説明

α−リポ酸水溶性組成物、それを含む飲食品、化粧料及びその製造方法

【課題】 α−リポ酸を有効濃度含有する、安定な水溶性組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のα−リポ酸水溶性組成物は、α−リポ酸、乳化剤、アルコールを含有してなる。1〜30質量%のα−リポ酸、1〜50質量%の乳化剤、1〜98質量%のアルコールを含むこと、そして、本発明に用いられる乳化剤のHLBが、10以上であることが好ましく、乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、サポニン類の中から選ばれる1又は2種以上からなるものであることが好ましい。
さらに、本発明に用いられるα−リポ酸と乳化剤の質量比が1/1〜3であり、且つα−リポ酸とアルコールの質量比が1/1〜10であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−リポ酸の水溶性組成物及びその製造方法に関する。更に本発明は、耐熱性、耐酸性、耐塩性等の保存安定性に優れるα−リポ酸を含有した飲食品、化粧料等に関する。
【背景技術】
【0002】
α−リポ酸は、別名チオクト酸(1,2-dithiolane-6−pentanoic acid:分子量206.32)とも呼ばれ、1951年、カリフォルニア大学バークレー校のLester
Packerによって単離された物質であり、その物性としては、融点約60℃、淡黄色〜黄色の粉末で、特異なにおいがあり、クロロホルムやエタノールに易溶性で、水や油に難溶性である。
また、α−リポ酸は人間の体内にも存在し、ホウレンソウ、赤味肉、ブロッコリー、レバー、トマトなどの多くの食品に見られ、ヨーロッパでは古くから糖尿病合併症予防などに有効な治療薬として使われてきた安全性の高い物質と考えられている。
【0003】
なお、国内においては食薬区分の見直しに伴い食品用途への利用が可能になり、健康食品分野での応用が期待されている。その機能としては、α−リポ酸は重金属排出に効果的なキレート剤であり、血液脳関門を通過するため、脳から重金属を排出する作用があるとされる。
また、α−リポ酸は生体内において極めて強力な抗酸化力を有し、種々の過酸化物質を抑制し、ビタミンCやビタミンE等の抗酸化物質を再活性化させるなどの機能を有する。またα−リポ酸は末梢組織中のAMPK(AMP
activated protein kinase)を活性化させ、逆に視床下部でのAMPKを阻害する結果、食欲を抑制するためダイエタリーサプリメントとしても最近注目されている。
【0004】
このようにα−リポ酸は、高い機能性を有しているにもかかわらず、水中に一且溶解しても、再結晶化、ガム化による分離、沈殿、析出または浮上が生じ易いという問題があり、また油に対する溶解度も極めて低いため、食品や化粧品用途等での利用において汎用性が極めて低く、特に清涼飲料水や化粧料等に添加する際には大きな制限を受けるという欠点があり、これらの製品に対して、α−リポ酸はほとんど利用することが出来なかった。
そのため、飲食品、化粧料等に使用することの出来るα−リポ酸を高濃度で含有した可溶化液が求められていた。
【0005】
この点を解決するために、α−リポ酸またはその薬理学的に許容できる塩および亜硫酸塩またはその水和物を含有する水性製剤、並びにα−リポ酸またはその薬理学的に許容できる塩に、亜硫酸塩またはその水和物を配合することを特徴とする、α−リポ酸およびその薬理学的に許容できる塩を可溶化および安定化する方法、に関する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2005-2096号公報
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の「α−リポ酸含有水性製剤」は、高濃度のα−リポ酸水溶性製剤を得ることが出来ないうえに、飲食品や化粧料等にこれら亜硫酸塩を添加することは健康上の理由で望ましくなく、また酸性域では使用できないといった問題がある。
α−リポ酸を含有する水溶性組成物としては、各種飲食品や化粧品等へ添加に必要な耐熱性、耐酸性、耐塩性に優れること、透明性に優れ、保存性が良く、食感や味に優れること、添加の際に複雑な工程や特殊な装置を必要としないこと等が求められるが、これらの要件を満たす安定な水溶性製剤は未だ知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、上記従来の問題点を解消し、α−リポ酸を有効濃度含有する、安定な水溶性組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、α−リポ酸、乳化剤、アルコールを含有してなるα−リポ酸水溶性組成物であり、1〜30質量%のα−リポ酸、1〜50質量%の乳化剤、1〜98質量%のアルコールを含むことが好ましい。
また、本発明は、1〜30質量%のα−リポ酸を1〜98質量%のエタノールに溶解した後に、1〜50質量%の乳化剤を溶解又は分散してなるα−リポ酸水溶性組成物である。
更に本発明に用いられる乳化剤のHLBが、10以上であることが好ましく、乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、サポニン類の中から選ばれる1又は2種以上からなるものが好ましい。更にまた、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、デカグリセリンモノオレート及び/又はデカグリセリンモノステアレートであることがより好ましい。
【0010】
本発明に用いられるアルコールは、エタノール、グリセリン、プロピレングリコールの中から選ばれる1又は2種以上であることが好ましい。
また、本発明に用いられるα−リポ酸と乳化剤の質量比が1/1〜3であり、且つα−リポ酸とアルコールの質量比が1/1〜10であることが好ましい。
本発明は、上記のいずれかに記載のα−リポ酸水溶性組成物を含む飲食品であり、また化粧料であることが好ましい。
更にまた本発明は、α−リポ酸をエタノールに溶解し、次いでこの溶液と、グリセリンに乳化剤を溶解した溶液を混合した後、撹拌混合することからなるα−リポ酸水溶性組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、α−リポ酸を高濃度で含有した水溶性製剤を得ることができ、更に飲食品や化粧品等に加えることで簡単に安定なα−リポ酸含有製品を調製することができる。
本発明のα−リポ酸を含有する水溶性製剤及び水溶性組成物は、保存安定性に優れ、長期間保存してもα−リポ酸が析出することなく、均質で安定な状態を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、アルコールの共存下で、特定の界面活性剤を用いてα−リポ酸を可溶化させると、高濃度のα−リポ酸の可溶化状態が良好に保たれ、且つ飲食品等へ添加した後においても安定な可溶化状態が得られるとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。
本発明では、α−リポ酸に乳化剤、アルコールを加え撹拌溶解して水性液剤を調製する。
本発明のα−リポ酸水溶性組成物は、α−リポ酸をアルコールに溶解させ、次いで、この溶液とアルコールに乳化剤を溶解した溶液を混合した後、混合溶解することで得られる。
【0013】
α−リポ酸、乳化剤、アルコールが同一系内で存在していれば良く、特に混合する順番などは限定されるものではない。
混合溶解する際に使用できるミキサーは、特に限定されないが、ホモミキサー、ホモジェッター等の高速撹拌機、プロペラ撹拌機、タービン撹拌機、超音波乳化機、高圧乳化機等が挙げられる。
混合溶解する際の温度範囲は、使用する乳化剤の種類やα−リポ酸の配合量により異なるが、通常は20〜90℃の範囲内であり、好ましくは40〜60℃の範囲である。
【0014】
本発明に用いられるα−リポ酸は、牛等の動物の肝臓から抽出されるものでもよいし、合成で得たものでも良い。特に、市販品としては、Lipoec[コグニスジャパン(株)製、商品名]、ALIPURE[ビーエイチエヌ(株)、商品名]等が挙げられる。
α−リポ酸は、医薬品、化粧品、食品等の原料物質として使用されるものであればいずれでもよく、特に限定されないが、好ましくはα−リポ酸の含有量が98%以上のもので二酸化ケイ素を含有しないものを使用するのが望ましい。
【0015】
α−リポ酸の1日当たりの摂取量は、摂取者の体重や年齢、健康状態等によっても異なるが、通常、成人で1日1回約1mg〜300mg程度摂取するのがよい。
本発明の水溶性組成物は、そのまま摂取してもよいが、種々の飲食品又は化粧品に、α−リポ酸を添加するための配合原料として使用することができる。その用途としては、特に制限はなく、あらゆる種類のものに適用することができる。
【0016】
飲食品の例としては、炭酸飲料、乳飲料、果実飲料、茶、スポーツドリンク、酒類、酢、ソース、はちみつ、プリン、しょうゆ、アイスクリ一ム類などが挙げられる。
摂取の簡便性からは、清涼飲料水、ドリンク剤、ゼリー飲料等の用途が挙げられる。このような形態は手軽に摂取可能であることから継続的な摂取に適し、健康維持の観点から好ましい。
化粧品の例としては、浴用剤、制汗剤、歯磨剤、洗口液、化粧水、乳液、毛髪用化粧品、ボディケア製品等が挙げられる。
【0017】
本発明の飲食品又は化粧品は、調整工程中に他の原料と共に配合することにより、特別な処理や装置を必要とすることなく調製することができる。飲食品又は化粧品の本発明への組成物の添加時期や添加方法については特に限定はない。
また、本発明の飲食品又は化粧品には、本発明の目的に反しない限り、通常用いられるビタミン類、ミネラル類等、例えば、ビタミンC、ビタミンE、鉄、亜鉛、ユビデカレノン等を配合しても良い。
また、キレート剤、防腐剤、pH調整剤、酸化防止剤、香料等の各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0018】
本発明に用いられるアルコールとしては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース等を使用することができるが、これらの中でも、エタノール、グリセリン又はプロピレングリコールが好ましく採用される。また、これらアルコールは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよく、場合により水を加えて使用することもできる。
これらのアルコールは市販されている物を使用すればよい。例えば、エタノール95%[日本アルコール販売(株)]、食品添加物グリセリン[阪本薬品工業(株)、商品名]などがある。
【0019】
本発明に用いられる乳化剤としては、特に限定はないが、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレ硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、レシチン類、サポニン類、ショ糖脂肪酸エステル類等が挙げられる。
これら乳化剤は、必要に応じて複数種類を組み合わせて使用することも出来る。これらの中では特にポリグリセリン脂肪酸エステル、サポニン類が好適に使用される。
【0020】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、トリグリセリンカプリル酸エステル、トリグリセリンラウリン酸エステル、トリグリセリンミリスチン酸エステル、トリグリセリンオレイン酸エステル、トリグリセリンステアリン酸エステル、ペンタグリセリンカプリル酸エステル、ペンタグリセリンラウリン酸エステル、ペンタグリセリンミリスチン酸エステル、ペンタグリセリンオレイン酸エステル、ペンタグリセリンステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンカプリル酸エステル、ヘキサグリセリンラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンカプリル酸エステル、デカグリセリンラウリン酸エステル、デカグリセリンミリスチン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル等が好適に使用される。
【0021】
更に好ましくは、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノステアレート等が可溶化の安定の面から望ましい。使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは特に限定はされないが、HLBが8以上、より好ましくはHLBが10以上、更に好ましくはHLBが14以上である。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、市販されているものを使用すれぱよい。
例えば、サンソフトQ-12S、同Q-12YP、同Q14S、同Q−17S、同Q−17Y、同Q−18S、同Q−18Y[以上、太陽化学(株)製、商品名]、SYグリスターMO−750、同MCA−750[以上、阪本薬品工業(株)製、商品名]、ポエムJ−0021、同J−0381[以上、理研ビタミン(株)、商品名]、リョートーポリグリエステルL−7D、同O−15D[以上、三菱化学フーズ(株)製、商品名]等が挙げられる。
【0022】
サポニン類としては、例えば、ニンジンサポニン、キラヤサポニン、大豆サポニン、ユッカサポニン、茶サポニン等が好適に使用される。中でもキラヤサポニンがより好適に使用される。
このようなキラヤサポニンは市販されているものを用いればよい。例えば、キラヤニンC-100[丸善製薬(株)製、商品名]等が挙げられる。
レシチン類としては、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、水添レシチン等が好適に使用される。このようなレシチンは市販されているものを用いればよい。例えば、サンレシチンA、サンレシチンAH[以上、太陽化学(株)製、商品名]、エルマイザーA[協和発酵(株)製、商品名]等が挙げられる。
【0023】
ショ糖脂肪酸エステル類としては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等が好適に使用される。このようなショ糖脂肪酸エステルは市販されているものを用いることが出来る。例えば、リョートーシュガーエステルO−1570、同P−1670[以上、三菱化学フーズ(株)製、商品名]等が挙げられる。
【0024】
本発明において、α−リポ酸の配合量は、通常1〜30質量%の範囲、好ましくは5〜15質量%の範囲、更に好ましくは10質量%の範囲内であり、使用目的に応じて適宜増減する。
α−リポ酸の配合量が、1質量%より少ない場合には、目的とする効果を得るために水溶性組成物の使用量が多くなり、逆にその配合量が、30質量%より多い場合には、水溶性組成物中のα−リポ酸の可溶化状態を保持することが難しくなるため、好ましくない。
【0025】
本発明において、乳化剤の含有量は、乳化剤の種類により異なるが、α−リポ酸重量の通常0.5〜5倍の範囲、好ましくは1〜3倍の範囲、更に好ましくは2倍程度である。この値が0.5倍未満では水系飲食品等に添加した際に可溶化が十分ではなく、逆に5倍を超えるとそれ以上の有利な効果はない上に、乳化剤由来の味が発現し商品価値を下げるため好ましくない。
本発明において、アルコールの含有量は、配合したα−リポ酸が溶解するのに必要な量である。アルコールの種類により異なるが、エタノールの場合、通常、α−リポ酸重量に対して0.3〜30倍の範囲、好ましくは1〜3倍の範囲内である。
【0026】
α−リポ酸に対して、この値が0.3倍未満ではα−リポ酸の溶解が不十分であり、逆に30倍を超えても製剤のα−リポ酸含有量が少なくなってしまうだけで特に有利な効果はない。
また、本発明の組成物には、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分としては、例えば、水、糖類、pH調整剤、油脂、ビタミン類、コエンザイムQ10、ミネラル類等が挙げられる。その他の成分の含有量としては、特に限定されるものではなく、本発明の所望の効果の発現が阻害されない範囲で、適宜調整すればよい。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの記載にのみ限定されるものではない。
[実施例1]
α−リポ酸[Lipoec(コグニスジャパン(株)製、商品名)]5gにエタノール40gを加えて溶解した。次にデカグリセリンモノオレート[サンソフトQ-17Y(太陽化学(株)製、商品名)]10gにグリセリン45gを加え70℃に加温して溶解した。両者を混合してα−リポ酸水溶性組成物を得た。
[比較例1]
α−リポ酸[Lipoec(コグニスジャパン(株)製、商品名)]5gにエタノール40gを加えて溶解した。さらにグリセリン45gを加え70℃に加温して溶解した。両者を混合してα−リポ酸水溶性組成物を得た。
【0028】
これらのα−リポ酸水溶性組成物を、精製水及び酸性溶液(0.1%クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液、pH3)で、α−リポ酸として1000mg/Lの濃度になるように調製した。
また、それぞれの希釈液について、90℃で10分間の加熱処理を行った後の可溶化の状態、波長660nmにおける透過率を測定した。また5℃及び50℃で1週間静置した後の可溶化の状態及び波長660nmにおける透過率を測定し、その結果を表1に示した。
可溶化の状態は、以下の評価基準で評価した。
○:可溶化状態はおおむね良好である。
×:沈殿物が多く見られる。
【0029】
【表1】

【0030】
表1によれば、実施例1では安定な可溶化状態を維持している。均一性が保たれているため、商品価値を損なうことがない。一方、比較例1では添加直後は可溶化せずに懸濁してしまっている。経時で透過率が上がるのは沈殿及び凝集が起きているためであり、可溶化したからではない。この沈殿物の発生により商品価値を損ねてしまう。
【0031】
[実施例2]
官能試験:実施例1及び比較例1で調製したα−リポ酸水溶性組成物を、市販飲料でそれぞれα−リポ酸として100mg/Lの濃度になるように希釈し、α−リポ酸含有飲料を得た。これを官能試験に供した。35人の熟練したパネラーが、味と香りを以下の3段階で評価した。
○:味と香りの両方に対する影響が極めて少なく飲料用に適する。
△:味又は香りのいずれかに影響が見られる。
×:味と香りの両方に影響が大きく飲料用として適さない。
その結果を表2に示した。
【0032】
【表2】

【0033】
表2によれば、実施例1では、味・香が商品に対して与える影響は少ない。一方、比較例1では沈殿物の発生によりα−リポ酸由来の硫黄臭が大きく発現し、商品の味・香に大きな影響を及ぼしてしまう。
【0034】
[実施例3]
前記実施例1の水溶性組成物1質量%、ぶどう糖果糖混合液糖10質量%、グラニュー糖10質量%、グレープフルーツ1/5濃縮果汁5質量%、クエン酸0.3質量%、クエン酸ナトリウム0.2質量%、グレープフルーツフレーバー0.5質量%、水73質量%からなる飲料を調製し、100ml瓶に充填し、95℃で10分間の殺菌を行なった。殺菌後もα−リポ酸の分離は全く認められず、問題なく飲むことが出来た。
【0035】
[実施例4]
市販牛乳99gに、実施例1のα−リポ酸水溶性組成物1gを混合し、α−リポ酸を含有する牛乳を得た。実施例3と同様の殺菌後もα−リポ酸の分離は全く認められず、問題なく飲むことが出来た。
[実施例5]
市販茶飲料99gに、実施例1のα−リポ酸水溶性組成物1gを混合し、α−リポ酸を含有する茶飲料を得た。実施例3と同様の殺菌後もα−リポ酸の分離は全く認められず、問題なく飲むことが出来た。
【0036】
[実施例6]
市販清酒99gに、実施例1のα−リポ酸水溶性組成物1gを混合し、α−リポ酸を含有する清酒を得た。2ヶ月保管後もα−リポ酸の分離は全く認められず、問題なく飲むことが出来た。
[実施例7]
市販コーヒー飲料99gに、実施例1のα−リポ酸水溶性組成物1gを混合し、α−リポ酸を含有するコーヒー飲料を得た。実施例3と同様の殺菌後もα−リポ酸の分離は全く認められず、問題なく飲むことが出来た。
【0037】
[実施例8]
市販ゼリー飲料99gに、実施例1のα−リポ酸水溶性組成物1gを混合し、α−リポ酸を含有するゼリー飲料を得た。実施例3と同様の殺菌後もα−リポ酸の分離は全く認められず、問題なく飲むことが出来た。
[実施例9]
市販コンソメスープ粉末1食分を、95℃に加温した水99gに溶解し、実施例1のα−リポ酸水溶性組成物1gを混合し、α−リポ酸を含有するコンソメスープを得た。α−リポ酸の分離は全く認められず、問題なく飲むことが出来た。
【0038】
[実施例10]
市販ソース99gに、実施例1のα−リポ酸水溶性組成物1gを混合し、α−リポ酸を含有するソースを得た。α−リポ酸の分離は全く認められず、問題なく使用することが出来た。
[実施例11]
市販化粧水99gに、実施例1のα−リポ酸水溶性組成物1gを混合し、α−リポ酸を含有する化粧水を得た。α−リポ酸の分離は全く認められず、問題なく使用することが出来た。
【0039】
[実施例12]
市販保湿クリーム99gに、実施例1のα−リポ酸水溶性組成物1gを混合し、α−リポ酸を含有する保湿クリームを得た。α−リポ酸の分離は全く認められず、問題なく使用することが出来た。
以上のように、本発明品であるα−リポ酸水溶性組成物は、水系添加できることから、該組成物含有飲食品又は化粧品を調製するにあたり何ら困難を伴うことはなく、該組成物の飲食品及び化粧品への汎用性が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、耐酸性、耐塩性、耐熱性にも優れ、ハンドリング性が良く水系添加でき、配合するだけで容易に安定な水溶化状態を保つ飲食品、化粧品等を得ることが出来る。このため、今後の健康食品産業に貢献することは大であり、産業上の利用価値は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−リポ酸、乳化剤、アルコールを含有してなることを特徴とするα−リポ酸水溶性組成物。
【請求項2】
1〜30質量%のα−リポ酸、1〜50質量%の乳化剤、1〜98質量%のアルコールを含む請求項1記載のα−リポ酸水溶性組成物。
【請求項3】
1〜30質量%のα−リポ酸を1〜98質量%のアルコールに溶解した後に、1〜50質量%の乳化剤を溶解又は分散したものである請求項1記載のα−リポ酸水溶性組成物。
【請求項4】
前記乳化剤のHLBが、10以上である請求項1〜3のいずれかに記載のα−リポ酸水溶性組成物。
【請求項5】
前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、サポニン類の中から選ばれる1又は2種以上からなる、請求項1〜4のいずれかに記載のα−リポ酸水溶性組成物。
【請求項6】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、デカグリセリンモノオレート及び/又はデカグリセリンモノステアレートである請求項5に記載のα−リポ酸水溶性組成物。
【請求項7】
前記アルコールが、エタノール、グリセリン、プロピレングリコールの中から選ばれる1又は2種以上である請求項1〜6のいずれかに記載のα−リポ酸水溶性組成物。
【請求項8】
α−リポ酸と乳化剤の質量比が1/1〜3であり、且つα−リポ酸とアルコールの質量比が1/1〜10である請求項1〜7のいずれかに記載のα−リポ酸水溶性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のα−リポ酸水溶性組成物を含む飲食品。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のα−リポ酸水溶性組成物を含む化粧料。
【請求項11】
α−リポ酸をアルコールに溶解し、次いでこの溶液と、アルコールに乳化剤を溶解した溶液を混合した後、撹拌混合することからなるα−リポ酸水溶性組成物の製造方法。
【請求項12】
α−リポ酸をエタノールに溶解し、次いでこの溶液と、グリセリンにポリグリセリン脂肪酸エステル、サポニン類から選ばれる1又は2種以上からなる乳化剤を溶解した溶液を混合した後、撹拌混合することからなるα−リポ酸水溶性組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−257010(P2006−257010A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75744(P2005−75744)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(592007612)横浜油脂工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】