説明

α−ヒドロキシカルボニル化合物の還元剤としての使用

環状二量体を形成できるα−ヒドロキシカルボニル化合物の還元剤としての使用が提供される。還元性化合物、特に還元−活性化プロドラッグを還元する、対応する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はある化合物の還元剤としての使用に関する。特に、疾患に対抗するのに使用できる活性物質を生成する、還元−活性化プロドラッグを還元するための、これらの化合物の使用に関する。活性物質は、特に、DNA架橋剤であってもよく、望ましくない細胞成長または増殖に対抗するために利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
この明細書における先に公開された文書のリストまたは考察は、その文書が技術水準または一般知識の一部であると認めるものと必ずしも考えられるべきではない。
【0003】
α−ヒドロキシカルボニル化合物は、酸化され得る分子であるが、低アルカリ性条件下(pH<11)で還元剤として有用であることが認識されていない。
【0004】
あるα−ヒドロキシカルボニル化合物(アシロイン)はUS 5,831,097およびEP 0 364 752において、染色業界において有用な還元剤として記載されている。しかしながら、EP 0 364 752において特定される条件は、還元効果を得るために最低13のpHを必要とする。同様に、US 4,950,306は、ある化合物(α−ヒドロキシカルボニル化合物を含む)は染色プロセスにおいて還元剤として使用できるが、少なくとも11のpHを確立するために十分なアルカリが反応媒体に添加される場合に限ることを開示している。
【0005】
さらに、他の文書(例えば、US 3,208,999およびTexti1−Praxis 20(11)、916−20(1965))は、ある化合物(シアノエチル化デンプンおよびバット染料)の還元剤として有用である、あるα−ヒドロキシカルボニル化合物(例えば、モノヒドロキシアセトンおよびジヒドロキシアセトン)の使用について言及しているが、これらの文書において記載されている反応条件は、非常にアルカリ性が高い(即ち、著しい量の水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウムのいずれかの濃溶液の使用を必要とし、その結果、13を超える反応pH値になる)。
【0006】
加えて、前記文書はいずれも(α−ヒドロキシカルボニル化合物を利用する還元に関して)10重量%より多い有機溶媒を含む溶媒系の使用を開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、驚くべきことに、あるα−ヒドロキシカルボニル化合物が比較的低いpH値で有用な還元能力を有し、従って穏やかな条件下(および/または実質的な量の非水性(有機)溶媒の存在下)で用いられて、広範囲に及ぶ有機化合物を含む様々な部分を還元することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の第一の側面は、1以上の還元性基を含有する有機化合物における、このような還元性基を還元するための薬剤としての式Iの化合物の使用を提供し、式Iの化合物は構造
【化1】


(式中
は、H、アリール、HetまたはC1−12アルキルを表し(後者の基は任意に、OH、ハロおよびC1−3アルコキシから選択される1以上の置換基で置換される)、
は、HまたはC1−6アルキルを表し(後者の基は任意に、1以上のOH基により置換される)
アリールは、C6−10炭素環式芳香族基であって、ハロ、C1−6アルキルおよびC1−6アルコキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい基を表し、
Hetは、酸素、窒素および/または硫黄から選択される1以上のヘテロ原子を含有する4員から14員複素環基であって、1、2または3個の環を含むことができ、ハロ、C1−6アルキルおよびC1−6アルコキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい複素環基を表す)
を有し、
前記化合物が式Ia
【化2】


(式中、RおよびRは前記定義のとおりである)
の環状二量体を形成できることを特徴とする。
【0009】
特に記載しない限り、本明細書において定義されるアルキル基およびアルコキシ基は、直鎖であってよく、あるいは十分な数(即ち、最低3)の炭素原子がある場合、分岐鎖および/または環状であってよい。さらに、十分な数(即ち、最低4)の炭素原子がある場合、このようなアルキルおよびアルコキシ基は部分的に環状/非環状であってもよい。このようなアルキルおよびアルコキシ基は飽和であってもよいし、あるいは十分な数(即ち、最低で2)の炭素原子がある場合、飽和および/または1以上の酸素および/または硫黄原子が割り込んでいてもよい。特に記載しない限り、アルキルおよびアルコキシ基は1以上のハロ、特にフルオロ原子により置換されていてもよい。
【0010】
記載され得るアリール基の例としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0011】
複素環(Het)基は特徴として、完全飽和、部分的不飽和、全体的芳香族または部分的芳香族であってよい。記載されている複素環(Het)基の値としては、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾ[c]イソキサゾリジニル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキセパニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾモルホリニル、2,1,3−ベンゾキサジアゾリル、ベンゾキサゾリジニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾ[e]ピリミジン、2,1,3−ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、2,3−ジヒドロベンズイミダゾリル、2,3−ジヒドロベンゾ[b]フラニル、1,3−ジヒドロベンゾ−[c]フラニル、1,3−ジヒドロ−2,1−ベンズイソキサゾリル 2,3−ジヒドロピロロ[2,3−b]ピリジニル、ジオキサニル、フラニル、ヘキサヒドロピリミジニル、ヒダントイニル、イミダゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,3−b]チアゾリル、インドリル、イソキノリニル、イソキサゾリジニル、イソキサゾリル、マレイミド、モルホリニル、ナフト[1,2−b]フラニル、オキサジアゾリル、1,2−または1,3−オキサジナニル、オキサゾリル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロロ[2,3−b]ピリジニル、ピロロ[5,1−b]ピリジニル、ピロロ[2,3−c]ピリジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、スルホラニル、3−スルホレニル、4,5,6,7−テトラヒドロベンズイミダゾリル、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾピラゾリル、5,6,7,8−テトラヒドロ−ベンゾ[e]ピリミジン、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、3,4,5,6−テトラヒドロ−ピリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロピリミジニル、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジニル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、チアゾリル、チエニル、チエノ[5,1−c]ピリジニル、チオクロマニル、トリアゾリル、1,3,4−トリアゾロ[2,3−b]ピリミジニル、キサンテニルなどが挙げられる。
【0012】
複素環(Het)基上の置換基は、必要に応じて、ヘテロ原子を含む、環系における任意の原子上に位置することができる。複素環(Het)基の結合点は、(適切な場合には)ヘテロ原子、または任意の融合炭素環上原子であって、環系の一部として存在し得るものを含む、環系中の任意の原子を介するものであってよい。
【0013】
「ハロ」なる用語は、本明細書において用いられる場合、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。
【0014】
(本発明の全ての側面に関連して)言及される式Iの化合物は
(1)RがH以外である;
(2)Rが、Hまたは、特に、1以上のOH基で置換されたC1−2アルキル(例えば、CHOH)を表す;
(3)Rが、1以上のOH基で置換されたC1−4アルキル(例えば、CHOHまたはCH(OH)CHOH)または、特に、Hを表す。
【0015】
さらに、(本発明の全ての側面に関連して)言及される式Iの具体的な化合物は、ジヒドロキシアセトン(DHA、あるいは1,3−ジヒドロキシ−2−プロパノンと呼ばれる)、グリコールアルデヒド、グリセルアルデヒド、エリトロース、キシルロース、およびその二量体を含む。言及される式Iの他の具体的な化合物は、エリトルロースおよび3−ヒドロキシ−2−ブタノンを含む。本発明の一つの特定の実施形態(その全ての側面)において、式Iの化合物はDHAまたはその二量体である。
【0016】
誤解を避けるために、式Iの化合物は二量体および単量体形態の両方において存在し得るので、本明細書における式Iの化合物への言及は、(特に記載しない限り)いずれかの形態におけるこれらの化合物への言及を含む。さらに、式Iの化合物が式Iaの環状二量体の形態において存在できることは、これらの化合物の構造に固有である。従って、その全てが式Iaの環状二量体を形成できる一般的または具体的に定義された式Iの化合物への本明細書での言及は、(一般に、または具体的に定義された)化合物それ自体(即ち、環状二量体の形成に関連した前述の特性がない)への言及を含む。式Iの化合物が式Iaの環状二量体を形成できるかどうかは、例えば、単離された化合物が前記環状二量体を固体または溶液(例えば、水溶液または有機溶液)状態において形成する傾向を研究することにより決定できる。
【0017】
本発明の別の側面は、前記定義の式Iの化合物の、還元性無機化合物の還元剤としての使用を提供する。
【0018】
本発明のこの側面の一つの実施形態において、無機化合物はヨウ素ではないか、または第二銅イオンまたはフェリシアン化物を含まない。
【0019】
無機化合物は、特定の実施形態において、ランタニド元素(例えば、セリウム)または、特に、遷移金属(即ち、IIIA〜IIB族の金属)を含み得る。無機化合物は、前記ランタニド元素または遷移金属の配位錯体を含むことができる。記載される具体的な遷移金属としては、コバルトおよびニッケル群におけるもの(即ち、中性状態においてdまたはd10電子配置を有する金属)、例えば、コバルトまたは白金が挙げられる。金属は(配位錯体またはそうでないものにおいて)前記金属の別の安定な酸化状態より高い酸化状態にあり得る。例えば;コバルトについて、III酸化状態はII酸化状態に還元され;白金について、IV酸化状態はII酸化状態に還元され得る。本発明のこの側面のある実施形態において、遷移金属は鉄または銅以外である。
【0020】
本発明の第一の側面の特定の実施形態において、式Iの化合物の、有機化合物中の還元性基の還元剤としての使用は、酵素以外の化合物の還元剤としてのこのような化合物の使用を含む。
【0021】
本発明の第一の側面のもう一つ別の実施形態において、還元性化合物の還元は、非水性溶媒系中で起こる。本明細書において用いられる場合、「非水性溶媒系」なる用語は、塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタン)、炭化水素(例えば、ヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエンまたはキシレン)、双極性非プロトン性溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリジノン)、アセトニトリル、エステル(例えば、酢酸エチル)または、特に、低級(C1−4)アルキルアルコール(例えば、イソプロパノール、エタノールまたはメタノール)への言及を含む。「非水性溶媒系」なる用語はまた、このような溶媒の混合物への言及も含む。
【0022】
式Iの化合物による還元は、塩基の添加により促進され得ることが判明している。従って、本発明の第一の側面の特定の実施形態は、前記定義の式Iの化合物および塩基の、1以上の還元性基を含有する有機化合物中のこのような基を還元するための使用に関する。
【0023】
この実施形態において、塩基は有機であっても、無機であってもよい。例えば、塩基はアミン(例えば、第一、第二または、特に、第三アミン、例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミンまたはジエチルイソプロピルアミン)、窒素系複素環(例えば、N−メチルモルホリンまたはピリジン)、アルコキシド(例えば、アルカリ金属アルコキシド、例えば、ナトリウムエトキシド)、水酸化物塩(例えば、アンモニウムまたはアルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)または、特に、炭酸塩または重炭酸塩(例えば、アルカリ土類金属または、特に、アルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩)であってよい。
【0024】
用いられる塩基の量は、例えば、選択される特定の式Iの化合物、還元される化合物の同一性、所望される反応速度などの因子に応じて変化し得る。しかしながら、本発明の第一の側面のある実施形態において、用いられる塩基の量は、例えば、式Iの化合物に対して4当量以下(例えば、3、2または1)、例えば、触媒量の塩基(例えば、0.1当量以下)であり得る。N,N−ジメチルホルムアミド 別法として、塩基はあるpHレベルの反応混合物を提供し得る。従って、本発明の第一の側面の他の実施形態において、式Iの化合物は、7から11の間のpH(例えば、7.1から(例えば、7.2、7.3、7.4または7.5)10.9まで(例えば、10.8、10.7、10.6、10.5、10.4、10.3、10.2、10.1または10.0)のpH)(例えば、水溶液)で還元を行う還元剤として使用される。
【0025】
本明細書において用いられる場合、「水溶液」なる用語は、溶媒系が水を含み、任意に、1以上の他の溶媒、例えば、水混和性有機溶媒(例えば、低級(例えば、C1−4)アルキルアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノールまたは、特に、メタノール)をさらに含む物質の溶液を指す。さらに、pH値が本明細書において言及される場合、これらの値は当業者に公知の方法(例えば、作用および基準電極を使用した電位差計による測定による)により、例えば室温(例えば、25℃)で決定される。
【0026】
式Iの化合物は、還元性化合物の還元法において用いることもできる。従って、本発明の第二の側面に従って、有機化合物中の還元性基を還元する方法であって、前記定義の式Iの化合物と前記化合物を接触させることを含む方法が提供される。
【0027】
本発明の第二の側面の特定の実施形態において、方法は、酵素以外の化合物を還元するためのものである。
【0028】
本発明の第二の側面のもう一つ別の実施形態において、方法は、還元性化合物を式Iの化合物と、前記定義の非水性溶媒系の存在下で接触させることを含む。特定の実施形態において、還元は前記非水性溶媒計において起こる。
【0029】
本発明の第二の側面のもう一つ別の特定の実施形態において、方法は、塩基、例えば、本発明の第一の側面に関して定義された塩基の存在下で行われる。用いられる塩基の量は、例えば、式Iの化合物に対して1当量以下、例えば、触媒量の塩基(例えば、0.1当量以下)であり得る。
【0030】
本発明の第二の側面のもう一つ別の特定の実施形態において、方法は還元性化合物を前記定義の式Iの化合物と、7から11の間のpH(例えば、7.1から(例えば、7.2、7.3、7.4または7.5)10.9まで(例えば、10.8、10.7、10.6、10.5、10.4、10.3、10.2、10.1または10.0)のpH)を有する溶液(例えば、水溶液)または懸濁液の存在下で接触させることを含む。あるいは、方法は、還元性化合物を前記定義の式Iの化合物と、等体積の水中に溶解または懸濁している場合、7から11の間のpH(例えば、7.1から(例えば、7.2、7.3、7.4または7.5)10.9まで(例えば、10.8、10.7、10.6、10.5、10.4、10.3、10.2、10.1または10.0)のpH)をもたらす、ある量の塩基の溶液または懸濁液(ある体積の以下に定義される実質的に非水性溶媒系中)の存在下で、接触させることを含む。
【0031】
本発明の第一および第二の側面において、還元される基は、例えば、ニトロ、オキソ(例えば、ケト、例えば、キノンカルボニル)、イミノ、アゾ、N−オキシドまたはピリジニウム基であり得る。特に、還元されるものは、例えば、ニトロまたはピリジニウム基であり得る。
【0032】
前述のように、α−ヒドロキシカルボニル化合物を用いる還元は、実質的な量の非水性(有機)溶媒の存在下(または非水性(有機)溶媒単独中)で行うことができることが驚くべきことに見出された。
【0033】
従って、本発明の別の側面は、前記定義の式Iの化合物の、実質的に非水性溶媒系中での還元剤としての使用に関する。
【0034】
本明細書において用いられる場合、「実質的に非水性溶媒系」なる用語は、最大で80重量%(例えば、70、60、50、40、30、20、10、5、1または0.1重量%)の水を含む溶媒系への言及を含む。これらの溶媒系において、溶媒の残り(即ち、少なくとも20重量%)は有機溶媒である。これに関して言及される有機溶媒は、「非水性溶媒系」なる用語に関して前述されたものを含む。「実質的に非水性溶媒系」なる用語は、完全非水性溶媒系(例えば、有機溶媒のみを含む溶媒系)への言及も含む。
【0035】
前述のように、本発明のこの側面の特定の実施形態は、前記定義の式Iの化合物および塩基の実質的に非水性溶媒系中での還元剤としての使用に関する。
【0036】
本発明のこの側面において、式Iの化合物は有機または無機化合物(例えば、以下に記載の有機化合物)のいずれかを還元するために使用できる。
【0037】
本発明はさらに、式Iの化合物および実質的に非水性溶媒系を用いた、対応する還元法を提供する。したがって、本発明のさらなる側面は還元性化合物を還元する方法であって、前記還元性化合物を前記定義の式Iの化合物、および実質的に非水性溶媒系と接触させることを含む方法に関する。
【0038】
本発明のこの側面の特定の実施形態において、方法は、還元性化合物を前記定義の式Iの化合物および塩基と接触させることを含む。
【0039】
さらに、本発明のこの側面において、還元性化合物は、有機または無機化合物(例えば、以下に記載の有機化合物)のいずれかであってよい。
【0040】
本発明のこの側面において、還元性化合物が無機化合物である場合、無機化合物は、特定の実施形態において
(i)ヨウ素でないか、あるいは第二銅イオンまたはフェリシアン化物を含まない;
(ii)ランタニド元素(例えば、セリウム)または、特に、遷移金属(即ち、IIIA〜IIB族の金属)を含む;および/または
(iii)前記ランタニド元素または遷移金属の配位錯体を含む。
【0041】
言及される特定の遷移金属は、コバルトおよびニッケル群におけるもの(即ち、中性状態においてdまたはd10電子配置を有する金属)、例えば、コバルトまたは白金を含む。金属は(配位錯体またはそうでないものにおいて)、前記金属の別の安定な酸化状態よりも高い酸化状態にあり得る。例えば;コバルトについて、III酸化状態はII酸化状態に還元され;白金について、IV酸化状態はII酸化状態に還元される。本発明のこの側面のある実施形態において、遷移金属は鉄または銅以外である。
【0042】
還元の生成物は、生物学的に活性な物質であり得る。従って、本発明の第三および第四の側面は、それぞれ
(i)前記定義の式Iの化合物の、還元−活性化プロドラッグを対応する活性物質へ変換するための活性化剤としての使用;および
(i)還元−活性化プロドラッグを還元する方法であって、還元−活性化プロドラッグを前記定義の式Iの化合物と接触させることを含む方法
を提供する。
【0043】
本発明の第三の側面の特定の実施形態は、還元−活性化プロドラッグを対応する活性物質へ変換するための活性化剤としての、前記定義の式Iの化合物および塩基の使用に関する。用いられる塩基の同一性および量、ならびに式Iの化合物がプロドラッグの活性化(還元による)を行うpHは、本発明の第一の側面の使用に関して定義されたとおりであり得る。
【0044】
対応して、本発明の第四の側面の特定の実施形態において、方法は塩基、例えば、本発明の第一の側面に関して定義された塩基の存在下で行われる。使用される塩基の同一性および量は、本発明の第一の側面の使用に関して定義されたとおりであり得る。さらに、本発明の第四の側面のもう一つ別の特定の実施形態において、方法は、還元−活性化プロドラッグを前記定義の式Iの化合物と、7から11の間のpH(例えば、7.1から(例えば、7.2、7.3、7.4または7.5)10.9まで(例えば、10.8、10.7、10.6、10.5、10.4、10.3、10.2、10.1または10.0)のpH)を有する溶液(例えば、水溶液)または懸濁液の存在下で接触させることを含む。あるいは、方法は、還元−活性化プロドラッグを前記定義の式Iの化合物と、等体積の水中に溶解または懸濁される場合、7から11の間のpH(例えば、7.1から(例えば、7.2、7.3、7.4または7.5)10.9まで(例えば、10.8、10.7、10.6、10.5、10.4、10.3、10.2、10.1または10.0)のpH)をもたらす、ある量の塩基の溶液または懸濁液(ある体積の前記定義の実質的に非水性溶媒系中)の存在下で接触させることを含む。
【0045】
「プロドラッグ」なる用語は、当業者には十分理解される。しかしながら、誤解を避けるために、「還元−活性化プロドラッグ」なる用語は、本明細書において、薬理活性を有し得るか、または有し得ないが、還元段階を含むプロセスにより、薬理活性を有する物質(即ち、「対応する活性物質」)、または「プロドラッグ」部分よりも少なくとも感知できるほど高い薬理活性を有する化合物へ変換され得る化合物への言及を含むために使用される。
【0046】
本明細書において用いられる場合、「活性化剤」なる用語は、還元プロセスにより、プロドラッグを対応する生物学的に活性な物質へ変換させるか、または変換を開始するように作用する式Iの化合物への言及を含む。
【0047】
この点に関して(および本発明の全ての関連する側面に関連して)言及される還元−活性化プロドラッグは
(a)メトロニダゾール(2−メチル−5−ニトロ−1H−イミダゾール−1−エタノール);
(b)クロラムフェニコール(2,2−ジクロロ−N−[(αR,βR)−β−ヒドロキシ−α−ヒドロキシメチル−4−ニトロフェネチル]アセトアミド);
(c)ニトロフラゾン(2−[(5−ニトロ−2−フラニル)メチレン]ヒドラジンカルボキサミド);
メトロニダゾール、クロラムフェニコールおよびニトロフラゾンは活性化された場合哺乳動物細胞に対して細胞毒性である(Bailey et at(1996))。
(d)E09(3−[5−アジリジニル−4,7−ジオキソ−3−ヒドロキシメチル−1−メチル−1H−インドール−2−イル]−プロプ−β−エン−α−オール);
(e)SR−4233(「チラパザミン」、3−アミノ−1,2,4−ベンゾトリアジン−1,4−ジオキシド);
(f)RSU−1069(1−(1−アジリジニル)−3−(2−ニトロ−1−イミダゾリル)−2−プロパノール);
(g)RB−6145(1−[3−(2−ブロモエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−2−ニトロイミダゾール);
(h)AQ4N(1,4−ビス([2−(ジメチルアミノ−N−オキシド)エチル]アミノ)5,8−ジヒドロキシ−アントラセン−9,10−ジオン);
(i)RB90003X
【化3】


(j)マイトマイシンC;
(k)ミトセン;
(l)シクロプロパミトセン;
(m)ダイネマイシンA;
(n)式
【化4】


(式中
各Rは独立して、クロロ、ブロモ、ヨードまたは−OS(O)を表し、
はC1−8アルキル(任意に1以上のフルオロ原子により置換される)またはフェニル(ハロ、ニトロ、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選択される1以上の置換基により任意に置換される)を表し、
B1〜RB4は独立して、H、CN、C(O)N(R)R、C(S)N(R)R、C(O)OH、S(O)NHRを表すか
またはRB1はさらにNOを表し得、
およびRは独立して、HまたはC1−4アルキル(後者の基は、OH、N(H)−C1−2アルキル、N(C1−2アルキル)、4−モルホリニルおよびC(O)OHから選択される1以上の置換基により任意に置換される)を表すか、
またはRおよびRはこれらが結合しているN原子と一緒になって4−モルホリニルを表し、および
は、HまたはS(O)CHを表し、
ただし、RB1がH以外である場合、RB2はHである)の化合物、
例えば、Anlezark et al,1992および1995において開示されている前記式の化合物のいずれか1つ、例えば、SN 23163、SN 23849、SN 23777、SN 23428、SN 23759、SN 24927、SN 24928、SN 24926、SN 25402、SN 25079、SN 24939、SN 24935、SN 25923、SN 25313、SN 23856、SN 25066、SN 23816、SN 25015、SN 24971、SN 25260、SN 25261、SN 25263、SN 25084、SN 25188、SN 25507または、特に、SN 23862(5−{N,N−ビス[2−クロロエチル]アミン}−2,4−ジニトロベンズアミド);
(o)式
【化5】


(式中
は前記定義のとおり(例えば、Cl)であり、
はNHを表し、XおよびXはどちらもHを表すか、
−X−X−は−NH−CHCH−を表し、XはHを表すか、または
−X−X−は−NH−を表し、XはHを表すかのいずれかである)の化合物;
(p)式
【化6】


(式中
Yは
1−アジリジニル(任意に2位でメチルにより置換される)、
メトキシ(従って、化合物ミソニダゾールを形成する)または
N(H)CHCHBr(従って、化合物RB6145を形成する)を表す)の化合物;
(q)式
【化7】


(式中
Rは−0−R’または−NH−R’を表し、
R’は
【化8】


(式中、波線はフラグメントの結合位置を示し、
は前記定義のとおり(例えば、Cl)であり、
R”は次のペプチドラクトン
【化9】


(式中、波線はフラグメントの結合位置を示す)
を表す)を表す)の自壊型(self−immolative)プロドラッグ、
例えば、Rが−NH−R’を表すか、またはRが−O−R’を表し、R’が
【化10】


(式中、Rは前記定義のとおり(例えば、Cl)である)を表す前記式の化合物;
自壊型プロドラッグは、Hu et al,2003;Li et al,2003およびManger et al,1994において記載されている。
(r)式
【化11】


のニトロインドリン化合物
(s)アクリジン−CB 1954
【化12】


(t)トレタジカル(5−(アジリジン−1−イル)−2,4−ジニトロベンズアミド);
(u)抗癌化学療法または疾患治療において使用されるベンゾキノン、ナフトキノンまたはアントラキノン(効力はキノン官能基の還元に依存する)、例えば、

【化13】


(式中、各Rは独立して、HまたはNR’C(O)OR”を表し、式中、R’はHまたはC1−4アルキルを表し、R”はC1−4アルキル(例えば、各RはNHC(O)OCを表し、ジアジキノン(「AZQ」)を形成するか、または各RはHを表し、従って2,5−ビス(1−アジリジニル)−1,4−ベンゾキノン(「DZQ」))を表し、
ベンゾキノンマスタード(2−(N,N−ビス[2−クロロエチル]アミノ)−1,4−ベンゾキノン)、
アドリアマイシンまたは
マイトマイシンを形成する)の2,5−ビス(1−アジリジニル)−1,4−ベンゾキノン;
(v)還元的活性化により細胞毒性剤を放出するキノノイド残基を含有する複合プロドラッグ(例えば、WO 99/61409(この文書の開示は参照により組み込まれる)に記載されているとおり)、例えば、式の化合物
【化14】


(式中、Ralはメチル、N(C1−2アルキル)を表すか、またはRa2と一緒になって、縮合ピロールまたはフラン環(前記環はメチルおよびヒドロキシメチルから選択される1以上の置換基により任意に置換される)を表し、
a2はメチルを表すか、または、Ralと一緒になって、縮合ピロールまたはフラン環(前記環はメチルおよびヒドロキシメチルから選択される1以上の置換基により任意に置換される)を表し、
a3は、式
【化15】


(式中、波線はフラグメントの結合点を表し、
blはHまたはメチルを表し、
b2はN(CHCHCl)(例えば、3−または4−位において)を表し、および
b3はメチル(例えば、4−位で)またはORcl(例えば、3−位で、RclはC1−6アルキル(例えば、n−ブチル)またはC3−6シクロアルキルメチル(例えば、シクロプロピルメチルまたはシクロブチルメチル)を表す)を表す)の構造フラグメントを表す);
(w)プロドラッグ複合体の非細胞毒性プラットフォームとして使用される還元性ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノンまたはインドロキノン(ここで、キノンは薬剤放出のトリガー成分として作用する)(例えば、WO 97/23456またはWO 98/35701(この書類の開示は参照により組み込まれる)において記載されているとおり)、例えば、式
【化16】


(式中、RdlはC1−4アルコキシ、アジリジン−1−イル(1または2個のメチル基により任意に置換される)、−N(H)CHC(CHOHまたは式
【化17】


(式中、波線はフラグメントの結合の位置を表す)の構造フラグメントを表し、
d5はHまたはメチルを表し、Rは薬剤部分を表し、
d2はメチル、−C(O)O(C1−4アルキル)または−OCHORe1を表し、
elは薬剤部分、H、Re2−C(O)ORe3または−C(O)NHを表し、
e2およびRe3は独立して、フェニル、ベンジルまたはシクロヘキシルを表し(ここで、後者の3つの基は、ハロ、ニトロ、アシルオキシおよび−SHから選択される1以上の置換基により任意に置換される)
d3は、OHにより任意に置換されるC1−3アルキル(例えば、メチル、イソプロピルまたは2−ヒドロキシエチル)またはC3−6シクロアルキル(例えば、シクロプロピルまたはシクロヘキシル)を表し、
d4は、H、C1−4アルキル、N(Re4)Re5またはN(Re6)C(O)ORe7を表し、
e4〜Re6は独立して、HまたはC1−4アルキルを表し、および
e7は、C1−4アルキルを表す)の化合物、
または式
【化18】


(式中、RflおよびRf2は独立して、H、C1−4アルキルを表すか、またはRflおよびRf2は一緒になって、縮合ベンゼン環(前記環は、メチルおよびメトキシから選択される1以上の置換基により任意に置換される)を表し、および
d1およびRd4は前記定義のとおりである)の化合物;および
(w)薬剤放出系における還元的活性化後に「自己アルキル化」によりプロドラッグトリガープラットフォームとして使用されるニトロ芳香族またはニトロ複素環式化合物(例えば、WO 00/10611(この文書の開示は参照により組み込まれる)において記載されているとおり)、例えば、式
【化19】


(式中、Arは芳香族(例えば、フェニル、ナフチルまたはアントラセニル)環またはヘテロ芳香族(例えば、ピロリル、イミダゾリル、(ベンゾ)フラニル、(ベンゾ)チエニル、(ベンズ)オキサゾリル、(ベンゾ)チアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリルまたは(イソ)キノリニル)環であって、前記環は、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、OH、ハロ、N(Re4)Re5およびC(O)ORe6(式中、Re4〜Re6は前記定義のとおりである)から選択される1以上の置換基により任意に置換される)を表し、
は式
【化20】


(式中、波線はフラグメントの結合位置を表し、各Rd5およびRは独立して、それぞれの場合、前記定義のとおりである)の構造フラグメントを表す)の化合物、
またはその医薬的に許容される塩および/または溶媒和物(例えば、前記(a)から(t)で定義された化合物)を含む。
【0048】
本発明のこの側面において、言及される実施形態は、還元−活性化プロドラッグがニトロ基の還元により対応する活性物質に変換されるものを含む。
【0049】
実際、特定の実施形態において、式Iの化合物はプロドラッグトレタジカル(5−(アジリジン−1−イル)−2,4−ジニトロベンズアミド;CB 1954としても公知;その構造については図1参照)を活性化するために使用される。
【0050】
トレタジカルは、増殖性障害に対抗するために使用できる薬剤の一例である。細胞成長または増殖を予防または軽減することが望ましい多くの障害がある。これらの疾患のいくつか、例えば癌は命に関わり、他のものは、命に関わらないが、消耗性(例えば、乾癬)または刺激性であり、不愉快である(例えば、いぼ)。これらの疾患、特に癌に対抗するための一つの戦略は、DNAの架橋を行うことができ、細胞成長または増殖を予防または軽減することができる化学物質を利用することである。トレタジカルはこの架橋を達成するが、対応するヒドロキシルアミン(次に以下で議論するようにさらに活性化される)に還元(ニトロ基で)された後のみである。
【0051】
トレタジカルは35年にわたり継続して興味の対象であった。これはまず1960年代の後半に、1950年代の初期から研究されてきた一連の有効な抗癌化合物の一部として合成された。合成され試験された場合、トレタジカルは癌化学療法の展望、小さな低分子量化合物であって、毒性副作用が最小で腫瘍を治癒できる化合物、を示すようであった。抗癌剤として、これは真の抗腫瘍選択性を示す化合物の非常に数少ない例の一つである。残念なことにヒトの癌の治療に関しては、この抗腫瘍選択性はあるラット腫瘍においてのみ見られた。トレタジカルの抗腫瘍選択性の基礎は、これが二官能性物質を生成するために酵素的に活性化されるプロドラッグであり、それはDNA−DNA鎖間架橋を形成できる。ラット細胞におけるトレタジカルの生物活性化は、その4−ニトロ基の4−ヒドロキシルアミンへの酵素NQO1(DT−ジアフォラーゼ)による好気性還元を含む(図2)。NQO1のヒト形態は、ラットNQO1ほど有効にトレタジカルを代謝しない。従って、ヒト細胞および腫瘍はトレタジカルに対して非感受性である。
【0052】
ヒト腫瘍細胞においてさらなる内因性トレタジカル−還元酵素が存在し、その活性は、NQO1に起因するものよりもかなり高い(Knox et al,2000)(Wu et al,1997)。しかしながら、この活性は潜在的であり、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)(Knox et al,2000)の存在下でのみ検出可能であり、NADHまたはNADPHのいずれかの存在下では検出できない。この活性に関与する酵素はヒトNAD(P)Hキノン酸化還元酵素2(NQO2)である(Knox et al,2000)(Wu et al,1997)。NRHの存在下で、NQO2はキノンの2電子還元およびトレタジカルの4電子ニトロ還元を触媒できる(Wu et al,1997)。NQO2はヒトNRH−依存性ニトロ還元酵素と見なすことができる。
【0053】
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドは、トレタジカルに対して耐性である細胞に対してさえも細胞毒性が高く、そのDNAにおいて鎖間架橋を形成することができる。細胞がトレタジカルを活性化できる場合に、この化合物の形成は、細胞の感受性の主な原因となる。トレタジカルを生物活性する能力と関係なく、出現する全ての細胞型は還元された4−ヒドロキシルアミノ誘導体に対して同程度の感受性を有する(Boland et al,1991)。5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドは細胞においてDNA−DNA鎖間架橋を生成することができるが、裸のDNAにおいてこれらの損傷を形成することができない(Knox et al,1991a)。5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを近位DNA架橋細胞毒性種に変換するさらなる活性化段階がある。ヒドロキシルアミンの酵素エステル化および活性化は、4−ニトロキノリン−N−オキシドおよびN−アセチルアミノフルオレンの代謝により形成されるものと同様に、提案された(Knox et al,1991a)。実際、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドは裸のDNAと反応して、アセチル−補酵素Aおよび他のチオエステルとの直接化学反応により鎖間架橋を生成することができる形態に非酵素的に活性化することができる(Knox et al,1991a)(図2)。トレタジカルの最終的なDNA反応性誘導体は、おそらくは4−(N−アセトキシ)−5−(アジリジン−1−イル)−2−ニトロベンズアミドである。
【0054】
トレタジカルの生物活性化の結果、その細胞毒性が大幅に増加し、結果としての用量の変更は最高100000倍になり得る。これは一官能性剤から二官能性剤の変換により予測されるよりも大きい。ハーフマスタードおよび一官能性白金化合物のように、二官能性剤の一官能性同属体が利用可能である場合、等しい毒性の用量変更が50〜200倍付近でのみ見られる(Knox et al,1991b;Knox et al,1987)。しかしながら、DNA鎖間架橋の形成およびその性質に関する観察は、トレタジカルの細胞毒性においてその活性化後になぜこのように大きな増加があるのかを明らかにする。
【0055】
(i)トレタジカル誘発性鎖間架橋は非常に高い頻度で形成され、全損傷の最高70%までの原因になり得る(Friedlos et al,1992)。この頻度はほとんどの他の薬剤について報告されているものよりもかなり高い。例えば、鎖間架橋はCisplatinまたはCarboplatinの全DNA反応の2%以下に相当する(Knox et al,1986)。鎖間架橋は、モル有効性に関して、一本鎖ジアダクト(di−adduct)および一官能性損傷より本質的に毒性の高い損傷である。非常に高い割合の架橋をもたらす薬剤は、低い頻度でのみ生成されるものよりも毒性が高いことが予想される。
【0056】
(ii)架橋が不十分に修復され、このために、他の二官能性剤により誘発されるものよりもさらに毒性が高くなり得る(Friedlos et al,1992)。
【0057】
(iii)トレタジカルの生物活性化の結果、トレタジカルを還元できない細胞と比べて、Walker細胞におけるDNA結合剤の量は10倍増加する(Friedlos et al,1992)。
【0058】
トレタジカル誘発性鎖間架橋のこれらの異常な特性は、他の薬剤により形成されるものと同様ではないことを示唆する。トレタジカルにより誘発される鎖間架橋損傷は、まだ完全には同定されていない。しかしながら、4−ヒドロキシルアミンは、(すでに詳細に記載したように活性化後)デオキシグアノシンのC8位と主に反応する。DNAにおいて、これは、アジリジン官能基を反対の鎖と反応させて、観察される架橋を形成する。分子モデル研究は、この第二アーム反応がDNAの反対の鎖上のデオキシグアノシンのO6位上で優先的であることを示す(Knox et al,2003;Knox et al,1991a)。このようなC8−O6DNA鎖間架橋は、他の種類のアルキル化または白金結合剤により生成されないので独自であり、トレタジカルの独自の特性の主な原因である。
【0059】
これらの性質は、生物活性化段階の選択性と合わせて、トレタジカルがラットにおいて抗腫瘍剤として非常に例外的に有効であったことを明らかにし、G(V)DEPTにおけるその使用およびヒトにおけるNQO2による活性化の根拠を提供する(Knox et al,2003)(Burke & Knox,1998)。
【0060】
トレタジカルはまた、トランスジェニック動物における選択的細胞剥離に使用することもできる。生きたトランスジェニック動物における特異的細胞集団の条件付標的剥離は、インビボの細胞機能を決定するための非常に強力な戦略である。標的とされる剥離は、トレタジカルを好気的に活性化できる細菌性ニトロ還元酵素(NTR)(Anlezark et al,1992;Knox et al,1992)および適切な組織特異性プロモーターを組み入れるトランス遺伝子を構築し、これを研究対象の動物、正常マウスの受精卵中に注入することにより達成される。誕生後、トランス遺伝子のゲノムの組み込みを確認し、創始マウスを繁殖させて、形質転換系統を確立する。動物をトレタジカルでその成長の様々な段階で処理して、研究されている細胞集団の特異的剥離の効果を評価する。細胞剥離は、プロドラッグ投与後早ければ7時間から始まって非常に迅速に起こり、機能的p53と関係ないようである(Cui et al,1999)。この系の使用例は、トランスジェニックマウスの乳腺の内腔細胞を含む。NTRを発現する動物の処理の結果、細胞のこの集団が迅速かつ選択的に殺され、一方、密接に関連した筋上皮細胞は影響を受けなかった。この系を用いた選択的剥離の他の例が含脂肪細胞(Felmer et al,2002)、星状膠細胞(Cui et al,2001)および ニューロン(Isles et al,2001;Ma et al,2002)において観察されている。
【0061】
隣接する細胞集団に対する影響が無いことは重要である。ヒドロキシルアミンは短距離を移動できることが知られ、従って、隣接する細胞に対して影響を及ぼすことが予想される(Bridgewater et al,1997;Friedlos et al,1998)。前記実験において、基本的な相違は、標的細胞集団が分裂し、一方、隣接する組織はおそらく分裂しないことである。トレタジカルの活性化は、非分裂(非環化)細胞に対して有効であることが知られている(Bridgewater et al,1995)。しかしながら、この効果はこれらの細胞が分裂段階に入ることを許容することによって測定できるだけである。従って、トレタジカル誘発性DNA損傷(即ち、DNA鎖間架橋)が分裂および非分裂細胞集団の両方において誘発されるが、この結果、細胞が分裂を試みる場合は細胞毒性を生じるだけだが、そのDNAは依然として損傷されたままであるということが起こっているようである。対照的に、S期特異性剤、例えば、抗葉酸剤は、この薬剤が存在している状態で分裂を受ける細胞にのみ影響を及ぼす。
【0062】
除去実験において、除去される組織は分裂しているが、隣接する組織はおそらくは分裂せず、従って、非常にきれいな結果になる。DNA損傷は恒久的でなく、ゆっくりと修復される(Friedlos et al,1992)。その結果、非分裂組織が損傷を修復できるが、分裂段階に入る任意の細胞は死ぬ期間が生じる。この期間の長さは、誘発された初期DNA損傷の量に依存する。細胞系において、トレタジカル誘発性架橋は約55時間の半減期で修復される(Friedlos et al,1992)。これは他のDNA架橋剤よりもかなり長く(Friedlos et al,1992)、これからインビボ状況を推定すると、約3週間の期間(半減期の10倍)になる。
【0063】
癌の治療において、類似の状況が存在し、非増殖性組織は、その期間内で細胞分裂段階に入らない限り、活性化トレタジカルの効果に対して耐性である。
【0064】
他の二官能性アルキル化剤および白金化剤について同様の議論を行うことができる。しかしながら、これらは全身投与され、その結果、最も迅速に分裂する正常な宿主組織、例えば、骨髄、腸粘膜およびリンパ系に対して毒性効果を有する。トレタジカルはプロドラッグであるので、これは活性化酵素(NQO2)の良好な分布またはウイルス(G(V)DEPT)の投与経路により回避される。活性4−ヒドロキシルアミン誘導体は非常に短い半減期を有し、活性化の部位から非常に離れて移動することができず、従って、デポー効果はない。さらに、ほとんどのヒト固形癌は、常に増殖する高い割合の細胞およびさらに広範囲の殺期間を有さず、これはトレタジカル誘発性架橋の比較的不十分な修復が有利であり得るためである。
【0065】
トレタジカルのI期および薬物動態学的研究はすでに完了し(Chung−Faye et al,2001)、これから、トレタジカルはヒトに最高24mg/mで著しい毒性無しに安全に投与できることを結論づけることができる(MTDは37.5mg/mであることが判明した)。
【0066】
トレタジカルのヒトにおける使用は、G(V)DEPT技術の実用性またはNQO2の分布のいずれかにより限定される。しかしながら、トレタジカルは、接近して活性化できるならば、他の癌(または望ましくない細胞成長または増殖の他の疾患)の治療について治療的に有益であり得る。従って、例えば、頸部、膀胱、脳、胸部において、または局所的にトレタジカルを活性化するための系は、全身循環から活性化系を分離し、これが起こることを可能にする。理論的には、これは酵素および補基質を用いることにより行うことができるが、実際には困難である。しかしながら、ニトロ基を還元するための別の方法がある。電解還元はインビボでは現実的でないが、ニトロ基は化学的に還元することができる。
【0067】
亜鉛末および炭酸アンモニウムをアセトン中で使用(収率13%)(Knox et al,1988)またはヒドラジン水和物/Pd−Cをテトラヒドロフラン中で使用(収率28%)(Knox et al,1993)するトレタジカルの5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドへの化学的還元が報告されている。これらの全身的経路はどちらもインビボで使用できないと考えられる。
【0068】
同様の考察が他の還元的活性化プロドラッグに当てはまる。
【0069】
本発明者は、還元的活性化プロドラッグを対応する活性な物質へ、例えば、水溶液およびクリームの両方において還元させる新規化学的還元系を驚くべきことに見出した。この発見により、活性剤を患者に(例えば、ある癌、前癌状態(例えば、悪性黒子または、特に、光線性角化症)および基本的に皮膚細胞の過剰生産である皮膚疾患、例えば、乾癬の治療のため)直接適用することが望ましい、可能性のある新規療法が可能になる。
【0070】
実施例において詳細に記載されるように、本発明者は、還元−活性化プロドラッグ(例えば、トレタジカル)を対応する活性物質(例えば、トレタジカルの場合、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド)に変換するために、式Iの化合物、例えば、DHAを使用できることを見出した。
【0071】
従って、本発明の第五の側面は
(a)前記定義の還元−活性化プロドラッグ;および
(b)前記定義の式Iの化合物
を含む組成物を提供する。
【0072】
例えば、プロドラッグがトレタジカルである場合、以下に記載される好適な条件下でこのような組成物は長時間にわたって前述のように細胞におけるDNAの架橋を行うことができる5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを生成する。
【0073】
還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物を含む前記組成物は、還元−活性化プロドラッグを含む組成物および式Iの化合物を含む組成物を混合することにより都合よく生成されることは理解される。従って、本発明の第六の側面は、前記定義の還元−活性化プロドラッグを含有する第一部分、および前記定義の式Iの化合物を含有する第二部分を含むキット(kit−of−parts)を提供する。
【0074】
典型的には、キットの2つの部分は、互いに適合性である組成物であり(例えば、どちらも、例えば、クリーム、水溶液、およびゲルなどの同じ物理的形態を有する)、混合されると、対応する活性剤(例えば、トレタジカルの場合、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド)を還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物(例えば、DHA)の好適な条件下での反応から生成することができる。
【0075】
このようなキットはまた、以下に詳細に記載するような、望ましくない細胞成長または増殖に対抗するのに有用な治療システムであると見なされる。
【0076】
好都合なことに、キットまたは治療システムは還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物の使用に関する説明書を含み、特に、これらは治療(例えば、望ましくない細胞成長および増殖への対抗)において還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物を含む結果として得られる組成物の使用前に、これらが組み合わされる時期を含む、還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物を含有する部分を組み合わせることに対する説明書を含む。
【0077】
典型的には、還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物を含む本発明の第五の側面の組成物、および本発明の第六の側面のキットの部分のそれぞれの組成物は、還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物の組み合わせ、ならびにキットの部分中の還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物が別々に医薬的に許容される担体と組み合わせられる医薬組成物である。
【0078】
同様に、本発明はまた、前記定義の式Iの化合物、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物ならびに5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび医薬的に許容される担体を含む医薬組成物も含む。
【0079】
医薬組成物の性質は、これらが患者の治療において用いられる方法、特に患者に対する投与経路に依存する。
【0080】
典型的には、皮膚または指状突起により到達可能な膜(例えば、口、膣、頸部、肛門および直腸の膜)の障害の治療に関して、本発明の第五の側面の組成物または医薬組成物、または本発明の第六の側面のキットまたは治療システムは、局所投与に適したものである。このような医薬組成物としては、クリーム、軟膏、ローション、スプレーおよびゲルが挙げられる。
【0081】
典型的には、体内(および特に、体腔内)の障害の治療に関して、医薬組成物は無菌非発熱性水溶液または懸濁液の形態である。典型的には、式Iの化合物は溶液であり得る。典型的には、還元−活性化プロドラッグは懸濁液として処方できる。
【0082】
医薬組成物、例えば、クリーム、軟膏、ローション、スプレーおよび無機非発熱性水溶液または懸濁液を製造する方法は、当分野において周知である。例えば、軟膏は、組成物、キットまたは治療システムの成分を、例えば、次のものの1以上:鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシ−プロピレン化合物、乳化ワックスおよび水との混合物中に懸濁または溶解することにより処方できる。さらに、ローションまたはクリームについて、組成物、キットまたは治療システムの成分を、例えば、次のものの1以上:鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、ラノリン、流動パラフィン、白色軟パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水の混合物中に懸濁または溶解することができる。
【0083】
この場合、本発明の第五の側面による組成物または医薬組成物が弱アルカリ性であるならば好ましい。トレタジカルおよび式Iの化合物の組み合わせを含む組成物に関して、弱アルカリ性は5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドのトレタジカルおよび式Iの化合物からの製造に有利であり、トレタジカルおよび式Iの化合物の組み合わせは中性または酸性pHで非反応性であるので、組成物が弱アルカリ性であるならば特に好ましい。
【0084】
本発明の第六の側面によるキットまたは治療システムの成分に相当する組成物または医薬組成物(即ち、還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物を別々に含有する組成物)に関して、これらを組み合わせる場合、得られる組み合わせが弱アルカリ性であるのが特に好ましい。
【0085】
独立した式Iの化合物成分が弱酸性であるならば好ましい。還元−活性化プロドラッグ成分が弱アルカリ性(特に例えば、トレタジカルなどの酸性pHで不安定な化合物について)であるならば好ましい。組み合わせられた生成物が弱アルカリ性であることが好ましい。
【0086】
「弱アルカリ性」により、本発明者らは、組成物が8から10.5、さらに好ましくは、9から10のpHを有することを意味することを含む。
【0087】
医薬組成物が水溶液である場合、そのアルカリ性度(pH)は、例えばpH試験紙またはpH指示薬の使用により、またはpH電極の使用により、直接測定することができると理解される。他の組成物、例えばクリームのアルカリ性度(pH)の評価に関連して、組成物を混合し、または水で抽出し、混合または抽出から生成される水溶液のpHを測定することができる。
【0088】
例えば、クリームに関して、クリームのpHは、0.2mgのクリームを1mLの水とともに10秒間ボルテックスすることにより、容易に測定される。懸濁液を遠心分離により清澄化し、水のpHを測定する。
【0089】
組成物のアルカリ性度は、当分野において周知のように、緩衝液の使用により制御できる。生理的に利用可能で、医薬における使用に関して認可された緩衝液も当分野において周知である。
【0090】
好ましい緩衝液系は、重炭酸ナトリウム(NaHCO)および炭酸ナトリウム(NaCO)の組み合わせである。この緩衝液はクリームにおける使用に特に適している。
【0091】
本発明者は、初期緩衝液濃度を変えることにより、還元−活性化プロドラッグ(例えば、トレタジカル)および式Iの化合物(例えば、DHA)間の反応の期間および範囲の両方を制御できることを見出した。pHは反応速度、従って、所与の期間にわたる反応の範囲に影響を及ぼす。反応の期間は、緩衝液の強度により制御できる。プロトンが反応により形成されるようであり、これらは緩衝液を消耗させる。緩衝液が消耗したら、pHは降下し、反応は有効に停止する。緩衝液強度(濃度)を変更することにより、これが起こる時間を変更することができる。好ましくは、緩衝系は、還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物が混合されると、反応の50%が60分以内に完了するように選択される。
【0092】
還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物を含む本発明の第五の側面の組成物が還元−活性化プロドラッグよりもモル過剰の式Iの化合物を含有するならば好ましい。同様に、キットまたは治療システムが、前記部分が組み合わせられる場合、還元−活性化プロドラッグよりもモル過剰の式Iの化合物があるのが好ましい。好ましくは、還元−活性化プロドラッグに対する式Iの化合物のモル過剰は、4:1以上、例えば、>5:1(式Iの化合物:還元−活性化プロドラッグ、例えば、DHA:トレタジカル)、さらに好ましくは、>10:1である。
【0093】
本発明の第五の側面による組成物または医薬組成物、または本発明の第六の側面によるキットまたは治療システムにおいて
(a)還元−活性化プロドラッグ(例えば、トレタジカル)の、前記成分を含有する組成物中の濃度は0.5から5%w/w(例えば、0.5から1%w/w)の組成物(例えば、組成物1グラムあたり5から10mg)の範囲である;および
(b)式Iの化合物(例えば、DHA)の、前記成分を含有する組成物中の濃度は2.5から10%w/w(例えば、5から10%w/w)の組成物(例えば、組成物1グラムあたり50から100mg)の範囲
であるのが好ましい。
【0094】
本発明者の承知している限り、トレタジカルを局所投与用に、例えば、クリームまたはローションまたは軟膏において使用することを提案した人は以前にいない。従って、本発明のさらなる側面は、トレタジカルを含む局所投与用組成物;好ましくは医薬組成物を提供する。組成物は、クリームまたはローションまたは軟膏の形態であってよい。
【0095】
ある式Iの化合物(DHAおよびグリセルアルデヒド)の医療のため(細菌感染症の治療または癌細胞を殺すため)の使用は、WO 2006/003492、Naturwissenschaften 51、217−218(1964)およびCancer Chemother.Rep.(Part 1)52(7)、687−696(1968)において開示されている。しかしながら、本発明者の承知している限り、DHAまたはグリセルアルデヒド以外の式Iの化合物を医薬において使用できることを以前に提案した人はいない。従って、本発明のさらなる側面は、医薬において使用するための前記定義の式Iの化合物を提供する。ただし、前記化合物はDHAまたはグリセルアルデヒドでないとする。式Iの化合物は包装され、医薬において使用されるために提供される。
【0096】
本発明はまた、前記定義の式Iの化合物、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物も含む。ただし、前記化合物はDHAまたはグリセルアルデヒドでないとする。一つの実施形態において、医薬組成物はクリームまたはローションまたは軟膏またはスプレーでない。式Iの化合物を含む医薬組成物が無菌非発熱性注射可能な水溶液であるならば好ましい。
【0097】
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドはトレタジカルのニトロ還元生成物として知られているが、本発明者の承知している限り、これを含有する組成物、例えば、前述の医薬組成物を医薬において使用できることを提案した人はいない。従って、本発明のさらに別の側面は、医薬において使用される5−(アジリジニル−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを提供する。
【0098】
すでに詳細に記載したように、本発明の第四の側面は、還元−活性化プロドラッグを還元する方法であって、還元−活性化プロドラッグを前記定義の式Iの化合物と接触させることを含む方法に関する。典型的には、還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物は好適な水溶液中で接触させられる。好ましくは、溶液は前述のように弱アルカリ性である。
【0099】
本発明者は、この方法がトレタジカルおよびDHAを用いて行われる場合、反応をpH9で行うと、pH10よりも還元の速度が速くなり、ほとんどの好ましい4−ヒドロキシルアミン生成物(2−ヒドロキシルアミン生成物と比較して)を非常に高い収率で得ることを見出した。また、これらの方法において好ましくは、還元−活性化プロドラッグよりも1モル過剰の式Iの化合物が存在し、範囲および好ましいモル過剰は前述の通りである。トレタジカルの式Iの化合物との反応に適用される場合、方法は5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド生成物を反応混合物から、例えば任意の好適な分離法、例えば、HPLCを用いることによるさらなる精製段階も含有し得る。
【0100】
化合物、例えば、トレタジカル中のニトロ基がヒドロキシルアミン基のみに還元される(他の基、例えば、ニトロソまたはアミン基には還元されない)ことは注目すべきである。
【0101】
従って、本発明のさらなる側面によると、前記定義の式Iの化合物の、有機ニトロ化合物を対応するヒドロキシルアミンに選択的に還元するための使用が提供される。本発明のこの側面の特定の実施形態において、使用は、式Iの化合物および塩基の使用である。用いられる塩基の同一性および量、ならびに式Iの化合物がニトロ化合物の還元を行うpHは、本発明の第一の側面の使用に関して定義されたとおりであり得る。
【0102】
同様に、本発明はまた、有機ニトロ化合物の対応するヒドロキシルアミンへの選択的還元の方法も提供し、前記方法は、前記有機ニトロ化合物を前記定義の式Iの化合物と接触させることを含む。特定の実施形態において、方法は、有機ニトロ化合物を式Iの化合物および塩基と接触させることを含む。使用される塩基の同一性および量は、本発明の第一の側面の使用に関して定義したとおりであり得る。さらに、別の特定の実施形態において、方法は、有機ニトロ化合物を前記定義の式Iの化合物と、7から11の間のpH(例えば、7.1から(例えば、7.2、7.3、7.4または7.5)10.9まで(例えば、10.8、10.7、10.6、10.5、10.4、10.3、10.2、10.1または10.0)のpH)を有する溶液(例えば、水溶液)または懸濁液の存在下で接触させることを含む。
【0103】
有機ニトロ化合物は、例えば、前述のニトロ化合物のいずれかであってよい。しかしながら、特に、有機ニトロ化合物は芳香族またはヘテロ芳香族ニトロ化合物である。
【0104】
本明細書において用いられる場合、「芳香族ニトロ化合物」なる用語は、C6−14炭素環式芳香族基(例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニルまたはフェナントレニル基)を含む化合物への言及を含み、前記芳香族基は、ニトロ置換基を有する。ニトロ置換基を有することに加えて、芳香族基は、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ(後者の2つの基は、ハロ、OH、C1−4アルコキシ、Hetおよびアリールから選択される1以上の置換基により任意に置換される)、OH、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、シアノ、ニトロ、CO、C(O)NR、S(O)1−2、S(O)NR、N(R)R、Het、アジリジニルおよびアリールから選択される1以上の置換基により任意にさらに置換され、R〜Rは独立して、C1−6アルキル(ハロ、OH、C1−4アルコキシ、Hetおよびアリールから選択される1以上の置換基により任意に置換される)、Hetまたはアリールを表すか、あるいはR〜Rは二者択一的に(かつ独立して)Hを表し得、Hetおよびアリールは前記定義のとおりである。
【0105】
特定の実施形態において、炭素環式芳香族基は少なくとも1つのさらなる電子吸引性置換基、例えば、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、シアノ、ニトロ、CO、C(0)NR、S(O)1−2およびS(O)NRから選択される1以上の(例えば、1または2)置換基を有し、R〜Rは前記定義のとおりである。当業者には理解されるように、炭素環式芳香族基の置換パターンは前記基に結合するニトロ部分の還元電位を支配する。一般に、前記基への電子吸引性置換基の添加は、還元電位(EまたはE、例えば、ポーラログラフィーにより測定)を増加させる(即ち、マイナスを少なくする)ことが予想される。さらにより具体的な実施形態において、炭素環式芳香族基は少なくとも1つのさらなるニトロ置換基を有する。
【0106】
本明細書において用いられる場合、「ヘテロ芳香族ニトロ化合物」なる用語は、酸素、窒素および/または硫黄から選択される1以上のヘテロ原子を含有する5から14員ヘテロ芳香族基を含む化合物への言及を含み、前記ヘテロ芳香族基は、1、2または3個の環を含み得、前記ヘテロ芳香族基はニトロ置換基を有する。ヘテロ芳香族基は、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ(後者の2つの基は、ハロ、OH、C1−4アルコキシ、Hetおよびアリールから選択される1以上の置換基により任意に置換される)、OH、オキソ、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、シアノ、ニトロ、CO、C(O)NRR°、S(O)1−2、S(O)NR、N(R)R、Het、アジリジニルおよびアリールから選択される1以上の置換基を任意に有し、R〜Rは前記定義のとおりである。誤解を避けるために、「ヘテロ芳香族ニトロ化合物」なる用語は、2または3個の環を含む部分芳香族複素環基であって、少なくとも1つの環(全部の環でない)が芳香族であるものへの言及を含む。これらの環系において、ニトロ基は、芳香族環に結合しているのが好ましい。
【0107】
「ヘテロ芳香族ニトロ化合物」なる用語に関して言及される具体的なヘテロ芳香族環系としては、ベンズイミダゾリル、ベンゾ[c]イソキサゾリジニル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、2,1,3−ベンゾキサジアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾ[e]ピリミジン、2,1,3−ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,3−b]チアゾリル、インドリル、イソキノリニル、イソキサゾリル、ナフト[1,2−b]フラニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、フタラジニル、プリニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロロ[2,3−b]ピリジニル、ピロロ[5,1−b]ピリジニル、ピロロ[2,3−c]ピリジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、チエノ[5,1−c]ピリジニル、トリアゾリル、1,3,4−トリアゾロ[2,3−b]ピリミジニル、キサンテニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキセパニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾモルホリニル、ベンゾキサゾリジニル、クロマニル、クロメニル、2,3−ジヒドロベンズイミダゾリル、2,3−ジヒドロベンゾ[b]フラニル、1,3−ジヒドロベンゾ[c]フラニル、1,3−ジヒドロ−2,1−ベンズイソキサゾリル 2,3−ジヒドロピロロ−[2,3−b]ピリジニル、4,5,6,7−テトラヒドロベンズイミダゾリル、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ−ピラゾリル、5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[e]ピリミジン、チオクロマニルなどが挙げられる。
【0108】
本発明者は驚くべきことに、還元性化合物(例えば、還元性有機化合物、例えば、有機ニトロ化合物または還元−活性化プロドラッグ)の前記定義の式Iの化合物による還元は、式Iの化合物を還元性化合物および塩基のあらかじめ形成された混合物(例えば、溶液または懸濁液)に添加することにより有効に行うことができることを見出した。
【0109】
従って、本発明のさらなる側面に従って、還元性化合物を還元する方法が提供され、前記方法は、前記定義の式Iの化合物を、前記還元性化合物および塩基の混合物に添加することを含み、塩基は本明細書の第一の側面に関して前記定義のとおりである。
【0110】
還元性化合物は還元性有機化合物、例えば、前記定義の有機ニトロ化合物または還元−活性化プロドラッグ(例えば、トレタジカル)であり得る。本発明のこの側面において、式Iの化合物は、特に、DHAであり得る。
【0111】
還元性化合物および塩基の混合物は、例えば、水性または、特に有機溶媒系中溶液または懸濁液であってよい。これに関して言及される具体的な溶媒系としては、低級(C1−4)アルキルアルコール(例えば、イソプロパノール、エタノールまたはメタノール)、塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタン)、水およびその混合物(一相または二相混合物のいずれか)が挙げられる。言及される具体的な塩基としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)重炭酸塩または、特に、炭酸塩(例えば、炭酸カリウム、例えば、無水炭酸カリウム)が挙げられる。
【0112】
還元は、例えば、周囲温度以上で行うことができる。本発明の特定の実施形態において、反応は、高温(例えば、25℃以上)、例えば、30から100℃の間(例えば、40から70℃、例えば、約60℃)で行われる。還元は、酸化剤、例えば大気中の酸素の実質的な不在下でも行われる。したがって、本発明の特定の実施形態において、反応は、不活性雰囲気下(例えば、窒素またはアルゴン雰囲気)および/または脱酸素化(または脱気)溶媒および/または試薬を用いて行われる。
【0113】
本発明のさらに具体的な実施形態において、還元性化合物は、所望の還元を行うために必要な式Iの化合物のモル数の計算値と比較して化学量論的に過剰に維持される。この点に関して、理論により拘束されることを望まないが、式Iの化合物は、式Iaの二量体1モルあたり1モルの水素化等価物(即ち、2モルの式Iの化合物あたり1モルの水素化等価物)を提供すると考えられる。したがって、例えば、ニトロのヒドロキシルアミンへの還元(2の水素化等価物の提供を必要とする2電子還元)について、所望の還元を行うために必要とされる式Iの化合物のモル数は、ニトロ化合物1モルあたり4モルである。
【0114】
式Iの化合物を任意の速度で還元性化合物および塩基の混合物に添加することができる。しかしながら、本発明のある実施形態において、式Iの化合物は混合物にゆっくりと、例えば、最大で1分あたり2モル当量(還元性化合物に対して)(例えば、最大で1.75、1.5、1.25、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3または、特に、0.2または0.15モル当量/分)で添加される。
【0115】
前述のように、還元性化合物はトレタジカルであり得る。従って、本発明のこの側面の特定の実施形態は、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド(または5−(アジリジン−1−イル)−2−ヒドロキシルアミノ−4−ニトロベンズアミド)の調製法に関し、前記方法は
(a)トレタジカルおよび塩基の混合物を提供し;および
(b)最大で4モル当量の式Iの化合物(あるいは、最大で2モル当量の二量体形態の式Iの化合物(即ち、式Iaの化合物))を添加すること
を含む。
【0116】
式Iの化合物は、特定の実施形態において、DHAであり得る。
【0117】
この反応は、還元性化合物を還元する方法に関して前述の条件下で(ならびに塩基および/または溶媒を使用して)行うことができる。さらに、本発明のこの側面の実施形態は、方法が、生成物5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを、もし生成されるならば、副産物5−(アジリジン−1−イル)−2−ヒドロキシルアミノ−4−ニトロベンズアミド)から分離するさらなる段階を含むものを含む。分離は、当業者に公知の技術(例えば、分別晶出、再結晶、クロマトグラフィー、溶媒抽出、真空昇華など)により行うことができる。
【0118】
本発明のさらなる側面は、個体におけるある部位での細胞の望ましくない成長または増殖に対抗する方法を提供し、前記方法は、抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ(例えば、トレタジカル)および前記定義の式Iの化合物を個体における前記部位で提供することを含む。
【0119】
本明細書において用いられる場合、「抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ」なる用語は、特に、すでに前記で同定された還元−活性化プロドラッグ、例えば、マイトマイシンC、E09、RSU−1069、RB−6145、特に、トレタジカルへの言及を含む。
【0120】
還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物は、個体に投与される前に組み合わせることができるか、または連続して投与することができる。
【0121】
例えば、局所投与に関して、還元−活性化プロドラッグを含有する組成物および式Iの化合物を含有する組成物(どちらの場合においても、組成物は局所投与に適しているものである)を個体への投与前に組み合わせるのが好都合である。この実施形態は、下記の実施例2および3において局所投与用組成物がクリームである場合においてさらに詳細に(トレタジカルおよびDNAの組み合わせに関して)記載される。
【0122】
同様に、体腔中への投与に関して、好都合なことに、還元−活性化プロドラッグを含有する組成物および式Iの化合物を含有する組成物(どちらの場合においても、組成物は体腔中への投与に適しているものである)は投与前に組み合わせられる。しかしながら、体腔内で組み合わせが起こることも可能である(例えば、還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物の別個の無菌非発熱性溶液または懸濁液を体腔中に投与することができ、還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物の初期接触は体腔中で起こる。一つの実施形態において、還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物は、例えば、中性条件下で同時投与することができ、薬剤(例えば、緩衝液)のさらなる投与を行って、体腔中の環境を弱アルカリ性にする。しかしながら、典型的には、還元−活性化プロドラッグ(またはその式Iの化合物との組み合わせ)がアルカリ性媒体中に存在する。
【0123】
還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物が適当な条件下、個体への投与前に組み合わせられる場合、対応する活性物質(例えば、トレタジカルの場合、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド)が生成し、これが次に個体に投与されると理解される。従って、本発明のさらなる側面は、個体におけるある部位での細胞の望ましくない成長または増殖に対抗する方法を提供し、前記方法は、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを含有する組成物を個体の前記部位で投与または提供することを含む。
【0124】
本発明のさらなる側面は
(i)前記定義の抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグおよび前記定義の式Iの化合物との組み合わせの、個体における細胞の望ましくない成長または増殖に対抗するための医薬の製造における使用;および
(ii)5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドの、個体における細胞の望ましくない成長または増殖に対抗するための医薬の製造における使用
を提供する。
【0125】
本発明の対応する側面は、細胞の望ましくない成長または増殖を治療する方法に関し、前記方法は、このような治療を必要とする患者に
(i)抗増殖剤の還元的活性化プロドラッグ、またはその医薬的に許容される塩および/または溶媒和物、および式Iの化合物を含む併用製品;または
(ii)有効量の5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド
を投与することを含む。
【0126】
併用製品は、キットまたは複合製剤のいずれかであってよい。従って、本発明のこの側面は、患者に
(a)(I)抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ、またはその医薬的に許容される塩および/または溶媒和物、
(II)前記定義の式Iの化合物および、任意に
(III)医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体
を含む組成物;または
(b)(I)抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ、またはその医薬的に許容される塩および/または溶媒和物を含有する第一部分、および
(II)前記定義の式Iの化合物を含有する第二の部分
を含むキットを投与することを含む。
【0127】
本発明のさらなる側面は、併用製品(即ち、組成物またはキット)それ自体に関する。本発明のこれらの側面において、抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグは前記定義のとおりである。
【0128】
典型的には、キットの2つの部分は、互いに適合性である組成物(例えば、これらはどちらも、例えば、クリーム、水溶液、およびゲルなどの同じ物理的形態を有する)であり、混合されると、対応する活性剤(例えば、トレタジカルの場合、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド)を還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物(例えば、DHA)の好適な条件下での反応から生成させることができる。
【0129】
このようなキットは、望ましくない細胞成長または増殖への対抗に利用できる治療システムとみなすこともできる。
【0130】
好都合なことに、キットまたは治療システムは抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物の使用に関する説明書を含有し、特に、これらは治療において(例えば、望ましくない細胞成長および増殖への対抗において)還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物を含む結果として得られる組成物の使用前にこれらが組み合わせられる時期を含む、抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物を含有する部分を組み合わせることに関する説明書を含有する。
【0131】
典型的には、抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物を含む組成物、ならびにキットの部分のそれぞれの組成物は、抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物の組み合わせ、およびキットの部分における抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグおよび式Iの化合物は別々に、医薬的に許容される担体と組み合わせられる医薬組成物である。
【0132】
細胞の望ましくない成長または増殖の治療において、併用製品(複合組成物またはキット)または5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドは単独の治療システムまたは薬剤として投与することができるか、あるいは1以上のさらなる活性剤(例えば、問題の特定の障害の治療に関して公知の活性剤)と合わせて(即ち、同時にまたは連続してのいずれかで)投与することができる。
【0133】
対抗される細胞の望ましくない成長または増殖は、任意のこのような望ましくない成長および増殖、特にそのDNAの架橋の影響を受けやすいものであり得る。
【0134】
細胞の望ましくない成長または増殖は、例えば、通常のいぼまたは乾癬または細胞の望ましくない成長または増殖を含む他の皮膚疾患の場合のように良性であり得るか、あるいは、例えば、腫瘍またはその転移におけるように悪性であり得る。
【0135】
従って、本発明の方法および医薬(即ち、抗増殖剤、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドの還元−活性化プロドラッグを含むもの、またはいずれかの使用)をいぼおよび他の皮膚疾患、例えば、乾癬の治療において使用できる。他の良性成長、前癌状態および癌、例えば、頸部、膀胱、脳、胸部および子宮の癌。
【0136】
方法および医薬が疾患に対抗するために局所的に使用されるのならば特に好ましい。
【0137】
方法および医薬が、膀胱または腹膜または胸部などの体腔中に投与することにより、疾患に対抗するために使用されるのならばまた特に好ましい。トレタジカルに関して、その活性な4−ヒドロキシルアミン誘導体は、適用後または送達後に非常に短い半減期を有し、活性化の部位から非常に離れて移動することができず、従って、デポー効果はなく、活性剤は循環中に入らず、全身効果を引き起こさない。
【0138】
言及される本発明の特定の実施形態は、従って
(a)抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ(例えば、RSU−1069、マイトマイシンCまたは、特に、トレタジカルまたはE09)、式Iの化合物(例えば、DHA)および局所的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体(例えば、ローション、クリームまたは軟膏基剤)を含む局所組成物(例えば、クリーム、ローションまたは軟膏);
(b)抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ(例えば、RSU−1069、マイトマイシンCまたは、特に、トレタジカルまたはE09)、式Iの化合物(例えば、DHA)および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含むペレットまたは類似の固体送達ビヒクル;および
(c)抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ(例えば、RSU−1069、マイトマイシンCまたは、特に、トレタジカルまたはE09)、式Iの化合物(例えば、DHA)および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体(例えば、無菌溶媒系、例えば、無菌水性溶媒系)を含む溶液または懸濁液
を含むことが言及される。
【0139】
前記(a)および(b)に関して、特定の組成物は、塩基(例えば、本発明の第一の側面に関する前記定義の塩基)および/またはpH緩衝系であって、組成物の適用に際して、投与部位で7から11の間の局所的pH(例えば、トレタジカルを含有する処方に関して、pH7.5、8.0、8.5または9.0から10.5または、特に、10の間のpH;またはE09を含有する処方については、pH7.1から8.0の間のpH、例えば約pH7.5)を提供するものも含むことができる。
【0140】
例えば、皮膚癌、皮膚上の非黒色腫、前立腺癌、前癌状態(例えば、悪性黒子または、特に、光線性角化症)、いぼまたは乾癬の状態の治療において、前記(a)の局所組成物(またはクリーム、ローションまたは軟膏)を用いることができる。このような組成物は、腸癌などの疾患の治療において直腸クリームとして用いることもできる。
【0141】
前記(b)の固体送達ビヒクルは、E09を含む場合、前立腺癌の治療における使用に特に適し得る。これは、前立腺が高いpHレベルに対して特に感受性であることが知られているためで、E09は化合物、例えば、トレタジカルよりも比較的低いpH(例えば、約pH7.5)でより迅速に還元されることが本発明者により見出された。
【0142】
前記(c)の溶液または懸濁液は、注射、経カテーテル法または他の注入法により細胞の望ましくない成長または増殖が存在する体腔または空間中に配置することができる。例えば、溶液は疾患、例えば、膀胱癌を治療するために膀胱中に導入されるか、子宮頸癌を治療するために頸部と接触させられるか、例えば、卵巣癌を治療するために腹膜中に注入されるか、または脳腫瘍を治療するために脳中に注入することができる。
【0143】
特定の実施形態において、式Iの化合物(例えば、DHA)および抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ(例えば、トレタジカルまたはE09)を含む溶液または懸濁液を、膀胱癌を治療するために、膀胱内導尿カテーテル注入により投与することができる。
【0144】
従って、本発明のさらなる側面は膀胱癌を治療する方法に関し、前記方法は、膀胱内導尿カテーテル注入により、式Iの化合物(例えば、DHA)および抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ(例えば、トレタジカルまたはE09)を含む有効量の溶液または懸濁液を投与することを含む。
【0145】
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを含む前記組成物は
(i)5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび局所的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体(例えば、ローション、クリームまたは軟膏基剤)を含む局所組成物(例えば、クリーム、ローションまたは軟膏);および
(ii)5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体(例えば、無菌溶媒系、例えば、無菌水性溶媒系)を含む溶液または懸濁液
などの特定の医薬形態をとることもできる。
【0146】
前記組成物(i)および(ii)はそれぞれ前記組成物(a)および(c)に関して記載されたのと同じ最終用途を有し得る。
【0147】
あるいは、前記(ii)の溶液または懸濁液(ならびに前記(c)の溶液または懸濁液)を、スプレーにより、口、鼻腔、咽喉、咽頭、喉頭、気管または肺に、これらの位置のいずれかでの望ましくない細胞の増殖(例えば、癌)を治療するために、投与することができる。従って、本発明のさらなる側面は
(A)抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ、前記定義の式Iの化合物、および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体;または
(B)5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体
を含むスプレー可能な溶液または懸濁液に関する。
【0148】
スプレーによる5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド(または前記化合物を提供する混合物)の口、鼻腔、咽喉、咽頭、喉頭、気管または肺への直接投与は、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドの血清タンパク質による不活性化を回避する。さらに、同じ不活性化メカニズムは、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドが全身効果を有さないことを保証する。
【0149】
したがって、本発明のさらに別の側面は、口、鼻腔、咽喉、咽頭、喉頭、気管または肺の癌を治療する方法に関し、前記方法は、スプレーにより
(A)抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ、前記定義の式Iの化合物、および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体;または
(B)5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体
を含む溶液または懸濁液を投与することを含む。
【0150】
溶液または懸濁液をスプレーの形態において送達するために適している装置は当業者に周知である。好適な装置(溶液または懸濁液を容器からくみ上げる機械的噴霧器;およびノズルからスプレーを生成させるために圧縮プロペラントガスを利用するエアロゾル装置を含む)としては、例えば、WO 2006/005845に記載されているものが挙げられる。
【0151】
従って、本発明のさらなる側面は
(a)抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ、前記定義の式Iの化合物、および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体、あるいは
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含む溶液または懸濁液を充填された容器を有する機械的噴霧器;および
(b)1以上のプロペラントガスおよび
抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ、前記定義の式Iの化合物、および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体、または
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド
および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含む溶液または懸濁液を含むエアロゾル装置に関する。
【0152】
前記(b)において記載された装置は、一つの実施形態において、計量式吸入装置であってよい。
【0153】
液体スプレーの代替物として、調合薬を肺などの部位に送達するために、乾燥粉末をエアロゾル化することができる。従って、本発明のさらなる側面により、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを含む乾燥粉末エアロゾル組成物が提供される。
【0154】
「乾燥粉末エアロゾル組成物」なる用語により、本発明者らは、口、鼻腔、咽喉、咽頭、喉頭、気管または肺へ吸入装置により送達され得る乾燥粉末処方への言及を含む。従って、この用語は、100μm(例えば、50または10μm)以下の平均粒子サイズを有する乾燥粉末への言及を含む。この点に関して、粒子サイズは当業者に公知の方法により(例えば、レーザー光散乱技術、例えば、粒子サイズ分析装置、例えば、Mastersizer(登録商標)を用いるものにより)決定することができる。
【0155】
乾燥粉末エアロゾルの送達用装置(例えば、乾燥粉末吸入器)は当業者に周知であり、例えば、WO2004/110536において記載されている。従って、本発明のさらなる側面によると
(i)任意にプロペラントガス源を含有する乾燥粉末吸入装置;および
(ii)5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを含む1以上の別個の用量の乾燥粉末エアロゾル組成物
を含む治療システムが提供される。
【0156】
治療システムは、組成物を物理的に別個の実態としての装置および用量を(即ち、キットとして有効に)含み得る。あるいは、吸入装置は1以上の用量の組成物があらかじめ装填されていてもよい。
【0157】
細胞の望ましくない成長または増殖の治療において、前記組成物(局所組成物、固体送達ビヒクル、溶液または懸濁液、乾燥粉末エアロゾルなどを含む)は、特定の疾患(細胞の望ましくない成長または増殖、例えば、膀胱、頸部、腹膜または脳の癌、または口、鼻腔、咽喉、咽頭、喉頭、気管または肺の癌)の治療のために単独で使用することができる。即ち、唯一の治療システムまたは薬剤として投与することができる。しかしながら、別法として、組成物を1以上のさらに別の活性剤(例えば、問題の特定の障害の治療について知られている活性剤)とともに(即ち、同時または連続してのいずれかで)投与することができる。
【0158】
この点において、膀胱癌の治療における使用に関して公知の活性剤としては、シスプラチン、ドキソルビシンおよびマイトマイシンCが挙げられる。
【0159】
還元−活性化プロドラッグ(例えば、トレタジカル)のヒトへの使用に関して適した用量は、10から30mg/m、典型的には15から25mg/m、例えば24mg/mである。
【0160】
本発明の方法および医薬は、動物(例えば、ヒト以外の哺乳動物、特にウマ、ウシ、ヒツジなど、ならびにネコおよびイヌ)およびヒトを治療するために使用できる。ヒトを治療するために使用するならば好ましい。
【0161】
本発明のさらなる側面は、細胞においてDNAを架橋する方法であって、DNA架橋剤(例えば、トレタジカル)の還元−活性化プロドラッグおよび前記定義の式Iの化合物(例えば、DHA)の組み合わせを細胞に投与することを含む方法、または細胞においてDNAを架橋する方法であって、5−(アジリジニル−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを含む組成物を細胞に投与することを含む方法を提供する。典型的には、細胞は培養物中の細胞であり、方法はインビトロ法である。
【0162】
本明細書において用いられる場合、「DNA架橋剤の還元−活性化プロドラッグ」なる用語は特に
(1)E09(3−[5−アジリジニル−4,7−ジオキソ−3−ヒドロキシメチル−1−メチル−1H−インドール−2−イル]−プロプ−β−エン−α−オール);
(2)RSU−1069(1−(1−アジリジニル)−3−(2−ニトロ−1−イミダゾリル)−2−プロパノール);
(3)RB−6145(1−[3−(2−ブロモエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−2−ニトロイミダゾール);
(4)マイトマイシンC;
(5)式
【化21】


(式中
各Rは独立して、クロロ、ブロモ、ヨードまたは−OS(O)を表し、
はC1−8アルキル(任意に1以上のフルオロ原子により置換される)またはフェニル(ハロ、ニトロ、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選択される1以上の置換基により任意に置換される)、
B1〜RB4は独立して、H、CN、C(O)N(R)R、C(S)N(R)R、C(O)OH、S(O)NHRを表すか
またはRB1はさらにNOを表し得、
およびRは独立して、HまたはC1−4アルキル(後者の基は、OH、N(H)−C1−2アルキル、N(C1−2アルキル)、4−モルホリニルおよびC(O)OHから選択される1以上の置換基により任意に置換される)を表すか、
またはRおよびRはこれらが結合しているN原子と一緒になって4−モルホリニルを表し、および
は、HまたはS(O)CHを表し、
ただし、RB1がH以外である場合、RB2はHである)の化合物、
例えば、Anlezark et al,1992および1995において開示されている前記式の化合物のいずれか1つ、例えば、SN 23163、SN 23849、SN 23777、SN 23428、SN 23759、SN 24927、SN 24928、SN 24926、SN 25402、SN 25079、SN 24939、SN 24935、SN 25923、SN 25313、SN 23856、SN 25066、SN 23816、SN 25015、SN 24971、SN 25260、SN 25261、SN 25263、SN 25084、SN 25188、SN 25507または、特に、SN 23862(5−{N,N−ビス[2−クロロエチル]アミン}−2,4−ジニトロベンズアミド);
(6)式
【化22】


(式中
は前記定義のとおり(例えば、Cl)であり、
はNHを表し、XおよびXはどちらもHを表すか、
−X−X−は−NH−CHCH−を表し、XはHを表すか、または
−X−X−は−NH−を表し、XはHを表すかのいずれかである)の化合物;
(7)式
【化23】


(式中Yは
1−アジリジニル(任意に2位でメチルにより置換される)、
メトキシまたは
N(H)CHCHBrを表す)の化合物;
(8)式
【化24】


(式中
Rは−0−R’または−NH−R’を表し、
R’は
【化25】


(式中、波線はフラグメントの結合位置を示し、
は前記定義のとおり(例えば、Cl)である)を表す)の自壊型プロドラッグ、
(9)アクリジン−CB 1954
【化26】


(10)トレタジカル(5−(アジリジン−1−イル)−2,4−ジニトロベンズアミド)
などの化合物またはその医薬的に許容される塩および/または溶媒和物などへの言及を含む。
【0163】
実際、「DNA架橋剤の還元−活性化プロドラッグ」なる用語は、化合物 例えば、E09、RSU−1069、RB−6145、マイトマイシンC、および特に、トレタジカルへの具体的な言及を含む。
【0164】
V79細胞の生存は、次の方法を用いて決定された。
140mM NaClを含有する10mMリン酸塩緩衝液(pH7.5)中、体積(1mL、2x10細胞/mL)のV79細胞を37℃でインキュベートし、次に試薬(前記のとおり、要求された濃度で)を添加した(対照実験を除く)。2時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離により収穫し、連続して希釈し(4x10倍)、細胞を成長培地中にプレートし、1週間加湿5%CO雰囲気中で成長後にそのコロニー形成能力について分析した。
【0165】
図7の表が示すように、E09の細胞毒性は、E09の活性形態の形成を促進するDHAの添加により大きく向上される。
【0166】
下記の実施例に関して、トレタジカルは研究目的で、Morvus Technology LimitedおよびSigma Chemical Companyから商業的に入手可能である。
【実施例1】
【0167】
トレタジカルの化学活性化
トレタジカルから活性4−ヒドロキシルアミノ誘導体を生成するための報告された化学的方法は、有機溶媒中厳しい還元条件を使用し、収率は30%より低い(Knox et al,1993;Knox et al,1988)。本発明者は、ジヒドロキシアセトン(DHA)がトレタジカルを水性溶液中、弱アルカリ性条件下で、必要とされるヒドロキシルアミンに還元できることを見出した。pH9で、収率は>85%であり、検出されるトレタジカル還元の唯一の他の生成物は、5−(アジリジン−1−イル)−2−ヒドロキシルアミノ−4−ニトロベンズアミドである。
【0168】
ジヒドロキシアセトン(DHA;1,3−ジヒドロキシ−2−プロパノン;CAS No:62147−49−3,Beil.8,266,Merck Index 13,3166;図3)はサンレスローションまたはセルフタンニングローション中の活性成分であり、FDAによる認可を取得している。DHAは、染色により皮膚を黒くする無色の糖である。これは表皮において見られる死んだ表面細胞と相互作用して、色の変化をもたらす。死んだ皮膚細胞が自然に剥がれ落ちるにつれ、典型的には適用の5〜7日以内で徐々に退色する。サンレス・タンニング製品は、5%までのジヒドロキシアセトン濃度を含有する。濃度が高いほど、その後の日焼けの色が黒くなる。タンニング剤として、4から6の間のpH条件で安定である。アルカリ性または酸性が強すぎると、褐色化合物が形成され、タンニング剤としての溶液有効性が減少する。エリトルロース(1,3,4−トリヒドロキシ−2−ブタノン)は作用がDHAと類似しているが、真っ黒または素早く日焼けしない。DHAはグリセリンの発酵により生成され、単純な三炭糖であって、実際は非毒性であり、白色粉末の形態である。通常の形態は二量体(C12)であるが、これは溶液中迅速にモノマーに戻る。FDAはDHAを外用に関してのみ認可し、使用者が、眼、鼻および粘膜との接触を回避するための保護手段をとることを推薦する。
【0169】
報告されている唯一の有害影響はアレルギー性接触皮膚炎である。これはほとんど報告されず、タンニングクリームにおける過敏症のほとんどの原因は、製剤中の保存料などの他の成分によるものである。連邦規制基準、376ページ
タイトル21――食品および医薬
第I章――食品および医薬投与、保健社会福祉省
第73部――承認から除外される着色添加剤のリスト−目次
Subpart C――化粧品
Sec.73.2150 ジヒドロキシアセトン参照。
【0170】
DHAは還元剤として報告されていない。還元糖は公知であるが、これらはアルドースであり、一端にアルデヒドを有する。アルデヒドは還元剤として挙動し、穏やかな酸化剤、例えば、Cu2+、またはFe3+の存在下で、アルデヒドのカルボン酸への酸化が起こる。ケトールとして、DHAとの等価な反応は不可能である。しかしながら、ジヒドロキシアセトンは鉄(III)キレートの存在下でヒドロキシルラジカルの形成を促進することが示されている(Malisza & Hasinoff,1995)。この種類の反応は、その還元能力およびそのアルカリ不安定性に関連し得、その結果、褐色化合物が形成される。
【0171】
アルカリ性条件下、過剰のDHAを使用して、トレタジカルの経時的な還元の線形速度が存在する(図4)。
【0172】
100μLの水中100mM DHAをトレタジカル(100μM)の0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9またはpH10)中混合物に添加することにより分析を開始し、1mlの最終体積を得た。混合物を37℃でインキュベートし、アリコート(10μL)を6分ごとに採取し、HPLC[Partisil 10 SCX(4.2 x 150 mm)(Whatman,Maidstone,Kent,U.K.)(0.13Mリン酸ナトリウム(pH5)1.5mL/分で定組成溶離)により直ちに分析した。トレタジカルの濃度を各サンプル中、外部標準と対応するピーク面積を参照することにより決定し、325nmでの吸光度により定量した。初期比率を曲線適合により計算した(FigP,Biosoft,Cambridge,U.K.)。還元生成物を真正標準に対する保持時間により同定した。
【0173】
トレタジカル還元の2つの生成物、2−および4−ヒドロキシルアミノ誘導体だけが観察された。トレタジカル還元の速度およびヒドロキシルアミン生成物の割合はpHに依存した。pH10での還元(0.69ナノモル/分)は、pH9での還元(0.92ナノモル/分)よりも低かった。30分後、4−ヒドロキシルアミンの2−ヒドロキシルアミンに対する割合は、pH10で2.7:1、pH9で9.7:1であった。従って、pH9で、還元はより速く、ほとんどの好ましい4−ヒドロキシルアミン生成物を非常に高い収率で提供する(図4)。
【0174】
反応からのDHAまたはDHA関連生成物は前記HPLC法で検出されなかった。
【実施例2】
【0175】
局所適用用に処方されたクリームにおけるトレタジカルの活性化
AおよびBと表示される2種のクリームを調製した。使用するために、これらを等量で混合する。クリームAは、E45基剤(白色軟パラフィンBP 14.5%w/w、軽質流動パラフィンPh Eur 12.6%w/w、低刺激性無水ラノリン(Medilan)1.0%w/w,Crookes Healthcare Ltd,Nottingham,UK)(1gあたり10mgトレタジカル、10mg NaHCOおよび90mg NaCOを含有)からなる。クリームBは、E45と1gあたり100mg DHA二量体を含有する。2成分AおよびBを混合すると、淡黄色クリームが生成した。これは次に数時間にわたって褐色に変色し、約24時間色が濃くなり続けた。200μgのクリームを1mLの水中に激しく撹拌しながら懸濁すると、pH試験紙により示されるように、pH約10の溶液が得られた。前記量の10%の緩衝塩を含有するクリームでの予備実験により、同じ初期pHの溶液を得た。しかしながら、4時間後、前記のように調製された溶液は中性であり、クリームはそれ以上濃くならなかった。このことは、初期緩衝液濃度を変えることにより、反応の期間および範囲の両方を制御できることを示唆する。
【0176】
混合後、様々な時間で、200μgのクリームを1mLのDMSO中に抽出した。次に抽出物を50mM重炭酸アンモニウム緩衝液(pH10)で1/100に希釈し、逆相HPLCにより分析した。開始時、抽出物の325nmでの分析は、1つの主なピークのみを示し、これは真正標準に対する同じ保持時間およびUV吸収スペクトルのスペクトルマッチングにより示されるように、トレタジカルに相当した。4時間後、抽出物の分析は、260nmおよび325nm波形の両方でさらに多くのピークを示した(図5)。
【0177】
クリームA(E45基剤(白色軟パラフィンBP 14.5%w/w、軽質流動パラフィンPh Eur 12.6%w/w、低刺激性無水ラノリン(Medilan)1.0%w/w,Crookes Healthcare Ltd,Nottingham,UKからなる)(1gあたり、10mgトレタジカル、10mg NaHCOおよび90mg NaCOを含有)およびクリームB(E45と1gあたり100mg DHA二量体を含有)を混合し、様々な時点で、200μgを1mLのDMSOで激しく撹拌しながら抽出した。抽出物を遠心分離により清澄化し、50mM重炭酸アンモニウム緩衝液(pH10)で1/100に希釈し、HPLCにより分析した。サンプル(10μL)をWaters Symmetry Shield RP18カラム(150 x 3.9 mm)上に注入し、アセトニトリルの10mMギ酸アンモニウム(pH4.5)中線形勾配(30分にわたり1〜40%)で溶出した。溶離液を230から400nmの間のUV吸光度について、TSP UV3000走査検出器を用いて継続的にモニターした。A)クリームの混合直後に調製された抽出物。B)混合後4時間でクリームから得られた抽出物。C)5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドの合成標準。青線(波形の各対の下側の線)は、260nmで得られた波形であり、赤線(波形の各対における上側の線)は325nmで得られた線である。〜13分でのピークはCB 1954であり、〜19分での大きな260nmピークはE45に由来する。抽出法の効率を測定することはできない。
【0178】
トレタジカルは依然として検出され、保持時間〜5.0分のピークは、真正標準に対する同じ保持時間およびUV吸収スペクトルのスペクトルマッチングにより示されるように、トレタジカルの4−ヒドロキシルアミンとして同定された(図6)。他のピークは公知トレタジカル還元生成物に対応せず、DHAの酸化または還元されたトレタジカル生成物のクリームまたはDHAのいずれかとの反応から生じたものであり得る。
【0179】
トレタジカルの活性形態、(5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド)は、E45ベースのクリームにおいて形成される。
【実施例3】
【0180】
トレタジカルクリームの局所適用
前記処方されたクリームを混合し、約0.1gを、健常なヒトボランティアの指にあるいぼ(成長、ドーム型 高さ1.5mm)に適用し、絆創膏で覆った。適用されたクリームから初期温覚が報告された。約4時間後、絆創膏を除去し、いぼは剥がれ落ち、深さ〜1mmのくぼみが残されたことが判明した。直接取り巻く組織は黄色に着色した。これは数日にわたって徐々に白色に変わり、6週間後にいぼの再成長は報告されなかった。悪影響は見られないか、または報告されなかった。
【0181】
クリームA(E45基剤(白色軟パラフィン bp 14.5%w/w、軽質流動パラフィンPh Eur 12.6%w/w、低刺激性無水ラノリン(Medilan)1.0%w/w,Crookes Healthcare Ltd,Nottingham,UKからなる)(1gあたり、10mgトレタジカル、10mg NaHCOおよび90mg NaCOを含有)およびクリームB(E45と1gあたり100mg DHA二量体を含有)を混合し、健常ヒトボランティアの指にあるいぼ(成長、ドーム型 高さ1.5mm)に適用し(100μg)、絆創膏で覆った。約4時間後、絆創膏を除去し、いぼは剥がれ落ち、深さ〜1mmのくぼみが残ることが判明した。直接取り囲む組織は黄色に着色した。これは数日で徐々に白色に変わり、6週間後にいぼの再成長は報告されなかった。悪影響は見られないか、または報告されなかった。1週間後に写真を撮影した。
【0182】
局所適用におけるトレタジカルの活性化は、いぼに対して顕著な効果を有し、正常な周りの組織に対する影響は最小である。
【実施例4】
【0183】
膀胱癌の治療
膀胱化学療法点滴注入、または膀胱内化学療法は、表在性膀胱癌を有する人に、癌細胞に対抗する薬物で膀胱を満たすことにより投与される。表在性膀胱癌は癌の初期形態であるが、多くは初期除去の後に再発する。しかしながら、薬物を膀胱壁と直接接触させる治療を用いることにより、再発の予防または再発までの時間の延長が十分可能であり得る。膀胱内化学療法は簡単な処置である。カテーテルを尿道から膀胱中へ挿入する。重炭酸塩緩衝液(pH9)中トレタジカルを2〜3分にわたって注入し、続いて水中DHAを同様の時間にわたって注入する。カテーテルを除去し、2時間後、薬物を排尿により除去する。
【実施例5】
【0184】
中性付近のpHでのプロドラッグのDHA還元
分析:HPLC
分析混合物は、試験化合物(100μM)およびDHA(10mM)を最終反応体積1mLのリン酸ナトリウム緩衝液(必要とされるpH)中に含有していた。反応はDHAの添加により開始され、混合物を37℃でインキュベートした。アリコート(10μL)を20分ごとに採取し、Partisphere 5 Cl8(4.2 x 150mm)カラム(Whatman,Maidstone,Kent,U.K.)上HPLC(水中アセトニトリルの勾配(10分にわたって1〜95%)で、2.0mL/分で溶出)により直ちに分析した。溶離液を、光ダイオードアレイUV−VIS検出器を用いて吸光度について連続してモニターした。薬剤の濃度を各サンプルにおいて外部標準と対応するピーク面積を参照することにより決定し、PDAスキャンにより決定される適切な波長での吸光度により定量した。初期比率を曲線適合により計算した(FigPソフトウェア)。
【0185】
【表1】



(10mM DHAの代わりに)1mM DHAを使用
【実施例6】
【0186】
様々なpH値でのニトロ化合物およびプロドラッグのDHA還元
サンプルを実施例5において記載されたようにして分析した。
【0187】
【表2】



(10mM DHAの代わりに)1mM DHAを使用
【実施例7】
【0188】
α−ヒドロキシカルボニル化合物によるNADPの還元
試験化合物の10μLアリコート(水中100mMの濃度)を200μMのNADP水溶液(約990μL)に添加し、pH10(1mM NaHCO緩衝液)に緩衝した。分析溶液中試験化合物の最終濃度は1mMであった。次に2分にわたって、分光光度計で350nMでの吸光度の増加を測定することにより、NADPの還元をモニターした。初期比率をA350/分における変化として記録した。
【0189】
【表3】



1.溶液中モノマーを形成すると考えられる。
2.工業銘柄(>90%)を使用。350nmでの吸光度におけるいくらかの増加の前に約60秒のラグが観察される。
3.モノマーについて計算された濃度。
4.立体異性体の混合物。反応混合物に対して1mM EDTAの添加後に比率に対する影響は観察されない。
5.わずか〜50%の純度。350nmでの吸光度におけるいくらかの増加前に約90秒のラグが観察される。
【0190】
理論により拘束されることを望まないが、前記分析において還元的活性を示す化合物は、式Iaにおいて図示される種類の環状二量体を形成できるα−ヒドロキシカルボニル化合物であると考えられる。
【0191】
対照的に、前記分析において速度が0.001より低いと測定された化合物(即ち、還元的活性が検出されないもの)としては次のものが挙げられる。
グリセロール;
グリオキサール;
D−グルコース;
無水ジグリコール酸;
(±)−テトラヒドロフルフリルアルコール;
1,4−ジオキサン−2,3−ジオール;および
2−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン。
【実施例8】
【0192】
α−ヒドロキシカルボニル化合物によるトレタジカルの還元
100μLの100mMの水中試験化合物(式Iの化合物)をトレタジカル(100μM)の0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9またはpH10)の混合物に添加することにより分析を開始し、1mLの最終体積を得た。混合物を37℃でインキュベートし、アリコート(10μL)を6分ごとに採取し、HPLC[Partisil 10 SCX(4.2 x 150 mm)(Whatman,Maidstone,Kent,U.K.)(0.13Mリン酸ナトリウム(pH5)で1.5mL/ 分で定組成溶離)により直ちに分析した。トレタジカルの濃度をそれぞれのサンプルにおいて、外部標準と対応するピーク面積を参照することにより決定し、325nmでの吸光度により定量化した。初期比率を曲線適合により計算した(FigP,Biosoft,Cambridge,U.K.)。還元生成物を真正標準に対する保持時間により同定した。
【0193】
【表4】

【0194】
対照的に、前記分析において比率が0.001以下と決定された(即ち、還元的活性が検出されなかった)化合物としては、次のものが挙げられる。
グリセロール;
グリオキサール;
D−グルコース;
無水ジグリコール酸;
(±)−テトラヒドロフルフリルアルコール;
2−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン;
4−ヒドロキシ−2−ブタノン;
ジクロロアセトン;
1,4−ジオキサン−2,3−ジオール;および
ジクロロアセチルクロリド。
【実施例9】
【0195】
トレタジカルの対応するヒドロキシルアミンへの大規模還元
5−(アジリジン−1−イル)−2,4−ジニトロベンズアミド(「CB 1954」、1.00g、3.97ミリモル)のメタノール(‘AnalaR’−grade、40mL)中溶液を過剰の粉末無水KCO(10.0g、72ミリモル;約18当量)で処理し、混合物を撹拌しながら60℃に加熱した。懸濁液をNブランケット流雰囲気下、60℃で撹拌した。1,3−ジヒドロキシアセトン(1.50g DHA二量体として、8.33ミリモル;2.1モル当量)のメタノール(‘AnalaR’−grade、40mL)中溶液であって、あらかじめNガスをフラッシュすることにより脱気されたものを次に15分間で反応混合物に急速に撹拌しながら、温度を60℃に維持しつつ添加した。淡黄橙色から褐色への変色を伴う急速な反応が観察される。薄層クロマトグラフィー(TLC;Merckシリカゲル60 GF254アルミニウムシート上、9:1v/v CHCl:MeOH)はCB 1954出発物質の定量的除去(Rf0.73)ならびにRf0.53およびRf0.47の2つの極性生成物の形成を示した。2つの生成物は、真正5−(アジリジン−1−イル)−2−ヒドロキシルアミノ−4−ニトロベンズアミドおよび5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドサンプル(公開された方法により調製)とそれぞれ同じTLC挙動を示した[Knox,R.J.,Friedlos,F.,Jarman,M.,Roberts,J.J.Biochemical Pharmacology 37,4661−4669(1988);Knox,R.J.,Friedlos,F.,Biggs,P.J.,Flitter,W.D.Gaskell,M.,Goddard,P.,Davies,L.,Jarman,M.Biochemical Pharmacology 46,797−803(1993)]。
【0196】
反応混合物を熱時に濾過し、不溶性物質を冷メタノール(10mL)で洗浄した。合わせた濾液を冷却し、ロータリーエバポレーターで蒸発させて(30℃、高真空)、粘稠性黄褐色油状物を得た(1.02g、>100%)。TLC試験により、2つの主生成物が存在することが確認された。取り扱いおよび検査中のアルカリ性条件下でのO2酸化から生じる2−ニトロソおよび4−ニトロソ酸化生成物に対応する小さなスポット(<1〜2%合計、Rf 0.62、0.66)も明らかであった。(注:ヒドロキシルアミンのニトロソ生成物への酸化および望ましくない着色副生成物を防止するために、全ての装置をNガスでフラッシュすることにより、空気への暴露は最小限にするべきである)。2−ヒドロキシルアミン(Rf 0.53)および4−ヒドロキシルアミン(Rf 0.47)反応生成物は、〜40:60の比で形成されると判定された。異性体のクロマトグラフィーによる分離は、利用可能な溶媒系を用いる近接した溶出特性により阻害される。しかしながら、粗混合サンプル(100mg)のフラッシュクロマトグラフィー分離(Merckシリカゲル、60〜200メッシュ、9:1 v/v CHCl−MeOH)により、フラクションから溶媒を除去した後に、5−(アジリジン−1−イル)−2−ヒドロキシルアミノ−4−ニトロベンズアミド(31mg)および5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド(49mg)を得た。両生成物は、異性体ヒドロキシルアミンについて報告された性質と一致したNMRスペクトルをもたらし、TLC挙動は、真正化合物と識別できなかった[Knox,R.J.,Friedlos,F.,Jarman,M.,Roberts,J.J.Biochemical Pharmacology 37,4661−4669(1988)]。
注:
(1)好ましい反応溶媒はメタノールである。1,3−ジヒドロキシアセトン(DHA)二量体は多くの一般的な溶媒、例えば、アセトンおよび高級アルコール中で限定された溶解度を有する。
(2)反応は60℃でほとんど瞬間的であるが、さらに低い温度ではゆっくりである。さらに高い温度の反応系の使用は、相対生成物収率に対して悪影響を及ぼし得る。
【0197】
生成物ヒドロキシルアミンは、アルカリの存在下での空気酸化に対してより高い感受性を示し、従って、KCO試薬を反応混合物からできるだけ早く除去することが推奨される。2−および4−ヒドロキシルアミン生成物を含有する混合物のクロマトグラフィー分離は、取り扱い中、溶解した物質のO(空気)へのいくらかの暴露を最小限にすることを必要とする。
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本明細書において記載される全ての文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0198】
本発明を以下の図面および実施例を参照してさらに詳細に説明する。
【図1】トレタジカル(5−(アジリジン−1−イル)−2,4−ジニトロベンズアミド)の構造を示す図である。
【図2】トレタジカルの生物活性化を示す図である。
【図3】ジヒドロキシアセトン(DHA;CAS No:62147−49−3,Beil.8,266,Merck Index 13,3166)の構造を示す図である。通常の形態は二量体であるが、これは溶液中モノマーに迅速に戻る。
【図4】トレタジカルのDHAによる還元を示す図である。
【図5】E45ベースのクリーム(下記の実施例2において記載)中DHAによるトレタジカル還元を示す図である。図5のA、BおよびCのそれぞれにおいて2つの波形の上側は325nmで測定され、一方、下側は260nmで測定される。
【図6】図5Bにおいて5.0分の保持時間で見られるピークの5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドの合成標準を用いて得られたものとのスペクトルマッチングを示す図である。実線は標準であり、破線はサンプルである。スペクトルは260nmでの吸収について正規化される。
【図7】2時間にわたる、pH7.5、37℃、140mM NaClおよび以下のものA:対照(即ち、追加の物質無し);B:10mM DHA;C:10μM E09;B+C:10mM DHAおよび10μM E09の組み合わせ;D:100μM E09;およびB+D:10mM DHAおよび100μM E09の組み合わせを含有する10mMリン酸塩緩衝液中でのチャイニーズハムスターV79細胞の生存率(%)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の還元性基を含有する有機化合物中における、このような還元性基を還元する薬剤としての式Iの化合物の使用であって、前記式Iの化合物が構造
【化1】


(式中
は、H、アリール、HetまたはC1−12アルキルを表し(後者の基は任意に、OH、ハロおよびC1−3アルコキシから選択される1以上の置換基で置換される)、
は、HまたはC1−6アルキルを表し(後者の基は任意に、1以上のOH基により置換される)、
アリールは、C6−10炭素環式芳香族基であって、ハロ、C1−6アルキルおよびC1−6アルコキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい基を表し、
Hetは、酸素、窒素および/または硫黄から選択される1以上のヘテロ原子を含有する4員から14員複素環基であって、1、2または3個の環を含むことができ、ハロ、C1−6アルキルおよびC1−6アルコキシから選択される1以上の置換基により置換されていてもよい複素環基を表す)
を有し、
前記化合物が式Ia
【化2】


(式中、RおよびRは前記定義のとおりである)
の環状二量体を形成できることを特徴とする、前記式Iの化合物の使用。
【請求項2】
前記1以上の還元性基を含有する有機化合物における、このような還元性基を還元するための前記式Iの化合物および塩基の使用である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
用いられる前記塩基の量が、前記式Iの化合物に対して4モル当量またはそれ以下である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記式Iの化合物が7から11の間のpHで前記還元性基の還元作用を持つ、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
還元される前記基が、ニトロ、オキソ、イミノ、アゾ、N−オキシドまたはピリジニウム基である、請求項2に記載の使用。
【請求項6】
還元−活性化プロドラッグの対応する活性物質への変換のための活性化剤としての、請求項1において定義される前記式Iの化合物の使用。
【請求項7】
(a)還元−活性化プロドラッグ;および
(b)請求項1において定義される前記式Iの化合物
を含む組成物。
【請求項8】
還元−活性化プロドラッグを含有する第一部分および請求項1において定義される前記式Iの化合物を含有する、第二部分を含むキット。
【請求項9】
還元−活性化プロドラッグおよび請求項1において定義される前記式Iの化合物を含む治療システム。
【請求項10】
請求項7の組成物および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項11】
医薬において使用するための請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
医薬において使用するための請求項1において定義される前記式Iの化合物であって、ただし、DHAまたはグリセルアルデヒドでない化合物。
【請求項13】
還元−活性化プロドラッグを還元する方法であって、前記還元−活性化プロドラッグを請求項1において定義される前記式Iの化合物と接触させることを含む方法。
【請求項14】
還元−活性化プロドラッグが
(a)メトロニダゾール(2−メチル−5−ニトロ−1H−イミダゾール−1−エタノール);
(b)クロラムフェニコール(2,2−ジクロロ−N−[(αR,βR)−β−ヒドロキシ−α−ヒドロキシメチル−4−ニトロフェネチル]アセトアミド);
(c)ニトロフラゾン(2−[(5−ニトロ−2−フラニル)メチレン]ヒドラジンカルボキサミド);
(d)E09(3−[5−アジリジニル−4,7−ジオキソ−3−ヒドロキシメチル−1−メチル−1H−インドール−2−イル]−プロプ−β−エン−α−オール);
(e)SR−4233(3−アミノ−1,2,4−ベンゾトリアジン−1,4−ジオキシド);
(f)RSU−1069(1−(1−アジリジニル)−3−(2−ニトロ−1−イミダゾリル)−2−プロパノール);
(g)RB−6145(1−[3−(2−ブロモエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−2−ニトロイミダゾール);
(h)AQ4N(1,4−ビス([2−(ジメチルアミノ−N−オキシド)エチル]アミノ)5,8−ジヒドロキシ−アントラセン−9,10−ジオン);
(i)RB90003X
【化3】


(j)マイトマイシンC;
(k)ミトセン;
(l)シクロプロパミトセン;
(m)ダイネマイシンA;
(n)下記式の化合物
【化4】


(式中
各Rは独立して、クロロ、ブロモ、ヨードまたは−OS(O)を表し、
はC1−8アルキル(任意に1以上のフルオロ原子により置換される)またはフェニル(ハロ、ニトロ、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選択される1以上の置換基により任意に置換される)を表し、
B1〜RB4は独立して、H、CN、C(O)N(R)R、C(S)N(R)R、C(O)OH、S(O)NHRを表すか
またはRB1はさらにNOを表してもよく、
およびRは独立して、HまたはC1−4アルキル(後者の基は、OH、N(H)−C1−2アルキル、N(C1−2アルキル)、4−モルホリニルおよびC(O)OHから選択される1以上の置換基により任意に置換される)を表すか、
またはRおよびRはこれらが結合しているN原子と一緒になって4−モルホリニルを表し、および
は、HまたはS(O)CHを表す、
ただし、RB1がH以外である場合、RB2はHである)の化合物;特に、SN 23862(5−{N,N−ビス[2−クロロエチル]アミン}−2,4−ジニトロベンズアミド);
(o)下記式の化合物
【化5】


(式中
は前記定義のとおりであり、
はNHを表し、XおよびXはどちらもHを表すか、
−X−X−は−NH−CHCH−を表し、XはHを表すか、または
−X−X−は−NH−を表し、XはHを表すかのいずれかである)の化合物;
(p)式
【化6】


(式中Yは
1−アジリジニル(任意に2位でメチルにより置換される)、
メトキシ(従って、化合物ミソニダゾールを形成する)または
N(H)CHCHBr(従って、化合物RB6145を形成する)を表す)の化合物;
(q)式
【化7】


(式中
Rは−0−R’または−NH−R’を表し、
R’は
【化8】


(式中、波線はフラグメントの結合位置を示し、
は前記定義のとおりであり、
R”は以下のペプチドラクトン
【化9】


(式中、波線はフラグメントの結合位置を示す)
を表す)を表す)の自壊型プロドラッグ
(r)式
【化10】


のニトロインドリン化合物
(s)アクリジン−CB 1954
【化11】


(t)トレタジカル(5−(アジリジン−1−イル)−2,4−ジニトロベンズアミド);
(u)抗癌化学療法または疾患治療において使用されるベンゾキノン、ナフトキノンまたはアントラキノンであって、効能がキノン官能基の還元に依存する;
(v)還元的活性化により細胞毒性剤を放出するキノノイド残基を含有する複合プロドラッグ;
(w)プロドラッグ複合体の非細胞毒性プラットフォームとして使用される還元性ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノンまたはインドロキノンであって、キノンは薬剤放出のトリガー成分として作用する;および
(w)薬剤放出系における還元的活性化後に「自己アルキル化」によりプロドラッグトリガープラットフォームとして使用されるニトロ芳香族またはニトロ複素環式化合物
から選択される1以上の化合物、またはその医薬的に許容される塩および/または溶媒和物である、請求項6に記載の使用、請求項7または請求項11に記載の組成物、請求項8に記載のキット、請求項9に記載の治療システム、請求項10に記載の医薬組成物または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記還元−活性化プロドラッグがニトロ基の還元により前記対応する活性物質に変換される、請求項6に記載の使用、請求項7または請求項11に記載の組成物、請求項8に記載のキット、請求項9に記載の治療システム、請求項10に記載の医薬組成物または請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記還元−活性化プロドラッグがトレタジカルである、請求項14または請求項15に記載の使用、組成物、キット、治療システム、医薬組成物あるいは方法。
【請求項17】
前記式Iの化合物がジヒドロキシアセトン(DHA)、グリコールアルデヒド、グリセルアルデヒド、エリトロース、キシルロース、エリトルロース、3−ヒドロキシ−2−ブタノンまたはその二量体である、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の使用、請求項7または請求項11に記載の組成物、請求項8に記載のキット、請求項9に記載の治療システム、請求項10に記載の医薬組成物、請求項13に記載の方法あるいは請求項14〜請求項16のいずれか一項に記載の使用、組成物、キット、治療システム、医薬組成物または方法。
【請求項18】
前記式Iの化合物がDHA、またはその二量体である、請求項17に記載の使用、組成物、キット、治療システム、医薬組成物、または方法。
【請求項19】
前記還元−活性化プロドラッグがトレタジカルであり、前記式Iの化合物がDHA、またはその二量体である、請求項18に記載の使用、組成物、キット、治療システム、医薬組成物または方法。
【請求項20】
請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物、および前記医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、ただし、前記化合物はDHAまたはグリセルアルデヒドでない組成物。
【請求項21】
注射用無菌非発熱性水溶液である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
弱アルカリ性である、請求項7および17〜19のいずれか一項に記載の組成物、または請求項10および17〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
pHが9から10である、請求項22に記載の組成物または医薬組成物。
【請求項24】
前記還元−活性化プロドラッグに対してモル過剰の前記式Iの化合物が存在する、請求項7、17〜19、22および23のいずれか一項に記載の組成物、または請求項10、17〜19、22および23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記式Iの化合物の前記還元−活性化プロドラッグに対する比が>5:1である、請求項24に記載の組成物または医薬組成物。
【請求項26】
局所投与に適している、請求項7、17〜19および22〜25のいずれか一項に記載の組成物または請求項10、17〜19および22〜25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
クリームまたはローションまたは軟膏またはスプレーである、請求項26に記載の組成物または医薬組成物。
【請求項28】
体腔内中への投与に適している、請求項7、17〜19および22〜25のいずれか一項に記載の組成物または請求項10、17〜19および22〜25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
無菌水溶液または懸濁液である、請求項28に記載の組成物または医薬組成物。
【請求項30】
前記式Iの化合物を含有する部分を前記還元−活性化プロドラッグを含有する部分と組み合わせることにより、弱アルカリ性である組成物が形成される、請求項8、17〜19、24および25のいずれか一項に記載のキット、または請求項9、17〜19、24および25のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項31】
前記キットの第一および第二部分が局所投与に適している、請求項8、17〜19、24、25および30のいずれか一項に記載のキット。
【請求項32】
前記キットの前記第一および第二部分が、組み合わせられた場合に、前記式Iの化合物および前記還元−活性化プロドラッグを含有するクリームまたはローションまたは軟膏またはスプレーであるか、またはクリームまたはローションまたは軟膏またはスプレーを形成する、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記キットの前記第一および第二部分が体腔中への投与に適している、請求項8、17〜19、24、25および30のいずれか一項に記載のキット。
【請求項34】
前記キットの前記第一および第二部分が、組み合わせられた場合に、前記式Iの化合物および前記還元−活性化プロドラッグを含有する無菌水溶液または懸濁液であるか、または無菌水溶液または懸濁液を形成する、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
局所投与用のトレタジカルを含む組成物。
【請求項36】
前記組成物がクリームまたはローションまたは軟膏またはスプレーである、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項38】
医薬において用いられる5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド。
【請求項39】
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを生成する方法であって、トレタジカルを請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物と接触させることを含む方法。
【請求項40】
個体におけるある部位での細胞の望ましくない成長または増殖に対抗する方法であって、個体における前記部位で、抗増殖剤である前記還元−活性化プロドラッグおよび請求項1、17および18のいずれか一項において定義された前記式Iの化合物を提供することを含む方法。
【請求項41】
個体におけるある部位での細胞の望ましくない成長または増殖に対抗する方法であって、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを個体における前記部位で投与することを含む方法。
【請求項42】
抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグおよび請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物の組み合わせの、個体における細胞の望ましくない成長または増殖に対抗するための医薬の製造における使用。
【請求項43】
個体における細胞の望ましくない成長または増殖に対抗するための医薬の製造における5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドの使用。
【請求項44】
前記個体における細胞の望ましくない成長または増殖が良性である、請求項40または41に記載の方法あるいは請求項42または43に記載の使用。
【請求項45】
前記望ましくない細胞成長または増殖が、いぼまたは乾癬または前癌性過形成である、請求項44に記載の方法または使用。
【請求項46】
前記個体における細胞の望ましくない成長または増殖が悪性である、請求項40または41に記載の方法あるいは請求項42または43に記載の使用。
【請求項47】
前記細胞の望ましくない成長または増殖が腫瘍である、請求項46に記載の方法または使用。
【請求項48】
細胞におけるDNAの架橋法であって、細胞に、DNA架橋剤の還元−活性化プロドラッグおよび請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物の組み合わせを投与することを含む方法。
【請求項49】
細胞におけるDNAの架橋法であって、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを含む組成物を細胞に投与することを含む方法。
【請求項50】
本明細書において開示される望ましくない細胞成長または増殖に対抗する任意の新規方法。
【請求項51】
有機ニトロ化合物を対応するヒドロキシルアミンに選択的に還元する方法であって、前記有機ニトロ化合物を請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物と接触させることを含む方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法であって、前記有機ニトロ化合物を前記式Iの化合物および塩基と接触させることを含む方法。
【請求項53】
還元性化合物を還元する方法であって、請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物を、前記還元性化合物および塩基の混合物に添加することを含む方法。
【請求項54】
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミド(または5−(アジリジン−1−イル)−2−ヒドロキシルアミノ−4−ニトロベンズアミド)の調製法であって
(a)トレタジカルおよび塩基の混合物を提供し;および
(b)最大で4モル当量の、請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物、または最大で2モル当量の前記式Iの化合物の二量体形態を添加することを含む方法。
【請求項55】
前記式Iの化合物がDHAである、請求項55に記載の方法。
【請求項56】
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドの生成物を、副産物5−(アジリジン−1−イル)−2−ヒドロキシルアミノ−4−ニトロベンズアミド)が生成された場合に、前記副産物から分離する段階をさらに含む、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
前記塩基が炭酸塩または重炭酸塩である、請求項52〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ、請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式の化合物および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含む溶液または懸濁液。
【請求項59】
塩基および/またはpH緩衝系をさらに含む請求項58に記載の溶液または懸濁液であって、溶液または懸濁液の適用に際して、投与部位での7から11の間の局所pHを提供する溶液または懸濁液。
【請求項60】
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含む溶液または懸濁液。
【請求項61】
前記溶液または前記懸濁液がスプレー可能である、請求項58〜60のいずれか一項に記載の溶液または懸濁液。
【請求項62】
口、鼻腔、咽喉、咽頭、喉頭、気管または肺の癌を治療する方法であって
(A)抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ、請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物、および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体;あるいは
(B)5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含む溶液または懸濁液をスプレーにより投与することを含む方法。
【請求項63】
抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ、請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物、および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体、あるいは
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含む溶液または懸濁液で充填された容器を有する機械的噴霧器。
【請求項64】
1以上のプロペラントガスおよび
抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグ、請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物、および医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体、あるいは
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドおよび医薬的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含む溶液または希釈剤を含むエアロゾル装置。
【請求項65】
抗増殖剤の還元−活性化プロドラッグがマイトマイシンC、E09、RSU−1069、RB−6145またはトレタジカルである、請求項40または請求項62に記載の方法、請求項42に記載の使用、請求項58の溶液または懸濁液、請求項63に記載の機械的噴霧器あるいは請求項64に記載のエアロゾル装置。
【請求項66】
5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを含む乾燥粉末エアロゾル組成物。
【請求項67】
(i)任意にプロペラントガス源を含有する乾燥粉末吸入装置;および
(ii)1以上の独立した用量の5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシルアミノ−2−ニトロベンズアミドを含む乾燥粉末エアロゾル組成物
を含む治療システム。
【請求項68】
請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物の、実質的に非水性溶媒系中還元剤としての使用。
【請求項69】
前記式Iの化合物および実質的に非水性溶媒系中還元剤としての塩基の使用である、請求項1に記載の使用。
【請求項70】
前記還元性化合物を請求項1、17および18のいずれか一項において定義される前記式Iの化合物、および実質的に非水性溶媒系と接触させることを含む、還元性化合物を還元する方法。
【請求項71】
還元性化合物を前記式Iの化合物および塩基と接触させることを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
実質的に非水性溶媒系が最大で80重量%の水を含む、請求項68または請求項69に記載の使用、あるいは請求項70または請求項71に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−522244(P2009−522244A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548029(P2008−548029)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004947
【国際公開番号】WO2007/074344
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508194294)モーヴァス テクノロジー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】