説明

α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の製造方法

【課題】保存安定性の良いα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の濃縮物をもたらすα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を製造する方法を提供する。
【解決手段】α−スルホ脂肪酸アルキルエステルをアルカリ物質で中和してα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を製造する方法において、中和工程を、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり、50質量部〜150質量部の炭素数1〜3のアルコール及び5質量部〜20質量部の水の存在下で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤として種々の用途に用いることができるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、洗浄剤の有効成分(界面活性剤)として知られている物質である。α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、一般的に、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルをアルカリ物質で中和することによって製造される(特許文献1及び2)。この製造方法では中和工程で水が副生するので、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は水を多く含んだ溶液として得られる。
一方、最終製品である洗浄剤としての利便性を考慮して、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を濃縮することが求められている。
濃縮方法として、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を加熱して水を含む液相成分を蒸発させる方法が知られている。
その他、中和工程をアルコールの存在下で行うことにより、副生する水分量を低減させる方法も知られている(特許文献3、4及び5)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−240860号公報
【特許文献2】特許第3376676号公報
【特許文献3】特開昭57−7462号公報
【特許文献4】特許第3547435号公報
【特許文献5】特開2000−191633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液中の液相成分を蒸発させて濃縮する為には、実質的に液相を加熱する工程を必要とする。しかしながら、長時間の加熱処理は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液に発泡やゲル化等の物性変化を引き起こす。この物性変化は、濃縮加熱工程時の伝熱性低下や蒸発分離の困難性を引き起こして、製造コストを上昇させる。更に、この方法によって得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の濃縮物は、保存中における臭気の発生やα−スルホ脂肪酸二塩の副生を引き起こすので、保存安定性に課題がある。
上述のアルコールの存在下で中和工程を行う方法により得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液は、従来法により得られた塩溶液よりも少ない水分含量を有している。しかし、この溶液から得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の濃縮物も、保存中に臭気の発生やα−スルホ脂肪酸二塩の副生を起こし、保存安定性が十分なものとはいえない。
そこで、本発明は、保存安定性の良いα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の濃縮物をもたらすα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討を重ねたところ、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルをアルカリ物質で中和してα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を製造する方法において、中和工程をα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の質量に対して所定量のアルコール及び水の存在下で行うと、保存安定性の良いα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物をもたらすα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、
α−スルホ脂肪酸アルキルエステルをアルカリ物質で中和してα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を製造する方法であって、中和工程を、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり、50質量部〜150質量部の炭素数1〜3のアルコール及び5質量部〜20質量部の水の存在下で行うことを特徴とする、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の製造方法
に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法は、後述する実施例で示されるように、保存安定性の良いα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の濃縮物をもたらすα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を製造することができる。したがって、洗浄剤の有効成分(界面活性剤)の製造に有利に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステルとは、一般式:R1CH(SO3H)COOR2(式中、R1は炭素数8〜16の直鎖又は分岐したアルキル基又はアルケニル基であり、R2は炭素数1〜3の直鎖又は分岐したアルキル基である。)で示される化合物をいう。
1としては、スルホン化時の着色性の点から水添反応を行った飽和型が好ましい。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステルは、牛脂、魚油、やし油、菜種油、大豆油やパ−ム油等の天然物から公知の方法にしたがい誘導したものでよく、公知の方法にしたがい合成したものであってもよい。
本発明では、単一種類のα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを単独で用いてもよく、複数種類のα−スルホ脂肪酸アルキルエステルを組み合わせて使用してもよい。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステルは、後述する炭素数1〜3のアルコールの溶液として中和工程に用いることが好ましい。
【0008】
α−スルホ脂肪酸アルキルエステルを、アルカリ物質を用いて中和して、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を生成する。
アルカリ物質としては、アルカリ金属の水酸化物等があげられる。
アルカリ金属の水酸化物としては水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、水酸化リチウム等があげられる。
これらの中では、アルコールに対する溶解性の点で水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
本発明では、単一種類のアルカリ物質を単独で用いてもよく、複数種類のアルカリ物質を組み合わせて使用してもよい。
中和工程に用いるアルカリ物質の量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルを十分に中和することができる量であれば特に制限されないが、好ましくはα−スルホ脂肪酸アルキルエステルに同伴する硫酸、アルコール硫酸エステル等の酸性同伴物も同時に中和することのできる量である。
アルカリ物質は、後述する炭素数1〜3のアルコールの溶液として中和工程に用いることが好ましい。
【0009】
中和工程は、炭素数1〜3のアルコールの存在下で行う。炭素数1〜3のアルコールは中和反応系において溶媒として機能する。
炭素数1〜3のアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−プロピルアルコールがあげられる。これらの中では、メタノール及びエタノールが好ましく、メタノールが特に好ましい。
中和工程において存在する炭素数1〜3のアルコールの量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル100塩の質量部あたり50質量部〜150質量部、好ましくは70質量部〜120質量部である。
ここでいう「α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の質量部」とは、中和工程に用いられた全てのα−スルホ脂肪酸アルキルエステルが中和したと見なしたときのα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の質量をいう。
なお、複数種類の金属を含むアルカリ物質を組み合わせて使用したときには、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの対イオンが複数の金属イオンからなると見なして、各金属イオンの含有率から案分して「α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の質量部」を求めることができる。
「炭素数1〜3のアルコールの質量部」とは、中和工程に用いられた全ての炭素数1〜3のアルコールの質量部をいう。したがって、中和反応を行うにあたり新たに添加される炭素数1〜3のアルコールの他に、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルやアルカリ物質の溶液等に元々炭素数1〜3のアルコールが存在している場合、これらのアルコールも中和工程に用いられた炭素数1〜3のアルコールに該当する。
炭素数1〜3のアルコールの量が、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり50質量部以上であると、中和生成物であるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の粘度増加(溶液粘度の増加は、製造コストの上昇につながる)を抑制して中和反応を完結することができる。更に、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を濃縮物にして粉体として保存したときに、α−スルホ脂肪酸二塩の副生を抑制することができる。
炭素数1〜3のアルコール量の上限は、上述の塩溶液の粘度増加抑制及び濃縮物保存時の安定性の点からは特に制限されるものではないが、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり150質量部以下であると製造コストを抑制することができる。
【0010】
中和工程は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり5質量部〜20質量部、好ましくは7質量部〜15質量部の水の存在下で行う。
「α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の質量部」とは、前述と同様である。
「水の質量部」とは、中和工程において存在した水の質量部をいう。ここでいう水には、中和反応を行うにあたり新たに添加される炭素数1〜3のアルコール中に含まれる水の他に、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルやアルカリ物質の溶液等の中に含まれる水や、中和反応により副生した水も含まれる。
水の量が、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり5質量部以上であると、中和生成物であるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の粘度増加を抑制することができる。更に、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を濃縮物にして保存したときに、α−スルホ脂肪酸二塩の副生を抑制することができる。
水の量が、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり20質量部以下であると、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液から濃縮物を生成する際に必要な加熱濃縮を効率よく行うことが出来、発泡やゲル化等の物性変化を抑制することができる。更に、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を濃縮物にして保存したときに、α−スルホ脂肪酸二塩の副生を抑制することができる。
水の量は、例えば、中和生成物であるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液に対してカールフィッシャー法を適用することにより測定することができる。
【0011】
中和工程はpH4〜7で行われる。これは、本発明の中和工程が、完全中和(pH7)でだけでなく、部分中和(pH7未満〜pH4)であってもよいことを意味する。pHが4〜7であるとα−スルホ脂肪酸二塩の副生を抑制することができる。中和工程は、好ましくはpH6〜7で行われる。pHは、前述のアルカリ物質の量により調節することができる。
【0012】
中和工程における温度は30℃〜80℃、好ましくは40℃〜60℃である。30℃〜80℃であると混合性も良く中和時のpH安定時間も短くすることができる。
【0013】
中和時間は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの中和物pHが安定する時間であれば、特に制限されない。
【0014】
得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液はそのまま濃縮してもよいが、濃縮を容易にするための添加剤を添加してもよい。
添加剤の具体例としては、粉体状のクエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムやゼオライト等があげられる。
添加剤の添加量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液に存在するα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり2質量部〜20質量部である。
【0015】
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、更に濃縮工程に付して、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物とすることができる。
濃縮は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を加熱して液相成分(主に溶媒である炭素数1〜3のアルコール及び水)を除去することによって達成することができる。
加熱温度は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の発泡やゲル化等の物性変化が起こらない100℃〜150℃、好ましくは110℃〜130℃である。
濃縮工程は、当該技術分野で一般に使用されているバッチ式真空濃縮缶や連続真空薄膜蒸発装置が使用して行うことができ、スケールダウン条件での試験濃縮装置として、例えばロータリーエバポレーターなどを用いて簡便に行うことができる。
濃縮工程は、生成物であるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物の水分含量が3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下となるまで行う。濃縮物の水分含量が3質量%以下であると、濃縮物保存中の臭気発生を抑制することができる。
【0016】
水分含量が3質量%以下であるα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物は固体状である。この固体状の濃縮物は、当該技術分野における周知の手段、例えば、濃縮物を冷却後、粉砕して粉末(粉体)とすることができる。冷却温度は40℃〜80℃であることが好ましい。
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(及びその粉末)は、保存中の臭気発生及びα−スルホ脂肪酸二塩の副生が少ないので、保存安定性に優れている。
また、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(及びその粉末)は、保存安定性に優れた洗浄剤の有効成分(界面活性剤)として広範囲の用途に使用できる。例えば、衣類洗剤用や工業用の洗浄剤組成物として好適に使用することができる。
【0017】
商品価値を更に高めるために、漂白工程を行うことができる。
漂白工程は、中和工程前のα−スルホ脂肪酸アルキルエステルに対して行ってもよく、中和工程後のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩に対して行ってもよい。
漂白は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル(又はその塩)を漂白剤と接触させることにより達成することができる。
漂白剤の具体例としては、過酸化水素があげられる。
漂白剤の使用量は、例えば、中和工程前のα−スルホ脂肪酸アルキルエステルに対して行う場合、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル100質量部あたり0.1質量部〜1.5質量部である。
中和工程後の場合、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液(又は濃縮物)に存在するα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり0.1質量部〜2質量部である。
漂白温度は、例えば60℃〜90℃である。
【0018】
本発明は特定の理論に限定されるものではないが、中和工程を所定量の炭素数1〜3のアルコール及び水の存在下で行うと、臭気発生及びα−スルホ脂肪酸二塩副生の原因となる酸性物質の生成が抑制され、これによりα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物の保存安定性が向上するものと考えられる。
以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
[実施例1]
(1)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの製造
炭素数16〜18の脂肪酸から誘導された脂肪酸メチルエステル(分子量280)を、前記エステルの1.2倍モル量のSO3ガス(窒素ガスで3体積%に希釈)用いて、80℃下、連続流下式薄膜反応器(内径10mm、反応長2.5m、ジャケット付き、SUS316製)中でスルホン化反応に付した。反応生成物を、連続式管型熟成反応器(内径50mm、ジャケット付き、SUS316製)中、80℃で100分間熟成し60℃に冷却して、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルである反応混合物を得た。
得られた反応混合物1,000gにメタノール(水分含量:0.05質量%)30gを添加し、80℃で30分間撹拌し、回分式にてエステル交換反応を行った。これにより、スルホン化反応で副生したα−スルホ脂肪酸二塩の前駆体である脂肪酸メチルエステルへのSO32分子付加体をα−スルホ脂肪酸アルキルエステルへと変換させた。
エステル交換反応後は、60℃に冷却して、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を得た。
【0020】
(2)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの中和
中和工程は、容量200mLの溢流型連続攪拌槽(特殊機化工業製、ROBOMIX)を使用して行った。予め40℃に加温したメタノール(水分含量:0.1質量%以下)を仕込んだ連続撹拌槽へ、工程(1)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を500g/hrで連続供給し、併行して、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(アルカリ溶液中の水酸化ナトリウム含量:14.2質量%、アルカリ溶液中の水分含量:0.6質量%)を連続的に投入し混合して中和反応を行った。温度は60℃に、pHは6.5になるように前記水酸化ナトリウムのメタノール溶液の流量をコントロールした。以上の中和工程により、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を得た。
中和工程に使用したα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液の量は1,000gであった。
メタノールについて、連続撹拌槽に予め仕込んだメタノール量は200gであり、中和を開始して30分間は別取りした。使用した水酸化ナトリウムのメタノール溶液中の水分量は0.6質量%であった。
得られた中和物を、以下の方法で測定した。
中和物中の界面活性剤相当分としてのα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩をメチレンブルー法で測定したところ、50.4質量%であった。
また、得られた中和物中の水分含量をカールフィッシャー法(測定装置:HIRANUMA製、型式:aquacounter。以下、実施例2〜4及び比較例1〜3において同じ)を用いて測定したところ、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり6.6質量部であった。
また、得られた中和物中のメタノール含量をガスクロ法(カラム:ポラパックQ。以下、実施例2〜4及び比較例1〜3において同じ)で測定したところ、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり82.7質量部であった。
したがって、中和工程は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり、82.7質量部のメタノール及び6.6質量部の水の存在下で行われた。
【0021】
(3)α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の漂白
工程(2)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液1,000gに、35質量%過酸化水素の溶液28g(当該塩溶液に存在するα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり過酸化水素を2質量部)を添加し、80℃で3時間撹拌して、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩を漂白した。
【0022】
(4)漂白したα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の濃縮
工程(3)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、ロータリーエバポレーター(ヤマト科学製、RE47型)及び熱媒の加熱温度120℃を用いて液相成分を除去して濃縮した。その際、少量の窒素ガスを気相部に導入し蒸発成分の還流を防ぐことにより、蒸発を促進した。この濃縮工程により、水分含量が1.5質量%のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(固体状)を得て、更に、室温のステンレス容器に薄く拡げて冷却固化・粉砕してα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(粉体)を得た。
【0023】
[実施例2]
(1)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの製造
実施例1の工程(1)に記載の方法にしたがい、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を製造した。
【0024】
(2)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの中和
中和工程は、実施例1の工程(2)と同様の溢流型連続攪拌槽を使用して行った。
予め40℃に加温したメタノール(水分含量:0.1質量%以下)を仕込んだ連続撹拌槽へ、工程(1)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を500g/hrで連続供給し、併行して、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(アルカリ溶液中の水酸化ナトリウム含量:11.9質量%、アルカリ溶液中の水分含量は4.8質量%)を連続的に投入し混合して中和反応を行った。温度は60℃に、pHは6.5になるように前記水酸化ナトリウムのメタノール溶液の流量をコントロールした。以上の中和工程により、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を得た。
中和工程に使用したα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液の量は1,000gであった。
メタノールについて、連続撹拌槽に予め仕込んだメタノール量は200gであり、中和を開始して30分間は別取りし、安定したpHの中和物をサンプルとした。
得られた中和物を、実施例1の工程(2)に記載の方法で測定した。
中和物中の界面活性剤相当分としてのα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、56質量%であった。
また、得られた中和物中の水分含量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり11.5質量部であった。
また、得られた中和物中のメタノール含量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり96.2質量部であった。
したがって、中和工程は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり、96.2質量部のメタノール及び11.5質量部の水の存在下で行われた。
【0025】
(3)α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の漂白
工程(2)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、実施例1の工程(3)に記載の方法にしたがい漂白した。
【0026】
(4)漂白したα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の濃縮
工程(3)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、実施例1の工程(4)に記載の方法にしたがい濃縮した。濃縮工程により、水分含量が1.5質量%のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(粉体状)を得た。
【0027】
[実施例3]
(1)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの製造
実施例1の工程(1)に記載の方法にしたがい、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を製造した。
【0028】
(2)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの中和
中和工程は、実施例1の工程(2)と同様の溢流型連続攪拌槽を使用して行った。
予め40℃に加温したエタノール(水分含量:0.1質量%以下)を仕込んだ連続撹拌槽へ、工程(1)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を500g/hrで連続供給し、併行して、水酸化ナトリウムのエタノール溶液(アルカリ溶液中の水酸化ナトリウム含量:10.1質量%、アルカリ溶液中の水分含量は9.0質量%)を連続的に投入し混合して中和反応を行った。温度は60℃に、pHは6.5になるように前記水酸化ナトリウムのエタノール溶液の流量をコントロールした。以上の中和工程により、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を得た。
中和工程に使用したα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液の量は1,000gであった。
連続撹拌槽に予め仕込んだエタノール量は200gであり、中和を開始して30分間は別取りし、安定したpHの中和物をサンプルとした。
得られた中和物を、実施例1の工程(2)に記載の方法で測定した。
中和物中の界面活性剤相当分としてのα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、42.2質量%であった。
また、得られた中和物中の水分含量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり18.2質量部であった。
また、得られた中和物中のメタノールとエタノール含量とをガスクロ法(カラム:ポラパックQ)で測定したところ、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり110質量部であった。
したがって、中和工程は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり、110質量部の炭素数1〜3のアルコール(メタノール及びエタノール)及び18.2質量部の水の存在下で行われた。
【0029】
(3)α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の漂白
工程(2)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、実施例1の工程(3)に記載の方法にしたがい漂白した。
【0030】
(4)漂白したα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の濃縮
工程(3)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、実施例1の工程(4)に記載の方法にしたがい濃縮した。濃縮工程により、水分含量が1.5質量%のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(粉体状)を得た。
【0031】
[実施例4]
(1)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの製造
実施例1の工程(1)に記載の方法にしたがい、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を製造した。
【0032】
(2)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの漂白
工程(1)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル(反応混合物1000g)のメタノール溶液に、溶媒としてメタノールを更に270g添加し、同時に、35質量%過酸化水素の溶液7g(当該塩溶液に存在するα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり過酸化水素を0.5質量部)を添加し、80℃で3時間撹拌して、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルを漂白した。
【0033】
(3)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの中和
中和工程は、実施例1の工程(2)と同様の溢流型連続攪拌槽を使用して行った。
予め40℃に加温したメタノール(水分含量:0.1質量%以下)を仕込んだ連続撹拌槽へ、工程(2)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を500g/hrで連続供給し、併行して、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(アルカリ溶液中の水酸化ナトリウム含量:14.2質量%、アルカリ溶液中の水分含量:0.6質量%)を連続的に投入し混合して中和反応を行った。温度は60℃に、pHは6.5になるように前記水酸化ナトリウムのメタノール溶液の流量をコントロールした。以上の中和工程により、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を得た。
中和工程に使用したα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液の量は1,300gであった。
メタノールについて、連続撹拌槽に予め仕込んだメタノール量は200gであり、中和を開始して30分間は別取りし、安定したpHの中和物をサンプルとした。
得られた中和物を、実施例1の工程(2)に記載の方法で測定した。
中和物中の界面活性剤相当分としてのα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、44質量%であった。
また、得られた中和物中の水分含量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり8.1質量部であった。
また、得られた中和物中のメタノール含量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり110質量部であった。
したがって、中和工程は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり、110質量部のメタノール及び8.1質量部の水の存在下で行われた。
【0034】
(4)α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の濃縮
工程(3)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、実施例1の工程(4)に記載の方法にしたがい濃縮した。濃縮工程により、水分含量が1.5質量%のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(粉体状)を得た。
【0035】
[比較例1]
(1)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの製造
実施例1の工程(1)に記載の方法にしたがい、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を製造した。
【0036】
(2)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの中和
中和工程は、実施例1の工程(2)と同様の溢流型連続攪拌槽を使用して行った。
予め40℃に加温したメタノール(水分含量:0.1質量%以下)を仕込んだ連続撹拌槽へ、工程(1)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を500g/hrで連続供給し、併行して、アルカリ水溶液(ナトリウム含量:23質量%)を連続的に投入し混合して中和反応を行った。温度は60℃に、pHは6.5になるようにアルカリ水溶液流量をコントロールした。以上の中和工程により、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を得た。
中和工程に使用したα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液の量は1,000gであった。
連続撹拌槽に予め仕込んだエタノール量は200gであり、中和を開始して30分間は別取りし、安定したpHの中和物をサンプルとした。
得られた中和物を、実施例1の工程(2)に記載の方法で測定した。
中和物中の界面活性剤相当分としてのα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、68質量%であった。
また、得られた中和物中の水分含量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり23質量部であった。この値は本発明の範囲外である。
また、得られた中和物中のメタノール含量をガスクロ法(カラム:ポラパックQ)で測定したところ、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり2質量部であった。この値は本発明の範囲外である。
【0037】
(3)α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の漂白
工程(2)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、実施例1の工程(3)に記載の方法にしたがい漂白した。
【0038】
(4)漂白したα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の濃縮
工程(3)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、実施例1の工程(4)に記載の方法にしたがい濃縮した。濃縮工程により、水分含量が1.5質量%のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(粉体状)を得た。
【0039】
[比較例2]
(1)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの製造
実施例1の工程(1)に記載の方法にしたがい、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を製造した。
【0040】
(2)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの中和
中和工程は、実施例1の工程(2)と同様の溢流型連続攪拌槽を使用して行った。
予め40℃に加温したメタノール(水分含量:0.1質量%以下)を仕込んだ連続撹拌槽へ、工程(1)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を500g/hrで連続供給し、併行して、ナトリウムメチラートのメタノール溶液(ナトリウム含量:30質量%、使用したメチラート中の水分含量は0.4質量%)を連続的に投入し混合して中和反応を行った。温度は60℃に、pHは6.5になるようにアルカリ水溶液流量をコントロールした。以上の中和工程により、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を得た。
中和工程に使用したα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液の量は1,000gであった。
連続撹拌槽に予め仕込んだエタノール量は200gであり、中和を開始して30分間は別取りし、安定したpHの中和物をサンプルとした。
得られた中和物を、実施例1の工程(2)に記載の方法で測定した。
中和物中の界面活性剤相当分としてのα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、59質量%であった。
また、得られた中和物中の水分含量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり1質量部未満であった。この値は本発明の範囲外である。
また、得られた中和物中のメタノール含量をガスクロ法(カラム:ポラパックQ)で測定したところ、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり58質量部であった。
【0041】
(3)α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の漂白
工程(2)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、実施例1の工程(3)に記載の方法にしたがい漂白した。
【0042】
(4)漂白したα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の濃縮
工程(3)で得られた漂白α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、実施例1の工程(4)に記載の方法にしたがい濃縮した。濃縮工程により、水分含量が1.5質量%のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(粉体状)を得た。
【0043】
[比較例3]
(1)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの製造
実施例1の工程(1)に記載の方法にしたがい、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を製造した。
【0044】
(2)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの漂白
工程(1)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル(反応混合物1000g)のメタノール溶液に、溶媒としてメタノールを更に270g添加し、同時に、35質量%過酸化水素の溶液7g(当該塩溶液に存在するα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり過酸化水素を0.5質量部)を添加し、80℃で3時間撹拌して、α−スルホ脂肪酸アルキルエステルを漂白した。
【0045】
(3)α−スルホ脂肪酸アルキルエステルの中和
中和工程は、実施例1の工程(2)と同様の溢流型連続攪拌槽を使用して行った。
予め40℃に加温したメタノール(水分含量:0.1質量%以下)を仕込んだ連続撹拌槽へ、工程(1)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液を500g/hrで連続供給し、併行して、水酸化ナトリウムの水溶液(水酸化ナトリウム含量:50質量%)を連続的に投入し混合して中和反応を行った。温度は60℃に、pHは6.5になるように水酸化ナトリウムの水溶液流量をコントロールした。以上の中和工程により、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を得た。
中和工程に使用したα−スルホ脂肪酸アルキルエステルのメタノール溶液の量は1,300gであった。
メタノールについて、連続撹拌槽に予め仕込んだメタノール量は200gであり、中和を開始して30分間は別取りし、安定したpHの中和物をサンプルとした。
得られた中和物を、実施例1の工程(2)に記載の方法で測定した。
中和物中の界面活性剤相当分としてのα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩は、43質量%であった。
また、得られた中和物中の水分含量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり22質量部であった。この値は本発明の範囲外である。
また、得られた中和物中のメタノール含量は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル100質量部あたり28質量部であった。この値は本発明の範囲外である。
【0046】
(4)α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の濃縮
工程(3)で得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を、実施例1の工程(4)に記載の方法にしたがい濃縮した。濃縮工程により、水分含量が1.5質量%のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(粉体状)を得た。
【0047】
α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物の保存安定性の評価
実施例1〜4及び比較例1〜3のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物(いずれも粉体状)を更に乳鉢で粉砕して、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物の粉末を得た。
得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物の粉末について、α−スルホ脂肪酸二塩の量、色調及びpHを測定した。
α−スルホ脂肪酸二塩の測定は、Proceedings on ISF-JOCS world congress, 1988, vol.II, page 721-725(The Japan Oil Chemist's Society)に記載の方法に準拠して、HPLC(トーソー社製、イオンクロマトグラフ)を用い、予め作成した検量線により測定した。
色調について、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物粉末を純水で希釈して得た5質量%水溶液を、更に0.45μmクロマトディスク(ジーエルサイエンス社製)で濾過したものを測定サンプルとした。測定サンプルを、No.42フィルターを備えたクレット光電光度計(40mm光路長)(クレット・サマーソン社製)で測定した。
保存安定性の評価は、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物粉末20gを100mlのSVビンに入れ、フタを開放した状態で、50℃下、相対湿度70%で2週間保存したものに対して行った。保存後、α−スルホ脂肪酸二塩の量及び臭気の発生を測定した。
α−スルホ脂肪酸二塩の測定は、上述と同様にして行った。
臭気は、保存後のSVビン気相部を官能試験(5名)することにより評価した。判定基準は3段階とした(○:異臭なし(許容範囲);△:少し異臭を感じる;×:異臭多い)。結果を下記表1に示す。
【0048】
表1

色調(活性剤濃度5%水溶液、40mm光路長、No.42フィルター使用)
α−スルホ脂肪酸二塩:α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物粉末中のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部に対する質量部
【0049】
pHについて、比較例1〜3のpHは実施例1〜4よりも低かった。これは、比較例において、臭気発生及びα−スルホ脂肪酸二塩副生の原因となる酸性物質が多く存在しているためであると考えられる。
色調について、実施例1〜4は比較例1〜3よりもやや良好であった。
α−スルホ脂肪酸二塩の副生について、副生物の増加率は実施例1〜4と比較して比較例2〜3が高かった。
臭気発生について、実施例1〜4は比較例1〜3よりも臭気発生が少なかった。
以上の結果は、実施例1〜4のみが、保存安定性の良いα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩の濃縮物をもたらすことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、洗浄剤の有効成分(界面活性剤)を製造する方法として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−スルホ脂肪酸アルキルエステルをアルカリ物質で中和してα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を製造する方法であって、
中和工程を、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり、50質量部〜150質量部の炭素数1〜3のアルコール及び5質量部〜20質量部の水の存在下で行う
ことを特徴とする、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液の製造方法。
【請求項2】
中和工程を、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩100質量部あたり、70質量部〜120質量部の炭素数1〜3のアルコール及び7質量部〜15質量部の水の存在下で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
中和工程をpH4〜7で行う、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
炭素数1〜3のアルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn−プロピルアルコールからなる群より選ばれる1種以上のアルコールである、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
アルカリ物質が水酸化ナトリウムである、請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
中和工程に用いるα−スルホ脂肪酸アルキルエステルが、漂白されたα−スルホ脂肪酸アルキルエステルである、請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
更に、中和工程により得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を漂白する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法により得られたα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩溶液を濃縮して、水分含量が3質量%以下のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物を得る工程を含む、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩濃縮物の製造方法。

【公開番号】特開2008−162929(P2008−162929A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353365(P2006−353365)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】