVy1、Vy2と設定し、ドア設置環境DT7の場合にはVz1、Vz2と設定する。
【0074】
各ドア設置環境において、ドア閉からドア開へと遷移する場合、直流成分の電圧(振幅)はV0から、Vx1もしくはVy1、Vx1を経て、Vx2もしくはVy2、Vz2へと変化する。この直流成分の変化量にて、ドア角度すなわち、ドアの開閉角度を検出することができる。
【0075】
図7を参照しながら、ドア設置環境DT1の場合について説明する。
ドア閉時からドア開時となるまでに、直流成分の電圧(振幅)はV0からVx1を経て、Vx2に変化する。この場合のドア開閉状態を、図6を参照しながら説明する。
ドア角度は、0度(ドア閉時)〜90度(ドア開時)へと変化する。ドア角度0度の場合には、直流成分の電圧(振幅)はV0である。ドア角度45度の場合には、直流成分の電圧(振幅)はVx1である。ドア角度90度の場合には、直流成分の電圧(振幅)はVx2となる。そのためV0からVx2に変化するまでの直流成分の電圧(振幅)の変化量によってドア角度を検出できる。例えば、ドア角度をAnとすると、V=(V0−Vx2)×An÷90+Vx2となるため、An=90(V−V2)÷(V0−Vx2)とすることで、おおよそのドア角度を検出することができる。
図26は、各ドア設置環境において、ドア角度を0度、45度、90度の3段階で検出するためのテーブルの一例である。
【0076】
ところで、ドア開の状態においてトイレ室TRに使用者が入室するとき、ドアは既に開状態にあるため、ドア開、すなわちドアDRが開くことを検出できない。そこで、直流成分の電圧(振幅)を検出し、図26に例示したテーブルなどを用いて、待機状態のドアDRの角度を検出する。そして、検出したドア角度に基づいて、ドアが開状態であると判定した場合には周波数フィルタ152の周波数通過域をドア開検出用の帯域から人体検出用の帯域に変更する。すなわち、検出モードをドア開検出モードから人体検出モードに切り替える。これにより、ドア開状態での使用者の入室検出を実現できる。
図27は、ドア開状態での人体検出モードへの切り替え処理を示すフローチャートである。
【0077】
ドア開検出用の周波数通過域をFd、人体検出用の周波数通過域をFmとする。例えば、ドア設置環境DT1の場合に、ドア角度45度以上で人体検出モードに切り替えるとする。この場合、直流成分が(Vx−V0)/2以上となると、周波数フィルタ152の周波数通過域をFdからFmへと切り替える(ステップS25)。
【0078】
すなわち、使用者が退室後の待機状態において、ドア角度を検出(ステップS23)し、直流成分が(Vx−V0)/2以上の場合には、ドアが開いていると判定(ステップS24:no)して周波数フィルタ152の周波数通過域をFmへと切り替える(ステップS25)。一方、直流成分が(Vx−V0)/2未満となった場合には、ドアが閉じていると判定(ステップS24:yes)して、周波数通過域をFdに維持し、ドア検出モードに戻す(ステップS21)。
【0079】
一方、使用者がドアDRを開けてトイレ室TRに入室したにもかかわらず、ドア開検出モードにおいて、ドアDRの開動作を検出できないこともあり得る。このような場合には、使用者の入室に関する情報を制御部14が入手したときに、ドア開検出モードから、人体検出モードに切り替えてもよい。ここで、トイレ室TRへの人の入室に関する情報とは、例えば、便座の着座スイッチや着座センサなどによる使用者の便座への着座を検知や、その他の人体検知センサによる使用者の存在の検出や、使用者によるトイレ装置のいずれかのスイッチの操作など、挙げることができる。
【0080】
すなわち、ドア開による周波数成分の電圧振幅がTHaもしくはTHbを超えず、ドア開検出モードでドア開を検出できないまま、トイレ室TRへの人の入室に関する情報が得られた場合は、ドアの開閉を検出できていないことになる。つまり、設定したドア開検出モードにより、ドアの開閉の検出ができていない。
そこで、このようにドア開検出モードによるドア開の検出がないまま、着座を検出する事象が1回あるいは複数回発生する場合には、ドア開検出モードから人体検出モードに切り替えるようにしてもよい。
【0081】
図28は、ドア開検出可否の判定処理を示すフローチャートである。
ドア検出モード(ステップS31)において、ドア開を検出しない(ステップS32:no)にもかかわらず、便座への着座を検出したとき(ステップS33:yes)は、ドア開の検出を失敗したと判断する(ステップS34)。
【0082】
図29は、ドア開可否判定処理結果に基づき、ドア開検出モードから人体検出モードへの切り替え判定処理を示すフローチャートである。
すなわち、ドア検出モード(ステップS41)のとき、ドア開検出可否の判定を複数回繰り返す(ステップS42〜S44)。そして、いずれの判定においてもドア開検出を失敗した(ステップS42〜44:no)場合には、人体検出モードに切り替える(ステップS45)。
【0083】
図30は、人体検出モードからドア開検出モードに切り替える処理を示すフローチャートである。
人体検出モード(ステップS51)では、周波数成分の電圧振幅が人体検出閾値THjを超えると、人体検出を確定する。
【0084】
ここで、人体検出モードでの検出が複数回(例えば10回)確定(ステップS52)する度に、人体検出モードと同時にドア開検出モードも動作(ステップS53)させ、ドア開検出モードによるドア開検出の後に人体検出モードでの人体の検出を確定(ステップS54:yes)する事象が複数回(例えば3回連続で)発生する場合(ステップS55、S56:yes)には、人体検出モードを停止し、ドア開検出モードのみを動作させる(ステップS57)ようにしてもよい。
【0085】
一方、ドア設置環境検出モードにおいては、周波数フィルタ152を、ドア設置環境DT1〜DT8全てを検出できるような周波数通過域に設定するが、ドア設置環境を検出した後は、検出したドア設置環境に応じた周波数通過域を設定する。ここで、ドア設置環境DT1〜DT8において発生する周波数成分を通過させる周波数帯域をそれぞれF1〜F8とする。ドア設置環境を検出した後に、対応した周波数帯域をF1〜F8の中から選択し、それ以外の周波数成分を除去する。
【0086】
例えば、ドア設置環境DT1の場合には、fc≦F1≦faとなる。同様に、ドア設置環境DT2〜DT8の場合においても、それぞれfc≦F2≦fa、fc≦F3≦fb、fb≦F4≦fa、fc≦F5≦fa、fc≦F6≦fb、fb≦F7≦fa、fb≦F8≦faとなる。
図31は、このように、ドア設置環境に応じて切り替える、周波数フィルタの周波数帯域を例示するテーブルである。
【0087】
図32は、ドア開検出及び、人体検出の全体の流れの一例を表すフローチャートである。
【0088】
まず、トイレ装置の電源の投入が初回であるか否かを判定(ステップS61)し、初回であれば、ドア開閉検出の可否を判定する(ステップS62)。すなわち、ドアを開けた時に、ドップラー信号の直流成分と周波数成分に所定の遷移が生ずるか否かを判定する。検出が可である場合には、ドア設置環境を検出する(ステップS63)。これは、図22に関して前述したフローに対応する。そして、検出したドア設置環境に応じて、ドア開検出の閾値を決定する(ステップS64)。その後、待機状態でのドア角度の検出を実行する(ステップS65)。これは、例えば、図26及び図27に関して前述した如くである。ドアが開いていると判断したとき(ステップS65:no)は、ステップS70に戻る。
一方、ドアが閉じていると判断したとき(ステップS65:yes)は、図24及び図25に関して前述したフローによりドア開を検出(ステップS66:yes)し、加熱部を駆動させ、便座を加熱する(ステップS67)。
【0089】
一方、ドア開閉検出が否である場合(ステップS62:no)は、人体検出モードに切り替え(ステップS70)、人体検出を実行する(ステップS71)。人体を検出したとき(ステップS71:yes)は、ドア開閉検出の可否を再び判定し(ステップS72)、その結果にかかわらず、加熱部を駆動させて便座の加熱を開始する(ステップS73、S74)。
そして、ドア開閉検出が可である場合(ステップS72:yes)には、ドア開検出モードに切り替えて(ステップS75)、ドア開検出を実行する。
【0090】
以上説明した本具体例によれば、まず、トイレ装置をトイレ室に設置した後の初回の動作において、ドアの設置環境を検出し、それに応じて検出条件を自動的に設定する。そして、設定された条件でドアの開閉を検知するとともに、待機状態でドアが開いていないかも検出する。またさらに、ドアの開閉を検知できていないと判断した場合には、人体検知モードに切り替えて動作を継続し、この場合でもドアの開閉を再び検出可能であると判断した場合には、ドア開検出モードに再び切り替えて動作を実行する。
【0091】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、動作、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0092】
10:便座
11:便蓋
12:加熱部
13:ドップラーセンサ部
14:制御部
131:送信部
132:受信部
133:差分検出部
151:受信出力部
152:周波数フィルタ
153:昇温開始判定部
CR:通路
DR:ドア
DT1:ドア設置環境
DT2:ドア設置環境
DT3:ドア設置環境
DT4:ドア設置環境
DT5:ドア設置環境
DT6:ドア設置環境
DT7:ドア設置環境
DT8:ドア設置環境
HS:暖房便座装置
M:人
Mc:位置
Mb:位置
Mc:位置
SA:検知領域
SB:大便器
TR:トイレ室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ室内に設けられ、電波の送受信を行うドップラーセンサと、前記ドップラーセンサの出力信号に基づいて所定の制御を実行する制御部と、を備えたトイレ装置であって、
前記制御部は、前記ドップラーセンサから出力されるドップラー信号の直流成分を検出する第1の検出手段と、前記ドップラーセンサ信号に含まれる周波数成分を検出する第2の検出手段と、を有し、トイレ室のドアの開動作に伴う前記ドップラーセンサ信号の直流成分と周波数成分の推移の少なくともいずれかに基づいてドアの設置環境を判定し、判定したドア設置環境に応じて検出閾値を設定して、前記ドアの開動作を検出するドア開検出モードを実行することを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記トイレ室に入室する人を検出する人体検出モードをさらに実行可能であり、
前記第1の検出手段により前記ドアの角度を検出し、前記検出した結果に基づいて前記ドアが閉状態であると判定したときは、前記ドア開検出モードを実行し、前記検出した結果に基づいて前記ドアが開状態であると判定したときは、人体検出モードを実行することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記トイレ室に入室する人を検出する人体検出モードをさらに実行可能であり、
前記ドア開検出モードの実行中にドアの開動作を検出しなかったにもかかわらず、トイレ室への人の入室に関する情報を入手した場合には、前記人体検出モードを実行することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記第2の検出手段は、前記周波数成分を検出する周波数フィルタ処理を実行し、
前記判定したドア設置環境に基づいて、前記周波数フィルタの帯域を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【請求項1】
トイレ室内に設けられ、電波の送受信を行うドップラーセンサと、前記ドップラーセンサの出力信号に基づいて所定の制御を実行する制御部と、を備えたトイレ装置であって、
前記制御部は、前記ドップラーセンサから出力されるドップラー信号の直流成分を検出する第1の検出手段と、前記ドップラーセンサ信号に含まれる周波数成分を検出する第2の検出手段と、を有し、トイレ室のドアの開動作に伴う前記ドップラーセンサ信号の直流成分と周波数成分の推移の少なくともいずれかに基づいてドアの設置環境を判定し、判定したドア設置環境に応じて検出閾値を設定して、前記ドアの開動作を検出するドア開検出モードを実行することを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記トイレ室に入室する人を検出する人体検出モードをさらに実行可能であり、
前記第1の検出手段により前記ドアの角度を検出し、前記検出した結果に基づいて前記ドアが閉状態であると判定したときは、前記ドア開検出モードを実行し、前記検出した結果に基づいて前記ドアが開状態であると判定したときは、人体検出モードを実行することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記トイレ室に入室する人を検出する人体検出モードをさらに実行可能であり、
前記ドア開検出モードの実行中にドアの開動作を検出しなかったにもかかわらず、トイレ室への人の入室に関する情報を入手した場合には、前記人体検出モードを実行することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記第2の検出手段は、前記周波数成分を検出する周波数フィルタ処理を実行し、
前記判定したドア設置環境に基づいて、前記周波数フィルタの帯域を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2013−72270(P2013−72270A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214502(P2011−214502)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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