説明

α−ヨード−1−アゼチジン酢酸エステル及びトリアルキルホスファイトを用いるセファロスポリン中間体の製造方法

本発明は、式中のR1がパラ−ニトロベンジル又はアリルであり;そしてXがハロである式(I)の化合物;並びにその異性体の製造方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セフォベシン(cefobecin)を製造するためのセファロスポリン中間体の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
セフォベシンはコンパニオン動物を対象にした効力ある安定な抗生物質である。セフォベシンはC3におけるキラルテトラヒドロフラン環置換基を特徴としており、これが独特な活性及び安定性プロフィールの原因である。
【0003】
ペニシリンGからのセフォベシンの全合成は15の変換からなり、その多くははめ込み工程である。中間体はしばしばジアステレオ異性体の変わりやすい混合物である。セファロスポリン中間体に達するまでは、単結晶性ジアステレオ異性体が得られることはない。その結果、セファロスポリン中間体はセフォベシン合成における鍵となる関門として標的にされ、そしてそれらの合成はセフォベシンの商業的製造方法を確立するために極めて重要である。
【0004】
J. H. Bateson et al., The Journal of Antibiotics, 47, 253-256 (1994) は、最初に塩化チオニルを用いてβ−ラクタムをクロロ化合物に変換し、次いでクロロ化合物をトリアルキルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を形成することによる、セファロスポリン中間体の製造方法を提供した。しかしながら、この方法は標準的ホスフィン試薬、例えばトリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン及びトリフェニルホスフィンの使用を伴い、これらはセファロスポリン中間体の悪い収率をもたらした。
【0005】
米国特許第6,077,952号及び第6,001,997号、並びに米国特許出願公開第 2002/0099205号は、トリメチルホスフィン(TMP)の使用がより良好な収率を与え、そして大規模合成で首尾よく使用されたことを提供した。この方法には、TMPを使用するための多数の欠点、例えば高い費用、極めて変わりやすい収率及び比較的不安定な中間体、が存在する。
【0006】
英国特許出願第2,300,856号は、セファロスポリン中間体を製造するための別法を提供した。しかしながら、これらの方法は比較的低い収率を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、セファロスポリン中間体を製造するための新規な方法を開発することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式(V)の化合物
【化1】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり、そしてR2はベンジル又は置換ベンジルである)を;
ヨウ化物塩と反応させて式(IVa)
【化2】

(式中、R1及びR2は上記で定義したとおりである)の化合物を生成させる工程を含む;式(IVa)の化合物の製造方法に関する。
【0009】
好適なヨウ化物塩は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化カルシウム及びヨウ化アンモニウムを包含するが、これらに限定されない。好ましくは、ヨウ化物塩はヨウ化ナトリウムである。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、R1はパラ−ニトロベンジルであり、R2はC1-6アルキル又はハロからなる群からそれぞれ独立して選択される1〜3個の置換基で置換されたベンジルである。
【0011】
式(VI)の化合物を式(V)の化合物に変換するために適する塩素化剤は、塩化チオニル及びオキシ塩化リンを包含する。好ましくは、塩素化剤は塩化チオニルである。
【0012】
本発明はまた、式(IVa)の化合物
【化3】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり;R2はベンジル又は置換ベンジルである)
を、溶媒中でP(OR3)3(式中、R3はC1-6アルキルである)と反応させる工程を含む;式(III)の化合物
【化4】

(式中、R1、R2及びR3は上記で定義したとおりである)の製造方法に関する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、式(III)の化合物の製造方法では、R1はパラ−ニトロベンジルである。
【0014】
本発明の別の実施形態において、式(III)の化合物の製造方法では、R2はベンジルである。
【0015】
本発明の別の実施形態において、式(III)の化合物の製造方法では、R3はメチルであり、そしてXはクロロである。
【0016】
本発明の別の実施形態において、式(III)の化合物の製造方法では、R1はパラ−ニトロベンジルであり、R2はベンジルであり、R3はメチルであり、そしてXはクロロである。
【0017】
本発明の別の好ましい実施形態において、式(III)の化合物を、溶媒中でLiCl及び可溶性有機塩基の存在下に加熱して式(II)の化合物:
【化5】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり;そしてR2はベンジル又は置換ベンジルである)
を形成させ;そして式(II)の化合物をさらにR4−OH及びPX5(式中、R4はC1-6アルキルであり、そしてXはハロである)と反応させて式(I)の化合物:
【化6】

(式中、R1及びXは上記で定義したとおりである)を生成させる。
【0018】
別の好ましい実施形態において、式(III)の化合物の式(I)の化合物への変換では、R1はパラ−ニトロベンジルである。
【0019】
別の好ましい実施形態において、式(III)の化合物の式(I)の化合物への変換では、R2はベンジル、C1-6アルキル又はハロからなる群からそれぞれ独立して選択される1〜3個の置換基で置換されたベンジルである。
【0020】
別の好ましい実施形態において、式(III)の化合物の式(I)の化合物への変換では、R3はメチルである。
【0021】
別の好ましい実施形態において、式(III)の化合物の式(I)の化合物への変換では、R1はパラ−ニトロベンジルであり、R2はベンジルであり、R3はメチルであり、Xはクロロであり;そしてR4はイソブチルである。
【0022】
別の好ましい実施形態において、式(III)の化合物の式(II)の化合物への変換では、可溶性有機塩基はジイソプロピルエチルアミンであり、そして溶媒はジクロロメタンである。
【0023】
本発明はさらに、
(1)式(V)の化合物
【化7】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり、そしてR2はベンジル又は置換ベンジルである)を;ヨウ化物塩と反応させて式(IVa)の化合物
【化8】

を生成させ、
(2)式(IVa)の化合物を、溶媒中でP(OR3)3と反応させて式(III)の化合物
【化9】

(式中、R1及びR2は上記で定義したとおりであり;R3はC1-6アルキルである)を取得し;
(3)工程(2)からの式(III)の化合物を、上記溶媒中でLiCl及び可溶性有機塩基の存在下に加熱して式(II)の化合物:
【化10】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり;そしてR2はベンジル又は置換ベンジルである)を形成させ;そして
(4)式(II)の化合物をR4−OH及びPX5(式中、R4はC1-6アルキルであり、そしてXはハロである)
と反応させて式(I)の化合物を生成させる工程を含む:式(I)の化合物
【化11】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり;そしてXはハロある)の製造方法に関する。
【0024】
好ましい実施形態において、式(V)の化合物の式(I)の化合物への変換では、R1はパラ−ニトロベンジルである。
【0025】
別の好ましい実施形態において、式(V)の化合物の式(I)の化合物への変換では、R2はC1-6アルキル又はハロからなる群からそれぞれ独立して選択される1〜3個の置換基で置換されたベンジルである。
【0026】
別の好ましい実施形態において、式(V)の化合物の式(I)の化合物への変換では、R3はメチルである。
【0027】
別の好ましい実施形態において、式(V)の化合物の式(I)の化合物への変換では、Xはクロロである。
【0028】
別の好ましい実施形態において、式(V)の化合物の式(I)の化合物への変換では、R1はパラ−ニトロベンジルであり、R2はベンジルであり、R3はメチルであり、そしてXはクロロである。
【0029】
式(VI)の化合物を式(III)の化合物に変換するために適する溶媒は、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン又はアセトニトリルを包含するが、これらに限定されない。好ましくは、溶媒はジクロロメタンである。
【0030】
式(III)の化合物を式(II)の化合物に変換するために適する可溶性有機塩基は、ジイソプロピルエチルアミン(「DIPEA」)、ジ−ブチルエチルアミン、メチルピロリジン、エチルピロリジン、メチルピペリジン、エチルピペリジン、エチルモルホリン及びメチルモルホリン、ジ−シクロヘキサンメチルアミン、ジ−シクロヘキサンエチルアミン及びN,N'−ジブチル尿素(「DBU」)を包含するが、これらに限定されない。
【0031】
好ましくは、可溶性有機塩基は、式(III)の化合物を式(II)の化合物に変換する間、1モルの式(III)の化合物に対して約1〜約2当量の範囲、好ましくは約1.2〜約1.5当量の範囲で存在する。
【0032】
式(III)の化合物の式(II)の化合物への変換は、約0℃〜約65℃;好ましくは約5℃〜約50℃、より好ましくは約5℃〜約30℃の温度で行うことができる。上記の変換は、約1時間〜約16時間、好ましくは約4時間〜約10時間の期間に行うことができる。
【0033】
本明細書で用いられるように、「ハロ」という用語は、クロロ、ブロモ、ヨード及びフルオロを包含する。
【0034】
置換ベンジルの例は、C1-6アルキル又はハロからなる群からそれぞれ独立して選択される1〜3個の置換基で置換されたベンジルを包含するが、これらに限定されない。
【0035】
本発明はさらに、式(IV)の化合物
【化12】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジルであり;R2はベンジルであり;*は(R)又は(S)の絶対配置を示すキラル中心を表し;該化合物は(R)及び(S)異性体を0:1〜1:0の比率で含有する)に関する。
【0036】
本発明はさらに、式(IVa)又は(IVb)の化合物:
【化13】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジルであり;R2はベンジルである)に関する。
【0037】
本願を通じて種々の特許及び刊行物を引用した。これらの特許及び刊行物の内容並びにこれらの特許及び刊行物で引用された文献の内容は、許される範囲内で参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の方法及び本発明の化合物の製造を、下記の反応スキームで説明する。別に指示しない限り、以下の反応スキーム及び議論において、置換基R1、R2、R3、R4及びXは上記で定義したとおりである。
【0039】
式Iの化合物は下記のスキームにより合成することができる:
【化14】

ここで、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり;R2はベンジル又は置換ベンジルであり;R3はC1-6アルキルであり;Xはクロロであり;そしてR4はイソブチルである。
【0040】
式(VI)の化合物の製造は、米国特許出願公開第 2002/0099205 に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
塩化物の製造
式(VI)の化合物の式(V)の化合物への変換は、上記の式(VI)の化合物を、塩素化剤、例えば塩化チオニルを用いて、2−ピコリンを含む有機溶媒、例えばトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン及びアセトニトリルの中で塩素化することによって典型的に行われる。この変換は、式Vの化合物をほとんど定量的収率で与える。塩素化剤投入量の最適条件は、式(VI)の化合物の初期投入量に基づいて、約1.1当量であることを見出した。より低い塩素化剤投入量は、式Vの化合物の不完全な変換をもたらした。
【0042】
副生物の形成を避けるために、この反応は低温で行わねばならない。しかしながら、ジクロロメタン中の式(VI)の化合物及び 2−ピコレンの溶液は、それを周囲温度から−20℃に冷却したところ、若干の沈殿を生成した。この懸濁液に−20℃で塩化チオニルを添加すると、より多量の未反応出発物質を与え、これは過剰の塩化チオニルの添加によって塩素化することができなかった。従って、全塩化チオニル投入量の一部(10%)を、沈殿し始める前に−15℃で添加した。次いでこの溶液を−20℃に冷却し、そしてこの温度以下で残りの塩化チオニルを徐々に添加した。生成物はジクロロメタンに有意に溶解性であり、そしてこの手順を用いて沈殿は観察されなかった。
【0043】
式(VI)及び(V)の化合物は、それぞれヒドロキシ及びクロロエピマーのジアステレオマー混合物である。塩素化反応混合物の薄層液体クロマトグラフィー(「TLC」)は、式(VI)の化合物が式Vの化合物にきれいに変換したことを示し、少量の未反応の式(VI)の化合物及びベースライン物質が含まれていた。どのジアステレオマーも分割されなかった。
【0044】
逆相HPLCを用いて四つの可能なジアステレオマーを分割した。しかしながら、RP−HPLCの結果はTLCと一致しなかった。この結果は、反応混合物が主として一方のエピマーである約50%の式(V)の化合物、及び同様に主として一方のエピマーである約 50%の式(VI)の化合物を含有することを示した。順相HPLCはTLCと一致し、そして使用した反応条件が 90%より高い式(V)の化合物への変換を与えたことを示し、3〜10%の式(VI)の化合物が残留した。これらの観察により、生成物の一方のエピマーが RP−HPLC で急速に加水分解するが、他方は比較的安定であることが示唆された。
【0045】
ホスホネート形成が進行する前に飽和ブラインに入れて反応を停止し、そして硫酸マグネシウム上で乾燥したが、幸いにも、この仕上げ処理手順は式(V)の化合物の有意な加水分解を引き起こさなかった。
【0046】
ホスホネートの製造
式Vの化合物の式(III)の化合物への変換は、ハロゲン化アルキルを、トリアルキルホスファイト(Arbuzov 反応)又はジアルキルホスフェートのアルカリ金属誘導体(Michaelis 反応)と反応させることによって典型的に行われる。Arbuzov 反応はより簡単な反応条件を与え(J. Boutagy & R. Thomas, Chem. Rev. 1, 87-99 (1974))、そしてそれを式(III)の化合物の製造のために発展させた。
【0047】
トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト及びトリブチルホスファイトは式(IVa)のクロロ化合物と反応せず、そしてこの塩化物を、ヨウ化物塩、例えばヨウ化ナトリウムとの反応(Finkelstein 反応)によってヨウ化物と交換した。これは、水性仕上げ処理及び乾燥の後、式(V)の化合物を含有する反応溶液にヨウ化ナトリウムを添加することによって最初に行った。
【0048】
ヨウ化ナトリウムのジクロロメタン中溶解度が低いため、この手順は式(IVa)の化合物の一貫性のない収率及び純度をもたらした。反応混合物の中に痕跡量の水を注入すると、ヨウ化ナトリウムの溶解度が増加する。しかしながら、反応の進行を可能にするためにヨウ化ナトリウムをよく溶解するのに十分な水をジクロロメタンに含有させた場合には、有意な加水分解が生じた。
【0049】
Finkelstein 反応のための別の溶媒を試してみた。アセトン(及び他のケトン含有溶媒、例えばメチルエチルケトン)の使用は、式(III)の化合物の環化中に内部ケトンと競合する可能性があるので除外した。アセトニトリルは、生成物の収率及び品質の両方の点でハロゲン化物交換のための良好な溶媒であることを見出した。式(V)の化合物を含有する反応溶液を蒸発乾固させ、そして残留物をアセトニトリルに溶解したとき、若干の分解が生じた。しかしながら、仕上げ処理及び乾燥後に式(V)の化合物を含有する反応溶液を乾燥し、次いで濃縮し、その後にアセトニトリルで希釈し、引き続きヨウ化ナトリウムを添加することによって、ハロゲン化物交換反応を行うことができた。
【0050】
ヨウ化物塩の投入量は、式(IVa)の化合物の収率にとって極めて重要である。不十分なヨウ化物塩は、式(V)の化合物の不完全な反応により収率低下を招く。過剰のヨウ化物塩は、式(IVa)の化合物との反応によってこれらの化合物の分解を引き起こす。式(V)の化合物を式(VI)の化合物に変換する際に、式(VI)の化合物の初期投入量に基づいて、約1.05モル当量のヨウ化物塩を使用した。
【0051】
式(V)の化合物は、ヨウ化物塩の添加の数分以内に式(IVa)の化合物に変換される。Wittig合成での経験に基づく示唆により、式(IVa)の化合物との Arbuzov 反応のために最小立体障害トリアルキルホスファイトの使用が有利であろうと考えた。トリメチルホスファイト(「TMPT」)は、式(IVa)の化合物の対応する式(III)の化合物への良好な変換を与えた。
【0052】
式(IVa)の化合物を含有する溶液にTMPTを添加することによって、式(III)の化合物を製造した。TMPTと式(IVa)の化合物との反応は発熱性であり、そしてより高い温度はホスフェート不純物の生成を増加させるので、注意深い温度制御が必要である(図1参照)。ジクロロメタン溶液中のTMPTを徐々に添加する前に、式IVの化合物を含有する溶液を5℃未満に冷却することによって、発熱反応を制御した。
【0053】
最適TMPT投入量は、式(VI)の化合物の初期投入量に基づいて、約1.45モル当量であった。より低い投入量は式(V)の化合物の式(IVa)の化合物への不完全な変換をもたらし、そしてより高い TMPT 投入量は、後の方法(PX5脱保護)がはめ込みデザインであるため、後にその合成において問題を引き起こした。
【0054】
室温で1時間半の反応の後、式(III)の化合物が十分に形成された。式(III)の化合物のための HPLC 溶液アッセイを開発し、これは式(VI)の化合物から75%の収率を示した。反応混合物中の式(III)の化合物の含有量を決定することは、後続の試薬投入量がその結果に基礎を置くことができたので重要であった。
【0055】
ホスホネートの環化
セフェム6員環の環化は、式(III)の化合物を含有する反応溶液に、リチウム塩、例えば塩化リチウム、フッ化リチウム及び臭化リチウム、並びに可溶性有機塩基、例えばDIPEAを添加することによって行われる。この反応は(安定化)ホスホネートアニオンの形成を介して進行し、これは内部環化して、十分形成された二環式セファロスポリン核を含有する生成物、式(III)の化合物を与える。環化の成功には少なくとも2モル当量のリチウム塩が必要である。過剰のリチウム塩は悪影響がなかった。
【0056】
多数の塩基を調査し、そしてジイソプロピルエチルアミン、DIPEA が環化反応に極めて有効であることを見出した。他の可溶性塩基、例えばジ−ブチルエチルアミン、メチルピロリジン、エチルピロリジン、メチルピペリジン、エチルピペリジン、エチルモルホリン及びメチルモルホリン、ジ−シクロヘキサンメチルアミン、ジ−シクロヘキサンエチルアミン、並びにDBUを使用することもできる。しかしながら、DIPEAよりも弱い塩基の使用は失敗した。これは多分、それらがホスホネートを脱プロトン化できないからである。
【0057】
操作の如何なる特定の理論にも制約されることを意図するものではないが、ホスファイト及びホスフィン経路間の主な相違は、ホスファイト方法においては、環化工程中のΔ2−3二重結合異性化の可能性であると信じられる。セファロスポリン環における二重結合の異性化は、塩基によって促進される。Wittig 合成において、ホスホニウム塩をジクロロメタン中で水性重炭酸ナトリウムで処理することによって、イリドが形成される。有機相を分離し、そして周囲温度で環化させるが、環化には 16時間までを要する。DIPEAは重炭酸塩よりも強い塩基であり、そして環化するまでは反応物から除去するのが困難なので、DIPEA投入量は極めて重要である。異性化の量はDIPEA投入量に直接関連する。最適量のDIPEAは、ホスホネートのモル量に基づいて、1.20〜1.50当量の範囲にある。
【0058】
これは完全な反応を保証し、そして二重結合異性体の形成を最小限にする。反応溶液中のホスホネートの量を HPLC アッセイによって決定し、そしてDIPEA及び塩化リチウムの投入量はその結果に基礎を置いた。
【0059】
DIPEA及び塩化リチウムを添加した後、この溶液を周囲温度で攪拌して環化を行った。環化には完了に至るまで 16時間を超える時間を要した。より高い反応温度及び/又は有意に長い反応時間の使用は、副生物の増加及びより低い収率をもたらした。
【0060】
環化反応混合物に残留する水が、不純物の形成及びより低い収率をもたらすことを見出した。従って、ヨウ化ナトリウム、塩化リチウム及び DIPEA を添加する前に、ホスホネートの溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥した。
【0061】
式IIの化合物の脱保護
式(II)の化合物の式(I)の化合物への変換は、式(II)の化合物のアミノ基の脱保護を伴う。脱保護にはセファロスポリン化学における標準的な条件、五ハロゲン化リン、ピコリン、次いでイソブタノールが使用される。式(VI)及び(III)の化合物は、反応溶液中にアセトニトリルの存在を必要とする。しかしながら、アセトニトリルは五ハロゲン化リンと反応するので、式(II)の化合物の最終脱保護反応が進行する前にアセトニトリルの除去が必要であった。それは反応混合物中の式(I)の化合物の溶解度を増加させ、そしてより低い収率をもたらす。
【0062】
アセトニトリルを除去するために可能な二つの時機があり、それは式(III)の化合物の形成後、又は式(II)の化合物の形成後であった。アセトニトリルを除去するために二つの方法があり、それは蒸留及び相の抽出である。式(VI)の化合物の形成後の蒸留によるアセトニトリルの除去は、生成物の不純物プロフィール及び式(II)の化合物の収率に影響を与えることを見出した。同様に、式(IVa)の化合物を含有する反応混合物の抽出によるアセトニトリルの除去は、エマルジョン、低い収率及び回収、並びに後続の環化工程に進む場合に反応水含有量の問題をもたらす。従って、アセトニトリルの除去に利用できる唯一の工程は、式(II)の化合物を脱保護する直前であった。反応混合物を酸溶液で抽出してDIPEA塩を除去し、次いでブラインで抽出し、そしてこれが若干のアセトニトリルを除去した。次いで反応混合物を2回蒸留して、アセトニトリルの完全な除去を確保した。
【0063】
この変換には二つの主な問題がある。一方は残留水の存在、そして他方は反応温度/発熱の制御である。これらの問題は、ホスファイト及びホスフィン経路の両者に共通している。含水量は低いことが必要であり、そしてこれはアセトニトリルを除去する蒸留操作によって達成される。加えて、脱保護反応は、単離して精製した式(II)の化合物に対して一貫してよく作用するが、式(VI)の化合物からこの一連のはめ込み反応を経由して製造した式(II)の化合物を用いる場合は変動することを見出した。これは、反応溶液中の何らかの他の成分が、脱保護反応に不利な効果を有することを示唆している。
【0064】
ジメチルホスフェート(「DMP」)は環化反応の副生物である。DMP及び過剰のTMPTは脱保護に悪影響を与えたが、式(II)の化合物の水性仕上げ処理によって除去されない。この観察に基づいて、式(IVa)の化合物から式(III)の化合物を製造する際に用いる過剰のTMPT投入量を最小限に保った。これは1.45であることが分かった。10Aモレキュラーシーブが反応混合物からリン化合物を除去することを示唆する幾つかのデータがある。
【0065】
下記の実施例により、本発明の製造方法を説明する。NMRデータは百万分の一(ppm)で報告され、そしてサンプル溶媒(別に特定しない限り重水素クロロホルム)からの重水素ロックシグナルを基準としている。
【0066】
さらに、本発明の種々の態様を以下に記述するか又は特許請求する明細書又はパラグラフで述べる数の任意の範囲、例えば特性の特定セット、測定の単位、条件、物理的状態又はパーセンテージを表すもの、又はそうでなければ、このような範囲の中にある任意の数(そのように述べられた任意の範囲内に含まれる数又は範囲の任意のサブセット)は、参照により文字どおり明示的に本明細書に組み込まれることを意図している。変量の修飾語として、又は変量と連結して用いる場合の「約」という用語は、本明細書に開示した数及び範囲に柔軟性があり、そして範囲外にあるか又は単一値とは異なる温度、濃度、量、含有量、炭素数及び特性を用いて当業者が本発明を実施することが望ましい結果を達成するだろうと伝えることを意図している。
【0067】
〔実施例1〕
(3R,4R)−α−ヨード−2−オキソ−4−[[2−オキソ−2−[(1S)−(テトラヒドロ−2−フラニル)−エチル]チオ]−3−[(フェニルアセチル)アミノ]−1−アゼチジン酢酸−(4−ニトロベンジル)メチルエステルの製造
4員環化合物 (3R,4R)−α−ヒドロキシ−2−オキソ−4−[[2−オキソ−2−[(1S)−(テトラヒドロ−2−フラニル)−エチル]チオ]−3−[(フェニルアセチル)アミノ]−1−アゼチジン酢酸−(4−ニトロベンジル)メチルエステルは、比率8:2のジアステレオマーアルコールの混合物である。このペアの絶対立体化学はアルコール炭素では不明である。この化合物 51.19g(力価 80%、73.4mmol)をジクロロメタン 750mLに溶解した。2−ピコリン(11.8mL)(119.5mmol、1.63当量)を加え、この溶液を−15℃に冷却した。塩化チオニル(7.6mL)(104.19mmol、1.42当量)を一度に(約3分間かけて)加えた。反応物を−20℃未満で1時間攪拌した。反応物を 20%ブライン溶液 2×250mLで洗浄し、硫酸マグネシウム 40g上で周囲温度で 10分間乾燥した。乾燥剤を濾別し、ジクロロメタン 100mLで洗浄した。濾液を−35℃未満でロータリーエバポレーターで150mLまで濃縮した。アセトニトリル(150mL)を加え、この溶液を−35℃未満でさらに200mLまで濃縮した。
【0068】
この溶液を−5℃未満に冷却した。この溶液にヨウ化ナトリウム(11.59g)(119.5mmol、出発化合物に対して10.5当量)を投入して、(S)−THF 異性体又は (R)−THF 異性体又はそれらの混合物として存在できる (3R,4R)−α−ヨード−2−オキソ−4−[[2−オキソ−2−[(1S)−(テトラヒドロ−2−フラニル)−エチル]チオ]−3−[(フェニルアセチル)アミノ]−1−アゼチジン酢酸−(4−ニトロベンジル)メチルエステルを形成した。さらに、(S)−THF 異性体及び (R)−THF 異性体の両者は、(S)−ヨード異性体及び (R)−ヨード異性体からなるヨード立体異性体の混合物の形態で存在できる。セファロスポリン中間体及びセフォベシンを製造するために、(S)−THF 異性体が使用される。(R)−THF 異性体は、セフォベシン製造の途中の全ての方法中間体及び最終生成物に不純物として存在する。しかしながら、セフォベシンナトリウムの (R)−THF 異性体は、一次スクリーニング試験においてそれ自体が強力な抗生物質であることが示された。
【0069】
痕跡量の R−シリーズとともに主として S−シリーズが存在するヨード化合物混合物について収集された NMR データ:δ (400MHz, CDCl3): 8.43 (m, 2H, PNB-H2,6), 7.54 (m, 2H, PNB-H3,5), 7.20-7.40 (m, 5H, Bnz-H), 6.5-6.7 (m, 1H, NH), 5.2-5.45 (m, 4H, PNB-CH2, CH-OH & CH-NH), 5.07 (d, IH, J = 4.8Hz, CH-S1), 4.2-4.5 (m, 1H, THF-H2), 3.83 (m, 2H, THF-H5), 3.3-3.7 (m, 4H, S-CH2 & BnZ-CH2), 2.1-2.2 (m, 1H, THF-H3), 1.7-1.95 (m, 3H, THF-H3 & H4)。
MSデータ: 690.0382 (M+Na)+
HPLC データ:上記ヨード化合物の二つのエピマー 42.2%(Rt 12.6 & 14.5 min.)、ヨード化合物のクロロ類似体の二つのエピマー 8.4%(Rt 12.2 & 14.1 min.)、(3R,4R−α−ヒドロキシ−2−オキソ−4−[[2−オキソ−2−[(1S)−(テトラヒドロ−2−フラニル)−エチル]チオ]−3−[(フェニルアセチル)アミノ]−1−アゼチジン酢酸)−(4−ニトロベンジル)メチルエステルの二つのエピマー 11.4%(Rt 19.6 & 20.5 min.)。
【0070】
〔実施例2〕
セファロスポリン中間体の製造
実施例1におけるヨウ化ナトリウムの添加に続いて、ジクロロメタン(10mL)に溶解したトリメチルホスファイト(TMPT)(12.6mL、106.8mmol、出発化合物に対して 1.45当量)を10分間かけて滴下して加えた。添加中に温度を5℃以下に維持した。この規模で発熱は観察されなかった。この溶液を1.5時間かけて室温に温まらせた。ホスホネート含有量を HPLC アッセイにより決定した(36.49g、56.2mmol)。これは二工程で76.5%の収率に相当する。ジクロロメタン(500mL)を加えた(全量約 700mL)。活性炭(17g)及び硫酸マグネシウム(20.1g)を加え、この混合物を 10分間攪拌した。この混合物をセライト床に通して濾過することにより浄化し、セライトをジクロロメタン(150mL)で洗浄した。ホスホネート含有量を HPLC アッセイにより決定した(36.5g、56.1mmol)。塩化リチウム(5.11g)(120.5mmol、ホスホネートの2.15当量)及び DIPEA(12.6mL)(72.3mmol、ホスホネートの 1.29当量)を加えた。この溶液を周囲温度で 16時間攪拌した。反応溶液を1%塩酸水溶液 400mL及び 20%ブライン溶液 2×400mLで順次洗浄した。有機相を粉末状 4A モレキュラーシーブ(22.3g)及びセライト(20.3g)で乾燥した。乾燥剤をシリカG(43g)のプラグに通してデカントし、ジクロロメタン 200mLで洗浄した。この溶液をロータリーエバポレーターで35℃未満で濃厚油状物に濃縮し、ジクロロメタン(350mL)を加えた。次いでこの溶液を再びロータリーエバポレーターで 35℃未満で濃厚油状物に濃縮し、ジクロロメタン(350mL)を加えた。含水量を決定したところ、140ppmであった。環化生成物の含有量を HPLC により決定したところ、25.76g(49.2mmol、3からの収率 67.0%、環化について 87.6%)であった。
【0071】
この溶液を−55℃に冷却し、五塩化リン(30.4g)(147.4mmol、環化生成物の3.0当量)を投入した。5分後、温度を−40℃以下に維持しながら、2−ピコリン(29mL)(293.6mmol、環化生成物の6.0当量)を加えた。発熱が観察された。この溶液を−20℃未満で1時間攪拌した。この工程で反応物は濃厚スラリーであった。これを−50℃未満に冷却し、イソブタノール(205mL)(2.02mol)を投入した。これは反応物の−30℃への加温を引き起こした。この溶液を周囲温度に温まらせ、1時間攪拌した後、セファロスポリン中間体の種結晶を加えた。この溶液をジクロロメタンの蒸発を防ぐために密閉系中で16時間攪拌した。固体を濾過により集めた。この固体をジクロロメタン 2×100mLで洗浄した。この固体を高真空下で 40℃で恒量になるまで乾燥して、セファロスポリン中間体(18.4g)(41.64mmol、(3R,4R)−α−ヒドロキシ−2−オキソ−4−[[2−オキソ−2−[(1S)−(テトラヒドロ−2−フラニル)−エチル]チオ]−3−[(フェニルアセチル)アミノ]−1−アゼチジン酢酸−(4−ニトロベンジル)メチルエステルからの収率 56.7%、環化生成物からの収率 84.6%)を得た。
【0072】
セファロスポリン中間体の三つの追加ロットを、50gの規模で極めて類似した収率(50〜55%)で製造した。全体的収率は、ホスフィン方法で最高達成可能なものに匹敵する。
【0073】
この方法を用いて製造したセファロスポリン中間体のバッチは、原初のホスフィン(Wittig)方法により製造したものと同様の不純物プロフィールを有することが分かった。これらのバッチを用いてセフォベシンを製造しているが、これは薬剤物質発売のための現行の試験仕様の全てを満たしている。
【0074】
〔実施例3〕
ホスホネートの製造及び同定
(3R,4R)−α−ヒドロキシ−2−オキソ−4−[[2−オキソ−2−[(1S)−(テトラヒドロ−2−フラニル)−エチル]チオ]−3−[(フェニルアセチル)アミノ]−1−アゼチジン酢酸−(4−ニトロベンジル)メチルエステル 51.8g(RD2424、80%、73.4mmol)を、ジクロロメタン 750mLに溶解した。2−ピコリン 12mL(121.5mmol、ALAT に対して 1.63当量)を加え、この溶液を−15℃に冷却した。塩化チオニル 7.5mL(102.82mmol、ALAT に対して1.38当量)を加えた。反応物を−20℃未満で1時間攪拌した。これを20%ブライン2×250mLで洗浄し、硫酸マグネシウム 40g上で周囲温度で 10分間乾燥した。乾燥剤を濾別し、ジクロロメタン 100mLで洗浄した。濾液をロータリーエバポレーターで35℃未満で100mL に濃縮した。アセトニトリル 150mLを加え、この溶液をさらにロータリーエバポレーターで35℃未満で200mLに濃縮した。この溶液を4℃未満に冷却した。ヨウ化ナトリウム 11.6g(77.4 mmol、(3R,4R)−α−ヒドロキシ−2−オキソ−4−[[2−オキソ−2−[(1S)−(テトラヒドロ−2−フラニル)−エチル]チオ]−3−[(フェニルアセチル)アミノ]−1−アゼチジン酢酸−(4−ニトロベンジル)メチルエステルに対して 1.04当量)を加え、次いでジクロロメタン(10mL)に溶解したトリメチルホスファイト(110.22mmol、(3R,4R)−α−ヒドロキシ−2−オキソ−4−[[2−オキソ−2−[(1S)−(テトラヒドロ−2−フラニル)−エチル]チオ]−3−[(フェニルアセチル)アミノ]−1−アゼチジン酢酸−(4−ニトロベンジル)メチルエステルに対して 1.48当量)を 15分間かけて滴下して加えた。添加中温度を4℃以下に維持したが、発熱は観察されなかった。この溶液を 1.5時間攪拌した。ジクロロメタン(500mL)を全量が約700mLになるように加えた。活性炭(17g)、13xモレキュラーシーブ(40.00g)及び硫酸マグネシウム(20.1g)を加え、この溶液を 10分間攪拌した。これをセライト床に通して濾過し、ジクロロメタン(100mL)で洗浄した。濾液をロータリーエバポレーターで35℃未満で濃厚油状物に濃縮した。これをジエチルエーテル(2×500 mL、2度目の洗浄液をデカントする前に4℃で 16時間貯蔵した)とともに摩砕し、半固体を真空乾燥して、黄色固体(51.89g、HPLC 60.9%、収率 65.4%)を得た。
IR (KBr disc): 3300sh, 3281s, 2958s, 1779s, 1678s, 1607m, 1524s, 1454m, 1349s, 1261s, 1035s, 850m, 739m, 697m cm-1
NMR (1H 400MHz, CDCl3): 1.88 (m, 3H), 2.12 (m, 1H), 3.37-3.54 (2 x dd, 2H), 3.64, (s, 2H), 3.75-3.80 (m, 6H), 3.87 (m, 2H), 3.90 (m, 1H), 4.95 (dd, 1H (J1Hp = 24.8Hz)), 5.15-5.30 (dd, 0.5H (J = 4.7, 1Hz)), 5.30 (m, 2.5H), 5.46 (m (2 x ddd) 1H), 6.36 & 6.46 (2 x d, 1H), 7.27-7.28 (m, 5H), 7.55 (d, 2H), 8.21 (m, 2H) ppm
【0075】
〔実施例4〕
ホスホネートの環化
実施例4からのホスホネート 11.31gを、ジクロロメタン(140mL)及びアセトニトリル(30mL)の混合物に溶解した。これに、LiCl 1.33g(31.38mmol)及び DIPEA 3.30mL(18.95mmol)を加えた。この溶液を周囲温度で 16時間攪拌した。反応溶液を1% HCl 80mL及び20%ブライン 80mLで順次洗浄した。有機相を粉末状4Aモレキュラーシーブ(4.20g)、13Xモレキュラーシーブ(4.26g)及びセライト(4.11g)で乾燥した。乾燥剤をシリカ(30g)のプラグに通してデカントし、ジクロロメタン 150 mLで洗浄した。この溶液をロータリーエバポレーターで35℃未満で濃縮して濃厚油状物を得た。この油状物をジエチルエーテル(2×100mL)とともに摩砕し、半固体を真空乾燥して、黄金色固体(2.78g、HPLC 87.9%、収率 44%)を得た。
IR (KBr disc): 3276s, 3029m, 2949s, 2872m, 1783s, 1725s, 1666s, 1630s, 1610s, 1520m, 1454m, 1345s, 1219s, 1103s, 1053s, 926m, 852s, 768m, 737s, 700m cm-1
NMR (1H 400MHz): 1.55 (m, 1H), 1.9 (m, 2H), 2.35 (m, 1H), 3.25 (d, 1H SCH2), 3.65 (d, 1H SCH2), 3.6 (d, 2H PhCH2CO), 3.8-3.9 (m, 2H), 4.9 (m, 1H), 4.95 (d, 1H), 5.25 (dd, 2H NO2PhCH2O), 5.8 (dd, 1H), 6.1 (d, 1H, NH), 7.23-7.35 (m, 5Η), 7.55 (d, 2H), 8.2 (d, 2H)。
【0076】
〔実施例5〕
式(IVb)の化合物の製造
式(Vb)の化合物
【化15】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジルであり;そしてR2はベンジルである)を、ヨウ化物塩の添加により;式(IVb)の化合物に変換する。
【0077】
本発明をその一定の特別な実施形態を参照して記載しかつ説明してきたが、当業者は、手順及びプロトコールの種々の適応、変化、修飾、置換、削除又は付加を本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行いうることを理解するだろう。従って、本発明は請求項の範囲によって定義され、そしてこのような請求項は合理的なようにできるだけ広義に解釈されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V):
【化1】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり、そしてR2はベンジル又は置換ベンジルである)の化合物をヨウ化物塩と反応させて式(IVa)の化合物を生成させる工程を含む、式(IVa):
【化2】

(式中、R1及びR2は上記で定義したとおりである)の化合物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の式(IVa)の化合物を、溶媒中でP(OR3)3(式中、R3はC1-6アルキルである)と反応させる工程を含む、式(III):
【化3】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり;R2はベンジル又は置換ベンジルであり;そしてR3は上記で定義したとおりである)の化合物の製造方法。
【請求項3】
3がメチルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(1)上記式(III)の化合物を、溶媒中でLiCl及び可溶性有機塩基の存在下に加熱して式(II):
【化4】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり;そしてR2はベンジル又は置換ベンジルである)の化合物を形成させ;そして
(2)式(II)の化合物をR4−OH及びPX5(式中、R4はC1-6アルキルであり、そしてXはハロである)と反応させて式(I):
【化5】

(式中、R1及びXは上記で定義したとおりである)の化合物を生成させる
工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
1がパラ−ニトロベンジルであり、R2がベンジルであり、R3がメチルであり、Xがクロロであり;そしてR4がイソブチルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
可溶性有機塩基がジイソプロピルエチルアミンであり、そして溶媒がジクロロメタンである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
(1)式(V):
【化6】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり、そしてR2はベンジル又は置換ベンジルである)の化合物を、ヨウ化物塩と反応させて請求項1に記載の式(IVa)の化合物を生成させ;
(2)式(IVa)の化合物を、溶媒中でP(OR3)3(式中、R3はC1-6アルキルである)と反応させて請求項2に記載の式(III)の化合物を得;
(3)工程(2)からの式IIIの化合物を、上記溶媒中でLiCl及び可溶性有機塩基の存在下に加熱して請求項4に記載の式(II)の化合物を形成させ;そして
(4)式(III)の化合物をR4−OH及びPX5(式中、R4はC1-6アルキルであり、そしてXはハロである)と反応させて式Iの化合物を生成させる
工程を含む、式(I):
【化7】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジル又はアリルであり;そしてXはハロある)の化合物の製造方法。
【請求項8】
1がパラ−ニトロベンジルである、請求項1、2又は7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
2がC1-6アルキル又はハロからなる群からそれぞれ独立して選択される1〜3個の置換基で置換されたベンジルである、請求項1、2又は7の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
3がメチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
Xがクロロである、請求項7または10に記載の方法。
【請求項12】
1がパラ−ニトロベンジルである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
式(IV):
【化8】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジルであり;R2はベンジルであり;*は(R)又は(S)の絶対配置を示すキラル中心を表し;該化合物は(R)及び(S)異性体を0:1〜1:0の比率で含有する)の化合物。
【請求項14】
式(IVa)又は(IVb):
【化9】

(式中、R1はパラ−ニトロベンジルであり;R2はベンジルである)の化合物。

【公表番号】特表2007−528386(P2007−528386A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502426(P2007−502426)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000508
【国際公開番号】WO2005/092900
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】